(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024096067
(43)【公開日】2024-07-11
(54)【発明の名称】全固体電池用複合正極、その製造方法及びこれを含む全固体電池
(51)【国際特許分類】
H01M 4/139 20100101AFI20240704BHJP
H01M 4/62 20060101ALI20240704BHJP
H01M 4/13 20100101ALI20240704BHJP
H01M 10/0562 20100101ALI20240704BHJP
H01M 10/052 20100101ALI20240704BHJP
【FI】
H01M4/139
H01M4/62 Z
H01M4/13
H01M10/0562
H01M10/052
【審査請求】未請求
【請求項の数】27
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023221622
(22)【出願日】2023-12-27
(31)【優先権主張番号】10-2022-0190869
(32)【優先日】2022-12-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(31)【優先権主張番号】10-2023-0181407
(32)【優先日】2023-12-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(71)【出願人】
【識別番号】522151617
【氏名又は名称】エスケー オン カンパニー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100106002
【弁理士】
【氏名又は名称】正林 真之
(74)【代理人】
【識別番号】100120891
【弁理士】
【氏名又は名称】林 一好
(72)【発明者】
【氏名】イ ウン ジョン
(72)【発明者】
【氏名】キム ミン キュ
【テーマコード(参考)】
5H029
5H050
【Fターム(参考)】
5H029AJ06
5H029AJ11
5H029AK01
5H029AK02
5H029AK03
5H029AL02
5H029AL06
5H029AL07
5H029AL11
5H029AL12
5H029AM12
5H029CJ02
5H029CJ22
5H029DJ08
5H029DJ09
5H029EJ04
5H029EJ05
5H029EJ07
5H029HJ01
5H029HJ13
5H029HJ14
5H029HJ20
5H050AA12
5H050AA14
5H050BA16
5H050BA17
5H050CA01
5H050CA02
5H050CA08
5H050CA09
5H050CB02
5H050CB07
5H050CB08
5H050CB11
5H050CB12
5H050DA02
5H050DA10
5H050DA13
5H050EA08
5H050EA09
5H050EA10
5H050EA12
5H050EA15
5H050GA02
5H050GA22
5H050HA01
5H050HA13
5H050HA14
5H050HA17
(57)【要約】 (修正有)
【課題】伝導性の向上した全固体電池の複合正極の製造方法、複合正極及びこれを含む全固体電池を提供する。
【解決手段】本開示は、全固体電池の複合正極の製造方法、複合正極及びこれを含む全固体電池に関するものであって、上記複合正極の製造方法は、正極活物質及び酸化物系固体電解質を含む複合正極用スラリーを提供する段階、上記スラリーを基材上に塗布して複合酸化物シートを形成する段階と、上記複合酸化物シートに光を照射して光焼結することにより焼結複合酸化物シートを形成する段階と、を含み、上記複合正極は、正極集電体と、上記正極集電体の少なくとも一面上に形成された正極活物質及び酸化物系固体電解質を含む焼結複合酸化物シートと、を含み、曲率半径が5R以下である。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
a.正極活物質及び酸化物系固体電解質を含むスラリーを提供する段階と、
b.前記スラリーを基材上に塗布して複合酸化物シートを形成する段階と、
c.前記複合酸化物シートに光を照射して光焼結することにより焼結複合酸化物シートを形成する段階と、
を含む、複合正極の製造方法。
【請求項2】
前記光焼結はパルス方式で行われるものである、請求項1に記載の複合正極の製造方法。
【請求項3】
前記光焼結は、パルス当たりの光照射時間が1000~4500μsである、請求項1に記載の複合正極の製造方法。
【請求項4】
前記光焼結時に照射された光エネルギー強度は25~150J/s・cm2である、請求項1に記載の複合正極の製造方法。
【請求項5】
前記正極活物質と酸化物系固体電解質とは150℃以上の最適な焼結温度差を有するものである、請求項1に記載の複合正極の製造方法。
【請求項6】
複合正極用スラリーは、炭素系導電材又は金属酸化物系導電材をさらに含む、請求項1に記載の複合正極の製造方法。
【請求項7】
前記炭素系導電材は、天然黒鉛、人造黒鉛、膨張黒鉛、カーボンブラック、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、チャンネルブラック、ファーネスブラック、ランプブラック、サマーブラック、炭素繊維、フッ化カーボン、グラフェン、炭素ナノ繊維、黒鉛化炭素フレーク、炭素チューブ、炭素ナノチューブ及び活性炭からなる群から選ばれる少なくとも一種である、請求項6に記載の複合正極の製造方法。
【請求項8】
前記金属酸化物系導電材は、インジウム錫酸化物(ITO)、インジウム亜鉛酸化物(IZO)、アンチモン錫酸化物(ATO)、フッ化錫酸化物(FTO)、アルミニウム亜鉛酸化物(AZO)、マグネシウムインジウム酸化物(MIO)、亜鉛ガリウム酸化物(GZO)、ガリウムインジウム酸化物(GIO)、インジウム-ガリウム-亜鉛酸化物(IGZO)、ニオブ-ストロンチウム-チタン酸化物(Nb-STO)、インジウムカドミウム酸化物(ICO)、亜鉛ホウ素酸化物(BZO)、SZO(SiO2-ZnO)及びインジウム酸化物(In2O3)からなる群から選ばれる少なくとも一種である、請求項6に記載の複合正極の製造方法。
【請求項9】
複合正極用スラリーは光焼結助剤をさらに含む、請求項1に記載の複合正極の製造方法。
【請求項10】
前記光焼結助剤は、クロム(Cr)、マンガン(Mn)、コバルト(Co)、ニッケル(Ni)、銅(Cu)、ニオブ(Nb)、モリブデン(Mo)、ルテニウム(Ru)、ロジウム(Rh)、パラジウム(Pd)、バナジウム(V)、タングステン(W)、鉄(Fe)、セリウム(Ce)、プラセオジム(Pr)、ネオジム(Nd)、テルビウム(Tb)、エルビウム(Er)、亜鉛(Zn)、ビスマス(Bi)、ヒ素(As)、アンチモン(Sb)及びセレン(Se)からなる群から選ばれる少なくとも一種の金属及びリチウムを含む酸化物粒子である、請求項9に記載の複合正極の製造方法。
【請求項11】
複合正極用スラリーはバインダーをさらに含む、請求項1から10のいずれか一項に記載の複合正極の製造方法。
【請求項12】
前記複合酸化物シートと焼結複合酸化物シートはX線回折分析により測定した結晶相が同じものである、請求項1に記載の複合正極の製造方法。
【請求項13】
前記基材は正極集電体である、請求項1に記載の複合正極の製造方法。
【請求項14】
a.正極集電体と、
b.正極活物質及び酸化物系固体電解質を含む焼結複合酸化物シートと、を含み、
前記正極集電体の少なくとも一面上に形成され、
曲率半径が5R以下である、複合正極。
【請求項15】
曲率半径が0.1R以上5R以下である、請求項14に記載の複合正極。
【請求項16】
前記正極活物質と酸化物系固体電解質とは、150℃以上の最適な焼結温度差を有する、請求項14に記載の複合正極。
【請求項17】
前記焼結複合酸化物シートは、焼結複合酸化物シートの重量に対して正極活物質と酸化物系固体電解質との間の二次相を10重量%以下の含量で含む、請求項14に記載の複合正極。
【請求項18】
次の式2により計算した曲げ強度(σ)が4GPa以上の値を有する、請求項14に記載の複合正極:
【数1】
ここで、焼結複合酸化物シートは、平行な上部プレート及び下部プレートを含み、上部プレートが下部プレートに向かって下降し、
前記式(2)において、
EはYoung’s Modulusであり、tは焼結複合酸化物シートの中心部(Center部)における厚さ(μm)であり、Dは前記焼結複合酸化物シートが割れる直前の前記上部プレートと下部プレートとの間の距離(μm)である。
【請求項19】
前記焼結複合酸化物シートは、10-5S/cm以上のイオン伝導度を有する、請求項14に記載の複合正極。
【請求項20】
前記焼結複合酸化物シートは、10重量%以下の有機化合物を含む、請求項14に記載の複合正極。
【請求項21】
前記焼結複合酸化物シートは、炭素系導電材又は金属酸化物系導電材をさらに含む、請求項14に記載の複合正極。
【請求項22】
前記炭素系導電材は、天然黒鉛、人造黒鉛、膨張黒鉛、カーボンブラック、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、チャンネルブラック、ファーネスブラック、ランプブラック、サマーブラック、炭素繊維、フッ化カーボン、グラフェン、炭素ナノ繊維、黒鉛化炭素フレーク、炭素チューブ、炭素ナノチューブ及び活性炭を含む群から選ばれる少なくとも一種である、請求項21に記載の複合正極。
【請求項23】
前記金属酸化物系導電材は、インジウム錫酸化物(ITO)、インジウム亜鉛酸化物(IZO)、アンチモン錫酸化物(ATO)、フッ化錫酸化物(FTO)、アルミニウム亜鉛酸化物(AZO)、マグネシウムインジウム酸化物(MIO)、亜鉛ガリウム酸化物(GZO)、ガリウムインジウム酸化物(GIO)、インジウム-ガリウム-亜鉛酸化物(IGZO)、ニオブ-ストロンチウム-チタン酸化物(Nb-STO)、インジウムカドミウム酸化物(ICO)、亜鉛ホウ素酸化物(BZO)、SZO(SiO2-ZnO)及びインジウム酸化物(In2O3)からなる群から選ばれる少なくとも一種である、請求項21に記載の複合正極。
【請求項24】
前記焼結複合酸化物シートは光焼結助剤をさらに含む、請求項14に記載の複合正極。
【請求項25】
前記光焼結助剤は、クロム(Cr)、マンガン(Mn)、コバルト(Co)、ニッケル(Ni)、銅(Cu)、ニオブ(Nb)、モリブデン(Mo)、ルテニウム(Ru)、ロジウム(Rh)、パラジウム(Pd)、バナジウム(V)、タングステン(W)、鉄(Fe)、セリウム(Ce)、プラセオジム(Pr)、ネオジム(Nd)、テルビウム(Tb)、エルビウム(Er)、亜鉛(Zn)、ビスマス(Bi)、ヒ素(As)、アンチモン(Sb)及びセレン(Se)からなる群から選ばれる少なくとも一種及びリチウムを含むリチウム金属酸化物粒子である、請求項24に記載の複合正極。
【請求項26】
前記正極集電体の曲率半径は、前記焼結複合酸化物シートの曲率半径よりも小さいものである、請求項14に記載の複合正極。
【請求項27】
請求項14から26のいずれか一項に記載の複合正極と、固体電解質層と、負極と、を含む、全固体リチウム二次電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、全固体電池用複合正極の製造方法及び全固体電池用複合正極に関し、さらに、上記全固体電池用複合正極を含む全固体電池に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的なリチウムイオンバッテリ(lithium ion battery、LIB)は液体電解質を使用する。これにより、液相の電解質が負極及び正極の空隙内に浸透し、リチウムイオンの伝導経路としての機能を果たす。
【0003】
リチウムイオンバッテリは、さらに固体電解質を使用することができるが、電極活物質と固体電解質との間の面接触が減少し、通常の液体電解質を使用するリチウムイオンバッテリに比べて、劣った特性を有する。このような面接触領域の減少の結果により、リチウムイオンの導電性が低下し、電極活物質と固体電解質との間の界面に抵抗が大きく発生する。
【0004】
本分野では、伝導性の向上したリチウムイオンバッテリのような全固体電池用複合正極を提供すべき必要性が高くなっている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本開示では、全固体電池用複合正極及びそれを製造する方法が提供される。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示は、一態様として、例えば、全固体電池用の複合正極の製造方法を提供しようとするものであって、a)正極活物質及び酸化物系固体電解質を含むスラリーを提供する段階と、b)上記スラリーを基材上に塗布して複合酸化物シートを形成する段階と、c)上記複合酸化物シートに光を照射して光焼結することにより焼結複合酸化物シートを形成する段階と、を含む。
【0007】
上記光焼結はパルス方式で行われることができる。
【0008】
上記光焼結は、パルス当たりの光照射時間が1、000~4、500μsであってもよい。
【0009】
上記光焼結時に照射された光エネルギー強度は、25~150J/s・cm2であってもよい。
【0010】
上記正極活物質と酸化物系固体電解質とは、150℃以上の最適な焼結温度差を有するものを使用することができる。
【0011】
上記スラリーは、炭素系導電材又は金属酸化物系導電材をさらに含むことができる。
【0012】
上記炭素系導電材は、天然黒鉛、人造黒鉛、膨張黒鉛、カーボンブラック、アセチレンブラック、ケッチェンブラック(KETJENBLACK(登録商標))、チャンネルブラック、ファーネスブラック、ランプブラック、サマーブラック、炭素繊維、フッ化カーボン、グラフェン、炭素ナノ繊維、黒鉛化炭素フレーク、炭素チューブ、炭素ナノチューブ及び活性炭を含む群から選ばれる少なくとも一種であってもよい。
【0013】
上記金属酸化物系導電材は、インジウム錫酸化物(ITO)、インジウム亜鉛酸化物(IZO)、アンチモン錫酸化物(ATO)、フッ化錫酸化物(FTO)、アルミニウム亜鉛酸化物(AZO)、マグネシウムインジウム酸化物(MIO)、亜鉛ガリウム酸化物(GZO)、ガリウムインジウム酸化物(GIO)、インジウム-ガリウム-亜鉛酸化物(IGZO)、ニオブ-ストロンチウム-チタン酸化物(Nb-STO)、インジウムカドミウム酸化物(ICO)、亜鉛ホウ素酸化物(BZO)、SZO(SiO2-ZnO)及びインジウム酸化物(In2O3)からなる群から選ばれる少なくとも一種であってもよい。
【0014】
上記スラリーは光焼結助剤をさらに含むことができる。
【0015】
上記光焼結助剤は、クロム(Cr)、マンガン(Mn)、コバルト(Co)、ニッケル(Ni)、銅(Cu)、ニオブ(Nb)、モリブデン(Mo)、ルテニウム(Ru)、ロジウム(Rh)、パラジウム(Pd)、バナジウム(V)、タングステン(W)、鉄(Fe)、セリウム(Ce)、プラセオジム(Pr)、ネオジム(Nd)、テルビウム(Tb)、エルビウム(Er)、亜鉛(Zn)、ビスマス(Bi)、ヒ素(As)、アンチモン(Sb)及びセレン(Se)からなる群から選ばれる少なくとも一つの元素及びリチウムを含む酸化物粒子であってもよい。
【0016】
上記スラリーはバインダーをさらに含むことができる。
【0017】
上記複合酸化物シートと焼結複合酸化物シートは、それぞれX線回折分析により測定されたものであり、実質的に同じ結晶相を有することができる。
【0018】
上記基材は正極集電体であってもよい。
【0019】
本開示は、また、全固体電池の複合正極を提供し、上記複合正極は、a)正極集電体と、b)上記正極集電体の少なくとも一面上に形成された正極活物質及び酸化物系固体電解質を含む、焼結複合酸化物シートと、を含み、前記焼結複合酸化物シートは、前記正極集電体の少なくとも一面上に形成され、上記複合正極は曲率半径が5R以下である。
【0020】
上記焼結複合酸化物シートは、曲率半径が約0.1R以上約5R以下であってもよい。
【0021】
上記正極活物質と酸化物系固体電解質とは、約150℃以上の焼結温度差を有することができる。
【0022】
上記焼結酸化物シートは、正極活物質と酸化物系固体電解質との間の二次相を10重量%以下の含量で含むことができる。
【0023】
上記焼結複合酸化物シートは、次の式2により計算した曲げ強度(σ)が
4GPa以上の値を有することができる。
【数1】
このとき、上記焼結複合酸化物シートは、平行な上部プレート及び下部プレートの間に配置され、上記上部プレートが上記下部プレートに向かって下降し、上記式2において、EはYoung’s Modulusであり、tは上記焼結複合酸化物シートの中心部(Center部)におけるの厚さ(μm)であり、Dは上記焼結複合酸化物シートが割れる直前の上部プレート及び下部プレート間の距離(μm)である。
【0024】
上記焼結酸化物シートは、10-5S/cm以上のイオン伝導度を有することができる。
【0025】
上記焼結酸化物シートは、10重量%以下の有機化合物を含むことができる。
【0026】
上記焼結酸化物シートは、炭素系導電材又は金属酸化物系導電材をさらに含むことができる。
【0027】
上記炭素系導電材は、天然黒鉛、人造黒鉛、膨張黒鉛、カーボンブラック、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、チャンネルブラック、ファーネスブラック、ランプブラック、サマーブラック、炭素繊維、フッ化カーボン、グラフェン、炭素ナノ繊維、黒鉛化炭素フレーク、炭素チューブ、炭素ナノチューブ及び活性炭を含む群から選ばれる少なくとも一種であってもよい。
【0028】
上記金属酸化物系導電材は、インジウム錫酸化物(ITO)、インジウム亜鉛酸化物(IZO)、アンチモン錫酸化物(ATO)、フッ化錫酸化物(FTO)、アルミニウム亜鉛酸化物(AZO)、マグネシウムインジウム酸化物(MIO)、亜鉛ガリウム酸化物(GZO)、ガリウムインジウム酸化物(GIO)、インジウム-ガリウム-亜鉛酸化物(IGZO)、ニオブ-ストロンチウム-チタン酸化物(Nb-STO)、インジウムカドミウム酸化物(ICO)、亜鉛ホウ素酸化物(BZO)、SZO(SiO2-ZnO)及びインジウム酸化物(In2O3)からなる群から選ばれる少なくとも一種であってもよい。
【0029】
上記焼結酸化物シートは、光焼結助剤をさらに含むことができる。
【0030】
上記光焼結助剤は、クロム(Cr)、マンガン(Mn)、コバルト(Co)、ニッケル(Ni)、銅(Cu)、ニオブ(Nb)、モリブデン(Mo)、ルテニウム(Ru)、ロジウム(Rh)、パラジウム(Pd)、バナジウム(V)、タングステン(W)、鉄(Fe)、セリウム(Ce)、プラセオジム(Pr)、ネオジム(Nd)、テルビウム(Tb)、エルビウム(Er)、亜鉛(Zn)、ビスマス(Bi)、ヒ素(As)、アンチモン(Sb)及びセレン(Se)からなる群から選ばれる少なくとも一種の元素及びリチウムを含むリチウム金属酸化物粒子であってもよい。
【0031】
上記正極集電体は、上記焼結複合酸化物シートよりも曲率半径が小さいものであってもよい。
【0032】
本開示は、また、上記の複合正極のうち少なくとも一つと固体電解質層及び負極を含む全固体リチウム二次電池を提供する。
【発明の効果】
【0033】
本開示に係る複合正極は、光焼結により正極活物質と酸化物系固体電解質との間に広い接点を形成し、正極活物質と酸化物系固体電解質の界面での抵抗が小さく、リチウムイオン伝導性に優れる。
【0034】
本開示によれば、正極活物質と酸化物系固体電解質粒子との焼結温度差が大きいにもかかわらず、光焼結することにより正極活物質及び固体電解質を含む複合正極を製造することができ、製造された複合正極は柔軟性を維持して、様々な形態に容易に加工することができる。
【0035】
また、本開示の方法によれば、高温焼結により複合正極を製造する場合に比べて短時間で複合正極を製造することができ、異種の酸化物粒子間の反応性を最小化することができ、二次相の形成を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【
図1】焼結の進行につれて粒子間の連結構造及び粒子形状が変化する形態をそれぞれ段階的に示す概念図である。
【
図2】複合正極の曲率半径及び曲げ強度を測定する方法及び上記方法に使用される装置を概略的に示す図である。
【
図3】実施例1で得られた複合正極であって、焼結複合酸化物シートの表面を撮影した写真である。
【
図4】実施例1で得られた複合正極の焼結複合酸化物シート及び焼結前の複合酸化物シートのX線回折図を示す図である。
【
図5】曲率半径及び曲げ強度を測定中の実施例1の複合正極柔軟性を示す写真である。
【発明を実施するための形態】
【0037】
本明細書の図面に一般的に説明及び図示されたように、実施例の構成要素は、説明された例示的な実施例に加えて、非常に様々な他の構成で配列及び設計され得ることを容易に理解することができる。したがって、図示のような例示的な実施例に対する以下のより詳細な説明は、特許請求の範囲に記載されている実施例の範囲を限定しようとするものではなく、単に例示的な実施例を代表するものである。
【0038】
本明細書全体において「一実施例」又は「特定の実施例」に対する参照は、当該実施例に関連して説明された特定の特徴、構造、又は特性が少なくとも一つの実施例に含まれることを意味する。したがって、本明細書全体にわたっていくつかの位置に現れる「一実施例において」又は「特定の実施例において」などの語句は、すべて同じ実施例を示すものではない。
【0039】
以下、本明細書において、特に断りのない限り、層、膜、薄膜、領域、板などの部分が他の部分「の上に」又は「上に」あると言うとき、これは、他の部分の「真上に」ある場合及び「接触する」場合だけでなく、その中間に層又は物体が介在された場合も含むものであることができる。
【0040】
本明細書及び添付の特許請求の範囲に使用されているように、単数形は、文脈上明らかに別段の指示がない限り、複数形を含む。したがって、例えば、「光源」に対する記載は、複数のそのような光源、及び当業者に知られているその等価物などを含み、「上記光源」に対する記載は、そのような一つ以上の光源、及び当業者に公知されている光源、並びにその等価物を示す。
【0041】
「約」という用語は、それが指す値の10%以内を意味するために使用される。例えば、「約50」は45~55の数値範囲を示す。温度の修正に使用される場合、「約」は、命名された値の5度以内の範囲を示す。例えば、約20℃は15℃~25℃の温度範囲を示す。
【0042】
特に明示しない限り、本明細書で使用されるすべての数値範囲は、下限及び上限を含む範囲内のすべての値、定義された範囲内で形態及び範囲により論理的に導出される増分、すべての二重制限値、及び様々な形態で定義された数値範囲の上限と下限のすべての可能な組み合わせを含む範囲内におけるすべての値を含むことができる。本明細書において特に定義しない限り、実験的誤謬や値の四捨五入などにより数値範囲を逸脱する可能性がある値も、定義された数値範囲に含まれる。
【0043】
本開示は、正極活物質及び酸化物系固体電解質を含む、例えば、全固体電池用の複合正極の製造方法及びそれにより製造された複合正極を提供する。有利には、例えば、光焼結技術(例えば、レーザ焼結)を使用して、ここに開示されている方法に従って製造された複合正極は、耐久性、柔軟性及び伝導性のような全固体電池の製造に有利な特性を示すことができる。
【0044】
上記複合正極は、正極活物質及び酸化物系固体電解質を含む複合正極用スラリーを提供する段階と、上記スラリーを正極集電体の一表面に塗布する段階と、上記スラリーが塗布された正極集電体の表面を焼結して正極集電体上に焼結された複合酸化物シートとして複合正極を形成する段階と、を含むことにより製造することができる。
【0045】
上記正極活物質は、特に限定しないが、リチウムイオンを吸着放出することができるリチウム遷移金属酸化物を含むことができる。本開示において複合正極に含まれ得る正極活物質の非限定的な例は、本開示においても好適に使用することができ、例えば、NCM(ニッケル、コバルト、元素M)系リチウム複合酸化物、NCA(ニッケル、コバルト、アルミニウム)系リチウム複合酸化物、又はNCMA(ニッケル、コバルト、元素M、アルミニウム)系リチウム複合酸化物、LiMn1.5Ni0.5O4のようなマンガンとニッケルのリチウム複合酸化物、チタン酸リチウム、コバルト酸リチウム(リチウムコバルト酸化物)、ニッケル酸リチウム、マンガン酸リチウム、酸化チタン、酸化ニオブ、酸化タングステン、酸化モリブデン、LiMPO4(M=Fe、Mn、Co、Ni)、Li3V2(PO4)3などのようなリン酸金属リチウムが挙げられる。NCM系リチウム複合酸化物及びNCMA系リチウム複合酸化物において、元素Mは、Na、Mg、Ca、Y、Ti、Zr、Hf、V、Nb、Ta、Cr、Mo、W、Mn、Fe、Cu、Ag、Zn、B、Al、Ga、C、Si、Sn、Ba及びZrからなる群から選択される一つ以上の元素であってもよい。
【0046】
具体的に、上記正極活物質は、LiaNixM1-xO2+y(0.9≦a≦1.2、0.5≦x≦0.99、-0.1≦y≦0.1)であることができる。元素Mは、Na、Mg、Ca、Y、Ti、Zr、Hf、V、Nb、Ta、Cr、Mo、W、Mn、Co、Fe、Cu、Ag、Zn、B、Al、Ga、C、Si、Sn、Ba又はZrから選ばれる1種以上の元素を表すことができる。ここで、具体的に0.95≦a≦1.08であってもよく、xは0.6以上、0.8以上、0.8超過、0.9以上、又は0.98以上であってもよい。特定の実施形態では、元素MはCoおよびMnを含む。一実施形態では、元素MはCo、Mn、およびAlを含むことができる。
【0047】
上記正極活物質は、NCM系正極活物質を含むことができ、ここで元素Mはマンガンであり、前記NCM系正極活物質は、Lia(NixCoyMnz)O2で表されることができ、ここで、aは0.9~1.2であり、xは0を超えて0.99以下であり、yは0と0.5の間であり、zは0と0.5の間で、x、y、zの合計は1です。一実施形態として、NCM系正極活物質は、Alをさらに含むことができる(例えば、NCMA系正極活物質である)。
【0048】
上記正極活物質はNCM系正極活物質を含み、元素Mはアルミニウムであり得る(例えば、NCA系正極活物質である)。特定の実施形態では、NCA系正極活物質はLia(NixCoyAlz)O2で表され、aは0.9~1.2であり、xは0を超えて0.99以下であり、yは0と0.5の間であり、zは0と0.5の間で、x、y、zの合計は1です。一実施形態として、aは0.95~1.08であり得、xは0.6以上、0.8以上、0.9以上、または0.98以上であり得る。
【0049】
また、上記正極活物質は、Li1+xM1-xO2で表されるLLO(Li rich layered oxides、Over Lithiated Oxides、Over-lithiated layered oxide、OLO、LLOs)であることができ、ここで、0≦x≦0.4、元素MはNa、Mg、Ca、Y、Ti、Zr、Hf、V、Nb、Ta、Cr、Mo、W、Ni、Mn、Co、Fe、Cu、Ag、Zn、B、Al、Ga、C、Si、Sn、Ba及びZrのうち少なくとも一つの元素を含むことができ、具体的には元素MはNi、Co、Mn、又はAlを含むことができ、より具体的には、一実施形態では、元素MはNi、CoおよびMnを含むことができる。一実施形態として、元素MはNi、Co、Mn、およびAlを含むことができる。
【0050】
いくつかの例示的な実施例において、上記正極活物質は、正極活物質の表面上で、ドーピング元素又はコーティング物質をさらに含むことができる。例えば、上記ドーピング元素又はコーティング物質は、Al、Ti、Ba、Zr、Si、B、Mg、P、W、Na、V、Cu、Zn、Ge、Ag、Ba、Nb、Ga、Cr、Sr、Y、Mo又はこれらの合金あるいはこれらの酸化物の2以上を含むことができる。また、一実現例として、上記ドーピング元素はAl、Ti、Ba、Zr、Si、B、Mg、P、W、Na、V、Cu、Zn、Ge、Ag、Ba、Nb、Ga、Cr、Sr、Y、Mo、合金又はこれらの酸化物の2以上を含むことができる。上記ドーピング元素又はコーティング物質によって上記正極活物質がパッシベーションされ、貫通安定性及び寿命がさらに向上できる。
【0051】
一部の実現例において、正極活物質は、まず、ここに記載のようなリチウム遷移金属酸化物を含む一次粒子の形態で製造されることができる。一実現例において、一次粒子が緻密化して生成された二次粒子であり得る。
【0052】
一実現例において、多数の一次粒子が実質的に一つの二次粒子として組み立て又は凝集して、多数の二次粒子として正極活物質を提供することができる。一実現例では、一次粒子が凝集又は組み立てられず、複数の一次粒子形態の正極活物質を提供することができる。一実現例において、正極活物質は、複数の一次粒子及び複数の一次粒子を凝集又は組み立てることによって形成される複数の二次粒子を含む組成物として提供することができる。
【0053】
一実施形態として、複数の一次粒子および複数の二次粒子を含む組成物は、例えば、一次粒子を10個超(例えば、11個、12個、13個、14個) 、15個、20個、25個等)して凝集又は組み立てて実質的に1つの単一粒子から形成された二次粒子又は大部分の二次粒子とは異なる形状を有するより大きい又は他の形状の二次粒子を正極活物質から排除するために排除工程を経てもよい。上記正極活物質が同様に成形された粒子(単一粒子又は二次粒子)を含む場合、電池の充放電時に粒子のクラックが減少し、電解液と反応するBET表面積が減少して、電解液と正極活物質の副反応が減少することができる。これにより、二次電池の寿命特性及び充放電の繰り返し時における容量維持率がさらに改善できる。
【0054】
正極活物質と共に、ここに開示されている複合正極の製造に使用されるスラリーは酸化物系固体電解質を含む。上記酸化物系固体電解質は、これに限定されるものではないが、ペロブスカイト型酸化物、ガーネット型酸化物又はNASICON構造の酸化物などが挙げられる。
【0055】
ここに開示されている複合正極に使用できる上記ペロブスカイト型酸化物としては、例えば、チタン酸リチウムランタン又はニオブ酸リチウムランタン(LixLa(1-x)/3NbO3)(0≦x≦1)が挙げられる。また、ここに開示されている複合陽極に使用することができる上記ガーネット型酸化物としては、リチウム、ランタン、ジルコニウム及び酸素を含むものであって、Li7-3x+y-zAxLa3-yByZr2-zMzO12の化学式で表される酸化物であることができる。上記化学式において、0≦x≦1、0≦y≦1、0≦z≦1であり、AはLiの置換ドーピング元素であり、BはLa置換ドーピング元素であり、MはZr置換ドーピング元素であり、上記A及びBはそれぞれ独立して、アルミニウム(Al)、ガリウム(Ga)、バリウム(Ba)、マグネシウム(Mg)、カルシウム(Ca)、ストロンチウム(Sr)、カリウム(K)、セリウム(Ce)及びルビジウム(Rb)からなる群から選ばれた少なくともいずれか一つであってもよく、上記Mは、モリブデン(Mo)、タングステン(W)、アンチモン(Sb)、イットリウム(Y)、ニオブ(Nb)及びタンタル(Ta)からなる群から選ばれた少なくともいずれか一つであってもよい。上記ガーネット型酸化物はこれに限定されるものではないが、例えば、Li7La3Zr2O12、Li5La3Nb2O12、Li5La3Ta2O12又はLi6La2BaTa2O12であってもよい。ここに開示されている複合陽極に使用することができる上記NASICON構造の酸化物は、LAGP(Li1+xAlxGe2-x(PO4)3(0≦x≦1))、LATP(Li1+xAlxTi2-x(PO4)3(0≦x≦1))及びLZP(Li1+4xZr2-x(PO4)3(0≦x≦0.4))からなる群から選ばれる少なくとも一種が挙げられる。
【0056】
本開示の複合正極の製造に使用されたスラリーは正極活物質及び酸化物系固体電解質を所定の割合で含むことができる。一実現例として、上記スラリーは、これに限定されるものではないが、上記複合正極用スラリーの固形分重量に対して上記正極活物質を約20~約90重量%の含量で含み、上記酸化物系固体電解質を約10~約80重量%の含量で含むことができる。
【0057】
本開示の複合正極は導電材をさらに含むことができる。上記導電材はこれに限定されるものではないが、例えば、天然黒鉛、人造黒鉛、膨張黒鉛、カーボンブラック、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、チャンネルブラック、ファーネスブラック、ランプブラック、サマーブラック、炭素繊維、フッ化カーボン、グラフェン、炭素ナノ繊維、黒鉛化炭素フレーク、炭素チューブ、炭素ナノチューブ及び活性炭を含む群から選ばれる少なくとも一種の炭素系導電材を使用することができる。
【0058】
一実施形態として、導電材料は、金属粉末、金属繊維などのような少なくとも1つの金属ベースの導電材料を含むか、またはさらに含むことができる。金属系導電剤に含まれ得る金属としてはこれに限定されるものではないが、銅、ニッケル、アルミニウム、インジウム、錫、銀などを含むことができる。
【0059】
一実施形態として、金属系導電材料の少なくとも1つはインジウム錫酸化物(ITO、Indium Tin Oxide)、インジウム亜鉛酸化物(IZO、Indium Zinc Oxide)、アンチモン錫酸化物(ATO、Antimony Tin Oxide)、フッ化錫酸化物(FTO、Fluoro Tin Oxide)、アルミニウム亜鉛酸化物(AZO、Aluminum Zinc Oxide)、マグネシウムインジウム酸化物(MIO、Magnesium Indium Oxide)、亜鉛ガリウム酸化物(GZO、Gallium Zinc Oxide)、ガリウムインジウム酸化物(GIO、Galliumm Indium Oxide)、インジウム-ガリウム-亜鉛酸化物(IGZO、Indium Gallium Zinc Oxide)、ニオブ-ストロンチウム-チタン酸化物(Nb-STO、Niobium Strontium Titanium Oxide)、インジウムカドミウム酸化物(ICO、Indium Cadmium Oxide)、亜鉛ホウ素酸化物(BZO、Boron Zinc Oxide)、SZO(SiO2-ZnO)及びインジウム酸化物(In2O3)を含む群から選ばれる少なくとも一種の金属酸化物系導電材を使用することができる。
【0060】
複合陽極を製造するために使用されるスラリーは、導電材料を所定の含有量で含むことができる。一実施形態では、導電材料は、スラリーの固型重量に対して約0.1~約15重量%の含有量で複合正極を製造するスラリーに含まれてもよい。
【0061】
ここに開示されている一実現例による複合正極は、可視光線領域(例えば、約380nm~約780nmの波長範囲)の光エネルギーを吸収することができる素材である光焼結助剤を選択的に含むことができる。上記光焼結助剤としては、有色の酸化物粒子を含むことができる。上記酸化物粒子の色は特に限定されず、ある一つの単一色であってもよく、できるだけ多くの光を反射して複数の色を示してもよい(すなわち、CIELAB色差計によるL値が100の場合)。
【0062】
前記有色の酸化物粒子はリチウム金属酸化物を含むことができ、上記金属は、クロム(Cr)、マンガン(Mn)、コバルト(Co)、ニッケル(Ni)、銅(Cu)、ニオブ(Nb)、モリブデン(Mo)、ルテニウム(Ru)、ロジウム(Rh)、パラジウム(Pd)、バナジウム(V)、タングステン(W)及び鉄(Fe)からなる群から選ばれる少なくとも一つを含む遷移金属元素;セリウム(Ce)、プラセオジム(Pr)、ネオジム(Nd)、テルビウム(Tb)、及びエルビウム(Er)からなる群から選ばれる少なくとも一つを含むランタン族元素;亜鉛(Zn)及びビスマス(Bi)からなる群から選ばれる少なくとも一つを含むその他の金属元素;ヒ素(As)及びアンチモン(Sb)からなる群から選ばれる少なくとも一つの準金属元素;及びセレン(Se)を含む非金属元素からなる群から選ばれる少なくとも一つの元素であり得る。一実施形態として、着色酸化物粒子は、また、バナジウム(IV)オキシド(V2O4)、タングステン(III)オキシド(WO3)、アイアン(III)オキシド(Fe2O3)及びビスマス(III)オキシド(Bi2O3)からなる群から選択された1つ以上を含み得る。
【0063】
例えば、正極活物質が可視光線領域の光エネルギー、特に380nm~780nmの波長の電磁波長において光エネルギーを吸収することができる場合、光焼結助剤は含まれなくてもよく、又は少量含まれてもよい。これは、正極活物質が着色されたときの一例であり得る。しかし、一例として、正極活物質が可視光線領域のエネルギーを吸収しないか、又は実質的に吸収しない場合、光焼結助剤が有益であり得る。上記光焼結助剤はイオン伝導度を示さないため、含む場合、イオン伝導特性を低下させることがある。したがって、このような効果を回避するために、上記光焼結助剤は、上記複合正極用スラリーの固形分重量に対して15重量%以下の含量で含むことができる。
【0064】
一実施形態として、本開示の複合陽極を製造するために使用されるスラリーはバインダーも含み得る。上記バインダーは、複合正極内の粒子間の結着性および正極集電体に対するスラリーの結着性を強化することができる。スラリー内に投入されたほとんどまたは全てのバインダーは製造過程、例えば焼結中に揮発するので、バインダーとしては結着性を提供することができる有機樹脂であれば特に限定することなく多様に適用することができる。
【0065】
例えば、上記バインダーとしては、アクリル樹脂、ポリビニリデンフルオライド-ヘキサフルオロプロピレンコポリマー(PVdF-co-HFP)、ポリビニリデンフルオライド(polyvinylidenefluoride、PVdF)、ポリアクリロニトリル(polyacrylonitrile)、ポリアクリル酸(poly acrylic acid)、ポリアクリル酸ナトリウム、ポリイミド(poly imide)、ポリメチルメタクリレート(polymethylmethacrylate)、スチレン-ブタジエンラバー(SBR)、アクリレートスチレン-ブタジエンゴム、ポリビニルアルコール、ポリビニルブチラール、でん粉、エチルセルロース(ethyl-cellulose)、メチルセルロース(methyl-cellulose)、ヒドロキシプロピルセルロース、再生セルロース、ポリビニルピロリドン、テトラフルオロエチレン、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン-プロピレン-ジエンポリマー(EPDM)、スルホン化-EPDM、カルボキシメチルセルロース(carboxymethyl cellulose:CMC)、フッ素ゴム、プロピレンと炭素数が2~8のオレフィン共重合体、(メタ)アクリル酸と(メタ)アクリル酸アルキルエステルの共重合体、カルボン酸アルキルエステル系単量体及びエチレン性不飽和カルボン酸単量体、並びにこれらの様々な共重合体からなる群から選ばれる少なくとも一つが挙げられる。より具体的には、アクリル樹脂、ポリビニルアルコール及びポリビニルブチラールからなる群から選ばれる少なくとも1種のバインダーを使用することができる。
【0066】
上記バインダーは複合正極の製造過程で影響を及ぼすものであり、複合正極シートの製造に寄与する程度であれば、その含量を特に限定せず、例えば、上記複合正極用スラリーの固形分重量に対して0.1~30重量%の含量で含むことができる。
【0067】
さらに、上記複合正極用スラリーは溶媒を含むことができる。上記溶媒は特に限定されるものではないが、有機溶媒を含むことができ、水系溶媒を含むことができ、例えば、水、メチルエチルケトン、ジメチルケトン、N-メチル-2-ピロリドン(NMP)、エチルアセテート、メトキシプロピルアセテート、ブチルアセテート、プロピルアセテート、イソプロピルアセテート、グリコール酸、ブチルエステル、ブチルグリコール、メチルアルキルポリシロキサン、アルキルベンゼン、プロピレングリコール、キシレン、モノフェニルグリコール、アラルキル変性メチルアルキルポリシロキサン、ポリエーテル変性ジメチルポリシロキサン共重合体、ポリアクリレート、アルキルベンゼン、ジイソブチルケトン、有機変性ポリシロキサン、アセトン、メタノール、エタノール、イソプロパノール、n-プロパノール、ブタノール、tert-ブタノール、n-ブタノール、イソブタノール、変性ポリアクリレート、変性ポリウレタン及びポリシロキサン変性ポリマーからなる群から選ばれた少なくとも1種を含むことができる。
【0068】
上記溶媒は、全複合正極用スラリーの全重量に対して、固形分の含量が5~75重量%の含量となるように含むことができる。上記溶媒は、複合正極用スラリーの粘度を調節する粘度調節剤としての役割を並行することができる。
【0069】
上記のように、正極活物質及び酸化物系固体電解質を含む複合正極用スラリーを正極集電体上に塗布して乾燥することにより、シート状の成形体として複合酸化物シートを製造する。上記正極集電体は、電池内で化学的変化を誘発することなく導電性を有するものであれば、本開示においても好適に使用できる。一実施形態として、陽極集電体は、例えば、ステンレス鋼、アルミニウム、ニッケル、チタン、焼成炭素、カーボン、ニッケル、チタン又は銀で表面処理したアルミニウム、カーボン、ニッケル、チタン又は銀で表面処理したステンレス鋼、アルミニウム-カドミウム合金などの合金が使用されることができる。また、正極集電体は、上記のような基材の表面に微細な凹凸を形成することができ、このような凹凸により正極活物質の集電体に対する結合力を強化させることもできる。さらに、上記正極集電体は様々な形態を有してもよいものであって、これに限定されるものではないが、フィルム、シート、箔、ネット、多孔質体、発泡体、不織布体であってもよい。上記正極集電体はこれに限定されるものではないが、平均厚さが3~50μmであってもよい。
【0070】
製造されたスラリーは、正極集電体の片面または両面に塗布することができる。上記スラリーを正極集電体上に塗布する方法としては、特に限定されず、バーコーティング、キャスティング、又は噴霧などの方法を適用することができる。上記スラリーは、上記正極集電体上に50~5、000mg/cm2の負荷重量(LW)で塗布されることができる。
【0071】
次いで、前記正極集電体上に塗布されたスラリーを乾燥して溶媒を除去し、前記乾燥によりシート状の複合酸化物シートを製造することができる。前記スラリーを乾燥させる方法は多様であり、特に限定されず、例えば、コンベクションオーブン(Convection Oven)等により乾燥を行うことができる。上記乾燥はこれに限定されるものではないが、例えば、50~200℃で行われることができ、具体的には、80~120℃で行われることができる。また、上記乾燥は、これに限定されるものではないが、例えば、0.5時間~5時間の間行われることができ、具体的には1時間~3時間の間行われることができる。
【0072】
上記得られた複合酸化物シートを光焼結することにより、正極集電体上に焼結複合酸化物シートを形成することができ、これにより複合正極を得ることができる。特に、複合酸化物シートの固有波長領域と光の波長領域との共鳴現象を誘起したり、複合酸化物シートに吸収された光は熱に変換する光熱変換により光を利用して複合酸化物シートに熱が発生する。したがって、複合酸化物シートに発生した熱は、複合酸化物シートにおいて熱活性化反応を引き起こすか、または複合酸化物シートを「焼結」する。
【0073】
一実施形態として、光焼結時に複合酸化物シートに光を照射すると、複合酸化物シートに吸収された光の一部が熱を発生させて複合酸化物シート内の物質の温度を上昇させることができる。繰り返し照射すると、複合酸化物シートの高温が維持され、光焼結効果を示すことができる。複合酸化物シートが照射光に露出する時間を調整することにより、複合酸化物シートの焼結度を調整することができる。
【0074】
複合酸化物シートを光焼結する過程を
図1を参照してより具体的に説明する。(a)部分において、焼結前又は焼結初期段階で正極活物質粒子、酸化物系固体電解質粒子、導電材粒子及び/又は光焼結助剤粒子であり得る粒子2間の境界1が実質的に点接触であり、ここで粒子表面間の接触は最小化される。焼結が進むにつれて、(b)部分に示されるように点接触が徐々に拡大して面接触3を形成する。焼結がさらに進むにつれて、
図1の(c)部分と(d)部分に示すように、粒子を粗大化させることができる。
【0075】
光焼結法を用いて正極複合シートを製造することにより、
図1(a)に示すように正極複合シートの焼結度及び導電性を細かく調整することができる。
図1(a)では、各粒子2間の最小接触により粒子間のイオン移動経路を制限することができ、これにより粒子間の境界に大きな抵抗が発生する。一方、
図1(b)、(c)および(d)に示すように、粒子が焼結中に粗大化するにつれて、粒子間の接触が増加し、粒子間の空間(または細孔)が減少してイオンがより自由に移動し、したがって速いイオン伝導性と耐久性に優れた焼結体を得ることができる。粒子の粗大化はまた、焼結体の体積を減少させる。このとき、粒子間の接触形態および粗大化の程度によって体積収縮率に差が生じることがある。例えば、焼結の進行に応じて結晶粒界(GB)が形成される工程の場合、体積収縮率が3%以内に該当し得る(
図1(b)参照)。続く焼結により粒子間の接触面積の増加及び粗大化が進行し、体積収縮率が10%から20%内外まで増加することができる(
図1(c)~
図1(d)参照)。薄膜などの一部の材料では、粒子が過度に粗大化して体積が収縮すると、導電率が増加するが、材料の物理的特性が低下する可能性がある。例えば、複合酸化物シートの過度の粗大化は、正極集電体から複合酸化物シートの剥離および/または複合酸化物シートの亀裂を引き起こす可能性がある。したがって、複合正極シートは、例えば、
図1の(b)のような面接触状態を維持させることで稠密な構造及びイオンの移動経路を確保できるとともに、焼結後の過度な粗大化及び体積収縮による剥離現象などを防止することができる。
【0076】
複合酸化物シートの物理的特性の低下を防止するために焼結の程度を制御する以外にも、粒子間における二次相の生成を防止するために焼結の程度を制御することもでき、一部の実現例として、このような二次相の存在は、焼結された複合酸化物シートの全体的な伝導度を減少させることができる。複合酸化物シートは、正極活物質粒子、酸化物系固体電解質粒子、導電材粒子及び/又は光焼結助剤粒子を含む不均質物であって、それぞれは独特の特性を有し、熱を吸収する能力を有する。このように、それぞれの粉末は、焼結される最適な焼結温度を有している。しかし、光焼結の間、全ての粒子は同じ条件下で同時に焼結され、一部の実施形態において、このような条件は、任意の材料に対する最適な焼結温度ではない。例えば、正極活物質と酸化物系固体電解質との最適な焼結温度の差は約150℃以上であってもよい。一部の実現例において、最適な焼結温度差は、約200℃以上、約250℃以上、約300℃以上、約350℃以上、又は約400℃以上であってもよい。また、最適な焼結温度の差は、光焼結時に正極活物質と酸化物系固体電解質の異種粒子間の反応を引き起こすことがあり、これにより、これらの粒子間に二次相が生成できる。光焼結温度及び時間を調節することで、二次相の生成の程度を調節することができる。したがって、一般的に複合酸化物シートを高温で長時間光焼結することは推奨されず、むしろ低温で短時間光焼結することが推奨できる。以下でより詳細に説明するが、光焼結の過程で複合酸化物シートの発熱に影響を及ぼす様々な変数が調節されることができるため、正極活物質と酸化物系固体電解質粒子の最適な焼結温度が大きく異なる場合にも光焼結を使用することができる。
【0077】
上記光焼結はパルス方式で行われることができる。上記パルス方式とは、光を発生させるランプなどの装置に強い電圧をパルスで印加して瞬間的に発生する強い光を照射する方式を意味する。このとき、パルス方式で光を発生させる光焼結装置は、光焼結に必要な光をパルス方式で発生させることができるものであれば、特に限定されない。上記光焼結時に、パルス当たりの光照射時間(On-time)、作動電圧(V)、デューティサイクル(Duty cycle)(%)、サイクル回数、総パルスを構成する昇温周波数(Fire rate、Hz)、繰り返し回数等は、焼結の程度及び二次相の生成を制御するために適宜可変(調節)することができる。当業者は、このような設定に精通しており、複合酸化物シートの物理的特性(例えば、曲げ強度)及び二次相の蓄積を測定するために、ここに開示されている方法を使用して過度な実験なしで、それを適宜容易に調整することができる(例えば、X線回折分析)。
【0078】
特定の実施形態として、パルス化光焼結に使用されるパルス当たりの光照射時間(On-time)は、1、000~4、500μsであってもよい。具体的に、パルス当たりの光照射時間(On-time)は、1、200μs以上、又は1、400μs以上であることができ、4、400μs以下、4、200μs以下、又は4、000μs以下であることができる。
【0079】
上記光焼結時の作動電圧(V)は100~450Vであってもよい。具体的に、作動電圧(V)は、120V以上、又は150V以上であることができ、440V以下、430V以下、又は420V以下であることができる。
【0080】
特定の実施形態として、パルス化光焼結に使用されるデューティサイクル(%)は10~100%であってもよい。具体的に、デューティサイクル(%)は20~90%であることができる。上記デューティサイクルは、パルス周期に対する上記パルス当たりの光照射時間(On-time)の割合(%)の値で計算することができる。
【0081】
上記光焼結時のサイクル回数は1~20回であってもよい。具体的に、上記光焼結時のサイクル回数は5~15回であることができる。
【0082】
上記光焼結時の光照射時間(On-time)、作動電圧(V)、デューティサイクル(%)、サイクル回数が上述した範囲内に制御される場合、下記式1により算出される光焼結工程時間を短縮させることができ、短期間で焼結過程を進行することができる。
Ts=C/Tr (1)
上記式1において、Tsは光焼結工程時間(s)であり、Trは昇温周波数(Fire rate、Hz)であり、Cは繰り返し回数である。
【0083】
上記光焼結時に総パルスを構成する昇温周波数(Fire rate、Hz)は1~50Hzであってもよい。具体的に、上記光焼結時に総パルスを構成する昇温周波数(Fire rate、Hz)は10Hz以上であることができ、40Hz以下であることができる。
【0084】
上記光焼結時の繰り返し回数は10~1、000回であってもよい。具体的に、上記光焼結時の繰り返し回数は100回以上であることができ、400回以下であることができる。
【0085】
上記光焼結時に照射された光エネルギー強度は25~150J/(s・cm2)であってもよく、具体的には40~120J/(s・cm2)であってもよい。
【0086】
上記正極活物質及び酸化物系固体電解質を含む複合酸化物シートについて、上記のような条件で光焼結することにより焼結複合酸化物シートを製造することができる。例えば、いくつかの実施形態では、照射は、約1ms以内に約10回~1、000回、例えば約100回~約1、000回、または約500回~約1、000回繰り返し照射することによって光焼結を行うことができる。
【0087】
上記光焼結時の正極集電体の温度は300℃以下に維持されることができる。具体的に、上記光焼結時の正極集電体の温度は、5~100℃、10~50℃、15~30℃に維持されることができる。より具体的に、上記光焼結時の正極集電体の温度は、実質的に20~25℃の室温(RT)に維持されることができる。上記正極集電体の温度が、光焼結時に上述した範囲内の温度に維持されると、正極集電体に熱応力(Thermal Stress)が残留することを防止することができ、正極集電体の破壊、耐久力の減少などの問題が発生することを実質的に緩和することができる。
【0088】
複合正極は熱焼結法により製造することもできるが、高温の熱を加えて長時間行う一般的な熱焼結法による複合正極の製造は、例えば、約1、200℃の高温で1時間以上の長時間焼結を行ったが、この場合、その中の構成材料のうち一つ以上が、特にその材料が相対的に焼結温度の低い場合、過焼結される可能性がさらに高い。したがって、本開示のような組成を有する複合正極であっても、熱焼結法により製造された複合正極は脆くて柔軟でない可能性がある。
【0089】
対照的に、本開示に従って光焼結により製造された焼結複合酸化物シートは、耐久性と柔軟性を有し、光焼結された焼結複合酸化物シートをロール状に巻き取って保管、搬送及び二次電池の製造に供給することができる。
【0090】
ここに開示されている方法は、焼結の程度を注意深く制御することによって耐久性及び柔軟性を維持しながら、様々な厚さの焼結された複合酸化物シートを製造するのに使用できる。例えば、一実現例として、約300μm以下、約250μm以下、約200μm以下、又は約100μm以下、及び約10μm以上、約20μm以上、約30μm以上、約40μm以上、約50μm以上の厚さを有する焼結複合酸化物シートを製造することができる。一部の実現例において、約10μm~約300μm、又は約10μm~約250μm、又は約10μm~約200μmの厚さを有する焼結複合酸化物シートが製造できる。
【0091】
一部の実現例として、ここに開示されている方法は、二次相がないか又は殆どない焼結複合酸化物シートが製造できる。このような実現例において、焼結された複合酸化物シート内の粒子の結晶相は、焼結前の複合酸化物シート内の粒子の結晶相と実質的に同一である。各物質の結晶相の特性化は、X線回折分析のような、当業者に公知の方法により行われることができる。本明細書に使用されているように、実質的に同一であるとは、当業者が理解するように、焼結前後の複合酸化物シートについて得られたX線回折パターンの間に有意味な差がないことを意味する。
【0092】
本開示に係る方法は、周囲温度(例えば、25℃)で測定された約1×10-5S/cm以上のイオン伝導度を有する焼結複合酸化物シートを製造することができる。具体的には室温(25℃)で測定された1×10-2~1×10-5S/cmのイオン伝導度を有することができる。
【0093】
本明細書に開示されている方法を使用することで、二次相形成の大部分を防止することができるが、特定の実現例において、二次相の生成は不可避であるか又は有利であり得る(例えば、二次相が伝導性である場合)。したがって、一部の実現例において、焼結された複合酸化物シートは、酸化物系固体電解質及び正極活物質に存在する少なくとも一つの元素を含む二次相を含むことができる。特定の実現例において、二次相は、焼結複合酸化物シートの全重量を基準に、焼結された材料に約10重量%以下、例えば、約7.5重量%以下、約5重量%以下、約3重量%以下、約1重量%以下、又は約0.5重量%以下で存在する。
【0094】
一部の実現例において、本開示の方法は可撓性複合カソードを生成することができる。定量的に柔軟性は、曲率半径と曲げ強度で測定及び記録することができる。
【0095】
上記曲率半径を測定する方法は当業者に知られているが、具体的に、複合正極サンプル4(例えば、3cm×4cmのサイズ)を、
図2に示すような圧縮試験機5内に位置し、圧縮試験機5の上部移動プレート6を下部プレート7の方に下降移動させて複合負極サンプル4に下向きする力9を加えることで測定することができる。具体的に、上記複合正極8の曲率半径(Rc)は、複合正極の焼結複合酸化物シートが剥離する時点での曲率半径を複合正極の曲率半径と定義することができる。すなわち、本開示において、上記焼結複合酸化物シートを含む複合正極は、最小曲率半径が5R以下であることができ、より具体的には0.5R~5Rの範囲であることができる。 具体的に、本開示に係る焼結複合酸化物シートの曲率半径は、正極集電体上に上記焼結複合酸化物シートが形成された複合正極に対して測定できるものであって、複合正極の曲率半径が5R以下であることができ、具体的に、0.1R以上、0.5R以上、1R以上、又は1.5R以上であることができ、5R以下、4.5R以下、4R以下、又は3.5R以下であることができる。
【0096】
上記曲げ強度測定方法は当業者に知られている。また、
図2を参照すると、曲げ強度は、焼結複合酸化物シートが正極集電体から分離されるときまたは分離される直前に複合正極が受けることができる最大力からプレート6、7間の距離(D)を測定することによって決定され、次の式2により曲げ強度(σ)を計算することができる。
【数2】
上記式2において、tは試験片の中心部(Center部)における厚さ(μm)であり、EはYoung’s Modulusであり、Dは
図2の最大反発力における上部プレートと下部プレートとの間の距離(μm)である。さらに、本開示によれば、4GPa以上の曲げ強度値を有する複合正極を製造することができ、具体的には4~20Gpaの範囲内であることができ、より具体的には、4GPa以上、5GPa以上、6GPa以上又は7GPa以上であり、例えば、20GPa以下、19GPa以下、18GPa以下、17GPa以下、16GPa以下、15GPa以下、13GPa以下、又は12GPa以下の値を有することができる。
【0097】
一方、本開示に係る複合正極に適用される正極集電体は、上記焼結複合酸化物シートに比べてより小さい曲率半径を有することができる。正極集電体の曲率半径(Rc)が焼結複合酸化物シートの曲率半径よりも小さい場合、柔軟な複合正極が製造できる。
【0098】
本開示によれば、上記光焼結前の複合酸化物シートは有機化合物としてバインダーを含むが、有機化合物であるバインダーは焼結過程でバーニング(burning)されるため、本開示の方法により製造された複合正極の焼結複合酸化物シートは有機バインダー化合物を含まないか又は実質的に含まない。
【0099】
他の実現例として、上記複合酸化物シートの製造に使用されるスラリーに含まれた一部のバインダーが、未焼結又は不完全焼結によって残留することができる。例えば、上記有機化合物は、複合酸化物シートの製造に使用される上記スラリーに最初に投入されたバインダーの含量に対して最大10重量%の含量で残存することができ、上記焼結複合酸化物シートは、有機化合物を最大3重量%以下、例えば、2重量%以下、1重量%以下、0.5重量%以下、0.3重量%以下、0.1重量%以下、又は0.05重量%以下の含量で含むことができる。
【0100】
上記複合酸化物シートに含まれた有機化合物は、光焼結過程でバーニングされ、バーニング残留物として炭素成分で存在することができる。上記バーニング残留物として存在する炭素成分は本質的に導電性を有するものであって、導電材と共に、焼結複合酸化物シートにおいてリチウムイオンの移動を助けることができ、粒子間の界面抵抗を減少させ、イオン伝導度の改善に寄与することができる。
【0101】
上記のような複合正極を含む全固体リチウム二次電池を提供し、上記複合正極はここに開示されているように、焼結複合酸化物シート及び正極集電体を含む。リチウム二次電池は、上記複合正極、負極、及び上記複合正極と負極との間に固体電解質層を含むことができる。
【0102】
特に限定するものではないが、上記負極は当業者によく知られており、負極は負極活物質として、人造黒鉛、天然黒鉛などの炭素系活物質、シリコン、シリコン酸化物(SiOx;0<x<2)、Si-C複合体などのケイ素系活物質、リチウム金属、リチウム-金属合金などの金属を含むことができる。
【0103】
また、上記固体電解質層は、本開示において複合正極に含まれる酸化物系固体電解質を含むことができる。
【0104】
一方、上記全固体リチウム二次電池は無負極二次電池であってもよい。すなわち、電池の組立過程において負極集電体上に負極活物質層を形成しなかった電池であることができる。無負極リチウム二次電池を初期充電あるいは最初充電すると、正極活物質が脱リチウム化され、正極活物質から生成されたリチウムイオンは負極集電体上で還元され、リチウム金属層又は固体リチウム層のリチウム層を形成することができる。
【0105】
実施例
以下、実施例を挙げて、本開示についてより具体的に説明する。以下の実施例は本開示に対する一例であって、これにより本発明を限定しようとするものではない。
【0106】
実施例1~3
正極活物質としてNCM811、酸化物系電解質LLZO、導電材としてITO、バインダーとしてPVdFを重量比で57:27:1:0.5で混合し、溶媒としてNMPを加えて自転公転型遠心ミキサーを用いて2000rpmで3分間混合してスラリーを製造した。
【0107】
上記製造したスラリーをアルミニウム箔(厚さ:3μm、曲率半径:R)の上にドクターブレード法でキャスティングし、60℃で3時間乾燥した後、正極活物質と酸化物系固体電解質とを含む複合酸化物シートを製造した。
【0108】
上記製造された複合酸化物シートの表面に対して、強い光エネルギーを熱源に変換可能な方式で光を照射し、光焼結を行ってアルミニウム箔の表面に厚さ30μm(実施例1)、80μm(実施例2)及び130μm(実施例3)の焼結複合酸化物シートをそれぞれ製造して複合正極を得た。このとき、光焼結条件は、下記の表1に示すような条件で行った。
【表1】
【0109】
上記製造された実施例1の複合正極で焼結複合酸化物シートの表面を撮影し、その写真を
図3に示した。
図3を参照すると、光照射により焼結された部分が、焼結されていない部分に比べて色が明るくなることが分かり、これにより焼結が発生したことが確認できる。
【0110】
[二次粒子の生成]
実施例1及び2で得られた複合正極の焼結複合酸化物シートのそれぞれの結晶相及び焼結前の複合酸化物シートの結晶相を分析し、その結果を
図4に示した。
【0111】
図4において、Bareは実施例1の焼結前の結晶相を示し、FLA RC1は実施例1の焼結複合酸化物シートの結晶相を示し、FLA RC60は実施例2の焼結複合酸化物シートの結晶相の分析結果を示す(実施例2及び3の焼結前の結晶相は実施例1の焼結前の結晶相と同様であった。)。
【0112】
図4から分かるように、焼結前後において結晶相に変化はほとんどなかった。これは、 正極活物質と酸化物系固体電解質の二つの物質の間で化学的反応が起こらず、2つの物質間の反応相が生成されないことを示す。
【0113】
これは、2つの物質間の二次相の実質的な不存在を示す。
図4には示していないが、実施例3で得られた焼結複合酸化物シートも、正極活物質と酸化物系固体電解質との間で化学反応によるかなりの量の二次相を含むことを示さない。
【0114】
[曲げ特性]
上記製造されたそれぞれの複合正極を3cm×4cmのサイズに切断して複合正極サンプルを準備した。各複合正極シートサンプルの曲率半径(Rc)と曲げ強度を以下のように測定した。
【0115】
上記複合正極サンプルを
図5に示すように、圧縮試験機内に位置させた後、上部プレートを徐々に下降して上記複合正極サンプルの中央を起点として半分に曲げ、10秒間1000gfずつ力を徐々に増加させながら圧縮した。
【0116】
力の増加に伴って上記複合正極の焼結複合酸化物シートがアルミニウム箔から剥離する直前の上部プレートと下部プレートとの間の距離(μm)を測定し、下記式2を用いて曲げ強度を計算した。
【数3】
上記式2において、EはYoung’s Modulusであり、tは中心部における正極シートの厚さ(μm)であり、Dは複合正極シートが割れる直前の上部プレート及び下部プレート間の距離(μm)である。
【0117】
複合正極シートに力が加えられることによって、複合正極シートは圧縮されて様々な曲率半径を通過するようになる。表2は、通過する各曲率半径において各複合正極シートに加えられる力を提供する。
【0118】
【0119】
実施例1の場合、厚さが30μmであると、最大力1000gfを加えたとき、曲率半径が0.5Rになるまでコーティング層の剥離が発生せず、好ましい柔軟性を有することが分かる。
【0120】
焼結複合酸化物シートの厚さが80μmである実施例2は、曲率半径4R及び5Rでは複合正極層の剥離は生じなかったが、2R~3Rではコーティング層の破損及び剥離が起こる結果を示した。2R及び3Rにおける複合正極シートに加えられた力(曲げ最大荷重値を考慮する)はそれぞれ69.736gf、41.465gfを示した。
【0121】
一方、焼結複合酸化物シートの厚さが130μmである実施例3も曲率半径4R及び5Rでは複合正極層の剥離は起こらなかったが、曲率半径2R~3Rではコーティング層の破損及び剥離が起こる結果を示した。2R及び3Rにおいて上記複合体に適用された力は、それぞれ105.277gf及び53.850gfであった。
【0122】
上記実施例2及び3の結果から、上記焼結複合酸化物シートが剥離する荷重値で反発応力が発生することが分かり、反発応力値が大きいほど大きく反発するため、その応力値の逆方向に破壊(剥離)が起こる傾向が大きいことが分かる。
【0123】
上記のような結果から、本開示に係る光焼結法により製造された様々な厚さの焼結複合酸化物シートを含む複合正極には、正極活物質と固体電解質の最適な焼結温度差が大きい場合にも柔軟性と伝導性を有することが分かった。
特定の実施例の実現に関する特定の例についてのみ説明されることができる。開示された実施例及び他の実施例の変形、改善及び強化は、本開示の内容に基づいて行われることができる。