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特開2024-96053リチウム金属負極、その製造方法及びリチウム金属電池
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024096053
(43)【公開日】2024-07-11
(54)【発明の名称】リチウム金属負極、その製造方法及びリチウム金属電池
(51)【国際特許分類】
   H01M 4/134 20100101AFI20240704BHJP
   H01M 4/38 20060101ALI20240704BHJP
   H01M 10/0562 20100101ALI20240704BHJP
   H01M 10/052 20100101ALI20240704BHJP
   H01M 4/1395 20100101ALI20240704BHJP
【FI】
H01M4/134
H01M4/38 Z
H01M10/0562
H01M10/052
H01M4/1395
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023219778
(22)【出願日】2023-12-26
(31)【優先権主張番号】10-2022-0190674
(32)【優先日】2022-12-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(71)【出願人】
【識別番号】522151617
【氏名又は名称】エスケー オン カンパニー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100106002
【弁理士】
【氏名又は名称】正林 真之
(74)【代理人】
【識別番号】100120891
【弁理士】
【氏名又は名称】林 一好
(72)【発明者】
【氏名】パク ソン ジン
(72)【発明者】
【氏名】ユン ナ ウン
【テーマコード(参考)】
5H029
5H050
【Fターム(参考)】
5H029AJ05
5H029AJ12
5H029AK01
5H029AK03
5H029AL12
5H029AM03
5H029AM05
5H029AM07
5H029AM12
5H029CJ22
5H050AA07
5H050AA15
5H050BA16
5H050CA01
5H050CA08
5H050CA09
5H050CB12
5H050FA18
5H050GA22
(57)【要約】      (修正有)
【課題】電気化学的性能、寿命特性、安全性などに優れたリチウム金属負極及びそれを含むリチウム金属電池を提供する。
【解決手段】一実現例によるリチウム金属負極は、リチウム金属と、上記リチウム金属の一面又は両面上に形成され、リチウム塩及びリチウム-金属合金を含むリチウム金属負極保護膜と、を含むことができる。一実現例によるリチウム金属負極の製造方法は、ペロブスカイト薄膜(Perovskite thin film)にリチウム金属の一面又は両面を接触させてリチウム金属負極保護膜を形成する段階を含むことができる。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
リチウム金属と、
前記リチウム金属の一面又は両面上に形成され、リチウム塩及びリチウム-金属合金を含むリチウム金属負極保護膜を含む、リチウム金属負極。
【請求項2】
前記リチウム塩は、LiF、LiCl、LiBr及びLiIからなる群から選択される少なくとも1種である、請求項1に記載のリチウム金属負極。
【請求項3】
前記リチウム-金属合金は、リチウムとリチウム親和性金属との合金である、請求項1に記載のリチウム金属負極。
【請求項4】
前記リチウム親和性金属は、Ag、Sn、Mg、Au、Pt、Zn及びPbからなる群から選択される少なくとも1種の金属である、請求項3に記載のリチウム金属負極。
【請求項5】
前記リチウム金属負極保護膜は、ペロブスカイト(Perovskite)化合物をさらに含む、請求項1から4のいずれか一項に記載のリチウム金属負極。
【請求項6】
前記ペロブスカイト化合物は、金属ハロゲンペロブスカイト(Metal Halide Perovskite)である、請求項5に記載のリチウム金属負極。
【請求項7】
前記金属ハロゲンペロブスカイトは、
ABX構造を有し、
前記Aは、Cs、Rb、MA(methylammonium)及びFA(Formamidinium)からなる群から選択される少なくとも1種であり、
前記Bは、Sn2+、Mg2+、Zn2+、Pb2+、Ag、Au2+、Pt2+及びBi3+からなる群から選択される少なくとも1種であり、
前記Xは、F、Cl、Br及びIからなる群から選択される少なくとも1種である、請求項6に記載のリチウム金属負極。
【請求項8】
前記Bは、Ag及びBi3+の組み合わせである、請求項7に記載のリチウム金属負極。
【請求項9】
請求項1から8のいずれか一項に記載のリチウム金属負極を含む、リチウム金属電池。
【請求項10】
前記リチウム金属電池は固体電解質層を含み、前記固体電解質層は硫化物系固体電解質を含む、請求項9に記載のリチウム金属電池。
【請求項11】
前記固体電解質層は、アルジロダイト系硫化物固体電解質を含む、請求項10に記載のリチウム金属電池。
【請求項12】
ペロブスカイト薄膜(Perovskite thin film)にリチウム金属の一面又は両面を接触させてリチウム金属負極保護膜を形成する段階を含む、リチウム金属負極の製造方法。
【請求項13】
前記ペロブスカイト薄膜は、基板上にペロブスカイト化合物を塗布して製造されるものである、請求項12に記載のリチウム金属負極の製造方法。
【請求項14】
前記ペロブスカイト化合物は、金属ハロゲンペロブスカイトである、請求項13に記載のリチウム金属負極の製造方法。
【請求項15】
前記金属ハロゲンペロブスカイトは、
ABX構造を有し、
前記Aは、Cs、Rb、MA(methylammonium)及びFA(Formamidinium)からなる群から選択される少なくとも1種であり、
前記Bは、Sn2+、Mg2+、Zn2+、Pb2+、Ag、Au2+、Pt2+及びBi3+からなる群から選択される少なくとも1種であり、
前記Xは、F、Cl、Br及びIからなる群から選択される少なくとも1種である、請求項14に記載のリチウム金属負極の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リチウム金属負極、その製造方法及びリチウム金属電池に関する。
【背景技術】
【0002】
大気汚染の主な原因の一つである化石燃料ベースの車両を代替することができる電気自動車(EV)への関心が持続的に増加しており、最近、高い放電電圧及び出力安定性を有するため電気自動車(EV)の動力源として主に使用されるリチウム二次電池に対する開発が活発に行われている。
【0003】
一方、相対的に高い容量(3860mAh/g)及び低い酸化還元電位(-3.04V vs.SHE)を有するリチウム金属は、有望な負極素材の一つとして最近注目されており、このようなリチウム金属負極(Lithium Metal Anode;LMA)を含むリチウム金属電池に対する研究も進められている。
【0004】
電池を充電/放電する際に発生するリチウムの樹枝状結晶、いわゆる、デンドライト(Dendrite)は、電池の寿命効率を大きく低下させるだけでなく、急激な内部短絡を発生させ、火災及び爆発を招くおそれがあり、これを効果的に制御するための技術が求められる状況である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の一側面によれば、均一なリチウム電着(Electrodeposition)を誘導してリチウムデンドライトの成長を抑制し、電池の電気化学的性能、効率性、安全性などを効果的に改善可能なリチウム金属負極を提供することができる。
【0006】
本発明の一側面によれば、簡単な方法でリチウム金属負極保護膜を形成するリチウム金属負極の製造方法を提供することができる。
【0007】
本発明の他の側面によれば、電気化学的性能、寿命特性、安全性などに優れたリチウム金属負極及びそれを含むリチウム金属電池を提供することができる。
【課題を解決するための手段】
【0008】
一実現例のリチウム金属負極は、リチウム金属と、上記リチウム金属の一面又は両面上に形成され、リチウム塩及びリチウム-金属合金を含むリチウム金属負極保護膜と、を含む。
【0009】
上記リチウム塩は、LiF、LiCl、LiBr及びLiIからなる群から選択される少なくとも1種であってもよい。
【0010】
上記リチウム-金属合金は、リチウムとリチウム親和性金属との合金であってもよい。
【0011】
上記リチウム親和性金属は、Ag、Sn、Mg、Au、Pt、Zn及びPbからなる群から選択される少なくとも1種の金属であってもよい。
【0012】
上記リチウム金属負極保護膜は、ペロブスカイト(Perovskite)化合物をさらに含むことができる。
【0013】
上記ペロブスカイト化合物は、金属ハロゲンペロブスカイト(Metal Halide Perovskite)であってもよい。
【0014】
上記金属ハロゲンペロブスカイトは、ABX構造を有し、上記AはCs、Rb、MA(methylammonium)及びFA(Formamidinium)からなる群から選択される少なくとも1種であり、上記BはSn2+、Mg2+、Zn2+、Pb2+、Ag、Au2+、Pt2+及びBi3+からなる群から選択される少なくとも1種であり、上記XはF、Cl、Br及びIからなる群から選択される少なくとも1種であることができる。
【0015】
上記BはAg及びBi3+の組み合わせであってもよい。
【0016】
一実現例のリチウム金属電池は、上記リチウム金属負極を含む。
【0017】
上記リチウム金属電池は固体電解質層を含み、上記固体電解質層は硫化物系固体電解質を含むことができる。
【0018】
上記固体電解質層は、アルジロダイト系硫化物固体電解質を含むことができる。
【0019】
一実現例のリチウム金属負極の製造方法は、ペロブスカイト薄膜(Perovskite thin film)にリチウム金属の一面又は両面を接触させてリチウム金属負極保護膜を形成する段階を含む。
【0020】
上記ペロブスカイト薄膜は、基板上に上記ペロブスカイト化合物を塗布して製造されるものであってもよい。
【0021】
上記ペロブスカイト化合物は、金属ハロゲンペロブスカイトであってもよい。
【0022】
上記金属ハロゲンペロブスカイトは、ABX構造を有し、 上記AはCs、Rb、MA(methylammonium)及びFA(Formamidinium)からなる群から選択される少なくとも1種であり、上記BはSn2+、Mg2+、Zn2+、Pb2+、Ag、Au2+、Pt2+及びBi3+からなる群から選択される少なくとも1種であり、上記XはF、Cl、Br及びIからなる群から選択される少なくとも1種であることができる。
【発明の効果】
【0023】
本発明の一実施例によれば、リチウムイオンの均一な電着(Electrodeposition)挙動及び分布を誘導し、イオン伝導性及び機械的強度の両方に優れたリチウム金属負極を提供することができる。
【0024】
本発明の他の実施例によれば、工程時間及びコストを削減して高い生産性でリチウム金属負極を製造することができる。
【0025】
本発明の他の実施例によれば、電気化学反応時に、リチウムイオンの均一な分布及び可逆的な電着/脱着挙動を誘発し、リチウムデンドライトの成長を効果的に抑制可能な保護膜を含むリチウム金属負極を提供することができる。
【0026】
本発明の他の実施例によれば、リチウム金属電池の寿命特性、電気化学的性能などを向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1】一実現例によるリチウム金属負極の断面を概念的に示す図である。
図2】一実現例のリチウム金属負極の製造方法を示すイメージである。
図3】基板上に形成されたペロブスカイト薄膜のSEMイメージである。
図4】実施例のリチウム金属負極保護膜のSEMイメージである。
図5】実施例及び比較例のリチウム電着後のSEMイメージである。
図6】実施例及び比較例の核生成過電圧(Nucleation Overpotential)の測定結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下では、添付の図面を参照して、本発明について詳細に説明する。しかし、これは例示的なものに過ぎず、本発明は例示的に説明された具体的な実施形態に限定されるものではない。
【0029】
本発明の一実現例によれば、リチウムイオンの均一な電着(Electrodeposition)挙動及び分布を誘導することができる保護膜をリチウム金属層の表面に形成し、上述した問題の発生が効果的に抑制されたリチウム金属負極を提供することができ、このような負極を含むリチウム金属電池のイオン伝導性、寿命特性などを向上させることができる。図1を参照して、以下で具体的な内容を開示する。
【0030】
リチウム金属負極
図1は、一実現例によるリチウム金属負極の断面を概念的に示す図である。以下、図1を参照して、一実現例によるリチウム金属負極について説明する。
【0031】
一実現例によるリチウム金属負極100は、リチウム金属10と、上記リチウム金属の一面又は両面に形成されるリチウム金属負極保護膜20と、を含むことができる。
【0032】
リチウム金属としては、純粋なリチウム金属、又はデンドライト成長抑制などのための保護層が形成されたリチウム金属が挙げられる。一実施例において、負極集電体上に蒸着又はコーティングされたリチウム金属含有層が負極活物質層として使用されることができる。一実施例において、リチウム薄膜層が負極活物質層として使用されてもよい。
【0033】
上記リチウム金属10は、リチウム金属又はその合金を含み、実質的にリチウム金属からなる金属層であってもよい。
【0034】
上記リチウム金属10の厚さは特に限定されず、例示的に1μm~200μmであってもよい。
【0035】
上記リチウム金属負極100は、リチウム金属10の少なくとも一面上に均一なリチウム電着挙動を誘導してリチウムデンドライトの成長を効果的に抑制することができるリチウム金属負極保護膜20を含むことができる。
【0036】
一実現例によるリチウム金属負極保護膜20は、リチウム塩及びリチウム- 金属合金を含むことができる。上記リチウム金属負極保護膜20は、リチウム親和性物質(Lithiophlic Materials)を含んでもよく、具体的に、上記リチウム-金属合金はリチウム親和性物質であってもよい。上記リチウム金属10の少なくとも一面上にリチウム親和性物質が含まれたリチウム金属負極保護膜20が形成されたリチウム金属負極100は、リチウムデンドライトの成長を抑制し、イオン伝導性及び機械的強度の両方に優れることができる。
【0037】
上記リチウム塩は、リチウムハロゲン化合物であってもよく、リチウムハロゲン化合物は、LiF、LiCl、LiBr及びLiIからなる群から選択される少なくとも1種であってもよく、具体的には、LiCl、LiBr及びLiI、より具体的にはLiClであってもよい。特定理論に拘束されようとするものではないが、上記リチウム塩を含むリチウム金属負極保護膜20は、リチウムイオン拡散特性を有するため、リチウムイオンが一地点に集中することを防止し、より効果的にリチウムデンドライトの成長を抑制することができる。
【0038】
上記リチウム-金属合金は、リチウムと金属の合金を意味することができ、上記金属はリチウム親和性金属であることができる。具体的に、上記リチウム親和性金属は、Au、Ag、Pt、Al、Mg、Zn、Te、Bi、Pb、Ga、Cd、Hg、Pd、Sc、Y、Ca、Sr、Ba、Ni、Sn、Cu、Geからなる群から選択される少なくとも1種であってもよく、具体的に、Ag、Sn、Mg、Au、Pt、Zn、Pb等からなる群から選択される少なくとも1種であってもよく、より具体的にはAg、Sn及びMgであってもよい。上記リチウム-金属合金を含むリチウム金属負極保護膜20は、リチウムの電着時に核形成過電圧(Nucleation Polarization Overpotential)を下げることで、リチウム核生成障壁を低くするシード(Seed)としての役割を果たし、均一な電着(Electrodeposition)挙動を誘導することができ、リチウムデンドライトの成長をより効果的に抑制して不可逆容量の減少、電池内部の短絡などの問題の発生を効果的に防止することができる。
【0039】
上記リチウム金属負極保護膜20は、ペロブスカイト(Perovskite)構造を有する化合物(以下、ペロブスカイト化合物又はペロブスカイト)をさらに含むことができる。上記リチウム金属負極保護膜20がペロブスカイト化合物をさらに含むことで、リチウムデンドライトの成長を効果的に抑制することができる。
【0040】
上記ペロブスカイト化合物とは、ペロブスカイト結晶構造を有する化合物を意味することができ、四面体、八面体又は立方体の結晶構造を有する物質であって、構成原子に応じて結晶格子の歪みが発生し、不導体・半導体・導体の性質、超伝導現象などを示すことができる。具体的に、上記ペロブスカイト化合物は、酸化物系列のペロブスカイト、金属ハロゲン系列のペロブスカイトを含むことができる。
【0041】
一実現例において、上記ペロブスカイト化合物は、金属ハロゲンペロブスカイト(Metal Halide Perovskite)であってもよく、より具体的に、ABX構造を有する金属ハロゲンペロブスカイトであってもよい。これにより、リチウム金属負極保護膜20がリチウムイオンを通過させることができる構造を有することができ、電解質層とリチウム金属負極100との直接的な遮断を防止し、副反応を抑制することができ、機械的強度を向上させ、デンドライトの成長を抑制することができる。
【0042】
上記Aはカチオンであってもよく、具体的に、金属カチオン及び有機物カチオンからなる群から選択される少なくとも1種であってもよく、より具体的に、アルカリ金属カチオン及び有機物カチオンからなる群から選択される少なくとも1種であってもよい。上記有機物カチオンは+1価であってもよく、具体的に、窒素を含む+1価の有機物カチオンであってもよく、より具体的には、アルキルアンモニウム系カチオン及びアミジニウム系カチオンからなる群から選択される少なくとも1種であってもよい。例えば、Aは、Cs、Rb、MA(methylammonium)、FA(Formamidinium)等からなる群から選択される少なくとも1種であってもよく、具体的にMAであってもよい。
【0043】
上記Bはカチオンであってもよく;具体的に、金属カチオンであってもよく;より具体的に、+1価~+3価の金属カチオンであってもよく;さらに具体的には、+2価の金属カチオンであってもよく、又は+1価の金属カチオンと+3価の金属カチオンとの組み合わせであってもよい。
【0044】
例えば、上記Bは、Sn2+、Mg2+、Zn2+、Pb2+、Ag、Au2+、Pt2+、Bi3+等からなる群から選択される少なくとも1種であってもよく、具体的に、Sn2+、Mg2+、Ag及びBi3+からなる群から選択される少なくとも1種であってもよい。
【0045】
より具体的に、上記BはSn2+、Mg2+、Zn2+、Pb2+、Au2+、Pt2+等からなる群から選択される少なくとも1種であってもよく、Ag及びBi3+の組み合わせであってもよく;さらに具体的に、BはSn2+及びMg2+からなる群から選択される少なくとも1種であってもよく、又はAg及びBi3+の組み合わせであってもよく;さらに具体的にはSn2+であってもよい。
【0046】
上記Xは、F、Cl、Br及びIからなる群から選択される少なくとも1種であってもよく、具体的にCl、Br及びIからなる群から選択される少なくとも1種であってもよく、より具体的にはClであってもよい。
【0047】
上記リチウム金属負極保護膜20の厚さは、500nm~10μmであってもよく、具体的に500nm~5μmであってもよく、より具体的には1μm~3μmであってもよい。上記リチウム金属負極保護膜20の厚さが上記範囲内である場合、リチウム金属負極の機械的強度及び電気化学的性能に優れることができる。
【0048】
上記リチウム金属負極100の製造方法は特に限定されないが、例えば、以下で述べるリチウム金属負極の製造方法により製造されることができる。
【0049】
負極の製造方法
図2は、一実現例のリチウム金属負極の製造方法を示すイメージである。以下、図2を参照して、一実現例のリチウム金属負極の製造方法について説明する。
【0050】
一実現例によるリチウム金属負極100の製造方法は、ペロブスカイト薄膜(Perovskite thin film)にリチウム金属の一面又は両面を接触させてリチウム金属負極保護膜を形成する段階を含むことができる。
【0051】
一実現例によるリチウム金属負極の製造方法によれば、リチウム金属10とペロブスカイトとの自発的な反応によってリチウム金属負極保護膜を形成するため、薄い保護膜を製造することができる。
【0052】
また、上記リチウム金属負極の製造方法は、別途の装置なしで簡単な方法によりリチウム金属負極保護膜を形成するため、コストを削減することができ、製造時間を短縮することができる。
【0053】
上記ペロブスカイト薄膜(Perovskite thin film)にリチウム金属の一面又は両面を接触させる方法は特に限定されず、例えば、ペロブスカイト薄膜とリチウム金属10とを接触させた後、一定圧力を所定時間加える方法、ペロブスカイト粒子をリチウム金属10の表面にコーティングする方法などによって製造することができる。
【0054】
上記ペロブスカイト薄膜は、基板上にペロブスカイト化合物を塗布して製造することができる。上記塗布方法は特に限定されず、例えば、スピンコーター(Spin Coater)方式、ドクターブレードを用いたテープキャスティング(Tape Casting)方式などによって基板上にペロブスカイトをコーティングすることができる。上記ペロブスカイトの意味は前述した通りである。
【0055】
上記ペロブスカイト薄膜の製造段階は、ペロブスカイト化合物が塗布された基板上に貧溶媒(Anti-Solvent)を塗布する段階をさらに含むことができる。上記貧溶媒は、ペロブスカイトの溶解度を減少させ、ペロブスカイトが基板の上で凝集して成長することを防止し、均一なコーティングを行うのに寄与することができる。
【0056】
上記貧溶媒は、既存の溶媒を迅速に抽出する役割を果たす溶媒であれば、特に限定されないが、例えば、クロロベンゼン、トリフルオロトルエン、ブロモベンゼン、ジクロロベンゼン、ジエチルエーテル、ジクロロメタン、トリクロロメタン、アセトニトリル、ジイソプロピルエーテル、ヨードベンゼン、1-ブタノール、イソブタノール、エタノール、エチルアセテート、イソプロパノール等からなる群から選択される少なくとも1種であってもよい。
【0057】
上記ペロブスカイト薄膜の製造段階は、上記貧溶媒が塗布された基板を加熱して乾燥する段階をさらに含むことができる。上記乾燥する段階は、前駆体を金属ハロゲンペロブスカイトにし、残りの溶媒の除去に寄与することができる。
【0058】
上記基板は、リチウム金属上にペロブスカイトを均一に塗布可能にするものであって、ペロブスカイトと反応しない材質であれば特に限定されないが、例えば、ステンレス鋼、銅箔、アルミニウム箔、リチウム箔等からなる群から選択される少なくとも1種であってもよい。
【0059】
リチウム金属電池
一実現例によるリチウム金属電池は、上述の実現例のうちいずれか一つによるリチウム金属負極100を含む。具体的に、上記リチウム金属電池は、上述した実現例のうちいずれか一つによるリチウム金属負極100、正極及び電解質を含むことができ、選択に応じて分離膜をさらに含んでもよく、又は含まなくてもよい。
【0060】
上記正極は、通常、二次電池に使用されるものであれば特に限定されず、正極活物質としてリチウム-遷移金属複合酸化物を含むことができ、例えば、リチウムコバルト酸化物(LiCoO)、リチウムマンガン酸化物(LiMn)又はリチウムニッケル酸化物(LiNiO)などのリチウム-遷移金属酸化物、又はこれらの遷移金属の一部が他の遷移金属で置換されたリチウム- 遷移金属複合酸化物を含むことができる。具体的に、上記リチウム-遷移金属複合酸化物は、LiNi1-b(0.9≦a≦1.2、0.5≦b<1であり、MはNa、Mg、Ca、Y、Ti、Hf、V、Nb、Ta、Cr、Mo、W、Mn、Co、Fe、Cu、Ag、Zn、B、Al、Ga、C、Si、Sn、Ba及びZrのうち少なくとも一つの元素である。具体的に、0.95≦a≦1.08であってもよく、bは0.6以上、0.8以上、0.8超過、0.9以上、0.98以上であってもよい。具体的に、MはCo、Mn又はAlを含むことができ、より具体的に、Co及びMnを含み、選択に応じてAlをさらに含むことができる。)の化学式で表されるNCM系正極活物質であってもよい。また、上記正極活物質は、LiFePOの化学式で表されるリチウムリン酸鉄(LFP)系正極活物質であってもよい。また、上記正極活物質は、Li1+x1-x(0≦x≦0.4、MはNa、Mg、Ca、Y、Ti、Hf、V、Nb、Ta、Cr、Mo、W、Ni、Mn、Co、Fe、Cu、Ag、Zn、B、Al、Ga、C、Si、Sn、Ba及びZrのうち少なくとも一つの元素であり、具体的には、Ni、Co、Mn、又はAlを含むことができ、より具体的に、Ni、Co及びMnを含み、選択に応じてAlをさらに含むことができる。)の化学式で表されるLLO(Li rich layered oxides、Over Lithiated Oxides、Over-lithiated layered oxide、OLO、LLOs)系正極活物質であってもよい。
【0061】
また、上記リチウム-遷移金属酸化物は、複数の一次粒子が組み立て又は凝集して実質的に一つの粒子で形成された二次粒子であってもよく、単一粒子の形態であってもよい。上記単一粒子の形態は、例えば、複数の一次粒子(例えば、10個を超える)が組み立て又は凝集して実質的に一つの粒子で形成された二次粒子を排除することを意味することができる。但し、上記単一粒子の形態は、2~10個の範囲の単一粒子が互いに付着又は密着して単一体の形態を有することを排除するものではない。いくつかの実施例において、上記正極活物質は、二次粒子の形態と単一粒子の形態の両方を含むこともできる。
【0062】
上記リチウム金属電池は、分離膜をさらに含んでもよく、又は含まなくてもよく、分離膜をさらに含む場合、上記分離膜は通常のリチウム二次電池に適用可能なものであれば特に限定されない。例示的に、上記分離膜は多孔性基材を含むことができ、上記多孔性基材はポリオレフィン系多孔性基材であってもよい。上記ポリオレフィン系多孔性基材は、多数の気孔を有し、電気化学素子に通常使用される基材であり得る。上記ポリオレフィン系多孔性基材は、例示的に、ポリエチレン単一膜、ポリプロピレン単一膜、ポリエチレン/ポリプロピレンの二重膜、ポリプロピレン/ポリエチレン/ポリプロピレンの三重膜、及びポリエチレン/ポリプロピレン/ポリエチレンの三重膜からなる群から選択されることができるが、これに限定されるものではない。
【0063】
上記リチウム金属電池は、別途のケース内に電解質と共に収容された形態であってもよい。このとき、上記電解質はリチウム塩と有機溶媒とを含む液体電解質であってもよく、上記リチウム塩はLiの化学式で表され、アニオン(X)としてF、Cl、Br、I、NO 、N(CN) 、BF 、ClO 、PF などを1種又は2種以上含むことができるが、これに限定されるものではない。また、上記有機溶媒は、例示的に、プロピレンカーボネート(PC)、エチレンカーボネート(EC)、ジエチルカーボネート(DEC)、ジメチルカーボネート(DMC)、エチルメチルカーボネート(EMC)などを1種又は2種以上含むことができるが、これに限定されるものではない。
【0064】
一方、上記リチウム金属電池は、上述の実現例のうちいずれか一つによるリチウム金属負極100、正極、並びに上記負極及び正極の間に位置する固体電解質層を含む全固体電池であってもよい。
【0065】
上記固体電解質層に含まれる固体電解質は特に限定されず、一般的な固体電解質のうち少なくとも一つを含むことができる。例示的に、上記固体電解質は、LiLaZr12(LLZO)などの酸化物系固体電解質;thio-LISICON、β-LiPS、Li11、LiS-P、LGPS、アルジロダイトなどの硫化物系固体電解質;又は(1)ポリエーテル系高分子等の高分子樹脂がリチウム塩に添加されて形成された固体高分子電解質、(2)有機溶媒とリチウム塩を含有した有機電解液を高分子樹脂に含浸させた高分子ゲル電解質等の高分子系固体電解質であってもよい。
【0066】
一実現例において、上記固体電解質層は硫化物系固体電解質を含むことができ、具体的に、上記硫化物系固体電解質はLi(1≦a≦12、0≦b≦5、0≦c≦10、0≦d≦2であり、AはP、As、Ge、Ga、Sb、Si、Sn、Al、In、Ti、V、Nb、又はTaのうち少なくとも一つであり、QはS、Se、又はTeのうち少なくとも一つであり、XはCl、Br、I、F、CN、OCN、SCN、又はNのうち少なくとも一つである。)で表されるアルジロダイト系硫化物固体電解質であってもよい。具体的に、上記アルジロダイト系硫化物固体電解質は、Li7-xPS6-xCl(0≦x≦2)、Li7-xPS6-xBr(0≦x≦2)、又はLi7-xPS6-x(0≦x≦2)の化学式で表される化合物であってもよく、より具体的に、上記硫化物系固体電解質は、LiPSCl、Li6.5Sb0.5Ge0.5I、Li5.7PS4.7Cl1.3、Li6.6Sb0.5Si0.6Iなどを含んでもよい。
【0067】
一実施例において、上記リチウム金属電池が、上述したリチウム金属負極及びアルジロダイト系硫化物固体電解質を含む固体電解質層を有する場合、高いイオン伝導度を有しながらもリチウムイオンが均一に電着され、優れたイオン伝導性及び機械的強度を確保することができる。
【0068】
上記リチウム金属電池が上述したリチウム金属負極100を含む場合、均一なリチウム電着挙動を誘導することができるリチウム金属負極保護膜20により、リチウムデンドライトの成長を効果的に抑制し、寿命特性、電気化学的性能、安全性などに全て優れることができる。
【実施例0069】
以下では、具体的な実験例を参照して、本発明の実施例についてさらに説明する。実験例に含まれる実施例及び比較例は、本発明を例示するものに過ぎず、添付の特許請求の範囲を限定するものではなく、本発明の範疇及び技術思想の範囲内で実施例に対する様々な変更及び修正が可能であることは、当業者にとって明らかなものであり、このような変形及び修正が添付された特許請求の範囲に属することも当然である。
【0070】
実施例
1.ペロブスカイトを処理したリチウム金属負極の製造
メチルアミン塩酸塩(Methylamine hydrochloride、CHNH・HCl)0.338gと塩化第一錫(SnCl)0.948gをN,N-ジメチルホルムアミド(N,N-dimethylformamide)10mlに溶解させて0.5Mの金属ハロゲンペロブスカイトMaSnCl(CHNHSnCl)前駆体溶液を製造した。
【0071】
製造された前駆体溶液をステンレス鋼基板上に塗布し、2000r/minで90秒の条件のスピンコーターでコーティングした。スピンコーターの作動が開始して15秒後に1.5mlのクロロベンゼンを基板の上に塗布し、その後70℃で5分間乾燥してペロブスカイト薄膜がコーティングされた基板を製造した。
【0072】
ペロブスカイト薄膜がコーティングされた基板とリチウム金属とを10秒間、10Nの力で対抗接触させた。その後、リチウム金属とペロブスカイト薄膜とを分離して、リチウム金属の表面にリチウム金属負極保護膜が形成されたリチウム金属負極を製造した。
【0073】
2.リチウム金属電極の製造
上述のようにして製造されたリチウム金属負極、セラミック系無機物にコーティングされたポリオレフィン系分離膜及び1.0MのLIPF6-EC/EMC(3/7、vol%)+2wt%FEC電解液を用いて2032コイン型(Coin-Type)リチウム金属対称電池を製造した。
【0074】
比較例
ペロブスカイト化合物の処理なしでリチウム金属負極を用いて実施例と同様の方法によりリチウム金属電極を製造した。
【0075】
評価例
1.電着されたリチウム金属負極の評価
上述のようにして製造された実施例及び比較例のリチウム金属負極を走査電子顕微鏡(SEM)で撮影し、リチウム金属のサイズ、形状及び全体的な均一度を確認し、これを図4及び図5に示した。
【0076】
図4を参照すると、実施例のリチウム金属表面は、リチウム塩及びSn-Li alloyを含む負極保護膜で覆われていることが確認でき、比較例は、表面に負極保護膜が形成されていないことが確認できる。
【0077】
また、図5を参照すると、実施例のリチウム金属は、リチウムが均一に全面に電着されたことが確認でき、比較例は、不均一な電着により電着が行われていない部分があることが確認できる。
【0078】
2.核生成過電圧(Nucleation Overpotential)の評価
上述のようにして製造された2032コイン型(Coin-Type)リチウム金属対称電池に対して、面積当たり3mAの電流を印加して面積当たりの容量3mAhに該当するリチウムを電着した。
【0079】
その後、リチウム金属の電着時に発生する経時的な電圧変化を測定し、これを図6及び下記表1に示した。
【0080】
【表1】
【0081】
図6及び上記表1を参照すると、実施例のリチウム金属電極は、0hでの電圧が比較例に比べて0にさらに近く、核生成過電圧が低いことが確認できる。
【0082】
これに対し、比較例のリチウム金属電極は負極保護膜が形成されておらず、特定理論に拘束されようとするものではないが、電着において抵抗として作用し得るnative film(Li-有機物、LiCO、LiO、LiOH等)が表面に覆われており、核生成過電圧がより高くなったことが確認できる。
【0083】
上述した内容は、本発明の原理を適用した例示に過ぎず、本発明の範囲から逸脱しない範囲で他の構成をさらに含むことができる。
【符号の説明】
【0084】
10:リチウム金属
20:リチウム金属負極保護膜
100:リチウム金属負極
図1
図2
図3
図4
図5
図6