(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024095929
(43)【公開日】2024-07-11
(54)【発明の名称】複合銅箔の製造方法
(51)【国際特許分類】
H01M 4/1395 20100101AFI20240704BHJP
H01M 4/66 20060101ALI20240704BHJP
H01M 4/134 20100101ALI20240704BHJP
H01M 4/36 20060101ALI20240704BHJP
H01M 4/38 20060101ALI20240704BHJP
【FI】
H01M4/1395
H01M4/66 A
H01M4/134
H01M4/36 C
H01M4/38 Z
【審査請求】有
【請求項の数】10
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023080277
(22)【出願日】2023-05-15
(31)【優先権主張番号】111150787
(32)【優先日】2022-12-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】TW
(71)【出願人】
【識別番号】501296612
【氏名又は名称】南亞塑膠工業股▲分▼有限公司
【氏名又は名称原語表記】NAN YA PLASTICS CORPORATION
(74)【代理人】
【識別番号】100204490
【弁理士】
【氏名又は名称】三上 葉子
(72)【発明者】
【氏名】廖 ▲徳▼超
(72)【発明者】
【氏名】曹 俊哲
(72)【発明者】
【氏名】廖 仁▲ユ▼
【テーマコード(参考)】
5H017
5H050
【Fターム(参考)】
5H017AA04
5H017AS02
5H017BB08
5H017BB12
5H017CC01
5H017DD05
5H017DD06
5H017EE01
5H017HH01
5H017HH03
5H050AA15
5H050BA16
5H050CB12
5H050DA03
5H050DA04
5H050DA07
5H050FA18
5H050GA10
5H050GA22
5H050HA01
5H050HA04
(57)【要約】 (修正有)
【課題】リチウムデンドライトの形成による安全上の問題を回避でき、軽量、高グラム容量、高エネルギー密度の効果を有する、複合銅箔の製造方法を提供する。
【解決手段】複合銅箔の製造方法は以下の工程を含む。互いに反対側の第1の表面及び第2の表面を有する銅箔を提供し、表面処理溶液を用いて表面処理を行い、前記銅箔の前記第1の表面に前記第1の表面処理層を形成し、前記第1の表面処理層上に第1のリチウム金属層を形成する。複合銅箔の別の製造方法は、以下の工程を含む。互いに反対側の第1の表面及び第2の表面を有する銅箔を提供する。導電性材料を準備する。導電性材料に充填材、接着材及び溶媒を加えて、スラリーを形成する。スラリーを銅箔の第1の表面に塗布して、第1の導電層を形成する。
【選択図】
図1C
【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに反対側の第1の表面及び第2の表面を有する銅箔を提供することと、
表面処理溶液を用いて表面処理を行い、前記銅箔の前記第1の表面に第1の表面処理層を形成することと、
前記第1の表面処理層上に第1のリチウム金属層を形成することと、を含む、複合銅箔の製造方法。
【請求項2】
前記表面処理溶液が、ポリフッ化ビニリデン、亜鉛、クロム、ニッケル、スズ、硫黄、グラフェン、シラン、又はそれらの組み合わせを含む、請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
前記リチウム金属層の厚さが1ミクロンから30ミクロンである、請求項1に記載の製造方法。
【請求項4】
前記表面処理溶液を用いて前記表面処理を行い、前記銅箔の前記第2の表面に第2の表面処理層を形成することと、
前記第2の表面処理層上に第2のリチウム金属層を形成することと、をさらに含む、請求項1に記載の製造方法。
【請求項5】
互いに反対側の第1の表面及び第2の表面を有する銅箔を提供することと、
導電性材料を準備することと、
前記導電性材料に充填材、接着材及び溶媒を加えてスラリーを形成することと、
前記スラリーを前記銅箔の前記第1の表面に塗布して、第1の導電層を形成することと、を含む、複合銅箔の製造方法。
【請求項6】
前記導電性材料の調製方法は、リチウム金属粉末の表面にパッシベーション層を形成して前記導電性材料を得ることを含む、請求項5に記載の製造方法。
【請求項7】
前記パッシベーション層の材料は、シリコン、フッ素、又はそれらの組み合わせを含む、請求項5に記載の製造方法。
【請求項8】
前記スラリーの全重量を基準として、前記導電性材料の含有量が、5重量%~20重量%であり、前記充填材材料の含有量が、1重量%~10重量%であり、前記接着剤の含有量が、5重量%~20重量%であり、前記溶媒の含有量が、60重量%~89重量%である、請求項5に記載の製造方法。
【請求項9】
前記第1の導電層の厚さが、1ミクロンから30ミクロンである、請求項5に記載の製造方法。
【請求項10】
前記スラリーを前記銅箔の第2の表面に塗布して、第2の導電層を形成することをさらに含む、請求項5に記載の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複合銅箔の製造方法に関し、特に、より薄い厚さの複合銅箔を製造することができる複合銅箔の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
電解質の固体化に加えて、現在の固体電池の開発上の課題は、高密度の固体電解質が電池のグラム容量に影響を与えることが多く、それが電池のエネルギー密度の低下につながることである。したがって、軽量でグラム容量が高く、エネルギー密度の高い固体電池の開発が急務となっている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明は、より薄い厚さの複合銅箔を製造することができる複合銅箔の製造方法を提供し、この複合銅箔を負極として使用する固体電池に、リチウムデンドライトとより高いエネルギー密度(又はグラム容量)の形成を回避することによる安全性の効果を持たせることができる。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明の複合銅箔の製造方法は、以下の工程を含む。互いに反対側の第1の表面及び第2の表面を有する銅箔が提供される。表面処理溶液を用いて表面処理を行い、銅箔の第1の表面に第1の表面処理層を形成する。第1の表面処理層上に第1のリチウム金属層を形成する。
【0005】
本発明の一実施形態において、表面処理溶液は、ポリフッ化ビニリデン、亜鉛、クロム、ニッケル、スズ、硫黄、グラフェン、シラン、又はそれらの組み合わせを含む。
【0006】
本発明の一実施形態において、リチウム金属層の厚さは1ミクロンから30ミクロンである。
【0007】
本発明の一実施形態において、上記の製造方法は、以下の工程をさらに含む。表面処理溶液を用いて表面処理を行い、銅箔の第2の表面に第2の表面処理層を形成する。第2の表面処理層上に第2のリチウム金属層を形成する。
【0008】
本発明の複合銅箔の製造方法は、以下の工程を含む。互いに反対側の第1の表面及び第2の表面を有する銅箔が提供される。導電性材料を準備する。導電性材料に充填材、接着材及び溶媒を加えてスラリーを形成する。スラリーを銅箔の第1の表面に塗布して第1の導電層を形成する。
【0009】
本発明の一実施形態において、上記導電性材料の製造方法は、リチウム金属粉末の表面にパッシベーション層を形成して導電性材料を得ることを含む。
【0010】
本発明の一実施形態において、パッシベーション層の材料は、シリコン、フッ素、又はそれらの組み合わせを含む。
【0011】
本発明の一実施形態において、上記スラリーの全重量に基づいて、導電性材料の含有量は5重量%~20重量%であり、充填材の含有量は1重量%~10重量%であり、接着剤の含有量は5重量%~20重量%であり、溶媒の含有量は60重量%~89重量%である。
【0012】
本発明の一実施形態において、第1の導電層の厚さは1ミクロンから30ミクロンである。
【0013】
本発明の一実施形態において、上記の製造方法は、スラリーを銅箔の第2の表面上に塗布して、第2の導電層を形成する工程をさらに含む。
【発明の効果】
【0014】
以上より、本発明の一実施形態に係る複合銅箔の製造方法では、銅箔に表面処理を施すこと(すなわち、銅箔に親液性を有する第1の表面処理層を形成すること)により、 又は、リチウム金属粉末を充填材、接着材及び溶媒と混合することにより、スラリーを形成し、銅箔上にリチウム金属(すなわち、第1のリチウム金属層又は第1の導電層)を形成することができる。さらに、銅箔上にリチウム金属を形成してより薄い複合銅箔を得ることにより、銅箔上に形成されたリチウム金属は、均一で特定の形態(特定の格子配列など)及びより薄い厚さを有することができ、これにより、複合銅箔を負極として使用する固体電池は、リチウムデンドライトの形成による安全上の問題を回避でき、軽量、高グラム容量、高エネルギー密度の効果を有する。
【0015】
本発明の前述の特徴及び利点をより良く理解できるよう、実施形態を以下に詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1A】本発明の第1の実施形態に係る複合銅箔の製造方法の概略断面図である。
【
図1B】本発明の第1の実施形態に係る複合銅箔の製造方法の概略断面図である。
【
図1C】本発明の第1の実施形態に係る複合銅箔の製造方法の概略断面図である。
【
図2】本発明の第2の実施形態に係る複合銅箔の製造方法の概略断面図である。
【
図3】本発明の第3の実施形態に係る複合銅箔の製造方法の概略断面図である。
【
図4】本発明の第4の実施形態に係る複合銅箔の製造方法の概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
図1A~
図1Cは、本発明の第1の実施形態に係る複合銅箔の製造方法の概略断面図である。本実施形態において、複合銅箔100の製造方法は、以下の工程を含んでも良い。
【0018】
図1Aを参照すると、銅箔110が提供される。銅箔110は、互いに対向する第1の表面110a及び第2の表面110bを有する。銅箔110の厚さT1は、例えば、3ミクロン(μm)から20ミクロンの範囲であるが、これに限定されない。
【0019】
次に、
図1Bを参照すると、表面処理溶液を用いて表面処理を行い、銅箔110の第1の表面110aに第1の表面処理層120を形成する。第1の表面処理層120は銅箔110と接触しても良い。第1の表面処理層120は、親和性を有する。第1の表面処理層120の厚さT2は、例えば、1ミクロン未満であるが、これに限定されない。本実施形態において、表面処理溶液は、ポリフッ化ビニリデン、亜鉛、クロム、ニッケル、スズ、硫黄、グラフェン、シラン、 又はそれらの組み合わせを含んでも良いが、これらに限定されない。本実施形態において、表面処理方法は、例えば、リチウム化前の表面処理方法であり、例えば次の工程を含む。まず、まず、銅箔110を表面処理溶液に浸漬するか、銅箔110の第1の表面110aに表面処理溶液を適用した後、乾燥させ、結合と表面張力の発生により、親液性を有する第1の表面処理層120を形成する。
【0020】
次に、
図1Cを参照すると、第1のリチウム金属層130が第1の表面処理層120上に形成され、複合銅箔100が得られる。第1のリチウム金属層130及び銅箔110は、それぞれ第1の表面処理層120の両側に位置する。第1のリチウム金属層130は、第1の表面処理層120と接触しても良い。第1のリチウム金属層130の厚さT3は、例えば、1ミクロンから30ミクロンの範囲であるが、これに限定されない。本実施形態において、第1の表面処理層120上に第1のリチウム金属層130を形成する方法は、例えば、以下の工程を含む。第1の表面処理層120の表面に溶融リチウム金属を塗布するか、又は、第1の表面処理層120の表面にリチウム金属を堆積させる。
【0021】
一般に、リチウム金属と銅箔との間の密着性が悪いため、リチウム金属層を銅箔上に直接形成することはできない。しかしながら、本実施形態の複合銅箔の製造方法では、銅箔100に表面処理を施す(すなわち、銅箔100に親リチウム性を有する第1の表面処理層120を形成する)ことにより、リチウム(すなわち、 第1のリチウム金属層130)を銅箔100上に形成することができる。
【0022】
本実施形態の複合銅箔100は、固体電池に適用することができる。例えば、複合銅箔100は、固体電池の負極として使用することができるが、これに限定されない。さらに、より厚い銅箔又はグラフェンを固体電池の負極として使用すると、固体電池はグラム容量及びエネルギー密度が低下するという問題が生じるが、本実施形態では、銅箔100上にリチウム金属を形成することにより、 より薄い複合銅箔100を得る(例えば、複合銅箔100の厚さは、一般に、銅箔又はグラフェンを使用する固体電池の負極の厚さの1/5から1/10である)ことができ、負極として複合銅箔100を使用する固体電池は、軽量、高グラム容量、及び高エネルギー密度の効果を有することができる。
【0023】
さらに、リチウムデンドライトの生成により安全性が脅かされやすい固体電池の負極として、より厚いリチウム金属のみが使用される一般的な状況と比較して、銅箔100上にリチウム金属を形成することにより、 本実施形態では、銅箔100上に形成されたリチウム金属は、均一で特定の形態(特定の格子配列など)及び比較的薄い厚さ(1ミクロンから30ミクロンなど)を有し得るので、固体電池に本実施形態の複合銅箔100を負極として使用することにより、リチウムデンドライトの形成による安全上の問題を回避できる。
【0024】
例示のために、他の実施形態を以下に列挙する。ここで、以下の実施形態は、前述の実施形態の符号及び内容の一部を使用し、同じ符号は、同一又は類似の構成要素を示すために使用され、同一の技術的内容の説明は省略されることに留意されたい。省略された部分の説明については、前述の実施形態を参照することができ、以下の実施形態では繰り返されない。
【0025】
図2は、本発明の第2の実施形態に係る複合銅箔の製造方法の概略断面図である。
図2は、
図1Aから
図1Cに示された工程の続きである。
図2と
図1Aから
図1Cの実施形態における同一又は類似の構成要素は、同一の材料又は方法により製造することができるため、以下の説明では、2つの実施形態における同一及び類似の以下の説明は繰り返さず、主に2つの実施形態間の相違点について説明する。
【0026】
図1C及び
図2を参照すると、
図1Cで複合銅箔100を形成した後、
図1Bで使用された表面処理溶液を使用して、銅箔110の第2の面110bに表面処理を行い、銅箔110の第2の表面110bに第2の表面処理層140を形成する。第2の表面処理層140の厚さT2は、 例えば、1ミクロン未満であるが、これに限定されない。次に、
図1Cと同様に、第2の表面処理層140上に第2のリチウム金属層150を形成して、本実施形態の複合銅箔100aを得る。銅箔110及び第2のリチウム金属層150は、第2の表面処理層140の両側にそれぞれ位置しても良い。第2のリチウム金属層150の厚さT3は、例えば、1ミクロンから30ミクロンの範囲であるが、これに限定されない。
【0027】
いくつかの実施形態において、
図2の複合銅箔100aの製造方法は、以下の工程を採用しても良い。まず、銅箔110を提供する。次に、表面処理溶液を用いて銅箔110の第1の表面110a及び第2の表面110bに表面処理を行い、銅箔110の第1の表面110a及び第2の表面110bにそれぞれ第1の表面処理層120及び第2の表面処理層140を形成する。次に、第1の表面処理層120上に第1のリチウム金属層130を形成し、第2の表面処理層140上に第2のリチウム金属層150を形成して、複合銅箔100aを得る。
【0028】
図3は、本発明の第3の実施形態に係る複合銅箔の製造方法の概略断面図である。
図3は、
図1Aの続きであり、
図1Bから
図1Cの工程を置換する。
図3と
図1Aから
図1Cの実施形態における同一又は類似の構成要素は、同一の材料又は方法により製造することができるため、以下の説明では、2つの実施形態における同一及び類似の以下の説明は繰り返さず、主に2つの実施形態間の相違点について説明する。
【0029】
図3を参照すると、
図1Cの複合銅箔100とは異なり、本実施形態の複合銅箔100bは、
図1Cの表面処理層を有しておらず、本実施形態の複合銅箔100bでは、第1の導電層160が、
図1Cの第1のリチウム金属層130と置換される。
【0030】
具体的には、本実施形態の複合銅箔100bの製造方法は、以下の工程を含んでもよい。
【0031】
【0032】
次に、導電性材料を準備する。導電性材料は、リチウム金属粉末と、リチウム金属粉末の表面に配置されたパッシベーション層とを含む。本実施形態において、リチウム金属粉末の表面をパッシベーション層で被覆することにより、リチウム金属粉末が大気と反応することを防止し得る。本実施形態において、導電性材料を調製するための方法は、以下の工程を含んでも良い。導電性材料を得るために、リチウム金属粉末の表面上にパッシベーション層を形成する。パッシベーション層の材料は、シリコン、フッ素、又はそれらの組み合わせを含んでも良いが、これらに限定されない。
【0033】
次に、導電性材料に充填材、接着材及び溶媒を加えて、スラリーを形成する。充填材は、シラン、フッ素化剤(例えば、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリイソブチレン(PIB)、ポリイミド(PI)、N-フルオロビスベンゼンスルホンアミド(NSFI)又は2,2-ジフルオロ-1,3-ジメチルイミダゾリン(DFI)、又はそれらの組み合わせを含んでも良いが、これに限定されない。接着材は、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、グラフェン、カーボンナノチューブ、スズ、硫黄、亜鉛、クロム、ニッケル、又はそれらの組み合わせを含んでも良いが、これらに限定されない。溶媒は、N-メチルピロリドン(NMP)、酢酸エチル(EAc)、アセトン、ヘキサン、ジメチルアセトアミド(DMAc)、ジメチルホルムアミド(DMF)、ブタノン(MEK)、又はそれらの組み合わせを含んでも良いが、これらに限定されない。
【0034】
本実施形態では、スラリーの全重量に基づいて、導電性材料の含有量は、5重量%から20重量%、好ましくは5重量%から15重量%である。詳細には、導電性材料の含有量が5重量%未満であると、スラリーの導電性が低下する。導電性材料の含有量が15重量%を超えると、スラリーの接着性及び分散性が低下する。
【0035】
本実施形態において、スラリーの全重量に基づいて、充填材の含有量は、1重量%から10重量%、好ましくは2重量%から5重量%である。具体的には、充填材の含有量が2重量%未満であると、スラリー中に無効な成分が多くなりすぎる。充填材の含有量が5重量%を超えると、充填材の分散効果が発揮されない。
【0036】
本実施形態において、スラリーの全重量に基づいて、接着材の含有量は、5重量%から20重量%、好ましくは15重量%から20重量%である。具体的には、接着剤の含有量が15重量%未満であると、スラリーの接着性が不十分となる。接着剤の含有量が20重量%を超えると、スラリーの導電性が低下する。
【0037】
本実施形態において、スラリーの全重量に基づいて、溶媒の含有量は、60重量%から89重量%、好ましくは70重量%から80重量%である。詳細には、溶媒の含有量が70重量%未満であると、スラリーの溶解性が不十分であり、スラリーが粘稠すぎて加工が困難になる。溶媒の含有量が80重量%を超えると、スラリーが薄すぎて塗布が困難になる。
【0038】
次に、
図3を参照すると、銅箔110の第1の表面110aにスラリーを塗布して第1の導電層160を形成し、複合銅箔100bを得る。第1の導電層160の厚さT4は、例えば、1ミクロンから30ミクロンの範囲であるが、これに限定されない。
【0039】
本実施形態の複合銅箔の製造方法では、リチウム金属粉末の表面にパッシベーション層を形成し、リチウム金属粉末を充填材、接着材及び溶媒と混合してスラリーを形成することにより、 第1の導電層160を銅箔100上に直接形成することができる。
【0040】
図4は、本発明の第4の実施形態に係る複合銅箔の製造方法の概略断面図である。
図4は、
図3の工程の続きである。
図4と
図3の実施形態における同一又は類似の構成要素は、同一の材料又は方法により製造することができるため、以下の説明では、2つの実施形態における同一及び類似の以下の説明は繰り返さず、主に2つの実施形態間の相違点について説明する。
【0041】
図3及び
図4を参照すると、
図3で複合銅箔100bを形成した後、
図3で使用されたスラリーを使用して、銅箔110の第2の表面110bに塗布して第2の導電層170を形成し、本実施形態の複合銅箔100cを得た。第1の導電層160及び第2導電層170は、銅箔110の両側にそれぞれ位置することができる。第2の導電層170の厚さT4は、例えば、1ミクロンから30ミクロンの範囲であるが、これに限定されない。
【0042】
いくつかの実施形態において、
図4の複合銅箔100cの製造方法は、以下の工程を採用してもよい。まず、銅箔110を提供する。次に、スラリーを銅箔110の第1の表面110a及び第2の表面110bに塗布して第1の導電層160及び第2導電層170を同時に形成し、本実施形態の複合銅箔100cを得る。
【0043】
以下、実施例により、上記複合銅箔の製造方法により製造された複合銅箔を固体電池の負極として使用した場合、リチウムデンドライトの形成を回避することによる安全性の効果、及びより高いエネルギー密度(又はグラム容量)の実現を実証する。しかしながら、以下の実施例は、本発明を限定することを意図するものではない。
【0044】
実施例1
【0045】
フッ素化剤(すなわち、充填材)、ポリフッ化ビニリデン(すなわち、接着材)、アセトン、及びジメチルアセトアミド(すなわち、溶媒)をリチウム粉末(すなわち、導電性材料)に加え、均一に混合した後、スラリーを形成した。リチウム粉末は、リチウム金属粉末と、リチウム金属粉末の表面に配置されたパッシベーション層とを含み、リチウム粉末の全重量を100%として、リチウム金属粉末の含有量は約97~98%であった。また、スラリーの全重量を100%として、リチウム粉末、フッ素化剤、ポリフッ化ビニリデン、アセトン、ジメチルアセトアミドの含有量は、10%、2%、10%、8%、70%であった。次に、スラリーを銅箔上に塗布して、厚さ5ミクロンのリチウム層(すなわち、第1の導電層)を形成し、複合銅箔を得た。
【0046】
実施例2
【0047】
実施例2の複合銅箔は、実施例1と同じ工程で調製されたが、差異は使用した成分の含有量にある。実施例2で使用した成分含有量を表1に記録した。
【0048】
比較例1から比較例4
【0049】
比較例1~比較例4の複合銅箔は、実施例1と同様の手順で作製したものであり、各比較例で使用した成分の含有量が異なる。比較例1~比較例4で使用した成分含有量を表1に記録した。
【0050】
上記の実施例及び比較例によって製造された複合銅箔を負極として使用し、NMC622組立フル電池(約170mAh/g)に適用した後、容量維持率(CR)%、クーロン効率(CE)%及びリチウムデンドライトを200サイクル(1C)後に測定し、測定結果を表1に記録した。
【0051】
【0052】
表1の結果から、リチウム粉末の含有量が過剰である場合、リチウム層の厚さが増加し、リチウムデンドライトが生成され、容量維持率が低下することが分かる。フッ素化剤の含有量が過剰であると、リチウム層の厚さが増加し、リチウムデンドライトが生成され、容量維持率が低下することが分かる。ポリフッ化ビニリデンの含有量が過剰であると、リチウム層の厚さが増加し、リチウムデンドライトが生成され、容量維持率が低下することが分かる。アセトンとジメチルアセトアミドの含有量が少なすぎると、リチウム層の厚さが増加し、リチウムデンドライトが生成され、容量維持率が低下することが分かる。
【0053】
まとめると、本発明の一実施形態に係る複合銅箔の製造方法では、銅箔に表面処理を施すこと(すなわち、銅箔に親液性を有する第1の表面処理層を形成すること)により、又は、リチウム金属粉末を充填材、接着材及び溶媒と混合することにより、スラリーを形成し、銅箔上にリチウム金属(すなわち、第1のリチウム金属層又は第1の導電層)を形成することができる。さらに、銅箔上にリチウム金属を形成してより薄い複合銅箔を得ることにより、銅箔上に形成されたリチウム金属は、均一で特定の形態(特定の格子配列など)及びより薄い厚さを有し得る。これにより、複合銅箔を負極として使用する固体電池は、リチウムデンドライトの形成による安全上の問題を回避でき、軽量、高グラム容量、高エネルギー密度の効果を有する。
【0054】
以上、本発明を実施形態を参照して説明したが、実施形態は本発明を限定するものではない。当業者は、本発明の精神及び範囲から逸脱することなく、変更及び修正を行うことができる。したがって、本発明の保護範囲は、特許請求の範囲によって定義されるべきである。
【産業上の利用可能性】
【0055】
本発明により、本発明の複合銅箔及びその製造方法は、固体電池の負極に適用することができる。
【符号の説明】
【0056】
100、100a、100b、100c: 複合銅箔
110: 銅箔
110a: 第1の表面
110b: 第2の面
120: 第1の表面処理層
130: 第1のリチウム金属層
140: 第2の表面処理層
150: 第2のリチウム金属層
160: 第1の導電層
170: 第2の導電層
T1、T2、T3、T4: 厚さ
【外国語明細書】