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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024095925
(43)【公開日】2024-07-11
(54)【発明の名称】薬物の製造方法
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/58 20060101AFI20240704BHJP
   A61K 31/416 20060101ALI20240704BHJP
   A61K 9/19 20060101ALI20240704BHJP
   A61P 27/02 20060101ALI20240704BHJP
   A61P 29/00 20060101ALI20240704BHJP
【FI】
A61K31/58
A61K31/416
A61K9/19
A61P27/02
A61P29/00
【審査請求】有
【請求項の数】16
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023071546
(22)【出願日】2023-04-25
(31)【優先権主張番号】111150775
(32)【優先日】2022-12-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】TW
(71)【出願人】
【識別番号】599164754
【氏名又は名称】永信藥品工業股▲ふん▼有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(74)【代理人】
【識別番号】100135079
【弁理士】
【氏名又は名称】宮崎 修
(72)【発明者】
【氏名】李 芳裕
(72)【発明者】
【氏名】▲ゆい▼ 祐翔
【テーマコード(参考)】
4C076
4C086
【Fターム(参考)】
4C076AA11
4C076AA16
4C076AA29
4C076BB11
4C076BB24
4C076CC04
4C076CC10
4C076FF36
4C076FF67
4C076FF70
4C076GG06
4C086AA10
4C086BC37
4C086DA12
4C086GA02
4C086GA07
4C086MA01
4C086MA04
4C086MA16
4C086MA44
4C086MA66
4C086ZA33
4C086ZB11
(57)【要約】      (修正有)
【課題】薬物の製造方法を提供すること。
【解決手段】薬物の製造方法が、以下のステップを含む。第一に、有効投与量のAPIが、溶解剤において溶解されて第1の溶液が形成され、ここで、APIは、トリアムシノロンアセトニド(下式(I))又はYC-1化合物(下式(II))を含む。次に、第1の溶液が、室温において濾過膜に通して濾過されて、第2の溶液が得られる。その後、沈殿剤が第2の溶液に添加されて第3の溶液が得られ、続いて、第3の溶液が連続的に撹拌されて結晶が沈殿させられる。第3の溶液は、室温、低圧下でさらに撹拌されて、溶解剤及び沈殿剤が順次除去される。最後に、結晶を一次包装するため及び再充填するために結晶の体積が定量化されて、薬剤が得られる。

【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
薬物の製造方法であって、
有効投与量の医薬品有効成分を溶解剤において溶解して第1の溶液を形成するステップであり、前記医薬品有効成分は、トリアムシノロンアセトニド又はYC-1化合物を含む、ステップと、
室温において濾過膜に通して前記第1の溶液を濾過して、第2の溶液を得るステップと、
前記第2の溶液に沈殿剤を添加して第3の溶液を得る、及び、前記第3の溶液を連続的に撹拌して結晶を沈殿させるステップと、
前記室温及び低圧下で前記第3の溶液をさらに撹拌して、前記第3の溶液から前記溶解剤及び前記沈殿剤を順次除去するステップと、
前記結晶を一次包装するため及び再充填するために、前記結晶の体積を定量化するステップと、
前記結晶に対して凍結乾燥工程を行って薬物を得るステップと、
を含み、
前記トリアムシノロンアセトニドは、以下の構造式(I)
【化7】
によって表され、
前記YC-1化合物は、以下の構造式(II)
【化8】
によって表される、薬物の製造方法。
【請求項2】
前記室温は、摂氏20から30度である、請求項1に記載の薬物の製造方法。
【請求項3】
前記濾過膜の開口部が、0.22から0.45マイクロメートルである、請求項1に記載の薬物の製造方法。
【請求項4】
前記溶解剤は、(C1~C4)アルコール及び(C1~C4)ケトンを含む群から選択される、請求項1に記載の薬物の製造方法。
【請求項5】
前記溶解剤は、メタノール、エタノール、イソプロパノール、tert-ブタノール、及びアセトンを含む群から選択される、請求項4に記載の薬物の製造方法。
【請求項6】
前記沈殿剤は純水を含む、請求項1に記載の薬物の製造方法。
【請求項7】
前記沈殿剤対前記第2の溶液の体積比が2:1である、請求項6に記載の薬物の製造方法。
【請求項8】
前記医薬品有効成分の重量対前記溶解剤の体積の比が、10mg:0.5から0.8mlである、請求項1に記載の薬物の製造方法。
【請求項9】
前記医薬品有効成分の重量対前記溶解剤の体積の比が、10mg:0.65mlである、請求項1に記載の薬物の製造方法。
【請求項10】
前記医薬品有効成分の重量対前記沈殿剤の体積の比が、10mg:0.5から1.5mlである、請求項1に記載の薬物の製造方法。
【請求項11】
前記医薬品有効成分の重量対前記沈殿剤の体積の比が、10mg:1mlである、請求項10に記載の薬物の製造方法。
【請求項12】
前記室温において、-720から-685mmHgの圧力下で前記第3の溶液を撹拌することによって第1の濃縮段階を行って、前記溶解剤を除去するステップと、
前記室温において、-730から-710mmHgの圧力下で前記第3の溶液を撹拌することによって第2の濃縮段階を行って、前記沈殿剤を除去するステップと、
をさらに含む、請求項1に記載の薬物の製造方法。
【請求項13】
前記第1の濃縮段階の動作時間が22から24時間である、請求項12に記載の薬物の製造方法。
【請求項14】
前記第2の濃縮段階の動作時間が12から16時間である、請求項12に記載の薬物の製造方法。
【請求項15】
前記医薬品有効成分はトリアムシノロンアセトニドを含み、前記結晶の90%が、40から50マイクロメートルの粒度分布(D90)を有する、請求項1に記載の薬物の製造方法。
【請求項16】
前記医薬品有効成分はYC-1化合物を含み、前記結晶の90%が、60から80マイクロメートルの粒度分布(D90)を有する、請求項1に記載の薬物の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、薬物の製造方法に関し、特に注射剤の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的な薬物の剤形は、ドロップ、軟膏、注射剤、及びゲル等に分けることができ、注射剤が、一般的に、迅速且つ効果的な応答のような利点を得るように、有効投与量に達するまで血液系にそれ自体を直接送達することによって使用される。しかし、注射剤の製品品質は、その製造と同様に、いずれも製薬産業にとって重要である。第一に、注射剤は、非常に安定していること及び毒性が低いことが要求され、また、調製された粉末又は凍結乾燥粉末の重量及び粒径も、均一であること及び同時に微細化(microminiaturized)されていることが要求され、それによって、いかなる薬物の起こり得る刺激作用も劇的に減少させている。加えて、注射剤の原材料、並びに、原材料を加工するための製造工程(調製、二次包装、輸送、一次包装、及び充填を含む)には、製品品質を損なうような100マイクロメートル以下の不純物の残留等のいかなる残留も十分に避けるために汚染がないことが要求される。従って、医薬品産業における実用的な要求に応えるために、注射剤の製造方法の制限及び欠点全てを克服することが急務となっている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本開示の目的は、薬物の製造方法を提供することであり、当該方法においては、起こり得る汚染を効果的に回避する及び薬物の粒径を劇的に制御するように、医薬品有効成分(API)が、結晶沈殿に対して二溶媒を使用することによって処理される。このようにして、本開示においてそれによって得られる薬物は、より少ない汚染、より低い毒性、及びより細かい粒子のような様々な製品要求を満たすことを可能にし、それによって、より良い製品品質を達成している。
【課題を解決するための手段】
【0004】
上記の目的を達成するために、本開示の一実施形態は、以下のステップを含む薬物の製造方法を提供する。第一に、有効投与量の医薬品有効成分が、溶解剤(a dissolved agent)において溶解されて第1の溶液が形成され、ここで、医薬品有効成分は、トリアムシノロンアセトニド又はYC-1化合物を含む。次に、第1の溶液が、室温において濾過膜に通して濾過されて、第2の溶液が得られる。その後、沈殿剤が第2の溶液に添加されて第3の溶液が得られ、続いて、第3の溶液が連続的に撹拌されて結晶が沈殿させられる。第3の溶液は、室温及び低圧下でさらに撹拌されて、第3の溶液から溶解剤及び沈殿剤が順次除去される。最後に、結晶の体積が、一次包装及び再充填するために定量化され、さらに、結晶に対して凍結乾燥工程が行われて薬物が得られ、ここで、トリアムシノロンアセトニドは以下の構造式(I)
【0005】
【化1】
によって表され、YC-1化合物は以下の構造式(II)
【0006】
【化2】
によって表される。
【0007】
全体的に言えば、本開示の薬物の製造方法によると、特別な結晶沈殿技術及び凍結乾燥工程が併用されて、沈殿する結晶の粒径が正確に定められ、当該方法においては、多溶媒が結晶沈殿のために医薬品有効成分に適用され、結晶が半固体の剤形であるときに凍結乾燥工程が実行され、それによって、薬物の製造工程が簡略化され、同時にいかなる外部からの汚染も効果的に防止される。このように、本開示の薬物の製造方法から得られる薬物は、より良い製品品質を得るのを可能にする。
【0008】
本発明の上記及び他の目的は、様々な図及び図面において例示されている好ましい実施形態に関する以下の詳細な説明を読んだ後に、当業者にとって明らかになることは間違いない。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本開示の第1の実施形態による薬物の製造方法において得られる製品の粒度分布(PSD)を例示した概略図である。
図2】本開示の第1の実施形態による薬物の製造方法において得られる別の製品の粒度分布を例示した概略図である。
図3】本開示の第2の実施形態による薬物の製造方法において得られる製品の粒度分布を例示した概略図であり、実施例1において得られる製品の粒度分布を例示している。
図4】本開示の第2の実施形態による薬物の製造方法において得られる製品の粒度分布を例示した概略図であり、実施例2において得られる製品の粒度分布を例示している。
図5】本開示の第2の実施形態による薬物の製造方法において得られる製品の粒度分布を例示した概略図であり、実施例3において得られる製品の粒度分布を例示している。
図6】本開示の第2の実施形態による薬物の製造方法において得られる製品の粒度分布を例示した概略図であり、実施例4において得られる製品の粒度分布を例示している。
図7】本開示の第2の実施形態による薬物の製造方法において得られる製品の粒度分布を例示した概略図であり、実施例5において得られる製品の粒度分布を例示している。
図8】本開示の第2の実施形態による薬物の製造方法において得られる製品の粒度分布を例示した概略図であり、実施例6において得られる製品の粒度分布を例示している。
図9】本開示の第2の実施形態による薬物の製造方法において得られる別の製品の粒度分布を例示した概略図であり、実施例7において得られる製品の粒度分布を例示している。
図10】本開示の第2の実施形態による薬物の製造方法において得られる別の製品の粒度分布を例示した概略図であり、実施例8において得られる製品の粒度分布を例示している。
図11】本開示の第2の実施形態による薬物の製造方法において得られる別の製品の粒度分布を例示した概略図であり、実施例9において得られる製品の粒度分布を例示している。
図12】本開示の第2の実施形態による薬物の製造方法において得られる別の製品の粒度分布を例示した概略図であり、実施例10において得られる製品の粒度分布を例示している。
図13】本開示の第2の実施形態による薬物の製造方法において得られる別の製品の粒度分布を例示した概略図であり、実施例11において得られる製品の粒度分布を例示している。
図14】本開示の第2の実施形態による薬物の製造方法において得られる別の製品の粒度分布を例示した概略図であり、実施例12において得られる製品の粒度分布を例示している。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本開示をより良く理解するために、好ましい実施形態が詳細に記載される。本開示の好ましい実施形態は、番号付きの要素を用いて添付の図面において例示されている。加えて、以下において記載される異なる実施形態における技術的特徴は、本開示の真意から逸脱することなく、互いに、交換して、再び組み合わせて、又は混ぜ合わせて、別の実施形態を構成することができる。
【0011】
本開示において、「約」又は「実質的」という用語は、一般的に、所定の値又は範囲の20%以内、好ましくは10%以内、より好ましくは5%、3%、2%、1%、又は0.5%以内を意味する。別段の定めがない限り、本明細書において開示されている数値範囲、量、値、及び割合の全ては、「約」又は「実質的」という用語によって全ての事例において修正されるものとして理解されるべきである。従って、特段の記載がない限り、本開示及び添付の特許請求の範囲において記載されている数値パラメータは、必要に応じて変えることができる近似値である。
【0012】
第1の実施形態による薬物の製造方法は、以下のステップを含むが、これらに限定されない。第一に、医薬品有効成分(API)が提供され、有効投与量のAPIが、乾燥粉末充填技術を介して処理され、APIは、滅菌乾燥粉末によって再充填され、続いて、一次包装のためにその体積又は重量が定量化される。それによって、次に、第1の実施形態の薬物が得られ、APIは、例えば、トリアムシノロンアセトニド、YC-1化合物(CAS#:170632-4)等の眼疾患の治療に使用されるいかなる医薬品原材料、この医薬品原材料の類似体若しくは組成物、又は注射剤として製造する必要がある他の成分も含む。トリアムシノロンアセトニドは、以下の構造式(I)
【0013】
【化3】
によって表され、YC-1化合物は、以下の構造式(II)
【0014】
【化4】
によって表される。
【0015】
APIがトリアムシノロンアセトニドを含む場合、薬物内の結晶の粒度分布(PSD)は約1マイクロメートル(μm)から100μmであり、図1において示されているように、結晶の10%は4.444μm未満の粒度(D10)を有し、結晶の50%は11.189μm未満の粒度(D50)を有し、結晶の90%は30.504未満の粒度(D90)を有して、薬物に対する基準である医薬品の製造管理及び品質管理の基準(GMP:good manufacturing practice)を満たしている。一方、APIがYC-1化合物を含む場合、薬物内の結晶の粒度分布(PSD)は約0.5μmから250μmであり、図2において示されているように、結晶の10%は0.648μm未満の粒度(D10)を有し、結晶の50%は14.061μm未満の粒度(D50)を有し、結晶の90%は215.136μm未満の粒度(D90)を有して、同様に、薬物に対する基準であるGMPを満たしている。
【0016】
これらの段取りを介して、第1の実施形態の製造方法から得られた薬物は、注射剤として使用されるのが可能であり、特に、一般的に滅菌容器において保管され、さらに、適切な液体において溶解されて懸濁液が形成され得る薬物を指す粉末懸濁剤として使用され、薬物に対する基準であるGMPを満たすことができる。しかし、当業者は、本開示における薬物の製造方法は、上述の実施形態に限定されず、実用的な製品要求の下で、他の例又は異形をさらに含んでもよいということを容易に認識するはずである。以下の記載は、本開示における薬物の製造方法の異なる実施形態を詳述する。記載を簡略化するために、以下の記載は、異なる実施形態間の相違点を詳述し、同一の特徴は冗長に記載されない。容易に実施形態間の違いを比較するために、以下の実施形態の各々において同一の構成要素には、同一の記号がついている。
【0017】
本開示の第2の実施形態によると、薬物の粒径を正確に制御するため、及び、APIのサンプリング中に毛髪、不純物、若しくは他の残留物のような汚染、又は充填工程中の重量変動につながりやすい等、上述の乾燥粉末充填技術によって引き起こされる欠点をさらに改善するために、別の薬物の製造方法が提供される。また、第2の実施形態の製造方法は、より十分且つ簡略化されたプロセスフローの下で、均一で微細な粒子を有する薬物を得るのが可能であり、いかなる外部からの汚染もない。本開示の第2の実施形態における薬物の製造方法によると、粒径を正確に定めるために、特別な結晶沈殿技術及び凍結乾燥工程が併用され、当該方法は、以下のステップを含むが、これらに限定されない。表1を参照されたい。第一に、調製ステップ(S1)が、有効量のAPIを溶解剤において溶解して第1の溶液を形成することによって実行され、ここで、APIは、例えば、トリアムシノロンアセトニド、抗生剤(antibiotic drugs)、YC-1化合物(CAS#:170632-4)等の眼疾患の治療に使用されるいかなる医薬品原材料、この医薬品原材料の類似体若しくは組成物、又は注射剤として製造する必要がある他の成分も含む。トリアムシノロンアセトニドは、以下の構造式(I)
【0018】
【化5】
によって表され、YC-1化合物は、以下の構造式(II)
【0019】
【化6】
によって表される。
【0020】
溶解剤は、適した毒性の低い有機溶媒等、APIの特性に従ったいかなる種類の溶媒であってもよい。本実施形態において、溶解剤は、例えば、(C1~C4)アルコール又は(C1~C4)ケトンを含み、好ましくは、メタノール、エタノール、イソプロパノール、tert-ブタノール(TBA)、及びアセトンを含む群から選択されるが、これらに限定されない。本実施形態において、各10ミリグラム(mg)のAPIが、例えば、0.5~0.8ミリリットル(ml)の溶解剤において溶解され、溶解剤は、好ましくは、0.65mlであるが、これに限定されない。溶解剤の体積が小さすぎると、APIは完全に溶解することができず、それによって、収率が悪くなるが、溶解剤の体積が大きすぎると、APIは、従って、悪い結晶化効率を得て、それによって粒径の均一性も悪くなる。
【0021】
次に、滅菌ステップ(S2)が行われる。本実施形態では、滅菌濾過工程が、濾過膜に通して第1の溶液を濾過して、第2の溶液、すなわち滅菌濾液を得ることによって実行される。濾過膜の開口部は、約0.22~0.45μm、好ましくは約0.22μmであるが、これに限定されない。加えて、滅菌ステップ(S2)は、好ましくは室温において行われ、例えば、室温は、摂氏約20~30度、より好ましくは摂氏約25度であるが、これに限定されない。
【0022】
また、沈殿ステップ(S3)が行われ、このステップにおいては、沈殿剤が第2の溶液に添加されて第3の溶液が得られ、沈殿剤対第2の溶液の体積比は約2:1であり、続いて、1時間等、ある期間第3の溶液を連続的に撹拌して、第3の溶液から結晶が沈殿させられる。本実施形態において、沈殿剤は、例えば、純水又は毒性の低い他の適した液体を含むが、これらに限定されない。特に、各10ミリグラム(mg)のAPIが、約0.5~1.5mlの沈殿剤によって沈殿させられ、沈殿剤は、好ましくは約1mlであるが、これに限定されない。
【0023】
次に、第1の濃縮ステップ(S4)及び第2の濃縮ステップ(S5)が、室温(摂氏20~30)において徐々に減圧しながら、第3の溶液を連続的に撹拌することによって順次行われて、第3の溶液から溶解剤及び沈殿剤がそれぞれ除去され、それによって、結晶が得られる。第1の濃縮ステップ(S4)によると、第3の溶液は、20~24時間、約-720から-685mmHgの低圧下で撹拌されて、第3の溶液から溶解剤が除去され、また、第2の濃縮ステップ(S5)によると、第3の溶液は、12から16時間、約-730から-710mmHgの別の低圧下で連続的に撹拌されて、第3の溶液から沈殿剤が除去され、ここで、結晶の粒径及び均一性を正確に制御するように、第2の濃縮ステップ(S5)の圧力範囲は、好ましくは、第1の濃縮ステップ(S4)よりも低い。次に、その後に得られる薬物は、従って、均一で微細化された粒径を同時に達成することができる。
【0024】
その後、一次包装ステップ(S6)及び乾燥ステップ(S7)が順次行われ、これらのステップでは、第3の溶液が連続的に撹拌され、続いて、結晶を一次包装するため及び再充填するために結晶の体積が定量化される。結晶の体積は、約2~4mlであるが、これに限定されない。次に、凍結乾燥工程及び真空濃縮工程が順次行われて、第3の溶液から残留沈殿剤がさらに除去され、それによって薬物が得られる。本実施形態において、凍結乾燥工程は、低圧下で徐々に温度を上昇させながら実行されて、第3の溶液から沈殿剤が除去され、例えば、約22から24時間、約0.5mmHgの圧力下で、温度を、摂氏-35度から摂氏0度、次に摂氏35度まで(-35°C→0°C→35°C)徐々に上昇させながら行われるが、これに限定されない。一方、真空濃縮工程は、約12から16時間、室温(20~30°C)及び-720から-685mmHgに及ぶ圧力下で行われて、第3の溶液から残留沈殿剤が除去される。
【0025】
【表1】
これらの段取りを介して、第2の実施形態の製造方法から得られた薬物も、注射剤として使用されるのが可能であり、特に、懸濁液を形成するために適切な液体においてさらに溶解することができる薬物を指す粉末懸濁剤として使用されて、薬物に対する基準であるGMPを満たす。このように、本実施形態の製造方法は、トリアムシノロンアセトニド又はYC-1化合物等の水に不溶性のAPIを処理して、ヒト又は動物が速やかに吸収及び利用することができる注射剤、特に純度が高く、汚染が少なく、及び毒性が低い注射剤を製造するのを可能にする。例えば、APIがトリアムシノロンアセトニドを含む場合、それによって得られた薬物は、眼の硝子体切除術又は糖尿病黄斑浮腫における硝子体可視化の治療のための注射剤として使用されるのが可能であり、有効量の薬物を含有するビンに十分な量の生理食塩水又は眼の灌流液が添加され、続いて、十分にビンを振って懸濁液が形成され、その懸濁液が、標的部分に注入される。
【0026】
本実施形態の薬物の製造方法に基づき、無菌結晶沈殿技術及び凍結乾燥工程が併用されて、沈殿する結晶の粒径が正確に定められ、当該方法では、二溶媒(溶解剤及び沈殿剤を含む)の両方が、結晶沈殿のためにAPIに適用される。正確には、APIが、第一に、(調製ステップS1において)溶解剤において溶解され、続いて、(滅菌ステップS2において)滅菌工程及び(沈殿ステップS3において)沈殿工程が順次行われて、結晶が沈殿させられ、次に、多段階の真空濃縮工程(第1の濃縮ステップS4及び第2の濃縮ステップS5を含む)が行われて、溶解剤及び沈殿剤が順次除去され、それによって、本実施形態において効果的な溶解、沈殿、及び凍結乾燥が達成される。このように、様々な反応チャンバ間を繰り返し移動させられるか又は外部環境と接触する代わりに、上記のステップの間に同じ反応チャンバ内でAPIは処理されるのが可能である。このように、本実施形態の製造方法は、起こり得る汚染を効果的に改善し、薬物に残る残留物、不純物、又は有機試薬を劇的に減少させることができるため、それによって、得られた薬物は、低い毒性で汚染が少ないという要件を満たすことができる。
【0027】
また、本実施形態における薬物の製造方法をさらに参照すると、一般的な凍結乾燥工程(溶解、昇華、及び結晶化を含む)とは異なる凍結乾燥工程が、半固体の剤形の結晶に対して実行されて、薬物の粒径が正確に制御される。例えば、APIがトリアムシノロンアセトニドを含む場合、薬物における結晶のPSDは約40~50μmにおいて制御され、結晶の90%は、45μm未満の粒度(D90)を有する。一方、APIがYC-1化合物を含む場合、薬物における結晶のPSDは約60~80μmにおいて制御され、結晶の10%は、1μm未満の粒度(D10)を有し、結晶の50%は、20μm未満の粒度(D50)を有し、さらに、結晶の90%は、70μm未満の粒度(D90)を有して、薬物に対する基準であるGMPを満たしている。
【0028】
本開示における薬物の製造方法のいくつかの例である図3から図9を参照されたい。関連データが、その機能及び利点を検証するために以下の段落において提供される。
【実施例0029】
実施例1では、40mgのトリアムシノロンアセトニドが、丸底フラスコにおいて2.5mlのメタノール(必要に応じて、メタノールは、迅速な溶解のために32°Cまで加熱させられてもよい)に溶解されて溶液が得られ、その溶液は、濾過膜に通して濾過されて濾液が沈殿ビンに集められる。次に、4mlの濾過した純水が室温において沈殿ビンに添加され、さらに、沈殿ビン内の濾液は、結晶を完全に沈殿させるために、1時間連続的に撹拌される。次に、沈殿ビン内の濾液を連続的に撹拌しながら、第1の濃縮ステップS4(メタノールを除去するために20~24時間撹拌)及び第2の濃縮ステップS5(純水を除去するために12から16時間撹拌)が行われ、続いて、沈殿ビン内の濾液を連続的に撹拌しながら、結晶の体積が定量化され、結晶が一次包装される。その後、真空濃縮工程が、さらに12から16時間行われて、純水がさらに除去される。次に、それによって得られた薬物における結晶のPSDは約10~100μmであり、図3において示されているように、結晶の10%は、25.839μm未満の粒度(D10)を有し、結晶の50%は、50.817μm未満の粒度(D50)を有し、さらに、結晶の90%は、91.933μm未満の粒度(D90)を有している。
【実施例0030】
実施例2では、40mgのトリアムシノロンアセトニドが、丸底フラスコにおいて2.5mlのエタノール(必要に応じて、エタノールは、迅速な溶解のために32°Cまで加熱させられてもよい)に溶解されて溶液が得られ、その溶液は、濾過膜に通して濾過されて濾液が沈殿ビンに集められる。次に、4mlの濾過した純水が室温において沈殿ビンに添加され、さらに、沈殿ビン内の濾液は、結晶を完全に沈殿させるために、1時間連続的に撹拌される。次に、沈殿ビン内の濾液を連続的に撹拌しながら、第1の濃縮ステップS4(エタノールを除去するために20~24時間撹拌)及び第2の濃縮ステップS5(純水を除去するために12から16時間撹拌)が行われ、続いて、沈殿ビン内の濾液を連続的に撹拌しながら、結晶の体積が定量化され、結晶が一次包装される。その後、真空濃縮工程が、さらに12から16時間行われて、純水がさらに除去される。次に、それによって得られた薬物における結晶のPSDは約1~100μmであり、図4において示されているように、結晶の10%は、4.723μm未満の粒度(D10)を有し、結晶の50%は、12.828μm未満の粒度(D50)を有し、さらに、結晶の90%は、31.582μm未満の粒度(D90)を有している。
【実施例0031】
実施例3では、40mgのトリアムシノロンアセトニドが、丸底フラスコにおいて2.5mlのアセトン(必要に応じて、アセトンは、迅速な溶解のために32°Cまで加熱させられてもよい)に溶解されて溶液が得られ、その溶液は、濾過膜に通して濾過されて濾液が沈殿ビンに集められる。次に、4mlの濾過した純水が室温において沈殿ビンに添加され、さらに、沈殿ビン内の濾液は、結晶を完全に沈殿させるために、1時間連続的に撹拌される。次に、沈殿ビン内の濾液を連続的に撹拌しながら、第1の濃縮ステップS4(アセトンを除去するために20~24時間撹拌)及び第2の濃縮ステップS5(純水を除去するために12から16時間撹拌)が行われ、続いて、沈殿ビン内の濾液を連続的に撹拌しながら、結晶の体積が定量化され、結晶が一次包装される。その後、真空濃縮工程が、さらに12から16時間行われて、純水がさらに除去される。次に、それによって得られた薬物における結晶のPSDは約10~100μmであり、図5において示されているように、結晶の10%は、34.313μm未満の粒度(D10)を有し、結晶の50%は、64.922μm未満の粒度(D50)を有し、さらに、結晶の90%は、115.052μm未満の粒度(D90)を有している。
【実施例0032】
実施例4では、1200mgのトリアムシノロンアセトニドが、丸底フラスコにおいて75mlのエタノール(必要に応じて、エタノールは、迅速な溶解のために32°Cまで加熱させられてもよい)に溶解されて溶液が得られ、その溶液は、濾過膜に通して濾過されて濾液が沈殿ビンに集められる。次に、120mlの濾過した純水が室温において沈殿ビンに添加され、さらに、沈殿ビン内の濾液は、結晶を完全に沈殿させるために、1時間連続的に撹拌される。次に、沈殿ビン内の濾液を連続的に撹拌しながら、第1の濃縮ステップS4(エタノールを除去するために20~24時間撹拌)及び第2の濃縮ステップS5(純水を除去するために12から16時間撹拌)が行われ、続いて、沈殿ビン内の濾液を連続的に撹拌しながら、結晶の体積が定量化され、結晶が一次包装される。その後、凍結乾燥工程が、22から24時間、約0.5mmHgの圧力下で、温度を、摂氏-35度から摂氏0度、次に摂氏35度まで(-35°C→0°C→35°C)徐々に上昇させながら行われて、純粋がさらに除去される。次に、それによって得られた薬物における結晶のPSDは約1~100μmであり、図6において示されているように、結晶の10%は、5.617μm未満の粒度(D10)を有し、結晶の50%は、15.848μm未満の粒度(D50)を有し、さらに、結晶の90%は、35.262μm未満の粒度(D90)を有している。
【実施例0033】
実施例5では、40mgのトリアムシノロンアセトニドが、丸底フラスコにおいて2.5mlのtert-ブタノール(必要に応じて、tert-ブタノールは、迅速な溶解のために30°Cまで加熱させられてもよい)に溶解されて溶液が得られ、その溶液は、濾過膜に通して濾過されて濾液が沈殿ビンに集められる。次に、8mlの濾過した純水が室温において沈殿ビンに添加され、さらに、沈殿ビン内の濾液は、結晶を完全に沈殿させるために、1時間連続的に撹拌される。次に、沈殿ビン内の濾液を連続的に撹拌しながら、第1の濃縮ステップS4(tert-ブタノールを除去するために20から24時間撹拌)及び第2の濃縮ステップS5(純水を除去するために12から16時間撹拌)が行われ、続いて、沈殿ビン内の濾液を連続的に撹拌しながら、結晶の体積が定量化され、結晶が一次包装される。その後、真空濃縮工程が、さらに12から16時間行われて、純水がさらに除去される。次に、それによって得られた薬物における結晶のPSDは約1~100μmであり、図7において示されているように、結晶の10%は、5.488μm未満の粒度(D10)を有し、結晶の50%は、15.824μm未満の粒度(D50)を有し、さらに、結晶の90%は、36.362μm未満の粒度(D90)を有している。
【実施例0034】
実施例6では、40mgのトリアムシノロンアセトニドが、丸底フラスコにおいて4mlのイソプロパノール(必要に応じて、イソプロパノールは、迅速な溶解のために30°Cまで加熱させられてもよい)に溶解されて溶液が得られ、その溶液は、濾過膜に通して濾過されて濾液が沈殿ビンに集められる。次に、9mlの濾過した純水が室温において沈殿ビンに添加され、さらに、沈殿ビン内の濾液は、結晶を完全に沈殿させるために、1時間連続的に撹拌される。次に、沈殿ビン内の濾液を連続的に撹拌しながら、第1の濃縮ステップS4(イソプロパノールを除去するために20~24時間撹拌)及び第2の濃縮ステップS5(純水を除去するために12から16時間撹拌)が行われ、続いて、沈殿ビン内の濾液を連続的に撹拌しながら、結晶の体積が定量化され、結晶が一次包装される。その後、真空濃縮工程が、さらに12から16時間行われて、純水がさらに除去される。次に、それによって得られた薬物における結晶のPSDは約10~100μmであり、図8において示されているように、結晶の10%は、15.709μm未満の粒度(D10)を有し、結晶の50%は、29.590μm未満の粒度(D50)を有し、さらに、結晶の90%は、53.806μm未満の粒度(D90)を有している。
【実施例0035】
実施例7では、1800mgのYC化合物が、丸底フラスコにおいて40mlのエタノール(必要に応じて、エタノールは、迅速な溶解のために32°Cまで加熱させられてもよい)に溶解されて溶液が得られ、その溶液は、濾過膜に通して濾過されて濾液が沈殿ビンに集められる。次に、50mlの濾過した純水が室温において沈殿ビンに添加され、さらに、沈殿ビン内の濾液は、結晶を完全に沈殿させるために、1時間連続的に撹拌される。次に、沈殿ビン内の濾液を連続的に撹拌しながら、第1の濃縮ステップS4(エタノールを除去するために20から24時間撹拌)及び第2の濃縮ステップS5(純水を除去するために12から16時間撹拌)が行われ、続いて、沈殿ビン内の濾液を連続的に撹拌しながら、結晶の体積が定量化され、結晶が一次包装される。その後、真空濃縮工程が、さらに12から16時間行われて、純水がさらに除去される。次に、それによって得られた薬物における結晶のPSDは約0.1~110μmであり、図9において示されているように、結晶の10%は、0.188μm未満の粒度(D10)を有し、結晶の50%は、7.627μm未満の粒度(D50)を有し、さらに、結晶の90%は、54.780μm未満の粒度(D90)を有している。
【実施例0036】
実施例8では、400mgのYC化合物が、丸底フラスコにおいて35mlのtert-ブタノール(必要に応じて、tert-ブタノールは、迅速な溶解のために30°Cまで加熱させられてもよい)に溶解されて溶液が得られ、その溶液は、濾過膜に通して濾過されて濾液が沈殿ビンに集められる。次に、90mlの濾過した純水が室温において沈殿ビンに添加され、さらに、沈殿ビン内の濾液は、結晶を完全に沈殿させるために、1時間連続的に撹拌される。次に、沈殿ビン内の濾液を連続的に撹拌しながら、第1の濃縮ステップS4(tert-ブタノールを除去するために20から24時間撹拌)及び第2の濃縮ステップS5(純水を除去するために12から16時間撹拌)が行われ、続いて、沈殿ビン内の濾液を連続的に撹拌しながら、結晶の体積が定量化され、結晶が一次包装される。その後、真空濃縮工程が、さらに12から16時間行われて、純水がさらに除去される。次に、それによって得られた薬物における結晶のPSDは約0.1~1000μmであり、図10において示されているように、結晶の10%は、0.294μm未満の粒度(D10)を有し、結晶の50%は、11.950μm未満の粒度(D50)を有し、さらに、結晶の90%は、188.035μm未満の粒度(D90)を有している。
【実施例0037】
実施例9では、400mgのYC化合物が、丸底フラスコにおいて30mlのイソプロパノール(必要に応じて、イソプロパノールは、迅速な溶解のために30°Cまで加熱させられてもよい)に溶解されて溶液が得られ、その溶液は、濾過膜に通して濾過されて濾液が沈殿ビンに集められる。次に、65mlの濾過した純水が室温において沈殿ビンに添加され、さらに、沈殿ビン内の濾液は、結晶を完全に沈殿させるために、1時間連続的に撹拌される。次に、沈殿ビン内の濾液を連続的に撹拌しながら、第1の濃縮ステップS4(イソプロパノールを除去するために20から24時間撹拌)及び第2の濃縮ステップS5(純水を除去するために12から16時間撹拌)が行われ、続いて、沈殿ビン内の濾液を連続的に撹拌しながら、結晶の体積が定量化され、結晶が一次包装される。その後、真空濃縮工程が、さらに12から16時間行われて、純水がさらに除去される。次に、それによって得られた薬物における結晶のPSDは約0.1~50μmであり、図11において示されているように、結晶の10%は、0.192μm未満の粒度(D10)を有し、結晶の50%は、2.180μm未満の粒度(D50)を有し、さらに、結晶の90%は、10.803μm未満の粒度(D90)を有している。
【実施例0038】
実施例10では、1600mgのYC化合物が、丸底フラスコにおいて80mlのエタノール(必要に応じて、エタノールは、迅速な溶解のために32°Cまで加熱させられてもよい)に溶解されて溶液が得られ、その溶液が、濾過膜に通して濾過されて濾液が沈殿ビンに集められる。次に、100mlの濾過した純水が室温において沈殿ビンに添加され、さらに、沈殿ビン内の濾液は、結晶を完全に沈殿させるために、1時間連続的に撹拌される。次に、沈殿ビン内の濾液を連続的に撹拌しながら、第1の濃縮ステップS4(エタノールを除去するために20から24時間撹拌)及び第2の濃縮ステップS5(純水を除去するために12から16時間撹拌)が行われ、続いて、沈殿ビン内の濾液を連続的に撹拌しながら、結晶の体積が定量化され、結晶が一次包装される。その後、凍結乾燥工程が、22から24時間、約0.5mmHgの圧力下で、温度を、摂氏-20度から摂氏0度、次に摂氏35度まで(-20°C→0°C→35°C)徐々に上昇させながら行われて、純粋がさらに除去される。次に、それによって得られた薬物における結晶のPSDは約0.5~100μmであり、図12において示されているように、結晶の10%は、0.717μm未満の粒度(D10)を有し、結晶の50%は、15.572μm未満の粒度(D50)を有し、さらに、結晶の90%は、66.663μm未満の粒度(D90)を有している。
【実施例0039】
実施例11では、800mgのYC化合物が、丸底フラスコにおいて20mlのアセトン(必要に応じて、アセトンは、迅速な溶解のために30°Cまで加熱させられてもよい)に溶解されて溶液が得られ、その溶液は、濾過膜に通して濾過されて濾液が沈殿ビンに集められる。次に、30mlの濾過した純水が室温において沈殿ビンに添加され、さらに、沈殿ビン内の濾液は、結晶を完全に沈殿させるために、1時間連続的に撹拌される。次に、沈殿ビン内の濾液を連続的に撹拌しながら、第1の濃縮ステップS4(アセトンを除去するために20から24時間撹拌)及び第2の濃縮ステップS5(純水を除去するために12から16時間撹拌)が行われ、続いて、沈殿ビン内の濾液を連続的に撹拌しながら、結晶の体積が定量化され、結晶が一次包装される。その後、真空濃縮工程が、さらに12から16時間行われて、純水がさらに除去される。次に、それによって得られた薬物における結晶のPSDは約0.1~120μmであり、図13において示されているように、結晶の10%は、0.548μm未満の粒度(D10)を有し、結晶の50%は、10.168μm未満の粒度(D50)を有し、さらに、結晶の90%は、120.467μm未満の粒度(D90)を有している。
【実施例0040】
実施例12では、600mgのYC化合物が、丸底フラスコにおいて20mlのエタノール(必要に応じて、エタノールは、迅速な溶解のために32°Cまで加熱させられてもよい)に溶解されて溶液が得られ、その溶液は、濾過膜に通して濾過されて濾液が沈殿ビンに集められる。次に、120mlの濾過した純水が室温において沈殿ビンに添加され、さらに、沈殿ビン内の濾液は、結晶を完全に沈殿させるために、1時間連続的に撹拌される。次に、沈殿ビン内の濾液を連続的に撹拌しながら、第1の濃縮ステップS4(エタノールを除去するために20から24時間撹拌)及び第2の濃縮ステップS5(純水を除去するために12から16時間撹拌)が行われ、続いて、沈殿ビン内の濾液を連続的に撹拌しながら、結晶の体積が定量化され、結晶が一次包装される。その後、凍結乾燥工程が、22から24時間、約0.5mmHgの圧力下で、温度を、摂氏-20度から摂氏0度、次に摂氏35度まで(-20°C→0°C→35°C)徐々に上昇させながら行われて、純粋がさらに除去される。次に、それによって得られた薬物における結晶のPSDは約0.1~100μmであり、図14において示されているように、結晶の10%は、0.193μm未満の粒度(D10)を有し、結晶の50%は、9.802μm未満の粒度(D50)を有し、さらに、結晶の90%は、58.439μm未満の粒度(D90)を有している。
【0041】
加えて、第1の実施形態及び第2の実施形態の製造方法から得られた薬物の重量がさらに比較される以下の表2から表6を参照されたい。第一に、表2において示されているように、第1の実施形態の製造方法において、有効投与量のAPI(トリアムシノロンアセトニドを含む等)が乾燥粉末充填技術を介して処理され、APIは、滅菌乾燥粉末で充填され、続いて、その体積又は重量が一次包装のために定量化され、それによって、第1の実施形態の製造方法による薬物が得られる。これらの段取りで、5つの薬物群(表3において示されている番号1-1から1-5までを含む)がそれに応じて得られ、さらに、薬物の製造方法の様々な処理ステップにおける5つの薬物群の重量(グラム、g単位)が測定され、以下の表3において列挙されて、約3.57%である5つの薬物群内の薬物間の重量又は体積の係数変動(すなわち、基準値/平均値、CV)が得られる。
【0042】
さらに、表2を参照されたい。API(トリアムシノロンアセトニドを含む等)は、第一に、溶解剤において溶解され(調製ステップS1)、続いて、滅菌工程(滅菌ステップS2)及び沈殿工程(沈殿ステップS3)が順次行われて結晶が得られ、次に、多段階の真空濃縮工程(第1の濃縮ステップS4及び第2の濃縮ステップS5を含む)が行われて、溶解剤及び沈殿剤が順次除去され、それによって、第2の実施形態の製造方法における効果的な溶解、沈殿、及び凍結乾燥が達成される。次に、第一に、結晶を一次包装するため及び再充填するために結晶の体積を定量化した後、凍結乾燥工程及び真空濃縮工程を介して残留沈殿剤を除去することによって、一次包装ステップS6及び乾燥ステップS7が順次行われ、それによって、第2の実施形態の製造方法による薬物が得られる。これらの段取りで、いくつかの薬物群(表4において示されている番号2-1から2-10、表5において示されている番号3-1から3-19、及び表6において示されている番号4-1から4-12を含む)がそれに応じて得られ、さらに、薬物の製造方法の様々な処理ステップにおけるこれらの薬物群の重量(グラム単位)が測定され、以下の表4、表5、及び表6において列挙されて、約0.29~1.12%であるこれらの薬物群内の薬物間の重量又は体積の係数変動(すなわち、基準値/平均値、CV)が得られる。
【0043】
【表2】
言い換えると、第2の実施形態の製造方法による薬物は、結晶が不完全に乾燥しているか又は完全に乾燥している場合に乾燥させるのが可能であり、結晶の微小体積又は重量を、一次包装及び充填のための正確に定量化することができ、第2の実施形態において得られた薬物間の重量又は体積のCV(例えば、約0.29~1.12%である)は、第1の実施形態において得られた薬物間の重量又は体積のCV(例えば、約3.57%である)よりも劇的に低い。このように、第2の実施形態の薬物は、より良い製品品質を達成するように、より細かい粒子の要求を満たすのを可能にする。
【0044】
【表3】
【0045】
【表4】
【0046】
【表5】
【0047】
【表6】
全体的に言えば、本開示の薬物の製造方法によると、特別な結晶沈殿技術及び凍結乾燥工程が併用されて、沈殿する結晶の粒径が正確に定められ、当該方法においては、多溶媒が結晶沈殿のために医薬品有効成分に適用され、凍結乾燥工程が、半固体の剤形に対して実行され、それによって、薬物の製造工程が簡略化され、同時にいかなる外部からの汚染も効果的に防止される。このように、本開示の製造方法は、トリアムシノロンアセトニド若しくはYC-1化合物、又は抗生剤等の水に不溶性のAPIを処理して、ヒト又は動物が吸収及び利用することができる注射剤、特に純度が高く、汚染が少なく、及び毒性が低い注射剤、例えば、眼の硝子体切除術又は糖尿病黄斑浮腫における硝子体可視化の治療のための眼の注射剤を製造するのを可能にする。これらの段取りを介して、本開示の薬物の製造方法から得られた薬物は、より良い製品品質を得るのが可能である。
【0048】
当業者は、本発明の教示を保持しながら、装置及び方法の多数の修正及び変更が行われる可能性があることを容易に観察することになる。従って、上記の開示は、添付の特許請求の範囲によってのみ限定されると解釈されるべきである。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
【手続補正書】
【提出日】2024-06-17
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
薬物の製造方法であって、
有効投与量の医薬品有効成分を溶解剤において溶解して第1の溶液を形成するステップであり、前記医薬品有効成分は、トリアムシノロンアセトニド又はYC-1化合物を含む、ステップと、
室温において濾過膜に通して前記第1の溶液を濾過して、第2の溶液を得るステップと、
前記第2の溶液に沈殿剤を添加して第3の溶液を得る、及び、前記第3の溶液を連続的に撹拌して結晶を沈殿させるステップと、
前記室温及び低圧下で前記第3の溶液をさらに撹拌して、前記第3の溶液から前記溶解剤及び前記沈殿剤を順次除去するステップと
記結晶に対して凍結乾燥工程を行って薬物を得るステップと、
を含み、
前記トリアムシノロンアセトニドは、以下の構造式(I)
【化7】
によって表され、
前記YC-1化合物は、以下の構造式(II)
【化8】
によって表され
前記ステップは全て同じ反応チャンバにおいて行われる、薬物の製造方法。
【請求項2】
前記室温は、摂氏20から30度である、請求項1に記載の薬物の製造方法。
【請求項3】
前記濾過膜の開口部が、0.22から0.45マイクロメートルである、請求項1に記載の薬物の製造方法。
【請求項4】
前記溶解剤は、(C1~C4)アルコール及び(C~C4)ケトンを含む群から選択される、請求項1に記載の薬物の製造方法。
【請求項5】
前記溶解剤は、メタノール、エタノール、イソプロパノール、tert-ブタノール、及びアセトンを含む群から選択される、請求項4に記載の薬物の製造方法。
【請求項6】
前記沈殿剤は純水を含む、請求項1に記載の薬物の製造方法。
【請求項7】
前記沈殿剤対前記第2の溶液の体積比が2:1である、請求項6に記載の薬物の製造方法。
【請求項8】
前記医薬品有効成分の重量対前記溶解剤の体積の比が、10mg:0.5から0.8mlである、請求項1に記載の薬物の製造方法。
【請求項9】
前記医薬品有効成分の重量対前記溶解剤の体積の比が、10mg:0.65mlである、請求項1に記載の薬物の製造方法。
【請求項10】
前記医薬品有効成分の重量対前記沈殿剤の体積の比が、10mg:0.5から1.5mlである、請求項1に記載の薬物の製造方法。
【請求項11】
前記医薬品有効成分の重量対前記沈殿剤の体積の比が、10mg:1mlである、請求項10に記載の薬物の製造方法。
【請求項12】
前記室温において、-720から-685mmHgの圧力下で前記第3の溶液を撹拌することによって第1の濃縮段階を行って、前記溶解剤を除去するステップと、
前記室温において、-730から-710mmHgの圧力下で前記第3の溶液を撹拌することによって第2の濃縮段階を行って、前記沈殿剤を除去するステップと、
をさらに含む、請求項1に記載の薬物の製造方法。
【請求項13】
前記第1の濃縮段階の動作時間が22から24時間である、請求項12に記載の薬物の製造方法。
【請求項14】
前記第2の濃縮段階の動作時間が12から16時間である、請求項12に記載の薬物の製造方法。
【請求項15】
前記医薬品有効成分はトリアムシノロンアセトニドを含み、前記結晶の粒度分布は40から50マイクロメートルであり、前記結晶の90%が、45マイクロメートル未満の粒度(D90)を有する、請求項1に記載の薬物の製造方法。
【請求項16】
前記医薬品有効成分はYC-1化合物を含み、前記結晶の粒度分布は60から80マイクロメートルであり、前記結晶の90%が、70マイクロメートル未満の粒度(D90)を有する、請求項1に記載の薬物の製造方法。