(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024095856
(43)【公開日】2024-07-11
(54)【発明の名称】歯間清掃具
(51)【国際特許分類】
A61C 15/02 20060101AFI20240704BHJP
A46B 9/04 20060101ALI20240704BHJP
【FI】
A61C15/02 502
A46B9/04
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022212809
(22)【出願日】2022-12-29
(71)【出願人】
【識別番号】000106324
【氏名又は名称】サンスター株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003823
【氏名又は名称】弁理士法人柳野国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】清水 都
(72)【発明者】
【氏名】中西 隆
【テーマコード(参考)】
3B202
【Fターム(参考)】
3B202AA03
3B202AB15
3B202ED05
3B202EE07
3B202EF04
3B202EF06
3B202EG05
3B202EG14
(57)【要約】
【課題】薬剤のブラシ部上の保液性や歯間の挿入側と反対の側への供給性、到達性を高め、清掃中に薬剤を塗り直す場合もその頻度を低減でき、薬剤による歯間清掃効果、炎症予防効果を高めることができる歯間清掃具を提供せんとする。
【解決手段】ブラシ部5の各毛50の先端を通る仮想の外周面6につき、軸部に直行する方向から見た場合においてブラシ部5の軸方向の先端5aに向かって毛が短くなる第1の先細形状部61を先端側に有するとともに、軸方向の基端5bに向かって毛が短くなる第2の先細形状部62を基端側に有し、毛の長さが最も長くなる軸方向の位置60又は領域が、外周面6の中央位置、又は中央位置よりも先端寄りになるように設定されている。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸部と、該軸部を中心に放射状に突設される複数の毛からなるブラシ部とを備え、前記ブラシ部の毛に薬剤を付着させて使用する歯間清掃具であって、
前記ブラシ部の各毛の先端を通る仮想の外周面につき、前記軸部に直行する方向から見た場合において前記ブラシ部の軸方向の先端に向かって毛が短くなる第1の先細形状部を先端側に有するとともに、軸方向の基端に向かって毛が短くなる第2の先細形状部を基端側に有し、
前記毛の長さが最も長くなる軸方向の位置又は領域が、前記外周面の中央位置、又は中央位置よりも先端寄りにあるように設定されている歯間清掃具。
【請求項2】
前記第1の先細形状部の前記先端に向かって毛が短くなる変化の度合が、前記第2の先細形状部の前記基端に向かって毛が短くなる変化の度合と同じ、又はより大きく設定されている請求項1記載の歯間清掃具。
【請求項3】
前記第1の先細形状部が、前記先端に向かって毛が短くなる変化の度合が一定のテーパー形状であり、
該第1の先細形状部の外周面の勾配の角度である、該外周面を前記軸に直交する側方からみた傾斜している稜線と前記軸の中心線との間の成す角を、1.0~42.5度に設定されている、請求項1又は2記載の歯間清掃具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ブラシ部の毛に薬剤を付着させて使用する歯間清掃具に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、とくに歯周病の安定期治療(サポーティブペリオドンタルセラピー(SPT))や急性炎症の治療の患者等にとって、薬剤を用いた歯間清掃が重要である。一般向けにも、歯間清掃具のブラシ部に必要分だけ塗布して清掃するための液状やジェル状の各種薬剤が提供されており、歯間清掃と炎症予防を一度に行えるようになっている。薬剤をブラシ部に塗布することで、歯間挿入圧を低減し、歯間ブラシ挿入の抵抗感を低減できる効果もある。
【0003】
また、歯間清掃具と薬剤を別に提供すること以外に、薬剤を歯間清掃具に一体化させたもの、すなわち、歯間清掃具のハンドル部分に薬剤のタンクを設け、手で操作することにより薬剤をブラシ部に供給できる構造を有する薬剤一体型歯間清掃具も提案されている(例えば、特許文献1~7参照。)。
【0004】
しかしながら、別に購入した薬剤を歯間清掃具に塗布する場合は勿論のこと、上記提案されている薬剤一体型の歯間清掃具についても、ブラシ部に塗布した薬剤のブラシ部上の保液性や歯間への供給性、到達性などを追及したものは無く、塗布した薬剤の大部分が歯間の挿入側と反対の側(口腔内側)まで届く前に、口腔外または口腔内に落ちてしまう、或いは歯間の挿入側と反対の側に届かないという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特表2016-526938号公報
【特許文献2】特表2016-531598号公報
【特許文献3】特開2017-42623号公報
【特許文献4】特表2017-523903号公報
【特許文献5】特開平9-238748号公報
【特許文献6】特開2017-104486号公報
【特許文献7】国際公開第2004/039209号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明が前述の状況に鑑み、解決しようとするところは、薬剤のブラシ部上の保液性や歯間の挿入側と反対の側への供給性、到達性を高め、清掃中に薬剤を塗り直す場合もその頻度を低減でき、薬剤による歯間清掃効果、炎症予防効果を高めることができる歯間清掃具を提供する点にある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、以下の発明を包含する。
(1) 軸部と、該軸部を中心に放射状に突設される複数の毛からなるブラシ部とを備え、前記ブラシ部の毛に薬剤を付着させて使用する歯間清掃具であって、前記ブラシ部の各毛の先端を通る仮想の外周面につき、軸部に直行する方向から見た場合において前記ブラシ部の軸方向の先端に向かって毛が短くなる第1の先細形状部を先端側に有するとともに、軸方向の基端に向かって毛が短くなる第2の先細形状部を基端側に有し、前記毛の長さが最も長くなる軸方向の位置又は領域が、前記外周面の中央位置、又は中央位置よりも先端寄りになるように設定されている歯間清掃具。
【0008】
(2) 前記第1の先細形状部の前記先端に向かって毛が短くなる変化の度合が、前記第2の先細形状部の前記基端に向かって毛が短くなる変化の度合と同じ、又はより大きく設定されている(1)記載の歯間清掃具。
(3) 前記第1の先細形状部が、前記先端に向かって毛が短くなる変化の度合が一定のテーパー形状であり、該第1の先細形状部の外周面の勾配の角度である、該外周面を前記軸に直交する側方からみた傾斜している稜線と前記軸の中心線との間の成す角を、1.0~42.5度に設定されている、(1)又は(2)記載の歯間清掃具。
(コメント)
【発明の効果】
【0009】
以上にしてなる本願発明の歯間清掃具によれば、薬剤のブラシ部上の保液性や歯間の挿入側と反対の側への供給性、到達性を高め、またユーザは清掃中にブラシ部に薬剤がなくなれば塗り直すこともあるがその頻度も低減でき、薬剤による歯間清掃効果、炎症予防効果及び清掃作業性を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の代表的実施形態にかかる歯間清掃具を示す説明図。
【
図3E】(a)は同じく歯間清掃具を示す平面図、(b)は同じく歯間清掃具を示す底面図。
【
図4E】(a)は同じく歯間清掃具を示す平面図、(b)は同じく歯間清掃具を示す底面図。
【
図5A】更に他の変形例の歯間清掃具を示す正面図。
【
図5E】(a)は同じく歯間清掃具を示す平面図、(b)は同じく歯間清掃具を示す底面図。
【
図6A】実施例、比較例のブラシ部の形状・寸法を示す説明図。
【
図6B】実施例、比較例のブラシ部の形状・寸法を示す説明図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
次に、本発明の実施形態を添付図面に基づき詳細に説明する。
【0012】
本発明の代表的な実施形態に係る歯間清掃具1は、
図1及び
図2に示すように、軸部4と、該軸部4を中心に放射状に突設される複数の毛50からなるブラシ部5とを備えるブラシ体2を先端側に有し、ブラシ部5の毛50に薬剤を付着させて使用するものである。本実施形態では、ブラシ体2の基端側に、前記軸部4が先端に支持され、内部に薬剤が収容されるハンドル体3が設けられている。
【0013】
ハンドル体3には、薬剤収容部30から薬剤を軸部4の突出基部4bに向けて吐出し、該軸部4を伝ってブラシ部5に薬剤を供給しうる薬剤吐出路31が設けられている。尚、本発明は、このようにハンドル体3に薬剤を収容した薬剤一体型の歯間清掃具1に何ら限定されない。ハンドル体の内部に薬剤収容部を設けず、単なるハンドル機能のみとし、ブラシ部への薬剤の供給は、別途ユーザが用意する別体の薬剤ボトル等から直接、ユーザにより塗布されるものも含む。
【0014】
本発明に係る歯間清掃具1は、
図2に示すように、特にブラシ部5の各毛50の先端を通る仮想の外周面6につき、軸部に直行する方向から見た場合においてブラシ部5の軸方向の先端5aに向かって毛が短くなる第1の先細形状部61を先端側に有するとともに、軸方向の基端5bに向かって毛が短くなる第2の先細形状部62を基端側に有し、毛の長さが最も長くなる軸方向の位置60又は領域が、外周面6の中央位置、又は中央位置よりも先端寄りになるように設定されていることを特徴としている。
【0015】
このようなブラシ部5に薬剤を塗布して歯間を清掃することにより、薬剤のブラシ部5上の保液性や、歯間の挿入側と反対の側への供給性、到達性を高めることができ、またユーザは清掃中にブラシ部5に薬剤がなくなったときは塗り直すこともあるがその頻度は低減でき、薬剤による歯間清掃効果、炎症予防効果、清掃作業性を著しく高めることができるものである。
【0016】
より詳しくは、薬剤をブラシ部5の外周面上に付着させた状態、または付着させる過程でブラシ部先端5aを下方に向けても、第2の先細形状部62の存在、および毛の長さが最も長くなる軸方向の位置60又は領域が外周面6の中央位置、又は中央位置よりも先端寄りになるように設定されていることにより、薬剤が先端側に過剰に移動してしまうことを防止し、付着した薬剤の落下を防止する。
【0017】
また、薬剤を付着させる際には、第1の先細形状部61及び第2の先細形状部62の存在によりブラシ部5の先端側および基端側の毛が短いため、当該部分に薬剤が過剰に引っ掛かってしまうこともなく、毛の長さが最も長くなる軸方向の位置60又は領域が外周面6の中央位置、又は中央位置よりも先端寄りになるように設定されていることで、ブラシ部5の軸方向全域にわたって薬剤をスムーズに行き渡せることが容易となる。
【0018】
また、歯間への挿入の際には、第1の先細形状部61により、薬剤を歯間の挿入側と反対の側まで届けやすく、また、歯間から抜く際には、毛の長さが最も長くなる軸方向の位置60又は領域が外周面6の中央位置、又は中央位置よりも先端寄りになるように設定されていること、及び基端側の第2の先細形状部62の存在により、余分な薬剤を歯間から回収でき、次の挿入の際、その薬剤を再び歯間に届けることができる。
【0019】
このように、第1の先細形状部61及び第2の先細形状部62の存在、及び毛の長さが最も長くなる軸方向の位置60又は領域が外周面6の中央位置、又は中央位置よりも先端寄りになるように設定されていることにより、塗布した薬剤を無駄に口腔内外に落下させてしまうことなく効率よく歯間に届けることが可能となる。さらに、挿入の際だけでなく回収の際にも歯間の挿入側と反対の側(口腔内側)を薬剤でしっかりと清掃することが可能となるのである。
【0020】
第1の先細形状部61や第2の先細形状部62の形状についても、
図1及び
図2に示した例では、毛の短くなる変化の度合が一定であるテーパー形状とされているが、毛の短くなる変化の度合が次第に大きくなる外凸の曲面形状や、前記度合が次第に小さくなる内凸の曲面形状、これらを組み合わせた形状等でもよい。
【0021】
先細形状部61の前記毛が短くなる変化の度合は、第2の先細形状部62の基端に向かって毛が短くなる変化の度合と同じか、より大きく設定されることが好ましい。テーパー形状である場合のその勾配の角度θ(軸に対する外周面の傾斜角)は、とくに第1の先細形状部61の場合、1.0~42.5度の範囲内に設定することが好ましい。
【0022】
また、
図1及び
図2に示したブラシ部5は、第1の先細形状部61と第2の先細形状部62を上記位置60を境に軸方向に隣接させ、これら2つの先細形状部61、62のみから構成されているが、
図3A~5Hに示す変形例のように、第1の先細形状部61と第2の先細形状部62の間に、他の形状の領域が存在しても勿論よい。
【0023】
例えば、
図3A~3Hに示した変形例では、第1の先細形状部61と第2の先細形状部62との間に、軸方向にわたり毛の長さが同じであるシリンダ状の仮想外周面を有するシリンダ形状部63が設けられている。この例では、シリンダ形状部63が上記した毛の長さが最も長くなる軸方向の領域とされている。
【0024】
また、
図4A~4Hに示した変形例では、第1の先細形状部61と第2の先細形状部62との間に、上記と同様のシリンダ形状部63とその基端側に連続し、第2の先細形状部62に向かってテーパー状に次第に毛が短くなる第3の先細形状部64が設けられている。この第3の先細形状部64と第2の先細形状部62を合わせて第2の先細形状部とみなすこともできる。この場合、第2の先細形状部は勾配の異なる二つのテーパー状先細形状の複合型となる。本例でも、シリンダ形状部63が毛の長さが最も長くなる軸方向の領域とされる。
【0025】
また、
図5A~5Hに示した変形例では、第1の先細形状部61と第2の先細形状部62との間に、毛の長さが両端の位置から中央に向かって次第に短くなる鼓状の仮想外周面を有する鼓状部65が設けられている。この例では、鼓状部65の先端の位置が上記した毛の長さが最も長くなる軸方向の位置とされている。
【0026】
ブラシ体2は、例えば、金属細線からなる軸部4に対して、その長さ方向に沿って複数の毛50としてフィラメントを放射状に植毛し、所望の形状に毛切りしたブラシ部5を形成したものである。より具体的には、金属細線を二つ折りにしてその間にフィラメントを直交状に配置させ、この金属細線を捻って、金属細線からなる軸部4に対して放射状に複数のフィラメント(毛50)が植毛され、その後フィラメントを毛切りすることにより所定の外周面形状を有するブラシ部5が構成されている。
【0027】
前記フィラメントには、例えば、ナイロンおよびアラミド等のポリアミド樹脂(ポリアミド610、ポリアミド612、ポリアミド6、ポリアミド66)や、ポリブチレンテレフタレート、ポリプロピレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル樹脂、或いは、ポリプロピレンやポリエチレン等のポリオレフィン樹脂などの熱可塑性合成樹脂が使用される。フィラメントの太さ、断面形状等はとくに限定されず、種々の形態のものを用いることができる。本発明のブラシ体2は、このような金属細線の軸部4とフィラメントの毛50からなるものに何ら限定されず、軸部とブラシ部を合成樹脂材料により一体成形したものや、軸部を主に合成樹脂材料で成形し、その周囲にブラシ部を構成する複数の毛を熱可塑性エラストマーや熱硬化性シリコンゴム、合成ゴム等の材料で二色成形したものなど、種々のものが可能である。
【0028】
薬剤には、歯周病の予防および治療、急性炎症の治療、う蝕予防、美白、保湿、治療など、目的に応じて選択される公知のものを広く用いることができる。例えば、歯間ジェル、水歯磨剤、ジェル歯磨剤、歯間塗布剤などの液状、ジェル状の流動性を有する組成物などが使用できる。
【0029】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明はこうした実施の例に何ら限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々なる形態で実施し得ることは勿論である。
【実施例0030】
以下、薬剤のブラシ部上の保液性、歯間への供給性、到達性について試験した結果について説明する。
【0031】
(保液性・供給性試験)
歯間清掃具の複数のサンプル(ブラシ体の外周形状・寸法、毛の量(密度)のみ異なる実施例1~3、6~8、比較例1、2、5、6)を用意した。ブラシ体の構造は上記実施形態で説明した金属細線(ステンレス製φ0.25mm)を折り曲げ、フィラメント(ナイロン製φ0.05mm)を間に配置してねじりあげたものを使用した。
【0032】
具体的には、
図6A、
図6Bに示すような形状・寸法を有するブラシ部とした。実施例1~3、比較例1、2は、通過径1.0~1.1mmで一般的に「SSサイズ」と呼ばれている寸法に設定したものであり、毛の量も前記通過径に適合するように調整したものである。実施例6~8、比較例5、6は、通過径1.2~1.3mmで一般的に「Mサイズ」と呼ばれている寸法に設定したものであり、同じく毛の量を通過径に適合するように調整したものである。尚、
図6には、後述する実施例4、5、比較例3、4の形状・構造についても記載している、また、図中θの数値は、先細形状部を有する各例についての
図2で示す勾配の角度θ(軸に対する外周面の傾斜角)の値を示している。
【0033】
薬剤として粘度1800-3200mPa・sの薬剤(以下、「薬剤1」と称す。)と、粘度4400-7200mPa・sの薬剤(以下「薬剤2」と称す。)の2種類を用意し、ブラシ体の軸先端方向を下に向け、各薬剤をピペットで各サンプルのブラシ部基端側の軸部の表面に0.1g供給し、軸部を伝ってブラシ部に付着させた。
【0034】
このようにしてブラシ部に薬剤を付着させたサンプルを、歯間部のサイズを歯間ブラシ規格の通過径最大値に設定された市販の顎模型の特定の歯間に1回通し、通す前のブラシ部に付着している薬剤付着量と、通すことで歯間に付着した薬剤付着量をそれぞれ計測した。通す前にブラシ部に付着した薬剤付着量は、薬剤供給前後のサンプルの重量変化により測定した。歯間に付着した薬剤付着量は、歯間に通す前後の顎模型の重量変化により測定した。
【0035】
歯間への挿入速度は120mm/minとし、挿入の深さは、ユーザの使用方法を考慮し、ブラシ部の全部を歯間に挿入する全部挿入と、ブラシ部の中間位置まで(半分だけ)挿入する半分挿入の2通りで行った。
【0036】
薬剤1を用いて行った結果を
図7A,7Bに示し、薬剤2を用いて行った結果を
図8A,8Bに示す。各図のグラフの付着量は、供給した薬剤付着量0.1gを100%とした%で表示している。
【0037】
これらの結果から、本発明に係る実施例1~3、6~8のサンプルは、比較例1~6に比べて、ブラシ部に付着した薬剤の量に対して歯間に付着する量(すなわちブラシ部から歯間への薬剤の受け渡し量)が多く、ブラシ部上の薬剤を効率よく歯間へ付着させることができることがわかる。特に比較例1、5のテーパー型は、ブラシ部から歯間への薬剤の受け渡しが極端に悪い。
【0038】
試験中の観察では、比較例1、5のテーパー型では、薬剤がブラシ部の基端側に集中して付着して先端側へ行き渡っていなかったので、それが薬剤の受け渡しが悪化した原因であると考えられる。これに対し、実施例1~3、6~8のサンプルは、基端側から供給された薬剤がブラシ部の全長にわたって片寄りなく付着しており、これが上記受け渡しが良好であった理由の一つと考えられる。
【0039】
(供給性試験1)
上記した保液性・供給性試験と同様の薬剤1、薬剤2を使用し、同じく実施例1~3、6~8、比較例1、2、5、6の各サンプルのブラシ体の全体を各薬剤に浸して全体に付着させたうえ、上記顎模型の特定の歯間に1回通し、通す前のブラシ部に付着している薬剤付着量と、通した後の歯間に付着している薬剤付着量をそれぞれ計測した。
【0040】
歯間への挿入速度は上記試験と同じく120mm/minとし、挿入の深さも、ブラシ部の全部を歯間に挿入する全部挿入と、ブラシ部の中間位置まで(半分だけ)挿入する半分挿入の2通りで行った。薬剤1を用いて行った結果を
図9A,9Bに示し、薬剤2を用いて行った結果を
図10A,10Bに示す。各図のグラフの付着量は、供給した薬剤付着量を100%とした%で表示している。
【0041】
これらの結果から、ブラシ部への付着量が同じ(100%)であったとしても、本発明に係る実施例1~3、6~8の各サンプルの方が、比較例1、2、5、6に比べて歯間に付着する量(すなわちブラシ部から歯間への薬剤の受け渡し量)が多く、ブラシ部上の薬剤を効率よく歯間へ付着させることができることがわかる。これは、ブラシ部の形状、構造の違いの結果、本発明の歯間清掃具では歯間への薬剤の供給性に優れることがわかる。
【0042】
(供給性試験2)
実施例1、比較例2のサンプルについて、上記の各試験と同様の薬剤1、薬剤2を使用し、ブラシ体の軸先端方向を下に向け、各薬剤をピペットで各サンプルのブラシ部基端側の軸部の表面に0.1g供給し、軸部を伝ってブラシ部に付着させた。
【0043】
そして、上記顎模型の特定の歯間に3回通し、通す前のブラシ部に付着している薬剤付着量と、1回通すごとに、通した後の歯間に付着している薬剤付着量をそれぞれ計測した。3回とも歯間への挿入速度は上記試験と同じく120mm/minとし、挿入の深さも、ブラシ部の全部を歯間に挿入する全部挿入と、ブラシ部の中間位置まで(半分だけ)挿入する半分挿入の2通りで行った。薬剤1を用いて行った結果を
図11A,
図11Bに示し、薬剤2を用いて行った結果を
図12A、
図12Bに示す。各図のグラフの付着量は、ブラシ部への付着量を100%とした%で表示している。
【0044】
これらの結果から、実施例1のサンプルでは、比較例1に比べ、歯間への薬剤供給量が多く、挿入回数を重ねても付着した薬剤を落としてしまうことなく安定して多くの薬剤を歯間に供給できることがわかる。
【0045】
(到達性試験)
実施例1、3~5、比較例2~4のサンプルについて、上記の各試験と同様の薬剤2を使用し、ブラシ体の軸先端方向を下に向け、薬剤2をピペットで各サンプルのブラシ部基端側の軸部の表面に0.1g供給し、軸部を伝ってブラシ部に付着させた。実施例1、3、比較例2は、上記各試験に用いたサンプルと同じである。実施例4、5、比較例3、4は新たに用意したサンプルである。これらもブラシ体の構造は同じく金属細線(ステンレス製φ0.25mm)を折り曲げ、フィラメント(ナイロン製φ0.05mm)を間に配置してねじりあげたものであり、ブラシ体のブラシ部の仮想外周面の形状・寸法は
図6Aに示すような形状・寸法を有するSSサイズのブラシ部とした(毛の量はSSサイズの上記通過径に調整した。)。
【0046】
そして、上記顎模型の特定の歯間に1回通し、歯間への薬剤の到達範囲をマイクロスコープ(株式会社キーエンス社製)の画像から算出した。薬剤の付着範囲は、画像上で当該範囲が光沢を発することから認識できる。歯間への挿入速度は上記試験と同じく120mm/minとし、挿入の深さも、ブラシ部の全部を歯間に挿入する全部挿入と、ブラシ部の中間位置まで(半分だけ)挿入する半分挿入の2通りで行った。到達範囲の算出は、
図13に示すように、位置a、b間の距離とした。図中「a」は歯間手前側から付着し始める位置、「b」は付着到達位置である。
【0047】
結果を
図14A,
図14Bに示す。結果からわかるように、比較例、とくに比較例3、4のサンプルは付着範囲が狭く、薬剤が歯間の一部分に偏って付着し、歯間の挿入側と反対の側まで十分に到達させることができないことがわかる。