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特開2024-95973電気金めっき液及びその使用、金バンプ及びその製造方法、並びに、電子部品及び電子機器
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  • 特開-電気金めっき液及びその使用、金バンプ及びその製造方法、並びに、電子部品及び電子機器 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024095973
(43)【公開日】2024-07-11
(54)【発明の名称】電気金めっき液及びその使用、金バンプ及びその製造方法、並びに、電子部品及び電子機器
(51)【国際特許分類】
   C25D 3/48 20060101AFI20240704BHJP
   C25D 7/12 20060101ALI20240704BHJP
   C25D 7/00 20060101ALI20240704BHJP
   C25D 5/50 20060101ALI20240704BHJP
【FI】
C25D3/48
C25D7/12
C25D7/00 H
C25D5/50
【審査請求】有
【請求項の数】20
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023186156
(22)【出願日】2023-10-31
(31)【優先権主張番号】202211706566.7
(32)【優先日】2022-12-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(71)【出願人】
【識別番号】523412418
【氏名又は名称】ファーウェイ テクノロジーズ カンパニー リミテッド
【氏名又は名称原語表記】HUAWEI TECHNOLOGIES CO., LTD.
【住所又は居所原語表記】Bantian Huawei Technologies Co., Ltd., Longgang District, Shenzhen, Guangdong 518129, China
(71)【出願人】
【識別番号】523412429
【氏名又は名称】シェンジェン ユナイテッド ブルー オーシャン アプライド マテリアルズ テクノロジー カンパニー リミテッド
【氏名又は名称原語表記】Shenzhen United Blue Ocean Applied Materials Technology Co., Ltd.
【住所又は居所原語表記】Seventh floor, No. 1007, Bao’an North Road, Sungang No. 7 warehouse, Sunxi Community, Sungang street, Luohu District, Shenzhen, Guangdong 518020, China
(74)【代理人】
【識別番号】100103850
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 秀▲てつ▼
(74)【代理人】
【識別番号】100115679
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 勇毅
(74)【代理人】
【識別番号】100114177
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 龍
(74)【代理人】
【識別番号】100066980
【弁理士】
【氏名又は名称】森 哲也
(72)【発明者】
【氏名】レン,チャンヨウ
(72)【発明者】
【氏名】ワン,トン
【テーマコード(参考)】
4K023
4K024
【Fターム(参考)】
4K023AA04
4K023AA25
4K023BA12
4K023BA24
4K023BA26
4K023CA09
4K023CB03
4K023CB04
4K023CB09
4K023CB21
4K023CB40
4K023DA02
4K023DA03
4K023DA06
4K023DA07
4K023DA08
4K024AA11
4K024BA01
4K024BB10
4K024BB12
4K024CA02
4K024CA06
4K024DB01
4K024GA16
(57)【要約】      (修正有)
【課題】熱圧着における金バンプの変形を回避するのに有利である電気金めっき液及びその使用、金バンプ及びその製造方法、並びに、電子部品及び電子機器を提供する。
【解決手段】電気金めっき液は、シアン化第1金塩、導電性塩、シュウ酸塩、鉛含有化合物、及び添加剤を含み、該添加剤は、下記式(1)で示されるフェノール系化合物及び/又はゼラチンを含む。

(ここで、R、R、R、R、R、及びRのうちの少なくとも1つはヒドロキシから選択され、残りは、それぞれ独立して水素原子、ハロ基、カルボキシ、アルデヒド基、スルホン酸基、アミノ、又はアルキルから選択されるいずれか1つである。)
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気金めっき液であって、
シアン化第1金塩、導電性塩、シュウ酸塩、鉛含有化合物、及び添加剤を含み、
前記添加剤は、フェノール系化合物及び/又はゼラチンを含み、前記フェノール系化合物の一般式は下記式(1)で示される、ことを特徴とする電気金めっき液。
【化1】
(式(1)中、R、R、R、R、R、及びRのうちの少なくとも1つはヒドロキシから選択され、残りは、それぞれ独立して、水素原子、ハロ基、カルボキシ、アルデヒド基、スルホン酸基、アミノ、アルキルから選択されるいずれか1つである。)
【請求項2】
前記フェノール系化合物は、フェノール、カテコール、レゾルシノール、ハイドロキノン、2-ヒドロキシ安息香酸、3-ヒドロキシ安息香酸、4-ヒドロキシ安息香酸、4-ヒドロキシベンズアルデヒド、4-ヒドロキシベンゼンスルホン酸、2,3-ジヒドロキシ安息香酸、2,4-ジヒドロキシ安息香酸、2,5-ジヒドロキシ安息香酸、2,6-ジヒドロキシ安息香酸、3,4-ジヒドロキシ安息香酸、3,5-ジヒドロキシ安息香酸、3,4,5-トリヒドロキシ安息香酸、2,4,6-トリヒドロキシ安息香酸のうちの少なくとも1種を含む、ことを特徴とする請求項1に記載の電気金めっき液。
【請求項3】
前記電気金めっき液中の前記フェノール系化合物の濃度が、0.05g/L以上2.0g/L以下であること、
前記電気金めっき液中の前記ゼラチンの濃度が、0.05g/L以上2.0g/L以下であることのうちの少なくとも1つを満たす、ことを特徴とする請求項1又は2に記載の電気金めっき液。
【請求項4】
前記シアン化第1金塩は、シアン化第1金カリウム、シアン化第1金ナトリウム、シアン化第1金アンモニウムのうちの少なくとも1種を含む、ことを特徴とする請求項1~3のいずれか1項に記載の電気金めっき液。
【請求項5】
前記シアン化第1金塩の使用量が、前記電気金めっき液中の金イオンの濃度を1g/L以上20g/L以下にする、ことを特徴とする請求項1~4のいずれか1項に記載の電気金めっき液。
【請求項6】
前記導電性塩は、リン酸塩及び/又は有機ホスホン酸を含み、
前記リン酸塩は、リン酸カリウム、リン酸ナトリウム、及びリン酸アンモニウムのうちの少なくとも1種を含み、
前記有機ホスホン酸は、ヒドロキシエチリデン二リン酸、アミノトリメチレンホスホン酸、エチレンジアミンテトラメチレンホスホン酸のうちの少なくとも1種を含む、ことを特徴とする請求項1~5のいずれか1項に記載の電気金めっき液。
【請求項7】
前記電気金めっき液中の前記導電性塩の濃度が、10g/L以上100g/L以下である、ことを特徴とする請求項1~6のいずれか1項に記載の電気金めっき液。
【請求項8】
前記シュウ酸塩は、シュウ酸カリウム、シュウ酸ナトリウム、及びシュウ酸アンモニウムのうちの少なくとも1種を含む、ことを特徴とする請求項1~7のいずれか1項に記載の電気金めっき液。
【請求項9】
前記電気金めっき液中の前記シュウ酸塩の濃度が、5g/L以上80g/L以下である、ことを特徴とする請求項1~8のいずれか1項に記載の電気金めっき液。
【請求項10】
前記鉛含有化合物は、酢酸鉛、硝酸鉛、クエン酸鉛、及び硫酸鉛のうちの少なくとも1種を含む、ことを特徴とする請求項1~9のいずれか1項に記載の電気金めっき液。
【請求項11】
鉛濃度換算で、前記電気金めっき液中の前記鉛含有化合物の濃度が、2ppm以上15ppm以下である、ことを特徴とする請求項1~10のいずれか1項に記載の電気金めっき液。
【請求項12】
前記電気金めっき液のpH値を調整するための水素イオン濃度指数pH添加剤をさらに含む、ことを特徴とする請求項1~11のいずれか1項に記載の電気金めっき液。
【請求項13】
pH値が、5以上7以下である、ことを特徴とする請求項1~12のいずれか1項に記載の電気金めっき液。
【請求項14】
半導体金めっきに用いられることを特徴とする請求項1~13のいずれか1項に記載の電気金めっき液の使用。
【請求項15】
金バンプの製造方法であって、
半導体を請求項1~13のいずれか1項に記載の電気金めっき液に入れて、電気めっきを行うステップと、
電気めっきした前記半導体を熱処理して、前記半導体の表面に金バンプを形成するステップと、を含む、ことを特徴とする金バンプの製造方法。
【請求項16】
前記電気めっきの温度が、30℃以上70℃以下であること、
前記電気めっきの電流密度が、0.1A/dm以上1.0A/dm以下であることのうちの少なくとも1つを満たす、ことを特徴とする請求項15に記載の製造方法。
【請求項17】
熱処理後の前記金バンプの硬度が、90HV以上120HV以下である、ことを特徴とする請求項15又は16に記載の製造方法。
【請求項18】
請求項15~17のいずれか1項に記載の製造方法によって製造される、ことを特徴とする金バンプ。
【請求項19】
請求項18に記載の金バンプを含む、ことを特徴とする電子部品。
【請求項20】
請求項19に記載の電子部品を含む、ことを特徴とする電子機器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願の実施例は、電気めっき金の技術分野に関し、より具体的には、電気金めっき液及びその使用、金バンプ及びその製造方法、並びに、電子部品及び電子機器に関する。
【背景技術】
【0002】
金は、よく使われる半導体の金属相互接続材料として、電子回路基板、電子コネクタ、半導体製造などに広く応用されている。例えば、液晶駆動チップとプリント配線基板との接続には金バンプが用いられることが多い。
【0003】
現在、液晶駆動チップの性能を十分に発揮し、液晶表示技術の発展に厳しく要求される表示解像度、リフレッシュレート、輝度やコントラストなどを満たすために、金バンプの寸法や隣接する金バンプ間の間隔がますます小さく設計されてきている。しかし、金バンプの寸法や隣接する金バンプ間の間隔の減少は、熱圧着時の金バンプの変形を引き起こしやすく、その結果として、隣接する金バンプ同士が接続されやすく、配線ショート不良の問題が生じる。
【0004】
金バンプの硬度を高めることは、熱圧着時の金バンプの変形を回避するために重要な手段である。しかし、現在の実用化では、主に電気金めっき法により金バンプを製造するため、電気めっき後に熱処理をしなければならないのが一般的である。金は低融点金属であるため、熱処理中に硬度が低下しやすく、熱処理後も硬度の高い金バンプを得ることが困難である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本願の実施例は、電気金めっき液にゼラチン及び/又はフェノール系化合物を添加することによって、熱処理後にも高硬度を持つ金バンプを製造し、熱圧着における金バンプの変形を回避するのに有利である電気金めっき液及びその使用、金バンプ及びその製造方法、並びに、電子部品及び電子機器を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
第1態様では、シアン化第1金塩、導電性塩、シュウ酸塩、鉛含有化合物、及び添加剤を含み、前記添加剤は、フェノール系化合物及び/又はゼラチンを含み、前記フェノール系化合物の一般式が、下記式(1)で示される、電気金めっき液を提供する。
【0007】
【化1】
【0008】
(式(1)中、R、R、R、R、R、及びRのうちの少なくとも1つは、ヒドロキシから選択され、残りは、それぞれ独立して、水素原子、ハロ基、カルボキシ、アルデヒド基、スルホン酸基、アミノ、アルキルから選択されるいずれか1つである。)
【0009】
上記の技術案では、電気金めっき液にフェノール系化合物(例えば、フェノール及び/又はフェノール誘導物)及び/又はゼラチンを特定の添加剤として添加し、他の成分と作用させることによって、該電気金めっき液を用いて製造された金バンプは熱処理後にも高硬度(例えば、金バンプの処理後の硬度は90~120HVであってもよい。)を持ち、また、得られた金バンプの形状が規則的である。よって、金バンプの寸法や隣接する金バンプ間の間隔を小さくしつつ、熱圧着における金バンプの変形に起因する配線ショート不良を回避する。
【0010】
さらに、シアンフリー電気金めっき液と比べて、本願の実施例によるシアン化第1金塩を金源としたシアン系電気金めっき液は、長期連続生産により適しており、例えば、2~3年以上の連続生産が可能であり、産業応用の実現に役立つ。また、シアンフリー電気金めっき液の生産ラインでよく使用される横型カップ式の電気めっき方式と比べて、シアン系電気金めっき液で使用される縦型ラック電気めっき方式は、電気めっきの均一性が得られやすい。
【0011】
第1態様に基づいて、第1態様のいくつかの実施形態では、前記フェノール系化合物は、フェノール、カテコール、レゾルシノール、ハイドロキノン、2-ヒドロキシ安息香酸、3-ヒドロキシ安息香酸、4-ヒドロキシ安息香酸、4-ヒドロキシベンズアルデヒド、4-ヒドロキシベンゼンスルホン酸、2,3-ジヒドロキシ安息香酸、2,4-ジヒドロキシ安息香酸、2,5-ジヒドロキシ安息香酸、2,6-ジヒドロキシ安息香酸、3,4-ジヒドロキシ安息香酸、3,5-ジヒドロキシ安息香酸、3,4,5-トリヒドロキシ安息香酸、2,4,6-トリヒドロキシ安息香酸のうちの少なくとも1種を含む。
【0012】
上記の技術案では、電気金めっき液に上記のフェノール又はフェノール誘導物を添加することによって、該電気金めっき液を用いて製造された金バンプは、熱処理後にも高硬度(例えば、金バンプの処理後の硬度は90~120HVであってもよい。)を持つ。よって、金バンプの寸法や隣接する金バンプ間の間隔を小さくしつつ、熱圧着における金バンプの変形に起因する配線ショート不良を回避する。
【0013】
第1態様に基づいて、第1態様のいくつかの実施形態では、前記電気金めっき液は、前記電気金めっき液中の前記フェノール系化合物の濃度が0.05g/L以上2.0g/L以下であること、前記電気金めっき液中の前記ゼラチンの濃度が0.05g/L以上2.0g/L以下であることのうちの少なくとも1つを満たす。
【0014】
上記の技術案では、電気金めっき液中のフェノール系化合物又はゼラチンの濃度が0.05g/L未満である場合、濃度が低すぎるため、電気金めっき液中のフェノール系化合物又はゼラチンの作用発揮に不利であり、熱処理後にも高硬度を持つ金バンプを得ることに不利である。電気金めっき液中のフェノール系化合物又はゼラチンの濃度が2.0g/Lを超える場合、金バンプの熱処理後の硬度が高すぎたり、金バンプの純度が低下したりする恐れがある。このため、フェノール系化合物及びゼラチンの濃度を上記範囲にすることによって、金バンプの純度に影響を与えることなく、金バンプの熱処理後の硬度を高めるのに有利である。
【0015】
第1態様に基づいて、第1態様のいくつかの実施形態では、前記シアン化第1金塩は、シアン化第1金カリウム、シアン化第1金ナトリウム、シアン化第1金アンモニウムのうちの少なくとも1種を含む。
【0016】
上記の技術案では、上記のシアン化第1金塩は、電気金めっき液の金源として有用である。
【0017】
第1態様に基づいて、第1態様のいくつかの実施形態では、前記シアン化第1金塩の使用量が、前記電気金めっき液中の金イオンの濃度を1g/L以上20g/L以下にする。
【0018】
上記の技術案では、電気金めっき液中の金イオンの濃度が1g/L未満である場合、金イオンの濃度が低すぎるため、陰極析出効率が低すぎ、陰極での水素析出などの他の副反応が深刻になり、めっき層外観や生産効率に悪影響を及ぼす。電気金めっき液中の金イオンの濃度が20g/Lを超える場合、電気金めっき液の安定性やめっき層の外観、物理的特性には影響がないが、金属電気めっき液を搬出することにより金の浪費が生じやすく、コスト高騰を招く。このため、電気金めっき液中の金イオンの濃度を上記範囲にすることによって、電気金めっき液によるめっき層の外観均一性や生産効率を確保しながら、金の浪費に起因するコストアップを回避するのに有利である。
【0019】
第1態様に基づいて、第1態様のいくつかの実施形態では、前記導電性塩は、リン酸塩及び/又は有機ホスホン酸を含み、前記リン酸塩は、リン酸カリウム、リン酸ナトリウム、及びリン酸アンモニウムのうちの少なくとも1種を含み、前記有機ホスホン酸は、ヒドロキシエチリデン二リン酸、アミノトリメチレンホスホン酸、エチレンジアミンテトラメチレンホスホン酸のうちの少なくとも1種を含む。
【0020】
上記の技術案では、導電性塩は、電気金めっき液の導電率を向上させるものとして有用である。
【0021】
第1態様に基づいて、第1態様のいくつかの実施形態では、前記電気金めっき液中の前記導電性塩の濃度が、10g/L以上100g/L以下である。
【0022】
上記の技術案では、電気金めっき液中の導電性塩の濃度が10g/L未満である場合、電気金めっき液が不安定になりやすく、その結果、電気めっきの均一性が低下し、めっき層が荒くなる。電気金めっき液中の導電性塩の濃度が100g/Lを超える場合、電気金めっき液の粘度が高すぎ、陰極への金イオンの移動に悪影響を与え、めっき層を荒くする。電気金めっき液中の導電性塩の濃度を上記範囲にすることによって、電気金めっき液の導電率を向上させるとともに、めっき層が荒くなることを回避するのに有利である。
【0023】
第1態様に基づいて、第1態様のいくつかの実施形態では、前記シュウ酸塩は、シュウ酸カリウム、シュウ酸ナトリウム、及びシュウ酸アンモニウムのうちの少なくとも1種を含む。
【0024】
上記の技術案では、シュウ酸塩は、電気金めっき液中の有機導電性塩として有用である。電気金めっき液にシュウ酸塩が使用されない場合、フォトレジストとウエハとの間にめっき膜が侵入しやすく、これにより、パターン外への析出が生じる。つまり、電気金めっき液にシュウ酸塩を添加することによって、電気めっき膜層のうちめっき膜が侵入した部分が厚くなり、金めっきしたボスの下の金属化層のエッチング工程により完全に除去できなくなり、導通不良を引き起こすことを回避するのに有利である。
【0025】
第1態様に基づいて、第1態様のいくつかの実施形態では、前記電気金めっき液中の前記シュウ酸塩の濃度が、5g/L以上80g/L以下である。
【0026】
上記の技術案では、電気金めっき液中のシュウ酸塩の濃度が5g/L未満である場合、濃度が低すぎるため、電気金めっき液におけるシュウ酸塩の作用の発揮に不利であり、めっき膜侵入が発生しやすい。電気金めっき液中のシュウ酸塩の濃度が80g/Lを超える場合、めっき層の外観が不均一になりやすい。電気金めっき液中のシュウ酸塩の濃度を上記範囲にすることによって、めっき膜の侵入を回避するとともに、めっき層の外観の均一性を確保するのに有利である。
【0027】
第1態様に基づいて、第1態様のいくつかの実施形態では、前記鉛含有化合物は、酢酸鉛、硝酸鉛、クエン酸鉛、及び硫酸鉛のうちの少なくとも1種を含む。
【0028】
上記の技術案では、上記の鉛含有化合物は、電気金めっき液中の結晶化調整剤として、電気金めっき液の結晶化を調整することができる。
【0029】
第1態様に基づいて、第1態様のいくつかの実施形態では、鉛濃度換算で、前記電気金めっき液中の前記鉛含有化合物の濃度が、2ppm以上15ppm以下である。
【0030】
上記の技術案では、電気金めっき液中に鉛含有化合物を適切な低含有量で添加することによって、めっき層の結晶性及び硬度への調整作用を発揮するとともに、形成されためっき層に過量のPb不純物が混入してめっき層の純度が低下することを回避できる。
【0031】
第1態様に基づいて、第1態様のいくつかの実施形態では、前記電気金めっき液は、前記電気金めっき液のpH値を調整するための水素イオン濃度指数pH添加剤をさらに含む。
【0032】
上記の技術案では、電気金めっき液にpH添加剤を添加することによって、実際生産及び設計のニーズに応じて、電気金めっき液のpH値を調整することができる。
【0033】
1つの可能な実現形態では、pH添加剤は、酸又は塩基であってもよい。酸は、例えば、硫酸、リン酸、又は有機ホスホン酸から選択される少なくとも1種を用いてもよいが、これらに限定されない。例示的には、有機ホスホン酸は、ヒドロキシエチリデン二リン酸、アミノトリメチレンホスホン酸又はエチレンジアミンテトラメチレンホスホン酸のうちの少なくとも1種を用いてもよい。塩基は、例えば、水素化カリウム、水素化ナトリウム、又はアンモニア水のうちの少なくとも1種を用いてもよいが、これらに限定されない。
【0034】
第1態様に基づいて、第1態様のいくつかの実施形態では、前記電気金めっき液のpH値は、5以上7以下である。
【0035】
上記の技術案では、電気金めっき液のpH値が5~7に設けられることによって、鉛含有化合物は、該弱酸性の電気金めっき液への溶解度に優れ、沈殿析出が発生しにくく、電気金めっき液の効果への影響を避けるのに有利であり、電気金めっき液の長期安定性が良好になる。一方、シアン化第1金塩が系の低いpH値によりシアン化水素の揮発を引き起こし、金めっき効果を損なうという問題を回避するのに有利である。
【0036】
第2態様では、半導体金めっきに用いられる上記の第1態様のいずれか1項に記載の電気金めっき液の使用を提供する。
【0037】
第3態様では、半導体を上記の第1態様のいずれか1項に記載の電気金めっき液に入れて電気めっきを行うステップと、電気めっきした前記半導体を熱処理して、前記半導体の表面に金バンプを形成するステップと、を含む、金バンプの製造方法を提供する。
【0038】
第3態様に基づいて、第3態様のいくつかの実施形態では、前記方法は、前記電気めっきの温度が30℃以上70℃以下であること、前記電気めっきの電流密度が0.1A/dm以上1.0A/dm以下であることのうちの少なくとも1つを満たす。
【0039】
第3態様に基づいて、第3態様のいくつかの実施形態では、熱処理後の前記金バンプの硬度が、90HV以上120HV以下である。
【0040】
第4態様では、上記の第3態様のいずれか1項に記載の製造方法によって製造される金バンプを提供する。
【0041】
第5態様では、上記の第4態様に記載の金バンプを含む電子部品を提供する。
【0042】
第6態様では、上記の第5態様に記載の電子部品を含む電子機器を提供する。
【0043】
第2態様~第6態様の技術的効果は、上記の第1態様における技術的効果の関連説明を参照すればよく、ここでは詳しく説明しない。
【図面の簡単な説明】
【0044】
図1】実施例1における電気金めっき液を用いて製造された金バンプの輪郭を100倍拡大した写真である。
図2図1に示される金バンプの高さをテストした結果図である。
図3】実施例10における電気金めっき液を用いて製造された金バンプの輪郭を100倍拡大した写真である。
図4図3に示される金バンプの高さをテストした結果図である。
【発明を実施するための形態】
【0045】
以下、図面を参照して、本願の実施例の技術案について説明する。
【0046】
以下の実施例で使用される用語は、特定の実施例を説明する目的のためだけに使用されるものであって、本願の限定として意図されているものではない。本願の明細書及び特許請求の範囲において使用されるように、単数表現「1つ」、「1種」、「前記」、「上記」、「該」及び「この」は、文脈において明示的に反対の指示がない限り、例えば「1つ又は複数の」という表現も含むことが意図される。なお、本願の以下の各実施例では、「少なくとも1つ」、「1つ又は複数」は、1つ、2つ又は複数を意味することも理解されるべきである。「及び/又は」という用語は、関連付けられたオブジェクトの関連関係を説明するために使用され、3つの関係が存在し得ることを意味し、例えば、A及び/又はBは、Aが単独に存在し、A及びBが同時に存在し、Bが単独に存在する場合を表すことができ、A、Bは単数又は複数であってもよい。文字「/」は、一般に前後の関連オブジェクトが「又は」の関係であることを示す。
【0047】
本願の説明において、記載される数値範囲は、範囲の2つの端点数値を含むことができ、例えば、硬度が90~120HVであるとは、硬度が90HV以上120HV以下であることを指してもよい。また、例えば、濃度が6~17g/Lであることとは、濃度が6g/L以上17g/L以下であることを指してもよい。
【0048】
本明細書に記載された「一実施例」又は「いくつかの実施例」などの参照は、本願の1つ又は複数の実施例に、その実施例に関連して記載された特定の特徴、構造、又は特性を含むことを意味する。したがって、本明細書における異なる箇所に現れる「一実施例では」、「いくつかの実施例では」、「他のいくつかの実施例では」、「別のいくつかの実施例では」などの語句は、特に断らない限り、必ずしもすべてが同じ実施例を参照するのではなく、「1つ又は複数の実施例であるが、すべてではない」ことを意味する。用語「含む」、「含有する」、「有する」、及びそれらの変形は、特に断らない限り、「含むが、これに限定されない」を意味する。
【0049】
金は、化学的安定性が良く、接触抵抗が低く、導電性が良く、はんだ付け性が良く、熱圧着ができるなどの利点があるため、現在よく使われる半導体の金属相互接続材料として、電子回路基板、電子コネクタ、半導体製造などの分野に広く応用されている。例えば、液晶駆動チップとプリント配線基板との接続には金バンプが用いられることが多い。
【0050】
しかし、液晶表示技術の発展に伴い、表示解像度、リフレッシュレート、輝度やコントラストなどに対する要求がますます高くなり、制御ユニットとしての液晶駆動チップがより大きな性能を発揮することが求められている。このため、液晶駆動チップの性能を十分に発揮し、より多くの入出力セルを確保するためには、金バンプの寸法や隣接する金バンプ間の間隔を小さくする必要があった。現在報告されている金バンプの最小幅は6μm、バンプの間隔は4μmである。しかし、金バンプの寸法や隣接する金バンプ間の間隔を小さくすると、熱圧着時に金バンプが変形して隣接する金バンプ間が接続され、配線ショート不良が発生しやすくなる。研究の結果、金バンプの硬度を高めることにより、熱圧着時の変形を防止することができることを見出した。
【0051】
現在の実際の応用では、電気金めっき技術により金バンプを製造する場合が多い。金めっきの延性を向上させるために、金めっき後に熱処理を施すことが多い。熱処理後の電気金めっきの硬度により、電気金めっきは、一般的に低硬度(40~60HV)、中硬度(70~90HV)、高硬度(90~120HV)に分類することができる。しかし、金は低融点金属であるため、熱処理時に再結晶が発生しやすく、結晶粒が大きくなって硬度が低下し、熱処理後に90~120HVの硬度を持つ金バンプを得ることが困難である。
【0052】
上記の内容に基づいて、本願の実施例は、電気金めっき液にゼラチン及び/又はフェノール系化合物を添加することによって、熱処理後にも高硬度を持つ金バンプ(例えば、金バンプの処理後の硬度は、90~120HVであってもよい。)を製造することができ、金バンプの寸法や隣接する金バンプ間の間隔を小さくしつつ、熱圧着における金バンプの変形に起因する配線ショート不良を回避する電気金めっき液及びその使用、金バンプ及びその製造方法、並びに、電子部品及び電子機器を提供する。
【0053】
まず、本願の実施例による電気金めっき液について詳細に説明する。
【0054】
本願の実施例は、シアン化第1金塩、導電性塩、シュウ酸塩、鉛含有化合物、及び添加剤を含む電気金めっき液を提供する。
【0055】
添加剤は、フェノール系化合物及び/又はゼラチンを含む。該フェノール系化合物の一般式は下記式(1)で示され、すなわち、該フェノール系化合物は、フェノール又はフェノール誘導物を含んでもよい。
【0056】
【化2】
【0057】
(式(1)中、R、R、R、R、R、及びRのうちの少なくとも1つは、ヒドロキシから選択され、残りは、それぞれ独立して、水素原子、ハロ基、カルボキシ、アルデヒド基、スルホン酸基、アミノ、アルキルから選択されるいずれか1つである。)
【0058】
以下、上記の式(1)における原子基の意味を説明する。なお、特に断らない限り、以下の原子基は以下の意味を有する。定義されていない原子基である限り、技術的に共通の意味を有する。
【0059】
本願では、上記のヒドロキシは-OH基を指してもよい。
【0060】
本願では、上記のハロ基は、フッ素原子(F)、塩素原子(Cl)、臭素原子(Br)、又はヨウ素原子(I)を指してもよい。ハロ基は置換されていてもよく、置換基は、アルキル、アリール、ヘテロアリールなどのうちの少なくとも1種を含んでもよく、ハロ基は置換基を介してベンゼン環に連結される。
【0061】
本願では、上記のカルボキシは、-COOH基を指してもよい。カルボキシは、置換されていてもよく、置換基は、アルキル、アリール、ヘテロアリールなどのうちの少なくとも1種を含んでもよく、カルボキシは、置換基を介してベンゼン環に連結される。
【0062】
本願では、上記のアルデヒド基は、-CHO基を指してもよい。アルデヒド基は、置換されていてもよく、置換基は、アルキル、アリール、ヘテロアリールなどのうちの少なくとも1種を含んでもよく、アルデヒド基は、置換基を介してベンゼン環に連結される。
【0063】
本願では、上記のスルホン酸基は、-SOH基を指してもよい。スルホン酸基は、置換されていてもよく、置換基は、アルキル、アリール、ヘテロアリールなどのうちの少なくとも1種を含んでもよく、スルホン酸基は、置換基を介してベンゼン環に連結される。
【0064】
本願では、上記のアミノは、-NH基を指してもよい。アミノは、置換又は非置換であってもよく、例えば、第1級アミノ、第2級アミノ、第3級アミノなどである。メチルアミノ、ジフェニルアミノなどの置換アミノ中の置換基は、アルキル、アリール、ヘテロアリールなどのうちの少なくとも1種を含んでもよい。
【0065】
本願では、上記のアルキルとは、炭素原子を有する一価の飽和脂肪族炭化水素基を指してもよい。アルキルは、直鎖または分岐鎖であってもよい。アルキルは、置換または非置換であってもよい。なお、アルキル中の炭素原子数は制限しない。例示的には、アルキルの炭素数は1~15であってもよい。さらに、アルキルの炭素数は1~10であることが好ましい。さらに、アルキルの炭素数は1~5であることが好ましい。アルキルの例としては、メチル、エチル、プロピル、n-プロピル、イソプロピル、ブチル、n-ブチル、イソブチル、t-ブチル、2級ブチル、1-メチル-ブチル、1-エチル-ブチル、ペンチル、n-ペンチル、イソペンチル、ネオペンチル、t-ペンチル、ヘキシル、n-ヘキシルなどが挙げられるが、これらに限定されない。
【0066】
上記の技術案では、電気金めっき液にフェノール系化合物(例えば、フェノール及び/又はフェノール誘導物)及び/又はゼラチンを特定の添加剤として添加し、他の成分と作用させることによって、該電気金めっき液を用いて製造された金バンプは熱処理後にも高硬度(例えば、金バンプの処理後の硬度は90~120HVであってもよい。)を持ち、また、得られた金バンプの形状が規則的である。よって、金バンプの寸法や隣接する金バンプ間の間隔を小さくしつつ、熱圧着における金バンプの変形に起因する配線ショート不良を回避する。
【0067】
さらに、シアンフリー電気金めっき液と比べて、本願の実施例によるシアン化第1金塩を金源としたシアン系電気金めっき液は、長期連続生産により適しており、例えば、2~3年以上の連続生産が可能であり、産業応用の実現に役立つ。また、シアンフリー電気金めっき液の生産ラインでよく使用される横型カップ式の電気めっき方式と比べて、シアン系電気金めっき液で使用される縦型ラック電気めっき方式は、電気めっきの均一性が得られやすい。
【0068】
以下、上記の電気金めっき液に含まれる各成分について詳細に説明する。
【0069】
いくつかの実施例では、フェノール系化合物は、フェノール及び/又はフェノール誘導物を含んでもよい。例示的には、フェノール誘導物は、カテコール、レゾルシノール、ハイドロキノン、2-ヒドロキシ安息香酸、3-ヒドロキシ安息香酸、4-ヒドロキシ安息香酸、4-ヒドロキシベンズアルデヒド、4-ヒドロキシベンゼンスルホン酸、2,3-ジヒドロキシ安息香酸、2,4-ジヒドロキシ安息香酸、2,5-ジヒドロキシ安息香酸、2,6-ジヒドロキシ安息香酸、3,4-ジヒドロキシ安息香酸、3,5-ジヒドロキシ安息香酸、3,4,5-トリヒドロキシ安息香酸、2,4,6-トリヒドロキシ安息香酸のうちの少なくとも1種を含んでもよいが、これらに限定されない。
【0070】
いくつかの実施例では、電気金めっき液は、
電気金めっき液中のフェノール系化合物の濃度が0.05g/L以上2.0g/L以下であること、
電気金めっき液中のゼラチンの濃度が0.05g/L以上2.0g/L以下であることのうちの少なくとも1つを満たす。
【0071】
なお、電気金めっき液中のフェノール系化合物又はゼラチンの濃度が0.05g/L未満である場合、濃度が低すぎるため、電気金めっき液中のフェノール系化合物又はゼラチンの作用発揮に不利であり、熱処理後にも高硬度を持つ金バンプを得ることに不利である。電気金めっき液中のフェノール系化合物又はゼラチンの濃度が2.0g/Lを超える場合、熱金バンプの処理後の硬度が高すぎたり、金バンプの純度が低下したりする恐れがある。このため、フェノール系化合物及びゼラチンの濃度を上記範囲にすることによって、金バンプの純度に影響を与えることなく、金バンプの熱処理後の硬度を高めるのに有利である。
【0072】
例示的には、フェノール系化合物の濃度は、0.05g/L、0.1g/L、0.15g/L、0.25g/L、0.3g/L、0.35g/L、0.4g/L、0.45g/L、0.5g/L、0.7g/L、0.9g/L、1.2g/L、1.5g/L、1.8g/L、又は2.0g/L、及び上記の任意の2つの数値からなる範囲内の任意の値であってもよい。さらに、フェノール系化合物の濃度は、好ましくは0.8~1.7g/Lであってもよい。さらに、フェノール系化合物の濃度は、好ましくは0.9~1.5g/Lであってもよい。
【0073】
例示的には、ゼラチンの濃度は、0.05g/L、0.11g/L、0.17g/L、0.23g/L、0.29g/L、0.35g/L、0.41g/L、0.47g/L、0.55g/L、0.75g/L、0.95g/L、1.35g/L、1.65g/L、又は2.0g/L、及び上記の任意の2つの数値からなる範囲内の任意の値であってもよい。さらに、ゼラチンの濃度は、好ましくは0.75~1.8g/Lであってもよい。さらに、ゼラチンの濃度は、好ましくは0.9~1.65g/Lであってもよい。
【0074】
上記のフェノール系化合物及びゼラチンの濃度の範囲及び具体的な数値は例示的なものに過ぎず、実際の生産及び設計のニーズに応じて調整することができ、本願はこれを限定しないことが理解されるべきである。
【0075】
いくつかの実施例では、シアン化第1金塩は、金源として機能し、シアン化第1金カリウム、シアン化第1金ナトリウム、シアン化第1金アンモニウムのうちの少なくとも1種を含んでもよいが、これらに限定されない。
【0076】
好適には、シアン化第1金塩の使用量が、電気金めっき液中の金イオンの濃度を1g/L以上20g/L以下にする。
【0077】
なお、電気金めっき液中の金イオンの濃度が1g/L未満である場合、金イオンの濃度が低すぎるため、陰極析出効率が低すぎ、陰極での水素析出などの他の副反応が深刻になり、めっき層外観や生産効率に悪影響を及ぼす。電気金めっき液中の金イオンの濃度が20g/Lを超える場合、電気金めっき液の安定性やめっき層の外観、物理的特性には影響がないが、金属電気めっき液を搬出することにより金の浪費が生じやすく、コスト高騰を招く。このため、電気金めっき液中の金イオンの濃度を上記範囲にすることによって、電気金めっき液によるめっき層の外観均一性や生産効率を確保しながら、金の浪費に起因するコストアップを回避するのに有利である。
【0078】
例示的には、金イオンの濃度は、1g/L、2g/L、3g/L、4g/L、5g/L、7g/L、9g/L、11g/L、13g/L、15g/L、17g/L、19g/L、又は20g/L、及び上記の任意の2つの数値からなる範囲内の任意の値であってもよい。さらに、金イオンの濃度は、好ましくは6~17g/Lであってもよい。さらに、金イオンの濃度は、好ましくは8~16g/Lであってもよい。
【0079】
上記の金イオンの濃度の範囲及び具体的な数値は例示的なものに過ぎず、実際の生産及び設計のニーズに応じて調整することができ、本願はこれを限定しないことが理解されるべきである。
【0080】
いくつかの実施例では、導電性塩は、リン酸塩及び/又は有機ホスホン酸を含んでもよく、電気金めっき液の導電率を高めるものである。有機ホスホン酸は、ヒドロキシエチリデン二リン酸(HEDP)、アミノトリメチレンホスホン酸(ATMP)、エチレンジアミンテトラメチレンホスホン酸のうちの少なくとも1種を含んでもよいが、これらに限定されない。
【0081】
好適には、電気金めっき液中の導電性塩の濃度は、10g/L以上100g/L以下であってもよい。
【0082】
なお、電気金めっき液中の導電性塩の濃度が10g/L未満である場合、電気金めっき液が不安定になりやすく、電気めっきの均一性が低下し、めっき層が荒くなる。電気金めっき液中の導電性塩の濃度が100g/Lを超える場合、電気金めっき液の粘度が高すぎ、陰極への金イオンの移動に悪影響を与え、めっき層を荒くする。電気金めっき液中の導電性塩の濃度を上記範囲にすることによって、電気金めっき液の導電率を向上させるとともに、めっき層が荒くなることを回避するのに有利である。
【0083】
例示的には、導電性塩の濃度は、10g/L、15g/L、20g/L、25g/L、30g/L、40g/L、50g/L、60g/L、70g/L、85g/L、又は100g/L、及び上記の任意の2つの数値からなる範囲内の任意の値であってもよい。さらに、導電性塩の濃度は、好ましくは20~80g/Lであってもよい。さらに、導電性塩の濃度は、好ましくは35~70g/Lであってもよい。
【0084】
上記の導電性塩の濃度の範囲及び具体的な数値は例示的なものに過ぎず、実際の生産及び設計のニーズに応じて調整することができ、本願はこれを限定しないことが理解されるべきである。
【0085】
いくつかの実施例では、シュウ酸塩は、有機酸導電性塩として機能し、例えば、シュウ酸カリウム、シュウ酸ナトリウム、及びシュウ酸アンモニウムのうちの少なくとも1種を含んでもよいが、これらに限定されない。
【0086】
なお、電気金めっき液にシュウ酸塩が使用されない場合、フォトレジストとウエハとの間にめっき膜が侵入しやすく、これにより、パターン外への析出が生じる。つまり、電気金めっき液にシュウ酸塩を添加することによって、電気めっき膜層のうちめっき膜が侵入した部分が厚くなり、金めっきしたボスの下の金属化層のエッチング工程により完全に除去できなくなり、導通不良を引き起こすことを回避するのに有利である。
【0087】
好適には、電気金めっき液中のシュウ酸塩の濃度は、5g/L以上80g/L以下であってもよい。
【0088】
なお、電気金めっき液中のシュウ酸塩の濃度が5g/L未満である場合、濃度が低すぎるため、電気金めっき液におけるシュウ酸塩の作用の発揮に不利であり、めっき膜侵入が発生しやすい。電気金めっき液中のシュウ酸塩の濃度が80g/Lを超える場合、めっき層の外観が不均一になりやすい。電気金めっき液中のシュウ酸塩の濃度を上記範囲にすることによって、めっき膜の侵入を回避するとともに、めっき層の外観の均一性を確保するのに有利である。
【0089】
例示的には、シュウ酸塩の濃度は、5g/L、10g/L、15g/L、20g/L、25g/L、35g/L、45g/L、55g/L、70g/L、又は80g/L、及び上記の任意の2つの数値からなる範囲内の任意の値であってもよい。さらに、シュウ酸塩の濃度は、好ましくは13~75g/Lであってもよい。さらに、シュウ酸塩の濃度は、好ましくは30~65g/Lであってもよい。
【0090】
上記のシュウ酸塩の濃度の範囲及び具体的な数値は例示的なものに過ぎず、実際の生産及び設計のニーズに応じて調整することができ、本願はこれを限定しないことが理解されるべきである。
【0091】
いくつかの実施例では、鉛含有化合物は、結晶化調整剤として機能し、例えば、酢酸鉛、硝酸鉛、クエン酸鉛、及び硫酸鉛のうちの少なくとも1種を含んでもよいが、これらに限定されない。
【0092】
好適には、鉛濃度換算で、電気金めっき液中の鉛含有化合物の濃度は、2ppm以上15ppm以下であってもよい。
【0093】
なお、電気金めっき液中に鉛含有化合物を適切な低含有量で添加することによって、めっき層の結晶性及び硬度への調整作用を発揮するとともに、形成されためっき層に過量のPb不純物が混入してめっき層の純度が低下することを回避できる。
【0094】
例示的には、鉛含有化合物の濃度は、2ppm、4ppm、6ppm、8ppm、10ppm、11ppm、13ppm又は15ppm、及び上記の任意の2つの数値からなる範囲内の任意の値であってもよい。さらに、鉛含有化合物の濃度は、好ましくは5~12ppmであってもよい。さらに、鉛含有化合物の濃度は、好ましくは7.5~12ppmであってもよい。
【0095】
上記の鉛含有化合物の濃度の範囲及び具体的な数値は例示的なものに過ぎず、実際の生産及び設計のニーズに応じて調整することができ、本願はこれを限定しないことが理解されるべきである。
【0096】
本願によるいくつかの実施例では、電気金めっき液は、電気金めっき液のpH値を調整するための水素イオン濃度指数(hydrogenionconcentration、pH)添加剤をさらに含んでもよい。
【0097】
いくつかの実施例では、pH添加剤は、酸又は塩基であってもよい。酸は、例えば、硫酸、リン酸又は有機ホスホン酸のうちの少なくとも1種を使用してもよいが、これらに限定されない。例示的には、有機ホスホン酸は、ヒドロキシエチリデン二リン酸、アミノトリメチレンホスホン酸又はエチレンジアミンテトラメチレンホスホン酸のうちの少なくとも1種を使用してもよいが、これらに限定されない。塩基は、例えば、水素化カリウム、水素化ナトリウム、又はアンモニア水のうちの少なくとも1種を使用してもよいが、これらに限定されない。
【0098】
好適には、電気金めっき液のpH値は、5以上7以下であってもよい。
【0099】
なお、電気金めっき液のpH値が5~7に設けられることによって、鉛含有化合物は、該弱酸性の電気金めっき液への溶解度に優れ、沈殿析出が発生しにくく、電気金めっき液の効果への影響を避けるのに有利であり、電気金めっき液の長期安定性が良好になる。一方、シアン化第1金塩が系の低いpH値によりシアン化水素の揮発を引き起こし、金めっき効果を損なうという問題を回避するのに有利である。
【0100】
例示的には、電気金めっき液のpH値は、5、5.1、5.2、5.3、5.4、5.5、5.6、5.7、5.8、5.9、6.0、6.1、6.2、6.3、6.4、6.5、6.6、6.7、6.8、又は7、及び上記の任意の2つの数値からなる範囲内の任意の値であってもよい。さらに、電気金めっき液のpH値は、好ましくは5.2~6.9であってもよい。
【0101】
上記の電気金めっき液のpH範囲の値及び具体的な数値は例示的なものに過ぎず、実際の生産及び設計のニーズに応じて調整することができ、本願はこれを限定しないことが理解されるべきである。
【0102】
本願によるいくつかの実施例では、電気金めっき液の製造方法は、シアン化第1金塩、導電性塩、シュウ酸塩、鉛含有化合物、添加剤、及び水を混合し、該電気金めっき液を得るステップをさらに含んでもよい。添加剤は、フェノール系化合物及び/又はゼラチンを含む。
【0103】
本願は、電気金めっき液の製造方法を制限せず、該製造方法は、上記の前記電気金めっき液を保護できればよいことが理解されるべきである。
【0104】
本願の実施例は、上記の電気金めっき液の使用を提供し、該電気金めっき液は、半導体金めっきに用いられ、該電気金めっき液を用いて製造された金バンプは、熱処理後にも高硬度を有する。
【0105】
例示的には、上記の電気金めっき液は、電子回路基板、電子コネクタや半導体の製造などの分野に利用できる。例えば、上記の電気金めっき液は、液晶駆動チップ、イメージセンサー、指紋センサーなど、フォトレジスト技術により形成された高硬度(例えば、硬度は90~120HV)金バンプを半導体の表面に製造することに用いられ得る。
【0106】
本願の実施例は、金バンプの製造方法を提供する。該方法は、半導体を上記の電気金めっき液に入れて電気めっきを行うステップと、その後、電気めっきした半導体を熱処理し、半導体の表面に金バンプを形成するステップと、を含んでもよい。
【0107】
いくつかの実施例では、電気めっきの温度は、30℃以上70℃以下であってもよい。
【0108】
なお、電気めっきの温度が70℃を超える場合、温度が高すぎるため、電気金めっき液の分解を引き起こしたり、電気金めっき液の速すぎる揮発を引き起こしたりする恐れがあり、電気金めっき液の保管に不利である。電気めっきの温度が30℃未満である場合、温度が低すぎるため、陰極の析出効率を低下させ、めっき層を不均一にする恐れがある。
【0109】
例示的には、電気めっきの温度は、30℃、35℃、40℃、45℃、50℃、55℃、60℃、又は70℃、及び上記の任意の2つの数値からなる範囲内の任意の値であってもよい。さらに、電気めっきの温度は、好ましくは40℃~60℃であってもよい。
【0110】
上記の電気めっき温度の範囲及び具体的な数値は例示的なものに過ぎず、実際の生産及び設計のニーズに応じて調整することができ、本願はこれを限定しないことが理解されるべきである。
【0111】
いくつかの実施例では、電気めっきの電流密度は、0.1A/dm以上1.0A/dm以下であってもよい。電気めっきの電流密度が上記の範囲を超える場合、電気金めっき液の分解やめっき層の不均一さを引き起こすことが理解されるべきである。
【0112】
例示的には、電気めっきの電流密度は、0.1A/dm、0.2A/dm、0.3A/dm、0.4A/dm、0.5A/dm、0.7A/dm、0.9A/dm、又は1.0A/dm、及び上記の任意の2つの数値からなる範囲内の任意の値であってもよい。さらに、電気めっきの電流密度は、好ましくは0.151A/dm~0.951A/dmであってもよい。さらに、電気めっきの電流密度は、好ましくは0.31A/dm~0.851A/dmであってもよい。
【0113】
上記の電気めっきの電流密度の範囲及び具体的な数値は例示的なものに過ぎず、実際の生産及び設計のニーズに応じて調整することができ、本願はこれを限定しないことが理解されるべきである。
【0114】
例示的には、上記の熱処理は、アニーリング処理であってもよい。例えば、電気めっきした半導体を280℃で60minアニーリングしてもよい。
【0115】
上記の熱処理の具体的な条件は例示的なものに過ぎず、実際の生産及び設計のニーズに応じて調整することができ、例えば、本願を限定するものではないことが理解されるべきである。
【0116】
いくつかの実施例では、該製造方法によって製造された金バンプは、熱処理後の硬度が90HV以上120HV以下であってもよい。
【0117】
なお、電気めっき金の結合性能は電気めっき金の硬度に関連しており、硬度が高いほど、結合に必要な圧力や温度が高く、デバイスの性能への影響を考慮して、一般には、熱処理後の電気めっき金の硬度は120HV以下に制御される。つまり、上記の製造方法によって製造された金バンプは、デバイスの性能に影響を与えることなく、熱処理後に高硬度を持つことができる。金バンプの寸法や隣接する金バンプ間の間隔を小さくしつつ、熱圧着における金バンプの変形に起因する配線ショート不良を回避する。
【0118】
本願の実施例はまた、上記の金バンプの製造方法によって製造された金バンプを提供する。該金バンプは、熱処理後の硬度が高く(例えば、硬度は、90~120HVである)、形状が規則的である。
【0119】
本願の実施例はまた、上記の金バンプを含む電子部品を提供する。該電子部品は、例えば、無線周波数識別チップ、光レーダー感知チップ、または液晶ドライバチップなどの半導体部品であってもよい。
【0120】
さらに、本願の実施例はまた、上記の電子部品を含む電子機器を提供する。該電子機器は、例えば、携帯電話、タブレットコンピュータ、電子書籍リーダー、パーソナルコンピュータ(personal computer、PC)、ノートブックコンピュータ、パーソナルデジタルアシスタント(personal digital assistant、PDA)、自動車用デバイス、テレビ(またはスマートスクリーン)、ウェアラブルデバイス、スマートウォッチ、スマートブレスレットなどであってもよい。
【0121】
以下に、本願の実施例態を複数の実施例によりさらに説明する。本願の実施例の利点は、以下の明細書において部分的に説明され、その一部は本明細書から明らかになるが、または、本願の実施例の実施によって把握されることが理解されるべきである。
【0122】
〔実施例1〕
2Lビーカーに脱イオン水600mLを加え、次に、HEDP 65gを加え、完全に溶解させるまで撹拌した後、水素化カリウム溶液でビーカー内の溶液のpH値を6.0に調整し、次に、シュウ酸カリウム30g及び金元素の含有量が8gのシアン化第1金カリウムを加えた。溶液が十分に溶解した後、鉛元素の含有量が6mgの酢酸鉛及びカテコール0.1gを加え、完全に溶解させた後、めっき液の液位を1Lにし、めっき液のpH値を6.0にし、電気金めっき液を得た。
電気めっきをする際に、陽極に白金チタン、陰極に新しいニッケルメッキシートを用いた。電気金めっき液を温度40℃(即ち、電気めっき温度)に加熱し、電流密度を0.5A/dmにして、110min電気めっきし、金めっき物を得た。
電気めっき完了後、金めっき物を観察した結果、めっき層の表面が艶消しであった。
【0123】
〔実施例2〕
実施例2では、実施例1に示す方法と比べて、実施例1で加えられた「シュウ酸カリウム30g」を「シュウ酸カリウム15g」、実施例1で加えられた「カテコール0.1g」を「カテコール0.2g」に変更する点は相違する。
電気めっき完了後、金めっき物を観察した結果、めっき層の表面が艶消しであった。
【0124】
〔実施例3〕
実施例3では、実施例1に示す方法と比べて、実施例1で加えられた「カテコール0.1g」を「カテコール0.5g」に変更する点は相違する。
電気めっき完了後、金めっき物を観察した結果、めっき層の表面が艶消しであった。
【0125】
〔実施例4〕
実施例4では、実施例1に示す方法と比べて、実施例1で加えられた「カテコール0.1g」を「4-ヒドロキシベンゼンスルホン酸ナトリウム1.0g」に変更する点は相違する。
電気めっき完了後、金めっき物を観察した結果、めっき層の表面が艶消しであった。
【0126】
〔実施例5〕
実施例5では、実施例1に示す方法と比べて、実施例1で加えられた「カテコール0.1g」を「4-ヒドロキシベンズアルデヒド1.0g」に変更する点は相違する。
電気めっき完了後、金めっき物を観察した結果、めっき層の表面が艶消しであった。
【0127】
〔実施例6〕
実施例6では、実施例1に示す方法と比べて、実施例1で加えられた「カテコール0.1g」を「4-ヒドロキシ安息香酸0.2g」に変更する点は相違する。
電気めっき完了後、金めっき物を観察した結果、めっき層の表面が艶消しであった。
【0128】
〔実施例7〕
実施例7では、実施例1に示す方法と比べて、実施例1で加えられた「カテコール0.1g」を「3,4-ジヒドロキシ安息香酸0.5g」に変更する点は相違する。
電気めっき完了後、金めっき物を観察した結果、めっき層の表面が艶消しであった。
【0129】
〔実施例8〕
実施例8では、実施例1に示す方法と比べて、実施例1で加えられた「HEDP 65g」を「リン酸一カリウム65g」、実施例1で加えられた「カテコール0.1g」を「3,5-ジヒドロキシ安息香酸0.5g」に変更する点は相違する。
電気めっき完了後、金めっき物を観察した結果、めっき層の表面が艶消しであった。
【0130】
〔実施例9〕
実施例9では、実施例1に示す方法と比べて、実施例1で加えられた「HEDP 65g」を「リン酸一カリウム65g」、実施例1で加えられた「カテコール0.1g」を「3-ヒドロキシピリジン0.5g」に変更する点は相違する。
電気めっき完了後、金めっき物を観察した結果、めっき層の表面が艶消しであった。
【0131】
〔実施例10〕
実施例10では、実施例1に示す方法と比べて、実施例1で加えられた「HEDP 65g」を「リン酸一カリウム65g」、実施例1で加えられた「カテコール0.1g」を「ゼラチン0.1g」、実施例1の「電気金めっき液を温度40℃に加熱し」を「電気金めっき液を温度60℃に加熱し」に変更する点は相違する。
電気めっき完了後、金めっき物を観察した結果、めっき層の表面が艶消しであった。
【0132】
〔実施例11〕
実施例11では、実施例1に示す方法と比べて、実施例1で加えられた「HEDP 65g」を「リン酸一カリウム65g」、実施例1で加えられた「カテコール0.1g」を「ゼラチン0.5g」、実施例1の「電気金めっき液を温度40℃に加熱し」を「電気金めっき液を温度60℃に加熱し」に変更する点は相違する。
電気めっき完了後、金めっき物を観察した結果、めっき層の表面が艶消しであった。
【0133】
〔実施例12〕
実施例12では、実施例1に示す方法と比べて、実施例1で加えられた「カテコール0.1g」を「ゼラチン0.1g」、実施例1の「電気金めっき液を温度40℃に加熱し」を「電気金めっき液を温度60℃に加熱し」に変更する点は相違する。
電気めっき完了後、金めっき物を観察した結果、めっき層の表面が艶消しであった。
【0134】
〔実施例13〕
実施例13では、実施例1に示す方法と比べて、実施例1で加えられた「カテコール0.1g」を「ゼラチン0.5g」、実施例1の「電気金めっき液を温度40℃に加熱し」を「電気金めっき液を温度60℃に加熱し」に変更する点は相違する。
電気めっき完了後、金めっき物を観察した結果、めっき層の表面が艶消しであった。
【0135】
〔比較例1〕
比較例1では、実施例1に示す方法と比べて、実施例1で加えられた「カテコール0.1g」を「カテコール0g」に変更する点は相違する。
電気めっき完了後、金めっき物を観察した結果、めっき層の表面が艶消しであった。
【0136】
〔比較例2〕
比較例2では、実施例1に示す方法と比べて、実施例1で加えられた「カテコール0.1g」を「カテコール0.05g」に変更する点は相違する。
電気めっき完了後、金めっき物を観察した結果、めっき層の表面が艶消しであった。
【0137】
〔比較例3〕
比較例3では、実施例11に示す方法と比べて、実施例11で加えられた「酢酸鉛6mg」を「酢酸鉛1mg」に変更する点は相違する。
電気めっき完了後、金めっき物を観察した結果、めっき層の表面が艶消しであった。
【0138】
〔比較例4〕
比較例4では、実施例12に示す方法と比べて、実施例12で加えられた「ゼラチン0.1g」を「ゼラチン0g」に変更する点は相違する。
電気めっき完了後、金めっき物を観察した結果、めっき層の表面が艶消しであった。
【0139】
〔比較例5〕
比較例5では、実施例12に示す方法と比べて、実施例12で加えられた「ゼラチン0.1g」を「ゼラチン0.01g」に変更する点は相違する。
電気めっき完了後、金めっき物を観察した結果、めっき層の表面が艶消しであった。
【0140】
上記の実施例1~13及び比較例1~5における電気めっき物の析出効率を算出し、熱処理前と熱処理後のめっき層の硬度をテストし、その結果を表1に示す。
析出効率:電気めっき完了後、秤量法により電気金めっき液の析出効率を算出した。析出効率は、電気めっき金の重量を、電気めっき中の電気量のすべてから変換される一価金の理論重量で割ったものである。
めっき層硬度:ビッカース硬度計を用いてめっき層の硬度をテストした。具体的には、10gf負荷を用いて測定押子をめっき層の表面で10s保持することで、熱処理前と熱処理後のめっき層の硬度をテストした。ここで、熱処理条件として、280℃の条件で60minアニーリングする。
実施例1における電気金めっき液を用いて、株式会社山本鍍金社製の縦型電気めっき槽中で電気めっきを、電流密度0.5A/dm、電気めっき温度40℃で、40min行った。これにより得られた金バンプの輪郭を顕微鏡下で、100倍拡大した写真を図1に示し、対応する高さ測定結果を図2に示す。
実施例10における電気金めっき液を用いて、株式会社山本鍍金社製の縦型電気めっき槽中で電気めっきを、電流密度0.5A/dm、電気めっき温度65℃で、30min行った。これにより得られた金バンプの輪郭を顕微鏡下で、100倍拡大した写真を図3に示し、対応する高さ測定結果を図4に示す。
【0141】
【表1-1】
【表1-2】
【0142】
表1のデータを参照して、本願の実施例1~13における電気金めっき液を用いて電気めっきを行うことにより得られた金バンプは、熱処理前に高硬度を有することに加えて、熱処理後にも90HV以上の高硬度を保持し、しかも、比較例1~5における金バンプの熱処理後の硬度よりも高かった。
【0143】
具体的には、比較例1及び実施例1から明らかに、電気金めっき液にカテコールを添加することによって、金バンプの熱処理後の硬度を顕著に高め、90HVと高い硬度を保持することができる。比較例2及び実施例1から明らかに、電気金めっき液に添加されたカテコールの含有量が0.05gしかない場合、含有量が低すぎるため、カテコールが金バンプの熱処理後の硬度を高める作用を果たすのに不利である。比較例3及び実施例11から明らかに、電気めっき液に酢酸鉛が添加されており、鉛元素の含有量が1mgである場合、金バンプの熱処理後の硬度は83HVであり、鉛元素の含有量が6mgである場合、金バンプの熱処理後の硬度は114HVであり、このことから、酢酸鉛がゼラチンと相乗的に作用して、金バンプの熱処理後の硬度を高めることが明らかになった。比較例4及び実施例12から明らかに、電気金めっき液にゼラチンが添加されることによって、金バンプの熱処理前の硬度を103HVと高い硬度に効果的に高めるに加えて、金バンプの熱処理後の硬度を92HVと高い硬度に顕著に高めることができる。比較例5及び実施例12から明らかに、電気金めっき液に添加されたゼラチンの含有量が0.01gしかない場合、含有量が低すぎるため、ゼラチンが金バンプの熱処理前の後硬度を高める作用を果たすのに有利である。
【0144】
図1及び図3から、実施例1及び実施例10における電気金めっき液を用いて製造された金バンプについては、写真にはめっき漏れやウィッキングが認められておらず、フォトレジストの溶解や破裂がなかった。金バンプの形状が規則的であり、金バンプの表面にノジュールやピンホールが認められていない。金バンプの表面が平坦で、傾斜したりすることはない。図2に示すように、実施例1の電気金めっき液を用いて製造された金バンプは、高さが12.275μmで、先端の高さ差が1.199μmである。図4に示すように、実施例10の電気金めっき液を用いて製造された金バンプは、高さが9.509μmで、先端の高さ差が0.970μmである。図2に示す1.199μmの先端の高さ差よりも、図4に示す先端の高さ差が低下することから、本願の実施例による電気金めっき液には所定のレベリング能力もあることが示唆された。
【0145】
以上のように、上記の表1、及び図1図4から分かるように、本願の実施例では、電気金めっき液にフェノール系化合物及び/又はゼラチンが添加され、これらが他の成分と相乗的に作用することによって、該電気金めっき液を用いて製造された金バンプは、熱処理後にも高硬度(例えば、90~118HV)を持ち、しかも、得られた金バンプの形状が規則的であり、生産に要求される規格を満たす。よって、金バンプの寸法や隣接する金バンプ間の間隔を小さくしつつ、熱圧着における金バンプの変形に起因する配線ショート不良を回避する。
【0146】
上記は、本願の特定の実施形態にすぎないが、本願の保護範囲はこれに限定されるものではなく、本願が開示した技術的範囲内において、当業者が容易に思いつくことができる変更又は置換であれば、本願の保護範囲内に含まれるものとする。したがって、本願の保護範囲は、当該請求項の保護範囲に準ずるものとする。
図1
図2
図3
図4