(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024096045
(43)【公開日】2024-07-11
(54)【発明の名称】高効率工程のための低い成形前のカール特性を持つ二次電池用パウチフィルム及びその製造方法、それを用いた二次電池及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
H01M 50/105 20210101AFI20240704BHJP
B32B 7/022 20190101ALI20240704BHJP
H01M 50/131 20210101ALI20240704BHJP
【FI】
H01M50/105
B32B7/022
H01M50/131
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023219317
(22)【出願日】2023-12-26
(31)【優先権主張番号】10-2022-0190566
(32)【優先日】2022-12-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(71)【出願人】
【識別番号】523422299
【氏名又は名称】ユルチョン・ケミカル・カンパニー・リミテッド
【氏名又は名称原語表記】YOULCHON CHEMICAL CO., LTD.
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【弁理士】
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100221501
【弁理士】
【氏名又は名称】式見 真行
(74)【代理人】
【識別番号】100197583
【弁理士】
【氏名又は名称】高岡 健
(72)【発明者】
【氏名】ソン,ノクチョン
(72)【発明者】
【氏名】ハン,ヒシク
(72)【発明者】
【氏名】キム,ヒフン
(72)【発明者】
【氏名】シン,ソンチョル
(72)【発明者】
【氏名】ソン,ムンギュ
(72)【発明者】
【氏名】チャン,ジウン
(72)【発明者】
【氏名】キム,ユハン
【テーマコード(参考)】
4F100
5H011
【Fターム(参考)】
4F100AB10B
4F100AK07C
4F100AK42A
4F100AN00C
4F100BA03
4F100BA07
4F100CB03C
4F100GB15
4F100GB32
4F100GB41
4F100JD02B
4F100JK07
4F100JK08
4F100JL04
4F100JL12C
5H011AA09
5H011CC02
5H011CC06
5H011CC10
5H011KK00
(57)【要約】 (修正有)
【課題】高成形工程の際に発生するカーリング(Curling)現象を低下させることができる、二次電池用パウチフィルムとその製造方法、及び当該パウチフィルムで外装された二次電池とその製造方法を提供する。
【解決手段】二次電池用パウチフィルムであって、少なくとも外層、バリア層、シーラント層が順次積層されてなり、二次電池用パウチフィルムの成形前のカール(curl)の数値が0.8以下であることを特徴とする二次電池用パウチフィルムである。
【選択図】
図2a
【特許請求の範囲】
【請求項1】
二次電池用パウチフィルムであって、
少なくとも外層、バリア層、シーラント層が順次積層されてなり、
下記の測定方法による二次電池用パウチフィルムの成形前のカール(curl)のMD和/TD和の数値が0.8以下であり、
前記シーラント層はゴム成分を含むことを特徴とする二次電池用パウチフィルム。
[成形前のカール(curl)の測定方法]
・二次電池用パウチフィルムの試片を15cm×15cmの大きさで四角形状に作製し、当該試片を平らな固定台の上に載置して平坦にテープで固定する。
・固定された試片の中央点を通るように15cm長さのX字状切り込みを入れ、中央点を挟んでMD(縦方向)側の二箇所及びTD(横方向)側の二箇所から浮き上がった(カールした)高さを測定する。
・測定されたMD側の二箇所の数値の和をTD側の二箇所の数値の和で除した値を成形前のカール(curl)のMD和/TD和と定義する。
【請求項2】
当該二次電池用パウチフィルムのMD伸び率が99%以上であることを特徴とする請求項1に記載の二次電池用パウチフィルム。
【請求項3】
当該二次電池用パウチフィルムのTD伸び率が96%以上であることを特徴とする請求項1に記載の二次電池用パウチフィルム。
【請求項4】
当該二次電池用パウチフィルムのMD弾性率をTD弾性率で除したMD弾性率/TD弾性率が1.2~1.23であることを特徴とする請求項1に記載の二次電池用パウチフィルム。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか一項に記載の二次電池用パウチフィルムで外装されたことを特徴とする二次電池。
【請求項6】
当該二次電池は電気自動車用またはエネルギー貯蔵装置用であることを特徴とする請求項5に記載の二次電池。
【請求項7】
二次電池の製造方法であって、
請求項1~4のいずれか一項に記載の二次電池用パウチフィルムで二次電池を外装する段階;
を含むことを特徴とする二次電池の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書は、高効率工程のための低い成形前のカール(curl)特性を持つ二次電池用パウチフィルムとその製造方法、それを用いた二次電池及びその製造方法に関し、より詳しくは、伸び率や弾性率、成形前のカール(curl)を調節して高成形工程の際に発生するカーリング(Curling)現象を低下させることで二次電池用パウチフィルムを用いた二次電池の製造工程の効率を向上させることができ、これにより特に中大型電池の製造に適合した二次電池用パウチフィルムとその製造方法、それを用いた二次電池及びその製造方法に関する。
【0002】
[本発明を支援した国家研究開発事業]
[課題固有番号]1415181922
[課題番号]20022450
[部署名]産業通商資源部
[課題管理(専門)機関名[韓国産業技術評価管理院]
[研究事業名]素材部品パッケージ型(最高企業)
[研究課題名]2倍以上の高接着強度(60℃)の具現が可能な次世代二次電池パウチの開発
[寄与率]1/1
[課題遂行機関名]栗村化学(株)
[研究期間]2022-09-01~2022-12-31
[課題固有番号]1415185612
[課題番号]20022450
[部署名]産業通商資源部
[課題管理(専門)機関名]韓国産業技術評価管理院
[研究事業名]素材部品パッケージ型(最高企業)
[研究課題名]2倍以上の高接着強度(60℃)の具現が可能な次世代二次電池パウチの開発
[寄与率]1/1
[課題遂行機関名]栗村化学(株)
[研究期間]2023-01-01~2023-12-31
【背景技術】
【0003】
リチウム二次電池(LiB)は、高いエネルギー密度と優れた出力を有するなどの多様な長所を基に多くのアプリケーションに適用されている。
二次電池用パウチフィルムは、かかる二次電池の電極群と電解液を取り囲む多層構造の包装用積層フィルムであって、電池の安定性、寿命特性、そして作動持続力を決める核心の部品素材であり、機械的柔軟性及び強度、高い酸素/水蒸気バリア性、高い熱的シーリング強度、電解液に対する耐化学性、電気絶縁性、高温安定性などが要求される。
二次電池用パウチフィルムは、通常、大別して外層/バリア層/内側シーラント層からなる。
外層又は最外層は、ナイロンやナイロンとPET(ポリエチレンテレフタレート)との混合素材、OPP(延伸ポリプロピレン)、ポリエチレンなどから構成されている。かかる外層又は最外層の要求特性としては、耐熱性、耐ピンホール性、耐化学性、成形性、及び絶縁性などが挙げられる。
バリア層は、水蒸気やその他の気体に対するバリア性と共に成形性が要求される。このような側面から、バリア層には成形可能な金属、例えば、アルミニウム(Al)、鉄(Fe)、銅(Cu)、ニッケル(Ni)などが用いられ、近年、アルミニウムが最も多く用いられている。
内層のシーラント層は、熱接着性、成形性と共に電解液と接触する層である点から、耐電解液性、絶縁抵抗性などが要求される。
【0004】
一方、リチウム二次電池の適用分野が小型から自動車用やESS用の中大型へと拡大されるにつれて、二次電池用パウチフィルムもまた、中大型に適合した特性を持つことが要求されており、特に安全性が高く且つ高成形特性を持つことが必要になってきた。
関連して、自動車用のリチウム二次電池(LiB)のセルの大きさや二次電池パウチの成形深さは二次電池の容量に大きく影響を及ぼす因子である。セルの大きさの場合、その大きさが一般の小型用に比べて大きく高い成形性が要求され、また二次電池パウチの成形深さはセルの容量を決めることから、深さが深く成形(forming)されるほど次世代二次電池の要求容量である700Wh/Lに至るための必須条件であると言える。
【0005】
しかしながら、このような高成形工程によって製造された二次電池用パウチフィルムではカーリング(Curling)現象が多発しており、かかるカーリング(Curling)現象は二次電池の製造工程の効率を低下させる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の例示的な具現例では、一側面において、高成形工程の際に発生するカーリング(Curling)現象を低下させることができる、二次電池用パウチフィルムとその製造方法、及び当該パウチフィルムで外装された二次電池とその製造方法を提供することを目的とする。
【0007】
本発明の例示的な具現例では、他の一側面において、前述したように高成形工程の際に発生するカーリング(Curling)現象を低下させることにより、二次電池用パウチフィルムを用いた二次電池の製造工程の効率、特に自動化連続工程においてエアー吸引機が用いられる場合の二次電池の製造工程の効率を向上させることができる、二次電池用パウチフィルムとその製造方法、及び当該パウチフィルムで外装された二次電池とその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の例示的な具現例では、二次電池用パウチフィルムであって、少なくとも外層、バリア層、シーラント層が順次積層されてなり、下記の測定方法による二次電池用パウチフィルムの成形前のカール(curl)の数値が0.8以下であり、前記シーラント層はゴム成分を含む二次電池用パウチフィルムを提供する。
[成形前のカール(curl)の測定方法]
・二次電池用パウチフィルムの試片を15cm×15cmの大きさで四角形状に作製し、当該試片を平らな固定台の上に載置して平坦にテープで固定する。
・固定された試片の中央点を通るように15cm長さのX字状切り込みを入れ、中央点を挟んでMD(縦方向)側の二箇所及びTD(横方向)側の二箇所から浮き上がった(カールした)高さを測定する。
・測定されたMD側の二箇所の数値の和をTD側の二箇所の数値の和で除した値を成形前のカール(curl)のMD和/TD和と定義する。
【0009】
例示的な一具現例において、前記二次電池用パウチフィルムのMD伸び率が99%以上であってよい。
【0010】
例示的な一具現例において、前記二次電池用パウチフィルムのTD伸び率が96%以上であってよい。
【0011】
例示的な一具現例において、前記二次電池用パウチフィルムのMD弾性率をTD弾性率で除したMD弾性率/TD弾性率が1.2~1.23であってよい。
【0012】
本発明の例示的な具現例では、さらに、二次電池用パウチフィルムであって、少なくとも外層、バリア層、シーラント層が順次積層されてなり、前記測定方法による二次電池用パウチフィルムの成形前のカール(curl)の数値が0.8以下になるようにして成形後のカーリング現象を抑制し、前記シーラント層はゴム成分を含む二次電池用パウチフィルムの製造方法を提供する。
【0013】
本発明の例示的な具現例では、さらに、前述した二次電池用パウチフィルムで外装された二次電池を提供する。
【0014】
例示的な一具現例において、前記二次電池は、電気自動車用またはエネルギー貯蔵装置用であってよい。
【0015】
また、本発明の例示的な具現例では、二次電池の製造方法であって、前述した二次電池用パウチフィルムで二次電池を外装する段階;を含む二次電池の製造方法を提供する。
【発明の効果】
【0016】
本発明の例示的な具現例では、二次電池用パウチフィルムの成形前のカール(curl)を調節し、さらには伸び率及び/または弾性率をさらに調節して、高成形工程の際に伴われるカーリング(Curling)現象を低下させることで二次電池の製造工程の効率を向上させることができる。このような二次電池用パウチフィルムは、電気自動車やエネルギー貯蔵装置などの中大型の二次電池パウチの製造工程に特に有用である。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本発明の例示的な具現例において成形前のカール(curl)を評価する方法を示す写真である。
【
図2a】本発明の実施例1の成形後のカーリング(Curling)を評価する様子を示す写真である。
【
図2b】比較例1(
図2b)の成形後のカーリング(Curling)を評価する様子を示す写真である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
用語の定義
本明細書において二次電池用パウチフィルムが所定の層を含んでなるとしているが、必ずしも当該層だけで構成されることではなく、更なる層が含まれてよい。
本明細書において特定の層の「上」に形成されるとは、当該層に直接形成されることだけではなく、更なる他の層を介して形成されることも含む。
【0019】
例示的な具現例の説明
以下、本発明の例示的な具現例を詳述する。
二次電池用パウチフィルムの高成形性は中大型の電池には必ず必要な特性であるが、高成形性に伴って成形後の二次電池用パウチフィルムにおいてその端部が反り上がる、いわゆるカーリング(Curling)現象が非常に深刻に現われる。このようなカーリング(Curling)現象は二次電池の製造工程の効率を低下させる。特に、二次電池の製造過程では自動化連続工程を経ており、この工程でエアー吸引機が頻繁に使用されるが、この際にカールした部分がエアー吸引機側にさらに反り上がるようになり、これは工程の効率をさらに低下させる要因になる。
【0020】
したがって、高成形工程の際に発生するカーリング(Curling)現象を低下させることが必要であるが、成形を終えてからのカーリング(Curling)に影響を与える因子は工程条件や各層の素材、物性などと非常に多様であって成形後のカーリング(Curling)を抑制することは難しい。このため、二次電池用パウチフィルムの製造の際に不可避に成形後のカーリング(Curling)現象が伴われている。
【0021】
本発明者らは、二次電池用パウチフィルムの成形前のカール(curl)を調節することで成形後のカーリング(Curling)現象を容易に抑制することができることを見出し鋭意研究を重ねて本発明に至った。
【0022】
さらには、伸び率や弾性率をさらに調節することによって成形後のカーリング(Curling)を抑制することができることを見出した。
【0023】
図1は、本発明の例示的な具現例において成形前のカール(curl)を評価する方法を示す写真である。
【0024】
本発明の例示的な具現例では、二次電池用パウチフィルムであって、少なくとも外層、バリア層、シーラント層が順次積層されてなり、下記の測定方法による二次電池用パウチフィルムの成形前のカール(curl)の数値が0.8以下である二次電池用パウチフィルムを提供する。
[成形前のカール(curl)の測定方法]
二次電池用パウチフィルムの試片を15cm×15cmの大きさで四角形状に作製し、
図1に示されたように当該試片を平らな固定台の上に載置して平坦にテープで固定する。
図1に示されたように、固定された試片の中央点を通るように15cm長さのX字状切り込みを入れ、中央点を挟んでMD(縦方向)側の二箇所(
図1中の1番及び2番の表示位置)及びTD(横方向)側の二箇所(
図1中の3番及び4番の表示位置)のそれぞれにおいて上方に浮き上がった高さ、すなわち、カールした高さを測定する。
測定されたMD側の二箇所の数値の和をTD側の二箇所の数値の和で除した値を成形前のカール(curl)のMD和/TD和と定義する。
【0025】
例示的な一具現例において、成形前のカール(curl)の数値は、0.8以下、0.78以下、0.76以下、0.74以下、0.72以下、0.7以下、0.68以下、0.66以下、0.64以下、0.62以下、0.6以下、0.58以下、0.56以下、0.54以下、0.52以下または0.5であってよい。
【0026】
例示的な一具現例において、前記二次電池用パウチフィルムのMD伸び率が99%以上、103%以上、106%以上であってよい。
【0027】
例示的な一具現例において、前記二次電池用パウチフィルムのTD伸び率が96%以上であってよい。
【0028】
例示的な一具現例において、前記二次電池用パウチフィルムのMD弾性率をTD弾性率で除したMD弾性率/TD弾性率が1.2~1.23であってよい。
【0029】
例示的な一具現例において、外層は、ナイロン、PET(ポリエチレンテレフタレート)、PBT(ポリブチレンテレフタレート)、ナイロンとPETとの混合層(ナイロンとPETとのラミネートフィルム)などから構成されてよい。
【0030】
例示的な一具現例において、前記外層のうちのナイロンフィルムは、成形性の側面から厚さが20μm以上であることが好ましく、25μm以上がより好ましいが、ナイロンフィルムの厚さが30μmを超えると、絶縁破壊電圧が低下することがある。このため、好ましいナイロンフィルムの厚さは20μm~30μm、好ましくは、25μm~30μmであってよい。
【0031】
例示的な一具現例において、前記外層のうちのPETフィルムの厚さが薄く、ナイロンフィルム厚さが厚いほど成形性に有利である。なお、PETフィルムの厚さが薄いほど絶縁破壊電圧の側面で不利になることがあるので、このような観点から、PETフィルムの厚さは7μm~12μmであることが好ましい。
【0032】
例示的な一具現例において、シーラント層は、ポリプロピレン層(PP)、例えば、無延伸ポリプロピル(CPP)フィルムから構成され、当該ポリプロピレン(PP)層とバリア層とがポリプロピレン系樹脂の押出コーティング(Extrusion Coating;EC)層を介して貼合されてよい。
【0033】
例示的な一具現例において、シーラント層のポリプロピレン(PP)層は、要求物性に応じて各種の添加剤(ゴム、エラストマ、スリップ剤など)を含有してよい。
【0034】
例示的な一具現例において、金属層は、アルミニウム、SUS合金、銅などの金属から構成されてよく、水分浸透性及び耐衝撃性を持つ。
【0035】
例示的な一具現例において、前記二次電池用パウチフィルムの総厚さは、例えば、60~185μmであってよい。
【0036】
例示的な一具現例において、前記金属層の厚さは、例えば、20~80μm、好ましくは、40~60μmであってよい。
【0037】
例示的な一具現例において、前記シーラント層の厚さは、例えば、20~80μmであってよい。
【0038】
例示的な一具現例において、前記シーラント層の無延伸ポリプロピレン(CPP)フィルム層の厚さは、例えば、20~80μmであってよい。
【0039】
例示的な一具現例において、前記シーラント層の押出ポリプロピレン(PP)層の厚さは、例えば、0~60μmであってよい。
【0040】
例示的な一具現例において、成形前のカール(curl)特性や、伸び率、弾性率特性は、各層の素材を異にすることによって適宜調節することができる。例えば、シーラント層にポリプロピレン樹脂及びゴム添加剤を含み、ゴム添加剤の含量を変更することで成形前のカール(curl)特性や、伸び率、弾性率特性を調節することができる。
【0041】
例示的な一具現例において、前記ゴム添加剤としては、エラストマを用いてよく、例えば、EPDM(Ethylene-Propylene Diene Monomer)、EPR(Ethylene Propylene Rubber)、PBR(propylene butylene rubber)、EBR(ethylene butylene rubber)、TPU(Thermoplastic polyurethanes)、TPV(Thermoplastic Vulcanizates)、TPO(Thermoplastic polyolefinelastomers)、TPS(Styrenic block copolymers)、SBR(styrene-butadiene rubber)などが挙げられる。後述する実施例ではEBRを用いた。
【0042】
例示的な一具現例において、前記シーラント層(例えば、CPPのようなポリプロピレン層であってよい)中のゴム添加剤(ゴム成分添加剤)は、例えば、15~50wt%の範囲で用いてよい。
非制限的な例示において、前記ゴム添加剤(ゴム成分添加剤)は、シーラント層の総重量に対して、15重量%以上、16重量%以上、17重量%以上、18重量%以上、19重量%以上、20重量%以上、21重量%以上、22重量%以上、23重量%以上、24重量%以上、25重量%以上、26重量%以上、27重量%以上、28重量%以上、29重量%以上、30重量%以上、31重量%以上、32重量%以上、33重量%以上、34重量%以上以上、35重量%以上、36重量%以上、37重量%以上、38重量%以上、39重量%以上、40重量%以上、41重量%以上、42重量%以上、43重量%以上、44重量%以上、45重量%以上、46重量%以上、47重量%以上、48重量%以上、または49重量%以上であってよい。または、50重量%以下、49重量%以下、48重量%以下、47重量%以下、46重量%以下、45重量%以下、44重量%以下、43重量%以下、42重量%以下、41重量%以下、40重量%以下、39重量%以下、38重量%以下、37重量%以下、36重量%以下、35重量%以下、34重量%以下、33重量%以下、32重量%以下、31重量%以下、30重量%以下、29重量%以下、28重量%以下、27重量%以下、26重量%以下、25重量%以下、24重量%以下、23重量%以下、22重量%以下、21重量%以下、20重量%以下、19重量%以下、18重量%以下、17重量%以下、または16重量%以下であってよい。
【0043】
また、本発明の例示的な具現例では、前述した二次電池用パウチフィルムで外装された二次電池を提供する。かかる二次電池は、代表的にリチウム二次電池であってよく、特に電気自動車(EV)やエネルギー貯蔵装置(ESS)などの中大型の二次電池であってよい。
【0044】
また、本発明の例示的な具現例では、前述した二次電池用パウチフィルムで二次電池を外装する段階;を含む二次電池の製造方法を提供する。
【実施例0045】
以下の実施例を通じて本発明の例示的な具現例をより詳しく説明することにする。なお、本明細書に開示された実施例は単に説明のための目的から例示されたものであって、本発明の実施例は種々の形態で実施でき、本明細書に開示された実施例に限定されると解釈されてはならない。
【0046】
[実験方法]
通常の製造方法と同様、外層は、最外側のポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム(厚さ12μm)及びその内側のナイロン(Ny)フィルム(厚さ25μm)のラミネートフィルムを用い、バリア層はアルミニウムを用い(厚さ60μm)、シーラント層はポリプロピレン層(厚さ80μm)を用い、これらをラミネートして二次電池用パウチフィルムを製造した。パウチフィルムの総厚さは、接着剤層の厚さを含めて183μmである。
【0047】
実施例及び比較例では、前記ポリプロピレン(PP)層にポリプロピレン(PP)樹脂の他、成形前のカール(curl)、伸び率、弾性率特性に影響を与えるゴム(Rubber)成分を添加剤として加え、下記の表1に表すように実施例及び比較例におけるゴム添加剤の含量を異にした。ゴム添加剤の含量を異にしたことを除いては、実施例及び比較例の製造方法は同一である。
【0048】
【0049】
実施例及び比較例における成形前のカール(curl)の評価、伸び率、弾性率の評価はそれぞれ次のようにして行った。
【0050】
<成形前のカール(curl)の評価>
実施例及び比較例に係る二次電池用パウチフィルムの試片を15cm×15cmの大きさで四角形状に作製し、
図1に示されたように当該試片を平らな固定台の上に載置して平坦にテープで固定した。
【0051】
図1に示されたように、固定された試片の中央点を通るように15cm長さのX字状切り込みを入れ、中央点を挟んでMD(縦方向)側の二箇所(
図1中の1番及び2番の表示位置)及びTD(横方向)側の二箇所(
図1中の3番及び4番の表示位置)のそれぞれにおいて上方に浮き上がった高さ、すなわち、カールした高さを測定した。測定単位はcmである。
測定されたMD側の二箇所の数値の和をTD側の二箇所の数値の和で除した値を成形前のカール(curl)のMD和/TD和と定義し、この数値を算出した。
【0052】
<伸び率の評価>
実施例及び比較例に係る二次電池用パウチフィルムの試片を150mm×15mmの大きさで作製した(MD、TD試片を2個ずつ作製)。万能試験機(Universal Testing Machine;UTM)にて伸び率を評価した。評価速度は50mm/minとし、グリップギャップ(Grip gap)は30mmとし、常温の25℃、湿度30%で評価を行った。UTM装備で伸びたストローク長さを換算して測定した値を用いた。
【0053】
<弾性率の評価>
伸び率の測定方法と同様、実施例及び比較例に係る二次電池用パウチフィルムの試片を150mm×15mmの大きさで作製した(MD、TD試片を2個ずつ作製)。万能試験機(Universal Testing Machine;UTM)にて各試片のMD弾性率及びTD弾性率を評価した。評価速度は50mm/minとし、グリップギャップ(Grip gap)は30mmとし、常温の25℃、湿度30%で評価を行った。弾性率はSS(Stress Strain)カーブにおける弾性率区間の傾きを用いて得た。MD弾性率をTD弾性率で除した値を算出した。
【0054】
<成形後のカーリング(Curling)の評価>
実施例及び比較例に係る二次電池用パウチフィルムに対し、26.6(TD)×24.0(MD)cmの大きさで成形試片を作製した。
クロムコートされた1カップ(cup)成形機にて0.3MPaで12mm成形評価を行った。成形機のR値(角曲率半径値)は4R(4mm)とした。成形時のフォーミングサイズは横90mm×120mmとし、シングルフォーミングで行った。
図2は、本発明の実験例における成形後のカーリング(Curling)の様子を示す写真である。
図2に示されたように、成形後に発生したカーリング(Curling)を評価するために、平らな所に両面テープを貼り付けた後、その上に成形されたパウチを固定して、発生するカーリング(Curling)の高さを測定した。測定の際に4つの角のうちカールが最も高く発生した2つの角の高さをそれぞれ測定し、下の表6において1と2とに区分して表した。
実施例及び比較例に係るパウチフィルムの各成形前のカール(curl)の数値を表2に表し、成形前のカール(curl)のMD和/TD和を表3に表した。
【0055】
【0056】
【0057】
また、実施例及び比較例に係るパウチフィルムのMD伸び率及びTD伸び率を表4に表した。
【0058】
【0059】
また、実施例及び比較例に係るパウチフィルムのMD弾性率、TD弾性率、MD弾性率/TD弾性率を表5に表した。
【0060】
【0061】
一方、成形後のカーリング(Curling)の評価結果を次の表6に表した(下表では「成形後のカール」と表示)。前述したように4つの角のうちのカーリング(Curling)が最も高く発生した2つの角の高さをそれぞれ測定して下の表6に1と2とに区分して表した。
【0062】
【0063】
これらの表から分かるように、成形前のカールのMD和/TD和が0.8以下である実施例は、比較例に比べて、成形後のカーリング(Curling)が顕著に低下したことを確認することができる。
【0064】
以上、本発明の非制限的且つ例示的な具現例を説明したが、本発明の技術思想は添付の図面や前記説明内容に限定されない。本発明の技術思想を逸脱しない範囲内で種々の形態の変形が可能であることはこの分野の通常の知識を有する者には自明であり、また、かかる形態の変形は本発明の特許請求の範囲に属すると言えよう。