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特開2024-96043感度ベースの最適化のための平均加速度
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024096043
(43)【公開日】2024-07-11
(54)【発明の名称】感度ベースの最適化のための平均加速度
(51)【国際特許分類】
   G06F 30/23 20200101AFI20240704BHJP
   G06F 111/04 20200101ALN20240704BHJP
   G06F 111/10 20200101ALN20240704BHJP
【FI】
G06F30/23
G06F111:04
G06F111:10
【審査請求】有
【請求項の数】20
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023219162
(22)【出願日】2023-12-26
(31)【優先権主張番号】18/147,783
(32)【優先日】2022-12-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】514180812
【氏名又は名称】ダッソー システムズ アメリカス コーポレイション
(74)【代理人】
【識別番号】110001243
【氏名又は名称】弁理士法人谷・阿部特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】レナート シェルツ
(72)【発明者】
【氏名】クラウス ベック ウィッテンドルフ ペダーセン
【テーマコード(参考)】
5B146
【Fターム(参考)】
5B146DC04
5B146DC05
5B146DJ01
5B146DJ07
(57)【要約】      (修正有)
【課題】現実世界オブジェクトの最適化設計を自動決定するコンピュータ実装方法及びシステムを提供する。
【解決手段】方法は、現実世界のオブジェクトを表すコンピュータベースのモデルを使用して、複数の時間ステップに亘る現実世界のオブジェクトの平衡を決定することであって速度を決定することを含む。現実世界のオブジェクトの平均加速度は、決定した速度を使用して、複数の時間窓の各々について決定される。決定された各平均加速度の感度が計算される。決定された平均加速度は、制約条件および目的関数を定義するために使用される。現実世界のオブジェクトを表すコンピュータベースのモデルは、決定された各加速度の計算された感度を使用して、制約条件および目的関数に関して、反復的に最適化される。反復的な最適化により、現実世界のオブジェクトの最適化設計を表すコンピュータベースのモデルが更新される。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
現実世界のオブジェクトの最適化設計を自動的に決定するコンピュータ実装方法であって、プロセッサによって、
前記プロセッサのメモリにおいて、前記現実世界のオブジェクトを表すコンピュータベースのモデルを定義するステップと、
前記定義されたコンピュータベースのモデルを使用して、複数の時間ステップの各々について前記現実世界のオブジェクトの平衡を決定するステップであって、前記平衡を決定することにより、前記複数の時間ステップに亘る前記現実世界のオブジェクトの速度が決定される、ステップと、
前記複数の時間ステップに亘って定義された複数の時間窓の各々について、前記決定された速度を使用して平均加速度を決定するステップと、
前記決定された速度の感度を使用して、決定された各平均加速度の感度を計算するステップと、
決定された各平均加速度を使用して、制約条件および目的関数のうちの少なくとも一方を定義するステップと、
決定された各平均加速度の前記計算された感度を使用して、前記制約条件および前記目的関数のうちの前記定義された少なくとも一方に関して、前記現実世界のオブジェクトを表す前記コンピュータベースのモデルを反復的に最適化するステップであって、前記反復的に最適化することにより、前記現実世界のオブジェクトの前記最適化設計を表すコンピュータベースのモデルが更新される、ステップと、
を備える、方法。
【請求項2】
前記コンピュータベースのモデルは、有限要素モデル、境界要素法、有限差分法、有限体積法、または離散要素法である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記複数の時間窓のうちの所与の時間窓について、前記決定された速度を使用して前記平均加速度を決定するステップは、
前記決定された速度の中から、(1)前記所与の時間窓の開始点における速度、および(2)前記所与の時間窓の終了点における速度を識別するステップと、
(1)前記開始点における前記識別された速度、(2)前記終了点における前記識別された速度、および(3)前記所与の時間窓における時間の長さを使用して、前記所与の時間窓に関する前記平均加速度を計算するステップと
を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記所与の時間窓に関する前記平均加速度の感度を計算するステップは、
所与の設計変数に関して、前記開始点において前記識別された速度、および前記終了点において前記識別された速度を使用して、前記所与の時間窓に関する前記平均加速度の感度を計算するステップ
を含む、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記コンピュータベースのモデルを反復的に最適化する前記ステップに、決定された各平均加速度の前記計算された感度と、離散加速度、構造的尺度の感度、およびマルチフィジックス尺度の感度のうちの少なくとも一つとを使用するステップ
をさらに備える、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
ユーザ定義要件を受信するステップと、
前記制約条件および前記目的関数のうちの少なくとも一方を定義する前記ステップに、前記ユーザ定義要件および決定された各平均加速度の両方を使用するステップと、
をさらに備える、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記コンピュータベースのモデルによって表現される前記現実世界のオブジェクトは、自動車、飛行機、電子機器、医療機器、または装甲車両である、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
現実世界のオブジェクトの最適化設計を自動的に決定するためのシステムであって、
プロセッサと、
コンピュータコード命令がそこに格納されるメモリであって、前記プロセッサおよび前記メモリは、前記コンピュータコード命令を用いて、前記システムに、
前記メモリにおいて、前記現実世界のオブジェクトを表すコンピュータベースのモデルを定義することと、
前記定義されたコンピュータベースのモデルを使用して、複数の時間ステップの各々について前記現実世界のオブジェクトの平衡を決定することであって、前記平衡を決定することにより、前記複数の時間ステップに亘る前記現実世界のオブジェクトの速度が決定される、ことと、
前記複数の時間ステップに亘って定義された複数の時間窓の各々について、前記決定された速度を使用して平均加速度を決定することと、
前記決定された速度の感度を使用して、決定された各平均加速度の前記感度を計算することと、
決定された各平均加速度を使用して、制約条件および目的関数のうちの少なくとも一方を定義することと、
決定された各平均加速度の前記計算された感度を使用して、前記制約条件および前記目的関数のうちの前記定義された少なくとも一方に関して、前記現実世界のオブジェクトを表す前記コンピュータベースのモデルを反復的に最適化することであって、前記反復的な最適化により、前記現実世界のオブジェクトの前記最適化設計を表すコンピュータベースのモデルが更新される、ことと
を行わせるように構成される、メモリと
を備える、システム。
【請求項9】
前記コンピュータベースのモデルは、有限要素モデル、境界要素法、有限差分法、有限体積法、または離散要素法である、請求項8に記載のシステム。
【請求項10】
前記複数の時間窓のうちの所与の時間窓について、前記決定された速度を使用して前記平均加速度を決定することにおいて、前記プロセッサおよび前記メモリは、前記コンピュータコード命令を用いて、前記システムに、
前記決定された速度の中から、(1)前記所与の時間窓の開始点における速度、および(2)前記所与の時間窓の終了点における速度を識別することと、
(1)前記開始点において前記識別された速度、(2)前記終了点において前記識別された速度、および(3)前記所与の時間窓における時間の長さを使用して、前記所与の時間窓に関する前記平均加速度を計算することと
を行わせるようにさらに構成される、請求項8に記載のシステム。
【請求項11】
前記所与の時間窓に関する前記平均加速度の感度を計算するために、前記プロセッサおよび前記メモリは、前記コンピュータコード命令を用いて、前記システムに、
所与の設計変数に関して、前記開始点において前記識別された速度および前記終了点において前記識別された速度を使用して、前記所与の時間窓に関する前記平均加速度の前記感度を計算すること
を行わせるようにさらに構成される、請求項10に記載のシステム。
【請求項12】
前記プロセッサおよび前記メモリは、前記コンピュータコード命令を用いて、前記システムに、
前記コンピュータベースのモデルの前記反復的な最適化において、決定された各平均加速度の前記計算された感度と、離散加速度、構造的尺度の感度、およびマルチフィジックス尺度の感度のうちの少なくとも一つとを使用すること
を行わせるようにさらに構成される、請求項8に記載のシステム。
【請求項13】
前記プロセッサおよび前記メモリは、前記コンピュータコード命令を用いて、前記システムに、
ユーザ定義要件を受信することと、
前記制約条件および前記目的関数のうちの少なくとも一方の前記定義において、前記ユーザ定義要件および決定された各平均加速度の両方を使用することと
を行わせるようにさらに構成される、請求項8に記載のシステム。
【請求項14】
前記コンピュータベースのモデルによって表現される前記現実世界のオブジェクトは、自動車、飛行機、電子機器、医療機器、または装甲車両である、請求項8に記載のシステム。
【請求項15】
現実世界のオブジェクトの最適化設計を自動的に決定するための非一時的コンピュータプログラム製品であって、ネットワークを介して一つまたは複数のクライアントと通信するサーバによって実行され、
コンピュータ可読媒体であって、プロセッサによって実行されると、前記プロセッサに、
前記プロセッサのメモリにおいて、前記現実世界のオブジェクトを表すコンピュータベースのモデルを定義することと、
前記定義されたコンピュータベースのモデルを使用して、複数の時間ステップの各々について前記現実世界のオブジェクトの平衡を決定することであって、前記平衡を決定することにより、前記複数の時間ステップに亘る前記現実世界のオブジェクトの速度が決定される、ことと、
前記複数の時間ステップに亘って定義された複数の時間窓の各々について、前記決定された速度を使用して平均加速度を決定することと、
前記決定された速度の感度を使用して、決定された各平均加速度の前記感度を計算することと、
決定された各平均加速度を使用して、制約条件および目的関数のうちの少なくとも一方を定義することと、
決定された各平均加速度の前記計算された感度を使用して、前記制約条件および前記目的関数のうちの前記定義された少なくとも一方に関して、前記現実世界のオブジェクトを表す前記コンピュータベースのモデルを反復的に最適化することであって、前記反復的な最適化により、前記現実世界のオブジェクトの前記最適化設計を表すコンピュータベースのモデルが更新させる、ことと
を行わせるプログラム命令をさらに含む、コンピュータ可読媒体
を備える、非一時的コンピュータプログラム製品。
【請求項16】
前記コンピュータベースのモデルは、有限要素モデル、境界要素法、有限差分法、有限体積法、または離散要素法である、請求項15に記載の非一時的コンピュータプログラム製品。
【請求項17】
前記複数の時間窓のうちの所与の時間窓について、前記決定された速度を使用して前記平均加速度を決定することにおいて、前記プログラム命令は、前記プロセッサによって実行されると、前記プロセッサに、
前記決定された速度の中から、(1)前記所与の時間窓の開始点における速度、および(2)前記所与の時間窓の終了点における速度を識別することと、
(1)前記開始点において前記識別された速度、(2)前記終了点において前記識別された速度、および(3)前記所与の時間窓における時間の長さを使用して、前記所与の時間窓に関する前記平均加速度を計算することと
を行わせる、請求項15に記載の非一時的コンピュータプログラム製品。
【請求項18】
前記所与の時間窓に関する前記平均加速度の感度を計算するために、前記プログラム命令は、前記プロセッサによって実行されと、前記プロセッサに、
所与の設計変数に関して、前記開始点において前記識別された速度および前記終了点において前記識別された速度を使用して、前記所与の時間窓に関する前記平均加速度の前記感度を計算することと
を行わせる、請求項17に記載の非一時的コンピュータプログラム製品。
【請求項19】
前記プログラム命令は、前記プロセッサによって実行されると、前記プロセッサに、
前記コンピュータベースのモデルの前記反復的な最適化において、決定された各平均加速度の前記計算された感度と、離散加速度、構造的尺度の感度、およびマルチフィジックス尺度の感度のうちの少なくとも一つとをさらに使用すること
をさらに行わせる、請求項15に記載の非一時的コンピュータプログラム製品。
【請求項20】
前記プログラム命令は、前記プロセッサによって実行されると、前記プロセッサに、
ユーザ定義要件を受信することと、
前記制約条件および前記目的関数のうちの少なくとも一方の前記定義において、前記ユーザ定義要件および各決定された平均加速度の両方を使用することと
をさらに行わせる、請求項15に記載の非一時的コンピュータプログラム製品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、平均加速度の使用によって最適化されるオブジェクトの設計に関する。
【背景技術】
【0002】
コンピュータ支援設計(CAD)またはコンピュータ支援エンジニアリング(CAE)を使用する部品の設計のために、多くのシステムおよびプログラムが市場で提供されている。これらのいわゆるCADシステムは、ユーザがオブジェクトの複雑な三次元モデル、またはオブジェクトのアセンブリを構築し操作することを可能にする。それ故に、CADシステムは、辺、線を使用する、または特定の場合において面もしくは多角形を伴うモデル化されたオブジェクトの表現を提供する。線、辺、面、または多角形は、様々な方法で、例えば、非一様有理基底スプライン(non-uniform rational basis splines)(NURBS)で表現され得る。
【0003】
これらCADシステムは、オブジェクトによってモデル化された部品または部品の組立品を管理し、それらは、主に幾何学的形状の仕様である。特に、CADファイルは、仕様を含み、その仕様から幾何学的形状が生成される。幾何学的形状から、表現が生成される。仕様、幾何学的形状、および表現は、単一のCADファイルまたは複数のCADファイルに格納され得る。CADシステムは、モデル化されたオブジェクトを設計者に示すためのグラフィックツールを含み、これらのツールは、複雑なオブジェクトを表示することに特化している。例えば、組立品は、数千個の部品を含み得る。CADシステムは、オブジェクトのモデルを管理するために使用することができ、それらは、電子ファイルに格納されている。
【0004】
CADシステムおよびCAEシステムの出現は、オブジェクトに対する表現の可能性の幅を広げることを可能にする。こうした一つの表現は、有限要素モデル(FEM)である。FEM、または他のこうしたCAD、CAE、もしくはコンピュータベースのモデルは、モデルが表現する、基礎となる一つもしくは複数のオブジェクトの特性をモデルが有するような方法でプログラムされ得る。FEM、または他のこうしたコンピュータベースのモデルは、こうした方法でプログラムされている場合、モデルが表現する、オブジェクトのシミュレーションを行うために使用され得る。例えば、FEMは、車両の内部空洞、構造体を囲む音響流体、ならびに、あらゆる現実世界のオブジェクトおよびシステムを表現するために使用され得る。所与のモデルは、オブジェクトを表現し、それに応じてプログラムされる場合、現実世界のオブジェクト自体のシミュレーションを行うために使用され得る。例えば、ステント(stent)を表現するFEMは、実際の医療現場におけるステントの使用のシミュレーションを行うために使用され得る。
【0005】
コンピュータベースのモデルは、モデルが表現する、オブジェクトの設計を改善するために使用され得る。設計の改善は、モデルの設計、およびそれ故にモデルが表現する、基礎となる現実世界のオブジェクトへの変更を特定するために、一連のシミュレーションを実行するコンピュータベースの最適化技法を使用することによって特定され得る。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】ペデルセン,C.B.W.(2004)、トポロジー最適化を用いた過渡フレーム構造の衝突安全設計、応用力学および工学におけるコンピュータ手法、193(6-8):653-678(Pedersen, C.B.W. (2004). Crashworthiness Design of Transient Frame Structures using Topology Optimization, Computer Methods in Applied Mechanics and Engineering, 193(6-8): 653-678.)
【非特許文献2】ペデルセン,C.B.W.(2002)、衝突安全性のためのフレーム構造のトポロジー設計について、博士論文、出版社デンマーク応用数学力学センター、デンマーク工科大学(Pedersen, C.B.W. (2002). On topology design of frame structures for crashworthiness. PhD thesis, Publisher Danish Center for Applied Mathematics and Mechanics. Technical University of Denmark.)
【非特許文献3】ペデルセン,C.B.W.(2002)、エネルギー吸収フレームのトポロジー最適化、WCCM V-第5回世界計算力学会議、オーストリア、ウィーン(Pedersen, C.B.W. (2002). Topology Optimization of Energy Absorbing Frames. WCCM V - Fifth World Congress on Computational Mechanics, Vienna, Austria.)
【非特許文献4】キム,Y、パーク,G.(2010)、等価静荷重を用いた非線形動的応答構造最適化、199(9-12):660-676(Kim, Y., Park, G. (2010). Nonlinear dynamic response structural optimization using equivalent static loads. Computer Methods in Applied Mechanics and Engineering. 199(9-12): 660-676.)
【非特許文献5】ジョン,S.、ヨン,S.、シュウ,S.、パーク,G.(2010)、等価静荷重を用いた自動車前面構造の非線形動的応答構造最適化、機械学会論文集、パートD:自動車工学ジャーナル、224(4):489-501(Jeong S., Yoon S., Xu S., Park G. (2010). Non-linear dynamic response structural optimization of an automobile frontal structure using equivalent static loads. Proceedings of the Institution of Mechanical Engineers, Part D: Journal of Automobile Engineering. 224(4):489-501.)
【非特許文献6】ヨン,J.、リー,Y.、パーク,S.、ハン,Y.、パーク,G.(2019)、頭部傷害基準を考慮した衝突最適化、機械学会論文集、パートD:自動車工学ジャーナル、233(11):2879-2890(Yoon J., Lee Y., Park S., Han Y., Park G. (2019). Crash optimization considering the head injury criterion. Proceedings of the Institution of Mechanical Engineers, Part D: Journal of Automobile Engineering. 233(11):2879-2890.)
【非特許文献7】シュトルペ,M.、フェルパート,A.、ラバンダ,S.R.(2018)、構造最適化のための等価静荷重法は一般に最適設計を生成しない、構造的および学際的な最適化、58(1):139-154(Stolpe, M., Verbart, A., Labanda, S. R. (2018). The equivalent static loads method for structural optimization does not in general generate optimal designs. Structural and Multidisciplinary Optimization, 58(1): 139-154.)
【非特許文献8】ルー,W.、イー,G.,ガンディコタ,I.(2020)、トポロジー最適化のための空間カーネル アプローチ、応用力学および工学におけるコンピュータ手法、361(1):112794(Roux, W., Yi, G., Gandikota, I. (2020). A spatial kernel approach for topology optimization. Computer Methods in Applied Mechanics and Engineering. 361(1):112794.)
【非特許文献9】ガンディコタ,I.、ルー,W.、イー,G.(2021)、複数の荷重ケースおよび分野に対応した自動車フードのトポロジーの最適化、カンファレンス:第13回ヨーロッパLS-DYNAカンファレンス2021、ドイツ、ウルム(Gandikota, I., Roux, W., Yi, G. (2021). Topology optimization of an automotive hood for multiple load cases and disciplines. Conference: 13th European LS-DYNA Conference 2021, Ulm, Germany.)
【非特許文献10】ガンディコタ,I.、イー,G.,ルー,W.(2019)、LS-TaSCを用いた自動車衝突箱の衝突安全性および軽量化の最適化、FEA情報エンジニアリングソリューション、2019年10月(Gandikota, I., Yi, G., Roux, W. (2019). Crashworthiness and lightweight optimization of an automotive crash box using LS-TaSC. FEA Information Engineering Solutions. October 2019.)
【非特許文献11】ブイニー,M.、オーリグ,N.、オルホーファー,M.、ダデック,F.(2018)、進化的レベルセット法による衝突安全性のための最適トポロジーの同定、国際耐衝撃性ジャーナル23(4):395-416.(Bujny, M., Aulig, N., Olhofer, M., Duddeck, F. (2018). Identification of optimal topologies for crashworthiness with the evolutionary level set method. International Journal of Crashworthiness 23(4): 395-416.)
【非特許文献12】ペデルセン,N.L.(1998)、寝ている警察官の形状最適化、オールボー大学における交通会議、デンマーク、オールボー(Pedersen, N.L. (1998). Shape optimizing of a sleeping policeman”. Trafik dage pa Aalborg Universitet, Aalborg, Denmark.)
【非特許文献13】ペデルセン,N.L.(1998)、車速制御バンプの形状最適化、構造力学のジャーナル、26(3):319-342(Pedersen, N.L. (1998). Shape Optimization of a Vehicle Speed Control Bump, Journal of Structural Mechanics, 26(3): 319-342.)
【非特許文献14】ディール,T.、キャロル,D.、ナガラジ,B.(2000)、DSPの弾性支配型衝撃問題の陽解法動的FEAシミュレーションへの応用、衝撃および振動、7(3):167-177(Diehl, T., Carroll, D., Nagaraj, B. (2000). Applications of DSP to explicit dynamic FEA simulations of elastically-dominated impact problems, Shock and Vibration, 7(3):167-177.)
【非特許文献15】クライバー,M.、アントゥネス,H.、ヒエン,T.D.、およびコワルチク,P.(1997)、非線形力学におけるパラメータ感度、理論および有限要素計算、ジョン・ワイリー・アンド・サンズ(Kleiber, M., Antunez, H., Hien, T. D. and Kowalczyk, P. (1997). Parameter Sensitivity in Nonlinear Mechanics, Theory and Finite Element Computations, John Wiley and Sons.)
【非特許文献16】チョイ,K.K.およびキム,N.H(2005)、構造感度解析および最適化2:非線形システムおよび応用、シュプリンガー・フェアラーク・ニューヨーク・インコーポレイテッド(Choi, K. K. and Kim, N. H (2005). Structural Sensitivity Analysis and Optimization 2: Nonlinear Systems and Applications, Springer-Verlag New York Inc.)
【非特許文献17】ミカレリス,P.、トルトレッリ,D.A.およびビダル,C.A.(1994)、弾塑性への応用を伴う過渡非線形連成問題のための接線演算子と設計感度の定式化、工学における数値的手法に関する国際ジャーナル37:2471-2499(Michaleris, P., Tortorelli, D. A. and Vidal, C. A. (1994). Tangent Operators and Design Sensitivity Formulations for Transient Non-linear Coupled Problems with Applications to Elastoplasticity, International Journal for Numerical Methods in Engineering 37: 2471-2499.)
【非特許文献18】テイラー,J.E.およびベンソー,M.P.(1984)、制約を緩和する方法を含む最小-最大構造設計問題の解釈、固体および構造の国際ジャーナル、20:301-314(Taylor, J.E. and Bendsoe, M.P. (1984). An interpretation of min-max structural design problems including a method for relaxing constraints. International Journal of Solids and Structures. 20: 301-314.)
【非特許文献19】オルホフ.N.(1989)、境界定式化および数理計画法による多基準構造の最適化、構造の最適化、1:11-17(Olhoff. N. (1989). Multicriterion structural optimization via bound formulation and mathematical programming. Structural Optimization. 1:11-17.)
【非特許文献20】アバクス.(2021)、SIMULIAユーザーアシスタンス、ダッソー・システムズ(Abaqus. (2021). SIMULIA User Assistance. Dassault Systemes.)
【非特許文献21】トスカ.(2021)、SIMULIAユーザーアシスタンス、ダッソー・システムズ(Tosca. (2021). SIMULIA User Assistance. Dassault Systemes.)
【発明の概要】
【0007】
現実世界のオブジェクトを設計するためのコンピュータベースの最適化方法が存在するが、これらの既存の方法は、計算量が多く(computationally expensive)、改善から利点を受けることができる。実施形態は、こうした改善を提供する。実施形態は、平均加速度(average accelerations)の使用によって最適化されたオブジェクト設計を決定する、コンピュータベースの設計機能を提供する、自動化された現実世界のオブジェクト設計、最適化、およびシミュレーションを対象とする。
【0008】
こうした一つの例示的な実施形態は、現実世界のオブジェクトの最適化設計(optimized design)を自動的に決定するコンピュータ実装方法を提供する。こうした方法は、プロセッサのメモリにおいて、現実世界のオブジェクトを表すコンピュータベースのモデルを定義するステップによって開始する。次いで、コンピュータベースのモデルは、複数の時間ステップ(または期間)の各々について、現実世界のオブジェクトの(ニュートンの平衡理論(Newton’s equilibrium)に関連する)平衡を決定するために使用される。平衡を決定することにより、複数の時間ステップに亘る現実世界のオブジェクトの(それぞれの軸に沿った、または共通軸に沿った)速度が決定される。こうした例示的な一実施形態は、決定された速度を使用して、複数の時間ステップに亘って定義された複数の時間窓の(time windows)各々について平均加速度を決定することによって継続する。さらに、決定された各平均加速度の感度(sensitivities)は、決定された速度の感度を使用して計算される。その後、決定された平均加速度は、制約条件(constraint)および目的関数(objective function)のうちの少なくとも一方を定義するために使用される。最後に、決定された各平均加速度の計算された感度は、制約条件および目的関数のうちの定義された少なくとも一方に関して、現実世界のオブジェクトを表すコンピュータベースのモデルを反復的に最適化するために使用される。この反復的な最適化により、現実世界のオブジェクトの最適化設計を表すコンピュータベースのモデルが更新される。
【0009】
実施形態において、コンピュータベースのモデルは、当該技術分野で既知となる任意のコンピュータベースのモデルとすることができる。例えば、一実施形態によると、コンピュータベースのモデルは、有限要素モデル(finite element model)、境界要素法(boundary element method)、有限差分法(finite difference method)、有限体積法(finite volume method)、または離散要素法(discrete element method)である。
【0010】
一実施形態によると、決定された速度を使用して、複数の時間窓のうちの所与の時間窓に関する平均加速度を決定するステップは、(1)所与の窓の開始点における速度、および(2)所与の時間窓の終了点における速度を識別するステップを含む。さらに、こうした一実施形態は、(1)開始点において識別された速度、(2)終了点において識別された速度、および(3)所与の時間窓における時間の長さを使用して、所与の時間窓の平均加速度を計算する。さらに別の実施形態は、所与の設計変数に関して、開始点において識別された速度および終了点において識別された速度を使用して、所与の時間窓の平均加速度の感度を計算する。
【0011】
さらなる一実施形態において、決定された各平均加速度の計算された感度と、離散加速度(discrete accelerations)、構造的尺度(structural measure)の感度、マルチフィジックス尺度(multi-physics measure)の感度のうちの少なくとも一つとは、コンピュータベースのモデルを反復的に最適化するために使用される。さらに別の実施形態において、ユーザ定義要件が受信され、ユーザ定義要件および各決定された平均加速度は、制約条件および目的関数のうちの少なくとも一方を定義するために使用される。
【0012】
実施形態において、コンピュータベースのモデルによって表現される現実世界のオブジェクトは、任意のオブジェクトとすることができる。例えば、一実施形態において、現実世界のオブジェクトは、自動車(automobile)、飛行機(plane)、電子機器(electronic device)、医療機器(medical instrument)、もしくは装甲車両(armor)、または他の類似の保護設計(protective designs)/オブジェクトである。
【0013】
さらなる一実施形態は、現実世界のオブジェクトの最適化設計を自動的に決定するためのシステムを対象とする。このシステムは、プロセッサと、コンピュータコード命令がそこに記憶されたメモリとを含む。こうした一実施形態において、プロセッサおよびメモリは、コンピュータコード命令によって、本明細書に記載される任意の実施形態、または実施形態の組み合わせをシステムに実装させるように構成されている。
【0014】
別の実施形態は、現実世界のオブジェクトの最適化設計を自動的に決定するための非一時的コンピュータプログラム製品を対象とする。こうした一実施形態は、ネットワークを介して一つもしくは複数のクライアントと通信するサーバによって実行される、コンピュータプログラム製品を対象とし、コンピュータプログラム製品は、プロセッサによって実行されると、本明細書に記載される任意の実施形態、または実施形態の組み合わせをプロセッサに実装させる、プログラム命令を含む。
【図面の簡単な説明】
【0015】
前述のことは、異なる図面全体を通して同様の参照記号が同じ部分を指している、添付の図面に図示されているように、例示の実施形態におけるより具体的な以下の記述から明らかになるであろう。図面は、必ずしも縮尺通りではなく、その代わりに実施形態を例証することに重点が置かれている。
【0016】
図1】一実施形態による、垂直加速度(vertical acceleration)の応答および感度を計算することができる例示的なシステムを表す図である。
図2A図1に示すシステムに関する垂直加速度の応答および感度をそれぞれ示すプロットである。
図2B図1に示すシステムに関する垂直加速度の応答および感度をそれぞれ示すプロットである。
図3】20個の設計点を使用して最適化された構造の応答を示すプロットである。
図4】一実施形態による、現実世界のオブジェクトの最適化設計を自動的に決定するための方法のフローチャートである。
図5】一実施形態による、連続平均加速度(continuous average accelerations)a-を計算する方法を例証するプロットである。
図6A】一実施形態による、連続平均加速度の計算を示すプロットである。
図6B図6Aの連続平均加速度を計算する際に使用される速度を例証するプロットである。
図7A】実施形態に使用され得る時間窓に関する二つの速度を使用して、平均連続加速度(average continuous acceleration)を決定する方法を例証するプロットである。
図7B】実施形態に使用され得る時間窓に関する二つの速度を使用して、平均連続加速度を決定する方法を例証するプロットである。
図7C】実施形態に使用され得る時間窓に関する二つの速度を使用して、平均連続加速度を決定する方法を例証するプロットである。
図7D】実施形態に使用され得る時間窓に関する二つの速度を使用して、平均連続加速度を決定する方法を例証するプロットである。
図8A】直接加速度(direct accelerations)が最適化のために評価される、離散時点における速度を使用して計算された連続平均加速度を最適化することと、最適化のための付加的な離散直接加速点(discrete direct acceleration points)を使用して加速度を厳密に最適化することとの間の比較を例証するプロットである。
図8B】直接加速度が最適化のために評価される、離散時点における速度を使用して計算された連続平均加速度を最適化することと、最適化のための付加的な離散直接加速点を使用して加速度を厳密に最適化することとの間の比較を例証するプロットである。
図9】一実施形態による、連続平均加速度を計算および利用する、反復設計プロセス(iterative design process)を例証するフロー図である。
図10】実施形態を使用して最適化され得る、現実世界のオブジェクトを含む環境を示す簡略図である。
図11図10の環境に関する加速度曲線および変位侵入(displacement intrusion)の比較を示すプロット図である。
図12図10の環境の最適化に関する、時間における離散変位(discrete displacements)、離散加速度、連続平均加速度を示すプロットであり、離散加速度a(t)および連続平均加速度a-(t)の最大値が最小化され、変位侵入が制約される。
図13A】実施形態を使用してノンパラメトリック形状最適化(non-parametric shape optimization)のために適用される、簡略化された歩行者および車の衝撃モデルを例証する図である。
図13B】実施形態を使用してノンパラメトリック形状最適化のために適用される、簡略化された歩行者および車の衝撃モデルを例証する図である。
図13C】実施形態を使用してノンパラメトリック形状最適化のために適用される、簡略化された歩行者および車の衝撃モデルを例証する図である。
図13D】実施形態を使用してノンパラメトリック形状最適化のために適用される、簡略化された歩行者および車の衝撃モデルを例証する図である。
図13E】実施形態を使用してノンパラメトリック形状最適化のために適用される、簡略化された歩行者および車の衝撃モデルを例証する図である。
図14A】最大加速度を最小化する一実施形態に関する、最適化反復履歴(optimization iteration history)を示すプロットである。
図14B】最大加速度を最小化する一実施形態に関する、最適化反復履歴を示すプロットである。
図14C】最大加速度を最小化する一実施形態に関する、最適化反復履歴を示すプロットである。
図15A】時間および変位の両方の関数として、実施形態を使用して決定される、最適化された加速度を示すプロットである。
図15B】時間および変位の両方の関数として、実施形態を使用して決定される、最適化された加速度を示すプロットである。
図15C】時間および変位の両方の関数として、実施形態を使用して決定される、最適化された加速度を示すプロットである。
図16A】実施形態を使用して決定される、節点ノンパラメトリック形状(nodal non-parametric shape)の最適化設計を例証するプロットである。
図16B】実施形態を使用して決定される、節点ノンパラメトリック形状の最適化設計を例証するプロットである。
図16C】実施形態を使用して決定される、節点ノンパラメトリック形状の最適化設計を例証するプロットである。
図17A】実施形態を使用して実装される、ボンネットシェルモデル(bonnet shell model)最適化のステップを例証する図である。
図17B】実施形態を使用して実装される、ボンネットシェルモデル最適化のステップを例証する図である。
図17C】実施形態を使用して実装される、ボンネットシェルモデル最適化のステップを例証する図である。
図17D】実施形態を使用して実装される、ボンネットシェルモデル最適化のステップを例証する図である。
図18】実施形態を使用して決定される、サイズ設定厚さ(sizing thickness)が最適化設計、およびビード節点(bead nodal)が最適化設計に関する最適化反復履歴および加速度を描写するプロットである。
図19A】実施形態を使用して決定される、サイズ設定要素の厚さおよびビード節点が最適化設計を示す図である。
図19B】実施形態を使用して決定される、サイズ設定要素の厚さおよびビード節点が最適化設計を示す図である。
図20】一実施形態による、現実世界のオブジェクトの最適化設計を自動的に決定するためのコンピュータシステムを示す簡略化されたブロック図である。
図21】本発明の一実施形態が実装され得る、コンピュータネットワーク環境を示す簡略化されたブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
例示の実施形態について、以下に説明する。
【0018】
本明細書では「感度(sensitivities)」という用語が使用されるが、感度は、微分(derivatives)と数学的に等価であり、また「感度」という用語は、多領域最適化(multidisciplinary optimization)において一般に使用されることに留意されたい。
【0019】
実施形態は、最適化およびシミュレーションに基づく自動化された製品設計に対する改善を提供する。一般的に、加速度が時間に関して二回微分される変位であり、加速度感度(acceleration sensitivities)が設計変数に関してさらに一回微分されるため、感度を使用した時間の加速度に対する感度ベースの最適化は困難である。それによって、加速度と対応する加速度感度との両方は、物理的にも数値的にもノイズが多い。非特許文献1、2、および3を参照されたい(本書における括弧番号は、以下の非特許文献の列挙されたリストを指す)。前述のノイズは、加速度およびその感度におけるより高次かつ高度に局在した振動(higher order, highly-localized, oscillations)によって、一般的に観察される。図1、ならびに図2Aおよび2Bは、この問題となるノイズを例証している。具体的に、図1は、断面104を有するビームが要素101~102、および質量103から構成される、単純な固定ビームシステム100を例証し、質量103は、20m/sの速度で移動している。図2Aおよび2Bは、システム100の感度ベースの最適化において決定される、加速度感度および時間の比較、および加速度および時間の比較をそれぞれ示すプロット220および221である。拡大図222および223は、ビームシステム100の最適化という観点から、加速度(図222)および対応する感度(図223)の大きく高度に局在した振動(large and highly localized oscillations)を示している。
【0020】
従って、これらの加速度および感度を感度ベースの最適化において直接適用することは、多くの欠点を有する。例えば、追加の最適化反復が必要とされ、および/または局所的に準最適な最小限の最適化設計(local suboptimal minimal optimized designs)が得られる。
【0021】
他の用途の中でも特に、多くの設計者は、耐衝撃性設計(crashworthiness designing)のために、現在の加速度最適化および対応するノンパラメトリック最適化機能を要求している。競合他社および学術的刊行物は、感度を使用して耐衝撃性が最適化設計を得るために加速度を取り扱う上で様々なアプローチを提案しているが、加速度設計のための現在の一般性および潜在的な産業的影響力を有するものはない。
【0022】
非特許文献1、2、および3は、感度ベースの最適化のための加速度および感度における、振動およびノイズの影響を低減するための二つのアプローチを提案している。例えば、最適化のための滑らかな加速度および加速度感度は、主要な動的解法に高い減衰を加える、数値減衰の適用によって達成されていて、これにより、過渡高次かつ高度に局在した振動(transient higher order, highly-localized oscillations)が抑制される。これは、主要な動的解法の物理的精度が損なわれる可能性があり、それによって、最適化設計に不具合が生じる可能性があるという欠点を有する。さらに、特定の一実施例で実行可能な数値減衰を選択することは困難である可能性があり、実行可能な減衰を決定するために、多くの試行錯誤の研究を実施する必要がある。
【0023】
さらに、加速度曲線の傾斜を間接的に制御するために、間接的傾斜制御(indirect slope control)が適用されている。これは、最適化の定式化(optimization formulation)に使用するために加速度が測定される、設計点に対して既存の設計点に近い加速度設計点を追加することによって行われる。しかしながら、最適化における加速度のこの定式化は、加速度設計点間の加速度特性を表現しない、または捕捉しない。図3におけるプロット330は、この問題を例証している。プロット330は、加速度331、すなわち減速度および変位332の比較を例証している。プロット330の拡大図333は、付加的な設計点334a~334b、および既存の設計点335a~335bを示している。拡大図333において、設計点334a~334b、および335a~335bは、例えば、曲線336によって与えられる加速度を捕捉しないことが分かり、曲線336は、数値モデル化において減衰を有していない。さらに、曲線337は、実行不可能な最大数値減衰(maximum numerical damping)を有し、それにもかかわらず、設計点334aおよび335aの間の局所加速度(local accelerations)は捕捉されない。
【0024】
非特許文献4、5、および6は、いわゆる等価静的荷重法(equivalent static loads)(ESL)を使用する、根本的に異なるアプローチを提案しており、これは、過渡モデル化(transient modeling)の動的応答を、感度が計算される近似線形静的モデル(approximated linear static model)にマッピングを行う。また、非特許文献4および5は、感度ベースの最適化において加速度を適用するが、加速度およびそれらの感度は、近似線形静的モデル化からの変位を使用して定義されている。本明細書に記載される本発明のアプローチは、最適化のための動的分析の過渡応答およびそれらの感度を直接適用しており、線形静的近似が適用されない。非特許文献7は、ESL最適化アプローチが感度ベースの過渡最適化(transient optimization)に対して一般的に機能するかどうかに関する懸念を含んでいる。
【0025】
非特許文献8は、加速度最適化のための非特許文献9および10と比較して、根本的に異なるアプローチを提案している。非特許文献8におけるアプローチは、設計空間の設計モデル化を低減しており(設計変数の個数の低減)、これは、「ごく少数の空間変数を有する(having only few spatial variables)」と定義している。ごく少数の空間変数を有することは、非特許文献8では、有限差分を使用して、加速度を数値的に計算することを可能にする。さらに、空間変数の導入は、非常に多数の設計変数を平均化することによって、ノイズを大幅に低減している。しかしながら、このアプローチは、加速度およびその感度に関して、時間におけるノイズレベルと高度に局在した振動に対する低減とを保証しない。さらに、このアプローチは、多数の設計変数が解析的にまたは半解析的に計算され、それによって高レベルの設計自由度が最適化されたシステムのより良い性能を生み出すため、本明細書に記載される革新的な方法にとって有効ではない。
【0026】
加速度感度に基づいていないが、依然として最適化の定式化中に加速度を含む、ノンパラメトリック最適化方法(non-parametric optimization methods)が存在する。非特許文献11を参照されたい。しかしながら、これらの方法は、本明細書に記載される通りの加速度感度に基づく加速度最適化アプローチの群に関連していない。
【0027】
前述の最適化アプローチは、過渡シミュレーションのために過渡的連続有限要素モデル化(transient continuum finite element modeling)を事前に適用している。しかしながら、多体シミュレーション(multibody simulation)(MBS)は、多体システムが様々な剛体または弾性体から構成されている、数値シミュレーションの方法である。非特許文献12および13は、加速度感度を使用する、MBSシステムのための加速度最適化を説明している。非特許文献12および13において、非特許文献12および13に説明されるMBSシステムの加速度はむしろ滑らかに見え、低レベルのノイズおよび高度に局在した振動を有するため、加速度は、いかなる追加の考慮事項なく、最適化において直接適用されている。それ故に、これらのMBSの加速度特性は、高レベルのノイズおよび振動を有する、本明細書に記載される本発明の方法における熟考された加速度応答(acceleration responses)と異なる。しかしながら、MBSシステムが(例えば、接触および軸受けのために)加速度において高レベルのノイズおよび振動を有する必要があるならば、本明細書に記載される実施形態は、MBSシステムの加速度最適化に適用されることもできる。
【0028】
典型的に、輸送およびモビリティ部門(例えば、自動車など)、航空および防衛部門(例えば、航空機など)、生命科学部門(例えば、医療機器など)、ならびにハイテク部門(例えば、携帯電話およびノートパソコンなど)からの、耐衝撃性事象(crashworthiness events)、衝撃事象(impact events)、落下事象(drop events)などに関する多くの状況が、時間における以下の設計基準に対処するために、エンジニアによって適用される。
【0029】
エンジニアは、最大侵入(maximum intrusions)(構造の中に貫通する、およびそれによって重要な構成要素または人間に衝撃を与える、最大の弾性もしくは可塑性の変位)を最小化するために、耐衝撃性事象、衝撃事象、落下事象などの状況を適用する。エンジニアは、局所の材料点レベル(local material point levels)において材料の破損を最小化するために、耐衝撃性事象、衝撃事象、落下事象などの状況を適用する。例えば、局所材料が裂け、物質がタンクから漏れている場合、または絶縁材料が引き裂かれたり貫通されたり、短絡が発生している場合である。エンジニアは、最大加速度を最小化するために、耐衝撃性事象、衝撃事象、落下事象などの状況を適用する。多くの場合、最大加速度は、人体への全体的な生体力学的影響を取り扱う性能尺度(performance measure)である。さらに、加速度によって決定される他の基準は、生体力学的影響、例えば、頭部損傷基準(head injury criterion)(しばしば、HICと呼ばれる)を測定するために適用される。これらの生体力学的基準を使用するには、時には、詳細かつ現実的な人体モデルを使用する必要があり、人体の部位および関節における特定の質量および剛性を知る必要がある。それ故に、初期設計段階では、最大加速度は設計尺度(design measures)として考慮されることが多い。典型的に、時間における最大加速度が全体的に最小化されるならば、これらの基準の多くも、間接的に最小化される。
【0030】
他の用途の中でも特に、本明細書に記載される本発明のアプローチは、時間における最大加速度を最小化することに対処する。実施形態は、構造の中への最大侵入を最小化する設計基準と併せて適用することができ、両方の基準が最適化において考慮されることを意味している。さらに、実施形態は、局所の材料点レベルにおける材料の破損を最小化するための設計基準要件(design criteria requirements)に対処するために、間接的に適用することができる。さらに、最大加速度は、局所の材料点レベルにおいて材料の破損を計算および定義することと比較して、エンジニアにとって計算することがより容易である。
【0031】
図4は、現実世界のオブジェクトの最適化設計を自動的に決定するための方法440を示すフローチャートである。方法440は、コンピュータ実装され、それ自体、一つもしくは複数のプロセッサによって実行される。
【0032】
方法440は、プロセッサのメモリにおいて、現実世界のオブジェクトを表すコンピュータベースのモデルを定義するステップ441によって開始する。次いで、ステップ442では、方法440は、定義されたコンピュータベースのモデルを使用して、複数の時間ステップ(または期間)の各々について現実世界のオブジェクトの(ニュートンの平衡理論に関連する)平衡を決定する。この平衡を決定するステップ442は、複数の時間ステップに亘って現実世界のオブジェクトの(それぞれの軸に沿った、または共通軸に沿った)速度を決定する。次いで、ステップ443では、複数の時間窓の各々に関する平均加速度が決定される。方法440におけるこうした一実施形態において、時間窓は、複数の時間ステップに亘って定義される。例証するために、30秒の期間の最適化のために、ステップ442では、1秒の時間刻みに平衡が決定される、一実施形態を考慮する。こうした一実施形態において、6個の5秒時間窓が定義され得て、ステップ443では、各5秒時間窓の開始速度および終了速度を使用して、5秒時間窓の各々について平均加速度が決定される。例えば、25秒~30秒の時間窓に関する平均加速度は、25秒の速度および30秒の速度を使用して、ステップ443において計算される。続けて、ステップ444では、決定された(ステップ443において決定される)各平均加速度の感度は、決定された(ステップ442において決定される)速度の感度を使用して計算される。次いで、ステップ445では、ステップ443から決定された平均加速度は、制約条件および目的関数のうちの少なくとも一方を定義するために使用される。ステップ446では、ステップ444から決定された各平均加速度の計算された感度は、(ステップ445からの)制約条件および目的関数のうちの定義された少なくとも一方に関して、現実世界のオブジェクトを表すコンピュータベースのモデルを反復的に最適化するために使用される。反復的に最適化するステップ446により、現実世界のオブジェクトの最適化設計を表すコンピュータベースのモデルが更新される。
【0033】
方法440の実施形態において、ステップ441において定義されるコンピュータベースのモデルは、当該技術分野に既知となる任意のコンピュータベースのモデルとすることができる。例えば、一実施形態によると、コンピュータベースのモデルは、有限要素モデル、境界要素法、有限差分法、有限体積法、または離散要素法である。実施形態において、コンピュータベースのモデルによって表現される現実世界のオブジェクトは、任意のオブジェクトとすることができる。例えば、一実施形態において、現実世界のオブジェクトは、自動車、飛行機、電子機器、医療装置、もしくは装甲車両、または他の類似の保護設計/オブジェクトである。
【0034】
方法440の一実施形態によると、決定された速度を使用して、複数の時間窓のうちの所与の時間窓に関する平均加速度を決定するステップ443は、(1)所与の窓の開始点における速度、および(2)所与の時間窓の終了点における速度を識別するステップを含む。図6Bにおけるステップ602および603を参照されたい。さらに、こうした一実施形態は、(1)開始点において識別された速度、(2)終了点において識別された速度、および(3)所与の時間窓における時間の長さを使用して、所与の時間窓に関する平均加速度を計算する(ステップ443)。図5を参照されたい。方法440におけるさらに別の実施形態は、所与の設計変数に関して、開始点において識別された速度および終了点において識別された速度を使用して、所与の時間窓に関する平均加速度の感度を計算する。図11および12を参照されたい。方法440の一実施形態は、ステップ443において図5に関連して本明細書に後述される機能を使用して、平均加速度を決定する。
【0035】
別の実施形態において、ステップ445では、ユーザ定義要件が受信され、ユーザ定義要件および決定された各平均加速度は、制約条件および目的関数のうちの少なくとも一方を定義するために使用される。方法440におけるさらに別の実施形態によると、決定された各平均加速度の計算された感度と、離散加速度、構造的尺度の感度、マルチフィジックス尺度の感度のうちの少なくとも一つとは、コンピュータベースのモデルを反復的に最適化するステップ446に使用される。
【0036】
本明細書に開示される実施形態は、感度ベースの最適化のための追加の平均加速度、すなわち「連続平均加速度」を導入しており、離散時点における加速度も、目的関数または/および制約条件における設計最適化に適用される。
【0037】
図5は、離散時点における速度を使用して、時間窓に関して連続平均加速度
【0038】
【数1】
【0039】
がどのように計算されるかを例示的な一実施形態において示すプロット550であり、加速度も、最適化のために評価される。プロット550は、平均加速度505a~505eが方程式506によって与えられる、時間窓504a~504eを示している。一実施例を例証するために、時間窓505cを考慮する。時間窓505cの長さは(ti+1-t)であり、時間窓505cの開始時の速度501はv(t)であり、時間窓505cの終了時の速度502はv(ti+1)である。時間窓505cについて、平均加速度は、以下の式によって与えられる。すなわち、
【0040】
【数2】
【0041】
プロット550に例証される方法は、本明細書に後述される方法440のステップ443において実装することができる。プロット550は、加速度に関する時間離散化(time discretization)を粗くすることができ、全体的な加速度特性が依然として捕捉されることを示している。
【0042】
連続平均加速度
【0043】
【数3】
【0044】
の尺度、および可能性のある他の尺度は、実施形態において(例えば、図4に関連して本明細書に上述される方法440のステップ445において)、cとして満たさなければならない制約条件cと、最適化される(最小化または最大化される)目的関数fとから成る最適化問題を定義するために適用することができる。目的関数および制約条件の一例は、以下によって与えられる。すなわち、
【0045】
【数4】
【0046】
さらに、連続平均加速度の最適化は、(例えば、方法440のステップ446において)感度が存在する他の尺度と組み合わせることができる。例えば、前述の他の尺度は、コンピュータベースのモデル(例えば、質量、重心など)によって表現される現実世界のオブジェクトの直接の尺度、またはモデルの平衡のための構造的および/またはマルチフィジックスの解決策の結果によって決定される尺度(例えば、離散加速度、応力、変位、力、モード固有周波数、温度など)を含み得る。
【0047】
図6Aおよび6Bは、一実施形態による、最適化のための連続平均加速度
【0048】
【数5】
【0049】
601の利点をそれぞれ例証する、プロット660および661である。具体的に、プロット660および661は、時間窓604に関する開始点602における速度および終了点603における速度を厳密に使用して計算される、連続平均加速度601を例証している。
【0050】
図7Aないし7Dは、時間窓703a~703dに関する二つの速度701a~701dおよび702a~702dを使用する、平均連続加速度700a~700dを例証するプロット770a~770dである。プロット770a~770dは、速度701a~701d、および702a~702dを使用して計算される連続平均加速度700a~700dが、付加的な離散加速度時点、例えば、704a~704nに依存しないことを示している。結果として、時間窓703a~703dに関する平均連続加速度700a~dは一貫している。さらに、図7Bないし7Dは、時間窓703b~703dにおいて付加的な加速点704a~704nを選択することは、時間窓703b~703dにおける加速度ピーク、例えば、705a~705fが一貫した様態において捕捉されることを確実にすることなく、より良好な精度が得られないことを示している。それによって、所与の時間窓703a~703dに関する平均連続加速度700a~700dは、典型的に、高度に局在した振動、加速度のノイズ、および最適化のためのそれらの感度の影響を低減する。そのため、最適化反復履歴のためのより良好な収束(better convergence)が頻繁に見られ、得られた設計では、加速度に関する構造特性が改善されている。
【0051】
より具体的に、図7Aにおける平均連続加速度700aは、時間窓703a内の値、例えば、707a~707bに依存しない。図7B~7Dは、例えば、時間窓703b~703d内の付加的な離散加速点(discrete acceleration points)、例えば、704a~704nを考慮する場合、これらの追加の点704a~704nが、高ピーク加速度または低ピーク加速度(high or low peak accelerations)、例えば、705a~705fを捕捉しないであろうことを示している。それによって、開始点速度701a~701dおよび終了点速度702a~702dを使用して平均連続加速度700a~700dを決定することは、時間窓703b~703d内の離散加速度の時点704a~704nを使用することと比較して、より優れた精度および最適化の堅牢性を有する。
【0052】
図8Aは、時間882aと比較した加速度881aを示すプロット880aであり、離散加速点が点883aによって示されていて、連続平均加速度がバー884によって示されている。図8Bは、時間882bと比較した加速度881bを示すプロット880bであり、離散加速点が点883bによって示されていて、付加的な加速点が白丸885によって示されている。プロット880bは、付加的な離散加速度885を適用することによって、時間882bに亘って加速度881bを捕捉するための従来のアプローチを例証している。プロット880bにおいて、追加の加速度885は、設計最適化のための時間882bの関数として加速度881bの全ての特性を捕捉する試みにおいて、従来の感度ベースの最適化において使用することができる。比較すると、図8Aのプロット880aは、設計最適化のための時間882aにおける加速度881aの全ての特性を説明するための連続平均加速度884を含む、強化された最適化の定式化を示している。最適化の定式化において平均加速度884を用いることによって、こうした一実施形態は、時間離散化への依存度がより低くなる。これは、時点の数、および時間窓内のこれらの時点の位置が、最適化反復履歴および最終的な最適化設計にあまり影響しないためである。
【0053】
別の典型的なアプローチは、しばしば「ノイズ(noise)」と見なされる高周波成分を除去するために、付加的な離散加速度、例えば、885の数値平均化またはフィルタリング(デジタル信号処理とも呼ばれる、非特許文献14を参照)を経時的に適用することである。しかしながら、離散加速度の数値平均化またはフィルタリングは、本明細書に記載される実施形態と比較して準最適である。第一に、離散加速度の数値加速度平均化またはフィルタリングは、時間窓内の時間離散化、例えば、時間窓内の時点数およびこれらの時点の位置に、大きく依存する可能性がある。次いで、これらの値は、最適化反復履歴および最終的な最適化設計に影響を与える。これは、高度に局在した振動およびノイズを加速度が有する場合に特に当てはまる。加速度が高度に局在した振動およびノイズを有するならば、所与の時間窓に関する離散加速度の数値加速度平均化またはフィルタリングは、局所的な誤解を招く加速度値を容易に含むことができる。第二に、本明細書に記載される実施形態の数値性能は、実施形態が各時間窓703の開始点および終了点における速度値を使用するため、著しく改善することができる。比較すると、離散加速度の数値平均化またはフィルタリングは、加速度特性を捕捉するために、時間窓内の多くの離散時点を必要とする可能性があるし得る。
【0054】
多くの離散加速点を使用する代わりに、または離散時間窓に関する平均加速度の加速度積分(acceleration integral)を数値計算および/または近似計算する代わりに、実施形態は、最適化のために、時間窓、例えば、504cの開始t、例えば、50、および終了t+1、例えば、502における速度を使用して、連続平均加速度
【0055】
【数6】
【0056】
の設計応答、例えば、505cを定義する。これは、tからti+1までの時間間隔に対する加速度の解析積分が、tおよびt+1における離散速度に対して以下の関係を有するため、実行可能である。すなわち、
【0057】
【数7】
【0058】
次いで、設計応答としての連続平均加速度
【0059】
【数8】
【0060】
は、次のように計算される。すなわち、
【0061】
【数9】
【0062】
それによって、連続平均加速度
【0063】
【数10】
【0064】
の設計応答は、tからti+1までの所与の時間間隔に亘って基礎となる加速度曲線の平均加速度値を含むため、加速度ピーク挙動を捕捉する。
【0065】
一実施形態において、平均加速度は、二つの連続する時点間における基礎となる加速度曲線の平均値である。この平均加速度は、所与の時間窓に関する開始点tおよび終了点ti+1における速度と、時間窓に関するタイムスパン(timespan)Δt=ti+1-tとを使用して計算される。結果として、こうした一実施形態は、連続平均加速度を計算するために、時間窓内の値を必要としない。
【0066】
一実施形態において、平均加速度の感度は、所与の設計変数xに関して計算される。一実施形態によると、平均加速度の感度は、当業者に既知の原理に従って、数学的な反復設計最適化において適用される。
【0067】
本明細書に記載の通り、連続平均加速度は、開始点tおよび終了点ti+1における速度の関数である。それによって、一実施形態によれば、連続平均加速度の感度は、以下に示す通り、開始点tおよび終了点ti+1における速度に対する感度の関数である。すなわち、
【0068】
【数11】
【0069】
このように、感度は、全微分と数学的に等価である。非特許文献1ないし21は、多くの場合、構造力学への応用に関連付けられていて、同様に、実施形態は、構造力学の応用に使用することができる。しかしながら、実施形態は、構造力学に限定されることなく、むしろ完全な一般性を有しており、加速度を伴うあらゆる用途に適用することができることに留意されたい。加速度および速度の両方の感度は、有限差分法、半解析的アプローチ、および解析的アプローチ(semi-analytical, and analytical approaches)を使用して計算することができる。非特許文献1、2、3、15、16、および17は、過渡モデル化および動的モデル化のための感度に対処する。
【0070】
図9における最適化フローチャートは、一実施形態による感度に基づく反復設計プロセス900を示している。最適化プロセス900は、過渡構造解析(transient structural analysis)の速度を使用する連続平均加速度を含む。さらに、速度の感度が計算され、それによって連続平均加速度の感度も、プロセス900に含まれる。
【0071】
プロセス900は、ステップ901では、オブジェクトの初期設計、すなわち最適化されていない設計を示すモデルを定義するステップ、またはそうでなければ取得するステップから開始する。ステップ902では、モデルの平衡が解かれる。続けて、ステップ903では、所与の離散時点における加速度、および連続平均加速度は、所与の時間窓に関する平衡902の速度を使用して計算される。
【0072】
さらに、ステップ90では、速度感度は、設計変数に対して計算され、これらの速度感度は、設計変数に対して連続平均加速度の感度を計算するために使用される。非特許文献1、2、3、15、16、および17は、過渡モデル化および動的モデル化のための感度に対処しており、ステップ904に使用され得る感度計算方法論(sensitivity calculation methodologies)を記述している。
【0073】
続けて、ステップ905では、所与の離散時点における加速度、および連続平均加速度が適用されて、目的関数および/または制約条件の最適化設定の全体または一部を定義する。
【0074】
続けて、離散加速度および連続平均加速度の尺度、ならびに他の可能な尺度が、満たされなければならない制約条件と、最適化(最小化または最大化)される目的関数とから成る最適化問題を定義するために適用される。数理計画法(mathematical programming)907、すなわち最適化計算を使用して、最適化問題が解かれる。一実施形態によると、数理計画法は、厳密に、ユーザ定義の設計目標、尺度、およびそれらの感度の値に基づいている。さらに、一実施形態において、離散加速度および連続平均加速度の最適化は、ステップ907において感度が存在する、他の尺度906と組み合わせることができる。利用され得る尺度の例は、モデルの直接的な尺度(例えば、質量、重心など)、またはモデルの平衡に対する構造解および/またはマルチフィジックス解解決策の結果によって決定される尺度(例えば、応力、変位、力、モード固有周波数、温度など)である。
【0075】
数学、コンピュータサイエンス、およびオペレーションズリサーチ(operations research)において、数理計画法は、代替的に、数学的最適化(mathematical optimization)または単に最適化と呼ばれ、また利用可能な選択肢の幾つかのセットから(何らかの基準に関して)最良の解(best solution)を選択するプロセスである。方法900の実施形態は、当該技術分野で既知であるような、任意のこうした数理計画法を使用し得る。
【0076】
ステップ907における数理計画法の後、ステップ908では、ステップ907において見出された設計変数に基づいて、次の最適化反復のための新しい物理モデルが生成される。反復設計プロセスは、最適化反復ごとに(幾つかの目的および制約に関して)新たに改善された解を選択するプロセスである。場合によっては、ステップ907において決定される設計変数と、ステップ908において更新される物理モデル変数とは、例えば、サイズ設定最適化のための厚さ設計変数と同じであることもあるが、例えば、設計変数が物理的密度にマッピングされる相対密度である、密度トポロジー最適化(density topology optimization)と異なることもある。物理モデル変数および設計ドメイン変数が同じである例示的な一実施形態において、ステップ908における物理モデルは、単に数理計画法907の出力として得られる。そうでない場合、ステップ908では、当該技術分野で既知の通り、フィルター使用を通じて、設計変数が、物理モデル変数として解釈される。
【0077】
ステップ908において決定されたモデルが、何らかの基準、例えば、ユーザ定義の基準に収束している場合、プロセス900は、ステップ909に移行し、現実世界のオブジェクトの最終的な最適化設計を達成する。最適化が収束していない場合、新しい最適化反復が開始され、方法900は、ステップ902に戻り、(ステップ908から)更新されたモデルを用いてステップ902~908を繰り返す。最適化ワークフロー900は、最適化が収束している時に、ステップ909において最終設計を出力する。一実施形態において、目的における変化に対する収束基準(convergence criteria)が、例えば、0.1%未満であり、設計変数における変化が、例えば、0.5%未満である場合に、最適化ワークフロー900は収束される。ステップ905において、決定された連続平均加速度の設計応答、およびそれらの感度が適用されなければ、追加の最適化反復が必要とされ、および/または局所的で準最適な最小値設計が決定されることが頻繁になる。
【0078】
本明細書に記載される連続平均加速度および方法、例えば、440および900は、多くの異なる最適化シナリオに適用することができる。図10は、歩行者の頭部1001の衝突に対するボンネット1000の耐衝撃性最適化のために適用される、連続平均加速度を実証する代表的な一例である。全体的な目標は、ボンネット1000の構造レイアウトを最適化することにより、同時に、時間における変位によって測定される構造(ボンネット1000)の中への頭部1001の侵入を抑制することにより、頭部1001に対する時間における最大加速度を最小化することである。図11ないし19に関する以下の説明は、本明細書に記載される実施形態、例えば、方法440または900を使用して実装される、図10における環境の例示的な最適化を概説する。
【0079】
図11は、図10に示すボンネット1000に対する三つの異なる構造設計について、頭部1001の変位侵入1102と比較した所与の設計に関する加速度曲線1101a~1101cを示すプロット1100である。構造的なボンネット1000の設計が硬すぎるならば、加速度は、頭部1001に対して高すぎる。構造的なボンネット設計1000が軟らかすぎであり、それによって高度に可撓性であるならば、侵入変位は、頭部に対して高すぎる。それ故に、最適化は、侵入変位1102が突然の最大許容侵入変位(maximal allowable intrusion displacement)に制約され、最大加速度が最小化される、実行可能な設計をもたらすはずである。
【0080】
図10における環境の実験的最適化設定(experimental optimization setup)において、時間における離散加速度、および時間における連続平均加速度は、いわゆるMIN-MAX定式化(MIN-MAX formulation)(非特許文献18および19を参照)を使用して定式化され、目的関数は、I個の離散加速度a(t)と、I-1個の連続平均加速度
【0081】
【数12】
【0082】
とから成る。この定式化を使用することは、図12におけるプロット1220によって示される通り、ユーザが離散加速度a(t)および連続平均加速度
【0083】
【数13】
【0084】
の最大値を同時に最小化することを可能にする。図12は、設計反復が、目標最大加速度(targeted maximum acceleration)が最小化され、目標最大許容侵入1221が破られない、最適化設計を決定し得るように、付加的な離散設計応答点(additional discrete design response points)1222を含めることを例証している。変位制約u(t)は、構造の中への頭部1001の最大許容侵入1221を超えないことを保証するu によって制約される。設計変数x∈{x}は、ベクトル{x}が全ての設計変数を含む、上限xk,maxおよび下限xk,minを有し、Kは設計変数の数である。構造的非線形平衡(structural non-linear equilibrium)(非特許文献20を参照)が満たされるため、残差{R}は、全ての離散時間tに対してゼロである。それ故に、最適化の定式化は、以下の通りに記述される。すなわち、
【0085】
【数14】
【0086】
上記のMIN-MAX定式化は、非特許文献18および19に示す通りに定式化された境界を使用して、目的関数が一連の制約条件に再モデル化される、標準的な最適化問題として解かれる。ノンパラメトリック設計変数(non-parametric design variables){x}は、非特許文献20および21を使用して実装される、反復的な最適化の設計ワークフロー、例えば、900を使用して更新され、感度ベースの最適化方法は、数理計画法を使用して適用される。感度は、随伴感度法(adjoint sensitivity method)(非特許文献15、16、および17を参照)を使用して計算され、非特許文献20のカーネル(kernel)に実装される。
【0087】
構造的平衡{R}の有限要素モデルについては、大形変形、非線形構成材料、および接触などの、非線形性を有限要素モデルに含めることができ、非特許文献20の有限要素解法に統合される。
【0088】
図13A~Eは、実施形態を使用して実装される図10における頭部1001およびボンネット1000の環境の最適化をさらに例証している。図13Aは、所与の初期速度10m/秒に対する、(剛体球状質量1331によって表現される)歩行者の頭部1001の衝撃に関して、(プレート1330によって表現される)ボンネット1000の設計を最適化するための代表的な簡略化された例である、簡略化された平坦なプレート1330および剛体球状質量(rigid spherical mass)1331モデルを描写している。連続有限モデル1332(非特許文献20における要素タイプC3D8)は、図13Bに示されている。連続有限モデル1332は、境界条件および節点を含み、(頭部の衝撃に対する接触面の反対側にある)下面における節点の位置は、節点設計変数、例えば、図13Cに示す1333である。材料モデル化は弾塑性であり、プレート1330に関して図13Dに示すプロット1334によって与えられ、頭部1331は、剛体要素(rigid elements)を使用してモデル化される。頭部1331の中心における加速度は、ノンパラメトリック最適化のために適用される。標準的なノンパラメトリック形状最適化への概論は、非特許文献21に記載されている。図13Eは、0.0秒(1335a)、0.006秒(1335b)、0.008秒(1335c)、0.011秒(1335d)、および0.025秒(1335e)における、初期プレート1330(すなわち、反復的な最適化のプロセスの前)の頭部1331の衝撃変形(impact deformation)を示す描写1335a~1335eである。
【0089】
解析的に「理想的な」理論上の一定加速度は、図14Aないし14C、および図15Aないし15Cに示されている。解析的に「理想的な(ideal)」理論上の一定加速度は、運動エネルギーが機械的作業によって吸収されるため、加速度が時間的に一定であると仮定して、所与の変位侵入制約(例えば、非特許文献2を参照)に対して計算される。この解析的に「理想的な」理論上の一定加速度は、本明細書において、実施形態を使用して決定される最適化の定式化および対応する最適化設計の性能を例証するための参照として使用される。
【0090】
図14Aないし14Cは、実施形態の利点を説明するために試験された最大加速度を最小化するために、ボンネット1000および頭部1001の衝撃の設計を最適化するための、三つの最適化設定(optimization setup)を例証している。三つの最適化設定は、以下のプロットで定義された。すなわち、1440:加速点、I=25。1442:付加的な加速点、I=100。および、(本明細書に記載される実施形態による)平均加速度および加速点を含む1443、I=25。これらの三つの異なる最適化設定に関する結果は、図14Aないし14C、図15Aないし15C、および図16Aないし16Cに示されている。
【0091】
具体的に、プロット1440、1442、および1443は、本明細書に記載される反復的な最適化の方法によって最大加速度を最小化するプロセスを例証している。プロット1440、1442、および1443は、各設計反復1445a~1445c当たりの最大加速度1444a~1444cを描写しており、最適化反復数に基づく設計収束(design convergence)の速度に関して、付加的な加速点(図14Bのプロット1442)を単に追加することと、最適化式において平均加速度(図14Cのプロット1443)を使用することとの間の比較の効果を例証している。図14Aは、I=25の加速点を使用するモデル1440の最大加速度1446aを描写しており、このモデルは、幾つかの高い振動を含む反復履歴1448aを示し、最大加速度1446aをモデルに関する理想的な加速度1447aに収束させるのに60回の設計反復1449aを要する。図14Bは、プロット1442に付加的な加速点を追加すると、最適化反復履歴1448bの振動が減少するが、最大加速度1446bが理想的な加速度1447bに収束するには、プロット1443と同様の数の設計反復1449bを必要とすることを例証している。
【0092】
しかしながら、図14Cは、プロット1443において、最適化式中に平均加速度を含むことが、反復履歴1448cにおける振動を著しく減少させるが、その一方で、格段により少ない数の設計反復1449cを必要とすることを例証している。さらに、これは、格段により速い設計収束につながり、最大加速度1446cは、より少数の設計反復1449c内で理想的な加速度1447cに収束する。
【0093】
要するに、図14Aないし14Cは、改善された最適化反復履歴が、改善されたシミュレーションにつながることを例証している。図14Aないし14Bの最適化反復履歴を図14Cの最適化反復履歴と比較すると、連続平均加速度を含むアプローチは、最適化反復中の加速度において、より少ないおよび/またはより小さい振動を有する最適化反復履歴をもたらし、より少ないおよび/または同じ数の最適化反復と、それによって最適化設計を達成するためのより速い収束とをもたらすことは、明らかである。
【0094】
図15Aないし15Cは、プロット1550a~1550cにおける時間に対して、およびプロット1551a~1551cの変位に対して、モデルの加速度をプロットすることによって、設計最適化に平均加速度を含めることの利点をさらに例証している。図15Aないし15Cは、変位と同様に秒単位における設計収束速度に関して、加速点の数を増加させることと、単に付加的な加速点を追加する代わりに平均加速度を使用することとの間における効果を例証している。図15Aないし15Cに描写した結果を達成するために利用した三つの最適化設定は、以下のプロットで定義された。すなわち、1550aおよび1551a:加速点、I=25。1550bおよび1551b:付加的な加速点、I=100。および、(本明細書に記載される実施形態による)平均加速度および加速点を含む1550cおよび1551c、I=25。
【0095】
具体的に、プロット1550aおよび1551aは、それぞれ時間および変位における最大加速度を描写し、加速点I=25は、それぞれ離散時点1555aおよび1559aによって表現される。プロット1550aおよび1551aは、理想的な設計1554aおよび1558aと比較して、初期加速度1552aおよび1556a、ならびに最適化された加速度1553aおよび1557aを示しており、最適化された加速度1553aおよび1557aは、高度に局在した最小値最適化1561a~1561bの領域に固着し、理想的な設計1554aおよび1558aに達することはない。さらに、最適化設計1557aは、最大許容侵入1560aに達することはない。
【0096】
I=100の1555bおよび1559bへのさらなる加速点の追加は、プロット1550bおよび1551bに例証されている。プロット1550bおよび1551bは、理想的な設計1554bおよび1558bと比較して、初期加速度1552bおよび1556b、ならびに最適化された加速度1553bおよび1557bを示している。付加的な加速点1555bおよび1559bの追加は、モデルが理想的な設計1554bおよび1558bに達するのを支援するが、最適化設計1553bおよび1557bは、依然として、高度に局在した最小値最適化1561c~1561dの領域に固着している。さらに、最適化設計1557bは、最大許容侵入1560bに達することはない。
【0097】
しかしながら、図15Cにおけるプロット1550cおよび1551cは、平均加速度を最適化式中に含むことが、加速度に関して理想的な最適化設計1553cおよび1557cをもたらすことを例証している。プロット1550cおよび1551cは、理想的な設計1554cおよび1558cと比較して、初期加速度1552cおよび1556c、ならびに最適化された加速度1553cおよび1557cを示している。さらに、プロット1550aおよび1551aと同じ数の加速点1555cおよび1559cを使用しているが、平均加速度は使用されておらず、最適化設計が高度に局在した最小値1561a~1561bの領域に固着しており、最適化設計1553cおよび1557cは、理想的な設計1554cおよび1558cと迅速に収束し、1561a~1561dなどの高度に局在した最小値に固着することはない。
【0098】
要するに、図15Aおよび15Bにおける最適化設計の加速度を、図15Cの最適化設計の加速度と比較すると、連続平均加速度を含むアプローチは、加速度に関して、優れた最適化された設計1553cおよび1557cをもたらし、最適化設計1553cおよび1557cは、高度に局在した最小値1561a~dに固着することはないことが分かる。それによって、図15Cにおける加速度の結果は、解析的に「理想的な」一定加速度1554a~1554cにはるかに近い。さらに、プロット1551cは、侵入変位制約条件(intrusion displacement constraint)1560cを示しているが、プロット1551a~bは、侵入変位制約条件を有していない(設計は制約条件1560a~1560bに達していない)。それによって、連続平均加速度を使用する最適化設計のための設計1553cおよび1557cは、図10の頭部衝撃事象に対してより優れたエネルギー吸収特性を有している。
【0099】
図16Aないし16Cは、実施形態を適用することの利点、すなわち速度を使用して平均加速度を計算すること、および最適化式中に平均加速度を含むことの利点をさらに例証している。プロット1660a~1660cは、以下の通りに定義されるそれぞれの最適化設定を使用して決定される、最適化設計に対する節点ノンパラメトリック形状を例証している。すなわち、1660a:加速点、I=25。1660b:付加的な加速点、I=100。および、1660c:(本明細書に記載される実施形態による)平均加速度および加速点を含む1660c、I=25。
【0100】
最適化設計の材料レイアウトの改善は、最適化設計の改善につながる。図15Aおよび15Bからの加速度および変位の設計応答に基づき、図16Aおよび16Bは、加速点I=25およびI=100をそれぞれ使用して、最適化設計の節点ノンパラメトリック形状を例証している。図16Aおよび16Bに示す通り、これらの設計は、頭部がプレートに衝突している位置のすぐ下に、高度に局在した塊状材料の設計割当て(lumped material design allocation)1661a~1661bを有しており、これは高度に局在した最小値である。しかしながら、図16Cは、平均加速度を含む最適化設計の節点ノンパラメトリック形状1660cを例証している。プロット1660cは、頭部がプレートに衝突している位置1661cに割り当てられた塊状材料の設計を有しておらず、そのため全体的に優れた設計である。結果として、図14C図15C、および図16Cは、頭部衝撃に対する過渡最適化の定式化に連続平均加速度を含むアプローチが、最適化履歴中に多くの極小値(local minima)を回避し、加速度および侵入などの耐衝撃性特性に関して、優れた設計をもたらすことを示している。それによって、本明細書に記載される本発明のアプローチは、加速度および対応する加速度感度における物理的および数値的なノイズ(より高次で高度に局在した振動)の最適化に対する影響を低減することができる。
【0101】
図17Aは、頭部衝撃の最適化のための産業用ボンネット1770を示しており、ボンネットは、シェル要素(非特許文献20の要素タイプS4およびS3R)から成る。材料モデル化は弾塑性であり、プレートボンネット1770について、図17Bに示すプロット1771によって与えられる。二つのノンパラメトリック最適化のタイプが、図17Cに示す通りに適用される。第一のノンパラメトリック最適化のタイプは、(例えば、調整されたブランクを使用して製造される)サイズ設定シェルの厚さ最適化(sizing shell thickness optimization)1772aを使用し、各有限要素(tおよびt)の厚さは、設計変数である。第二のノンパラメトリック最適化のタイプは、(例えば、スタンピングを使用して製造される)ビードシェル節点最適化(bead shell nodal optimization)1772bを使用し、有限要素モデル内の節点の位置は、設計変数である。非特許文献21は、標準的なノンパラメトリックサイズ設定およびビード最適化への概論を記載している。
【0102】
図17Dは、初期プレート1770の頭部1773の衝撃変形を示す描写1772a~1772gであり、頭部の中心(I=80)における加速度および連続平均加速度は、時間0.0秒(1772a)、0.001秒(1772b)、0.003秒(1772c)、0.006秒(1772d)、0.008秒(1772e)、0.011秒(1772f)、および0.020秒(1772g)において、厚さサイズ設定1772aおよび節点ビード最適化1772bの両方に適用される。
【0103】
図18は、サイズ設定1880およびビード最適化1881のそれぞれについて、最大加速度を最小化する時の最適化反復履歴を示している。最適化タイプ1880および1881の両方について、安定した最適化反復履歴が示されている。プロット1880a(シェルサイズ設定厚さ最適化)および1881a(ビードシェル節点最適化)は、各最適化設計反復1883における最大加速度1882を示している。さらに、図18は、最適化された加速度1884を、時間(プロット1880bおよび1881b)および変位(プロット1880cおよび1881c)の両方の関数として示している。最適化タイプ1880b~1880cおよび1881b~1881cの両方について最適化された加速度1884は、非特許文献2におけるアプローチを使用して計算される「理想的な」理論上の一定加速度1885に非常に近い。さらに、初期設計1886については侵入変位制約条件が違反されているが、制約条件は後で最適化反復中に満たされ、最終的な最適化設計1887の両方に対して有効になっている。それによって、設計1880および1881の両方について連続平均加速度を含むアプローチは、有効な侵入変位制約条件1888を有しており、そのため、頭部衝撃事象に対して有益なエネルギー吸収特性を有する。
【0104】
サイズ設定要素の厚さ設計変数に対する最適化設計1990は、図19Aに示されており、ビード節点設計変数に対する最適化設計1991は、図19Bに示されている。それ故に、感度最適化における連続平均加速度に対するアプローチは、異なる設計変数タイプに対して良好に機能する。プレート1990および1991は、頭部がプレートに衝突している位置1992に割り当てられる塊状材料設計を有しておらず、それによって、既存の方法を使用して達成することができる設計と比較して、全体的に優れた設計をもたらす。
【0105】
実施形態は、最適化問題における、速度を使用する連続平均加速度の計算および包含U(calculation and inclusion)、ならびに感度および数理計画法に基づく反復設計プロセスを使用するこれらの問題の解決によって、最適化定式化に重要な利点を提供する。
【0106】
例えば、一つの利点は、ユーザインターフェースにおける前処理および後処理を容易にすることである。平均加速度に対する設計応答は、平均加速度が計算される時間窓に関する、開始時点および終了時点においてユーザによってのみ定義される。これは、ユーザによる前処理の考慮事項がより少なくなる、すなわち平均加速度を決定するために所与の時間窓においてモデル化されるシミュレーションのための加速点の数に関するユーザによる考慮事項がより少なくなること、および最適化された結果の後処理がより容易になることを意味する。
【0107】
別の例は、改善されたシミュレーションである。これは、より優れた、または同様の最適化反復履歴によって示される、すなわち最適化反復に対する振動がより少なくなる。さらに、収束設計を達成するための最適化の反復数が少ないか、または最適化の反復数が同じであること、収束が速くなり、および計算資源の使用が少なくなることを意味する。さらになおも、速度およびその感度は、平均加速度が計算される時間窓に関する開始時点および終了時点においてのみ計算される必要がある。これは、設計応答値および感度を計算するために使用される計算用ストレージ(computational storage)および実行時間が少なくなること、最適化は、加速度平均が適用される中で加速度が計算されるシミュレーションの離散時点数の数と、それらの時間における位置とによってあまり影響されないことを意味する。それ故に、時間窓内の時点の数およびこれらの時点の位置としての時間離散化は、最適化の反復履歴および最終的な最適化設計にあまり影響を及ぼさない。
【0108】
別の例は、改善された最適化設計である。最適化履歴中に極小値を避けることは、平均加速度に対する目的関数値が改善され、平均加速度の制約条件の実施が容易になることを意味する。さらに、改善された最適化設計は、耐衝撃性特性に関して、優れたまたは同様の設計をもたらし、これは、最終的な最適化設計の全体的な加速度が低下し、および最終的な最適化設計の侵入要件がより適切に充足されることを意味する。
【0109】
図20は、本明細書に記載される任意の様々な実施形態による、所与の時間窓の開始点および終了点における速度を使用して、コンピュータベースのモデルの連続平均加速度を決定するために使用され得る、コンピュータベースのシステム2020を示す簡略化されたブロック図である。システム2020は、バス2023を備える。バス2023は、システム2020の様々な構成要素間の相互接続として機能する。バス2023に接続されているのは、キーボード、マウス、ディスプレイ、スピーカなどの、様々な入出力デバイスをシステム2020に接続するための入出力デバイスインターフェース2026である。中央処理装置(CPU)2022は、バス2023に接続されていて、実施形態を実装するコンピュータ命令の実行を提供する。メモリ2025は、図4および9に関してそれぞれ先に説明した方法440および900などの、本明細書に記載される実施形態を実装するコンピュータ命令を実行するために使用されるデータ用の揮発性ストレージを提供する。ストレージ2024は、オペレーティングシステム(図示されない)および実施形態の構成などの、ソフトウェア命令のための不揮発性ストレージを提供する。また、システム2020は、ワイドエリアネットワーク(WAN)およびローカルエリアネットワーク(LAN)を含む、当該技術分野で既知となる任意の様々なネットワークに接続するためのネットワークインターフェース2021を備える。
【0110】
本明細書に記載される例示的な実施形態は、多くの異なる方法において実施され得ると理解されるべきである。幾つかの実施態様では、本明細書に記載される様々な方法および機械は、各々、コンピュータシステム2020のような物理的、仮想的、もしくはハイブリッドな汎用コンピュータ、または図21に関連して本明細書に以下に記載される、コンピュータ環境2120のようなコンピュータネットワーク環境によって実装されてもよい。コンピュータシステム2020は、例えば、CPU2022による実行のために、メモリ2025または不揮発性ストレージ2024の何れかにソフトウェア命令をロードすることによって、本明細書に記載される方法を実行する機械に変換されてもよい。当業者であれば、システム2020およびその様々な構成要素が、本明細書に記載される任意の実施形態または実施形態の組み合わせを実行するように構成され得ることをさらに理解するべきである。さらに、システム2020は、システム2020に対して内部または外部に、動作可能に連結されたハードウェア、ソフトウェア、およびファームウェアモジュールの任意の組み合わせを利用して、本明細書に記載される様々な実施形態を実施し得る。さらに、システム2020は、本明細書に記載される通り、装置を制御して物理的なオブジェクトを作り出すように、製造装置に通信可能に連結されてもよいし、または製造装置内に埋め込まれてもよい。
【0111】
図21は、本発明の一実施形態が実施され得る、コンピュータネットワーク環境2120を例証している。コンピュータネットワーク環境2120において、サーバ2121は、通信ネットワーク2122を介してクライアント2123a~2123nにリンクされる。環境2120は、クライアント2123a~2123nが、単独で、またはサーバ2121との組み合わせで、本明細書に記載される方法の何れかを実行することを可能にするために使用され得る。非限定的な例として、コンピュータネットワーク環境2120は、クラウドコンピューティングの実施形態、およびサービスとしてのソフトウェア(SAAS)の実施形態などを提供する。
【0112】
実施形態またはその態様は、ハードウェア、ファームウェア、またはソフトウェアの形態で実装され得る。ソフトウェアで実施される場合、ソフトウェアは、プロセッサがソフトウェアまたはその命令のサブセットをロードすることを可能にするように構成される、任意の非一時的コンピュータ可読媒体上に格納され得る。その後、プロセッサは、命令を実行して、本明細書に記載される通りの様態において動作するか、または装置を動作させるように構成される。
【0113】
さらに、ファームウェア、ソフトウェア、ルーチン、または命令は、データプロセッサの特定の動作および/または機能を実行するものとして、本明細書に記載されることがある。しかしながら、本明細書に含まれるこうした記載は、単に便宜のためであり、こうした動作は、実際には、ファームウェア、ソフトウェア、ルーチン、命令などを実行コンピューティングデバイス、プロセッサ、コントローラ、または他のデバイスから生じることは、理解されるべきである。
【0114】
フロー図、ブロック図、およびネットワーク図は、より多い要素、もしくはより少ない要素を含み、または異なるように配置され、または異なるように表現され得ると理解されるべきである。しかしながら、特定の実装は、実施形態の実行を例証するブロック図およびネットワーク図、ならびにブロック図およびネットワーク図の数を、特定の方法において実装するように指示し得るとさらに理解されるべきである。
【0115】
したがって、さらなる実施形態はまた、様々なコンピュータアーキテクチャ、物理的コンピュータ、仮想的コンピュータ、クラウドコンピュータ、および/またはそれらの幾つかの組み合わせにおいて実装され得て、それ故に、本明細書に記載されるデータプロセッサは、例示のみを目的として意図されており、実施形態の限定として意図されていない。
【0116】
例示的な実施形態が特に示され、説明されてきたが、当業者であれば、添付の請求項によって包含される実施形態の範囲から逸脱することなく、形態および細部における様々な変更が実施形態に行われ得ると理解されるであろう。
【0117】
本明細書に引用される全ての特許、公開出願、および非特許文献の教示は、参照によってその全体が本明細書に組み込まれる。
図1
図2A
図2B
図3
図4
図5
図6A
図6B
図7A
図7B
図7C
図7D
図8A
図8B
図9
図10
図11
図12
図13A
図13B
図13C
図13D
図13E
図14A
図14B
図14C
図15A
図15B
図15C
図16A
図16B
図16C
図17A
図17B
図17C
図17D
図18
図19A
図19B
図20
図21