IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 南亞塑膠工業股▲分▼有限公司の特許一覧

特開2024-95930リチウム電池用正極材料、その作製方法、およびリチウム電池
<>
  • 特開-リチウム電池用正極材料、その作製方法、およびリチウム電池 図1
  • 特開-リチウム電池用正極材料、その作製方法、およびリチウム電池 図2
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024095930
(43)【公開日】2024-07-11
(54)【発明の名称】リチウム電池用正極材料、その作製方法、およびリチウム電池
(51)【国際特許分類】
   H01M 4/525 20100101AFI20240704BHJP
   H01M 4/505 20100101ALI20240704BHJP
   H01M 4/36 20060101ALI20240704BHJP
   C01G 53/00 20060101ALI20240704BHJP
【FI】
H01M4/525
H01M4/505
H01M4/36 C
C01G53/00 A
【審査請求】有
【請求項の数】10
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023088371
(22)【出願日】2023-05-30
(31)【優先権主張番号】111150792
(32)【優先日】2022-12-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】TW
(71)【出願人】
【識別番号】501296612
【氏名又は名称】南亞塑膠工業股▲分▼有限公司
【氏名又は名称原語表記】NAN YA PLASTICS CORPORATION
(74)【代理人】
【識別番号】100204490
【弁理士】
【氏名又は名称】三上 葉子
(72)【発明者】
【氏名】廖 ▲徳▼超
(72)【発明者】
【氏名】鄭 維昇
(72)【発明者】
【氏名】張 嘉珊
【テーマコード(参考)】
4G048
5H050
【Fターム(参考)】
4G048AA04
4G048AA08
4G048AB02
4G048AB05
4G048AC06
4G048AD04
4G048AE05
4G048AE08
5H050AA08
5H050BA16
5H050BA17
5H050CA08
5H050CA09
5H050CB12
5H050EA08
5H050FA17
5H050FA18
5H050GA02
5H050GA03
5H050GA27
5H050HA02
5H050HA05
5H050HA14
(57)【要約】      (修正有)
【課題】リチウム電池用正極材料、それを含むリチウム電池、および正極材料の作製方法を提供する。
【解決手段】リチウム電池用正極材料は、窒素ドープ炭素質材料によって改質されたタングステンドープリチウムニッケルマンガン酸化物を含む。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
窒素ドープ炭素質材料により改質されたタングステンドープリチウムニッケルマンガン酸化物を含むリチウム電池用正極材料。
【請求項2】
前記窒素ドープ炭素質材料により改質された前記タングステンドープリチウムニッケルマンガン酸化物中の窒素ドープ炭素質材料とリチウムニッケルマンガン酸化物の重量比が、1:9~1:2である請求項1に記載のリチウム電池用正極材料。
【請求項3】
前記窒素ドープ炭素質材料により改質された前記タングステンドープリチウムニッケルマンガン酸化物の平均粒子径が、1μm~100μmである請求項1に記載のリチウム電池用正極材料。
【請求項4】
前記窒素ドープ炭素質材料により改質された前記タングステンドープリチウムニッケルマンガン酸化物中のニッケルおよびマンガンのモル数の合計とリチウムのモル数の比率が、1:1~1:4である請求項1に記載のリチウム電池用正極材料。
【請求項5】
前記窒素ドープ炭素質材料により改質された前記タングステンドープリチウムニッケルマンガン酸化物中のニッケルおよびマンガンのモル数の合計とタングステンのモル数の比率が、1:0.5である請求項1に記載のリチウム電池用正極材料。
【請求項6】
a)共沈法により、ニッケル源およびマンガン源からニッケルマンガン酸化物前駆体を作製することと、
b)前記共沈法により、タングステン源、リチウム源、および前記ニッケルマンガン酸化物前駆体からタングステンリチウムニッケルマンガン酸化物前駆体を作製することと、
c)400℃~1000℃の温度で前記タングステンリチウムニッケルマンガン酸化物前駆体を焼結することにより、タングステンドープリチウムニッケルマンガン酸化物を作製することと、
d)前記タングステンドープリチウムニッケルマンガン酸化物を窒素ドープ炭素質材料で改質することと、
を含むリチウム電池用正極材料の作製方法。
【請求項7】
前記タングステンドープリチウムニッケルマンガン酸化物を前記窒素ドープ炭素質材料で改質する前記ステップが、
1)前記窒素含有化合物および前記タングステンドープリチウムニッケルマンガン酸化物を溶媒中に分散させて、反応溶液を作製することと、
2)炭酸ガス雰囲気下で前記反応溶液を40~80℃の温度および1000~1500psiの圧力にさらすことにより、中間生成物を作製することと、
3)不活性ガス雰囲気下で前記中間生成物を400~800℃で焼成することと、
ことを含む請求項6に記載のリチウム電池用正極材料の作製方法。
【請求項8】
前記窒素含有化合物が、ピロール、フェニルピロール、ピリジン、グラファイト状窒化炭素、エチレンジアミン、プロピレンジアミン、ベンゼンジアミン、メラミン、およびアニリンのうちの1つまたはそれ以上を含む請求項7に記載のリチウム電池用正極材料の作製方法。
【請求項9】
前記タングステン源が、メタアンモニウムタングステン酸塩、六塩化タングステン、タングステン酸ナトリウム、アンモニウムタングステン酸塩、二硫化タングステン、またはそれらの混合物を含む請求項6に記載のリチウム電池用正極材料の作製方法。
【請求項10】
請求項1の前記リチウム電池用正極材料を含むリチウム電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リチウム電池用正極材料、それを含むリチウム電池、および正極材料の作製方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
リチウムニッケルマンガン酸化物材料は、三次元大トンネル構造および優れた導電性を有し、リチウムイオンの拡散に非常に適しているため、リチウム電池用正極材料として使用されることが試みられてきた。しかし、現在市場に出回っているリチウムニッケルマンガン酸化物材料は、比容量が比較的低いため、満足できるものではない。したがって、比容量を改善した正極材料を開発することが、依然として本技術分野の研究の焦点となっている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明は、比容量を改善した正極材料を開発することを目的とする。
【0004】
本発明は、リチウムニッケルマンガン酸化物材料にタングステンをドープし、タングステンドープリチウムニッケルマンガン酸化物材料の表面を窒素ドープ炭素質材料で改質することによって比容量を改善したリチウム電池を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、窒素ドープ炭素質材料により改質されたタングステンドープリチウムニッケルマンガン酸化物を含むリチウム電池用正極材料を提供する。
【0006】
本発明の1つの実施形態において、窒素ドープ炭素質材料により改質されたタングステンドープリチウムニッケルマンガン酸化物中の窒素ドープ炭素質材料とリチウムニッケルマンガン酸化物の重量比は、1:9~1:2である。
【0007】
本発明の1つの実施形態において、窒素ドープ炭素質材料により改質されたタングステンドープリチウムニッケルマンガン酸化物の平均粒子径は、1μm~100μmである。
【0008】
本発明の1つの実施形態において、窒素ドープ炭素質材料により改質されたタングステンドープリチウムニッケルマンガン酸化物中のニッケルおよびマンガンのモル数の合計とリチウムのモル数の比率は、1:1~1:4である。
【0009】
本発明の1つの実施形態において、窒素ドープ炭素質材料により改質されたタングステンドープリチウムニッケルマンガン酸化物中のニッケルおよびマンガンのモル数の合計とタングステンのモル数の比率は、1:0.5である。
【0010】
本発明は、
1)共沈法により、ニッケル源およびマンガン源からニッケルマンガン酸化物前駆体を作製することと、
2)共沈法により、タングステン源、リチウム源、およびニッケルマンガン酸化物前駆体からタングステンリチウムニッケルマンガン酸化物前駆体を作製することと、
3)高温でタングステンリチウムニッケルマンガン酸化物前駆体を焼結することにより、タングステンドープリチウムニッケルマンガン酸化物を作製することと、
4)タングステンドープリチウムニッケルマンガン酸化物を窒素ドープ炭素質材料で改質することと、
を含むリチウム電池用正極材料の作製方法を提供する。
【0011】
本発明の1つの実施形態において、タングステンドープリチウムニッケルマンガン酸化物を窒素ドープ炭素質材料で改質するステップは、
1)窒素含有化合物とタングステンドープリチウムニッケルマンガン酸化物を溶媒中に分散させて、反応溶液を作製することと、
2)炭酸ガス雰囲気下で反応溶液を40~80℃の温度および1000~1500psiの圧力にさらすことにより、中間生成物を作製することと、
3)不活性ガス雰囲気下で中間生成物を400~800℃で焼成することと、
を含む。
【0012】
本発明の1つの実施形態において、窒素含有化合物は、ピロール、フェニルピロール、ピリジン、グラファイト状窒化炭素、エチレンジアミン、プロピレンジアミン、ベンゼンジアミン、メラミン、およびアニリンのうちの1つまたはそれ以上を含む。
【0013】
本発明の1つの実施形態において、タングステン源は、アンモニウムメタタングステート、タングステンヘキサクロリド、ナトリウムタングステート、アンモニウムタングステート、タングステンジサルファイド、またはそれらの混合物を含む。
【0014】
本発明は、上述したリチウム電池用正極材料を含むリチウム電池を提供する。
【発明の効果】
【0015】
本発明に係るリチウム電池用正極材料は、リチウムニッケルマンガン酸化物の格子にタングステンを添加し、タングステンドープリチウムニッケルマンガン酸化物の表面を窒素ドープ炭素質材料で改質することによって、比容量が改善され、容量損失が低減される。
【0016】
本発明の特徴および利点をより理解しやすくするために、下記の実施形態を引用し、詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】25℃における実施例1および比較例3の電池寿命を示すグラフである。
図2】55℃における実施例1および比較例3の電池寿命を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施形態について詳細に説明する。しかしながら、これらの実施形態は、例示的なものであり、発明を限定するものではない。
【0019】
本明細書において、「ある数値から別の数値」で表示した範囲は、明細書において当該範囲内の全ての数値を列挙することを回避するための概要的表示方法である。したがって、特定値範囲の記録、この数値範囲内の任意の数、およびその数値範囲内の任意の数によって境界付けられた任意の小さな数値範囲は、明細書においてこのような任意の数値およびこのような比較的小さな数値範囲が明記されていることと同じである。
【0020】
本発明に係るリチウム電池の比容量は、窒素ドープ炭素質材料により改質されたタングステンドープリチウムニッケルマンガン酸化物をリチウム電池用正極材料として使用することによって改善される。
【0021】
本発明に係る窒素ドープ炭素質材料により改質されたタングステンドープリチウムニッケルマンガン酸化物の作製方法は、
1)共沈法により、ニッケル源およびマンガン源からニッケルマンガン酸化物前駆体を作製することと、
2)共沈法により、タングステン源、リチウム源、およびニッケルマンガン酸化物前駆体からタングステンリチウムニッケルマンガン酸化物前駆体を作製することと、
3)高温でタングステンリチウムニッケルマンガン酸化物前駆体を焼結することにより、タングステンドープリチウムニッケルマンガン酸化物を作製することと、
4)タングステンドープリチウムニッケルマンガン酸化物を窒素ドープ炭素質材料で改質することと、
を含む。
【0022】
以下、本発明の窒素ドープ炭素質材料により改質されたタングステンドープリチウムニッケルマンガン酸化物の作製方法の各ステップについて説明する。
ニッケルマンガン酸化物前駆体の作製
【0023】
本発明の1つの実施形態において、ニッケルマンガン酸化物前駆体は、共沈法によって作製することができる。例えば、共沈剤を用いてニッケル源とマンガン源の混合水溶液(ニッケルとマンガンの原子比は、実質的に、1:3である)を300℃~500℃の温度で9時間~12時間共沈殿させることにより、ニッケルマンガン酸化物前駆体のスラリーを得ることができる。好ましくは、ニッケルマンガン酸化物前駆体の化学式は、Ni0.5Mn1.54であってもよい。
【0024】
本発明の1つの実施形態において、共沈剤は、ポリアクリルアミドまたはポリエチレングリコールであってもよいが、本発明はこれに限定されない。
【0025】
本発明の1つの実施形態において、ニッケル源は、ニッケル塩化物、ニッケル硝酸塩、ニッケル酢酸塩、ニッケル硫酸塩、またはそれらの混合物であるが、本発明はこれに限定されない。
【0026】
本発明の1つの実施形態において、マンガン源は、塩化マンガン、硝酸マンガン、酢酸マンガン、硫酸マンガン、またはそれらの混合物であるが、本発明はこれに限定されない。
タングステンリチウムニッケルマンガン酸化物前駆体の作製
【0027】
本発明の1つの実施形態において、タングステンリチウムニッケルマンガン酸化物前駆体は、共沈法によって作製することができる。例えば、タングステンリチウムニッケルマンガン酸化物前駆体は、ニッケルマンガン酸化物前駆体のスラリーにリチウム源およびタングステン源を添加した後、混合物に共沈剤を滴下しながら添加して、700℃~1000℃の温度で4時間~10時間反応させ、タングステンリチウムニッケルマンガン酸化物前駆体を共沈殿させることによって作製することができる。
【0028】
本発明の1つの実施形態において、リチウム源は、リチウム水酸化物、リチウム塩化物、リチウム硝酸塩、リチウム酢酸塩、リチウムリン酸塩、リチウム二水素リン酸塩、リチウムオキサラート、またはそれらの混合物を含むことができる。好ましくは、ニッケルおよびマンガンのモル数の合計とリチウムのモル数の比率は、1:1~1:4である。
【0029】
本発明の1つの実施形態において、タングステン源は、アンモニウムメタタングステート、タングステンヘキサクロリド、ナトリウムタングステート、アンモニウムタングステート、タングステンジサルファイド、またはそれらの混合物を含むことができる。好ましくは、ニッケルおよびマンガンのモル数の合計とタングステンのモル数の比率は、1:0.5である。
タングステンドープリチウムニッケルマンガン酸化物の作製
【0030】
本発明の1つの実施形態において、タングステンリチウムニッケルマンガン酸化物前駆体中の溶媒を除去した後、400℃~1000℃の温度で高温焼結を行って、格子の再構成を完了させることにより、タングステンドープリチウムニッケルマンガン酸化物を得る。
窒素ドープ炭素質材料により改質されたタングステンドープリチウムニッケルマンガン酸化物の作製
【0031】
窒素ドープ炭素質材料の前駆体である窒素含有化合物およびタングステンドープリチウムニッケルマンガン酸化物を約10:90の重量比で溶媒中に分散させて、反応溶液を作製する。二酸化炭素の雰囲気下で反応溶液を約40~80℃の温度および約1000~1500psiの圧力で1時間激しく攪拌して、40~80℃で乾燥させ、最後に不活性ガス雰囲気下で400~800℃の管状高温炉内で3~10時間焼成することにより、窒素ドープ炭素質材料により改質されたタングステンドープリチウムニッケルマンガン酸化物を取得し、正極材料として使用する。得られた窒素ドープ炭素質材料により改質されたタングステンドープリチウムニッケルマンガン酸化物は、例えば、約1μm~約200μmの平均粒子径、例えば、約1μm以上、約4μm以上、約8μm以上、約20μm以下、約100μm以下、または約200μm以下の平均粒子径を有することができる。
【0032】
本発明の1つの実施形態において、窒素含有化合物は、例えば、ピロールまたはフェニルピロール等のピロール系化合物、ピリジン系化合物、グラファイト状窒化炭素、エチレンジアミン、プロピレンジアミン、ベンゼンジアミン等のジアミン系化合物、メラミン、またはアニリンであってもよいが、本発明はこれに限定されない。
【0033】
本発明の1つの実施形態において、溶媒は、例えば、無水エタノールであるが、本発明はこれに限定されない。
【0034】
窒素原子のサイズは、炭素原子のサイズに近いため、両者間の適合性は高く、窒素を炭素系材料の格子に容易にドープすることができる。ドープした後に形成されるN-C結合では、窒素原子が隣接する炭素原子上の電子を引き寄せて、それらに電子欠陥を生成させるため、それにより、材料中の電子の伝導が促進され、材料の導電性が向上する。
【0035】
本発明に係る窒素ドープ炭素質材料により改質されたタングステンドープリチウムニッケルマンガン酸化物の作製プロセスでは、タングステンとリチウムを混合して焼結するため、比容量がさらに向上し、容量損失がさらに低減される。また、窒素ドープ炭素質材料は、材料の表面上の活性部位を増加させて、イオンが浸透する際に遭遇するエネルギーバリアを低減することができる。したがって、リチウムイオンの移動が促進される。
【0036】
本発明の窒素ドープ炭素質材料により改質されたタングステンドープリチウムニッケルマンガン酸化物について、実験例を用いて詳細に説明する。しかしながら、下記の実験例は、本発明を限定するものではない。
実験例
正極材料の作製
作製例1:リチウムニッケルマンガン酸化物の作製
【0037】
共沈剤であるポリアクリルアミドまたはポリエチレングリコールとニッケル源およびマンガン源を混合することにより、Ni0.5Mn1.54の前駆体を作製した。次に、リチウム源であるリチウム水酸化物、ドーパント、および有機媒体を前駆体に添加して、機械的に混合し、安定したスラリーを作製した。スラリー中のニッケルおよびマンガンのモル数の合計とリチウムのモル数の比率は、1:1~1:4であった。次に、スラリー中の沈殿物を900~1200℃の高温で焼結して、リチウムニッケルマンガン酸化物を取得し、正極材料1とした。正極材料1は、約12μmのD50平均粒子径を有することができる。
作製例2:窒素ドープ炭素質材料により改質されたリチウムニッケルマンガン酸化物の作製
【0038】
窒素ドープ炭素質材料の前駆体である窒素含有化合物およびリチウムニッケルマンガン酸化物を約10:90の重量比で無水エタノール中に分散させて、反応溶液を作製した。二酸化炭素の雰囲気下で反応溶液を約40~80℃の温度および約1200psiの圧力で1時間激しく攪拌した。生成物を回収して、40~80℃のオーブンで12時間乾燥させ、最後に不活性ガス雰囲気下で400~800℃の管状高温炉内で3~10時間焼成して、窒素ドープ炭素質材料により改質されたリチウムニッケルマンガン酸化物を取得し、正極材料2とした。正極材料2は、約16μmのD50平均粒子径を有することができる。
作製例3:タングステンドープリチウムニッケルマンガン酸化物の作製
【0039】
共沈剤であるポリアクリルアミドまたはポリエチレングリコールとニッケル源およびマンガン源を混合することにより、Ni0.5Mn1.54の前駆体を作製した。次に、リチウム水酸化物、タングステンジサルファイド、ドーパント、および有機媒体を前駆体に添加して、機械的に混合し、安定したスラリーを作製した。スラリー中のニッケルおよびマンガンのモル数の合計とリチウムのモル数とタングステンのモル数の比率は、1:(1~4):0.5であった。次に、スラリー中の沈殿物を900~1200℃の高温で焼結して、タングステンドープトリチウムニッケルマンガン酸化物を取得し、正極材料3とした。正極材料3は、約14μmのD50平均粒子径を有することができる。
作製例4:窒素ドープ炭素質材料により改質されたタングステンドープトリチウムニッケルマンガン酸化物の作製
【0040】
窒素ドープ炭素質材料の前駆体である窒素含有前駆体(例えば、フェニルピロール窒素、ピリジニウム窒素、グラファイト状窒化炭素、ジアミン、メラミン、またはアニリン)およびタングステンドープリチウムニッケルマンガン酸化物を約10:90の重量比で無水エタノール中に分散させて、反応溶液を作製した。二酸化炭素の雰囲気下で反応溶液を約40~80℃の温度および約1200psiの圧力で1時間激しく攪拌した。生成物を回収して、40~80℃のオーブンで12時間乾燥させ、最後に不活性ガス雰囲気下で400~800℃の管状高温炉内で3~10時間焼成して、窒素ドープ炭素質材料により改質されたタングステンドープリチウムニッケルマンガン酸化物を取得し、正極材料4とした。正極材料4は、約15μmのD50平均粒子径を有することができる。
リチウム電池の作製
実施例1
【0041】
80重量部の正極材料4、10重量部の導電性カーボンブラック、および10重量部のバインダーを溶媒中で混合し、均一な正極スラリーを形成した。次に、ブレードを用いて正極スラリーをアルミニウム箔に塗布してから、オーブンに移動して、40~120℃で乾燥させた後、カレンダーにかけて正極を得た。
【0042】
負極の下カバーを絶縁プラットフォーム上に配置した後、金属リチウムシートを負極の下カバーの中心に配置し、タブレット押圧具を用いて平らに押圧した。適量の液体電解質を滴下した市販のセパレータ(セルガード(Celgard)2400)をリチウムシート上に配置した後、上記で作製した正極、スペーサー、バネ、および正極カバーをセパレータ上に順番に配置して、ボタン型リチウム電池スタックを提供した。次に、電池プレス機でボタン型リチウム電池スタックを800Paの圧力で押圧し、ボタン型リチウム電池を提供した。
比較例1~3
【0043】
ボタン型リチウム電池を実施例1と同様の方法で作製したが、上記で作製した正極材料4を正極材料1~3に置き換えた。
評価
初期放電容量および容量損失
【0044】
実施例1および比較例1~3のボタン型リチウム電池に対して、0.5Cで200サイクルの充放電試験を行い、その初期放電容量および容量損失を観察した。実施例1および比較例1~3の25℃における放電比容量を表1に示す。充電/放電時の異なる正極材料の容量を計算する式は、以下の通りである:
比容量(mAh/g)=(電流(mA)×時間(h))/(活物質の質量(g))
【0045】
【表1】
【0046】
標準のリチウムニッケルマンガン酸化物全電池は、低電流(0.1C)下での充電/放電容量が130mAh/gであることが求められる(リチウムニッケルマンガン酸化物の理論容量は、約130mAh/gである)。表1から観察できるように、本発明の正極材料は、タングステンでドープし、窒素ドープ炭素質材料で改質することにより、実施例1のリチウム電池の比容量を130mAh/g以上に効果的に増加させることができる。図1は、25℃における実施例1および比較例3の電池寿命を示すグラフであり、図2は、55℃における実施例1および比較例3の電池寿命を示すグラフである。図2からわかるように、実施例1のリチウム電池は、55℃で200サイクルの充電/放電を行った後でも、比較的高い容量を維持することができ、サイクルあたりの容量損失は、約0.1371であるのに対し、比較例3のリチウム電池の容量は、55℃で50サイクルの充電/放電を行った後に著しく低下し、サイクルあたりの容量損失は、約0.3928である。本発明の正極材料が容量損失を効果的に低減し、電池寿命を延すことが確認された。
【0047】
以上のように、本発明は、共沈法および焼結法によりタングステン源およびリチウム源をニッケルマンガン酸化物前駆体に添加するため、粉末の粒子サイズを減らし、ドーピングの均一性を向上させることができる。さらに、本発明の正極材料は、タングステンドープリチウムニッケルマンガン酸化物の表面を窒素ドープ炭素質材料で改質することにより、リチウム電池の比容量が向上する。
【0048】
上記の実施形態において本発明を開示したが、これらの実施形態は、本発明を限定する意図はない。当業者であれば、本発明の精神および範囲から逸脱することなく、いくつかの変更および修正を行うことができる。本発明の保護範囲は、添付された特許請求の範囲によって定義されるべきである。
【産業上の利用可能性】
【0049】
本発明のリチウム電池用正極材料は、リチウム電池分野に応用することができる。
図1
図2
【外国語明細書】