(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024096058
(43)【公開日】2024-07-11
(54)【発明の名称】高いポアソン比を有する二次電池用パウチフィルム、その製造方法、これを用いた二次電池及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
H01M 50/131 20210101AFI20240704BHJP
H01M 50/119 20210101ALI20240704BHJP
H01M 50/129 20210101ALI20240704BHJP
H01M 50/133 20210101ALI20240704BHJP
H01M 10/04 20060101ALI20240704BHJP
H01M 50/121 20210101ALI20240704BHJP
H01M 50/105 20210101ALI20240704BHJP
【FI】
H01M50/131
H01M50/119
H01M50/129
H01M50/133
H01M10/04 Z
H01M50/121
H01M50/105
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023220248
(22)【出願日】2023-12-27
(31)【優先権主張番号】10-2022-0190532
(32)【優先日】2022-12-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(71)【出願人】
【識別番号】523422299
【氏名又は名称】ユルチョン・ケミカル・カンパニー・リミテッド
【氏名又は名称原語表記】YOULCHON CHEMICAL CO., LTD.
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【弁理士】
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100221501
【弁理士】
【氏名又は名称】式見 真行
(72)【発明者】
【氏名】ソン,ノクチョン
(72)【発明者】
【氏名】ハン,ヒシク
(72)【発明者】
【氏名】キム,ヒフン
(72)【発明者】
【氏名】シン,ソンチョル
(72)【発明者】
【氏名】ソン,ムンギュ
(72)【発明者】
【氏名】イ,ジミン
(72)【発明者】
【氏名】パク,ハンチョル
(72)【発明者】
【氏名】キム,ゴンリョン
【テーマコード(参考)】
5H011
5H028
【Fターム(参考)】
5H011AA09
5H011CC02
5H011CC06
5H011CC10
5H011DD01
5H028AA07
5H028BB05
5H028CC07
5H028CC08
5H028EE01
5H028EE06
(57)【要約】 (修正有)
【課題】高成形特性に優れる二次電池用パウチフィルムとその製造方法を提供する。
【解決手段】二次電池用パウチフィルムであって、少なくとも外層、バリア層、シーラント層が順次積層されてなり、前記外層は、ナイロン及びポリエチレンテレフタレートフィルムを含み、前記バリア層はアルミニウムであり、ポアソン比が0.4以上である二次電池パウチ及びその製造方法、これを用いた二次電池及びその製造方法が開示される。当該二次電池用パウチフィルムは、高成形の際に生じるエッジ(edge)部のクラック発生現象を抑制できることでエッジ(edge)部を厚く形成することができ、これにより高成形特性に優れる。このような二次電池用パウチフィルムは、二次電池のエネルギー密度を向上させることができるので、電気自動車やエネルギー貯蔵装置などの中大型の二次電池用パウチフィルムとして特に有用である。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
二次電池用パウチフィルムであって、
少なくとも外層、バリア層、シーラント層が順次積層されてなり、
前記外層は、ナイロン及びポリエチレンテレフタレートフィルムを含み、
前記バリア層はアルミニウムであり、
ポアソン比が0.4~0.5であることを特徴とする二次電池用パウチフィルム。
【請求項2】
前記アルミニウムが、成形前の厚さが60μmであるとき、
下記のように測定した当該二次電池用パウチフィルムのエッジ(edge)部のアルミニウム残存厚さが34μm~40μmであることを特徴とする請求項1に記載の二次電池用パウチフィルム。
[エッジ(edge)部のアルミニウム残存厚さの測定]
240mm(MD)×266mm(TD)の二次電池用パウチフィルムを成形機にて成形し、12mm成形してからエッジ(edge)部を断面切削機にて切削しSEMを用いて二次電池用パウチフィルムのうちのアルミニウム断面の最大厚さを測定する。
【請求項3】
下記のように測定した当該二次電池用パウチフィルムの最大成形深さが16mm~22mmであることを特徴とする請求項2に記載の二次電池用パウチフィルム。
[成形性の測定]
二次電池用パウチフィルムを240mm(MD)×266mm(TD)の大きさでカットして試片を作製し、成形機にて成形して成形性を評価する。成形性の評価は、10回測定して10回ともクラックなしに成形されたパウチの最大(max)成形深さを測定して行う。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか一項に記載の二次電池用パウチフィルムの製造方法であって、
ナイロン及びポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムをラミネートする段階;及び
ラミネートされた前記ナイロン及びポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムをバリア層とラミネートする段階;
を含むことを特徴とする二次電池用パウチフィルムの製造方法。
【請求項5】
請求項1~3のいずれか一項に記載の二次電池用パウチフィルムで外装されたことを特徴とする二次電池。
【請求項6】
当該二次電池は、電気自動車用またはエネルギー保存装置用であることを特徴とする請求項5に記載の二次電池。
【請求項7】
二次電池の製造方法であって、
請求項1~3のいずれか一項に記載の二次電池用パウチフィルムで二次電池を外装する段階;
を含むことを特徴とする二次電池の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書は、高いポアソン比を有する二次電池用パウチフィルム、その製造方法、これを用いた二次電池及びその製造方法に関し、より詳しくは、二次電池用パウチフィルムの高成形の際に生じるエッジ(edge)部をクラックの発生なしに厚く形成することができ、これにより高成形特性に優れることで特に中大型電池用に適合した二次電池用パウチフィルム、その製造方法、これを用いた二次電池及びその製造方法に関する。
【0002】
[本発明を支援した国家研究開発事業]
[課題固有番号]1415181922
[課題番号]20022450
[部署名]産業通商資源部
[課題管理(専門)機関名]韓国産業技術評価管理院
[研究事業名]素材部品パッケージ型(最高企業)
[研究課題名]2倍以上の高接着強度(60℃)の具現が可能な次世代二次電池パウチの開発
[寄与率]1/1
[課題遂行機関名]栗村化学(株)
[研究期間]2022-09-01~2022-12-31
[課題固有番号]1415185612
[課題番号]20022450
[部署名]産業通商資源部
[課題管理(専門)機関名]韓国産業技術評価管理院
[研究事業名]素材部品パッケージ型(最高企業)
[研究課題名]2倍以上の高接着強度(60℃)の具現が可能な次世代二次電池パウチの開発
[寄与率]1/1
[課題遂行機関名]栗村化学(株)
[研究期間]2023-01-01~2023-12-31
【背景技術】
【0003】
リチウム二次電池(LiB)は、高いエネルギー密度と優れた出力を有するなどの多様な長所を基に多くのアプリケーションに適用されている。
二次電池用パウチフィルムは、かかる二次電池の電極群と電解液を取り囲む多層構造の包装用積層フィルムであって、電池の安定性、寿命特性、そして作動持続力を決める核心の部品素材であり、機械的柔軟性及び強度、高い酸素/水蒸気バリア性、高い熱的シーリング強度、電解液に対する耐化学性、電気絶縁性、高温安定性などが要求される。
二次電池用パウチフィルムは、通常、大別して外層/バリア層/内側シーラント層からなる。
外層又は最外層は、ナイロンやナイロンとPET(ポリエチレンテレフタレート)との混合素材、OPP(延伸ポリプロピレン)、ポリエチレンなどから構成されている。かかる外層又は最外層の要求特性としては、耐熱性、耐ピンホール性、耐化学性、成形性、及び絶縁性などが挙げられる。
バリア層は、水蒸気やその他の気体に対するバリア性と共に成形性が要求される。このような側面から、バリア層には成形可能な金属、例えば、アルミニウム(Al)、鉄(Fe)、銅(Cu)、ニッケル(Ni)などが用いられ、近年、アルミニウムが最も多く用いられている。
内層のシーラント層は、熱接着性、成形性と共に電解液と接触する層である点から、耐電解液性、絶縁抵抗性などが要求される。
【0004】
一方、リチウム二次電池の適用分野が小型から自動車用やESS用の中大型へと拡大されるにつれて、二次電池用パウチフィルムもまた、中大型に適合した特性を持つことが要求されており、特に安全性が高く且つ高成形特性を持つことが必要になってきた。
【0005】
関連して、自動車用のリチウム二次電池(LiB)のセルの大きさや二次電池パウチの成形深さは二次電池の容量に大きく影響を及ぼす因子である。セルの大きさの場合、その大きさが一般の小型用に比べて大きく高い成形性が要求され、また二次電池パウチの成形深さはセルの容量を決めることから、深さが深く成形(forming)されるほど次世代二次電池の要求容量である700Wh/Lに至るための必須条件であると言える。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の例示的な具現例では、一側面において、二次電池用パウチフィルムの高成形の際に生じるエッジ(edge)部のクラック発生現象を抑制できることでエッジ(edge)部を厚く形成することができる、二次電池用パウチフィルムと、その製造方法、及び当該パウチフィルムで外装された二次電池とその製造方法を提供することをその目的とする。
【0007】
本発明の例示的な具現例では、一側面において、高成形特性に優れる二次電池用パウチフィルムとその製造方法、及び当該パウチフィルムで外装された二次電池とその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の例示的な具現例では、二次電池用パウチフィルムであって、少なくとも外層、バリア層、シーラント層が順次積層されてなり、ポアソン比が0.4~0.5である二次電池用パウチフィルムを提供する。
【0009】
例示的な一具現例において、前記バリア層はアルミニウムである、成形前の厚さが60μmであるとき、下記のように測定した二次電池用パウチフィルムのエッジ(edge)部のアルミニウム残存厚さが34μm~40μmであってよい。
[エッジ(edge)部のアルミニウム残存厚さの測定]
240mm(MD)×266mm(TD)の二次電池用パウチフィルムを成形機にて成形し、12mm成形してからエッジ(edge)部を断面切削機にて切削しSEMを用いて二次電池用パウチフィルムのうちのアルミニウム断面の最大厚さを測定する。
【0010】
例示的な一具現例において、下記のように測定した二次電池用パウチフィルムの最大成形深さが16mm~22mmであってよい。
[成形性の測定]
二次電池用パウチフィルムを240mm(MD)×266mm(TD)の大きさでカットして試片を作製し、成形機にてその成形性を評価する。成形性の評価は、10回測定して10回ともクラックなしに成形されたパウチの最大(max)成形深さを測定することで行う。本発明の例示的な具現例では、前述した二次電池用パウチフィルムの製造方法であって、ナイロン及びポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムを1次的にラミネートする段階;及びラミネートされた前記ナイロン及びポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムをバリア層であるアルミニウムとラミネートする段階;を含む二次電池用パウチフィルムの製造方法を提供する。
【0011】
本発明の例示的な具現例では、さらに、前述した二次電池用パウチフィルムで外装された二次電池を提供する。
【0012】
例示的な一具現例において、前記二次電池は、電気自動車用又はエネルギー貯蔵装置用であってよい。
【0013】
また、本発明の例示的な具現例では、二次電池の製造方法であって、前述した二次電池用パウチフィルムで二次電池を外装する段階;を含む二次電池の製造方法を提供する。
【発明の効果】
【0014】
本発明の例示的な具現例では、二次電池用パウチフィルムの高成形の際に生じるエッジ(edge)部のクラック発生現象を抑制できることでエッジ(edge)部を厚く形成することができ、これにより高成形特性に優れる二次電池用パウチフィルムを提供することができる。このような二次電池用パウチフィルムは、二次電池のエネルギー密度を向上させることができるので、電気自動車やエネルギー貯蔵装置などの中大型の二次電池パウチフィルムとして特に有用である。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【発明を実施するための形態】
【0016】
用語の定義
本明細書において二次電池パウチフィルムが所定の層を含んでなるとしているが、必ずしも当該層だけで構成されることではなく、更なる層が含まれてよい。
本明細書において特定の層の「上」に形成されるとは、当該層に直接形成されることだけではなく、更なる他の層を介して形成されることも含む。
【0017】
本明細書においてエッジ(edge)部は、成形部の角部のことを意味する。例えば、成形の際にパウチは185mm(X軸)×85mm(Y軸)×12mm(Z軸)の大きさの直方体のカップ(cup)状に製造される。エッジ部は、該直方体のカップの角部の先端から0.5mm×0.5mm×0.5mmまでの部分のことを意味する。
【0018】
例示的な具現例の説明
以下、本発明の例示的な具現例を詳述する。
【0019】
二次電池用パウチフィルムの高成形の際にエッジ(edge)部にクラックが発生しやすいため、エッジ(edge)部を厚く形成することは難しい。すなわち、エッジ(edge)部をどれだけ厚く形成することができるかが高成形性を評価する尺度になり得る。エッジ(edge)部をどれだけ厚く形成することができるかは、後述するように成形後のエッジ部のバリア層の残存厚さ(成形後の厚さ)で評価することができる。
【0020】
本発明者らは、二次電池用パウチフィルムのポアソン比が高成形の際のエッジ(edge)部の厚さ及びこれによる高成形性に関連していることを見出し鋭意研究を重ねて本発明に至った。
【0021】
具体的に、本発明の例示的な具現例では、二次電池用パウチフィルムであって、そのポアソン比が0.4以上、好ましくは、0.41以上、または0.42以上、または0.43以上、または0.44以上、または0.45以上、または0.46以上、または0.47以上、または0.48以上になるようにし、上限値は0.5である。
【0022】
図1は、ポアソン比の概念を説明する模式図である。
図1に示されたように、パウチフィルムを長手方向に両側から引っ張ると、長手方向へのひみずである縦ひずみ(longitudinal strain)が生じながら、短手方向へのひずみである横ひずみ(lateral strain)も生じるが、ある地点でその伸縮が止まり、さらなる長手方向の伸びや短手方向の縮みがないときの、横ひずみ(lateral strain)を縦ひずみ(longitudinal strain)で除した値(下記の式参照)をポアソン比(Poisson's Ratio)という。
【0023】
【0024】
このようなポアソン比は、例えば、ビデオ伸び計(video extensometer)を用いて測定することができる。具体的に、万能試験機(UTM)を用いて、例えば、23±2℃、45±5%RHの環境条件下において長手方向に引っ張っていき(速度10mm/min)、さらなる伸縮が生じない地点までの縦ひずみと横ひずみを前記ビデオ伸び計(video extensometer)を用いて測定することができる。
【0025】
二次電池用パウチフィルムのポアソン比は、伸び率、主に外層[ナイロン(Nylon)、ポリエチレンテレフタレート(PET)]の伸び率の他にも、貼合過程や貼合後の熟成過程などに影響され得るので、これらを適宜調節することで本発明の例示的な具現例の二次電池用パウチフィルムの所望のポアソン比を得ることができる。
【0026】
二次電池用パウチフィルムのポアソン比が0.4未満になると、後述する実験例からも確認できるように、12mm成形後のエッジ(edge)部のアルミニウム残存厚さが不足し、且つ成形性も劣化するようになる。
【0027】
例示的な一具現例において、下記のように測定した二次電池用パウチフィルムのエッジ(edge)部のアルミニウム残存厚さ(成形前のアルミニウムの厚さは60μm)は、34μm以上、34.5μm以上、35μm以上、35.5μm以上、36μm以上、36.5μm以上、37μm以上、37.5μm以上、38μm以上、38.5μm以上、39μm以上、39.μm以上であってよく、例えば、34~40μmであってよい。
[エッジ(edge)部の残存アルミニウム厚さの測定]
240mm(MD)×266mm(TD)の二次電池用パウチフィルムをクロム(Cr)コートされた1カップ成形機にて成形し、12mm成形してからエッジ(edge)部を断面切削機にて切削しSEMを用いてパウチフィルムのうちのアルミニウム断面の最大厚さ、すなわち、残存厚さを測定する。ここで、成形前のパウチフィルムのうちのアルミニウムの厚さは60μmである。
【0028】
例示的な一具現例において、下記のように測定した二次電池用パウチフィルムの最大成形深さは、16mm以上、16.5mm以上、17mm以上、17.5mm以上、18mm以上、18.5mm以上、19mm以上、19.5mm以上、20mm以上、20.5mm以上、21mm以上、21.5mm以上であるか22mmであってよい。
[成形性の測定]
240mm(MD)×266mm(TD)の二次電池用パウチフィルムをクロム(Cr)コートした1カップ成形機にて成形してその成形性を測定する。
10回測定して10回ともクラックなしに成形された最大成形深さを評価する。成形時の圧力は0.3MPaに固定し、成形機のR値(角部曲率半径値)は4R(4mm)とした。成形時のフォーミングサイズは横90mm×120mmとし、シングルフォーミングで行った。
【0029】
例示的な一具現例において、前記二次電池用パウチフィルムの外層は、ナイロン、PET(ポリエチレンテレフタレート)、PBT(ポリブチレンテレフタレート)などであってよく、好ましくは、ナイロンとPETとの混合層(ナイロンとPETとのラミネートフィルム)から構成されてよい。
【0030】
例示的な一具現例において、前記外層のうちのナイロンフィルムは、成形性の側面から厚さが20μm以上であることが好ましく、25μm以上がより好ましいが、ナイロンフィルムの厚さが30μmを超えると、絶縁破壊電圧が低下することがある。このため、好ましいナイロンフィルムの厚さは20μm~30μm、より好ましくは、25μm~30μmであってよい。ナイロンフィルムの厚さが20μmより小さくなると、成形性が劣化することがある。
【0031】
例示的な一具現例において、前記外層のうちのPETフィルムの厚さが薄く、ナイロンフィルムの厚さが厚いほど成形性に有利である。なお、PETフィルムの厚さが薄いほど絶縁破壊電圧の側面では不利になることがあるので、このような観点から、PETフィルムの厚さは7μm~12μmであることが好ましい。
【0032】
例示的な一具現例において、PETフィルムは、MD及びTD伸び率がそれぞれ90~110%又は95~105%又は100%であるものを用いてよい。前記ナイロンフィルムは、MD伸び率が100~200%又は110~150%又は110~125%で、TD伸び率が70~200%又は70~150%又は74~138%であるものを用いてよい。例えば、ナイロンフィルムのMD伸び率が約125%である場合、TD伸び率は約75%であるものを用いてよく、又はMD伸び率が約110%である場合、TD伸び率が約138%であるものを用いてよい。しかし、以上のPETフィルム及びナイロンフィルムの各伸び率は、本発明の例示的な具現例において所望のポアソン比を得ることができれば特に制限されない。
【0033】
例示的な一具現例において、シーラント層は、ポリプロピレン層(PP)、例えば、無延伸ポリプロピル(CPP)フィルムから構成され、当該ポリプロピレン(PP)層とバリア層とがポリプロピレン系樹脂の押出コーティング(Extrusion Coating;EC)層を介して貼合されてよい。前記ポリプロピレン層(PP)は、要求物性に応じて各種の添加剤(ゴム、エラストマ、スリップ剤など)を含有してよい。
【0034】
例示的な一具現例において、バリア層である金属層は、アルミニウム、SUS合金、銅などの金属から構成されてよく、好ましくは、アルミニウムである。
【0035】
例示的な一具現例において、シーラント層のポリプロピレン(PP)層は、要求物性に応じて各種の添加剤(ゴム、エラストマ、スリップ剤など)を含有してよい。
【0036】
例示的な一具現例において、前記二次電池用パウチフィルムの総厚さは、例えば、60~185μmであってよい。一実施例において、前記二次電池用パウチフィルムは、153μm以上であるか113μm以下のものであってよい。
【0037】
例示的な一具現例において、前記バリア層である金属層の厚さ(成形前の厚さ)は、例えば、20~80μm、好ましくは、40~60μmであってよい。
【0038】
例示的な一具現例において、前記シーラント層の厚さは、例えば、20~80μmであってよい。
【0039】
例示的な一具現例において、前記シーラント層であるポリプロピレン(CPP)層の厚さは、例えば、20~80μmであってよい。
例示的な一具現例において、前記押出コーティング(EC)層の厚さは、例えば、0~60μmであってよい。
【0040】
一方、本発明の例示的な具現例では、前述した二次電池用パウチフィルムの製造方法であって、ナイロン及びポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムを1次的にラミネートする段階;及びラミネートされた前記ナイロン及びポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムをバリア層である金属層、好ましくは、アルミニウムとラミネートする段階;を含む。
【0041】
詳述すると、一般的なソルベントドライラミネーション(SDL)工程では、1次作業としてバリア層(通常、アルミニウムを用いる)にナイロン(Nylon)フィルムをラミネートした後、2次作業としてポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムをその上にラミネートする。このとき、金属であるアルミニウムは伸び率が良くないため、ナイロンに熱的な収縮が生じることに備えて熱収縮が生じないようにできる限り大きな張力を与えてラミネートするようになる。ところでこのときに既に伸びたナイロン(Nylon)フィルムは、パウチにした場合に引っ張りに対する抵抗力が既に大きくなった状態になる。そのため、優れたポアソン比を有し難くなる。
【0042】
これに対し、ナイロンフィルム及びPETフィルムが予めラミネートされた状態で、当該ナイロンフィルム及びPETフィルムがラミネートされた外層をバリア層とラミネート(ナイロンフィルム側がバリア層に向くようにラミネート)する場合には、前述した工程と異なり、より小さい力を受けながらラミネートすることができる。この結果、パウチフィルムは、引っ張りに対する抵抗力がより高くなってポアソン比がより高まり得る。また、外層の製造過程における温度曝露時間が減るため、高い伸び率を保持し得る環境下においてラミネートされるという長所も持つことができる。
【0043】
例示的な一具現例において、前記方法は、ラミネートされた前記ナイロン及びポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムをバリア層とラミネートする際に、その反対側にシーラント層の形成のための樹脂、例えば、ポリプロピレン(PP)樹脂フィルムを併せてラミネートするものであってよい。
【0044】
例示的な一具現例において、前記方法は、バリア層である金属層の両面を第1次及び第2次コートして表面処理を施す両面二重コーティング段階;前記表面処理が施された金属層の両面に接着剤を塗布し乾燥する第3次コーティング段階;及び前記接着剤が塗布及び乾燥された金属層の両面に前述したシーラント層の形成のための樹脂フィルム及び外層フィルム(ナイロン及びPETのラミネートフィルム)をラミネートする段階;を含むものであってよい。
【0045】
一方、本発明の例示的な具現例では、前述した二次電池パウチフィルムで外装された二次電池を提供する。かかる二次電池は、代表的にリチウム二次電池であってよく、特に電気自動車(EV)用やエネルギー貯蔵装置(ESS)用などの中大型の二次電池であってよい。
また、本発明の例示的な具現例では、前述した二次電池パウチフィルムで二次電池を外装する段階;を含む二次電池の製造方法を提供する。
【実施例0046】
以下の実施例を通じて本発明の例示的な具現例をより詳しく説明することにする。なお、本明細書に開示された実施例は単に説明のための目的から例示されたものであって、本発明の実施例は種々の形態で実施でき、本明細書に開示された実施例に限定されると解釈されてはならない。
【0047】
[実験方法]
実施例及び比較例に係るパウチフィルムは、外層、バリア層、シーラント層が積層されたものであって、外層は、最外側のポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム(厚さ12μm)及びその内側のナイロン(Ny)フィルム(厚さ25μm)のラミネートフィルムを用い、バリア層はアルミニウムを用い(厚さ60μm)、シーラント層はポリプロピレン層(厚さ80μm)を用いた。これらの層厚さは、接着剤層の厚さを含めて183μmである。
【0048】
パウチフィルムにおいて外層を接着する方法を下記のように異ならせたことを除いては、実施例及び比較例に係るパウチフィルムを同様にして作製した。
【0049】
先ず、比較例に係るパウチフィルムは、ソルベントドライラミネーション(Solvent Dray Lamination;SDL)方法にて外層を金属層とラミネートした。具体的に、金属層であるアルミニウム層に外層であるナイロンを1次的にラミネートした後、その上にPETを2次的にラミネートした。次いで、内層(シーラント層)であるポリプロピレン(PP)層を押出してパウチフィルムを作製した。この過程では、硬質金属であるアルミニウムの上にあるナイロンが熱収縮し易いため、ナイロンが熱収縮しないようにできる限り大きな張力を加えてラミネートした。
【0050】
一方、実施例に係るパウチフィルムは、既にラミネートされたナイロンフィルム及びPETフィルムをアルミニウムに一度にラミネート(ナイロンフィルムがアルミニウムを向くようにラミネート)し、次いで、その反対側に内層(シーラント層)であるポリプロピレン(PP)層を押出してラミネートした。これにより、外層の製造過程における張力と温度曝露時間が減り、引っ張りに対する抵抗性の高い、すなわち、ポアソン比の高いパウチフィルムを作製することができる。
【0051】
各パウチフィルムは、240mm(MD)×266mm(TD)の大きさで作製した。
【0052】
実施例及び比較例においてポアソン比、エッジ部のアルミニウム残存厚さ、及び成形性の評価のための最大成形深さは、次のように評価した。
【0053】
<ポアソン比の測定>
作製されたパウチフィルムを、万能試験機(UTM)を用いて23±2℃、45±5%RHの環境条件下において長手方向に引っ張っていき(速度10mm/min)、さらなる伸縮が生じない地点までの縦ひずみと横ひずみをビデオ伸び計(video extensometer)を用いて測定して求めた。
【0054】
<成形性及び成形後のエッジ(edge)部のアルミニウム残存厚さの測定>
240mm(MD)×266mm(TD)の二次電池用パウチフィルムを、クロム(Cr)コートされた1カップ成形機にて成形してその成形性及びエッジ部のアルミニウム残存厚さを評価した。
【0055】
成形の結果は、10回測定して10回ともクラックなしに成形が完壁になった最大成形深さにて評価した。成形時の圧力は0.3MPaと固定し、成形機のR値(角部曲率半径値)は4R(4mm)とした。成形時のフォーミングサイズは横90mm×120mmとして、シングルフォーミングにて行った。
【0056】
成形後のエッジ(edge)部のアルミニウム残存厚さの評価は、12mm成形してからエッジ(edge)部を断面切削機にて切削しSEMを用いてパウチフィルムのうちのアルミニウムの断面評価後のアルミニウムの厚さ(最大厚さ、成形後の残存厚さ)を測定した。このようにパウチフィルムにおけるエッジ部のアルミニウムの残存厚さ(成形後の厚さ)を測定することは、成形後のバリア層の残存厚さが成形性に最も大きな影響を与えるためである。
【0057】
実施例及び比較例に係るパウチフィルムのポアソン比、エッジ(edge)部のアルミニウム残存厚さ(単位:μm)、成形性(単位:mm)の評価結果は、それぞれ次の表1~表3に表すとおりである。
【0058】
【0059】
【0060】
【0061】
これらの表か分かるように、ポアソン比が0.4以上である実施例の場合、ポアソン比が0.4未満である比較例に比べて、成形後のエッジ(edge)部のアルミニウム残存厚さが大きく、遥かに成形性に優れていることが分かる。
【0062】
以上、本発明の非制限的且つ例示的な具現例を説明したが、本発明の技術思想は添付の図面や前記説明内容に限定されない。本発明の技術思想を逸脱しない範囲内で種々の形態の変形が可能であることはこの分野の通常の知識を有する者には自明であり、また、かかる形態の変形は本発明の特許請求の範囲に属すると言えよう。