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特開2024-9605旅客行動予測装置、減便ダイヤ評価支援システム及び旅客行動予測方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024009605
(43)【公開日】2024-01-23
(54)【発明の名称】旅客行動予測装置、減便ダイヤ評価支援システム及び旅客行動予測方法
(51)【国際特許分類】
   B61L 27/12 20220101AFI20240116BHJP
【FI】
B61L27/12
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022111259
(22)【出願日】2022-07-11
(71)【出願人】
【識別番号】000173784
【氏名又は名称】公益財団法人鉄道総合技術研究所
(74)【代理人】
【識別番号】100124682
【弁理士】
【氏名又は名称】黒田 泰
(74)【代理人】
【識別番号】100104710
【弁理士】
【氏名又は名称】竹腰 昇
(74)【代理人】
【識別番号】100090479
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 一
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼田 真由
(72)【発明者】
【氏名】武内 陽子
【テーマコード(参考)】
5H161
【Fターム(参考)】
5H161AA01
5H161JJ32
(57)【要約】
【課題】減便前後の列車ダイヤの分析に係る演算量をできるだけ抑えて旅客の乗継経路の予測に要する演算量の軽減を図ること。
【解決手段】旅客行動予測装置1は、所定の基準ダイヤから所与の減便対象列車を運休させた減便ダイヤを生成し、基準ダイヤに対して予め設定された各旅客の出発駅から目的駅に至る基本乗継経路に基づいて、減便ダイヤに対する各旅客の減便時乗継経路を所与の乗継条件を満たすように算出する。減便時経路の算出は、旅客毎に、当該旅客の基本乗継経路に減便対象列車が含まれているか否かを判定し、否定判定の場合に、当該旅客の基本乗継経路を当該旅客の減便時乗継経路とし、肯定判定の場合に、減便ダイヤに従って当該旅客が出発駅から目的駅に移動可能な乗継条件を満たす経路を当該旅客の減便時乗継経路を算出することとで行う。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の基準ダイヤから所与の減便対象列車を運休させた減便ダイヤを生成する減便ダイヤ生成手段と、
前記基準ダイヤに対して予め設定された各旅客の出発駅から目的駅に至る基本乗継経路に基づいて、前記減便ダイヤに対する各旅客の減便時乗継経路を所与の乗継条件を満たすように算出する減便時経路算出手段と、
を備え、
前記減便時経路算出手段は、旅客毎に、1)当該旅客の前記基本乗継経路に前記減便対象列車が含まれているか否かを判定し、2)含まれていない場合、当該旅客の前記基本乗継経路を当該旅客の前記減便時乗継経路とし、含まれている場合、前記減便ダイヤに従って当該旅客が当該旅客の前記出発駅から当該旅客の前記目的駅に移動可能な前記乗継条件を満たす変更経路として、当該旅客の前記減便時乗継経路を算出する、
旅客行動予測装置。
【請求項2】
前記基準ダイヤ及び前記減便ダイヤの列車には、停車駅が異なる複数の種別があり、
前記減便時経路算出手段は、前記変更経路の算出において、前記減便ダイヤにおける当該旅客の乗車可能列車を候補列車とし、当該候補列車の停車駅と当該旅客の前記目的駅との先後関係及び前記乗継条件を用いて、当該候補列車に当該旅客が乗車する経路とするか否かを判断して当該旅客の前記変更経路を算出する、
請求項1に記載の旅客行動予測装置。
【請求項3】
前記乗継条件は、前記出発駅での最早乗車、又は、乗継回数の最小化に係る条件である、
請求項2に記載の旅客行動予測装置。
【請求項4】
所与の列車ダイヤの運行に係る消費エネルギーを算出する消費エネルギー算出手段と、請求項1~3の何れか一項に記載の旅客行動予測装置と、を具備する減便ダイヤ評価支援システムであって、
1以上の前記減便対象列車を含む複数の減便パターンを設定する減便パターン設定手段と、
前記減便パターンそれぞれについて、前記消費エネルギー算出手段に、当該減便パターンに基づく減便ダイヤの運行に係る消費エネルギーを算出させる消費エネルギー算出制御手段と、
前記減便パターンそれぞれについて、前記旅客行動予測装置に、各旅客の前記減便時乗継経路を算出させる経路算出制御手段と、
各旅客の前記減便時乗継経路に基づく所定の旅客利便性指標値を、前記減便パターンそれぞれについて算出する旅客利便性指標値算出手段と、
前記消費エネルギーと前記旅客利便性指標値との関係を示すグラフを表示する制御を行うグラフ表示制御手段と、
を具備する減便ダイヤ評価支援システム。
【請求項5】
前記グラフ表示制御手段は、前記減便対象列車の数に応じて前記グラフを識別可能に表示する制御を行う、
請求項4に記載の減便ダイヤ評価支援システム。
【請求項6】
コンピュータシステムが実行する旅客行動予測方法であって、
所定の基準ダイヤから所与の減便対象列車を運休させた減便ダイヤを生成する減便ダイヤ生成ステップと、
前記基準ダイヤに対して予め設定された各旅客の出発駅から目的駅に至る基本乗継経路に基づいて、前記減便ダイヤに対する各旅客の減便時乗継経路を所与の乗継条件を満たすように算出する減便時経路算出ステップと、
を含み、
前記減便時経路算出ステップは、
旅客毎に、当該旅客の前記基本乗継経路に前記減便対象列車が含まれているか否かを判定することと、
旅客毎に、前記判定が否定判定の場合に、当該旅客の前記基本乗継経路を当該旅客の前記減便時乗継経路とし、前記判定が肯定判定の場合に、前記減便ダイヤに従って当該旅客が当該旅客の前記出発駅から当該旅客の前記目的駅に移動可能な前記乗継条件を満たす変更経路として、当該旅客の前記減便時乗継経路を算出することと、
を含む、
旅客行動予測方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、減便ダイヤに対する旅客の乗継経路を予測する旅客行動予測装置等に関する。
【背景技術】
【0002】
列車運行に係る省エネルギー化を実現するための様々な手法が考案されている。列車ダイヤの変更或いは大幅な変更を伴わずに省エネルギー化を実現する手法としては、例えば、近傍を走行する列車と力行・回生のタイミングを合わせるような運転操縦を実現するための省エネ運転手法や、近傍を走行する列車同士の力行・回生のタイミングを合わせるように着発時刻を多少ずらした省エネダイヤを作成する手法が知られている。
【0003】
しかし、消費エネルギーの削減を実現する端的な解決策は運行する列車本数を減らすことである。ところが、減便は、消費エネルギーの削減を実現し易いけれども、旅客の利便性の低下に繋がる。そのため、減便ダイヤの作成には、消費エネルギーと旅客の利便性との関係を考慮する必要がある。旅客の利便性において重要な項目の1つが、列車の乗継である。適切に列車を乗り継げるかどうかで旅客の利便性が大きく変わるからである。旅客の乗継経路(移動経路)を適切に予測する手法としては、例えば、特許文献1の技術が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2014-144724号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1の技術は、列車ダイヤの修正に対する旅客の乗継経路を算出するための技術であり、様々な種類のダイヤ修正に対応するために修正前後の列車ダイヤを子細に分析したダイヤネットワークを用いる技術である。一方、本願発明の最終的な目的は、何れかの列車を運休する減便ダイヤを、適切に且つ短時間で決定することにある。適切な減便ダイヤを決定するためには、候補となる各減便ダイヤを作成して、それぞれに対する旅客の利便性を評価する必要がある。そのためには、減便前後の列車ダイヤの分析に係る演算量をできるだけ抑えて旅客の乗継経路の予測に要する演算量をできるだけ少なくすることが求められている。
【0006】
本発明が解決しようとする課題は、減便前後の列車ダイヤの分析に係る演算量をできるだけ抑えて旅客の乗継経路の予測に要する演算量の軽減を図ることである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するための第1の発明は、
所定の基準ダイヤから所与の減便対象列車を運休させた減便ダイヤを生成する減便ダイヤ生成手段(例えば、図6の減便ダイヤ生成部202)と、
前記基準ダイヤに対して予め設定された各旅客の出発駅から目的駅に至る基本乗継経路に基づいて、前記減便ダイヤに対する各旅客の減便時乗継経路を所与の乗継条件を満たすように算出する減便時経路算出手段(例えば、図6の減便時経路算出部204)と、
を備え、
前記減便時経路算出手段は、旅客毎に、1)当該旅客の前記基本乗継経路に前記減便対象列車が含まれているか否かを判定し、2)含まれていない場合、当該旅客の前記基本乗継経路を当該旅客の前記減便時乗継経路とし、含まれている場合、前記減便ダイヤに従って当該旅客が当該旅客の出発駅から当該旅客の前記目的駅に移動可能な前記乗継条件を満たす変更経路として、当該旅客の前記減便時乗継経路を算出する、
旅客行動予測装置である。
【0008】
他の発明として、
コンピュータシステムが実行する旅客行動予測方法であって、
所定の基準ダイヤから所与の減便対象列車を運休させた減便ダイヤを生成する減便ダイヤ生成ステップ(例えば、図3のステップS1)と、
前記基準ダイヤに対して予め設定された各旅客の出発駅から目的駅に至る基本乗継経路に基づいて、前記減便ダイヤに対する各旅客の減便時乗継経路を所与の乗継条件を満たすように算出する減便時経路算出ステップ(例えば、図3のステップS3~S9)と、
を含み、
前記減便時経路算出ステップは、
旅客毎に、当該旅客の前記基本乗継経路に前記減便対象列車が含まれているか否かを判定すること(例えば、図3のステップS5)と、
旅客毎に、前記判定が否定判定の場合に、当該旅客の前記基本乗継経路を当該旅客の前記減便時乗継経路とし(例えば、図3のステップS7)、前記判定が肯定判定の場合に、前記減便ダイヤに従って当該旅客が当該旅客の前記出発駅から当該旅客の前記目的駅に移動可能な前記乗継条件を満たす変更経路として、当該旅客の前記減便時乗継経路を算出すること(例えば、図3のステップS9)と、
を含む、
旅客行動予測方法を構成してもよい。
【0009】
第1の発明によれば、減便前後の列車ダイヤの分析に係る演算量をできるだけ抑えて旅客の乗継経路の予測に要する演算量の軽減を図ることができる。つまり、基準ダイヤに対して設定された基本乗継経路に減便対象列車が含まれていない場合には、減便ダイヤでも同じ行動を取るであろうとの推測のもとに基本乗継経路をそのまま減便時乗継経路とし、基本乗継経路に減便対象列車が含まれている場合には、その減便対象列車を利用できないので、出発駅から目的駅に至る経路を乗継条件を満たすように算出する。このように、減便前後の列車ダイヤの分析を簡易化し、乗車する経路ができるだけ短くなるように乗継経路を算出することで、減便前後の列車ダイヤの分析に係る演算量を削減して減便ダイヤに対する減便時乗継経路の算出に要する演算量を軽減することができる。
【0010】
第2の発明は、上記の旅客行動予測装置において、
前記基準ダイヤ及び前記減便ダイヤの列車には、停車駅が異なる複数の種別があり、
前記減便時経路算出手段は、前記変更経路の算出において、前記減便ダイヤにおける当該旅客の乗車可能列車を候補列車とし、当該候補列車の停車駅と当該旅客の前記目的駅との先後関係及び前記乗継条件を用いて、当該候補列車に当該旅客が乗車する経路とするか否かを判断して当該旅客の前記変更経路を算出する、
旅客行動予測装置である。
【0011】
列車には停車駅が異なる複数の種別があるため、旅客の変更経路の算出に当たって、列車がどの駅を通過してどの駅に停車するか、どの列車が旅客の目的駅に停車するか、駅への列車の着発順序が変更となるか、といった様々な判断要素がある。第2の発明によれば、これらの判断要素及び乗継条件を用いて、変更経路を適切に算出することができる。
【0012】
第3の発明は、上記の旅客行動予測装置において、
前記乗継条件は、前記出発駅での最早乗車、又は、乗継回数の最小化に係る条件である、
旅客行動予測装置である。
【0013】
第3の発明によれば、乗継条件が最早乗車に係る条件であるか、乗継回数の最小化に係る条件であるかに応じた適切な変更経路を算出することが可能となる。乗継条件が最早乗車に係る条件ならば、出発時刻が早いことが、候補列車に乗車するか否かの重要な判断要素となり、乗継条件が乗継回数の最小化に係る条件ならば、目的駅に停車するか否かが、候補列車に乗車するか否かの重要な判断要素となる。
【0014】
第4の発明は、
所与の列車ダイヤの運行に係る消費エネルギーを算出する消費エネルギー算出手段(例えば、図12の消費エネルギー算出部510)と、上記の旅客行動予測装置と、を具備する減便ダイヤ評価支援システムであって、
1以上の前記減便対象列車を含む複数の減便パターンを設定する減便パターン設定手段(例えば、図12の減便パターン設定部512)と、
前記減便パターンそれぞれについて、前記消費エネルギー算出手段に、当該減便パターンに基づく減便ダイヤの運行に係る消費エネルギーを算出させる消費エネルギー算出制御手段(例えば、図12の消費エネルギー算出制御部514)と、
前記減便パターンそれぞれについて、前記旅客行動予測装置に、各旅客の前記減便時乗継経路を算出させる経路算出制御手段(例えば、図12の経路算出制御部516)と、
各旅客の前記減便時乗継経路に基づく所定の旅客利便性指標値を、前記減便パターンそれぞれについて算出する旅客利便性指標値算出手段(例えば、図12の旅客利便性指標値算出部518)と、
前記消費エネルギーと前記旅客利便性指標値との関係を示すグラフを表示する制御を行うグラフ表示制御手段(例えば、図12のグラフ表示制御部520)と、
を具備する減便ダイヤ評価支援システムである。
【0015】
第4の発明によれば、運行に係る消費エネルギーと旅客の利便性との関係を示すグラフを表示することで、減便ダイヤの評価を支援することができる。グラフによって、様々な減便パターンの減便ダイヤについて、消費エネルギーと旅客利便性との関係が一目で把握可能となる。
【0016】
第5の発明は、第4の発明において、
前記グラフ表示制御手段は、前記減便対象列車の数に応じて前記グラフを識別可能に表示する制御を行う、
減便ダイヤ評価支援システムである。
【0017】
第5の発明によれば、運行に係る消費エネルギーと旅客の減便時乗継経路に基づく利便性指標値との関係を示すグラフが、減便対象列車の数に応じて識別可能に表示制御されるので、減便本数と消費エネルギー及び旅客利便性との関係を容易に把握可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】第1実施形態の概要図。
図2】基準ダイヤの一例。
図3】旅客行動予測処理のフローチャート。
図4】変更経路算出処理のフローチャート。
図5】変更経路算出処理のフローチャート。
図6】旅客行動予測装置の機能構成図。
図7】第2実施形態の概要図。
図8】評価支援グラフの一例。
図9】評価支援グラフの一例。
図10】評価支援グラフの一例。
図11】減便ダイヤ評価支援処理のフローチャート。
図12】減便ダイヤ評価支援システムの機能構成図。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、図面を参照して本発明の好適な実施形態について説明する。なお、本発明を適用可能な形態が以下の実施形態に限定されるものではない。また、図面の記載において、同一要素には同一符号を付す。
【0020】
[第1実施形態]
先ず、第1実施形態を説明する。
【0021】
<概要>
第1実施形態は、基準ダイヤから減便対象列車を運休させた減便ダイヤに対する各旅客の列車の乗継経路(減便時乗継経路)を予測する実施形態である。
【0022】
図1は、第1実施形態の概要図である。図1に示すように、第1実施形態では、旅客行動履歴DB312と、基準ダイヤと、基準ダイヤに対する減便対象列車とが、旅客行動予測装置1に与えられる。旅客行動履歴DB312は、複数の旅客それぞれについて、基準ダイヤに対する行動履歴である基本乗継経路等を定めたデータベースである。基本乗継経路は、所与の出現時刻に所与の出発駅に出現した当該旅客が、基準ダイヤに従って、当該出発駅から所与の目的駅に至る列車の乗継経路である。減便対象列車は、基準ダイヤ上の列車のうちから、列車番号等で指定される。基準ダイヤは、減便する前の列車ダイヤであり、例えば計画ダイヤとすることができる。
【0023】
旅客行動予測装置1は、これらのデータを用いて、基準ダイヤから減便対象列車を運休させた減便ダイヤに対する旅客の乗継経路(減便時乗継経路)を予測する。すなわち、基準ダイヤに対して、減便対象列車を運休させた減便ダイヤを作成する。次いで、旅客行動履歴DB312で定められた旅客それぞれについて、当該旅客の基本乗継経路を用いて、減便ダイヤに従って出発駅から目的駅に至る列車の乗継経路(減便時乗継経路)を、所与の乗継条件を満たすように算出する。乗継条件は、例えば、出発駅での最早乗車可能列車に乗車するといった最早乗車に係る条件や、乗継回数の最小化に係る条件などである。なお、乗継条件は、旅客毎に定めるようにしてもよいし、全ての旅客に共通して定めるようにしてもよい。
【0024】
<基準ダイヤの一例>
本実施形態において、基準ダイヤ及び減便ダイヤ上の各列車には種別が設定されており、種別に応じて停車駅が異なる(すなわち、通過駅が異なる)。以下では、列車の種別を2種類とした場合について記述するが、3種類以上の場合にも本実施形態を適用可能である。すなわち、始発駅から終着駅までの全ての駅に停車する“各停”と、停車しない駅(通過駅)が含まれる“快速”との2種類とする。
【0025】
図2は、本実施形態における基準ダイヤの一例である。図2では、横軸を時刻、縦軸を駅として、基準ダイヤを列車スジで表している。この基準ダイヤでは、線区の一部区間(A駅~M駅の区間)については、全ての種別の列車(“快速”及び“各停”)が運行し、それ以外の区間(N駅~Z駅の区間)については、“快速”の列車のみが運行する。“各停”の列車は、線区の一部区間(A駅~M駅の区間)のみで運行され、当該区間の全ての駅に停車する。“快速”の列車は、線区の全区間(A駅~Z駅の区間)で運行される列車と、一部区間(A駅~M駅の区間)及びそれ以外の区間(N駅~Z駅の区間)の途中駅(Q駅)までの区間(A駅~Q駅の区間)で運行される列車とがあり、一部区間(A駅~M駅の区間)においては停車駅と通過駅とがあるが、それ以外の区間(N駅~Z駅の区間)においては全ての駅に停車する。
【0026】
<減便時乗継経路の算出>
旅客行動予測装置1による旅客の減便時乗継経路の予測について説明する。図3は、旅客行動予測装置1が行う旅客行動予測処理を説明するフローチャートである。図3に示すように、旅客行動予測装置1は、先ず、基準ダイヤに対して、減便対象列車を運休させた減便ダイヤを生成する(ステップS1)。そして、旅客行動履歴DB312に定められた旅客それぞれを対象とした減便時経路算出処理を繰り返し(又は並列に)行って、各旅客の減便時乗継経路を算出する。
【0027】
減便時経路算出処理では、対象旅客の出発駅を現在駅、出現時刻を現在時刻として初期設定する(ステップS3)。次いで、対象旅客の基本乗継経路に減便対象列車が含まれるか否かを判断し、含まれないならば(ステップS5:NO)、基本乗継経路を、対象旅客の減便時乗継経路とする(ステップS7)。一方、基本乗継経路に減便対象列車が含まれるならば(ステップS9:YES)、乗継条件に応じた変更経路算出処理(図4図5参照)を行って、減便ダイヤに従った対象旅客の減便時乗継経路を算出する(ステップS9)。
【0028】
図4は、乗継条件が出発駅での最早乗車に係る条件(最早乗車条件)である場合の変更経路算出処理を説明するフローチャートである。この場合、先ず、減便ダイヤ上の列車(つまり、減便対象列車以外の列車)であって、進行方向が対象旅客の移動方向(上り/下り方向)に一致し、現在時刻以降に現在駅から出発する列車(つまり、対象旅客の乗車可能列車)のうち、現在駅から一番最初に出発する列車を、乗車する列車の候補列車とする(ステップS11)。次いで、候補列車の停車駅に対象旅客の目的駅が含まれるか否かを判断し、含まれるならば(ステップS13:YES)、現在駅から候補列車に乗車して目的駅で下車する経路を、対象旅客の減便時乗継経路として更新する(ステップS15)。
【0029】
一方、候補列車の停車駅に対象列車の目的駅が含まれないならば(ステップS13:NO)、続いて、候補列車の終着駅より先に対象旅客の目的駅があるか否かを判断する。候補列車の終着駅より先に対象旅客の目的駅があるならば(ステップS17:YES)、候補列車に乗車して終着駅で下車する経路を、対象旅客の減便時乗継経路として更新する。そして、その下車駅を現在駅、下車時刻(到着時刻)を現在時刻として更新し(ステップS19)、その後にステップS11に戻る。
【0030】
また、候補列車の終着駅より先に目的駅がない、つまり、候補列車の終着駅の手前に目的駅があるならば(ステップS17:NO)、対象旅客の目的駅は候補列車の通過駅であるので、続いて、候補列車の次の停車駅と対象旅客の目的駅との先後関係を判断する。候補列車の次の停車駅が対象旅客の目的駅により手前にあるならば(ステップS21:YES)、現在駅から候補列車に乗車し、対象旅客の目的駅に最も近い手前の停車駅で下車する経路として、減便時乗継経路を更新する。そして、その下車駅を現在駅、下車時刻(到着時刻)を現在時刻として更新し(ステップS23)、その後にステップS11に戻る。一方、候補列車の次の停車駅が対象旅客の目的駅により手前にない、つまり、候補列車の次の停車駅が対象旅客の目的駅の先にあるならば(ステップS21;NO)、候補列車に乗車せず、候補列車の後続列車(つまり、候補列車の次に現在駅から出発する列車)を新たな候補列車として更新し(ステップS25)、その後にステップS13に戻る。
【0031】
図5は、乗継条件が乗継回数の最小化に係る条件である場合の変更経路算出処理を説明するフローチャートである。この場合、先ず、減便ダイヤ上の列車(つまり、減便対象列車以外の列車)であって、進行方向が対象旅客の移動方向に一致し、現在時刻以降に現在駅から一番最初に出発する列車を、乗車する列車の候補列車とする(ステップS31)。次いで、候補列車の停車駅に対象旅客の目的駅が含まれるか否かを判断し、含まれるならば(ステップS33:YES)、現在駅から候補列車に乗車して目的駅で下車する経路を、対象旅客の減便時乗継経路として更新する(ステップS35)。
【0032】
一方、候補列車の停車駅に対象列車の目的駅が含まれないならば(ステップS33:NO)、続いて、現在駅が、全ての種別の列車の停車駅(全種別停車駅)であるか否かを判断する。現在駅が全種別停車駅ならば(ステップS37:YES)、目的駅に停車する種別の列車の到着を待つために、候補列車に乗車せず、候補列車の後続列車(つまり、候補列車の次に現在駅から出発する列車)を新たな候補列車として更新し(ステップS41)、その後にステップS33に戻る。
【0033】
現在駅が全種別停車駅ではなく(ステップS37:NO)、候補列車の種別が“快速”であり、且つ、候補列車の終着駅より先に目的駅があるならば(ステップS39:YES)、現在駅は“快速”の列車のみの停車駅(つまり、図2に示した基準ダイヤにおけるN駅~Z駅の区間の駅)であるので、目的駅に停車する“快速”の列車の到着を待つために、候補列車に乗車せず、候補列車の後続列車(つまり、候補列車の次に現在駅から出発する列車)を新たな候補列車として更新し(ステップS41)、その後にステップS33に戻る。
【0034】
候補列車の種別が“快速”でない、又は、候補列車の終着駅より先に目的駅がないならば(ステップS39:NO)、現在駅が“各停”の列車のみの停車駅(つまり、図2に示した基準ダイヤにおけるA駅~M駅の区間の駅)で目的駅は“快速”の列車のみの停車駅(つまり、図2に示した基準ダイヤにおけるN駅~Z駅の区間の駅)である、又は、現在駅が“快速”の列車のみの停車駅(つまり、図2に示した基準ダイヤにおけるN駅~Z駅の区間の駅)で目的駅は“各停”の列車のみの停車駅(つまり、図2に示した基準ダイヤにおけるA駅~M駅の区間の駅)であり、現在駅には旅客の目的駅に停車する種別の列車は停車しないので、現在駅から候補列車に乗車し、目的駅に最も近い手前の停車駅で下車する経路として、減便時乗継経路を更新する。そして、その下車駅を現在駅とし、下車時刻を現在時刻に更新し(ステップS43)、その後にステップS31に戻る。
【0035】
旅客行動予測処理においては、減便前後の列車ダイヤ全体のダイヤネットワークを生成するような分析をせず、減便対象列車に着目して、乗車する区間が重複しないように変更経路を算出することで減便時乗継経路を算出する。変更経路の算出においては、最早乗車に係る条件を乗継条件とするか、乗継回数の最小化に係る条件を乗継条件とするかに応じて適切な変更経路を算出することができる。これにより、減便前後の列車ダイヤの分析に係る演算量をできるだけ抑えて旅客の乗継経路の予測に要する演算量の軽減を実現することができる。
【0036】
<機能構成>
図6は、旅客行動予測装置1の機能構成の一例である。図6によれば、旅客行動予測装置1は、操作部102と、表示部104と、音出力部106と、通信部108と、処理部200と、記憶部300とを備えて構成され、一種のコンピュータシステムとして実現される。なお、旅客行動予測装置1は、1台のコンピュータで実現してもよいし、複数台のコンピュータを接続して構成することとしてもよい。
【0037】
操作部102は、例えばキーボードやマウス、タッチパネル、各種スイッチ等の入力装置で実現され、なされた操作に応じた操作信号を処理部200に出力する。表示部104は、例えば液晶ディスプレイやタッチパネル等の表示装置で実現され、処理部200からの表示信号に基づく各種表示を行う。音出力部106は、例えばスピーカ等の音出力装置で実現され、処理部200からの音信号に基づく各種音出力を行う。通信部108は、例えば無線通信モジュールやルータ、モデム、有線用の通信ケーブルのジャックや制御回路等で実現される通信装置であり、所与の通信ネットワークに接続して外部装置とのデータ通信を行う。
【0038】
処理部200は、CPU(Central Processing Unit)やFPGA(Field Programmable Gate Array)等の演算装置や演算回路で実現されるプロセッサーであり、記憶部300に記憶されたプログラムやデータ、操作部102や通信部108からの入力データ等に基づいて、旅客行動予測装置1の全体制御を行う。また、処理部200は、機能的な処理ブロックとして、減便ダイヤ生成部202と、減便時経路算出部204とを有する。処理部200が有するこれらの各機能部は、処理部200がプログラムを実行することでソフトウェア的に実現することも、専用の演算回路で実現することも可能である。本実施形態では、前者のソフトウェア的に実現することとして説明する。
【0039】
減便ダイヤ生成部202は、所定の基準ダイヤから所与の減便対象列車を運休させた減便ダイヤを生成する。基準ダイヤは基準ダイヤデータ310として、減便対象列車は減便対象列車データ314として、予め記憶されている。生成した減便ダイヤは、減便ダイヤデータ316として記憶される。
【0040】
減便時経路算出部204は、基準ダイヤに対して予め設定された各旅客の出発駅から目的駅に至る基本乗継経路に基づいて、減便ダイヤに対する各旅客の減便時乗継経路を所与の乗継条件を満たすように算出する。
【0041】
具体的には、旅客毎に、1)当該旅客の基本乗継経路に減便対象列車が含まれているか否かを判定し、2)含まれていない場合、当該旅客の基本乗継経路を当該旅客の減便時乗継経路とし、含まれている場合、減便ダイヤに従って当該旅客が当該旅客の出発駅から当該旅客の目的駅に移動可能な乗継条件を満たす変更経路として、当該旅客の減便時乗継経路を算出する(図3図5参照)。
【0042】
また、基準ダイヤ及び減便ダイヤの列車には、停車駅が異なる複数の種別があり(図2参照)、変更経路の算出において、減便ダイヤにおける当該旅客の乗車可能列車を候補列車とし、当該候補列車の停車駅と当該旅客の目的駅との先後関係及び乗継条件を用いて、当該候補列車に当該旅客が乗車する経路とするか否かを判断して当該旅客の変更経路を算出する。乗継条件は、出発駅での最早乗車、又は、乗継回数の最小化に係る条件である。算出した各旅客の減便時乗継経路は、減便時乗継経路データ318として記憶される。
【0043】
記憶部300は、ROM(Read Only Memory)やRAM(Random Access Memory)等のIC(Integrated Circuit)メモリやハードディスク等の記憶装置で実現され、処理部200が旅客行動予測装置1を統合的に制御するためのプログラムやデータ等を記憶しているとともに、処理部200の作業領域として用いられ、処理部200が実行した演算結果や、操作部102や通信部108からの入力データ等が一時的に格納される。本実施形態では、記憶部300には、処理部200に旅客行動予測処理(図3図5参照)を実行させるための旅客行動予測プログラム302と、基準ダイヤデータ310と、旅客行動履歴DB312と、減便対象列車データ314と、減便ダイヤデータ316と、減便時乗継経路データ318とが記憶される。
【0044】
[第2実施形態]
次に、第2実施形態を説明する。なお、第2実施形態において、上述の第1実施形態と同一要素には同一符号を付し、詳細な説明を省略又は簡略する。
【0045】
<概要>
第2実施形態は、減便ダイヤの生成と、当該減便ダイヤに対する旅客の減便時乗継経路の算出とを第1実施形態と同様に行うが、減便ダイヤを数多く生成して、減便ダイヤ毎に旅客の減便時乗継経路を算出することと、減便ダイヤ毎の評価支援を実行することとが、第1実施形態と異なる。
【0046】
図7は、第2実施形態の概要図である。図7に示すように、第2実施形態では、旅客行動履歴DB312と、基準ダイヤと、複数の減便パターンとが、減便ダイヤ評価支援システム3に与えられる。減便パターンは、1以上の減便対象列車の組み合わせである。
【0047】
減便ダイヤ評価支援システム3は、第1実施形態の旅客行動予測装置1を含むシステムである。減便ダイヤ評価支援システム3は、与えられたデータを用いて、各減便パターンに対応する減便ダイヤを生成し、生成した減便ダイヤ毎に旅客の減便時乗継経路を算出する。そして、各減便ダイヤに関する運行に係る消費エネルギーと、各旅客の基本乗継経路及び減便時乗継経路に基づく旅客利便性指標値との関係を示すグラフを生成・表示することで、減便ダイヤの評価支援を行う。
【0048】
すなわち、減便ダイヤ評価支援システム3は、旅客行動予測装置1に、第1実施形態で説明したように、減便パターンそれぞれについて、当該減便パターンに係る減便対象列車を運休させた減便ダイヤを生成させ、当該減便ダイヤに従った各旅客の減便時乗継経路を予測させる。次いで、各旅客の基本乗継経路及び減便時乗継経路に基づいて、旅客利便性指標値を算出する。旅客利便性指標値は、減便ダイヤに係る旅客の利便性を定量的に示す指標値ある。例えば、乗車率最大値、所要時分差合計、到着時分差合計等であり、本実施形態では、その値が大きいほど、旅客にとっての利便性が“低い”ことを表す。乗車率最大値は、減便ダイヤ上の各列車の乗車率のうちの最大値である。所要時分差合計は、基本乗継経路における出発駅から目的駅までの所要時分と減便時乗継経路における出発駅から目的駅までの所要時分との差分を各旅客について合計したものである。到着時分差合計は、基本乗継経路での目的駅の到着時刻と減便時乗継経路での目的駅の到着時刻との差分を各旅客について合計したものである。また、生成した各減便ダイヤの運行に係る消費エネルギーを算出する。そして、各減便ダイヤそれぞれについて、当該減便ダイヤに係る利便性と消費エネルギーとの関係をプロットした評価支援グラフを生成・表示する。
【0049】
<評価支援グラフの一例>
図8図10は、評価支援グラフの一例である。何れも、横軸を減便ダイヤの運行に係る消費エネルギーである概算消費電力量とし、縦軸を減便ダイヤに係る旅客利便性指標値として、各減便ダイヤそれぞれについてプロットした図(散布図)である。概算消費電力量は、基本ダイヤでの各列車の運行に係る消費電力量をもととして、減便しなかった列車の消費電力量の合計値としている。図8は、旅客利便性指標値を乗車率最大値としたグラフであり、図9は、旅客利便性指標値を所要時分差合計としたグラフであり、図10は、旅客利便性指標値を到着時分差合計としたグラフである。所要時分差合計は、基本乗継経路での所要時分に対する減便時乗継経路での所要時分の増分(但し、減少した場合には「0分」とする)として、各旅客の合計を求めた値としている。到着時分差合計は、基本乗継経路での到着時刻に対する減便時乗継経路での到着時分の増分(但し、減少した場合には「0分」とする)として、各旅客の合計を求めた値としている。
【0050】
また、何れの評価支援グラフにおいても、減便パターンとして、減便対象列車の本数(1本~4本)が異なる複数のパターンを設定するとともに、各本数について、更に、減便対象列車の組み合わせが異なる複数のパターンを含むように設定した。そのため、例えば、減便対象列車の本数が2本であるが、その2本の列車をどのように選択するかで複数の減便ダイヤが生成される。評価支援グラフにおいては、減便対象列車の本数毎に、各減便ダイヤのプロットの形状を変えて識別表示した。
【0051】
図8の評価支援グラフによれば、大雑把に見ると、減便する列車本数が増えるに従って、概算消費電力量が低減する傾向にあることが分かる。しかし、詳細に見ると、減便する列車本数の大小と概算消費電力量の大小とが逆転している減便ダイヤがあることが分かる。また、乗車率最大値についても、減便する列車本数の大小と乗車率最大値の大小とが逆転している減便ダイヤがあることが分かる。ここで、例えば、減便可能な最大列車本数を「3本」とし、概算消費電力量が最小であり且つ乗車率最大値が最小の減便ダイヤを最良の評価基準とするならば、図8中に白抜き矢印で示したプロットの減便ダイヤを選択することができる。その他として、例えば、概算消費電力量が「5200以下」で且つ乗車率最大値が「80以下」を評価基準とする場合には、この評価基準を満たす減便ダイヤが複数存在するため、更に減便ダイヤを絞り込む評価をすることが可能となる。
【0052】
図9図10の評価支援グラフにおいても同様である。例えば、図9であれば、減便する列車本数の大小と所要時分差合計の大小とが逆転している減便ダイヤがあることが分かる。図10であれば、減便する列車本数の大小と到着時分差合計の大小とが逆転している減便ダイヤがあることが分かる。評価基準を任意に設定することで、減便ダイヤを絞り込んだり、選択することが容易となる。すなわち、評価支援グラフによれば、消費エネルギーと旅客利便性との関係が一目で把握可能となり、各減便ダイヤの評価を効率的に支援することが可能となり、鉄道運営事業者にとって有益な情報となり得る。
【0053】
<減便ダイヤ評価援処理>
図11は、減便ダイヤ評価支援システム3が行う減便ダイヤ評価支援処理の流れを説明するフローチャートである。図11に示すように、減便ダイヤ評価支援システム3は、先ず、指標値算出処理を行う。指標値算出処理では、基準ダイヤに対して、対象減便パターンに係る減便対象列車を運休させた減便ダイヤを生成する(ステップS51)。次いで、当該減便ダイヤの運行に係る消費エネルギーを算出する(ステップS53)。また、当該減便ダイヤに従った各旅客の減便時乗継経路を算出する(ステップS55)。そして、各旅客の基本乗継経路及び減便時乗継経路に基づき、当該減便ダイヤに係る旅客利便性指標値を算出する(ステップS57)。
【0054】
生成した全ての減便ダイヤについて指標値算出処理を行うと、続いて、減便ダイヤそれぞれについて、当該減便ダイヤの運行に係る消費エネルギーを算出し、消費エネルギーと旅客利便性指標値との関係をプロットしたグラフを生成・表示する(ステップS59)。以上の処理を行うと、減便ダイヤ評価支援処理は終了となる。
【0055】
<機能構成>
図12は、減便ダイヤ評価支援システム3の機能構成図の一例である。図12によれば、減便ダイヤ評価支援システム3は、操作部402と、表示部404と、音出力部406と、通信部408と、処理部500と、記憶部600とを備えて構成され、一種のコンピュータシステムとして実現される。なお、減便ダイヤ評価支援システム3は、1台のコンピュータで実現してもよいし、複数台のコンピュータを接続して構成することとしてもよい。
【0056】
処理部500は、機能的な処理ブロックとして、旅客行動予測部502と、消費エネルギー算出部510と、減便パターン設定部512と、消費エネルギー算出制御部514と、経路算出制御部516と、旅客利便性指標値算出部518と、グラフ表示制御部520とを有する。
【0057】
旅客行動予測部502は、第1実施形態の旅客行動予測装置1に該当する機能部であり、減便ダイヤ生成部202と、減便時経路算出部204とを有する。
【0058】
消費エネルギー算出部510は、所与の列車ダイヤの運行に係る消費エネルギーを算出する。具体的には、消費エネルギー算出制御部514の制御に従って、基準ダイヤデータ310として記憶されている基準ダイヤや、減便ダイヤ生成部202により生成された減便ダイヤの運行に係る消費エネルギーを算出する。また、減便ダイヤの運行に係る消費エネルギーについては、当該減便ダイヤについて運休させた各列車の走行距離(走行区間)に応じて定まる当該列車の運行に要する消費エネルギーを、基準ダイヤの運行に係る消費エネルギーから差し引くことで、簡易的に算出するようにしてもよい。消費エネルギーは、例えば消費電力量や力行電力量を用いて算出することができる。算出された消費エネルギーは、該当する減便パターンに対応付けて、消費エネルギーデータとして記憶される。
【0059】
減便パターン設定部512は、1以上の減便対象列車を含む複数の減便パターンを設定する。この設定は、例えば、操作部402や通信部408を介して行うことができる。設定した減便パターンは、減便パターンデータ610として記憶される。
【0060】
消費エネルギー算出制御部514は、減便ダイヤ生成部202によって生成された各減便ダイヤの運行に係る消費エネルギーを消費エネルギー算出部510に算出させる。
【0061】
経路算出制御部516は、減便パターンそれぞれについて、旅客行動予測部502に、各旅客の減便時乗継経路を算出させる。具体的には、減便パターンそれぞれについて、減便ダイヤ生成部202に減便ダイヤを生成させ、生成された各減便ダイヤそれぞれについて、旅客行動履歴DB312で定められる各旅客の乗継経路である減便時乗継経路を旅客行動予測部502に算出させる。算出された各旅客の減便時乗継経路は、該当する減便パターン及び減便ダイヤに対応付けて、減便時乗継経路データとして記憶される。
【0062】
旅客利便性指標値算出部518は、各旅客の減便時乗継経路に基づく所定の旅客利便性指標値を、減便ダイヤそれぞれについて算出する。具体的には、減便ダイヤそれぞれについての旅客利便性指標値を、当該減便ダイヤにおける各旅客の減便時乗継経路に基づいて算出する(図11のステップS57)。旅客利便性指標値としては、例えば、乗車率最大値、所要時分差合計、到着時分差合計、を算出する。算出した旅客利便性指標値は、該当する減便パターンに対応付けて、旅客利便性指標値データとして記憶される。
【0063】
グラフ表示制御部520は、消費エネルギーと旅客利便性指標値との関係を示すグラフを表示する制御を行う。また、減便対象列車の数に応じてグラフを識別可能に表示する制御を行う。具体的には、横軸を消費エネルギー、縦軸を旅客利便性指標値として、減便ダイヤそれぞれについての消費エネルギーと旅客利便性指標値との関係をプロットした評価支援グラフを生成し、生成した評価支援グラフを、例えば、表示部404に表示させる制御を行う(図11のステップS59)。その際に、減便パターンに係る減便対象列車の本数毎にプロットの形状を異なるようにして、評価支援グラフを表示制御する。生成した評価支援グラフは、グラフデータ630として記憶される。
【0064】
記憶部600には、処理部500に減便ダイヤ評価支援処理(図11参照)を実行させるための減便ダイヤ評価支援プログラム602と、基準ダイヤデータ310と、旅客行動履歴DB312と、減便パターンデータ610と、評価支援データ620と、グラフデータ630とが記憶される。
【0065】
評価支援データ620は、減便パターン毎に生成され、当該減便パターンを識別する減便パターンIDに対応付けて、減便ダイヤデータと、減便時乗継経路データと、消費エネルギーデータと、旅客利便性指標値データとを格納する。
【0066】
[作用効果]
以上、2つの実施形態について説明した。第1実施形態によれば、減便前後の列車ダイヤの分析に係る演算量をできるだけ抑えて旅客の乗継経路の予測に要する演算量の軽減を図ることができる。つまり、基準ダイヤに対して設定された基本乗継経路に減便対象列車が含まれていない場合には、減便ダイヤでも同じ行動を取るであろうとの推測のもとに基本乗継経路をそのまま減便時乗継経路とし、基本乗継経路に減便対象列車が含まれている場合には、その減便対象列車を利用できないので出発駅から目的駅に至る経路を算出する。このように、減便前後の列車ダイヤの分析を簡易化し、乗車する区間が重複しないように乗継経路を算出することで、減便前後の列車ダイヤの分析に係る演算量を削減して減便ダイヤに対する減便時乗継経路の算出に要する演算量を軽減することができる。
【0067】
また、第2実施形態によれば、運行に係る消費エネルギーと旅客の利便性との関係を示す評価支援グラフを表示することで、減便ダイヤの評価を支援することができる。評価支援グラフによって、様々な減便パターンでの減便ダイヤについて、消費エネルギーと旅客利便性との関係が一目で把握可能となる。
【0068】
なお、本発明の適用可能な実施形態は上述の実施形態に限定されることなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能なのは勿論である。
【符号の説明】
【0069】
1…旅客行動予測装置
200…処理部
202…減便ダイヤ生成部
204…減便時経路算出部
300…記憶部
302…旅客行動予測プログラム
310…基準ダイヤデータ
312…旅客行動履歴DB
314…減便対象列車データ
316…減便ダイヤデータ
318…減便時乗継経路データ
3…減便ダイヤ評価支援システム
500…処理部
502…旅客行動予測部
510…消費エネルギー算出部
512…減便パターン設定部
514…消費エネルギー算出制御部
516…経路算出制御部
518…旅客利便性指標値算出部
520…グラフ表示制御部
600…記憶部
602…減便ダイヤ評価支援プログラム
610…減便パターンデータ
620…評価支援データ
630…グラフデータ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12