IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 南亞塑膠工業股▲分▼有限公司の特許一覧

<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024095919
(43)【公開日】2024-07-11
(54)【発明の名称】剥離フィルム及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   C23C 28/00 20060101AFI20240704BHJP
【FI】
C23C28/00 A
【審査請求】有
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023032320
(22)【出願日】2023-03-02
(31)【優先権主張番号】111150989
(32)【優先日】2022-12-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】TW
(71)【出願人】
【識別番号】501296612
【氏名又は名称】南亞塑膠工業股▲分▼有限公司
【氏名又は名称原語表記】NAN YA PLASTICS CORPORATION
(74)【代理人】
【識別番号】100204490
【弁理士】
【氏名又は名称】三上 葉子
(72)【発明者】
【氏名】廖 ▲徳▼超
(72)【発明者】
【氏名】鄭 維昇
(72)【発明者】
【氏名】張 嘉珊
(72)【発明者】
【氏名】謝 育淇
【テーマコード(参考)】
4K044
【Fターム(参考)】
4K044AA06
4K044AA16
4K044AB02
4K044BA02
4K044BA06
4K044BA21
4K044BB03
4K044BB05
4K044BC05
4K044BC11
4K044CA13
4K044CA18
4K044CA53
(57)【要約】      (修正有)
【課題】好ましい剥離効果を有する剥離フィルム及びその製造方法を提供する。
【解決手段】剥離フィルムは、少なくとも1層の無機層及び少なくとも1層の有機層を備える。無機層の材料は、ニッケル、コバルト、タングステン、モリブデンまたはその合金を含む。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1層の無機層と、
少なくとも1層の有機層と、
を備え、
前記無機層の材料は、ニッケル、コバルト、タングステン、モリブデンまたはその合金を含む、剥離フィルム。
【請求項2】
前記有機層と前記無機層は交互に積層される、請求項1に記載の剥離フィルム。
【請求項3】
前記有機層の材料が、含窒素複素環式化合物またはその誘導体を含む、請求項1に記載の剥離フィルム。
【請求項4】
前記有機層の材料が、ベンゾトリアゾールまたはその誘導体を含む、請求項1に記載の剥離フィルム。
【請求項5】
前記無機層の厚さが、10ナノメートルから100ナノメートルである、請求項1に記載の剥離フィルム。
【請求項6】
厚さが、80ナノメートルから150ナノメートルである、請求項1に記載の剥離フィルム。
【請求項7】
室温における剥離力が、0グラム/センチメートルから20グラム/センチメートルであり、390℃の温度における剥離力が、0グラム/センチメートルから50グラム/センチメートルである、請求項1に記載の剥離フィルム。
【請求項8】
少なくとも1層の無機層を基材に形成し、
少なくとも1層の有機層を前記無機層に形成し、前記無機層と前記有機層を備える剥離フィルムを形成すること、
を含み、
前記無機層の材料は、ニッケル、コバルト、タングステン、モリブデンまたはその合金を含む、剥離フィルムの製造方法。
【請求項9】
前記無機層が、スパッタリング法または電気めっき法により形成される、請求項8に記載の剥離フィルムの製造方法。
【請求項10】
前記有機層が、含浸法により形成される、請求項8に記載の剥離フィルムの製造方法。
【請求項11】
前記有機層と前記無機層が交互に積層される、請求項8に記載の剥離フィルムの製造方法。
【請求項12】
前記有機層の材料が、含窒素複素環式化合物またはその誘導体を含む、請求項8に記載の剥離フィルムの製造方法。
【請求項13】
前記有機層の材料が、ベンゾトリアゾールまたはその誘導体を含む、請求項8に記載の剥離フィルムの製造方法。
【請求項14】
前記無機層の厚さが、10ナノメートルから100ナノメートルである、請求項8に記載の剥離フィルムの製造方法。
【請求項15】
前記剥離フィルムの厚さが、80ナノメートルから150ナノメートルである、請求項8に記載の剥離フィルムの製造方法。
【請求項16】
前記剥離フィルムの室温における剥離力が、0グラム/センチメートルから20グラム/センチメートルであり、390℃の温度における剥離力が、0グラム/センチメートルから50グラム/センチメートルである、請求項8に記載の剥離フィルムの製造方法。






















【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、剥離フィルムに関し、特に、剥離フィルム及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
第5世代移動通信技術(5th generation mobile networks、5Gという)の発展に伴い、それに対応できる電化製品の需要も高まっている。しかし、現在、前述の電子製品に使用されている基板用の極薄銅箔は、高温では容易に引き剥離することができず、電子製品の性能に影響を与えるという問題がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明は、好ましい剥離効果を有する剥離フィルム及びその製造方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明の一種剥離フィルムは、少なくとも1層の無機層及び少なくとも1層の有機層を備える。無機層の材料は、ニッケル、コバルト、タングステン、モリブデンまたはその合金を含む。
【0005】
本発明の一実施形態において、前記無機層と有機層は交互に積層される。
【0006】
本発明の一実施形態において、前記有機層の材料は、含窒素複素環式化合物またはその誘導体を含む。
【0007】
本発明の一実施形態において、前記有機層の材料は、ベンゾトリアゾール(1,2,3-benzotriazole,BTA)またはその誘導体を含む。
【0008】
本発明の一実施形態において、前記無機層の厚さは10ナノメートルから100ナノメートルである。
【0009】
本発明の一実施形態において、前記剥離フィルムの厚さは80ナノメートルから150ナノメートルである。
【0010】
本発明の一実施形態において、前記剥離フィルムの室温における剥離力は0グラム/センチメートル(g/cm)から20グラム/センチメートルであり、390℃の温度における剥離力は0グラム/センチメートルから50グラム/センチメートルである。
【0011】
本発明の剥離フィルムの製造方法は、少なくとも1層の無機層を基材に形成し、及び少なくとも1層の有機層を無機層に形成し、無機層と有機層を備えた剥離フィルムを形成することを含む。無機層の材料は、ニッケル、コバルト、タングステン、モリブデンまたはその合金を含む。
【0012】
本発明の一実施形態において、前記無機層は、スパッタリング法または電気めっき法により形成される。
【0013】
本発明の一実施形態において、前記有機層は、含浸法により形成される。
【発明の効果】
【0014】
以上により、本発明の剥離フィルム及びその製造方法により製造される剥離フィルムは、少なくとも1層の無機層及び少なくとも1層の有機層を備え、無機層の材料は、ニッケル、コバルト、タングステン、モリブデンまたはその合金を含む。これにより、剥離フィルムは好ましい剥離効果を有することができ、電気化学技術により、さらに剥離フィルムの無機層中の金属を回收することができる。
【0015】
本発明の前記特徴及び利点をより理解し易くするために、以下、実施形態を挙げて詳細に説明する。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の内容の実施形態を詳細に説明する。実施形態で提供される実施の詳細は、専ら例示説明を目的としており、本発明の内容が保護しようとする範囲を限定することを意図するものではない。凡そ当業者であれば、実際の実施態様の必要に応じて、これらの実施の詳細を修正または変更することができる。
【0017】
<剥離フィルム>
本発明は、少なくとも1層の無機層及び少なくとも1層の有機層を備える剥離フィルムを提供する。剥離フィルムは、少なくとも2層の無機層及び少なくとも2層の有機層を備えることが好ましい。無機層と有機層の積層方法は特に限定されず、必要に応じて好適な積層方法を選択することができる。本実施形態において、無機層と有機層の積層方法は、互いに交互に積層されることが好ましい。
【0018】
無機層の材料は、ニッケル、コバルト、タングステン、モリブデンまたはその合金を含む。例えば、無機層の材料は、ニッケルモリブデンタングステン合金(Ni/Mo/W)、ニッケルコバルトタングステン合金(Ni/Co/W)、ニッケルタングステンコバルトモリブデン合金(Ni/W/Co/Mo)またはその他の好適な合金を含んでもよく、ニッケルコバルトタングステン合金(Ni/Co/W)またはニッケルタングステンコバルトモリブデン合金(Ni/W/Co/Mo)が好ましい。ニッケルモリブデンタングステン合金(Ni/Mo/W)は、ニッケル 5重量%から75重量%、モリブデン 5重量%から35重量%、タングステン 5重量%から35重量%及び不可避不純物を含んでもよい。ニッケルコバルトタングステン合金(Ni/Co/W)は、ニッケル 5重量%から75重量%、5重量%から35重量%のコバルト、タングステン 5重量%から35重量%及び不可避不純物を含んでもよい。ニッケルタングステンコバルトモリブデン合金(Ni/W/Co/Mo)は、ニッケル 5重量%から75重量%、タングステン 5重量%から35重量%、5重量%から35重量%のコバルト、モリブデン 5重量%から35重量%及び不可避不純物を含んでもよい。無機層の材料が、タングステン、モリブデンまたはその組み合わせを含むことによって、剥離フィルムは室温及び高温下(例えば、約400℃)で、いずれも好ましい剥離効果を有する。無機層の材料が、ニッケル、コバルトまたはその組み合わせを含むことによって、無機層は好ましい均一性を有し、これにより、剥離フィルムは好ましい剥離効果を有する。剥離フィルムが少なくとも2層の無機層を備える場合、各無機層の材料は、同一であっても異なってもよい。例えば、剥離フィルムが2層の無機層を備える場合、先に形成される無機層(即ち、基材に直接形成される第1層の無機層)の材料は、ニッケルモリブデンタングステン合金(Ni/Mo/W)であってよく、後に形成される無機層の材料は、ニッケルコバルトタングステン合金(Ni/Co/W)であってよい。
【0019】
有機層の材料は特に限定されず、必要に応じて好適な材料を選択することができる。本実施形態において、有機層の材料は、含窒素複素環式化合物、その誘導体またはその他の好適な材料を含んでもよい。含窒素複素環式化合物は、ベンゾトリアゾール、その誘導体またはその他の好適な含窒素複素環式化合物を含んでもよい。例えば、含窒素複素環式化合物は、ベンゾトリアゾール、メチルベンゾトリアゾール(5-methyl-1H-benzotriazole,5M-BTA)、下記化学式1で表される化合物(CBT-1)、5-カルボキシベンゾトリアゾール(benzotriazole-5-carboxylic acid,CBT-5)、2-カルボキシベンゾトリアゾール(CBTA)、または、1-[(1’,2’-ジカルボニル)エチル]ベンゾトリアゾール(BT-M)を含んでも良く、ベンゾトリアゾールまたは2-カルボキシベンゾトリアゾールが好ましく、2-カルボキシベンゾトリアゾールがより好ましい。剥離フィルムが有機層を備えることによって、有機層と直接接触する無機層の均一性を改善することができる。例えば、剥離フィルムが2層の有機層を備える場合、先に形成される有機層(即ち、第1の無機層に形成される第1層の有機層)の材料は、ベンゾトリアゾールであってよく、後に形成される有機層の材料は、2-カルボキシベンゾトリアゾールであってよい。
【化1】
【0020】
無機層の厚さ及び有機層の厚さは特に限定されず、必要に応じて好適な厚さを選択することができる。本実施形態において、無機層の厚さは10ナノメートルから100ナノメートルであり、30ナノメートルから50ナノメートルが好ましい。無機層の厚さが前記範囲にある場合、剥離フィルムは好ましい剥離効果を有する。剥離フィルムの厚さは特に限定されず、必要に応じて好適な厚さを選択することができる。本実施形態において、剥離フィルムの厚さは80ナノメートルから150ナノメートルであり、90ナノメートルから130ナノメートルが好ましい。剥離フィルムの厚さが前記範囲にある場合、剥離フィルム好ましい剥離効果を有する。
【0021】
本実施形態において、剥離フィルムの室温における剥離力は0グラム/センチメートルから20グラム/センチメートルであり、7グラム/センチメートルから12グラム/センチメートルが好ましい。390℃の温度における剥離力は0グラム/センチメートルから50グラム/センチメートルであり、7グラム/センチメートルから12グラム/センチメートルが好ましい。
【0022】
<剥離フィルムの製造方法>
本発明は、少なくとも1層の無機層を基材に形成し、及び少なくとも1層の有機層を無機層に形成し、無機層と有機層を備えた剥離フィルムを形成することを含む、剥離フィルムの製造方法も提供する。これにより、前記好ましい剥離効果を有する剥離フィルムを形成することができ、かつ電気化学技術により、さらに剥離フィルムの無機層中の金属を回收することができる。
【0023】
無機層の形成方法は特に限定されず、必要に応じて好適な形成方法を選択することができる。本実施形態において、無機層は、スパッタリング法、電気めっき法またはその他の好適な方法で形成することができる。剥離フィルムが少なくとも2層の無機層を備える場合、各無機層の形成方法は、同一であっても異なってもよい。例えば、剥離フィルムが2層の無機層を備える場合、先に形成される無機層(即ち、基材に直接形成される第1層の無機層)は、スパッタリング法により形成することができ、後に形成される無機層は、電気めっき法により形成することができる。
【0024】
有機層の形成方法は特に限定されず、必要に応じて好適な形成方法を選択することができる。本実施形態において、有機層は、含浸法またはその他の好適な方法により形成できる。剥離フィルムが少なくとも2層の有機層を備える場合、各有機層の形成方法は、同一であっても異なってもよい。
【0025】
基材は特に限定されず、必要に応じて好適な基材を選択することができる。例えば、基材は、銅箔、アルミ箔、プラスチックフィルムまたはその他の好適な基材を含んでよい。基材の厚さは、18マイクロメートルから100マイクロメートルであってよく、18マイクロメートルから50マイクロメートルが好ましい。
【0026】
例えば、剥離フィルムの製造方法は、以下を含んでもよい。無機層の材料を、スパッタリング法により基材上にめっきし、第1の無機層を形成する。次いで、含浸法により有機層の材料を第1の無機層上にめっきし、第1の有機層を形成する。第1の有機層を形成することによって、第1の無機層の均一性を改善することができる。その後、さらに、電気めっき法により無機層の材料を第1の有機層上にめっきし、第2の無機層を形成することができる。次いで、含浸法により有機層の材料を第2の無機層上にめっきし、第2の有機層を形成する。
【0027】
以下、実施例を参照して本発明を詳細に記載する。以下に提供される実施例は本発明の説明に用いることを目的とし、かつ本発明の範囲は、添付の特許請求の範囲に記載の範囲及びその置換及び修正を含み、実施例の範囲に限定されない。
【0028】
剥離フィルムの実施例
以下、剥離フィルムの実施例1から実施例5及び比較例2から比較例4を説明する。
【0029】
実施例1
ニッケルタングステンコバルトモリブデン合金(Ni/W/Co/Mo)(ニッケル 5重量%から75重量%、タングステン 5重量%から35重量%、5重量%から35重量%のコバルト、モリブデン 5重量%から35重量%及び不可避不純物)100グラムを、スパッタリング法で銅箔(厚さ:18マイクロメートル)上にめっきし、第1の無機層を形成した。次いで、ベンゾトリアゾール 1グラムを水 1000ミリリットルに溶解して、有機物含有溶液を形成した。その後、有機物含有溶液を含浸法により第1の無機層に第1の有機層を形成した。これにより、実施例1の剥離フィルムを得た。
【0030】
実施例2
実施例2の剥離フィルムは、実施例1と同一の工程により製造され、その差異は、第1の有機層を形成する有機物含有溶液を、1グラムの2-カルボキシベンゾトリアゾールを1000ミリリットルの水に溶解して形成された有機物含有溶液に変更した点にある。これにより、実施例2の剥離フィルムを得た。
【0031】
実施例3
実施例3の剥離フィルムは、実施例1と同一の工程により製造され、その差異は、第1の有機層にさらに第2の無機層及び第2の有機層を形成する点にある。具体的には、ニッケルタングステンコバルトモリブデン合金(Ni/W/Co/Mo)(ニッケル 5重量%から75重量%、タングステン 5重量%から35重量%、5重量%から35重量%のコバルト、モリブデン 5重量%から35重量%及び不可避不純物) 100グラムを、電気めっき法により第1の有機層上にめっきし、第2の無機層を形成した。次いで、5グラムのベンゾトリアゾールを1000ミリリットルの水に溶解して、有機物含有溶液を形成した。その後、有機物含有溶液を含浸法により第2の無機層に第2の有機層を形成した。これにより、実施例3の剥離フィルムを得た。
【0032】
実施例4
実施例4の剥離フィルムは、実施例2と同一の工程により製造され、その差異は、第1の有機層にさらに第2の無機層及び第2の有機層を形成した点にある。具体的には、ニッケルタングステンコバルトモリブデン合金(Ni/W/Co/Mo)(ニッケル 5重量%から75重量%、タングステン 5重量%から35重量%、5重量%から35重量%のコバルト、モリブデン 5重量%から35重量%及び不可避不純物) 100グラムを、電気めっき法により第1の有機層上にめっきし、第2の無機層を形成した。次いで、5グラムの2-カルボキシベンゾトリアゾールを1000ミリリットルの水に溶解して、有機物含有溶液を形成した。その後、有機物含有溶液を含浸法により第2の無機層に第2の有機層を形成した。これにより、実施例4の剥離フィルムを得た。
【0033】
実施例5
100グラムのニッケルモリブデンタングステン合金(Ni/Mo/W)(ニッケル 5重量%から75重量%、モリブデン 5重量%から35重量%、タングステン 5重量%から35重量%及び不可避不純物)を、スパッタリング法で銅箔(厚さ:18マイクロメートル)上にめっきし、第1の無機層を形成した。次いで、5グラムのベンゾトリアゾールを1000ミリリットルの水に溶解して、有機物含有溶液を形成した。その後、有機物含有溶液を含浸法により第1の無機層に第1の有機層を形成した。次いで、100グラムのニッケルコバルトタングステン合金(Ni/Co/W)(ニッケル 5重量%から75重量%、5重量%から35重量%のコバルト、タングステン 5重量%から35重量%及び不可避不純物)を、電気めっき法により第1の有機層上にめっきし、第2の無機層を形成した。次いで、5グラムの2-カルボキシベンゾトリアゾールを1000ミリリットルの水に溶解して、有機物含有溶液を形成した。その後、有機物含有溶液を含浸法により第2の無機層に第2の有機層を形成した。これにより、実施例5の剥離フィルムを得た。
【0034】
比較例2
100グラムのニッケルタングステンコバルトモリブデン合金(Ni/W/Co/Mo)(ニッケル 5 重量%から75 重量%、タングステン 5重量%から35重量%、5重量%から35重量%のコバルト、モリブデン 5重量%から35重量%及び不可避不純物)を、スパッタリング法で銅箔(厚さ:18マイクロメートル)上にめっきし、第1の無機層を形成した。次いで、100グラムのニッケルタングステンコバルトモリブデン合金(Ni/W/Co/Mo)(ニッケル 5重量%から75重量%、タングステン 5重量%から35重量%、5重量%から35重量%のコバルト、モリブデン 5重量%から35重量%及び不可避不純物)を、電気めっき法により第1の無機層上にめっきし、第2の無機層を形成した。これにより、比較例2の剥離フィルムを得た。
【0035】
比較例3
1グラムのベンゾトリアゾールを1000ミリリットルの水に溶解して、有機物含有溶液を形成した。その後、有機物含有溶液を含浸法により銅箔(厚さ:18マイクロメートル)に第1の有機層を形成した。次いで、1グラムのベンゾトリアゾールを1000ミリリットルの水に溶解して、別の有機物含有溶液を形成した。その後、別の有機物含有溶液を含浸法により第1の有機層に第2の有機層を形成した。これにより、比較例3の剥離フィルムを得た。
【0036】
比較例4
5グラムの2-カルボキシベンゾトリアゾールを1000ミリリットルの水に溶解して、有機物含有溶液を形成した。その後、有機物含有溶液を含浸法により銅箔(厚さ:18マイクロメートル)に第1の有機層を形成した。次いで、5グラムの2-カルボキシベンゾトリアゾールを1000ミリリットルの水に溶解して、別の有機物含有溶液を形成した。その後、別の有機物含有溶液を含浸法により第1の有機層に第2の有機層を形成した。これにより、比較例4の剥離フィルムを得た。
【0037】
<評価方法>
実施例1から実施例5及び比較例2から比較例4
実施例1から実施例5及び比較例2から比較例4により製造される剥離フィルムの最上層(例えば、実施例1から実施例2の第1の有機層、実施例3から実施例5及び比較例3から比較例4の第2の有機層と比較例2の第2の無機層)に、厚さ約3マイクロメートルの極薄銅箔を形成した。次いで、2枚の鋼板を超薄銅箔が形成された剥離フィルムの最外面にそれぞれ設置した。その後、室温または390℃の温度において、高温炉(型番FB1300,サーモフィッシャーサイエンティフィック株式会社(Thermo Fisher Scientific Inc.)製)で5分間ベークした。次いで、熱プレスされた剥離フィルムをガラス基板上に載置し、極薄銅箔とガラス基板を貼り合わせた後、サイズが15センチメートル
1.27センチメートルの試料に切断した。その後、試料を万能引張機(型番QC-528M1F,コムテック株式会社(Cometech Testing Machines Co., Ltd.)製)で剥離力を測定し、その結果を表1に示す。剥離力が小ければ小さいほど、剥離フィルム好ましい剥離効果を有することを示す。
【0038】
比較例1
銅箔(厚さ:18マイクロメートル)の一面上に厚さが約3マイクロメートルの超薄銅箔を形成した。次いで、2枚の鋼板を超薄銅箔が形成された銅箔の最外面にそれぞれ設置した(即ち、1枚の鋼板は極薄銅箔が形成された銅箔の面の反対側の面に位置し、もう1枚の鋼板は超薄銅箔上に位置する)。その後、室温または390℃の温度において、高温炉(型番FB1300,サーモフィッシャーサイエンティフィック株式会社)で5分間ベークした。次いで、熱プレスされた超薄銅箔が形成された銅箔をガラス基板上に載置し、極薄銅箔とガラス基板を貼り合わせた後、サイズが15センチメートル
1.27センチメートルの試料に切断した。その後、試料を万能引張機(型番QC-528M1F,コムテック株式会社製)で剥離力を測定し、その結果を表1に示す。
【0039】
【表1】
【0040】
<評価結果>
表1より分かるように、剥離フィルムが、少なくとも1層の無機層及び少なくとも1層の有機層を備え、無機層の材料が、ニッケル、コバルト、タングステン、モリブデンまたはその合金を含む場合(実施例1~5)、剥離フィルムの室温における剥離力は2.5グラム/センチメートルから11グラム/センチメートルであり、390℃の温度における剥離力は2グラム/センチメートルから50グラム/センチメートルであり、即ち、好ましい剥離効果を有し、電子基板の製造に適用することができ、かつ電気化学技術により、さらに剥離フィルムの無機層中の金属を回收することができる。これに対して、剥離フィルムを備えない比較例1は390℃の温度において基材に極薄銅箔を形成できない。
【0041】
また、有機層の剥離層(比較例2)を備えない場合と比べて、有機層及び無機層を同時に備える剥離層(実施例1~5)は、室温下でより小さな剥離力を有し、即ち、剥離効果がより好ましい。
【0042】
また、無機層の剥離層(比較例3~4)を備えない場合と比べて、有機層及び無機層を同時に備える剥離層(実施例1~5)は、室温下でより小さな剥離力を有し、即ち、剥離効果がより好ましく、かつ390℃の温度において同時に好ましい剥離効果を有する。
【0043】
また、1層の無機層及び1層の有機層を備える剥離フィルム(実施例1~2)と比べて、少なくとも2層の無機層及び少なくとも2層の有機層を備える剥離フィルム(実施例3~5)は、室温下でより小さな剥離力を有し、即ち、剥離効果がより好ましく、かつ390℃の温度において同時に好ましい剥離効果を有する。
【0044】
また、有機層の材料が、2-カルボキシベンゾトリアゾール(CBTA)を含まない剥離フィルム(実施例1、3)と比べて、有機層の材料が、2-カルボキシベンゾトリアゾール(CBTA)を含む剥離フィルム(実施例2、4~5)は390℃の温度においてより小さな剥離力を有し、即ち、剥離効果がより好ましく、かつ室温において同時に好ましい剥離効果を有する。
【0045】
以上をまとめ、本発明の剥離フィルム及びその製造方法により製造される剥離フィルムが、少なくとも1層の無機層及び少なくとも1層の有機層を備え、無機層の材料は、ニッケル、コバルト、タングステン、モリブデンまたはその合金を含む場合、剥離フィルムは室温及び高温下で好ましい剥離効果を有し、電子基板の製造に適用することができ、かつ電気化学技術により、さらに剥離フィルムの無機層中の金属を回收することができる。特に、高温下で好ましい剥離効果を有するので、第5世代移動通信技術に使用される電子製品の基板製造に適用することができる。
【0046】
本発明を実施例で以上の通り開示したが、それは本発明を限定することを目的としたものではなく、凡そ当業者であれば、本発明の精神及び範囲から脱離しない範囲で、いくらかの変更及び修飾を行うことができるから、本発明の保護範囲は添付の特許請求の範囲を基準とするべきである。

【手続補正書】
【提出日】2024-06-06
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも層の無機層と、
少なくとも層の有機層と、
を備え、
前記無機層の材料は、ニッケル、コバルト、タングステン、モリブデンまたはその合金を含み、
前記有機層と前記無機層が交互に積層される、剥離フィルム。
【請求項2】
前記有機層の材料が、含窒素複素環式化合物またはその誘導体を含む、請求項1に記載の剥離フィルム。
【請求項3】
前記有機層の材料が、ベンゾトリアゾールまたはその誘導体を含む、請求項1に記載の剥離フィルム。
【請求項4】
前記無機層の厚さが、10ナノメートルから100ナノメートルである、請求項1に記載の剥離フィルム。
【請求項5】
厚さが、80ナノメートルから150ナノメートルである、請求項1に記載の剥離フィルム。
【請求項6】
室温における剥離力が、0グラム/センチメートルから20グラム/センチメートルであり、390℃の温度における剥離力が、0グラム/センチメートルから50グラム/センチメートルである、請求項1に記載の剥離フィルム。
【請求項7】
少なくとも層の無機層を基材に形成し、
少なくとも層の有機層を前記無機層に形成し、前記無機層と前記有機層を備える剥離フィルムを形成すること、
を含み、
前記無機層の材料は、ニッケル、コバルト、タングステン、モリブデンまたはその合金を含み、
前記有機層と前記無機層が交互に積層される、剥離フィルムの製造方法。
【請求項8】
前記無機層が、スパッタリング法または電気めっき法により形成される、請求項に記載の剥離フィルムの製造方法。
【請求項9】
前記有機層が、含浸法により形成される、請求項に記載の剥離フィルムの製造方法。
【請求項10】
前記有機層の材料が、含窒素複素環式化合物またはその誘導体を含む、請求項に記載の剥離フィルムの製造方法。
【請求項11】
前記有機層の材料が、ベンゾトリアゾールまたはその誘導体を含む、請求項に記載の剥離フィルムの製造方法。
【請求項12】
前記無機層の厚さが、10ナノメートルから100ナノメートルである、請求項に記載の剥離フィルムの製造方法。
【請求項13】
前記剥離フィルムの厚さが、80ナノメートルから150ナノメートルである、請求項に記載の剥離フィルムの製造方法。
【請求項14】
前記剥離フィルムの室温における剥離力が、0グラム/センチメートルから20グラム/センチメートルであり、390℃の温度における剥離力が、0グラム/センチメートルから50グラム/センチメートルである、請求項に記載の剥離フィルムの製造方法。