(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024096005
(43)【公開日】2024-07-11
(54)【発明の名称】多層型化粧料
(51)【国際特許分類】
A61K 8/92 20060101AFI20240704BHJP
A61K 8/19 20060101ALI20240704BHJP
A61K 8/37 20060101ALI20240704BHJP
A61K 8/46 20060101ALI20240704BHJP
A61Q 1/02 20060101ALI20240704BHJP
【FI】
A61K8/92
A61K8/19
A61K8/37
A61K8/46
A61Q1/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023208079
(22)【出願日】2023-12-08
(31)【優先権主張番号】P 2022212850
(32)【優先日】2022-12-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000145862
【氏名又は名称】株式会社コーセー
(72)【発明者】
【氏名】出村 健太
(72)【発明者】
【氏名】宗像 孝紀
【テーマコード(参考)】
4C083
【Fターム(参考)】
4C083AA162
4C083AB051
4C083AB242
4C083AB332
4C083AC022
4C083AC102
4C083AC122
4C083AC422
4C083AC482
4C083AC552
4C083AC792
4C083AD152
4C083AD662
4C083BB13
4C083BB21
4C083CC11
4C083CC28
4C083DD05
4C083EE03
4C083EE06
(57)【要約】
【課題】
香料による水性染料の褪色を抑制し、各層の分離速度が速く、各層に濁りがない多層型化粧料を提供することを目的とする。
【解決手段】
次の成分(A)~(D):
(A)25℃で液状の油剤
(B)香料
(C)水性染料
(D)水
を含有し、前記成分(A)の加重平均IOB値が0.03~0.2である多層型化粧料。
【選択図】
なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
次の成分(A)~(D):
(A)25℃で液状の油剤
(B)香料
(C)水性染料
(D)水
を含有し、前記成分(A)の加重平均IOB値が0.03~0.2である多層型化粧料。
【請求項2】
前記成分(A)が、(a-1)炭化水素油及び(a-2)IOB値が0.15以上のエステル油を含有する請求項1に記載の多層型化粧料。
【請求項3】
前記成分(a-2)が、グリセリン脂肪酸エステルである請求項2に記載の多層型化粧料。
【請求項4】
前記成分(A)の前記成分(B)に対する含有質量割合(A)/(B)が、20以上である請求項1又は2に記載の多層型化粧料。
【請求項5】
前記成分(A)の前記成分(C)に対する含有質量割合(A)/(C)が、140,000以下である請求項1又は2に記載の多層型化粧料。
【請求項6】
前記成分(A)が、さらに(a-3)ホホバ種子油を含有する請求項2に記載の多層型化粧料。
【請求項7】
前記成分(C)が、アゾ系染料及びアントラキノン系染料からなる群から選択される1種又は2種である請求項1又は2に記載の多層型化粧料。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、多層型化粧料に関する。
【背景技術】
【0002】
近年市場において、振とう攪拌により混合され、静置すると水層と油層とに分離する特徴を有する多層型の化粧料が発売されており、外観の審美性等から広く消費者に受け入れられている。一方で、静置した際に綺麗に多層に分離せず外観の審美性が損なわれたり、分離に時間がかかる等の問題が生じる場合があった。
【0003】
このような問題を解決するために、(A)ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル及びソルビタン脂肪酸エステルの一種又は二種以上と、(B)クエン酸ナトリウムと、(C)カラギーナン及びキサンタンガムを含有する多層型化粧料(例えば、特許文献1参照)や塩化ベンザルコニウムと、低級アルコールとを配合してなることを特徴とする多層型化粧料(例えば、特許文献2参照)等の提案がされていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002-255739号公報
【特許文献2】特開2001-213724号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
多層型化粧料においては、外観審美性を向上させる目的で水性染料を配合し、着色する場合や、基材臭をマスキングしたり香りを楽しむ目的で香料を配合する場合があるが、前記技術を用いてこれらを同時に配合する場合、光環境下で水性染料が褪色する場合があった。
【0006】
したがって本発明は、香料による水性染料の褪色を抑制し、各層の層分離速度が速く、各層に濁りがない多層型化粧料を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、鋭意研究の結果、25℃で液状の油剤を組み合わせ、その加重平均IOB値を特定の範囲とすることで、静置後に各層が速やかに濁りなく分離しながらも、香料による水性染料の褪色を抑制することができる多層型化粧料が得られる事を見出し、加えて、はけを用いて塗布する際の使用感にも優れる事も見出だし、本発明を完成するに至った。
【0008】
すなわち本発明は、以下を提供する。
[1]
次の成分(A)~(D);
(A)25℃で液状の油剤
(B)香料
(C)水性染料
(D)水
を含有し、前記成分(A)の加重平均IOB値が0.03~0.2である多層型化粧料に関するものである。
[2]
前記成分(A)が、(a-1)炭化水素油及び(a-2)IOB値が0.15以上のエステル油を含有する[1]に記載の多層型化粧料である。
[3]
前記成分(a-2)が、グリセリン脂肪酸エステルである[2]に記載の多層型化粧料である。
[4]
前記成分(A)の前記成分(B)に対する含有質量割合(A)/(B)が、20以上であるである[1]又は[2]に記載の多層型化粧料である。
[5]
前記成分(A)の前記成分(C)に対する含有質量割合(A)/(C)が、140,000以下である[1]又は[2]に記載の多層型化粧料である。
[6]
前記成分(A)が、さらに(a-3)ホホバ種子油を含有する[2]に記載の多層型化粧料である。
[7]
前記成分(C)が、アゾ系染料及びアントラキノン系染料からなる群から選ばれる1種又は2種である[1]又は[2]に記載の多層型化粧料である。
【発明の効果】
【0009】
本発明の多層型化粧料は、褪色抑制、各層の分離速度、各層の濁りの無さに優れるものである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施の形態を説明する。なお、本発明は、以下の実施の形態のみには限定されない。本明細書において、範囲を示す「X~Y」は、XおよびYを含み、「X以上Y以下」を意味する。
【0011】
(成分(A)25℃で液状の油剤)
【0012】
本発明における成分(A)25℃において液状の油剤は、25℃で流動性を有する油剤を意味するものであり、化粧料、医薬部外品、医薬品等に通常用いられるものであれば、特に制限されるものではない。例えば、揮発性、非揮発性や、動物油、植物油、合成油等の起源を問わず、炭化水素類、油脂類、紫外線吸収剤も含むエステル油類、脂肪酸類、高級アルコール類、シリコーン油類、フッ素系油類、ラノリン誘導体類等が挙げられるが、これらに限定されない。これらから、1種又は2種以上を適宜選択して用いることができる。
【0013】
前記成分(A)として、具体的には、オリーブ油、ヒマシ油、ミンク油、マカデミアンナッツ油、アボカド油、メドゥフォーム油等の植物油脂類;ホホバ種子油、アジピン酸ジイソブチル、アジピン酸2-ヘキシルデシル、アジピン酸ジ-2-ヘプチルウンデシル、モノイソステアリン酸アルキルグリコール、イソステアリン酸イソセチル、トリイソステアリン酸トリメチロールプロパン、ジ-2-エチルヘキサン酸エチレングリコール、ジ-2-エチルヘキサン酸ネオペンチルグリコール、トリ-2-エチルヘキサン酸トリメチロールプロパン、テトラ-2-エチルヘキサン酸ペンタエリスリトール、2-エチルヘキサン酸セチル、オレイン酸オレイル、オレイン酸オクチルドデシル、オレイン酸デシル、ジカプリン酸ネオペンチルグリコール、クエン酸トリエチル、コハク酸2-エチルヘキシル、ステアリン酸イソセチル、ステアリン酸ブチル、セバシン酸ジイソプロピル、セバシン酸ジ-2-エチルヘキシル、乳酸セチル、乳酸ミリスチル、パルミチン酸イソプロピル、パルミチン酸2-エチルヘキシル、パルミチン酸2-ヘキシルデシル、パルミチン酸2-ヘプチルウンデシル、ジペンタエリスリトール脂肪酸エステル、イソノナン酸イソノニル、イソノナン酸イソトリデシル、ミリスチン酸イソプロピル、パルミチン酸イソプロピル、ミリスチン酸2-オクチルドデシル、ミリスチン酸2-ヘキシルデシル、ミリスチン酸ミリスチル、ジメチルオクタン酸ヘキシルデシル、ラウリン酸エチル、ラウリン酸ヘキシル、メトキシケイ皮酸2-エチルヘキシル、リンゴ酸ジイソステアリル、トリ2-エチルヘキサン酸グリセリル、トリ(カプリル・カプリン)酸グリセリル、トリカプリン酸グリセリル、トリイソステアリン酸グリセリル、ジイソステアリン酸ジグリセリル、トリイソステアリン酸ジグリセリル、テトライソステアリン酸ジグリセリル、デカイソステアリン酸デカグリセリル、トリイソパルミチン酸グリセリル、トリミリスチン酸グリセリル、ミリスチン酸イソステアリン酸ジグリセリル、トリメリト酸トリトリデシル、N-ラウロイル-L-グルタミン酸-2-オクチルドデシルエステル、N-ラウロイル-L-グルタミン酸ジ(フィトステアリル・2-オクチルドデシル)等のエステル油類;低重合度ジメチルポリシロキサン、高重合度ジメチルポリシロキサン、メチルフェニルポリシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン、オクタメチルシクロテトラシロキサン、フッ素変性オルガノポリシロキサン等のシリコーン油類;パーフルオロデカン、パーフルオロオクタン、パーフルオロポリエーテル等のフッ素系油剤類;イソドデカン、イソヘキサデカン、軽質流動イソパラフィン、流動パラフィン、重質流動イソパラフィン、α-オレフィンオリゴマー、スクワラン、ポリイソブチレン、ポリブテン等の炭化水素油類;オレイルアルコール、イソステアリルアルコール、オクチルドデカノール、デシルテトラデカノール等の高級アルコール類;酢酸ラノリン、ラノリン脂肪酸イソプロピル、ラノリンアルコール等のラノリン誘導体類、等の油剤が挙げられる。これらから、1種又は2種以上を適宜選択して用いることができる。
【0014】
前記成分(A)は、エステル油、炭化水素油、シリコーン油からなる群から選ばれる1種又は2種以上であることが好ましく、エステル油、炭化水素油からなる群から選ばれる1種又は2種以上であることがより好ましい。
【0015】
前記成分(A)は、褪色抑制、分離速度、各層の濁りのなさ等の観点から、IOB値が0~0.5であることが好ましく、0~0.4であることがより好ましい。
【0016】
前記成分(A)のエステル油としては、IOB値が0.05~0.5であることが好ましく、0.1~0.4であることがより好ましい。これらのエステル油として、例えば、ジカプリン酸プロピレングリコール(IOB値:0.26)、イソノナン酸イソトリデシル(IOB値:0.16)、2-エチルヘキサン酸セチル(IOB値:0.13)、安息香酸アルキル(C12-15)(IOB値:0.19)、ホホバ種子油(IOB値:0.08)、トリ2-エチルヘキサン酸グリセリル(IOB値:0.35)、ジカプリン酸ネオペンチルグリコール(IOB値:0.25)、ジエチルヘキサン酸ネオペンチルグリコール(IOB値:0.32)、トリエチルヘキサン酸トリメチロールプロパン(IOB値:0.33)、テトラオクタン酸ペンタエリスリチル(IOB値:0.35)、トリ(カプリル酸・カプリン酸)グリセリル(IOB値:0.35)、パルミチン酸オクチル(IOB値:0.13)、オクタン酸セチル(IOB値:0.13)、ミリスチン酸イソプロピル(IOB値:0.18)、ジイソステアリン酸ポリグリセリル(IOB値:0.41)、トリイソステアリン酸ポリグリセリル-2(IOB値:0.26)、トリイソステアリン酸グリセリル(IOB値:0.18)、トリイソステアリン酸トリメチロールプロパン(IOB値:0.20)、イソノナン酸イソノニル(IOB値:0.20)、リンゴ酸ジイソステアリル(IOB値:0.27)、ジイソステアリン酸グリセリル(IOB値:0.29)、トリオクタン酸トリメチロールプロパン(IOB値:0.31)、コハク酸ジ2-エチルヘキシル(IOB値:0.32)、テトラ(ベヘン酸/安息香酸/エチルヘキサン酸)ペンタエリスリット(IOB値:0.35)、セバシン酸ジイソプロピル(IOB値:0.40)等が挙げられる。
【0017】
前記成分(A)の炭化水素油としては、例えば、イソドデカン(IOB値:0)、イソヘキサデカン(IOB値:0)、ミネラルオイル(IOB値:0)、水添ポリイソブテン(IOB値:0)、スクワラン(IOB値:0)等が挙げられる。
【0018】
前記成分(A)のシリコーン油としては、IOB値が0.15~0.5であることが好ましい。
【0019】
ここで、以下IOB値を説明する。IOB値とは、有機概念図(藤田穆、有機化合物の予測と有機概念図、化学の領域VOL).11,No.10(1957)719-715)に基づき求められる値である。より詳しくは、この有機概念図では、化合物の物理化学的物性について、主にファンデルワールス(Van Der Waals)力による物性の程度を「有機性」、主に電気的親和力による物性の程度を「無機性」と定義して表現する値である。IOB値は、無機性(inorganic)と有機性(organic)のバランスを示す指標であり、IOB値=無機性値/有機性値として表される。この値が大きい化合物ほど親水性の性質、極性が高い性質を示す化合物と言える。
【0020】
本発明においては、褪色抑制、分離速度、各層の濁りのなさ等の観点から、油剤の極性バランスが重要である。極性のバランスを調整するにあたっては、特に限定されないが、前記成分(A)として、少なくとも(a-1)炭化水素油及び(a-2)IOB値が0.15以上のエステル油を含有することが好ましく、さらに、(a-3)ホホバ種子油を含有することがさらに好ましい。
【0021】
前記(a-2)は、特に限定されないが、グリセリン脂肪酸エステルであることが好ましい。例えば、トリ2-エチルヘキサン酸グリセリル(IOB値:0.35)、トリ(カプリル酸・カプリン酸)グリセリル(IOB値:0.35)、ジイソステアリン酸ポリグリセリル(IOB値:0.41)、トリイソステアリン酸ポリグリセリル-2(IOB値:0.26)、トリイソステアリン酸グリセリル(IOB値:0.18)、ジイソステアリン酸グリセリル(IOB値:0.29)等が挙げられる。
【0022】
本発明においては、前記成分(A)の加重平均IOB値は0.03~0.2であり、褪色抑制等の観点から0.05~0.15が好ましく、0.06~0.1がより好ましい。
【0023】
加重平均IOB値とは、含有される成分の個々のIOB値を含有質量比率に基づいて加重平均して求めた値である。本発明においては、成分(A)のIOB値の加重平均の算出は、成分(A)に該当する各油剤の含有量と各油剤のIOB値の積の和を、当該各油剤の含有量の和で割った値(下記式(1)で表される値)とする。
成分(A)のIOB値の加重平均=[(A1:含有量(%)×IOB値)+(A2:含有量(%)×IOB値)+(A3:含有量(%)×IOB値)+・・・/(A1+A2+A3+・・・:含有量(%))]・・・(式1)
【0024】
前記成分(A)の含有量は、特に制限されるものではないが、多層型化粧料中に30~90%であることが好ましく、35~75%であることがより好ましく、40~60%であることがさらに好ましい。
【0025】
前記(a-1)の含有量は、特に制限されるものではないが、褪色抑制、分離速度、各層の濁りのなさの観点等から多層型化粧料中に3~30%であることが好ましく、10~25%であることがより好ましく、15~20%であることがさらに好ましい。
【0026】
前記(a-2)の含有量は、特に制限されるものではないが、褪色抑制、分離速度、各層の濁りのなさの観点から、多層型化粧料中に1~25%であることが好ましく、2~15%であることがより好ましく、3~10%であることがさらに好ましい。
【0027】
前記(a-3)の含有量は特に制限されるものではないが、各層の濁りのなさ、分離速度の観点等から多層型化粧料中に、5~40%であることが好ましく、15~35%であることがより好ましく、20~30%であることがさらに好ましい。
【0028】
(成分(B)香料)
【0029】
本発明における成分(B)香料は、通常化粧料に用いられるものであれば特に限定されず、例えば、天然香料、合成香料、またはこれらを組み合わせた調合香料等が挙げられ、目的に応じてこれらの1種または2種以上を適宜選択して用いることができる。
【0030】
前記成分(B)の含有量は褪色抑制の観点から0.05~3%が好ましく、0.1~2.5%がより好ましい。
【0031】
(成分(C)水性染料)
【0032】
本発明における成分(C)水性染料としては、化粧品に使用が許可されている水溶性色素であれば、特に限定されないが、例えばアゾ系染料、キノリン系染料、キサンテン系染料、トリフェニルメタン系染料、アントラキノン系染料等が挙げられる。これらの中では、アゾ系染料又はアントラキノン系染料が好ましい。成分(C)の水性染料としては、例えば、赤色104号、赤色106号、緑色3号、赤色201号、赤色227号、だいだい色207号、黄色202号、黄色203号、緑色204号、青色205号等が挙げられる。
【0033】
本発明において、成分(A)~(C)は、適宜含有することで得られるものではあるものの、成分(A)の成分(B)に対する含有質量割合を特定することにより、褪色抑制等の観点から好ましい。このような成分(A)の成分(B)に対する含有質量割合(A)/(B)は、特に制限されるものではないが、下限として20以上が好ましく、30以上より好ましく、40以上がさらにより好ましく、上限としては、特に制限されるものではないが、300以下が好ましく、250以下がより好ましく、200以下がさらにより好ましい。
【0034】
また、成分(A)の成分(C)に対する含有質量割合を特定することにより、褪色抑制等の観点から好ましい。このような成分(A)の成分(C)に対する含有質量割合(A)/(C)は、特に制限されるものではないが、下限として5,000以上が好ましく、10,000以上がより好ましく、15,000以上がさらにより好ましい。上限として140,000以下が好ましく、120,000以下がより好ましく、80,000以下がさらにより好ましい。
【0035】
(成分(D)水)
【0036】
本発明における成分(D)水は、通常の化粧料に使用される水であれば特に限定されず、常水、精製水、温泉水、深層水や、ラベンダー水、ローズ水、オレンジフラワー水などの植物由来の水蒸気蒸留水などが挙げられる。
【0037】
本発明の多層型化粧料には、上記成分の他、本発明の効果を損なわない範囲で、必要に応じて、(A)以外の油性成分、水性成分、粉体、タンパク質,ムコ多糖,コラーゲン,エラスチン等の保湿剤、α-トコフェロール,アスコルビン酸等の酸化防止剤、ビタミン類,消炎剤,生薬等の美容成分、パラオキシ安息香酸エステル,フェノキシエタノール等の防腐剤、(C)以外の色材等を適宜含有することができる。
【0038】
水性成分としては、エタノール,イソプロピルアルコール等のアルコール類、プロピレングリコール,1,3-ブチレングリコール,ジプロピレングリコール,ポリエチレングリコール等のグリコール類、グリセリン,ジグリセリン,ポリグリセリン等のグリセロール類等を1種又は2種以上添加して用いることもできる。
【0039】
粉体としては、特に制限されず、化粧料に使用されるものであればいずれのものも使用できる。具体的には、無機粉体としては、タルク、カオリン、マイカ、合成マイカ、セリサイト、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、ケイ酸アルミニウム、ケイ酸マグネシウム、ケイ酸アルミニウムマグネシウム、無水ケイ酸、炭化珪素、硫酸バリウム、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化マグネシウム、酸化アルミニウム、酸化鉄雲母、酸化鉄雲母チタン、雲母チタン、オキシ塩化ビスマス等が挙げられ、有機粉体としては、ナイロン粉末、ポリエチレン粉末、ポリスチレン粉末、シリコーン粉末、メチルメタアクリレート粉末、ポリテトラフルオロエチレンパウダー、ウールパウダー、シルクパウダー、結晶セルロース等が挙げられる。
【0040】
本発明の多層型化粧料の形態としては、液状であり、静置時に上層、下層が油層と水層の多層に分離し、それぞれが透明、半透明、不透明いずれかの層を有し、振とう時は、油層と水層が混合し、多層型化粧料として肌、爪等に塗布して使用することができる。各層は透明もしくは着色透明であることが好ましい。
【0041】
また、本発明の多層型化粧料の用途は特に限定されないが、化粧水、乳液、美容液等のスキンケア化粧料、ネイルオイル等の美爪料、養毛料、ヘアオイル等の頭髪ケア化粧料等に応用することができるが美爪料において好ましく用いられる。
【0042】
また、本発明は、以下の構成を採用することも可能である。
〔1〕
次の成分(A)~(D);
(A)油剤
(B)香料
(C)水性染料
(D)水
を含有し、前記成分(A)の加重平均IOB値が0.03~0.2である多層型化粧料。
〔2〕
前記成分(A)が、(a-1)炭化水素油及び(a-2)IOB値が0.15以上のエステル油を含有する〔1〕に記載の多層型化粧料。
〔3〕
前記成分(a-2)が、グリセリン脂肪酸エステルである〔2〕に記載の多層型化粧料。
〔4〕
前記成分(A)及び前記成分(B)の含有質量割合(A)/(B)が、20以上である〔1〕~〔3〕に記載の多層型化粧料。
〔5〕
前記成分(A)及び前記成分(C)の含有質量割合(A)/(C)が、140,000以下である〔1〕~〔4〕に記載の多層型化粧料。
〔6〕
前記成分(A)が、さらに(a-3)ホホバ種子油を含有する〔2〕に記載の多層型化粧料。
〔7〕
前記成分(C)がアゾ系染料又はアントラキノン系染料である〔1〕~〔6〕に記載の多層型化粧料である。
【実施例0043】
次に実施例を挙げて本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらにより何ら限定されるものではない。
【0044】
実施例1~13及び比較例1~2:多層型化粧料(美爪料)
【0045】
下記表1及び2に示す処方の多層型化粧料を以下の製法に従って調整し、イ.褪色抑制、ロ.分離速度、ハ.各層の濁りの無さ、ニ.使用感(はけでの塗りやすさ)の各項目について、以下に示す評価方法及び判定基準により評価判定し、結果を併せて表1及び2に示した。
【0046】
【0047】
【0048】
(製造方法)
A:成分(1)~(5)を混合する。
B:成分(6)~(8)を混合する
C:A、Bを混合し、多層型化粧料を得た。
【0049】
下記評価項目について各々下記方法により評価を行った。
(評価項目)
イ. 褪色抑制
(評価方法)
照明付インキュベータ FLI2000A(東京理化器械社製)により、照度10000Lx、30℃で1週間光照射した後、その照射前後における褪色の有無を、目視による官能評価によって、以下の判定基準で判定した。
(判定):(判定基準)
A:褪色が見られない
B:ほとんど褪色が見られない
C:わずかに褪色が見られる
D:褪色が見られる
E:顕著に褪色が見られる
【0050】
(評価項目)
ロ. 分離速度
(評価方法)
各試料について、10回振とうした後、各層が分離するまでに要する時間を、化粧料適用の所要時間を鑑み下記5段階判定基準により判定した。
(判定):(判定基準)
A:2分以上5分未満
B:5分以上10分未満
C:10分以上15分未満
D:15分以上30分未満
E:2分未満(早すぎる)または30分(遅すぎる)を超える
【0051】
(評価項目)
ハ. 各層のにごりのなさ
(評価方法)
各試料について、10回振とうし1日静置した後、各層のにごりの有無を目視による官能評価によって下記5段階判定基準により判定した。
(判定):(判定基準)
A:各層ににごりが全くない
B:各層ににごりがほとんどない
C:いずれかの層にわずかににごりがある
D:いずれかの層ににごりがある
E:いずれかの層に顕著なにごりがある
【0052】
(評価項目)
ニ.使用感(はけでの塗りやすさ)
(評価方法)
化粧品評価専門パネル20名による使用テストを行い、各自が以下の評価基準に従って5段階評価し評点を付し、各試料ごとに全パネルの評点の平均点を以下の判定基準に従って判定した。
(評価基準)
(評点):(評価)
5:非常に良い
4:良い
3:普通
2:悪い
1:非常に悪い
(判定基準)
(判定):(評点の平均点)
A:4.5点以上
B:4.0点以上4.5点未満
C:3.5点以上4.0点未満
D:2.0点以上3.5点未満
E:2.0点未満
【0053】
表1及び2の結果から明らかなように、本発明の実施例1~10の多層型化粧料は、褪色抑制、分離速度、各層の濁りの無さ、使用感(はけでの塗りやすさ)の全ての項目において優れたものであった。
【0054】
これに対して、加重平均IOB値が0.03未満である比較例1は、褪色抑制、分離速度の点で満足いくものが得られなかった。また、荷重平均IOB値が0.2を超える比較例2は分離速度、使用感の点で満足いくものが得られなかった。
【0055】
実施例11:多層型爪用化粧料(三層型ネイルオイル)
(成分) (%)
<油層1>
1.スクワラン 15
2.トリエチルヘキサノイン 12
3.ミネラルオイル 10
4.香料 1
<油層2>
5.ジメチコン(100CS) 30
<水層>
6.水 残量
7.赤色227号 0.0005
8.塩化ナトリウム 0.5
9.エタノール 5
10.1,3-ブチレングリコール 2
11.防腐剤(パラオキシ安息香酸エステル) 0.1
【0056】
(製造方法)
A.成分(1)~(4)を室温にて均一に混合する。
B.成分(6)~(11)を室温で均一に混合する。
C.B、成分(5)、A、の順に容器に充填し、振とう混合し、静置後三層型爪用化粧料を得た。
【0057】
以上の製法にて得られた多層型爪用化粧料は、褪色抑制、分離速度、各層の濁りの無さ、使用感の全ての項目において優れたものであった
【0058】
実施例12:多層型化粧料(多層型ボディ用化粧料)
(成分) (%)
<油層>
1.流動パラフィン(25℃粘度150mm2/s) 50
2.トリイソステアリン酸ジグリセリル 2.0
3.紫色201号 0.00001
4.ビタミンE 0.02
5.香料 0.05
<水層>
6.精製水 残量
7.塩化ナトリウム 0.5
8.エタノール 5
9.1,3-ブチレングリコール 2
10.防腐剤(パラオキシ安息香酸エステル) 0.1
11.緑色201号 0.00004
12.黄色4号 0.00001
<パール剤>
13.雲母チタン 2
【0059】
(製造方法)
A.成分(1)~(5)を室温にて均一に混合する。
B.成分(6)~(12)を室温で均一に混合する。
C.B、A、成分(13)の順に容器に充填し、3回振とう混合し、静置後多層型ボディ用化粧料を得た。
【0060】
以上の製法にて得られた多層型ボディ用化粧料は、褪色抑制、分離速度、各層の濁りの無さ、使用感の全ての項目において優れたものであった。