IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社ワールド設計の特許一覧 ▶ 協同エンジニアリング株式会社の特許一覧 ▶ 高木 泰士の特許一覧 ▶ 菅野 高弘の特許一覧 ▶ 株式会社センク21の特許一覧 ▶ 株式会社ネポクコンサルタントの特許一覧 ▶ 中外テクノス株式会社の特許一覧 ▶ 八千代エンジニヤリング株式会社の特許一覧 ▶ 株式会社テクノシステムの特許一覧 ▶ オリエンタル白石株式会社の特許一覧 ▶ 日本防蝕工業株式会社の特許一覧 ▶ 株式会社日本港湾コンサルタントの特許一覧

<>
  • 特開-浮体膜式水門 図1
  • 特開-浮体膜式水門 図2
  • 特開-浮体膜式水門 図3
  • 特開-浮体膜式水門 図4
  • 特開-浮体膜式水門 図5
  • 特開-浮体膜式水門 図6
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024095895
(43)【公開日】2024-07-11
(54)【発明の名称】浮体膜式水門
(51)【国際特許分類】
   E02B 3/06 20060101AFI20240704BHJP
【FI】
E02B3/06 302
【審査請求】有
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022212869
(22)【出願日】2022-12-30
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2024-01-05
(71)【出願人】
【識別番号】508271218
【氏名又は名称】株式会社ワールド設計
(71)【出願人】
【識別番号】517026645
【氏名又は名称】協同エンジニアリング株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】517026623
【氏名又は名称】高木 泰士
(71)【出願人】
【識別番号】523003559
【氏名又は名称】菅野 高弘
(71)【出願人】
【識別番号】502287923
【氏名又は名称】株式会社センク21
(71)【出願人】
【識別番号】517026634
【氏名又は名称】株式会社ネポクコンサルタント
(71)【出願人】
【識別番号】000211064
【氏名又は名称】中外テクノス株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】592000886
【氏名又は名称】八千代エンジニヤリング株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】515158397
【氏名又は名称】株式会社テクノシステム
(71)【出願人】
【識別番号】000103769
【氏名又は名称】オリエンタル白石株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000232759
【氏名又は名称】日本防蝕工業株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】592032706
【氏名又は名称】株式会社日本港湾コンサルタント
(74)【代理人】
【識別番号】100166073
【弁理士】
【氏名又は名称】松本 秀治
(72)【発明者】
【氏名】富安 良一
(72)【発明者】
【氏名】松原 恭博
(72)【発明者】
【氏名】荒木 健人
(72)【発明者】
【氏名】友池 昌俊
(72)【発明者】
【氏名】高木 泰士
(72)【発明者】
【氏名】菅野 高弘
(72)【発明者】
【氏名】浅川 典敬
(72)【発明者】
【氏名】厳 峰
(72)【発明者】
【氏名】石原 一郎
(72)【発明者】
【氏名】国生 隼人
(72)【発明者】
【氏名】日野 幹雄
(72)【発明者】
【氏名】藤井 直
(72)【発明者】
【氏名】川岡 岳晴
(72)【発明者】
【氏名】古川 元一
【テーマコード(参考)】
2D118
【Fターム(参考)】
2D118AA11
2D118AA12
2D118BA03
2D118BA05
2D118CA03
2D118DA04
2D118FA04
2D118FB01
2D118GA01
2D118GA07
2D118GA09
(57)【要約】
【課題】 施工性に優れ、長スパンにも対応した、浮体膜式水門を提供する。
【解決手段】 湾口を締め切り可能な大きさを有する、浮体構造の横引移動可能な水門本体(1)と、該水門本体(1)と組み合う、基礎構造体(5)とから構成され、前記水門本体(1)が、昇降支柱を備えたメイン枠体(10)と、中空管の組み合わせによるサブ枠体(20)と、湾口への水の出入りを阻止するためのカートリッジ構造の分割膜体(30)とを有する、浮体膜式水門である。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
湾口を締め切り可能な大きさを有する、浮体構造の水門本体と、
該水門本体と組み合う、基礎構造体とから構成され、
前記水門本体が、昇降支柱を備えたメイン枠体と、中空管の組み合わせによるサブ枠体と、湾口への水の出入りを阻止するための膜体とを有することを特徴とする、浮体膜式水門。
【請求項2】
湾口を締め切り可能な大きさを有する、浮体構造の水門本体と、
該水門本体と組み合う、基礎構造体とから構成され、
前記水門本体が、昇降支柱を備えたメイン枠体と、中空管の組み合わせによるサブ枠体と、湾口への水の出入りを阻止するためのカートリッジ構造の分割膜体とを有することを特徴とする、浮体膜式水門。
【請求項3】
湾口を締め切り可能な大きさを有する、浮体構造の水門本体と、
該水門本体と組み合う、基礎構造体とから構成され、
前記水門本体が、昇降支柱を備えたメイン枠体と、中空管の組み合わせによるサブ枠体と、湾口への水の出入りを阻止するためのカートリッジ構造の分割膜体とを有し、
該カートリッジ構造の分割膜体が、フレームと分割膜と格子状の補強部材とを有し、該フレームの下端側に横長細膜体を組み合わせたものであることを特徴とする、浮体膜式水門。
【請求項4】
湾口を締め切り可能な大きさを有する、浮体構造の水門本体と、
該水門本体と組み合う、基礎構造体とから構成され、
前記水門本体が、昇降支柱を備えたメイン枠体と、中空管のトラス構造の組み合わせによるサブ枠体と、湾口への水の出入りを阻止するためのカートリッジ構造の分割膜体とを有し、
該カートリッジ構造の分割膜体が、フレームと分割膜と格子状の補強部材とを有し、該フレームの下端側に横長膜体を組み合わせたものであり、
前記浮体構造の浮力が、水門本体を構成する中空管によるものであることを特徴とする、浮体膜式水門。
【請求項5】
湾口を締め切り可能な大きさを有する、浮体構造の水門本体と、
該水門本体と組み合う、基礎構造体とから構成され、
前記水門本体が、昇降支柱を備えたメイン枠体と、中空管のトラス構造の組み合わせによるサブ枠体と、湾口への水の出入りを阻止するためのカートリッジ構造の分割膜体とを有し、
該カートリッジ構造の分割膜体が、フレームと分割膜と格子状の補強部材とを有し、該フレームの下端側に横長膜体を組み合わせたものであり、
前記浮体構造の浮力が、水門本体を構成する中空管によるものであり、
前記水門本体のメイン枠体の昇降支柱が、支柱と、該支柱の外側に位置する外側管とによる二重構造であり、
該外側管が、支柱に対して昇降可能に構成されていることを特徴とする、浮体膜式水門。
【請求項6】
前記基礎構造体が、両側に位置する側壁土台と、該側壁土台間に位置する水中底板と、一方の側壁土台と一体化して立ち上がるコ字状側壁とから構成されており、
前記水中底板が、中央長手方向に遮水矢板を設置すると共に、両側に、地中鋼管杭による支持杭を設けたものであることを特徴とする、請求項1~5のいずれか一つに記載の浮体膜式水門。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、津波・高潮・高波等の災害可能性が生じた際や、その他必要に応じて、湾口を締め切ることで、波や潮の影響を低減することを可能とする、浮体膜式水門に関する。
【背景技術】
【0002】
地盤が変形しても防潮構造物の昇降の影響が少なく、底沈降物による防潮構造物の浮上障害を防ぎ、防潮構造物を円滑に浮上でき、ケーソン内の流水路を通して堤内へ向かう水の流れを阻止できる防潮堤として、特許文献1に記載のものが知られている。
【0003】
該特許文献1に記載の防潮堤は、水底面に上面開口を揃えて水底地盤に埋設される矩形状のケーソンと、該ケーソンの内部空間を、中央部の構造物昇降室と両側部の浮上時流入室とに、前記ケーソンの厚さ方向へ分割し、かつ下端部に、前記構造物昇降室と前記各浮上時流入室とを連通する複数の連通口が形成された仕切壁と、前記構造物昇降室に昇降自在に収納され、かつ内部空間が浮力付与用の空気室となった浮上函を有する防潮構造物と、該防潮構造物を、前記構造物昇降室の収納位置と、前記防潮構造物の上端面が水面より上方に配される浮上位置との間で昇降させる昇降装置と、前記浮上時流入室の上面開口部に配置され、前記防潮構造物が浮上する間のみ前記上面開口部を開蓋し、その他はこれを閉蓋する蓋体とを備え、前記昇降装置の作動による前記構造物昇降室での前記防潮構造物の浮上に伴ない、前記蓋体が開蓋状態となることで、水が前記各上面開口部から、前記各浮上時流入室、前記連通口を通って前記構造物昇降室に流入することを特徴とするものである。
【0004】
また、膜式水門について、水門の展伸・撤収・収納を迅速化でき、その開閉をコンピュータ制御あるいはボタン操作により迅速に行うことができるようにすることで「課題1:水門の開閉を迅速に行うことができない」を解決し、アンカーレッジに加わる荷重を低減することで「課題2:アンカーレッジに加わる荷重が大きくなり過ぎる」を解決し、膜構造体の変形を適切に管理することで「課題3:漏水の問題」を解決することを可能とするものとして、特許文献2に記載のものが知られている。
【0005】
該特許文献2に記載の膜式水門は、流水や船舶の水路を横切る方向に設けられた一対の支持柱と、前記一対の支持柱に固定され前記一対の支持柱により支えられて展張される膜構造体と、前記一対の支持柱の上部に両側がそれぞれ固定される頂部圧縮梁、及び、前記一対の支持柱の下部に両側がそれぞれ固定される底部圧縮梁のいずれか一方又は両方を備え、水位差の生じていない状態である平水時において、前記一対の支持柱間の略中央における前記膜構造体の初期撓みδ0が0であるように前記膜構造体が展張され、津波や高潮などの水位差の生じている状態において、前記頂部圧縮梁及び/又は前記底部圧縮梁は、前記膜構造体から前記一対の支持柱に入った張力の一部を受けてこれをその内部で相殺するものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第6768611号公報
【特許文献2】特開2011-202378号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1に記載の防潮堤は、地盤が変形しても防潮構造物の昇降の影響が少なく、底沈降物による防潮構造物の浮上障害を防ぐことができるものであるが、津波を防ぐ高さを有する防潮構造物全体を、湾口全体の水底地盤に深く埋設させる必要があり、施工性に課題を有している。
【0008】
特許文献2に記載の膜式水門は、例えば75m程度の長スパンの構造物を施工する場合に、水平方向の頂部圧縮梁のたわみ量が大きく、圧縮力作用時は座屈する恐れがあるので、長スパンへの対応に課題を有している。
【0009】
従って、本発明が解決しようとする課題は、施工性に優れ、長スパンにも対応した、浮体膜式水門を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
第1に、
湾口を締め切り可能な大きさを有する、浮体構造の水門本体と、
該水門本体と組み合う、基礎構造体とから構成され、
前記水門本体が、昇降支柱を備えたメイン枠体と、中空管の組み合わせによるサブ枠体と、湾口への水の出入りを阻止するための膜体とを有することを特徴とする、浮体膜式水門。
【0011】
第2に、
湾口を締め切り可能な大きさを有する、浮体構造の水門本体と、
該水門本体と組み合う、基礎構造体とから構成され、
前記水門本体が、昇降支柱を備えたメイン枠体と、中空管の組み合わせによるサブ枠体と、湾口への水の出入りを阻止するためのカートリッジ構造の分割膜体とを有することを特徴とする、浮体膜式水門。
【0012】
第3に、
湾口を締め切り可能な大きさを有する、浮体構造の水門本体と、
該水門本体と組み合う、基礎構造体とから構成され、
前記水門本体が、昇降支柱を備えたメイン枠体と、中空管の組み合わせによるサブ枠体と、湾口への水の出入りを阻止するためのカートリッジ構造の分割膜体とを有し、
該カートリッジ構造の分割膜体が、フレームと分割膜と格子状の補強部材とを有し、該フレームの下端側に横長細膜体を組み合わせたものであることを特徴とする、浮体膜式水門。
【0013】
第4に、
湾口を締め切り可能な大きさを有する、浮体構造の水門本体と、
該水門本体と組み合う、基礎構造体とから構成され、
前記水門本体が、昇降支柱を備えたメイン枠体と、中空管のトラス構造の組み合わせによるサブ枠体と、湾口への水の出入りを阻止するためのカートリッジ構造の分割膜体とを有し、
該カートリッジ構造の分割膜体が、フレームと分割膜と格子状の補強部材とを有し、該フレームの下端側に横長膜体を組み合わせたものであり、
前記浮体構造の浮力が、水門本体を構成する中空管によるものであることを特徴とする、浮体膜式水門。
【0014】
第5に、
湾口を締め切り可能な大きさを有する、浮体構造の水門本体と、
該水門本体と組み合う、基礎構造体とから構成され、
前記水門本体が、昇降支柱を備えたメイン枠体と、中空管のトラス構造の組み合わせによるサブ枠体と、湾口への水の出入りを阻止するためのカートリッジ構造の分割膜体とを有し、
該カートリッジ構造の分割膜体が、フレームと分割膜と格子状の補強部材とを有し、該フレームの下端側に横長膜体を組み合わせたものであり、
前記浮体構造の浮力が、水門本体を構成する中空管によるものであり、
前記水門本体のメイン枠体の昇降支柱が、支柱と、該支柱の外側に位置する外側管とによる二重構造であり、
該外側管が、支柱に対して昇降可能に構成されていることを特徴とする、浮体膜式水門。
【0015】
第6に、
前記基礎構造体が、両側に位置する側壁土台と、該側壁土台間に位置する水中底板と、一方の側壁土台と一体化して立ち上がるコ字状側壁とから構成されており、
前記水中底板が、中央長手方向に遮水矢板を設置すると共に、両側に、地中鋼管杭による支持杭を設けたものであることを特徴とする、前記第1~第5のいずれか一つに記載の浮体膜式水門。
【0016】
膜体の膜としては、海水中で耐久性を有する素材のものが好ましく、例えば、ポリエステル系繊維織物、ポリビニルアルコール系繊維織物、ポリアミド系繊維織物、ポリアラミド系繊維織物、オレフィン系繊維織物(ケナフ植物繊維混織含む)等による合成繊維に、フッ素系樹脂(四フッ化エチレン樹脂、四フッ化エチレンパーフルオロアルキルビニルエーテル共重合樹脂、四フッ化エチレンー六フッ化プロピレン共重合樹脂を除く)、クロロプレンゴム、クロロスルフォン化ポリエチレンゴム、オレフィン系樹脂等による合成樹脂によるコーティングをしたものが採用できる。
【0017】
横長細膜体やカートリッジ構造の膜体には、補強のため、ワイヤーロープ、繊維ロープ、PC鋼線等による緊張材を組み合わせることができる。
【0018】
基礎構造体としては、例えば、鉄筋コンクリート造によるものを採用できる。
基礎構造体の側壁土台は、例えば、ニューマチックケーソン工法により施工したものを採用できる。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、以下の効果を奏することができる。
【0020】
水門本体を別の場所で組み立てて湾口まで曳航すると共に、現場では、ニューマチックケーソン工法を取り入れて基礎構造体を施工するだけで、全体の施工が完了するので、施工性に優れている。
【0021】
水門本体を用いて湾口を締め切ることで津波等に対応するので、長スパンにも対応することができる。
ここで、サブ枠体をトラス構造とすることで、たわみに強いものとすることができる。
【0022】
また、湾口の締切時には、波の影響を受けても、膜体自体はメイン枠体と組み合うと共に前後にサブ枠体が位置しているので、ふらふら動揺せず、特許文献2に記載の膜式水門に比べて、波高伝達率を大幅に低減でき、港内静穏度を向上させることが可能となる。
【0023】
さらに、水中底板の中央長手方向に遮水矢板を設置することで、水底面以下の浸透流を遮断することが可能となり、湾口内外における遮水率を非常に高することができるので、必要に応じて、潮位差発電が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】本発明の浮体膜式水門の斜視図である。
図2図1の浮体膜式水門の説明図で、(a)は平面図、(b)は正面図、(c)は側面図である。
図3図1の浮体膜式水門を構成する水門本体の斜視図である。
図4図3の水門本体を構成するメイン枠体及び分割構造の膜体を取り出した斜視図である。
図5図1の浮体膜式水門の横引動作説明用の斜視図である。
図6図1の浮体膜式水門の昇降動作説明用の側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明を実施するための形態を、図面を参照しつつ具体的に説明する。
ここで、添付図面において同一の部材には同一符号を付しており、また重複した説明は省略されている。
なお、ここでの説明は本発明が実施される一形態であることから、本発明は当該形態に限定されるものではない。
【実施例0026】
図1図2図5に示すとおり、本実施例に係る浮体膜式水門は、湾口に浮いた状態で横引移動可能な水門本体1(図5参照)と、該水門本体1と組み合う基礎構造体5とで構成されている。
【0027】
水門本体1は、例えば、中空管である鋼管の組み合わせによる浮体構造であって、湾口を締め切り可能な大きさのものであり、大きさの一例を示すと、84m程度の湾口の場合、基礎構造体5の土台の大きさを考慮し、74m程度の長さを有するものである。
【0028】
水門本体1は、メイン枠体10(図4参照)、サブ枠体20(図3参照)、分割膜体30(図4参照)により構成されている。
【0029】
図4に示すとおり、メイン枠体10は、5本の昇降支柱11と、5本の昇降支柱11の上端側に接続された1本の水平中空管12と、昇降支柱11間を接続する鋼製板による4枚の支柱接続板13とで構成されている。
【0030】
昇降支柱11は、支柱111と、該支柱111の外側に位置する外側管112とによる二重管構造であり、外側管112と接続されたサブ枠体20の上下位置が変化するものである(図4図6参照)。
【0031】
外側管112が、支柱111に対して昇降移動することでサブ枠体20の上下位置が変化し、潮位の変動に対応可能に構成されている。
【0032】
水平中空管12は、内部が空洞で、メイン枠体10全体の強度を高めるものである。
【0033】
図2中の(a)に示すとおり、サブ枠体20は、水平中空管12の両側に2本づつ、合計4本の上部横断中空管21を有し、(b)に示すとおり、該上部横断中空管21の下方の中間位置に中間横断中空管22を有し、該中間横断中空管22の下方であり底面位置に上下に配置された2本の下部横断中空管23を有し、(c)に示すとおり、側面側に4本の側部中空管24を有している。
【0034】
図2等に示すとおり、サブ枠体20を構成する上部横断中空管21、中間横断中空管22、下部横断中空管23、側部中空管24は、異なる長さを有する複数の傾斜中空管25で連結されているので、サブ枠体20全体がトラス構造となり、強固な強度を保つように構成されている。
【0035】
図2中の(c)に示す符号26は、サブ枠体20に組み込まれた大径中空管による2本の浮力タンクであり、底面付近の両側に配置されている。
【0036】
サブ枠体20を構成する部材として、複数の中空管を採用することで、適切な浮力を与えることが可能となる。
【0037】
図4に示すとおり、分割膜体30は、カートリッジ構造であり、湾口への水の出入りを阻止するために、4個に分割されている。
ここで、カートリッジ構造とは、例えば、メンテナンス時等の必要に応じて、交換可能な構造のものをいう。
【0038】
本実施例では、カートリッジ構造の分割膜体30は、四角形状のフレーム31と、該フレーム31内に収まる分割膜32と、該分割膜32を補強する格子状の補強部材33と、フレーム31の下端側に取り付けられた横長膜体34とにより構成されている。
【0039】
横長膜体34は、中央の折曲線34aを境界に折り曲げ可能な構造であり、分割膜体30の高さを調整する役割を果たしている。
【0040】
折曲線34aには、横長膜体34の形状を補強して維持するために、PC鋼線等による緊張材が取り付けられている。
【0041】
分割膜32及び横長膜体34の膜は、ポリエステル系繊維織物による合成繊維に、フッ素系樹脂(四フッ化エチレン樹脂、四フッ化エチレンパーフルオロアルキルビニルエーテル共重合樹脂、四フッ化エチレンー六フッ化プロピレン共重合樹脂を除く)による合成樹脂によるコーティングをしたものを用いている。
【0042】
図2等に示すとおり、基礎構造体5は、鉄筋コンクリート構造物又は鉄骨鉄筋コンクリート構造物によるものであり、両側に位置する側壁土台50と、該側壁土台50間に位置するプレキャストによる水中底板60と、一方の側壁土台50と一体化して立ち上がるコ字状側壁70とで構成されている。
【0043】
水中底板60は、図2中の(c)に点線で示すように、中央長手方向に遮水矢板61を設置すると共に、両側に、15本づつの鋼管杭による支持杭62を設けたものである。
【0044】
図5中、符号60aは、メイン枠体10の昇降支柱11の下端側の設置箇所となる凹部である。
【0045】
次に、上記の浮体膜式水門の施工について説明する。
【0046】
湾口全体の水底地盤には、側壁土台50をニューマチックケーソン工法により施工すると共に、遮水矢板61及び支持杭62の施工後に、プレキャストで製造した水中底板60を設置し、側壁土台50と一体化する。
【0047】
加えて、一方の側壁土台50に、コ字状側壁70を一体化して形成することで、基礎構造体5の施工が完了する。
【0048】
別の場所で組み立てた水門本体1を曳航し、基礎構造体5と組み合わせることで、浮体膜式水門の施工が完了する。
【0049】
従って、湾口全体の水底地盤中に深さのある構造物を施工する必要はないので、施工性に優れている。
【0050】
次に、上記の浮体膜式水門の作用について説明する。
【0051】
湾口が開口した通常の状態は、浮体構造の水門本体1を防波壁側に移動して収納しておくことで、船舶等は湾口を支障なく通過することができる。
【0052】
津波や高波の危険性が予見された場合には、図5に示すように、浮体構造の水門本体1を基礎構造体5の上部に横引移動し、昇降支柱11の下端を、水中底板60の凹部60aに設置することで、湾口を締め切ることが可能となる。
【0053】
ここで、水門本体1として、分割膜体30をメイン枠体10及びサブ枠体20と組み合わせ、更に、基礎構造体5の水中底板60に遮水矢板61を設置することで遮水壁として機能し、水底面以下の浸透流を遮断することで、湾口内外における遮水率を非常に高することができる。
【0054】
従って、津波等の危険性が予見される場合以外にも、意図的に湾口を締め切ることで、効率的な潮位差発電を可能にすることができる。
【符号の説明】
【0055】
1 水門本体
5 基礎構造体
10 メイン枠体
11 昇降支柱
111 支柱
112 外側管
12 水平中空管
13 支柱接続板
20 サブ枠体
21 上部横断中空管
22 中間横断中空管
23 下部横断中空管
24 側部中空管
25 傾斜中空管
26 浮力タンク
30 分割膜体
31 フレーム
32 分割膜
33 補強部材
34 横長膜体
34a 折曲線
50 側壁土台
60 水中底板
60a 凹部
61 遮水矢板
62 支持杭
70 コ字状側壁
図1
図2
図3
図4
図5
図6
【手続補正書】
【提出日】2023-10-24
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
湾口を締め切り可能な大きさを有し、湾口に浮いた状態で横引移動可能な、中空管による浮力による浮体構造の水門本体と
礎構造体とから構成され、
前記水門本体が、支柱と該支柱の外側に位置し昇降可能な外側管とによる二重管構造の昇降支柱を備えたメイン枠体と、前記外側管と接続された中空管の組み合わせによるサブ枠体と、湾口への水の出入りを阻止するための前記メイン枠体及び前記サブ枠体と組み合う分割膜体とを有し、
浮体構造の水門本体を、基礎構造体の上部に横引移動することで、湾口を締め切ることが可能となることを特徴とする、浮体膜式水門。
【請求項2】
湾口を締め切り可能な大きさを有し、湾口に浮いた状態で横引移動可能な、中空管による浮力による浮体構造の水門本体と
礎構造体とから構成され、
前記水門本体が、支柱と該支柱の外側に位置し昇降可能な外側管とによる二重管構造の昇降支柱を備えたメイン枠体と、前記外側管と接続された中空管の組み合わせによるサブ枠体と、湾口への水の出入りを阻止するための前記メイン枠体及び前記サブ枠体と組み合うカートリッジ構造の分割膜体とを有し、
該カートリッジ構造の分割膜体が、フレームと分割膜と格子状の補強部材とを有し、該フレームの下端側に横長細膜体を組み合わせたものであり、
浮体構造の水門本体を、基礎構造体の上部に横引移動することで、湾口を締め切ることが可能となることを特徴とする、浮体膜式水門。
【請求項3】
前記基礎構造体が、両側に位置する側壁土台と、該側壁土台間に位置し、メイン枠体の昇降支柱の下端側の設置箇所となる凹部を有する水中底板と、一方の側壁土台と一体化して立ち上がるコ字状側壁とから構成されており、
前記水中底板が、中央長手方向に遮水矢板を設置すると共に、両側に、地中鋼管杭による支持杭を設けたものであり、
浮体構造の水門本体を基礎構造体の上部に横引移動し、昇降支柱の下端を、水中底板の凹部に設置することで、湾口を締め切ることが可能となることを特徴とする、請求項1又は2に記載の浮体膜式水門。