(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024096023
(43)【公開日】2024-07-11
(54)【発明の名称】浸水被害軽減建物
(51)【国際特許分類】
E04H 9/14 20060101AFI20240704BHJP
E04B 1/64 20060101ALI20240704BHJP
【FI】
E04H9/14 Z
E04B1/64 A
E04B1/64 B
【審査請求】有
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023214706
(22)【出願日】2023-12-20
(31)【優先権主張番号】P 2022212953
(32)【優先日】2022-12-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】519021141
【氏名又は名称】丸山 芳之
(74)【代理人】
【識別番号】100125645
【弁理士】
【氏名又は名称】是枝 洋介
(74)【代理人】
【識別番号】100145609
【弁理士】
【氏名又は名称】楠屋 宏行
(74)【代理人】
【識別番号】100149490
【弁理士】
【氏名又は名称】羽柴 拓司
(72)【発明者】
【氏名】丸山 芳之
【テーマコード(参考)】
2E001
2E139
【Fターム(参考)】
2E001DA01
2E001DA02
2E001DB04
2E001FA12
2E001FA21
2E001GA06
2E001GA24
2E001HF01
2E139AA07
2E139AB13
2E139AC04
2E139AD01
(57)【要約】
【課題】洪水等で建物周囲の水深が深くなった場合、建物へ浸水を取り入れた上で、床構造16、壁構造15の内部への浸水を抑制する建物を提供する。
【解決手段】床構造16、壁構造15に透湿防水シート1b、防水透湿塗装1eを施用するなどして、浸水抑制機能(浸水抑制層)1を備える建物であるため、浸水を浸水取入口2から取り入れ、導入経路体4により床下へ一旦引き入れ、浸水が床上に及んだ場合は、周囲の水がひくとともに、室内の水を浸水取入口2、室内排出口3から排出し、床下の水を床下排出口6aから排出し、床構造16等の内部が浸水していなければ、床等の表面、床下の洗浄、消毒、乾燥等を行えば災害復旧できる建物。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
床下空間を有し、前記床下空間の上方に床構造が設けられた建物であって、
前記床構造と前記床下空間の間に浸水抑制層を備える、
建物。
【請求項2】
前記床構造は、大引と、前記大引上に配置された根太と、前記根太上に配置された床下地材とを含み、
前記浸水抑制層は、前記根太の下面に貼付された防水シートである、
請求項1に記載の建物。
【請求項3】
前記防水シートは、前記大引の側面にも貼付される、
請求項2に記載の建物。
【請求項4】
前記防水シートは、前記建物の基礎上に配置された土台の側面にも貼付される、
請求項2に記載の建物。
【請求項5】
前記床構造は、大引と、前記大引上に配置される根太と、前記根太上に配置される床下地材とを含み、
前記浸水抑制層は、前記床下地材の下面に形成された防水塗装膜又は防水シートである、
請求項1に記載の建物。
【請求項6】
前記床構造に含まれる床下地材の室内側に浸水抑制層をさらに備える、
請求項1に記載の建物。
【請求項7】
前記浸水抑制層は、前記床構造に含まれる部材の継ぎ目部分に設けられる、
請求項1に記載の建物。
【請求項8】
基礎の上方に設けられた壁部の壁下地材の室内側に浸水抑制層をさらに備える、
請求項1に記載の建物。
【請求項9】
基礎の上方に壁部が設けられた建物であって、
前記壁部に、屋外から前記建物へ浸水を取り入れるための浸水取入口が設けられた、
建物。
【請求項10】
前記壁部の前記浸水取入口よりも下方に設けられた室内排出口と、前記室内排出口に設けられた逆流防止弁と、をさらに備える、
請求項9に記載の建物。
【請求項11】
前記浸水取入口に連結され、取り入れた浸水を床構造の下方の床下空間へ導入する導入経路体をさらに備える、
請求項9に記載の建物。
【請求項12】
建物の床下空間の上方に設けられた床構造であって、
前記床構造の前記床下空間側に浸水抑制層を備える、
建物の床構造。
【請求項13】
床下空間を有し、前記床下空間の上方に床構造が設けられた建物の、前記床構造と前記床下空間の間に浸水抑制層を形成する、
建物の浸水被害軽減方法。
【請求項14】
前記床構造に含まれる床下地材の室内側に浸水抑制層をさらに形成する、
請求項13に記載の浸水被害軽減方法。
【請求項15】
基礎の上方に設けられた壁部の壁下地材の室内側に浸水抑制層をさらに形成する、
請求項13に記載の浸水被害軽減方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建物が洪水等により浸水した場合において、床構造内、壁構造内への浸水を抑制するよう床構造等への浸水抑制層を備える建物、床構造、及び浸水被害軽減方法に関する。
【背景技術】
【0002】
洪水等の浸水想定区域には木造、軽量鉄骨造等で床下空間を有する既存建物が多く在る。このような建物では、床下、床上の浸水による床構造等への甚大な被害を防ぐことが難しい。
特に、建物が概ね1メートル以上の深さの水に囲まれた場合、水圧で掃き出し窓等が破損して、同所から泥水が急激に浸入するか、浸水箇所がなく浸水しない場合には浮力により建物が基礎から離脱することを免れない。
さらに、浸水した場合、大半は、床構造、壁構造の内部まで汚水が入り、木材等が浸食されるため、床構造等を全撤去して改修工事をしなければならない。しかし、この工事には、相当の日数を要するとともに、多額の費用が必要となる。
このような甚大な浸水被害は、近年、各地で頻発し、今後も多発することが予測されている。
【0003】
2020年6月、日本建築学会は、提言(非特許文献1)で、「建物内への浸水を抑制する方法と、浮力の影響で建物が流出しないように水を積極的に建物内に浸水させつつ、室内の被害を抑え復旧性を高める方法の2つの方向性に対して、具体的な設計法やディテールは提示されていない。」と課題を示している。
【0004】
現状において、上記提言の課題のうち、水を積極的に建物内に浸水させつつ、室内の被害を抑え復旧性を高める方法について、既存建物にも適用できる提案はなされていないと考えられる。
すなわち、既存建物にも適用できる建物が浸水した際の浸水被害軽減機能、浸水被害軽減方法は提案されていない。
【0005】
出願人は、2021年4月、既存建物にも適用できる、建物周囲の水深が概ね1メートル未満の洪水等による建物浸水防止装置を提案している(特許文献1)。
その他、新築への適用、または土台水切を交換しての建物浸水防止等に関する提案(特許文献2等)は多数なされている。
しかしながら、何れの装置も建物への浸水を防止するための提案である。
殊に、浸水深がある程度深くなった場合には、出願人等が提案している建物浸水防止装置等を単独で適用しても、建物への減災効果には限界がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2022-167731号公報
【特許文献2】特許6534605号公報
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】提言「激甚化する水害への建築分野の取組むべき課題~戸建て住宅を中心として~」、2020年6月、日本建築学会
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
非特許文献1では、「水を積極的に建物内に浸水させつつ、室内の被害を抑え復旧性を高める方法」を達成することが課題として示されている。併せて、建物が床下・床上浸水した場合、構造上重要な床構造、壁構造の内部への浸水を抑制する浸水抑制機能を備えた装置を建物に設置しておくことで、水がひいた後は、床構造等が浸水していなければ床構造等を全撤去することなく、床等表面、床下等の洗浄、消毒、乾燥等を行うことで建物を復旧することができると提言している。
【0009】
本発明は、上記課題、提言に鑑みてなされたものであり、その主な目的は、浸水災害時の減災が可能となる建物、床構造、及び浸水被害軽減方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するため、本発明の一の態様の建物は、床下空間を有し、前記床下空間の上方に床構造が設けられた建物であって、前記床構造と前記床下空間の間に浸水抑制層を備える。これによれば、床下空間から床構造への浸水が抑制されるので、浸水災害時の減災が可能となる。
【0011】
上記態様において、前記床構造は、大引と、前記大引上に配置された根太と、前記根太上に配置された床下地材とを含み、前記浸水抑制層は、前記根太の下面に貼付された防水シートであってもよい。これによれば、防水シートによって床構造への浸水を抑制することが可能となる。
【0012】
上記態様において、前記防水シートは、前記大引の側面にも貼付されてもよい。これによれば、床構造への浸水をさらに抑制することが可能となる。
【0013】
上記態様において、前記防水シートは、前記建物の基礎上に配置された土台の側面にも貼付されてもよい。これによれば、床構造への浸水をさらに抑制することが可能となる。
【0014】
上記態様において、前記床構造は、大引と、前記大引上に配置される根太と、前記根太上に配置される床下地材とを含み、前記浸水抑制層は、前記床下地材の下面に形成された防水塗装膜又は防水シートであってもよい。これによれば、床構造への浸水を抑制することが可能となる。
【0015】
上記態様において、前記床構造に含まれる床下地材の室内側に浸水抑制層をさらに備えてもよい。これによれば、床構造への室内側からの浸水も抑制することが可能となる。
【0016】
上記態様において、前記浸水抑制層は、前記床構造に含まれる部材の継ぎ目部分に設けられてもよい。これによれば、継ぎ目部分からの浸水を抑制することが可能となる。
【0017】
上記態様において、基礎の上方に設けられた壁部の壁下地材の室内側に浸水抑制層をさらに備えてもよい。これによれば、壁部への室内側からの浸水を抑制することが可能となる。
【0018】
また、本発明の他の態様の建物は、基礎の上方に壁部が設けられた建物であって、前記壁部に、屋外から前記建物へ浸水を取り入れるための浸水取入口が設けられた、建物。これによれば、浸水を取り入れることで水圧及び浮力を低減できるので、浸水災害時の減災が可能となる。
【0019】
上記態様において、前記壁部の前記浸水取入口よりも下方に設けられた室内排出口と、前記室内排出口に設けられた逆流防止弁と、をさらに備えてもよい。これによれば、屋外の水が引いたときに、建物内の水を屋外へ排出することが可能となる。
【0020】
上記態様において、前記浸水取入口に連結され、取り入れた浸水を床構造の下方の床下空間へ導入する導入経路体をさらに備えてもよい。これによれば、取り入れた浸水を床下空間へ導入することが可能となる。
【0021】
また、本発明の他の態様の建物の床構造は、建物の床下空間の上方に設けられた床構造であって、前記床構造の前記床下空間側に浸水抑制層を備える。これによれば、床下空間から床構造への浸水が抑制されるので、浸水災害時の減災が可能となる。
【0022】
また、本発明の他の態様の建物の浸水被害軽減方法は、床下空間を有し、前記床下空間の上方に床構造が設けられた建物の、前記床構造と前記床下空間の間に浸水抑制層を形成する。これによれば、床下空間から床構造への浸水が抑制されるので、浸水災害時の減災が可能となる。
【0023】
上記態様において、前記床構造に含まれる床下地材の室内側に浸水抑制層をさらに形成してもよい。これによれば、室内側への浸水も抑制することが可能となる。
【0024】
上記態様において、基礎の上方に設けられた壁部の壁下地材の室内側に浸水抑制層をさらに形成してもよい。これによれば、壁部への室内側からの浸水を抑制することが可能となる。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、浸水災害時の減災が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【
図1】本建物浸水被害軽減装置の床構造16を横から見た概略図である。
【
図2】建物外周の浸水取入口2等の設置位置の概略図である。
【
図3】室内の浸水取入口2と固定した導入経路体4等を上方から見た概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
上記課題を解決して上記目的を達成するため、態様1に記載の発明は、建物への浸水が、床構造である大引、根太、床下地材、同床下地材とフローリング材を接合した隙間等へ入らないように、床下地材、根太等の床構造の下方(床下側)に防水シートを土台、大引、根太等に隙間なく固着、または/及び、床構造の下部となる床下地材、根太の床下側表面に防水塗料の塗布、または、人工木等の浸水抑制機能を有する建築材を使用した、浸水抑制機能(浸水抑制層)を備えてある建物であることを特徴とする。また、既存建物であっても、床構造を撤去するなどの大がかりな改修工事をせずに浸水抑制機能を備えることができることが特徴である。
なお、態様2ないし9についても同様、大がかりな改修工事を必要とせず、既存建物を床構造等に浸水抑制機能を備えた浸水被害を軽減する建物にすることができる。
【0028】
態様2に記載の発明は、態様1に記載の建物のうち、床構造の下方に浸水抑制機能を備えてある装置であって、同浸水抑制機能が透湿防水シートを床構造内への浸水を抑制するよう床下地材全面に隙間なく貼付した建物であることを特徴とする。
【0029】
態様3に記載の発明は、態様1に記載の建物のうち、床構造の下部に浸水抑制機能を備えてある建物であって、同浸水抑制機能が撥水透湿塗装、または/及び、防水透湿塗装を床下地材等浸水と接する全表面に施用して、床構造内への浸水を抑制する機能を有する建物であることを特徴とする。
【0030】
態様4に記載の発明は、態様1ないし3の何れか1項に記載の建物であって、畳敷きの畳下方にある床下地材の室内側に防水シートを貼付、または/及び、床下地材の室内側表面に防水塗料を塗布した浸水抑制機能を備え、畳下の床下地材、及び床構造内への浸水を抑制した建物であることを特徴とする。
【0031】
態様5に記載の発明は、態様1ないし4の何れか1項に記載の建物であって、土台の少なくとも一つの表面に防水塗料を施用して、土台の浸食を抑制する浸水抑制機能を備えてある建物であることを特徴とする。
【0032】
態様6に記載の発明は、態様1ないし5の何れか1項に記載の建物であって、壁構造の壁下地材の室内側に防水シートを貼付、または/及び、壁下地材の表面に防水塗料を塗布して、壁構造内への浸水を抑制する浸水抑制機能を備えてある建物であることを特徴とする。
【0033】
態様7に記載の発明は、建物内へ浸水を取り入れる窓等の浸水取入口と、建物周囲の水がひいた際に室内からの浸水を排出するための室内排出口とを備えてある建物であることを特徴とする。
【0034】
態様8に記載の発明は、態様7に記載の建物であって、浸水取入口から入った浸水を床下へ導入する筒状の導入経路体と、導入経路体の途中、末端に土砂等を集積させる集積部を備えてある建物であることを特徴とする。
【0035】
態様9に記載の発明は、態様1ないし8の何れか1項に記載の建物であって、床材継ぎ目部、床下地材継ぎ目部、床材と敷居の継ぎ目部、床材と壁部の継ぎ目部、壁部の壁下地材継ぎ目部、壁部のコンセント機器設置部、壁部のスイッチ機器設置部、床下点検口の周囲部、トイレ便器と床の継ぎ目部等に浸水抑制機能部を備え、床構造、及び、壁構造の内部へ浸水が入りにくい建物であることを特徴とする。
【0036】
態様10に記載の発明は、態様1ないし9の何れか1項に記載の床構造、壁構造の内部への浸水を防止する機能を有した建物であることを特徴とする。
【0037】
態様1ないし3の発明によれば、洪水等が建物内へ浸水した際に、床構造内への浸水抑制が期待できる。
態様4の発明によれば、床上浸水が発生しても、畳を支える床下地材、床構造内への浸水抑制が期待できる。
態様5の発明によれば、床下浸水が発生して、土台が長時間浸水しても汚水が土台内部に及び難い。
態様6の発明によれば、浸水した際に、室内側から壁構造内への浸水抑制が期待できる。
態様7の発明によれば、建物周囲の浸水深が一定の深さを超えた場合、建物の高い位置に設置した浸水取入口から浸水を取り込むため、土砂の浸入が少なく、また、周囲の水が引くとともに室内排出口から室内の水を外へ排出することができる。これにより、建物への浮力と、建物内外からの水圧の抑制が期待できる。
態様8の発明によれば、建物内へ浸水した水を床下へ一旦導入することで、周囲の水の引き具合によれば、床上浸水を免れることができ、また、導入経路体に土砂の集積部を設けることで、床下へ土砂が入ることを抑制でき、復旧作業時の床下からの土砂撤去作業が軽減されることが期待できる。
態様9の発明によれば、浸水が接触する各継ぎ目部等へ浸水抑制機能を施用しておくことで、床構造内、壁構造内への浸水抑制が期待でき、床構造等の保護につながることが期待できる。
態様10の発明によれば、床構造内、壁構造内への浸水を抑制する構造の建物による水害の減災方法によって、復旧改修工事の日数、費用を抑え、さらに、建築廃棄物の削減ができれば脱炭素効果が期待できる。
なお、何れの態様も、建物が全半壊するような相当な水深、急水流等では上記の効果は期待できない。
【0038】
以下、本発明を実施するための形態について説明する。ただし、以下に述べる実施形態、本発明の技術的範囲については、以下の実施形態及び図示に限定されるものではなく、また、本発明の実施には既存技術等を用いるものとする。
なお、概略図では各部材等の配置等を分かりやすいように各部材等の配置に隙間を開けて表示している部分もあるが、実際は、水密性確保が必要な部分等では各部材等は密着している。
【0039】
態様1の実施形態について説明する。
これは、洪水等が、建物の床下内へ浸水した場合、建物構造上重要である、床構造16内部への浸水を抑制する機能を有する建物である。
これまで(従前)の建物は、横降りの豪雨が浸入しないよう、外壁内側通風層内の壁下地材等へ透湿防水シート1bをタッカー等で貼付する方法、木質外壁に防水塗装1cを施用する方法による建物の外壁に対する防水対策を施したものである。
このように、建物内への浸水対策として、透湿防水シート1b等の防水シート1aを床下空間で施用すること、及び、撥水透湿塗装1d等の防水塗装1cを床下地材11へ施工して、床構造16の防水化対策を図ることは提案されていない。
しかしながら、従前の建物が洪水等で浸水した場合、浸水は雑菌等混入による汚水であり、これが床構造16内に浸入すれば、腐敗等の原因となるため、床構造16を全面的に撤去して、新たな床構造16とする改修工事が必要となる。
したがって、これまでの建物では、床下の浸水量が増えて、水が床構造16に接しても、床構造16内(大引9、根太10、床下地材11、断熱材、断熱材と床下地材11の隙間等)への浸水被害、特に床下地材11、断熱材への浸食被害の抑制、被害の軽減ができない。
なお、床構造16(フローリング材12含む)の全撤去、改修工事には、相当の日数と、高額な費用を要することになる。
【0040】
そこで、床構造16内への浸水を抑制するよう、一つの実施形態は、床構造16である床下地材11、その下の根太10の下方、すなわち、これら床構造16と床下空間の間に、防水シート1aの浸水抑制機能1を備える建物を提供する。
なお、防水シート1aには、透湿防水シート1b、その他の防水気密シート等を含むものとする。
この実施形態での、浸水抑制機能(浸水抑制層)1は、透湿防水シート1b等のシート状のもの、その他、部分的に樹脂、金属で形成したシート状、平板状の防水部材であってもよい。
この浸水抑制機能1は、
図1のように、土台8、大引9、根太10、床下地材11へ、例えば、耐水性接着剤で水密性を確保して固着する。また、接着部の強度を確保するため、適宜、平板状の部材で押圧してネジ止め等を併用すればよい。
このように、床構造16の下方へ浸水抑制機能1を設置することで、浸水量が増え、水が床構造16に達しても、床構造16内への浸水を抑制することが可能となる。
なお、繊維系断熱材が水圧で押し潰され、その押し潰された分、防水シート1aが水圧の影響で押し上げられて破損しないよう、防水シート1a貼付する際に遊び部分を設けるか、断熱材が水圧を受けても平坦を保持できるような型枠部材を用いるか、或いは水圧で変形しない発泡系断熱材(固形)を施用しておくのがよい。
既存建物の場合は、床下での工事にて、防水シート1aを床構造16、特に床下地材11の全面に貼付することで態様1の建物とすることができる。
【0041】
もう一つの実施形態は、床構造16の下部に浸水抑制機能1を備える。例えば、
図1のように床下地材11の下部に防水塗装1cを施工する。これは、大引9、根太10の表面、特に浸水と接する面、各材が接触する接合部分についても施用してよい。
また、根太10等の素材自体を人工木等の浸水抑制機能1を備えた建築材としてもよい。なお、防水塗装1cには、撥水透湿塗装1d、防水透湿塗装1eを含むものとする。
既存建物の場合は、床下での工事にて、防水塗装1cの施工、接合部分のコーキング等を行うことで態様1の建物とすることができる。
新築建物の場合は、根太10に人工木等を使用するか、床下地材11を構造用合板で表面加工コンクリート型枠用合板のように防水塗装1c・オーバーレイしたものを施用してもよい。ただし、防水塗装1c・オーバーレイは、透湿性機能を有する防水透湿塗装1e等が好ましい。
【0042】
なお、上記2つの実施形態の単独でもよいが、2つを組み合わせて実施するのが、床構造16の防水効果上はさらによいものとなる。
このような浸水を抑制する浸水抑制機能1を備えた床構造16の建物としておけば、建物周囲の水がひき、浸水が解消して、床構造16に浸水していなければ、浸水抑制機能1の表面を洗浄、消毒等することで床構造16を全撤去することなく復旧することが可能となる。
【0043】
態様2の実施形態について説明する。
これは、態様1に記載の建物のうち、床構造16の下方に浸水抑制機能1を備えてある建物であって、同浸水抑制機能1が透湿防水シート1bであることを特徴とする建物である。
木造等の建物の場合、床下換気が床構造16内、さらには室内換気に及ぶことから、建物保護において床下換気は大事である。
したがって、防水シート1aを、透湿効果のある透湿防水シート1bとした建物であることを特徴とする。
【0044】
態様3の実施形態について説明する。
これは、態様1に記載の建物のうち、床構造16の下部に防水塗装1cの施用による浸水抑制機能1を備えてある建物であって、同浸水抑制機能1が撥水透湿塗装1d、または/及び、防水透湿塗装1eであることを特徴とする建物である。
根太10等が木材である場合、それ自体が湿気を排出して乾燥を保持する必要があることと、態様2と同様に、床下換気が床構造16内から室内まで及ぶようにするためには、床下地材11へ施用する防水塗装1cについて、透湿性を有する撥水性、防水性の塗装1d、1eを浸水抑制機能1とした建物である。
なお、既存建物の場合は、浸水と接する表面等、塗布できる範囲で浸水抑制機能1を備える。
新築建物では、浸水と接する表面以外にも塗布して浸水抑制機能1を備えたものを使用してもよい。
【0045】
態様4の実施形態について説明する。
これは、態様1ないし3の何れか1項に記載の建物であって、畳敷きの畳の下方で畳を支える床下地材11の室内側、または/及び、床下地材11の室内側表面に浸水抑制機能1を備えてあることを特徴とする建物である。図示はないが、
図1を参考とする。
廊下、洋室等は、木質フローリング材12、ビニール製フローリング材12が一般的であり、これらは、少なくとも、水を吸収する表面材質ではない。
しかし、これら材質の床材と異なるのが和室等の畳敷きの部分である。
床上浸水した場合、畳を上げていれば畳の実害は免れる。しかし、畳を支える床下地材11について、従前は杉等の一枚板が多く、最近では防水加工を施していない構造用合板が一般的である。
したがって、汚水が畳下の床下地材11に染みこむことで、復旧時の洗浄、消毒、乾燥に手間がかかり、また、床下地材11の十分な殺菌をすることができないと考えられる。
この浸水抑制機能1については、態様1ないし3、すなわち
図1とは上下方向は逆となるが、仕組みは態様1等の
図1と同様として、床下地材11の室内側に設けるのは、透湿防水シート1b等である。また、床下地材11の室内側表面に設けるのは、撥水透湿塗装1d等の施用である。
何れにしても、透湿性を有する浸水抑制機能1とするのが畳の湿気防止上好ましい。
このような浸水抑制機能1を床下地材11の室内側に設けておけば、構造用合板であっても、木質フローリング材12と同様に内部への防水効果により、復旧の際は、洗浄、消毒、乾燥が比較的容易にできる。
また、防水シート1a、防水塗装1cを併用するのが防水効果上さらによい。
施工については、既存建物、新築建物に大差なく、室内は床下空間より広いため比較的容易に施工できると考えられる。なお、新築や床部分のリフォームの際は、人工木等の浸水抑制機能1を有した建築材を使用してもよいし、防水シート1a等の浸水抑制層1の施行を畳下部分の床下地材11に限定せず、畳下周辺等の広範な床下地材11に備えてもよい。
【0046】
態様5の実施形態について説明する。
これは、態様1ないし4の何れか1項に記載の建物であって、土台8の、少なくとも一つの表面に浸水抑制機能1を備えてあることを特徴とする建物である。
木造建物の土台8は、建物構造上極めて重要であるから、浸水がその表面に接することで、雑菌等が内部へ入り、土台8が浸食されることが考えられる。したがって、土台8についても、全表面に防水塗装1cを施用して、浸水抑制機能1を備えておくことが土台8を保護し、建物を保護する上で望ましい。
また、柱、間柱、胴縁、大引9、根太10、床下地材11等の木材についても、土台8と同様に全表面に浸水抑制機能1を備えておくことが望ましい。
なお、全表面に浸水抑制機能1を備えるについては、新築建物を対象とする。
既存建物については、施工できる範囲において浸水抑制機能1を備えるものとする。
【0047】
態様6の実施形態について説明する。
これは、態様1ないし5の何れか1項に記載の床構造16の浸水抑制機能1を備えた建物であって、さらに、壁全体の壁下地材15aの室内側、または/及び、壁下地材15a表面に浸水抑制機能1を備えてあることを特徴とする建物である。
建物内が浸水した場合、床下浸水で済めば、壁構造15の内部に被害が生じることはほぼない。また、態様1、2のように、床構造16の下方のほぼ全面に防水シート1aを貼付しておけば、床下から壁構造15内へ直接浸水することは抑制できる。
しかし、水が床下内で収まらず、さらに床上へ上がった場合、壁表面が紙製クロス張り等であって、その下に防水気密シート等を貼付していなければ、壁下地材15a、壁構造15へ少量でも浸水が及ぶことになる。
また、壁下地材15aが、石膏ボードであれば、同所から壁部構造15内へ大量の浸水が及ぶことになる。
【0048】
そこで、壁構造15内の浸水被害を軽減するため、壁下地材15aの室内側全面に浸水抑制機能1を設けておくものである。図示はないが、
図1を参考とする。
この浸水抑制機能1は、床構造16と同様に、壁下地材15aの室内側に、防水シート1aを貼付する、または/及び、壁下地材15aの室内側表面に防水塗装1cを塗布するものである。
具体的には、既存建物であれば、表面のクロスをビニール製クロスに貼り替える。その貼り替えの際に壁下地材15aへ防水塗装1cを施す。下地材が石膏ボードであれば、防水シート1aを耐水性接着剤で密着させるなどすればよい。
新築建物では、既存建物と同様とし、壁下地材15aの室内側に防水シート1a貼付、防水塗装1cを施用すればよい。なお、防水シート1aと防水塗装1cを併用した浸水抑制機能1を有する壁構造15の建物であることが好ましい。
【0049】
態様7の実施形態について説明する。
建物への水圧、浮力は、建物周囲の浸水深が深くなるほど大きくなる。
一般的な木造建物では、この浸水深が概ね1メートルを超えれば、水圧、浮力により、浸水しない状態を維持するのは困難であるとされている。
特に高気密建物では、浮力の影響を受けやすいという指摘もある。
また、何れの建物にしても、水深が深くなり水圧が高まれば、掃き出し窓のガラスが破損して、同所から泥水が急流状態で床上に流れ込むとされている。
これまでの水害対策上の提案は、止水板等の浸水防止装置によって、概ね1メートル以下の洪水等の浸水防止を目的としたものである。
しかし、浸水深が1メートルを超える浸水想定区域内の既存建物は多く在るし、今後も従来どおりの建築技術による建物が新築されるであろう。
そして、万が一、静止水であっても1メートルを超えるような深さの水に建物が囲まれた場合、浸水は免れず、浸水した建物は、床構造16、壁構造15の内部への多量の浸水による甚大な被害が生じることになる。
【0050】
そこで、
図2のように、概ね1メートルを超えるような洪水等が発生した際は、浸水を取り入れる部分となる浸水取入口2を建物壁部に数箇所設けておき、同部から積極的に建物へ浸水を取り入れる建物とすることを提供する。
浸水を取り入れることで、ある程度の水深、水流であれば、水圧、浮力の影響を抑制することが可能となる。
この浸水取入口2は、例えば、地面から1メートルの高さに設置した数箇所の窓とする。機能面からすれば、窓等の浸水取入口2の形状、大きさに特段の制限はない。ただし、窓の場合、洪水等の発生が予測された段階で、この窓を開扉しておくため、開けた状態で家人が避難しても他人が侵入できない幅の、滑り出し窓(縦または横)とすることで防犯上の問題は少なくなる。
図3で横滑り出し窓を開扉した窓ガラス2aの開扉状態を示している。また、窓でなく例えば直径20センチメートル程度の換気口であってもよい。
設置の数は、建物全体で数箇所以上とし、設置する位置は、建物の間取り等の他、周囲の環境等を考慮して決定する。例えば、田畑等の土砂が多量にある方向、水流が直撃する方向等を避けるなどする。
そして、洪水等が発生して、水位がこの数箇所の浸水取入口2の下部を超えれば、開扉した窓等の浸水取入口2から室内に浸水が入る。この際、浸水取入口2の数が多く、開扉面積が大きいほど建物内への浸水の急流化は減少できると考えられる。
さらに、掃き出し窓17が水圧等で破損した場合に同所から浸入する泥水と比べて、浸入部分が高いため、土砂(泥)の流入を少なく抑えることができると考える。
その後、水がひくとともに、浸水取入口2の高さまでは、同浸水取入口2から、建物内の水が外へ排出される。
【0051】
次に、室内排出口3について説明する。
これは、浸水取入口2から排出されない建物室内の水を排出するためのものであって、浸水取入口2より下位に設置するものである。
形状等は、逆流防止用の作動弁3aを付設した排水用パイプを応用したものとし、作動弁3aの働きにより、外から浸水はしないが、建物周囲の水がひけば建物内の水圧により弁が開いて水を外へ排出できるものである。
図3は、作動弁3aが作動して室内の水を排出している状態である。
設置する位置は、
図2のように、浸水取入口2の下位で、例えば、床部分に接する高さの位置に設けておけば、床上部分の浸水を全て排出することができる。
設置数は、建物の床面積、間取り等と、室内排出口3の大きさによるが、例えば直径10センチメートル程度のものであれば建物全体で数個以上を設置すればよい。
既存建物では、壁を円形に貫通して、外側部分のパイプを壁内へ固着し、室内排出口3を外側部分のパイプ内へ固着する方法等でよい。新築建物でも同様である。
このようにすれば、水が排出した後、床構造16、壁構造15の内部に浸水していなければ、床等表面の洗浄、消毒、乾燥等作業による復旧作業は比較的スムーズに行うことができる。
【0052】
態様8の実施形態について説明する。
これは、態様7に記載の建物であって、前記浸水取入口2から入った浸水を、床下へ一旦導入する導入経路体4を備えてあることを特徴とする。
この導入経路体4は、耐水性、耐候性を備えた樹脂製、金属製のもので、形状は、ホース状の筒状であって、蛇腹式であるのが保管上等で利便性がある。
図3のように、この導入経路体4を窓等の浸水取入口2に接続、固定し、一端を床下へ配置、固定しておく。
窓等の浸水取入口2から浸入した水は、そのままでは床上へ入ることとなるが、この導入経路体4の内部を通って床下へ浸水する。
そして、床下へ浸水した水が満杯となれば、開扉しておいた数箇所の床下点検口14から床上へ噴出する。
また、床下が満杯状態になる前に洪水が浸水取入口2より下がれば(水がひけば)、床上浸水を免れることができる。
【0053】
さらに、
図3のように、導入経路体4の途中に、土砂、微細な漂流ゴミを集積する部分、集積部5を設けておくことで、床下へ流れ込む土砂等をできるだけ減少させることができる。
この集積部5は、
図3のように、筒状の導入経路体4の内径の一部を大きくしたものなどでよい。また、末端に設ける場合は、ネット状、メッシュ状のものでもよいし、床下に集積用の集積枠5aを設置してもよい(
図3参照)。
集積部5で床下への土砂の流入の減少と、集積枠5aへ土砂を集積させることで床下全面への土砂の拡散を減少させることができる。
導入経路体4の浸水取入口2と接続する部分の形状は、浸水取入口2の形状に合わせた形状に形成する。例えば、四角窓へ接続するものでは、四角筒型構造とし、円筒換気口型へ接続するものでは、円筒型構造とする。浸水取入口2への固定は、フック式、耐水両面テープ接着等の従来技術で固定する。
図3のように、この導入経路体4の本体部を床上に設置し、もう一端は床下へ設置して、ここもフック式、耐水テープ接着等の適宜の方法で固定する。
集積部5は、導入経路体4が蛇腹式のものであれば、蛇腹の谷間部分とする。この部分に土砂が重みで集積する。したがって、谷間部分を大きくするか、導入経路体4の途中に袋形状のものを接続すれば、その部分に土砂等が集積する。
導入経路体4、集積部5とも、浸水取入口2と同じく、既存建物にも後付けで設置できる。
【0054】
なお、床下点検口14は、従来の建物では数箇所設けられているが、上記のように浸水を取込み、さらに、水がひいた後、床下を洗浄、消毒等するために重要であるから、できれば、浸水取入口2の設置位置を考慮して、建物の四方等へ数箇所、及び、建物の中心部付近に一箇所は設置しておくのがよい。
建物の中心部付近に設置しておけば、床下洗浄等の際、同所から床下の四方等に向かって水道水で洗浄することができる。
床下点検口14は、既存建物であっても、設置する適所な部分があれば増設は可能である。
さらに、将来、浸水速度に追いつくような、処理能力が高い殺菌浄化フィルター等が開発されれば、導入経路体4の途中、末端(床下)に設置すればよい。
【0055】
態様9の実施形態について説明する。
これは、態様1ないし9の何れか1項に記載の建物であって、床構造16内、及び、壁構造15内へ浸水が及ばないよう、フローリング材12継ぎ目部、床下地材11継ぎ目部、フローリング材12と敷居の継ぎ目部、フローリング材12と壁構造15の継ぎ目部、壁下地材15a継ぎ目部、壁部のコンセント機器設置部、壁部のスイッチ機器設置部、床下点検口14の周囲部、トイレ便器とフローリング材12の継ぎ目部等にコーキング等の浸水抑制機能1を設け、床構造16内等への浸水を抑制する構造であることを特徴とする建物である。
このように、既存建物では、各継ぎ目部等をコーキング等で防水し、コンセントは、防水水密仕様のものに取り換える等した建物としておく。さらに、木質フローリング材12等も、撥水防水塗装1c等を施工しておくのがなおよい。
新築建物では、各部材の接合部等を耐水接着剤で接着し、各部材継ぎ目をコーキング等して建築し、浸水抑制機能1を高めておく。
【0056】
態様10の実施形態について説明する。
これは、態様1ないし9の何れか1項に記載の建物と、基礎6上方の床下換気口からの建物への浸水を防止する装置を施した建物による、床構造16内、壁構造15内への浸水を抑制し、浸水した場合で水がひいた後は、床構造16、壁構造15に浸水がなければ、床構造16等を全撤去することなく、壁表面、床表面を洗浄、消毒し、床下点検口14から床下を水洗い、消毒し、床下排出口6aから排出し、最終は、全体を乾燥させることで、復旧することが可能となる、建物である。
【0057】
これについて手順等の実施形態の例示を具体的に説明する。
まず、既存建物では、後付けで、
第1として、従来から提案されている、床下換気層(基礎6上方の基礎パッキン7設置部分)からの建物浸水防止装置を設置し、併せて、外壁内側通風層への浸水防止装置、基礎6最下部へ床下の浸水を排出するための床下排出口6aを設置する。
第2として、建物の床構造16内、壁構造15内に浸水が及ばないよう適所に防水シート1a等の浸水抑制機能1を施工する(態様1ないし3)。
第3として、畳敷き部分の床下地材11の浸水抑制機能1を設ける(態様4)。
第4として、土台8と基礎6との連結固定強度、洪水等発生時の建物周囲の水の流速等から、浸水取入口2の高さを決定する(態様7)。
第5として、前記決定した高さに窓、換気口がない場合は、壁を貫通して浸水取入口2を数箇所設置し、併せて、逆流防止の作動弁3a付きの室内排出口3を数箇所設置する(態様7)。
第6として、浸水を床下へ導入する導入経路体4、土砂等を集積するための集積部5、床下の集積枠5aを準備する(態様8)。
第7として、洪水等発生予報を知れば、上記第1の浸水防止装置を浸水防止状態とし、第5の浸水取入口2を開扉し、同浸水取入口2へ第6の導入経路体4、集積部5を固定する。さらに、床下点検口14を全て開扉する。さらに、掃き出し窓17のシャッター18を閉じ、止水板等を立てる。
第8として、建物が浸水した場合は、床上の室内排出口3、基礎6の床下排出口6aから建物内の浸水を全て排出し、壁、床等の洗浄、消毒、乾燥を行う。次に、床下点検口14から、床下の洗浄等を行う。
このようにして、浸水防止装置、防水シート1aが、漂流物の直撃等で破損しなければ、建物構造等への水圧、浮力による被害、床構造16等への浸食による被害の減災を図ることが可能となる。
また、掃き出し窓17のガラスが破損せずに、床下等へ土砂(泥水)が大量に流入しない限り、復旧作業、復旧費用の軽減が可能となる。
【0058】
新築建物でも、上記の既存建物での具体的実施形態の例示とほぼ同様であるが、新築建物では基礎6の埋設部を大きくするなどして基礎6が流出しない工法、さらに基礎6と土台8の連結度を高め、土台8から上が流出しない工法、対策が重要である。また、各部材は防水加工したものを施用し、各部材の接合部の水密性の確保を十分に行うことが重要である。
【0059】
本発明は、建物浸水防止装置等の技術と組み合わせることで効果的なものとなる。
【符号の説明】
【0060】
1 浸水抑制機能(浸水抑制層)
1a 防水シート
1b 透湿防水シート
1c 防水塗装
1d 撥水透湿塗装
1e 防水透湿塗装
2 浸水取入口
3 室内排出口
3a 作動弁
4 導入経路体
5 集積部
5a 集積枠
6 基礎
6a 床下排出口
7 基礎パッキン
8 土台
9 大引
10 根太
11 床下地材
12 フローリング材
13 束
14 床下点検口
15 壁構造
15a 壁下地材
16 床構造
17 掃き出し窓
18 シャッター