(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024095927
(43)【公開日】2024-07-11
(54)【発明の名称】積層型電子部品
(51)【国際特許分類】
H01G 4/30 20060101AFI20240704BHJP
【FI】
H01G4/30 201M
H01G4/30 201L
H01G4/30 201A
H01G4/30 311
H01G4/30 311F
H01G4/30 311Z
H01G4/30 515
H01G4/30 517
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023076297
(22)【出願日】2023-05-02
(31)【優先権主張番号】10-2022-0188486
(32)【優先日】2022-12-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(71)【出願人】
【識別番号】594023722
【氏名又は名称】サムソン エレクトロ-メカニックス カンパニーリミテッド.
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(72)【発明者】
【氏名】崔 孝成
(72)【発明者】
【氏名】朴 正鎭
(72)【発明者】
【氏名】崔 虎森
(72)【発明者】
【氏名】金 宰源
(72)【発明者】
【氏名】金 善美
(72)【発明者】
【氏名】李 種晧
【テーマコード(参考)】
5E001
5E082
【Fターム(参考)】
5E001AB03
5E001AC04
5E001AC09
5E001AD04
5E001AE02
5E001AE03
5E001AE04
5E001AF06
5E001AG02
5E001AH01
5E001AH05
5E001AH07
5E001AH09
5E001AJ04
5E082AA01
5E082AB03
5E082BC19
5E082BC31
5E082EE04
5E082EE23
5E082EE35
5E082FF05
5E082FG04
5E082FG22
5E082FG26
5E082FG46
5E082PP09
5E082PP10
(57)【要約】
【課題】カバー部の緻密度及び靭性を向上させて積層型電子部品の耐湿信頼性を向上させ、カバー部パターンの折り曲がり及びしわ不良を防止して、積層型電子部品の耐電圧低下及びショート不良が発生することを防止する。
【解決手段】本発明の一実施形態は、第1方向に交互に配置される誘電体層及び内部電極を含む容量形成部、及び容量形成部の第1方向に向かい合う両端面上に配置されるカバー部を含む本体、及び本体の外部に配置されて内部電極と連結される外部電極を含み、カバー部はフッ素(F)を含み、カバー部に含まれた誘電体結晶粒の平均大きさをA1、誘電体層に含まれた誘電体結晶粒の平均大きさをA2とするとき、A2>A1を満たす積層型電子部品を提供する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1方向に交互に配置される誘電体層及び内部電極を含む容量形成部、及び前記容量形成部の前記第1方向に向かい合う両端面上に配置されるカバー部を含む本体と、
前記本体の外部に配置されて前記内部電極と連結される外部電極と、を含み、
前記カバー部はフッ素(F)を含み、
前記カバー部に含まれた誘電体結晶粒の平均大きさをA1、前記誘電体層に含まれた誘電体結晶粒の平均大きさをA2とするとき、A2>A1を満たす、積層型電子部品。
【請求項2】
前記A1及び前記A2は、0.55≦A1/A2≦0.585を満たす、請求項1に記載の積層型電子部品。
【請求項3】
前記カバー部は、飛行時間型2次イオン質量分析(TOF-SIMS)によるアニオン分析時に、フッ素イオン(F-)が検出される、請求項1に記載の積層型電子部品。
【請求項4】
前記カバー部の飛行時間型2次イオン質量分析(TOF-SIMS)によるアニオン分析において、全アニオンの検出強度に対する前記フッ素イオン(F-)の検出強度の割合は5.78%~12.56%である、請求項3に記載の積層型電子部品。
【請求項5】
前記カバー部は、BaTiO3を主成分として含み、Ca、Al、Li、Co、Zn、Mn、Mg及びSの少なくとも一つを含む酸化物または炭酸塩を含む副成分を含む、請求項1に記載の積層型電子部品。
【請求項6】
前記カバー部は、BaTiO3を主成分として含み、Ca、Al、Li、Co、Zn、Mn、Mg及びSの少なくとも一つを含む、請求項1に記載の積層型電子部品。
【請求項7】
前記A1は200nm以上400nm以下である、請求項1に記載の積層型電子部品。
【請求項8】
前記誘電体層の平均厚さは0.4μm以下である、請求項1に記載の積層型電子部品。
【請求項9】
前記内部電極の平均厚さは0.4μm以下である、請求項1に記載の積層型電子部品。
【請求項10】
前記カバー部の平均厚さは15μm以下である、請求項1に記載の積層型電子部品。
【請求項11】
前記本体は、前記容量形成部の第3方向に向かい合う両端面上に配置されるマージン部を含み、
前記マージン部の平均厚さは15μm以下である、請求項1に記載の積層型電子部品。
【請求項12】
第1方向に交互に配置される誘電体層及び内部電極を含む容量形成部と前記容量形成部の前記第1方向に向かい合う両端面上に配置されるカバー部を含む本体、及び前記本体の外部に配置されて前記内部電極と連結される外部電極を含む積層型電子部品の製造方法であって、
第1誘電体物質及びフッ素系化合物を含む第1セラミックスラリーを印刷してカバー部パターンを形成する工程、第2誘電体物質を含む第2セラミックスラリーを印刷して誘電体パターンを形成する工程、及び内部電極用導電性粒子を含む内部電極用導電性ペーストを印刷して内部電極パターンを形成する工程のいずれか一つを行う印刷段階と、
前記印刷段階を複数回実行して、前記カバー部パターン、前記誘電体パターン及び前記内部電極パターンが積層された積層体を得る積層段階と、
前記積層体を焼成して前記本体を得る焼成段階と、
前記本体の外部に外部電極を形成する段階と、を含み、
前記第1誘電体物質は、BaTiO3を主成分として含み、前記第1セラミックスラリーに含まれたフッ素系化合物の含有量は、前記BaTiO3100重量部に対して0.2重量部~1.0重量部である、積層型電子部品の製造方法。
【請求項13】
前記フッ素系化合物は、下記化学式1~4で表される化合物の少なくとも一つを含む、請求項12に記載の積層型電子部品の製造方法:
【化1】
【化2】
【化3】
【化4】
前記化学式1~4において、
a、b、c及びdは、互いに独立して100~1000の整数である。
【請求項14】
前記第1誘電体物質は、Ca、Al、Li、Co、Zn、Mn、Mg及びSの少なくとも一つを含む酸化物または炭酸塩を含む副成分を含む、請求項12に記載の積層型電子部品の製造方法。
【請求項15】
前記第1誘電体物質は、Ca、Al、Li、Co、Zn、Mn、Mg及びSの少なくとも一つを含む、請求項12に記載の積層型電子部品の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、積層型電子部品に関するものである。
【背景技術】
【0002】
積層型電子部品の一つである積層セラミックキャパシタ(MLCC:Multi-Layered Ceramic Capacitor)は、液晶表示装置(LCD:Liquid Crystal Display)及びプラズマ表示装置パネル(PDP:Plasma Display Panel)などの映像機器、コンピュータ、スマートフォン及び携帯電話などの様々な電子製品のプリント回路基板に装着されて電気を充電または放電させる役割を果たすチップ形態のコンデンサである。
【0003】
かかる積層セラミックキャパシタは、小型でありながらも高容量が保障され、実装が容易であるという利点により、様々な電子装置の部品として用いられることができる。コンピュータ、モバイル機器など、各種電子機器が小型化、高出力化され、積層セラミックキャパシタに対する小型化及び高容量化の要求が増大している。
【0004】
積層セラミックキャパシタは、一般的に、誘電体層及び内部電極が交互に配置されて容量が形成される容量形成部と、容量形成部を保護するためのカバー部を含む。カバー部は、セラミックスラリーをキャリアフィルム(carrier film)上に印刷してカバー部パターンを形成し、キャリアフィルムからカバー部パターンを剥離した後、カバー部パターンを容量形成部上に積層することで形成することができる。
【0005】
一方、カバー部パターンをキャリアフィルムから剥離する際に、摩擦及び/または物質間のエネルギーレベル差によって静電気が発生する可能性があり、このような静電気はカバー部パターンの折り曲がり及び/またはしわ不良を発生させて積層セラミックキャパシタの耐電圧低下及びショート不良を引き起こすという問題点がある。
【0006】
一方、積層セラミックキャパシタの使用環境が厳しくなるにつれて衝撃によるクラックなどを防止し、積層セラミックキャパシタの耐湿信頼性を向上させるためにカバー部の微細構造を緻密に実施し、カバー部の靭性(toughness)を増加させることが好ましい。
【0007】
したがって、カバー部パターンの折り曲がり及び/またはしわ不良を発生させて積層セラミックキャパシタの耐電圧低下及びショート不良を引き起こすという問題点を防止するために、カバー部パターンに帯電防止剤を添加するが、焼成後のカバー部の緻密度及び靭性を増加させることができる物質を適切に選択することが重要である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の様々な目的の一つは、カバー部の緻密度及び靭性を向上させて積層型電子部品の耐湿信頼性を向上させることである。
【0009】
本発明の様々な目的の一つは、カバー部パターンの折り曲がり及びしわ不良を防止して、積層型電子部品の耐電圧低下及びショート不良が発生することを防止することである。
【0010】
但し、本発明の目的は、上述した内容に限定されず、本発明の具体的な実施形態を説明する過程でより容易に理解することができる。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の一実施形態は、第1方向に交互に配置される誘電体層及び内部電極を含む容量形成部と、前記容量形成部の前記第1方向に向かい合う両端面に配置されるカバー部を含む本体、及び前記本体の外部に配置されて前記内部電極と連結される外部電極を含み、前記カバー部はフッ素(F)を含み、前記カバー部に含まれた誘電体結晶粒の平均大きさをA1、前記誘電体層に含まれた誘電体結晶粒の平均大きさをA2とするとき、A2>A1を満たす積層型電子部品を提供する。
【0012】
本発明の他の一実施形態は、第1方向に交互に配置される誘電体層及び内部電極を含む容量形成部と、前記容量形成部の前記第1方向に向かい合う両端面上に配置されるカバー部を含む本体、及び前記本体の外部に配置されて前記内部電極と連結される外部電極を含む積層型電子部品の製造方法であって、第1誘電体物質及びフッ素系化合物を含む第1セラミックスラリーを印刷してカバー部パターンを形成する工程、第2誘電体物質を含む第2セラミックスラリーを印刷して誘電体パターンを形成する工程、及び内部電極用導電性粒子を含む内部電極用導電性ペーストを印刷して内部電極パターンを形成する工程のいずれか一つを行う印刷段階、前記印刷段階を複数回実行して、前記カバー部パターン、前記誘電体パターン及び前記内部電極パターンが積層された積層体を得る積層段階、前記積層体を焼成して前記本体を得る焼成段階、及び前記本体の外部に外部電極を形成する段階を含み、前記第1誘電体物質はBaTiO3を主成分として含み、前記第1セラミックスラリーに含まれたフッ素系化合物の含有量は、前記BaTiO3100重量部に対して0.2重量部~1.0重量部である積層型電子部品の製造方法を提供する。
【発明の効果】
【0013】
本発明の様々な効果の一つとして、カバー部の緻密度及び靭性を向上させて積層型電子部品の耐湿信頼性を向上させることができる。
【0014】
本発明の様々な効果の一つとして、カバー部パターンの折り曲がり及びしわ不良を防止して、積層型電子部品の耐電圧低下及びショート不良が発生することを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明の一実施形態に係る積層型電子部品を概略的に示した斜視図である。
【
図2】
図1のI-I’線に沿った切断断面を概略的に示した断面図である。
【
図3】
図1のII-II’線に沿った切断断面を概略的に示した断面図である。
【
図4】本発明の一実施形態に係る積層型電子部品の本体を分解して概略的に示した分解斜視図である。
【
図7】カバー部パターンをキャリアフィルムから剥離する過程を概略的に示した断面図である。
【
図8】実験例及び比較例のカバー部パターンのしわ不良率を示したグラフである。
【
図9】実験例及び比較例のカバー部パターンの折り曲がりによるburnt不良回数を示したグラフである。
【
図10a】実験例のカバー部の飛行時間型2次イオン質量分析(TOF-SIMS)によるアニオン分析で検出されたフッ素イオン(F
-)をマッピングしたイメージである。
【
図10b】比較例のカバー部の飛行時間型2次イオン質量分析(TOF-SIMS)によるアニオン分析で検出されたフッ素イオン(F
-)をマッピングしたイメージである。
【
図11a】実験例のカバー部を走査電子顕微鏡(SEM)を用いて撮影したイメージである。
【
図11b】比較例のカバー部を走査電子顕微鏡(SEM)を用いて撮影したイメージである。
【
図12a】実験例の耐湿信頼性の評価結果を示したグラフである。
【
図12b】比較例の耐湿信頼性の評価結果を示したグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、具体的な実施形態及び添付の図面を参照して、本発明の実施形態を説明する。しかし、本発明の実施形態は、いくつかの他の形態に変形することができ、本発明の範囲が以下説明する実施形態に限定されるものではない。また、本発明の実施形態は、通常の技術者に本発明をより完全に説明するために提供されるものである。したがって、図面における要素の形状及び大きさなどはより明確な説明のために拡大縮小表示(または強調表示や簡略化表示)がされることがあり、図面上に同一符号で示される要素は同一要素である。
【0017】
尚、図面において本発明を明確に説明するために説明と関係ない部分は省略し、図示した各構成の大きさ及び厚さは、説明の便宜のために任意で示したものであるため、本発明は必ずしも図示により限定されない。また、同一の思想の範囲内の機能が同一である構成要素は、同一の参照符号を用いて説明することができる。さらに、明細書全体において、ある部分がある構成要素を「含む」というのは、特に反対される記載がない限り、他の構成要素を除外するのではなく、他の構成要素をさらに含むことができることを意味する。
【0018】
図面において、第1方向は厚さ(T)方向、第2方向は長さ(T)方向、第3方向は幅(W)方向と定義することができる。
【0019】
積層型電子部品
図1は、本発明の一実施形態に係る積層型電子部品を概略的に示した斜視図であり、
図2は、
図1のI-I’線に沿った切断断面を概略的に示した断面図であり、
図3は、
図1のII-II’線に沿った切断断面を概略的に示した断面図であり、
図4は、本発明の一実施形態に係る積層型電子部品の本体を分解して概略的に示した分解斜視図であり、
図5は、
図3のK1領域拡大図であり、
図6は、
図3のK2領域拡大図である。
【0020】
図1~
図6を参照すると、本発明の一実施形態に係る積層型電子部品100は、第1方向に交互に配置される誘電体層111及び内部電極121、122を含む容量形成部Acと、容量形成部の第1方向に向かい合う両端面上に配置されるカバー部112、113を含む本体110、及び本体の外部に配置されて内部電極と連結される外部電極131、132を含み、カバー部112、113はフッ素(F)を含み、カバー部に含まれた誘電体結晶粒G1の平均大きさをA1、誘電体層に含まれた誘電体結晶粒G2の平均大きさをA2とするとき、A2>A1を満たすことができる。
【0021】
本発明の一実施形態によると、カバー部112、113に含まれたフッ素(F)は、低温焼結助剤の役割を果たすことで、カバー部112、113の誘電体結晶粒の緻密化を誘導し、カバー部の靭性(toughness)を向上させることができる。また、本発明の一実施形態によると、A2>A1を満たすことで積層型電子部品100の本体110内の不均一な応力分布を緩和させて、デラミネーション及びクラックなどの発生を抑制することができ、結果的に積層型電子部品の耐湿信頼性を向上させることができる。
【0022】
以下、本発明の一実施形態に係る積層型電子部品100に含まれる各構成についてより詳細に説明する。
【0023】
本体110の具体的な形状に特に制限はないが、図示のように本体110は六面体状やこれと類似した形状からなることができる。焼成過程で本体110に含まれたセラミック粉末の収縮や角部の研磨により、本体110は完全な直線を有する六面体状ではなく、実質的に六面体状を有することができる。
【0024】
本体110は、第1方向に向かい合う第1面及び第2面1、2、第1面及び第2面1、2と連結され、第2方向に向かい合う第3面及び第4面3、4、第1面~第4面1、2、3、4と連結され、第3方向に向かい合う第5面及び第6面5、6を有することができる。
【0025】
本体110は、誘電体層111及び内部電極121、122が交互に積層されていることができる。本体110を形成する複数の誘電体層111は焼成された状態であり、隣接する誘電体層111間の境界は、走査電子顕微鏡(SEM:Scanning Electron Microscope)を利用せずには確認しにくいほど一体化することができる。
【0026】
誘電体層111は、例えば、BaTiO3を主成分として含むことができる。誘電体層111の平均厚さtdは特に限定する必要はない。但し、一般的に誘電体層111の厚さが薄くなるほど電圧印加時に発生する応力によって本体110にクラックが発生しやすくなり、これにより積層型電子部品の耐湿信頼性が低下するという問題点がある。一方、本発明の一実施形態に係る積層型電子部品の場合、カバー部112、113はフッ素(F)を含み、A2>A1を満たすことで誘電体層111の平均厚さtdが0.4μm以下である場合にも積層型電子部品の耐湿信頼性を確保することができる。
【0027】
ここで、誘電体層111の平均厚さtdは、内部電極121、122の間に配置される誘電体層111の第1方向の大きさを意味する。誘電体層111の平均厚さは、本体110の第1方向及び第2方向の断面を1万倍率の走査電子顕微鏡(SEM)を用いてスキャンして測定することができる。より具体的には、一つの誘電体層111の多数の地点、例えば第2方向に等間隔の30の地点でその厚さを測定して平均値を測定することができる。等間隔の30の地点は、容量形成部Acで指定されることができる。また、このような平均値測定を10の誘電体層111に拡張して平均値を測定すると、誘電体層111の平均厚さをさらに一般化することができる。
【0028】
内部電極121、122は誘電体層111と交互に配置されることができ、例えば、互いに異なる極性を有する一対の電極である第1内部電極121と第2内部電極122が誘電体層111を挟んで互いに対向するように配置されることができる。第1内部電極121及び第2内部電極122は、その間に配置された誘電体層111によって互いに電気的に分離されることができる。
【0029】
第1内部電極121は、第4面4と離隔して、第3面3と連結されるように配置されることができる。また、第2内部電極122は、第3面3と離隔して第4面4と連結されるように配置されることができる。
【0030】
内部電極121、122に含まれる導電性金属は、ニッケル(Ni)、銅(Cu)、パラジウム(Pd)、銀(Ag)、金(Au)、白金(Pt)、スズ(Sn)、タングステン(W)、チタン(Ti)及びこれらの合金のうち一つ以上であることができ、本発明はこれに限定されるものではない。
【0031】
内部電極121、122の平均厚さteは特に限定する必要はない。但し、本発明の一実施形態に係る積層型電子部品の場合、カバー部112、113がフッ素(F)を含み、A2>A1を満たすことで内部電極121、122の平均厚さが0.4μm以下である場合にも積層型電子部品の耐湿信頼性を確保することができる。
【0032】
内部電極121、122の平均厚さteは、内部電極121、122の第1方向の大きさを意味する。ここで、内部電極121、122の平均厚さは、本体110の第1方向及び第2方向の断面を1万倍率の走査電子顕微鏡(SEM)を用いてスキャンして測定することができる。より具体的には、一つの内部電極121、122の多数の地点、例えば第2方向に等間隔の30の地点でその厚さを測定して平均値を測定することができる。等間隔の30の地点は容量形成部Acで指定されることができる。また、このような平均値測定を10の内部電極121、122に拡張して平均値を測定すると、内部電極121、122の平均厚さをさらに一般化することができる。
【0033】
本体110は、本体110の内部に配置され、第1方向に交互に配置される誘電体層111及び内部電極121、122を含む容量形成部Acと容量形成部Acの第1方向に向かい合う両面上に配置されるカバー部112、113を含むことができる。カバー部112、113は、容量形成部Acの第1方向に向かい合う両面上にそれぞれ配置される第1カバー部112及び第2カバー部113を含むことができる。カバー部112、113は、基本的に物理的または化学的ストレスによる内部電極の損傷を防止する役割を果たすことができる。
【0034】
カバー部112、113の主成分は誘電体層111と同一であることができ、これによりカバー部112、113は、例えば、BaTiO3を主成分として含むことができる。また、カバー部112、113は、Ca、Al、Li、Co、Zn、Mn、Mg及びSの少なくとも一つを含むことができる。例えば、カバー部112、113は、Ca、Al、Li、Co、Zn、Mn、Mg及びSの少なくとも一つを含む酸化物または炭酸塩を含む副成分を含むことができる。但し、副成分元素が必ずしも酸化物または炭酸塩状態で存在するものではない。Ca、Al、Li、Co、Zn、Mn、Mg、Sは後述のように、カバー部112、113に含まれたフッ素(F)と共に低温焼結助剤としての役割を果たすことができる。
【0035】
本発明の一実施形態によると、カバー部112、113はフッ素(F)を含むことができる。カバー部に含まれるフッ素(F)は、カバー部112、113を形成するための第1セラミックスラリーに含まれるフッ素系化合物に起因するものであることができる。
【0036】
フッ素(F)は、カバー部112、113の焼成過程で低温焼結助剤としての役割を果たすことができる。したがって、カバー部112、113は、フッ素(F)によって低い温度から焼成が行われることができ、これによってカバー部112、113の緻密度が向上することができる。また、カバー部112、113に含まれたフッ素(F)は、カバー部112、113に含まれた他の元素と結合して一種の化合物を形成することができ、例えば、フッ素(F)は、カバー部112、113に含まれたCa、Al、Li、Co、Zn、Mn、Mg及び/またはSと結合してCaF、AlF3及び/またはLiFなどの化合物を形成することができる。上記化合物は、カバー部112、113の焼成時にBaTiO3の液相焼成を誘導することができ、これによりカバー部112、113の緻密化を誘導することができる。
【0037】
図5及び
図6を参照すると、カバー部に含まれた誘電体結晶粒G1の平均大きさをA1、誘電体層に含まれた誘電体結晶粒G2の平均大きさをA2とするとき、A2>A1を満たすことができる。
【0038】
カバー部112、113を形成する原料である第1誘電体物質と、容量形成部Acの誘電体層111を形成する原料である第2誘電体物質は、粉末状を有することができる。このとき、第1誘電体物質の粒径と第2誘電体物質の粒径が同一である場合、誘電体層111の焼成がカバー部112、113よりも先に起こり得る。これは、誘電体物質に比べて焼成温度が低い導電性金属を含む内部電極の優先的な収縮により、内部電極間に配置された誘電体層111に圧縮応力が作用することがあり、これが焼結駆動力として作用することがあるためである。このように、誘電体層111がカバー部112、113よりも先に焼成されることで、本体110の内部には応力が不均一に分布することがあり、これによってデラミネーション及びクラックなどの欠陥が誘発されることがある。
【0039】
これにより、第1誘電体物質の粒径を第2誘電体物質よりも小さくしてカバー部112、113の焼成温度を下げることで容量形成部Acとの焼成温度の差を減少させることができ、これにより本発明の一実施形態に係る積層型電子部品は、A2>A1を満たすことができる。すなわち、A2>A1を満たすことで本体110内の不均一な応力分布を緩和させることができる。
【0040】
但し、焼成後のカバー部112、113に含まれた誘電体結晶粒G1の平均大きさA1が小さすぎる場合、カバー部112、113の靭性(toughness)が低下することがある。一方、本発明の一実施形態の場合、カバー部112、113に含まれたフッ素(F)が低温焼結助剤としての役割を果たして誘電体結晶粒の粒成長を誘導することができ、これによりカバー部112、113の靭性(toughness)を向上させ、これによって外部衝撃によるクラックなどを防止し、外部水分が容量形成部に浸透することを防止することで積層型電子部品の耐湿信頼性を向上させることができる。
【0041】
カバー部112、113に含まれた誘電体結晶粒G1の平均大きさA1は、特に限定する必要はないが、例えば、200nm以上であることができる。A1が200nm未満の場合、カバー部112、113の靭性向上の効果が僅かであることがある。一方、A1の上限は特に限定する必要はないが、例えば400nm以下であることができる。
【0042】
A1/A2比率は特に限定する必要はないが、例えば0.55≦A1/A2≦0.585を満たすことができる。A1/A2値を調節する方法は、特に限定する必要はないが、カバー部112、113を形成する第1誘電体物質の粒径を誘電体層111を形成する第2誘電体物質よりも小さくし、カバー部112、113に含まれたフッ素(F)の含有量を増加させるほど、カバー部112、113に含まれた誘電体結晶粒G1の粒成長が促進されてA1/A2値を増加させることができる。A1/A2値が0.55未満である場合、カバー部112、113の靭性(toughness)向上の効果が僅かであることがある。A1/A2値が0.585超過である場合、後述するカバー部パターンに含まれるフッ素系化合物の含有量が過度であって、フッ素系化合物の凝集が発生することがある。
【0043】
A1は、本体の第2方向の中央で切断した第1及び第3方向の断面において、カバー部112、113の中央領域(例えば、
図3のK1領域)を走査電子顕微鏡(SEM)を用いて50,000倍拡大したイメージを得た後、イメージをイメージ分析プログラム、例えば、Zootos社のZootos Programを用いて分析して得た誘電体結晶粒径の平均値を意味することができる。
【0044】
また、A2は、本体の第2方向の中央で切断した第1及び第3方向の断面において、容量形成部Acの中央領域(例えば、
図3のK2領域)に配置された誘電体層111を走査電子顕微鏡(SEM)を用いて50,000倍拡大したイメージを得た後、イメージをイメージ分析プログラム、例えば、Zootos社のZootos Programを用いて分析して得た誘電体結晶粒径の平均値を意味することができる。
【0045】
一方、誘電体層111はフッ素(F)を含まないことができるが、本発明がこれに限定されるものではない。例えば、後述するフッ素系化合物の帯電防止特性を実現するために、誘電体層111はカバー部112、113に比べて低い含有量のフッ素(F)を含むこともできる。
【0046】
カバー部112、113に含まれたフッ素(F)を測定する方法は特に限定する必要はない。例えば、カバー部112、113に含まれたフッ素(F)は、飛行時間型2次イオン質量分析(TOF-SIMS)によるアニオン分析によって測定することができる。
【0047】
カバー部112、113は、飛行時間型2次イオン質量分析(TOF-SIMS)によるアニオン分析時に、フッ素イオン(F-)が検出されることができる。例えば、本体110の第1面または第2面に配置されたカバー部112、113の外表面を約10nm程度エッチングした後、第2方向の大きさ×第3方向の大きさ=100μm×100μmの領域に対して飛行時間型2次イオン質量分析(TOF-SIMS)を実施することでカバー部112、113に含まれたフッ素(F)を測定することができる。
【0048】
カバー部112、113の飛行時間型2次イオン質量分析(TOF-SIMS)によるアニオン分析において、全アニオンの検出強度に対するフッ素イオン(F-)の検出強度の割合は5.78%~12.56%であることができる。フッ素イオン(F-)の検出強度は、後述するカバー部パターンに含まれるフッ素系化合物の含有量によって決定されることができる。フッ素イオン(F-)の検出強度の割合が5.78%未満である場合、カバー部112、113の靭性(toughness)向上の効果が僅かであることがある。また、フッ素イオン(F-)の検出強度の割合が12.56%超過である場合、カバー部パターンに含まれるフッ素系化合物の含有量が過度であって、フッ素系化合物の凝集が発生することがある。
【0049】
一方、カバー部112、113に含まれたフッ素(F)を測定する方法は、これに限定されるものではなく、例えばX線光電子分光法、赤外線分光法などの様々な検出装置でカバー部112、113に含まれたフッ素(F)を測定することができる。
【0050】
カバー部112、113の平均厚さtcは特に限定する必要はない。但し、積層型電子部品の小型化及び高容量化のために、カバー部112、113の平均厚さtcは15μm以下であることができる。上述したように、カバー部112、113の平均厚さが15μm以下である場合にも、カバー部112、113がフッ素(F)を含み、A2>A1を満たすことで積層型電子部品の耐湿信頼性を確保することができる。ここで、カバー部112、113の平均厚さtcは、第1カバー部112及び第2カバー部113のそれぞれの平均厚さを意味する。
【0051】
カバー部112、113の平均厚さtcは、カバー部112、113の第1方向への平均大きさを意味することができ、本体110の第1方向及び第2方向の断面において等間隔の5つの地点で測定した第1方向の大きさを平均した値であることができる。
【0052】
本体110は、容量形成部Acの第3方向に向かい合う両端面上に配置されるマージン部114、115を含むことができる。すなわち、マージン部114、115は、本体110を第1方向及び第3方向に切断した断面における内部電極121、122の両端と本体110の境界面との間の領域を意味することができる。このとき、マージン部114、115は、本体110の第5面5と連結される第1マージン部114及び本体110の第6面6と連結される第2マージン部115を含むことができる。
【0053】
マージン部114、115は、内部電極121、122を含まないことを除いては、誘電体層111と同一材料を含むことができる。マージン部114、115は、基本的に物理的または化学的ストレスによる内部電極121、122の損傷を防止する役割を果たすことができる。
【0054】
マージン部114、115は、セラミックグリーンシート上にマージン部が形成されることを除いて、内部電極用導電性ペーストを塗布して焼成することで形成されたものであることができる。または、内部電極121、122による段差を抑制するために、積層後に内部電極121、122が本体の第5面及び第6面5、6と連結されるように切断した後、単一誘電体層または2つ以上の誘電体層を容量形成部Acの第3方向に向かい合う両面上に積層することでマージン部114、115を形成することもできる。
【0055】
マージン部114、115の平均厚さは特に限定する必要はない。但し、積層型電子部品の小型化及び高容量化のために、マージン部114、115の平均厚さは15μm以下であることができる。上述したように、マージン部114、115の平均厚さが15μm以下である場合にも、カバー部112、113がフッ素(F)を含み、A2>A1を満たすことで積層型電子部品の耐湿信頼性を確保することができる。ここで、マージン部114、115の平均厚さは、第1マージン部114及び第2マージン部115のそれぞれの平均厚さを意味する。
【0056】
マージン部114、115の平均厚さは、マージン部114、115の第3方向の平均大きさを意味することができ、本体110の第1方向及び第3方向の断面で等間隔の5つの地点で測定した第3方向の大きさを平均した値であることができる。
【0057】
外部電極131、132は本体110の外部に配置され、内部電極121、122と連結されることができる。外部電極131、132は、本体110の第3面及び第4面3、4に配置されることができ、第1面、第2面、第5面及び第6面の一部上に延長することができる。また、外部電極131、132は、複数の第1内部電極121と連結される第1外部電極131及び複数の第2内部電極122と連結される第2外部電極132を含むことができる。
【0058】
外部電極131、132は、本体110の第3面及び第4面3、4に配置されて内部電極121、122と連結される第1電極層131a、132a及び第1電極層131a、132a上に配置される第2電極層132a、132bを含むことができる。
【0059】
第1電極層131a、132aは金属及びガラスを含むことができ、第1電極層131a、132aに含まれる金属は銅(Cu)、ニッケル(Ni)、パラジウム(Pd)、白金(Pt)、金(Au)、銀(Ag)、鉛(Pb)及び/またはこれらを含む合金などを含むことができるが、本発明がこれに限定されるものではない。
【0060】
第2電極層131b、132bは実装特性を向上させることができる。第2電極層131b、132bの種類は特に限定されず、ニッケル(Ni)、スズ(Sn)、パラジウム(Pd)及び/またはこれを含む合金などを含むめっき層であることができ、複数の層で形成されることもできる。第2電極層131b、132bは、例えば、ニッケル(Ni)めっき層またはスズ(Sn)めっき層であることができ、ニッケル(Ni)めっき層及びスズ(Sn)めっき層が順次形成された形態であることもできる。また、第2電極層131b、132bは、複数のニッケル(Ni)めっき層及び/または複数のスズ(Sn)めっき層を含むこともできる。
【0061】
以下、上述した積層型電子部品を製造するための本発明の一実施形態に係る積層型電子部品の製造方法について説明する。但し、上述した本発明の一実施形態に係る積層型電子部品と重複する説明は省略する。
【0062】
積層型電子部品の製造方法
本発明の一実施形態に係る積層型電子部品の製造方法は、第1方向に交互に配置される誘電体層111及び内部電極121、122を含む容量形成部Acと、容量形成部の第1方向に向かい合う両端面上に配置されるカバー部112、113を含む本体110及び本体の外部に配置されて内部電極と連結される外部電極131、132を含む積層型電子部品の製造方法として、第1誘電体物質及びフッ素系化合物を含む第1セラミックスラリーを印刷してカバー部パターンを形成する工程、第2誘電体物質を含む第2セラミックスラリーを印刷して誘電体パターンを形成する工程、及び内部電極用導電性粒子を含む内部電極用導電性ペーストを印刷して内部電極パターンを形成する工程のいずれか一つを行う印刷段階、印刷段階を複数回実行してカバー部パターン、誘電体パターン及び内部電極パターンが積層された積層体を得る積層段階、積層体を焼成して本体を得る焼成段階及び本体の外部に外部電極を形成する段階を含み、第1誘電体物質はBaTiO3を主成分として含み、第1セラミックスラリーに含まれたフッ素系化合物の含有量は、BaTiO3100重量部に対して0.2重量部~1.0重量部であることができる。
【0063】
カバー部パターンを形成する工程は、第1誘電体物質、フッ素系化合物と工程上の必要に応じて有機溶剤、バインダー及び分散剤などを含む第1セラミックスラリーをキャリアフィルム(carrier film)上に印刷及び乾燥する工程を含むことができる。
【0064】
第1セラミックスラリーに含まれる第1誘電体物質は、BaTiO3を主成分として含み、Ca、Al、Li、Co、Zn、Mn、Mg及びSの少なくとも一つを含むことができる。すなわち、第1誘電体物質は、Ca、Al、Li、Co、Zn、Mn、Mg及びSの少なくとも一つを含む酸化物または炭酸塩を含む副成分を含むことができる。但し、本発明はこれに限定されるものではなく、上述のようにフッ素(F)と結合して低温焼結効果を実現することができる他の元素をさらに含んでも好ましい。
【0065】
フッ素系化合物は、第1セラミックスラリー内で帯電防止剤としての役割を果たすことができる。
図7は、カバー部パターンをキャリアフィルムから剥離する工程を概略的に示した断面図である。
図7を参照すると、カバー部パターンCPをキャリアフィルムCFから剥離するとき、摩擦及び/またはカバー部パターン及びキャリアフィルムのそれぞれに含まれた物質間のエネルギーレベル差によって静電気が発生することがあり、このような静電気は、カバー部パターンの折り曲がり及び/またはしわ不良を発生させ、積層型電子部品の耐電圧低下及びショート不良を引き起こす可能性がある。
【0066】
一方、本発明の一実施形態によると、カバー部パターンCPはフッ素系化合物を含み、フッ素系化合物はカバー部パターンCPの表面に一種の導電層を形成することができ、これによりホッピング(hopping)効果により、カバー部パターンCPをキャリアフィルムCFから剥離する際に発生する静電気を除去して、カバー部パターンCPの折り曲がり及び/またはしわ不良を防止することができる。
【0067】
本発明の一実施形態によると、第1セラミックスラリーに含まれたフッ素系化合物の含有量は、BaTiO3100重量部に対して0.2重量部~1.0重量部であることができる。フッ素系化合物の含有量がBaTiO3100重量部に対して0.2重量部未満である場合、フッ素系化合物の静電気除去効果が僅かであることがある。また、フッ素系化合物の含有量がBaTiO3100重量部に対して1.0重量部超過である場合、第1セラミックスラリー内に含まれた有機物質間の相溶性が低下してフッ素系化合物の凝集が生じるなど、フッ素系化合物の分散性が低下する可能性がある。
【0068】
一方、フッ素系化合物は、分散性の低下を防止するために、Ca、Al、Li、Co、Zn、Mn、Mg、及びSの少なくとも一つを含む副成分を添加してから、第1セラミックスラリーに添加されることができる。
【0069】
フッ素系化合物の種類は特に限定する必要はない。例えば、フッ素系化合物は、下記化学式1~化学式4で表される化合物の少なくとも一つを含むことができる。
【0070】
【0071】
【0072】
【0073】
【0074】
上記化学式1~4において、a、b、c、dは互いに独立して100~1000の整数であることができる。
【0075】
誘電体パターンを形成する工程は、第2誘電体物質を含む第2セラミックスラリーをキャリアフィルム(carrier film)上に印刷及び乾燥する工程を含むことができる。第2誘電体物質は第1誘電体物質と同一でも異なっていてもよく、第2セラミックスラリーは工程上の必要に応じて有機溶剤、バインダー、及び分散剤などを含むことができる。一方、上述したように、第2誘電体物質の平均粒径は、第1誘電体物質の平均粒径よりも大きいことが好ましい。
【0076】
一方、誘電体パターンはフッ素系化合物を含まないことができるが、本発明がこれに限定されるものではない。すなわち、帯電防止特性を実現するために、誘電体パターンはカバー部パターンに比べて低い含有量のフッ素(F)を含むことができる。
【0077】
内部電極パターンを形成する工程は、誘電体パターン上に所定の厚さで内部電極用導電性粒子を含む内部電極用導電性ペーストを印刷する工程を含むことができる。内部電極用導電性ペーストの印刷方法は、スクリーン印刷法またはグラビア印刷法などを用いることができ、本発明がこれに限定されるものではない。
【0078】
本発明の一実施形態によると、カバー部パターンを形成する工程、誘電体パターンを形成する工程、及び内部電極パターンを形成する工程のいずれか一つを行う印刷段階を含むことができ、印刷段階を複数回実行して、カバー部パターン、誘電体パターン及び内部電極パターンが積層された積層体を得る積層段階を含むことができる。
【0079】
例えば、本発明の一実施形態によると、第2カバー部113を形成するためのカバー部パターンを1つ以上積層した後、カバー部パターン上に内部電極パターンと誘電体パターンを交互に積層して焼成前の容量形成部を形成することができる。次に、第1カバー部112を形成するためのカバー部パターンを1つ以上積層することでカバー部パターン、誘電体パターン及び内部電極パターンが積層された積層体を得ることができる。
【0080】
次に、積層体を焼成して本体110を得る焼成段階を含むことができる。焼成段階において焼成温度は特に制限されず、カバー部パターンは焼成後のカバー部112、113を形成し、誘電体パターンは焼成後の誘電体層111を形成し、内部電極パターンは焼成後に内部電極121、122を形成することができる。
【0081】
次に、本体110の外部に外部電極131、132を形成する段階を含むことができる。具体的には、本体110の第3面及び第4面を金属及びガラスを含む外部電極用導電性ペーストにディッピング(dipping)した後に焼成するか、金属及びガラスを含むシートを本体110の第3面及び第4面に転写した後に焼成することで第1電極層131a、132aを形成することができる。この後、第1電極層131a、132a上に電解めっき法及び/または無電解めっき法を用いて第2電極層131b、132bを形成することができる。
【0082】
(実験例)
<静電気力及び剥離力の評価>
まず、BaTiO3粉末を秤量及び解砕し、BaTiO3粉末をバインダー、有機溶剤及び分散剤と混合した。次に、Ca、Al、Li、Co、Zn、Mn、Mg、及びSの少なくとも一つを含む副成分を添加した後、帯電防止剤としてフッ素系化合物を添加して第1セラミックスラリーを調製した。次に、第1セラミックスラリーをキャリアフィルム(carrier film)上に印刷及び乾燥してサンプルパターンを形成した。
【0083】
このとき、各試験番号別にフッ素系化合物の含有量を異ならせ、下記表1に記載されたフッ素系化合物の含有量は、第1セラミックスラリーに含まれたBaTiO3100重量部を基準に測定したものである。次に、サンプルパターンをキャリアフィルムから剥離する際に発生する静電気力及び剥離力を測定して下記表1に記載した。
【0084】
静電気力はサンプルパターンをキャリアフィルムから剥離する際に発生する静電気力をKeyence SK-50センサを用いて測定し、剥離力はサンプルパターンをキャリアフィルムから90°の角度で力を加えて剥離する際にサンプルパターンに加えた力をUTM(Universal Test Machine)を介して測定した。
【0085】
【0086】
上記表1を参照すると、フッ素系化合物の含有量が増加するほど静電気力及び剥離力が減少することが確認できる。これにより、フッ素系化合物の含有量が増加するほどカバー部パターンの折り曲がり及び/またはしわ不良を防止することができることを確認した。
【0087】
また、試験番号6及び7は、フッ素系化合物の含有量がBaTiO3100重量部に対して1.0モルを超過することでフッ素系化合物の凝集が発生することを確認することができる。これにより、第1セラミックスラリーに含まれたフッ素系化合物の含有量は、BaTiO3100重量部に対して0.2重量部~1.0重量部であることが好ましいことが分かる。
【0088】
図8は、実験例及び比較例のカバー部パターンのしわ不良率を示したグラフであり、
図9は、実験例及び比較例のカバー部パターンのburnt回数を示したグラフである。ここで、カバー部パターンのしわ不良率とは、カバー部パターンが積層されたサンプルの断面を分析したときに折り曲がったり、しわが生じたまま積層されているカバー部パターンの割合を意味する。
【0089】
burnt不良回数とは、カバー部パターンを積層したときにカバー部パターンと積層副資材との間で発生した静電気によって積層副資材に焼けた(burnt)跡が発生した回数を意味する。
【0090】
ここで、カバー部パターンのしわ不良率は、実験例及び比較例のそれぞれ1,000のサンプルについて測定し、burnt回数は実験例及び比較例のそれぞれ50,000のカバー部パターンを積層した後、積層副資材に焼けた跡が発生した回数を測定した。実験例は、サンプルパターンに含まれたフッ素系化合物の含有量がBaTiO3100重量部に対して0.6重量部のサンプルパターンであり、比較例は、フッ素系化合物を含まないサンプルパターンであった。
【0091】
図8及び9を参照すると、比較例はカバー部パターンのしわ不良率が5000ppmに達し、burnt回数は合計50回に達したが、実験例の場合、カバー部パターンのしわ不良率が415ppmであり、burnt回数は1回だけであった。これにより、カバー部パターンをフッ素系化合物を含むセラミックスラリーで形成することで折り曲がり及びしわ不良を防止することができることを確認した。
【0092】
<誘電体結晶粒の平均大きさ、緻密度、靭性(toughness)及び耐湿信頼性の評価>
次に、各試験番号のサンプルパターンでカバー部を形成するが、誘電体層及び内部電極は同じ方法で形成し、積層体を焼成した後、本体の外部に内部電極と連結される外部電極を形成することで、サンプルチップを調製した。このとき、誘電体層を形成する誘電体パターンにはフッ素系化合物を添加しなかった。
【0093】
次に、各サンプルチップの第1面または第2面に配置されたカバー部の外表面を約10nm程度エッチングした後、第2方向の大きさ×第3方向の大きさ=100μm×100μmの領域に対して飛行時間型2次イオン質量分析(TOF-SIMS)によるアニオン分析を行った。このとき、全アニオンの検出強度に対するフッ素イオン(F-)の検出強度の割合を測定して下記表2に記載した。
【0094】
次に、カバー部に含まれた誘電体結晶粒の平均大きさA1を測定した。本体の第2方向の中央で切断した第1及び第3方向の断面において、カバー部の中央領域を走査電子顕微鏡(SEM)を用いて50,000倍拡大したイメージを得た後、Zootos社のZootos Programを用いて分析して得たカバー部の誘電体結晶粒径の平均値を測定した。また、誘電体層に含まれた誘電体結晶粒の平均大きさA2は、本体の第2方向の中央で切断した第1及び第3方向の断面において、容量形成部の中央領域に配置された誘電体層を走査電子顕微鏡(SEM)を用いて50,000倍拡大したイメージを得た後、Zootos社のZootos Programを用いて分析して得たカバー部の誘電体結晶粒径の平均値を測定してA1/A2値を下記表2に記載した。
【0095】
また、カバー部の中央領域を走査電子顕微鏡(SEM)を用いて撮影したイメージにおいて、ポア(pore)の個数を誘電体結晶粒との明暗差に基づいて測定した後、単位面積当たりのポア(pore)の個数を下記表2に記載した。追加的に、第1面または第2面に配置されたカバー部の外表面をビッカース硬度計を用いてカバー部の靭性(toughness)を測定した。
【0096】
【0097】
上記表2を参照すると、カバー部パターンに含まれるフッ素系化合物の含有量が増加するほど、カバー部の飛行時間型2次イオン質量分析(TOF-SIMS)によるフッ素イオン(F-)の検出強度が増加することを確認することができる。
【0098】
また、カバー部のフッ素イオン(F-)の検出強度が増加するほどカバー部に含まれた誘電体結晶粒の粒成長を促進することでA1/A2値が増加することを確認することができ、誘電体結晶粒の粒成長に応じてカバー部の靭性(toughness)が増加することを確認することができる。また、カバー部のフッ素イオン(F-)の検出強度が増加するほどカバー部の緻密度が向上し、これにより単位面積当たりのポア(pore)個数が減少することを確認することができる。
【0099】
但し、上述したように、また、フッ素系化合物の含有量が過度であると、フッ素系化合物の分散性が低下して凝集する現象が発生する可能性があるため、カバー部の飛行時間型2次イオン質量分析(TOF-SIMS)によるアニオン分析において、全アニオンの検出強度に対するフッ素イオン(F-)の検出強度の割合は、5.78%~12.56%であることが好ましい。
【0100】
以下、
図10a、
図10b、
図11a、
図11b、
図12a及び
図12bについて説明する。実験例はフッ素系化合物の含有量がBaTiO
3100重量部に対して0.6重量部であるカバー部パターンを用いたサンプルチップであり、比較例はフッ素系化合物を含まないカバー部パターンを用いたサンプルチップである。
【0101】
図10aは、実験例のカバー部の飛行時間型2次イオン質量分析(TOF-SIMS)によるアニオン分析で検出されたフッ素イオン(F
-)をマッピングしたイメージである。
図10bは、比較例のカバー部の飛行時間型2次イオン質量分析(TOF-SIMS)によるアニオン分析で検出されたフッ素イオン(F
-)をマッピングしたイメージである。
【0102】
図10a及び
図10bを参照すると、カバー部パターンにフッ素系化合物を添加する際に、カバー部の飛行時間型2次イオン質量分析(TOF-SIMS)によるアニオン分析で検出されたフッ素イオンの検出強度が増加することが確認できる。一方、
図10bはフッ素系化合物を含まないカバー部パターンでカバー部を形成したが、ノイズ(noise)によって微量のフッ素イオン(F
-)が検出されたものと予想される。
【0103】
図11aは、実験例のカバー部を走査電子顕微鏡(SEM)を用いて撮影したイメージであり、
図11bは、比較例のカバー部を走査電子顕微鏡(SEM)を用いて撮影したイメージである。
【0104】
図11a及び
図11bを参照すると、実験例のカバー部に含まれた誘電体結晶粒の平均大きさが比較例のカバー部に含まれた誘電体結晶粒の平均大きさよりも大きいことを確認することができ、実験例は比較例に比べて単位面積当たりのポア(pore)個数が少ないことを確認することができる。これにより、カバー部に含まれたフッ素(F)は誘電体結晶粒の粒成長を促進し、カバー部の緻密度を向上させることができることを確認することができる。
【0105】
図12aは、実験例の耐湿信頼性の評価結果を示したグラフであり、
図12bは、比較例の耐湿信頼性の評価結果を示したグラフである。
図12a及び
図12bは、実験例及び比較例のサンプルのそれぞれ400に対して温度85℃、湿度85%、1.5Vrの電圧を12時間印加した後、絶縁抵抗値の変化を測定したものである。
【0106】
図12a及び
図12bを参照すると、実験例の場合、絶縁抵抗が10
7Ω以下に落ちたサンプルは存在しなかったが、比較例の場合、絶縁抵抗が10
7Ω以下に落ちたサンプルが多数存在した。これにより、カバー部がフッ素(F)を含むことで積層型電子部品の耐湿信頼性を改善することができることが確認された。
【0107】
本発明は上述した実施形態及び添付された図面によって限定されるものではなく、添付された特許請求の範囲によって限定する。したがって、特許請求の範囲に記載された本発明の技術的思想から逸脱しない範囲内で、当技術分野の通常の知識を有する者によって多様な形態の置換、変形及び変更が可能であり、これもまた本発明の範囲に属するといえる。
【0108】
また、「一実施形態」という表現は、互いに同一の実施形態を意味するものではなく、それぞれ互いに異なる固有の特徴を強調して説明するために提供されたものである。しかしながら、上記提示された一実施形態は、他の一実施形態の特徴と組み合わせて実現されることを排除しない。例えば、特定の一実施形態において説明された事項が他の一実施形態に説明されていなくても、他の一実施形態においてその事項と反対または矛盾する説明がない限り、他の一実施形態に関連する説明として理解することができる。
【0109】
第1、第2などの表現は、ある構成要素と他の構成要素とを区分付けるために用いるものであり、該当構成要素の順序及び/または重要度などを限定しない。場合によっては、権利範囲を逸脱することなく、第1構成要素は第2構成要素と命名することもでき、同様に第2構成要素を第1構成要素と命名することもできる。
【符号の説明】
【0110】
100 積層型電子部品
110 本体
111 誘電体層
112、113 カバー部
114、115 マージン部
121、122 内部電極
131、132 外部電極
131a、132a 第1電極層
131b、132b 第2電極層
G1、G2 誘電体結晶粒
CP カバー部パターン
CF キャリアフィルム