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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024009599
(43)【公開日】2024-01-23
(54)【発明の名称】接合方法
(51)【国際特許分類】
   B29C 65/02 20060101AFI20240116BHJP
   B23K 26/364 20140101ALI20240116BHJP
【FI】
B29C65/02
B23K26/364
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022111247
(22)【出願日】2022-07-11
(71)【出願人】
【識別番号】000000262
【氏名又は名称】株式会社ダイヘン
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】玉城 怜士
(72)【発明者】
【氏名】田中 利幸
【テーマコード(参考)】
4E168
4F211
【Fターム(参考)】
4E168AD01
4E168JA02
4E168JA03
4F211AD03
4F211AD16
4F211AG01
4F211AG03
4F211AK03
4F211TA01
4F211TA13
4F211TC01
4F211TD02
4F211TD11
4F211TH17
4F211TN27
4F211TQ03
(57)【要約】
【課題】接合強度を向上させることが可能な接合方法を提供すること。
【解決手段】金属からなる第1ワークW1と樹脂を含む第2ワークW2とを互いに接合する接合方法であって、第1ワークのうち第2ワークと対向する面に溝を形成する溝形成工程と、溝と第2ワークとで囲まれる空間が第1ワーク及び第2ワーク外に連通するように第1ワークと第2ワークとを互いに重ね合わせる重ね合わせ工程と、第1ワークのうち第1ワークの厚み方向に溝と重なる部位を加熱ユニットによって加熱した後、第1ワーク及び第2ワークのうち加熱ユニットによって加熱された部位を加圧することによって第2ワークW2を構成する樹脂の一部を溝内に入り込ませながら第1ワークと第2ワークとを接合する接合工程と、を備える。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属からなる第1ワークと樹脂を含む第2ワークとを互いに接合する接合方法であって、
前記第1ワークのうち前記第2ワークと対向する面に溝を形成する溝形成工程と、
前記溝と前記第2ワークとで囲まれる空間が前記第1ワーク及び前記第2ワーク外に連通するように前記第1ワークと前記第2ワークとを互いに重ね合わせる重ね合わせ工程と、
前記第1ワークのうち前記第1ワークの厚み方向に前記溝と重なる部位を加熱ユニットによって加熱した後、前記第1ワーク及び前記第2ワークのうち前記加熱ユニットによって加熱された部位を加圧することによって前記第2ワークを構成する樹脂の一部を前記溝内に入り込ませながら前記第1ワークと前記第2ワークとを接合する接合工程と、を備える、接合方法。
【請求項2】
前記溝形成工程で前記第1ワークに形成される前記溝は、前記厚み方向と直交する方向における前記第1ワークの端面に至るように延びる形状を有する、請求項1に記載の接合方法。
【請求項3】
前記接合工程では、前記第1ワークのうち前記厚み方向に前記溝と重なる部位を前記溝に沿ってあるいは前記溝と交差するように前記加熱ユニットによって移動しながら連続的に加熱するとともに、前記第1ワーク及び前記第2ワークのうち前記加熱ユニットの移動方向における前記加熱ユニットの後方の部位を加圧することによって前記第2ワークを構成する前記樹脂の一部を前記溝内に連続的に入り込ませながら前記第1ワークと前記第2ワークとを接合する、請求項1又は2に記載の接合方法。
【請求項4】
前記接合工程では、前記第1ワーク及び前記第2ワークのうち前記加熱ユニットによって加熱される部位よりも前記移動方向における後方の部位を前記厚み方向に加圧しながら前記移動方向に移動することが可能な後方ローラによって前記第1ワークと前記第2ワークとを前記厚み方向に加圧する、請求項3に記載の接合方法。
【請求項5】
前記接合工程では、前記第1ワーク及び前記第2ワークのうち前記加熱ユニットによって加熱される部位よりも前記移動方向における前方の部位を前記厚み方向に加圧しながら前記移動方向に移動することが可能な前方ローラによって前記第1ワークと前記第2ワークとを前記厚み方向に加圧する、請求項4に記載の接合方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、接合方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、特開2004-358529号公報には、フランジの長手方向に沿って移動しながらフランジにレーザを照射するレーザヘッドと、レーザヘッドの移動方向における後方に設けられた加圧ローラと、を備えるレーザ溶接装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004-358529号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特開2004-358529号公報に記載されるようなワークの接合では、ワークの接合強度を高めたいというニーズがある。
【0005】
本開示の目的は、接合強度を向上させることが可能な接合方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一局面に従った接合方法は、金属からなる第1ワークと樹脂を含む第2ワークとを互いに接合する接合方法であって、前記第1ワークのうち前記第2ワークと対向する面に溝を形成する溝形成工程と、前記溝と前記第2ワークとで囲まれる空間が前記第1ワーク及び前記第2ワーク外に連通するように前記第1ワークと前記第2ワークとを互いに重ね合わせる重ね合わせ工程と、前記第1ワークのうち前記第1ワークの厚み方向に前記溝と重なる部位を加熱ユニットによって加熱した後、前記第1ワーク及び前記第2ワークのうち前記加熱ユニットによって加熱された部位を加圧することによって前記第2ワークを構成する樹脂の一部を前記溝内に入り込ませながら前記第1ワークと前記第2ワークとを接合する接合工程と、を備える。
【発明の効果】
【0007】
本開示によれば、接合強度を向上させることが可能な接合方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本開示の一実施形態における接合方法での接合対象となるワークを概略的に示す斜視図である。
図2図1に示されるワークの正面図である。
図3】溝形成工程を概略的に示す図である。
図4】接合成工程を概略的に示す図である。
図5図4において実線Vで示される範囲の拡大図である。
図6】接合工程の変形例を概略的に示す図である。
図7】溝の変形例を概略的に示す図である。
図8】溝の変形例を概略的に示す図である。
図9】第1ワーク及び第2ワークの重ね合わせ方の変形例を概略的に示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本開示の実施形態について、図面を参照して説明する。なお、以下で参照する図面では、同一またはそれに相当する部材には、同じ番号が付されている。
【0010】
図1は、本開示の一実施形態における接合方法での接合対象となるワークを概略的に示す斜視図である。ワークWは、第1ワークW1と、第2ワークW2と、を有している。
【0011】
第1ワークW1は、金属(鉄、アルミニウム等)からなる。第1ワークW1は、平板状に形成されている。図1に示されるように、第1ワークW1は、一対の第1端面s11と、一対の第2端面s12と、対向面s13と、外表面s14と、を有している。
【0012】
第1端面s11は、第1ワークW1の厚み方向(図1におけるZ方向)と直交する方向(図1におけるX方向)における端部に形成されている。第2端面s12は、第1ワークW1の厚み方向及び一対の第1端面s11同士を結ぶ方向の双方と直交する方向(図1におけるY方向)における端部に形成されている。
【0013】
対向面s13は、第1ワークW1の一対の主面のうち第2ワークW2と対向する面である。外表面s14は、第1ワークW1の一対の主面のうち第1ワークW1の厚み方向に対向面s13と反対側に形成された面である。
【0014】
図1及び図2に示されるように、第1ワークW1には、溝12が形成されている。溝12は、第1ワークW1の厚み方向と直交する方向における第1ワークW1の端面に至るように延びる形状を有している。本実施形態では、溝12は、一対の第1端面s11同士を結ぶ方向(図1におけるX方向)に直線状に延びる形状を有している。なお、溝12は、一対の第2端面s12同士を結ぶ方向に延びていてもよいし、第1端面s11と第2端面s12とを結ぶように延びていてもよい。また、溝12は、直線状に延びる形状に限らず、部分的ないし全体的に湾曲する形状に形成されてもよい。
【0015】
第2ワークW2は、樹脂を含む材料からなる。第2ワークW2は、炭素繊維やガラス繊維等を含んでいてもよい。第2ワークW2は、第1ワークW1の対向面s13と接触するように配置される。
【0016】
続いて、図2図5を参照しながら、本実施形態における接合方法について説明する。この接合方法は、溝形成工程と、重ね合わせ工程と、接合工程と、を含んでいる。
【0017】
溝形成工程は、第1ワークW1に溝12を形成する工程である。図3に示されるように、溝形成工程では、レーザヘッド50が用いられる。具体的に、溝形成工程では、レーザヘッド50から第1ワークW1の対向面s13に向けてレーザが照射されることによって第1ワークW1に溝12が形成される。溝形成工程では、例えば、一対の溝12が形成される。図1及び図2に示されるように、一対の溝12は、第1ワークW1の対向面s13から深くなるにしたがって互いに近づくように対向面s13に対して傾斜している。
【0018】
重ね合わせ工程では、溝12と第2ワークW2とで囲まれる空間S(図2を参照)が第1ワークW1及び第2ワークW2外に連通するように第1ワークW1と第2ワークW2とが互いに重ね合わされる。本実施形態では、一対の第1端面s11同士を結ぶ方向における第1ワークW1の長さが同方向における第2ワークW2の長さと同じ形状に設定されており、空間Sは、第1ワークW1の第1端面s11に開口している。
【0019】
接合工程では、第1ワークW1のうち第1ワークW1の厚み方向に溝12と重なる部位を加熱ユニットによって加熱した後、第1ワークW1及び第2ワークW2のうち加熱ユニットによって加熱された部位を加圧することによって第2ワークW2を構成する樹脂の一部を溝12内に入り込ませながら第1ワークW1と第2ワークW2とを接合する。
【0020】
図4に示されるように、本実施形態における接合工程では、加熱ユニットとしてレーザヘッド1が用いられている。レーザヘッド1は、第1ワークW1の外表面s14に沿って移動可能である。ただし、加熱ユニットは、レーザヘッド1に限定されず、熱風等であってもよい。
【0021】
第1ワークW1及び第2ワークW2のうち加熱ユニットによって加熱された部位は、図4において矢印Fで示されるように、後方ローラ3によって加圧される。後方ローラ3は、第1ワークW1及び第2ワークW2のうち加熱ユニットの移動方向における後方の部位を厚み方向に支持台2に向けて加圧しながら前記移動方向に移動することが可能である。後方ローラ3は、レーザヘッド1と一体的に移動可能である。後方ローラ3は、その軸方向(図3において紙面と直交する方向)における一端側の端部から他端側の端部に至る全域にわたって一定半径の外周面を有している。
【0022】
例えば、接合工程では、第1ワークW1のうち厚み方向に溝12と重なる部位を溝12の長手方向(溝12の延びる方向)に沿って加熱ユニットによって移動しながら連続的に加熱するとともに、第1ワークW1及び第2ワークW2のうち前記移動方向における加熱ユニットの後方の部位を加圧することによって第2ワークW2を構成する樹脂の一部を溝12内に連続的に入り込ませながら第1ワークW1と第2ワークW2とを接合する。
【0023】
図4に示されるように、接合工程では、第1ワークW1及び第2ワークW2のうち加熱ユニットによって加熱される部位よりも移動方向における前方の部位が前方ローラ4によって加圧されてもよい。前方ローラ4は、第1ワークW1及び第2ワークW2のうちの前記前方の部位を厚み方向に支持台2に向けて加圧しながら移動方向に移動することが可能である。前方ローラ4は、レーザヘッド1と一体的に移動可能である。前方ローラ4は、その軸方向における一端側の端部から他端側の端部に至る全域にわたって一定半径の外周面を有している。
【0024】
図5に示されるように、第1ワークW1及び第2ワークW2が後方ローラ3によって加圧されることにより、溝12内に第2ワークW2を構成する樹脂の一部が入り込む。
【0025】
なお、接合工程では、第1ワークW1のうち厚み方向に溝12と重なる部位が加熱されるのであれば、レーザヘッド1及び各ローラ3,4の移動方向は、溝12の長手方向と平行であってもよいし、溝12の長手方向と交差していてもよい。
【0026】
以上に説明したように、本実施形態における接合方法では、接合工程において、第1ワークW1及び第2ワークW2のうち加熱ユニットによって加熱された部位が加圧されることにより、第2ワークW2を構成する樹脂の一部が第1ワークW1に形成された溝12内に入り込むとともに、樹脂の溶融時に発生するガスが溝12を通じてワークW外に排出されるため、第1ワークW1及び第2ワークW2の接合強度が向上する。
【0027】
なお、図6に示されるように、支持台2が省略され、第1ワークW1及び第2ワークW2が一対の後方ローラ3によって挟み込まれるとともに、一対の前方ローラ4によって挟み込まれてもよい。
【0028】
また、図7及び図8に示されるように、溝12は、深さ方向(図7及び図8における上下方向)の途中にくびれ部12aを有していてもよい。
【0029】
また、図9に示されるように、溝12と第2ワークW2とで囲まれる空間Sが第1ワークW1及び第2ワークW2外に連通するように第1ワークW1と第2ワークW2とが互いに重ね合わされるのであれば、溝12は、第1ワークW1の端面まで至るように延びていなくてもよいし、また、溝12の長手方向と平行な方向における第1ワークW1の長さが同方向における第2ワークW2の長さと異なっていてもよい。
【0030】
上述した複数の例示的な実施形態は、以下の態様の具体例であることが当業者により理解される。
【0031】
[態様1]
金属からなる第1ワークと樹脂を含む第2ワークとを互いに接合する接合方法であって、
前記第1ワークのうち前記第2ワークと対向する面に溝を形成する溝形成工程と、
前記溝と前記第2ワークとで囲まれる空間が前記第1ワーク及び前記第2ワーク外に連通するように前記第1ワークと前記第2ワークとを互いに重ね合わせる重ね合わせ工程と、
前記第1ワークのうち前記第1ワークの厚み方向に前記溝と重なる部位を加熱ユニットによって加熱した後、前記第1ワーク及び前記第2ワークのうち前記加熱ユニットによって加熱された部位を加圧することによって前記第2ワークを構成する樹脂の一部を前記溝内に入り込ませながら前記第1ワークと前記第2ワークとを接合する接合工程と、を備える、接合方法。
【0032】
この接合方法では、接合工程において、第1ワーク及び第2ワークのうち加熱ユニットで加熱された部位を加圧することにより、第2ワークを構成する樹脂の一部が第1ワークに形成された溝内に入り込むとともに、樹脂の溶融時に発生するガスが溝を通じてワーク外に排出されるため、第1ワーク及び第2ワークの接合強度が向上する。
【0033】
[態様2]
前記溝形成工程で前記第1ワークに形成される前記溝は、前記厚み方向と直交する方向における前記第1ワークの端面に至るように延びる形状を有する、態様1に記載の接合方法。
【0034】
この態様では、溝の長手方向と平行な方向における第1ワークの長さが同方向における第2ワークの長さと同じ場合においても、溝と第2ワークとで囲まれる空間がワーク外に連通する。
【0035】
[態様3]
前記接合工程では、前記第1ワークのうち前記厚み方向に前記溝と重なる部位を前記溝に沿ってあるいは前記溝と交差するように前記加熱ユニットによって移動しながら連続的に加熱するとともに、前記第1ワーク及び前記第2ワークのうち前記加熱ユニットの移動方向における前記加熱ユニットの後方の部位を加圧することによって前記第2ワークを構成する前記樹脂の一部を前記溝内に連続的に入り込ませながら前記第1ワークと前記第2ワークとを接合する、態様1又は2に記載の接合方法。
【0036】
[態様4]
前記接合工程では、前記第1ワーク及び前記第2ワークのうち前記加熱ユニットによって加熱される部位よりも前記移動方向における後方の部位を前記厚み方向に加圧しながら前記移動方向に移動することが可能な後方ローラによって前記第1ワークと前記第2ワークとを前記厚み方向に加圧する、態様3に記載の接合方法。
【0037】
[態様5]
前記接合工程では、前記第1ワーク及び前記第2ワークのうち前記加熱ユニットによって加熱される部位よりも前記移動方向における前方の部位を前記厚み方向に加圧しながら前記移動方向に移動することが可能な前方ローラによって前記第1ワークと前記第2ワークとを前記厚み方向に加圧する、態様4に記載の接合方法。
【0038】
この態様では、加熱ユニットによるワークの加熱前にワークが固定されるとともに、第1ワーク及び第2ワークが互いに密着するため、接合強度が高まる。
【0039】
なお、今回開示された実施形態は全ての点で例示であって、制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した実施形態の説明ではなく請求の範囲によって示され、さらに請求の範囲と均等の意味および範囲内での全ての変更が含まれる。
【符号の説明】
【0040】
1 レーザヘッド、2 支持台、3 後方ローラ、4 前方ローラ、12 溝、s11 第1端面、s12 第2端面、s13 対向面、s14 外表面、W1 第1ワーク、W2 第2ワーク。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9