(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024095997
(43)【公開日】2024-07-11
(54)【発明の名称】シーラント層の降伏強度、シーラント層の厚さ比、及びシーラント層のガラス転移温度が制御されることで常温及び高温シーリング強度特性に優れる二次電池用パウチフィルム、その製造方法、それを用いた二次電池及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
H01M 50/121 20210101AFI20240704BHJP
H01M 50/105 20210101ALI20240704BHJP
H01M 50/129 20210101ALI20240704BHJP
H01M 50/133 20210101ALI20240704BHJP
H01M 50/131 20210101ALI20240704BHJP
【FI】
H01M50/121
H01M50/105
H01M50/129
H01M50/133
H01M50/131
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023203822
(22)【出願日】2023-12-01
(31)【優先権主張番号】10-2022-0191189
(32)【優先日】2022-12-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(71)【出願人】
【識別番号】523422299
【氏名又は名称】ユルチョン・ケミカル・カンパニー・リミテッド
【氏名又は名称原語表記】YOULCHON CHEMICAL CO., LTD.
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【弁理士】
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100221501
【弁理士】
【氏名又は名称】式見 真行
(72)【発明者】
【氏名】ソン,ノクチョン
(72)【発明者】
【氏名】ハン,ヒシク
(72)【発明者】
【氏名】チャン,ジウン
(72)【発明者】
【氏名】キム,ユハン
(72)【発明者】
【氏名】イ,ドンヒ
【テーマコード(参考)】
5H011
【Fターム(参考)】
5H011AA01
5H011CC02
5H011CC06
5H011CC10
5H011DD13
5H011KK00
5H011KK01
5H011KK02
5H011KK04
(57)【要約】 (修正有)
【課題】常温でのシーリング強度及び高温でのシーリング強度に優れるのみならず、常温シーリング強度の保持特性と共に特に高温シーリング強度の保持特性に優れる二次電池用パウチフィルム及びその製造方法を提供すること。
【解決手段】二次電池用パウチフィルムであって、少なくとも外層、バリア層、シーラント層が順次積層された積層体から構成されており、前記シーラント層は押出(EC)層と前記押出(EC)層の下部のポリプロピレン(PP)層とを含み、前記シーラント層のうちのポリプロピレン(PP)層の厚さ比が0.5より大きく、前記シーラント層の、MD方向への上降伏強度(N/mm
2)が17.50~19.99であり、TD方向への上降伏強度(N/mm
2)が17.00~19.99であり、前記シーラント層のガラス転移温度(Tg)が-20℃~-10℃である二次電池用パウチフィルムとする。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
二次電池用パウチフィルムであって、
少なくとも外層、バリア層、シーラント層が順次積層された積層体から構成されており、前記シーラント層は押出(EC)層及びポリプロピレン(PP)層を含み、前記押出(EC)層はポリプロピレン(PP)層を基準にバリア層側に位置し、
前記押出(EC)層及びポリプロピレン(PP)層を含むシーラント層のうちのポリプロピレン(PP)層の厚さ比が0.5より大きく、
前記押出(EC)層及びポリプロピレン(PP)層を含むシーラント層の、MD方向への上降伏強度(N/mm2)が17.50~19.99であり、TD方向への上降伏強度(N/mm2)が17.00~19.99であり、
前記押出(EC)層及びポリプロピレン(PP)層を含むシーラント層のガラス転移温度(Tg)が-20℃~-10℃であることを特徴とする二次電池用パウチフィルム。
【請求項2】
前記押出(EC)層及びポリプロピレン(PP)層を含むシーラント層のMD方向への上降伏強度(N/mm2)とTD方向への上降伏強度(N/mm2)との和が34.5以上39.9以下であることを特徴とする請求項1に記載の二次電池用パウチフィルム。
【請求項3】
前記押出(EC)層及びポリプロピレン(PP)層を含むシーラント層のMD方向への上降伏強度(N/mm2)がTD方向への上降伏強度(N/mm2)より大きいことを特徴とする請求項2に記載の二次電池用パウチフィルム。
【請求項4】
当該二次電池用パウチフィルムは、下記の方法で測定した220℃シーリング条件でシールした場合における最大常温シーリング強度測定値がMD方向及びTD方向の双方で150N以上205N以下であることを特徴とする請求項1に記載の二次電池用パウチフィルム。
[220℃シーリング条件でシールした場合における最大常温シーリング強度の測定方法]
・二次電池用パウチフィルムを100mm×200mmの大きさで作製してから半折りしてシールした後、シーリング方向と垂直に幅15mmの大きさで裁断して試片を作製する。
・シーリング条件はシールバー(Seal Bar)幅200mm×シール(Seal)厚さ10mmであり、2.0秒、0.2Mpa、温度は220℃条件でシールする。
・シーリング強度測定器にて試片のMD方向及びTD方向の各シーリング強度を常温で測定し、シーリング条件は試験測度10mpm、グリップギャップ(Grip Gap)30mmで測定する。
・シーリング強度測定値のうちの最大値が最大シーリング強度である。
【請求項5】
当該二次電池用パウチフィルムは、下記の方法で測定した220℃シーリング条件でシールした場合における最大高温シーリング強度測定値(60℃で3分放置後にシーリング強度を測定した値)がMD方向及びTD方向の少なくとも一つ以上の方向において115N以上170N以下であることを特徴とする請求項1に記載の二次電池用パウチフィルム。
[220℃シーリング条件でシールした場合における最大高温シーリング強度の測定方法]
・二次電池用パウチフィルムを100mm×200mmの大きさで作製してから半折りしてシールした後、シーリング方向と垂直に幅15mmの大きさで裁断して試片を作製する。
・シーリング条件はシールバー(Seal Bar)幅200mm×シール(Seal)厚さ10mmであり、2.0秒、0.2Mpa、温度は220℃条件でシールする。
・シーリング強度測定器にて試片のMD方向及びTD方向のうちの一つ以上の各シーリング強度を60℃条件下で3分放置後に測定し、シーリング条件は試験測度10mpm、グリップギャップ(Grip Gap)30mmで測定する。
・シーリング強度測定値のうちの最大値が最大シーリング強度である。
【請求項6】
当該二次電池用パウチフィルムは、220℃シーリング条件でシールした場合における最大シーリング強度に関する下記の最大シーリング強度パラメータが1.1以上1.8以下であることを特徴とする請求項1に記載の二次電池用パウチフィルム。
[最大シーリング強度パラメータ]
(常温MD方向の最大シーリング強度×常温TD方向の最大シーリング強度)/(高温MD方向の最大シーリング強度×高温TD方向の最大シーリング強度)
【請求項7】
当該二次電池用パウチフィルムは、下記の方法で測定した220℃シーリング条件でシールした場合におけるTD方向の常温エネルギーが2.0~3.0KN×mmであることを特徴とする請求項1に記載の二次電池用パウチフィルム。
[220℃シーリング条件でシールした場合におけるTD方向の常温エネルギーの測定]
・二次電池用パウチフィルムを100mm×200mmの大きさで作製してから半折りしてシールした後、シーリング方向と垂直に幅15mmの大きさで裁断して試片を作製する。
・シーリング条件はシールバー(Seal Bar)幅200mm×シール(Seal)厚さ10mmであり、2.0秒、0.2Mpa、温度は220℃条件でシールする。
・常温でシーリング強度測定器にて試片をTD方向に引っ張りながらシーリング強度の変化を測定し、測定条件は試験測度10mpm、グリップギャップ(Grip Gap)30mmで測定する。
・X軸をTD方向へのシーリング部位を引っ張るストローク(距離)とし、Y軸をシーリング強度としたとき、ストロークに応じたシーリング強度の変化グラフとストロークを示すX軸間の面積‐ストロークに応じたシーリング強度の変化グラフの積分値‐を常温エネルギーと定義し、積分値はストローク0mmから20mmの範囲まで積分したものである。
【請求項8】
当該二次電池用パウチフィルムは、下記の方法で測定した220℃シーリング条件でシールした場合におけるTD方向の高温エネルギーが1.5~2.5KN×mmであることを特徴とする請求項1に記載の二次電池用パウチフィルム。
[220℃シーリング条件でシールした場合におけるTD方向の高温エネルギーの測定]
・二次電池用パウチフィルムを100mm×200mmの大きさで作製してから半折りしてシールした後、シーリング方向と垂直に幅15mmの大きさで裁断して試片を作製する。
・シーリング条件はシールバー(Seal Bar)幅200mm×シール(Seal)厚さ10mmであり、2.0秒、0.2Mpa、温度は220℃条件でシールする。
・60℃で3分放置後に測定する高温条件でシーリング強度測定器にて試片をTD方向に引っ張りながらシーリング強度の変化を測定し、測定条件は試験測度10mpm、グリップギャップ(Grip Gap)30mmで測定する。
・X軸をTD方向へのシーリング部位を引っ張るストローク(距離)とし、Y軸をシーリング強度としたとき、ストロークに応じたシーリング強度の変化グラフとストロークを示すX軸間の面積‐ストロークに応じたシーリング強度の変化グラフの積分値‐を高温エネルギーと定義し、積分値はストローク0mmから20mmの範囲まで積分したものである。
【請求項9】
当該二次電池用パウチフィルムは、下記の方法で測定した220℃シーリング条件でシールした場合におけるTD方向の常温エネルギー及び高温エネルギーの差が0.4~0.6KN×mmであることを特徴とする請求項1に記載の二次電池用パウチフィルム。
[220℃シーリング条件でシールした場合におけるTD方向の常温エネルギー及び高温エネルギーの測定]
・二次電池用パウチフィルムを100mm×200mmの大きさで作製してから半折りしてシールした後、シーリング方向と垂直に幅15mmの大きさで裁断して試片を作製する。
・シーリング条件はシールバー(Seal Bar)幅200mm×シール(Seal)厚さ10mmであり、2.0秒、0.2Mpa、温度は220℃条件でシールする。
・常温条件又は60℃で3分放置後に測定する高温条件でシーリング強度測定器にて試片をTD方向に引っ張りながらシーリング強度の変化を測定し、測定条件は試験測度10mpm、グリップギャップ(Grip Gap)30mmで測定する。
・X軸をTD方向へのシーリング部位を引っ張るストローク(距離)とし、Y軸をシーリング強度としたとき、ストロークに応じたシーリング強度の変化グラフとストロークを示すX軸間の面積‐ストロークに応じたシーリング強度の変化グラフの積分値‐を常温エネルギー又は高温エネルギーと定義し、積分値はストローク0mmから20mmの範囲まで積分したものである。
・常温条件で測定した場合のエネルギーが常温エネルギーであり、高温条件で測定した場合のエネルギーが高温エネルギーである。
【請求項10】
当該二次電池用パウチフィルムは、下記の方法で測定した220℃シーリング条件でシールした場合におけるTD方向の常温最大ストロークが15~25mmであることを特徴とする請求項1に記載の二次電池用パウチフィルム。
[220℃シーリング条件でシールした場合におけるTD方向の常温最大ストロークの測定]
・二次電池用パウチフィルムを100mm×200mmの大きさで作製してから半折りしてシールした後、シーリング方向と垂直に幅15mmの大きさで裁断して試片を作製する。
・シーリング条件はシールバー(Seal Bar)幅200mm×シール(Seal)厚さ10mmであり、2.0秒、0.2Mpa、温度は220℃条件でシールする。
・常温でシーリング強度測定器にて試片をTD方向に引っ張りながらシーリング強度の変化を測定し、測定条件は試験測度10mpm、グリップギャップ(Grip Gap)30mmで測定する。
・X軸をTD方向へのシーリング部位を引っ張るストローク(距離)とし、Y軸をシーリング強度としたとき、ストロークが増加するにつれてシーリング強度曲線が上昇し、シーリング強度値が最大になるストローク(距離)を最大ストロークと評価する。
【請求項11】
当該二次電池用パウチフィルムは、下記の方法で測定した220℃シーリング条件でシールした場合におけるTD方向の高温最大ストロークが18~24mmであることを特徴とする請求項1に記載の二次電池用パウチフィルム。
[220℃シーリング条件でシールした場合におけるTD方向の高温最大ストロークの測定]
・二次電池用パウチフィルムを100mm×200mmの大きさで作製してから半折りしてシールした後、シーリング方向と垂直に幅15mmの大きさで裁断して試片を作製する。
・シーリング条件はシールバー(Seal Bar)幅200mm×シール(Seal)厚さ10mmであり、2.0秒、0.2Mpa、温度は220℃条件でシールする。
・60℃で3分放置後に測定する高温条件でシーリング強度測定器にて試片をTD方向に引っ張りながらシーリング強度の変化を測定し、測定条件は試験測度10mpm、グリップギャップ(Grip Gap)30mmで測定する
・X軸をTD方向へのシーリング部位を引っ張るストローク(距離)とし、Y軸をシーリング強度としたとき、ストロークが増加するにつれてシーリング強度曲線が緩やかに上昇し、シーリング強度値が最大になるストローク(距離)を最大ストロークと評価する。
【請求項12】
少なくとも外層、バリア層、シーラント層が順次積層され、前記シーラント層は押出(EC)層及びポリプロピレン(PP)層を含み、前記押出(EC)層はポリプロピレン(PP)層を基準にバリア層側に位置する二次電池用パウチフィルムの製造方法であって、
前記シーラント層のうちのポリプロピレン(PP)層に押出(EC)層を形成する際にシーラント層のうちのポリプロピレン(PP)層の厚さ比が0.5より大きくなるように製造する段階を含み、
前記押出(EC)層及びポリプロピレン(PP)層を含むシーラント層の、MD方向への上降伏強度(N/mm2)が17.50~19.99であり、TD方向への上降伏強度(N/mm2)が17.00~19.99であり、
前記押出(EC)層及びポリプロピレン(PP)層を含むシーラント層のガラス転移温度(Tg)が-20℃~-10℃であることを特徴とする二次電池用パウチフィルムの製造方法。
【請求項13】
請求項1~11のいずれかに記載の二次電池用パウチフィルムで外装されたことを特徴とする二次電池。
【請求項14】
当該二次電池は、電気自動車用又はエネルギー貯蔵装置用であることを特徴とする請求項13に記載の二次電池。
【請求項15】
二次電池の製造方法であって、
請求項1~11のいずれかに記載の二次電池用パウチフィルムで二次電池を外装する段階;を含むことを特徴とする二次電池の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書は、常温及び高温シーリング強度特性に優れる二次電池用パウチフィルム及びその製造方法に関し、より詳しくは、二次電池用パウチフィルムのシーラント層の降伏強度、シーラント層のうちのポリプロピレン(PP)層の厚さ比及びシーラント層のガラス転移温度(Tg)を調節することで常温及び高温での熱接着強度、すなわちシーリング強度に優れ、且つ常温及び特に高温でのシーリング強度の保持特性に優れる二次電池用パウチフィルム、その製造方法、それを用いた二次電池及びその製造方法に関する。
【0002】
[本発明を支援した国家研究開発事業]
[課題固有番号]1415181922
[課題番号]20022450
[部署名]産業通商資源部
[課題管理(専門)機関名]韓国産業技術評価管理院
[研究事業名]素材部品パッケージ型(最高企業)
[研究課題名]2倍以上の高接着強度(60℃)の具現が可能な次世代二次電池パウチの開発
[寄与率]1/1
[課題遂行機関名]栗村化学(株)
[研究期間]2022-09-01~2022-12-31
[課題固有番号]1415185612
[課題番号]20022450
[部署名]産業通商資源部
[課題管理(専門)機関名]韓国産業技術評価管理院
[研究事業名]素材部品パッケージ型(最高企業)
[研究課題名]2倍以上の高接着強度(60℃)の具現が可能な次世代二次電池パウチの開発
[寄与率]1/1
[課題遂行機関名]栗村化学(株)
[研究期間]2023-01-01~2023-12-31
【背景技術】
【0003】
リチウム二次電池(LiB)は、高いエネルギー密度と優れた出力を有するなどの多様な長所を基に多くのアプリケーションに適用されている。二次電池用パウチフィルムは、かかる二次電池の電極群と電解液を取り囲む多層構造の包装用積層フィルムであって、電池の安全性、寿命特性、そして作動持続力を決める核心の部品素材であり、機械的柔軟性及び強度、高い酸素/水蒸気バリア性、高い熱的接着強度、電解液に対する耐化学性、電気絶縁性、高温安全性などが要求される。
【0004】
二次電池用パウチフィルムは、通常、大別して外層/バリア層/内側シーラント層からなる。
【0005】
外層又は最外層は、ナイロンやナイロンとPET(ポリエチレンテレフタレート)との混合素材、OPP(延伸ポリプロピレン)、ポリエチレンなどから構成されている。かかる外層又は最外層の要求特性としては、耐熱性、耐ピンホール性、耐化学性、成形性、及び絶縁性などが挙げられる。
【0006】
バリア層は、水蒸気やその他の気体に対するバリア性と共に成形性が要求される。このような側面から、バリア層には成形可能な金属、例えば、アルミニウム(Al)、鉄(Fe)、銅(Cu)、ニッケル(Ni)などが用いられ、近年、アルミニウムが最も多く用いられている。
【0007】
内層のシーラント層は、熱接着性、成形性と共に電解液と接触する層である点から、耐電解液性、絶縁抵抗性などが要求される。
【0008】
一方、リチウム二次電池の適用分野が小型から自動車用やESS用の中大型へと拡大されるにつれて、二次電池用パウチフィルムもまた、高い安全性が要求される中大型に適合した特性を持つことが必要になってきた。
【0009】
そこで、常温でのシーリング強度特性のみならず、特に高温(60℃)でのシーリング強度に優れ、さらには常温及び特に高温でのシーリング強度が低下することなく保持される必要があるが、中大型の二次電池に用いられるパウチフィルムの実際の製造過程で常温及び特に高温での高いシーリング強度を確保し保持することは容易なことではない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の例示的な具現例では、一側面において、常温でのシーリング強度及び高温でのシーリング強度に優れるのみならず、常温シーリング強度の保持特性と共に特に高温シーリング強度の保持特性に優れる二次電池用パウチフィルム及びその製造方法を提供することをその目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の例示的な具現例では、二次電池用パウチフィルムであって、少なくとも外層、バリア層、シーラント層が順次積層された積層体から構成されており、前記シーラント層は押出(EC)層及びポリプロピレン(PP)層を含み、前記押出(EC)層はポリプロピレン(PP)層を基準にバリア層側に位置し、前記押出(EC)層及びポリプロピレン(PP)層を含むシーラント層のうちのポリプロピレン(PP)層の厚さ比が0.5より大きく、前記押出(EC)層及びポリプロピレン(PP)層を含むシーラント層の、MD方向への上降伏強度(N/mm2)が17.50~19.99、好ましくは、17.50~19.80であり、TD方向への上降伏強度(N/mm2)が17.00~19.99、好ましくは、17.00~19.50であり、前記シーラント層のガラス転移温度(Tg)が-20℃~-10℃である、二次電池用パウチフィルムを提供する。
【0012】
例示的な一具現例において、前記押出(EC)層及びポリプロピレン(PP)層を含むシーラント層のMD方向への上降伏強度(N/mm2)とTD方向への上降伏強度(N/mm2)との和が34.5以上39.9以下であってよい。
【0013】
例示的な一具現例において、前記押出(EC)層及びポリプロピレン(PP)層を含むシーラント層のMD方向への上降伏強度(N/mm2)がTD方向への上降伏強度(N/mm2)より大きくてよい。
【0014】
例示的な一具現例において、前記二次電池用パウチフィルムは、下記の方法で測定した220℃シーリング条件でシールした場合における最大常温シーリング強度測定値がMD方向及びTD方向の双方で150N以上205N以下であってよい。
[220℃シーリング条件でシールした場合における最大常温シーリング強度の測定方法]
・二次電池用パウチフィルムを100mm×200mmの大きさで作製してから半折りしてシールした後、シーリング方向と垂直に幅15mmの大きさで裁断して試片を作製する。
・シーリング条件はシールバー(Seal Bar)幅200mm×シール(Seal)厚さ10mmであり、2.0秒、0.2Mpa、温度は220℃条件でシールする。
・シーリング強度測定器にて試片のMD方向及びTD方向の各シーリング強度を常温で測定し、シーリング条件は試験測度10mpm、グリップギャップ(Grip Gap)30mmで測定する。
・シーリング強度測定値のうちの最大値が最大シーリング強度である。
例示的な一具現例において、前記二次電池用パウチフィルムは、下記の方法で測定した220℃シーリング条件でシールした場合における最大高温シーリング強度測定値(60℃で3分放置後にシーリング強度を測定した値)がMD方向及びTD方向の少なくとも一つ以上の方向において115N以上170N以下であってよい。
【0015】
[220℃シーリング条件でシールした場合における最大高温シーリング強度の測定方法]
・二次電池用パウチフィルムを100mm×200mmの大きさで作製してから半折りしてシールした後、シーリング方向と垂直に幅15mmの大きさで裁断して試片を作製する。
・シーリング条件はシールバー(Seal Bar)幅200mm×シール(Seal)厚さ10mmであり、2.0秒、0.2Mpa、温度は220℃条件でシールする。
・シーリング強度測定器にて試片のMD方向及びTD方向のうちの一つ以上の各シーリング強度を60℃条件下で3分放置後に測定し、シーリング条件は試験測度10mpm、グリップギャップ(Grip Gap)30mmで測定する。
・シーリング強度測定値のうちの最大値が最大シーリング強度である。
例示的な一具現例において、前記二次電池用パウチフィルムは、220℃シーリング条件でシールした場合における最大シーリング強度に関する下記の最大シーリング強度パラメータが1.1以上1.8以下であってよい。
【0016】
[最大シーリング強度パラメータ]
(常温MD方向の最大シーリング強度×常温TD方向の最大シーリング強度)/(高温MD方向の最大シーリング強度×高温TD方向の最大シーリング強度)
例示的な一具現例において、前記二次電池用パウチフィルムは、下記の方法で測定した220℃シーリング条件でシールした場合におけるTD方向の常温エネルギーが2.0~3.0KN×mmであってよい。
【0017】
[220℃シーリング条件でシールした場合におけるTD方向の常温エネルギーの測定]
・二次電池用パウチフィルムを100mm×200mmの大きさで作製してから半折りしてシールした後、シーリング方向と垂直に幅15mmの大きさで裁断して試片を作製する。
・シーリング条件はシールバー(Seal Bar)幅200mm×シール(Seal)厚さ10mmであり、2.0秒、0.2Mpa、温度は220℃条件でシールする。
・常温でシーリング強度測定器にて試片をTD方向に引っ張りながらシーリング強度の変化を測定し、測定条件は試験測度10mpm、グリップギャップ(Grip Gap)30mmで測定する。
・X軸をTD方向へのシーリング部位を引っ張るストローク(距離)とし、Y軸をシーリング強度としたとき、ストロークに応じたシーリング強度の変化グラフとストロークを示すX軸間の面積‐ストロークに応じたシーリング強度の変化グラフの積分値‐を常温エネルギーと定義し、積分値はストローク0mmから20mmの範囲まで積分したものである。
【0018】
例示的な一具現例において、前記二次電池用パウチフィルムは、下記の方法で測定した220℃シーリング条件でシールした場合におけるTD方向の高温エネルギーが1.5~2.5KN×mmであってよい。
【0019】
[220℃シーリング条件でシールした場合におけるTD方向の高温エネルギーの測定]
・二次電池用パウチフィルムを100mm×200mmの大きさで作製してから半折りしてシールした後、シーリング方向と垂直に幅15mmの大きさで裁断して試片を作製する。
・シーリング条件はシールバー(Seal Bar)幅200mm×シール(Seal)厚さ10mmであり、2.0秒、0.2Mpa、温度は220℃条件でシールする。
・60℃で3分放置後に測定する高温条件でシーリング強度測定器にて試片をTD方向に引っ張りながらシーリング強度の変化を測定し、測定条件は試験測度10mpm、グリップギャップ(Grip Gap)30mmで測定する。
・X軸をTD方向へのシーリング部位を引っ張るストローク(距離)とし、Y軸をシーリング強度としたとき、ストロークに応じたシーリング強度の変化グラフとストロークを示すX軸間の面積‐ストロークに応じたシーリング強度の変化グラフの積分値‐を高温エネルギーと定義し、積分値はストローク0mmから20mmの範囲まで積分したものである。
【0020】
例示的な一具現例において、前記二次電池用パウチフィルムは、下記の方法で測定した220℃シーリング条件でシールした場合におけるTD方向の常温エネルギー及び高温エネルギーの差が0.4~0.6KN×mmであってよい。
【0021】
[220℃シーリング条件でシールした場合におけるTD方向の常温エネルギー及び高温エネルギーの測定]
・二次電池用パウチフィルムを100mm×200mmの大きさで作製してから半折りしてシールした後、シーリング方向と垂直に幅15mmの大きさで裁断して試片を作製する。
・シーリング条件はシールバー(Seal Bar)幅200mm×シール(Seal)厚さ10mmであり、2.0秒、0.2Mpa、温度は220℃条件でシールする。
・常温条件又は60℃で3分放置後に測定する高温条件でシーリング強度測定器にて試片をTD方向に引っ張りながらシーリング強度の変化を測定し、測定条件は試験測度10mpm、グリップギャップ(Grip Gap)30mmで測定する。
・X軸をTD方向へのシーリング部位を引っ張るストローク(距離)とし、Y軸をシーリング強度としたとき、ストロークに応じたシーリング強度の変化グラフとストロークを示すX軸間の面積‐ストロークに応じたシーリング強度の変化グラフの積分値‐を常温エネルギー又は高温エネルギーと定義し、積分値はストローク0mmから20mmの範囲まで積分したものである。
・常温条件で測定した場合のエネルギーが常温エネルギーであり、高温条件で測定した場合のエネルギーが高温エネルギーである。
【0022】
例示的な一具現例において、前記二次電池用パウチフィルムは、下記の方法で測定した220℃シーリング条件でシールした場合におけるTD方向の常温最大ストロークが15~25mmであってよい。
【0023】
[220℃シーリング条件でシールした場合におけるTD方向の常温最大ストロークの測定]
・二次電池用パウチフィルムを100mm×200mmの大きさで作製してから半折りしてシールした後、シーリング方向と垂直に幅15mmの大きさで裁断して試片を作製する。
・シーリング条件はシールバー(Seal Bar)幅200mm×シール(Seal)厚さ10mmであり、2.0秒、0.2Mpa、温度は220℃条件でシールする。
・常温でシーリング強度測定器にて試片をTD方向に引っ張りながらシーリング強度の変化を測定し、測定条件は試験測度10mpm、グリップギャップ(Grip Gap)30mmで測定する。
・X軸をTD方向へのシーリング部位を引っ張るストローク(距離)とし、Y軸をシーリング強度としたとき、ストロークが増加するにつれてシーリング強度曲線が上昇し、シーリング強度値が最大になるストローク(距離)を最大ストロークと評価する。
【0024】
例示的な一具現例において、前記二次電池用パウチフィルムは、下記の方法で測定した220℃シーリング条件でシールした場合におけるTD方向の高温最大ストロークが18~24mmであってよい。
【0025】
[220℃シーリング条件でシールした場合におけるTD方向の高温最大ストロークの測定]
・二次電池用パウチフィルムを100mm×200mmの大きさで作製してから半折りしてシールした後、シーリング方向と垂直に幅15mmの大きさで裁断して試片を作製する。
・シーリング条件はシールバー(Seal Bar)幅200mm×シール(Seal)厚さ10mmであり、2.0秒、0.2Mpa、温度は220℃条件でシールする。
・60℃で3分放置後に測定する高温条件でシーリング強度測定器にて試片をTD方向に引っ張りながらシーリング強度の変化を測定し、測定条件は試験測度10mpm、グリップギャップ(Grip Gap)30mmで測定する
・X軸をTD方向へのシーリング部位を引っ張るストローク(距離)とし、Y軸をシーリング強度としたとき、ストロークが増加するにつれてシーリング強度曲線が緩やかに上昇し、シーリング強度値が最大になるストローク(距離)を最大ストロークと評価する。
【0026】
また、本発明の例示的な具現例では、少なくとも外層、バリア層、シーラント層が順次積層され、前記シーラント層は押出(EC)層及びポリプロピレン(PP)層を含み、前記押出(EC)層はポリプロピレン(PP)層を基準にバリア層側に位置する二次電池用パウチフィルムの製造方法であって、前記シーラント層のうちのポリプロピレン(PP)層に押出(EC)層を形成する際にシーラント層のうちのポリプロピレン(PP)層の厚さ比が0.5より大きくなるようにシーラント層を製造する段階を含み、前記押出(EC)層及びポリプロピレン(PP)層を含むシーラント層の、MD方向への上降伏強度(N/mm2)が17.50~19.99、好ましくは、17.50~19.80であり、TD方向への上降伏強度(N/mm2)が17.00~19.99、好ましくは、17.00~19.50であり、前記押出(EC)層及びポリプロピレン(PP)層を含むシーラント層のガラス転移温度(Tg)が-20℃~-10℃である、二次電池用パウチフィルムの製造方法を提供する。
【0027】
さらに、本発明の例示的な具現例では、前述した二次電池用パウチフィルムで外装された二次電池を提供する。
【0028】
例示的な一具現例において、前記二次電池は、電気自動車用又はエネルギー貯蔵装置用であってよい。
また、本発明の例示的な具現例では、二次電池の製造方法であって、前述した二次電池用パウチフィルムで二次電池を外装する段階;を含む二次電池の製造方法を提供する。
【発明の効果】
【0029】
本発明の例示的な具現例に係るパウチフィルムは、シーラント層の降伏強度及びシーラント層の押出(EC)層とポリプロピレン(PP)層の厚さを調節し、且つシーラント層のガラス転移温度を調節することで、常温及び高温でのシーリング強度に優れるのみならず、常温シーリング強度の保持特性及び特に高温シーリング強度の保持特性に優れる。
【0030】
このような二次電池用パウチフィルムは、安全性、特に高温安全性が要求される電気自動車用やエネルギー貯蔵装置用などの中大型の二次電池用パウチフィルムとして有用である。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【
図1】EC方式で製造される二次電池用パウチフィルムの構成を示す概略図である。
【
図2b】本実験例でバッテリーパックのサンプルをジグに取り付けたことを示す写真である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
用語の定義
本明細書において二次電池用パウチフィルムが所定の層を含んでなるとしているが、必ずしも当該層だけで構成されることではなく、更なる層が含まれてよい。
【0033】
本明細書において特定の層の「上」に形成されるとは、当該層に直接形成されることだけではなく、更なる他の層を介して形成されることも含む。
【0034】
本明細書において降伏強度とは、試片が荷重の増加に比例して延伸し、弾性限度を超えると荷重に比例せずに延伸し始めるがこの地点を降伏点と称し、降伏点まで加えられる力のことをいう。
【0035】
本明細書において上降伏強度とは、降伏強度の最大値(peak値)のことを意味する。すなわち、降伏点には上降伏点(降伏点のうち降伏強度が最大になる地点)と下降伏点(降伏点のうち降伏強度が最小になる地点)があり、上降伏強度とは、降伏点における降伏強度の最大値(peak値)[すなわち、上降伏点における降伏強度]のことを意味し、下降伏強度とは、降伏点における降伏強度の最小値[すなわち、下降伏点における降伏強度]のことを意味する。降伏強度の測定対象によっては上降伏点と下降伏点とが同一であることがある。
【0036】
本明細書において押出コーティング(Extrusion Coating;EC)層とは、シーラント層のうちのバリア層との貼合(lamination)のために押出コートされた樹脂、例えば、ポリオレフィン系樹脂の押出コーティング層[以下、押出層又は押出(EC)層と略称することがある]のことを意味する。シーラント層の押出(EC)層は、下記のポリプロピレン系樹脂層を基準にバリア層側に位置する。
【0037】
本明細書においてシーラント層のポリプロピレン系樹脂層は、シーラント層をなす核心の樹脂層であってシーリングの役割を果たし、一つ以上の層からなる。バリア層との貼合のための前述した押出(EC)層と対比され、前述した押出(EC)層を基準にパウチフィルムの内側(すなわち、バリア層とは反対側)に位置する。
【0038】
本明細書においてエネルギーとは、シーリング強度の保持特性を評価する項目であってシーリング部位を引っ張るストローク(距離)[X軸]に応じたシーリング強度(Y軸)値の変化を測定したとき、シーリング強度の変化を示すグラフのストローク区間(0~20mm)における面積、すなわち、当該ストローク区間(0~20mm)におけるシーリング強度の変化グラフとストローク(距離)軸[X軸]に対する積分値のことをいい、力と距離との積であるので、エネルギーと表現し得る。
【0039】
本明細書において最大ストロークもまた、シーリング強度の保持特性を評価することができる項目であってシーリング部位を引っ張るストローク(距離)が増加するにつれてシーリング強度が増加し、シーリング強度値が最大になるストローク(距離)を最大ストロークという。
【0040】
例示的な具現例の説明
以下、本発明の例示的な具現例を詳述する。
二次電池用パウチフィルムの製造の際にシーラント層を製造する方法として、押出ラミネーション(Extrusion Lamination)方式とソルベントドライラミネーション(Solvent-Dry Lamination;以下、SDLと略称することがある)方式がある。
【0041】
ソルベントドライラミネーション方式は、ポリプロピレン(PP)層の上にソルベント型接着剤を用いてバリア層(金属層)を接着し当該ソルベント型接着剤を乾燥させる方式であって、これにより製造されるシーラント層はポリプロピレン(PP)層からなる。ソルベント型接着剤は、乾燥後にポリプロピレン(PP)層に残存することがあるが、約4μm以下の厚さで残存し微々たるものであるので、その厚さは無視され得る。
【0042】
一方、押出ラミネーション方式は、シーラント層に主に用いられるポリプロピレン系樹脂層、好ましくは、特に無延伸ポリプロピレン(CPP)樹脂層をバリア層(金属層)に接着の際にポリオレフィン系樹脂、好ましくはポリプロピレン樹脂を押出する方式である。その結果、シーラント層は、押出コーティング(Extrusion Coating;EC)層(主に押出ポリプロピレン層)と、その下部(パウチフィルムを基準に内側)のポリプロピレン(PP)層樹脂、好ましくは無延伸ポリプロピレン(CPP)層とからなる(
図1参照)。
【0043】
本発明者らは、特に押出ラミネーション方式による製造の際にシーラント層の押出(EC)層とポリプロピレン(PP)層の相対的厚さを調節[又はシーラント層のうちのポリプロピレン(PP)層が占める相対的厚さを調節]しながらシーラント層の降伏強度を調節し、且つシーラント層のガラス転移温度(Tg)を調節することにより、驚くべきことに二次電池用パウチフィルムが常温シーリング強度特性に優れるのみならず、高温でのシーリング強度特性に優れ、特に高温でのシーリング強度の保持特性に優れることを見出し鋭意研究を重ねて本発明に至った。
【0044】
シーリング強度特性、特に高温シーリング強度特性は、自動車向けバッテリーのような中大型電池の安全性に必須の特性であり、特に高温環境で中大型電池の安全性を確保するためには高温シーリング強度が最大限保持されることが必要である。しかし、パウチフィルムの製造の際に複数の層が積層され且つシーラント層の製造にも種々の製造条件が介入することでシーリング強度特性、特に高温シーリング強度特性、特に高温シーリング強度の保持特性を制御することは難しい。前述したようにパウチフィルムのシーラント層が所定の降伏強度を有するようにしながら、シーラント層のポリプロピレン系樹脂(PP)層の厚さ比を制御し、且つシーラント層が所定のガラス転移温度(Tg)を有するように製造すると、常温シーリング強度特性及び高温シーリング強度特性に優れるのみならず、高温シーリング強度の保持特性に優れることが本発明により明らかにされた。押出ラミネーション方式を採用するとき、パウチフィルムのシーラント層の降伏強度、シーラント層のポリプロピレン系樹脂(PP)層の厚さ比、シーラント層のガラス転移温度(Tg)が、常温及び高温シーリング強度特性、特に高温シーリング強度の保持特性に関連があるものと把握される。
【0045】
具体的に、本発明の例示的な具現例では、二次電池用パウチフィルムであって、少なくとも外層、バリア層、シーラント層が順次積層された積層体から構成されており、前記シーラント層は少なくとも押出(EC)層と前記押出(EC)層の下部のシーリング樹脂層であるポリプロピレン(PP)層とから構成されており、前記シーラント層のうちのポリプロピレン(PP)層の厚さ比が0.5より大きく、前記シーラント層、すなわち押出(EC)層とポリプロピレン(PP)層とを含むシーラント層の、MD方向への上降伏強度(N/mm2)が17.50~19.99、好ましくは、17.50~19.80であり、TD方向への上降伏強度(N/mm2)が17.00~19.99、好ましくは、17.00~19.50であり、シーラント層のガラス転移温度(Tg)が-20℃~-10℃の範囲を有する。
【0046】
例示的な一具現例において、前記シーラント層のうちのポリプロピレン(PP)層の厚さ比は、0.500以上、0.525以上、0.550以上、0.575以上、0.600以上、0.625以上、0.650以上、0.675以上、0.700以上、0.725以上、0.750以上、又は0.775以上であってよい。または、0.800以下、0.775以下、0.750以下、0.725以下、0.700以下、0.675以下、0.650以下、0.625以下、0.600以下、0.575以下、0.550以下又は0.525以下であってよい。
【0047】
前記厚さ比が0.5未満であると、すなわち、ポリプロピレン(PP)層の厚さがシーラント層の厚さの半分未満に薄くなると、降伏強度が低くなり、これに伴いシーリング強度が低くなることがある。一方、前記厚さ比が0.8を超えると、すなわち、ポリプロピレン(PP)層の厚さがシーラント層の全体厚さの80%を超えて厚くなると、バリア層とシーラント層との間の剥離強度が低下してシーリング強度が低くなることがある。
【0048】
ここで、シーラント層のうちのポリプロピレン(PP)層の厚さ比が0.500以上であるとは、押出(EC)層の厚さがポリプロピレン(PP)層の厚さよりも薄くなければならないことを意味する。
例示的な一具現例において、前記シーラント層のMD方向への上降伏強度(N/mm2)は17.50~19.99の範囲内にあり、且つ当該範囲内に存在する下記の数値の間の数値範囲を有してよい。前記シーラント層のMD方向への上降伏強度(N/mm2)が前記範囲を外れると、後述するデータから確認できるように、常温及び高温シーリング強度特性、特に高温シーリング強度の保持特性が低調になることがある。
【0049】
非制限的な例示において、前記シーラント層のMD方向への上降伏強度(N/mm2)は、17.50以上、17.51以上又は以下、17.52以上又は以下、17.53以上又は以下、17.54以上又は以下、17.55以上又は以下、17.56以上又は以下、17.57以上又は以下、17.58以上又は以下、17.59以上又は以下、17.60以上又は以下、17.61以上又は以下、17.62以上又は以下、17.63以上又は以下、17.64以上又は以下、17.65以上又は以下、17.66以上又は以下、17.67以上又は以下、17.68以上又は以下、17.69以上又は以下、17.70以上又は以下、17.71以上又は以下、17.72以上又は以下、17.73以上又は以下、17.74以上又は以下、17.75以上又は以下、17.76以上又は以下、17.77以上又は以下、17.78以上又は以下、17.79以上又は以下、17.80以上又は以下、17.81以上又は以下、17.82以上又は以下、17.83以上又は以下、17.84以上又は以下、17.85以上又は以下、17.86以上又は以下、17.87以上又は以下、17.88以上又は以下、17.89以上又は以下、17.90以上又は以下、17.91以上又は以下、17.92以上又は以下、17.93以上又は以下、17.94以上又は以下、17.95以上又は以下、17.96以上又は以下、17.97以上又は以下、17.98以上又は以下、17.99以上又は以下、18.00以上又は以下、18.01以上又は以下、18.02以上又は以下、18.03以上又は以下、18.04以上又は以下、18.05以上又は以下、18.06以上又は以下、18.07以上又は以下、18.08以上又は以下、18.09以上又は以下、18.10以上又は以下、18.11以上又は以下、18.12以上又は以下、18.13以上又は以下、18.14以上又は以下、18.15以上又は以下、18.16以上又は以下、18.17以上又は以下、18.18以上又は以下、18.19以上又は以下、18.20以上又は以下、18.21以上又は以下、18.22以上又は以下、18.23以上又は以下、18.24以上又は以下、18.25以上又は以下、18.26以上又は以下、18.27以上又は以下、18.28以上又は以下、18.29以上又は以下、18.30以上又は以下、18.31以上又は以下、18.32以上又は以下、18.33以上又は以下、18.34以上又は以下、18.35以上又は以下、18.36以上又は以下、18.37以上又は以下、18.38以上又は以下、18.39以上又は以下、18.40以上又は以下、18.41以上又は以下、18.42以上又は以下、18.43以上又は以下、18.44以上又は以下、18.45以上又は以下、18.46以上又は以下、18.47以上又は以下、18.48以上又は以下、18.49以上又は以下、18.50以上又は以下、18.51以上又は以下、18.52以上又は以下、18.53以上又は以下、18.54以上又は以下、18.55以上又は以下、18.56以上又は以下、18.57以上又は以下、18.58以上又は以下、18.59以上又は以下、18.60以上又は以下、18.61以上又は以下、18.62以上又は以下、18.63以上又は以下、18.64以上又は以下、18.65以上又は以下、18.66以上又は以下、18.67以上又は以下、18.68以上又は以下、18.69以上又は以下、18.70以上又は以下、18.71以上又は以下、18.72以上又は以下、18.73以上又は以下、18.74以上又は以下、18.75以上又は以下、18.76以上又は以下、18.77以上又は以下、18.78以上又は以下、18.79以上又は以下、18.80以上又は以下、18.81以上又は以下、18.82以上又は以下、18.83以上又は以下、18.84以上又は以下、18.85以上又は以下、18.86以上又は以下、18.87以上又は以下、18.88以上又は以下、18.89以上又は以下、18.90以上又は以下、18.91以上又は以下、18.92以上又は以下、18.93以上又は以下、18.94以上又は以下、18.95以上又は以下、18.96以上又は以下、18.97以上又は以下、18.98以上又は以下、18.99以上又は以下、19.00以上又は以下、19.01以上又は以下、19.02以上又は以下、19.03以上又は以下、19.04以上又は以下、19.05以上又は以下、19.06以上又は以下、19.07以上又は以下、19.08以上又は以下、19.09以上又は以下、19.10以上又は以下、19.11以上又は以下、19.12以上又は以下、19.13以上又は以下、19.14以上又は以下、19.15以上又は以下、19.16以上又は以下、19.17以上又は以下、19.18以上又は以下、19.19以上又は以下、19.20以上又は以下、19.21以上又は以下、19.22以上又は以下、19.23以上又は以下、19.24以上又は以下、19.25以上又は以下、19.26以上又は以下、19.27以上又は以下、19.28以上又は以下、19.29以上又は以下、19.30以上又は以下、19.31以上又は以下、19.32以上又は以下、19.33以上又は以下、19.34以上又は以下、19.35以上又は以下、19.36以上又は以下、19.37以上又は以下、19.38以上又は以下、19.39以上又は以下、19.40以上又は以下、19.41以上又は以下、19.42以上又は以下、19.43以上又は以下、19.44以上又は以下、19.45以上又は以下、19.46以上又は以下、19.47以上又は以下、19.48以上又は以下、19.49以上又は以下、19.50以上又は以下、19.51以上又は以下、19.52以上又は以下、19.53以上又は以下、19.54以上又は以下、19.55以上又は以下、19.56以上又は以下、19.57以上又は以下、19.58以上又は以下、19.59以上又は以下、19.60以上又は以下、19.61以上又は以下、19.62以上又は以下、19.63以上又は以下、19.64以上又は以下、19.65以上又は以下、19.66以上又は以下、19.67以上又は以下、19.68以上又は以下、19.69以上又は以下、19.70以上又は以下、19.71以上又は以下、19.72以上又は以下、19.73以上又は以下、19.74以上又は以下、19.75以上又は以下、19.76以上又は以下、19.77以上又は以下、19.78以上又は以下、19.79以上又は以下、19.80以上又は以下、19.81以上又は以下、19.82以上又は以下、19.83以上又は以下、19.84以上又は以下、19.85以上又は以下、19.86以上又は以下、19.87以上又は以下、19.88以上又は以下、19.89以上又は以下、19.90以上又は以下、19.91以上又は以下、19.92以上又は以下、19.93以上又は以下、19.94以上又は以下、19.95以上又は以下、19.96以上又は以下、19.97以上又は以下、19.98以上又は以下、又は19.99以下であってよい。
【0050】
例示的な一具現例において、前記シーラント層のTD方向への上降伏強度(N/mm2)は17.00~19.99の範囲内にあり、且つ当該範囲内に存在する下記の数値の間の数値範囲を有してよい。前記シーラント層のTD方向への上降伏強度(N/mm2)が前記範囲を外れると、後述するデータから確認できるように、常温及び高温シーリング強度特性、特に高温シーリング強度の保持特性が低調になることがある。
【0051】
非制限的な例示において、前記シーラント層のTD方向への上降伏強度(N/mm2)は、17.00以上、17.01以上又は以下、17.02以上又は以下、17.03以上又は以下、17.04以上又は以下、17.05以上又は以下、17.06以上又は以下、17.07以上又は以下、17.08以上又は以下、17.09以上又は以下、17.10以上又は以下、17.11以上又は以下、17.12以上又は以下、17.13以上又は以下、17.14以上又は以下、17.15以上又は以下、17.16以上又は以下、17.17以上又は以下、17.18以上又は以下、17.19以上又は以下、17.20以上又は以下、17.21以上又は以下、17.22以上又は以下、17.23以上又は以下、17.24以上又は以下、17.25以上又は以下、17.26以上又は以下、17.27以上又は以下、17.28以上又は以下、17.29以上又は以下、17.30以上又は以下、17.31以上又は以下、17.32以上又は以下、17.33以上又は以下、17.34以上又は以下、17.35以上又は以下、17.36以上又は以下、17.37以上又は以下、17.38以上又は以下、17.39以上又は以下、17.40以上又は以下、17.41以上又は以下、17.42以上又は以下、17.43以上又は以下、17.44以上又は以下、17.45以上又は以下、17.46以上又は以下、17.47以上又は以下、17.48以上又は以下、17.49以上又は以下、17.50以上又は以下、17.51以上又は以下、17.52以上又は以下、17.53以上又は以下、17.54以上又は以下、17.55以上又は以下、17.56以上又は以下、17.57以上又は以下、17.58以上又は以下、17.59以上又は以下、17.60以上又は以下、17.61以上又は以下、17.62以上又は以下、17.63以上又は以下、17.64以上又は以下、17.65以上又は以下、17.66以上又は以下、17.67以上又は以下、17.68以上又は以下、17.69以上又は以下、17.70以上又は以下、17.71以上又は以下、17.72以上又は以下、17.73以上又は以下、17.74以上又は以下、17.75以上又は以下、17.76以上又は以下、17.77以上又は以下、17.78以上又は以下、17.79以上又は以下、17.80以上又は以下、17.81以上又は以下、17.82以上又は以下、17.83以上又は以下、17.84以上又は以下、17.85以上又は以下、17.86以上又は以下、17.87以上又は以下、17.88以上又は以下、17.89以上又は以下、17.90以上又は以下、17.91以上又は以下、17.92以上又は以下、17.93以上又は以下、17.94以上又は以下、17.95以上又は以下、17.96以上又は以下、17.97以上又は以下、17.98以上又は以下、17.99以上又は以下、18.00以上又は以下、18.01以上又は以下、18.02以上又は以下、18.03以上又は以下、18.04以上又は以下、18.05以上又は以下、18.06以上又は以下、18.07以上又は以下、18.08以上又は以下、18.09以上又は以下、18.10以上又は以下、18.11以上又は以下、18.12以上又は以下、18.13以上又は以下、18.14以上又は以下、18.15以上又は以下、18.16以上又は以下、18.17以上又は以下、18.18以上又は以下、18.19以上又は以下、18.20以上又は以下、18.21以上又は以下、18.22以上又は以下、18.23以上又は以下、18.24以上又は以下、18.25以上又は以下、18.26以上又は以下、18.27以上又は以下、18.28以上又は以下、18.29以上又は以下、18.30以上又は以下、18.31以上又は以下、18.32以上又は以下、18.33以上又は以下、18.34以上又は以下、18.35以上又は以下、18.36以上又は以下、18.37以上又は以下、18.38以上又は以下、18.39以上又は以下、18.40以上又は以下、18.41以上又は以下、18.42以上又は以下、18.43以上又は以下、18.44以上又は以下、18.45以上又は以下、18.46以上又は以下、18.47以上又は以下、18.48以上又は以下、18.49以上又は以下、18.50以上又は以下、18.51以上又は以下、18.52以上又は以下、18.53以上又は以下、18.54以上又は以下、18.55以上又は以下、18.56以上又は以下、18.57以上又は以下、18.58以上又は以下、18.59以上又は以下、18.60以上又は以下、18.61以上又は以下、18.62以上又は以下、18.63以上又は以下、18.64以上又は以下、18.65以上又は以下、18.66以上又は以下、18.67以上又は以下、18.68以上又は以下、18.69以上又は以下、18.70以上又は以下、18.71以上又は以下、18.72以上又は以下、18.73以上又は以下、18.74以上又は以下、18.75以上又は以下、18.76以上又は以下、18.77以上又は以下、18.78以上又は以下、18.79以上又は以下、18.80以上又は以下、18.81以上又は以下、18.82以上又は以下、18.83以上又は以下、18.84以上又は以下、18.85以上又は以下、18.86以上又は以下、18.87以上又は以下、18.88以上又は以下、18.89以上又は以下、18.90以上又は以下、18.91以上又は以下、18.92以上又は以下、18.93以上又は以下、18.94以上又は以下、18.95以上又は以下、18.96以上又は以下、18.97以上又は以下、18.98以上又は以下、18.99以上又は以下、19.00以上又は以下、19.01以上又は以下、19.02以上又は以下、19.03以上又は以下、19.04以上又は以下、19.05以上又は以下、19.06以上又は以下、19.07以上又は以下、19.08以上又は以下、19.09以上又は以下、19.10以上又は以下、19.11以上又は以下、19.12以上又は以下、19.13以上又は以下、19.14以上又は以下、19.15以上又は以下、19.16以上又は以下、19.17以上又は以下、19.18以上又は以下、19.19以上又は以下、19.20以上又は以下、19.21以上又は以下、19.22以上又は以下、19.23以上又は以下、19.24以上又は以下、19.25以上又は以下、19.26以上又は以下、19.27以上又は以下、19.28以上又は以下、19.29以上又は以下、19.30以上又は以下、19.31以上又は以下、19.32以上又は以下、19.33以上又は以下、19.34以上又は以下、19.35以上又は以下、19.36以上又は以下、19.37以上又は以下、19.38以上又は以下、19.39以上又は以下、19.40以上又は以下、19.41以上又は以下、19.42以上又は以下、19.43以上又は以下、19.44以上又は以下、19.45以上又は以下、19.46以上又は以下、19.47以上又は以下、19.48以上又は以下、19.49以上又は以下、19.50以上又は以下、19.51以上又は以下、19.52以上又は以下、19.53以上又は以下、19.54以上又は以下、19.55以上又は以下、19.56以上又は以下、19.57以上又は以下、19.58以上又は以下、19.59以上又は以下、19.60以上又は以下、19.61以上又は以下、19.62以上又は以下、19.63以上又は以下、19.64以上又は以下、19.65以上又は以下、19.66以上又は以下、19.67以上又は以下、19.68以上又は以下、19.69以上又は以下、19.70以上又は以下、19.71以上又は以下、19.72以上又は以下、19.73以上又は以下、19.74以上又は以下、19.75以上又は以下、19.76以上又は以下、19.77以上又は以下、19.78以上又は以下、19.79以上又は以下、19.80以上又は以下、19.81以上又は以下、19.82以上又は以下、19.83以上又は以下、19.84以上又は以下、19.85以上又は以下、19.86以上又は以下、19.87以上又は以下、19.88以上又は以下、19.89以上又は以下、19.90以上又は以下、19.91以上又は以下、19.92以上又は以下、19.93以上又は以下、19.94以上又は以下、19.95以上又は以下、19.96以上又は以下、19.97以上又は以下、19.98以上又は以下、又は19.99以下であってよい。
【0052】
例示的な一具現例において、前記シーラント層のMD方向への上降伏強度(N/mm2)とTD方向への上降伏強度(N/mm2)との和が34.5以上39.9以下、好ましくは、34.5以上39以下、より好ましくは、34.61~38.85である。
【0053】
例示的な一具現例において、前記シーラント層のMD方向への上降伏強度(N/mm2)がTD方向への上降伏強度(N/mm2)より大きくてよい。押出コーティング(EC)工程の特性及びシーラント層にPP層を用いて積層する工程の特性上、MD方向(Machine Direction、縦方向)へ微細に延伸が生じることがある。このため、延伸が生じないTD方向(Transverse Direction、横方向)よりはMD方向への上降伏強度のほうが大きいと考えられる。
【0054】
例示的な一具現例において、前記シーラント層のガラス転移温度(Tg)は、-20℃~-10℃、好ましくは、-19℃~-11℃の範囲内の値を有し、且つ当該範囲内に存在する下記の数値の間の数値範囲を有してよい。シーラント層のガラス転移温度(Tg)が前記-20℃~-10℃の範囲を外れると、後述するデータから確認できるように、シーリング強度特性、特に高温シーリング強度特性、特に高温シーリング強度の保持特性が低調になることがある。
【0055】
非制限的な例示において、前記シーラント層のガラス転移温度(Tg)は、-20℃以上、-19.5℃以上、-19℃以上、-18.5℃以上、-18℃以上、-17.5℃以上、-17℃以上、-16.5℃以上、-16℃以上、-15.5℃以上、-15℃以上、-14.5℃以上、-14℃以上、-13.5℃以上、-13℃以上、-12.5℃以上、-12℃以上、-11.5℃以上、-11℃以上、又は-10.5℃以上であってよい。または、-10℃以下、-10.5℃以下、-11℃以下、-11.5℃以下、-12℃以下、-12.5℃以下、-13℃以下、-13.5℃以下、-14℃以下、-14.5℃以下、-15℃以下、-15.5℃以下、-16℃以下、-16.5℃以下、-17℃以下、-17.5℃以下、-18℃以下、-18.5℃以下であってよい。
【0056】
例示的な一具現例において、前記二次電池用パウチフィルムは、下記の方法で測定した220℃シーリング条件でシールした場合における最大シーリング強度(単位:N/15mm)の常温測定値がMD方向及びTD方向の双方で150N/15mm以上205N/15mm以下であってよい。
【0057】
非制限的な例示において、前記220℃シーリング条件でシールした場合における最大シーリング強度の常温測定値は、MD方向及びTD方向の少なくとも一つ以上の方向において150N/15mm以上、155N/15mm以上、160N/15mm以上、165N/15mm以上、170N/15mm以上、175N/15mm以上、180N/15mm以上、185N/15mm以上、190N/15mm以上、195N/15mm以上、200N/15mm以上であってよい。
【0058】
例示的な一具現例において、前記二次電池用パウチフィルムは、下記の方法で測定した220℃シーリング条件でシールした場合における最大シーリング強度(単位:N/15mm)の高温測定値(60℃で3分放置後に測定した値)が、MD方向及びTD方向の少なくとも一つ以上の方向において115N/15mm以上170N/15mm以下である。
【0059】
非制限的な例示において、前記220℃シーリング条件でシールした場合における最大シーリング強度の高温測定値(60℃で3分放置後に測定した値)は、MD方向及びTD方向の少なくとも一つ以上の方向において115N/15mm以上、120N/15mm以上、125N/15mm以上、130N/15mm以上、135N/15mm以上、140N/15mm以上、145N/15mm以上、150N/15mm以上、155N/15mm以上、160N/15mm以上、165N/15mm以上であってよい。
【0060】
[220℃シーリング条件でシールした場合における最大シーリング強度の測定方法]
二次電池用パウチフィルムを100mm×200mmの大きさで作製してから半折りしてシールした後、シーリング方向と垂直に幅15mmの大きさで裁断して試片を作製する。
シーリング条件はシールバー(Seal Bar)幅200mm×シール(Seal)厚さ10mmであり、2.0秒、0.2Mpa、温度は220℃条件でシールする。
シーリング強度測定器(例えば、SHIMADZU社製のAGS-XモデルのUTM装備)にて試片をMD方向及びTD方向に引っ張りながら各シーリング強度(荷重)を測定し、測定条件は試験測度10mpm、グリップギャップ(Grip Gap)30mmで測定する。
常温測定の場合は常温で測定し、高温測定の場合は60℃条件下で3分放置後に測定する。シーリング部位を引っ張りながらシーリング強度を測定したとき、その最大強度を最大シーリング強度と表示する。
【0061】
例示的な一具現例において、前記二次電池用パウチフィルムは、220℃シーリング条件でシールした場合における最大シーリング強度に関する下記の最大シーリング強度パラメータが1.1以上1.8以下であることが好ましい。
【0062】
[最大シーリング強度パラメータ]
(常温MD方向の最大シーリング強度×常温TD方向の最大シーリング強度)/(高温MD方向の最大シーリング強度×高温TD方向の最大シーリング強度)
非制限的な例示において、前記最大シーリング強度パラメータは、例えば、1.1、1.15、1.20、1.25、1.30、1.35、1.40、1.45、1.50、1.55、1.60、1.65、1.70、1.75、1.80の数値のうちの任意の二つの数値の間の範囲値内にあってよい。
【0063】
例示的な一具現例において、前記二次電池用パウチフィルムの下記の方法で測定した常温エネルギーが2.0~3.0KN×mmである。
【0064】
例示的な一具現例において、前記二次電池用パウチフィルムの下記の方法で測定した高温エネルギーが1.5~2.5KN×mmである。
【0065】
例示的な一具現例において、前記二次電池用パウチフィルムの下記の方法で測定した常温エネルギー及び高温エネルギーの差が0.4~0.6KN×mmである。
【0066】
[常温エネルギー及び高温エネルギーの測定]
前述したシーリング強度の測定方法と同様に測定し、常温エネルギー又は高温エネルギーは、常温又は高温(高温は60℃で3分放置後に測定)でX軸をシーリング部位を引っ張るストローク(距離)とし、Y軸をシーリング強度としたとき、ストロークに応じたシーリング強度グラフとストロークX軸間の面積(すなわち、シーリング強度グラフとX軸間の積分値)であり、積分値はストローク0mmから20mmまで積分したものである。
【0067】
例示的な一具現例において、前記二次電池用パウチフィルムの下記の方法で測定した常温最大ストロークが15~25mmである。
【0068】
例示的な一具現例において、前記二次電池用パウチフィルムの下記の方法で測定した高温最大ストロークが18~24mmである。
【0069】
[常温最大ストローク及び高温最大ストロークの測定]
前述したシーリング強度の測定方法と同様に測定し、常温又は高温(高温は60℃で3分放置後に測定)でX軸をシーリング部位を引っ張るストローク(距離)とし、Y軸をシーリング強度としたとき、ストロークが増加するにつれてシーリング強度曲線が上昇し、シーリング強度値が最大になるストローク(距離)を最大ストロークと評価する。常温で評価した場合の最大ストロークが常温最大ストロークであり、高温で評価した場合の最大ストロークが高温最大ストロークである。
【0070】
例示的な一具現例において、外層としては、ナイロン、PET(ポリエチレンテレフタレート)、PBT(ポリブチレンテレフタレート)、ナイロンとPETとの混合層(ナイロンとPETとの貼合フィルム)などから構成されてよい。
【0071】
例示的な一具現例において、前記外層のうちのナイロンフィルムは、成形性の側面から厚さが20μm以上であることが好ましく、25μm以上がより好ましいが、ナイロンフィルムの厚さが30μmを超えると、絶縁破壊電圧が低下することがある。このため、好ましいナイロンフィルムの厚さは20μm~30μm、より好ましくは、25μm~30μmであってよい。
【0072】
例示的な一具現例において、前記外層のうちのPETフィルムの厚さが薄く、ナイロンフィルムの厚さが厚いほど成形性に有利である。ただし、PETフィルムの厚さが薄いほど絶縁破壊電圧の側面で不利になることがあるので、このような観点からPETフィルムの厚さは7μm~12μmであることが好ましい。
【0073】
例示的な一具現例において、金属層は、アルミニウム、SUS、銅などの金属から構成されてよく、水分浸透性及び耐衝撃性を有する。
【0074】
例示的な一具現例において、シーラント層の無延伸ポリプロピル(CPP)層又は無延伸ポリプロピレン(CPP)フィルムは、要求物性に応じて各種の添加剤(ゴム、エラストマ、スリップ剤など)を含んでよい。
【0075】
例示的な一具現例において、前記二次電池用パウチフィルムの総厚さは、例えば60~185μmであってよい。一実施例において、前記二次電池用パウチフィルムは、153μm以上であるか113μm以下のものであってよい。
【0076】
例示的な一具現例において、前記金属層の厚さは、例えば20~80μm、好ましくは、40~60μmであってよい。
【0077】
例示的な一具現例において、前記シーラント層の厚さは、例えば20~80μmであってよい。
【0078】
例示的な一具現例において、前記シーラント層の無延伸ポリプロピレン(CPP)層の厚さは、例えば20~80μmであってよい。
【0079】
例示的な一具現例において、前記シーラント層の押出(EC)層である押出ポリプロピレン(PP)層の厚さは、例えば0~60μmであってよい。
【0080】
一方、本発明の例示的な具現例に係る二次電池用パウチフィルムの製造方法は、少なくとも外層、バリア層、シーラント層が順次積層され、前記シーラント層は押出(EC)層及びポリプロピレン(PP)層を含む二次電池用パウチフィルムの製造方法であって、前記シーラント層のうちのポリプロピレン(PP)層に押出(EC)層を形成する際にシーラント層のうちのポリプロピレン(PP)層の厚さ比が0.5より大きくなるように製造する段階を含み、前記シーラント層の、MD方向への上降伏強度(N/mm2)が17.50~19.99、好ましくは、17.50~19.80であり、TD方向への上降伏強度(N/mm2)が17.00~19.99、好ましくは、17.00~19.50であり、シーラント層のガラス転移温度(Tg)が-20℃~-10℃の範囲内にあるようにする。
【0081】
シーラント層のうちのポリプロピレン(PP)層の厚さ比は、ポリプロピレン(PP)層自体の厚さを選択すると共に押出樹脂の押出の際に押出層(EC)層の厚さを調節することにより得ることができる。
【0082】
上降伏強度やガラス転移温度もまた当業者の技術水準で容易に調節することができる。公知のようにシーラント層のポリプロピレン(PP)レジンの種類やソフトネス(SOFTNESS)のような特性、シーラント層に用いられるエラストマ(ELASTOMER)系の添加剤の含量に応じて上降伏強度やガラス転移温度が決められ得る。したがって、所望の上降伏強度やガラス転移温度を有するように公知の適切な種類、特性を持つポリプロピレンとエラストマ系の添加剤を選択することにより上降伏強度やガラス転移温度を調節することができる。
【0083】
一方、本発明の例示的な具現例では、前述した二次電池用パウチフィルムで外装された二次電池を提供する。かかる二次電池は、代表的にリチウム二次電池であってよく、特に電気自動車(EV)用やエネルギー貯蔵装置(ESS)用などの中大型の二次電池であってよい。
【0084】
また、本発明の例示的な具現例では、前述した二次電池用パウチフィルムで二次電池を外装する段階;を含む二次電池の製造方法を提供する。
【0085】
以下の実施例を通じて本発明の例示的な具現例についてより詳しく説明することにする。なお、本明細書に開示された実施例は単に説明のための目的から例示されたものであって、本発明の実施例は種々の形態で実施でき、本明細書に開示された実施例に限定されると解釈されてはならない。
【0086】
[実験方法]
実施例及び比較例において、外層はナイロン(25μm)及びPET(12μm)の複合の層から構成し、金属層はアルミニウム箔(60μm)を用い、下記の表1のようにシーラント層の押出層及びポリプロピレン(CPP、無延伸ポリプロピレン)層の厚さを調節し、下記の表1の降伏強度、Tg値を有するものを用いた。また、後述する方法にて各降伏強度、Tg、シーリング強度を評価した。全体厚さは接着剤層を含めて183μmである。
【0087】
【0088】
<降伏強度>
試片はパウチフィルムのシーラント層を剥離してから幅15mm×長さ100mmの大きさで裁断して作製した。
【0089】
降伏強度の測定方法はSHIMADZU社製のAGS-XモデルのUTM装備にて行い、条件は試験測度50mpm、グリップギャップ30mmで測定した。
【0090】
試片が荷重の増加に比例して延伸し、弾性限度を超えると荷重に比例せずに延伸し始めるが、この地点を降伏点と称する。CPPの場合には下降伏点がないため、降伏点は、すなわち上降伏点である。
【0091】
<Tgの測定方法>
TA社製のDSC250装備を用いた。条件は温度範囲-50℃℃まで測定し、昇温速度10℃、冷却速度-20℃とした。Tg値の計算は、PPの大略的なTg値の範囲である-50℃で分析プログラム(TRIOS)にかけて計算した。
【0092】
<220℃シーリング条件でシールした場合における最大シーリング強度>
試片はパウチフィルムを100mm×200mmの大きさで作製してから半折りしてシールした後、シーリング方向と垂直に幅15mmの大きさで裁断して作製した。
【0093】
シーリング条件はシールバー(Seal Bar)幅200mm×シール(Seal)厚さ10mmであり、2.0秒、0.2Mpa、温度は220℃条件とした。
【0094】
シーリング強度の測定方法はシーリング強度測定器(例えば、SHIMADZU社製のAGS-XモデルのUTM装備)にて試片をMD方向及びTD方向に引っ張りながら各シーリング強度(荷重)を測定し、測定条件は試験測度10mpm、グリップギャップ(Grip Gap)30mmで測定した。
【0095】
常温測定の場合は常温で測定し、高温測定の場合は60℃条件下で3分放置後に測定し、下記の表2に表した。
【0096】
シーリング強度測定値のうちの最大値を最大シーリング強度とする。すなわち、シーリング部位を引っ張りながらシーリング強度を測定した際の最大強度を最大シーリング強度と表示する。
【0097】
<220℃シーリング条件でシールした場合におけるTD方向の常温エネルギー、高温エネルギー、常温及び高温の各最大ストロークの測定>
TD方向のシーリング強度の保持特性を見てみるために、常温エネルギー及び高温エネルギーを評価した。このために、前述した220℃シーリング条件でシールした場合におけるシーリング強度の測定方法と同様に測定し、常温又は高温(高温は60℃で3分放置後に測定)でX軸をTD方向へのシーリング部位を引っ張るストローク(距離)とし、Y軸をシーリング強度としたとき、ストロークに応じたシーリング強度の変化グラフとストロークを示すX軸間の面積(すなわち、ストロークに応じたシーリング強度の変化グラフの積分値)を常温エネルギー(常温測定の場合のエネルギー)又は高温エネルギー(60℃で3分放置後に測定した場合のエネルギー)と定義し、積分値の際のストロークは0mmから20mmまで積分したものである。
【0098】
一方、TD方向のシーリング強度の保持特性を見てみるために、常温及び高温での最大ストロークを測定した。
【0099】
すなわち、前述した220℃シーリング条件でシールした場合における前述したシーリング強度の測定方法と同様に測定し、常温又は高温(高温は60℃で3分放置後に測定)でX軸をTD方向へのシーリング部位を引っ張るストローク(距離)とし、Y軸をシーリング強度としたとき、ストロークが増加するにつれてシーリング強度曲線が上昇し、シーリング強度値が最大になるストローク(距離)を最大ストロークと評価する。常温で評価した場合の最大ストロークが常温最大ストロークであり、高温で評価した場合の最大ストロークが高温最大ストロークである。
【0100】
前述したように、前記のような最大ストローク及びエネルギー(ストローク軸とシーリング強度グラフ間の積分値)はシーリング強度の保持特性(信頼性)を評価するうえで重要な項目であると言える。すなわち、ピーク値である最大シーリング強度が大きいとしても最大シーリング強度だけではシーリング強度の保持特性を知ることはできないが、最大ストロークの具合に応じて最大シーリング強度がどれだけ早く最大値に到逹してから低下するかを知ることができ、またストロークとシーリング強度曲線とのなす面積(積分値)からシーリング強度がよく保持されるのか、すなわち、信頼し得るかどうかを評価することができるからである。
【0101】
電気自動車用のような中大型の電池の場合には、MD方向の成形モデルが多く、MD方向のシーリング特性は一般的にTD方向のシーリング特性より優れるため、MD方向のシーリング(Tap to Pouchシーリング)よりは相対的にシーリング特性が弱いTD方向のシーリング(Pouch to Pouchシーリング)におけるシーリング強度の保持の可否がより重要な測定関心の対象になる。そこで、TD方向へのストローク変化に応じたシーリング強度の変化を測定し、下記の表3に表した。
【0102】
<漏液テスト>
実施例及び比較例に係る二次電池用パウチフィルムを成形機にて成形(6mm成形)後、簡易バッテリーパック試料を総20個作製した(200mm×110mm)。バッテリーパック試料にタブ(Tab)[住友社製)を挿入した。ジグ(Zig)の間に当該簡易バッテリーパック試料を挿入後、ジグ(Zig)の上下の間隔(6mm)を固定して締結した。
図2aは、本実験例で用いたジグ模式図であり、
図2bは、本実験例でバッテリーパックサンプルをジグに取り付けたことを示す写真である。
【0103】
80℃条件下で90日経過後に漏液の有無を評価(長期信頼性評価)し、全体個数20個のうち漏液が発生した場合(Fail)の個数を測定し、下記の表4に表した。
【0104】
<評価結果>
下記の表2に、実施例及び比較例の220℃シーリング条件でシールした場合における最大シーリング強度のテスト結果を表した。
【0105】
【0106】
また、前記シールされたパウチフィルムの常温及び高温での各エネルギー値と最大スクロクを下記の表3に表した。
【0107】
【0108】
表3から分かるように、実施例の場合、常温エネルギー、高温エネルギー、常温最大ストローク及び高温最大ストロークがいずれも比較例よりも遥かに優れ、常温でのシーリング強度の保持特性のみならず高温でのシーリング強度の保持特性に優れることが分かる。
【0109】
表4は、実施例と比較例の漏液テストの測定結果を表すものである。
【0110】
【0111】
表4から分かるように、漏液テストの結果、実施例の場合に漏液個数が比較例よりも顕著に少なくバッテリーパックの高温での長期信頼性に優れ、バッテリー安全性に優れることが分かる。
以上、本発明の非制限的且つ例示的な具現例を説明したが、本発明の技術思想は添付の図面や前記説明内容に限定されない。本発明の技術思想を逸脱しない範囲内で種々の形態の変形が可能であることはこの分野の通常の知識を有する者には自明であり、また、かかる形態の変形は本発明の特許請求の範囲に属すると言えよう。