IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ サーモ フィニガン エルエルシーの特許一覧

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024096075
(43)【公開日】2024-07-11
(54)【発明の名称】イオン分離のための装置及び方法
(51)【国際特許分類】
   H01J 49/42 20060101AFI20240704BHJP
   H01J 49/06 20060101ALI20240704BHJP
   H01J 49/00 20060101ALI20240704BHJP
【FI】
H01J49/42 350
H01J49/42 250
H01J49/06 500
H01J49/06 600
H01J49/06 300
H01J49/00 310
【審査請求】未請求
【請求項の数】20
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023222149
(22)【出願日】2023-12-28
(31)【優先権主張番号】18/090,730
(32)【優先日】2022-12-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.BLUETOOTH
(71)【出願人】
【識別番号】503363806
【氏名又は名称】サーモ フィニガン エルエルシー
【氏名又は名称原語表記】Thermo Finnigan LLC
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(74)【代理人】
【識別番号】100135079
【弁理士】
【氏名又は名称】宮崎 修
(72)【発明者】
【氏名】ジョシュア シルヴィエラ
(72)【発明者】
【氏名】マイケル センコー
(72)【発明者】
【氏名】パブロ ニエト ラモス
(57)【要約】
【課題】
イオンを選別するためのシステム及び方法を提供する。
【解決手段】
本明細書に開示されるのは、イオントラップを形成するように構成された多重極電極の群と、多重極電極の群に隣接し、それに動作可能に結合されたイオンガイドと、を含む、イオンを選別するためのシステム及び方法である。無線周波数(RF)又は直流(CD)電源デバイスを使用して、システムは、多重極電極の群にRF電圧を印加して、それによって、擬電位障壁を生み出すことができる。次いで、DC勾配電圧を印加して、擬電位障壁に対向する軸方向電界を生み出し得る。DC電圧が上昇し、かつ/又はRF電圧が低下するにつれて、1つ以上のイオンが障壁を通して溶出される。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
イオンを選別するためのシステムであって、
イオントラップを形成するように構成された多重極電極の群と、
前記多重極電極の群に隣接するイオンガイドと、
前記多重極電極の群にRF電圧を印加して、擬電位障壁を生み出し、DC電圧を印加して、前記擬電位障壁に対向する軸方向電界を生み出すように構成されたRF及びDC電圧デバイスであって、前記擬電位障壁が、1つ以上のイオンを前記多重極電極のうちの少なくとも2つの間の環内に閉じ込めるように構成されている、RF及びDC電圧デバイスと、を備え、
前記RF電圧又はDC電圧のうちの少なくとも1つをランプ制御することが、前記擬電位障壁を横切って前記1つ以上のイオンのうちの少なくとも1つを溶出させる、システム。
【請求項2】
前記多重極電極の群が、四重極電位を提供するように構成された四重極電極の群を備える、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記擬電位障壁を横切って前記1つ以上のイオンのうちの少なくとも1つを溶出させることが、軸方向DC電界を増加させて、前記イオントラップ内で軸方向層化を開始し、実質的にそれらの質量対電荷比に基づいて、前記擬電位障壁を横切って前記イオンを溶出させることを更に含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項4】
前記RF電圧をランプ制御することが、前記多重極電極の群に印加された前記RF電圧を減少させて、前記イオントラップ内の軸方向層化を開始し、それらの質量対電荷比に基づいて、各擬電位障壁を横切って前記イオンを溶出させることを伴う、請求項1に記載のシステム。
【請求項5】
前記擬電位障壁を横切って前記1つ以上のイオンのうちの少なくとも1つを溶出させることが、前記イオンガイドの入口電位に対して前記イオントラップを浮遊させて、それらの質量対電荷比に基づいて、前記擬電位障壁を横切って前記イオンを溶出させることを更に含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項6】
前記擬電位障壁を横切って前記1つ以上のイオンのうちの少なくとも1つを溶出させることが、
前記多重極電極の群に印加された前記DC電圧を増加させ、前記RF電圧を減少させること、
前記DC電圧を増加させ、前記イオンガイドに対して前記イオントラップを浮遊させること、
前記多重極電極の群に印加された前記RF電圧を減少させ、前記イオンガイドに対して前記イオントラップを浮遊させること、又は
前記多重極電極の群に印加された前記DC電圧を増加させ、前記RF電圧を減少させ、前記イオンガイドに対して前記イオントラップを浮遊させること、のうちの少なくとも1つを更に含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項7】
前記イオンが、前記イオンガイド若しくはイオントラップの径方向及び長手方向軸の両方に直交する接線方向に実質的に閉じ込められていないか、又は拘束されていない、請求項1に記載のシステム。
【請求項8】
前記イオンガイドが、積層リングガイド、イオンファンネル、又は多重極のうちの少なくとも1つである、請求項1に記載のシステム。
【請求項9】
前記システムが、1mTorr~5Torrで動作する、請求項1に記載のシステム。
【請求項10】
前記RF電圧が、(i)<100kHz、(ii)100~200kHz、(iii)200~300kHz、(iv)300~400kHz、(v)400~500kHz、(vi)0.5~1.0MHz、(vii)1.0~1.5MHz、(viii)1.5~2.0MHz、(ix)2.0~2.5MHz、(x)2.5~3.0MHz、(xi)3.0~3.5MHz、(xii)3.5~4.0MHz、(xiii)4.0~4.5MHz、(xiv)4.5~5.0MHz、(xv)5.0~5.5MHz、(xvi)5.5~6.0MHz、(xvii)6.0~6.5MHz、(xviii)6.5~7.0MHz、(xix)7.0~7.5MHz、(xx)7.5~8.0MHz、(xxi)8.0~8.5MHz、(xxii)8.5~9.0MHz、(xxiii)9.0~9.5MHz、(xxiv)9.5~10.0MHz、及び(xxv)>10.0MHzからなる群から選択される周波数を有し、
(b)前記RF電圧が、(i)<50Vのピーク間、(ii)50~100Vのピーク間、(iii)100~150Vのピーク間、(iv)150~200Vのピーク間、(v)200~300Vのピーク間、(vi)300~400Vのピーク間、(vii)400~500Vのピーク間、(viii)500~600Vのピーク間、(ix)600~700Vのピーク間、(x)700~800Vのピーク間、(xi)800~900Vのピーク間、(xii)900~1000Vのピーク間、(xiii)1000~1100Vのピーク間、(xiv)1100~1200Vのピーク間、(xv)1200~1300Vのピーク間、(xvi)1300~1400Vのピーク間、(xvii)1400~1500Vのピーク間、及び(xviii)>1500Vのピーク間からなる群から選択される振幅を有する、請求項1に記載のシステム。
【請求項11】
イオンを選別するための方法であって、
RF及びDC電圧デバイスを使用して、RF電圧を多重極電極の群に印加して、擬電位障壁を生み出すことと、
前記RF及びDC電圧デバイスを使用して、DC電圧を印加して、前記擬電位障壁に対向する軸方向電界を生み出すことであって、前記擬電位障壁が、前記多重極電極のうちの少なくとも2つの間の環内に1つ以上のイオンを閉じ込めるように構成されている、生み出すことと、
前記RF電圧又はDC電圧のうちの少なくとも1つをランプ制御して、前記擬電位障壁を横切って前記1つ以上のイオンのうちの少なくとも1つを溶出させることと、を含む、方法。
【請求項12】
前記多重極電極の群が、四重極電位を提供するように構成された四重極電極の群を備える、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記擬電位障壁を横切って前記1つ以上のイオンのうちの少なくとも1つを溶出させることが、前記軸方向電界を増加させて、イオントラップ内で軸方向層化を開始し、それらの質量対電荷比に基づいて、各擬電位障壁を横切って前記イオンを溶出させることを更に含む、請求項11に記載の方法。
【請求項14】
前記RF電圧をランプ制御することが、前記多重極電極の群に印加された前記RF電圧を減少させて、イオントラップ内の軸方向層化を開始し、それらの質量対電荷比に基づいて、各擬電位障壁を横切って前記イオンを溶出させることを伴う、請求項11に記載の方法。
【請求項15】
前記擬電位障壁を横切って前記1つ以上のイオンのうちの少なくとも1つを溶出させることが、イオンガイドの入口電位に対してイオントラップを浮遊させて、それらの質量対電荷比に基づいて、各擬電位障壁を横切って前記イオンを溶出させることを更に含む、請求項11に記載の方法。
【請求項16】
前記擬電位障壁を横切って前記1つ以上のイオンのうちの少なくとも1つを溶出させることが、
前記多重極電極の群に印加された前記DC電圧を増加させ、前記RF電圧を減少させること、
前記DC電圧を増加させ、イオンガイドに対してイオントラップを浮遊させること、
前記多重極電極の群に印加された前記RF電圧を減少させ、前記イオンガイドに対して前記イオントラップを浮遊させること、又は
前記多重極電極の群に印加された前記DC電圧を増加させ、前記RF電圧を減少させ、前記イオンガイドに対して前記イオントラップを浮遊させること、のうちの少なくとも1つを更に含む、請求項11に記載の方法。
【請求項17】
前記イオンが、イオンガイド若しくはイオントラップの径方向及び長手方向軸の両方に直交する接線方向に実質的に閉じ込められていないか、又は拘束されていない、請求項11に記載の方法。
【請求項18】
イオンガイドが、積層リングガイド、イオンファンネル、又は多重極のうちの少なくとも1つである、請求項11に記載の方法。
【請求項19】
前記方法が、1mTorr~5Torrで動作する、請求項11に記載の方法。
【請求項20】
前記RF電圧が、(i)<100kHz、(ii)100~200kHz、(iii)200~300kHz、(iv)300~400kHz、(v)400~500kHz、(vi)0.5~1.0MHz、(vii)1.0~1.5MHz、(viii)1.5~2.0MHz、(ix)2.0~2.5MHz、(x)2.5~3.0MHz、(xi)3.0~3.5MHz、(xii)3.5~4.0MHz、(xiii)4.0~4.5MHz、(xiv)4.5~5.0MHz、(xv)5.0~5.5MHz、(xvi)5.5~6.0MHz、(xvii)6.0~6.5MHz、(xviii)6.5~7.0MHz、(xix)7.0~7.5MHz、(xx)7.5~8.0MHz、(xxi)8.0~8.5MHz、(xxii)8.5~9.0MHz、(xxiii)9.0~9.5MHz、(xxiv)9.5~10.0MHz、及び(xxv)>10.0MHzからなる群から選択される周波数を有し、
(b)前記RF電圧が、(i)<50Vのピーク間、(ii)50~100Vのピーク間、(iii)100~150Vのピーク間、(iv)150~200Vのピーク間、(v)200~300Vのピーク間、(vi)300~400Vのピーク間、(vii)400~500Vのピーク間、(viii)500~600Vのピーク間、(ix)600~700Vのピーク間、(x)700~800Vのピーク間、(xi)800~900Vのピーク間、(xii)900~1000Vのピーク間、(xiii)1000~1100Vのピーク間、(xiv)1100~1200Vのピーク間、(xv)1200~1300Vのピーク間、(xvi)1300~1400Vのピーク間、(xvii)1400~1500Vのピーク間、及び(xviii)>1500Vのピーク間からなる群から選択される振幅を有する、請求項11に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、概して、イオンを誘導及び分離するためのシステム並びに方法を含む、質量分析法の分野に関する。
【背景技術】
【0002】
質量分析法システムにおけるイオンガイドの例としては、大気圧インターフェース移動光学素子、異なる分析器セクション間でイオンを移動させるための多重極、HCD及びCID衝突セルなどが挙げられる。積層リングイオンガイドは周知であり、イオンが透過するアパーチャを各々が有する複数のリング電極を備える。従来の積層リングイオンガイドのイオン閉じ込め領域は、断面が円形である。ある特定の質量対電荷比のイオンのみが、イオントラップを通過し、所与の電圧比で検出器に到達することができるであろう。これにより、特定のm/zを有するイオンの選択が許容されるか、又はオペレータが、印加されるDC及びRF電圧を連続的に変動させることによって、m/z値の範囲についてスキャンすることが可能になる。
【0003】
先行技術における問題には、より大型かつより高価な電源を必要とするRF電圧が含まれる。追加的に、より高い電圧は、イオンガイド内に、小イオン、及び一例として、衝突セルの内側で形成され得るプロダクトイオンの不安定性につながる条件を生み出し得る。また、RF電圧が高すぎると、他のイオン光学素子とのインターフェースで透過問題が提示される場合がある。
【0004】
従来のイオントラップ及びイオンガイドの制限された空間電荷容量は、イオン損失につながる非効率的なイオン閉じ込めによって、透過又は感度の損失をもたらし得る。更に、従来のイオントラップ及びイオンガイドは、高圧で、イオン移動度分離器又は質量対電荷比分離器として使用されるとき、分析性能の損失を被る場合がある。これは、分解能若しくは分離力の損失及び/又は放出時間の予想外のシフトによって特徴付けられる。これらのシフトは、分析測定の不正確さにつながる。したがって、改善されたイオンガイドを提供することが望まれる。
【発明の概要】
【0005】
第1の態様では、イオントラップを形成するように構成された多重極電極の群と、多重極電極の群に隣接するイオンガイドと、を有する、イオンを選別するためのシステムが提供される。次いで、RF及びDC電圧は、多重極電極の群にRF電圧を印加して、それによって、1つ以上のイオンを閉じ込めるように構成された擬電位障壁を生み出すために使用される。RF及びDC電圧デバイスはまた、トラップの出口において擬電位障壁に対向する軸方向電界を生み出すDC電圧を印加するために使用される。次いで、使用事例に依存して、RF電圧又はDC電圧をランプアップ又はランプダウンさせて、擬電位障壁を横切って少なくとも1つのイオンを溶出させる。
【0006】
第2の態様では、イオンを選別するための方法であって、RF及びDC電圧デバイスを使用して、RF電圧を多重極電極の群に印加して、擬電位障壁を生み出すことと、RF及びDC電圧デバイスを使用して、DC電圧を印加して、擬電位障壁に対向する軸方向電界を生み出すことであって、擬電位障壁が、1つ以上のイオンを閉じ込めるように構成されている、生み出すことと、を含む、方法が提供される。次いで、使用事例に依存して、RF電圧又はDC電圧をランプアップ又はランプダウンさせて、擬電位障壁を横切って少なくとも1つのイオンを溶出させる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
実施形態は、添付図面と併せて以下の詳細な説明により容易に理解されるであろう。本説明を容易にするために、同様の参照数字は、同様の構造要素を示す。実施形態は、添付図面の図に例解されており、限定されるものではない。
図1】様々な実施形態による、例示的な質量分析法システムのブロック略図を提供する。
図2A】様々な実施形態による、イオントラップ及びイオンガイドの2つの例示的な斜視図を提供する。
図2B】様々な実施形態による、イオントラップ及びイオンガイドの2つの例示的な斜視図を提供する。
図3】様々な実施形態による、例示的なイオントラップのYZ断面切断図を提供する。
図4A】様々な実施形態による、例示的なイオントラップの追加のXZ断面切断図を提供する。
図4B】様々な実施形態による、例示的なイオントラップの追加の断面切断図を提供する。
図5A】様々な実施形態による、イオントラップ内への軸方向イオン挿入の例示的な例解図を提供する。
図5B】様々な実施形態による、イオントラップ内への直交イオン挿入の例示的な例解図を提供する。
図5C】様々な実施形態による、イオントラップ内への直交イオン挿入の別の例示的な例解図を提供する。
図5D】様々な実施形態による、イオントラップ内への直交イオン挿入の別の例示的な例解図を提供する。
図6A】様々な実施形態による、溶出方法を示す一連の例解的な略図を提供する。
図6B】様々な実施形態による、溶出方法を示す一連の例解的な略図を提供する。
図6C】様々な実施形態による、溶出方法を示す一連の例解的な略図を提供する。
図6D】様々な実施形態による、溶出方法を示す一連の例解的な略図を提供する。
図6E】様々な実施形態による、溶出方法を示す一連の例解的な略図を提供する。
図7】様々な実施形態による、溶出電圧対溶出時間の例示的なグラフ及びイオン溶出経路の例示的なレンダリングを提供する。
図8A】周波数を変動させている間の本明細書で説明されるイオントラップの動作の例を示す。
図8B】周波数を変動させている間の本明細書で説明されるイオントラップの動作の例を示す。
図8C】周波数を変動させている間の本明細書で説明されるイオントラップの動作の例を示す。
図8D】周波数を変動させている間の本明細書で説明されるイオントラップの動作の例を示す。
図9A】スキャン時間を変動させている間の本明細書で説明されるイオントラップの動作の例を示す。
図9B】スキャン時間を変動させている間の本明細書で説明されるイオントラップの動作の例を示す。
図9C】スキャン時間を変動させている間の本明細書で説明されるイオントラップの動作の例を示す。
図9D】スキャン時間を変動させている間の本明細書で説明されるイオントラップの動作の例を示す。
図10A】DCトラップ電圧を変動させている間の本明細書で説明されるイオントラップの動作の例を示す。
図10B】DCトラップ電圧を変動させている間の本明細書で説明されるイオントラップの動作の例を示す。
図10C】DCトラップ電圧を変動させている間の本明細書で説明されるイオントラップの動作の例を示す。
図10D】DCトラップ電圧を変動させている間の本明細書で説明されるイオントラップの動作の例を示す。
図11】様々な実施形態による、イオン分離の例示的な方法の流れ略図を提供する。
図12A】様々な実施形態による、DC及びRFランプについての溶出時間プロットの例を示す。
図12B】様々な実施形態による、DC及びRFランプについての溶出時間プロットの例を示す。
図13】様々な実施形態による、1Torr及び3Torrについての溶出時間プロットの例を示す。
図14】様々な実施形態による、本明細書に開示される質量分析計支援方法のいくつか又は全てが実施され得る例示的なコンピューティングデバイスのブロック略図を提供する。
図15】様々な実施形態による、本明細書に開示される質量分析計支援方法のいくつか又は全てが実施され得る例示的な質量分析計支援システムのブロック略図を提供する。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本明細書に開示されるのは、質量分析法システム、並びに関連する方法、コンピューティングデバイス、及びコンピュータ可読媒体である。本明細書において使用される節の見出しは、構成目的のためのものであって、記載される主題をいかようにも限定するものと解釈されるべきでない。
【0009】
様々な実施形態のこの詳細な説明では、説明の目的のために、多くの具体的な詳細が、開示された実施形態の全体的な理解を提供するために記載される。しかしながら、これらの様々な実施形態はこれらの具体的な詳細の有無にかかわらず実行され得ることを当業者は理解するだろう。他の例では、構造及びデバイスは、ブロック略図の形態で示されている。更に、方法が提示及び実行される具体的な順序は例解的なものであり、順序は変更されても依然として本明細書において開示される様々な実施形態の趣旨及び範囲内に留まり得ることが企図されていることを、当業者であれば容易に理解することができる。
【0010】
以下の詳細な説明では、本明細書の一部を形成する添付の図面が参照され、同様の数字は全体を通して同様の部分を指定し、例解として、実施され得る実施形態が示される。本開示の範囲から逸脱することなく、他の実施形態が利用され得、構造的又は論理的変更が行われ得ることを理解されたい。したがって、以下の詳細な説明は、限定的な意味で解釈されるべきではない。
【0011】
様々な動作は、本明細書に開示される主題を理解するのに最も役立つように、複数の別個のアクション又は動作として順に説明され得る。しかしながら、説明の順序は、これらの動作が必然的に順序に依存することを示唆するものとして解釈されるべきではない。具体的には、これらの動作は、提示の順序で実施されない場合がある。説明される動作は、説明される実施形態とは異なる順序で実施され得る。様々な追加の動作が実施され得、及び/又は説明された動作が追加の実施形態において省略され得る。
【0012】
本開示の目的のために、「A及び/又はB」及び「A又はB」という句は、(A)、(B)、又は(A及びB)を意味する。本開示の目的のために、「A、B、及び/又はC」及び「A、B、又はC」という句は、(A)、(B)、(C)、(A及びB)、(A及びC)、(B及びC)、又は(A、B、及びC)を意味する。本明細書で使用される場合、「a」又は「an」は、「少なくとも1つ」又は「1つ以上」のことを指す場合もある。本明細書で使用され、かつ質量分析法の技術分野で一般的に使用される場合、「DC」という用語は、電流の流れを具体的に指すか、又は必然的に暗示するのではなく、代わりに、一定又は可変のいずれかであり得る非振動電圧を指す。「RF」という用語は、振動の周波数が無線周波数範囲内にある振動電圧又は振動電圧波形を指す。いくつかの要素は単数形(例えば、「処理デバイス」)で言及され得るが、任意の適切な要素は、その要素の複数のインスタンスによって表され得、逆もまた同様である。例えば、処理デバイスによって実施されるものとして説明された動作のセットは、異なる処理デバイスによって実施される動作のうちの異なるものを用いて実装され得る。
【0013】
本説明は、「ある実施形態」、「様々な実施形態」、及び「いくつかの実施形態」という句を使用し、それらの各々は、同じ又は異なる実施形態のうちの1つ以上を指し得る。更に、本開示の実施形態に関して使用される「備える(comprising)」、「含む(including)」、「有する(having)」などの用語は、同義である。寸法の範囲を説明するために使用される場合、「XとYとの間」という句は、X及びYを含む範囲を表す。本明細書で使用されるように、「装置」は、任意の個々のデバイス又はデバイスの集合を指し得る。図面は、必ずしも縮尺どおりではない。
【0014】
I.質量分析法及びイオントラップ
質量分析計プラットフォーム100の様々な実施形態は、図1のブロック略図に示されている構成要素を含むことができる。ある実施形態では、図1の要素は、質量分析計プラットフォーム100に組み込まれ得る。様々な実施形態によれば、質量分析計プラットフォーム100は、イオン源102、質量分析器106、イオン検出器108、及びコントローラ110を含むことができる。いくつかの実施形態では、かつ本明細書で考察されるように、イオン源102は、試料から複数のイオンを生成する。イオン源としては、限定はしないが、電子イオン化(electron ionization、EI)源、化学イオン化(chemical ionization、CI)源、エレクトロスプレーイオン化(electrospray ionization、ESI)源、大気圧化学イオン化(atmospheric pressure chemical ionization、APCI)源、マトリックス支援レーザ脱離イオン化(matrix assisted laser desorption ionization、MALDI)源などを挙げることができる。
【0015】
更なる実施形態では、質量分析器106は、イオンの質量対電荷比及び/又はイオン移動度に基づいて、イオンを分離し得る。非限定的な例として、質量分析器106は、質量フィルタ分析器、イオントラップ分析器、飛行時間型(time-of-flight、TOF)分析器、静電トラップ(例えば、オービトラップ)質量分析器、フーリエ変換イオンサイクロトロン共鳴(Fourier transform ion cyclotron resonance、FT-ICR)質量分析器などを含み得る。いくつかの実施形態では、質量分析器106はまた、衝突誘起解離(collision induced dissociation、CID)、電子移動解離(electron transfer dissociation、ETD)、電子捕獲解離(electron capture dissociation、ECD)、光誘起解離(photo induced dissociation、PID)、表面誘起解離(surface induced dissociation、SID)などを使用して、イオンをフラグメント化し、更に、質量対電荷比に基づいて、フラグメント化されたイオンを分離するように構成され得る。質量分析器106はまた、イオン光学及び記憶デバイスの様々な組み合わせによって結合された1つ以上の質量分析器及び質量分離器を組み込む、ハイブリッドシステムであり得る。例えば、ハイブリッドシステムは、線形イオントラップ(linear ion trap、LIT)、高エネルギー衝突解離デバイス(high energy collision dissociation device、HCD)、イオン輸送システム、及びTOFを有し得る。
【0016】
様々な実施形態では、イオン検出器108は、イオンを検出することができる。例えば、イオン検出器108は、電子増倍器、ファラデーカップなどを含み得る。いくつかの実施形態では、イオン検出器は、定量的であり得、そのため、正確なイオン数を判定することができる。静電トラップ質量分析器などの他の実施形態では、質量分析器は、質量分析器106及びイオン検出器108の両方の特性を1つのデバイスに組み合わせてイオンを検出する。
【0017】
いくつかの実施形態では、かつ示されるように、コントローラ110は、イオン源102、質量分析器106、及びイオン検出器108と通信し得る。例えば、コントローラ110は、イオン源102を構成するか、又は様々な要因に基づいて、イオン源を有効化/無効化し得る。追加の実施形態では、コントローラ110は、検出する特定の質量範囲を選択するように質量分析器106を構成し得る。更に、コントローラ110が、利得を調節するなどによって、イオン検出器108の感度を調節することができる。追加的に、コントローラ110は、検出されるイオンの極性に基づいて、イオン検出器108の極性を調節することができる。例えば、イオン検出器108は、陽イオンを検出するように構成され得るか、又は陰イオンを検出するように構成され得る。
【0018】
単独で又は組み合わせて、質量分析計プラットフォーム100を実装し得るコンピューティングデバイスの実施例は、図14のコンピューティングデバイス1400を参照して本明細書で考察され、質量分析計プラットフォーム100がコンピューティングデバイスのうちの1つ以上にわたって実装され得る相互接続されたコンピューティングデバイスのシステムの実施例は、図15の質量分析法支援システム1500を参照して本明細書で考察される。
【0019】
四重極質量分析計は、伝統的に、RF及びDC振幅が時間においてほぼ線形にスケーリングされるほぼ一定のRF/DC比を使用することによって、質量スペクトルを生成する。このプロセスは、当業者によって理解されるように、本質的に、異なる範囲の質量対電荷(m/z)イオンが安定であり、通過して検出器に入ることが可能である、シフティング通過帯域フィルタを産生する。この通過帯域は、マシュー方程式の解であるa及びq値によって定義することができる。
【0020】
当業者によって理解されるように、現在の最新技術では、四重極及びイオントラップが、質量分析法セッション中のイオン選択のために日常的に使用されている。イオントラップは、種々の質量及び電荷を有する多数のイオンがシステムに注入されることを可能にする。注入されたイオンは、一般に、イオントラップ内に閉じ込められる(例えば、リング形状の四重極電位の内側にトラップされる)。次いで、イオンは、トラップのRF電圧がランプダウンされるにつれて、又は軸方向電界を生み出すDC電圧がランプアップされるにつれて、選択的に放出され得る。イオンは、質量対電荷(m/z)比及び/又はイオン移動度係数に基づいて、溶出のために選択され得ることを更に理解されたい。イオンの質量対電荷比は、単に原子の質量をその電荷で除算したものであり、一般に、クーロン(coulomb、C)当たりのキログラム(kilogram、kg)又は素電荷(elementary charge、e)当たりのダルトン(Dalton、Da)で表される。代替的に、イオン移動度は、電界の影響下にある間に特定のイオンが既知のガスを通過する平均スピード(例えば、速度)に基づいて判定され、一般に、メートル当たりのボルト当たりの秒当たりのメートル(
【0021】
【数1】
又は(ms-1(V/m-1-1))で表される。
【0022】
II.イオントラップ構成及びメトリック
ここで図2A及び図2Bを参照すると、イオントラップ210及びイオンファンネル220の2つの例示的な図が示されている。本明細書における図及び説明は、一般に、「イオンファンネル」を指すが、それはイオンガイドデバイスの一実施形態にすぎないことを理解されたい。したがって、本開示の目的のために、イオンファンネル(又はイオンファンネルの表現、例えば、図4A及び図4B)への任意の言及は、説明目的のみのためであり、例えば、積層リングガイド、イオンファンネル、多重極などの任意のタイプのイオンガイドが使用され得ることを理解されたい。いくつかの実施形態では、かつ示されるように、イオントラップ210は、イオンをトラップするための内部円形アパーチャ又は開口部212を有するリングの形状の外側電極211を有し得る。イオントラップ210はまた、円形アパーチャ212内に配設された内側電極213を有し得る。したがって、いくつかの実施形態では、内側電極213と外側電極211との間の領域又は容積212は、イオントラップとして動作する。多重極電極が電位を提供するように構成された電極の群(例えば、六重極又はより高次の多重極)を備える、様々な代替的な実施形態が存在し得る。
【0023】
図3を簡単に参照すると、例示的なイオントラップ310のYZ断面切断図が示されている。いくつかの実施形態では、かつ本明細書で考察されるように、イオントラップ310は、領域又は容積312によって分離された外側電極311及び内側電極313を有し得る。イオン314がイオントラップ310に注入されると、イオンは開放エリア312を自由に占有し、示されるように、一般に環を形成するであろう。別の言い方をすれば、イオン314は、イオントラップ310又はイオンファンネル(例えば、図2からの220及び図4からの420)の径方向及び長手方向軸の両方に直交する接線方向に実質的に閉じ込められていないか、又は拘束されていない。
【0024】
図4A及び図4Bを簡単に参照すると、イオントラップ410及びイオンファンネル420の2つの代替的なXZ断面切断図が示されている。したがって、いくつかの実施形態では、かつ示されるように、イオン414は、外側電極411と内側電極413との間に中間リング又は環を形成する開放エリア412に集まるであろう。別の言い方をすれば、内側電極413は、外側電極411とほぼ同心であり、イオンを閉じ込めることができる環状イオンガイド領域412を画定する。
【0025】
いくつかの実施形態では、交流(alternating current、AC)若しくは無線周波数(radio frequency、RF)信号発生器、又は電源が、逆位相で外側電極211/311/411及び内側電極213/313/413に接続され得る(例えば、内側電極に接続された+RF、外側電極に接続された-RF、又は逆もまた同様である)。したがって、対向するRF電力が外側電極211/311/411及び内側電極213/313/413に印加されるため、径方向に閉じ込める擬電位電界が生成され、これは、いくつかの実施形態によれば、イオン領域212/312/412内にイオンを閉じ込めるための障壁(例えば、擬電位障壁)として作用する。図3及び図4Bに最良に示され、本明細書でより詳細に考察されるように、いくつかの実施形態では、イオン314/414は、静的直流(Direct Current、DC)電界を印加することによって印加して、トラップと次の隣接するレンズ要素とを分離する擬電位障壁に対向する軸方向電界を生み出すことによって、擬電位障壁を横切って押動され、その後、イオンファンネル220/420の軸方向長さに沿って駆動され得る。
【0026】
いくつかの実施形態では、イオントラップ210/310/410及びイオンファンネル220/420は、バッファガスで充填され得る。当業者によって理解されるように、バッファガスは、衝突誘起解離(CID)のための衝突ガスとしても働きながら、イオン領域212/312/412内のイオン運動を安定化させるようにイオンを支援し得る。更なる実施形態では、ガスは、約5Torr~約1mTorrの圧力でイオン領域212/312/412に圧送又は強制され得る。
【0027】
III.イオントラップ機能性
いくつかの実施形態では、分析スキームは、イオンをイオントラップ210/310/410に挿入することによって開始する。図5A及び図5Bに示されるように、イオンは、軸方向に(例えば、図5Aの501A)又は直交して(例えば、図5Bの501B)挿入され得る。いくつかの実施形態では、直交して501Bイオンを挿入又は注入することが有益であり得る。軸方向に(501A)注入されるイオンと同様に、直交して(501B)注入されるイオンはまた、本明細書で考察されるように、外側電極511及び内側電極513によって生み出された擬電位障壁を横断又は通過するように強制される。一般に、軸方向注入中、トラップの前部電極は、後部電極よりも低いRF電圧に維持される。この実施形態では、トラップの径方向対称性は破壊されず、したがって、全てのイオンは、それらの溶出位置に関係なく同じ電位を見る。
【0028】
本明細書で考察されるように、イオンは、軸方向に及び/又は直交してイオントラップ210/310/410に注入され得る。ここで図5C及び図5Dを参照すると、直交注入の例示的な例解図が示されている。いくつかの実施形態では、かつ示されるように、イオントラップ510A及び510Bは、図3のイオントラップ310と同様に、逆位相で帯電される(例えば、内側電極に接続された+RF、及び外側電極に接続された-RF(例えば、図5D)、又は逆もまた同様である(例えば、図5C))、外側電極511A/511B及び内側電極513A/513B(間に空間512A/512Bを生み出す)を有する。いくつかの実施形態では、イオンは、1つ以上のDC電極504A/504Bによって生み出された擬電位障壁を横切って挿入された503A/503Bであり得る。本明細書で考察され、かつ図3に示されるように、イオンが直交して注入されると(503A/503B)、イオンは、開放エリア512A/512B内に環を形成し得る。
【0029】
RF電界は、四重極又は主に四重極電位がイオントラップ210/310/410の中心に存在するように確立され得る。一実施形態におけるイオントラップ210/310/410の擬電位ウェル深さ(すなわち、Vtrap値)は、イオンの質量対電荷比に反比例し、RF電圧の振幅(すなわち、VRF値)の二乗に比例し得る。Vtrap値は、式1を使用して得られ得る:
trap=C e V RF/(ω m/z)
式中、eは、素電荷であり、Cは、幾何学的定数であり、ωは、RF周波数である。
【0030】
式1によれば、高いm/z比を有するイオンは、低い全体的なVtrap障壁を受け、結果として、開示される方法のうちの1つを使用するときに溶出する第1のイオン種であるはずである。いくつかの実施形態では、かつ本明細書で考察されるように、イオントラップ210/310/410内にDC勾配を配置することにより、擬電位障壁のうちの1つを横切って溶出する前にウェル深さに従って軸方向層化を容易にすることによって、追加の利益が提供され得る。印加されたDC電界は、イオンを含むために使用されておらず、質量対電荷比から完全に独立しているため、これは可能である。代替的に、Vtrap値は、式1によって示されるように、質量対電荷(m/z)比に依存する。
【0031】
ここで図6A図6Eを参照すると、一連の例解的な略図が示されている。示された略図は、後方擬電位障壁601、前方擬電位障壁602、低質量イオン603、高質量イオン604、及びDC勾配電圧605を表す。いくつかの実施形態では、かつ第1の略図610によって表されるように、複数のイオン(例えば、603及び604)が、イオントラップ210/310/410(例えば、図5A及び図5Bに示されるものなどの)に挿入される。本明細書で考察されるように、イオン314がイオントラップ310に注入されると、イオンは、開放エリア312を自由に占有し、一般に環を形成するであろう。
【0032】
いくつかの実施形態では、イオン(例えば、603/604)が擬電位障壁(例えば、601/602)内にトラップされると、イオンは、擬平衡に留まり、障壁間にトラップされる。イオン603/604の溶出は、いくつかの様式で遂行され得る。例の非限定的なリストは、(1)RF電圧をランプダウンすること、(2)トラップの内側のDC勾配をランプアップすることによってイオンに静止した擬電位障壁を越えさせること、(3)隣接するイオンガイドに対してトラップ全体を浮遊させること、又は(4)戦略1~3の様々な組み合わせを含み得る。図6に示されるように、矢印は、どの電圧が時間とともにランプ制御されているか、かつどの方向にランプ制御されているかを伝えることを意図している。例えば、略図610では、ランプ制御されているものがないため、矢印はない。略図620では、トラップ入口上のDC電圧605がランプアップされている。略図630では、トラップ入口及び出口上のDC電圧605がランプアップされている。略図640では、RF電圧601/602がランプダウンされ、略図650では、RF電圧がランプダウンされる一方で、DC電圧がランプアップされている。
【0033】
いくつかの実施形態では、かつ略図620に示されるように、DC勾配電圧605は、イオントラップ内でわずかに増加されるか、又は2つのイオンタイプを分離するのに十分である特定の様式で増加され得る。式1に関する先の考察を想起すると、高いm/z比を有するイオンは、より低い全体的なVtrap障壁を受けることが考察された。したがって、高質量イオン604は、低質量イオン603の前に後方擬電位障壁602を越えて放出されるであろう。全ての高質量イオン604が溶出されると、略図630に示されるものなどの、DC勾配電圧605を更に増加させて、残りのイオン603を溶出させることができる。
【0034】
図6A図6Eに示される略図は、説明目的のためにかなり簡略化されていることを理解されたい。実際の用途では、より多くのイオンがあり、より多くのイオンの群(すなわち、同様のm/zを有するイオン)が存在する可能性が高い。図7を簡単に参照すると、溶出電圧対質量対電荷比701の例示的なグラフ。したがって、いくつかの実施形態では、かつ示されるように、イオンは、それらのm/z比に基づいて、群で溶出される傾向がある。また、図7には、イオン溶出経路702のレンダリングも示されている。レンダリング702において分かるように、極めて多い数のイオンが溶出され、イオンファンネルを通過して検出器に入った。図6に戻ると、最後の略図640及び略図650は、溶出方法の組み合わせを例解している。具体的には、略図650は、トラップの内側のDC勾配をランプアップする一方で、RF電圧もランプダウンする(例えば、擬電位障壁の強度を低減する)ことを示す。
【0035】
いくつかの実施形態では、イオントラップの様々な特徴(レンダリング702に示されるものなどの)は、様々な異なる結果を達成するように修正され得る。例えば、いくつかの実施形態では、かつ図8A図8Dに示されるように、イオントラップの周波数(例えば、801、802、803、及び804)は、分析的な必要性に従って調節され得る。この実施例では、RFを50msにわたって180Vから0Vまでスキャンする間、トラップ内の軸方向電界を一定に保った。したがって、示されるように、ある実施形態がより低い周波数(例えば、700kHz 801)を使用する場合、イオントラップは、強い擬電位障壁、及びより広い質量範囲をトラップする能力を有する。更に、図8に示されるように、周波数が高くなるにつれて(例えば、800kHz、900kHz、1000kHzなど)、範囲は小さくなるが、分解能は高くなる。
【0036】
周波数に加えて、スキャン時間特徴もまた、修正され得る(例えば、901、902、903、及び904)。したがって、別の実施形態では、かつ図9A図9Dに示されるように、スキャン時間は、調節され得る(例えば、5ms、25ms、50ms、100msなど)。この実施例では、RF(800kHz)を180Vから0Vまでスキャンする間、トラップ内の軸方向DC電界を一定に保った。予想されるように、スキャン時間が増加するにつれて、精度(すなわち、分解能)は高くなる。図10A図10Dに示されるものなどの更なる実施形態では、トラップにわたる電圧降下(例えば、DC軸方向電界)は、修正され得る(例えば、1001、1002、1003、及び1004)。例えば、システムは、0V、5V、10V、又は12Vのトラップ電圧を有し得る。いくつかの実施形態では、かつ示されるように、電圧降下を増加させることは、分解能を改善し得るが、トラップ内に含まれ得る安定範囲を減少させる。
【0037】
したがって、本明細書に開示されるのは、イオントラップを動作させて維持するためのシステム及び方法である。図11を参照すると、システムは、いくつかの実施形態では、擬電位障壁1101を生み出す多重極電極の群にRF電圧を印加し得る。次いで、システムは、DC電圧を印加して、擬電位障壁に対向する軸方向電界を生み出し得、擬電位障壁は、トラップ1102内に1つ以上のイオンを閉じ込めるように構成される。全てのイオンがシステムに挿入される(例えば、トラップ内に含まれる)と、システムは、RF又はDCの電圧をランプ制御する(例えば、上昇又は低下させる)ことができ、それによって、1つ以上のイオンのうちの少なくとも1つが擬電位障壁1103を横切って溶出される。
【0038】
本明細書で考察されるように、様々なイオントラップ及びイオントラップ方法論が可能であるが、各トラップにとって重要なのは、RF電界を伴うDC電圧トラップの使用である。いくつかの実施形態では、かつ図12に示されるように、イオンの溶出特性は、各イオンのm/z比及び移動度依存性に基づく。電圧がDC電界又はRF電界のいずれかで修正されると、イオン溶出が変化し得る。ここで図12を参照すると、RFスキャン対DCスキャンについての溶出プロファイルの差を例解する2つのプロットが示されている。
【0039】
図12A及び図12Bは、RFスキャン対DCスキャンについての溶出プロファイルの差を示す2つのグラフ表示を含む。DCスキャンプロット1210に基づいて、イオン溶出時間は、z/m依存性に従うのに対して、RFスキャンプロット1220は、時間とともにm/z依存性を示す。しかしながら、分かるように、両方の電圧スキャンは、時間とともに線形であるようにシミュレートされた。いくつかの実施形態では、かつこの例解的な例に示されるように、DCスキャンは、より低いm/zを有するイオンに対してはるかに優れた分解能を示す。
【0040】
ここで、例を生み出したトラップで使用された、列挙された変数1211及び1221を参照する。いくつかの実施形態では、かつ1211に示されるように、トラップの前部の軸方向DC電圧は、10msで220Vから260Vになる1212/1213。代替的に、1221に示されるように、RF電圧は、10msで180Vppから0Vppに降下する1222/1223。更なる実施形態では、圧力の大きさはまた、イオン溶出が移動度によって影響を受けるかどうかを判定し得る。
【0041】
別の例解的な実施形態が図13に示されており、トラップの前部の軸方向DC電圧は、10msで210Vから260Vにランプされる。いくつかの実施形態では、かつ示されるように、922のm/z 1301を有するイオンは、1Torr及び3Torrの両方でm/z922よりも25%高い移動度(例えば、m/z923 1302)及び25%低い移動度(例えば、m/z921 1303)でシミュレートされる。示されるように、1Torrでは、移動度依存性は、非常に小さく、溶出は、ほとんどがm/zの関数であり得る。しかしながら、3Torrでは、擬電位障壁は衝突によって減衰され、したがって、イオンは、より弱い障壁によって、より早く溶出し得る。更に、溶出時間における移動度依存性が明らかに存在する。移動度非依存性溶出は、そのようなトラップデバイスがトラップ型質量分析計単独で較正されることを可能にするため、この効果は非常に重要である。以下は、衝突減衰のための例示的な式である。
【0042】
典型的なフォアライン圧力(例えば、≧1Torr)については、Etrapは、真空中のその強度Etrap,vacと比べて、係数γによってある程度減衰され:
【0043】
【数2】
であり、τは圧力に反比例する緩和時間である。
【0044】
本明細書に開示される質量分析計支援方法は、(例えば、図15を参照して本明細書で考察されるユーザローカルコンピューティングデバイス1520を介した)人間のユーザとの相互作用を含み得る。これらの相互作用は、ユーザに情報を提供すること(例えば、図15の科学的機器1510などの科学的機器の動作に関する情報、分析されている試料、若しくは科学的機器によって実施される他の試験若しくは測定に関する情報、ローカル若しくはリモートデータベース、又は他の情報から検索された情報)、又はコマンド(例えば、図15の科学的機器1510などの科学的機器の動作を制御するため、又は科学的機器によって生成されるデータの分析を制御するため)、クエリ(例えば、ローカル又はリモートデータベースへの)、若しくは他の情報を入力するためのオプションをユーザに提供することを含み得る。
【0045】
いくつかの実施形態では、質量分析計システムによる相互作用は、ユーザに出力を提供する、かつ/又は入力を提供するようにユーザに促す(例えば、図14を参照して本明細書で考察される他のI/Oデバイス1412に含まれる、キーボード、マウス、トラックパッド、又はタッチスクリーンなどの1つ以上の入力デバイスを介して)表示デバイス(例えば、図14を参照して本明細書で考察される表示デバイス1410)上の視覚的表示を含むグラフィカルユーザインターフェース(graphical user interface、GUI)を通じて実施され得る。本明細書に開示される質量分析計支援システムは、ユーザとの相互作用のための任意の好適なGUIを含み得る。
【0046】
IV.システムの実装
上記のように、質量分析計プラットフォーム100は、1つ以上のコンピューティングデバイスによって実装され得る。図15は、様々な実施形態による、本明細書に開示される質量分析計支援方法のいくつか又は全てを実施し得る、コンピューティングデバイス1400のブロック略図である。いくつかの実施形態では、質量分析計プラットフォーム100は、単一のコンピューティングデバイス1400又は複数のコンピューティングデバイス1400によって実装され得る。更に、以下で考察されるように、質量分析計プラットフォーム100を実装するコンピューティングデバイス1400(又は複数のコンピューティングデバイス1400)は、図15の科学的機器1510、ユーザローカルコンピューティングデバイス1520、サービスローカルコンピューティングデバイス1530、又はリモートコンピューティングデバイス1540のうちの1つ以上の一部であり得る。
【0047】
図14のコンピューティングデバイス1400は、いくつかの構成要素を有するものとして例解されているが、これらの構成要素のうちのいずれか1つ以上は、用途及び設定に好適であるように、省略又は複製され得る。いくつかの実施形態では、コンピューティングデバイス1400に含まれる構成要素のいくつか又は全部は、1つ以上のマザーボードに取り付けられ、筐体(例えば、プラスチック、金属、及び/又は他の材料を含む)に封入され得る。いくつかの実施形態では、いくつかのこれらの構成要素は、単一のシステムオンチップ(system-on-a-chip、SoC)上に製作され得る(例えば、SoCは、1つ以上の処理デバイス1402及び1つ以上の記憶デバイス1404を含み得る)。追加的に、様々な実施形態では、コンピューティングデバイス1400は、図14に例解される構成要素の1つ以上を含まない場合があるが、任意の好適なインターフェース(例えば、ユニバーサルシリアルバス(Universal Serial Bus、USB)インターフェース、高精細マルチメディアインターフェース(High-Definition Multimedia Interface、HDMI(登録商標))インターフェース、コントローラエリアネットワーク(Controller Area Network、CAN)インターフェース、シリアルペリフェラルインターフェース(Serial Peripheral Interface、SPI)インターフェース、イーサネットインターフェース、無線インターフェース、又は任意の他の好適なインターフェース)を使用して1つ以上の構成要素に結合するためのインターフェース回路(図示せず)を含み得る。例えば、コンピューティングデバイス1400は、表示デバイス1410を含まない場合があるが、表示デバイス1410が結合され得る表示デバイスインターフェース回路(例えば、コネクタ及びドライバ回路)を含み得る。
【0048】
コンピューティングデバイス1400は、処理デバイス1402(例えば、1つ以上の処理デバイス)を含み得る。本明細書で使用される場合、「処理デバイス」という用語は、レジスタ及び/又はメモリからの電子データを処理して、その電子データをレジスタ及び/又はメモリに記憶され得る他の電子データに変換する、任意のデバイス又はデバイスの一部分を指し得る。処理デバイス1402は、1つ以上のデジタル信号プロセッサ(digital signal processor、DSP)、特定用途向け集積回路(application-specific integrated circuit、ASIC)、中央処理ユニット(central processing unit、CPU)、グラフィックス処理ユニット(graphics processing unit、GPU)、暗号プロセッサ(ハードウェア内で暗号アルゴリズムを実行する専用プロセッサ)、サーバプロセッサ、又は任意の他の好適な処理デバイスを含み得る。
【0049】
コンピューティングデバイス1400は、記憶デバイス1404(例えば、1つ以上の記憶デバイス)を含み得る。記憶デバイス1404は、ランダムアクセスメモリ(random-access memory、RAM)(例えば、スタティックRAM(static RAM、SRAM)デバイス、磁気RAM(magnetic RAM、MRAM)デバイス、ダイナミックRAM(dynamic RAM、DRAM)デバイス、抵抗性RAM(resistive RAM、RRAM)デバイス、又は導電性ブリッジRAM(conductive-bridging RAM、CBRAM)デバイス)、ハードドライブベースのメモリデバイス、ソリッドステートメモリデバイス、ネットワークドライブ、クラウドドライブ、又はメモリデバイスの任意の組み合わせなどの、1つ以上のメモリデバイスを含み得る。いくつかの実施形態では、記憶デバイス1404は、処理デバイス1402とダイを共有するメモリを含み得る。そのような実施形態では、メモリは、キャッシュメモリとして使用され得、例えば、埋め込み型ダイナミックランダムアクセスメモリ(embedded dynamic random-access memory、eDRAM)又はスピントランスファートルク磁気ランダムアクセスメモリ(spin transfer torque magnetic random-access memory、STT-MRAM)を含み得る。いくつかの実施形態では、記憶デバイス1404は、1つ以上の処理デバイス(例えば、処理デバイス1402)によって実行されるときに、コンピューティングデバイス1400に、本明細書に開示される方法のうちの任意の適切なもの又はその部分を実施させる命令を有する非一時的コンピュータ可読媒体を含み得る。
【0050】
コンピューティングデバイス1400は、インターフェースデバイス1406(例えば、1つ以上のインターフェースデバイス1406)を含み得る。インターフェースデバイス1406は、コンピューティングデバイス1400と他のコンピューティングデバイスとの間の通信を管理するために、1つ以上の通信チップ、コネクタ、及び/又は他のハードウェア及びソフトウェアを含み得る。例えば、インターフェースデバイス1406は、コンピューティングデバイス1400との間でデータを転送するための無線通信を管理する回路を含み得る。「無線」という用語及びその派生語は、非固体媒体を介して変調された電磁放射の使用を通じてデータを通信し得る回路、デバイス、システム、方法、技術、通信チャネルなどを説明するために使用され得る。この用語は、関連するデバイスがいかなるワイヤを含まないことを意味するものではないが、いくつかの実施形態では含まない場合もある。ワイヤレス通信を管理するためのインターフェースデバイス1406に含まれる回路は、限定はしないが、Wi-Fi(IEEE802.11ファミリ)を含む米国電気電子学会(Institute for Electrical and Electronic Engineers、IEEE)規格、IEEE802.16規格(例えば、IEEE802.16-2005 Amendment)、任意の修正、更新、及び/又は改訂とともにロングタームエボリューション(Long-Term Evolution、LTE)プロジェクト(例えば、アドバンストLTEプロジェクト、ウルトラモバイルブロードバンド(ultra-mobile broadband、UMB)プロジェクト(「3GPP(登録商標)2」とも称される)など)を含む、複数のワイヤレス規格又はプロトコルのいずれかを実装し得る。いくつかの実施形態では、無線通信を管理するためのインターフェースデバイス1406に含まれる回路は、モバイル通信用グローバルシステム(Global System for Mobile Communication、GSM)、汎用パケット無線サービス(General Packet Radio Service、GPRS)、ユニバーサルモバイル電気通信システム(Universal Mobile Telecommunications System、UMTS)、高速パケットアクセス(High Speed Packet Access、HSPA)、進化型HSPA(Evolved HSPA、E-HSPA)、又はLTEネットワークに従って動作し得る。いくつかの実施形態では、無線通信を管理するためにインターフェースデバイス1406に含まれる回路は、GSM進化型高速データ(Enhanced Data for GSM Evolution、EDGE)、GSMEDGE無線アクセスネットワーク(GSM EDGE Radio Access Network、GERAN)、ユニバーサル地上無線アクセスネットワーク(Universal Terrestrial Radio Access Network、UTRAN)、又は進化型UTRAN(Evolved UTRAN、E-UTRAN)に従って動作し得る。いくつかの実施形態では、無線通信を管理するためのインターフェースデバイス1406に含まれる回路は、符号分割多元接続(Code Division Multiple Access、CDMA)、時分割多元接続(Time Division Multiple Access、TDMA)、デジタル拡張コードレス電気通信(Digital Enhanced Cordless Telecommunications、DECT)、エボリューションデータ最適化(Evolution-Data Optimized、EV-DO)、及びそれらの派生物、並びに3G、4G、5G、及びそれ以降として指定される任意の他の無線プロトコルに従って動作し得る。いくつかの実施形態では、インターフェースデバイス1406は、無線通信の受信及び/又は送信のための1つ以上のアンテナ(例えば、1つ以上のアンテナアレイ)を含み得る。
【0051】
いくつかの実施形態では、インターフェースデバイス1406は、電気的、光学的、又は任意の他の好適な通信プロトコルなどの有線通信を管理するための回路を含み得る。例えば、インターフェースデバイス1406は、イーサネット技術に従って通信を支援する回路を含み得る。いくつかの実施形態では、インターフェースデバイス1406は、無線通信及び有線通信の両方を支援し得、並びに/又は複数の有線通信プロトコル及び/若しくは複数の無線通信プロトコルを支援し得る。例えば、インターフェースデバイス1406の回路の第1のセットは、Wi-Fi又はBluetoothなどの短距離無線通信専用であり得、インターフェースデバイス1406の回路の第2のセットは、全地球測位システム(global positioning system、GPS)、EDGE、GPRS、CDMA、WiMAX、LTE、EV-DO、又はその他などの長距離無線通信専用であり得る。いくつかの実施形態では、インターフェースデバイス1406の回路の第1のセットは、無線通信専用であり得、インターフェースデバイス1406の回路の第2のセットは、有線通信専用であり得る。
【0052】
コンピューティングデバイス1400は、バッテリ/電力回路1408を含み得る。バッテリ/電力回路1408は、1つ以上のエネルギー貯蔵デバイス(例えば、バッテリ若しくはキャパシタ)、及び/又はコンピューティングデバイス1400の構成要素をコンピューティングデバイス1400とは別個のエネルギー源(例えば、ACライン電力)に結合するための回路を含み得る。
【0053】
コンピューティングデバイス1400は、表示デバイス1410(例えば、複数の表示デバイス)を含み得る。表示デバイス1410は、ヘッドアップディスプレイ、コンピュータモニタ、プロジェクタ、タッチスクリーンディスプレイ、液晶ディスプレイ(liquid crystal display、LCD)、発光ダイオードディスプレイ、又はフラットパネルディスプレイなどの任意の視覚インジケータを含み得る。
【0054】
コンピューティングデバイス1400は、他の入力/出力(input/output、I/O)デバイス1412を含み得る。他のI/Oデバイス1412は、例えば、1つ以上のオーディオ出力デバイス(例えば、スピーカ、ヘッドセット、イヤホン、アラームなど)、1つ以上のオーディオ入力デバイス(例えば、マイクロフォン又はマイクロフォンアレイ)、位置デバイス(例えば、当技術分野で既知であるように、コンピューティングデバイス1400の位置を受信するために衛星ベースのシステムと通信するGPSデバイス)、オーディオコーデック、ビデオコーデック、プリンタ、センサ(例えば、熱電対若しくは他の温度センサ、湿度センサ、圧力センサ、振動センサ、加速度計、ジャイロスコープなど)、カメラなどの画像キャプチャデバイス、キーボード、マウス、スタイラス、トラックボール、又はタッチパッドなどのカーソル制御デバイス、バーコードリーダ、クイックレスポンス(Quick Response、QR)コードリーダ、又は無線周波数識別(radio frequency identification、RFID)リーダを含み得る。
【0055】
コンピューティングデバイス1400は、ハンドヘルド若しくはモバイルコンピューティングデバイス(例えば、セルフォン、スマートフォン、モバイルインターネットデバイス、タブレットコンピュータ、ラップトップコンピュータ、ネットブックコンピュータ、ウルトラブックコンピュータ、携帯情報端末(personal digital assistant、PDA)、ウルトラモバイルパーソナルコンピュータなど)、デスクトップコンピューティングデバイス、若しくはサーバコンピューティングデバイス、又は他のネットワークコンピューティング構成要素など、そのアプリケーション及び設定のための任意の好適なフォームファクタを有し得る。
【0056】
本明細書に開示される質量分析計支援モジュール又は方法のうちのいずれかを実装する1つ以上のコンピューティングデバイスは、質量分析計支援システムの一部であり得る。図15は、様々な実施形態による、本明細書に開示される質量分析計支援方法の一部又は全てが実施され得る例示的な質量分析計支援システム1500のブロック略図である。本明細書に開示される質量分析計支援モジュール及び方法(例えば、図1の質量分析計プラットフォーム100及び図8の方法800)は、質量分析計支援システム1500の科学的機器1510、ユーザローカルコンピューティングデバイス1520、サービスローカルコンピューティングデバイス1530、又はリモートコンピューティングデバイス1540のうちの1つ以上によって実装され得る。
【0057】
科学的機器1510、ユーザローカルコンピューティングデバイス1520、サービスローカルコンピューティングデバイス1530、又はリモートコンピューティングデバイス1540のいずれかは、図14を参照して本明細書で考察されるコンピューティングデバイス1400の実施形態のいずれかを含み得、科学的機器1510、ユーザローカルコンピューティングデバイス1520、サービスローカルコンピューティングデバイス1530、又はリモートコンピューティングデバイス1540のいずれかは、図14を参照して本明細書で考察されるコンピューティングデバイス1400の実施形態のいずれか適切なものの形態を採り得る。
【0058】
科学的機器1510、ユーザローカルコンピューティングデバイス1520、サービスローカルコンピューティングデバイス1530、又はリモートコンピューティングデバイス1540は各々、処理デバイス1502、記憶デバイス1504、及びインターフェースデバイス1506を含み得る。処理デバイス1502は、図14を参照して本明細書で考察される処理デバイス1402のいずれかの形態を含む任意の好適な形態を採り得、科学的機器1510、ユーザローカルコンピューティングデバイス1520、サービスローカルコンピューティングデバイス1530、又はリモートコンピューティングデバイス1540のうちの異なるものに含まれる処理デバイス1502は、同じ形態又は異なる形態を採り得る。記憶デバイス1504は、図14を参照して本明細書で考察される記憶デバイス1404のうちのいずれかの形態を含む任意の好適な形態を採り得、科学的機器1510、ユーザローカルコンピューティングデバイス1520、サービスローカルコンピューティングデバイス1530、又はリモートコンピューティングデバイス1540のうちの異なるものに含まれる記憶デバイス1504は、同じ形態又は異なる形態を採り得る。インターフェースデバイス1506は、図14を参照して本明細書で考察されるインターフェースデバイス1406のいずれかの形態を含む任意の好適な形態を採り得、科学的機器1510、ユーザローカルコンピューティングデバイス1520、サービスローカルコンピューティングデバイス1530、又はリモートコンピューティングデバイス1540のうちの異なるものに含まれるインターフェースデバイス1506は、同じ形態又は異なる形態を採り得る。
【0059】
科学的機器1510、ユーザローカルコンピューティングデバイス1520、サービスローカルコンピューティングデバイス1530、及びリモートコンピューティングデバイス1540は、通信経路1508を介して、質量分析計支援システム1500の他の要素と通信し得る。通信経路1508は、示されるように、質量分析計支援システム1500の要素の異なるもののインターフェースデバイス1506を通信可能に結合し得、有線又は無線通信経路であり得る(例えば、図14のコンピューティングデバイス1400のインターフェースデバイス1406を参照して本明細書で考察される通信技術のうちのいずれかに従って)。図15に描示される特定の質量分析計支援システム1500は、科学的機器1510、ユーザローカルコンピューティングデバイス1520、サービスローカルコンピューティングデバイス1530、及びリモートコンピューティングデバイス1540の各ペア間の通信経路を含むが、この「完全に接続された」実装は単に例解的なものであり、様々な実施形態では、通信経路1508の様々なものが存在しない場合がある。例えば、いくつかの実施形態では、サービスローカルコンピューティングデバイス1530は、そのインターフェースデバイス1506と科学的機器1510のインターフェースデバイス1506との間に直接通信経路1508を有しない場合があるが、代わりに、サービスローカルコンピューティングデバイス1530とユーザローカルコンピューティングデバイス1520との間の通信経路1508、及びユーザローカルコンピューティングデバイス1520と科学的機器1510との間の通信経路1508を介して科学的機器1510と通信し得る。
【0060】
科学的機器1510は、ガスクロマトグラフィ質量分析計(gas chromatography mass spectrometer、GC-MS)、液体クロマトグラフィ質量分析計(liquid chromatography mass spectrometer、LC-MS)、イオンクロマトグラフィ質量分析計(ion chromatography mass spectrometer、IC-MS)などの任意の適切な科学的機器を含み得る。
【0061】
ユーザローカルコンピューティングデバイス1520は、科学的機器1510のユーザにとってローカルであるコンピューティングデバイス(例えば、本明細書で考察されるコンピューティングデバイス1400の実施形態のうちのいずれかによる)であり得る。いくつかの実施形態では、ユーザローカルコンピューティングデバイス1520はまた、科学的機器1510に対してローカルであり得るが、そうである必要はない。例えば、ユーザの自宅又はオフィスにあるユーザローカルコンピューティングデバイス1520は、ユーザがユーザローカルコンピューティングデバイス1520を使用して科学的機器1510からのデータを制御及び/又はアクセスし得るように、科学的機器1510からリモートであるが、それと通信し得る。いくつかの実施形態では、ユーザローカルコンピューティングデバイス1520は、ラップトップ、スマートフォン、又はタブレットデバイスであり得る。いくつかの実施形態では、ユーザローカルコンピューティングデバイス1520は、ポータブルコンピューティングデバイスであり得る。
【0062】
サービスローカルコンピューティングデバイス1530は、科学的機器1510にサービスを提供するエンティティに対してローカルであるコンピューティングデバイス(例えば、本明細書で考察されるコンピューティングデバイス1400の実施形態のいずれかによる)であり得る。例えば、サービスローカルコンピューティングデバイス1530は、科学的機器1510の製造元又はサードパーティサービス会社にローカルであり得る。いくつかの実施形態では、サービスローカルコンピューティングデバイス1530は、科学的機器1510、ユーザローカルコンピューティングデバイス1520、及び/又はリモートコンピューティングデバイス1540と通信して(例えば、上で考察されるように、直接通信経路1508を介して、又は複数の「間接」通信経路1508を介して)、科学的機器1510、ユーザローカルコンピューティングデバイス1520、及び/又はリモートコンピューティングデバイス1540の動作に関するデータ(例えば、科学的機器1510のセルフテストの結果、科学的機器1510によって使用される較正係数、科学的機器1510に関連付けられたセンサの測定値など)を受信し得る。いくつかの実施形態では、サービスローカルコンピューティングデバイス1530は、科学的機器1510、ユーザローカルコンピューティングデバイス1520、及び/又はリモートコンピューティングデバイス1540と通信して(例えば、上で考察されるように、直接通信経路1508又は複数の「間接」通信経路1508を介して)、科学的機器1510、ユーザローカルコンピューティングデバイス1520、及び/又はリモートコンピューティングデバイス1540に(例えば、科学的機器1510においてファームウェアなどのプログラムされた命令を更新するため、科学的機器1510において試験又は較正シーケンスの実施を開始するため、ユーザローカルコンピューティングデバイス1520又はリモートコンピューティングデバイス1540においてソフトウェアなどのプログラムされた命令を更新するなどのために)データを送信し得る。科学的機器1510のユーザは、サービスローカルコンピューティングデバイス1530と通信して、科学的機器1510又はユーザローカルコンピューティングデバイス1520に関する問題を報告するために、科学的機器1510の動作を改善するように技術者に訪問を要求するために、科学的機器1510に関連付けられた消耗品又は交換部品を注文するためにし、又は他の目的のために、科学的機器1510又はユーザローカルコンピューティングデバイス1520を利用し得る。
【0063】
リモートコンピューティングデバイス1540は、科学的機器1510から、かつ/又はユーザローカルコンピューティングデバイス1520からリモートであるコンピューティングデバイス(例えば、本明細書で考察されるコンピューティングデバイス1400の実施形態のうちのいずれかによる)であり得る。いくつかの実施形態では、リモートコンピューティングデバイス1540は、データセンター又は他の大規模サーバ環境に含まれ得る。いくつかの実施形態では、リモートコンピューティングデバイス1540は、ネットワーク接続ストレージを含み得る(例えば、記憶デバイス1504の一部として)。リモートコンピューティングデバイス1540は、科学的機器1510によって生成されたデータを記憶し、科学的機器1510によって生成されたデータの分析を実施し(例えば、プログラムされた命令に従って)、ユーザローカルコンピューティングデバイス1520と科学的機器1510との間の通信を容易にし、かつ/又はサービスローカルコンピューティングデバイス1530と科学的機器1510との間の通信を容易にし得る。
【0064】
いくつかの実施形態では、図15に例解される質量分析計支援システム1500の要素のうちの1つ以上が存在しない場合がある。更に、いくつかの実施形態では、図15の質量分析計支援システム1500の要素の様々なもののうちの複数のものが存在し得る。例えば、質量分析計支援システム1500は、複数のユーザローカルコンピューティングデバイス1520(例えば、異なるユーザと関連付けられた又は異なる場所における異なるユーザローカルコンピューティングデバイス1520)を含み得る。別の例では、質量分析計支援システム1500は、複数の科学的機器1510を含み得、全てがサービスローカルコンピューティングデバイス1530及び/又はリモートコンピューティングデバイス1540と通信する。そのような実施形態では、サービスローカルコンピューティングデバイス1530は、これらの複数の科学的機器1510を監視し得、サービスローカルコンピューティングデバイス1530は、更新を引き起こし得るか、又は他の情報が同時に複数の科学的機器1510に「ブロードキャスト」され得る。質量分析計支援システム1500内の科学的機器1510の異なるものは、互いに近くに(例えば、同じ部屋に)又は互いに遠くに(例えば、建物の異なる階、異なる建物、異なる都市など)位置し得る。いくつかの実施形態では、科学的機器1510は、モノのインターネット(Internet-of-Things、IoT)スタックに接続され得、IoTスタックは、ウェブベースのアプリケーション、仮想若しくは拡張現実アプリケーション、モバイルアプリケーション、及び/又はデスクトップアプリケーションを通して科学的機器1510のコマンド及び制御を可能にする。これらのアプリケーションのいずれも、介在するリモートコンピューティングデバイス1540によって科学的機器1510と通信しているユーザローカルコンピューティングデバイス1520を操作するユーザによってアクセスされ得る。いくつかの実施形態では、科学的機器1510は、ローカル科学的機器コンピューティングユニット1512の一部として、1つ以上の関連するユーザローカルコンピューティングデバイス1520とともに製造元によって販売され得る。
【0065】
いくつかの実施形態では、質量分析計支援システム1500に含まれる科学的機器1510のうちの異なるものは、異なるタイプの科学的機器1510であり得る。いくつかのそのような実施形態では、リモートコンピューティングデバイス1540及び/又はユーザローカルコンピューティングデバイス1520は、質量分析計支援システム1500に含まれる異なるタイプの科学的機器1510からのデータを組み合わせ得る。
図1
図2A
図2B
図3
図4A
図4B
図5A
図5B
図5C
図5D
図6A
図6B
図6C
図6D
図6E
図7
図8A
図8B
図8C
図8D
図9A
図9B
図9C
図9D
図10A
図10B
図10C
図10D
図11
図12A
図12B
図13
図14
図15
【外国語明細書】