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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024009586
(43)【公開日】2024-01-23
(54)【発明の名称】固体電池パッケージ
(51)【国際特許分類】
   H01M 50/103 20210101AFI20240116BHJP
   H01M 10/052 20100101ALI20240116BHJP
   H01M 10/054 20100101ALI20240116BHJP
   H01M 10/0562 20100101ALI20240116BHJP
   H01M 50/131 20210101ALI20240116BHJP
   H01M 50/117 20210101ALI20240116BHJP
   H01M 50/128 20210101ALI20240116BHJP
   H01M 50/14 20210101ALI20240116BHJP
【FI】
H01M50/103
H01M10/052
H01M10/054
H01M10/0562
H01M50/131
H01M50/117
H01M50/128
H01M50/14
【審査請求】未請求
【請求項の数】21
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022111228
(22)【出願日】2022-07-11
(71)【出願人】
【識別番号】000006231
【氏名又は名称】株式会社村田製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【弁理士】
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100132263
【弁理士】
【氏名又は名称】江間 晴彦
(74)【代理人】
【識別番号】100197583
【弁理士】
【氏名又は名称】高岡 健
(72)【発明者】
【氏名】生田 祐介
【テーマコード(参考)】
5H011
5H029
【Fターム(参考)】
5H011AA01
5H011CC05
5H011CC10
5H011KK03
5H029AJ11
5H029AK01
5H029AK02
5H029AK03
5H029AK05
5H029AK16
5H029AL01
5H029AL02
5H029AL03
5H029AL07
5H029AL12
5H029AM12
5H029BJ02
5H029DJ02
5H029EJ03
5H029HJ04
(57)【要約】
【課題】外部からの機械的ストレスへの耐性がより向上した固体電池パッケージを提供すること。
【解決手段】基板と、前記基板上に設けられ、固体電池と、前記固体電池を覆う外装部とを備え、前記外装部が複数のコーナー部を備え、前記複数のコーナー部のうち、少なくとも、頂面側コーナー部が外側に湾曲した外側湾曲面を含む、固体電池パッケージ。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板と、前記基板上に設けられ、固体電池と、前記固体電池を覆う外装部とを備え、
前記外装部が複数のコーナー部を備え、前記複数のコーナー部のうち、少なくとも、頂面側コーナー部が外側に湾曲した外側湾曲面を含む、固体電池パッケージ。
【請求項2】
前記頂面側コーナー部を複数備え、
前記複数の頂面側コーナー部のうち、隣接する第1頂面側コーナー部と第2頂面側コーナー部とをつなぐ頂面側稜線部が外側湾曲面を含む、請求項1に記載の固体電池パッケージ。
【請求項3】
前記頂面側稜線部が、相互に異なる方向に延在し、隣接する第1の面領域と第2の面領域との境界部分であり、
前記頂面側稜線部の前記外側湾曲面が、第1の面領域から第2の面領域に延在している、請求項2に記載の固体電池パッケージ。
【請求項4】
前記外装部が、前記基板を覆う底面側コーナー部を備え、
前記底面側コーナー部が外側湾曲面を含む、請求項1に記載の固体電池パッケージ。
【請求項5】
前記外装部が、前記基板を覆う底面側コーナー部を複数備え、
前記複数の底面側コーナー部のうち、隣接する第1底面側コーナー部と第2底面側コーナー部とをつなぐ底面側稜線部が外側湾曲面を含む、請求項1に記載の固体電池パッケージ。
【請求項6】
前記外装部が、前記基板を覆う底面側コーナー部を備え、
隣接する前記頂面側コーナー部と前記底面側コーナー部とをつなぐ側面側稜線部が外側湾曲面を含む、請求項1に記載の固体電池パッケージ。
【請求項7】
断面視にて、前記外側湾曲面の曲率半径が、35μm以上250μm以下である、請求項1に記載の固体電池パッケージ。
【請求項8】
前記外装部が、前記基板上に備えられた前記固体電池の頂面および側面を少なくとも覆う被覆絶縁層と、前記被覆絶縁層上に設けられた被覆無機層とを備え、
前記外側湾曲面において、少なくとも前記被覆無機層が外側に湾曲した湾曲無機面を含む、請求項1~7のいずれかに記載の固体電池パッケージ。
【請求項9】
断面視にて、前記湾曲無機面の内側に位置する前記被覆絶縁層が、外側に湾曲した湾曲絶縁面を含む、請求項8に記載の固体電池パッケージ。
【請求項10】
断面視にて、前記湾曲無機面の曲率半径が、前記湾曲絶縁面の曲率半径より大きい、請求項9に記載の固体電池パッケージ。
【請求項11】
断面視にて、前記頂面側コーナー部における前記湾曲無機面の曲率半径が、120μm以上250μm以下である、請求項8に記載の固体電池パッケージ。
【請求項12】
断面視にて、前記頂面側コーナー部における前記湾曲絶縁面の曲率半径が、45μm以上150μm以下である、請求項9に記載の固体電池パッケージ。
【請求項13】
互いに隣接する前記頂面側コーナー部をつなぐ頂面側稜線部が外側に湾曲した湾曲無機面を含み、
前記頂面側コーナー部における前記湾曲無機面の曲率半径が、前記頂面側稜線部の前記湾曲無機面の曲率半径よりも大きい、請求項8に記載の固体電池パッケージ。
【請求項14】
前記頂面側稜線部の前記湾曲無機面の曲率半径が、80μm以上200μm以下である、請求項13に記載の固体電池パッケージ。
【請求項15】
断面視にて、前記頂面側稜線部における前記湾曲無機面の内側に位置する前記被覆絶縁層が、外側に湾曲した湾曲絶縁面を含み、
前記頂面側コーナー部における前記湾曲絶縁面の曲率半径が、前記頂面側稜線部における前記湾曲絶縁面の曲率半径よりも大きい、請求項13に記載の固体電池パッケージ。
【請求項16】
断面視にて、前記頂面側稜線部における前記湾曲無機面の内側に位置する前記被覆絶縁層が、外側に湾曲した湾曲絶縁面を含み、
前記頂面側稜線部における前記湾曲絶縁面の曲率半径が、35μm以上120μm以下である、請求項13に記載の固体電池パッケージ。
【請求項17】
前記基板が、前記固体電池に対向する第1主面と、前記第1主面の反対側に位置する第2主面とを備え、
前記被覆無機層が、前記第2主面にまで及んでおり、
断面視で、前記湾曲無機面の内側に位置する前記基板が外側に湾曲している、請求項8に記載の固体電池パッケージ。
【請求項18】
前記被覆無機層が、2つ以上の無機膜が積層された複合無機膜であり、
断面視にて、前記外側湾曲面において、前記2つ以上の無機膜の各々が外側に湾曲している、請求項8に記載の固体電池パッケージ。
【請求項19】
断面視にて、前記頂面側コーナー部における前記外側湾曲面の曲率半径は、前記底面側コーナー部における前記外側湾曲面の曲率半径と異なる、請求項4に記載の固体電池パッケージ。
【請求項20】
断面視にて、前記頂面側コーナー部における前記外側湾曲面は、前記底面側コーナー部における前記外側湾曲面より大きい曲率半径を有する、請求項4に記載の固体電池パッケージ。
【請求項21】
断面視にて、前記固体電池が矩形状であり、前記固体電池を覆う外装部の複数のコーナー部がそれぞれ外側湾曲面を含む、請求項1に記載の固体電池パッケージ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、固体電池パッケージに関する。より具体的には、本開示は、基板実装に資するようにパッケージ化された固体電池に関する。
【背景技術】
【0002】
従前より、繰り返しの充放電が可能な二次電池が、様々な用途に用いられている。例えば、二次電池は、スマートフォンおよびノートパソコン等の電子機器の電源として用いられる。
【0003】
二次電池においては、充放電に寄与するイオン移動のための媒体として、液体の電解質が一般に使用されている。つまり、いわゆる電解液が二次電池に用いられている。しかしながら、そのような二次電池においては、電解液の漏出防止の点で、安全性が一般に求められる。また、電解液に用いられる有機溶媒等は可燃性物質ゆえ、その点でも安全性が求められる。
【0004】
そこで、電解液に代えて、固体電解質を用いた固体電池についての研究が進められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2015-220107号公報
【特許文献2】特開2010-503957号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
固体電池は、水蒸気の浸入を防止するために被覆部材によって覆われることで、固体電池パッケージが形成される(特許文献1および2)。このような固体電池パッケージは、顧客による実装工程や、市場における取扱工程において、外部からの機械的ストレスに晒され得る。この際、特許文献1および2のように、固体電池または被覆部材がコーナー部等において外部に露出する略90度の屈曲部を含む場合、外部からの物理的接触等の機械的ストレスが屈曲部に集中し、欠け等の欠損が生じる虞がある。このような固体電池または被覆部材の欠損は、全体として固体電池パッケージの水蒸気浸入防止の機能を低下させる可能性がある。
【0007】
本開示は、かかる課題に鑑みてなされたものである。すなわち、本開示の主たる目的は、外部からの機械的ストレスへの耐性がより向上した固体電池パッケージを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本発明の一実施形態では、
基板と、前記基板上に設けられた固体電池と、前記固体電池を覆う外装部とを備え、
前記外装部が複数のコーナー部を備え、前記複数のコーナー部のうち、少なくとも、頂面側コーナー部が外側に湾曲した外側湾曲面を含む、固体電池パッケージが提供される。
【発明の効果】
【0009】
本発明の一実施形態に係る固体電池パッケージは、外部からの機械的ストレスへのより向上した耐性を有する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は、本発明の一実施形態に係る固体電池の内部構成を模式的に示す断面図である。
図2図2は、本発明の一実施形態に係る固体電池パッケージを模式的に示す斜視図である。
図3図3は、本発明の一実施形態に係る固体電池パッケージの構成を模式的に示す断面図である。
図4図4は、図3に示す固体電池パッケージのA部分を模式的に示す拡大断面図である。
図5図5は、本発明の別の実施形態に係る固体電池パッケージのA部分を模式的に示す拡大断面図である。
図6図6は、本発明の別の実施形態に係る固体電池パッケージのA部分を模式的に示す拡大断面図である。
図7図7は、本発明の一実施形態に係る固体電池パッケージの構成を模式的に示す断面図である。
図8図8は、図7に示す固体電池パッケージのB部分を模式的に示す拡大断面図である。
図9図9は、本発明の別の実施形態に係る固体電池パッケージの構成を模式的に示した断面図である。
図10図10は、本発明の別の実施形態に係る固体電池パッケージの構成を模式的に示した断面図である。
図11図11は、本発明の別の実施形態に係る固体電池パッケージの構成を模式的に示した断面図である。
図12A図12Aは、本発明の一実施形態に係る固体電池パッケージの製造プロセスを模式的に示した工程断面図である。
図12B図12Bは、本発明の一実施形態に係る固体電池パッケージの製造プロセスを模式的に示した工程断面図である。
図12C図12Cは、本発明の一実施形態に係る固体電池パッケージの製造プロセスを模式的に示した工程断面図である。
図12D図12Dは、本発明の一実施形態に係る固体電池パッケージの製造プロセスを模式的に示した工程断面図である。
図12E図12Eは、本発明の一実施形態に係る固体電池パッケージの製造プロセスを模式的に示した工程断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の固体電池パッケージを詳細に説明する。必要に応じて図面を参照して説明を行うものの、図示する内容は、本発明の理解のために模式的かつ例示的に示したに過ぎず、外観や寸法比などは実物と異なり得る。
【0012】
本明細書でいう「固体電池パッケージ」は、広義には、外部環境から固体電池が保護されるように構成された固体電池デバイスのことを指しており、狭義には、実装可能な基板を備えると共に、外部環境から固体電池が保護された固体電池デバイスのことを指している。
【0013】
本明細書でいう「断面視」とは、固体電池の積層構造における積層方向に対して略垂直な方向から捉えた形態(端的にいえば、層の厚み方向に平行な面で切り取った場合の形態)に基づいている。また、本明細書で用いる「平面視」または「平面視形状」とは、かかる層の厚み方向(即ち、上記の積層方向)に沿って対象物を上側または下側からみた場合の見取図に基づいている。
【0014】
本明細書で直接的または間接的に用いる“上下方向”および“左右方向”は、それぞれ図中における上下方向および左右方向に相当する。特記しない限り、同じ符号または記号は、同じ部材・部位または同じ意味内容を示すものとする。ある好適な態様では、鉛直方向下向き(すなわち、重力が働く方向)が「下方向」/「底面側」に相当し、その逆向きが「上方向」/「頂面側」に相当すると捉えることができる。
【0015】
また、本明細書において、基板、膜または層等の「上に」とは、その基板、膜または層の上面に接触する場合だけでなく、その基板、膜または層の上面に接触しない場合も含む。すなわち、基板、膜または層の「上に」とは、その基板、膜または層の上方に新たな膜または層が形成される場合、および/またはその基板、膜または層との間に他の膜または層が介在している場合等を含む。また、「上に」とは、必ずしも鉛直方向における上側を意味するものではない。「上に」とは、基板、膜または層などの相対的な位置関係を示しているに過ぎない。
【0016】
[二次電池の基本構成]
本明細書でいう「二次電池」は、充電および放電の繰り返しが可能な電池のことを指している。従って、本発明に係る二次電池は、その名称に過度に拘泥されるものでなく、例えば蓄電デバイスなども対象に含まれ得る。
【0017】
本発明でいう「固体電池」は、広義にはその構成要素が固体から成る電池を指し、狭義にはその構成要素(特に好ましくは全ての構成要素)が固体から成る全固体電池を指している。ある好適な態様では、本発明における固体電池は、電池構成単位を成す各層が互いに積層するように構成された積層型固体電池であり、好ましくはそのような各層が焼成体から成っている。「固体電池」は、充電および放電の繰り返しが可能な、いわゆる「二次電池」のみならず、放電のみが可能な「一次電池」をも包含する。本発明のある好適な態様に従うと、「固体電池」は二次電池である。「二次電池」は、その名称に過度に拘泥されるものではなく、例えば、蓄電デバイスなども包含し得る。なお、本発明において、パッケージに含まれる固体電池は、「固体電池素子」と称すこともできる。
【0018】
以下では、まず、本発明の固体電池の基本的構成について説明する。ここで説明される固体電池の構成は、あくまでも発明の理解のための例示にすぎず、発明を限定するものではない。
【0019】
[固体電池の基本的構成]
固体電池は、正極・負極の電極層と固体電解質とを少なくとも有する。具体的には、図1に示すように、固体電池100は、正極層110、負極層120、およびそれらの間に少なくとも介在する固体電解質130から成る電池構成単位を含んだ固体電池積層体を含む。
【0020】
固体電池は、それを構成する各層が焼成によって形成されていてもよく、正極層、負極層および固体電解質などが焼成層を成していてもよい。好ましくは、正極層、負極層および固体電解質は、それぞれが互いに一体焼成されており、それゆえ固体電池積層体が一体焼成体を成していることが好ましい。
【0021】
正極層は、少なくとも正極活物質を含む電極層である。正極層は、更に固体電解質を含んでいてよい。ある好適な態様では、正極層は、正極活物質粒子と固体電解質粒子とを少なくとも含む焼成体から構成されている。一方、負極層は、少なくとも負極活物質を含む電極層である。負極層は、更に固体電解質を含んでいてよい。ある好適な態様では、負極層は、負極活物質粒子と固体電解質粒子とを少なくとも含む焼結体から構成されている。
【0022】
正極活物質および負極活物質は、固体電池において電子の受け渡しに関与する物質である。固体電解質を介してイオンが正極層と負極層との間で移動(伝導)し、電子の受け渡しが行われることで充放電がなされる。正極層および負極層の各電極層は特にリチウムイオンまたはナトリウムイオンを吸蔵放出可能な層であることが好ましい。つまり、固体電池は、固体電解質を介してリチウムイオンまたはナトリウムイオンが正極層と負極層との間で移動して電池の充放電が行われる全固体型二次電池であることが好ましい。
【0023】
(正極活物質)
正極層に含まれる正極活物質としては、例えば、ナシコン型構造を有するリチウム含有リン酸化合物、オリビン型構造を有するリチウム含有リン酸化合物、リチウム含有層状酸化物、および、スピネル型構造を有するリチウム含有酸化物等から成る群から選択される少なくとも一種が挙げられる。ナシコン型構造を有するリチウム含有リン酸化合物の一例としては、Li(PO等が挙げられる。オリビン型構造を有するリチウム含有リン酸化合物の一例としては、LiFe(PO、LiFePO、および/またはLiMnPO等が挙げられる。リチウム含有層状酸化物の一例としては、LiCoO、および/またはLiCo1/3Ni1/3Mn1/3等が挙げられる。スピネル型構造を有するリチウム含有酸化物の一例としては、LiMn、および/またはLiNi0.5Mn1.5等が挙げられる。リチウム化合物の種類は、特に限定されないが、例えば、リチウム遷移金属複合酸化物およびリチウム遷移金属リン酸化合物としてよい。リチウム遷移金属複合酸化物は、リチウムと1種類または2種類以上の遷移金属元素とを構成元素として含む酸化物の総称であると共に、リチウム遷移金属リン酸化合物は、リチウムと1種類または2種類以上の遷移金属元素とを構成元素として含むリン酸化合物の総称である。遷移金属元素の種類は、特に限定されないが、例えば、コバルト(Co)、ニッケル(Ni)、マンガン(Mn)および鉄(Fe)などである。
【0024】
また、ナトリウムイオンを吸蔵放出可能な正極活物質としては、ナシコン型構造を有するナトリウム含有リン酸化合物、オリビン型構造を有するナトリウム含有リン酸化合物、ナトリウム含有層状酸化物、および、スピネル型構造を有するナトリウム含有酸化物等から成る群から選択される少なくとも1種が挙げられる。例えば、ナトリウム含有リン酸化合物の場合、Na(PO、NaCoFe(PO、NaNiFe(PO、NaFe(PO、NaFeP、NaFe(PO(P)、およびナトリウム含有層状酸化物としてNaFeOから成る群から選択される少なくとも一種が挙げられる。
【0025】
この他、正極活物質は、例えば、酸化物、二硫化物、カルコゲン化物または導電性高分子等でもよい。酸化物は、例えば、酸化チタン、酸化バナジウムまたは二酸化マンガン等でもよい。二硫化物は、例えば、二硫化チタンまたは硫化モリブデン等である。カルコゲン化物は、例えば、セレン化ニオブ等でもよい。導電性高分子は、例えば、ジスルフィド、ポリピロール、ポリアニリン、ポリチオフェン、ポリパラスチレン、ポリアセチレンまたはポリアセン等でもよい。
【0026】
(負極活物質)
負極層に含まれる負極活物質としては、例えば、チタン(Ti)、ケイ素(Si)、スズ(Sn)、クロム(Cr)、鉄(Fe)、ニオブ(Nb)およびモリブデン(Mo)から成る群より選ばれる少なくとも一種の元素を含む酸化物、黒鉛などの炭素材料、黒鉛-リチウム化合物、リチウム合金、ナシコン型構造を有するリチウム含有リン酸化合物、オリビン型構造を有するリチウム含有リン酸化合物、ならびに、スピネル型構造を有するリチウム含有酸化物等から成る群から選択される少なくとも一種が挙げられる。リチウム合金の一例としては、Li-Al等が挙げられる。ナシコン型構造を有するリチウム含有リン酸化合物の一例としては、Li(PO、および/またはLiTi(PO等が挙げられる。オリビン型構造を有するリチウム含有リン酸化合物の一例としては、LiFe(PO、および/またはLiCuPO等が挙げられる。スピネル型構造を有するリチウム含有酸化物の一例としては、LiTi12等が挙げられる。
【0027】
また、ナトリウムイオンを吸蔵放出可能な負極活物質としては、ナシコン型構造を有するナトリウム含有リン酸化合物、オリビン型構造を有するナトリウム含有リン酸化合物、および、スピネル型構造を有するナトリウム含有酸化物等から成る群から選択される少なくとも1種が挙げられる。
【0028】
なお、固体電池において、正極層と負極層とが同一材料から成っていてもよい。
【0029】
正極層および/または負極層は、導電性材料を含んでいてもよい。正極層および負極層に含まれる導電性材料として、銀、パラジウム、金、プラチナ、アルミニウム、銅およびニッケル等の金属材料、ならびに炭素などから成る少なくとも1種を挙げることができる。
【0030】
さらに、正極層および/または負極層は、焼結助剤を含んでいてもよい。焼結助剤としては、リチウム酸化物、ナトリウム酸化物、カリウム酸化物、酸化ホウ素、酸化ケイ素、酸化ビスマスおよび酸化リンから成る群から選択される少なくとも1種を挙げることができる。
【0031】
正極層および負極層の厚みは特に限定されないが、例えば、それぞれ独立して2μm以上50μm以下、特に5μm以上30μm以下であってよい。
【0032】
(正極集電層/負極集電層)
電極層の必須要素ではないものの、正極層および負極層は、それぞれ正極集電層および負極集電層を備えていてもよい。正極集電層および負極集電層はそれぞれ箔の形態を有していてもよい。しかしながら、一体焼成による電子伝導性向上、固体電池の製造コスト低減および/または固体電池の内部抵抗低減などの観点をより重視するならば、正極集電層および負極集電層はそれぞれ焼成体の形態を有していてもよい。正極集電層を構成する正極集電体および負極集電体を構成する負極集電体としては、導電率が大きい材料を用いることが好ましく、例えば、銀、パラジウム、金、プラチナ、アルミニウム、銅、および/またはニッケルなどを用いてよい。正極集電体および負極集電体はそれぞれ、外部と電気的に接続するための電気接続部を有してよく、端面電極と電気的に接続可能に構成されていてよい。なお、正極集電層および負極集電層が焼成体の形態を有する場合、それらは導電性材料および焼結助剤を含む焼成体により構成されてもよい。正極集電層および負極集電層に含まれる導電性材料は、例えば、正極層および負極層に含まれ得る導電性材料と同様の材料から選択されてよい。正極集電層および負極集電層に含まれる焼結助剤は、例えば、正極層・負極層に含まれ得る焼結助剤と同様の材料から選択されてよい。上述したように、固体電池において、正極集電層および負極集電層が必須というわけではなく、そのような正極集電層および負極集電層が設けられていない固体電池も考えられる。つまり、本発明のパッケージに含まれる固体電池は、集電層レスの固体電池であってもよい。
【0033】
(固体電解質)
固体電解質は、リチウムイオンまたはナトリウムイオンが伝導可能な材質である。特に固体電池で電池構成単位を成す固体電解質は、正極層と負極層との間においてリチウムイオンが伝導可能な層を成していてよい。なお、固体電解質は、正極層と負極層との間に少なくとも設けられていればよい。つまり、固体電解質は、正極層と負極層との間からはみ出すように当該正極層および/または負極層の周囲において存在していてもよい。具体的な固体電解質としては、例えば、結晶性固体電解質、ガラス系固体電解質およびガラスセラミックス系固体電解質等のうちのいずれか1種類または2種類以上を含んでいる。
【0034】
結晶性固体電解質は、例えば酸化物系結晶材および硫化物系結晶材などである。酸化物系結晶材は、例えば、ナシコン構造を有するリチウム含有リン酸化合物、ペロブスカイト構造を有する酸化物、ガーネット型またはガーネット型類似構造を有する酸化物、酸化物ガラスセラミックス系リチウムイオン伝導体等が挙げられる。
【0035】
ナシコン構造を有するリチウム含有リン酸化合物としては、Li(PO(1≦x≦2、1≦y≦2、Mは、チタン(Ti)、ゲルマニウム(Ge)、アルミニウム(Al)、ガリウム(Ga)およびジルコニウム(Zr)から成る群より選ばれた少なくとも一種)が挙げられる。ナシコン構造を有するリチウム含有リン酸化合物の一例としては、例えば、Li1.2Al0.2Ti1.8(PO等が挙げられる。ペロブスカイト構造を有する酸化物の一例としては、La0.55Li0.35TiO等が挙げられる。ガーネット型またはガーネット型類似構造を有する酸化物の一例としては、LiLaZr12等が挙げられる。また、硫化物系結晶材は、thio-LISICONが挙げられ、例えばLi3.25Ge0.250.75およびLi10GeP12などである。結晶性固体電解質は、高分子材(例えば、ポリエチレンオキシド(PEO)など)を含んでいてもよい。
【0036】
ガラス系固体電解質は、例えば、酸化物系ガラス材および硫化物系ガラス材などがある。酸化物系ガラス材は、例えば、50LiSiO・50LiBOなどがある。また、硫化物系ガラス材は、例えば、30LiS・26B・44LiI、63LiS・36SiS・1LiPO、57LiS・38SiS・5LiSiO、70LiS・30Pおよび50LiS・50GeSなどがある。
【0037】
ガラスセラミックス系固体電解質は、例えば、酸化物系ガラスセラミックス材および硫化物系ガラスセラミックス材などである。酸化物系ガラスセラミックス材としては、例えば、リチウム、アルミニウムおよびチタンを構成元素に含むリン酸化合物(LATP)、リチウム、アルミニウムおよびゲルマニウムを構成元素に含むリン酸化合物(LAGP)を用いることができる。LATPは、例えばLi1.07Al0.69Ti1.46(POなどである。また、LAGPは、例えばLi1.5Al0.5Ge1.5(PO)などである。また、硫化物系ガラスセラミックス材としては、例えば、Li11およびLi3.250.95などがある。
【0038】
また、ナトリウムイオンが伝導可能な固体電解質としては、例えば、ナシコン構造を有するナトリウム含有リン酸化合物、ペロブスカイト構造を有する酸化物、ガーネット型またはガーネット型類似構造を有する酸化物等が挙げられる。ナシコン構造を有するナトリウム含有リン酸化合物としては、Na(PO(1≦x≦2、1≦y≦2、Mは、Ti、Ge、Al、GaおよびZrから成る群より選ばれた少なくとも一種)が挙げられる。
【0039】
固体電解質は、焼結助剤を含んでいてもよい。固体電解質に含まれる焼結助剤は、例えば、正極層・負極層に含まれ得る焼結助剤と同様の材料から選択されてよい。
【0040】
固体電解質の厚みは特に限定されない。正極層と負極層との間に位置する固体電解質層の厚みは、例えば1μm以上15μm以下、特に1μm以上5μm以下であってよい。
【0041】
(端面電極)
固体電池100には、一般に端面電極140が設けられている。特に、固体電池100の側面に端面電極が設けられている。より具体的には、正極層110と接続された正極側の端面電極140Aと、負極層120と接続された負極側の端面電極140Bとが設けられている(図1参照)。そのような端面電極は、導電率が大きい材料を含んでいることが好ましい。端面電極の具体的な材質としては、特に制限されるわけではないが、銀、金、プラチナ、アルミニウム、銅、スズおよびニッケルから成る群から選択される少なくとも一種を挙げることができる。
【0042】
[固体電池パッケージの基本構成]
本発明は、固体電池がパッケージ化されたものである。つまり、実装可能な基板を備え、外部環境から固体電池が保護された構成を有する固体電池パッケージである。
【0043】
図2は、本発明の一実施形態に係る固体電池パッケージを模式的に示した斜視図である。また、図3は、本発明の一実施形態に係る固体電池パッケージの構成を模式的に示した断面図である。図3に示すように、本発明の一実施形態に係る固体電池パッケージ1000は、固体電池100が支持されるように基板200を備えている。具体的には、固体電池パッケージ1000は、実装可能な基板200と、基板200に設けられかつ外部環境から保護された固体電池100とを含む。
【0044】
図3に示すように、基板200は、例えば固体電池よりも大きい主面を有している。基板200は、樹脂基板であってよく、あるいは、セラミック基板であってもよい。端的にいえば、基板200は、プリント配線基板、フレキシブル基板、LTCC基板、またはHTCC基板などの範疇に入るものであってもよい。基板200が樹脂基板である場合、基板200は母材として樹脂を含むように構成された基板、例えば基板の積層構造に樹脂層が含まれたものであり得る。そのような樹脂層の樹脂材料は、いずれの熱可塑性樹脂、および/または、いずれの熱硬化性樹脂であってもよい。また、樹脂層は、例えば、ガラス繊維布にエポキシ樹脂などの樹脂材料を含浸して構成されたものであってよい。
【0045】
基板は、好ましくは、パッケージ化された固体電池の外部端子のための部材となっている。つまり、基板が固体電池の外部端子のための端子基板となっているともいえる。このような基板を備えた固体電池パッケージは、基板が介在するような形態で固体電池をプリント配線板などの別の二次基板上に実装できる。例えば、半田リフローなどを通じて、基板を介して固体電池を表面実装できる。このようなことから、本発明の固体電池パッケージは、好ましくは、SMD(SMD:Surface Mount Device)タイプの電池パッケージとなっている。
【0046】
かかる基板は、固体電池を支持するように設けられ得るところ、支持基板と解することもできる。また、基板は、端子基板ゆえ、配線または電極層などを有していることが好ましく、特に、上下表面または上下表層を電気的に結線する電極層を備えていることが好ましい。つまり、図3に示すように、基板は、固体電池に対向する第1主面と、第1主面の反対側に位置する第2主面とを備え、電極層は、第1主面と第2主面とを電気的に結線していてよい。ある好適な態様の基板は、当該基板の第1主面および第2主面を電気的に結線する配線または電極層を備え、パッケージ化された固体電池の外部端子のための端子基板となっている。かかる態様では、固体電池からの外部端子への取り出しに基板の配線を使用できるので、後述する外装部でパッキングしながら該外装部の外部に取り出す必要がなく、外部端子の設計自由度が高くなっている。
【0047】
ある好適な態様に係る基板200は、当該基板の上下主面を電気的に結線する電極層(上側の主面電極層210、下側の主面電極層220)を備え、パッケージ化された固体電池の外部端子のための部材となっている(図3参照)。このような基板を備えた固体電池パッケージでは、基板の電極層と固体電池の端子部分とが互いに接続されている。好ましくは、基板の電極層と固体電池の端面電極とが互いに電気的に接続されている。例えば、固体電池の正極側の端面電極140Aは、基板の正極側の電極層(210A、220A)と電気的に接続されている。一方、固体電池の負極側の端面電極140Bは、基板の負極側の電極層(210B、220B)と電気的に接続されている。これによって、基板の正極側および負極側の電極層(特に、パッケージ品の下側・底側に位置する電極層、またはそれに接続されたランド)が、それぞれ、固体電池パッケージの正極端子および負極端子として供されることになる。
【0048】
上記の固体電池100と基板200の基板電極層210との電気接続を可能とするために、固体電池100の端面電極140と基板200の基板電極層210とを接合部材600を介して接続することができる。この接合部材600は、固体電池100の端面電極140と基板200との電気的接続を少なくとも担うものであり、例えば導電性接着剤を含むものであり得る。一例としては、接合部材600は、Agなどの金属フィラーを含有したエポキシ系導電性接着剤から構成されていてよい。
【0049】
更に、本発明の一実施形態では、基板200のみならず固体電池パッケージ1000自体が、全体として水蒸気の透過を防止できるように構成され得る。例えば、本発明の一実施形態に係る固体電池パッケージ1000は、基板200上に設けられた固体電池100が全体的に包囲されるように外装部150で覆うことができる。具体的には、基板200上の固体電池100の主面100Aおよび側面100Bが外装部150で包囲されるようにパッケージ化され得る。かかる構成によれば、固体電池100を成す全ての面は外部に露出することがないため、好適に水蒸気の透過(すなわち、固体電池への水蒸気の浸入)防止を図ることができる。
【0050】
なお、本明細書でいう「水蒸気」は、特に気体状態の水に限定されず、液体状態の水なども包含している。つまり、物理的な状態を問わず、気体状態の水、液体状態の水などを広く包含するものとして「水蒸気」といった用語を用いている。よって、「水蒸気」は、水分などとも称すことができ、特に液体状態の水には、気体状態の水が凝縮した結露水なども包含され得る。固体電池への水蒸気の浸入は電池特性の劣化の要因となることから、上述のようにパッケージ化された固体電池の形態は、固体電池の電池特性の長寿命化に資する。
【0051】
例えば、図3に示すように、外装部150は、被覆絶縁層160および被覆無機層170から構成され得る。固体電池100は、外装部150として被覆絶縁層160および被覆無機層170で覆われた形態を有し得る。被覆無機層170は、被覆絶縁層160を覆うように設けられている。被覆無機層170は、被覆絶縁層160上に位置付けられるので、被覆絶縁層160とともに、基板200上の固体電池100を全体として大きく包み込む形態を有している。さらに、被覆無機層170は、基板200の側面250も覆う形態を採ることができる。被覆絶縁層は、被覆無機層と相俟って好適な水蒸気バリアを成すとともに、被覆無機層も被覆絶縁層と相俟って好適な水蒸気バリアを成すように形成されている。なお、被覆絶縁層が基板の側面上にまで及んでいてもよい。換言すれば、固体電池100の頂面領域および側面領域を覆う被覆絶縁層が基板の側面をも覆い、かかる被覆絶縁層上に被覆無機層が設けられていてよい(図9及び図11参照)。
【0052】
被覆絶縁層の材質は、絶縁性を呈するものであればいずれの種類であってもよい。例えば、被覆絶縁層は樹脂を含んでいてよく、その樹脂は熱硬化性樹脂または熱可塑性樹脂のいずれであってもよい。被覆絶縁層には、無機フィラーが含まれていてよい。あくまでも1つの例示に過ぎないが、被覆絶縁層は、SiC等の無機フィラーを含有したエポキシ系の樹脂から構成されていてよい。
【0053】
被覆無機層の材質は特に制限されず、金属、ガラス、酸化物セラミックスまたはそれらの混合物であってよい。被覆無機層は、薄膜形態を有する無機層に相当するものであってよく、例えば金属膜である。あくまでも例示に過ぎないが、被覆無機層は、めっき形成された2μm以上50μm以下のCu系および/またはNi系の材料から構成されていてよい。
【0054】
[本発明の固体電池パッケージの特徴]
本願発明者は、上述の固体電池パッケージ1000が晒され得る外部からの機械的ストレスに対する耐性を向上させるための解決策について鋭意検討し、その結果、以下の技術的思想を有する本発明を案出するに至った。
【0055】
本開示は、「固体電池を覆う外装部が湾曲した面を含む構造とする」という技術的思想を有する。より詳細には、本開示は、「外装部の端縁屈曲部が、外側に向かって湾曲した曲面を含む構造とする」という技術的思想を有する。
【0056】
ここで、本明細書における「端縁屈曲部」は、固体電池パッケージの各面領域における端縁部にて、角度を成して折れ曲がっている部分を意味し、「端縁角部」または「端縁折曲部」とも称され得る。具体的には、「端縁屈曲部」は、コーナー部151a、151bおよび/または稜線部152を包含する(図1参照)。なお、「コーナー部」とは、相互に異なる方向に延在し、隣接する3つ以上の面領域が交わる部分のことを指す。「稜線部」とは、相互に異なる方向に延在し、隣接する2つの面領域が交わる境界部分を指し、「稜角部」とも称され得る(図1参照)。
【0057】
上記技術的思想を実現するため、本開示は下記の技術的特徴を有する。図1および図3に示されるように、固体電池100を覆うように設けられた外装部150は、複数の面領域、および複数のコーナー部を備える。本発明の一実施形態において、外装部150は、曲面を含む丸みを帯びた外形を有するコーナー部151を含み得る。具体的には、外装部150の複数のコーナー部151のうち、少なくとも、固体電池パッケージの頂面領域1000A側に位置する頂面側コーナー部151aが、外側に湾曲した外側湾曲面180を有する。
【0058】
本明細書でいう「頂面領域1000A」とは、固体電池パッケージ1000を構成する面領域のうちで、相対的に基板200に遠位して位置する主面領域を意味している。すなわち、対向する主面領域が2つ存在するような典型的な固体電池パッケージを想定すると、本明細書でいう「頂面領域1000A」は、かかる主面領域の一方を指しており、特に基板に対向して位置する主面領域(すなわち、SMDタイプにおける実装面側の主面領域であり、「底面領域」または「下面領域」とも称され得る)とは反対側の主面領域を意味している。かかる「頂面領域1000A」は、例えば「天面領域」または「上面領域」とも称すことができる。
【0059】
つまり、本開示の外装部150は、少なくとも、基板200に対して遠位側に位置する頂面側コーナー部151aに外側湾曲面180を含み得る(図3参照)。ここで、本明細書における「外側湾曲面」とは、固体電池パッケージ1000の外側に凸となるように湾曲した面を意味する。つまり、外装部150の頂面側コーナー部151aには、固体電池パッケージ1000の外側に凸となるように湾曲し、丸みを帯びた面が形成されていてよい。例えば、外側湾曲面180は、外装部150の頂面側コーナー部151aを円弧状に面取りしたR面取り形状であってもよい。
【0060】
例えば、図3に示す断面視にて、外側湾曲面180を備える頂面側コーナー部151aは、外側に湾曲した略円弧状(すなわち、凸円弧状)の曲線を含んでいてよい。ここで、本明細書でいう「略円弧状」とは、必ずしも真円の一部でなくてよく、楕円の一部、およびそれらに近似できる曲線等の滑らかに湾曲する種々の曲線に沿う形状をも包含する。つまり、「略円弧状の曲線」とは、巨視的に見て円弧状である曲線を意味し、微視的に直線または屈曲線等を含んでいてもよい。したがって、断面視にて略円弧状の曲線を含む外側湾曲面は、必ずしも平滑な曲面である必要はなく、不規則な凹凸またはうねり等を含む面であってよい。
【0061】
固体電池パッケージが実装される底面領域1000Bとは反対側の頂面領域1000Aに位置する頂面側コーナー部151aは、基板への実装後においても外部からの物理的接触等による機械的ストレスを受けやすい(図1参照)。かかる構成によると、固体電池パッケージが外部からの機械的ストレスに晒された場合においても、意図しない外力が頂面側コーナー部151aに集中することを好適に回避し、頂面側コーナー部151aが外装部150の破壊開始部分となることを抑制することができる。具体的には、外装部150が外側湾曲面を含むことで、頂面側コーナー部151aにかけられた外力は、局所的に集中することなく湾曲面の全体に拡散され得るため、外部からの機械的ストレスに起因する外装部の損傷および破損をより好適に抑制可能となる。したがって、本開示によれば、外側湾曲面を含む頂面側コーナー部によって、外部からの機械的ストレスが外装部の端縁屈曲部に集中することが抑制され、機械的ストレスへの耐性がより向上した固体電池パッケージが供され得る。
【0062】
前述したように、外装部は、固体電池への水蒸気の浸入防止に資する。本開示の構造によれば、固体電池パッケージの輸送時、実装時または使用時における振動または物理的接触等の機械的ストレスに起因する外装部の破損が好適に抑制されるため、結果として固体電池パッケージの水蒸気浸入防止機能の信頼性が向上し得る。さらに、本開示の構造は、外装部の厚みを増加させることなく、外部からの機械的ストレスへの耐性を向上できるため、固体電池パッケージの小型化にも好適に寄与し得る。
【0063】
一実施形態において、外装部150は、稜線部152においても丸みを帯びた外形を有していてよい(図2参照)。特に、外装部150は、頂面領域1000A側に位置する頂面側稜線部152aが丸みを帯びるように外側に湾曲した面を含んでいてよい。具体的には、外装部150が複数の頂面側コーナー部151aを備え、複数の頂面側コーナー部151aのうち、互いに隣接する頂面側コーナー部同士を接続する頂面側稜線部152aが外側湾曲面を含んでいてよい。これは、隣接する第1頂面側コーナー部と第2頂面側コーナー部とをつなぐ稜線部152aが外側湾曲面を含むことを意味する。
【0064】
かかる頂面側稜線部152aは、相互に異なる方向に延在し、隣接する第1の面領域と第2の面領域との境界部分に相当するところ、頂面側稜線部152aの外側湾曲面は、第1の面領域から第2の面領域に延在する面であると解することもできる。例えば、図2に示すように、外装部150が、固体電池パッケージの頂面領域1000A、および頂面領域1000Aと隣接する側面領域1000Cに備えられている態様において、頂面側稜線部152aの外側湾曲面は、頂面領域1000Aから側面領域1000Cに延在するように形成されていてよい。
【0065】
かかる構成において、外装部150は、固体電池パッケージの頂面領域1000A側に位置する全ての端縁屈曲部が丸みを帯びるように外側湾曲面を含んでいてよい。つまり、外装部150は、基板200に遠位して位置する頂面側コーナー部151a、および頂面側稜線部152aの各々が外側湾曲面を含む構造を有していてよい。かかる構成によると、頂面領域側に位置する端縁屈曲部にかかる外部からの機械的ストレスが、外側湾曲面によって好適に分散され得る。したがって、外部からの機械的ストレスが端縁屈曲部に集中することがより抑制され、機械的ストレスへの耐性が向上するため、外装部における欠け等の破損の発生が好適に防止され得る。
【0066】
図7~11は、本発明の種々の実施形態に係る固体電池パッケージを模式的に示した断面図である。また、図8は、図7に示すB部分を模式的に示した拡大断面図である。図示されるように、外装部150は、基板200の第1主面200Aと第2主面200Bとをつなぐ側面200Cを覆うように延在していてよい。基板のコーナー部200b上に位置する外装部150のコーナー部151bは、丸みを帯びるように湾曲した外形を有していてよい。かかるコーナー部151bは、固体電池パッケージの頂面領域1000Aと反対側に位置する底面領域1000B側に位置しているところ、底面側コーナー部151bと称すことができる。したがって、図7に示すように、外装部150は、固体電池パッケージの底面領域1000Bと複数の側面領域1000Cとが交わる底面側コーナー部151bが外側湾曲面を含む構造を備えていてよい。底面側コーナー部151bは、特に、顧客による固体電池パッケージの実装工程において、プリント配線板などの別の二次基板との接触および衝突等により、機械的ストレスに晒されやすい。かかる構造によれば、外部からの機械的ストレスがコーナー部に集中することがより抑制可能となり、外装部および外装部の内側に存在する基板の破損が好適に防止され得る。
【0067】
本開示の一実施形態において、外装部150は、固体電池パッケージの底面領域1000B側に位置する底面側稜線部152bにおいても、丸みを帯びた外形を備えていてよい(図2参照)。具体的には、互いに隣接する底面側コーナー部同士を接続する底面側稜線部152bが、外側湾曲面を含んでいてよい。つまり、複数の底面側コーナー部151bのうち、隣接する第1底面側コーナー部と第2底面側コーナー部とをつなぐ底面側稜線部152bが外側湾曲面を含み得る。かかる構成によれば、特に、固体電池パッケージの実装工程に際して加えられ得る、固体電池パッケージの底面領域側に対する外部からの機械的ストレスが稜線部に集中することを抑制可能となり得る。したがって、本開示により、外部からの機械的ストレスへの耐性がより向上した固体電池パッケージが供され得る。
【0068】
また、本発明の別の実施形態において、固体電池パッケージ1000の底面領域1000Bと頂面領域1000Aとをつなぐ側面領域1000C側に位置する外装部150の側面側稜線部152cも、丸みを帯びた外形を有し得る(図2及び図3参照)。具体的には、外装部150の頂面側コーナー部151aと底面側コーナー部151bとをつなぐ側面側稜線部152cが、外側湾曲面を含んでいてよい。これは、互いに隣接する外装部150の2つの側面領域1000Bの境界部分である側面側稜線部152cにおいて、一方の側面領域から他方の側面領域に外側湾曲面が延在していることを意味する。かかる構成により、固体電池パッケージの側面領域側に対する外部からの機械的ストレスについても、稜線部へ集中することを抑制可能な固体電池パッケージが供され得る。
【0069】
図3に示されるように、本開示において、外装部150は、固体電池100の側面100Cに設けられた端面電極140を覆うように設けられている。換言すれば、端面電極140は、外部に露出することなく、外装部150によって被覆されている。そのため、本開示の外装部150は、外部環境からの機械的ストレスに対して端面電極140を好適に保護することで、端面電極140側から固体電池100への水蒸気の浸入防止にも寄与している。つまり、かかる構造によれば、端面電極140が外部に露出している場合と比較して、端面電極140がより好適に保護される。さらに、固体電池100の水蒸気浸入防止性も向上し得るため、より信頼性の高い固体電池パッケージが供され得る。さらに、本開示の固体電池パッケージでは、上述のように、外装部150は、端面電極140を覆う側面側稜線部152c(図2参照)においても外側湾曲面を含む。そのため、端面電極140に対する外部からの機械的ストレスの影響がより緩和され、機械的ストレスへの耐性により優れた固体電池パッケージが供され得る。
【0070】
さらに、本開示の固体電池100は、図3に示されるように、断面視にて矩形状であってよい。つまり、上述の外側湾曲面を含む外装部150に被覆される固体電池100は、矩形の断面視形状を有していてよい。より詳細には、本開示の固体電池パッケージ1000において、固体電池100の端縁屈曲部は、略90度に折れ曲がるように角張っていてよく、かかる固体電池100を被覆する外装部150が、端縁屈曲部にて外側湾曲面を含む丸みを帯びた形状を有していてよい。外装部150が上述のように丸みを帯びた形状を有することにより、角張った形状を有する固体電池100は、外部からの機械的ストレスに対して好適に保護され得る。つまり、本開示によれば、固体電池100の形状が機械的ストレスによる影響を比較的受けやすい角張った形状である場合においても、丸みを帯びた外装部で被覆することで、外部からの機械的ストレスへの耐性を向上させることが可能となる。また、固体電池100自体が丸みを帯びるように面取りされた形状を有する場合と比較して、断面視形状が矩形状(すなわち、面取りされていない形状)である本開示の固体電池100は、より大きい電池体積を有するため、より高容量であり得る。したがって、本開示によれば、外部からの機械的ストレスに対してより向上した耐性を有する、高容量の固体電池パッケージが供され得る。
【0071】
図4は、図3に示す固体電池パッケージにおいて、外側湾曲面を含むA部分を模式的に示す拡大断面図である。前述したように、外装部150は、基板上の固体電池100を覆う被覆絶縁層160と、当該被覆絶縁層160上に設けられた被覆無機層170とを備える。外側湾曲面180を含む外装部150の端縁屈曲部において、少なくとも固体電池パッケージの最外層を形成する被覆無機層170が丸みを帯びていてよい。すなわち、外装部150の端縁屈曲部の外側湾曲面180は、外装部150の最外層である被覆無機層170の湾曲面に相当するところ、湾曲無機面170aと称すこともできる。
【0072】
換言すれば、湾曲無機面170aは、外装部150の最外層である被覆無機層170の外表面であってよい。つまり、湾曲無機面170aは、固体電池パッケージの外輪郭を画定する被覆無機層170の外表面の一部であってよい。少なくとも外装部150の最外に位置する被覆無機層170が外側に湾曲した湾曲無機面170aを含むことで、外部から受けた機械的ストレスの影響が緩和され得る。したがって、端縁屈曲部における外部からの機械的ストレスの集中がより好適に抑制され得る。結果として、本開示の固体電池パッケージは、外部からの機械的ストレスに対する外装部の耐性を全体として向上させることに寄与し得る。
【0073】
図4に示されるように、断面視にて、被覆絶縁層160は、外側湾曲面を有する外装部150の端縁屈曲部において外側に湾曲した湾曲絶縁面160aを含み得る。つまり、湾曲無機面170aの内側に位置する被覆絶縁層160もまた、外側に湾曲していてよい。換言すれば、湾曲無機面170aは、湾曲絶縁面160a上に設けられていてよい。これは、外側湾曲面170aを含む外装部150の端縁屈曲部において、外装部150を構成する被覆絶縁層160および被覆無機層170の双方が、それぞれ外側に凸となるように湾曲した面を含むことを意味する。
【0074】
かかる実施形態において、被覆無機層170は、断面視にて帯状に湾曲し得、被覆絶縁層160は、かかる被覆無機層170の内側面の形状に沿って湾曲していてよい。換言すれば、被覆無機層170は、被覆絶縁層160の外側湾曲面に沿うように帯状に湾曲していてよい。また、図7及び図8に示すように、被覆無機層170のみが基板の側面を覆うように設けられている態様では、底面領域1000B側の湾曲無機面170bの内側に位置する基板200も外側に湾曲していてよい。具体的には、外装部150の内側に位置する基板200の稜線部及びコーナー部200bが丸みを帯びるように、外側に湾曲していてよい。かかる実施形態において、基板は、外側に湾曲する被覆無機層170の内側面の形状に沿って湾曲していてよい。つまり、断面視にて、被覆無機層170は、基板200の湾曲面に沿うように帯状に湾曲していてよい。これは、被覆無機層170に含まれる湾曲無機面170bが、基板200の湾曲面の形状に追随するように湾曲した形状を有すると解することもできる。
【0075】
かかる構成によれば、最外層だけでなく、より内側に位置する被覆絶縁層160および/または基板200も湾曲面を含むことで、外部からの機械的ストレスが被覆絶縁層160および/または基板200の端縁屈曲部に集中することをも抑制可能となり得る。外装部150を構成する被覆無機層170並びに被覆絶縁層160および/または基板200の双方に設けられた湾曲面により、外部から被覆無機層170に付加された機械的ストレスがより効果的に拡散され得る。そのため、端縁屈曲部への機械的ストレスの集中が好適に抑制され、外部からの機械的ストレスに対する耐性がより向上した固体電池パッケージが供され得る。
【0076】
また、上述の構成によれば、充放電における固体電池の膨張収縮に起因する外装部の破損も抑制され得る。具体的には、膨張収縮に起因して、固体電池側から外装部へと応力が作用し得る。外装部の端縁屈曲部は応力が集中しやすく、また強度も他部分と比較して劣るため、かかる膨張収縮に起因する応力による影響を受けやすい。被覆絶縁層が被覆無機層と共に外側に湾曲した形状を有することで、上述の固体電池から外装部の端縁屈曲部に作用する応力を緩和可能となり得る。
【0077】
また、一実施形態において、被覆無機層170は、基板の側面200C上から、更に固体電池パッケージの底面領域1000B側に位置する基板の第2主面200Bにまで及んでいてよい(図10参照)。つまり、被覆無機層170は、基板の側面200Cを越えて基板の第2主面200Bにまで及んでいてよい。かかる構成において、固体電池パッケージの底面領域1000B側に位置する湾曲無機面170bは、基板の第2主面200B側に位置する端縁屈曲部を覆うように、基板の第2主面200Bにまで回り込んでいてよい。換言すれば、基板の第2主面200B側に位置するコーナー部200bおよび稜線部は、湾曲無機面170bによって被覆されていてよい。基板の端縁屈曲部を覆うように湾曲無機面が設けられることにより、固体電池パッケージの底面側から付加され得る機械的ストレスに対して、基板の端縁屈曲部をより効果的に保護することが可能となる。
【0078】
また、図9に示すように、被覆絶縁層160が基板の側面200C上にまで及んでいてもよい。このような形態の場合、基板の側面200Cを覆う被覆絶縁層160が、固体電池パッケージの底面領域1000B側に位置する端縁屈曲部において湾曲面を含み、かかる湾曲面上に湾曲無機面170bが設けられていてよい。さらに、図11に示すように、被覆無機層170は、被覆絶縁層170上から基板の第2主面200Bにまで延在していてよい。かかる構造により、基板200と外装部150との接合面積が相対的に増え、外装部150の剥離がより生じにくくなる。また、基板200と被覆絶縁層160との境界を被覆無機層170によって覆うことで、外部から固体電池100へと至るような水蒸気の浸入がより好適に防止されるとともに、基板の端縁屈曲部を保護することも可能となり得る。
【0079】
また、図5および図6に示すように、外装部150に含まれる被覆無機層170は、2つ以上の層から成る構造を有していてよい。つまり、被覆絶縁層160上に設けられる被覆無機層170は、2つ以上の無機層が積層された複合無機膜であってよい。
【0080】
一実施形態において、被覆無機層170は、乾式めっき膜171および湿式めっき膜172を備えていてよい。つまり、被覆絶縁層160上には、乾式めっき膜171および湿式めっき膜172から構成される複合無機膜が設けられていてよい。乾式めっき膜171は、例えばスパッタ膜であってよい。つまり、本発明の固体電池パッケージには、乾式めっき膜としてスパッタリング薄膜が設けられていてよい。スパッタ膜は、スパッタリングによって得られる薄膜である。つまり、ターゲットにイオンをスパッタリングしてその原子を叩き出し、堆積させた膜が乾式めっき膜として用いられ得る。
【0081】
スパッタ膜は、ナノオーダーないしはマイクロオーダーの非常に薄い形態を有しつつも、比較的緻密および/または均質な層となるため、固体電池への水蒸気透過防止に寄与し得る。また、スパッタ膜は、原子堆積により成膜されたものゆえ、ターゲット上により好適に付着し得る。そのため、スパッタ膜は、外部環境の水蒸気が固体電池へと浸入することを防ぐバリアとして、より好適に供され得る。そのため、被覆無機層が乾式めっき膜としてスパッタ膜をさらに有することで、固体電池への水蒸気の透過防止性をより向上させることが可能となる。なお、乾式めっき膜は、他の乾式めっきである真空蒸着法、またはイオンプレーティング法等によって形成されてもよい。ある好適な態様では、乾式めっき膜は、例えばAl(アルミニウム)、Cu(銅)、Ti(チタン)、およびステンレス鋼(SUS)から成る群から選択される少なくとも1種を含んでいてよい。
【0082】
湿式めっき膜172は、単層であってよく、または図6に示すように2層以上の複数層構造を有していてもよい。ある好適な態様では、被覆無機層170は、乾式めっき膜171と複数の湿式めっき膜172(172a~172c)を備え、被覆絶縁層160上にて、乾式めっき膜171および複数の湿式めっき膜172a~172cが積層していてよい。図6では、例示的に3層の湿式めっき膜を備える実施形態を図示しているものの、これに限定されず、例えば、2層、3層または4層の湿式めっき膜が形成されていてよい。つまり、被覆無機層170は、乾式めっき膜及び湿式めっき膜を含む3層以上の多層構造を有する複合無機膜であってよい。乾式めっき膜171上にこのような複数の湿式めっき膜172が設けられることで、被覆無機層170は、外部から固体電池へと至るような水蒸気の浸入を防止するバリアとしてより好適に機能し得る。
【0083】
あくまでも例示に過ぎないが、湿式めっき膜は、例えば、Cu(銅)、Ni(ニッケル)、Sn(スズ)、Pb(鉛)、Au(金)、Ag(銀)、Pd(パラジウム)、Bi(ビスマス)、Cr(クロム)およびZn(亜鉛)から成る群から選択される1種の金属または当該群の少なくとも1種の金属を含む合金のめっきを含んでいてよい。
【0084】
複数の湿式めっき膜172a~172cの各々は、互いに異なる種類の金属めっき膜であってよい。代替的には、2種の金属めっき膜が交互に形成されていてもよい。ある態様において、複合無機膜は、比較的高い延性を有するめっき膜と、耐食性を有するめっき膜とを含む。このように、互いに異なる性質を有するめっき膜を積層させることで、複合無機膜は、高延性を有するめっき膜によって応力緩和されるとともに、耐食性を有するめっき膜によって、外部環境の影響による複合無機膜の機械的劣化が抑制され得る。例えば、被覆無機層は、乾式めっき膜上において、主成分としてCuを含む、比較的延性の高い湿式めっき膜と、主成分としてNiを含む、比較的耐食性の高い湿式めっき膜とを任意の順で積層させた多層の膜であってよい。
【0085】
上述のように、被覆無機層170が2つ以上の無機膜を含む複合無機膜である場合、無機膜の各々が、外装部150の外側湾曲面において外側に湾曲していてよい。つまり、断面視にて、外側湾曲面において外側に湾曲した2つ以上の無機膜が積層されていてよい。かかる形態において、複合無機膜に含まれる無機膜の断面形状は、互いに相似関係を有していてよい。このように、固体電池パッケージが、端縁屈曲部において、外側に湾曲した2つ以上の無機膜を備えることで、各無機膜の湾曲面にて外部からの機械的ストレスが拡散される。そのため、外部からの機械的ストレスが端縁屈曲部に集中することをより効果的に回避可能となり、固体電池パッケージの機械的ストレスへの耐性がより向上し得る。
【0086】
外側湾曲面の曲率半径が大きいほど、端縁屈曲部における応力集中はより緩和され得る。一方で、曲率半径が大きくなると、端縁屈曲部における外装部の厚みが相対的に薄くなり、水蒸気バリアとしての機能が劣り得る。応力集中の緩和及び水蒸気バリア性の確保の双方を重視すると、断面視にて、外側湾曲面の曲率半径は、35μm以上250μm以下であることが好ましく、40μm以上200μm以下であることがより好ましく、50μm以上175μm以下であることがさらに好ましい。曲率半径を上記範囲内とすることで、外装部の端縁屈曲部における外部からの機械的ストレスの集中が好適に抑制された固体電池パッケージを得ることができる。
【0087】
本明細書における「曲率半径」とは、断面視にて、外装部150の最外表面における外側湾曲面に含まれる曲線の一部を円弧に近似した際の円の半径を意味する。つまり、「曲率半径」は、断面視にて、外側湾曲面の最外縁部(すなわち、最外輪郭)の形状における円弧としての半径を意味する。例えば、曲率半径は、図4に示す断面視にて、外側湾曲面の最外縁部に含まれる曲線において、湾曲の始点181および終点182と、当該始点および終点の中間に位置する曲げ中央点183の3点から、公知の数学的手法を用いて求めることができる。図4に示すように、外装部150が最外層に被覆無機膜170を備える場合、外側湾曲面の曲率半径は、外装部150の最外縁部を画定する湾曲無機面の曲率半径R1(図4参照)に相当する。
【0088】
本明細書の固体電池パッケージにおける構造は、イオンミリング装置(日立ハイテク社製 型番SU-8040)によって断面視方向断面を切り出し、マイクロスコープ(キーエンス社製 型番VHX-6000)を用いて取得した画像から観察するものであってよい。また、本明細書でいう曲率半径Rおよび厚み寸法等は、上述した方法により取得した画像から測定した寸法から算出した値を指すものであってもよい。
【0089】
コーナー部における外側湾曲面の曲率半径と、稜線部における外側湾曲面の曲率半径とは、互いに異なっていてよい。一実施形態において、コーナー部における外側湾曲面の曲率半径は、稜線部における外側湾曲面の曲率半径よりも大きい。かかる実施形態において、頂面側コーナー部151a及び底面側コーナー部151bに位置する湾曲無機面及び湾曲絶縁面の各々は、頂面側稜線部152a、底面側稜線部152b及び底面側稜線部152c(図1参照)における湾曲無機面及び湾曲絶縁面よりも大きい曲率半径を有し得る。
【0090】
コーナー部は、稜線部と比較して応力が集中しやすく、外部からの機械的ストレスに起因する破損が発生し易い。上述のように、コーナー部が稜線部より大きい曲率半径を有する外側湾曲面を備えることで、コーナー部における応力集中がより好適に緩和され、コーナー部における外装部の破損がより好適に抑制され得る。
【0091】
また、一実施形態において、外側湾曲面における被覆絶縁層160と被覆無機層170の各々の曲率半径R1およびR2は、同一であってよく、または互いに異なっていてもよい(図4参照)。例えば、被覆絶縁層の湾曲絶縁面160aと、その上に設けられた湾曲無機面170aとは、互いに異なる曲率半径を有していてよい。ある好適な態様において、湾曲無機面の曲率半径R1は、その内側に位置する湾曲絶縁面の曲率半径R2より大きくてよい。より外側に位置する湾曲無機面170aが大きい曲率半径を有するように適切に設定することで、被覆無機層170は、断面視にて一定の厚みを有していてよい。すなわち、断面視にて、被覆無機層170は、被覆絶縁層160上に一定厚みで設けられていてよい。これは、断面視にて、被覆無機層170が、端縁屈曲部において被覆絶縁層160上に一定幅の帯状に設けられていることを意味する。かかる構成により、端縁屈曲部において、被覆無機層170が部分的に薄くなる箇所が生じることを回避できる。そのため、外部からの機械的ストレスに起因する被覆無機層の破損の発生をより好適に抑制可能な固体電池パッケージが供され得る。
【0092】
断面視で、コーナー部における外側湾曲面の曲率半径(湾曲無機面の曲率半径Raに相当)は、120μm以上250μm以下であることが好ましく、130μm以上240μm以下であることがより好ましく、140μm以上230μm以下であることがさらに好ましい。コーナー部の曲率半径を上記範囲内とすることで、外部からの機械的ストレスの集中が好適に抑制された固体電池パッケージを得ることができる。
【0093】
また、断面視で、稜線部における外側湾曲面の曲率半径(湾曲無機面の曲率半径Raに相当)は、80μm以上200μm以下であることが好ましく、85μm以上180μm以下であることがより好ましく、90μm以上150μm以下であることがさらに好ましい。稜線部の曲率半径を上記範囲内とすることで、外部からの機械的ストレスの集中が好適に抑制された固体電池パッケージを得ることができる。
【0094】
さらに、断面視で、コーナー部において湾曲無機面の内側に位置する湾曲絶縁面の曲率半径R2は、45μm以上150μm以下であることが好ましく、50μm以上140μm以下であることがより好ましく、55μm以上130μm以下であることがさらに好ましい。コーナー部における湾曲絶縁面の曲率半径を上記範囲内とすることで、外部からの機械的ストレスの集中が好適に抑制された固体電池パッケージを得ることができる。
【0095】
また、断面視で、稜線部において湾曲無機面の内側に位置する湾曲絶縁面の曲率半径R2は、35μm以上120μm以下であることが好ましく、40μm以上100μm以下であることがより好ましく、45μm以上80μm以下であることがさらに好ましい。稜線部における湾曲絶縁面の曲率半径を上記範囲内とすることで、外部からの機械的ストレスの集中が好適に抑制された固体電池パッケージを得ることができる。
【0096】
一実施形態において、固体電池パッケージの頂面領域1000A側に位置する外装部150の端縁屈曲部は、底面領域1000B側に位置する端縁屈曲部と異なる曲率半径を有する外側湾曲面を含んでいてよい。例えば、頂面側コーナー部151aにおける外側湾曲面の曲率半径Raは、底面側コーナー部151bにおける外側湾曲面の曲率半径Rbより大きくてよい(図7及び図8参照)。固体電池パッケージの頂面領域1000Aは、固体電池パッケージの実装後においても外部に晒される場合があるため、他部品との接触等の機械的ストレスを比較的受けやすい可能性がある。固体電池パッケージの頂面領域1000A側に位置する端縁屈曲部は、外部からの機械的ストレスが集中することを回避するため、より大きい曲率半径を有する外側湾曲面を含むことが好ましい。一方で、底面領域側に位置する端縁屈曲部の外側湾曲面は、頂面領域側と比較して小さい曲率半径とすることで、実装基板と固体電池パッケージとの接触面積が増え、固体電池パッケージと実装基板との接続をより強固とすることができる。
【0097】
[固体電池パッケージの製造方法]
本発明の対象物は、正極層、負極層、およびそれらの電極間に固体電解質を有する電池構成単位を含んだ固体電池を調製し、次いで、その固体電池をパッケージ化するプロセスを経ることで得ることができる。
【0098】
本発明の固体電池の製造は、パッケージ化の前段階に相当する固体電池自体(以下では、「パッケージ前電池」とも称する)の製造と、基板の調製と、パッケージ化とに大きく分けることができる。
【0099】
≪パッケージ前電池の製造方法≫
パッケージ前電池は、スクリーン印刷法等の印刷法、グリーンシートを用いるグリーンシート法、またはそれらの複合法により製造することができる。つまり、パッケージ前電池自体は、常套的な固体電池の製法に準じて作製してよい(よって、下記で説明する固体電解質、有機バインダ、溶剤、任意の添加剤、正極活物質、負極活物質などの原料物質は、既知の固体電池の製造で用いられるものを使用してよい)。
【0100】
以下では、本発明のより良い理解のために、ある1つの製法を例示説明するが、本発明は当該方法に限定されない。また、以下の記載順序など経時的な事項は、あくまでも説明のための便宜上のものにすぎず、必ずしもそれに拘束されない。
【0101】
(積層体ブロック形成)
・固体電解質、有機バインダ、溶剤および任意の添加剤を混合してスラリーを調製する。次いで、調製されたスラリーから、焼成によって固体電解質を含むシートを形成する。
・正極活物質、固体電解質、導電性材料、有機バインダ、溶剤および任意の添加剤を混合して正極用ペーストを作製する。同様にして、負極活物質、固体電解質、導電性材料、有機バインダ、溶剤および任意の添加剤を混合して負極用ペーストを作製する。
・シート上に正極用ペーストを印刷し、また、必要に応じて集電層および/またはネガ層を印刷する。同様にして、シート上に負極用ペーストを印刷し、また、必要に応じて集電層および/またはネガ層を印刷する。
・正極用ペーストを印刷したシートと、負極用ペーストを印刷したシートとを交互に積層して積層体を得る。なお、積層体の最外層(最上層および/または最下層)についていえば、それが電解質層でも絶縁層でもよく、あるいは、電極層であってもよい。
【0102】
(電池焼成体形成)
積層体を圧着一体化させた後、所定のサイズにカットする。得られたカット済み積層体を脱脂および焼成に付す。これにより、焼成積層体を得る。なお、カット前に積層体を脱脂および焼成に付し、その後にカットを行ってもよい。
【0103】
(端面電極形成)
正極側の端面電極は、焼成積層体における正極露出側面に対して導電性ペーストを塗布することを通じて形成できる。同様にして、負極側の端面電極は、焼成積層体における負極露出側面に対して導電性ペーストを塗布することを通じて形成できる。正極側および負極側の端面電極は、焼成積層体の主面にまで及ぶように設けてよい。端面電極の成分としては、銀、金、プラチナ、アルミニウム、銅、スズおよびニッケルから選択される少なくとも一種から選択され得る。
【0104】
なお、正極側および負極側の端面電極は、積層体の焼成後に形成することに限らず、焼成前に形成し、同時焼成に付してもよい。
【0105】
以上の如くの工程を経ることによって、最終的に所望のパッケージ前電池(図12Aに示す固体電池100に相当)を得ることができる。
【0106】
≪基板の調製≫
本工程では、基板の調製を行う。
【0107】
特に限定されるものではないが、基板として樹脂基板を用いる場合、その調製は、複数の層を積層して加熱および加圧処理することによって行ってよい。例えば、基材となる繊維布に樹脂原料が含浸して構成された樹脂シートを用いて基板前駆体を形成する。基板前駆体の形成後、この基板前駆体をプレス機で加熱および加圧に付す。一方、基板としてセラミック基板を用いる場合、その調製は、例えば、複数のグリーンシートを熱圧着することによってグリーンシート積層体を形成し、グリーンシート積層体を焼成に付すことによって、セラミック基板を得ることができる。セラミック基板の調製は、例えばLTCC基板の作製に準じて行うことができる。セミラック基板はビアおよび/またはランドを有していてよい。このような場合、例えば、グリーンシートに対してパンチプレスまたは炭酸ガスレーザなどによって孔を形成し、その孔に導電性ペースト材料を充填するか、あるいは、印刷法などを実施することを通じてビア、ランドなどの導電性部分の前駆体を形成してよい。なお、ランドなどは、グリーンシート積層体の焼成後において形成することもできる。
【0108】
以上の工程を経ることによって、最終的に所望の基板200を得ることができる。
【0109】
≪パッケージ化≫
次に、上記で得られた電池および基板を用いてパッケージ化を行う(図12B図12E参照)。
【0110】
まず、基板200上にパッケージ前電池100を配置する(図12B参照)。つまり、基板上に“パッケージ化されていない固体電池”を配置する(以下、パッケージ化に用いる電池を単に「固体電池」とも称する)。
【0111】
好ましくは、基板の導電性部分と固体電池100の端面電極とが互いに電気的に接続されるように、固体電池100を基板上に配置する。例えば、導電性ペーストを基板上に供し、それによって、基板の導電性部分と固体電池100の端面電極とを互いに電気的に接続するようにしてよい。より具体的には、基板主面の正極側および負極側の導電性部分(特に、下側ランド/底面ランド)が、それぞれ、固体電池100の正極および負極の端面電極と整合するように位置合わせを行い、導電性ペースト(例えば、Ag導電性ペースト)を用いて結合結線する。つまり、固体電池100と基板との間の電気的接続を担う接合部材の前駆体を予め設けておいてよい。
【0112】
このような接合部材の前駆体は、Ag導電性ペーストの他、ナノペーストや合金系ペースト、ロー材など、形成後にフラックスなどの洗浄を必要としない導電性ペーストを印刷することで設けることができる。次いで、固体電池の端面電極と接合部材の前駆体とが互いに接するように基板上に固体電池100を配置し、加熱処理に付すことによって、前駆体から固体電池100と基板との間の電気的接続に資する接合部材が形成されることになる。
【0113】
次いで、外装部150を形成する。外装部としては、被覆絶縁層160および被覆無機層170が設けられる。
【0114】
まず、基板200上の固体電池100が覆われるように被覆絶縁層160を形成する(図12C参照)。それゆえ、基板上の固体電池100が全体的に覆われるように被覆絶縁層の原料を供する。被覆絶縁層が樹脂材から成る場合、樹脂前駆体を基板上に設けて硬化などに付して被覆絶縁層を成型する。ある好適な態様では、金型で加圧に付すことを通じて被覆絶縁層の成型を行ってもよい。例示にすぎないが、コンプレッション・モールドを通じて基板上の固体電池100を封止する被覆絶縁層を成型してよい。一般的にモールドで用いられる樹脂材であるならば、被覆絶縁層の原料の形態は、顆粒状でもよく、また、その種類は熱可塑性であってもよい。なお、このような成型は、金型成型に限らず、研磨加工、レーザー加工および/または化学的処理などを通じて行ってもよい。
【0115】
被覆絶縁層160を成型後、被覆絶縁層160および/または基板200のコーナー部および/または稜線部に丸みをつけ、外側湾曲面180を形成する(図12D参照)。具体的には、「個々の固体電池100が基板200上にて被覆絶縁層160で覆われた被覆前駆体」に対して外側湾曲面を形成する加工を実施する。あくまでも例示に過ぎないが、加工方法としては、例えば、バレルによる研削処理、またはサンドブラスト処理を含む複数の手段が挙げられる。かかる加工は、有機溶剤を用いて実施されることがより好ましい。また、加工後には洗浄工程が含まれてもよい。
【0116】
例えば、被覆絶縁層160を形成後の被覆前駆体は、被覆絶縁層160および/または基板200より硬度の高い研削メディアおよび有機溶剤とともにバレル内に封入され、当該バレルを回転することで研磨されてよい。あくまでも例示に過ぎないが、かかる研削処理に用いられる研削メディアとしては、アルミナ粉および/またはアルミナボールが挙げられる。ある好適な態様では、研削メディアおよび有機溶剤とともに被覆前駆体をバレル容器内に投入し、約100RPMで約10時間回転させてよい。このようなバレル研磨により、固体電池パッケージの端縁屈曲部に位置する被覆絶縁層160および/または基板200に曲面状の丸みがもたらされる。また、バレル研磨後の被覆前駆体は、有機系洗浄溶剤を用いて超音波洗浄した後、乾燥させてよい。
【0117】
外側湾曲面の形成後、被覆無機層170を形成する(図12E参照)。被覆無機層170は、被覆前駆体に対してめっきを実施することで形成されてよい。これにより、被覆絶縁層160の外形に追随して被覆無機層170を形成できる。つまり、めっきによって形成された被覆無機層170は、バレル研磨等によって設けられた被覆絶縁層160および/または基板200の湾曲面の外輪郭に追随した湾曲面を含む形状を有する。一実施形態では、被覆前駆体の底面以外(すなわち、基板の底面以外)の露出面に対して複数の湿式めっき膜を形成することで、被覆前駆体に複合無機膜が形成される。
【0118】
湿式めっき複合層は、異なる性質を有する湿式めっきを所定の順で実施することにより、複数の湿式めっき膜を積層させることで形成されてよい。例えば、本発明の一実施形態において、被覆前駆体に対して複数種類の湿式めっきを順に実施し、第1湿式めっき膜、第2湿式めっき膜を、この順で積層される。
【0119】
湿式めっきは、例えば電気めっきまたは無電解めっきによって実施することができる。めっきの製膜速度を重視すると、電気めっきによって湿式めっき膜を形成することがより好ましい。したがって、本発明の一実施形態において、湿式めっき膜は電気めっきによって形成され得るところ、湿式めっき膜は、電気めっき膜とも称され得る。
【0120】
また、被覆無機層の形成においては、乾式めっきと湿式めっきが組み合わされてよい。例えば、まず被覆前駆体に対して乾式めっきを実施することで乾式めっき膜を形成してよい。より具体的には、乾式めっきにより、被覆前駆体の底面以外(すなわち、支持基板の底面以外)の露出面に対して乾式めっき膜を形成してよい。次いで、乾式めっき膜が形成された被覆前駆体に対して、所定の順で複数種類の湿式めっきを実施することで、乾式めっき膜上に湿式めっき複合層を形成してよい。
【0121】
以上のような工程を経ることによって、基板上の固体電池が被覆絶縁層および被覆無機層で全体的に覆われ、端縁屈曲部に外側湾曲面を含むパッケージ品を得ることができる。つまり、本発明に係る「固体電池パッケージ」を最終的に得ることができる。
【0122】
なお、水蒸気バリア層を基板に対して形成しておいてもよい。つまり、基板と固体電池を組み合わせるパッケージ化に先立って、基板に水蒸気バリアを形成しておいてよい。
【0123】
水蒸気バリア層は、所望のバリア層を形成できるのであれば、特に制限はない。例えば「Si-O結合およびSi-N結合を有する水蒸気バリア層」の場合、好ましくは、液体原料の塗布および紫外線照射を通じて形成する。つまり、CVDやPVDなどの気相蒸着法を利用せず、比較的低温の条件(例えば、100℃程度の温度条件)で水蒸気バリア層を形成する。
【0124】
具体的には、液体原料として例えばシラザンを含む原料を用意し、その液体原料をスピンコートまたはスプレーコートなどによって基板に塗布、乾燥してバリア前駆体を形成する。次いで、窒素を含む環境雰囲気において、バリア前駆体をUV照射に付すことによって、「Si-O結合およびSi-N結合を有する水蒸気バリア層」を得ることができる。
【0125】
なお、基板の導電性部分と固体電池の端面電極との接合箇所には水蒸気バリア層が存在しないように、その箇所のバリア層を局所除去することが好ましい。あるいは、接合箇所に水蒸気バリア層が形成されないようにマスクを利用してもよい。つまり、接合箇所となる領域にマスクを施して水蒸気バリア層を全体的に形成し、その後にマスクを除してもよい。
【実施例0126】
本発明に従って、実証試験を行った。固体電池パッケージの構造は、図7の構造を採用した。
【0127】
具体的には、以下の表1に示す実施例1~4の固体電池パッケージを製造した。具体的には、被覆絶縁層によって覆われた被覆前駆体をバレル容器内に投入し、研削メディア(アルミナ粉および直径3mmのアルミナボール)および有機溶剤とともに、所定の回転数にて所定時間回転させた。バレル研磨後、有機系洗浄溶剤を用いて被覆前駆体を超音波洗浄し、乾燥させた。その後、被覆前駆体に対してめっき処理により被覆無機層を形成させ、端縁屈曲部に外側湾曲面を備える固体電池パッケージを得た。なお、比較例としては、外側湾曲面を形成するための加工工程を実施していない固体電池パッケージを用いた。得られた固体電池パッケージの頂面側コーナー部および頂面側稜線部における被覆絶縁層および被覆無機層の曲率半径を表1に示す。
【0128】
【表1】
【0129】
表1に記載の各被覆層の曲率半径は、イオンミリング装置(日立ハイテク社製 型番SU-8040)を用いて処理した断面について、マイクロスコープ(キーエンス社製 型番VHX-6000)を用いて取得した画像から求めた。
【0130】
比較例および実施例の固体電池について、機械的ストレスを模した試験を実施した。試験は、各実施例および比較例の固体電池パッケージの各々を別個のバレル容器に100個ずつ投入し、10RPMで1時間回転させることにより、固体電池パッケージ同士を互いに衝突させることで実施した。その後、固体電池パッケージをバレル容器から取り出し、30倍の顕微鏡観察によって最外の被覆無機層における亀裂の有無を判定した。
【0131】
さらに、機械的ストレス試験後の固体電池パッケージについて、外装部の水蒸気浸入防止性を評価するための試験を実施した。具体的には、85℃の温度、および相対湿度85%の高温高湿環境下にて500時間保管した後の固体電池パッケージについて、充放電試験を実施することで評価した。充放電試験では、比較例および各実施例の固体電池パッケージにつき、25℃にて、10mAで4.2Vに到達するまでは定電流充電し、4.2Vに到達後、1mAとなるまで定電圧充電をした。その後、25℃にて、定電流10mA、カットオフ電圧2Vで放電した。上記を1サイクルとして、合計30サイクルの充放電を実施した。上述の試験により、30サイクル時点での固体電池の充放電効率((放電容量)/(充電容量)×100[%])が90%以上である場合を良、90%未満である場合を不良として評価した。各試験の結果を表2に示す。
【0132】
【表2】
【0133】
上記結果によれば、実施例1~4の固体電池パッケージは、端縁屈曲部に外側湾曲面を含む構造を有するため、機械的ストレス試験後の外装部の亀裂が低減された結果が得られた。一方で、比較例の固体電池パッケージは、外側湾曲面を含まないため、機械的ストレス試験によって約30%の固体電池パッケージに亀裂が散見された。つまり、外装部の端縁屈曲部に外側湾曲面を含むことで、外部からの機械的ストレスに起因する外装部の亀裂の発生が低減された。
【0134】
さらに、充放電試験結果によれば、実施例1~4の固体電池パッケージは、高温高湿環境においても固体電池の電池性能の低下が見られなかったため、外装部の水蒸気浸入防止機能が好適に作用していることが示された。一方で、比較例の固体電池パッケージでは、亀裂が生じていた固体電池パッケージにおいて電池性能が低下する結果が得られ、機械的ストレスによって外装部の水蒸気浸入防止性が損なわれたことが確認された。したがって、本発明により、外部からの機械的ストレスへの耐性が向上した、より信頼性の高い固体電池パッケージが供される。
【0135】
以上、本発明の実施形態について説明してきたが、あくまでも典型例を例示したに過ぎない。本発明はこれに限定されず、本発明の要旨を変更しない範囲において種々の態様が考えられることを、当業者は容易に理解されよう。
【0136】
なお、上述のような本開示の一実施形態は、次の好適な態様を包含している。
第1態様:
基板と、前記基板上に設けられ、固体電池と、前記固体電池を覆う外装部とを備え、
前記外装部が複数のコーナー部を備え、前記複数のコーナー部のうち、少なくとも、頂面側コーナー部が外側に湾曲した外側湾曲面を含む、固体電池パッケージ。
第2態様:
上記第1態様において、前記頂面側コーナー部を複数備え、
前記複数の頂面側コーナー部のうち、隣接する第1頂面側コーナー部と第2頂面側コーナー部とをつなぐ頂面側稜線部が外側湾曲面を含む、固体電池パッケージ。
第3態様:
上記第2態様において、前記頂面側稜線部が、相互に異なる方向に延在し、隣接する第1の面領域と第2の面領域との境界部分であり、
前記頂面側稜線部の前記外側湾曲面が、第1の面領域から第2の面領域に延在している、固体電池パッケージ。
第4態様:
上記第1態様~上記第3態様のいずれかにおいて、前記外装部が、前記基板を覆う底面側コーナー部を備え、
前記底面側コーナー部が外側湾曲面を含む、固体電池パッケージ。
第5態様:
上記第1態様~上記第4態様のいずれかにおいて、前記外装部が、前記基板を覆う底面側コーナー部を複数備え、
前記複数の底面側コーナー部のうち、隣接する第1底面側コーナー部と第2底面側コーナー部とをつなぐ底面側稜線部が外側湾曲面を含む、固体電池パッケージ。
第6態様:
上記第1態様~上記第5態様のいずれかにおいて、前記外装部が、前記基板を覆う底面側コーナー部を備え、
隣接する前記頂面側コーナー部と前記底面側コーナー部とをつなぐ側面側稜線部が外側湾曲面を含む、固体電池パッケージ。
第7態様:
上記第1態様~上記第7態様のいずれかにおいて、前記外側湾曲面の曲率半径が、35μm以上250μm以下である、固体電池パッケージ。
第8態様:
上記第1態様~上記第7態様のいずれかにおいて、前記外装部が、前記基板上に備えられた前記固体電池の頂面および側面を少なくとも覆う被覆絶縁層と、前記被覆絶縁層上に設けられた被覆無機層とを備え、
前記外側湾曲面において、少なくとも前記被覆無機層が外側に湾曲した湾曲無機面を含む、固体電池パッケージ。
第9態様:
上記第8態様において、断面視にて、前記湾曲無機面の内側に位置する前記被覆絶縁層が、外側に湾曲した湾曲絶縁面を含む、固体電池パッケージ。
第10態様:
上記第9態様において、断面視にて、前記湾曲無機面の曲率半径が、前記湾曲絶縁面の曲率半径より大きい、固体電池パッケージ。
第11態様:
上記第8態様~上記第10態様のいずれかにおいて、断面視にて、前記頂面側コーナー部における前記湾曲無機面の曲率半径が、120μm以上250μm以下である、固体電池パッケージ。
第12態様:
上記第9態様、ならびに上記第9態様に基づく上記第10態様および第11態様のいずれかにおいて、断面視にて、前記頂面側コーナー部における前記湾曲絶縁面の曲率半径が、45μm以上150μm以下である、固体電池パッケージ。
第13態様:
上記第8態様~上記第12態様のいずれかにおいて、互いに隣接する前記頂面側コーナー部をつなぐ頂面側稜線部が外側に湾曲した湾曲無機面を含み、
前記頂面側コーナー部における前記湾曲無機面の曲率半径が、前記頂面側稜線部の前記湾曲無機面の曲率半径よりも大きい、固体電池パッケージ。
第14態様:
上記第13態様において、前記頂面側稜線部の前記湾曲無機面の曲率半径が、80μm以上200μm以下である、固体電池パッケージ。
第15態様:
上記第13態様または上記14態様において、断面視にて、前記頂面側稜線部における前記湾曲無機面の内側に位置する前記被覆絶縁層が、外側に湾曲した湾曲絶縁面を含み、
前記頂面側コーナー部における前記湾曲絶縁面の曲率半径が、前記頂面側稜線部における前記湾曲絶縁面の曲率半径よりも大きい、固体電池パッケージ。
第16態様:
上記第13態様~上記15態様のいずれかにおいて、断面視にて、前記頂面側稜線部における前記湾曲無機面の内側に位置する前記被覆絶縁層が、外側に湾曲した湾曲絶縁面を含み、
前記頂面側稜線部における前記湾曲絶縁面の曲率半径が、35μm以上120μm以下である、固体電池パッケージ。
第17態様:
上記第8態様~上記第16態様のいずれかにおいて、前記基板が、前記固体電池に対向する第1主面と、前記第1主面の反対側に位置する第2主面とを備え、
前記被覆無機層が、前記第2主面にまで及んでおり、
断面視で、前記湾曲無機面の内側に位置する前記基板が外側に湾曲している、固体電池パッケージ。
第18態様:
上記第8態様~上記第17態様のいずれかにおいて、前記被覆無機層が、2つ以上の無機膜が積層された複合無機膜であり、
断面視にて、前記外側湾曲面において、前記2つ以上の無機膜の各々が外側に湾曲している、固体電池パッケージ。
第19態様:
上記第4態様、および上記第4態様に基づく上記第5態様~上記第18態様のいずれかにおいて、断面視にて、前記頂面側コーナー部における前記外側湾曲面の曲率半径は、前記底面側コーナー部における前記外側湾曲面の曲率半径と異なる、固体電池パッケージ。
第20態様:
上記第4態様、および上記第4態様に基づく上記第5態様~上記第19態様のいずれかにおいて、断面視にて、前記頂面側コーナー部における前記外側湾曲面は、前記底面側コーナー部における前記外側湾曲面より大きい曲率半径を有する、固体電池パッケージ。
第21態様:
上記第1態様~上記第20態様のいずれかにおいて、断面視にて、前記固体電池が矩形であり、前記固体電池を覆う外装部の複数のコーナー部がそれぞれ外側湾曲面を含む、固体電池パッケージ。
【産業上の利用可能性】
【0137】
本発明の固体電池パッケージは、電池使用または蓄電が想定される様々な分野に利用することができる。あくまでも例示にすぎないが、本発明の固体電池パッケージは、モバイル機器などが使用される電気・情報・通信分野(例えば、携帯電話、スマートフォン、ノートパソコンおよびデジタルカメラ、活動量計、アームコンピューター、電子ペーパーなどや、RFIDタグ、カード型電子マネー、スマートウォッチなどの小型電子機などを含む電気・電子機器分野あるいはモバイル機器分野)、家庭・小型産業用途(例えば、電動工具、ゴルフカート、家庭用・介護用・産業用ロボットの分野)、大型産業用途(例えば、フォークリフト、エレベーター、湾港クレーンの分野)、交通システム分野(例えば、ハイブリッド車、電気自動車、バス、電車、電動アシスト自転車、電動二輪車などの分野)、電力系統用途(例えば、各種発電、ロードコンディショナー、スマートグリッド、一般家庭設置型蓄電システムなどの分野)、医療用途(イヤホン補聴器などの医療用機器分野)、医薬用途(服用管理システムなどの分野)、ならびに、IoT分野、宇宙・深海用途(例えば、宇宙探査機、潜水調査船などの分野)などに利用することができる。
【符号の説明】
【0138】
100 固体電池
100A 固体電池の第1主面
100B 固体電池の第2主面
110 正極層
120 負極層
130 固体電解質または固体電解質層
140 端面電極
140A 正極側の端面電極
140B 負極側の端面電極
150 外装部
151 コーナー部
151a 頂面側コーナー部
151b 底面側コーナー部
152 稜線部
152a 頂面側稜線部
152b 底面側稜線部
152c 側面側稜線部
160 被覆絶縁層
160a 湾曲絶縁面
170 被覆無機層
170a 湾曲無機面
171 乾式めっき膜
172 湿式めっき膜
180 外側湾曲面
200 基板
200A 基板の第1主面
200B 基板の第2主面
210 基板電極層(基板上側)
210A 正極側の基板電極層
210B 負極側の基板電極層
220 実装側基板電極層(基板下側)
220A 正極側の実装側基板電極層
220B 負極側の実装側基板電極層
600 接合部材
1000 固体電池パッケージ
1000A 頂面領域
1000B 底面領域
1000C 側面領域
図1
図2
図3
図4
図5
図6
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図10
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図12A
図12B
図12C
図12D
図12E