(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024095978
(43)【公開日】2024-07-11
(54)【発明の名称】ビームフォーミング方法及びシステム
(51)【国際特許分類】
A61B 8/14 20060101AFI20240704BHJP
【FI】
A61B8/14
【審査請求】未請求
【請求項の数】18
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023191505
(22)【出願日】2023-11-09
(31)【優先権主張番号】22315360
(32)【優先日】2022-12-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(71)【出願人】
【識別番号】508291928
【氏名又は名称】スーパー ソニック イマジン
【氏名又は名称原語表記】SUPER SONIC IMAGINE
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【弁理士】
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100135703
【弁理士】
【氏名又は名称】岡部 英隆
(72)【発明者】
【氏名】フラッパール,トマ
(72)【発明者】
【氏名】ランベール,ウィリアム
【テーマコード(参考)】
4C601
【Fターム(参考)】
4C601EE04
4C601HH24
4C601HH27
4C601HH29
4C601JC37
(57)【要約】
【課題】ビームフォーミング方法及びシステムを提供する。
【解決手段】本発明は、媒体(M)に送信される複数の隣接合焦ビーム(b1,b2)であって、異なる焦点深度(FD1,FD2)を有する複数の隣接合焦ビーム(b1,b2)に基づいて、合成送信ビーム(STB)を再構成することを含むビームフォーミング方法(100)に関する。
【選択図】
図2A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
媒体(M)に送信される複数の隣接合焦ビーム(b1,b2)であって、異なる焦点深度(FD1,FD2)を有する複数の隣接合焦ビーム(b1,b2)に基づいて、合成送信ビーム(STB)を再構成することを含む、
ビームフォーミング方法(100)。
【請求項2】
上記焦点深度(FD1,FD2)は、上記媒体(M)中の関心対象領域(ROI)の深さの関数として定義される、
請求項1記載の方法。
【請求項3】
上記焦点深度(FD1,FD2)は、深度方向における上記関心対象領域(ROI)の拡がりの範囲内又は範囲外にあるように定義される、
請求項2記載の方法。
【請求項4】
上記焦点深度のうちの第1の焦点深度(FD1)は、上記関心対象領域(ROI)の中心深度レベル(CDL)の上方にあり、
上記焦点深度のうちの第2の焦点深度(FD2)は、上記関心対象領域(ROI)の中心深度レベル(CDL)の下方にある、
請求項3記載の方法。
【請求項5】
上記第1の焦点深度(FD1)及び上記第2の焦点深度(FD2)は、上記関心対象領域(ROI)の中心深度レベル(CDL)から同じ距離(d1,d2)を有する、
請求項4記載の方法。
【請求項6】
送信される上記複数のビーム(b1,b2)は異なる開口を有する、及び/又は、送信されるビームの開口はその焦点深度(FD1,FD2)の関数として決定される、
請求項1~5のうちの1つに記載の方法。
【請求項7】
2つよりも多くの隣接合焦ビーム(b1,b2,b3,b4,b5,b6,b7,b8)が、2つ以上の異なる焦点深度を有して、媒体に送信される、
請求項1~6のうちの1つに記載の方法。
【請求項8】
上記2つよりも多くの隣接合焦ビーム(b1,b2,b3,b4,b5,b6,b7,b8)の異なる焦点深度は交替している、
請求項7記載の方法。
【請求項9】
上記焦点深度(FD1,FD2)は、上記複数の隣接合焦ビーム(b1,b2)が上記媒体(M)中の関心対象領域(ROI)において重複するように、及び/又は、上記媒体(M)の関心対象領域(ROI)における上記複数の隣接合焦ビーム(b1,b2)間の重複が増大されるように選択される、
請求項1~8のうちの1つに記載の方法。
【請求項10】
上記複数の隣接合焦ビーム(b1,b2)は互いにオフセットされる、及び/又は、上記複数の隣接合焦ビーム(b1,b2)は隣接走査線(SL1,SL2)に沿って配置される、
請求項1~9のうちの1つに記載の方法。
【請求項11】
上記隣接合焦ビーム(b1,b2)は、上記媒体(M)に送信される超音波に基づき、及び/又は、上記隣接合焦ビーム(b1,b2)は、超音波が通過した上記媒体(M)の物理的エリアに対応する、
請求項1~10のうちの1つに記載の方法。
【請求項12】
上記合成送信ビーム(STB)を再構成することは、上記媒体(M)に送信される複数の隣接合焦ビーム(b1,b2)に関連付けられた上記媒体(M)の信号データに基づいて、上記合成送信ビーム(STB)を再構成することを含む、
請求項1~11のうちの1つに記載の方法。
【請求項13】
信号データは、同相及び直交位相(IQ)データのうちの少なくとも一方を含み、
上記IQデータの位相は、上記隣接合焦ビーム(b1,b2)の焦点深度(FD1,FD2)に関して、上記合成送信ビーム(STB)の合成焦点深度(SFD)の関数として調整される、
請求項1~12のうちの1つに記載の方法。
【請求項14】
上記方法は、上記媒体(M)における空間領域の物理的特性を、上記再構成された合成送信ビーム(STB)の関数として決定することをさらに含み、
上記合成送信ビーム(STB)は上記空間領域において合焦される、
請求項1~13のうちの1つに記載の方法。
【請求項15】
異なる焦点深度(FD1,FD2)を有する複数の隣接合焦ビーム(b1,b2)を媒体(M)に逐次的に送信することと、
各送信されたビームに応答して上記媒体(M)の信号データの集合を取得することと、
請求項1~14のうちの1つに記載のビームフォーミング方法で上記信号データの集合を処理することとを含む、
データ取得方法。
【請求項16】
請求項15記載のデータ取得方法と、
上記処理されたデータに基づいて画像データをコンパイルすることとを含む、
医療用イメージング方法。
【請求項17】
データ処理装置によって実行されたとき、請求項1~16のうちの1つに記載の方法の処理動作を上記データ処理装置に実行させるコンピュータ可読命令を含むコンピュータプログラム。
【請求項18】
媒体(M)に送信される複数の隣接合焦ビーム(b1,b2)であって、異なる焦点深度(FD1,FD2)を有する複数の隣接合焦ビーム(b1,b2)に基づいて、合成送信ビーム(STB)を再構成するように構成された処理装置(30)を備える、
ビームフォーミングシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ビームフォーミング方法及びシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、医療用イメージング、レーダ、ソナー、地震学、無線通信、電波天文学、音響学、及び生物医学の分野において、通信、イメージング、又はスキャンの目的でトランスデューサを使用することが知られている。一例は超音波イメージングを含む。
【0003】
超音波イメージングの1つの目的は、調査対象である媒体の超音波画像を生成することである。この超音波画像は、Bモード画像とも呼ばれ、媒体反射率の推定値である。従来の超音波イメージング方法において、1組の超音波トランスデューサ素子を備えた超音波トランスデューサ装置(超音波プローブとも呼ばれる)が使用されてもよい。本方法では、1つ又は複数のトランスデューサを用いて、1つの超音波ビーム又は連続したいくつかの超音波ビームが媒体に送信され、これが送信動作に対応する。各送信ビームに関して、媒体によって発生した後方散乱エコーは、同じ又は他の1組のトランスデューサ素子によって受信される。特に、トランスデューサ素子の各々は、受信されたエコー信号を、例えば電気信号に変換する。信号はさらに、超音波システムによって、又は、任意の関連付けられた(オプションで専用の)システムによって、処理されてもよい。例えば、それらは増幅、フィルタリング、ディジタル化されてもよく、及び/又は、信号調節動作が実行されてもよい。トランスデューサ素子は、トランスデューサライン、トランスデューサアレイ、マトリクストランスデューサ、三次元(3D)トランスデューサ、又は他の任意の構成として配置されてもよい。
【0004】
従来技術によれば、上記信号は次いで画像処理システムに送られる。受信された信号は、例えば、ビームフォーミング方法、より具体的には、遅延和(delay and sum:DAS)ビームフォーミング方法を用いて、スキャンされた媒体の画像データを生成するように処理されてもよい。概して、ビームフォーミングは、方向性の信号送信及び/又は受信のためにセンサアレイにおいて従来から使用される信号処理技術として理解されてもよい。この処理を用いて、ビームフォーミングされたデータが生成される。言いかえると、ビームフォーミングは、合成信号が強め合う干渉を形成するように、アンテナアレイ(例えば超音波トランスデューサ)における複数の素子を組み合わせることで達成される信号処理技術として理解されてもよい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】米国特許出願公開第US2022/0287685A1号明細書
【特許文献2】国際公開第WO2017/093778A1号
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】Moo-Ho Bae and Mok-Kun Jeong, "A study of synthetic-aperture imaging with virtual source elements in B-mode ultrasound imaging systems," in IEEE Transactions on Ultrasonics, Ferroelectrics, and Frequency Control, vol. 47, no. 6, pp. 1510-1519, Nov. 2000, doi: 10.1109/58.883540.
【非特許文献2】T. Hergum, T. Bjastad, K. Kristoffersen and H. Torp, "Parallel beamforming using synthetic transmit beams," in IEEE Transactions on Ultrasonics, Ferroelectrics, and Frequency Control, vol. 54, no. 2, pp. 271-280, February 2007, doi: 10.1109/TUFFC.2007.241.
【発明の概要】
【0007】
本開示はビームフォーミング方法に関する。本方法は、媒体に送信される複数の隣接合焦ビームに基づいて、合成送信ビームを再構成することを含む。さらに、複数の隣接合焦ビームは異なる焦点深度を有する。
【0008】
合成送信ビームは、任意の信号処理技術によって再構成されてもよい。
このコンテキストにおいて、用語「再構成(reconstructing)」は、「合成(synthetizing)」こと又は「ビームフォーミング(beamforming)」として理解されてもよい。
用語「合成」及び「再構成」は、複数の隣接合焦ビームの間において重複しているエリア内に位置した散乱体によって生成された情報を用いることを示してもよい。
例えば、「再構成」は、情報のコヒーレントな総和を計算することを示してもよく、構成される画像の各画素に関連付けられるか各画素を表す各空間領域における仮想痩身合焦ビームを後向き(retrospective)に再生成することができる。
合成送信ビームは、複数の隣接合焦ビームの任意の重複するエリアにおいて再構成されてもよい。
【0009】
合焦ビームは媒体に送信され、従って、(例えば合成送信ビームとは対照的に)物理的ビームとみなされてもよい。合焦ビームは、複数のトランスデューサ素子を用いて送信されてもよい。一例として、合焦ビームは信号ビームであってもよい。例えば、複数のトランスデューサ素子は単一の平面に配置されてもよい。しかしながら、トランスデューサ素子はマトリクス形式で(すなわち、後述するように、三次元イメージングを可能にするように)配置されることも可能である。下記の開示では、特に、媒体の二次元(2D)画像を生成するように単一の平面に配置されたトランスデューサ素子を用いる実施例を参照する。この例示的な開示は、媒体の三次元(3D)画像を生成するようにマトリクス形式で配置されたトランスデューサ素子を用いる実施例に拡張されてもよい。
【0010】
送信される合焦ビームは任意の形状を有してもよい。例えば、合焦ビームは、本質的に、一対の錐体の形状を有してもよい。合焦ビームは、本質的には、レーザ技術又は光学において使用されるビームプロファイル形状のような、ガウスビームのプロファイル形状を有してもよい。特に、合焦ビームは、出発点において、例えば複数のトランスデューサ素子において、放射方向に広い拡がりを有し、焦点深度において放射方向に狭い拡がりを有し(ウエストとも呼ぶ)、遠方界において放射方向に広い拡がりを有してもよい。出発点は、複数のトランスデューサ素子に位置してもよい。遠方界は、送信される合焦ビームの焦点よりもトランスデューサ素子からより遠隔した点又はエリアであってもよく、又は、そのような点又はアリアを含んでもよい。例えば、遠方界は、フラウンホーファー距離よりも大きな距離に対応してもよい。
【0011】
詳細後述するように、送信される合焦ビームは、予め定義された焦点エリアに波全体を合焦するために、電子的に生成される、すなわち、隣接したトランスデューサ素子によって生成される単一のパルスをそれぞれ遅延させることによって生成されてもよい。
【0012】
隣接合焦ビームは、例えば、複数のトランスデューサ素子によって送信される2つの合焦ビームであってもよく、合焦ビームの各々は、合成開口に関する異なる設定内容で送信される。合成開口アプローチでは、複数のトランスデューサ素子は、素子ごとに点火されてもよく、各送信及び受信素子の間におけるインパルス応答の完全な集合がビームフォーミング及び記録される。合成開口の設定内容は、点火する素子の個数、点火のシーケンス、及び点火する素子間の遅延に依存してもよい。
【0013】
合焦ビームは焦点領域を有してもよい。
【0014】
異なる焦点深度を有する合焦ビームは、例えば、複数のトランスデューサ素子により近接する焦点領域を有する1つの合焦ビームと、複数のトランスデューサ素子からより遠隔した焦点領域を有する他の合焦ビームとであってもよい。
【0015】
概して、本開示に係る方法はまた、超音波検査のような任意の技術分野に適用さlれてもよい。特に、検査される媒体又は環境のデータ/信号を取得するために複数のトランスデューサ素子を使用し、及び/又は、オプションで、収集されたデータ/信号に基づいてビームフォーミング技術を使用しうる任意の技術分野が可能である。実施例は、レーダシステム、ソナーシステム、地震学システム、無線通信システム、電波天文学システム、音響学システム、非破壊試験(Non-Destructive Testing:NDT)システム、及び生物医学システムを用いる方法を含む。本方法は、媒体に関する情報を取得することに特に適している可能性がある。
【0016】
媒体は、例えば生体であり、特にヒト又は動物の身体であり、又は、他の任意の生物学的又は物理化学的な媒体(例えば生体外媒体)であってもよい。従って、媒体は生体組織を含んでもよい。例えば、媒体は、脂肪、筋肉、骨格、及び血管のような、様々な物理的性質をそれぞれ有する組織を含んでもよい。媒体はまた、例えば、砂利、溶岩、又は溶接のような、非生物の材料であってもよい。
【0017】
媒体は、その物理的性質の変動を有することがある。さらなる実施例では、組織は、機能不全及び/又は病気(例えば、癌細胞、筋肉断裂、…)から影響を受けるエリア、又は、媒体の他のエリアに比較での様々な物理的性質を有する他の任意の特異なエリアを含む可能性がある。
【0018】
合成送信ビームの1つの利点は高い速度にある。さらに、本方法は、使用されるトランスデューサの個数がより大きくなりうるので、より高速であるだけでなく、1つの特定の点により良好に合焦する。従って、より強い合焦は、複数のエリアに重複なく適用されうる。異なる焦点深度に起因した他の利点は、複数の合成送信ビームがさらに異なり、また、より良好なコヒーレント総和が達成されうることにある。
【0019】
1つの態様において、焦点深度は、観察される媒体に位置する関心対象領域の深度の関数として定義されてもよい。
【0020】
関心対象領域は、例えばユーザ及び/又はアルゴリズムによって選択された、予め定義された関心対象領域であってもよい。関心対象領域は、デフォルト値として設定された、予め定義された関心対象領域であってもよい。関心対象領域は、2D(二次元)又は3D(三次元)の空間領域であってもよい。関心対象領域は、任意の形状又は寸法の拡がりを有してもよい。例えば、関心対象領域は、円、矩形、又は立方体の形状を有してもよい。
【0021】
概して、合成送信ビームは合成焦点深度に合焦するといえる(このことが、合成送信ビーム(synthetic transmit beam)(すなわちSTB)によって実際に意味される)。合成焦点深度は関心対象領域にあってもよい。より具体的には、合成送信ビームは、媒体内の、特に関心対象領域内の(例えば予め定義された)空間領域に合焦してもよい。空間領域は、例えば、詳細後述するように、画像データにおける画素又はボクセルに関連付けられてもよい。
【0022】
従って、各空間領域について、合成送信ビームは再構成されてもよい。言いかえると、取得される信号データは、空間領域又は各空間領域に関して、合焦ビームが上記空間領域に合焦するように送信されるかのように、合成されてもよい。
【0023】
従って、合成送信ビームは、複数の異なる空間領域に関して再構成されてもよい。これらの空間領域は、特に、複数の送信ビームが重畳する(すなわち、両方の送信ビームから導出される信号データが存在する)エリアであってもよい。
【0024】
合成送信ビームの再構成に起因して、合成送信ビームに関連付けられた(すなわち、合成送信ビームが合焦する)媒体の空間領域は、媒体に送信される互いに異なる複数の隣接合焦ビームに関連付けられた信号データを用いて再構成されてもよい。
【0025】
1つの態様において、焦点深度は、深度方向における上記関心対象領域の拡がりの範囲内又は範囲外にあるように定義されてもよい。
【0026】
両方の選択肢(関心対象領域の拡がりの範囲内又は範囲外)が可能である。
【0027】
概して、両方の選択肢は、下記のトレードオフに起因する利点を有する。一方の側では、焦点深度は、関心対象領域の正確なイメージングを可能にするように、関心対象領域の中心深度レベルに近接し、従って互いに接近すべきである他方の側では、ビーム及びしたがってそれらの各焦点深度は、ビームに関連する信号の弱め合う干渉によって媒体からより多くの情報を取得するために、十分に相違すべきである。
【0028】
1つの態様において、焦点深度のうちの第1の焦点深度は、関心対象領域の中心深度レベルの上方にあってもよく、焦点深度のうちの第2の焦点深度は、関心対象領域の中心深度レベルの下方にあってもよい。
【0029】
さらなる実施例では、複数の焦点深度の間の距離は、各隣接合焦ビームの被写界深度の関数として決定されてもよい。上記距離は、例えば、隣接合焦ビームの被写界深度のうちの一方又は両方に係る垂直方向の拡がりに対応してもよい。
【0030】
従って、一実施例では、第1及び第2の合焦ビーム(b1,b2)の焦点深度FD1及びFD2の距離は、次式によって計算されてもよい。
【0031】
FD2-FD1 ~= Dz1+Dz2 (式1)
【0032】
ここで、Dz1及びDz2は、焦点深度FD1及びFD2を有する合焦ビーム(b1,b2)にそれぞれ関連付けられた被写界深度であってもよい。(例えば、第1の合焦ビームb1に関連付けられた)被写界深度Dz1は、ビームが走査線に沿って拘束される深度範囲を示す。言いかえると、それは、ビームの焦点がより合っているか、それともより外れているかを定義する。Dz1は、例えば式2を参照して近似的に決定されてもよい。
【0033】
Dz1=7*lambda(FD1/D1)^2, (式2)
【0034】
ここで、D1は、トランスデューサ平面における第1の合焦ビーム(b1)の開口である。それは、アクティブなトランスデューサによって定義される(例えば、使用されるトランスデューサ素子の個数と、圧電ピッチ(piezo-pitch)、すなわち、2つのトランスデューサ素子の間の距離とによって定義される)アクティブ長に対応する。Dz2は、例えば、第2の合焦ビーム(b2)の開口D2の関数として、対応して決定されてもよい。
【0035】
第1の焦点深度及び第2の焦点深度の間の任意の種類の関係が可能である。例えば、第1の焦点深度及び第2の焦点深度の間の関係は、1.2より大きくてもよく(式3a:FD1>1.2*FD2を参照)、より好ましくは、1.5より大きくてもよく(式3b:FD1>1.5*FD2を参照)、さらに好ましくは、1.8より大きくてもよい(式3c:FD1>1.8*FD2を参照)。
【0036】
1つの態様において、第1の焦点深度及び第2の焦点深度は、関心対象領域の中心深度レベルから同じ距離を有してもよい。
【0037】
特に、関心対象領域の中心深度レベルに対して同じ距離を有することと組み合わせて、上述の態様のうちの両方の選択肢(関心対象領域の拡がりの範囲内又は範囲外)が可能である。
【0038】
1つの態様において、複数の送信ビームは異なる開口を有してもよい。さらに、送信ビームの開口は、その焦点深度の関数として決定されてもよい。
【0039】
送信ビームの焦点深度を変更するために、piezoPitchと、使用されるトランスデューサ素子の個数とのうちの少なくとも一方が変更されてもよい。隣接合焦ビームの間においてpiezoPitchが一定に維持される場合、ビームの焦点は同じ強度を有してもよい。使用されるトランスデューサ素子の個数が一定に維持される場合、複数の隣接合焦ビームによって同じエネルギーが媒体へ放射されてもよい。
【0040】
従って、送信ビームの開口、すなわち、ビームを生成するためにトランスデューサ装置によって設定された開口は、焦点深度の変動の関数として変更されてもよい。例えば、焦点があまり深くない場合(すなわち、より小さな深度である場合)、より小さな開口が使用されてもよく、すなわち、トランスデューサ装置のより少ないトランスデューサ素子及び/又は変更されたpiezoPitchが、ビームを生成するために使用されてもよい。
【0041】
また、取得フェーズ(すなわち取得方法)においても、開口は、各送信ビームの焦点深度の関数として決定されてもよい。取得フェーズは、異なる焦点深度を有する複数の隣接合焦ビームを媒体に逐次に送信することを含んでもよい。さらに、取得フェーズは、各送信ビームに応答して媒体の信号データの集合を取得することを含んでもよい。取得フェーズはまた、本開示の任意の実施例に係るビームフォーミング方法で信号データの集合を処理することを含んでもよい。しかしながら、この処理動作は、別個の処理フェーズの一部(すなわち、取得フェーズとは別個)であってもよい。
【0042】
1つの態様において、2つよりも多くの隣接合焦ビームは、2つ以上の異なる焦点深度を有して、媒体に送信されてもよい。
【0043】
2つ以上の異なる焦点深度を有することは、重複及び/又はコヒーレント総和を増大させてもよい。
【0044】
1つの態様において、2つよりも多くの隣接合焦ビームの異なる焦点深度は交替してもよい。
【0045】
言いかえると、(2つよりも多くの)ビームは、交替する第1及び第2の(また、オプションでより多くの)焦点深度を有してもよい。また、複数の焦点深度は、各ビームの走査線にわたって交替してもよい。
【0046】
2つよりも多くの焦点深度が使用されることも可能であり、それらは、関心対象領域の深度の関数として選択されてもよく、及び/又は、本開示の任意の実施例に係る関心対象領域の深度方向の拡がりの範囲内にあってもよい。
【0047】
1つの態様において、焦点深度は、複数の隣接合焦ビームが媒体中の関心対象領域において重複するように選択されてもよい。媒体の関心対象領域における複数の隣接合焦ビームの間の重複が増大されることもまた可能である。
【0048】
1つの態様において、複数の隣接合焦ビームは、互いにオフセットされてもよい。さらに、隣接合焦ビームは、隣接走査線に沿って配置されてもよい。
【0049】
互いにオフセットすることは、例えば、深度方向及び/又はビームの主軸に垂直な方向にあってもよい。複数の走査線は、例えば、互いに平行であってもよい。
【0050】
従って、複数の隣接合焦ビームは、深度方向に垂直な方向において隣接してもよい。言いかえると、複数の隣接合焦ビームは、媒体の横方向の次元において隣接してもよい。従って、横方向の次元は、深度方向の次元(z)とは異なる任意の次元(例えば、x、y)であってもよい。
【0051】
1つの態様において、隣接合焦ビームは、複数のトランスデューサ素子によって媒体に送信されてもよく、走査線は、トランスデューサ素子の配置によって定義されてもよい。例えば、走査線は、トランスデューサ素子の主放射及び/又は受信方向を構成してもよい。この方向はまた、媒体の深度方向(z)と呼ばれることがある。
【0052】
隣接合焦ビームは、例えば、トランスデューサ素子のアレイを備えるトランスデューサ装置又はプローブによって提供されてもよい。
【0053】
1つの態様において、隣接合焦ビームは、媒体に送信される超音波に基づいてもよい。さらに、隣接合焦ビームは、超音波が通過した媒体の物理的エリアに対応してもよい。
【0054】
言いかえると、隣接合焦ビームは、超音波を印加(insonify)した媒体の物理的エリアに対応してもよい。
【0055】
1つの態様において、合成送信ビームを再構成することは、媒体に送信された隣接合焦ビームに関連付けられた媒体の信号データに基づいて合成送信ビームを再構成することを含んでもよい。
【0056】
信号データは、特に、エコー信号のデータであってもよく、すなわち、それらは、本開示の任意の実施例に係る送信ビームの関数として、又は、そのような送信ビームに応答して取得されてもよい。
【0057】
1つの態様において、信号データは、同相及び直交位相(IQ)データの少なくとも一方を含み、IQデータの位相は、隣接合焦ビームの焦点深度に関して、合成送信ビームの合成焦点深度の関数として調整されてもよい。より一般的には、信号データは、未処理のデータ、すなわち、物理的合焦ビームによって生成された後方散乱エコーのデータであってもよい。
【0058】
従って、信号データは、複素IQデータ集合を提供(又は取得)するために処理されてもよい。このことは、各IQデータ集合が合成送信ビームに(及び、したがって、例えば、上で説明したように、画像画素に)にそれぞれ関連付けられることを意味しうる。例えば、IQデータ集合は、復調されたIQ超音波データ集合、及び/又は、IQの予めビームフォーミングされたデータ集合であってもよい。より一般的には、IQデータ集合はIQデータを含んでもよい。例えば、IQデータ集合は、少なくとも一対の同相値及び直交位相値を含んでもよい。従って、IQデータは、復調されたIQ超音波データであってもよい。
【0059】
IQデータは、所定の位相を有してもよく、又は、所定の位相に関連付けられてもよい。
【0060】
本発明において、各画素は、異なる焦点深度を有する可能性がある合焦送信ビームによって生成された後方散乱エコーに基づいて再構成されてもよい。そうするために、ビームフォーミング処理はわずかである必要がある。集束ビームに関して、グイ(Gouy)位相シフトと呼ばれる位相シフトが、収束波から発散波への変換に起因して、焦点深度に現れる。例えば、送信ビームは、(例えば、トランスデューサ素子のリニアアレイを備えたトランスデューサ装置を用いて)送信された円筒波に基づいてもよい。そのような場合、π/2のオーダーのIQデータの位相シフトが生じる可能性がある。すべての送信ビームが同じ焦点深度を有する従来のRTBの場合、各再構成された画素は、1組の収束波(z<zinの場合、zinは焦点深度)及び1組の発散波(z>zinの場合)のいずれかの組み合わせに基づく。本開示において、いくつかの画素は、収束波及び発散波の両方の組み合わせに基づいて再構成されてもよい。このことは、後述するビームフォーミング処理において追加の位相シフト項をもたらす。
【0061】
本開示に係るビームフォーミング方法のより具体的な実施例について、下記の式(4)~(10)のコンテキストにおいて後述する。
【0062】
概して、トランスデューサ装置は、場所rin={zin,xin}に合焦するNin個の集束ビームを放射してもよい(zinは、例えば、上述した焦点深度FD1及び/又はFD2に対応してもよい)。後方散乱エコーは、場所uoutに位置したNout個のトランスデューサによって測定されてもよい。IQr(rin,uout,t)は複素未処理IQデータとして示されてもよく、これは、周波数fdemodにおいて変調され、rinに合焦する集束ビームによって生成され、uoutに位置したトランスデューサによって伝搬時間tにおいて測定される後方散乱エコーに対応する。
【0063】
点r={z,x}におけるIQビームフォーミングされたデータIQb(r)は、次式のように表されてもよい。
【0064】
【0065】
ここで、式(4)のパラメータは、上述され、また、さらに後述される。
【0066】
式(4)は、変調されたIQデータに代えて未処理のrfデータに関して適応化されてもよいことに注意する。
【0067】
式(4)において、TOF(rin,uout,r)は、トランスデューサ装置から点rに伝搬し、受信トランスデューサuoutに戻るエコーのラウンドトリップ伝搬時間であってもよい。式(5)を参照。
【0068】
【0069】
tin及びtoutを決定するために、媒体の音速に関する仮定が必要とされる。簡単化及び処理時間の目的で、媒体は、概して、一定の音速cを有する均質なものとして仮定される。このコンテキストにおいて、tinは、例えば、式(6)によって決定されてもよい。
【0070】
【0071】
toutは、例えば、式(7)によって決定されてもよい。
【0072】
【0073】
また、W(rin,uout,r)は、1つの実施例では、例示的な式(8)に定義されるように、複数の使用を組み合わせうる重みであってもよい。
【0074】
【0075】
この実施例では、
【数6】
は、点rにおけるビームフォーミングされたIQデータを再構成するように設定されもよい、互いに異なる複数のビームに対する重みを選択してもよく、また、潜在的に適用してもよい。例えば、式(9)を参照。
【0076】
【0077】
ここで、maskは、ビームフォーミングされる点rが、rinに合焦する送信ビームが印加されるエリア内にあるか否かを定義するように構成された、予め定義された関数であってもよい。この関数は、送信ビームの幾何学的形状に基づいて、又は、送信ビームのより高度なシミュレーションによって決定されてもよい。このmaskは、空間的ウィンドウを埋め込むようにより複雑になる可能性があることに注意する。それは、rinに合焦する入射ビームに関して、点rに位置した散乱体によって受信されるエネルギー量に依存しうる。
【0078】
【数8】
は、
【数9】
に対応しうるが、ただし、出力に関する。例えば、ビームフォーミングされた画素の横方向の座標xに比較された受信トランスデューサu
outの水平方向の座標の差に基づいて、受信空間的ウィンドウアポディゼーションが一般に用いられる。概して、開口サイズA(すなわち、深度zにおけるビームフォーミングされたデータに対してどの受信チャネルが使用されるか)を定義する一定のfNumber、fN=z/Aが定義されてもよい。
【0079】
Wphaseは、グイ(Gouy)位相シフトを補償するために使用される追加の項、例えば式(10)に対応しうる。
【0080】
【0081】
しきい値zinにおける位相シフト(例えば0からπ/2へ)の平滑化された遷移を提供することも可能になりうる。
【0082】
1つの態様において、本方法は、再構成された合成送信ビームの関数として、媒体における空間領域の物理特性を決定することを含んでもよい。合成送信ビームが空間領域に合焦されることも可能になりうる。
【0083】
物理特性は、例えば、媒体の画像データ又は反射率であってもよい。空間領域は、例えば、画像データにおける画素又はボクセルに対応してもよい。
【0084】
1つの態様において、本開示はデータ取得方法に関連してもよい。データ取得方法は、異なる焦点深度を有する複数の隣接合焦ビームを媒体に逐次に送信することを含んでもよい。さらに、データ取得方法は、各送信ビームに応答して媒体の信号データの集合を取得することを含んでもよい。データ取得方法はまた、本開示の任意の実施例に係るビームフォーミング方法で信号データの集合を処理することを含んでもよい。
【0085】
データ取得方法は、例えば、医療用データ取得方法であってもよい。データ取得方法は、(ディジタル)データ、例えばチャネルデータ、すなわちRF(未処理)データを取得するために、媒体からエコー信号を受信することと、オプションで前処理動作とを含んでもよい。
【0086】
信号データは、例えば、医療用データであってもよい。取得された医療用データは、未処理データと呼ばれることがある。例えば、医療用データは、健康状態(例えばスポーツマン)をよりよく理解するために又は発生しうる病態を識別するために観察される生物に関連してもよい。医療用データは、医療用イメージング方法で取得されてもよい。医療用イメージング方法の例は、超音波イメージング、トモグラフィー及び/又は三次元(3D)イメージング、X線イメージング、マンモグラフィーイメージング、及び核磁気共鳴映像法(magnetic resonance imaging:MRI)であってもよい。
【0087】
従って、信号データの第1の集合は、第1の送信ビームに応答して取得されてもよく、信号データの第2の集合は、第2の送信ビームに応答して取得されてもよく、このことは数回にわたって繰り返される、すなわち、それぞれ継続されてもよい。
【0088】
合成送信ビームは、各複数の送信された隣接合焦ビームに関連付けられた信号データの複数の集合(例えば、2つの送信ビームに関連付けられた2つの集合)に基づいて再構成されてもよい。
【0089】
1つの態様において、本開示は医療用イメージング方法に関連してもよい。医療用イメージング方法は、本開示の任意の実施例に係るデータ取得方法を含んでもよい。さらに、医療用イメージング方法は、処理されたデータに基づいて画像データをコンパイルすることを含んでもよい。
【0090】
従って、医療用イメージング方法は、画像データを取得するために、未処理のデータを取得する医療用データ取得方法と、未処理のデータを処理する医療用データ処理方法とを含んでもよい。次いで、それらの画像データは、同じ装置上に表示されてもよく、オプションでリアルタイムで、又は後で又は同時に、専用装置上に、及び/又は、(スマートフォン又はタブレットの画面のような)他の表示装置上に表示されてもよい。
【0091】
1つの態様において、本開示は、データ処理装置によって実行されたとき、本開示の任意の実施例に係る方法の処理動作をデータ処理装置に実行させるコンピュータ可読命令を含むコンピュータプログラムに関連してもよい。本方法の動作が、単なるデータ処理を越える任意の(物理的)態様(例えば超音波放射)を含みうる場合、コンピュータプログラムはさらに、データ処理システムによって実行されたとき、システムの任意の外部構成要素(例えば超音波トランスデューサ装置)にこれらの動作を実行させるコンピュータ可読命令を含んでもよい。
【0092】
コンピュータプログラムはまた、処理システムに関連付けられた1つ又は複数のプローブ又は他の任意の外部装置を動作させるように構成されてもよい。
【0093】
本開示はまた、ビームフォーミングシステムに関連してもよい。本システムは、媒体に送信される複数の隣接合焦ビームであって、異なる焦点深度を有する複数の隣接合焦ビームに基づいて合成送信ビームを再構成するように構成された処理装置を備えてもよい。
【0094】
本ビームフォーミングシステムはさらに、上述した方法の特徴又は動作のうちの任意のものを実行するように構成されてもよい。
【0095】
ビームフォーミングシステムは、例えば、超音波空間・時間信号データを取得するトランスデューサ装置を備えてもよく、又は、そのようなトランスデューサ装置に接続可能であってもよい。さらに、本システムが、外部データシステム、例えばデータ記憶装置から超音波空間・時間信号データを受信することも可能である。
【0096】
外部データシステムは、人工知能(AI)、機械学習モデル(ML)、又は機械学習アルゴリズムのプログラムコード又は実装を備えてもよい。AI又は機械学習モデルは、空間・時間信号データのようなトレーニングデータを用いてトレーニングされてもよい。さらに、本開示の実施例に従って任意のデータを前処理又は後処理するためにAI又はMLが使用されることが可能になりうる。
【0097】
例えば、AI又はMLは、教師あり学習アルゴリズム、教師なし学習アルゴリズム、半教師あり学習アルゴリズム、人工ニューラルネットワーク(artificial neural network:ANN)、サポートベクトルマシン、ランダムフォレストモデル、又は勾配ブースティングモデルを備えてもよい。
【0098】
概して、本開示において、パルスは、トランスデューサ素子によって放射された音響及び/又は電気信号に対応してもよい。パルスは、例えば、パルス継続時間、結果として生じる波の周波数、所与の周波数におけるサイクル数、パルスの極性、などのうちの少なくとも1つによって定義されてもよい。波は、1つ又は複数のトランスデューサ素子によって(すなわち、それぞれ放射されたパルスによって)生成される波面に対応しうる。波は、互いに異なる使用された複数のトランスデューサ素子の間の放射遅延によって制御されてもよい。実施例は、平面波、合焦された波、及び発散波を含む。ビームは、(例えば媒体における)超音波の波が印加される物理的エリアに対応してもよい。従って、ビームは波に関連しうるが、時間的概念をあまり又はまったくもたなくてもよい。例えば、合焦されたビームの被写界深度が関心対象である場合、それはビームと呼ばれることもある。
【0099】
矛盾しない限り、上述した構成要素及び本明細書内で説明したものが組み合わされもよいことが意図される。
【0100】
先述の概要説明及び後述の詳細説明の両方は例示及び説明にすぎず、実例の提示を目的とし、請求項に記載された開示の限定ではないことは理解されるべきである。
【0101】
添付図面は、本明細書に組み込まれ、本明細書の一部を構成し、その説明とともに本開示の実施例を示し、その原理をサポート及び説明するために提示される。
【図面の簡単な説明】
【0102】
【
図1】従来技術に係る、同じ焦点深度FD1を有する2つの隣接合焦ビームb1及びb2を示す。
【
図2A】本開示の実施例に係る、媒体に送信された複数の隣接合焦ビームに基づいて合成送信ビーム(STB)を再構成することを含むビームフォーミング方法100のフローチャートを示す。
【
図2B】本開示に係る、異なる焦点深度FD1及びFD2を有する2つの隣接合焦ビームb1及びb2を示す。
【
図3A】本開示の実施例に係る、深度方向における関心対象領域ROIの拡がりの範囲内にある焦点深度FD1及びFD2を示す。
【
図3B】本開示の実施例に係る、深度方向における関心対象領域の拡がりの範囲外にある焦点深度FD1及びFD2を示す。
【
図3C】本開示の実施例に係る、関心対象領域ROIの中心深度レベルCDLの上方にある第1の焦点深度と、関心対象領域ROIの中心深度レベルCDLの下方にある第2の焦点深度とを示す。
【
図3D】本開示の実施例に係る、関心対象領域ROIの中心深度レベルCDLから同じ距離を有する第1の焦点深度FD1及び第2の焦点深度FD2を示す。
【
図4】本開示の実施例に係る、互いにオフセットOFSされた隣接合焦ビームb1及びb2であって、複数のトランスデューサ素子22によって媒体に送信される隣接合焦ビームb1及びb2を示す。
【
図5】本開示の実施例に係る、2つの異なる焦点深度を有して媒体に送信される2つよりも多くの隣接合焦ビームb1、b2、b3、b4、b5、b6、b7、及びb8を示す。
【
図6A】本開示の実施例に係る超音波システム100の概略図を示す。
【
図6B】本開示の実施例に係る超音波イメージングシステム10の概略図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0103】
ここで、本開示の実施例が詳細に参照され、その実施例は添付図面に図示されている。図面の全体にわたって可能であればどこでも、同じ部分又は同様の部分を示すために同じ参照番号が使用される。
【0104】
概して、従来の医療用イメージングは、1つのモードの信号を送信及び受信することで媒体を検査することに焦点をおいている。しかしながら、例えば、医療用イメージングデータを改善し、より高速かつより正確な検査結果を得ることを支援するために、異なるモードを組み合わせることも可能である。
【0105】
従来のBモード(brightness mode:輝度モード)画像化は、概して、収束する(又は合焦された)送信ビームを使用する。それらは、焦点深度、開口(送信トランスデューサの集合)、及び送信角度のようなパラメータによって定義される。各ビームは、各送信トランスデューサ素子によって生成され、所望の焦点深度に合焦するように送信時の適切な遅延によって整形された複数のパルスの組み合わせから生じる。パルスは、中心送信周波数、パルス長、デューティ比のようなパラメータによって定義される。各ビームは、関連付けられた走査線に沿って中心を有する。走査線の集合は、イメージング平面を覆うように(1Dプローブの場合)、又は、イメージング体積を覆うように(2Dプローブの場合)定義される。2つの走査線の間の距離(すなわち、送信ラインピッチ)と、イメージングフレームレート(Bモード画像を再構成するために使用される送信ビームの合計個数に比例する)との間にトレードオフがある。従って、送信ラインピッチは、通常、理想的な場合より大きな値に設定される。例えば、送信ラインピッチは、空間的ナイキスト基準に従ってλ/2に等しく設定されてもよい。ここで、λは、ビームを生成するために使用される波の波長である。
【0106】
上述したように、関連付けられた走査線に沿って中心を有する各合焦送信ビームに関して、後方散乱エコーは、超音波が印加されたエリア内に位置した媒体散乱体によって生成される。合焦ビームに関して、このエリアは錐体のように見える。後方散乱エコーは、1組の受信トランスデューサによって測定され、ビームフォーミング処理によって走査線に沿った媒体反射率を推定するために使用される。最も広く使用されるものの1つは、遅延和(DAS)ビームフォーミングである。再構成されたエリアに関連付けられる各画素に関して、このビームフォーミングは、異なる受信トランスデューサ素子によって測定され、これらの再構成されたエリアに位置した散乱体によって生成された複数のエコーをコヒーレントに総和することにある。これらのエコーは、入射ビームが選択されたエリアに到達し、後方散乱されたエコーが各受信トランスデューサに向かって戻るように伝搬するラウンドトリップ伝搬距離の仮定に基づいて選択される。
【0107】
最適な送信ラインピッチの使用を妨げる、フレームレート及び送信ラインピッチの間のトレードオフに起因して、単一の送信されたビームに基づいて複数のラインが再構成される。次いで、超音波Bモード画像は、各送信ビームに関連付けられたすべての再構成されたラインを連結することで取得される。ラインのアーティファクトを避けるために、画像全体を再構成するために使用されるすべてのビームに関して同じ焦点深度が使用されることに注意する。
【0108】
例えば特許文献1に説明されるように、後向き送信合焦、合成送信ビームフォーミング(synthetic transmit beamforming:STB)、又は真共焦イメージングとも呼ばれることがある、後向き送信ビームフォーミング(retrospective transmit beamforming:RTB)は、画像再構成を改善するビームフォーミング技術である。そのアイデアは、複数の隣接走査線に中心を有する複数の隣接ビームが互いに重複するという事実にある。従って、連続した複数の隣接ビームにわたって所与の散乱体によって生成される後方散乱エコーは、所与の画素をビームフォーミングするように合成されてもよい。DASビームフォーミングの場合、それらのエコーはコヒーレントに総和される。すべての波伝搬がリニアステップである場合、及び、逐次超音波印加ステップの間に媒体が移動していない場合、この高度なビームフォーミング処理(それは複数の超音波印加に基づく)によって再構成された、ビームフォーミングされた画素は、所望の目標に合焦されるように正確に設計されている合焦ビームに関連付けられた従来のDASビームフォーミング処理と等価である。従って、後向き送信合焦という名前は、再構成された画像の各画素に関して送信合焦が数値的に達成され、共焦イメージング(各画素における送信及び受信ビームフォーミング)をもたらす。
【0109】
従来の画像再構成処理に比較して、RTB処理は画像品質を改善する。物理的送信ビームの被写界深度の外側における横方向の分解能が改善される。隣接合焦ビーム間に重複している超音波印加エリア内に含まれる情報を用いることで、コントラスト及び信号対雑音比が改善される。この情報は、従来のビームフォーミングでは使用されることはない。賢明にも、この情報をコヒーレントに総和することによって、各画素における仮想的な送信合焦ビームを後ろ向きに再生成することができる。STBは、横方向のサンプリング(すなわち送信ラインピッチ)及びイメージングフレームレートの間の新たなトレードオフを提供する。
【0110】
特許文献2は、低減されたスペックルノイズを有する、合成ビームフォーミングを用いて媒体の内部の領域の画像を生成するためのビームフォーミング方法を開示する。
【0111】
さらに、科学的出版物、すなわち非特許文献1及び非特許文献2から、合成ビームフォーミングを用いるビームフォーミング方法が知られている。
【0112】
本願において説明するシステム及び方法は、特に医療用イメージングのコンテキストにおける、ビームフォーミングのための技術に関する。本方法は、特に、媒体に関する物理的特性のような情報を取得することにに適している。本方法は、例えば超音波システムのような装置において使用されてもよい。
【0113】
図1は、従来技術に係る、同じ焦点深度FD1を有する2つの隣接合焦ビームb1及びb2を示す。隣接合焦ビームb1及びb2は、放射ライン(emission line)ELから発生してz方向に沿って媒体中に送信される。さらに、隣接合焦ビームb1,b2は、隣接走査線SL1,SL2に沿って配置されてもよい。複数の走査線SL1,SL2は、例えば、互いに平行であってもよい。隣接合焦ビームb1及びb2の各々は、例えば、レーザ技術又は光学において使用されるビームプロファイル形状のような、ガウスビームのプロファイル形状を有する。特に、隣接合焦ビームb1及びb2の各々は、出発点(z=0)、すなわち複数のトランスデューサ素子においてx方向に広い拡がりを有し、焦点深度FD1においてx方向において狭い拡がり(「ウエスト」とも呼ばれる)を有し、遠方界(z≫0)においてx方向に広い拡がりを有する。STB
【0114】
合焦ビームb1及びb2のそれぞれは、各焦点領域FR1及びFR2を有する。
【0115】
同じ焦点深度FD1と、隣接合焦ビームb1及びb2の形状とに起因して、重複しないエリアG(「ギャップ」とも呼ばれる)が生じることがある(概略的に
図1に示す)。合成送信ビーム(STB)は、例えば、FR1及びFR2の間の任意のエリア(
図1には図示せず。)において、再構成されてもよい。
【0116】
この方法の1つの課題は、焦点深度FD1における再構成された遅延則において不連続性が存在するということにある。球体モデルを使用することは、仮想的な信号源が位置する焦点深度FD1において特異性をもたらし、この不連続は、再構成された画像においてアーティファクトを生成する。さらに、合焦ビームは、それらの焦点深度FD1及びFD2の間において最も狭いものであり、それにより、この深度における隣接合焦ビームb1及びb2の間の重複情報はさらに低減される。いくつかの実施例では、隣接合焦ビームb1及びb2は重複すらしない。従って、第1のビームb1及び第2のビームb2に関連する受信信号データののいずれも、重複しないエリアGに関する情報を含んでいない。従って、STBの焦点(
図1には図示せず)が重複しないエリアGの範囲内にある場合、空間領域は、STBの焦点において再構成できなくなる。
【0117】
したがって、同じ焦点深度FD1を有する隣接合焦ビームb1及びb2の間の重複しないエリアGの欠点は、情報の喪失である。重複しないエリアGの範囲内において、媒体に関するデータは、この種類の設定を用いて収集可能ではなく、従って、方法は非効率的になる。
【0118】
図2Aは、本開示の実施例に係る、媒体に送信された複数の隣接合焦ビームに基づいて合成送信ビーム(STB)を再構成することを含む方法100のフローチャートを示す。隣接合焦ビームb1及びb2は、異なる焦点深度FD1及びFD2を有する。合成送信ビームSTBは、合成焦点深度SFD(synthetic focal depth)において合焦されてもよい。
【0119】
方法100は、システムによって、より具体的には超音波システム10によって、実行されてもよい。超音波システム10の一例を
図6Bのコンテキストにおいて説明する。
【0120】
方法100は、異なる焦点深度FD1及びFD2を有する隣接合焦ビームb1及びb2を媒体に逐次に送信する、第1のオプションの動作(a)を含んでもよい。第2のオプションの動作(b)において、各送信ビームb1及びb2に応答した媒体の信号データの集合が取得されてもよい。方法100は、ビームフォーミング方法で信号データの集合を処理するさらなる動作(c)を含む。ビームフォーミング方法は、媒体に送信された隣接合焦ビームb1及びb2であって、異なる焦点深度FD1及びFD2を有する隣接合焦ビームb1及びb2に基づいて合成送信信号STBを再構成することを含む。さらに、方法100は、処理されたデータに基づいて画像データをコンパイルする、オプションの動作(d)を含んでもよい。
【0121】
合成送信ビームSTBは、媒体Mの空間領域に合焦される。さらに、媒体Mにおける空間領域の物理的特性は、再構成された合成送信ビームの関数として決定されてもよい。
【0122】
言いかえると、最初のステップにおいて、関心対象領域ROI(region of interest)は予め定義されていてもよい。さらに、合成送信ビームSTBは、媒体Mの空間領域において合焦されてもよく、空間領域は関心対象領域ROIにあってもよい。合成送信ビームSTBは、合成焦点深度SFDにおいて、かつ、隣接合焦ビームb1及びb2の重複するエリアにおいて、合焦されてもよい。
【0123】
従って、データ取得方法は、異なる焦点深度を有する複数の隣接合焦ビームを媒体に逐次に送信する動作(a)と、各送信されたビームに応答した媒体の信号データの集合を取得するさらなる動作(b)と、ビームフォーミング方法で信号データの集合を処理するさらなる動作(c)とを含んでもよい。医療用イメージング方法は、データ取得方法と、処理されたデータに基づいて画像データをコンパイルするさらなる動作(d)とを含んでもよい。
【0124】
方法100は第1のループL1を含んでもよい。第1のループL1において、ビームフォーミング方法で信号データの集合を処理することが繰り返されてもよい。言いかえると、各反復のループL1において、同じ送信ビーム、すなわち隣接合焦ビームb1及びb2の信号データを用いて、異なる複数の合成送信ビームが再構成されてもよい。これらのSTBは、ビームb1及びb2の間のどこか、すなわち、ビームb1及びb2の両方によってカバーされるエリアに位置した焦点を有してもよい。従って、2つビームb1及びb2の間の画像データが再構成されてもよい。
【0125】
ループL1に関して、信号データの第1のすべての集合が取得(動作a、bを参照)及び格納されることも可能であり、次いで、異なるSTBに関してL1が繰り返される。
【0126】
方法100は第2のループL2を含んでもよい。第2のループL2において、異なる送信ビームを用いてデータ取得方法が繰り返されてもよい。言いかえると、隣接合焦ビームb1及びb2であってもよく、又は、他の隣接合焦ビームbn及びbn+1であってもよい、異なる複数の送信ビームが各反復において使用される間に、データ取得方法が繰り返されてもよい。従って、各反復において、STBは、ビームbn及びbn+1の間のどこか、ビームbn及びbn+1の両方によってカバーされるエリアに位置した焦点を有して再構成されてもよい。従って、すべてのビームbn及びbn+1の間の画像データが再構成されてもよい。
【0127】
ループL2に関して、信号データの第1のすべての集合が取得(動作a、bを参照)及び格納されることも可能であり、次いで、異なるビームbn及びbn+1の間においてL2が繰り返される。
【0128】
対照的に、従来の多焦点イメージングでは、各画素は、ただ1つのビームに基づいて再構成される。従って、多焦点画像取得は、既に、各空間領域に関して、比較的に大量の利用可能なデータをもたらす。
【0129】
図2Bの実施形態は、
図1に示す例のさらなる発展である。
図2Bは、本開示に係る、例えば、
図2Aの実施例に係る、異なる焦点深度FD1及びFD2を有する2つの隣接合焦ビームb1及びb2を示す。ここで、合焦ビームb1は焦点深度FD1を有し、合焦ビームb2は焦点深度FD2を有する。異なる焦点深度FD1及びFD2に起因して、2つの隣接合焦ビームb1及びb2の間に重複しないエリアGは存在しない。言いかえると、異なる焦点深度を有する複数の隣接合焦ビームを選択することは、重複しないエリアGの取得を防ぎ、その一方で同時に、走査線の間で同じ距離を維持し、したがって同じフレームレートを維持することができる。
【0130】
焦点深度FD1及びFD2の関係は、例えば、約1.3であってもよい。
【0131】
合焦ビームb1は、放射ラインELからより離れた焦点領域FR1を有し、他の合焦ビームb2は、放射ラインELにより近接した焦点領域FR2を有する。さらに、隣接合焦ビームb1,b2は、隣接走査線SL1,SL2に沿って配置される。
【0132】
焦点深度FD1及びFD2は、媒体における関心対象領域ROIの深度の関数として定義されてもよい。関心対象領域ROIは3D空間領域である。ここで、関心対象領域ROIは立方体の形状を有し、
図2Bでは、断面図に起因して正方形として示される。
【0133】
合成送信ビームSTBを再構成することは、2つの隣接合焦ビームb1及びb2の重複するエリアに位置するSTBの焦点に関して行われてもよい。言いかえると、合成送信ビームSTBは、媒体へ送信された隣接合焦ビームb1及びb2の両方に関連付けられた媒体の信号データに基づいて再構成されてもよい。従って、第1のビームb1に関する情報(すなわち受信信号データ)と、第2のビームb2に関する情報とは、STBを再構成するために使用され、空間領域は、STBの焦点においてより正確に再構成されうるという優位点がある。
【0134】
図3Aは、本開示の実施例に係る、深度方向における関心対象領域ROIの拡がりの範囲内にある焦点深度FD1及びFD2を示す。言いかえると、焦点深度FD1及びFD2は、それらが両方とも関心対象領域ROIによって定義されるエリアの内側にあるように設定される。この例示的な実施例において、深度方向はz方向である。
【0135】
図3Bは、本開示の実施例に係る、深度方向における関心対象領域の拡張の範囲外にある焦点深度FD1及びFD2を示す。この実施例では、焦点深度FD1は、深度方向において関心対象領域ROIの下方にあり、FD2は、深度方向において関心対象領域ROIの上方にある。
【0136】
図3Cは、本開示の実施例に係る、関心対象領域ROIの中心深度レベルCDL(central depth level)の上方にある第1の焦点深度と、関心対象領域ROIの中心深度レベルCDLの下方にある第2の焦点深度とを示す。中心深度レベルCDLは、関心対象領域ROIを、上側部分(すなわち、媒体における深くないほうの部分)と、下側部分(すなわち、媒体におけるより深い役割)とに分割するラインであってもよい。関心対象領域ROIの上側部分及び下側部分は、同じサイズを有してもよい。ここで、焦点深度FD2は、関心対象領域ROIの中心深度レベルCDLの上方にあり、焦点深度FD1は、関心対象領域ROIの中心深度レベルCDLの下方にある。
【0137】
図3Dは、本開示の実施例に係る、関心対象領域ROIの中心深度レベルCDLから同じ距離を有する第1の焦点深度FD1及び第2の焦点深度FD2を示す。ここで、第1の焦点深度FD1は、中心深度レベルCDLと、第1の焦点深度FD1の焦点との間の第1の距離d1を有する。第2の焦点深度FD2は、中心深度レベルCDLと、第2の焦点深度FD2の焦点との間の第2の距離d2を有する。この実施例では、第1の距離d1及び第2の距離d2は、同程度であってもよく、又は、等しくてもよい(d1=d2)。
【0138】
図4は、本開示の実施例に係る、互いにオフセットOFSされた隣接合焦ビームb1及びb2であって、複数のトランスデューサ素子22によって媒体に送信される隣接合焦ビームb1及びb2を示す。トランスデューサアレイ23は複数のトランスデューサ素子22を備えてもよく、複数のトランスデューサ素子22は走査線SL1,SL2に沿って配置されてもよい。
【0139】
走査線SL1,SL2の間のオフセットOFSは、深度方向及びビームの主軸に垂直な方向にある。オフセットOFSは、x方向のシフトである。
【0140】
従って、複数の隣接合焦ビームは、深度方向又はz方向に垂直な方向において隣接してもよい。言いかえると、複数の隣接合焦ビームは、媒体Mの横方向の次元(すなわちの
図4のx次元)において互いに隣接している。
【0141】
図5において、本開示の実施例に従って、2つよりも多くの隣接合焦ビームb1、b2、b3、b4、b5、b6、b7、及びb8が、2つ(又はより多く;
図5には図示せず)の異なる焦点深度を有して媒体に送信される。一方では、合焦ビームb1、b3、b5、及びb7は同じ焦点深度を有してもよい。他方では、合焦ビームb2、b4、b6、及びb8は同じ焦点深度を有してもよい。望ましくは、合焦ビームb1、b2、b3、b4、b5、b6、b7、及びb8の間にギャップ(すなわち重複しないエリア)は存在しなくてもよい。この実施形態の1つの利点は、媒体に関する大量のデータが取得されうるということにある。他の利点は、重複しないエリア又はギャップに関してデータの喪失が生じなくなりうるということにある。
【0142】
図6Aは、本開示の実施例に係る超音波システム100の概略図を示す。
図6Aに示すシステム100は、媒体M、例えば、生体組織及び/又は特にある人物のヒト組織の超音波空間・時間信号データを収集するように適応化される。システム100は、媒体の反射特性を考慮して最適化された方法で媒体Mの超音波空間・時間信号データを構成するようにさらに構成される。本システムは例えば下記を含んでもよい。
【0143】
- 複数のトランスデューサ素子22。トランスデューサ素子は、(a)パルスを媒体に送信する、及び/又は、オプションで(a)パルスを媒体に送信することに応答して、(b)媒体から複数の信号を受信するように構成されてもよい。複数のトランスデューサ素子22を備えるトランスデューサアレイが使用されてもよい。例えば、典型的には、軸X(水平又はアレイ方向X)に沿って並置された数十個のトランスデューサ素子(例えば、128、256、又はそれよりも多く)を含む、リニアアレイ23が提供されてもよい。この実施例では、アレイ23は、媒体Mの二次元(2D)イメージングを実行するように適応化されるが、アレイ23は、媒体Mの3Dイメージングを実行するように適応化された二次元アレイであってもよい。従って、複数のトランスデューサのマトリクスが使用されてもよい。ただし、システムが、3Dイメージングを達成可能であるように、プローブにおいて可動な複数のトランスデューサの単一のラインを備えることも可能である。トランスデューサアレイ23は、曲線に沿って整列された複数のトランスデューサ素子を含む凸面のアレイであってもよい。パルスを送信して応答を受信するために1つ又は複数の同じトランスデューサ素子が使用されてもよく、又は、送信及び受信のために異なるトランスデューサ素子が使用されてもよい。1つ又は複数の放射トランスデューサ素子と、複数の受信トランスデューサ素子とが存在してもよい。さらなる代替例では、異なる空間特性を有する(例えば、異なる空間領域から発信される)複数の信号を受信する単一のトランスデューサ素子22のみが使用されてもよい。トランスデューサ素子22は、例えば、電子的又は物理的に可動であってもよい。
- トランスデューサアレイを制御し、そこから信号を取得する電子制御装置30。電子制御装置30は、トランスデューサ素子22を備えるプローブ20の一部であってもよい。代替として、電子制御装置30は、プローブ20の外部にあってもよく、又は、部分的にプローブ20の一部でありかつ部分的にその外部にあるいくつかの装置からなってもよい。
【0144】
システムは、例えば、サーバ、人工知能(AI)アルゴリズムを実行しているコンピュータ、専用ワークステーション、データの提示、電子制御装置から得られた画像を表示するための装置、又は他の外部装置のいずれかのような、電子制御装置30を制御するための、及び/又は、例えば、外部装置にデータを送信するための処理装置(図示せず)をさらに含んでもよい。従って、本開示に係る方法、特にビームフォーミング方法は、電子制御装置30、処理装置、又は外部装置のいずれかのうちの少なくとも1つによって実行されてもよい。さらに、超音波画像データを収集する処理は、処理を最適化するために、それと同じ処理装置によって行なわれてもよく、又は、(少なくとも部分的に)他のものによって行われてもよい。
【0145】
さらなる実施例によれば、システム100は、少なくとも1つの処理装置(又はプロセッサ)及びメモリを含んでもよい。実施例では、プロセッサ及びメモリ装置は、
図6Aに示すようにシステムに組み込まれてもよく、又は、コンピュータ又はそれに通信可能にリンクされたコンピュータであってもよい。計算装置の厳密な構成及びタイプに依存して、メモリ(超音波データを評価するか又はさもなければ本願で開示した方法を実行する命令を格納する)は、揮発性(RAMなど)であってもよく、不揮発性(RAM、フラッシュメモリなど)であってもよく、又はこれら2つの何らかの組み合わせであってもよい。さらに、システム100は、磁気又は光ディスク又はテープを含むがこれらに限定されない、記憶装置(着脱可能及び/又は着脱不可能)を含んでもよい。同様に、システム100は、キーボード、マウス、ペン、音声入力などのような1つ又は複数の入力装置、及び/又は、ディスプレイ、スピーカ、プリンタなどのような1つ又は複数の出力装置を有してもよい。また、環境には、LAN、WAN、ポイントツーポイントなどのような1つ又は複数の通信接続が含まれてもよい。実施形態では、接続は、ポイントツーポイント通信、コネクション指向通信、コネクションレス通信などにを容易化するように動作可能であってもよい。
【0146】
システム100は、典型的には、何らかの形式のコンピュータ可読媒体を含んでもよい。コンピュータ可読媒体は、動作環境を備える処理装置(又はプロセッサ)又は他の装置によってアクセス可能である、任意の利用可能な媒体であってもよい。限定ではなく例示として、コンピュータ可読媒体は、コンピュータ記憶媒体及び通信媒体を備えてもよい。コンピュータ記憶媒体は、コンピュータ可読命令、データ構造、プログラムモジュール、又は他のデータのような情報の格納のための任意の方法又は技術で実装された、揮発性及び不揮発性、着脱可能及び着脱不可能な媒体を含む。コンピュータ記憶媒体は通信媒体を含まない。
【0147】
通信媒体は、コンピュータ可読命令、データ構造、プログラムモジュール、又は他のデータを、変調されたデータ信号(搬送波又は他の転送機構)として具体化し、任意の情報伝送媒体も含む。用語「変調されたデータ信号」は、情報を信号に符号化するような方法でその特性の1つ又は複数を設定又は変更させた信号を意味する。限定ではなく例示として、通信媒体は、有線ネットワーク又は直接有線接続のような有線媒体と、音響、RF、赤外線、マイクロ波、及び他の無線媒体のような無線媒体とを含む。上述したことのうちの任意のものの組み合わせもまた、コンピュータ可読媒体の範囲に含まれるべきである。
【0148】
システム100は、1つ以上の遠隔のコンピュータへの論理的接続を用いて、ネットワーク化された環境において動作する単一のコンピュータであってもよい。遠隔のコンピュータは、パーソナルコンピュータ、サーバ、ルータ、ネットワークPC、ピア装置、又は他の一般的なネットワークノードをであってもよく、典型的には、上述した要素の多数又はすべてを含んでもよく、そのように言及していない他のものを含んでもよい。論理接続は、利用可能な通信媒体によってサポートされた任意の方法を含んでもよい。
【0149】
トランスデューサ素子22は、圧電性結晶、及び/又は、信号を発生、記録、及び/又は受信するように構成されうる他の構成要素を備えてもよい。別途言及しない限り、トランスデューサ及びトランスデューサ素子という用語は、本開示の全体にわたって同義的に使用されうる。
【0150】
トランスデューサ素子22は、信号、オプションで超音波信号を発生、記録、及び/又は受信するように構成されてもよい。トランスデューサ素子22及び/又は電子制御装置30及び/又は処理装置は、空間・時間信号データの位相特性を決定するように構成されてもよい。
【0151】
図6A1の軸zは、軸xに垂直な軸であり、例えば、検査される媒体Mの深度方向にある。この方向は、本明細書では、垂直又は軸方向として指定される。z軸の方向に放射される超音波ビームは、0°の傾斜角を有するように理解されうる。
【0152】
図6Bは、本開示の実施例に係る超音波イメージングシステム10の概略図を示す。超音波イメージングシステム10は、
図6Aのコンテキストで説明するように、医療用イメージングシステム200の一例であってもよい。
【0153】
超音波イメージングシステム10は、
- プローブ20(例えば、
図6Aのプローブ20に対応する)と、
- プローブによって受信された信号に基づいて画像を処理するための処理装置30と、
- 処理装置に接続された制御パネル40であって、少なくともボタン41及びタッチパッド42を備える制御パネル40と、
- 画像を可視化するためのディスプレイ50と
を備えてもよい。
【0154】
プローブ20は、ケーブル21又は無線接続を介して処理装置30に接続されてもよく、それは、超音波Wを媒体Mに放射し、媒体Mから超音波を受信することができる。上記受信超音波は、上記媒体Mの内部の拡散粒子における上記放射された超音波の反射の結果として生じる。プローブ20は、電気信号を振動に、また、その逆にそれぞれ変換する複数のトランスデューサ素子22を備えるトランスデューサアレイ23を備えてもよい。トランスデューサ素子22は、例えば、圧電素子であってもよい。トランスデューサアレイ23は、100個以上のトランスデューサを備えてもよい。トランスデューサアレイ23は、直線上又は曲線上にあり、また、媒体に連結され、振動し、超音波Wを放射又は受信するように、媒体Mの外表面に配置される。
【0155】
ディスプレイ画面50は、処理装置30によって処理された画像を視覚化するための画面であってもよい。ディスプレイ50はまた、画像において使用されるスケールのような他の情報、又は、処理のための構成情報、又は、タッチパッド42のヘルプ情報又はコンテキストジェスチャーヘルプのための任意の情報を視覚化してもよい。
【0156】
ディスプレイ画面は、ユーザのより良好な位置決めのために、サポートアーム51において関節を介して支持されてもよい。ディスプレイ画面は、通常、ユーザに対するより良好な画像可視化のために、大きなサイズ(少なくとも20インチ)の高解像度画面である。
【0157】
制御パネル40aは、例えば、システム筐体31の一部であり、上記一部は、ユーザの片手による操作のために、上記ユーザに向かって傾斜した実質的に平面を有するパネル筐体を備える。制御パネル40aは、ユーザサイズに適応させるためにハンガーによって上方及び下方に移動されてもよく、オプションで、ユーザ位置に適応させるために前方及び後方に移動されてもよい。
図6Bに見られるように、制御パネル40aは、いくつかの構成情報又は任意のユーザ専用情報を可視化するための制御パネルディスプレイ画面49を含んでもよい。この制御パネルディスプレイ画面49はまた、制御パネル表面とは異なる傾きで傾斜させるために、制御パネル筐体48に対してヒンジを介して連結されてもよい。
【0158】
請求項を含む本開示の全体にわたって、用語「1つの~を備える(含む)」は、他の記載がなければ、「少なくとも1つの~を備える(含む)」と同義のものとして理解されるべきである。さらに、請求項を含む本開示で示した任意の範囲は、他の記載がなければ、その端の値を含むものとして理解されるべきである。説明した構成要素に係る特定の値は、当業者に既知である、許容された製造時又は産業上の公差内にあるものと理解されるべきであり、用語「実質的に」及び/又は「約」及び/又は「概して」のいかなる使用も、そのような許容された公差内にあることを意味するものと理解されるべきである。
【0159】
別途言及しない限り、「記録する」及び「受信する」という用語は、本開示の全体にわたって同義的に使用されうる。
【0160】
本開示は特定の実施例を参照してここに説明したが、これらの実施例は、本開示の原理及び応用の単なる例示であることが理解されるべきである。
【0161】
明細書及び実施例が例示的なものとしてのみ考慮され、本開示の真の範囲は添付の特許請求の範囲によって示されることが意図される。
【0162】
本願において従来技術として識別された特許文献又は他の任意の事項への言及は、文献又は他の事項が既知であったこと、又は、それが含む情報が、請求項のうちのいずれかの優先日において通常の一般知識の一部であったことの自認と解釈されるべきではない。
【手続補正書】
【提出日】2024-03-25
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
媒体(M)に送信される複数の隣接合焦ビーム(b1,b2)であって、異なる焦点深度(FD1,FD2)を有する複数の隣接合焦ビーム(b1,b2)に基づいて、合成送信ビーム(STB)を再構成することを含む、
ビームフォーミング方法(100)。
【請求項2】
上記焦点深度(FD1,FD2)は、上記媒体(M)中の関心対象領域(ROI)の深さの関数として定義される、
請求項1記載の方法。
【請求項3】
上記焦点深度(FD1,FD2)は、深度方向における上記関心対象領域(ROI)の拡がりの範囲内又は範囲外にあるように定義される、
請求項2記載の方法。
【請求項4】
上記焦点深度のうちの第1の焦点深度(FD1)は、上記関心対象領域(ROI)の中心深度レベル(CDL)の上方にあり、
上記焦点深度のうちの第2の焦点深度(FD2)は、上記関心対象領域(ROI)の中心深度レベル(CDL)の下方にある、
請求項3記載の方法。
【請求項5】
上記第1の焦点深度(FD1)及び上記第2の焦点深度(FD2)は、上記関心対象領域(ROI)の中心深度レベル(CDL)から同じ距離(d1,d2)を有する、
請求項4記載の方法。
【請求項6】
送信される上記複数のビーム(b1,b2)は異なる開口を有する、及び/又は、送信されるビームの開口はその焦点深度(FD1,FD2)の関数として決定される、
請求項1記載の方法。
【請求項7】
2つよりも多くの隣接合焦ビーム(b1,b2,b3,b4,b5,b6,b7,b8)が、2つ以上の異なる焦点深度を有して、媒体に送信される、
請求項1記載の方法。
【請求項8】
上記2つよりも多くの隣接合焦ビーム(b1,b2,b3,b4,b5,b6,b7,b8)の異なる焦点深度は交替している、
請求項7記載の方法。
【請求項9】
上記焦点深度(FD1,FD2)は、上記複数の隣接合焦ビーム(b1,b2)が上記媒体(M)中の関心対象領域(ROI)において重複するように、及び/又は、上記媒体(M)の関心対象領域(ROI)における上記複数の隣接合焦ビーム(b1,b2)間の重複が増大されるように選択される、
請求項1記載の方法。
【請求項10】
上記複数の隣接合焦ビーム(b1,b2)は互いにオフセットされる、及び/又は、上記複数の隣接合焦ビーム(b1,b2)は隣接走査線(SL1,SL2)に沿って配置される、
請求項1記載の方法。
【請求項11】
上記隣接合焦ビーム(b1,b2)は、上記媒体(M)に送信される超音波に基づき、及び/又は、上記隣接合焦ビーム(b1,b2)は、超音波が通過した上記媒体(M)の物理的エリアに対応する、
請求項1記載の方法。
【請求項12】
上記合成送信ビーム(STB)を再構成することは、上記媒体(M)に送信される複数の隣接合焦ビーム(b1,b2)に関連付けられた上記媒体(M)の信号データに基づいて、上記合成送信ビーム(STB)を再構成することを含む、
請求項1記載の方法。
【請求項13】
信号データは、同相及び直交位相(IQ)データのうちの少なくとも一方を含み、
上記IQデータの位相は、上記隣接合焦ビーム(b1,b2)の焦点深度(FD1,FD2)に関して、上記合成送信ビーム(STB)の合成焦点深度(SFD)の関数として調整される、
請求項12記載の方法。
【請求項14】
上記方法は、上記媒体(M)における空間領域の物理的特性を、上記再構成された合成送信ビーム(STB)の関数として決定することをさらに含み、
上記合成送信ビーム(STB)は上記空間領域において合焦される、
請求項1記載の方法。
【請求項15】
異なる焦点深度(FD1,FD2)を有する複数の隣接合焦ビーム(b1,b2)を媒体(M)に逐次的に送信することと、
各送信されたビームに応答して上記媒体(M)の信号データの集合を取得することと、
請求項1~14のうちの1つに記載のビームフォーミング方法で上記信号データの集合を処理することとを含む、
データ取得方法。
【請求項16】
請求項15記載のデータ取得方法と、
上記処理されたデータに基づいて画像データをコンパイルすることとを含む、
医療用イメージング方法。
【請求項17】
データ処理装置によって実行されたとき、請求項1記載の方法の処理動作を上記データ処理装置に実行させるコンピュータ可読命令を含むコンピュータプログラム。
【請求項18】
媒体(M)に送信される複数の隣接合焦ビーム(b1,b2)であって、異なる焦点深度(FD1,FD2)を有する複数の隣接合焦ビーム(b1,b2)に基づいて、合成送信ビーム(STB)を再構成するように構成された処理装置(30)を備える、
ビームフォーミングシステム。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0060
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0060】
本発明において、各画素は、異なる焦点深度を有する可能性がある合焦送信ビームによって生成された後方散乱エコーに基づいて再構成されてもよい。そうするために、ビームフォーミング処理はわずかに適応されてもよい。集束ビームに関して、グイ(Gouy)位相シフトと呼ばれる位相シフトが、収束波から発散波への変換に起因して、焦点深度に現れる。例えば、送信ビームは、(例えば、トランスデューサ素子のリニアアレイを備えたトランスデューサ装置を用いて)送信された円筒波に基づいてもよい。そのような場合、π/2のオーダーのIQデータの位相シフトが生じる可能性がある。すべての送信ビームが同じ焦点深度を有する従来のRTBの場合、各再構成された画素は、1組の収束波(z<zinの場合、zinは焦点深度)及び1組の発散波(z>zinの場合)のいずれかの組み合わせに基づく。本開示において、いくつかの画素は、収束波及び発散波の両方の組み合わせに基づいて再構成されてもよい。このことは、後述するビームフォーミング処理において追加の位相シフト項をもたらす。
【手続補正3】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0113
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0113】
図1は、従来技術に係る、同じ焦点深度FD1を有する2つの隣接合焦ビームb1及びb2を示す。隣接合焦ビームb1及びb2は、放射ライン(emission line)ELから発生してz方向に沿って媒体中に送信される。さらに、隣接合焦ビームb1,b2は、隣接走査線SL1,SL2に沿って配置されてもよい。複数の走査線SL1,SL2は、例えば、互いに平行であってもよい。隣接合焦ビームb1及びb2の各々は、例えば、レーザ技術又は光学において使用されるビームプロファイル形状のような、ガウスビームのプロファイル形状を有する。特に、隣接合焦ビームb1及びb2の各々は、出発点(z=0)、すなわち複数のトランスデューサ素子においてx方向に広い拡がりを有し、焦点深度FD1においてx方向において狭い拡がり(「ウエスト」とも呼ばれる)を有し、遠方界(z≫0)においてx方向に広い拡がりを有する
。
【手続補正4】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0145
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0145】
さらなる実施例によれば、システム100は、少なくとも1つの処理装置(又はプロセッサ)及びメモリを含んでもよい。実施例では、プロセッサ及びメモリ装置は、
図6Aに示すようにシステムに組み込まれてもよく、又は、コンピュータ又はそれに通信可能にリンクされたコンピュータであってもよい。計算装置の厳密な構成及びタイプに依存して、メモリ(超音波データを評価するか又はさもなければ本願で開示した方法を実行する命令を格納する)は、揮発性(RAMなど)であってもよく、不揮発性(
ROM、フラッシュメモリなど)であってもよく、又はこれら2つの何らかの組み合わせであってもよい。さらに、システム100は、磁気又は光ディスク又はテープを含むがこれらに限定されない、記憶装置(着脱可能及び/又は着脱不可能)を含んでもよい。同様に、システム100は、キーボード、マウス、ペン、音声入力などのような1つ又は複数の入力装置、及び/又は、ディスプレイ、スピーカ、プリンタなどのような1つ又は複数の出力装置を有してもよい。また、環境には、LAN、WAN、ポイントツーポイントなどのような1つ又は複数の通信接続が含まれてもよい。実施形態では、接続は、ポイントツーポイント通信、コネクション指向通信、コネクションレス通信など
を容易化するように動作可能であってもよい。
【手続補正5】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0162
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0162】
本願において従来技術として識別された特許文献又は他の任意の事項への言及は、文献又は他の事項が既知であったこと、又は、それが含む情報が、請求項のうちのいずれかの優先日において通常の一般知識の一部であったことの自認と解釈されるべきではない。
[1]本開示の第1の態様に係るビームフォーミング方法(100)は、
媒体(M)に送信される複数の隣接合焦ビーム(b1,b2)であって、異なる焦点深度(FD1,FD2)を有する複数の隣接合焦ビーム(b1,b2)に基づいて、合成送信ビーム(STB)を再構成することを含む。
[2]本開示の第2の態様に係る方法によれば、第1の態様に係る方法において、
上記焦点深度(FD1,FD2)は、上記媒体(M)中の関心対象領域(ROI)の深さの関数として定義される。
[3]本開示の第3の態様に係る方法によれば、第2の態様に係る方法において、
上記焦点深度(FD1,FD2)は、深度方向における上記関心対象領域(ROI)の拡がりの範囲内又は範囲外にあるように定義される。
[4]本開示の第4の態様に係る方法によれば、第3の態様に係る方法において、
上記焦点深度のうちの第1の焦点深度(FD1)は、上記関心対象領域(ROI)の中心深度レベル(CDL)の上方にあり、
上記焦点深度のうちの第2の焦点深度(FD2)は、上記関心対象領域(ROI)の中心深度レベル(CDL)の下方にある。
[5]本開示の第5の態様に係る方法によれば、第4の態様に係る方法において、
上記第1の焦点深度(FD1)及び上記第2の焦点深度(FD2)は、上記関心対象領域(ROI)の中心深度レベル(CDL)から同じ距離(d1,d2)を有する。
[6]本開示の第6の態様に係る方法によれば、第1~第5のうちの1つの態様に係る方法において、
送信される上記複数のビーム(b1,b2)は異なる開口を有する、及び/又は、送信されるビームの開口はその焦点深度(FD1,FD2)の関数として決定される。
[7]本開示の第7の態様に係る方法によれば、第1~第6のうちの1つの態様に係る方法において、
2つよりも多くの隣接合焦ビーム(b1,b2,b3,b4,b5,b6,b7,b8)が、2つ以上の異なる焦点深度を有して、媒体に送信される。
[8]本開示の第8の態様に係る方法によれば、第7の態様に係る方法において、
上記2つよりも多くの隣接合焦ビーム(b1,b2,b3,b4,b5,b6,b7,b8)の異なる焦点深度は交替している。
[9]本開示の第9の態様に係る方法によれば、第1~第8のうちの1つの態様に係る方法において、
上記焦点深度(FD1,FD2)は、上記複数の隣接合焦ビーム(b1,b2)が上記媒体(M)中の関心対象領域(ROI)において重複するように、及び/又は、上記媒体(M)の関心対象領域(ROI)における上記複数の隣接合焦ビーム(b1,b2)間の重複が増大されるように選択される。
[10]本開示の第10の態様に係る方法によれば、第1~第9のうちの1つの態様に係る方法において、
上記複数の隣接合焦ビーム(b1,b2)は互いにオフセットされる、及び/又は、上記複数の隣接合焦ビーム(b1,b2)は隣接走査線(SL1,SL2)に沿って配置される。
[11]本開示の第11の態様に係る方法によれば、第1~第10のうちの1つの態様に係る方法において、
上記隣接合焦ビーム(b1,b2)は、上記媒体(M)に送信される超音波に基づき、及び/又は、上記隣接合焦ビーム(b1,b2)は、超音波が通過した上記媒体(M)の物理的エリアに対応する。
[12]本開示の第12の態様に係る方法によれば、第1~第11のうちの1つの態様に係る方法において、
上記合成送信ビーム(STB)を再構成することは、上記媒体(M)に送信される複数の隣接合焦ビーム(b1,b2)に関連付けられた上記媒体(M)の信号データに基づいて、上記合成送信ビーム(STB)を再構成することを含む。
[13]本開示の第13の態様に係る方法によれば、第1~第12のうちの1つの態様に係る方法において、
信号データは、同相及び直交位相(IQ)データのうちの少なくとも一方を含み、
上記IQデータの位相は、上記隣接合焦ビーム(b1,b2)の焦点深度(FD1,FD2)に関して、上記合成送信ビーム(STB)の合成焦点深度(SFD)の関数として調整される。
[14]本開示の第14の態様に係る方法によれば、第1~第13のうちの1つの態様に係る方法において、
上記方法は、上記媒体(M)における空間領域の物理的特性を、上記再構成された合成送信ビーム(STB)の関数として決定することをさらに含み、
上記合成送信ビーム(STB)は上記空間領域において合焦される。
[15]本開示の第15の態様に係るデータ取得方法は、
異なる焦点深度(FD1,FD2)を有する複数の隣接合焦ビーム(b1,b2)を媒体(M)に逐次的に送信することと、
各送信されたビームに応答して上記媒体(M)の信号データの集合を取得することと、
第1~第14のうちの1つの態様に係るビームフォーミング方法で上記信号データの集合を処理することとを含む。
[16]本開示の第16の態様に係る医療用イメージング方法は、
第15の態様に係るデータ取得方法と、
上記処理されたデータに基づいて画像データをコンパイルすることとを含む。
[17]本開示の第17の態様に係るコンピュータプログラムは、
データ処理装置によって実行されたとき、第1~第16のうちの1つの態様に係る方法の処理動作を上記データ処理装置に実行させるコンピュータ可読命令を含む。
[18]本開示の第18の態様に係るビームフォーミングシステムは、
媒体(M)に送信される複数の隣接合焦ビーム(b1,b2)であって、異なる焦点深度(FD1,FD2)を有する複数の隣接合焦ビーム(b1,b2)に基づいて、合成送信ビーム(STB)を再構成するように構成された処理装置(30)を備える。
【外国語明細書】