(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024096013
(43)【公開日】2024-07-11
(54)【発明の名称】コートされた容器及びこのような容器を形成する方法
(51)【国際特許分類】
B65D 23/02 20060101AFI20240704BHJP
B32B 15/08 20060101ALI20240704BHJP
B65D 25/14 20060101ALI20240704BHJP
B65D 65/42 20060101ALI20240704BHJP
B05D 7/22 20060101ALI20240704BHJP
C23F 11/00 20060101ALN20240704BHJP
【FI】
B65D23/02 Z
B32B15/08 F
B32B15/08 Z
B65D23/02 A
B65D25/14 A
B65D25/14 Z
B65D65/42 A
B05D7/22 Q
C23F11/00 C
【審査請求】有
【請求項の数】11
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023211630
(22)【出願日】2023-12-15
(31)【優先権主張番号】63/436,284
(32)【優先日】2022-12-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】18/107,132
(32)【優先日】2023-02-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】591016862
【氏名又は名称】デュポン エレクトロニック マテリアルズ インターナショナル,エルエルシー
【氏名又は名称原語表記】DUPONT ELECTRONIC MATERIALS INTERNATIONAL,LLC
(74)【代理人】
【識別番号】110000589
【氏名又は名称】弁理士法人センダ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ショーン ミューア
【テーマコード(参考)】
3E062
3E086
4D075
4F100
4K062
【Fターム(参考)】
3E062AA01
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(57)【要約】
【課題】 コートされた容器及びこのような容器を形成する方法を提供する。
【解決手段】 外面と内面とを有するエンクロージャーを含む容器と、エンクロージャーの内面上に配置される任意選択的に誘導体化されるポリドーパミンコーティングとを含む容器が本明細書において開示される。(a)外面と内面とを有するエンクロージャーを含む容器を提供する工程と、(b)塩酸ドーパミンと緩衝液と溶媒とを含む溶液を容器内に配置する工程とを含む、溶液をコートする方法も本明細書において開示される。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
外面と内面とを有するエンクロージャーと、
前記エンクロージャーの内面上に配置される任意選択的に誘導体化されるポリドーパミンコーティングを含む容器。
【請求項2】
前記エンクロージャーが金属、ガラス、又はポリマーを含む、請求項1に記載の容器。
【請求項3】
前記ポリドーパミンコーティングが誘導体化される、請求項1又は2に記載の容器。
【請求項4】
前記ポリドーパミンコーティングがアミン、チオール、カルボン酸又はそれらの組合せで誘導体化される、請求項3に記載の容器。
【請求項5】
前記アミンがジメチルアミンである、請求項4に記載の容器。
【請求項6】
前記ポリドーパミンコーティングが1~100ナノメートルの厚さを有する、請求項1~5のいずれか一項に記載の容器。
【請求項7】
前記容器が、前記ポリドーパミンコーティングと接触している化学組成物を保有する、請求項1~6のいずれか一項に記載の容器。
【請求項8】
前記化学組成物が有機溶媒を含む、請求項7に記載の容器。
【請求項9】
前記エンクロージャーを封止するためのキャップを更に含む、請求項1~8のいずれか一項に記載の容器。
【請求項10】
(a)外面と内面とを有するエンクロージャーを含む容器を提供する工程と、
(b)塩酸ドーパミンと緩衝液と溶媒とを含む溶液を前記容器内に配置する工程とを含む、溶液をコートする方法。
【請求項11】
前記溶液が酸化剤を更に含む、請求項10に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は一般的に、高純度の材料のための容器に関する。より具体的には、本開示は、高純度の材料を貯蔵するための容器をコートすること、及びこのようなコートされた容器を製造する方法に関する。本開示は、電子デバイス(電子材料)の製造及び、特に、半導体製造産業において、並びに水、食品及び製薬産業において使用される材料のパッケージング及び貯蔵において特に適用可能性がある。
【背景技術】
【0002】
半導体製造産業において、液体を含むプロセス化学薬品が製造プロセス全体にわたり、例えば、リソグラフィ、コーティング、クリーニング、ストリッピング、エッチング及び化学機械平坦化(CMP)プロセスにおいて使用される。このような化学薬品としては、例えば、酸、溶媒、フォトレジスト、反射防止材料、現像剤、リムーバー、スラリー及びクリーニング溶液が挙げられる。高度半導体デバイスのために必要とされる限界寸法の継続的な低下によって、プロセス化学薬品が超高純度形態で提供されることがますます重要になっている。しかしながら、精製形態においてさえプロセス化学薬品は典型的に、微量の金属、例えばとりわけ鉄、ナトリウム、ニッケル、銅、カルシウム、マグネシウム及びカリウムなどを含有する。プロセス化学薬品中の金属の存在は有害であり得、例えば、形成されたデバイスのパターニング欠陥及び電気的特性の変更をもたらし、それによってデバイスの信頼性及び製品収量に影響を与え得る。このような金属不純物源は、化学薬品製造プロセスにおいて使用される原材料に由来し得るか又はそうでなければ製造プロセス及びパッケージングプロセス中に導入される場合がある。
【0003】
プロセス化学薬品、原材料及び前駆体からの金属及びその他の不純物の低減は、イオン交換及び/又は濾過プロセスの使用によって慣例的に達成されている。このような精製の後、化学薬品は典型的に、容器、例えば、ボトル又は他の容器内にパッケージ化され、次いで、それらは最終使用者に出荷され、貯蔵される。半導体製造産業において、化学薬品容器はしばしば、化学薬品の汚染の可能性を低減するためにウエハ加工に使用されるプロセスツールに直接に接続される。しかしながら、化学薬品容器自体が貯蔵及び輸送中にin situ発生され得る不純物源であり得ることが見出されている。輸送中などの容器の移動は、この問題を悪化させると考えられる。プロセス化学薬品における粒子の発生を低減しようとして、フッ素化ライナーを含有するボトルの使用が例えば、(特許文献1)において提案されている。しかしながら、フッ素含有材料を避けることが環境上の理由のために望ましい。更に、このようなライナーは不動態材料であり、良くても、配合物中の全金属に寄与しない。容器材料中の全金属に寄与しないことの他に、含有される化学薬品からこのような不純物を能動的に除去する容器を提供することが望ましい。エレクトロニクス産業に加えて、このような容器は、例えば水、食品及び製薬産業において使用するのが望ましい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】米国特許出願公開第2013/0193164A1号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
したがって、最新技術に関連する1つ以上の問題に対処する、改良された容器並びにそれらの製造及び使用方法が当技術分野において必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
外面と内面とを有するエンクロージャーを含む容器と、エンクロージャーの内面上に配置される任意選択的に誘導体化されるポリドーパミンコーティングとを含む容器が本明細書において開示される。
【0007】
(a)外面と内面とを有するエンクロージャーを含む容器を提供する工程と、(b)塩酸ドーパミンと緩衝液と溶媒とを含む溶液を容器内に配置する工程とを含む、容器をコートする方法も本明細書において開示される。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】図面は、その内面上に配置されたポリドーパミンコーティングを有する容器の典型的な実施形態を表わす。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本明細書で用いられる専門用語は、特定の実施形態を記載する目的のためであるにすぎず、本発明を限定することを意図しない。単数形「1つの(a)」、「1つの(an)」及び「その(the)」は、文脈で別段の指示がない限り、単数形及び複数形を含むことを意図する。
【0010】
自家重合は、化学開始剤を必要とせずにモノマーがそれによって大きな鎖状分子(すなわち、ポリマー)を形成するプロセスを称する。この場合、溶媒中に溶解した酸素は、重合プロセスにおいて開始剤と同様な役割を果たすと考えられる。このプロセスは、化学酸化体を加えることによって促進することができ、それは改良されたコーティングをもたらすことができる。
【0011】
ポリドーパミンコーティング又はポリドーパミン誘導体コーティングをその内面上に有する容器が本明細書において開示される。ポリドーパミン又はその誘導体は、安定なコーティングを容器の内面上に形成する。それらは、容器内に貯蔵される内容物からの金属除去特性を示すことができる。これらの内容物は、例えば、酸、溶媒、ポリマー、フォトレジスト、反射防止材料、現像剤、リムーバー、スラリー及びクリーニング溶液を含むことができる。更に、ポリドーパミンは、表面を不動態化することによって容器からの金属の浸出を防ぐことができる。ポリドーパミンは、簡単な溶液ベースの方法を使用してガラス、金属、及び無機又は有機ポリマーなどの多種多様な表面上にコートすることができる。
【0012】
任意選択的に、ポリドーパミン層を誘導体化する工程を有する、容器の内面をポリドーパミンの層でコートする方法も本明細書において開示される。この方法は、ドーパミン含有モノマーと緩衝液とを溶媒中に溶解して反応性溶液を形成し、次にそれを、コートされる容器に加えることを含む。緩衝液は、ドーパミン含有モノマーの重合を促進してポリドーパミンを形成する。ポリドーパミンを形成する反応を容器自体の中で又は(容器とは別個の)反応器の中で行うことができ、次いで容器内に流し込むことができる。溶媒と共に反応体(ドーパミン含有モノマーと緩衝液)を好ましくは容器に直接加え、ここでそれらはポリドーパミンコーティングを形成する反応を受ける。コーティングを形成する時に内部に反応体を有する容器をゆるやかに撹拌して均質な反応を達成するのを助け、容器の内面上にコーティングを達成するのを助けるのが好ましい。次に、コートされた容器を典型的に水で洗浄して、コーティングプロセスから残された一切の粗いポリドーパミン残留物又は汚染物質を除去する。
【0013】
容器は、エンクロージャーと、任意選択的に、少なくとも部分的にエンクロージャー内の物品とを含む。図面は、ポリドーパミンコーティングが容器の内面上に配置された容器1の典型的な実施形態を表わす。容器1は、容器の外周を画定するエンクロージャー2を含む。エンクロージャー2は、外面2A及び内面2Bを有する。容器1は典型的に、周囲大気からエンクロージャー2を封止するためのキャップ4を有する。要するに、容器1は周囲大気に暴露され得るか又はキャップ4(蓋とも呼ばれる)によってそれから気密封止され得る。キャップ4は典型的に、蒸発及び流出による容器の内容物の減損を防ぐ。エンクロージャー2の内面2Bは、ポリドーパミンコーティング3でコートされる。容器1を使用して化学組成物5を貯蔵することができ、貯蔵時間の間にそこから金属不純物をポリドーパミンコーティングによって除去することができる。
【0014】
コーティングがその上に配置された容器は、容器内に保有される化学組成物から金属不純物を除去するために有効である。適した容器としては、例えば、エレクトロニクス産業において有用な高純度化学薬品(電子材料)の貯蔵において使用されるものが挙げられる。このような化学薬品としては、例えば、酸、溶媒、ポリマー、フォトレジスト、反射防止材料、現像剤、リムーバー、スラリー及びクリーニング溶液が挙げられる。容器は、例えば、水、薬剤、及び食品産業において更なる用途がある。容器は、様々な形態、例えば、ボトル、缶、箱、ドラム及びタンクをとることができる。適した容器としては、材料の輸送のために使用される容器など、タンク車の容器が更に挙げられる。
【0015】
実施形態において、容器は、ポリドーパミンコーティングと接触している化学組成物を保有する。好ましくは、化学組成物は電子材料である。化学組成物は典型的に有機溶媒を含む。また、好ましくは、化学組成物は高純度又は超高純度の化学組成物である。用語「高純度の」は、1ppb以下のそれぞれ個々の金属種汚染物質を意味する。用語「超高純度」は、100ppt以下のそれぞれ個々の金属種汚染物質を意味する。好ましくは、化学組成物は、10ppb未満、5ppb未満、1ppt未満、0.5ppt未満、又は0.1ppt未満の総量の金属汚染物質を含有する。
【0016】
容器は、金属、ガラス、ポリマー、又はそれらの組合せを含むことができる。適した金属としては、銅、スズ、鋼、黄銅、アルミニウム等、又はそれらの組合せが挙げられる。適したガラスとしては、シリカ、アルミナ、チタニア、ジルコニア、石英等、又はそれらの組合せが挙げられる。
【0017】
ポリマー材料は好ましくは、非芳香族置換基だけを有する直鎖炭素-炭素主鎖分子構造を有し且つ複数の遊離水素原子がポリマー鎖の炭素原子に結合した熱可塑性の非芳香族炭化水素ポリマーである。これらのポリマーをブロー又は成形して容器を形成することができる。これらの熱可塑性押出銘柄又は成形用銘柄炭化水素ポリマーの例は、エチレン、プロピレン、イソブチレン、メチル-ペンテン-1、ブテン-1、塩化ビニル、塩化ビニリデン、アクリロニトリルのホモポリマー、前述のモノマー同士の共重合体、塩素化ポリエチレン及び塩素化ポリプロピレンの他、例えば、ポリテトラフルオロエチレン、ペルフルオロアルコキシポリマーなどのフルオロポリマー;ポリカーボネート、ポリエステル、ポリスチレン、及び前述のモノマー及びコポリマーのブレンドである。高密度及び低密度ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン/プロピレンコポリマー、エチレン/1-ブテンコポリマー及びそれらのブレンドが特に重要である。
【0018】
容器を製造するために使用されるポリマー組成物は、例えば、本技術分野において公知の酸化防止剤、顔料、染料又はエキステンダーから選択される1つ以上の任意選択の添加剤を含むことができる。使用される場合、そのような任意選択の添加剤は、典型的には、ポリマー組成物の全固形分を基準として0.01~10重量%などの少量で組成物中に存在する。
【0019】
上記のとおり、ドーパミン含有モノマーは、緩衝液を使用して溶液中で重合される。ドーパミン含有モノマー、緩衝液、溶媒及び任意の追加の成分を容器(コートされる)又は反応器(コートされる容器ではない)に加えて反応性溶液を形成する。ドーパミン含有モノマーは、自家重合を受けてポリドーパミンを形成する。
【0020】
ドーパミン含有モノマーは典型的に塩の形態である。このような場合、ドーパミンは好ましくは、ハロゲン化物対イオン、例えば、Cl-、Br-、F-又はI-対イオンと共にそのプロトン付加形で存在する。好ましい実施形態では、ドーパミン含有モノマーは塩酸ドーパミンである。ドーパミン含有モノマーは典型的に、反応性溶液の総重量を基準として0.01~10重量パーセント(重量%)の量で反応性溶液中に存在している。ドーパミン含有モノマーは好ましくは、反応性溶液の総重量を基準として0.02~5重量%、0.02~1重量%、又は0.05~0.20重量%の量で反応性溶液中に存在している。
【0021】
緩衝液は第一に、ドーパミン含有モノマーの自家重合を促進する範囲にあるように溶液のpHを調節するために使用される。緩衝液は好ましくは、7.0~9.0のpKaを有する。
【0022】
緩衝液の例としては、トリス緩衝液(トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン)、リン酸二水素ナトリウム、リン酸二水素カリウム、又はそれらの組合せが挙げられる。
【0023】
緩衝液は典型的に、反応性溶液の総重量を基準として0.01~5重量%の量で反応性溶液中に存在している。緩衝液は好ましくは、反応性溶液の総重量を基準として0.01~3重量%、0.05~1重量%、又は0.10~0.30重量%の量で反応性溶液中に存在している。
【0024】
反応性溶液中に存在している溶媒は、ドーパミン含有モノマー及び溶液の一切の他の固体成分を溶解することができるのがよい。溶媒は、反応性溶液の残余を形成する。適した溶媒の例は、水、アルコールなどの有機溶媒、又はそれらの組合せである。特に好ましい溶媒としては、エタノール及び/又は水が挙げられる。
【0025】
溶媒は典型的に、反応性溶液の総重量を基準として90~99.99重量%の量で反応性溶液中に存在している。溶媒は好ましくは、反応性溶液の総重量を基準として95~99.99重量%、98~99.90重量%、又は99.50~99.85重量%の量で反応性溶液中に存在している。
【0026】
第1の容器の内面上にコーティングを置く方法において、ドーパミン含有モノマー、緩衝液、溶媒及び任意の追加の成分を含む反応性溶液を第1の容器内に、又は反応器内に流し込み、典型的に第1の攪拌プロセスに供する。反応体を第1の容器内に置くとき、第1の容器を典型的に蓋で封止し、第1の撹拌機内に置いて、ドーパミンコンテナモノマーからポリドーパミンへの変換を促進する。攪拌技術は特に限定されないが、撹拌機は好ましくは、第1の容器の内容物をその上で撹拌するローラーである。この場合、第1の容器は、ローラー上で回転を受ける。ドーパミン含有モノマーの自家重合によって製造されるポリドーパミンは、第1の容器の内面と第1の容器を封止する蓋をコートする。攪拌は典型的には、10~50℃、好ましくは18~40℃の温度で2時間~96時間、好ましくは5~80時間、及びより好ましくは10~30時間である。
【0027】
自家重合が進むにつれて、溶液は暗くなるようにみえ、第1の容器の内面がポリドーパミンでコートされる。第1の容器の内面のコーティングは自家重合の間に行われる。第1の容器の内面のコーティングを終了すると、第1の容器の内容物を第2の容器に放出することができ、そこから成分の一部を必要ならば再循環させることができる。
【0028】
次に、第1の容器に典型的には、例えば、脱イオン水を入れ、典型的に30分~5時間の間10~50℃の温度で、好ましくは室温でそれを第2の攪拌プロセスに供することによってすすいで、一切の未反応の反応体(例えば、ドーパミン含有モノマー及び/又は緩衝液)とコーティングに接合されていないポリドーパミンとを除去する。コーティングに接合されていないポリドーパミンは、低分子量の反応生成物を含み得る。第2の攪拌プロセスは、音波処理を必要とする場合がある。第2の攪拌プロセスを終了後、脱イオン水を第1の容器から除去する。
【0029】
また、他の技術、例えば、容器の内面上に噴霧することによって反応性溶液を適用し、ポリドーパミンコーティングを形成できることも想定される。
【0030】
別の実施形態において、第1の容器は、第1の容器の内部に高圧力水を噴霧して未反応の反応体と未接合のポリドーパミンとを除去することによって清浄化することができる。
【0031】
次に、第1の容器に任意選択的に有機溶媒を入れ、30分~5時間の間10~50℃の温度、好ましくは室温で第3の攪拌工程に供することができ、ここで一切の未反応の反応体又は低分子量生成物が第1の容器から除去される。有機溶媒は好ましくは、プロピレングリコールメチルエーテルアセテート(PGMEA)である。次に、精製した空気又は窒素を使用して容器をブロー乾燥させることができる。
【0032】
容器の内面及び蓋上のポリドーパミンコーティングは、平均1~100ナノメートル、好ましくは5~50ナノメートルの厚さを有する。更により厚いコーティングが望ましい場合、ポリドーパミンの複数層コーティングの使用も考えられ、有用であり得る。
【0033】
実施形態において、ポリドーパミンは、反応体溶液の色が変化し始めるまで反応体を一緒に反応させることによって大きな回分反応器内で又は連続反応器内で調製することができる。色の変化は、自家重合が始まったことを示す。例えば、色が薄橙色に変化して次に暗くなり始め、最終的に黒色になるのが観察され、高分子量ポリドーパミンへの重合が起こったことを示す。自家重合が終了する前に、反応生成物を複数の容器内に放出し、その各々を蓋で封止し、ローラー上での第1の攪拌プロセスに供することができる。自家重合プロセスは第1の攪拌プロセスの間に各容器内で終了し、複数の容器の各々の内面上にポリドーパミンコーティングの形成をもたらす。攪拌は適した温度で一定時間の間行うことができ、これは溶液から容器の内面上へのポリドーパミンの沈殿を促進する。
【0034】
内面のコーティングを終了後、容器から溶液を除去し、容器を1つ以上の追加の攪拌プロセス、例えば、水及び任意選択的に溶媒を使用する第2及び第3の攪拌プロセスにそれぞれ供して、一切の微量の未反応反応体及び未接合のポリドーパミンを除去し、したがって各々の容器及びそれらのそれぞれの蓋の内面上に安定なコーティングを残すことができる。
【0035】
実施形態において、ポリドーパミンコーティングプロセスは、ドーパミン含有モノマー、pH緩衝液、及び溶媒を含むコーティング溶液に酸化剤を加えることによって促進することができる。酸化剤は、ドーパミンの重合を促進すると考えられ、ボトルの表面上にポリドーパミンのより大きい堆積をもたらす。酸化剤は好ましくは水可溶性であり、例えば、過酸化水素、有機過酸化物、硝酸塩、過マンガン酸塩、過ヨウ素酸塩、過硫酸塩、二クロム酸塩、塩素酸塩、過ホウ酸塩、又はそれらの組合せが挙げられる。酸化剤は、使用される場合、典型的には、溶液の総重量を基準として0.001重量%~10重量%の量で溶液中に存在している。より好ましくは、それは反応性溶液の総重量を基準として0.01重量%~5重量%、0.05~0.1重量%の量である。
【0036】
実施形態において、ポリドーパミンは重合後に官能化されてポリドーパミン誘導体を形成することができる。誘導体化ポリドーパミンは、金属を容器の内容物から除去するための改良された有効性を示すことができる。ポリドーパミンを官能化するために使用することができる官能化剤としては、例えば、第一アミン、第二アミン、第三アミンの他、アミン及び/又はチオールで官能化されるカルボン酸を含有する部分又はそれらの組合せが挙げられる。アミンは、例えば、直鎖又は環状アミンであり得る。好ましいアミンは第一アミン、第二アミン、又はそれらの組合せである。
【0037】
第一アミンの例としては、メチルアミン、エチルアミン、プロピルアミン、エチレンジアミン、モノエタノールアミン等、又はそれらの組合せが挙げられる。第二アミンの例としては、ジメチルアミン、ジエチルアミン、ジプロピルアミン、ジブチルアミン、ジエタノールアミン等のジアルキルアミン、又はそれらの組合せが挙げられる。
【0038】
実施形態において、アミン官能化カルボン酸を官能化剤として使用することができる。これらの官能化剤中に存在しているカルボン酸は、第一又は第二アミンだけを含む官能化剤と比較して更なる金属除去能力を促進する。例としては、イミノ二酢酸、アスパラギン酸、エチレンジアミン四酢酸、ヒアルロン酸等のアミノポリカルボン酸(APCA)、又はそれらの組合せが挙げられる。
【0039】
ポリドーパミンは、チオールとカルボン酸とを含む官能化剤で誘導体化され得る。チオールとカルボン酸の両方を含有する官能化剤の例はメルカプト琥珀酸である。また、チオールとアミンの両方を含有する官能化剤を使用して、容器の内容物からの金属の除去を促進することができる。
【0040】
実施形態において、スルホン酸基を含むアミン及び/又はチオール含有官能化剤も使用して、容器の内容物からの金属の除去を促進することができる。このような官能化剤の例は、スルファミド酸、3-メルカプト-1-プロパンスルホン酸、又はそれらの組合せである。
【0041】
ポリドーパミンコーティングの誘導体化は好ましくは、ポリドーパミンコーティングの形成後に行われる。官能化剤は、ポリドーパミンでコートされる容器に添加される前に溶媒中に溶解され得る。別の実施形態において、官能化剤は、容器の内面上にポリドーパミンを形成する前に反応性溶液に添加され得る。溶媒は好ましくは、水、アルコール又はそれらの組合せである。好ましいアルコールはエタノールである。好ましい溶媒は水である。容器は蓋で封止され得、典型的には、2~48時間、好ましくは6~24時間の典型的な時間の間10~50℃の温度でローリングに供される。次に、容器の内容物を容器から放出し、容器を水で洗浄することができ、その後に、上に詳述したような溶媒(例えば、PGMEA)により別個に洗浄することができる。次に、例えば、空気又は窒素を使用して容器を乾燥させることができる。
【0042】
実施形態において、官能化剤は、反応性溶液の総重量を基準として0.01~10重量%の量で溶液中に存在している。別の実施形態において、官能化剤は、反応性溶液の総重量を基準として0.05~0.50重量%の量で溶液中に存在している。
【0043】
誘導体化ポリドーパミンコーティングは、容器内に保有される溶液からイオン性不純物を抽出するいっそう大きな総合能力を示すことができる。実施形態において、誘導体化ポリドーパミンコーティングは、同じ厚さの誘導体化されていないポリドーパミンコーティングよりも少なくとも5重量%多い、好ましくは少なくとも10重量%多い、及びより好ましくは15重量%多いイオン性不純物を抽出することができる。
【0044】
ポリドーパミン又は誘導体化ポリドーパミンは、容器の内面上に連続したコーティングを形成することができる(これはエンクロージャーを含み、任意選択的に蓋も含む)。それ故に、コーティングは容器内の材料と連続的に接触することができ、貯蔵された材料の不純物レベルの低下をもたらすことができる。
【0045】
本明細書において詳述されるポリドーパミン及び誘導体化ポリドーパミンコーティング並びにそれらの製造方法は、以下の非限定的な実施例によって例示される。
【実施例0046】
実施例1
この実施例は、低密度ポリエチレン(LDPE)容器上のポリドーパミンコーティングの調製を実証するために行われた。0.15gの塩酸ドーパミン(Fisher Scientific)、0.06gのトリス緩衝液(トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン)(Fisher Scientific)及び50mLの脱イオン(DI)水を60ミリリットル(mL)LDPE容器に加えた。LDPE容器はボトルである。容器を3日間ローラー上で撹拌し、その時間の間溶液は徐々に暗くなるのが観察された。3日後に、溶液を廃棄し、普通の色をしていないポリドーパミンコーティングが容器の内部に観察された。容器に真新しいDI水を入れ、2時間超音波処理した。水を廃棄し、容器にプロピレングリコールメチルエーテルアセテート(PGMEA)を入れ、更に2時間超音波処理した。
【0047】
次に、一方がコートされていない対照標準であり、他方が内面にポリドーパミンコーティングを有する2つの容器に、受注多元素標準(SCP Science)が加えられているPGMEAを入れ、以下の金属:Al、Ca、Cr、Cu、Fe、Mg、Mn、Ni、K、Na、Sn、Ti、及びZnをそれぞれ約10ppb含有する溶液を生じた。それらの内容物を有する各容器を一晩振とうした。翌日、Agilent7700 Single Quadrupole誘導結合プラズマ-質量分析計(ICP-MS)を使用して各容器の内容物を金属含有量について分析した。十億分率(ppb)単位での結果を以下に示す。ポリドーパミンコーティングは、Cu及びZnの濃度を90%超低減したと思われるが、他方、表1に見ることができるようにAl、Cr、Mn、Ni、及びSnの相当な低減も観察された。
【0048】
【0049】
実施例2
この実施例は、ポリドーパミンでコートした容器が、容器の内面上に配置されるコーティングに任意の欠陥を含むかどうか確認するために行われた。
【0050】
1.88gの塩酸ドーパミン(Alfa Aesar)及び4.54gのトリス緩衝液(トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン)(Fisher Scientific)を3750ミリリットルのDI水と共に2つのガラスガロン容器に加えた。両方の容器に等量の反応体を入れ、蓋で封止した。両方の容器を一晩(約16時間)ローラー上に置き、ローリングによって攪拌にかけた。翌日、内容物を容器から出した。次に、容器をDI水で5回手作業で洗浄して、残留ポリドーパミン溶液を除去した。コートされていない対照用容器を同じ手作業の洗浄手順にかけた。
【0051】
次に、高純度化学薬品のパッケージング用の容器を作製するために設計された、自動容器洗浄装置を使用して3つの容器を清浄化し、乾燥させた。次に、容器に濾過されたPGMEAを入れた。フィルムの欠陥について内容物を試験するために、容器をディスペンスウエハトラック内に配して、未使用Siウエハ上でスピンコートし、その後に、60秒間175℃でソフトベークした。次に、KLA Tencor Surfscan SP5欠陥検査ツールを使用して欠陥についてウエハを検査した。検査ツールはレーザーを使用して特定のサイズ閾値まで任意の不均質性についてウエハを走査し、次にそれを「欠陥」として分類する。
【0052】
欠陥の総数の結果を下の表2に示し、ここで、ポリドーパミンコーティングは欠陥の総数を増やさなかったことを見ることができる。
【0053】
【0054】
次に、Agilent 8900 Triple Quadrupole ICP-MSを使用して(表2の)3つの容器を金属不純物内容物について試験した。金属の結果を下の表3に示す(全ての結果はppb単位である)。
【0055】
【0056】
実施例3
この実施例は、容器内の溶液から金属不純物を除去する時の誘導体化ポリドーパミンコーティングの効率を実証するために行われた。ポリドーパミンコーティングはジメチルアミンで誘導体化された。ポリドーパミンコーティングと誘導体化ポリドーパミンコーティングを各々、2つの別個の容器の内面上に配置した。両方の容器(一方はポリドーパミンコーティングを有し、他方は誘導体化ポリドーパミンコーティングを有する)を、イオン性不純物を容器の内容物から除去するそれらの能力について評価した。
【0057】
それぞれの容器を以下のようにコートした。0.03gの塩酸ドーパミン(Fisher Scientific)、0.07gのトリス緩衝液(トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン)(Fisher Scientific)及び60mLのDI水を2つの60mLのLDPEに加えた。容器を一晩ローラー上で撹拌し、その後、内容物を廃棄し、容器をDI水で洗浄し、窒素でブロー乾燥させた。次に、0.76gの40重量%ジメチルアミン(DMA)水溶液(Sigma Aldrich)及び59.37gのDI水を容器の1つに加えた。容器を一晩ローラー上に戻し、その後、内容物を出し、上記のように容器を洗浄し、ブロー乾燥させた。
【0058】
次に、容器の各々に、実施例1で使用される受注多元素標準の金属ごとに約10ppbが加えられている60gのPGMEAを入れた。次にそれらを一晩撹拌した(振とうした)。コートされていない対照標準もまた、コートされた容器と一緒に評価した。翌日、Agilent7700 Single Quadrupole誘導結合プラズマ-質量分析計(ICP-MS)を使用して内容物を金属含有量について分析した。ppb単位の結果を下の表4に示す。
【0059】
【0060】
実施例4
この実施例は、ポリドーパミンでコートした容器の内容物からのイオン性不純物の除去を促進する際の酸化剤の効率を実証するために行われた。一方の容器は、ポリドーパミンコーティングの形成中に酸化剤を含有するポリドーパミンコーティングを有したが、他方の容器は、ポリドーパミンコーティングの形成中に酸化剤を使用しないポリドーパミンコーティングを有した。その後、両方のポリドーパミンコーティングをジメチルアミンで誘導体化した。
【0061】
それぞれのポリドーパミンコーティングを以下のように容器の内面上に形成した。0.06gの塩酸ドーパミン(Fisher Scientific)及び0.07gのトリス緩衝液(トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン)(Fisher Scientific)を2つの60mLのLDPEボトルに加えた。一方の容器に60mLのDI水を加え、他方の容器に、溶解したメタ過ヨウ素酸ナトリウム(酸化剤、Fisher Scientific)7mgを含有する60mLのDI水を加えた。容器を一晩ローラー上で撹拌し、その後、内容物を廃棄し、容器をDI水で洗浄し、窒素でブロー乾燥させた。
【0062】
次に、0.30gの40重量%ジメチルアミン(DMA)水溶液(Sigma Aldrich)及び60mLのDI水を両方の容器に加えた。容器をローラー上に戻し、一晩撹拌し、その後、内容物を廃棄し、上記のように容器を洗浄し、ブロー乾燥させた。
【0063】
次に、1つのコートされていない対照用容器と共に、ポリドーパミンでコートした容器に、実施例1で使用される受注多元素標準の金属ごとに約10ppbが加えられている60gのPGMEAを入れた。次にそれらを一晩撹拌した(振とうした)。翌日、Agilent7700 Single Quadrupole誘導結合プラズマ-質量分析計(ICP-MS)を使用して内容物を金属含有量について分析した。ppb単位の結果を下の表5に示す。
【0064】