(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024095862
(43)【公開日】2024-07-11
(54)【発明の名称】スイングチャッキ弁
(51)【国際特許分類】
F16K 15/03 20060101AFI20240704BHJP
F16K 1/20 20060101ALI20240704BHJP
F16K 1/36 20060101ALI20240704BHJP
【FI】
F16K15/03 D
F16K1/20 D
F16K1/36 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022212823
(22)【出願日】2022-12-29
(71)【出願人】
【識別番号】390002381
【氏名又は名称】株式会社キッツ
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】弁理士法人 HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】横澤 直角
【テーマコード(参考)】
3H052
3H058
【Fターム(参考)】
3H052AA01
3H052BA02
3H052CA23
3H052CA26
3H052CA33
3H052EA04
3H058AA07
3H058BB03
3H058BB26
3H058CA01
3H058CA34
3H058CA38
3H058EE09
(57)【要約】
【課題】着座位置のずれまたは弁座面の変形を生じやすい場合でもその影響を抑制可能であり、高いシール性を有するスイングチャッキ弁を実現する。
【解決手段】スイングチャッキ弁(10)は、第一流路(3)の開口部である弁座(112)に対して、ヒンジ構造(114)で開閉可能な弁体(113)を有する。弁体(113)は、環状のシート材(115)と、その内周縁部に当接して弁体(113)に固定するシートリテーナ(116)とを有する。シート材(115)の外周縁部は突出部(152)であり、弁体(113)着座時に弁座(112)に当接する。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第一流路および第二流路に接続する弁室を内部に有するボデーと、前記弁室における前記第一流路の開口端である弁座と、ヒンジ構造で前記ボデー内に振動可能に支持されて前記弁座に密着する弁体と、を有するスイングチャッキ弁であって、
前記弁体は、
平面視したときの形状が環状であるシート材と、
前記シート材の一部に当接して前記シート材を前記弁体に固定するシートリテーナと、を有し、
前記シート材の一方の周縁部は、前記シートリテーナと前記弁体とに挟まれて前記弁体に固定される固定部であり、
前記シート材の他方の周縁部は、前記弁体とは反対側へ突出した形状に形成された、前記弁体着座時に前記弁座に当接する突出部であり、
前記突出部の断面形状が略半円状である、
スイングチャッキ弁。
【請求項2】
前記固定部は、前記シート材の平面視したときの形状における内周縁部である薄板部であり、
前記突出部は、前記シート材の平面視したときの形状における外周縁部であり、
前記シートリテーナは、前記弁体との間に前記薄板部を挟んで前記薄板部を前記弁体に固定し、
前記シートリテーナの外周側面は、前記シート材における前記突出部の内周側に接している、請求項1に記載のスイングチャッキ弁。
【請求項3】
前記シート材は、前記弁体よりも柔軟な材料から構成され前記弁体が着座する時に前記弁座に接触して変形可能であり、
前記突出部の断面形状における表面の曲率Rは、前記弁体が前記弁座に着座した時の前記シート材の、前記弁座との接触面において必要となる面圧が得られるように設定される、請求項1に記載のスイングチャッキ弁。
【請求項4】
前記突出部は、前記弁体側の基部と、前記基部に連なる先端部と、を含み、
前記先端部の断面形状は、前記基部の幅を直径する半円形状である、請求項1に記載のスイングチャッキ弁。
【請求項5】
前記弁体は、前記弁座に対向する面の外縁部に前記弁座に向けて突出する外周壁部を有し、
前記突出部は、前記シート材の外周縁部であり、
前記シート材の外周面が前記弁体の前記外周壁部に当接している、請求項1に記載のスイングチャッキ弁。
【請求項6】
前記弁体は、前記弁座に対向する面の外縁部に前記弁座に向けて突出する外周壁部を有し、
前記突出部は、前記シート材の外周縁部であり、かつ前記弁体側の基部と、前記基部に連なる先端部と、を含み、
前記弁体の厚さ方向における前記外周壁部の頂面の位置は、前記基部と前記先端部との境界の位置と略同じである、請求項1に記載のスイングチャッキ弁。
【請求項7】
前記固定部は、前記シート材の平面視したときの形状における内周縁部である薄板部であり、
前記シート材は、前記薄板部の前記弁体との対向面から前記弁体側に突出する突起部をさらに有する、請求項1に記載のスイングチャッキ弁。
【請求項8】
前記シート材は超高分子量ポリエチレン製である、請求項1に記載のスイングチャッキ弁。
【請求項9】
前記ボデーは、前記弁室に連通する寸胴部と、前記弁室における前記寸胴部との境界に配置されて前記弁室を前記寸胴部から区切る中蓋と、前記寸胴部の外部に対する開口部を塞ぐボンネットと、をさらに有する、請求項1に記載のスイングチャッキ弁。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スイングチャッキ弁に関する。
【背景技術】
【0002】
スイングチャッキ弁は、流体の逆流を防止する逆止弁として有用であり、種々の産業分野で利用されている。このようなスイングチャッキ弁としては、弁体よりもソフトなシート材がシートリテーナによって弁体に固定され、シート材が平坦な面で弁座に当接するスイングチャッキ弁が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
また、逆止弁には、スイングチャッキ弁以外のチャッキ弁が知られている。このような他のタイプのチャッキ弁には、ポペット弁体タイプのインラインチャッキ弁があり、シート材における弁座に当接する部分の断面形状が、弁座に向かって凸となる半円形状のシート材であるチャッキ弁が示されている。当該シート材は、ガイド部材を介してネジで弁体に固定されている(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2019-35437号公報
【特許文献2】国際公開第2018/003982号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述のような従来技術は、例えば大口径の場合、または液体水素が流れるような極低温条件などの通常より厳しい条件下では、シールが不十分となる場合があった。例えば、スイングチャッキ弁では、ボデーにヒンジを介して固定されたアームの先端に弁体が取り付けられる。そのため、スイングチャッキ弁では、サイズ拡大に伴い、各部材の寸法の誤差、または部材同士の固定のがたつきなどが生じ、弁体の弁座への着座位置にずれが生じやすい。また、極低温流体を流す場合には、流体に接する部位と接しない部位との温度差によって、弁座面に変形(ゆがみなど)が生じることがあった。これらの場合、弁体が弁座に着座している場合でも部分的に面圧が弱い部位が生じやすく、そこから流体が漏れることがある。
【0006】
本発明の一態様は、大口径または極低温条件など、着座位置のずれまたは弁座面の変形を生じやすい場合でもその影響を抑制可能であり、高いシール性を有するスイングチャッキ弁を実現することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するために、本発明の一態様に係るスイングチャッキ弁は、第一流路および第二流路に接続する弁室を内部に有するボデーと、前記弁室における前記第一流路の開口端である弁座と、ヒンジ構造で前記ボデー内に振動可能に支持されて前記弁座に密着する弁体と、を有するスイングチャッキ弁であって、前記弁体は、平面視したときの形状が環状であるシート材と、前記シート材の一部に当接して前記シート材を前記弁体に固定するシートリテーナと、を有し、前記シート材の一方の周縁部は、前記シートリテーナと前記弁体とに挟まれて前記弁体に固定される固定部であり、前記シート材の他方の周縁部は、前記弁体とは反対側へ突出した形状に形成された、前記弁体着座時に前記弁座に当接する突出部であり、前記突出部の断面形状が略半円状である。
【発明の効果】
【0008】
本発明の一態様によれば、大口径または極低温条件など、着座位置のずれまたは弁座面の変形を生じやすい場合でもその影響を抑制可能であり、高いシール性を有するスイングチャッキ弁を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明の実施形態に係るスイングチャッキ弁の全体構成を模式的に示す斜視図である。
【
図2】
図1に示されるスイングチャッキ弁における
図1のA-A線で切断した断面を模式的に示す図である。
【
図3】
図1に示されるスイングチャッキ弁における
図2の矢印B方向から見た様子を模式的に示す図である。
【
図4】
図1に示されるスイングチャッキ弁における
図2のC-C線で切断した断面を模式的に示す図である。
【
図5】
図2に示されるスイングチャッキ弁における弁体およびその近傍を拡大して示す図である。
【
図6】
図5に示される弁体を
図5の矢印D方向から見た様子を模式的に示す図である。
【
図7】
図5に示される弁体の一点鎖線で囲まれたE部を拡大して示す図である。
【
図8】
図5に示される弁体の一点鎖線で囲まれたF部を拡大して示す図である。
【
図9】
図7に示されるシート材を拡大して示す図である。
【
図10】実施形態に係るスイングチャッキ弁のシール性を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の一実施形態を説明する。
図1は、本発明の実施形態1に係るスイングチャッキ弁の全体構成を模式的に示す斜視図である。なお、スイングチャッキ弁は、「スイング式逆止弁」とも言われる。また、以下の説明において、平面視したときの形状を「平面形状」とも言う。また、「極低温」とは、液化窒素の温度(-196℃)よりも低い温度域を意味し、例えば流体として液体水素を取り扱い可能な温度(-253℃)を含む。また、弁体に関する「断面」とは、特に説明がない限り、弁体の平面形状の径方向における断面を意味する。
【0011】
図1に示されるように、スイングチャッキ弁10は、ボデー1、ボンネット2、第一流路3および第二流路4を有する。ボデー1は、弁体が収容されている弁室11と、それに連なる寸胴部12とを含む。弁室11の外周面、寸胴部12の外周面、第一流路3の外周面、および第二流路4の外周面には、それらを、真空層を挟んでさらに外部から覆い、外部の熱から断熱するための真空ジャケット部(図示せず)が配置可能となっている。
【0012】
図2は、
図1に示されるスイングチャッキ弁10における
図1のA-A線で切断した断面を模式的に示す図である。なお、
図2は、真空ジャケット部を取り除いた状態を図示している。また、
図3は、
図1に示されるスイングチャッキ弁10における
図2の矢印B方向から見た様子を模式的に示す図である。また、
図4は、
図1に示されるスイングチャッキ弁10における
図2のC-C線で切断した断面を模式的に示す図である。
【0013】
寸胴部12の外部に対して開口する開口部(上部の開口部)には、ボンネット2が複数のネジによってネジ止めされている。このように、ボンネット2は、寸胴部12の外部に対する開口部を塞いでいる。ボンネット2の平面形状の中央部には、ボンネット2を取り扱うための取っ手リング21が固定されている。
【0014】
ボンネット2と弁室11との間には、中蓋13が複数のネジによってネジ止めされている。中蓋13にも、ボンネット2と同様に、その上面の平面形状の中央部に取り扱い用の取っ手リング131が固定されている。このように、寸胴部12は、弁室11と連通して形成されており、弁室11は、弁室11における寸胴部12との境界に配置されている中蓋13によって、寸胴部12から区切られている。
【0015】
弁室11は、X方向において第一流路3および第二流路4に接続されている。弁室11における第一流路3の開口端は、弁座112となっている。弁室11には、弁座112に密着する弁体113が配置されている。弁体113は、ヒンジ構造114でボデー1内に支持されていて、このヒンジ構造114を軸として回転する動作により弁室11内で振動可能となっている。弁体113は、第一流路3からの流体の圧力に応じて開き、流体の圧力が加わらない場合は自重によって閉まるように配置されている。また、弁体113は、第二流路4からの流体の圧力(逆圧)を受けると弁体113が弁座112に向けて押されて閉まり、逆圧が大きいほど弁体113のシール性が高まる。このようにして、弁体113は、スイング式の逆止弁として機能する。
【0016】
図5は、
図2に示されるスイングチャッキ弁10における弁体113およびその近傍を拡大して示す図である。また、
図6は、
図5に示される弁体を
図5の矢印D方向から見た様子を模式的に示す図である。
【0017】
図5に示されるように、弁体113は、シート材115およびシートリテーナ116を有する。弁体113およびシートリテーナ116は、例えばSUS鋼などの金属製である。弁体113は、弁座112に対向する面の外縁部に、弁座112に向けて突出する外周壁部117を有している。外周壁部117は、例えば弁体113の弁座112側の面に凹部を形成することによって、形成されている。
【0018】
シート材115は、弁体113およびシートリテーナ116に対してより柔軟な材料で構成された、いわゆるソフトシートである。シート材115は、例えば、樹脂から構成され、一例として、超高分子量ポリエチレン製(UMW-PE)が挙げられる。なお、シート材115の材料の例には、無機材料および有機材料が含まれる。無機材料の例には、グラファイトが含まれる。有機材料の例には、上記の超高分子ポリエステルの他、種々の樹脂またはゴムが含まれる。シート材の材料は、取り扱う流体の温度、機械的強度、弁座への追従性(変形性または柔軟性)に応じて適宜に選ぶことが可能である。
【0019】
シート材115は、環状の平面形状を有する。シートリテーナ116は、シート材115の一部に当接してシート材115を弁体113に固定する。シート材115の内周および外周のうちの一方の周縁部がシートリテーナ116と弁体113とに挟まれて弁体113に固定される固定部となっている。シートリテーナ116も、シート材115と同様に、環状の平面形状を有している。シートリテーナ116は、複数のネジ118によって弁体113にネジ止めされている。シート材115は、シートリテーナ116と弁体113とによって挟まれて弁体113に固定されている。ネジ118は、平面形状におけるシート材115よりも中心側に配置されており、シート材115は、当該ネジに貫通されず、シートリテーナ116により挟まれるだけで弁体113に固定されている。
【0020】
以下、シート材115についてさらに詳しく説明する。
図7は、
図5に示される弁体113の一点鎖線で囲まれたE部を拡大して示す図である。また、
図8は、
図5に示される弁体113の一点鎖線で囲まれたF部を拡大して示す図である。さらに、
図9は、
図7に示されるシート材115を拡大して示す図である。
図7および
図8において、「a」は、弁体113の外周壁部117の頂面から弁座112までの距離を示しており、「b」は、シートリテーナ116の弁体側表面から弁体113までの距離を示している。また「c」は、弁体113の径方向におけるネジ118のナットから第一流路3の開口部の内周壁までの距離である。
【0021】
本実施形態において、シート材115は、シート材115の平面形状における内周側に薄板部151を含み、外周側に突出部152を含む。また、シート材115は、弁体113の弁座112側の面に、当該シート材115のサイズ(幅)に合わせて設けられた凹部119に一部が嵌まるように配置されている。このように、弁体113側にシート材115の一部が嵌まるようにすることで、極低温条件などによるシートの変形や収縮をさらに抑制しやすくなる。
【0022】
薄板部151は、シート材115の平面形状における内周縁部である。シートリテーナ116は、薄板部151に当接して薄板部151を弁体113に締着して固定している。薄板部151は、シートリテーナ116によって弁体113に固定される固定部である。突出部152は、シート材115の平面形状における外周縁部である。突出部152の内周側には、シートリテーナ116の外周面が接している。また、シート材115の外周側面、例えば突出部152の外周側(後述の基部153の外周面)が、弁体113の外周壁部117に当接している。
【0023】
また、シートリテーナ116は、弁体113側の外周縁の角部に切り欠き部120を有している。切り欠き部120は、直角の角部が斜めに切り欠かれた形状を有している。シートリテーナ116の外周面は突出部152の内周面に当接し、シートリテーナ116の弁体113側の主面は薄板部151の表面に当接している。その一方で、薄板部151と突出部152との境界部は、切り欠き部120に対向しており、よってシートリテーナ116に接触しない。したがって、シートリテーナ116は、塵埃などの付着物の付着などによってシート材115の当該境界部に生じやすい凸部に乗り上げることなく、シート材115における突出部152の内周面および薄板部151の表面の両方に密着する。
【0024】
ここで、本実施形態のようなスイングチャッキ弁10は、上述の通り、逆圧が大きいほど弁体113が弁座112に押し付けられてシール性が高まる構造である。そのため、逆圧が小さすぎるとシール性が不十分となりやすい。スイングチャッキ弁10は、第二流路4側から第一流路3側への逆流を防止するために用いられるため、小さい逆圧でも十分にシール性が得られるものがより好ましい。シール性に関する指標としてシール面の面圧がある。この「面圧」とは、流体の圧力により加わる荷重をシール面の面積(受圧面積)で除して得られる値である。流体の特性およびシート材115の物性等から、そのシール面で必要なシール性を得るために必要な面圧は、ある程度定まる。
【0025】
本実施形態において、シート材115の突出部152が、シートリテーナ116の表面または弁体113の外周壁部117の頂部よりも突出する高さは、突出部152の先端部154の断面半円形状の半径rと同程度であることが好ましい。すなわち、
図7および
図8に示す、シート材115が押し潰される前の状態の距離aおよび距離bが、いずれも半径rに等しいことが好ましい。この場合、先端部154のシートリテーナ116または外周壁部117よりも突出している部分が、ちょうど半径rを有する断面半円形状となる。そのため、極低温条件などにより弁座112にずれまたはゆがみなどが発生したとしても、この突出した半円形状の範囲内であれば先端部154と弁座112とが当接することができる。したがって、確実にシール部を形成することが可能となる。特に、この先端部154の突出部分が一様の半径rを有する半円形状であれば、先端部154のどこが弁座112と当接しても同等のシール面積を得ることが可能となる。そのため、弁座112のずれまたはゆがみがあっても、安定した面圧が得られる。
【0026】
なお、上記の通り距離aおよび距離bは、同一とすることが好ましいが、異なっていてもよい。すなわち、距離bは、シートリテーナ116を固定するネジ118の締め込み具合により変化するが、必要に応じて距離aと異なる値としてもよい。例えばシート材115の固定力を増すために増し締めできるように少し余裕を持たせ、距離bを距離aよりも少し小さくなるようにしてもよい。あるいは、はじめからシート材115の固定を強力に行うために、距離bを距離aよりも少し大きくなるようにしてもよい。
【0027】
距離aは、後述の通り、外周壁部117の高さをシート材115における基部153と先端部154との境界の位置とし、そこよりも半径rの分だけ突出した先端部154の高さに相当することが好ましい。距離bは、距離aを基準として、同じかそれよりもわずかに大きくまたは小さくすることができる。
【0028】
さらに、ネジ118のナットから第一流路3の開口部における内周壁までの距離cは、なるべく小さい方がよい。これは、シートリテーナ116は、ネジ118によって弁体113に固定され、このシートリテーナ116がシート材115の薄板部151を弁体113に押さえつけて固定していることから、なるべく弁体113の外周縁に近い位置でネジ118を固定することで、シート材115がより強く弁体113に固定されるためである。このような構成は、流体圧などが加わってもシート材115の弁体113からの脱離などを防止する観点から好ましい。ただし、ネジ118の位置が外側過ぎる(すなわち、距離cが大きすぎる)と、ネジ118が弁座112側に当たるなど、弁体113の動作に干渉することがある。その結果、弁体113が第一流路3の開口部を塞ぐことができなくなることがあり、あるいはネジ118がシート材115に当接しまたは貫通して、流体の漏れの原因となることがある。このような理由から、距離cは、ネジ118が弁体113の動作に干渉せず、シート材115に接触しない範囲で、可能な限り小さく設定される。
【0029】
突出部152は、弁体113側の基部153と、基部153に連なる先端部154とを含む。先端部154の断面形状は、基部153の幅W1を直径する半円形状である。すなわち、当該半円形状の半径をrとすると、W1は2rである。弁体113の厚さ方向において、外周壁部117の頂面の位置は、基部153と先端部154との境界の位置と略同じである。
【0030】
シート材115は、薄板部151における弁体113との対向面から突出する突起部155をさらに有している。突起部155は、シート材115の断面形状における内周縁部に配置されている。突起部155は、上記対向面上において弁体113の内周縁部に周設されている。たとえば突起部155の断面形状は半円形であり、突起部155の高さは例えば数百ミクロンである。突起部155は、薄板部151、特にシートリテーナ116と弁体113とに挟まれる位置に配置されていることから、薄板部151でシート材115を弁体113に固定するシートリテーナ116によって押圧される位置にある。そのため、この突起部155にて十分な面圧が発生するので、裏漏れの防止に有利である。
【0031】
なお、先端部15の断面形状は、略半円形状であってもよく、先端部154における断面略半円形状の曲率Rは、シート材115の弁座112に対する必要な面圧に応じて設定されている。当該面圧は、想定される流体圧の範囲、特にシールする必要がある最小の逆圧で流体が漏れない面圧である。第二流路4側から弁体113に加わる流体圧、および弁体113の自重、によりシート材115が弁座112に押し付けられることで、先端部154の頂部付近が押し潰され、その結果、シート材115と弁座112との接触が面状に生じ、両者による接触面が形成される。当該接触面を「シール面」とも言う。シート材115の先端部154がシート材115の厚さ方向において変形した量は、「潰し量」とも言われる。
【0032】
上記の面圧が得られるシール面の面積(接触面積)は、上記曲率Rとシート材115の物性によって定まる。なお、
図9に示す「Ac」は、シート材115の弁座112に対する接触幅を表している。
図9は、先端部154の断面における表面形状と接触幅Acとを明示する観点から、先端部154と弁座112との間に隙間があるように描かれている。曲率Rが大きいほど、潰し量に対応して接触幅Ac、ひいては接触面積が大きくなり、それに反比例して面圧が小さくなる。一方、潰し量は、シート材115の物性にも影響される。柔らかい素材であるほど、圧力による潰し量が大きくなる。そのため、接触幅Acあるいは接触面積が大きくなり、面圧が小さくなる。そして、シート材115への圧力と潰し量との関係は、その材質から推測できる。したがって、その関係において、弁座112をシールするために必要な面圧を得るために必要な接触幅Acおよび接触面積が得られるように、シート材115の先端部154の頂部付近の曲率Rを設定すればよい。
【0033】
このように、シート材115は、弁体113が弁座112に着座したときに弁座112に当接し、圧し潰されることによって面で接触するような略半円状の断面形状を有している。そして、突出部152(先端部154)の断面形状における表面の曲率Rは、弁体113が弁座112に着座したときのシート材115の、弁座112との接触面において必要となる特定の面圧が得られるように設定されている。
【0034】
そして、本実施形態(スイングチャッキ弁10)のように、環状の流路に対応してそれを取り囲む環状のシールを形成する場合、重要となるのが、環状のシールがその全周にわたって均一な面圧を発揮することである。シート材115の大部分で高い面圧が得られても、シート材115の一部に相対的に面圧が小さい部位があると、その部分のシール性が弱くなる。そのため、漏れが発生しやすくなってしまう。スイングチャッキ弁10では、たとえ部材の寸法ずれが発生し、あるいは弁座112または弁体113のゆがみなどが発生しても、シート材115に設けた特定形状の突出部152(先端部154)によりシール面への影響が大幅に軽減される。そのため、スイングチャッキ弁10では、必要な面圧を均一に得やすくなり、その結果、安定したシール性が発揮される。
【0035】
〔実施形態の主な作用効果〕
スイングチャッキ弁では、ヒンジを軸にアームを介して連結している弁体が回動する。そして、弁体側のシート材が弁室側の弁座に接離することで流路が開閉する。このような構造ゆえ、スイングチャッキ弁では、通常、各部材の組付けのばらつき、あるいは各部材が鋳物からなる場合に生じやすい形状または寸法のばらつき、などにより、シート材と弁座との位置ずれが発生しやすい。
【0036】
また、例えば液体水素のような極低温の流体を流す場合、流体に接している部分と接していない部分とに極低温での温度差が生じることがある。そのため、このような場合では、温度差による収縮量の差によってボデー(特に弁座面)または弁体に無視し得ないゆがみが生じる場合もある。これらによって、弁体側のシート材と弁室側の弁座とが接してなるシール面が想定通りのシール面に形成されず、その場合、例えば周方向の一部に面圧が不足する部位が生じるなど、はその部分において、流体の封止が不十分となる可能性がある。
【0037】
本実施形態では、まず、シート材115に樹脂製(特に超高分子量ポリエチレン製)のシート材を用いている。したがって、上述したシート部のずれまたはゆがみが生じても、例えば弁座112から力がシート材115にかかり、シート材115の変形(潰れなど)により当該ずれまたはゆがみの変形の影響が吸収される。そのため、シール面を確実に形成させることが可能となる。
【0038】
ここで
図10は、本実施形態に係るスイングチャッキ弁10のシール性を説明するための図である。
【0039】
加えて、本実施形態では、シート材115がその頂部付近に断面半円形状の突出部152を有している。弁閉時には突出部152が弁座112と接触することで、ずれまたはゆがみによりシート材115と弁座112との接触位置が変化しても、ずれなどに関わらない一定のシール面を形成することができる。その結果、スイングチャッキ弁10を液体水素などの極低温流体に適用する場合などであっても、安定したシール面でのシールを行うことが可能となる。また、極低温条件でもシート材115のずれなどを生じにくくし、またスイング構造による動作のずれまたは温度差によるシール面のゆがみがあっても、突出部152における断面半円形状の部位が上記の位置の変化またはシート材115の変形を吸収する。その結果、優れたシール性が発揮され得る。
【0040】
また、本実施形態では、シート材115は、内周縁部である薄板部151でシートリテーナ116と弁体113とに挟持されて固定され、外周縁部である突出部152で弁座112に当接する。そして、シートリテーナ116の外周面はシート材115における突出部152の内周面に接している。シート材115は全体として環状の形状となっているため、極低温条件では、主に内周側に(
図10の矢印aに示す方向に)縮むように収縮する。本実施形態では、シート材115の突出部152の内周側面が、ネジ118で締着されているシートリテーナ116の外周側面と接して支持される。そのため、シート材115における突出部152の内周方向への収縮が抑制される。その結果、シートリテーナ116によって突出部152の平面形状が維持される。したがって、突出部152の形状(特に断面半円形状の頂部付近の形状)が維持された状態でシート材115が弁座112に接触するため、より確実でより優れたシール性が発現される。
【0041】
また、本実施形態では、シート材115は、弁座が弁体に着座する時において、突出部152の断面形状における曲率の設定によって弁座112に所定の圧力に対しシールに必要な面圧で面接触する。シート材115の突出部152の頂部付近(先端部154)の断面形状は半円形状であるが、流体圧が加わると、弁座112との接触により一定程度押し潰されるので、所定の面積のシール面が形成される。このシール面の面積と流体圧とにより当該シール面の面圧が定まる。この面圧が流体の封止に必要な値以上であれば、このシール面での流体封止が可能となる。シール面の面積は、突出部152頂部付近の断面半円形状の曲率Rと、圧力により当該部分が潰される量とによって求めることができる。潰される量は、シート材115の材料の物性から算出可能である。そこで、想定される範囲内の流体圧が弁体に加わった場合でも、流体の封止が可能となる面圧が得られるように、シート材115の突出部152の頂部付近の断面半円形状の曲率Rを設定することで、シール面におけるシールをより確実に行うことが可能となる。
【0042】
また、本実施形態では、突出部は基部と先端部とを含み、先端部の断面形状は基部の幅を直径とする半円形状である。この構成によれば、シート材の断面形状が180度の範囲で同一の曲率Rを有する半円形状となる。そのため、部分的にRが異なることがなく、あるいは部分的に平らな部分を含むことがなくなる。したがって、シート材の断面形状が上記の半円である範囲内であれば、どの位置で弁座にシート材が当接しても、同一のシール面積が得られるようになる。したがって、組み立てのばらつき、あるいは温度差によるシール部同士のずれまたはゆがみが生じ、その結果、シート材の突出部と弁座との当たり位置が変化したとしても、前述したシール面圧が確実に得られることになる。したがって、より確実にシール力を発揮する観点からより一層効果的とある。
【0043】
また、本実施形態では、弁体は弁座に向けて突出する外周壁部を有し、シート材の外周縁部の突出部の外周面が外周壁部に当接している。この構成によれば、シート材の突出部は、その内周側がシートリテーナに支持され、その外周側が弁体の外周壁部に支持され、底面側が弁体によって支持される。このようにシート材は、弁体およびシートリテーナによって、三方から囲まれて支持された状態となる。したがって、シート材に例えば極低温条件での収縮が生じても、突出部の形状が維持されやすい。その結果、突出部の頂部付近の断面半円形状も維持されやすくなり、よって突出部におけるシール性がより一層確実に発揮される。
【0044】
また、本実施形態では、突出部がシート材の外周縁部であるとともに弁体側の基部と、基部に連なる先端部と、を含み、かつ、弁体の厚さ方向において、外周壁部の頂面の位置は、基部と先端部との境界の位置と略同じである。極低温条件でのシート材の収縮による変形を抑制させるには、シート材の外形を保持することが好ましく、そのためには、シート材の突出部のなるべく多くの部分が他の部材によって支持されていることが好ましい。このような観点によれば、外周壁部はより高い方が好ましい。一方で、シート材の突出部の頂部付近における断面半円形状の部分(先端部)は、より露出していることが、シート材のずれまたはゆがみによる影響を吸収する観点から有利である。これらの観点から、弁体における外周壁部の高さが、シート材における突出部の先端部と基部との境界と略一致することで、シート材を突出部の基部で確実に保持しつつ、また断面半円形状の先端部による優れたシール性が得られる。
【0045】
また、本実施形態では、シート材は、固定部である薄板部の弁体側の面から突出する突起部をさらに有している。スイングチャッキ弁では、弁体と弁座とのシール性はシート材によって発揮される。その一方で、弁体とシート材との間を通って封止すべき流体が流出する、いわゆる「裏漏れ」の発生が懸念される。上記の構成によれば、薄板部と弁体との間に突起部を有することから、突起部の弁体との接触面における面圧をより高めることが可能となる。よって、裏漏れの発生をより防止することができる。特に、シート材の薄板部は、シートリテーナによって弁体側に押し付けられるので、薄板部におけるシートリテーナによって押し付けられる部分の裏側に突起部を配置することは、より高い面圧を発生させ、裏漏れの抑制により一層寄与する。また、突起部は、径方向において一つのみ形成されていることから、突起部が径方向に二以上配置される場合に比べて、高い面圧を発生させている。
【0046】
また、本実施形態では、シート材は超高分子量ポリエチレン製である。よって、シート材は適度な剛性と弾性とを備える。このため、極低温環境で使用される場合に、弁室および第一流路内における液面下および液面上での温度差が生じる場合であっても収縮による変形が抑制される。加えて、超低温などの変形しにくい環境においても弁座に対する十分なシール性を発現し得る。
【0047】
また、本実施形態では、スイングチャッキ弁は、寸胴部、中蓋、ボンネットに加え、真空ジャケット部をさらに有してもよい。真空ジャケット部を有することで、流体の熱がボンネットから外部に放出されることが抑制され、またボデーおよび流路から流体の熱が外部に放出されることが抑制される。よって、液体水素のような極低温の流体を大流量で取り扱う大口径のスイングチャッキ弁に有用である。
【0048】
〔変形例〕
本発明は上述した各実施形態に限定されず、請求項に示した範囲で種々の変更が可能である。異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態も本発明の技術的範囲に含まれる。
【0049】
たとえば、本発明の実施形態において、シート材の突出部における断面形状は、半円形の円弧の一部が直線に置き換えられた形状などの略半円状であってもよい。「略半円状」とは、断面形状において、前述した実施形態のような半円形の円弧に類する曲線で表面が表される形状である。その具体的な形状は、前述した実施形態の効果(高い接触性)が得られる範囲において適宜に決めてよい。略半円形の表面形状は、断面において、上記のように円弧の一部に直線を含んでいてもよいし、円弧の一部に異なる曲率の曲線を含んでいてもよい。
【0050】
シート材の突出部における断面の表面形状は、以下のような曲線長さ比Xによって特定することも可能である。下記式中、「l」は、突出部の断面形状における突出部の表面の部分の線の長さであり、「w」は、当該線の端部間の距離(基端部の幅W1と同じ)である。
(式)
X=l/w
【0051】
本発明において、曲線長さ比Xは1よりも大きければよいが、小さすぎると十分な接触性が得られないことがあり、大きすぎると極低温条件でのシート材の収縮による変形がシール性に影響を及ぼすことがある。曲線長さ比Xは、接触性を高める観点から1.2以上であってよく、1.3以上であってよく、1.5以上であってよい。また、曲線長さ比Xは、シート材の温度による変形を抑制する観点から2.0以下であってよく、1.8以下であってよく、1.6以下であってよい。なお、曲線長さ比Xがπ/2であり、かつ曲率が一定のとき、実施形態で前述した半円状である。
【0052】
また、本発明の実施形態において、シート材の内周縁部が突出部で、外周縁部が固定部であってもよい。
【0053】
また、本発明の実施形態において、弁体の外周縁部の高さの位置は、シート材の突出部における先端部と基部との境界の位置と同じであるが、厳密に同じでなくてもよい。前述したように、基部の確実な支持と先端部による優れたシール性との両方の効果が得られる範囲(例えば外周縁部の頂部の位置と当該境界の位置とが略同じ、の範疇)において、外周縁部の高さと当該境界の位置とを適宜に調整してよい。
【0054】
さらに、本実施形態のスイングチャッキ弁は、特に極低温流体用として特に好適であるが、その用途は極低温流体に限定されない。本実施形態のスイングチャッキ弁は、その他の温度域(常温、高温または低温)の流体に対しても有用である。また流体の種類も限定されず、本実施形態のスイングチャッキ弁は、液体および気体のいずれにも適用可能である。
【0055】
〔まとめ〕
以上の説明から明らかなように、本発明のスイングチャッキ弁(10)に係る第一の態様は、第一流路(3)および第二流路(4)に接続する弁室(11)を内部に有するボデー(1)と、弁室における第一流路の開口端である弁座(112)と、ヒンジ構造(114)でボデー内に振動可能に支持されて弁座に密着する弁体(113)と、を有するスイングチャッキ弁であって、弁体は、平面視したときの形状が環状であるシート材(115)と、シート材の一部に当接してシート材を弁体に固定するシートリテーナ(116)と、を有し、シート材の一方の周縁部は、シートリテーナと弁体とに挟まれて弁体に固定される固定部であり、シート材の他方の周縁部は、弁体とは反対側へ突出した形状に形成された、弁体着座時に弁座に当接する突出部(152)であり、突出部の断面形状が略半円状である。第一の態様によれば、極低温条件でも温度に起因するシート材の変形が抑制可能であり、かつ弁座に対してシート材が高い接触性を有するスイングチャッキ弁を実現することができる。
【0056】
本発明のスイングチャッキ弁に係る第二の態様は、第一の態様において、固定部がシート材の平面視したときの形状における内周縁部である薄板部(151)であり、突出部がシート材の平面視したときの形状における外周縁部であり、シートリテーナが弁体との間に薄板部を挟んで薄板部を弁体に締着して固定し、シートリテーナの外周面がシート材における突出部の内周面に接している。第二の態様は、使用環境に関わらずにシール性を高める観点からより一層効果的である。
【0057】
本発明のスイングチャッキ弁に係る第三の態様は、第一の態様または第二の態様において、シート材が弁体よりも柔軟な材料から構成され弁体が着座する時に弁座に接触して変形可能であり、突出部の断面形状における表面の曲率Rは、弁体が弁座に着座した時のシート材の、弁座との接触面において必要となる面圧が得られるように設定される。第三の態様は、シート材の弁座に対するシール性を高める観点からより一層効果的である。
【0058】
本発明のスイングチャッキ弁に係る第四の態様は、第一の態様から第三の態様のいずれかにおいて、突出部が弁体側の基部(153)と、基部に連なる先端部(154)とを含み、先端部の断面形状が基部の幅を直径する半円形状である。第四の態様は、シート材の弁座に対するシール性を高める観点からより一層効果的である。
【0059】
本発明のスイングチャッキ弁に係る第五の態様は、第一の態様から第四の態様のいずれかにおいて、弁体が弁座に対向する面の外縁部に弁座に向けて突出する外周壁部を有し、突出部がシート材の外周縁部であり、シート材の外周面が弁体の外周壁部に当接している。第五の態様は、シート材の弁体への固定を強化する観点からより一層効果的である。
【0060】
本発明のスイングチャッキ弁に係る第六の態様は、第一の態様から第五の態様のいずれかにおいて、弁座に対向する面の外縁部に弁座に向けて突出する外周壁部を弁体が有し、突出部がシート材の外周縁部であり、かつ弁体側の基部と、基部に連なる先端部と、を含み、弁体の厚さ方向における外周壁部の頂面の位置は、基部と先端部との境界の位置と略同じである。第六の態様は、シート材の弁体に対する固定と弁座に対するシール性とを高める観点からより一層効果的である。
【0061】
本発明のスイングチャッキ弁に係る第七の態様は、第一の態様から第六の態様のいずれかにおいて、固定部がシート材の平面視したときの形状における内周縁部である薄板部であり、シート材が、薄板部の弁体との対向面から弁体側に突出する突起部(155)をさらに有する。第七の態様は、裏漏れを防止してシール性を高める観点からより一層効果的である。
【0062】
本発明のスイングチャッキ弁に係る第八の態様は、第一の態様から第七の態様のいずれかにおいて、シート材が超高分子量ポリエチレン製である。第八の態様は、極低温の流体であってもシール性を十分に高める観点からより一層効果的である。
【0063】
本発明のスイングチャッキ弁に係る第九の態様は、第一の態様から第八の態様のいずれかにおいて、ボデーが、弁室に連通する寸胴部(12)と、弁室における寸胴部との境界に配置されて弁室を寸胴部から区切る中蓋(13)と、寸胴部の外部に対する開口部を塞ぐボンネット(2)と、寸胴部、弁室、第一流路および第二流路を外方から覆う真空ジャケット部と、をさらに有する。第九の態様は、大流量の極低温の流体の用途に適用でき、かつ極低温の流体の冷熱の外部への放出を抑制する観点からより一層効果的である。
【0064】
本発明によれば、液体水素のような極低温の流体にも使用可能な大口径のスイングチャッキ弁が提供される。これにより、水素社会の推進への寄与が期待され、持続可能な開発目標(SDGs)のクリーンエネルギーの普及に関する目標7の達成に貢献することが期待される。
【符号の説明】
【0065】
1 ボデー
2 ボンネット
3 第一流路
4 第二流路
10 スイングチャッキ弁
11 弁室
12 寸胴部
13 中蓋
21、131 取っ手リング
112 弁座
113 弁体
114 ヒンジ構造
115 シート材
116 シートリテーナ
117 外周壁部
118 ネジ
119 凹部
120 切り欠き部
151 薄板部
152 突出部
153 基部
154 先端部
155 突起部