(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024095887
(43)【公開日】2024-07-11
(54)【発明の名称】保守作業計画システム及び保守作業計画方法
(51)【国際特許分類】
G06Q 10/20 20230101AFI20240704BHJP
【FI】
G06Q10/20
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022212858
(22)【出願日】2022-12-29
(71)【出願人】
【識別番号】000232955
【氏名又は名称】株式会社日立ビルシステム
(74)【代理人】
【識別番号】110002365
【氏名又は名称】弁理士法人サンネクスト国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】長野 寛樹
(72)【発明者】
【氏名】三好 雅則
(72)【発明者】
【氏名】渡部 恭志
(72)【発明者】
【氏名】竹中 浩一
【テーマコード(参考)】
5L049
【Fターム(参考)】
5L049CC15
(57)【要約】 (修正有)
【課題】設備における保守作業の作業計画を作成及び調整する保守作業計画システム及び保守作業計画方法を提供する。
【解決手段】保守作業計画システム1は、顧客から予定作業の時間短縮の依頼を受領した場合に、当該予定作業に含まれる保守作業のうちから、必須の保守作業を選択して予定作業を再編成する必須作業選択部28と、再編成された予定作業における作業時間の短縮を検討し、当該短縮によって顧客からの依頼への対応可否を判断する短縮対応判断部29と、を備える。顧客からの依頼に対応可能と判断された場合、自動割付部25が、再編成された予定作業に対して、短縮対応判断部29による作業時間の短縮の検討結果を反映して作業員の割付を再実行し、通知情報作成部26が、再実行された割付結果に基づいて、再編成された予定作業の作業計画を示す通知情報を作成し、顧客端末に送信する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
顧客が保守契約を結んでいる1以上の設備に対する保守作業の作業計画を作成して前記顧客に通知する保守作業計画システムであって、
前記顧客ごとの設備について、所定期間の作業計画に含まれる複数の保守作業のうちから、当該設備において直近に実施しようとする予定作業に含まれる1以上の保守作業を選択する作業選択部と、
前記作業選択部によって選択された1以上の保守作業から構成される前記予定作業について、複数の作業員の属性情報と割付の制約情報とに基づいて、当該予定作業を実施する作業員をプログラム処理によって割り付ける自動割付部と、
前記自動割付部による割付結果に基づいて、前記顧客ごとに、前記予定作業の作業計画を示す通知情報を作成し、前記顧客の顧客端末に送信する通知情報作成部と、
前記顧客端末から前記通知情報に対する顧客からの応答を受領する顧客応答受領部と、
前記顧客応答受領部が、前記予定作業の時間短縮の依頼を受領した場合に、当該予定作業に含まれる1以上の保守作業のうちから、所定の手法から必須とされる保守作業を選択して前記予定作業を再編成する必須作業選択部と、
前記必須作業選択部によって再編成された予定作業における作業時間の短縮を検討し、当該短縮によって前記顧客からの時間短縮の依頼に対応できるか否かを判断する短縮対応判断部と、
を備え、
前記短縮対応判断部が前記顧客からの依頼に対応可能と判断した場合には、
前記自動割付部が、前記再編成された予定作業に対して、前記短縮対応判断部による作業時間の短縮の検討結果を反映して前記作業員の割付を再実行し、
前記通知情報作成部が、前記自動割付部による再実行された割付結果に基づいて、前記再編成された予定作業の作業計画を示す通知情報を作成し、前記時間短縮を依頼した顧客の顧客端末に送信する
ことを特徴とする保守作業計画システム。
【請求項2】
前記短縮対応判断部は、再編成された予定作業における作業時間の短縮を検討する時間短縮可否判定を実行した結果、前記顧客の依頼に応えられるだけの時間短縮が実現可能であると判定した場合、かつ、所定期間におけるすべての前記顧客からの時間短縮の総依頼数が所定の閾値を超えない場合に、前記顧客からの依頼に対応可能と判断する
ことを特徴とする請求項1に記載の保守作業計画システム。
【請求項3】
前記短縮対応判断部は、時間短縮可否判定を実行した結果、前記顧客の依頼に応えられるだけの時間短縮が実現不可能であると判定した場合、または、所定期間におけるすべての前記顧客からの時間短縮の総依頼数が所定の閾値以上である場合に、前記顧客からの依頼に対応不可能と判断し、
前記短縮対応判断部によって対応不可能と判断された場合には、前記通知情報作成部が、対応不可能である旨を示す通知情報を作成して、該当する顧客の顧客端末に送信する
ことを特徴とする請求項2に記載の保守作業計画システム。
【請求項4】
前記時間短縮可否判定は、前記再編成された予定作業に含まれる1以上の保守作業について作業時間を短縮可能な複数の調整段階の試行を含み、前記複数の調整段階の試行は、作業時間の短縮効果に期待できると想定される順で段階的に実施される
ことを特徴とする請求項2に記載の保守作業計画システム。
【請求項5】
前記時間短縮可否判定における第1の調整段階として、
前記短縮対応判断部は、前記再編成された予定作業に含まれる1以上の保守作業について、各保守作業の作業期限に基づいて、今回の作業予定よりも後に繰り越し可能な保守作業が存在するか否かを確認し、前記繰り越し可能な保守作業を前記再編成された予定作業から削除したときの総作業時間が所定の短縮条件を満たす場合に、前記顧客の依頼に応えられるだけの時間短縮が実現可能であると判定する
ことを特徴とする請求項4に記載の保守作業計画システム。
【請求項6】
前記時間短縮可否判定において前記第1の調整段階よりも下位の第2の調整段階として、
前記短縮対応判断部は、前記再編成された予定作業に含まれる1以上の保守作業について、猶予時間が設定された保守作業が存在するか否かを確認し、前記猶予時間を前記再編成された予定作業から削除したときの総作業時間が所定の短縮条件を満たす場合に、前記顧客の依頼に応えられるだけの時間短縮が実現可能であると判定する
ことを特徴とする請求項5に記載の保守作業計画システム。
【請求項7】
前記時間短縮可否判定において前記第2の調整段階よりも下位の第3の調整段階として、
前記短縮対応判断部は、前記再編成された予定作業に含まれる1以上の保守作業について、作業員を増員できるか否かを確認し、前記再編成された予定作業で作業員を増員したときの総作業時間が所定の短縮条件を満たす場合に、前記顧客の依頼に応えられるだけの時間短縮が実現可能であると判定する
ことを特徴とする請求項6に記載の保守作業計画システム。
【請求項8】
前記予定作業に含まれる複数の保守作業について、各保守作業を構成する1以上の詳細作業を比較し、当該予定作業の構成から、保守作業間で重複する詳細作業の重複分を除去する重複作業除去部と、をさらに備える
ことを特徴とする請求項1に記載の保守作業計画システム。
【請求項9】
前記通知情報作成部は、
前記通知情報を作成する際に、前記所定期間におけるすべての前記顧客からの時間短縮の総依頼数が前記所定の閾値に到達しているか否かを判断し、
前記総依頼数が前記所定の閾値に到達している場合には、前記顧客から時間短縮の依頼が行えないようにする通知情報を作成して当該顧客の顧客端末に送信する
ことを特徴とする請求項2に記載の保守作業計画システム。
【請求項10】
顧客が保守契約を結んでいる1以上の設備に対する保守作業の作業計画を作成して前記顧客に通知する保守作業計画システムによる保守作業計画方法であって、
前記保守作業計画システムが、前記顧客ごとの設備について、所定期間の作業計画に含まれる複数の保守作業のうちから、当該設備において直近に実施しようとする予定作業に含まれる1以上の保守作業を選択する作業選択ステップと、
前記保守作業計画システムが、前記作業選択ステップで選択された1以上の保守作業から構成される前記予定作業について、複数の作業員の属性情報と割付の制約情報とに基づいて、当該予定作業を実施する作業員をプログラム処理によって割り付ける自動割付ステップと、
前記保守作業計画システムが、前記自動割付ステップの割付結果に基づいて、前記顧客ごとに、前記予定作業の作業計画を示す通知情報を作成し、前記顧客の顧客端末に送信する通知情報作成ステップと、
前記保守作業計画システムが、前記顧客端末から前記通知情報に対する顧客からの応答を受領する顧客応答受領ステップと、
前記顧客応答受領ステップで前記予定作業の時間短縮の依頼を受領した場合に、前記保守作業計画システムが、当該予定作業に含まれる1以上の保守作業のうちから、所定の手法から必須とされる保守作業を選択して前記予定作業を再編成する必須作業選択ステップと、
前記保守作業計画システムが、前記必須作業選択ステップで再編成された予定作業における作業時間の短縮を検討し、当該短縮によって前記顧客からの時間短縮の依頼に対応できるか否かを判断する短縮対応判断ステップと、
前記短縮対応判断ステップにおいて前記顧客からの依頼に対応可能と判断された場合に、前記保守作業計画システムが、前記再編成された予定作業に対して、前記短縮対応判断ステップにおける作業時間の短縮の検討結果を反映して前記作業員の割付を再実行する再割付ステップと、
前記保守作業計画システムが、前記再割付ステップで再実行された割付結果に基づいて、前記再編成された予定作業の作業計画を示す通知情報を作成し、前記時間短縮を依頼した顧客の顧客端末に送信する通知情報再作成ステップと、
を備えることを特徴とする保守作業計画方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、保守作業計画システム及び保守作業計画方法に関し、昇降機等の設備における保守作業の作業計画を作成及び調整する保守作業計画システム及び保守作業計画方法に適用して好適なものである。
【背景技術】
【0002】
昇降機の保守作業には、昇降機の部位ごとに複数の作業が存在し、それぞれの作業に作業周期が定められていることが多い。保守作業員または管理者は、この作業周期を厳守しつつ、保守作業員の人数、作業量、同一現場における他の昇降機の作業計画などを考慮し、毎月の作業予定表を作成している。
【0003】
しかし、作業予定表の作成において複数の作業を実施するための作業時間を確保しようとする際、顧客の都合などから顧客の了承を得られないことがあり、そのような場合には、保守作業で実施する作業を絞るなどして保守作業の作業時間(保守作業時間)を短縮する必要があった。
【0004】
例えば特許文献1には、保守作業時間を調整するシステムとして、顧客の要望時間以内に作業を完了するために、後倒しで実施しても故障発生の可能性が低い作業(優先順位が低い作業)を作業項目から削除して作業計画を作成する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
通常、昇降機の保守会社は、昇降機が故障や不具合を起こさないように保守作業を行って点検することが要求されているため、作業予定表を作成する際には、昇降機の部位ごとの作業の作業周期を厳守している。しかし、上述した特許文献1に開示された技術では、保守作業時間の短縮が要求された際に、故障発生の可能性が低い作業から順に作業項目から削除することによって顧客の要求を満たすようにしているため、本来実施すべき作業まで削除してしまう可能性があり、結果として昇降機の保守品質が低下してしまうおそれがあった。
【0007】
本発明は以上の点を考慮してなされたもので、設備に対する保守作業の作業計画を作成し、顧客の要望を受けた場合には、設備の保守品質を低下させることなく作業時間の短縮を検討し作業計画を再作成することが可能な保守作業計画システム及び保守作業計画方法を提案しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
かかる課題を解決するため本発明においては、顧客が保守契約を結んでいる1以上の設備に対する保守作業の作業計画を作成して前記顧客に通知する保守作業計画システムであって、前記顧客ごとの設備について、所定期間の作業計画に含まれる複数の保守作業のうちから、当該設備において直近に実施しようとする予定作業に含まれる1以上の保守作業を選択する作業選択部と、前記作業選択部によって選択された1以上の保守作業から構成される前記予定作業について、複数の作業員の属性情報と割付の制約情報とに基づいて、当該予定作業を実施する作業員をプログラム処理によって割り付ける自動割付部と、前記自動割付部による割付結果に基づいて、前記顧客ごとに、前記予定作業の作業計画を示す通知情報を作成し、前記顧客の顧客端末に送信する通知情報作成部と、前記顧客端末から前記通知情報に対する顧客からの応答を受領する顧客応答受領部と、前記顧客応答受領部が、前記予定作業の時間短縮の依頼を受領した場合に、当該予定作業に含まれる1以上の保守作業のうちから、所定の手法から必須とされる保守作業を選択して前記予定作業を再編成する必須作業選択部と、前記必須作業選択部によって再編成された予定作業における作業時間の短縮を検討し、当該短縮によって前記顧客からの時間短縮の依頼に対応できるか否かを判断する短縮対応判断部と、を備え、前記短縮対応判断部が前記顧客からの依頼に対応可能と判断した場合には、前記自動割付部が、前記再編成された予定作業に対して、前記短縮対応判断部による作業時間の短縮の検討結果を反映して前記作業員の割付を再実行し、前記通知情報作成部が、前記自動割付部による再実行された割付結果に基づいて、前記再編成された予定作業の作業計画を示す通知情報を作成し、前記時間短縮を依頼した顧客の顧客端末に送信することを特徴とする保守作業計画システムが提供される。
【0009】
また、かかる課題を解決するため本発明においては、顧客が保守契約を結んでいる1以上の設備に対する保守作業の作業計画を作成して前記顧客に通知する保守作業計画システムによる保守作業計画方法であって、前記保守作業計画システムが、前記顧客ごとの設備について、所定期間の作業計画に含まれる複数の保守作業のうちから、当該設備において直近に実施しようとする予定作業に含まれる1以上の保守作業を選択する作業選択ステップと、前記保守作業計画システムが、前記作業選択ステップで選択された1以上の保守作業から構成される前記予定作業について、複数の作業員の属性情報と割付の制約情報とに基づいて、当該予定作業を実施する作業員をプログラム処理によって割り付ける自動割付ステップと、前記保守作業計画システムが、前記自動割付ステップの割付結果に基づいて、前記顧客ごとに、前記予定作業の作業計画を示す通知情報を作成し、前記顧客の顧客端末に送信する通知情報作成ステップと、前記保守作業計画システムが、前記顧客端末から前記通知情報に対する顧客からの応答を受領する顧客応答受領ステップと、前記顧客応答受領ステップで前記予定作業の時間短縮の依頼を受領した場合に、前記保守作業計画システムが、当該予定作業に含まれる1以上の保守作業のうちから、所定の手法から必須とされる保守作業を選択して前記予定作業を再編成する必須作業選択ステップと、前記保守作業計画システムが、前記必須作業選択ステップで再編成された予定作業における作業時間の短縮を検討し、当該短縮によって前記顧客からの時間短縮の依頼に対応できるか否かを判断する短縮対応判断ステップと、前記短縮対応判断ステップにおいて前記顧客からの依頼に対応可能と判断された場合に、前記保守作業計画システムが、前記再編成された予定作業に対して、前記短縮対応判断ステップにおける作業時間の短縮の検討結果を反映して前記作業員の割付を再実行する再割付ステップと、前記保守作業計画システムが、前記再割付ステップで再実行された割付結果に基づいて、前記再編成された予定作業の作業計画を示す通知情報を作成し、前記時間短縮を依頼した顧客の顧客端末に送信する通知情報再作成ステップと、を備えることを特徴とする保守作業計画方法が提供される。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、設備に対する保守作業の作業計画を作成し、顧客の要望を受けた場合には、設備の保守品質を低下させることなく作業時間の短縮を検討し作業計画を再作成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明の一実施形態に係る保守作業計画システム1の構成例を示すブロック図である。
【
図11】保守作業計画システム1が保守作業の作業計画を作成し調整する全体処理の処理手順例を示すフローチャートである。
【
図12】時間短縮可否判定の処理手順例を示すフローチャートである。
【
図13】保守作業計画システム1のハードウェア構成例を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態を詳述する。
【0013】
図1は、本発明の一実施形態に係る保守作業計画システム1の構成例を示すブロック図である。保守作業計画システム1は、1以上の設備(本説明では昇降機)のユーザ(すなわち、保守事業者にとっての顧客)との保守契約に基づいて上記設備に対して保守作業員(作業員、保守エンジニア)が実施する保守作業について、その保守作業計画を作成するシステムである。また、保守作業計画システム1は、保守作業計画に対する昇降機のユーザ(顧客)からの作業時間の短縮要請を受領することができ、当該短縮要請を受けた場合には、作業時間を短縮した保守作業計画に調整するための情報処理を行う。詳細は後述するが、保守作業計画システム1は、作成した保守作業計画に基づく通知情報を作成し、顧客が確認可能な顧客端末2に提供し、顧客端末2から送信される顧客からの作業時間の短縮要請を受信する。顧客端末2は、パーソナルコンピュータやスマートフォン等、通信機能を有する一般的な計算機であれば何でもよい。保守作業計画システム1は、1以上の計算機によって実現され、後述する
図13には、保守作業計画システム1のハードウェア構成例が示される。
【0014】
図1には、保守作業計画システム1の機能的構成が示されている。具体的には、保守作業計画システム1は、データを格納する記憶部として、作業周期DB11、作業計画DB12、選択作業DB13、作業内容一覧DB14、作業標準時間DB15、現場情報DB16、及び制約条件DB17を備える。「DB」はデータベースの略語である。各DBに格納される代表的なデータについては、
図2~
図9に具体例が示される。なお、本説明においては、各DBに格納されるデータに対して、格納先のDBの符号にアルファベットの添字を付して表記することがある。例えば、
図2に示した作業周期データ11Aは、作業周期DB11に格納されるデータであり、
図3に示した作業計画データ12Aは、作業計画DB12に格納されるデータである。また、作業割付結果18は、自動割付部25によって生成されるデータであって、格納先のDBは特に限定していない。
【0015】
また、
図1に示した通り、保守作業計画システム1は、プロセッサがプログラムを実行することによって実現される機能部として、作業計画部21、作業選択部22、重複作業除去部23、作業時間計算部24、自動割付部25、通知情報作成部26、顧客応答受領部27、必須作業選択部28、及び短縮対応判断部29を備える。
【0016】
作業計画部21は、作業周期DB11に格納されている作業周期データ11A、及び保守作業の履歴情報(不図示)に基づいて、昇降機ごとに、今後実施予定の保守作業の作業計画(すなわち、次回作業の作業計画)を算出する。次回作業の作業計画とは、具体的には例えば、本年度を含む未来2年度分の保守作業計画である。作業計画部21が算出した作業計画は、作業計画DB12が格納する作業計画データ12Aに登録される。本実施形態では、作業計画部21が、定期的に次回作業の作業計画を算出することを想定している。
【0017】
図2は、作業周期データ11Aの一例である。
図2に示した作業周期データ11Aは、保守作業ID111、保守作業名112、及び作業周期113のデータ項目を有して構成される。作業周期データ11Aには、複数の保守作業(保守作業ID111,保守作業名112)のそれぞれについて、保守作業の実行のために順守されるべき実行周期(作業周期113)が予め定められている。
【0018】
図3は、作業計画データ12Aの一例である。
図3に示した作業計画データ12Aは、計画ID121、昇降機ID122、保守作業ID123、保守作業名124、作業期限125、作業周期126、及び前回作業日127のデータ項目を有して構成される。
【0019】
計画ID121は、作業計画部21が算出した作業計画ごとに付与される識別子であり、作業計画部21が作業計画を算出する際に、昇降機ごとに計画IDが付与される。昇降機ID122は、それぞれの昇降機に付与される識別子である。具体的には例えば、「A001」という昇降機IDは、建物Aの昇降機001号機を意味する。保守作業ID123は、保守作業ごとに付与される識別子であり、作業周期データ11Aの保守作業ID111に対応する。したがって、1つの計画IDには、複数の保守作業IDが対応し得る。保守作業名124は、作業周期データ11Aの保守作業名112に対応する。作業期限125は、当該レコードの保守作業を実行すべき期限であって、作業周期126及び前回作業日127に基づいて算出される。作業周期126は、作業周期データ11Aの作業周期113に対応する。前回作業日127は、保守作業の履歴情報(不図示)から取得できるが、予め作業計画DB12に保持される等であってもよい。
【0020】
作業選択部22は、作業計画DB12に格納された作業計画データ12Aを参照し、作業対象の昇降機における作業計画に含まれる1以上の保守作業のうちから、保守作業の計画責任者などから指定された選択条件(例えば、特定の保守作業があれば抽出する、等)に基づいて、当月において当該選択条件を満足する保守作業をすべて抽出する。作業選択部22が抽出した保守作業は、当月に実施する保守作業を示す選択作業データ13Aとして、選択作業DB13に格納される。
【0021】
なお、作業選択部22による当月に実施する保守作業の抽出は、上記したように全てがプログラム処理によって実行されてもよいが、変形例として、少なくともその一部が、計画責任者の直接的な判断によって実施されてもよい。例えば、作業計画のなかに、顧客事情を鑑みて前倒しして実施することが好ましい将来期限の保守作業が存在するような場合に、計画責任者が当該保守作業を当月に実施する作業として直接指定し、作業選択部22が、上記の計画責任者による指定に応じて、当月に実施する保守作業を抽出し、その抽出結果を選択作業データ13Aとして選択作業DB13に格納するようにしてもよい。
【0022】
図4は、選択作業データ13Aの一例である。
図4に示した選択作業データ13Aは、保守作業ID131、保守作業名132,及び作業期限133のデータ項目を有して構成される。各データ項目は、作業計画データ12Aにおける同名のデータ項目に対応する。具体的には、
図4の選択作業データ13Aの場合、保守作業ID「001」の「ブレーキ点検作業」は、作業期限が当月(11月)であることから当然選択されているが、それ以外にも、翌年の1月を作業期限とする保守作業ID「003」の「機械室清掃作業」も、当月(11月)に実施する保守作業として選択されていることが分かる。
【0023】
重複作業除去部23は、作業選択部22によって選択された当月に実施する保守作業(選択作業データ13A)に含まれる1以上の保守作業について、作業内容一覧DB14に格納されている作業内容一覧データ14Aを参照して、各保守作業に含まれる詳細作業を確認し、保守作業間で重複する詳細作業を特定する。そして重複作業除去部23は、当月に実施する保守作業の全体から、特定した詳細作業の重複分を除去し、除去後の保守作業に関する情報(すなわち、重複分が除去された保守作業全体の詳細作業の構成情報)を作業時間計算部24に通知する。
【0024】
図5は、作業内容一覧データ14Aの一例である。
図5に示した作業内容一覧データ14Aは、保守作業ID141、詳細作業ID142、詳細作業名143、及び作業内容144のデータ項目を有して構成される。保守作業ID141は、前述した他データにおける同名のデータ項目に対応する。詳細作業ID142は、保守作業を構成する詳細な作業ごとに予め付与された識別子である。詳細作業名143は、詳細作業の作業名称を示し、作業内容144は、詳細作業の作業内容を示す。作業内容一覧データ14Aにおいて、詳細作業IDは、当該作業の内容ごとに付与されるため、異なる保守作業であっても、作業内容が同じであれば、同一の詳細作業IDが用いられる。
【0025】
上記した通り、作業内容一覧データ14Aは、様々な保守作業について、各保守作業の詳細な作業内容が予め登録されたデータである。したがって、重複作業除去部23は、保守作業ID141をキーとして作業内容一覧データ14Aを参照することにより、ある保守作業がどのような詳細作業から構成されるかを、その作業順序も含めて把握することができ、複数の保守作業間において重複する詳細作業が存在する場合には、これを特定することが可能となる。なお、重複作業除去部23は、重複する詳細作業を特定する際に、各保守作業における当該詳細作業の実施順序まで考慮して、同一の複数の詳細作業から一部を省略したとしても現実的な保守作業において影響が生じないと判断できたものだけを、重複する詳細作業として特定するようにしてもよい。
【0026】
なお、
図5の作業内容一覧データ14Aには、詳細作業ID「091」や「095」に猶予時間の設定に関する情報が登録されている。猶予時間は、1つの保守作業を行う際に予め設定される猶予時間であって、猶予時間の長さによって複数のレベルが用意されてもよい。例えばレベルAの猶予時間は9分で、レベルEの猶予時間は0分(すなわち、猶予時間の設定無し)といった登録が可能である。
【0027】
作業時間計算部24は、重複作業除去部23から通知された「重複分が除去された保守作業全体の詳細作業の構成情報」と、作業標準時間DB15に格納されている作業標準時間データ15Aとに基づいて、当月に実施する保守作業の作業時間を算出する。そして作業時間計算部24は、重複作業除去部23から通知された構成情報と、自身が算出した作業時間とを、現場情報DB16に格納される作業データ16Bに登録する。具体的には、作業時間計算部24が算出した作業時間は、
図8に示す現場情報DB16の予定作業時間179に登録される。
【0028】
図6は、作業標準時間データ15Aの一例である。
図6に示した作業標準時間データ15Aは、詳細作業ごとに予め設定される標準的な作業時間が登録されたデータであって、詳細作業ID151、詳細作業名152、及び作業時間153のデータ項目を有して構成される。詳細作業ID151及び詳細作業名152は、作業内容一覧データ14Aにおける同名のデータ項目に対応する。作業時間153は、対象の詳細作業の標準的な作業時間である。なお、
図6の作業標準時間データ15Aには、「猶予時間」に対する作業時間も登録されているが、これらは、該当する猶予時間の設定時間を意味する。
【0029】
なお、本説明では図示を省略したが、作業内容一覧データ14Aや作業標準時間データ15Aにおいては、重複する詳細作業を除去しない場合の、保守作業における総作業時間についての情報が登録されていてもよい。このように保守作業における標準的な総作業時間が登録されている場合、重複する詳細作業を除去したときの効果(短縮時間)を数値的に把握することが容易になり、顧客に短縮時間を通知するといった活用が可能となる。
【0030】
ここで、現場情報DB16について説明する。現場情報DB16は、保守作業の現場情報を保持するデータベースであって、
図1に示したように、作業員データ16A及び作業データ16Bが格納される。
【0031】
図7は、作業員データ16Aの一例である。作業員データ16Aには、現場で保守作業を実施する保守作業員(以下、エンジニアや作業員とも称する)の属性情報がまとめられる。
図7に示した作業員データ16Aは、作業員ID161,シフト162、作業資格163、及び運転資格164のデータ項目を有して構成される。
【0032】
作業員ID161は、作業員ごとに割り当てられた識別子を示す。シフト162は、当該作業員の勤務シフトに関する情報を示す。シフト162には、残業の可否等について登録されていてもよい。作業資格163は、当該作業員が有する保守作業の関連資格(作業資格)を示す。作業資格は、昇降機検査資格等の公的な資格の他、社内で規定された資格等も含まれて良い。作業資格163が登録される理由は、保守作業の作業内容によっては、特定の作業資格が必要とされるためである。運転資格164は、作業員が現場までの移動に利用する車両の運転資格を示す。運転資格164が登録される理由は、現場まで保守作業に必要な道具及び作業員を運搬するために、保守作業を実施する作業員のうちの少なくとも1名は所定の運転資格を保持していることが必要になるためである。
【0033】
図8は、作業データ16Bの一例である。作業データ16Bには、1の顧客に向けた1の保守作業の現場ごとに、予定されている保守作業の情報がまとめられる。
図8に示した作業データ16Bは、予定作業ID171、顧客ID172、顧客指定時間173、現場情報174、及び昇降機情報175のデータ項目を有して構成される。昇降機情報175はさらに、昇降機ID176、機種177,実施保守作業178、及び予定作業時間179を含む。
【0034】
予定作業ID171は、1の顧客が保守契約している1の昇降機において1度にまとめて実施する予定の保守作業(予定作業)に対して付与される識別子を示す。顧客ID172は、当該予定作業が実施される昇降機の保守契約を結んでいる顧客(ユーザ)の識別子を示す。顧客指定時間173は、当該顧客から予め指定された、保守作業を実施可能な時間を示す。顧客指定時間173は、例えば制約条件DB17に保持された情報を用いて登録される。現場情報174は、作業対象の昇降機が設置された現場の所在等を示す。昇降機情報175は、作業対象の昇降機に関する情報(昇降機ID176、機種177)の他、予定作業に関する情報(実施する保守作業の保守作業IDを示す実施保守作業178、予定される保守作業時間を示す予定作業時間179)を示す。昇降機情報175のうち、昇降機ID176や実施保守作業178は、作業時間計算部24が重複作業除去部23から通知された構成情報に基づいて登録され、予定作業時間179は、作業時間計算部24が算出した作業時間が登録される。
【0035】
作業時間計算部24による処理が終了した後は、通常は自動割付部25による処理が行われる。また、顧客からの作業時間の短縮依頼を受けた後に作業時間計算部24による処理が実行された場合は、短縮対応判断部29による処理が行われる。
【0036】
自動割付部25は、プログラムの実行により、制約条件DB17に格納された制約条件を考慮しながら、作業員データ16Aに登録された各作業員に、作業データ16Bに登録された予定作業を自動的に割り付ける。制約条件DB17には、自動割付のために必要な制約条件(保守作業またはその詳細作業に対して予め規定された種々の制約条件)を示す情報が蓄積されている。自動割付部25は、自動割付の実施結果を示す作業割付結果18を生成し、これを通知情報作成部26に通知する。
【0037】
図9は、作業割付結果18の一例である。作業割付結果18には、自動割付部25によって作業員ごとに割り付けられた予定作業が示される。
図9に示した作業割付結果18は、作業員181及び作業182のデータ項目を有して構成される。作業員181は、作業員の氏名等を示すが、作業員データ16Aに示される作業員ID161の値を用いてもよい。作業182は、各作業員に割り付けられた予定作業の詳細を日付ごとに示す。
【0038】
通知情報作成部26は、顧客情報(不図示)に基づいて、作業割付結果18から顧客の昇降機ごとの次回点検候補日時を抽出し、抽出した次回点検候補日時を含む通知情報を作成し、当該顧客の顧客端末2にこれを通知する(
図10には、通知情報の表示画面である通知表示画面40が例示されている)。なお、通知情報作成部26は、短縮対応判断部29によって時間短縮依頼への対応ができないと判断された場合にも通知情報を作成するが、これは顧客から要望された時間短縮依頼への対応ができない状況で通知情報を作成するものであって、例えば、顧客に個別対応する旨を連絡するような通知情報が作成される。そして顧客端末2は、受信した通知情報を所定の形式で表示する。
【0039】
図10は、通知表示画面40の一例である。通知表示画面40は、保守作業計画システム1の通知情報作成部26で作成された通知情報に基づいて、顧客端末2のディスプレイに表示される表示画面であって、通知表示画面40を見た顧客による応答操作を要求する。
【0040】
図10に示した通知表示画面40は、通知情報に基づいて生成される顧客情報表示欄41及び予定作業情報表示欄42と、顧客からの入力操作を受け付けるOKボタン43及び時間短縮依頼ボタン44と、を有して構成される。
【0041】
顧客情報表示欄41には、対象顧客の情報として、顧客番号(お客様番号)や顧客名(お客様名)が表示される。予定作業情報表示欄42には、顧客の昇降機で実施予定の保守作業に関する情報として、上記した次回点検候補日時が表示される。なお、
図10の通知表示画面40は一例であって、これに限定されない。具体的には例えば、顧客情報表示欄41に、対象の昇降機を表示するように構成されてもよいし、予定作業情報表示欄42に、合計作業時間や作業員の氏名または人数等を表示するように構成されてもよい。顧客情報表示欄41及び予定作業情報表示欄42に示される情報は、作業割付結果18(あるいは、不図示の顧客情報等も参照してよい)に基づいて、通知情報作成部26によって通知情報の作成時に組み込まれる。
【0042】
OKボタン43は、予定作業情報表示欄42に表示された保守作業の予定を顧客が了承する際に押下される。時間短縮依頼ボタン44は、予定作業情報表示欄42に表示された保守作業の予定を顧客が了承せず、作業時間の短縮を要望する際に押下される。OKボタン43または時間短縮依頼ボタン44が押下操作されると、顧客端末2から各操作(応答内容)に対応する信号が保守作業計画システム1に送信され、顧客応答受領部27が応答内容に応じた処理を実行する。なお、
図10の通知表示画面40は一例であって、これに限定されない。具体的には例えば、OKボタン43及び時間短縮依頼ボタン44の他に、保守作業の管理会社に直接連絡を取るためのボタンを設ける等してもよい。
【0043】
顧客応答受領部27は、顧客端末2に表示された通知表示画面40に対する顧客による応答を受領する。具体的には、本例では、顧客による応答は保守作業の予定に対する「了承」を応答するOKボタン43の押下と、保守作業の作業時間の「時間短縮依頼」を応答する時間短縮依頼ボタン44の押下との2種類であり、顧客応答受領部27が何れの応答を受領したかによって、以降の処理が異なる。具体的には、「了承」の応答を受領した場合、顧客応答受領部27は、保守作業計画システム1の管理者に、作業割付結果18に作成された予定作業が顧客に了承されたことを通知して処理を終了する。「時間短縮依頼」の応答を受領した場合、顧客応答受領部27は、必須作業選択部28に時間短縮依頼を通知する。なお、変形例として、顧客による他の種類の応答が用意されている場合は、それぞれの応答内容に応じた処理が行われればよい。
【0044】
必須作業選択部28は、顧客による作業時間の短縮依頼に応えるために、選択作業DB13に格納された選択作業データ13A及びその他のデータを適宜参照し、時間短縮依頼の要望があった予定作業に含まれる1以上の保守作業(選択作業データ13Aに登録された1以上の保守作業)について、当月に実施しなければならない必須の保守作業(必須作業)だけを抽出して、選択作業データ13Aを更新する。必須作業の選択においては、例えば、作業周期データ11Aや作業計画データ12A等に登録された保守作業それぞれの属性に基づいて、昇降機の保守に欠くことができない必須な保守作業を選択することが想定される。具体的な必須作業の選択の基準は、予め、システム管理者によってプログラムに定められていてもよいし、顧客からの短縮要求を受ける都度、システム管理者によって選択されてもよい。
【0045】
必須作業選択部28が選択作業データ13Aを更新した後は、重複作業除去部23そして作業時間計算部24が、初回の予定作業を作成するときと同様の処理を再実行し、再実行した結果によって現場情報DB16の作業データ16Bを更新する。
【0046】
短縮対応判断部29は、更新された作業データ16B(すなわち、必須作業のみで再編成された予定作業に関する作業データ16B)と、元から格納されている作業員データ16Aとに基づいて、更新された作業データ16Bの予定作業(すなわち、必須作業の保守作業だけで構成される予定作業)における作業時間の調整を検討し、作業時間の短縮が可能であるか否かを判定する時間短縮可否判定を行う。時間短縮可否判定の詳細は、
図12を参照して後述する。
【0047】
さらに、短縮対応判断部29は、時間短縮可否判定による判定結果(時間短縮可/時間短縮負荷)と、所定期間における時間短縮の総依頼数とに基づいて、顧客の時間短縮依頼に応えることができるか否か(短縮対応の可否)を判断する。なお、「所定期間における時間短縮の総依頼数」とは、所定期間(例えば当月)において、今回の顧客からの時間短縮依頼と、他の顧客からの同様の時間短縮依頼とを合算した依頼数である。この「総依頼数」は、顧客応答受領部27が顧客端末2から受領した顧客応答に基づいて算出可能である。
【0048】
短縮対応判断部29が短縮対応が可能と判断した場合は、自動割付部25が、制約条件DB17に格納された制約条件に加えて、時間短縮可否判定における調整結果を考慮しながら、必須作業のみで構成された予定作業(短縮対応した予定作業)の作業員データ16Aに登録された各作業員への自動割付を実行し、通知情報作成部26が、その作業割付結果18に基づいて通知情報を作成し、これを顧客端末2に通知する。一方、短縮対応判断部29が短縮対応が不可能と判断した場合は、通知情報作成部26が、時間短縮依頼に応えることができない旨(顧客に個別対応する等)を連絡するような通知情報を作成し、顧客端末2にこれを通知する。
【0049】
図11は、保守作業計画システム1が保守作業の作業計画を作成し調整する全体処理の処理手順例を示すフローチャートである。
図11に示す各処理の詳細は各機能部における説明で上述しているため、重複を避けるために、以下では簡易な説明に留める。
【0050】
図11によれば、まず、作業計画部21が、ある月における作業計画(今後実施予定の保守作業の作業計画)を算出する(ステップS1)。
【0051】
次に、作業選択部22が、ステップS1で算出された作業計画のうちから、当月に実施する保守作業を選択する(ステップS2)。
【0052】
次に、重複作業除去部23が、ステップS2で選択された1以上の保守作業について、各保守作業に含まれる作業内容(詳細作業)の重複を特定し、重複分を除去する(ステップS3)。
【0053】
次に、作業時間計算部24が、ステップS3で重複分を除去した後の作業内容を基に、当月に実施する保守作業に要する作業時間を算出する(ステップS4)。
【0054】
次に、自動割付部25が、制約条件DB17に登録された制約条件を考慮しながら、現場情報DB16の作業員データ16Aに登録された各作業員に、作業データ16Bに登録された予定作業を自動的に割り付ける(ステップS5)。
【0055】
次に、通知情報作成部26が、顧客情報に基づいて、ステップS5の自動割付の結果(作業割付結果18)から、顧客の昇降機ごとの次回点検候補日時等を抽出して通知情報を作成し、顧客ごとに顧客端末2に送信する(ステップS6)。
【0056】
次に、顧客応答受領部27が、ステップS6の通知内容に対する顧客の応答を確認する(ステップS7)。顧客応答受領部27が、顧客端末2から「時間短縮依頼」の応答を受領した場合は(ステップS7のYES)、ステップS8に進む。一方、顧客端末2から「了承」の応答を受領した場合は(ステップS7のNO)、ステップS6で通知した予定作業を確定して処理を終了する。
【0057】
ステップS7において時間短縮依頼の応答が受領された場合、必須作業選択部28が、ステップS6で顧客に提示した通知情報に対応する予定作業のうちから、必須の保守作業を選択して予定作業を再編成する(ステップS8)。
【0058】
次に、ステップS8で再編成された予定作業について、ステップS3及びステップS4と同様に、重複作業除去部23が各保守作業に含まれる作業内容の重複分を除去し(ステップS9)、作業時間計算部24が作業時間を算出する(ステップS10)。
【0059】
次に、短縮対応判断部29が、現場情報DB16に格納された作業員データ16Aと、ステップS8~S10を経て再算出された作業データ16Bとに基づいて、再編成後の予定作業における作業時間の調整を検討し、作業時間の短縮の可否を判定する時間短縮可否判定を行う(ステップS11)。
【0060】
次に、短縮対応判断部29が、時間短縮可否判定による判定結果と、所定期間における時間短縮の総依頼数とに基づいて、顧客の時間短縮依頼に応えることができるか否かを判断する(ステップS12)。具体的には、短縮対応判断部29は、時間短縮可否判定による判定結果が「時間短縮可」であり、かつ、総依頼数が予め定められた閾値を超えない場合に、顧客の時間短縮依頼に応えることができる(短縮対応可)と判断する。一方、短縮対応判断部29は、時間短縮可否判定による判定結果が「時間短縮不可」であるか、総依頼数が予め定められた閾値以上である場合に、顧客の時間短縮依頼に応えることができない(短縮対応不可)と判断する。短縮依頼を受けすぎると、当月の作業量が減ってしまい、翌月以降の作業負担が増加することから、総依頼数を判断基準に組み込むことによって、作業員の作業負担の平準化を図る効果が得られる。
【0061】
ステップS12において顧客の時間短縮依頼に応えることができる(短縮対応可)と判断された場合は(ステップS12のYES)、自動割付部25が、時間短縮可否判定における調整結果を反映して、再編成後の予定作業の自動割付を実施し(ステップS13)、前述したステップS6に移行する。
【0062】
一方、ステップS12において顧客の時間短縮依頼に応えることができない(短縮対応不可)と判断された場合は(ステップS12のNO)、通知情報作成部26が、時間短縮依頼に応えることができない旨(顧客に個別対応する等)を連絡するような通知情報を作成して顧客端末2に通知し、処理を終了する。
【0063】
図12は、時間短縮可否判定の処理手順例を示すフローチャートである。
図12に示す処理は、
図11のステップS11の処理に相当し、短縮対応判断部29によって実行される。時間短縮可否判定では、作業時間を大きく短縮できる可能性が高い順(時間短縮効果が高いと想定される順に)に、複数の段階(後述する第1~第3の調整段階)に分けて、再編成後の予定作業の作業時間の短縮が可能であるか否かが検討される。
【0064】
なお、
図12では、顧客が要望する短縮後の作業時間(顧客要望作業時間)を「X」としている。
図10に例示した通知表示画面40では、作業時間の短縮を希望する顧客は時間短縮依頼ボタン44を押下して応答するとしているため、時間短縮依頼ボタン44の押下による応答が行われるごとに所定時間(例えば1時間)を現在の総作業時間から減算することにより、顧客要望作業時間「X」を設定することができる。また変形例として、どれくらいの時間短縮を要望するかを顧客が指定できるように通知表示画面が構成されてもよく、この場合は、顧客が要望した短縮時間を現在の総作業時間から減算することにより、顧客要望作業時間「X」を設定することができる。
【0065】
図12によれば、まず、短縮対応判断部29は、再編成後の予定作業を構成する1以上の保守作業(すなわち1以上の必須作業)について、各保守作業の作業期限(選択作業データ13Aの作業期限133)に基づいて、次回点検候補日時よりも後の点検(次々回以降の点検)に繰り越し可能な保守作業が存在するか否かを判定する(ステップS21:第1の調整段階)。
【0066】
第1の調整段階において、再編成後の予定作業のなかに繰り越し可能な保守作業が存在しない場合は(ステップS21のNO)、第2の調整段階(ステップS23)に進む。一方、第1の調整段階において、再編成後の予定作業のなかに繰り越し可能な保守作業が存在する場合は(ステップS21のYES)、短縮対応判断部29は、該当する保守作業を削除した場合の総作業時間「A」が顧客要望作業時間「X」以下であるか否かを判定する(ステップS22)。
【0067】
そして、ステップS22において肯定結果が得られた場合(ステップS22のYES)、短縮対応判断部29は、再編成後の予定作業について顧客が要望する時間短縮が可能である(時間短縮可)と判定し(ステップS27)、時間短縮可否判定の処理を終了する。一方、ステップS22において否定結果が得られた場合は(ステップS22のNO)、第2の調整段階(ステップS23)に進む。
【0068】
第2の調整段階であるステップS23では、短縮対応判断部29は、再編成後の予定作業を構成する1以上の保守作業(すなわち1以上の必須作業)について、猶予時間が設定された保守作業が存在するか否かを判定する。猶予時間が設定された保守作業であるか否かは、作業内容一覧データ14Aにおいて「猶予時間有り」の詳細作業が含まれているかを確認することによって判定できる。
【0069】
第2の調整段階において、再編成後の予定作業のなかに猶予時間が設定された保守作業が存在しない場合は(ステップS23のNO)、第3の調整段階(ステップS25)に進む。一方、第2の調整段階において、再編成後の予定作業のなかに猶予時間が設定された保守作業が存在する場合は(ステップS23のYES)、短縮対応判断部29は、該当する保守作業の猶予時間を削除した場合の総作業時間「B」が顧客要望作業時間「X」以下であるか否かを判定する(ステップS24)。
【0070】
そして、ステップS24において肯定結果が得られた場合(ステップS24のYES)、短縮対応判断部29は、再編成後の予定作業について顧客が要望する時間短縮が可能である(時間短縮可)と判定し(ステップS27)、時間短縮可否判定の処理を終了する。一方、ステップS24において否定結果が得られた場合は(ステップS24のNO)、第3の調整段階(ステップS25)に進む。
【0071】
第3の調整段階であるステップS25では、短縮対応判断部29は、再編成後の予定作業を構成する1以上の保守作業(すなわち1以上の必須作業)について、作業員データ16A(各作業員の予定)を参照して、作業員を増員できる保守作業が存在するか否かを判定する。第3の調整段階では、再編成後の予定作業の全体について、作業員を増員する余地があるか否かを判定してもよい。作業員の人数が増員できれば、作業の所要時間を短縮可能であり、どの程度短縮できるかは、予め計算式が設定されていればよい。
【0072】
第3の調整段階において、再編成後の予定作業に作業員を増員できない場合(ステップS25のNO)、短縮対応判断部29は、再編成後の予定作業について顧客が要望する時間短縮が不可能である(時間短縮不可)と判定し(ステップS28)、時間短縮可否判定の処理を終了する。一方、第3の調整段階において、再編成後の予定作業に作業員を増員できる場合は(ステップS25のYES)、短縮対応判断部29は、作業員を増員した場合の予定作業の総作業時間「C」が顧客要望作業時間「X」以下であるか否かを判定する(ステップS26)。
【0073】
そして、ステップS26において肯定結果が得られた場合(ステップS26のYES)、短縮対応判断部29は、再編成後の予定作業について顧客が要望する時間短縮が可能である(時間短縮可)と判定し(ステップS27)、時間短縮可否判定の処理を終了する。一方、ステップS26において否定結果が得られた場合は(ステップS26のNO)、短縮対応判断部29は、再編成後の予定作業について顧客が要望する時間短縮が不可能である(時間短縮不可)と判定し(ステップS28)、時間短縮可否判定の処理を終了する。
【0074】
以上のような処理を実行することにより、保守作業計画システム1は、設備(本例では昇降機)に対する保守作業の作業計画を作成し、顧客の要望を受けた場合には、設備の保守品質を低下させることなく作業時間の短縮を検討し作業計画を再作成することができる。
【0075】
図13は、保守作業計画システム1のハードウェア構成例を示すブロック図である。
図13に示したように、保守作業計画システム1は、例えば、プロセッサ101、主記憶装置(メモリ)102、補助記憶装置103、通信インタフェース(I/F)104、及び入出力装置105を備えたコンピュータ(計算機)によって実現される。保守作業計画システム1の上記した各構成要素は通信線(バス)106によって相互に通信可能に接続されている。
【0076】
プロセッサ101は、例えばCPU(Central Processing Unit)であり、補助記憶装置103または主記憶装置102に記憶されたプログラム及びデータを主記憶装置102に読み出して実行することにより、各種処理を実施する。主記憶装置102は、例えばDRAM(Dynamic Random Access Memory)等の記憶媒体であり、補助記憶装置103は、例えばHDD(Hard Disk Drive)やSSD(Solid State Drive)等の記憶媒体である。なお、補助記憶装置103は、少なくとも一部が、保守作業計画システム1に外部接続されるUSB(Universal Serial Bus)メモリ等の記憶装置によって代替されてもよい。通信I/F104は、例えばNIC(Network Interface Card)等の通信基板であって、保守作業計画システム1と外部(例えば顧客が保持する顧客端末2)との通信を仲介する。入出力装置105は、保守作業計画システム1のコンピュータに対する情報の入力を実現するための入力装置(キーボードやマウス等)と、保守作業計画システム1のコンピュータからの情報の出力を実現するための出力装置(ディスプレイやプリンタ等)とを含む。入出力装置105は、保守作業計画システム1に外部接続される機器で代用されてもよい。
【0077】
図1では、本実施形態に係る保守作業計画システム1の機能的な構成例を示したが、これらの機能的な構成のうち、各種の記憶部(作業周期DB11、作業計画DB12、選択作業DB13、作業内容一覧DB14、作業標準時間DB15、現場情報DB16、制約条件DB17)及び各記憶部等に保持されるデータ(例えば、作業周期データ11A、作業計画データ12A、選択作業データ13A、作業内容一覧データ14A、作業標準時間データ15A、作業員データ16A、作業データ16B、作業割付結果18)は、補助記憶装置103がデータまたはデータ群を記憶することによって実現される。また、
図1に示した機能的な構成のうち、各種の機能部(作業計画部21、作業選択部22、重複作業除去部23、作業時間計算部24、自動割付部25、通知情報作成部26、顧客応答受領部27、必須作業選択部28、短縮対応判断部29)は、補助記憶装置103または主記憶装置102に記憶されたプログラムをプロセッサ101が主記憶装置102に読み出して実行することによって実現される。なお、通知情報作成部26及び顧客応答受領部27のように、実現する機能に外部(例えば顧客端末2)との通信が含まれるものについては、プロセッサ101によるプログラムの実行時に通信I/F104も協働される。
【0078】
なお、本実施形態に係る保守作業計画システム1において、プログラムは、少なくとも1以上のプロセッサ101(例えばCPU)によって実行されることで、定められた処理を、適宜に記憶資源(例えば主記憶装置102)及び/又はインターフェースデバイス(例えば通信I/F104)等を用いながら行うため、処理の主体がプロセッサ101とされてもよい。同様に、プログラムを実行して行う処理の主体が、プロセッサを有するコントローラ、装置、システム、計算機、ノード、ストレージシステム、ストレージ装置、サーバ、管理計算機、クライアント、又は、ホストであってもよい。プログラムを実行して行う処理の主体(例えばプロセッサ101)は、処理の一部又は全部を行うハードウェア回路を含んでもよい。例えば、プログラムを実行して行う処理の主体は、暗号化及び復号化、又は圧縮及び伸張を実行するハードウェア回路を含んでもよい。プロセッサ101は、プログラムに従って動作することによって、所定の機能を実現する機能部として動作する。プロセッサを含む装置及びシステムは、これらの機能部を含む装置及びシステムである。また、プログラムは、プログラムソースから計算機のような装置にインストールされてもよい。プログラムソースは、例えば、プログラム配布サーバ又は計算機が読み取り可能な非一時的な記憶メディアであってもよい。プログラムソースがプログラム配布サーバの場合、プログラム配布サーバはプロセッサ(例えばCPU)と非一時的な記憶資源とを含み、記憶資源はさらに配布プログラムと配布対象であるプログラムとを記憶してよい。そして、プログラム配布サーバのプロセッサが配布プログラムを実行することで、プログラム配布サーバのプロセッサは配布対象のプログラムを他の計算機に配布してよい。また、以下の説明において、2以上のプログラムが1つのプログラムとして実現されてもよいし、1つのプログラムが2以上のプログラムとして実現されてもよい。
【0079】
本発明は、上記した実施形態に記載された構成に限定されることなく、特許請求の範囲に記載された内容に基づいて適宜構成できる。また、上記の実施形態は、本発明を実施するための一例であり、様々な変形例を採用し得る。また、本発明を実施する際には、上記した実施形態の一部の構成を実施してもよい。例えば、上記の実施形態では昇降機の保守について説明したが、保守の対象となる設備であれば、昇降機に限られるものではない。
【0080】
本実施形態の変形例として、例えば、
図11のステップS6において通知情報を作成する際、通知情報作成部26が、現時点での「所定期間における時間短縮の総依頼数」が、時間短縮依頼の判断基準の1つとして予め設定された閾値に到達しているか否かを事前判断し、現時点での総依頼数が上記閾値に到達している場合には、顧客端末2に送信する通知情報に、予定作業情報表示欄42を不活性化させる(予定作業情報表示欄42の押下操作ができないように通知表示画面40を表示させる)ことを含めるようにしてもよい。このような構成にすることにより、顧客からの短縮依頼があっても対応できない状況を予め判断して通知できるため、顧客に無駄な操作選択が通知されないだけでなく、保守作業計画システム1側における時間短縮の再計算による処理負荷を低減することができ、速やかな方針決定に寄与する。
【符号の説明】
【0081】
1 保守作業計画システム
2 顧客端末
11 作業周期DB
12 作業計画DB
13 選択作業DB
14 作業内容一覧DB
15 作業標準時間DB
16 現場情報DB
17 制約条件DB
18 作業割付結果
21 作業計画部
22 作業選択部
23 重複作業除去部
24 作業時間計算部
25 自動割付部
26 通知情報作成部
27 顧客応答受領部
28 必須作業選択部
29 短縮対応判断部
40 通知表示画面
101 プロセッサ
102 主記憶装置(メモリ)
103 補助記憶装置
104 通信インタフェース(I/F)
105 入出力装置
106 通信線(バス)