(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024095924
(43)【公開日】2024-07-11
(54)【発明の名称】積層型電子部品
(51)【国際特許分類】
H01G 4/30 20060101AFI20240704BHJP
【FI】
H01G4/30 201F
H01G4/30 513
【審査請求】未請求
【請求項の数】16
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023066027
(22)【出願日】2023-04-14
(31)【優先権主張番号】10-2022-0188990
(32)【優先日】2022-12-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(71)【出願人】
【識別番号】594023722
【氏名又は名称】サムソン エレクトロ-メカニックス カンパニーリミテッド.
(74)【代理人】
【識別番号】110000877
【氏名又は名称】弁理士法人RYUKA国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】キム、スン スー
(72)【発明者】
【氏名】ナ、ジェ ヨン
(72)【発明者】
【氏名】リム、ジン ヒュン
(72)【発明者】
【氏名】リー、ジュン ウォン
【テーマコード(参考)】
5E001
5E082
【Fターム(参考)】
5E001AB03
5E001AC09
5E001AE02
5E001AE03
5E001AF06
5E001AH03
5E082AA01
5E082AB03
5E082BC19
5E082EE04
5E082EE23
5E082EE35
5E082FF05
5E082FG04
5E082FG26
5E082FG46
5E082GG10
5E082GG11
5E082JJ03
5E082JJ12
5E082JJ23
(57)【要約】
【課題】信頼性に優れ、単位体積当たりの容量が向上した積層型電子部品を提供する。
【解決手段】本発明の一実施形態による積層型電子部品は、誘電体層及び内部電極を含む本体と、上記内部電極と連結される下地電極層、上記下地電極層上に配置される薄膜電極層、及び上記薄膜電極層上に配置されるめっき層を含む外部電極と、を含み、上記下地電極層の平均厚さは、1μm以上3μm以下であり、上記薄膜電極層の平均厚さは、300nm以上800nm以下であることができる。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
誘電体層及び前記誘電体層を挟んで第1方向に交互に配置される第1及び第2内部電極を含み、前記第1方向に対向する第1及び第2面、前記第1及び第2面と連結され、第2方向に対向する第3及び第4面、前記第1~第4面と連結され、第3方向に対向する第5及び第6面を含む本体と、
前記第3面上に配置され、前記第1内部電極と連結される第1下地電極層、前記第1下地電極層上に配置される第1薄膜電極層、及び前記第1薄膜電極層上に配置される第1めっき層を含む第1外部電極と、
前記第4面上に配置され、前記第2内部電極と連結される第2下地電極層、前記第2下地電極層上に配置される第2薄膜電極層、及び前記第2薄膜電極層上に配置される第2めっき層を含む第2外部電極と、を含み、
前記第1下地電極層の平均厚さ及び第2下地電極層の平均厚さは、1μm以上3μm以下であり、前記第1薄膜電極層の平均厚さ及び第2薄膜電極層の平均厚さは、300nm以上800nm以下である、積層型電子部品。
【請求項2】
前記第1下地電極層及び前記第2下地電極層は、導電性金属及びガラスを含む、請求項1に記載の積層型電子部品。
【請求項3】
前記本体の第1方向の中央で測定した第1下地電極層の第2方向の大きさをt1、第1方向の最外側に配置される第1内部電極で測定した第1下地電極層の第2方向の大きさをt1'とするとき、t1'/t1は、0.8以上1.0以下である、請求項1に記載の積層型電子部品。
【請求項4】
前記第1薄膜電極層及び前記第2薄膜電極層は、第1及び第2方向の断面において金属が占める面積割合が90%以上である、請求項1に記載の積層型電子部品。
【請求項5】
前記第1薄膜電極層及び前記第2薄膜電極層はスパッタリング層である、請求項1に記載の積層型電子部品。
【請求項6】
前記本体の第1方向の中央で測定した第1薄膜電極層の第2方向の大きさをt2、第1方向の最外側に配置される第1内部電極で測定した第1薄膜電極層の第2方向の大きさをt2'とするとき、t2'/t2は、0.9以上1.1以下である、請求項1に記載の積層型電子部品。
【請求項7】
前記第1下地電極層の第1及び第2方向の断面において、前記第1下地電極層は少なくとも1つの切れ領域を含み、
前記第1薄膜電極層は前記切れ領域をカバーする、請求項1に記載の積層型電子部品。
【請求項8】
前記第1下地電極層の第1及び第2方向の断面において、前記第1下地電極層は少なくとも1つの切れ領域を含み、
前記第1めっき層は、前記切れ領域において、前記第1薄膜電極層によって前記第1下地電極層と離隔して配置される、請求項1に記載の積層型電子部品。
【請求項9】
前記第1外部電極は、前記第1めっき層上に配置される第1追加めっき層を含み、前記第2外部電極は、前記第2めっき層上に配置される第2追加めっき層を含む、請求項1に記載の積層型電子部品。
【請求項10】
前記第1下地電極層の平均厚さと前記第1薄膜電極層の平均厚さとの和は、前記第1めっき層の平均厚さと前記第1追加めっき層の平均厚さとの和より小さい、請求項9に記載の積層型電子部品。
【請求項11】
前記第1下地電極層は、前記第2面の延長線の下部に配置され、前記第1面に延長して配置される第1バンド部を含み、
前記第2下地電極層は、前記第2面の延長線の下部に配置され、前記第1面に延長して配置される第2バンド部を含む、請求項1に記載の積層型電子部品。
【請求項12】
前記第1下地電極層の一端は、前記第2面と第3面を連結するコーナー上に配置され、他端は前記第1面上に配置され、前記第2下地電極層の一端は、前記第2面と第4面を連結するコーナー上に配置され、他端は前記第1面上に配置される、請求項11に記載の積層型電子部品。
【請求項13】
前記第1薄膜電極層は、第2面の延長線の下部に配置され、前記第1バンド部をカバーするように配置され、
前記第2薄膜電極層は、第2面の延長線の下部に配置され、前記第2バンド部をカバーするように配置される、請求項11に記載の積層型電子部品。
【請求項14】
前記第1薄膜電極層及び前記第2薄膜電極層は、第2面の延長線と第1面の延長線との間に配置される、請求項1に記載の積層型電子部品。
【請求項15】
前記第1下地電極層及び前記第2下地電極層は、第2面の延長線と第1面の延長線との間に配置される、請求項1に記載の積層型電子部品。
【請求項16】
前記第1下地電極層の一端は、前記第2面と第3面を連結するコーナー上に配置され、他端は、前記第1面と第3面を連結するコーナー上に配置され、前記第2下地電極層の一端は、前記第2面と第4面を連結するコーナー上に配置され、他端は、前記第1面と第4面を連結するコーナー上に配置される、請求項15に記載の積層型電子部品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、積層型電子部品に関するものである。
【背景技術】
【0002】
積層型電子部品の一つである積層セラミックキャパシタ(MLCC:Multi-Layered Ceramic Capacitor)は、液晶表示装置(LCD:Liquid Crystal Display)及びプラズマ表示装置パネル(PDP:Plasma Display Panel)などの映像機器、コンピュータ、スマートフォン及び携帯電話などの様々な電子製品のプリント回路基板に装着されて電気を充電又は放電させる役割を果たすチップ型のコンデンサである。
【0003】
積層セラミックキャパシタは、小型でありながら高容量が保障され、実装が容易であるという利点により、様々な電子装置の部品として使用することができ、コンピュータ、モバイル機器などの各種の電子機器が小型化、高出力化されるにつれて、積層セラミックキャパシタに対する小型化及び高容量化の要求が増大しつつある。また、自動車用電装部品などへの適用が増加するにつれて、様々な環境での高信頼性が求められている。
【0004】
積層セラミックキャパシタの小型化及び高容量化を達成するためには、外部電極の体積を最小化し、積層セラミックキャパシタの単位体積当たりの容量を向上させる必要がある。
【0005】
外部電極の体積を最小化するために外部電極を薄く形成する場合、微細な切れ領域(void)が存在する可能性があり、これを介して水分、めっき液などが本体の内部へ浸透して信頼性が低下するおそれがあった。
【0006】
従って、外部電極の体積を最小化しながらも信頼性を向上させることができる方案が必要である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の様々な目的の一つは、信頼性に優れた積層型電子部品を提供することである。
【0008】
本発明の様々な目的の一つは、単位体積当たりの容量が向上した積層型電子部品を提供することである。
【0009】
但し、本発明の目的は上述した内容に限定されず、本発明の具体的な実施形態を説明する過程でより容易に理解することができる。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の一実施形態による積層型電子部品は、誘電体層及び上記誘電体層を挟んで第1方向に交互に配置される第1及び第2内部電極を含み、上記第1方向に対向する第1及び第2面、上記第1及び第2面と連結され、第2方向に対向する第3及び第4面、上記第1~第4面と連結され、第3方向に対向する第5及び第6面を含む本体と、上記第3面上に配置され、上記第1内部電極と連結される第1下地電極層、上記第1下地電極層上に配置される第1薄膜電極層、及び上記第1薄膜電極層上に配置される第1めっき層を含む第1外部電極と、上記第4面上に配置され、上記第2内部電極と連結される第2下地電極層、上記第2下地電極層上に配置される第2薄膜電極層、及び上記第2薄膜電極層上に配置される第2めっき層を含む第2外部電極と、を含み、上記第1下地電極層の平均厚さ及び第2下地電極層の平均厚さは、1μm以上3μm以下であり、上記第1薄膜電極層の平均厚さ及び第2薄膜電極層の平均厚さは、300nm以上800nm以下であることができる。
【発明の効果】
【0011】
本発明の様々な効果の一つとして、下地電極層上に薄膜電極層を配置することにより、積層型電子部品の信頼性を向上させることができる。
【0012】
本発明の様々な効果の一つとして、積層型電子部品の単位体積当たりの容量を向上させることができる。
【0013】
但し、本発明の多様且つ有益な利点と効果は上述した内容に限定されず、本発明の具体的な実施形態を説明する過程でより容易に理解することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明の一実施形態による積層型電子部品を概略的に示した斜視図である。
【
図2】
図1のI-I'線に沿って概略的に示した断面図である。
【
図3】
図1のII-II'線に沿って概略的に示した断面図である。
【
図4】
図1の本体を分解して概略的に示した分解斜視図である。
【
図7】本発明の一変形例による積層型電子部品の第1及び第2方向の断面を概略的に示したものである。
【
図8】本発明の他の一変形例による積層型電子部品の第1及び第2方向の断面を概略的に示したものである。
【
図9】試験番号1の外部電極を走査電子顕微鏡(SEM)でスキャンしたイメージである。
【
図10】試験番号2の外部電極を走査電子顕微鏡(SEM)でスキャンしたイメージである。
【
図11】試験番号3の外部電極を走査電子顕微鏡(SEM)でスキャンしたイメージである。
【
図12】試験番号4の外部電極を走査電子顕微鏡(SEM)でスキャンしたイメージである。
【
図13】試験番号5の外部電極を走査電子顕微鏡(SEM)でスキャンしたイメージである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、具体的な実施形態及び添付の図面を参照して、本発明の実施形態を説明する。しかし、本発明の実施形態は、いくつかの他の形態に変形することができ、本発明の範囲が以下説明する実施形態に限定されるものではない。また、本発明の実施形態は、通常の技術者に本発明をより完全に説明するために提供されるものである。従って、図面における要素の形状及び大きさなどはより明確な説明のために拡大縮小表示(または強調表示や簡略化表示)がされることがあり、図面上の同一符号で示される要素は同一要素である。
【0016】
尚、図面において本発明を明確に説明するために説明と関係のない部分は省略し、図示した各構成の大きさ及び厚さは、説明の便宜のために任意で示したものであるため、本発明は必ずしも図示により限定されるものではない。また、同一の思想の範囲内の機能が同一である構成要素は、同一の参照符号を用いて説明することができる。さらに、明細書全体において、ある部分がある構成要素を「含む」というのは、特に反対される記載がない限り、他の構成要素を除外するのではなく、他の構成要素をさらに含むことができることを意味する。
【0017】
図面において、第1方向は積層方向又は厚さ(T)方向、第2方向は長さ(L)方向、第3方向は幅(W)方向と定義されることができる。
【0018】
積層型電子部品
図1は、本発明の一実施形態による積層型電子部品を概略的に示した斜視図であり、
図2は、
図1のI-I'線に沿って概略的に示した断面図であり、
図3は、
図1のII-II'線に沿って概略的に示した断面図であり、
図4は、
図1の本体を分解して概略的に示した分解斜視図であり、
図5は、
図2のK1領域の拡大図であり、
図6は、
図2のK2領域の拡大図である。
【0019】
以下、
図1~
図6を参照して、本発明の一実施形態による積層型電子部品100について詳細に説明する。また、積層型電子部品の一例として、積層セラミックキャパシタ(Multi-layered Ceramic Capacitor、以下「MLCC」という)について説明するが、本発明はこれに限定されるものではなく、様々な積層型電子部品、例えば、インダクター、圧電体素子、バリスター、又はサーミスターなどにも適用されることができる。
【0020】
本発明の一実施形態による積層型電子部品100は、誘電体層111及び上記誘電体層を挟んで第1方向に交互に配置される第1及び第2内部電極121、122を含み、上記第1方向に対向する第1及び第2面1、2、上記第1及び第2面と連結され、第2方向に対向する第3及び第4面3、4、上記第1~第4面と連結され、第3方向に対向する第5及び第6面5、6を含む本体110と、上記第3面上に配置され、上記第1内部電極121と連結される第1下地電極層131a、上記第1下地電極層上に配置される第1薄膜電極層131b、及び上記第1薄膜電極層上に配置される第1めっき層131cを含む第1外部電極131と、上記第4面上に配置され、上記第2内部電極122と連結される第2下地電極層132a、上記第2下地電極層上に配置される第2薄膜電極層132b、及び上記第2薄膜電極層上に配置される第2めっき層132cを含む第2外部電極132と、を含み、上記第1下地電極層の平均厚さ及び第2下地電極層の平均厚さは、1μm以上3μm以下であり、上記第1薄膜電極層の平均厚さ及び第2薄膜電極層の平均厚さは、300nm以上800nm以下であることができる。
【0021】
積層セラミックキャパシタの小型化及び高容量化を達成するには、外部電極の体積を最小化して積層セラミックキャパシタの単位体積当たりの容量を向上させなければならない。外部電極は、一般的に、下地電極層及び下地電極層上に配置されるめっき層から構成され、外部電極の体積を最小化するために下地電極層の厚さを3μm以下に薄く形成する場合、下地電極層の第1及び第2方向の断面において、下地電極層に微細な切れ領域(void)が存在する可能性がある。このような切れ領域を介して水分、めっき液などが本体の内部へ浸透して信頼性が低下するおそれがある。
【0022】
これに対し、本発明の一実施形態によると、下地電極層131a、132aの平均厚さが3μm以下である場合にも、下地電極層131a、132a上に300nm以上の薄膜電極層131b、132bを配置することで、水分、めっき液などが本体の内部へ浸透することを防止して積層型電子部品100の信頼性を向上させることができ、積層型電子部品100の単位体積当たりの容量を向上させることができる。
【0023】
以下、本発明の一実施形態による積層型電子部品100に含まれるそれぞれの構成について説明する。
【0024】
本体110は、誘電体層111及び内部電極121、122が交互に積層されている。
【0025】
本体110の具体的な形状に特に制限はないが、図示のように、本体110は六面体形状やこれと類似の形状からなることができる。焼成過程において本体110に含まれたセラミック粉末の収縮により、本体110は完全な直線を持つ六面体形状ではないものの、実質的に六面体形状を有することができる。
【0026】
本体110は、第1方向に互いに対向する第1及び第2面1、2、上記第1及び第2面1、2と連結され、第2方向に互いに対向する第3及び第4面3、4、第1及び第2面1、2と連結され、第3及び第4面3、4と連結され、第3方向に互いに対向する第5及び第6面5、6を有することができる。
【0027】
一実施形態において、本体110は、第1面と第3面を連結する第1-3コーナーc1-3、上記第1面と第4面を連結する第1-4コーナーc1-4、上記第2面と第3面を連結する第2-3コーナーc2-3、上記第2面と第4面を連結する第2-4コーナーc2-4を含み、上記第1-3コーナー及び第2-3コーナーは、上記第3面に近くなるほど上記本体の第1方向の中央に収縮した形態を有し、上記第1-4コーナー及び第2-4コーナーは、上記第4面に近くなるほど上記本体の第1方向の中央に収縮した形態を有することができる。
【0028】
誘電体層111上に内部電極121、122が配置されていないマージン領域が重なることで、内部電極121、122の厚さによる段差が発生し、第1面と第3~第5面を連結するコーナー及び/又は第2面と第3~第5面を連結するコーナーは、第1面又は第2面を基準として見たとき、本体110の第1方向の中央側に収縮した形態を有することができる。または、本体の焼結過程での収縮挙動により、第1面1と第3~第6面3、4、5、6を連結するコーナー及び/又は第2面2と第3~第6面3、4、5、6を連結するコーナーは、第1面又は第2面を基準として見たとき、本体110の第1方向の中央側に収縮した形態を有することができる。または、チッピング不良などを防止するために、本体110の各面を連結する角を別途の工程を行ってラウンド処理することにより、第1面と第3~第6面を連結するコーナー及び/又は第2面と第3~第6面を連結するコーナーはラウンド形態を有することができる。
【0029】
上記コーナーは、第1面と第3面を連結する第1-3コーナー、第1面と第4面を連結する第1-4コーナー、第2面と第3面を連結する第2-3コーナー、第2面と第4面を連結する第2-4コーナーを含むことができる。また、コーナーは、第1面と第5面を連結する第1-5コーナー、第1面と第6面を連結する第1-6コーナー、第2面と第5面を連結する第2-5コーナー、第2面と第6面を連結する第2-6コーナーを含むことができる。本体110の第1~第6面は略平坦な面であることができ、平坦でない領域をコーナーと見なすことができる。以下、各面の延長線とは、各面の平坦な部分を基準として延長した線を意味することができる。
【0030】
一方、内部電極121、122による段差を抑制するために、積層後、内部電極が本体の第5及び第6面5、6に露出されるように切断したのち、単一の誘電体層又は2つ以上の誘電体層を容量形成部Acの両側面に第3方向(幅方向)に積層してマージン部114、115を形成する場合には、第1面と第5及び第6面を連結する部分、並びに第2面と第5及び第6面を連結する部分が収縮した形態を有さなくてよい。
【0031】
本体110を形成する複数の誘電体層111は焼成された状態であって、隣接する誘電体層111間の境界は、走査電子顕微鏡(SEM:Scanning Electron Microscope)を用いずには確認することが困難である程度に一体化されることができる。
【0032】
本発明の一実施形態によると、上記誘電体層111を形成する原料は、十分な静電容量が得られる限り特に制限されない。例えば、チタン酸バリウム系材料、鉛複合ペロブスカイト系材料又はチタン酸ストロンチウム系材料などを使用することができる。上記チタン酸バリウム系材料はBaTiO3系セラミック粉末を含むことができ、上記セラミック粉末の例として、BaTiO3、BaTiO3にCa(カルシウム)、Zr(ジルコニウム)などが一部固溶した(Ba1-xCax)TiO3(0<x<1)、Ba(Ti1-yCay)O3(0<y<1)、(Ba1-xCax)(Ti1-yZry)O3(0<x<1、0<y<1)又はBa(Ti1-yZry)O3(0<y<1)などが挙げられる。
【0033】
また、上記誘電体層111を形成する原料は、チタン酸バリウム(BaTiO3)などのパウダーに、本発明の目的に応じて様々なセラミック添加剤、有機溶剤、結合剤、分散剤などが添加されてもよい。
【0034】
一方、誘電体層111の厚さは特に限定する必要はない。
【0035】
但し、一般的に誘電体層を0.6μm未満の厚さに薄く形成する場合、特に誘電体層の厚さが0.35μm以下である場合には、本体の内部へ浸透する水分、めっき液などによる信頼性低下の可能性がある。
【0036】
本発明の一実施形態によると、下地電極層131a、132aの平均厚さが3μm以下である場合にも、下地電極層131a、132a上に300nm以上の薄膜電極層131b、132bを配置することで、水分、めっき液などが本体の内部へ浸透することを防止することができるため、複数の誘電体層111の少なくとも1つの平均厚さtdが0.35μm以下である場合にも優れた信頼性を確保することができる。
【0037】
従って、複数の誘電体層111の少なくとも1つの平均厚さtdが0.35μm以下である場合に、本発明による信頼性向上の効果がより顕著になる。
【0038】
上記誘電体層111の平均厚さtdは、上記第1及び第2内部電極121、122の間に配置される誘電体層111の第1方向の平均大きさを意味することができる。
【0039】
誘電体層111の平均厚さは、本体110の長さ及び厚さ方向(L-T)の断面を1万倍率の走査電子顕微鏡(SEM、Scanning Electron Microscope)でイメージをスキャンして測定することができる。より具体的に、スキャンされたイメージにおいて、1つの誘電体層を長さ方向に等間隔の30箇所でその厚さを測定して平均値を測定することができる。上記等間隔の30箇所は容量形成部Acで指定されることができる。また、このような平均値の測定を10個の誘電体層に拡張して平均値を測定すると、誘電体層の平均厚さをさらに一般化することができる。
【0040】
本体110は、本体110の内部に配置され、誘電体層111を挟んで互いに対向するように配置される第1内部電極121及び第2内部電極122を含んで容量が形成される容量形成部Acと、上記容量形成部Acの第1方向の上部及び下部に形成されるカバー部112、113を含むことができる。
【0041】
また、上記容量形成部Acは、キャパシタの容量形成に寄与する部分であって、誘電体層111を挟んで複数の第1及び第2内部電極121、122を繰り返し積層して形成することができる。
【0042】
カバー部112、113は、上記容量形成部Acの第1方向の上部に配置される上部カバー部112及び上記容量形成部Acの第1方向の下部に配置される下部カバー部113を含むことができる。
【0043】
上記上部カバー部112及び下部カバー部113は、単一の誘電体層又は2つ以上の誘電体層を容量形成部Acの上下面にそれぞれ厚さ方向に積層して形成することができ、基本的に物理的又は化学的ストレスによる内部電極の損傷を防止する役割を果たすことができる。
【0044】
上記上部カバー部112及び下部カバー部113は内部電極を含まず、誘電体層111と同一の材料を含むことができる。
【0045】
すなわち、上記上部カバー部112及び下部カバー部113はセラミック材料を含むことができ、例えば、チタン酸バリウム(BaTiO3)系セラミック材料を含むことができる。
【0046】
一方、カバー部112、113の厚さは特に限定する必要はない。但し、積層型電子部品の小型化及び高容量化をより容易に達成するために、カバー部112、113の厚さtcは15μm以下であることができる。
【0047】
カバー部112、113の平均厚さtcは、第1方向の大きさを意味することができ、容量形成部Acの上部又は下部において、等間隔の5箇所で測定したカバー部112、113の第1方向の大きさを平均した値であることができる。
【0048】
また、上記容量形成部Acの側面にはマージン部114、115が配置されることができる。
【0049】
マージン部114、115は、本体110の第5面5に配置される第1マージン部114と、第6面6に配置される第2マージン部115を含むことができる。すなわち、マージン部114、115は、上記セラミック本体110の幅方向の両端面(end surfaces)に配置されることができる。
【0050】
マージン部114、115は、
図3に示されているように、上記本体110を幅-厚さ(W-T)方向に切断した断面(cross-section)において、第1及び第2内部電極121、122の両端と本体110の境界面の間の領域を意味することができる。
【0051】
マージン部114、115は、基本的に物理的又は化学的ストレスによる内部電極の損傷を防止する役割を果たすことができる。
【0052】
マージン部114、115は、セラミックグリーンシート上において、マージン部が形成される部分を除いて導電性ペーストを塗布し、内部電極を形成することで形成されたものであることができる。
【0053】
また、内部電極121、122による段差を抑制するために、積層後、内部電極が本体の第5及び第6面5、6に露出されるように切断したのち、単一の誘電体層又は2つ以上の誘電体層を容量形成部Acの両側面に第3方向(幅方向)に積層してマージン部114、115を形成することもできる。
【0054】
一方、マージン部114、115の幅は特に限定する必要はない。但し、積層型電子部品の小型化及び高容量化をより容易に達成するために、マージン部114、115の平均幅は15μm以下であることができる。
【0055】
マージン部114、115の平均幅は、内部電極が第5面と離隔した領域の第3方向の平均大きさ及び内部電極が第6面と離隔した領域の第3方向の平均大きさを意味することができ、容量形成部Acの側面において、等間隔の5箇所で測定したマージン部114、115の第3方向の大きさを平均した値であることができる。
【0056】
従って、一実施形態において、内部電極121、122が第5及び第6面と離隔した領域の第3方向の平均大きさは、それぞれ15μm以下であることができる。
【0057】
内部電極121、122は、第1及び第2内部電極121、122を含むことができる。第1及び第2内部電極121、122は、本体110を構成する誘電体層111を挟んで互いに対向するように交互に配置され、本体110の第3及び第4面3、4にそれぞれ露出されることができる。
【0058】
第1内部電極121は、第4面4と離隔して第3面3を介して露出され、第2内部電極122は、第3面3と離隔して第4面4を介して露出されることができる。本体の第3面3には、第1外部電極131が配置されて第1内部電極121と連結され、本体の第4面4には、第2外部電極132が配置されて第2内部電極122と連結されることができる。
【0059】
すなわち、第1内部電極121は、第2外部電極132とは連結されずに第1外部電極131と連結され、第2内部電極122は、第1外部電極131とは連結されずに第2外部電極132と連結される。従って、第1内部電極121は、第4面4から一定距離だけ離隔して形成され、第2内部電極122は、第3面3から一定距離だけ離隔して形成されることができる。また、第1及び第2内部電極121、122は、本体110の第5及び第6面と離隔して配置されることができる。
【0060】
このとき、第1及び第2内部電極121、122は、中間に配置される誘電体層111によって互いに電気的に分離されることができる。
【0061】
本体110は、第1内部電極121が印刷されたセラミックグリーンシートと、第2内部電極122が印刷されたセラミックグリーンシートを交互に積層した後、焼成して形成することができる。
【0062】
内部電極121、122を形成する材料は特に制限されず、電気伝導性に優れた材料を使用することができる。例えば、内部電極121、122は、ニッケル(Ni)、銅(Cu)、パラジウム(Pd)、銀(Ag)、金(Au)、白金(Pt)、スズ(Sn)、タングステン(W)、チタン(Ti)、インジウム(In)、アルミニウム(Al)及びこれらの合金の1つ以上を含むことができる。
【0063】
また、内部電極121、122は、ニッケル(Ni)、銅(Cu)、パラジウム(Pd)、銀(Ag)、金(Au)、白金(Pt)、スズ(Sn)、タングステン(W)、チタン(Ti)、インジウム(In)、アルミニウム(Al)及びこれらの合金の1つ以上を含む内部電極用の導電性ペーストをセラミックグリーンシートに印刷して形成することができる。上記内部電極用の導電性ペーストの印刷方法としては、スクリーン印刷法又はグラビア印刷法などを用いることができるが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0064】
一方、内部電極121、122の厚さは特に限定する必要はない。
【0065】
但し、一般的に内部電極を0.6μm未満の厚さに薄く形成する場合、特に内部電極の厚さが0.35μm以下である場合には、本体の内部へ浸透する水分、めっき液などによる信頼性低下に弱くなる可能性がある。
【0066】
本発明の一実施形態によると、下地電極層131a、132aの平均厚さが3μm以下である場合にも、下地電極層131a、132a上に300nm以上の薄膜電極層131b、132bを配置することで、水分、めっき液などが本体の内部へ浸透することを防止することができるため、複数の内部電極121、122の少なくとも1つの平均厚さteが0.35μm以下である場合にも、優れた信頼性を確保することができる。
【0067】
従って、複数の内部電極121、122の少なくとも一つの平均厚さteが0.35μm以下である場合に、本発明による効果がより顕著になり、積層型電子部品の小型化及び高容量化をより容易に達成することができる。
【0068】
上記内部電極121、122の平均厚さteは、内部電極121、122の第1方向の平均大きさを意味することができる。
【0069】
内部電極121、122の平均厚さは、本体110の長さ及び厚さ方向(L-T)の断面を1万倍率の走査電子顕微鏡(SEM、Scanning Electron Microscope)でイメージをスキャンして測定することができる。より具体的に、スキャンされたイメージにおいて、1つの内部電極を長さ方向に等間隔の30箇所でその厚さを測定して平均値を測定することができる。上記等間隔の30箇所は容量形成部Acで指定されることができる。また、このような平均値の測定を10個の内部電極に拡張して平均値を測定すると、内部電極の平均厚さをさらに一般化することができる。
【0070】
外部電極131、132は、本体110の第3面3及び第4面4に配置されることができる。
【0071】
外部電極131、132は、本体110の第3及び第4面3、4にそれぞれ配置され、第1及び第2内部電極121、122とそれぞれ連結された第1及び第2外部電極131、132を含むことができる。
【0072】
一方、本実施形態においては、積層型電子部品100が2つの外部電極131、132を有する構造を説明しているが、外部電極131、132の個数や形状などは、内部電極121、122の形態やその他の目的に応じて変更することができる。
【0073】
外部電極131、132は、内部電極121、122と連結される下地電極層131a、132a、下地電極層131a、132a上に配置される薄膜電極層131b、132b及び薄膜電極層131b、132b上に配置されるめっき層131c、132cを含むことができる。第1外部電極131は、第3面上に配置され、上記第1内部電極121と連結される第1下地電極層131a、上記第1下地電極層上に配置される第1薄膜電極層131b、及び上記第1薄膜電極層131b上に配置される第1めっき層131cを含むことができ、第2外部電極132は、第4面上に配置され、上記第2内部電極122と連結される第2下地電極層132a、上記第2下地電極層上に配置される第2薄膜電極層132b、及び上記第2薄膜電極層132b上に配置される第2めっき層132cを含むことができる。
【0074】
下地電極層131a、132aは、内部電極121、122と外部電極131、132を電気的に連結する役割を果たすことができる。また、薄膜電極層131b、132bは、水分、めっき液などが本体110の内部へ浸透することを防止する役割を果たすことができる。
【0075】
下地電極層131a、132aが厚く形成される場合、別途の薄膜電極層131b、132bを形成しなくても水分、めっき液などが本体の内部へ浸透することをある程度は防止することができるが、本発明のように下地電極層131a、132aを薄く形成する場合には、下地電極層131a、132aに微細な切れ領域(void)が形成され、水分、めっき液などが本体110の内部へ浸透する可能性がある。従って、本発明の一実施形態によると、下地電極層131a、132a上に薄膜電極層131b、132bを形成することで、水分、めっき液などが本体の内部へ浸透することを防止することができる。
【0076】
第1下地電極層131aの平均厚さ及び第2下地電極層132aの平均厚さは、1μm以上3μm以下であり、第1薄膜電極層131bの平均厚さ及び第2薄膜電極層132bの平均厚さは、300nm以上800nm以下であることができる。
【0077】
第1下地電極層131aの平均厚さ及び第2下地電極層132aの平均厚さが1μm未満である場合には、外部電極131、132と内部電極121、122との間の連結性が低下する可能性があり、3μmを超える場合には、単位体積当たりの容量向上の効果を極大化することが難しい可能性がある。
【0078】
第1薄膜電極層131bの平均厚さ及び第2薄膜電極層132bの平均厚さが300nm未満である場合には、下地電極層131a、132aの微細な切れ領域(void)をカバーすることができず、薄膜電極層131a、132aによる信頼性向上の効果が不十分であるおそれがあり、800nmを超える場合には、下地電極層131a、132aと薄膜電極層131a、132aとの間の結合力が弱くなり、下地電極層131a、132aと薄膜電極層131a、132aとの剥離現象が発生する可能性がある。下地電極層131a、132aと薄膜電極層131a、132aとの剥離現象が発生する場合、耐湿信頼性が低下する可能性がある。
【0079】
第1下地電極層131aの平均厚さ、第2下地電極層132aの平均厚さ、第1薄膜電極層131bの平均厚さ及び第2薄膜電極層132bの平均厚さは、積層型電子部品の第3方向の中央までポリッシングして第1及び第2方向の断面を露出させた後、走査電子顕微鏡(SEM)を用いてスキャンしたイメージにおいて測定することができる。
【0080】
具体的に、第1下地電極層131aの平均厚さは、上記露出された上記イメージにおいて、本体の第1方向の中央部で測定することができ、第1方向に等間隔を有する10箇所で測定した第1下地電極層131aの第2方向の大きさを平均した値であることができる。第2下地電極層132aの平均厚さ、第1薄膜電極層131bの平均厚さ及び第2薄膜電極層132bの平均厚さも、同一の方式で測定することができる。
【0081】
以下、第1外部電極131を基準として説明するが、第2外部電極132は第1外部電極131と第2方向に対称の関係にあるため、第2外部電極132にも同一に適用することができる。
【0082】
下地電極層131a、132aは、導電性金属を含むことができる。下地電極層131a、132aに含まれる導電性金属は、電気伝導性を有するものであれば如何なる物質を使用して形成してもよく、電気的特性、構造的安定性などを考慮して具体的な物質を決定することができる。例えば、下地電極層131a、132aに含まれる導電性金属は、ニッケル(Ni)、銅(Cu)、パラジウム(Pd)、銀(Ag)、金(Au)、白金(Pt)及びその合金の1つ以上であることができる。より好ましい一例として、下地電極層131a、132aに含まれる導電性金属はニッケル(Ni)であることができるが、これに制限されるものではない。
【0083】
一実施形態において、下地電極層131a、132aは、導電性金属及びガラスを含むことができる。下地電極層131a、132aに含まれる導電性金属は、電気的連結性を確保する役割を果たし、下地電極層131a、132aがガラスを含むことにより、本体110との結合力を向上させることができる。
【0084】
一方、下地電極層131b、132bを形成する方法は特に限定する必要はないが、従来の一般的な外部電極の形成方法であるディッピング(dipping)工法を用いる場合、下地電極層132aの厚さを薄く形成することは困難である。好ましい一例として、下地電極層131b、132bは、パッド印刷工法を用いて形成することができる。パッド印刷工法とは、支持台上に外部電極用のペーストでパッドを作製した後、上記パッドに本体を圧着して本体の一面に下地電極層を形成する工法を意味する。このとき、外部電極用のペーストで作製されたパッドは、導電性金属及びガラスを含むことができ、バインダー、有機溶媒などの成分を含むことができる。
【0085】
一実施形態において、本体110の第1方向の中央で測定した第1下地電極層131aの第2方向の大きさをt1、第1方向の最外側に配置される第1内部電極で測定した第1下地電極層131aの第2方向の大きさをt1'とするとき、t1'/t1は、0.8以上1.0以下であることができる。下地電極層131a、132aをパッド印刷工法により形成することで、下地電極層131a、132aが均一な厚さを有することができ、t1'/t1を0.8以上1.0以下に容易に制御することができる。
【0086】
一実施形態において、第1及び第2薄膜電極層131b、132bは、第1及び第2方向の断面において金属が占める面積割合が90%以上であることができる。これにより、薄膜電極層131b、132bの厚さを薄く形成することが容易であり、積層型電子部品100の耐湿信頼性を向上させながらも単位体積当たりの容量を向上させることができ、薄膜電極層131b、132bがより容易に下地電極層131a、132aの微細な切れ領域(void)をカバーすることができる。より好ましくは、第1及び第2薄膜電極層131b、132bは、第1及び第2方向の断面において金属が占める面積割合が95%以上であることができる。すなわち、第1及び第2薄膜電極層131b、132bは実質的に金属からなることができる。
【0087】
第1及び第2薄膜電極層131b、132bの形成方法は特に制限されないが、薄膜電極層131b、132bを薄くて緻密に形成するために、薄膜電極層131b、132bは、スパッタリング工法、原子層蒸着工法などにより形成することができる。
【0088】
一実施形態において、第1及び第2薄膜電極層131b、132bはスパッタリング層であることができる。第1及び第2薄膜電極層131b、132bがスパッタリング工法を用いて形成されたスパッタリング層であることにより、薄膜電極層131b、132bの厚さを薄く形成することが容易であり、積層型電子部品の耐湿信頼性を向上させながらも単位体積当たりの容量を向上させることができ、薄膜電極層がより容易に下地電極層131a、132aの微細な切れ領域(void)をカバーすることができる。具体的に、薄膜電極層131b、132bを構成する金属を原子又はイオン状態で放出し、本体110に蒸着させて薄膜電極層131b、132bを形成することができる。
【0089】
薄膜電極層131b、132bを形成する材料は、電気伝導性を有するものであれば如何なる物質を使用して形成してもよく、下地電極層131a、132aの材料、電気的特性などを考慮して具体的な物質を決定することができる。例えば、薄膜電極層131b、132bは、ニッケル(Ni)、銅(Cu)、クロム(Cr)、銀(Ag)、金(Au)、白金(Pt)、パラジウム(Pd)及びその合金の1つ以上であることができる。より好ましい一例として、薄膜電極層131b、132bは、銅(Cu)、クロム(Cr)、Ni-Crの一つであることができるが、これに制限されるものではない。
【0090】
一実施形態において、本体110の第1方向の中央で測定した第1薄膜電極層131bの第2方向の大きさをt2、第1方向の最外側に配置される第1内部電極で測定した第1薄膜電極層131bの第2方向の大きさをt2'とするとき、t2'/t2は、0.9以上1.1以下であることができる。薄膜電極層131b、132bをスパッタリング工法により形成することで、薄膜電極層131b、132bが均一な厚さを有することができ、t2'/t2を0.9以上1.1以下に容易に制御することができる。
【0091】
一実施形態において、第1下地電極層131aの第1及び第2方向の断面において、上記第1下地電極層131aは少なくとも1つの切れ領域を含み、上記第1薄膜電極層131bは上記切れ領域をカバーするように配置されることができる。これにより、第1下地電極層131aの切れ領域を介して水分、めっき液などが浸透することを防止することができる。第1薄膜電極層131bの平均厚さが薄すぎる場合、上記切れ領域をカバーすることができない可能性があり、第1薄膜電極層131bの一部が切れている形態に配置される可能性がある。
【0092】
一方、第1めっき層131cは、上記切れ領域において、上記第1薄膜電極層131bによって第1下地電極層131aと離隔して配置されることができる。
【0093】
めっき層131c、132cは、薄膜電極層131b、132b上に配置される。第1外部電極131は、第1薄膜電極層131b上に配置される第1めっき層131cを含むことができ、第2外部電極132は、第2薄膜電極層132b上に配置される第2めっき層132cを含むことができる。
【0094】
めっき層131c、132cは、実装特性を向上させる役割を果たす。めっき層131c、132cの種類は特に限定されず、Ni、Sn、Pd及びこれらの合金の1つ以上を含むめっき層であることができる。
【0095】
また、めっき層131c、132c上に追加めっき層131d、132dが配置されることができる。第1外部電極131は、第1めっき層131c上に配置される第1追加めっき層131dを含むことができ、第2外部電極132は、第2めっき層132c上に配置される第2追加めっき層132dを含むことができる。好ましい一例として、めっき層131c、132cはNiめっき層であり、追加めっき層131d、132dはSnめっき層又はPdめっき層であることができるが、これに制限されるものではない。
【0096】
一実施形態において、第1めっき層131cの平均厚さ及び第2めっき層132cの平均厚さは、2μm以上7μm以下であることができる。これにより、積層型電子部品の実装特性を容易に向上させることができる。より好ましくは、第1めっき層131cの平均厚さ及び第2めっき層132cの平均厚さは、3μm以上5μm以下であることができる。
【0097】
また、第1追加めっき層131dの平均厚さ及び第2追加めっき層132dの平均厚さは、2μm以上7μm以下であることができる。より好ましくは、第1追加めっき層131dの平均厚さ及び第2追加めっき層132dの平均厚さは、3μm以上5μm以下であることができる。
【0098】
一方、一般的に、外部電極の電極層がめっき層より厚い構造を有するが、本発明の一実施形態によると、下地電極層131a、132aの平均厚さと薄膜電極層131b、132bの平均厚さとの和は、めっき層131c、132cの平均厚さと追加めっき層131d、132dの平均厚さとの和より小さくてよい。これにより、積層型電子部品の単位体積当たりの容量をさらに向上させることができる。
【0099】
従って、第1下地電極層131aの平均厚さと第1薄膜電極層131bの平均厚さとの和は、第1めっき層131cの平均厚さと第1追加めっき層131d、132dの平均厚さとの和より小さくてよい。
【0100】
さらに、第1下地電極層131aの平均厚さと第1薄膜電極層131bの平均厚さとの和は、第1めっき層131cの平均厚さより小さくてよい。
図6を参照すると、本体の第1方向の中央部で測定した第1下地電極層の厚さt1が第1めっき層の厚さt3より小さく、第1追加めっき層の厚さt4より小さくてよい。
【0101】
一実施形態において、下地電極層131a、132aは、第2面の延長線E2の下部に配置され、第1面に延長して配置されるバンド部を含むことができる。第1下地電極層131aは、上記第2面の延長線E2の下部に配置され、上記第1面に延長して配置される第1バンド部を含むことができ、第2下地電極層132aは、上記第2面の延長線E2の下部に配置され、上記第1面に延在して配置される第2バンド部を含むことができる。
【0102】
このとき、第1下地電極層131aの一端は、第2面と第3面を連結する第2-3コーナーc2-3上に配置され、第1下地電極層131aの他端は、第1面上に配置されることができる。第2下地電極層132aの一端は、第2面と第4面を連結する第2-4コーナーc2-4上に配置され、第2下地電極層132aの他端は、第1面上に配置されることができる。
【0103】
下地電極層131a、132aが第2面の延長線E2の下部に配置されることにより、積層型電子部品100の単位体積当たりの容量を向上させることができ、下地電極層131a、132aが第1面に延長して配置されるバンド部を含むことにより、基板に容易に実装することができる。一方、下地電極層のバンド部は、本体の第1面上に別途に導電性ペーストを印刷して形成することができる。
【0104】
一実施形態において、薄膜電極層131b、132bは、第2面の延長線E2と第1面の延長線E1の間に配置されることができる。水分、めっき液などの浸透は、内部電極が露出される断面において容易に起こるため、薄膜電極層131b、132bを第2面の延長線E2と第1面の延長線E1の間に配置することにより、薄膜電極層131b、132bを最小限に配置しながらも積層型電子部品100の耐湿信頼性を向上させることができる。
【0105】
但し、これに制限されるものではなく、本発明の一変形例による積層型電子部品100'の第1及び第2方向の断面を概略的に示した
図7を参照すると、下地電極層131a'、132a'は、第2面の延長線E2の下部に配置され、第1面に延長して配置されるバンド部を含み、薄膜電極層131b'、132b'は、第2面の延長線E2の下部に配置され、上記バンド部をカバーするように配置されることができる。第1薄膜電極層131b'は、第2面の延長線E2の下部に配置され、第1下地電極層131a'の第1バンド部をカバーするように配置されることができ、第2薄膜電極層132b'は、第2面の延長線E2の下部に配置され、第2下地電極層132a'の第2バンド部をカバーするように配置されることができる。これにより、耐湿信頼性をより向上させることができる。また、めっき層131c'、132c'は、下地電極層131a'、132a'及び薄膜電極層131b'、132b'をカバーするように配置されることができ、外部電極131'、132'は、めっき層131c'、132c'上に配置される追加めっき層131d'、132d'を含むことができる。
【0106】
一方、本発明の他の一変形例による積層型電子部品100"の第1及び第2方向の断面を概略的に示した
図8を参照すると、下地電極層131a"、132a"は、第2面の延長線E2と第1面の延長線E1の間に配置されることにより、積層型電子部品100"の単位体積当たりの容量をさらに向上させることができる。従って、一実施形態において、第1及び第2下地電極層131a"、132a"は、第2面の延長線E2と第1面の延長線E1の間に配置されることができる。
【0107】
このとき、第1及び第2薄膜電極層131b"、132b"も、第2面の延長線E2と第1面の延長線E1の間に配置されることができる。但し、めっき層131c"、132c"と追加めっき層131d"、132d"の場合、第2面の延長線E2及び第1面の延長線E1を超えて形成されることにより、外部電極131"、132"が第2面の延長線E2及び第1面の延長線E1を超えて形成されることができる。
【0108】
このとき、第1下地電極層131a"の一端は、第2面と第3面を連結する第2-3コーナーc2-3上に配置され、第1下地電極層131a"の他端は、第1面と第3面を連結する第1-3コーナーc1-3上に配置されることができる。第2下地電極層132a"の一端は、第2面と第4面を連結する第2-4コーナーc2-4上に配置され、第2下地電極層132a"の他端は、第1面と第4面を連結する第1-4コーナーc1-4上に配置されることができる。
【0109】
積層型電子部品100のサイズは特に限定する必要はない。
【0110】
但し、小型化及び高容量化を同時に達成するには、誘電体層及び内部電極の厚さを薄くして積層数を増加させなければならないため、1005(長さ×幅、1.0mm×0.5mm)以下のサイズを有する積層型電子部品100において、本発明による信頼性向上の効果がより顕著になる。
【0111】
従って、製造誤差、外部電極の大きさなどを考慮すると、積層型電子部品100の長さが1.1mm以下であり、幅が0.55mm以下である場合、本発明による信頼性向上の効果がより顕著になる。ここで、積層型電子部品100の長さは、積層型電子部品100の第2方向の最大の大きさを意味し、積層型電子部品100の幅は、積層型電子部品100の第3方向の最大の大きさを意味することができる。
【0112】
(実施例)
下地電極層131a、132aの平均厚さ及び薄膜電極層131b、132bの平均厚さを調節しつつ、下地電極層131a、132aの切れ領域(void)の発生有無、耐湿信頼性、薄膜電極層131b、132bの切れ領域(void)のカバー有無、薄膜電極層131b、132bのテープテストの不良有無を評価し、下記表1に記載した。
【0113】
下地電極層131a、132aは、Ni及びガラスを含むパッドを印刷して形成しており、試験番号1~3は、薄膜電極層を形成しておらず、試験番号4、5、7~10は、Cuをスパッタリング工法で蒸着して薄膜電極層を形成しており、試験番号6は、Ni-Crをスパッタリング工法で蒸着して薄膜電極層を形成した。
【0114】
下地電極層131a、132aの平均厚さ、薄膜電極層131b、132bの平均厚さ、下地電極層131a、132aの切れ領域(void)の発生有無、薄膜電極層131b、132bの切れ領域(void)のカバー有無は、各試験番号のサンプルチップを第3方向の中央までポリッシングして第1及び第2方向の断面を露出させた後、走査電子顕微鏡(SEM)を用いて分析した。薄膜電極層131b、132bの切れ領域(void)のカバー有無は、試験番号4~9に対してそれぞれ50個のサンプルチップを用意した後、薄膜電極層131b、132bが切れ領域(void)をカバーできず、Niめっき層が下地電極層と連結された場合を不良と判断し、不良であるサンプルの個数を記載した。
【0115】
耐湿信頼性は、各試験番号ごとに40個のサンプルチップを用意した後、温度85℃、湿度85%の条件でステップ1~3を経た後、絶縁抵抗が105Ω以下に落ちた場合を不良と判断し、不良であるサンプルの個数を記載した。step1では、10Vの電圧を1時間印加しており、step2では、15Vの電圧を1時間印加しており、step3では、20Vの電圧を2時間印加した。
【0116】
テープテスト不良は、試験番号4~11に対してそれぞれ10個のサンプルチップを用意した後、粘着力が800gf/inのテープを薄膜電極層に付着した後、上記薄膜電極層に付着したテープを脱着させることによって薄膜電極層が一部でも脱落した場合を不良と判断した。
【0117】
【0118】
上記表1を参照すると、下地電極層の平均厚さが5μmである試験番号1の場合、下地電極層に微細な切れ領域(void)が発生しておらず、耐湿信頼性不良も発生していないことを確認することができる。但し、試験番号1の場合、外部電極の厚さが厚くなるため、単位体積当たりの容量が低下する。
【0119】
試験番号1~3の外部電極を走査電子顕微鏡(SEM)でスキャンしたイメージである
図9~11を参照すると、下地電極層の平均厚さが5μmである試験番号1は、切れ領域(void)が発生しておらず、下地電極層の平均厚さが3μmである試験番号2は、切れ領域が発生しており、下地電極層の平均厚さが1μmである試験番号3は、試験番号2よりも切れ領域がさらに多く発生していることを確認することができる。従って、試験番号2及び3は耐湿信頼性に劣る。
【0120】
一方、試験番号4は、薄膜電極層の平均厚さが200nmであって切れ領域をカバーできず、耐湿信頼性に劣る。試験番号4の外部電極を走査電子顕微鏡(SEM)でスキャンしたイメージである
図12を参照すると、薄膜電極層(Cu-sputter)層が下地電極層(Ni-Pad)の切れ領域をカバーできず、Niめっき層と下地電極層(Ni-Pad)が切れ領域で連結されていることを確認することができる。
【0121】
試験番号5は、薄膜電極層の平均厚さが300nmであって切れ領域をカバーしており、耐湿信頼性に優れることを確認することができる。試験番号5の外部電極を走査電子顕微鏡(SEM)でスキャンしたイメージである
図13を参照すると、薄膜電極層(Cu-sputter)が下地電極層(Ni-Pad)の切れ領域をカバーしており、Niめっき層と下地電極層(Ni-Pad)が切れ領域で離隔して配置されていることを確認することができる。
【0122】
試験番号6は、薄膜電極層の材料としてNi-Crを用いており、薄膜電極層の平均厚さが300nmであって切れ領域をカバーしており、耐湿信頼性に優れることを確認することができる。
【0123】
試験番号7~9も、薄膜電極層が下地電極層の切れ領域をカバーしており、耐湿信頼性に優れる。
【0124】
但し、薄膜電極層の平均厚さが1000nm以上である試験番号10及び11の場合、テープテストで不良が発生しており、耐湿信頼性にも劣ることを確認することができる。薄膜電極層の平均厚さが1000nm以上である場合、下地電極層と薄膜電極層の結合力が低下する。
【0125】
従って、下地電極層の厚さが3μm以下である場合に耐湿信頼性を確保するためには、薄膜電極層の厚さが300nm以上800nm以下であることが好ましいことを確認することができる。
【0126】
以上、本発明の実施形態について詳細に説明したが、本発明は、上述の実施形態及び添付の図面によって限定されるものではなく、添付の特許請求の範囲によって限定される。したがって、特許請求の範囲に記載された本発明の技術的思想から外れない範囲内で、当技術分野における通常の知識を有する者によって多様な形態の置換、変形、及び変更が可能であり、これも本発明の範囲に属するといえる。
【0127】
また、本発明で使用されている「一実施形態」という表現は、互いに同一の実施形態を意味するものではなく、それぞれ互いに異なる固有の特徴を強調して説明するために提供されたものである。しかし、上記提示された一実施形態は、他の一実施形態の特徴と組み合わされて実現されることを排除しない。例えば、特定の一実施形態で説明されている事項が他の一実施形態では説明されていなくても、他の一実施形態においてその事項と反対又は矛盾する説明がない限り、他の一実施形態に関連した説明として理解することができる。
【0128】
本発明で使用されている用語は、単に一実施形態を説明するためのものであって、本発明を限定する意図ではない。このとき、単数の表現は、文脈上明らかに異なる意味でない限り、複数の表現を含むものである。
【符号の説明】
【0129】
100 積層型電子部品
110 本体
111 誘電体層
112、113 カバー部
114、115 マージン部
121、122 内部電極
131、132 外部電極
131a、132a 下地電極層
131b、132b 薄膜電極層
131c、132c めっき層
131d、132d 追加めっき層