(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024095876
(43)【公開日】2024-07-11
(54)【発明の名称】容器の耐圧測定装置及び耐圧測定方法
(51)【国際特許分類】
G01L 11/00 20060101AFI20240704BHJP
【FI】
G01L11/00 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022212842
(22)【出願日】2022-12-29
(71)【出願人】
【識別番号】509028888
【氏名又は名称】株式会社アネスティ
(74)【代理人】
【識別番号】110000235
【氏名又は名称】弁理士法人 天城国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】内山 宏
【テーマコード(参考)】
2F055
【Fターム(参考)】
2F055AA13
2F055BB20
2F055CC60
2F055EE40
2F055FF11
2F055FF43
2F055GG11
(57)【要約】 (修正有)
【課題】アルミ缶等の容器の内圧の測定を、容器自体を分断したり破断することなしに、正確に測定できる容器耐圧測定装置を提供する。
【解決手段】本発明に係る耐圧測定装置は、容器を所定位置に固定する容器固定部と、容器から離れた待機位置から容器に突き刺さる使用位置に移動可能な流体注入針と、流体注入針を支持し、流体注入針と一体的に移動可能な針支持台と、針支持台を駆動する駆動部と、使用位置の流体注入針及び流体供給路を通して容器内に流体を供給する流体供給部と。容器内に連通して、容器内の圧力を測定する圧力センサとを備えている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
容器を所定位置に固定する容器固定部と、
前記容器から離れた待機位置から前記容器に突き刺さる使用位置に移動可能な流体注入針と、
前記流体注入針を支持し、前記流体注入針と一体的に移動可能な針支持台と、
前記針支持台を駆動する駆動部と、
前記使用位置の前記流体注入針及び流体供給路を通して前記容器内に流体を供給する流体供給部と、
前記容器内に連通して、前記容器内の圧力を測定する圧力センサと、
を備えた、容器の耐圧測定装置。
【請求項2】
前記針支持台は、前記流体注入針が前記使用位置の時に、前記容器の表面に当接して前記流体注入針の周囲を密封するシールリングを有した、請求項1に記載の容器の耐圧測定装置。
【請求項3】
前記針支持台は、前記流体注入針と共に前記容器に突き刺さる流体排出針を有し、
前記流体排出針には、流体排出路を介して遮断弁が接続された、請求項1又は2に記載の容器の耐圧測定装置。
【請求項4】
前記圧力センサは、前記流体排出路に配設された、請求項3に記載の容器の耐圧測定装置。
【請求項5】
前記圧力センサは、前記流体供給路に配設された、請求項1又は2に記載の容器の耐圧測定装置。
【請求項6】
前記駆動部は、液圧シリンダ装置である、請求項1又は2に記載の容器の耐圧測定装置。
【請求項7】
前記駆動部は、電動式アクチュエータである、請求項1又は2に記載の容器の耐圧測定装置。
【請求項8】
前記駆動部は、前記流体注入針もしくは前記流体排出針が容器耐圧測定中に破損した場合においても仕掛かり中の容器の検査が終了するまで、一連の動作を継続させる、請求項3に記載の容器の耐圧測定装置。
【請求項9】
前記駆動部は、前記流体注入針もしくは前記流体排出針が容器耐圧測定中に破損した場合において、仕掛かっている容器の検査が終了すると装置自体を停止させる、請求項3に記載の容器の耐圧測定装置。
【請求項10】
容器の内圧を測定する耐圧測定方法であって、
移動可能な流体注入針を前記容器に突き刺す工程と、
流体供給部から前記流体注入針を通して内圧付加用の流体を前記容器内に注入する工程と、
前記容器内に連通した圧力センサにより、内圧付加中の前記容器の内圧を測定し、前記容器が変形する時の圧力値を検出する工程と、
を含む、容器の耐圧測定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、容器の耐圧測定装置及び耐圧測定方法に関し、特に、ビールや炭酸飲料が充填されたアルミ缶等のように、温度変化や振動等により内圧に変化が生じやすい容器の測定に適した耐圧測定装置及び耐圧測定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ビール缶や炭酸飲料缶等の容器の耐圧測定装置として、
図7に示すような装置がある。
図7の耐圧測定装置は、円柱状の缶嵌合部102を有する基台101と、缶嵌合部102の径方向外方に径方向移動可能に配置されたクランプ部材103とを備えている。基台101の中央には、流体供給部105に接続する内圧付加用の流体注入孔104が形成されている。
【0003】
アルミ製の缶の内圧を測定する場合、測定作業の前工程として、
図8に示すように、缶100の円筒形の胴部を輪切りにすることにより、底部100c側のカップ形状部100aと、蓋部100d側のカップ形状部100bとに分断している。
【0004】
次に、一方のカップ形状部、たとえば底部100c側のカップ形状部100aの開口端部を、
図7に示すように缶嵌合部102の外周面に嵌め、クランプ部材103で径方向外方から締め付けている。これにより、クランプ部材103と缶嵌合部102との間で密封状態に挟持し、流体注入孔104から流体を注入することにより、内圧を上昇させている。そして、内圧上昇中、カップ形状部100aが外方に膨らむバックリンク現象あるいはクラック発生等の変形が生じる時の圧力を、流体供給部105の吐出側に配置した圧力センサ等により測定している。さらに、必要に応じて蓋部100d側のカップ形状部100bも同様に測定している。
【0005】
別の従来例として、特許文献1に記載された缶の内圧検査装置がある。この装置は、缶の胴部の外周を受けローラとヘッドで両側から弾性的に挟持し、ヘッド側に設けた荷重測定部により胴部からの反力を検出し、反力の荷重値に基づいて缶内圧を検出している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、
図7の従来装置では、缶100を2つに分断する作業と、分断された各カップ形状部100a,100bを個々に測定する作業とが必要となる。したがって、測定前の準備作業並びに測定作業の工程数が増え、作業効率が良くなかった。さらに、半分に切断したカップ形状部100a,100bの内圧を測定するので、全体形状を有する缶の内圧を測定する場合と比較すると、カップ形状部100a,100bの剛性が高いと推定でき、カップ形状部の測定だけでは、全体形状の缶100の変形時の圧力を正確に検出することは難しかった。
【0008】
また、特許文献1に記載された缶の耐圧測定装置では、缶の切断作業を必要としない。しかしながら、筒形胴部の外周面に当接するヘッドにより測定する反力の荷重値に基づいて、間接的に内圧を検出するので、正確な内圧を測定することができない。
【0009】
本発明の目的は、容器を切断する作業を必要とすることなしに、さらに、容器の内圧を精度よく直接測定できる容器の耐圧測定装置及び耐圧測定方法を提供することにある。
【0010】
上記課題を解決するため本発明に係る容器の耐圧測定装置は、容器を所定位置に固定する容器固定部と、前記容器から離れた待機位置から前記容器に突き刺さる使用位置に移動可能な流体注入針と、前記流体注入針を支持し、前記流体注入針と一体的に移動可能な針支持台と、前記針支持台を駆動する駆動部と、前記使用位置の前記流体注入針及び流体供給路を通して前記容器内に流体を供給する流体供給部と、前記容器内に連通して、前記容器内の圧力を測定する圧力センサとを備えている。
【0011】
この構成によれば、容器を切断することなく、容器全体を所定位置に固定した状態で容器の内圧を測定でき、測定前の準備作業に手間がかからない。さらに、所定位置に固定した容器に流体注入針を突き刺し、流体供給部からの流体により容器の内圧を増加させながら容器に連通した圧力センサにより直接内圧を測定する。したがって、従来と比較すると、容器の内圧の測定精度を向上させることが可能となる。
【0012】
本発明は、前記構成に加え、次のような要件を有する態様とすることができる。
【0013】
(a)前記針支持台は、前記流体注入針が前記使用位置の時に、前記容器の表面に当接して前記流体注入針の周囲を密封するシールリングを有している。
【0014】
この構成によれば、突き刺した流体注入針の外周面と容器の突き刺し孔との隙間から流体が漏れても、シールリングにより外部に漏出するのを阻止でき、内圧の測定精度を維持できる。
【0015】
(b)前記針支持台は、前記流体注入針と共に前記容器に突き刺さる流体排出針を有し、前記流体排出針には、流体排出路を介して遮断弁が接続されている。
【0016】
この構成によれば、容器内の流体を排出可能な流体排出路を有していることにより、流体注入時、余分な流体を排出して、容器内の流体の充填効率を向上させることができる。さらに、遮断弁を有しているので、遮断状態として流体排出路の圧力を測定することができる。すなわち、流体が静止した状態で圧力を測定でき、測定精度を維持できる。
【0017】
(c)前記流体排出路を有する耐圧測定装置は、前記圧力センサが、前記流体排出路に配設されている。
【0018】
(d)前記圧力センサは、前記流体排出路に配置する代わりに、あるいは追加圧力センサとして、前記流体供給路に配設されている。
【0019】
(e)前記駆動部は、液圧シリンダ装置、あるいは電動式アクチュエータである。
【0020】
(f)前記駆動部は、前記流体注入針もしくは前記流体排出針が容器耐圧測定中に破損した場合においても仕掛かり中の容器の検査が終了するまで、一連の動作を継続させる。
【0021】
(g)前記駆動部は、前記流体注入針もしくは前記流体排出針が容器耐圧測定中に破損した場合において、仕掛かっている容器の検査が終了すると装置自体を停止させる。
【0022】
また、容器の耐圧測定方法として、移動可能な流体注入針を前記容器に突き刺す工程と、流体供給部から前記流体注入針を通して内圧付加用の流体を前記容器内に注入する工程と、前記容器内に連通した圧力センサにより、内圧付加中の前記容器の内圧を測定し、前記容器が変形する時の圧力値を検出する工程と、を含む耐圧測定方法を提供する。
【発明の効果】
【0023】
本発明によると、缶等の容器を切断することなく、容器全体を所定位置に固定した状態で容器の内圧を測定でき、測定前の準備作業に手間がかからない。さらに、所定位置に固定した状態の容器に流体注入針を突き刺し、流体供給部からの流体により容器の内圧を増加させながら容器内に連通する圧力センサにより直接内圧を測定できる。従って、容器の内圧の測定精度を向上させることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】本発明の第1の実施形態に係る容器の耐圧測定装置の部分断面図である。
【
図2】
図1の耐圧測定装置を一部断面で示した右側面図である。
【
図3】
図1の耐圧測定装置の針支持台の平面図である。
【
図4】固定ジグを取り付けた容器の縦断面図である。
【
図5】流体注入針を使用位置に移動した状態の
図1の耐圧測定装置の正面図である。
【
図6】本発明の第2の実施形態に係る容器の耐圧測定装置の部分断面図である。
【
図8】従来の耐圧測定方法の前処理工程を示した容器の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
[第1の実施形態]
図1は、本発明の第1の実施形態に係る容器10の耐圧測定装置1を一部断面で示した正面図である。
図1において、耐圧測定装置1は、主としてビール缶等のアルミ製の容器10を所定位置に固定する容器固定部2と、固定された容器10から下方に離れた待機位置P1に配置された流体注入針3と、流体注入針3を支持する円板形の針支持台4と、流体注入針3を待機位置P1から容器10の蓋部10aに突き刺さる使用位置P2まで上昇させる駆動部5と、流体供給路6及び流体注入針3を通して容器10内に内圧付加用の流体を供給する流体供給部7と、容器10内に連通して容器10内の圧力を測定する圧力センサ8と、を備えて構成される。
【0026】
前記各部分を保持する部材として、工場内の架台等に設置されたベースプレート11と、ベースプレート11の前部に垂直に立設された左右一対のガイド支柱12と、ベースプレート11の後部に立設された1本のガイド支柱12aと、3本のガイド支柱12,12aの上端に固定された容器取付台15と、前部の2本のガイド支柱12に上下方向移動自在に嵌合するブッシュ16に固定支持された昇降台20と、を備えて構成される。
【0027】
容器固定部2の構成を説明する。容器取付台15の中央には、針支持台4が挿入可能な大きさの円形の貫通孔24が形成されている。容器取付台15の上面には断面形状がL字形の環状押さえ部材25が配置され、複数本のボルト26により容器取付台15に着脱自在に取り付けられている。容器10の蓋部10aには、内周テーパー面を有するリング状の固定ジグ27が係合している。固定ジグ27が装着された容器10は貫通孔24の上側に下向きの倒立姿勢で配置され、固定ジグ27の下面外周端部が容器取付台15の上面に形成された環状段部29に嵌め込まれている。固定ジグ27は環状押さえ部材25の上壁と容器取付台15の上面との間で挟持されることにより、所定位置に固定されている。
【0028】
流体注入針3及び針支持台4の構成を説明する。針支持台4は、昇降台20から垂直に立ち上がる脚板30の上端に固着されている。針支持台4には、流体注入針3に加え、容器10内の流体を外部に排出できる流体排出針31が配置されている。流体注入針3と流体排出針31は左右に相互に間隔をおいて配置され、針支持台4に形成された左右一対の嵌着孔にそれぞれ嵌着されている。針支持台4には流体注入針3及び流体排出針31を取り囲むように、環状のシール嵌着溝41が形成されており、このシール嵌着溝41にはシールリング42が嵌着されている。シールリング42は、流体注入針3及び流体排出針31が上昇して使用位置P2に至った時には、容器10の蓋部10aの周縁突起に圧接して、蓋部10aの下面を密封する。
【0029】
流体注入針3及び流体排出針31は注射針と同様の構造であり、管部材の先端部を斜めに切除してなる傾斜刃面を有している。流体注入針3の傾斜刃面の開口から流体が容器10内に注入され、一方、流体排出針31の傾斜刃面の開口から容器10内の流体が排出される。流体注入針3の斜めの開口と流体排出針31の斜めの開口は、互いに反対方向に向くように位置される。この構成により、流体注入針3から容器10内に注入した流体が、直接に、流体排出針31から排出されないような構成となっている。
【0030】
流体注入針3の下部及び流体排出針31の下部は、針支持台4から下方に延び、下側に配置された食い込み継手33,34の上部にそれぞれ接続されている。昇降台20には、食い込み継手33,34にそれぞれ対応する位置にソケット継手35,36が配置され、昇降台20を上下に貫通する状態で昇降台20に固着されている。各ソケット継手35、36の上部雌ねじには各食い込み継手33,34のテーパーねじ部がねじ結合され、ソケット継手35、36の下部雌ねじにはL字形継手(エルボ継手)37,38がねじ結合により接続されている。
【0031】
流体注入針3用のL字形継手37には、上述の流体供給路(流体供給管)6の可撓部6aが接続されている。可撓部6aはゴム等により湾曲状に撓み自在となるように構成されている。流体供給路6に接続された流体供給部7は、たとえば流体タンク51,吐出ポンプ52及び流量制御装置53等から構成される。ここで、流量制御装置53は、図示しないが調圧弁及び流量調整弁等を備える。本実施形態では、容器10内に注入される流体として「水」を利用する。従って、流体タンク51内には水が貯留され、吐出ポンプ52は水ポンプで構成される。
【0032】
流体排出針31用のL字形継手38には、流体排出路(流体排出管)40の可撓部40aが接続されている。流体排出路40には遮断弁57が設けられ、遮断弁57より上流側に上述の圧力センサ8が接続されている。すなわち、遮断弁57が開かれることにより容器10内の流体が排出され、反対に遮断弁57が閉じられることにより、容器10内の内圧上昇が維持された状態で、圧力センサ8により容器10内の内圧が測定される。
【0033】
駆動部5の構成を説明する。駆動部5は、液圧式又は空圧式の複動形のシリンダ装置58を備えている。シリンダ装置58のロッド59は上方に突出されて昇降台20に連結されている。この構成により、ロッド59の上下方向の伸縮動作により昇降台20が昇降される。シリンダ装置58内の下側流体室に連通される第1ポート61及び上側流体室に連通される第2ポート62は、それぞれ流路63、64を介して切換弁67に接続され、切換弁67により、吐出ポンプ66と戻り流路68との間で切り換え接続される。
【0034】
図2は一部断面で示す
図1の耐圧測定装置1の右側面図である。ここで、容器取付前の状態が図示される。
図2において、シリンダ装置58のロッド59と針支持台4とは前後方向にずれた位置に配設されている。ロッド59の上端ねじ部分に、外向きフランジ60cを有する筒ナット60a及びロックナット60bが螺合され、筒ナット60aの外向きフランジ60cが抜け止め部材60dにより下方へ抜けないように係止されている。この構成により、昇降台20はロッド59の上下方向の伸縮に伴って上下方向に移動することが可能となる。昇降台20はロッド59との連結部分から後方に延び、後部に針支持台4が設けられている。
【0035】
昇降台20の前部と容器取付台15の前部との間には、昇降台20の昇降ストロークSを規制するストッパー機構70が設けられている。ストッパー機構70は、昇降台20の上面に設けられた当接部71と、当接部71に上方から対向するように容器取付台15の下面に設けられたストッパーボルト72とから構成されている。ストッパーボルト72は、容器取付台15に下方突出量調節自在に螺合され、ロックナット73により所望の突出量に調節される。この構成により、流体注入針3の最大ストロークSを調整することが可能となる。
【0036】
図3は針支持台4の平面図である。ここで、針支持台4が円形状に形成され、流体注入針3と流体排出針31とが左右に間隔を置いて配置され、シールリング42が流体注入針3と流体排出針31を取り囲むように配置されている。
【0037】
[第1の実施形態による動作及び耐圧測定方法]
(1)
図4において、内圧測定作業の前工程として、測定対象となる容器(ビール缶等)10の蓋部10aに固定ジグ27を装着し、それら容器10を複数個準備する。
図1において、流体注入針3及び流体排出針31は待機位置P1まで下げておく。
【0038】
(2)固定ジグ27が装着された容器10を、底部10cが上に、蓋部10aが下に位置するように倒立姿勢にして、容器取付台15に載置する。その際、固定ジグ27の下端外周部を容器取付台15の環状段部29に嵌合することにより容器10の位置決めをする。
【0039】
(3)ボルト26で押さえ部材25を容器取付台15に締着することにより、押さえ部材25の上壁と容器取付台15の間で固定ジグ27を挟持する。これにより、容器10の容器固定部2への取付作業が完了する。
【0040】
(4)次に、シリンダ装置58の切り換え操作によりロッド59を上昇させ、昇降台20及び針支持台4を一体的に上昇させる。これにより、流体注入針3、流体排出針31及びシールリング42が一体的に上昇する。この上昇過程で流体注入針3及び流体排出針31が容器10の蓋部10aに突き刺さり、
図5に示すように使用位置P2に至る。同時にシールリング42は蓋部10aの端縁部に圧接する。これにより、流体注入針3の外周面と蓋部10aの突き刺し孔の隙間、並びに流体排出針31の外周面と蓋部10aの突き刺し孔の隙間から容器10の内圧が外部に漏れるのを防ぐことができる。
【0041】
(5)
図5のように流体注入針3及び流体排出針31が使用位置P2に至った状態で、流体供給部7から流体供給路6、L字形継手37、ソケット継手35、及び流体注入針3を通して流体を容器10内に圧入する。
【0042】
(6)容器10内への流体供給を開始してしばらくして後、流体排出路40の遮断弁57を閉じることにより、容器10の内圧を上昇させる。
【0043】
(7)容器10の内圧の上昇に伴い、当然、圧力センサ8による検出圧力値も上昇する。
【0044】
(8)内圧の上昇により容器10が外側に膨らむバックリンク現象が生じた時に、圧力センサ8による検出圧力値を読み取る。すなわち、内圧上昇によりバックリンク現象が生じる時の内圧を、正確に検出できる。
【0045】
(9)バックリンク現象が生じた後、さらに圧力上昇させると、クラックあるいは破壊が生じることが有り、その検出圧力値も圧力センサ8により正確かつ簡単に確認できる。
【0046】
(10)前記のような内圧測定を、同一形状及び同一仕様の複数個の容器で実施することにより、正確に同一仕様の容器10の耐圧値を知ることができる。
【0047】
[第1の実施形態の効果]
第1の実施形態に係る容器の耐圧測定装置1による効果は以下の通りである。
【0048】
(1)測定前に測定対象となる容器10を2つに分断する作業を行う必要がなく、測定前の作業を減らすことができる。
【0049】
(2)容器10を分断せずに、市場で使用される状態の容器10をそのまま耐圧測定装置1に取り付け、内圧上昇させてバックリンク現象及びクラック現象等の圧力値を検出することができる。従って、現実に即した容器10の耐圧能力を検査できる。
【0050】
(3)流体注入針3と共に流体排出針31を設け、これらを同時に容器10に突き刺すので、突き刺し時に遮断弁57を開いておくことにより、流体排出針31で容器10内の圧力を抜きつつ、流体注入針3を容器10に突き刺すことができ、突き刺し動作を円滑に行うことができる。
【0051】
(4)圧力センサ8を、流体排出針31に接続された流体排出路40に配置しているので、吐出ポンプ52を有する流体供給路6に配置する場合と比較すると、測定時の圧力変動が少なく、より正確に容器内圧を測定することができる。
【0052】
(5)流体注入針3及び流体排出針31の周囲をシールリング42で囲み、流体注入針3及び流体排出針31を使用位置P2まで上昇させた時に、シールリング42が容器10の蓋部10aに圧接されるように構成されている。この構成により、流体注入針3及び流体排出針31と容器10の突き刺し孔との間の隙間から漏れる流体を封止でき、流体漏れによる容器内圧の変化を防止できる。
【0053】
[本発明の第2の実施の形態]
図6は、本発明の第2の実施の形態に係る容器の耐圧測定装置1である。上述の第1の実施形態に係る容器の耐圧測定装置1と比較すると、圧力センサ8が流体注入針3側の流体供給路6に接続されていることが相違する。その他の構造は第1の実施形態と同様であり、同じ部品には同じ番号を付している。
【0054】
第2の実施形態に係る容器の耐圧測定装置1によれば、本来、吐出ポンプ52に付属している圧力センサをそのまま利用することも可能で、その場合にはさらにコストを低減することが可能となる。勿論、流体排出路40と流体供給路6との両方に圧力センサ8を備えてもよい。
【0055】
[その他の実施形態]
(1)上述した実施形態では、流体注入針に供給する流体として「水」を用い、吐出ポンプとして水ポンプを用いた。しかしながら、本発明はこれに限定されず、例えば窒素ガス等の気体を容器に注入するように構成されてもよいし、水以外の薬液(液体)を流体として供給するように構成されてもよい。この場合でも、第1及び第2の実施形態と同様の作用効果を得ることができる。
【0056】
(2)本発明において、流体注入針を待機位置から使用位置まで移動させる駆動部として、空圧式のシリンダ装置を備えて構成されてもよい。この場合でも、第1及び第2の実施形態と同様の作用効果を得ることができる。
【0057】
(3)本発明において、流体注入針の駆動部として、電動式アクチュエータを備えて構成されてもよい。この場合には、たとえば、ステッピング電動モータの回転を、カム機構あるいはリンク機構により直線往復運動に変換する電動式アクチュエータであってもよい。この場合でも、第1及び第2の実施形態と同様の作用効果を得ることができる。
【0058】
(4)本発明において、容器を所定位置に固定する容器固定部として、ボルト締結構造の代わりに、クランプ機構を用いて構成されてもよい。この場合には、たとえば、
図1の押さえ部材25をヒンジ式の回動開閉構造として、押さえ部材25の周縁部に複数のトグルクランプを備え、トグルクランプにより、閉じ状態の押さえ部材25を容器取付台15に押さえ付けるように構成されてもよい。この場合でも、第1及び第2の実施形態と同様の作用効果を得ることができる。
【0059】
(5)本発明において、容器を水平姿勢に固定し、流体注入針を待機位置から水平方向に動かして容器の蓋部あるいは底部に突き刺すように構成されてもよい。さらに、本発明において、蓋部が上に位置するように容器を固定し、流体注入針を上方から容器の蓋部に上から突き刺すように構成されてもよい。この場合でも、第1及び第2の実施形態と同様の作用効果を得ることができる。
【0060】
(6)本発明において、流体排出針を有さない構成とすることも可能である。この場合でも、第1及び第2の実施形態と同様の作用効果を得ることができる。
【0061】
(7)本発明において、駆動部は、流体注入針もしくは流体排出針が容器耐圧測定中に破損した場合において、仕掛かり中の容器の検査が終了するまで、一連の動作を継続させるように構成されてもよい。この場合でも、第1及び第2の実施形態と同様の作用効果を得ることができる。さらに、駆動部は、仕掛かっている容器の検査が終了する時点(タイミング)において、装置自体を停止させるように構成されてもよく、装置自体が停止された状態において、破損された流体注入針もしくは流体排出針を取り換えることができる。
【0062】
(8)上記実施形態では、測定される容器はアルミ製の缶として説明されたが、本発明はこれに限定されない。例えば、本発明は、測定される容器として鉄製の缶やペットボトルであってもよい。この場合でも、第1及び第2の実施形態と同様の作用効果を得ることができる。
【0063】
本発明の幾つかの実施形態を説明したが、前記各実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施しうるものであり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これらの実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると共に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0064】
1 耐圧測定装置
2 容器固定部
3 流体注入針
4 針支持台
5 駆動部
6 流体供給路
7 流体供給部
8 圧力センサ
10 容器
10a 蓋部
15 取付台
25 押さえ部材(容器固定部の部品)
26 ボルト(容器固定部の部品)
31 流体排出針
40 流体排出路
42 シールリング
57 遮断弁
58 液圧式のシリンダ装置《駆動部の一例》