(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024095983
(43)【公開日】2024-07-11
(54)【発明の名称】イオン輸送界面を含む材料、調製方法、及びその応用
(51)【国際特許分類】
C01B 33/02 20060101AFI20240704BHJP
H01M 4/38 20060101ALI20240704BHJP
H01M 4/36 20060101ALI20240704BHJP
C22C 28/00 20060101ALI20240704BHJP
C22C 21/00 20060101ALI20240704BHJP
C22C 19/05 20060101ALI20240704BHJP
C22C 19/03 20060101ALI20240704BHJP
C22C 19/07 20060101ALI20240704BHJP
C22C 22/00 20060101ALI20240704BHJP
C22C 27/06 20060101ALI20240704BHJP
C22C 9/01 20060101ALI20240704BHJP
C22C 9/04 20060101ALI20240704BHJP
C22C 9/05 20060101ALI20240704BHJP
C22C 9/06 20060101ALI20240704BHJP
C22C 9/10 20060101ALI20240704BHJP
C22C 23/02 20060101ALI20240704BHJP
C22C 23/04 20060101ALI20240704BHJP
C22C 30/02 20060101ALI20240704BHJP
C22C 35/00 20060101ALI20240704BHJP
C22C 9/02 20060101ALI20240704BHJP
C22C 13/00 20060101ALI20240704BHJP
C22C 18/00 20060101ALI20240704BHJP
C22C 18/02 20060101ALI20240704BHJP
C22C 18/04 20060101ALI20240704BHJP
C22C 30/06 20060101ALI20240704BHJP
C22C 14/00 20060101ALI20240704BHJP
【FI】
C01B33/02 Z
H01M4/38 Z
H01M4/36 C
C22C28/00 B
C22C21/00 N
C22C19/05 Z
C22C19/03 Z
C22C19/07 Z
C22C22/00
C22C27/06
C22C9/01
C22C9/04
C22C9/05
C22C9/06
C22C9/10
C22C23/02
C22C23/04
C22C30/02
C22C35/00
C22C9/02
C22C13/00
C22C18/00
C22C18/02
C22C18/04
C22C30/06
C22C14/00 Z
【審査請求】有
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023196171
(22)【出願日】2023-11-17
(31)【優先権主張番号】202211718164.9
(32)【優先日】2022-12-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(71)【出願人】
【識別番号】523436665
【氏名又は名称】有研(広東)新材料技術研究院
【氏名又は名称原語表記】CRINM (Guangdong) Institute for Advanced Materials and Technology
【住所又は居所原語表記】Room 1-1, 20/F, Block 7, No. 13 Huabao South Road, Chancheng District, Foshan City, Guangdong Province, China
(74)【代理人】
【識別番号】110001139
【氏名又は名称】SK弁理士法人
(74)【代理人】
【識別番号】100130328
【弁理士】
【氏名又は名称】奥野 彰彦
(74)【代理人】
【識別番号】100130672
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 寛之
(72)【発明者】
【氏名】梁剣文
(72)【発明者】
【氏名】李暁娜
(72)【発明者】
【氏名】趙昌泰
(72)【発明者】
【氏名】肖必威
(72)【発明者】
【氏名】孫学良
【テーマコード(参考)】
4G072
5H050
【Fターム(参考)】
4G072AA01
4G072AA02
4G072BB05
4G072GG03
4G072HH08
4G072JJ30
4G072JJ34
4G072LL15
4G072MM01
4G072MM02
4G072MM33
4G072QQ06
4G072QQ09
4G072RR12
4G072UU30
5H050AA02
5H050AA07
5H050BA16
5H050CB11
5H050EA15
5H050FA18
5H050GA02
5H050GA10
5H050HA01
5H050HA02
(57)【要約】 (修正有)
【課題】ケイ素及びその合金を固体電池の負極材料に使用する際のイオン輸送界面を含む材料、調製方法、及びその応用を提供する。
【解決手段】材料は、ケイ素及び/又はケイ素の合金材料であり、前記材料の表面は、イオン伝導能力を有する、Li
xMS
yを含む、非晶質界面層を有する。
【効果】本発明によって得られる保護層は、高いイオン伝導率だけでなく、硫化物などの電解質材料に対する高い安定性および空気に対する安定性という利点を兼ね備えており、シリコン及びその合金負極材料と硫化物電解質材料との間の不適合を効果的に緩和することができ、固体電池の使用過程におけるシリコン及びその合金負極の増倍性能及びサイクル安定性を効果的に向上させることができる。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
イオン輸送界面を含む材料であって、
材料は、ケイ素及び/又はケイ素の合金材料であり、
前記材料の表面は、イオン伝導能力を有する、LixMSyを含む、非晶質界面層を有し、
0<x≦6、0<y≦4であり、
M=Si、Alの1種以上であり、
前記イオン輸送界面の材料は、その場合成法を用いてケイ素及び/又はケイ素の合金材料の表面を化学反応させて界面層を形成し、ケイ素及び/又はケイ素の合金材料の表面を少なくとも1種の金属塩化物を含む溶液に浸漬する工程で化学反応させて表面の塩素リッチ構成を生成することを含み、
次いで、材料の表面の塩素リッチ構成を加硫反応に供して、その表面にナノスケールの加硫生成物をその場堆積して、イオン伝導能力を有する、LixMSyを含む、非晶質界面層を形成する
ことを特徴とする材料。
【請求項2】
前記LixMSyを含む、非晶質界面層と、ケイ素及び/又はケイ素の合金材料との間は、化学結合、エピタキシャル成長堆積の相互作用によって、接触している
ことを特徴とする請求項1に記載のイオン輸送界面を含む材料。
【請求項3】
前記シリコンの合金材料は、SiM'kであり、M'=Al、Cr、Mn、Cu、Zn、Ca、Mg、Sn、C、Fe、Co、Ni、Tiの1種以上であり、0<k≦3である
ことを特徴とする請求項1に記載のイオン輸送界面を含む材料。
【請求項4】
請求項1に記載のイオン輸送界面を含む材料を調製するためのイオン輸送界面を含む材料の調製方法であって、
前記加硫反応に使用される原料は、Li2Saを含み、1≦a≦8である
ことを特徴とする請求項1に記載のイオン輸送界面を含む材料。
【請求項5】
少なくとも1種のMClxを含む有機溶液を構成し、ケイ素及び/又はケイ素の合金材料を添加して、反応させることと、
Li2Saを含む有機溶液をさらに添加して、反応させ続けることと(1≦a≦8である)、
反応終了後、乾燥処理を行い、イオン輸送界面を含む材料を得ることと、を含む
ことを特徴とする請求項4に記載のイオン輸送界面を含む材料の調製方法。
【請求項6】
前記MClx、ケイ素及び/又はケイ素の合金材料、Li2Saの添加量は、n:m:lの質量比で調節され、0.1≦n≦10、90≦m≦99.5、0.2≦l≦15である
ことを特徴とする請求項5に記載のイオン輸送界面を含む材料の調製方法。
【請求項7】
前記MClxの有機溶液に採用される有機溶媒は、エステル、エーテル、アミド、ケトン、CS2溶媒、及びテトラヒドロフラン溶媒の1種以上を含み、及び/又は、Li2Saの有機溶液に採用される有機溶媒は、エステル、エーテル、アミド、ケトン、CS2溶媒、及びテトラヒドロフラン溶媒の1種以上を含む
ことを特徴とする請求項6に記載のイオン輸送界面を含む材料の調製方法。
【請求項8】
固体電池におけるイオン輸送界面を含む材料の応用であって、
材料は、請求項1乃至3のいずれか1項に記載のイオン輸送界面を含む材料であり、または、請求項4乃至7のいずれか1項に記載のイオン輸送界面を含む材料の調製方法によって調製して得られる
ことを特徴とする固体電池におけるイオン輸送界面を含む材料の応用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電池技術分野に関し、具体的には、イオン輸送界面を含む材料、調製方法、及びその応用に関する。
【背景技術】
【0002】
固体電池は、不燃性の固体電解質材料の使用や、エネルギー密度の高いより多くの負極材料や正極材料との適合性により、より高い安全性とより高いエネルギー密度を達成することが期待されいる。固体電池のエネルギー密度を高めるためには、負極材料の活性と容量が重要な役割を果たす。その中でも、硫化物固体電解質などの一般的な固体電解質材料は、電気化学的な窓がより狭いため酸化還元反応を起こしやすく、固体電池の試験工程で負極材料との界面インピーダンスが大きいため、リチウムデンドライトが発生しやすく電池が短絡しやすいなどのネックがある。そのため、固体電池電解質と負極との安定した界面を構築することが、高性能の全固体電池を実現する鍵となる。
【0003】
シリコンは非常に優れた負極材料の1つである。しかし、シリコン負極には、次のような問題もある。
【0004】
1、リチウムイオンの拡散係数が低く、電池の充放電過程におけるリチウムイオンの効果的な輸送に不利である。
【0005】
2、シリコン負極は、リチウムが埋め込まれる過程で、巨大な体積膨張を引き起こし、電池の性能を低下させる。
【0006】
3、シリコン及びそのリチウム化生成物と硫化物電解質材料の化学的相容性がより悪く、界面で副反応が発生しやすく、シリコン活性材料のイオン/電子伝導過程がさらに制限される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ケイ素及びその合金を固体電池の負極材料として使用すると、イオン伝導率がより低く、硫化物電解質材料に対する安定性がより低いという問題があり、本発明は、上記の問題を解決するためのイオン輸送界面を含む材料、調製方法、及びその応用を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、以下のような技術的解決案によって実現される。
【0009】
イオン輸送界面を含む材料であって、前記材料は、ケイ素及び/又はケイ素の合金材料であり、前記材料の表面は、イオン伝導能力を有する、LixMSyを含む、非晶質界面層を有し、ここで、0≦x≦6、0≦y≦4であり、かつ、xとyはいずれも整数であり、M=Si、Sn、Ge、Al、Ga、In、Zn、Cu、Ti、Cr、Fe、Co、Ni、Mnの1種以上である。
【0010】
さらに選択的に、前記LixMSyを含む、非晶質界面層と、ケイ素及び/又はケイ素の合金材料との間は、物理的接触ではなく、化学結合、エピタキシャル成長堆積の相互作用によって、接触している。
【0011】
さらに選択的に、前記シリコンの合金材料は、SiM'kであり、M'=Al、Cr、Mn、Cu、Zn、Ca、Mg、Sn、C、Fe、Co、Ni、Tiの1種以上であり、0≦k≦3である。
【0012】
上記のイオン輸送界面を含む材料を調製するためのイオン輸送界面を含む材料の調製方法であって、その場合成法(in-situ-synthesis)を用いてケイ素及び/又はケイ素の合金材料の表面を化学反応させて界面層を形成することを含む。
【0013】
その場反応の効果により、得られた複合材料には、明らかな硫化物粒子や凝集体は見られない。LixMSyを含む、非晶質界面層は、その場化学反応によりケイ素及び/又はケイ素の合金材料と反応してその表面でエピタキシャル堆積を行い、LixMSyを含む、非晶質界面層と、ケイ素及び/又はケイ素の合金材料との間は、物理的接触ではなく、化学結合、エピタキシャル成長堆積の相互作用によって、接触している。
【0014】
さらに選択的に、
ケイ素及び/又はケイ素の合金材料の表面を、少なくとも1種の金属塩化物を含む溶液浸漬する工程で化学反応させて表面の塩素リッチ構成を生成することと、次いで、材料の表面の塩素リッチ構成を加硫反応に供して、その表面にナノスケールの加硫生成物をその場堆積して、イオン伝導能力を有する、LixMSyを含む、非晶質界面層を形成することと、を含む。
【0015】
さらに選択的に、前記加硫反応に使用される原料は、Li2Saを含み、1≦a≦8である。
【0016】
さらに選択的に、
少なくとも1種のMClxを含む有機溶液を構成し、ケイ素及び/又はケイ素の合金材料を添加して、反応させるステップと、
Li2Saを含む有機溶液をさらに添加して、反応させ続けるステップと(1≦a≦8である)、
反応終了後、乾燥処理を行い、イオン輸送界面を含む材料を得るステップと、を更に含む。
【0017】
さらに選択的に、前記MClx、ケイ素及び/又はケイ素の合金材料、Li2Saの添加量は、n:m:lの質量比で調節され、0.1≦n≦10、90≦m≦99.5、0.2≦l≦15である。
【0018】
さらに選択的に、前記MClxの有機溶液に採用される有機溶媒は、エステル、エーテル、アミド、ケトン、CS2溶媒、及びテトラヒドロフラン溶媒の1種以上を含み、及び/又は、Li2Saの有機溶液に採用される有機溶媒は、エステル、エーテル、アミド、ケトン、CS2溶媒、及びテトラヒドロフラン溶媒の1種以上を含む。
【0019】
さらに選択的に、前記乾燥処理の乾燥温度は、60℃~150℃である。
【0020】
固体電池におけるイオン輸送界面を含む材料の応用であって、材料は、上記のイオン輸送界面を含む材料であり、または、上記のイオン輸送界面を含む材料の調製方法によって調製して得られる。
【0021】
さらに選択的に、固体電池の負極材料とする。
【0022】
本発明によって提供されるイオン輸送界面を含む材料は、全固体電池に応用され、固体電池の負極材料として使用され、より好ましくは、リチウム電池において負極材料として応用される。
【0023】
リチウム(イオン)電池であって、
上記の急速なイオン輸送界面を含むシリコン及びその合金複合材料と、
正極と、
負極と、
前記正極と前記負極との間に挿入されるとともに、硫化物固体電解質、酸化物固体電解質、ハロゲン化物電解質、窒化物電解質、高分子電解質、有機電解質、またはその組み合わせを含む電解質と、を含む。
【発明の効果】
【0024】
本発明は、以下のような利点と有益な効果を有する。
【0025】
1、本発明によって提供されるイオン輸送界面を含む材料は、ケイ素及びケイ素合金粒子の表面にLixMSyが豊富に含まれた保護層をその場生成し、得られた保護層は、高いイオン伝導率だけでなく、硫化物などの電解質材料に対する高い安定性および空気に対する安定性という利点を兼ね備えており、シリコン及びその合金負極材料と硫化物電解質材料との間の不適合を効果的に緩和することができ、固体電池の使用過程におけるシリコン及びその合金負極の増倍性能及びサイクル安定性を効果的に向上させることができる。
【0026】
2、本発明によって提供されるイオン輸送界面を含む材料は、その場のエピタキシャル堆積を採用するため、ケイ素及びケイ素合金粒子とLixMSyが豊富に含まれた界面層との間に相互作用する化学結合を有し、互いの接触は、粒子と粒子との間の物理的接触よりも緊密であり、界面イオン伝導効果はより良好である。
【0027】
3、本発明によって提供されるイオン輸送界面を含む材料の調製方法は、調製方法が簡単で、原料が豊富で、低コストで、使用が容易で、スケールアップが容易である。同時に、得られたの材料は、良恒な性能を有し、固体電池におけるシリコン負極材料の利点を効果的に継承することができ、高エネルギー密度の固体電池の開発に寄与する。
【図面の簡単な説明】
【0028】
ここで説明する図面は、本願の一部を構成し、本発明の実施例に対する更なる理解を提供するためのものであり、本発明の実施例に対する限定を構成するものではない。図面の中で、
【
図1】実施例1で調製した、表面にLi
4SiS
4界面層が豊富に含まれたシリコンミクロン材料の走査電子顕微鏡像およびエネルギースペクトルであり、
図1のb及び
図1のcは、異なる倍率条件下での走査電子顕微鏡像であり、
図1のdは走査電子顕微鏡エネルギースペクトルである。
【
図2】実施例1及び比較例1で組み立てられたリチウムーシリコン固体電池の充放電曲線の比較図であり、
図2のaは、比較例1で組み立てられたリチウムーシリコン固体電池の充放電曲線であり、
図2のbは、実施例1で組み立てられたリチウムーシリコン固体電池の充放電曲線である。
【
図3】実施例1及び比較例1で組み立てられたリチウムーシリコン固体電池のサイクル安定性の比較図であり、
図3において、記号□■の曲線は、実施例1で組み立てられたリチウムーシリコン固体電池のサイクル安定性曲線であり、記号▼は、実施例1で組み立てられたリチウムーシリコン固体電池のクーロン効率曲線である。
図3において、記号○●の曲線は、比較例1で組み立てられたリチウムーシリコン固体電池のサイクル安定性であり、記号▲は、比較例1で組み立てられたリチウムーシリコン固体電池のクーロン効率曲線である。
【
図4】ケイ素及びケイ素リチウム化生成物と硫化物電解質材料の化学反応計算図、および、表面にLi
4SiS
4保護層が豊富に含まれたシリコンミクロン材料と硫化物電解質材料の化学反応計算図であり、
図4のaは、SiとLi
3PS
4電解質材料の化学反応エネルギー曲線であり、
図4のbは、Li
22Si
5とLi
3PS
4電解質材料の化学反応エネルギー曲線であり、
図4のcは、Li
4SiS
4とLi
3PS
4電解質材料の化学反応エネルギー曲線であり、
図4のdは、SiS
2とLi
3PS
4電解質材料の化学反応エネルギー曲線である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
本発明の目的、技術的解決案および利点をより明確かつ理解しやすくするために、以下に実施例および図面に関連して本発明をさらに詳細に説明するが、本発明の概略的な実施形態及びその説明は、本発明を解釈する目的のみに使用されるものであり、本発明の限定するものではない。
【0030】
実施例1
本実施例は、イオン輸送界面を含む材料、すなわち、表面にLi4SiS4界面層が豊富に含まれたシリコンミクロン材料を提供する。
【0031】
1、表面にLi4SiS4界面層が豊富に含まれたシリコンミクロン材料の調製
アルゴン充填グローブボックス内で、四塩化ケイ素17mgを秤量し、テトラヒドロフラン溶液100mlに溶解し、30分間放置した後に、四塩化ケイ素のテトラヒドロフラン溶液として記録して待機させた。また、硫化リチウム9.2mg、モノ硫黄粉末12.8mgを秤量し、攪拌しながらテトラヒドロフラン溶液100mlに溶解して清澄溶液とし、30分間放置した後、Li2S4のテトラヒドロフラン溶液として記録し、待機させた。
【0032】
グローブボックス内で、ミクロンシリコン粒子150mgをガラス瓶内に秤量し、上記で構成した四塩化ケイ素のテトラヒドロフラン溶液10mlを添加し、マグネチックスターラーを用いて1時間攪拌した。その後、攪拌する過程で、上記で構成したLi2S4のテトラヒドロフラン溶液10mlをゆっくり添加しながら添加し、全過程を30分間続け、添加が完了した後に攪拌を1時間続けた。得られた反応溶液を真空乾燥ボックスに移して、乾燥温度80℃、乾燥時間12時間で真空乾燥した。得られた材料は、表面にLi4SiS4保護層が豊富に含まれたシリコンミクロン材料である。
【0033】
2、シリコン負極材料固体電池の調製
グローブボックス内で、表面にLi4SiS4界面層が豊富に含まれたシリコンミクロン材料60mg、Li3PS4硫化物固体電解質材料30mg、グラファイト粉末10mgを秤量し、乳鉢で30分間研磨し、待機させた。
【0034】
Li3PS4硫化物固体電解質材料150mgを秤量し、モールドセルライナーに入れ、舗装した後、150MPaの圧力でプレスして電解質シートを作製し、次いで、電解質シートの一端に、表面にLixSiSy界面層が豊富に含まれたシリコンミクロン材料を添加し、舗装した後、350MPaの圧力でプレスした。その後、電解質シートの他端に未変性のリチウムウエハーを添加し、50MPaの圧力でプレスした後にリチウムーシリコン固体電池を組み立てた。試験には定電流充放電を用い、電流は0.1mA cm-2、電圧範囲が0.005~2.0Vであった。
【0035】
実施例2
本実施例は、イオン輸送界面を含む材料、すなわち、表面にLi3AlS3界面層が豊富に含まれたシリコン合金ミクロン材料を提供する。
【0036】
1、表面にLi3AlS3界面層が豊富に含まれたシリコン合金ミクロン材料の調製
調製方法は実施例1に示した通りであるが、1mmol/LのSiCl4のテトラヒドロフラン溶液を1mmol/LのAlCl3のテトラヒドロフラン溶液に置き換えた点が異なる。具体的には、三塩化アルミニウム13.3mgを秤量し、テトラヒドロフラン溶液100mlに溶解し、30分間放置した後に、三塩化アルミニウムのテトラヒドロフラン溶液として記録して待機させ、ミクロンシリコン粒子をSiFe0.2合金のミクロン粒子に置き換えた。
【0037】
2、シリコン負極材料固体電池の調製
調製方法は実施例1に示した通りであるが、硫化物固体電解質材料が市販のLi6PS5Cl電解質材料である点が異なる。
【0038】
実施例3
本実施例は、イオン輸送界面を含む材料、すなわち、表面にLixAl0.2Si0.8Sy界面層が豊富に含まれたシリコンミクロン材料を提供する。
【0039】
1、表面にLixAl0.2Si0.8Sy界面層が豊富に含まれたシリコンミクロン材料の調製
調製方法は実施例1に示した通りであるが、1mmol/LのSiCl4のテトラヒドロフラン溶液をSiCl4とAlCl3のテトラヒドロフラン溶液に切り換え、SiCl4とAlCl3のモル比を4:1とした点が異なる。具体的には、三塩化アルミニウム2.66mg、四塩化シリコン13.6mgを秤量し、テトラヒドロフラン溶液100mlに溶解し、30分間放置した後に、SiCl4とAlCl3のテトラヒドロフラン混合溶液として記録して待機させた。ミクロンシリコン粒子をSiAl0.2合金ミクロン粒子に切り換えた。
【0040】
2、シリコン負極材料固体電池の調製
調製方法は実施例1に示した通りであるが、固体電解質材料として、市販のLi6PS5Cl電解質材料とボールミル合成したLi2ZrCl6電解質材料の3層を使用し、中間層にLi2ZrCl6電解質材料を配置し、両端にLi6PS5Cl電解質材料置を配置した点が異なる。
【0041】
比較例1
【0042】
実施例1で使用されたミクロンシリコン粒子を直接使用するが、当該ミクロンシリコン粒子は、その場(in-situ)反応の工程に付されず、シリコン粒子の表面に急速なイオン輸送を伴う界面層は形成されなかった。
【0043】
比較例として、実施例1のシリコン負極材料固体電池の調製の工程と同じであるが、使用されるミクロンシリコン粒子がその場反応の工程に付されず、シリコン粒子表面に急速なイオン輸送を伴う界面層が形成されない点が異なる。
【0044】
比較例2
理論計算による比較分析を行い、Si、Li22Si5、Li4SiS4、SiS2、Li3PS4それぞれの電解質材料間の化学反応エネルギーを算出し、化学反応エネルギーによって電解質材料とシリコン負極材料の界面を定性的に評価した。
【0045】
性能試験
1、試験方法:
(1)走査電子顕微鏡:
走査電子顕微鏡試験は、日本の日立製作所製電界放出型走査電子顕微鏡S4800を用いて行い、具体的な手順は、1、グローブボックス内で試料制作を行い、試料ステージに導電性接着剤を接着した後、試料粉末を導電性接着剤に直接振りかけて接着し、2、真空試料搬送ステージを用いて、資料を直接走査電子顕微鏡の真空チャンバーに搬送して真空処理を行い、3、走査電子顕微鏡の撮影モードおよびエネルギースペクトルモードに調整して撮影した。
【0046】
(2)電気化学的な性能試験方法:
シリコン負極材料固体電池の試験は、定電流充放電により行い、全試験工程は、設定電流0.1mA cm-2、電圧範囲0.005~2.0Vの青色電気力学的電気化学試験機を用いて行った。
【0047】
2、試験結果:
図1は、実施例1で調製した、表面にLi
4SiS
4界面層が豊富に含まれたシリコンミクロン材料の走査電子顕微鏡像およびエネルギースペクトルであり、図面に明らかな硫化物粒子や凝集体は見られない。
【0048】
図2のaは、比較例で組み立てられたリチウムーシリコン固体電池の充放電曲線であり、
図2のbは組み立てられたリチウムーシリコン固体電池の充放電曲線である。
【0049】
図3において、記号□■の曲線は、実施例1で組み立てられたリチウムーシリコン固体電池のサイクル安定性曲線であり、記号▼は、実施例1で組み立てられたリチウムーシリコン固体電池のクーロン効率曲線である。
【0050】
図3において、記号○●の曲線は、比較例1で組み立てられたリチウムーシリコン固体電池のサイクル安定性であり、記号▲は、比較例1で組み立てられたリチウムーシリコン固体電池のクーロン効率曲線である。
【0051】
図4は、ケイ素及びケイ素リチウム化生成物Li
22Si
5と硫化物電解質材料の化学反応計算図、および、表面にLi
xSiS
y界面層が豊富に含まれたシリコンミクロン材料と硫化物電解質材料の化学反応計算図である。
【0052】
実施例1と比較例1を詳細に比較すると、表面にLi4SiS4界面層が豊富に含まれたシリコンミクロン材料は、より高いサイクル安定性及びより低い電極分極曲線を示し、このことは、表面にLi4SiS4界面層を豊富に含ませる処理を行ったシリコンミクロン材料が固体電池サイクル過程でより高い電気化学的な安定性を有することを示している。
【0053】
理論計算は、ケイ素及びケイ素リチウム化生成物Li22Si5と硫化物電解質材料との自発反応エネルギーがより多く、0.14eV/atomを超えることを示している。比較として、表面にLi4SiS4界面層が豊富に含まれたシリコンミクロン材料の表面の界面層の主な成分は、Li4SiS4及びSiS2であり、両者とLi3PS4電解質材料はいずれも0.008eV/atom未満の反応エネルギーを示し、Li4SiS4及びSiS2がLi3PS4電解質材料と明らかな化学反応を起こさないことを示し、シリコン負極材料と硫化物電解質材料との副反応を効果的に遮断することができる。
【0054】
上述した具体的な実施形態は、本発明の目的、技術的解決案および有益な効果をさらに詳細に説明するものであり、上述した説明は本発明の具体的な実施形態に過ぎず、本発明の保護範囲を限定することを意図するものではなく、本発明の精神および原理の範囲内で行われるいかなる修改、等価置換、改良などは、いずれも本発明の保護範囲に含まれるべきであることを理解されたい。
【手続補正書】
【提出日】2024-04-22
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
イオン輸送界面を含む材料であって、
材料は、ケイ素及び/又はケイ素の合金材料であり、
前記材料の表面は、イオン伝導能力を有する、LixMSyを含む、非晶質界面層を有し、
0<x≦6、0<y≦4であり、
M=Si、Alの1種以上であり、
前記イオン輸送界面を含む材料は、その場合成法を用いてケイ素及び/又はケイ素の合金材料の表面を化学反応させて界面層を形成し、ケイ素及び/又はケイ素の合金材料の表面を少なくとも1種の金属塩化物を含む溶液に浸漬する工程で化学反応させて表面に塩素を含む構成を生成することを含み、
次いで、材料の表面に塩素を含む構成を加硫反応に供して、その表面に平均粒径がナノスケールサイズの加硫生成物をその場堆積して、イオン伝導能力を有する、LixMSyを含む、非晶質界面層を形成する
ことを特徴とする材料。
【請求項2】
前記LixMSyを含む、非晶質界面層と、ケイ素及び/又はケイ素の合金材料との間は、化学結合、エピタキシャル成長堆積の作用によって、接触している
ことを特徴とする請求項1に記載のイオン輸送界面を含む材料。
【請求項3】
前記シリコンの合金材料は、SiM`kであり、M`=Al、Cr、Mn、Cu、Zn、Ca、Mg、Sn、C、Fe、Co、Ni、Tiの1種以上であり、0<k≦3である
ことを特徴とする請求項1に記載のイオン輸送界面を含む材料。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれか1項に記載のイオン輸送界面を含む材料を調製するためのイオン輸送界面を含む材料の調製方法であって、
前記加硫反応に使用される原料は、Li2Saを含み、1≦a≦8である
ことを特徴とする調製方法。
【請求項5】
少なくとも1種のMClxを含む有機溶液を構成し、ケイ素及び/又はケイ素の合金材料を添加して、反応させることと、
Li2Saを含む有機溶液をさらに添加して、反応させ続けることと(1≦a≦8である)、
反応終了後、乾燥処理を行い、イオン輸送界面を含む材料を得ることと、を含む
ことを特徴とする請求項4に記載の調製方法。
【請求項6】
前記MClx、ケイ素及び/又はケイ素の合金材料、Li2Saの添加量は、n:m:lの質量比で調節され、0.1≦n≦10、90≦m≦99.5、0.2≦l≦15である
ことを特徴とする請求項5に記載の調製方法。
【請求項7】
前記MClxの有機溶液に採用される有機溶媒は、エステル、エーテル、アミド、ケトン、CS2溶媒、及びテトラヒドロフラン溶媒の1種以上を含み、及び/又は、Li2Saの有機溶液に採用される有機溶媒は、エステル、エーテル、アミド、ケトン、CS2溶媒、及びテトラヒドロフラン溶媒の1種以上を含む
ことを特徴とする請求項6に記載の調製方法。
【請求項8】
請求項1乃至3のいずれか1項に記載のイオン輸送界面を含む材料、または、請求項4乃至7のいずれか1項に記載の調整方法によって得られる材料を用いた固体電池。