(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024095898
(43)【公開日】2024-07-11
(54)【発明の名称】生体情報管理システム
(51)【国際特許分類】
A61B 5/00 20060101AFI20240704BHJP
A61B 5/01 20060101ALI20240704BHJP
A61B 5/107 20060101ALI20240704BHJP
G16H 50/30 20180101ALI20240704BHJP
A01K 29/00 20060101ALI20240704BHJP
【FI】
A61B5/00 102A
A61B5/01 100
A61B5/107 300
G16H50/30
A01K29/00 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022212872
(22)【出願日】2022-12-30
(71)【出願人】
【識別番号】521332350
【氏名又は名称】まちなかMEセンター株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100129986
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 拓生
(72)【発明者】
【氏名】熊川 哲
(72)【発明者】
【氏名】長井 裕
【テーマコード(参考)】
4C038
4C117
5L099
【Fターム(参考)】
4C038VA04
4C038VB35
4C117XB02
4C117XC11
4C117XE13
4C117XE23
4C117XE24
4C117XE26
4C117XE37
4C117XG40
4C117XJ13
4C117XJ45
5L099AA15
(57)【要約】
【課題】
特定個体の特性に合ったこれまでのバイタルサインデータの統計処理を行うことで、個体の特性(体重・性別・既往等)によるデータの差や傾向を考慮した日常値の判断を可能とする。
【解決手段】
特定の生物個体に直接付属させたセンサ又は/及び固定設置したセンサによって、当該生物個体のバイタルサインデータを連続的又は断続的に取得してサーバーにて保存するBSステップと、処理装置によって、前記保存したバイタルサインデータから、所定の設定条件を満たす安静時状態のデータを抽出し、所定期間に亘る、特定の生物個体の安静時状態のデータ群を日常値データとして統計処理するNDステップと、対象生物個体ごとの現在ないし直近のバイタルサインデータのリアルタイム表示と、所定以上の期間に亘る日常値データとを並列又は重畳表示するPNステップと、を行う。
【選択図】
図18
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヒトを含む対象の生物個体に付属設置したバイタルサインセンサ及び送受信機と、送受信データを保存するサーバーと、サーバーのデータを処理する処理装置と、処理内容を出力する出力装置とを備えてなり、
前記対象の生物個体に直接付属させたセンサ又は/及び固定設置したセンサによって、当該生物個体のバイタルサインデータを連続的又は断続的に取得してサーバーにて保存するステップと、
前記処理装置によって、前記保存したバイタルサインデータから、所定の設定条件を満たすことで安静時状態と判断される安静時状態のデータを抽出し、所定期間に亘る、特定の生物個体の安静時状態のデータ群を日常値データとして統計処理するステップと、
特定の生物個体について、
当該対象生物個体ごとの現在時刻ないし直近時刻のバイタルサインデータを随時更新しながら表示するとともに、所定以上の時間または期間に亘る日常値データとを並列又は重畳表示するステップと、を行うことで、
当該特定個体の現在のバイタルサインデータの各値と、統計処理された安静時状態の日常値データとの比較結果を出力することを特徴とする、生体情報管理システム。
【請求項2】
前記特定の生物個体に直接付属させた前記センサ又は/及び固定設置した前記センサによって、当該生物個体のバイタルサインデータを一定時間間隔ごとに取得して取得した時刻及び生物個体の情報とともに保存するステップと、
前記特定の生物個体のバイタルサインデータから安静時状態のデータを抽出して、所定期間に亘る安静時状態のデータを正規分布処理し、直近時刻までの所定期間に亘る安静時状態における正規分布データを作成し保存するステップと、
取得した各時刻の正規分布データにおいて、上限値・下限値、平均値ないし中心値、標準偏差、から選択される少なくとも一つ以上のデータを作成し、累積値データとして保存するステップと、
現在時刻ないし直近時刻におけるバイタルサインデータと前記いずれかのステップのデータとの数値比較を行い、比較結果を表示および保存するステップと、
当該対象生物個体ごとの現在のバイタルサインデータのリアルタイム表示と、所定以上の期間に亘る日常値データの比較表示とを並列又は重畳表示するステップと、を順に行うことで、
当該特定個体の現在時刻ないし直近時刻のバイタルサイン又はこれに基づく演算値が、当該特定個体の累積値データと比べてどれだけずれているかの比較結果を表示することを特徴とする、請求項1に記載の生体情報管理システム。
【請求項3】
前記安静時状態のデータの抽出においては、温度変化の単位時間変化量、ないし傾きの変化量が閾値以下又は以上にあるか、或いは変曲点があるかどうかによって活動状態から安静時状態への導入判断、並びに安静時状態から活動状態への導入判断を行い、これらの導入判断時刻、及び皮膚温の閾値を超えるか否かによって前記安静時状態にあることを検知する、請求項1に記載の生体情報管理システム。
【請求項4】
対象生物個体が属する所定の属性グループを設定するステップと、
前記所定の属性グループのバイタルサインデータをサーバー保存するステップと、
処理装置によって、サーバーから前記所定の属性グループの日常値データを抽出して、特定条件における所定の属性グループのグループ属性値データを統計処理するステップと、
当該対象生物個体ごとの現在ないし直近のバイタルサインデータのリアルタイム表示と、所定以上の期間に亘る、当該対象生物個体を含む所定の属性グループの所定条件のグループ属性値データとを並列又は重畳表示するステップと、を行うことで、
特定個体の現在のバイタルサインデータの各値と、当該特定個体を含む属性グループの統計処理された安静時状態の属性値データとの比較結果を出力することを特徴とする、請求項1に記載の生体情報管理システム。
【請求項5】
特定の生物個体の属する属性グループにおける、複数の生物個体の日常値データ群であって、当該特定の生物個体の日常値データを除く除外属性値データを統計処理するステップと、
当該特定の生物個体の日常値データと、当該生物個体の属性グループであってその生物個体の日常値データを除く除外属性値データとを比較し、比較結果を出力することを特徴とする、請求項3に記載の生体情報管理システム。
【請求項6】
対象生物個体の所定の症状に対する入院情報ないし病院或いは施設への来院情報を設定するステップをさらに具備し、
入院時ないし来院時のデータ、及び、自宅時のデータとに区別して出力することを特徴とする、請求項1に記載の生体情報管理システム。
【請求項7】
対象生物個体の安静時状態の日常値データのうち、術前又は術後経過期間を含む特定の症状の発生時期のデータを除く、所定の健常判別条件を満たす日常値データを、記録データとして記録するステップをさらに具備し、特定個体の直近のバイタルサインデータと健常状態の日常値データとの比較結果を出力することを特徴とする、請求項1に記載の生体情報管理システム。
【請求項8】
送信データが予め設定した上限値、下限値、平均値を超えるか否かを判別し、値を超えたことを検出した場合はアラート出力を行うことを特徴とする、請求項1に記載の生体情報管理システム。
【請求項9】
特定個体のバイタルデータを取得する前記センサは、対象生物個体の胴回りに密着させて常時装着するジャケット装着衣またはハーネスバンドにセンサを取り付けた、ウェアラブル送信機からなることを特徴とする、請求項1に記載の生体情報管理システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
動物、ヒトを含む生物個体ごとの現在の生命活動のバイタルサイン(例えば、脈拍数、呼吸数、体温を含む)を生体情報として表示し、管理する生体情報管理方法、及び、これを行う生体情報管理システムに関する。特に、犬や猫のペットをはじめとする哺乳類の飼育動物、及びヒトを対象生物個体として含む。
【背景技術】
【0002】
健常者が行う健康診断では、検査結果で得られた患者の測定値と基準値が比較される。基準値は全国民の健康データの統計により、全国一律に設定された値である。また、健康診断では一般的にはこの基準値が正常値とされ、正常・異常が判断されている。
【0003】
従来開示される動物の健康またはウェルネスを監視するための複数のセンサとして、ウエアラブル・デバイス(および、存在する場合には関連ベース・ステーション(1つまたは複数))およびDMSを備えたものが挙げられる(特許文献1)。これは、1または複数の動物の特定の健康属性に関するデータの収集、および/またはそれの監視に使用される健康監視システムの一部を形成できる、とされる。またこの健康監視システムは、たとえば非侵襲性ホーム・テレマティクス・ソリューションからデータを受信できる。システムは、スマート・マット、スマート移動/IF検出器、およびそのほかの市場で流行しているデバイスからデータを受信できる。屋内のペットおよび動物は、これらのデバイスをトリガし、存在、体重、生理学的兆候、およびバイタル・サイン等のセンサ・アーティファクトを記録できる、とされる。
【0004】
他に従来開示される情報処理装置として、被介護者の状態情報に基づいて被介護者の将来の状態を予測する予測部を備えたものが挙げられる(特許文献2参照)。例えば、予測部は、以前に取得された状態情報と、今回取得された状態情報とを比較し、比較結果に基づいて被介護者の将来の状態を予測することができる、とされる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特公表2016-514961
【特許文献2】特開2015-062118
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、本来は基準値には個体の特性(体重・性別・既往等)で差があるはずであり、例えば、自分の特性に合ったグループの基準値、或いは特定の個体の特性を加味した日常的な値と比較されるべきである。属性や個体特性が異なれば正常と判断されるべき値の範囲も異なるからである。つまり、本来は個体特性や種別などの分類による、基準値の調整が必要である。特に、測定値に関しても健康診断時に測定した測定値と一般的な基準値を比較するだけでは不十分と考えられる。つまり一般的な基準値との単純比較ではなく、その個体の日常的な特性を加味した日常的な値と比較することで、その個体にとっての現在のバイタルサイン(生体情報)の値が、その個体の健常状態の日常と比べて正常か異常かをより正確に判断することができる。
【0007】
健康診断以外を例に考えてみても、既に持病を持つ患者に対して医師は、健常者の基準値とその患者の検査の測定値を比較して病状を推定するが、本来ならば同じ持病を持つ患者グループの基準値と、患者の日常的な値を比較すべきであり、一般的な健常者の基準値のみを参考にすると、患者の現在の病状を正確に推定することができない。
【0008】
なぜ、それぞれの個体の現在の状況を考慮した基準値や日常値で、正常か異常かが判断されないのかというと、それを行うには、同じ個体の複数の時系列での生体情報や検査結果が必要になるからである。来院した時の測定値を記録しておくだけでは、日常値の判断は困難であり、患者が自宅にいる時も含めて日常的に測定した結果を記録して、始めて日常値は把握できる。
【0009】
仮に生物個体の特性や属性を考慮し、同じ条件下での測定値を統計的に処理するためには、同じ条件下の患者の測定値データが大量に必要になるため、各病院で測定した測定値データや自宅で測定した測定値データが一括管理されていないと設定することが困難となる。
【0010】
そこで本発明では、特定個体のバイタルサインデータを測定すると共に、その特定個体の特性に合ったこれまでのバイタルサインデータの統計処理を行うことで、個体の特性(体重・性別・既往等)によるデータの差や傾向を考慮した日常値の判断が可能な生体情報管理システムを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決すべく以下の手段を講じている。
【0012】
[1](日常値データとの比較)
本発明は、動物、ヒトを含む生物個体ごとの現在の生命活動のバイタルサイン(例えば、脈拍数、呼吸数、体温を含む)を生体情報としてリアルタイムに表示するシステムであって、対象生物個体の日常の安静時状態のデータの統計処理値である「日常値データ」と比較可能に表示することを特徴とする。
すなわち本発明の生体情報管理システムは、
対象の生物個体に付属設置したバイタルサインセンサ及び送受信機と、送受信データを保存するサーバーと、サーバーのデータを処理する処理装置と、処理内容を出力する出力装置とを備えてなり、
特定の生物個体に直接付属させたセンサ又は/及び固定設置したセンサによって、当該生物個体のバイタルサインデータを連続的又は断続的に取得してサーバーにて保存するBSステップ(データ取得ステップ)と、
前記処理装置によって、前記保存したバイタルサインデータから、所定の設定条件を満たす安静時状態のデータを抽出し、所定期間に亘る、特定の生物個体の安静時状態のデータ群を日常値データとして統計処理するNDステップ(統計処理ステップ)と、
特定の生物個体について、
当該対象生物個体ごとの現在ないし直近のバイタルサインデータのリアルタイム表示と、所定以上の期間に亘る日常値データとを並列又は重畳表示するPNステップ(出力処理ステップ)と、を行うことで、
当該特定個体の現在のバイタルサインデータの各値と、統計処理された安静時状態の日常値データとの比較結果を出力することを特徴とする。
なお上記及び以下本発明においてバイタルサインデータとは(例えば、脈拍数、呼吸数、体温を含む)対象生物個体の生命活動の検知データをいい、このバイタルサインデータのうち、対称性粒個体又はその属する属性グループにおける統計処理や演算ないし判別処理によって算出又は抽出した処理値を、生体情報の日常値データという。本発明の管理システムは、日常値データの抽出、上限、下限値・平均値の算出などによって得られた、生体情報の日常値データを表示し或いは管理するシステムである。
【0013】
[2](統計処理による上限、下限値・平均値の算出)
本発明は前記日常値データとして、統計処理による上限、下限値・平均値の算出を行うことを特徴とする。すなわち前記生体情報管理システムは、
前記特定の生物個体に直接付属させた前記センサ又は/及び固定設置した前記センサによって、当該生物個体のバイタルサインデータを常時取得すると共に一定時間間隔で更新データを保存するBSステップ(データ取得ステップ)と、
前記特定の生物個体のバイタルサインデータから安静時状態のデータを抽出して、所定期間に亘る安静時状態のデータのみを正規化(例えば、フーリエ変換によって正規分布近似)等の手段で統計処理し、直近までの所定期間に亘る安静時状態における、正規分布近似データ上の上限値、下限値又は/及び平均値のデータを作成し保存するNDステップ(統計処理ステップ)と、
前記正規分布データの中心値、上限値・下限値、標準偏差、の各データを作成し累積データとして保存するPDステップ(累積処理ステップ)と、
NDステップ(統計処理ステップ)による現在のバイタルサインデータとPDステップ(累積処理ステップ)の各データとの数値比較を行い、比較結果を表示および保存するCDステップ(比較処理ステップ)と、
当該対象生物個体ごとの現在のバイタルサインデータのリアルタイム表示と、所定以上の期間に亘る日常値の比較表示とを並列又は重畳表示するPNステップ(出力処理ステップ)と、を順に行うことで、
当該特定個体の現在のバイタルサインの各値が、安静時状態の平均累積値と比べてどれだけ現状ずれているかの比較結果を表示することを特徴とする、生体情報管理システム。
【0014】
[3](体温変化量又は変化率の活用)
本発明は安静時状態のデータを取得するための安静時状態の検知方法として、バイタルサインセンサで取得した対象生物個体の体温変化量又は変化率を活用することを特徴とする。すなわち前記いずれかの生体情報管理システムは、
NDステップの安静時状態のデータの抽出において、バイタルサインセンサで取得した対象生物個体の体温(体表温度、又は直腸温度ないし推定直腸温度)の単位時間変化量(傾き)、傾きの変化量が閾値以下又は以上にあるか、或いは変曲点があるかどうかによって活動状態から安静時状態への導入判断、並びに安静時状態から活動状態への導入判断を行い、これらの導入判断時刻(及び皮膚温の閾値を超えるか否か)によって前記安静時状態にあることを検知する。これにより、安静時状態にある時間帯を判断することができる。例えば
図24のように一定時間ごとに値を検出し、時間にて一次微分、二次微分を行うことで一次、二次変曲点が特定され、また時間当たりの変位量や傾きの大きさが特定される。この変曲点の時点を皮膚温度と直腸温度の交点であると仮定して、或いは/及び、時間の一次微分すなわち時間当たりの変位量、時間の二次微分すなわち傾きの変位量、の各値がそれぞれ所定の閾値以下の差分範囲かどうかを判断することで、安静時状態のデータ(安静時状態のデータ)であるか否かを検知することができる。
【0015】
[4](属性値データと比較表示)
本発明は、前記「日常値データ」に加え、属性グループの属性値データと比較可能に表示することを特徴とする。この生体情報管理システムは、前記いずれかのシステムにおいて、対象生物個体が属する所定の属性グループ(大型/小型/雄雌)を設定するステップ(F31)と、
前記所定の属性グループのバイタルサインデータをサーバー保存するステップ(F1)と、
処理装置によって、サーバーから前記所定の属性グループの日常値データを抽出して、特定条件における所定の属性グループのグループ属性値データを統計処理するステップ(F32)と、
当該対象生物個体ごとの現在ないし直近のバイタルサインデータのリアルタイム表示と、所定以上の期間に亘る、当該対象生物個体を含む所定の属性グループの所定条件のグループ属性値データとを並列又は重畳表示するステップ(F4)と、を行うことで、
特定個体の現在のバイタルサインデータの各値と、当該特定個体を含む属性グループの統計処理された安静時状態の属性値データとの比較結果を出力することを特徴とする。
【0016】
ここで属性値データとは、所定の属性基準に該当する複数の生物個体それぞれについて得られた安静時状態のデータ又は日常値データを蓄積して統計処理したデータをいう。特定の対象生物個体の属性値データは、当該対象生物個体が該当する所定の属性値グループに含まれる複数の生物個体の安静時状態のデータ又は日常値データを元データとして統計処理または演算・算出されたデータである。元データには当該対称性粒個体自体の安静時状態のデータ又は日常値データも含まれる。
【0017】
例えば、所定の属性グループにおける、日常値と属性値の蓄積データそれぞれとの数値比較結果を、現在のバイタルサインデータと同時に表示することができる。同時に表示とは、重畳表示、並表示、又は、切り替え表示のいずれかをいう。日常値データと属性値データのいずれかに関する累積情報の統計処理値を比較可能に表示することで、特定の固体が属する属性グループと同一属性グループ内の平均値と比べてどういう特性を持つか、という比較を行い、現在のバイタルサインデータに関する評価をより正確に行うことが可能となる。
【0018】
〔「属性値」の定義〕
ここで、本発明における「属性値」「属性値データ」とは、特定の生物個体の属性を複数の属性パラメータによって複合分類したときに、その生物個体の属する生物個体の日常値データの累積に基づいて算出される統計処理後の値またはそのデータを言う。例えば、当該属性に複合分類される生物個体の日常値を、日ごと、或いは時間帯や時刻ごとに平均した値が該当する。
【0019】
(「日常値」の定義)
また、本発明における「日常値」「日常値データ」とは、活動状態や非日常的な刺激を受けた状態を除いた、対象生物個体の安静時のバイタルサインデータであって、日ごと、或いは時間帯や時刻ごとの日常的な値またはそのデータを意味する。例えば、複数の測定日の安静時状態のデータを時間帯や時刻ごとに統計処理(例えば平均化処理)した時間帯ごとの値やその範囲、或いは、すべての測定情報を測定回数すべてで統計処理(例えば平均化処理)した値やその範囲が日常値の値やその範囲とされる。
【0020】
時刻や時間帯で値が変わる場合は、時間帯ごとに区切った日ごとの平均値がその時間帯の日常値に該当する。また、統計処理によって、日常値の最頻値、日常値の上限値、日常値の下限値といった各数値も算出される。
【0021】
属性値とは、当該個体の属性の日常値と比較した、正常か異常かの目安として表示される値である。つまり属性値データとは、同じ属性グループの他の動物たちの日常値のデータであって、正常か異常かの比較結果を表すものではない。今の動物の状態が正常か異常かは獣医師が判断する。
【0022】
[5](日常値データと除外属性値データとの比較)
特定の生物個体の属する属性グループにおける、複数の生物個体の日常値データ群であって、当該特定の生物個体の日常値データを除く除外属性値データを統計処理するステップと、
当該特定の生物個体の日常値データと、当該生物個体の属性グループであってその生物個体の日常値データを除く除外属性値データとを比較し、比較結果を出力することを特徴とする。
【0023】
健康体の手術前、手術後の回復状態の予測について補足するに、
手術前に取得したバイタルサインデータの標準正規分布図の有意水準5%下における面積と手術後に取得したバイタルサインデータの標準正規分布図の有意水準5%下における面積を比較し、一致率を算出する。一致率を参考に、獣医師が術後の回復状況を判断する。
【0024】
[6](入院、来院情報)
対象生物個体の所定の症状に対する入院情報ないし病院或いは施設への来院情報を設定するステップをさらに具備し、
安静時状態のデータを、入院時ないし来院時のデータと、自宅にいる時のデータとに区別して出力し、また、アラートのステップとして、他の属性グループの値との数値比較によって値の差が閾値を超えたかどうかを判定し、閾値を超えたことを検知した場合にはその情報を報知することを特徴とする。
【0025】
(症状前後の記録データ)
また前記システムにおいて、症状前後の記録データを記録するステップをさらに具備してもよい。つまり、対象生物個体の術前又は術後経過期間における安静時状態のデータを、特定の症状前後の記録データとして記録するステップをさらに具備し、術前術後データを経過履歴を含むグループ情報として記録するとともに、健康状態と比較して比較結果を予測出力することとしてもよい。
【0026】
例えば属性グループ「既往歴」「術歴」「術前後」「避妊前後」の各データを組み合わせて比較することで、復帰曲線に基づき術前安静時と比較した術後経過の状態予測結果を出力すること、つまり動けるようになる時期、拘束具の取り外し時期の予測判断を行ってその予測時期を出力することができる。
【0027】
(術前検査情報による麻酔判断)
また前記術後経過観察システムでにおいては、術前検査情報や術中情報による麻酔判断を含むシステムとしてもよい。つまり、手術前の検査によるバイタルサインデータ、および/または手術中のバイタルサインデータを記録するステップと、術後経過観察におけるバイタルサインデータを記録するステップとをさらに具備し、麻酔情報ごとに各ステップのバイタルサインデータの経過情報を比較し、あらかじめ定められた条件を満たす場合にアラート報知として出力するシステムとしてもよい。前記アラート報知においては例えば、送信データが予め設定した上限値、下限値、平均値を超えるか否かを判別し、所定の閾値を超えたことを検出した場合はアラート出力を行う。時間帯比較値、活動時比較値、安静時比較値を合わせて出力してもよい。
【0028】
このシステムでは、術前検査情報、手術情報のバイタルサインデータと、術後経過観察による後遺症のデータとを紐づけ記録して、複数の対象生物個体麻酔の影響情報としてデータ蓄積し、統計処理することができる。
【0029】
[7](健常日常値データとの比較)
対象生物個体の安静時状態の日常値データのうち、術前又は術後経過期間を含む特定の症状の発生時期のデータを除く、所定の健常判別条件を満たす健常日常値データを、記録データとして記録するステップをさらに具備し、特定個体の直近のバイタルサインデータと健常状態の健常日常値データとの比較結果を出力することを特徴とする、請求項1に記載の生体情報管理システム。
【0030】
[8]((アラート出力)
送信データが予め設定した上限値、下限値、平均値の各値として例えば、統計による同属性グループの生物個体群の値である属性値の各値、或いは/及び、当該対象の生物個体の健康状態の安静時の各値、を用いることができる。例えばリアルタイムの測定値が、属性値の平均値/及び日常値の平均値と比較して、予め設定された所定の数値差を超えるか否かを判別し、どちらかの比較による差分を超えた場合は、属性値比較、日常値比較のどちらの差分を超えたかを区別可能にアラート出力する。
【0031】
[9](ウェアラブル送信機)
特定個体のバイタルデータを取得する前記センサは、対象生物個体の胴(胸、腹背、を含む)回り(又は(四肢・首を除く体表周り)に密着させるジャケット装着衣またはハーネスバンドに定期発信型のセンサを取り付けた、対象生物個体への密着型のウェアラブル送信機からなることを特徴とする、
【0032】
密着型のウェアラブル送信機を用いることで、対象生物個体の胸、腹背回り、又は四肢・首を除く体表周りに常時装着してバイタルサインデータを定時間隔ごとに確実に取得することができる。これにより、対象生物個体のバイタルサインデータを常時取得しその傾向を把握して精度の高い比較値を表示することができる。
【0033】
[10](腸内挿入検査装置(パルスオキシメーター)を併用)
臨時で検査測定する腸内挿入検査装置(パルスオキシメーター)を併用し、
腸内挿入検査装置(パルスオキシメーター)によって少なくとも脈拍数、直腸温度を測定し、推定直腸温度の算出処理又は脈拍数の誤差確認に用いるものとしてもよい。
【発明の効果】
【0034】
上記手段によって、特定個体のバイタルサインデータを測定すると共に、その特定個体の特性に合ったこれまでのバイタルサインデータの統計処理を行うことで、個体の特性(体重・性別・既往等)によるデータの差や傾向を考慮した日常値の判断が可能な生体情報管理システムを提供することとなった。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【
図1】実施例1のバイタルサイン管理システムのシステム構成
【
図2】実施例2のバイタルサイン管理システムのシステム構成
【
図4】実施例1の複数対象の設置型サーチ範囲の設定画面例
【
図5】実施例2の複数対象の設置型サーチ範囲の設定画面例
【
図6】対象生物個体情報の管理画面例(基本情報設定)
【
図7】バイタルデータの一覧表示と選択した画面例1
【
図9】対象生物個体情報の管理画面例2(スケジュール設定)
【
図12】ウエアラブルセンサーの展開状態(a)及び装着状態(b)図
【
図13】パルスオキシメータの形態例の平面図(a)、底面図(b)
【
図14】パルスオキシメータの測定方式(a)透過型(b)反射型の概念図
【
図16】統計処理における正規分布の標準偏差グラフ
【
図17】ヒストグラムの極限と密度関数のイメージ図
【
図18】測定値の脈拍数の表示例であって、(a)対象生物個体の日常値との比較図と(b)同属性グループの属性値との比較図
【発明を実施するための形態】
【0036】
(システム構成)
本発明は、対象の生物個体に付属設置したバイタルサインセンサを備えるウェアラブル送信器と、送受信データを保存するサーバーと、サーバーのデータを処理する処理装置と、処理内容を出力する出力装置とを備えてなるシステムである。
【0037】
<システムの概要>
(対象生物個体の特定の施術日を経過観察開始日として、
活動時データに区分される術前データ、標準偏差データ、時間帯属性における下限値及び上限値データを、現在のバイタルデータと比較して所定の経過期間ごとに常時観察し、属性値の範囲内かどうかをチェックすると共に属性値の範囲を超える場合はアラート出力を行う。
【0038】
なお、対象生物個体の所定の症状に対するストレス関連情報を保存し、
体温、発汗量の変化に基づき、
日常のバイタルデータの値が変わったこと(がストレス起因によるかどうか)を判別するステップを具備することが好ましい。
【0039】
(アラート後の飼い主-主治医の通信回線記録)
飼い主端末、主治医又は病院端末へ前記アラート出力を行うと共に、文字情報チャットまたは通話通信回線を確保して回線使用可能表示を行い、回線使用後の通信記録を行う。
【0040】
(本発明のシステムの基本内容)
本発明は、生体分類・属性、個体ごとの属性値範囲を設定・表示し、属性グループの標準偏差との比較、個体ごとの日常比較平均値との比較を行って表示するシステムである。
【0041】
一又は複数の特定の対象生物個体を対称の生物個体とする。犬、猫をはじめとするペット、飼育動物のほか、ヒトが含まれる。
【0042】
(本発明の要点ないし特徴)
本発明は、対象の生物個体のバイタルサインデータについて、統計処理された当該生物個体の日常値データとの比較表示を行うことを特徴とする。
【0043】
すなわち、対象の生物個体(ヒトを含む)に付属設置したバイタルサインセンサ及び送受信機と、送受信データを保存するサーバーと、サーバーのデータを処理する処理装置と、処理内容を出力する出力装置とを備えてなり、少なくとも以下の各ステップを経ることで、対象生物個体の現在のバイタルサインデータをリアルタイム表示するとともに、このバイタルサインデータが、該当する日常値データの範囲のどの程度の位置にあるかを表示する。
前記各ステップとして、
・属性グループの項目分類とサーバーへのデータ蓄積によって、所定の属性グループの標準偏差データを(属性値として)作成するNDステップと、
特定の生物個体に直接付属させたセンサと離間設置したセンサとによって、当該生物個体のバイタルサインを常時取得して(一時)保存するBSステップと、
保存されたバイタルサインデータから安静時状態のデータか活動時データかを区別して安静時状態における日常平均値データと、日常値の上限値・下限値データを作成するPDステップと、
前記NDステップの標準偏差データ、前記PDステップの作成データに基づいて、現在のステップBSによるバイタルサインデータの数値比較結果を算出して表示するPNステップとを行う。
【0044】
本方法で順に行われる各ステップの内容を以下に説明する。
まずBSステップを行う。BSステップは、特定の生物個体に直接付属させたセンサ又は/及び固定設置したセンサによって、当該生物個体のバイタルサインデータを連続的又は断続的に取得してサーバーにて保存するステップである。
ここで生物個体のバイタルサインデータとは、心拍、呼吸数、体温、体動、SPOO2(血中酸素濃度)といった、生物個体の生存状態における身体及び精神状態を示す測定情報を意味する。本実施例では心拍、呼吸数、体温、体動、SOPOO2の少なくとも2種類以上を意味し、温度センサ、光センサ、超音波センサ、圧力センサ、ジャイロセンサなどの各種センサによって取得可能な情報をバイタルサインデータ、或いはバイタルデータとする。
BSステップにおいては、対象の生物個体に密着又は挿入するパルスオキシセンサ61S(
図13)と、離間観察によって検出するセンサ(23)とを併用してもよい。常時取得の方法として、5~60秒の範囲の設定時間ごと、或いは、1分~10分の間の設定時間ごとに繰り返し取得する。取得したデータは現在の生物個体のバイタルサインデータとしてリアルタイム表示されるとともに、連続データとしてその値の変化量、変化量の変化率を計算することで安静時状態のデータか否かの判断に用いられる。
【0045】
NDステップは、処理装置によって、保存したバイタルサインデータから、所定の設定条件を満たす安静時状態のデータを抽出し、所定期間に亘る、特定の生物個体の安静時状態のデータ群を日常値データとして統計処理するステップである。特定の生物個体の蓄積データ又はこれに代わる代替データの保存を前提とする。特定の生物個体のバイタルサインデータから安静時状態のデータを抽出して、所定期間に亘る安静時状態のデータのみを正規化(フーリエ変換によって正規分布近似)し、直近までの所定期間に亘る安静時状態における(正規分布近似データ上の)上限値、下限値又は/及び平均値のデータを作成し保存する第二のステップである。
また、PDステップを行う。PDステップは前記正規分布データの上限値・下限値、平均値ないし中心値、標準偏差、のいずれかから1または複数選択される少なくとも一つ以上のデータを作成し保存する第三のステップである。
次いでCDステップを行う。CDステップは前記NDステップによる現在のバイタルサインデータと前記PDステップの各データとの数値比較を行い、比較結果を表示および保存する第四のステップである。
【0046】
そして次いでPNステップを行う。PNステップは、特定の生物個体について、当該対象生物個体ごとの現在ないし直近のバイタルサインデータのリアルタイム表示と、所定以上の期間に亘る日常値データとを並列又は重畳表示するステップである。本ステップにより、当該特定個体の現在のバイタルサインデータの各値と、統計処理された安静時状態の日常値データとの比較結果を出力する(
図18(a)、
図21)。
【0047】
(上下限値の重畳表示)
PNステップでは、現在のバイタルサインの各値が、安静時状態の値、つまり安静時状態のデータと比べてどれだけ現状ずれているかの比較結果を重畳表示する。
対象生物個体ごとの現在のバイタルサインデータのリアルタイム表示と、所定以上の期間に亘る日常値の比較表示とを並列又は重畳表示することで、当該特定個体の現在のバイタルサインの各値が、安静時状態の日常値と比べてどれだけ現状ずれているかの比較結果を表示する。
【0048】
ここで、比較対象となる安静時状態の日常値は、当該特定の対象生物個体の安静時状態の累積データに基づく統計処理後の値であってもよいし、当該特定の対象生物個体が属する同一属性グループの生物個体(ただし、当該特定の対象生物個体を除く)の安静時状態の累積データに基づく統計処理後の値であってもよい。本発明では前者を日常値又は日常値データとし、後者を属性値または属性値データとする。
【0049】
現在のバイタルサインの各値を、日常値データの上限値、下限値、平均値の箱図と重畳表示した表示例が
図18(a)である。一方、現在のバイタルサインの各値を、属性値データの上限値、下限値、平均値の箱図と重畳表示した表示例が
図18(b)である。
【0050】
図18では対称性粒個体の安静時状態のデータである日常値データとの箱図比較(a)と、属性値データの箱図比較(b)とを、上下に並べて表示した例を示す。このほか、
図18(a)と
図18(b)とを相互に切り替えて表示することもできる。例えば、当該対象生物個体の日常値の箱図と対比表示したいわゆる日常値対比表示にて、現在のバイタルサインデータの各値を一括表示することもできる。また、この状態から切り替えて、当該対象生物個体のの属する属性グループの日常値と対比したいわゆる属性値対比表示にて、現在のバイタルサインデータの各値を一括表示することできる。
【0051】
上記とは別の重畳表示例として、現在のバイタルサインの値を、日常値データの折れ線グラフ、及び属性値データの平均曲線と同時に重畳表示した表示例が
図21である。
図21では太線の折れ線で表される、現在のバイタルサインの各値が、時間経過によるグラフ進行状態で表示される。
【0052】
そして
図21では前記バイタルサインの折れ線グラフ状表示とともに、当該対象生物個体の安静時状態のデータの同時刻帯での平均値、上限値、下限値を日常値平均、日常値上限、日常値下限として一点鎖線または二点鎖線で折れ線グラフ状に重畳表示している。さらに
図21では前記バイタルサインの太字の折れ線グラフ状表示、日常値データ一点鎖線または二点鎖線の折れ線グラフ状表示とともに、当該対象生物個体の属する属性値データの同時刻帯での平均上限値、平均下限値を、破線の曲線及び曲線上下範囲のドット塗りによって重畳表示している。
【0053】
なお、
図21のバイタルサインの折れ線グラフに重なる×(バツ)印は、傾きの符号が変わる変曲点の表示である。また折れ線グラフに接する矢印の表示は、各比較値によりアラートを報知した時点の表示である。また折れ線グラフに交わる縦線は、各比較値と値が交わった時点の表示である。この縦線表示は今までの日常値上下限や属性値上下限の平均を超えた時点を示すものであり、グラフの傾きとグラフ上の値によって開始時刻、終了時刻を推定するのものである。推定した開始時刻、終了時刻はアラートのダイアログ内に表示している(
図21)。
【0054】
図21ではバイタルサインのグラフに日常値データ、属性値データの2種類を同時に重畳表示しているが、日常値データ、属性値データのいずれか1種類の重畳表示に切り替えてそれぞれの比較グラフとして重畳表示することもできる(図示せず)。また、折れ線グラフ上の表示を
図18のように一軸上表示に切り替えることもできる。
【0055】
(安静時状態の抽出)
本システムは、
属性グループの項目分類とサーバーへデータ蓄積されたデータ群に基づき、所定の属性グループの標準偏差データ(統計処理値)を作成するステップと、
特定の生物個体に直接付属させたセンサと離間設置したセンサとによって、当該生物個体のバイタルサインを常時取得して(一時)保存するステップと、
保存されたバイタルサインデータから安静時状態のデータか活動時データかを区別して安静時状態における日常平均値データと、日常値の上限値・下限値データを作成するNDステップと、を行う。このNDステップにおいては安静時状態のデータを抽出する方法として以下の安静時の検知方法が挙げられる。
【0056】
(安静時状態のデータの抽出)
NDステップの安静時状態のデータの抽出においては、温度変化の単位時間変化量(傾き)、傾きの変化量が閾値以下又は以上にあるか、或いは変曲点があるかどうかによって活動状態から安静時状態への導入判断、並びに安静時状態から活動状態への導入判断を行う。これらの導入判断時刻(及び皮膚温の閾値を超えるか否か)によって前記安静時状態にあることを検知する。
【0057】
(他の属性グループの値との数値比較によるアラート検出)
累積処理ステップにおいては、対象生物個体が属吸する所定の属性グループを設定する属性分類手順1をさらに具備し、
比較処理ステップにおいては、特定の固体が同一属性グループ内の平均値と比べてどういう特性を持つか、という比較を行い、所定の属性グループにおける、日常値と属性値の蓄積データそれぞれとの数値比較結果を、ストレス時(入院時)の日常値比較データ、及び、非ストレス時(自宅時)の日常値比較データとに区別して出力する。
【0058】
特定の固体が同一属性グループ内の平均値と比べてどういう特性を持つか、という比較を行うことで、個体特性の把握ができるとともに、他の同一属性グループと比較した判断ができる。日常値アラートと属性値の蓄積データとを組み合わせることで詳細アラートを出すことができる。ストレス時(入院時)の日常値、非ストレス時(自宅時)の日常値、を判別可能とする。
【0059】
属性分類手順、すなわち属性グループ基準値との比較を行う具体的なステップは以下となる。
対象生物個体が属する所定の属性グループ(大型/小型/雄雌/気性など、ヒトの場合は体重/身長/性別)を設定するステップと、
前記所定の属性グループのバイタルサインデータをサーバー保存するステップと、
処理装置によって、サーバーから前記所定の属性グループの日常値データを抽出して、特定条件における所定の属性グループのグループ属性値データを統計処理するステップと、
当該対象生物個体ごとの現在ないし直近のバイタルサインデータのリアルタイム表示と、所定以上の期間に亘る、当該対象生物個体を含む所定の属性グループの所定条件のグループ属性値データとを並列又は重畳表示するステップと、を行う。
上記により、特定個体の現在のバイタルサインデータの各値と、当該特定個体を含む属性グループの統計処理された安静時状態の属性値データとの比較結果を出力する。
【0060】
(除外属性値データとの比較)
特定の対象生物個体の属する属性グループにおける、複数の生物個体の日常値データ群であって、当該特定の生物個体の日常値データを除く除外属性値データを統計処理するステップと、
当該特定の生物個体の日常値データと、当該生物個体の属性グループであってその生物個体の日常値データを除く除外属性値データとを比較し、比較結果を出力することを特徴とする、請求項3KLに記載の生体情報管理システム。
【0061】
(健常の日常値データとの比較)
前記対象生物個体の安静時状態の日常値データのうち、術前又は術後経過期間を含む特定の症状の発生時期のデータを除く、所定の健常判別条件を満たす健常の日常値データを、記録データとして記録するステップをさらに具備し、特定個体の直近のバイタルサインデータと健常状態の健常の日常値データとの比較結果を出力する。
【0062】
(日常値データの上限値、下限値比較によるアラート鳴動)
上記日常値データの上限値、下限値と比較した出力について補足するに、
標準偏差の2倍の値の有意水準5%で、
有意な差がない場合はアラートを鳴らさない。有意な差がある場合はアラートを鳴らす。という出力処理が基本となる。
有意水準の位置はアラートの境界位置として獣医師によって予め設定することが可能である。例えば、%及び脈拍数や呼吸数などで設定する。
【0063】
安静時の日常値データ、すなわち安静時状態のデータは例えば以下の処理によって抽出、統計処理、及び出力する。
・活動時除外処理として、除外処理活動量に関する判別条件を満たす時間帯のデータを、活動帯データとして除外する。
・統計処理として、最頻値または2番目の値、あるいは、標準偏差デ―タの端2・5%領域※活動量によって大きく変わる)を算出する。
・変動幅比較表示として、日々の時間帯による変動幅内にあるか否か、の端値変動目安(異常値目安)を、ABCなどの分類記号又はコメントで表示する。
【0064】
「平均値、上下限界値との比較、標準偏差(バラツキ)の各累積値を、期間グループ、時間帯グループ、安静時/活動時割合データの各グループ内データと共に保存する。
【0065】
(データ更新)
日常値の作成データは、バイタルサインデータのデータ蓄積によって随時更新される。このとき、安静時か活動時かを区別ないし抽出するための基準として加速度センサを用いた検出値を単位時間ごとに蓄積した蓄積データを用いる。安静時状態かどうかの判断においては例えば、検出値を単位時間ごとに蓄積した蓄積データを用いて、所定の時間帯における上下最大値、又は時間変化の度合い(時間軸における傾き又は傾きの変位量)の値を算出し、生物個体ごと又はその属性グループごとにあらかじめ設定された閾値と比較して、安静時状態のデータと判断されるデータのみを抽出する。このとき、時刻(時間帯)データを付属させることで、安静時状態のデータのみを時刻情報とともに蓄積保存することが好ましい。一の対象生物個体について、安静時状態のデータを所定の期間にわたって時刻情報とともに累積保存することで、時間帯基準での比較や、時間経過による変動予測を行うことができる。この比較や予測を用いて、例えば現在のバイタルサインデータの変動が、単なる一時的な値の変動なのか、緊急事態による値の変動なのかの判断を行うことできる。例えば緊急度が低く、徐々に悪化する症状を判断でき、データ予測により早期発見できる。ペット家畜は特に、症状の以上判断予測が重要となる。
【0066】
具体的には、生体分類・属性、個体ごとの属性値範囲を設定・表示し、属性グループの標準偏差との比較、時間データとともに変動を時系列表示するPDステップ3-3と、
属性グループの項目分類とサーバーへのデータ蓄積によって、所定の属性グループの基準データ、例えば標準偏差データを作成するGDステップを具備する。
【0067】
(入院・来院情報)
対象生物個体の所定の症状に対する入院情報ないし病院或いは施設への来院情報を設定するステップをさらに具備し、
入院時ないし来院時のデータ、及び、自宅時のデータとに区別して出力する生体情報管理システムとすることができる。
【0068】
(術前術後データのグループ記録)
対象生物個体の所定の症状に対する施術情報を保存し、対象生物個体の術前又は術後経過期間における安静時状態のデータを前記症状の属性データとしてグループ記録するステップをさらに具備する。
例えば、属性グループ「既往歴」「術歴」「術前後」「避妊前後」を組み合わせることで、術後経過の状態判断ができる。
【0069】
(アラート出力)
送信データが予め設定した上限値、下限値、平均値を超えるか否かを判別し、値を超えたことを検出した場合はアラート出力を行う。
【0070】
例えば術後経過観察のアラート出力システムの形態例においては、
対象生物個体の特定の施術日を経過観察開始日として、活動時データに区分される術前データ、標準偏差データ、下限値及び上限値データを、現在のバイタルデータと比較して所定の経過期間ごとに常時観察し、属性値の範囲内かどうかをチェックすると共に属性値の範囲を超える場合はアラート出力を行う。
【0071】
なお、術前検査情報による判断、麻酔中判断も可能である。例えば、属性値の範囲内か否か、変動の有無を表示する術前検査・麻酔の判断システムが考えられる。また麻酔中の判断においては、・・・・が判断項目となる。
【0072】
また上記とは別の形態例として、入院管理、オペ中のアラートシステムが挙げられる。本形態例は、個体ごとにマイクロチップを装備した複数の生物個体を対象とし、マイクロチップ番号を使用した個体識別を行って、属性グループに該当する全ての生物個体の現在のバイタルサイン情報とアラートの有無を、正粒個体の番号ごとに区分して一括表示する。
【0073】
本システムでは、設置型総送信機・ウェアラブル送信機を使用した多頭の個体機死別を行う時に、ROIによる識別以外に、マイクロチップ番号を使用した個体識別を行う。
【0074】
(アラート後の飼い主-主治医の通信回線記録)
異常値を検出したときは、飼い主端末、主治医又は病院端末へアラート出力を行うと共に、文字情報チャットまたは通話通信回線を確保して回線使用可能表示を行い、回線使用後の通信記録を行うシステムとすることができる。
【0075】
(健康情報の診断システム(健康診断への活用システム)
健康診断における生物個体の測定データを追加して、時系列データとして記録するシステム。
【0076】
(ウェアラブル送信機)
特定個体のバイタルデータを取得する前記センサは、対象生物個体の胴(胸、腹背、を含む)回り(又は(四肢・首を除く体表周り)に密着させて常時装着するジャケット装着衣またはハーネスバンドにセンサを取り付けた、ウェアラブル送信機からなる(
図12)。
【0077】
(13)直腸温度の推定:腸内挿入検査装置(パルスオキシメーター)を併用する。
前記常時装着するウェアラブル送信機とは別に、当該生物個体に一時的に腸内挿入する腸内挿入検査装置(パルスオキシメーター6)を備えたシステムであって、
腸内挿入検査装置(パルスオキシメーター6)によって少なくとも脈拍数、直腸温度を測定し、推定直腸温度の算出処理又は脈拍数の誤差を表示し得る。
例えば直腸温度の最高温度該当時刻、最低温度該当時刻と、表皮温度の最高温度該当時刻、最低温度該当時刻とが一致すると仮定して、直腸温度を推定する。
【0078】
(第一の生体情報管理方法における各ステップ)
本発明の第一の生体情報管理方法は、ヒトを含む対象の生物個体に付属設置したバイタルサインセンサ及び送受信機と、送受信データを保存するサーバーと、サーバーのデータを処理する処理装置と、処理内容を出力する出力装置とを備えてなり、少なくとも以下の各ステップを含んで実行される。
【0079】
前記各ステップとは、
対象の生物個体に直接付属させたセンサ又は/及び固定設置したセンサによって、当該生物個体のバイタルサインデータを連続的又は断続的に取得してサーバーにて保存するデータ取得ステップと、
前記処理装置によって、前記保存したバイタルサインデータから、所定の設定条件を満たすことで安静時状態と判断される安静時状態のデータを抽出し、所定期間に亘る、特定の生物個体の安静時状態のデータ群を日常値データとして統計処理する統計処理ステップと、
特定の生物個体について、
当該対象生物個体ごとの現在時刻ないし直近時刻のバイタルサインデータを随時更新しながら表示するとともに、所定以上の時間または期間に亘る日常値データとを並列又は重畳表示する出力処理ステップとを含む。
【0080】
前記出力ステップによって、
当該特定個体の現在のバイタルサインデータの各値と、統計処理された安静時状態の日常値データとの比較結果を出力する。
【0081】
(第ニの生体情報管理方法における各ステップ)
本発明の第二の生体情報管理方法は、前記第一の生体情報管理方法をより具体的に特定した、少なくとも以下の各ステップを含んで実行される。すなわち、
前記特定の生物個体に直接付属させた前記センサ又は/及び固定設置した前記センサによって、当該生物個体のバイタルサインデータを一定時間間隔ごとに取得して取得した時刻及び生物個体の情報とともに保存する前記データ取得ステップと、
前記特定の生物個体のバイタルサインデータから安静時状態のデータを抽出して、所定期間に亘る安静時状態のデータを正規分布処理し、直近時刻までの所定期間に亘る安静時状態における正規分布データを作成し保存する前記統計処理ステップと、
取得した各時刻の正規分布データにおいて、上限値・下限値、平均値ないし中心値、標準偏差、から選択される少なくとも一つ以上のデータを作成し、累積値データとして保存する累積処理ステップと、
現在時刻ないし直近時刻におけるバイタルサインデータと前記いずれかのステップのデータとの数値比較を行い、比較結果を表示および保存する比較処理ステップと、
当該対象生物個体ごとの現在のバイタルサインデータのリアルタイム表示と、所定以上の期間に亘る日常値データの比較表示とを並列又は重畳表示する前記出力処理ステップと、を含む。これらのステップを順に行うことで、
当該特定個体の現在時刻ないし直近時刻のバイタルサイン又はこれに基づく演算値が、当該特定個体の累積値データと比べてどれだけずれているかの比較結果を出力することを特徴とする。
【0082】
[各ステップの説明]
(特定の属性グループデータの作成)
累積処理ステップにおいては、属性グループの分類項目例とサーバーへのデータ蓄積、つまりデータの累積保存処理を行う。本ステップにおいては生体分類・属性、個体ごとの属性値範囲を設定し、選択肢タグにて複数選択可能としておく。すべての選択肢に該当する蓄積データを抽出して比較対象の属性グループの標準偏差データ(例えば属性値の平均値、上限値、下限値)を作成する。
【0083】
標準偏差データは、体動が抑えられた安静時状態における夜間呼吸数、夜間脈拍数、血圧、SPO2(血中酸素濃度)、日中安静時の体表温度、日中体表温度に基づく予測体温、胴部の瞬間加速度のデータからなる。
【0084】
バイタルサインデータの対比のためには、対象生物個体(対象動物)が該当する複数の属性パラメータでカテゴライズして、各属性パラメータの組み合わせによる属性グループの特定ヲ行うことが好ましい。属性グループの特定においては、例えば上記入力内容に応じて、どの属性パラメータの属性グループに該当するかを多段階に特定する。例えば
図11に示すように、大型/中型/小型の3種、性別の2種、年齢:若年、中年、壮年の3種、気質2種、体重:BCS5段階評価で3種を組み合わせたグループ分けを行うことで、最大216種の属性グループのうち対象生物個体(対象動物)がどの属性グループに属するかを特定することができる。特定した属性グループは識別記号221DGを付して対象生物個体(対象動物)の管理画面に表示することができる(
図8)。
【0085】
なおヒトの場合、例えば性別(男女)、年齢(5グループ程度)、体重と身長によるBMI(3グループ)を組み合わせたグループ分けを行う。
【0086】
(動物種:「犬/猫」の場合の属性パラメータ例)
表示ソフトに対象生物個体の生体物(動物)の基本情報の表示画面を選択式または記入式に表し、利用者の入力を促す。
<動物の場合>
・動物種(犬・猫)
・品種(1動物種で3グループ)
・性別(雄・雌)
・年齢(3グループ)
・気質(2グループ)
・体重を入力(BCS「ボディコンディションスコア」5段階評価で3グループ分け)
最大216グループ
<ヒトの場合>
・性別(男女)
・年齢(5グループ程度)
・体重と身長を入力(BMI「ボディコンディションスコア」5段階評価で3グループ分け)
最大30グループ
【0087】
(加速度センサと送信)
データ取得ステップにおいては、3軸加速度センサを用いて定時間隔に測定する。データを数分間隔で纏めて送信する。
【0088】
(データ取得ステップ)
データ取得は例えば、毎秒~数秒ごとに行う、データ送信は例えば、5~10分間隔で行う。これらの時間間隔は設定可能である。データ取得ステップは具体的には以下のF11~F13のステップを含む。
F11:安静時状態のデータ抽出ステップ:活動条件を満たすデータを除外(サーバ)、安静時バイタルデータの累積保存(サーバ)
F12:単位時間ごとに計測した対象生物個体の生体物バイタルサインデータDから活動条件データDAを除外した安静時状態のデータDRのみを抽出し、メモリMに収集蓄積、上書き保存。
F13:最も古い時刻データ上に上書き保存特定の時刻又はデータ蓄積量ごとに送信、サーバで保存)
【0089】
前記F12:安静時状態のデータ抽出ステップにおいては、前記NDステップ:安静時状態のデータの抽出の内容に基づいて<安静時と活動時の検知>を行う。ここでは1分~数分間隔でデータ取得し、数分~数時間に1回の間隔で定期的なデータ出力を行う。
【0090】
(統計処理ステップ)
特定の個体について日常値のデータ蓄積:常時測定によって安静時日常値の下限値、上限値、平均値を、属性データの各値とともにデータ蓄積する。蓄積したデータを“属性値”として上書き可能に保存する(
図13)。
【0091】
累積処理ステップによって統計処理情報が更新された場合は、累積データの値に基づいて上限値、下限値の自動調整を行う。自動調整した上限値、下限値を閾値として対属性値アラートを出す。
【0092】
比較処理ステップ及び出力処理ステップでは、他の個体との比較として、属性値との平均値比較、上限値比較、下限値比較を出力する。
【0093】
<対属性値アラートの出し方>
呼吸数、脈拍数、体温によって6種類のアラートがだせる。アラート種の組み合わせによって想定症例を出せる。ただし時間帯区分によって上限と下限の幅が変動する。具体的な統計処理の手順は例えば以下からなる。
【0094】
ステップ1.度数分布表を作成し、脈拍数と呼吸数のデータを記録し、脈拍数呼吸数のデータの階級を決め、各階級の階級値(中央値)を決め、各階級のデータ数(度数)を求め、各階級の各データ数が全体に対してどのくらいの割合を占めるのか(相対度数)を求め、そして、ある階級以下の相対度数の合計(累積相対度数)を求めるステップ。
【0095】
ステップ2.平均値、分散、標準偏差を求めるステップ。
【0096】
ステップ3.度数分布表を基にヒストグラムを作成する。ヒストグラムの全面積を1になるように正規化するステップ。
【0097】
ステップ4.ヒストグラムを滑らかな曲線で結ぶステップ。
【0098】
データ数を多く取ってデータ蓄積すると、ヒストグラムの上端を繋いだグラフは次第に滑らかになる。この曲線を変数の確率密度関数または密度関数と呼ぶ。この確率密度関数f(x)を定積分することで面積が求められ、この面積が確率となる。確率密度関数の面積の総和は1になる。
【0099】
ステップ4の1:
ヒストグラムの面積(確率)または確率密度関数f(x)を定積分した面積(確率)を算出し、同じ母数のヒストグラム同士、または確率密度関数f(x)を定積分した面積同士の2つのデータセットの重なった面積の割合(一致率)を算出するステップ。
【0100】
ステップ5:データの分布が正規分布かどうかを判断するステップ。
【0101】
このステップでは、度数分布図(ヒストグラム)や正規確率グラフを用いて視覚的に確認する。例えば、データが正規分布に従う期待値を縦軸、データそのものの数値を横軸にとったグラフ(Q-Qプロットと)が一直線上になれば正規分布しているということを判断する。また別述する統計的手法を用いて正規分布かどうかを判断する。
【0102】
<正規分布処理について>
図16左図が正規分布のグラフと、標準偏差とその2倍、3倍σ,2σ,3σの範囲を示したものである。平均や分散、標準偏差の値とは関係なく、全ての正規分布のグラフは以下の性質を示す。
・平均値±1σの範囲中に、全体の約68パーセント
・平均値±2σ(場合によっては1.96σの値を使うこともあり。)の範囲中に、全体の約95パーセント
・平均値±3σの中に、全体の約99.7パーセント
【0103】
検定統計量としては、以下の帰無仮説を用いることができる。
・帰無仮説: 棄てられるかどうかを検定する仮説。「差がない」という仮説である。
・帰無仮説が棄却されないときは有意な差がない、とする。
・帰無仮説が棄却されるときは差がないことはない、すなわち有意な差があるとする。
【0104】
ここで、有意水準(危険率))について説明する。「棄却されるかどうか」の判断基準は帰無仮説が成立する確率を指標とするところ、この確率を有意水準(もしくは危険率)と呼ぶ。有意水準の設定に明確な基準はないが,医学分野では5% (0.05))が採用される。例えば,「有意水準5%」ということは,「帰無仮説が成立する確率は5%」という意味である。算出された検定統計量の値が現れる確率が有意水準より低ければ,「めったに起こらないことが起こった」ということになり、帰無仮説は棄却される。
【0105】
図16右図はデータ補正により正規分布と仮定して、検定統計量の範囲、すなわちP値の境界をUDmin UDmaxとして統計処理ステップの試行回数ごとに表示した例である。同図では優位水準を5%、すなわち、帰無仮説が棄却されない検定統計量の面積を95%とし、この面積の範囲において有意な差がない、とする。一方、同図の左右端それぞれの2.5%面積の領域は帰無仮説が棄却される領域となり、検定統計量の範囲から除外される。
【0106】
なお、標準正規分布過程を行わずに、中央値、平均値、上限値、下限値の4価を参照値として並表示してもよい。左右5.0%つまり左右2.5%ずつ。
図18の上図は対象生物個体の生体物の比較表示で、
図18の下図は対象Gの生体物の比較表示である。
【0107】
統計的手法の判断後にて正規分布していると判断される場合、続く以下のステップ5-1が挙げられる。
<ステップ5-1.正規分布している場合>
先ず、確率Pを%に変換した値100P%点から、脈拍数または呼吸数の正規分布曲線の両側10%点(片側で5%点)、または両側5%点(片側で2.5%)、または上側5%点、または上側2.5%点、下側5%点、または下側2.5%点、または獣医療関係者が設定した任意の%点、それぞれの%点において、脈拍数と呼吸数が算出される。
【0108】
次に、それぞれの%点において、現在計測した脈拍数や呼吸数が、上側の%点における脈拍数や呼吸数よりも大きくなった場合には、上限アラートが発生する。
【0109】
<対日常値アラートの出し方>
サーバーにて呼吸数、脈拍数、体温によって6種類のアラートがだせる。アラート種の組み合わせによって想定症例を出せる。
【0110】
そして、それぞれの%点において、現在計測した脈拍数や呼吸数が、下側の%点における脈拍数や呼吸数よりも小さくなった場合には、下限アラートが発生する。それぞれの%点における脈拍数と呼吸数は、数分おきに収集したデータを統計処理する度に更新される。アラートの設定幅、アラートの上下限値も自動で変更される。
【0111】
標準偏差作成と日常値の上限値・下限値算出を行う際には、パラメータ:測定時間帯(早朝、午前中、昼、夕方、夜間、深夜)を用いてもよい。安静時状態における日常平均値データの作成において比較項目を付加する場合は、安静時状態における日常平均値データを一時間ごとに送信する。
【0112】
[本システムの運用上の処理]
本システムは、以下のような仕組みを構築する。
(1)病院内、自宅を問わず、バイタルサインの測定値を記録し続けることで、その患者ないし対象生物個体の日常値を算出し、記録する。
(2)収集したデータから、別の個体を含む、対象生物個体(者)の特性に合ったグループの属性値(雄雌/年齢/犬種・出身地、/血液型などの属性パラメータを組み合わせた特性)を統計的に算出し、また、同時に収集データから標準偏差を使って、その患者にないし対象生物個体合わせた正常範囲を算出する。
(3)患者ないし対象生物個体の日常値と属性値を比較し、正常範囲に基づいて、日常値と測定値が正常か異常かを判断するアシストを行う。
【0113】
具体的には、以下の3つの数値比較を行う。
・同じ持病を持つ生物個体グループの属性値と、日常的な値を比較する。
・同じ持病を持つ生物個体グループの中で年代・種族カテゴリーが同じ属性グループの健常生物個体の属性値と、当該生物個体の日常的な値を比較する。
・同時に、この生物個体の日常的な値同士を比較することでも、現在の状況の重症度を推定する。
【0114】
[用語の説明]
日常値情報とは、生体・生活情報に基づく日常値値を意味する。例えば排泄物の量、回数、色などの情報を数値化したものがあげられる。
【0115】
本システムの適用例として以下ABCDが挙げられる。
【0116】
適用例A:麻酔前評価(問診以外に客観バイタルサインを参照する)システム。麻酔処置、術後の経過観察時において、或いは術後処置、日常復帰判断に用いる。
【0117】
適用例B:オペ中の管理システム:日常の属性値を参照して変動範囲の段階、を個体に合わせて設定、危険判断時はアラート内容を詳細に出すシステム。動物種別属性ごとにアラート危険情報(死に至るまでの時間的余裕)がかわるため、アラート精度を上げられることは獣治療においては重要である。例えば、麻酔深度、覚醒度が挙げられる。
【0118】
適用例C(健康情報の診断システム(健康診断への活用システム)
健康診断における生物個体の測定データを追加して、測定年別データとして記録して表示するシステム。
【0119】
適用例D(入院管理中のアラートシステム)
対象生物個体ごとにマイクロチップを装備した複数の生物個体を対象とし、マイクロチップ番号を使用した個体識別を行って、属性グループに該当する全ての生物個体の現在のバイタルサイン情報とアラートの有無を、生物個体の番号ごとに区分して一括表示するシステム。
【0120】
<手術における処理の具体例>
使用するデータ:
当該対象生物個体がリラックスして自宅で夜間に眠っている時のバイタルサインの数値から個体の日常値を設定する。
当該対象生物個体が、動物病院で手術後に眠っている時のバイタルサインの数値と上下の変動幅(安静値)のデータを所得する。
【0121】
日常値データ取得のタイミングは、手術前や入院前に自宅にいる時が理想であるが、自宅で取得したデータが既にあるようであれば、その時のデータを使用する。
属性値は同じ条件(同じ病名・同じ動物・同じ年齢・同じ性別等)で全国的に収集した様々な個体のデータから、統計的に算出する。データが不足している場合には論文等に記載のある動物の一般的なバイタルサインの数値を代用する。
【0122】
手術前(“術前検査情報”として院外バイタルデータが安定した値かどうかの判断を行う)
蓄積データから日常値と属性値(持病がある場合は同じ病態、同じ疾病グループの手術前の属性値、健康な場合には健常者の属性値)を比較。手術前や入院前に取得した個体日常値が属性値と比較する。
個体に特に問題がない場合に日常値と属性値がほぼ同じ範囲の値域となるはずであるが、日常値と属性値に一定数値以上の誤差がある場合には、既にその個体に何かしらの異常が生じている可能性、持病が悪化している可能性(先天的異常など)をシステムが自動判断して、他の検査の実施や手術の延期・中止の判断(手術執行の安全性)をシステムがアシストする。
【0123】
ウエアラブルセンサは体表温度を測定するものであるが、この体表温度から推定直腸温を推定算出するものとしてもよい。
<推定直腸温の推定算出>
推定直腸温の算出は、例えば以下の4ステップによって行う。
ステップ1.起床時、昼食前、夕食前、就寝前の4回、ウェアラブル送信機または設置型送信機を使用している動物の直腸温を、直腸挿入型のパルスオキシメータ(例えば
図13の符号6)によってスポット測定する。
ステップ2.スポット測定した直腸温度と、同時刻の表皮温度とその時の外気温を記録する。
ステップ3.表皮温度と外気温の差及び、4回の測定値を平均した直腸温度と表皮温度との差を計算し、推定直腸温を算出する。
ステップ4.直腸温をスポット測定する度に、その時の直腸温度と、同時刻の表皮温度を加えて平均値を計算し直すことで推定直腸温を更新していく。
【0124】
外気温、属性グループ値を参考に行う。ウェアラブル送信機は実施例では密着性の高いジャケット装着衣によって外気温の影響を抑えている。あるいは、密着性の高いハーネス型又はハーネス構造を併用してでもよい。ウェアラブル送信機として、摩擦による脱毛、ストレス低減を防止する効果もある。ジャケット型のセンサによって腹部温度と心拍(拍動)を測定することで、常時精度の高い測定が可能となる。加速度センサーと張力センサーとを用いて呼吸数を測定する。
【0125】
体温測定と同様に、直腸で酸素飽和度の測定を行うことが出来れば、手間の削減と測定値の安定性、再現性を両立できる。例えば、直腸に挿入して使用するパルスオキシメータ6であってパルスオキシセンサ51Sを内蔵した透明樹脂部610を組み込んだものを使用することで(
図13)、直腸で酸素飽和度を測定するステップを具備した測定方法とすることができる。
図13に示すような体温計型パルスオキシメータ6は、直腸測定用のフレキシブルシャフトの体温計組み込み部に、パルスオキシメータの機能を付加させたものである。このパルスオキシメータは例えば
図13のように、各板状の制御ボックス62の側部に、円錐状の弾性連結部61Tを介して、弾性曲げ変形可能なフレキシブルシャフト61が連結された形態があげられる。制御ボックス62は電源、回路および表示部を有し、表面には表示部6Dとスイッチボタン63が設けられる。フレキシブルシャフト621は直腸に挿入可能な径の円柱部と、先部が先側にすぼまった長半球状部と、先部近傍に組み込まれた筒状の透過樹脂部610と、透過樹脂部610内に組み込まれたセンサ61Sとからなる。センサ61Sは、温度センサと、反射型SPO2センサとが周方向に離間して組み込まれる。
【0126】
(測定原理)
パルスオキシセンサには、発光センサと受信センサで対象血管を挟んで酸素飽和度を測定する透過型(
図14の左)と、対象血管を挟まない反射型(
図14の右)の2通りがある。
図13に示す形態では反射型のパルスオキシセンサ61S(
図13(a))が組み込まれる。「SPO2の変化量」をデータ累積させる。シャフト部に圧力センサを備える。本形態のほか、シャフト形状を先太り型に変更することもできる。
【0127】
(術前検査における属性値の使用)
麻酔前評価(術前検査)において日常値、属性値を用いることもできる。
<麻酔前評価について>
獣医師は手術当日の麻酔の直前に麻酔前評価を行う。麻酔前評価の目的は動物の全身状態の把握や重症度を評価することで、手術中・手術後の合併症を予測し、周産期管理対策を立案することである。本システムは、術前検査の中でも特に麻酔前評価をアシストするシステムである。
麻酔前評価では下記に記載した評価項目を参考に獣医師が評価を行う。
【0128】
(評価項目)
・心拍数・呼吸数・心雑音の有無・異常呼吸音の有無:
・内服薬・X 線検査: ・超音波検査:
・血液検査(WBC, PCV, PLT,ALB,GLU,ALT,ALP,BUN,CRE,Na,K,Cl,CRP/SAA)
・てんかん、アレルギーの有無
・努力呼吸、チアノーゼ、粘膜蒼白、腹囲膨満の有無
・意識レベル:正常・傾眠・混迷・昏睡のいずれか
・ASA-PS、BCS、予想される疼痛の程度:
軽度・中等度・重度
【0129】
獣医師から飼い主に対して行われる問診情報は、飼い主であっても、自分の体のことではなく、また動物は話すことが出来ないため、不正確な情報がある。また、過去の記録がないことから、飼い主の勘違い、うる覚え、忘れてしまっている場合もある。そこでデバイスを使用し客観的なバイタルサイン情報を連続取得することによって麻酔前評価を行う。
【0130】
用いるバイタルサイン情報は、心拍数,脈拍数,収縮期血圧,平均血圧(非観血的)平均血圧(観血的),拡張期血圧,自発呼吸,人工呼吸といった情報である。他に、体温、呼気麻酔薬濃度、終末呼気二酸化炭素分圧、吸入酸素濃度、経皮的動脈血酸素飽和度、気道内圧、一回換気量、眼球位置、眼瞼反射、顎緊張といった各種情報を用いることもできる。
【0131】
また、手術中の麻酔情報や生体情報の記録として麻酔記録のフォーマットが使用されるが手術中に記入するのは手間がかかる。また麻酔記録そのものがない施設もあるため、本システムでフォーマットを統一した上で、記録を行い、本システムを利用するすべての獣医師が他病院の麻酔記録及びその予後の記録を閲覧することで、同じような個体情報のペットの過去の事例で使用された麻酔薬の種類・麻酔薬の量・その予後を検索することが出来る。また、バイタルサインの日常値や属性値も麻酔記録に反映させる。
【0132】
麻酔中の記録情報は、例えば以下の投与情報が挙げられる。例えば酸素、空気、輸液療法 生理食塩液、リンゲル、膠質液、強心薬:ドブタミン、ドパミン、エフェドリン、鎮痛薬、その他アトロピンといった情報である。
【0133】
手術で使用する生体情報モニターに同じ個体情報のペットの脈拍数・呼吸数・体温などの属性値の範囲で上下限アラームを自動設定し、手術者にアラートする。また麻酔記録に以下の情報を自動反映させることで、獣医師と飼い主の手間の削減と正確な情報による麻酔前評価を行う
・ペットが手術前に自宅にいる時に自宅用のデバイスで収集したペットの生体情報(自宅待機中のバイタル情報・尿量や便量及びトイレの回数情報・飲料や食事量の情報・体重の情報)
・ペットが手術前・手術中に動物病院にいる時に病院用のデバイスで収集したペットの生体情報(入院中のバイタル情報・生体情報モニター・手術中の薬剤情報・出血量の情報等)
・動物病院の(電子)カルテの情報(過去の麻酔経験・既往歴・)
・飼い主が自宅用表示ソフトに登録した個体情報
【0134】
本システムは、術前検査の中でも特に麻酔前評価をアシストするシステムとして適用できる。
<麻酔前評価システム>
本発明の麻酔前評価システムの目的は、手術当日の麻酔の直前にバイタルサインデータを用いて動物の全身状態の把握や重症度を評価することで、手術中・手術後の合併症を予測し、周産期管理対策を立案することである。麻酔前評価では下記項目を参考に獣医師が評価を行う。
(1)術前検査の負担減少
問診は獣医師から飼い主に対して行われる。これらの情報は飼い主であっても、自分の体のことではなく、また動物は話すことが出来ないため、不正確な情報がある。また、過去の記録がないことから、飼い主の勘違い、うる覚え、忘れてしまっている場合もある。そこでデバイスを使用しデータを収集することで正確(客観的)な情報によって麻酔前評価が行う。
(2)麻酔記録の予記録、手術治療中の記録、データ蓄積
また、手術中の麻酔情報や生体情報の記録として添付ファイルのような麻酔記録のフォーマットが使用されるが手術中に記入するのは手間がかかる。また麻酔記録そのものがない施設もあるため、本システムでフォーマットを統一した上で、記録を行い、本システムを利用するすべての獣医師が他病院の麻酔記録及びその予後の記録を閲覧することで、同じような個体情報のペットの過去の事例で使用された麻酔薬の種類・麻酔薬の量・その予後を検索することが出来る。また、バイタルサインの日常値や属性値も麻酔記録に反映させる。
【0135】
具体的には、手術で使用する生体情報モニターに同じ個体情報のペットの脈拍数・呼吸数・体温などの属性値の範囲で上下限アラームを自動設定し、手術者にアラートする。麻酔記録として以下の各情報を自動反映させることで、獣医師と飼い主の手間の削減と正確な情報による麻酔前評価を行う。例えば、ペットが手術前に自宅にいる時に自宅用のデバイスで収集したペットの生体情報(自宅待機中のバイタル情報・尿量や便量及びトイレの回数情報・飲料や食事量の情報・体重の情報)、ペットが手術前・手術中に動物病院にいる時に病院用のデバイスで収集したペットの生体情報(入院中のバイタル情報・生体情報モニター・手術中の薬剤情報・出血量の情報等)、動物病院の(電子)カルテの情報(過去の麻酔経験「麻酔記録」・既往歴・)、飼い主が自宅用表示ソフトに登録した個体情報 などである。
【0136】
またシステムの表示項目として、問診による聴取情報を追加してもよい。例えば、既往歴、麻酔経験(生活情報)、何か薬を飲んでいるか、どのくらいの量を、どのくらいの期間飲んでいるか、下痢や嘔吐はしていないか、などである。
【0137】
上記のほか、尿量や便量の計測デバイス情報を用いてもよい。例えば、食欲や水を飲む量はどのくらいか、排尿や便の量や回数はどのくらいか、咳が出たり、心拍が周期的に乱れたりしていないか、などである。
【0138】
また上記のほか、個体情報として、飼い主の自宅用ソフトに登録するペットの個体情報を用いてもよい。例えば動物種、品種、性別、年齢、気質、麻酔歴、体重の情報である。これらは解剖学的あるいは薬理学的反応の特性が異なり、使用麻酔薬や麻酔法に影響することがある。これらの情報で属性値を分類(正常の範囲、)「調整属性値」分類の具体的方法、比較時における属性値と測定値との比較評価を行うことができる。例えば、この個体であれば正常の範囲に収まっているため、手術可能或いは麻酔耐性レベルがある、などの評価である。
【0139】
本システムは上記の他、検査機器としての直腸挿入型の反射型パルスオキシメーターを更に備えたものでもよい。このパルスオキシメーターは診察時に用いる。動物の検査は舌、唇、耳にて一時的に行う(体毛がない箇所、かつ色素沈着がない箇所、体動の少ない箇所)直腸温度、酸素飽和度、脈拍数、の3項目を直腸から同時に検査測定できる。
なお、従来は直腸体温計であって、酸素飽和度、脈拍数を同時に見るものではなかった。これに対して、モニタリング機器としてのウェアラブル送信機(麻酔中に舌で常時測定するもの)とは別装置として、パルスオキシメーターを備えたシステムとする。
【0140】
(ウエアラブルセンサ)
本システムは上記の他形態のウエアラブルセンサとして、表皮温度の時間あたり変化量(一次微分dt)又は時間当たり変化量の変位(2次微分dtdt)に基づく直腸温度の推定メーター付き胴衣/ハーネス(肩ベルト)を備えてもよい。この表皮温度検出センサとして、伸縮繊維を用いたセンシングを行ってもよい。例えば対象生物個体の大腿動脈(へモラール)付近の体表温を測定し、表皮温、外気温との差に基づいて推定直腸温を算出する。
【0141】
(動物のバイタルサイン管理システム)
本発明は、動物のバイタルサイン管理システムは、動物のバイタルサイン管理システムとして所定の場所にいる動物のバイタルサインを確認又は管理する動物のバイタルサインの確認システムとしても適用される(
図1~
図10)。例えば、獣医師がホストPC又は携帯端末等で動物病院内の動物のバイタルサインを長時間監視するシステム、或いは、携帯端末等で動物病院内の動物のバイタルサインを閲覧し確認できるシステムに関する。他に、例えば、飼い主が携帯端末等で自宅の動物のバイタルサインを閲覧し確認できるシステム、或いは、また他に、例えば、担当医が自宅または病室内にいるヒト、あるいは保管室又はケージ室内にいる動物のバイタルサインを確認できるシステムに関する。
【0142】
(実施例1)
実施例1は複数の動物(対象動物)のバイタルサインを統括管理するシステムである。実施例1は次のシステム構成を有する(
図1~
図4)。
システム全体を統括し対象動物毎の各バイタルサインを管理するホストPC1(病院、システム管理者等のデータ統括管理場所に設置された統括管理用PC)と、
そのデータをストレージするクラウド・サーバー2(図におけるデータサーバー)と、
対象動物のバイタルサインを取得する総合設置型センサ3(
図1、
図3における天井付きの人感センサ21)と、
対象動物のバイタルサインを取得する個別設置型センサ4(
図1、
図3における床置きの赤外線カメラ23)と、
対象動物に装着させる複数のウエアラブルセンサ22(
図1~
図5のハーネス又は首輪221に取り付けたもの,
図12の胴衣221に取り付けたもの)と、からなる。
【0143】
(実施例2)
実施例2はホストPCの管理システムである。実施例2は以下のシステムで構成される(
図2)
システム全体を統括し、対象動物の各バイタルサインを対象動物毎に管理するホストPCと、
そのデータをストレージするクラウド・サーバー2と、
対象動物のバイタルサインを取得する総合設置型センサ(室内全体用)と、
対象動物のバイタルサインを取得する個別設置型センサ(対象動物ゲージ用)と、
対象動物に装着してバイタルサインを取得するウエアラブルセンサ22(
図1~
図5のハーネス又は首輪221に取り付けたもの,
図12の胴衣221に取り付けたもの)、によって構成される。
【0144】
本システムを含む動物病院HS内の動物の管理システム、動物病院内の機器の貸出し管理ステム・予約管理システムとして、以下の形態例がある。
(1)獣医師のホストPC3で動物病院内の動物のバイタルサインを長時間監視できるシステムの形態例がある。
(2)獣医師の携帯端末5等で動物病院内の動物のバイタルサインを閲覧し確認できるシステムの形態例がある。或いは、飼い主が携帯端末等で自宅の動物のバイタルサインを閲覧し確認できるシステムの形態例がある。
(3)在宅動物に使用するバイタルサイン送信機・遠隔地用の動物のバイタルサイン確認ソフト・専用スマートフォンを動物病院の獣医師が飼い主に貸し出す時に使用し、貸出履歴等を確認できる貸出しシステム
(4)在宅動物に使用するバイタルサイン送信機・遠隔地用の動物のバイタルサイン確認ソフト・専用スマートフォンを動物病院の獣医師が弊社から借りる時に使用する予約システム。
(5)機器のメンテナンスや修理の履歴を動物病院の獣医師が確認できるシステム。つまり、獣医師が登録・編集した飼い主や動物の医療情報と、取得したデータを紐づけて、病状や病態の解析・統計・予測できるシステム
【0145】
動物病院内の動物の管理システムの使用手順の一例を以下に示す
(1)メニューボタンから「登録」を選択し飼い主や動物の情報を登録する。事前に設置型端末のセッティングとウエアラブルセンサの装着を完了しておく。
【0146】
本考案の装置例として
・総合設置型センサとしてのモニタリングカメラ21、ROIモニタリングカメラ23R
・マイクロウエーブドップラー変位測定器231 (個別設置型センサ23)又はウエアラブル型センサ22
・IRカメラ温度測定器232(23)
・レーザー距離計233(23)
を有する(
図3)。
【0147】
総合設置型センサとしてのモニタリングカメラ21は、部屋(病室)全体の配置の確認と状況のモニタを行う。モニタリングカメラ21がROI機能を備えたROIモニタリングカメラ23Rの場合は、ROI機能を用いてモニタ対象の位置を規定する(
図4)。この場合は、ROI以外の情報を排斥することを目的とする。
【0148】
ウエアラブル型センサ22は、マイクロウエーブドプラー変位測定器、温度測定センサ、加速度センサ、マイクのうち一つ以上を備えてなり、ハーネス型又は首輪型の取付け具221によって対象動物に着衣させて配置する。
【0149】
例えば、取付け具221を伸縮繊維の胴衣で構成し、胴衣の着衣時の腹部位置にウエアラブル型センサ22を固定させることができる。このように、ウエアラブル型センサ22を密着状態で対象生物個体(対象動物)着衣させた場合には、ウエアラブル型センサ22上の重複検知エラー(コンタミネーション)の発生は極めて少ない。
【0150】
一方、個別設置型センサ23は、マイクロウエーブドプラー変位測定器231、IRカメラ温度測定器232、レーザー距離計233のいずれか、又はこれらを組み合わせた複合機からなり、各機器を、測定する対象動物P1,P2,P3・・・の各近傍にそれぞれ個別設置するか、または対象動物のケージC内に取り付けて配置する。
【0151】
個別設置型センサ23のうち、マイクロウエーブドプラー変位測定器231は、対象動物全体から得られる拍動を検知するため、”最大強度のドップラー信号を選択する”ことにより、コンタミネーションの発生を排斥する。
【0152】
個別設置型センサ23のうち、マイクロウエーブドプラー変位測定器231、IRカメラ温度測定器232、を使用する場合は、これらに加えてレーザー距離計232を併用することが好ましい。距離方向のコンタミネーション、つまりモニタ対象の対象動物P1,P2,P3・・・と各センサの検出部の間に何らかの阻害物が混入した場合は、レーザー距離計による異常検出と同期解析することで、コンタミネーションの発生を排斥する。
【0153】
以下に、コンタミネーションの発生と情報排斥の動作詳細を記す。
(センサがコンタミネーションか動物の病態かを判断するための基準)
まず、センサがコンタミネーションか動物の病態かを判断するための基準について説明する。
【0154】
センサがコンタミネーションか動物の病態かを判断するための基準については、モニタリングカメラのROIで自動設定した位置情報(データエリアRA)と設置型センサ内の体温測定に使用するIRカメラユニット内のレーザー距離計による測定動物までの距離から判断する。
【0155】
設置型センサ使用時は、測定動物はゲージC内にいることを想定しており、動物が動く距離や範囲はゲージCの大きさの範囲に限定される。従って設置型センサ内のレーザー距離計の測定値は大きく変動することはない。
【0156】
(コンタミネーション発生の判断)
次に、コンタミネーション発生の判断について説明する。設置型センサから測定動物までの距離が短時間で大きく変動したり、測定動物までの距離が短くなったり、長くなったりという変化が生じた場合には、測定対象動物以外の動物や人間が測定されていると判断出来、コンタミネーションが発生したと判断される。
【0157】
また、上記に加え、
モニタリング画面、および獣医師等の閲覧端末4へのデータ転送画面に、データの信頼性レベルをAI判断により0~100%で表示し、獣医師へのアシストをすることを特徴とする。
【0158】
(主な特徴)
本システムは以下の特徴が挙げられる。
特徴その1:非接触型マイクロウェーブドプラ(MWD)を用いた、固定電源供給式の設置型センサと、電池式のウエアラブルセンサとの組合せ技術からなる、という特徴がある。
【0159】
設置型センサは、固定電源電圧の確保により、データ量、送信回数、複数匹検知に有利だが、設置条件が限られるため自宅や屋外で使用できず、また、検知範囲に制限があり体動測定に限界がある、という課題があった。一方で、ウエアラブルセンサは、装着近接検知により、特定対象のトレース記録、非常時検知に有利だが、非接触型MWDのため、激しい動きにより測定不可となってしまう欠点がある。
【0160】
これに対して、安価でデータ同期、同時測定が簡単にできる非接触型マイクロウェーブドプラ(MWD)を用いることで、設置固定型とウエアラブル型の両センサを組み合わることができる。つまり、固定電源供給式の設置型センサと、電池式のウエアラブルセンサとの各センサによる検知データを同期させて保管させることで、設置条件や検知範囲の限界、体動測定の限界をウェアら辺うるセンサでデータ補完することができる。またこれにより、多数匹の長時間一括測定、エラー発生率低下による非常時検知性向上が可能となる。
【0161】
特徴その2:下記課題を解決するセンサを用いたホストコンピュータ管理型のリモートデータ管理システム、という特徴がある。
【0162】
上記特徴は、ホストコンピュータ制御による複数のセンサ対象管理方法であって、各センサの独立動作ではなく、ホストコンピュータで各センサの動作を集中制御するものを提供することを可能とする。
【0163】
また上記特徴は、センサ対象誤認防止方法又は他の対象動物との取違え(人間との取違え)防止方法であって、ケージ空間の領域設定と個体データ推定により、センシング対象の誤認識を防ぐものを提供することを可能とする。
【0164】
上記特徴其の1又は2を備えたシステムは、クラウドサーバ上でのデータ保存とデータ管理により、飼い主、病院へのデータの自動送信を行う管理システムとして活用できる。
【0165】
(センサの種類)
上記管理システムにおけるセンサの種類として、実施例ではウエアラブルセンサを備えたものを開示する。ただし設置型センサのみでもよく、設置型センサとウエアラブル型センサの併用でもよい。併用の場合は前記(A)データ補完が補助ポイントとなる。なお、病院使用でも自宅使用でもよい。
【0166】
(他の形態例)上記のほか、以下の実施形態例が挙げられる。
第三実施形態C:動物病院内の機器の貸出し管理ステム・予約管理システム
(1)在宅動物に使用するバイタルサイン送信機・遠隔地用の動物のバイタルサイン確認ソフト・専用スマートフォンを動物病院の獣医師が飼い主に貸し出す時に使用し、貸出履歴等を確認できる貸出しシステム
(2)在宅動物に使用するバイタルサイン送信機・遠隔地用の動物のバイタルサイン確認ソフト・専用スマートフォンを動物病院の獣医師が弊社から借りる時に使用する予約システム。
(3)機器のメンテナンスや修理の履歴を動物病院の獣医師が確認できるシステム
【0167】
上記以外の第四の実施形態:獣医師が登録・編集した飼い主や動物の医療情報と、取得したデータを紐づけて、病状や病態の解析・統計・予測できるシステム。
【0168】
第五の実施形態:病院/自宅に設置した(装着させた)非接触型MWDセンサによる検知データを受信し表示する動物情報用アプリケーションソフトであって、以下の機能を備えるもの。
D1・携帯端末の使用者(医者、看護師、飼い主)に応じて表示内容を可変させる機能、
D2・MWDセンサを用いた通信遠隔診療と緊急措置の補助機能
D3・院内(集合宿泊エリア)での集団感染の検知機能、家庭用使用による見守りアラート機能、
D4・アラート時の通信アプリケーションソフトの連動立上げ、自動回線接続による通知機能
【0169】
第六の実施形態:地域の動物情報管理、動物保険の審査情報や予防注射管理に活用するセンサシステム。
【0170】
なお、装着検知の課題として、舌、穿刺または肉球検知は精度が高いものの、体毛による測定エラーがあるため常時測定できないという課題がある。これに対し,食塩水で体毛を濡らせば一時的に測定可能となることから、ウエアラブルセンサを備えたハーネスは、その一部に食塩水で体毛を濡らす食塩水噴霧機能を備えていてもよい。
【0171】
(本発明の装置例)
本発明の装置例として以下を備えたものが提示される。
・総合設置型センサとしてのモニタリングカメラ21、ROIモニタリングカメラ23R
・マイクロウエーブドプラー変位測定器231 (個別設置型センサ23)又はウエアラブル型センサ22
・IRカメラ温度測定器232(23)
・レーザー距離計233(23)
【0172】
上記総合設置型センサとしてのモニタリングカメラ21は、部屋(病室)全体の配置の確認と状況のモニタを行う。モニタリングカメラ21がROI機能を備えたROIモニタリングカメラ23Rの場合は、ROI機能を用いてモニタ対象の位置を規定する(
図4)。この場合は、ROI以外の情報を排斥することを目的とする。
【0173】
ウエアラブル型センサ22は、マイクロウエーブドプラー変位測定器、温度測定センサ、加速度センサ、マイクのうち一つ以上を備えてなり、ハーネス型又は首輪型の取付け具によって対象動物に着衣させて配置する。
【0174】
ウエアラブル型センサ22を着衣させた場合には、ウエアラブル型センサ22上の重複検知エラー(コンタミネーション)の発生は極めて少ない。
【0175】
一方、個別設置型センサ23は、マイクロウエーブドプラー変位測定器231、IRカメラ温度測定器232、レーザー距離計233のいずれか、又はこれらを組み合わせた複合機からなり、各機器を、測定する対象動物P1,P2,P3・・・の各近傍にそれぞれ個別設置するか、または対象動物のケージC内に取り付けて配置する。
個別設置型センサ23のうち、マイクロウエーブドプラー変位測定器231は、対象動物全体から得られる拍動を検知するため、”最大強度のドップラー信号を選択する”ことにより、コンタミネーションの発生を排斥する。
【0176】
個別設置型センサ23のうち、マイクロウエーブドプラー変位測定器231、IRカメラ温度測定器232、を使用する場合は、これらに加えてレーザー距離計232を併用することが好ましい。距離方向のコンタミネーション、つまりモニタ対象の対象動物P1,P2,P3・・・と各センサの検出部の間に何らかの阻害物が混入した場合は、レーザー距離計による異常検出と同期解析することで、コンタミネーションの発生を排斥する。
【0177】
本発明は発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。例えば一部構成の省略、抽出、部分構造の部品化、交換可能な構成の組合せ、公知構成への置換が可能である。
【符号の説明】
【0178】
1 総合設置型センサ
21 モニタリングカメラ
22 ウェアラブルセンサ
221 取付け具
23 個別設置型センサ
23R ROIモニタリングカメラ
2 クラウド・サーバ
3 管理用端末
3A データ管理ソフト
4 閲覧端末
4A データ確認ソフト
5 閲覧管理端末
5A データ管理ソフト
C ケージ
P1、P2,P3,・・・ 対象生物個体(対象動物)
RA,RA11,RA12・・・ データエリア