(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024095903
(43)【公開日】2024-07-11
(54)【発明の名称】吹雪発生システムおよび吹雪発生方法
(51)【国際特許分類】
G01M 9/04 20060101AFI20240704BHJP
G01M 17/007 20060101ALI20240704BHJP
【FI】
G01M9/04
G01M17/007 P
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022212879
(22)【出願日】2022-12-31
(71)【出願人】
【識別番号】391007242
【氏名又は名称】三菱重工冷熱株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100102738
【弁理士】
【氏名又は名称】岡 潔
(72)【発明者】
【氏名】阿部 仁志
(72)【発明者】
【氏名】遠藤 浩司
(72)【発明者】
【氏名】中島健太朗
【テーマコード(参考)】
2G023
【Fターム(参考)】
2G023AA02
2G023AB02
2G023AB13
2G023AC07
2G023AD03
(57)【要約】 (修正有)
【課題】静止車両を利用して、走行車両への降雪による着雪状況を模擬可能とする吹雪発生システムを提供する。
【解決手段】風洞16内で発生する気流を、縮流洞314から静止車両Vに向かって流す風洞設備と、縮流洞314と静止車両Vとの間に設けられる薄氷雪片製造装置と、を有し、薄氷雪片製造装置は、固定円筒の内周冷却面に向かって散水を噴霧する散水噴霧スプレーと、先端が内周冷却面と所定間隔を隔てたブレードと、散水噴霧スプレーおよびブレードを固定円筒と同心状に回転させる回転駆動手段と、を有し、散水噴霧スプレーおよびブレードは、互いに固定円筒の周方向に所定角度間隔を隔て、内周冷却面に形成される薄氷層をブレードにより剥離することにより生成した薄氷雪片を自然落下させる排出口が下端部に設けられ、排出口は、縮流胴314の上方に設けられ、自然落下する薄氷雪片が縮流胴314からの気流により静止車両Vに向かって飛雪される。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
風洞内で発生する気流を、縮流洞から静止車両に向かって流す風洞設備と、
縮流洞と静止車両との間に設けられる薄氷雪片製造装置と、を有し、
該薄氷雪片製造装置は、固定円筒の内周冷却面に向かって散水を噴霧する散水噴霧スプレーと、
先端が内周冷却面と所定間隔を隔てたブレードと、
該散水噴霧スプレーおよび該ブレードを前記固定円筒と同心状に回転させる回転駆動手段と、を有し、
該散水噴霧スプレーおよび該ブレードは、互いに前記固定円筒の周方向に所定角度間隔を隔て、
前記内周冷却面に形成される薄氷層を前記ブレードにより剥離することにより生成した薄氷雪片を自然落下させる排出口が下端部に設けられ、
前記排出口は、前記縮流胴の上方に設けられ、自然落下する薄氷雪片が前記縮流胴からの気流により静止車両に向かって飛雪されるように構成される、
ことを特徴とする吹雪発生システム。
【請求項2】
前記薄氷雪片製造装置が、走行速度を模擬する気流速度に応じて、前記縮流洞と静止車両との間で移動可能である、請求項1に記載の吹雪発生システム。
【請求項3】
前記薄氷雪片製造装置は、架台の天井部に設けられ、該架台の上部が天井に設けた風洞の延び方向に沿うレールに嵌合し、前記縮流洞と静止車両との間で移動可能である、請求項2に記載の吹雪発生システム。
【請求項4】
前記風洞は、回流式であり、前記縮流洞の吹き出し口と受入れ口とが対向配置され、該吹き出し口と該受入れ口との間に静止車両が配置される、請求項1に記載の吹雪発生システム。
【請求項5】
静止車両の高さに応じて、前記縮流洞の吹き出し口の大きさおよびレベルが選択される、請求項1に記載の吹雪発生システム。
【請求項6】
請求項1に記載の吹雪発生システムにおいて、静止車両により模擬する走行速度に応じて、前記風洞内で発生させる気流の気流速度を設定し、設定した気流速度および再現すべき実質的降雪強度に応じて、前記薄氷雪片製造装置による時間当たりの薄氷雪片の製造量を設定する、吹雪発生方法。
【請求項7】
薄氷雪片の厚みは、風に乗って飛雪可能なように、0.1ミリないし0.2ミリである、請求項1ないし請求項6のいずれか1項に記載の吹雪発生システム。
【請求項8】
さらに、風洞の吹き出し口を囲むように架台が構成され、前記薄氷式雪片装置は架台に設置され、該架台は、下部にキャスターを設けた移動式架台として構成される、
請求項2に記載の吹雪発生システム。
【請求項9】
静止車両の着雪させたいエリアに応じて、前記縮流洞の吹き出し口の大きさおよびレベルが選択される、請求項1に記載の吹雪発生システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、吹雪発生システムおよび吹雪発生方法に関し、より詳細には、静止車両に基づき、薄氷雪片を利用することにより、車両が降雪中を走行する場合の吹雪による着雪状況を精確に模擬可能とする吹雪発生システムおよび吹雪発生方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、風洞内で発生するジェット気流を供試体に向かって吹き付けることにより、走行状態を模擬する態様の環境試験が種々の目的で行われている。
その1つとして、人工雪をジェット気流に乗せて、供試体、たとえば、静止車両に向かって、飛雪したり、降雪したりすることにより、供試体に対する雪の影響を評価する環境試験がある。
利用する人工雪に応じて、タイプが分かれる。
【0003】
たとえば、特許文献1は、フレーク状氷を砕氷して得られる氷粒の人工雪を利用する吹雪発生システムを開示する。
この吹雪発生システムにおいて、製氷機によって製氷された氷片が砕氷機によって砕氷され、所定粒径の氷粒となり、雪供給管により気流により圧送され、分配装置により、複数の分岐管に分岐され、各分岐管において、湿雪装置によって所定の水分含有率を有する湿雪とされ、吹き出しノズルまで達する。吹き出しノズルの吹き出し口から吹き出された雪は気流に乗って、気流の進行方 向に沿って吹雪として流れ、吹雪は、吹き出し口の外であって、気流の進行方向前方の所定位置に吹き出し口に対向するように配置された拡散面に当るところ 、拡散面は、雪に対して難付着性を有するように、難付着性の材質および頂部が吹き出し口に近づく向きに形成された円錐形状であることから、吹雪は、拡散面に付着することなく、拡散面に沿って案内され、四方外方に向かって拡散するとともに、拡散面への付着に伴う経時的な拡散特性の変動を抑制可能である。
このような吹雪発生システムによれば、所望の拡散領域に吹雪を拡散することはある程度可能である。
【0004】
一方、特許文献2は、結晶雪を利用する降雪システムを開示する。
この結晶雪の降雪システムは、 水平方向に延びる仕切りにより上下に仕切られたスペース内において、上部には結晶雪 製造部が、下部には結晶雪降雪部が設けられ、結晶雪製造部は、少なくとも一方が回転駆動可能な上ローラーと下ローラーとの間 で、無端状に掛け渡されたメッシュ状膜体を備えた回転通気膜装置と、下ローラーの近傍で、先端縁がメッシュ状膜体の外表面に対して離間する結晶雪脱落体とを有し、氷点下で、氷飽和以上の水蒸気を含む湿り空気により、メッシュ状膜体の外表面に結晶雪を生成し、結晶雪降雪部は、結晶雪製造部により製造された結晶雪の降雪中に、結晶雪を湿雪化する湿雪化装置と、結晶雪降雪部のスペース内の温湿度を調整する温湿度調整装置とを有し、仕切りは、互いに平行に外周面を対向させて所定間隔を隔てて配置され、上方から隣接するローラーの間の最狭部に向かう向きに回転可能である複数のローラーであって、最狭部より上のスペースに、脱落する結晶雪を受けることが可能なように配置された複数のローラーであり、それぞれのローラーは、外周面に植毛された回転ブラシを構成し、隣接するローラーの間の最狭部において、互いのブラシが重なり合うことにより、仕切りが形成される、構成としている。
【0005】
このような結晶雪の降雪システムによれば、水平方向に延びる仕切りにより上下に仕切られたスペースの上部において、氷点下で、氷飽和以上の水蒸気を含む湿り空気により、回転通気膜装置の回転中に、メッシュ状膜体の外表面に霜状の結晶雪を生成し、下ローラーの近傍において、メッシュ状膜体の外表面に生成された結晶雪を結晶雪脱落体 により脱落させることが可能である。この場合、回転通気膜装置の回転速度およびメッシュ状膜体の外表面と結晶雪脱落体の先端縁との間隔によっては、生成した結晶雪を結晶雪脱落体により脱落する際、結晶雪が大雪片化した状態で脱落することがある。大雪片化した結晶雪は、隣接するローラーの間の最狭部より上のスペースで受けられ、 隣接するローラーが隣接するローラーの間の最狭部に向かう向きに回転することにより、大雪片化した結晶雪は最狭部を通過して下方に案内されるが、その際、大雪片化した結晶雪は、回転ブラシの先端で弾かれ、結晶自体がこわれることなく大雪片化した結晶雪が小雪片化される。それとともに、隣接するローラーの間の最狭部において、互いのブラシが 重なり合うことにより、仕切りが形成されることにより、スペースの下部において、降雪 中の結晶雪を湿雪化するのに下部スペースを温度上昇することにより、上昇気流がスペースの上部に及ぶことを防止可能であり、上昇気流により降雪が妨害されることなしに、造雪部において結晶の成長を阻害することがないようにすることが可能であり、以って、大雪片化を防止しつつ、結晶雪を降雪中に湿雪化することが可能である。
【0006】
しかしながら、上記の吹雪発生システム、降雪システムには、利用する人工雪が原因で、以下のような技術的問題点が存する。
まず、上記吹雪発生システムにおいては、利用する人工雪が自然界で降雪する樹枝状結晶雪や樹枝状結晶雪が絡み合ってできる雪片の雪質とは、相当異なり、自然雪を模擬する試験を行うことが困難である。
より詳細には、砕氷した氷粒は、自然雪に比べて、硬度が高いとともに、付着性が異なり、供試体に対する雪の付着性を評価する場合には、精確な評価を行うのが困難である。
特に吹雪の走行車両への付着性評価には、地面への積雪を走行車両が舞い上がらせる場合、降雪が走行車両へ直接吹き付けられる場合、および地面への積雪を走行車両が舞い上がらせつつ、降雪が走行車両へ直接吹き付けられる場合があるところ、降雪が走行車両へ直接吹き付けられる場合は、車両の走行速度により吹雪の吹き付け速度が変わり、それにより付着性も変動することから、自然雪の付着性に近い状態を模擬する重要性が高い。
次に、上記降雪システムにおいては、結晶雪を利用することから、上記の吹雪発生システムの薄氷雪片とは異なり、雪質、特に付着性が自然雪と程遠いということはないが、結晶雪製造設備が大がかりとなり、環境試験、たとえば、静止車両に向かって風洞内で発生する気流に乗せて、吹雪を吹き付けるような試験に必要な量を、その時、その場で連続的に供給することが技術的に困難である。
【特許文献1】特開2015‑143583号
【特許文献2】特開2018‑115794号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
以上の技術的問題点に鑑み、本発明の課題は、静止車両を利用して走行車両を模擬する際、自然雪に近い着雪性を有する薄氷雪片を用いて、車両が降雪中を走行する場合の吹雪による着雪状況を精確に模擬可能とする吹雪発生システムおよび吹雪発生方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を達成するために、本発明の吹雪発生システムは、
風洞内で発生する気流を、縮流洞から静止車両に向かって流す風洞設備と、
縮流洞と静止車両との間に設けられる薄氷雪片製造装置と、を有し、
該薄氷雪片製造装置は、固定円筒の内周冷却面に向かって散水を噴霧する散水噴霧スプレーと、
先端が内周冷却面と所定間隔を隔てたブレードと、
該散水噴霧スプレーおよび該ブレードを前記固定円筒と同心状に回転させる回転駆動手段と、を有し、
該散水噴霧スプレーおよび該ブレードは、互いに前記固定円筒の周方向に所定角度間隔を隔て、
前記内周冷却面に形成される薄氷層を前記ブレードにより剥離することにより生成した薄氷雪片を自然落下させる排出口が下端部に設けられ、
前記排出口は、前記縮流胴の上方に設けられ、自然落下する薄氷雪片が前記縮流胴からの気流により静止車両に向かって飛雪されるように構成される、構成としている。
【0009】
以上の構成を有する吹雪発生システムによれば、風洞設備により風洞内で発生する気流を縮流洞から静止車両に向かって流すことにより、走行模擬することが可能である。
その際、薄氷雪片製造装置を縮流洞と静止車両との間に設け、回転駆動手段により、散水噴霧スプレーおよびブレードを固定中空円筒と同心状に回転させることにより、散水噴霧スプレーにより固定中空円筒の内周冷却面に向かって散水を噴霧することにより、内周冷却面に薄氷層を形成しつつ、該散水噴霧スプレーと互いに固定中空円筒の周方向に所定角度間隔を隔てたブレードにより、薄氷層をブレードにより剥離することにより、薄氷雪片が生成され、生成した薄氷雪片を下端部の排出口から自然落下させることにより、薄氷雪片を風洞内で発生する気流に乗せて、静止車両に向かって飛雪させることが可能である。
ここで、従来の氷粒による人工雪による吹雪模擬では、走行模擬車両に対して自然界に近い吹雪による着雪状況を再現することが困難であるのに対して、従来の結晶雪による人工雪による吹雪模擬では、氷粒による人工雪に比べ、自然界に近い吹雪による着雪状況を再現することは可能であるが、人工雪製造には大がかりな設備が必要となり、雪環境試験に必要な人工雪をその時、その場でオンラインで供給するのは困難である一方、予め製造した結晶雪を貯雪しておくのは困難であるところ、本発明により、薄氷雪片の人工雪を利用して吹雪模擬することにより、雪環境試験に必要な人工雪をその時、その場でオンラインで供給しつつ、車両が降雪中を走行する場合の吹雪 による着雪状況を精確に模擬することが可能である。
なお、本明細書において、吹雪とは、風洞内で発生する気流に乗せて、静止車両に向かって飛雪することを意味し、この意味で、重力自然落下する降雪とは区別されるが、飛雪方向が水平方向であると限らない。
【0010】
また、前記薄氷雪片製造装置が、走行速度を模擬する気流速度に応じて、前記縮流洞と静止車両との間で移動可能であるのがよい。
また、前記薄氷雪片製造装置は、架台の天井部に設けられ、該架台の上部が天井に設けた風洞の延び方向に沿うレールに嵌合し、前記縮流洞と静止車両との間で移動可能であるのがよい。
【0011】
さらに、前記風洞は、回流式であり、前記縮流洞の吹き出し口と受入れ口とが対向配置され、該吹き出し口と該受入れ口との間に静止車両が配置されるのがよい。
さらにまた、静止車両の高さに応じて、前記縮流洞の吹き出し口の大きさおよびレベルが選択されるのがよい。
加えて、静止車両により模擬する走行速度に応じて、前記風洞内で発生させる気流の気流速度を設定し、設定した気流速度および再現すべき実質的降雪強度に応じて、前記薄氷雪片製造装置による時間当たりの薄氷雪片の製造量を設定するのがよい。
さらに、薄氷雪片の厚みは、風に乗って飛雪可能なように、0.1ミリないし0.2ミリであるのがよい。
さらに、風洞の吹き出し口を囲むように架台が構成され、前記薄氷式雪片装置は架台に設置され、該架台は、下部にキャスターを設けた移動式架台として構成されるのでもよい。
また、静止車両の着雪させたいエリアに応じて、前記縮流洞の吹き出し口の大きさおよびレベルが選択されるのでもよい。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下に本発明の吹雪発生システムの実施形態について、図面を参照しながら、以下に詳細に説明する。
図1に示すように、吹雪発生システム10は、薄氷雪片からなる人工雪を利用し、人工雪をその背後からの気流に乗せて飛雪を模擬して、試験供試体である車両Vに向かうように構成され、そのために、風洞設備と、薄氷雪片製造装置18とを有する。
特に、薄氷雪片のサイズおよび水分含有率が主な影響因子である所定の雪質を具備する飛雪を必要量用いて、車両Vに向かって連続的に供給する際、車両Vの高さ全体に拡散し、場合により車両Vの高さ方向に所望の飛雪濃度分布を実現できるようにするために、所定の温度および湿度管理のもとで、人工雪として利用する薄氷雪片群を試験中に製造しながら迅速に供給することが要求される。
【0013】
概略的には、吹雪発生システム10は、風洞16内において、車両Vに向けて気流MFを発生しつつ、薄氷雪片製造装置18により薄氷雪片状の人工雪を製造し、落下する薄氷雪片を車両Vに向けて飛雪し、走行状態での吹雪模擬するようにしている。
【0014】
風洞16は、開放タイプの回流型であり、測定対象である車両Vを設置する( 開放型)測定室300と、第1~第4の4つの屈曲胴302、304、306、308(屈曲部)とを備えて平面視略長方形に形成されている。
送風機25で発生した気流MFは、第2拡散胴310、第3屈曲胴306、第4屈曲胴308、整流胴312、縮流胴314を経て、測定室300に開口する吹出し口316から測定室300に流入し、測定室300を介して、吹出し口316と受入れ口317とが対向配置されており、受入れ口317、第1屈曲胴302、第2屈曲胴304の順に流れるようになっている。
送風機25によって送風された気流MFは、いったん気流全体としての風速( 動圧) を低下させて中間胴部における圧力( 静圧) を上昇させた後、縮流胴314を通過させることで、測定するのに必要十分な風量( 風速)の気流MFを吹出し口316から測定室300に吹き出すことができるようにしている。
【0015】
これにより、後に説明するように、薄氷雪片が、測定室300内において、その背後からの気流MFに乗って車両Vに向かって飛雪として供給され、送風機25により気流MFの風速を調整することにより、静止車両Vでありながら走行車両Vを模擬できるようにしている。
また、降雪試験用の回流型風洞16の場合、試験後の雪を分離回収するために、車両Vの下流に、別途雪補修装置38を設けているが、いずれにせよ、雪の重力落下あるいは慣性効果により雪を分離させるのに、車両Vの下流に、敢えて気流MFを整流させない領域を設けている。
【0016】
次に、
図2ないし
図4に示すように、薄氷雪片製造装置18は、固定中空円筒20の内周面56に向かって散水を噴霧する散水噴霧スプレー24と、先端26が内周面56と所定間隔を隔てたブレード28と、散水噴霧スプレー24およびブレード28を固定中空円筒20と同心状に回転させる回転駆動手段30と、を有し、散水噴霧スプレー24およびブレード28は、互いに固定中空円筒20の周方向に所定角度間隔θを隔て、内周面56に形成される薄氷層Lをブレード28により剥離することにより生成した薄氷雪片Sを自然落下させる排出口32が下端部に設けられる。
【0017】
薄氷雪片製造装置18は、架台(図示せず)の天井部に固定され、薄氷雪片製造装置18によって造られた薄氷雪片雪が架台の下面に設ける開口部を介して、測定室300内に落下するようにしている。
薄氷雪片製造装置18は、走行速度を模擬する気流速度に応じて、縮流洞314と静止車両Vとの間で移動可能である。
静止車両Vへの着雪高さを変えたい場合において、特に車両をダイナモローラー上部に乗せてタイヤを回転させながら試験する際には、車両位置が限定され、車両自体を前後させることにより着雪高さ位置の調整ができないことから、薄氷雪片製造装置18自体を移動可能すると有効である。
薄氷雪片製造装置18を縮流洞314と静止車両Vとの間で移動可能とするのに、薄氷雪片製造装置18を架台の天井部に吊り下げまたは搭載にて設けられ、架台ごと風洞16の延び方向に移動可能としたり、薄氷雪片製造装置18を試験室の天井に設けたレールに嵌合させて、移動可能としてもよい。薄氷雪片製造装置18が、風洞16の気流方向および気流方向に垂直な方向(上下左右含む)に移動可能なように、試験室の天井に設けたレールに設けることにより、着雪エリアが上下左右に可変となる。
変形例として、風洞16の吹き出し口316を囲むように架台が構成され、薄氷式雪片装置18が架台に設置され、架台は、下部にキャスターを設けた移動式架台として構成されるのでもよい。
【0018】
固定中空円筒20は、内表面に薄氷層Lが形成される内筒22と、内筒22を囲繞する外筒23とを有している。内筒22及び外筒23は鋼製とされ、内筒22と外筒23の間には中空部21が設けられている。中空部21には、配管76、78を介して冷凍機部分74から冷媒が供給され、内筒22の内周面56が、冷媒により所定温度まで冷却されるようにしている。なお、固定中空円筒20の外周面は円筒状の保護カバー(図示せず)で覆われている。
固定中空円筒20には、内周面56に形成される薄氷層Lをブレード28により剥離することにより生成した薄氷雪片Sを自然落下させる排出口32が下端部42に設けられる。
【0019】
連結ロッド40が、固定中空円筒20内スペースを固定中空円筒20の中心を通り横断するように水平に設けられ、各端部42には、連結ロッド回転機構44が設けられ、連結ロッド回転機構44の各端部42の固定中空円筒20の中心寄りには、支持アーム46を介して、一対のブレード28ー散水噴霧スプレー24が設けられ、連結ロッド回転機構44により、連結ロッド40が固定中空円筒20の中心まわりに回転し、以て、各対のブレード28ー散水噴霧スプレー24が、固定中空円筒20の周方向に移動可能に構成している。
連結ロッド40の固定中空円筒20に対するレベルは、適宜定めればよいが、後に説明するように、連結ロッド回転機構44の設置態様から、固定中空円筒20の上部が好ましい。
【0020】
各端部42に設ける連結ロッド回転機構44は、共通であるので、一方について説明する。
連結ロッド回転機構44は、連結ロッド40を境に両側に配置された一対のタイヤ48I、48Oと、一対のタイヤ48I,48Oそれぞれをタイヤ48の中心まわりに回転可能に支持する鉛直回転シャフト50と、鉛直回転シャフト50を支持する回転シャフト支持部52と、タイヤ48を回転駆動する回転駆動部54とを概略有する。
一対のタイヤ48I,48Oはそれぞれ、固定中空円筒20の内周面56側および外周面58側に設けられ、内周面56側に設けた円周溝60および外周面58側に設けた円周溝60に嵌るようにし、一対のタイヤ48I,48Oにより、固定中空円筒20を挟み込むように配置されている。一対のタイヤ48I,48O同士の間隔、すなわち、矩形部材(後に説明)の長さは、連結ロッド回転機構44により、連結ロッド40、かくして、2組のブレード28ー散水噴霧スプレー24が固定中空円筒20の周方向に円滑に回転可能な観点から定めればよい。タイヤ48は、衝撃吸収性、変形可能性を具備する弾力性を有する通常のゴム製がよい。
より詳細には、円周溝60の幅wは、タイヤ48の幅に応じて設定し、タイヤ48が中心まわりに回転フリーとなるようにタイヤ48の幅より若干広いのが好ましく、円周溝60の深さdは、計4つのタイヤ48により、連結ロッド40、および2組のブレード28ー散水噴霧スプレー24を支持可能な観点から決定するのがよい。
【0021】
回転シャフト支持部52は、たとえば、各タイヤ48の中心支持部を四隅それぞれに有する矩形部材であり、固定中空円筒20の上方から固定中空円筒20の上周面を内外に跨るように配置され、内周面56側において、連結ロッド40の対応する端部42に連結されている。これにより、連結ロッド40と回転シャフト支持部52、かくして、回転シャフト支持部52により支持される各タイヤ48は、一体的に可動である。
回転駆動部54は、たとえば、駆動モーターでよく、4つのタイヤ48のいずれか1つの鉛直回転シャフト50に直結され、回転駆動タイヤ48とし、他のタイヤ48は、被駆動タイヤ48として、構成している。なお、一対の連結ロッド回転機構44のいずれか1つの側のいずれか1つのタイヤ48に回転駆動部54を設け、残りの計7つのタイヤ48を被駆動タイヤ48とすればよい。この場合、被駆動タイヤ48は、対応する鉛直回転シャフト50に対して回転フリー、駆動タイヤ48は、回転駆動部54により回転駆動される鉛直回転シャフト50に対して、たとえば、減速機構(図示せず)を介して、連結されるのがよい。
【0022】
以上の構成により、連結ロッド回転機構44により、連結ロッド40と回転シャフト支持部52、かくして、回転シャフト支持部52により支持されるタイヤ48が支持された状態で、回転駆動部54により、連結ロッド40、かくして、2組のブレード28ー散水噴霧スプレー24が、固定中空円筒20の周方向に回転するようにし、後に説明するように、散水噴霧スプレー24により固定中空円筒20の内周面56に散水しつつ、内周面56に形成される薄氷層Lをブレード28により、薄氷雪片として剥離するようにしている。
【0023】
各支持アーム46は、連結ロッド40と同様に、金属製が好ましく、連結ロッド40に対して直交して設けられ、両先端部がそれぞれ内周面56に向けて折れ曲がっている。支持アーム46の先端部の折れ曲がり角度αは110°程度とされている。支持アーム46の連結ロッド40に対する連結位置および折れ曲がり角度は、適宜に設定すればよい。
散水噴霧スプレー24およびブレード28は、互いに固定中空円筒20の周方向に所定角度間隔θを隔て、所定角度間隔θは、散水噴霧スプレー24により散水された水により冷却面に形成される薄氷層Lが一定厚みに達するまで、ブレード28により剥離されることがないので、適宜設定すればよい。
【0024】
各散水噴霧スプレー24は、最近接するブレード28の回転方向遅れ側に配置されている。散水噴霧スプレー24の設置高さは、噴霧範囲が固定中空円筒20の内周面56高さの全体をカバー可能なように、内周面56高さのほぼ中間位置とするのがよい。散水噴霧スプレー24から噴射する霧状の水の噴射圧は、0.05~0.2MPa程度が好ましい。
【0025】
散水噴霧スプレー24は、支持アーム46への取り付け方により、散水噴霧スプレー24から内筒22の内周面56までの距離、および散水噴霧スプレー24から噴射される水の噴射方向を調節可能としている。
【0026】
支持アーム46それぞれの各先端部に装着されているブレード28は、固定中空円筒20の内筒22の高さ方向長さと同等な長さを有する金属製矩形板からなり、前述のように、回転方向の接線方向に対して所定傾斜角度αをなすように設けられる。ブレード28の支持アーム46側端部には、ブレード28の先端部27と固定中空円筒20の内周面56との間隔を調整するための間隔調整ボルト29が取り付けられている。ブレード28の先端部と固定中空円筒20の内筒22の内周面56との間隔は、0.1~0.2mm程度が好ましい。中空円筒20の内筒22の内周面56の製作誤差から、内周面56とブレード28の先端部27との最小クリアランスは、0.1mm程度がほぼ限界である一方、内周面56に生成される薄氷層Lの厚みにも依存するが、0.2mmを超えると、水分含有率等所望雪質の薄氷雪片を得るのが困難となる。
間隔と剥離される薄氷雪片のサイズとの関係について、この範囲であれば、薄氷雪片のサイズ、特に厚みへの影響は小さく、薄氷雪片のサイズは、冷媒温度および/又は散水温度、流量、および連結ロッド40の回転数が重要なパラメータとなることを確認している。
【0027】
水温水量調整装置61が、散水ノズル24に供給される水の温度および流量を調整するために設けられ、水タンク62、水タンク62内の水を加熱する加熱ヒーター64、水タンク62と散水ノズル24とを連通接続する配管66、および配管66の途中に設けられた液送ポンプ68を有し、制御盤70が、加熱ヒーター64および液送ポンプ68を制御し、水温調整および水量調節を行うようにし、水温調整および水量調節された水が、配管66を介して散水ノズル24に供給されるようにしている。薄氷雪片製造装置18 に供給する水は水道水で良く、水温は5~25℃とする。
冷媒温度調整装置72が、中空円筒20内に供給される冷媒の温度を調整するために設けられ、凝縮器(図示せず)とインバータ制御される圧縮機(図示せず)とを含む通常の冷凍機部分74と、中空円筒20内に設けた蒸発器(図示せず)から蒸発圧力調整弁80を介して冷媒を冷凍機部分74に戻す戻し管76と、膨張弁82を介して冷媒を蒸発器に向けて供給する供給管78とを有し、制御盤70が、冷凍機部分74および蒸発圧力調整弁80を制御し、中空円筒20内に供給する冷媒温度および流量を制御し、温度および流量が調整された冷媒が中空円筒20内の蒸発器に供給され、冷却面22を所定温度に冷却し、加熱された冷媒が冷凍機部分74に戻るようにしている。
【0028】
制御盤70が、駆動モーター54を制御し、連結ロッド40の回転数を調整するようにしており、これにより、冷却面22に対して散水を供給する速度、および冷却面22上に形成された薄氷層Lを剥離する速度が調整されるようにしている。
以上の構成により、薄氷雪片の所望サイズおよび時間当たりの所望の雪の製造量または所望造雪量に応じて、水温水量調整装置61により水温および水量を調整しつつ、冷媒温度調整装置72により冷媒温度を調整する一方、駆動モーター54を制御することにより、薄氷層Lを剥離する速度を調整するようにしている。
【0029】
以上の上記構成を有する吹雪発生システム10について、その運転方法について説明する。なお、薄氷雪片製造装置18が設置される測定室300内 の温度は 5℃以下、好ましくは 3℃以下に保つのがよい。
【0030】
まず、雪環境試験の試験目的に応じて、薄氷雪片の所望サイズおよび時間当たりの所望製造量(降雪量)を設定するとともに、走行模擬する車両Vの走行速度に応じて、風洞16内の気流MFの気流速度を設定する。
車両Vの高さまたは車両Vの着雪させたいエリアに応じて、縮流洞314の吹き出し口316の大きさおよびレベルが選択されるのがよい。
次いで、設定した薄氷雪片の所望サイズおよび時間当たりの所望製造量(降雪量)に基づいて、制御盤70により、水温水量調整装置61、冷媒温度調整装置72および駆動モーター54を制御して、散水噴射ノズル24に供給する水の温度および流量、冷媒温度、連結ロッド40の回転速度を調整する。
より具体的には、冷凍機部分74を作動させることで配管76、78を介して固定中空円筒20に冷媒を供給して、固定中空円筒20の内周面の温度を ―10℃~―20℃にするとともに、薄氷雪片のサイズおよび製造量に応じて、散水噴霧スプレー24から噴射される水量、および連結ロッド40の回転速度を設定する。
【0031】
支持アーム46と共に反時計回りに回転する散水噴霧スプレー24から固定中空円筒20の内周面に向けて噴射された霧状の水は、固定中空円筒20の内周面に接触すると瞬時に凍結して 薄氷層Lとなる。固定中空円筒20の内周面に形成された薄氷層Lは、支持アーム46と共に反時計回り に回転するブレード28によって剥離されて薄氷雪片となる。剥離された無数の薄氷雪片は排出口32から測定室300内に落下する。
【0032】
以上の構成を有する吹雪発生システムによれば、風洞設備11により風洞16内で発生する気流MFを縮流洞314から静止車両Vに向かって流すことにより、走行模擬することが可能である。
その際、薄氷雪片製造装置18を縮流洞と静止車両Vとの間に設け、回転駆動手段30により、散水噴霧スプレー24およびブレード28を固定中空円筒と同心状に回転させることにより、散水噴霧スプレー24により固定中空円筒20の内周冷却面に向かって散水を噴霧することにより、内周冷却面に薄氷層Lを形成しつつ、散水噴霧スプレー24と互いに固定中空円筒20の周方向に所定角度間隔を隔てたブレード28により、薄氷層Lをブレード28により剥離することにより、薄氷雪片が生成され、生成した薄氷雪片を下端部の排出口32から自然落下させることにより、薄氷雪片を風洞16内で発生する気流MFに乗せて、静止車両Vに向かって飛雪させることが可能である。
ここで、従来の氷粒による人工雪による吹雪模擬では、走行模擬車両に対して自然界に近い吹雪による着雪状況を再現することが困難であるのに対して、従来の結晶雪による人工雪による吹雪模擬では、氷粒による人工雪に比べ、自然界に近い吹雪による着雪状況を再現することは可能であるが、人工雪製造には大がかりな設備が必要となり、雪環境試験に必要な人工雪をその時、その場でオンラインで供給するのは困難である一方、予め製造した結晶雪を貯雪しておくのは困難であるところ、本発明により、薄氷雪片Sの人工雪を利用して吹雪模擬することにより、雪環境試験に必要な人工雪をその時、その場でオンラインで供給しつつ、車両が降雪中を走行する場合の吹雪による着雪状況を精確に模擬することが可能である。
【0033】
特に、車両への実質的降雪強度を評価する試験の場合には、静止車両Vにより模擬する走行速度に応じて、風洞16内で発生させる気流MFの気流速度を設定し、設定した気流速度および再現すべき実質的降雪強度に応じて、薄氷雪片製造装置18による時間当たりの薄氷雪片の製造量を設定する。
ここに、降雪強度とは、地表面における単位面積に単位時間当たり積もった雪の重さに等しい水の深さ(mm/h)であり、実質的降雪強度とは、たとえば、電線に対して降雪が風に乗って吹き付けられる場合のように、地面に落下する場合の降雪強度に対して、風速が加味され、場合により、降雪強度に対して、数十倍以上となることがあり、実質的降雪強度を評価するために、降雪強度を模擬するのに、所望の雪の製造量または所望造雪量を設定する一方、風速を風洞16からの気流MFにより模擬する必要がある。
【0034】
以上、本発明の実施形態を詳細に説明したが、本発明の範囲から逸脱しない範囲内において、当業者であれば、種々の修正あるいは変更が可能である。
たとえば、本実施形態において、薄氷雪片製造装置を縮流洞と静止車両との間に設置するものとして説明したが、それに限定されることなく、
薄氷雪片製造装置により製造された無数の薄氷雪片が自然落下する際、風洞内に堆積せずに、風洞内で発生させる気流MFにより、確実に飛雪させることが可能である限り、縮流洞の上部に設置するのでもよい。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【
図1】本発明の実施形態に係る吹雪発生システムの全体構成図である。
【
図2】本発明の実施形態に係る吹雪発生システムの静止車両Vへの降雪状況を示す部分図である。
【
図3】本発明の実施形態に係る吹雪発生システムの薄氷雪片製造装置18を示す概略側面図である。
【
図4】本発明の実施形態に係る吹雪発生システムの薄氷雪片製造装置18を示す概略平面図である。
【符号の説明】
【0036】
S 薄氷雪片
MF 気流
J 気流
V 静止車両
θ 所定角度間隔
α ブレードの傾斜角度
w 円周溝60の幅
d 円周溝60の深さ
L 薄氷層
10 吹雪発生システム
11 風洞設備
16 風洞
18 薄氷雪片製造装置
20 固定中空円筒
21 中空部
24 散水噴霧スプレー
27 先端部
28 ブレード
30 回転駆動手段
32 排出口
40 連結ロッド
42 端部
44 連結ロッド回転機構
46 支持アーム
48 タイヤ
50 鉛直回転シャフト
52 回転シャフト支持部
54 回転駆動部
56 内周面
58 外周面
60 円周溝
61 水温水量調整装置
62 水タンク
64 加熱ヒーター
66 配管
68 液送ポンプ
70 制御盤
72 冷媒温度調整装置
74 冷凍機部分
76 戻し管
78 供給管
80 流量調整弁
300 測定室
302、304、306、308 屈曲胴
310 第2拡散胴
306 第3屈曲胴
308 第4屈曲胴
312 整流胴
314 縮流胴
316 吹出し口
317 受入れ口