(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024096085
(43)【公開日】2024-07-11
(54)【発明の名称】遠位傾斜の検出を備えたカテーテル
(51)【国際特許分類】
A61B 5/367 20210101AFI20240704BHJP
A61B 18/14 20060101ALI20240704BHJP
A61B 5/287 20210101ALI20240704BHJP
A61B 5/33 20210101ALI20240704BHJP
【FI】
A61B5/367 100
A61B18/14
A61B5/287 200
A61B5/33 100
【審査請求】未請求
【請求項の数】21
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023222373
(22)【出願日】2023-12-28
(31)【優先権主張番号】18/091,347
(32)【優先日】2022-12-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】511099630
【氏名又は名称】バイオセンス・ウエブスター・(イスラエル)・リミテッド
【氏名又は名称原語表記】Biosense Webster (Israel), Ltd.
(74)【代理人】
【識別番号】100088605
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 公延
(74)【代理人】
【識別番号】100130384
【弁理士】
【氏名又は名称】大島 孝文
(72)【発明者】
【氏名】アサフ・ゴバリ
(72)【発明者】
【氏名】アンドレス・クラウディオ・アルトマン
(72)【発明者】
【氏名】シュロモ・フレッド
【テーマコード(参考)】
4C127
4C160
【Fターム(参考)】
4C127AA02
4C127LL08
4C160KK03
4C160KK16
4C160KK24
4C160KK63
(57)【要約】
【課題】医療装置を提供すること。
【解決手段】医療装置は、生体の身体内へ挿入されるように適合された遠位部と、プローブの遠位部の第1の磁気トランスデューサ及び第2の磁気トランスデューサと、を含むプローブを含む。制御回路は、第1の磁気トランスデューサを駆動して、第1の周波数の第1のAC磁場を発生させ、身体に近接した磁場発生器を駆動して、身体内に第2の周波数の第2のAC磁場を発生させ、第1の周波数の第2の磁気トランスデューサによって出力された第1の信号を処理することによってプローブの遠位部の配設を計算し、また、第2の周波数の第1の磁気トランスデューサ及び第2の磁気トランスデューサのうちの1つによって出力される第2の信号の成分を、第1の周波数の干渉を第2の信号から相殺しながら、処理することによって、プローブの遠位部の位置座標を計算する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
医療装置であって、
プローブであって、生体の身体内へ挿入されるように適合された遠位部を含み、かつ前記プローブの前記遠位部のそれぞれの第1及び第2の位置に配設された第1の磁気トランスデューサ及び第2の磁気トランスデューサを含む、プローブと、
前記プローブの外部に配設され、前記生体の前記身体に近接して配置されるように適合された、少なくとも1つの磁場発生器と、
制御回路であって、
(a)前記プローブの前記第1の磁気トランスデューサを駆動して、第1の周波数の第1のAC磁場を発生させ、
(b)前記プローブの外部の前記少なくとも1つの磁場発生器を駆動して、第2の周波数の第2のAC磁場を発生させ、
(c)前記第1の周波数の前記第2の磁気トランスデューサによって出力された第1の信号を処理することによって、前記プローブの前記遠位部の配設を計算し、
(d)前記第2の周波数の前記第1の磁気トランスデューサ及び前記第2の磁気トランスデューサのうちの1つによって出力された第2の信号の成分を、前記第1の周波数の干渉を前記第2の信号から相殺しながら、処理することによって、前記プローブの前記遠位部の位置座標を計算するように構成された、制御回路と、を備えている、医療装置。
【請求項2】
前記第1の磁気トランスデューサ及び前記第2の磁気トランスデューサが、それぞれ第1のコイル及び第2のコイルを備え、前記制御回路が、前記第1のコイルに前記第1の周波数のAC電流を印加することによって、前記第1の磁気トランスデューサを駆動するように構成されている、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記プローブの前記遠位部が、前記プローブの前記遠位部によって組織に及ぼされた力に応じて変形するように構成された接合部を備え、前記第1の磁気トランスデューサ及び前記第2の磁気トランスデューサが、前記接合部の両側に配設されている、請求項1に記載の装置。
【請求項4】
前記制御回路が、前記第1の周波数の前記第2の磁気トランスデューサによって出力された前記第1の信号に応じて前記接合部の変形を計算し、計算された前記変形に基づいて、前記プローブの前記遠位部によって前記組織に及ぼされた前記力を測定するように構成されている、請求項3に記載の装置。
【請求項5】
前記第1の磁気トランスデューサが前記接合部の遠位側に配設され、一方で、前記第2の磁気トランスデューサが前記接合部の近位側に配設されている、請求項3に記載の装置。
【請求項6】
前記プローブが、前記第1及び第2の位置の近位の第3の位置に第3の磁気トランスデューサを備え、
前記制御回路が、前記第2の信号を処理すること、及び前記第2の周波数の前記第3の磁気トランスデューサによって出力された第3の信号を処理すること、の両方によって、前記プローブの前記遠位部の前記位置座標を計算するように構成されている、請求項3に記載の装置。
【請求項7】
前記プローブの前記遠位部が、バスケットアセンブリを備え、前記バスケットアセンブリが、複数のスパイン及び電極を含み、前記電極が前記スパインに沿って配設され、かつ前記身体の空洞内の組織に接触するように構成されている、請求項1に記載の装置。
【請求項8】
前記制御回路が、前記第1の周波数の前記第2の信号における前記干渉の振幅を測定し、前記第1の周波数の測定された前記振幅を有する第3の信号を発生させ、前記第2の信号から前記第3の信号を減算することによって、前記干渉を相殺するように構成されている、請求項1に記載の装置。
【請求項9】
前記制御回路が、前記第2の信号をデジタル化して、前記第1の周波数のデジタル化された前記第2の信号の要素の振幅及び位相を抽出することによって、前記干渉の前記振幅を測定し、前記第1の周波数のデジタル化された前記第2の信号の前記要素とは逆位相の測定された前記振幅のデジタル信号として前記第3の信号を発生させて、前記デジタル信号をアナログ干渉相殺信号に変換し、前記アナログ干渉相殺信号と前記第2の信号とのアナログ加算によって、前記第2の信号から前記第3の信号を減算するように構成されている、請求項8に記載の装置。
【請求項10】
前記第1の磁気トランスデューサが前記第1のAC磁場を発生させるように駆動されている間、前記第2の信号が、前記第1の磁気トランスデューサによって出力される、請求項9に記載の装置。
【請求項11】
位置検知の方法であって、
プローブを提供することであって、前記プローブが、生体の身体内へ挿入されるように適合された遠位部を有し、前記プローブの前記遠位部のそれぞれの第1及び第2の位置に配設された第1の磁気トランスデューサ及び第2の磁気トランスデューサを備えている、提供することと、
前記プローブの外部に少なくとも1つの外部磁場発生器を配置することと、
前記第1の磁気トランスデューサを駆動して、第1の周波数の第1のAC磁場を発生させることと、
前記少なくとも1つの外部磁場発生器を駆動して、第2の周波数の第2のAC磁場を発生させることと、
前記第1の周波数の前記第2の磁気トランスデューサによって出力された第1の信号を処理することによって、前記プローブの前記遠位部の配設を計算することと、
前記第2の周波数の前記第1の磁気トランスデューサ及び前記第2の磁気トランスデューサのうちの1つによって出力された第2の信号の成分を、前記第1の周波数の干渉を前記第2の信号から相殺しながら、処理することによって、前記プローブの前記遠位部の位置座標を計算することと、を含む、方法。
【請求項12】
前記第1の磁気トランスデューサ及び前記第2の磁気トランスデューサが、それぞれ第1のコイル及び第2のコイルを備え、前記第1の磁気トランスデューサを駆動することが、前記第1のコイルに前記第1の周波数のAC電流を印加することを含む、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記プローブの前記遠位部が、前記プローブの前記遠位部によって組織に及ぼされた力に応じて変形するように構成された接合部を備え、前記第1の磁気トランスデューサ及び前記第2の磁気トランスデューサが、前記接合部の両側に配設されている、請求項11に記載の方法。
【請求項14】
前記プローブの前記遠位部の前記配設を計算することが、前記第1の周波数の前記第2の磁気トランスデューサによって出力された前記第1の信号に応じて前記接合部の変形を計算することと、計算された前記変形に基づいて、前記プローブの前記遠位部によって前記組織に及ぼされた前記力を測定することと、を含む、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記第1の磁気トランスデューサが前記接合部の遠位側に配設され、一方で、前記第2の磁気トランスデューサが前記接合部の近位側に配設されている、請求項13に記載の方法。
【請求項16】
前記プローブが、前記第1及び第2の位置の近位の第3の位置に第3の磁気トランスデューサを備え、
前記位置座標を計算することが、前記第2の信号を処理すること、及び前記第2の周波数の前記第3の磁気トランスデューサによって出力された第3の信号を処理すること、の両方によって、前記プローブの前記遠位部の前記位置座標を見出すことを含む、請求項13に記載の方法。
【請求項17】
前記プローブの前記遠位部が、バスケットアセンブリを備え、前記バスケットアセンブリが、複数のスパイン及び電極を含み、前記電極が前記スパインに沿って配設され、かつ組織に接触するように構成されている、請求項11に記載の方法。
【請求項18】
前記干渉を相殺することが、前記第1の周波数の前記第2の信号における前記干渉の振幅を測定することと、前記第1の周波数の測定された前記振幅を有する第3の信号を発生させることと、前記第2の信号から前記第3の信号を減算することと、を含む、請求項11に記載の方法。
【請求項19】
前記干渉の前記振幅を測定することが、前記第2の信号をデジタル化して、前記第1の周波数のデジタル化された前記第2の信号の要素の振幅及び位相を抽出することを含み、
前記第3の信号を発生させることが、前記第1の周波数のデジタル化された前記第2の信号の前記要素とは逆位相の測定された前記振幅のデジタル信号を発生させて、前記デジタル信号をアナログ干渉相殺信号に変換することを含み、
前記第2の信号から前記第3の信号を減算することが、前記アナログ干渉相殺信号と前記第2の信号とのアナログ加算を実行することを含む、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記第1の磁気トランスデューサが前記第1のAC磁場を発生させるように駆動されている間、前記第2の信号が、前記第1の磁気トランスデューサによって出力される、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
カテーテル用のエンドエフェクタであって、
近位部分から遠位部分まで長手方向軸に沿って配設されたプローブを備え、前記プローブが、
複数の磁気位置センサと共に前記近位部分に取り付けられた第1の部分と、
可撓性部材を介して前記第1の部分に結合された第2の部分であって、前記第2の部分が、トランスデューサを含み、前記トランスデューサが、
(1)前記磁気位置センサの位置が提供されるように、前記複数の磁気位置センサに第1の周波数の第1のAC磁場を放射し、
(2)第2の磁場発生器に対する前記トランスデューサの位置が決定されるように、前記第1の周波数の干渉の、前記第2の信号からの相殺を介して、第2の周波数の外部磁場発生器からの複数の第2のAC磁場のうちの少なくとも1つを受信するように構成されている、第2の部分と、を含む、エンドエフェクタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、侵襲性医療デバイスに関し、具体的には、患者の身体に適用されるカテーテルなどのプローブの遠位部の変位を検知するための方法及びデバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
一部の診断と治療技術では、カテーテルを心腔内に挿入し、心臓内壁に接触させる。そのような手技において、カテーテルの遠位先端部が、良好な接触を確実にするように十分な圧力で心内膜と係合することが一般に重要である。しかしながら、過剰な圧力は、望ましくない心臓組織の損傷、更には心臓壁の穿孔を引き起こす可能性がある。
【0003】
組織接触を検知するための一体型圧力センサを備えたカテーテルが特許文献に記載されている。1つの例として、開示が参照により本明細書に組み込まれる、米国特許第8,535,308号は、長手方向軸を有し、かつ遠位端を有する、挿入チューブを含む医療用プローブを記載している。遠位先端部は、挿入チューブの末端に配設され、かつ身体組織と接触するように構成されている。接合部が、遠位先端部を挿入チューブの遠位端に結合する。プローブ内に含まれる接合部センサが、挿入チューブの遠位端に対する遠位先端部の位置を検知する。接合部センサは、プローブ内の接合部の反対側のそれぞれの側に配設され、各々が1つ又は2つ以上の磁気トランスデューサを含む、第1のサブアセンブリ及び第2のサブアセンブリを含む。
【0004】
本開示は、図面と併せて、本開示の実施例の以下の詳細な説明からより完全に理解されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0005】
【
図1】本開示の一実施例による、カテーテルベースの電気生理学的マッピング及びアブレーションシステムの概略描画図である。
【
図2】本開示の一実施例による、カテーテルの遠位端のバスケットアセンブリを示す概略詳細図である。
【
図3】本開示の一実施例による、カテーテルの遠位部の詳細を示す概略断面図である。
【
図4】本開示の一実施例による、カテーテルと関連付けられた検知及び信号処理回路を概略的に示すブロック図である。
【
図5】本開示の一実施例による、位置検知の方法を概略的に示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0006】
概論
心臓の心腔内へ挿入するためのカテーテルなどの特定のタイプの医療用プローブは、患者の身体内のプローブの遠位部をナビゲートする際に使用される磁気位置センサを含む。磁気位置センサは、磁気トランスデューサ、すなわち、磁気エネルギーを電気信号に、又はその逆に変換するデバイスを備えている。患者の身体に近接した磁場発生器は、特定の周波数の交流(alternating-current、「AC」)又は時変磁場を身体内に生成し、この周波数で磁気トランスデューサによって出力された信号を処理して、プローブの遠位部の位置座標を計算する。典型的には、磁気トランスデューサは、1つ又は2つ以上のコイルを備えているが、代替的に、ホールセンサなどの他のタイプのトランスデューサが、この目的のために使用され得る。
【0007】
いくつかのプローブは、偏向可能な遠位アセンブリを備えている。例えば、いくつかの心臓カテーテルは、それらの遠位端にバスケットアセンブリを備えており、心臓内の組織に接触するように、バスケットアセンブリのスパインに沿って電極が分配されている。これらの種類のカテーテルにおいて位置を検知するために使用される磁気トランスデューサは、一般に、カテーテル挿入チューブの遠位端の近くに位置付けられ、一方で、バスケットアセンブリは、挿入チューブの遠位端から離れて遠位に延在する。バスケットアセンブリは、バスケットアセンブリによって組織に及ぼされた力に起因して、挿入チューブの軸に対して横方向に偏向し得る。偏向がかなりのものであるとき、例えば数度を超えたとき、磁気トランスデューサによって与えられる位置座標は、バスケットアセンブリ上の電極の位置の正確な読み取り値を提供しない。
【0008】
偏向可能な遠位アセンブリを備えたいくつかのプローブは、遠位アセンブリによって身体内の組織に及ぼされた力を測定するための力センサを含む。例えば、上述した種類の心臓カテーテルは、挿入チューブの遠位端とバスケットアセンブリとの間に接合部を備え得る。接合部は、バスケットアセンブリによって組織に及ぼされた力に応じて変形する。変形を測定するために、したがって、力を推定するために、カテーテルの接合部の両側に磁気トランスデューサが配設されている。トランスデューサのうちの1つ、例えば接合部の遠位側のトランスデューサは、特定の周波数のAC磁場を発生させるように駆動され、接合部の他方の側の1つのトランスデューサ(又は複数のトランスデューサ)は、この磁場に応じて、これと同じ周波数の信号を出力する。制御回路は、信号を処理して、接合部の偏向を計算し、したがって、力の大きさ及び方向を見出す。
【0009】
本開示では、力センサ内の磁気トランスデューサのうちの少なくとも1つ、例えば接合部の遠位側の磁気トランスデューサはまた、患者の身体の外部にある磁場発生器によって生成されるAC磁場を検知する、位置センサとしての役割を果たす。制御回路は、身体内のプローブの遠位部の位置座標を計算するために、磁場発生器の周波数の磁気トランスデューサによって出力された信号成分を処理する。具体的には、接合部の遠位側の磁気トランスデューサは、この目的のために使用されるときには、偏向可能な遠位アセンブリと共に偏向し、したがって、偏向にかかわらず電極の位置の正確な読み取り値を提供する。プローブの遠位部の位置を見出す際の精度を高めるために、力センサの磁気トランスデューサから取得される信号が、挿入チューブの遠位端の磁気トランスデューサによって提供される信号と共に使用され得る。
【0010】
しかしながら、このアプローチには、依然として、接合部のすぐ近くでは、力を検知するために磁気トランスデューサのうちの1つによって送信される磁場が、身体の外部にある磁場発生器によって生成される磁場よりもはるかに強いという問題が残っている。その結果、磁場発生器の周波数の信号成分は、力センサの周波数の信号成分よりもはるかに弱く、また、力を検知するために送信される信号のゲインに起因して、力センサ内の磁気トランスデューサが磁場発生器から取り出す信号を検知するための増幅器が飽和する。この問題を軽減し、したがって、位置座標を計算する目的に有用な信号を抽出するために、制御回路は、力センサ内の磁気トランスデューサによって取得される位置信号から、力センサの周波数の干渉を相殺する。
【0011】
一実施例では、力センサの周波数が既知であるので、制御回路は、この周波数での信号成分の振幅を測定して、同じ振幅であるが逆位相の干渉相殺信号を発生させる。正確な干渉相殺のためには、制御回路が、力センサの周波数での信号成分の正確な周波数及び位相を測定し、干渉相殺信号を発生させる際にこの測定値を適用し得ることが望ましい。この干渉相殺信号には、力センサ内の磁気トランスデューサから受信する信号が加算されるので、加算後には、磁場発生器の周波数の信号成分が残留する。制御回路は、この残留する信号成分を処理して、位置座標を計算する。
【0012】
下に記載され、図示される実施例は、具体的には、遠位バスケットアセンブリを備えたカテーテルに関するが、本開示の原理は、必要な変更を加えて、他の種類のプローブ、具体的には、他の種類の遠位アセンブリを備えたプローブの遠位部の正確な位置座標を見出す際にも同様に適用され得る。
【0013】
システムの説明
図1は、例示的なカテーテルベースの電気生理学的マッピング及びアブレーションシステム20を示す。システム20は、医師22によって患者23の血管系を通して心臓24の心腔又は血管構造内へ経皮的に挿入される、複数のカテーテルを含み得る。典型的には、送達シース(図示せず)は、心臓24の所望の位置の近くの左心房又は右心房内へ挿入される。その後、1つ又は2つ以上のカテーテル26を、送達シースを通して挿入して、心臓24の所望の位置に到達させる。複数のカテーテルは、心内電位図(intracardiac electrogram、IEGM)信号の検知専用のカテーテル、アブレーション専用のカテーテル、並びに/又は検知及びアブレーションの両方のためのカテーテルを含んでもよい。示される実施例におけるカテーテル26の遠位部は、バスケットアセンブリ28を備えている。医師22は、カテーテル26を操作して、バスケットアセンブリ28を心臓壁と接触させ、心臓24内の標的部位を検知し得、及び/又は標的部位において組織をアブレーションし得る。
【0014】
カテーテル26は、バスケットアセンブリ28内の複数のスパイン32の上に分配され、かつIEGM信号を検知するように、及び/又は心筋組織をアブレーションするように構成された複数の電極30を含む、例示的なカテーテルである。下で更に説明するように、カテーテル26は、バスケットアセンブリ28の位置及び配向を追跡するための、カテーテルの遠位部に埋め込まれた1つ又は2つ以上の位置センサ34を追加的に含む。例えば、位置センサ34は、三次元(three-dimensional、3D)の位置及び配向を検知するための3つの磁気コイルを含む磁気位置センサを備え得る。
【0015】
磁気位置センサ70、72、及び74(
図3に示される。任意選択で、磁気位置センサ34も)は、心臓24を含む所定の作業体積内に磁場を発生させるように構成された複数の磁気コイル38(
図3では、コイル38a、38b、38c)を含む位置パッド36と共に動作され得る。カテーテル26のバスケットアセンブリ28の位置は、位置パッド36によって発生されて、磁気位置センサ34(3つの直角コイルを含み得る)によって検知される磁場に基づいて追跡され得る。この目的に適用され得る磁気位置検知技術の詳細は、例えば、米国特許第5,5391,199号、同第5,443,489号、同第5,558,091号、同第6,172,499号、同第6,239,724号、同第6,332,089号、同第6,484,118号、同第6,618,612号、同第6,690,963号、同第6,788,967号、及び同第6,892,091号に記載されている。
【0016】
システム20は、任意選択で、患者23の皮膚と接触して、位置パッド36の位置基準、並びに電極30のインピーダンスベースの追跡を確立するように、1つ又は2つ以上の電極パッチ40を含む。インピーダンスベースの追跡のために、電流を電極30へと方向付けて、電極皮膚パッチ40において検知し、それにより、電極パッチ40を介して各電極30の位置を三角測量することができる。この種類のインピーダンスベースの位置追跡技術の詳細は、米国特許第7,536,218号、同第7,756,576号、同第7,848,787号、同第7,869,865号、及び同第8,456,182号に記載されている。
【0017】
レコーダ42は、体表面ECG電極46によって捕捉される電位
図44、及びカテーテル26の電極30によって捕捉される心内電位図(IEGM)を記録して表示する。レコーダ42は、心臓の律動をペーシングするためのペーシング能力を含み得、及び/又は独立型ペーサに電気的に接続され得る。
【0018】
システム20は、1つ又は2つ以上の電極30にアブレーションエネルギーを提供するためのアブレーションエネルギー発生器48を含み得る。アブレーションエネルギー発生器48によって生成されるエネルギーとしては、不可逆エレクトロポレーション(irreversible electroporation、IRE)をもたらすために使用され得るような単極性又は双極高性電圧DCパルスを含む、高周波(radiofrequency、RF)エネルギー若しくはパルス場アブレーション(pulsed-field ablation、PFA)エネルギー、又はそれらの組み合わせが挙げられ得るが、これらに限定されない。
【0019】
患者インターフェースユニット(patient interface unit、PIU)50は、カテーテル26と、他の電気生理学的機器と、電源と、システム20の動作を制御するためのワークステーション52との間の電気通信のためのインターフェースを備えている。システム20の電気生理学的機器は、例えば、複数のカテーテル26と、位置パッド36と、体表面ECG電極46と、電極パッチ40と、アブレーションエネルギー発生器48と、レコーダ42と、を含み得る。任意選択で、PIU50は、カテーテルの位置のリアルタイム計算を実装し、ECG信号を処理するための処理能力を追加的に含む。
【0020】
ワークステーション52は、メモリと、メモリに記憶された適切なオペレーティングソフトウェアを有するプロセッサと、ユーザインターフェース機能と、を含む。ワークステーション52は、任意選択で、(1)心内膜解剖学的構造を三次元(3D)でモデル化して、モデル又は解剖学的マップ54をディスプレイデバイス56上に表示するようにレンダリングすること、(2)記録された電位
図44からコンパイルされた活性化シーケンス(又は他のデータ)を、レンダリングされた解剖学的マップ54に重ね合わせられた代表的な視覚的表示又は画像で、ディスプレイデバイス56上に表示すること、(3)心臓24内の1つ又は2つ以上のカテーテルの位置及び配向をリアルタイムで表示すること、及び(4)アブレーションエネルギーが印加された位置などの関心部位をディスプレイデバイス56上に表示すること、を含む、複数の機能を提供し得る。システム20の要素を具現化する市販製品は、Biosense Webster,Inc.(31A Technology Drive,Irvine,CA 92618)から市販されている、CARTO(登録商標)3システムである。
【0021】
図2は、本開示の一実施例による、バスケットアセンブリ28の概略描画図である。バスケットアセンブリ28は、複数の弾性スパイン32を備え、スパインに沿って電極30が配設されている。バスケットアセンブリ28は、6つのスパイン32を備えるものとして示されているが、代替的な実施形態では、バスケットアセンブリは、より多数又はより少数のスパインを備え得る。
【0022】
スパイン32は、典型的には、例えば、好適な弾性金属又はプラスチック材料を含む。スパイン32の近位先端部は、バスケットアセンブリ28の近位端で機械的に接合され、バスケットアセンブリは、接合部60を介してカテーテル26の挿入チューブ62の遠位端に接続する。スパイン32の遠位先端部は、同様に、バスケットアセンブリの遠位端で一緒に機械的に接合される。スパインは、カテーテル26がシース(図示せず)を通して挿入されるときに圧縮され、次いで、バスケットアセンブリ28がシースから心腔内へ展開されるときに、半径方向外向きに弓状になる。展開されたときのバスケットアセンブリの直径は、典型的には、10~20mmの範囲であるが、用途の要件に応じて、より大きい又は小さいアセンブリが代替的に使用され得る。バスケットアセンブリ28を心腔内で展開させた時点で、医師22は、カテーテル26を操作して、心腔内の標的位置において電極30を心筋組織に接触させる。
【0023】
バスケットアセンブリ28は、同様に、超音波トランスデューサ及び温度センサなどの他の構成要素(図示せず)を備え得る。電極30、並びにこれらの他の構成要素は、挿入チューブ62を通ってカテーテル26の近位端まで延びるワイヤ(図示せず)に接続され、それらは、PIU50内の適切な回路に接続する。バスケットアセンブリ28の構造に関する更なる詳細は、例えば、2022年4月4日に出願された米国仮特許出願第63/336,094号(BIO6693)に提示されており、その開示は、参照により本明細書に組み込まれる。あるいは、本明細書を読んだ後に当業者にとって明らかになるように、電極及びスパインの他の設計が使用されてもよい。
【0024】
接合部60は、バスケットアセンブリ28によって心腔内の組織に及ぼされた力に応じて変形する。例えば、接合部60は、横方向力に応じて
図2に示されるように偏向し得、それにより、バスケットアセンブリ28の中心軸が挿入チューブ62の長手方向軸に対してある角度をなす。場合によっては、偏向角は、30°であり得る。接合部60の偏向の度合い及び方向は、力の大きさ及び方向を示す。偏向は、下で説明するように、磁気トランスデューサを使用して測定される。
【0025】
図3は、本開示の一実施例による、カテーテルの構造の詳細を示す、接合部60及びカテーテル26の遠位部における関連する構成要素の概略断面図である。上述したように、(長手方向軸L-Lに沿って延在する)挿入チューブ62は、接合部60によってバスケットアセンブリ28の近位部分28aに接続される。挿入チューブ62及び接合部60は、可撓性の絶縁材料(カテーテルの内部構造を露出させるために、
図3では切り取られている)によって覆われている。
【0026】
接合部60は、弾性連結部材64を含む。示される実施例では、連結部材64は、その長さの一部分に沿って螺旋状の切り込みを有する、弾性材料の管状部分の形態を有する。例えば、連結部材は、ニッケル・チタニウム(ニチノール)のような超伸縮性合金を含むことができる。螺旋状の切り込みは、バスケットアセンブリ28に及ぼされた力に応じて、管状部分をバネのように挙動させる。この種類の連結部材の製造及び特性に関する更なる詳細は、例えば、米国特許第8,437,832号に提示されており、本開示は、参照により本明細書に組み込まれる。接合部60の詳細はまた、前述の2022年4月4日に出願された米国仮特許出願第63/336,094号(BIO6693)の要素400としても示されている。あるいは、連結部材は、所望の可撓性及び強度特性を持つコイルバネ又は任意の他の好適な種類の弾性コンポーネントを含んでよい。代替的な一実施形態(図示せず)では、接合部は、挿入チューブ62の一体部分であり、連結部材64は、挿入チューブ自体の切り込みの形態をとり得る。
【0027】
連結部材64の剛性は、例えばアブレーション処置中の心内膜に対する圧力に起因する、バスケットアセンブリ28に及ぼされた力に応じた、バスケットアセンブリ28と挿入チューブ62との間の相対的な移動の範囲を決定する。連結部材64は、バスケットアセンブリへの力に比例する、バスケットアセンブリ28の軸方向変位(すなわち、挿入チューブ62の軸に沿った動き)及び角偏向を含む偏向を可能にするように構成されている。変位及び偏向の測定は、力の読み取り値を提供し、したがって、アブレーション中に正しい力が印加されることを確実にするのを補助する。
【0028】
接合部60内にコイル68、70、72、及び74を備えている接合検知アセンブリ66は、軸方向変位及び角偏向を含む、挿入チューブ62の遠位端に対するバスケットアセンブリ28の位置の正確な読み取り値を提供する。これらのコイルは、本開示の実装形態で使用され得る1つのタイプの磁気トランスデューサである。本出願の実施形態では、コイルを磁気変換器として記述しているが、代わりの実施形態では、当業者にとっては自明であるように、他の種類の磁気変換器を用いることができる。
【0029】
接合検知アセンブリ66のコイルは、連結部材64の両側の2つのサブアセンブリに分けられる。連結部材64の遠位側にある一方のサブアセンブリは、(バスケット28の近位部分28aに固定されている)コイル68を備え、コイル68は、ケーブル76を介したPIU50からの電流によって駆動されて、プローブ内部に所定の周波数の第1のAC磁場を発生させる。この第1のAC磁場は、コイル68から軸方向に離間された位置検知コイル70、72、及び74を備えている、連結部材64の近位側の第2のサブアセンブリによって受信される。(本出願及び特許請求の範囲の文脈で使用される「軸方向」という用語は、挿入チューブ62の遠位部の長手方向軸L-Lの方向を指す。)コイル70、72、及び74は、プローブ60に配設されたコイル68によって発生される第1のAC磁場に応じて、所定の周波数の電気信号を放射する。これらの信号は、ケーブル76によってPIU50に搬送され、PIU50は、それらの信号を処理して、接合部60の軸方向変位及び角偏向を測定し、したがって、バスケットアセンブリ28の配設(すなわち、L-L軸に対する変位及び角度形成)及びバスケットアセンブリによって組織に及ぼされた力を計算する。
【0030】
示され、上述された構成の代替案として、検知サブアセンブリには、様々な他の構成のコイルも使用され得る。例えば、磁場発生コイルが接合部64の近位側にあり、かつセンサコイルが遠位側にあるように、サブアセンブリの位置を逆にしてもよい。別の代替案として、コイル70、72、及び74は、磁場発生器(磁場を識別するために、時分割多重化及び/又は周波数分割多重化を使用する)として駆動され得、一方で、コイル68はまた、磁場センサとしての役割も果たす。
図3のコイルのサイズ及び数は単に例として示されており、接合部の偏向の示差測定を可能にするために、サブアセンブリのうちの1つが異なる半径方向位置に少なくとも2つのコイルを備える限り、様々な異なる位置でより多数の又はより少数のコイルが同様に使用され得る。
【0031】
コイル68、70、72、及び74のうちの少なくとも1つはまた、磁場発生器38(
図1)によって発生されるAC磁場に応じて信号を出力するためにも使用され、したがって、位置検知コイルとしての役割を果たす。好ましくは、コイル68は、この目的のために利用される。接合部60の近位の挿入チューブ62の遠位端にある位置センサ34はまた、磁場発生器38(
図1)の第2のAC磁場に応じても信号を発生する。(磁場発生器38によって生成される第2のAC磁場の周波数は、コイル68によって発生される第1のAC磁場の周波数とは異なるが、同じ多重キロヘルツの範囲内にあり得る。)各AC磁場発生器38a、38b、38cは、PIU50が空間内の位置に到達させるように3つの異なる時変の第2の磁場を三角測量するために、それぞれの異なるAC磁場を提供する。好ましい実施形態では、患者の外部にある磁場発生器がカテーテルの内部コイルによる位置決定のために、合計9つの磁場コイル、したがって、9つの異なる時変磁場(例えば、周波数)を有し得るように、(コイル38a、38b、38cからの)各コイルは、X、Y、及びZ平面に配向された3つのコイルを有し得る。PIU50は、これらの信号を処理して、位置センサ34、並びにコイル68、70、72、及び74のうちの1つ又は2つ以上の双方の位置座標(位置及び配向)を計算し、これらの計算の結果を組み合わせて、位置パッド36によって画定される外部基準系で三次元のバスケットアセンブリ28の位置及び配向座標を見出す。
【0032】
図4は、本開示の一実施例による、外部AC磁場発生器38a、38b、38c(
図1にも示す)によって生成された第2のAC磁場に応じてコイル68によって出力された位置信号に基づいてバスケットアセンブリ28の位置座標を見出す際に使用される検知及び信号処理回路を概略的に示すブロック図である。この位置を見出す処理中に、信号発生器80は、コイル68を駆動して、接合部60への力を測定する際に接合検知アセンブリ66によって使用されるそれ自体の磁場、すなわち、第1のAC磁場F1を発生させる。力センサの周波数(以下、第1のAC磁場の「第1の周波数」と称される)で信号発生器80によってコイル68に適用される駆動信号は、外部又は第2のAC磁場発生器38の周波数(「第2の周波数」)F2a、F2b、又はF2cでコイル68によって出力された位置信号よりもはるかに強い。バスケットアセンブリ28の位置座標の計算を可能にするために、PIU50の制御回路は、コイル68によって出力された信号からの第1の周波数の第1のAC磁場F1の干渉を相殺する。次いで、位置処理回路82は、第2のAC磁場(磁場発生器38a、38b、及び38cから)の第2の周波数F2a~F2cの残留信号成分を処理して、位置座標を正確に計算することができる。正確さのために、各磁場発生器38a~38cは、1つを超える周波数、例えば、発生器38aのF2aX、F2aY、F2aZ、発生器38bのF2bX、F2bY、F2bZ、並びに発生器38cの周波数F2cX、F2cY、及びF2cZを発生させ得ることに留意するべきであり、ここで、「X」、「Y」、及び「Z」は、各周波数F2a、F2b、F2cの意図する軸を示す。
【0033】
第1の周波数の干渉の効果的な相殺を可能にするために、マイクロプロセッサ84は、PIU50によってコイル68から受信される信号中に存在する第1の周波数の干渉の振幅を測定する。マイクロプロセッサ84は、この同じ第1の周波数の測定された振幅を有する干渉相殺信号を発生させて、PIU50によってコイル68から受信される信号からこの干渉相殺信号を減算する。この信号減算又は相殺は、第1の周波数の干渉が第2の周波数の信号成分よりもはるかに強いので、単にPIU50によってコイル68から受信される信号をフィルタリングするよりも好ましい。
【0034】
図4に示される特定の実施例では、マイクロプロセッサ84は、PIU50によってコイル68から受信される信号をデジタル化して、例えば高速フーリエ変換(Fast Fourier Transform、FFT)86を使用して、このデジタル化された信号を周波数ドメインに変換する。マイクロプロセッサ84は、第1の周波数の信号成分の振幅及び位相を抽出して、同じ測定された振幅であるが、第1の周波数の測定された信号成分とは逆位相のデジタル信号として、干渉相殺信号を発生させる。デジタル-アナログ変換器(digital/analog converter、DAC)88は、デジタル信号をアナログ干渉相殺信号に変換する。アナログ干渉相殺信号は、両方の信号を一緒にアナログ加算器90に入力することによって、PIU50によってコイル68から受信した信号から減算される。
【0035】
本実施例は、特に、接合部60の遠位側にあるコイル68が、磁場(第1のAC磁場)を発生させて、位置パッド36のそれぞれの磁場発生器38a、38b、及び38cの第2のAC磁場を検知するように構成されているが、この実施例の原理は、代替的に、他の構成に適用され得る。例えば、接合部センサ66の磁場がコイル70、72、及び74のうちの1つ又は2つ以上によって発生され、コイル68によって検知される場合に、干渉相殺のための同様の技術が適用され得る。全てのそのような代替の構成は、本開示の範囲内である。
【0036】
位置検知の方法
図5は、本開示の一実施例による、位置検知の方法を概略的に示すフローチャートである。方法は、プローブ提供工程100で、生体の身体内へ挿入されるように適合された遠位部を有するプローブを提供することによって開始する。プローブは、プローブの遠位部のそれぞれの第1及び第2の位置に配設された第1の磁気トランスデューサ及び第2の磁気トランスデューサを備えている。磁場発生器配置工程102で、少なくとも1つの外部磁場発生器をプローブの外部に配置する。
【0037】
第1のトランスデューサ駆動工程104で、第1の磁気トランスデューサを駆動して、第1の周波数の第1のAC磁場を発生させる。第2のトランスデューサ駆動工程106で、少なくとも1つの外部磁場発生器を駆動して、第2の周波数の第2のAC磁場を発生させる。配設計算工程108で、第1の周波数の第2の磁気トランスデューサによって出力された第1の信号を処理することによって、プローブの遠位部の配設を計算する。座標計算工程110で、第2の周波数の第1の磁気トランスデューサ及び第2の磁気トランスデューサのうちの1つによって出力された第2の信号の成分を、第1の周波数の干渉を第2の信号から相殺しながら、処理することによって、プローブの遠位部の位置座標を計算する。
【実施例0038】
実施例1.医療装置(20)は、プローブ(26)であって、生体(23)の身体内へ挿入されるように適合された遠位部(28)を含み、かつプローブの遠位部のそれぞれの第1及び第2の位置に配設された第1の磁気トランスデューサ及び第2の磁気トランスデューサ(68、70、72、74)を含む、プローブ(26)を備えている。磁場発生器(38)は、プローブから離れて配設され、生体の身体に近接して配置されるように適合される。制御回路(50)は、第1の磁気トランスデューサを駆動して、第1の周波数の第1のAC磁場を発生させ、磁場発生器を駆動して、第2の周波数の第2のAC磁場を発生させ、第1の周波数の第2の磁気トランスデューサによって出力された第1の信号を処理することによって、プローブの遠位部の配設を計算し、第2の周波数の第1の磁気トランスデューサ及び第2の磁気トランスデューサのうちの1つによって出力された第2の信号の成分を、第1の周波数の干渉を第2の信号から相殺しながら、処理することによって、プローブの遠位部の位置座標を計算するように構成されている。
【0039】
実施例2.第1の磁気トランスデューサ及び第2の磁気トランスデューサが、それぞれ第1のコイル及び第2のコイルを備え、制御回路が、第1のコイルに第1の周波数のAC電流を印加することによって、第1の磁気トランスデューサを駆動するように構成されている、実施例1に記載の装置。
【0040】
実施例3.プローブの遠位部が、プローブの遠位部によって組織に及ぼされた力に応じて変形するように構成された接合部を備え、第1の磁気トランスデューサ及び第2の磁気トランスデューサが、接合部の両側に配設されている、実施例1又は2に記載の装置。
【0041】
実施例4.制御回路が、第1の周波数の第2の磁気トランスデューサによって出力された第1の信号に応じて接合部の変形を計算し、計算された変形に基づいて、プローブの遠位部によって組織に及ぼされる力を測定するように構成されている、実施例3に記載の装置。
【0042】
実施例5.第1の磁気トランスデューサが接合部の遠位側に配設され、一方で、第2の磁気トランスデューサが接合部の近位側に配設されている、実施例3又は4に記載の装置。
【0043】
実施例6.プローブが、第1及び第2の位置の近位の第3の位置に第3の磁気トランスデューサを備え、制御回路が、第2の信号を処理すること、及び第2の周波数の第3の磁気トランスデューサによって出力された第3の信号を処理すること、の両方によって、プローブの遠位部の位置座標を計算するように構成されている、実施例3~5のうちのいずれか1つに記載の装置。
【0044】
実施例7.プローブの遠位部が、バスケットアセンブリを備え、バスケットアセンブリが、複数のスパイン及び電極を含み、電極がスパインに沿って配設され、かつ組織に接触するように構成されている、バスケットアセンブリを備えている、実施例1~6のうちのいずれか1つに記載の装置。
【0045】
実施例8.制御回路が、第1の周波数の第2の信号における干渉の振幅を測定し、第1の周波数の測定された振幅を有する第3の信号を発生させ、第2の信号から第3の信号を減算することによって、干渉を相殺するように構成されている、実施例1~7のうちのいずれか1つに記載の装置。
【0046】
実施例9.制御回路が、第2の信号をデジタル化して、第1の周波数のデジタル化された第2の信号の要素の振幅及び位相を抽出することによって、干渉の振幅を測定し、第1の周波数のデジタル化された第2の信号の要素とは逆位相の測定された振幅のデジタル信号として第3の信号を発生させて、デジタル信号をアナログ干渉相殺信号に変換し、アナログ干渉相殺信号と第2の信号とのアナログ加算によって、第2の信号から第3の信号を減算するように構成されている、実施例8に記載の装置。
【0047】
実施例10.第1の磁気トランスデューサが第1のAC磁場を発生させるように駆動されている間、第2の信号が、第1の磁気トランスデューサによって出力される、実施例9に記載の装置。
【0048】
実施例11.位置検知の方法は、プローブ(26)を提供することであって、プローブが、生体(23)の身体内へ挿入されるように適合された遠位部(28)を有し、プローブの遠位部のそれぞれの第1及び第2の位置に配設された第1の磁気トランスデューサ及び第2の磁気トランスデューサ(68、70、72、74)を備えている、プローブ(26)を提供することを含む。磁場発生器(38)は、身体に近接して配置されている。プローブが身体の内部にある間に、第1の磁気トランスデューサを駆動して、第1の周波数の第1のAC磁場を発生させる。磁場発生器を駆動して、第2の周波数の第2のAC磁場を発生させる。第1の周波数の第2の磁気トランスデューサによって出力された第1の信号を処理することによって、プローブの遠位部の配設を計算する。プローブの遠位部の位置座標は、第2の周波数の第1の磁気トランスデューサ及び第2の磁気トランスデューサのうちの1つによって出力された第2の信号の成分を、第1の周波数の干渉を第2の信号から相殺しながら、処理することによって計算される。
【0049】
上述した実装形態は、一例として挙げたものであり、本開示は、本明細書で具体的に示され、上述されたものに限定されない。むしろ、本開示の範囲は、本明細書の上記した様々な特徴の組み合わせ及び部分的組み合わせの両方、並びに前述の記載を読むと当業者に着想されるであろう、先行技術に開示されていないその変形及び修正を含む。
【0050】
〔実施の態様〕
(1) 医療装置であって、
プローブであって、生体の身体内へ挿入されるように適合された遠位部を含み、かつ前記プローブの前記遠位部のそれぞれの第1及び第2の位置に配設された第1の磁気トランスデューサ及び第2の磁気トランスデューサを含む、プローブと、
前記プローブの外部に配設され、前記生体の前記身体に近接して配置されるように適合された、少なくとも1つの磁場発生器と、
制御回路であって、
(a)前記プローブの前記第1の磁気トランスデューサを駆動して、第1の周波数の第1のAC磁場を発生させ、
(b)前記プローブの外部の前記少なくとも1つの磁場発生器を駆動して、第2の周波数の第2のAC磁場を発生させ、
(c)前記第1の周波数の前記第2の磁気トランスデューサによって出力された第1の信号を処理することによって、前記プローブの前記遠位部の配設を計算し、
(d)前記第2の周波数の前記第1の磁気トランスデューサ及び前記第2の磁気トランスデューサのうちの1つによって出力された第2の信号の成分を、前記第1の周波数の干渉を前記第2の信号から相殺しながら、処理することによって、前記プローブの前記遠位部の位置座標を計算するように構成された、制御回路と、を備えている、医療装置。
(2) 前記第1の磁気トランスデューサ及び前記第2の磁気トランスデューサが、それぞれ第1のコイル及び第2のコイルを備え、前記制御回路が、前記第1のコイルに前記第1の周波数のAC電流を印加することによって、前記第1の磁気トランスデューサを駆動するように構成されている、実施態様1に記載の装置。
(3) 前記プローブの前記遠位部が、前記プローブの前記遠位部によって組織に及ぼされた力に応じて変形するように構成された接合部を備え、前記第1の磁気トランスデューサ及び前記第2の磁気トランスデューサが、前記接合部の両側に配設されている、実施態様1に記載の装置。
(4) 前記制御回路が、前記第1の周波数の前記第2の磁気トランスデューサによって出力された前記第1の信号に応じて前記接合部の変形を計算し、計算された前記変形に基づいて、前記プローブの前記遠位部によって前記組織に及ぼされた前記力を測定するように構成されている、実施態様3に記載の装置。
(5) 前記第1の磁気トランスデューサが前記接合部の遠位側に配設され、一方で、前記第2の磁気トランスデューサが前記接合部の近位側に配設されている、実施態様3に記載の装置。
【0051】
(6) 前記プローブが、前記第1及び第2の位置の近位の第3の位置に第3の磁気トランスデューサを備え、
前記制御回路が、前記第2の信号を処理すること、及び前記第2の周波数の前記第3の磁気トランスデューサによって出力された第3の信号を処理すること、の両方によって、前記プローブの前記遠位部の前記位置座標を計算するように構成されている、実施態様3に記載の装置。
(7) 前記プローブの前記遠位部が、バスケットアセンブリを備え、前記バスケットアセンブリが、複数のスパイン及び電極を含み、前記電極が前記スパインに沿って配設され、かつ前記身体の空洞内の組織に接触するように構成されている、実施態様1に記載の装置。
(8) 前記制御回路が、前記第1の周波数の前記第2の信号における前記干渉の振幅を測定し、前記第1の周波数の測定された前記振幅を有する第3の信号を発生させ、前記第2の信号から前記第3の信号を減算することによって、前記干渉を相殺するように構成されている、実施態様1に記載の装置。
(9) 前記制御回路が、前記第2の信号をデジタル化して、前記第1の周波数のデジタル化された前記第2の信号の要素の振幅及び位相を抽出することによって、前記干渉の前記振幅を測定し、前記第1の周波数のデジタル化された前記第2の信号の前記要素とは逆位相の測定された前記振幅のデジタル信号として前記第3の信号を発生させて、前記デジタル信号をアナログ干渉相殺信号に変換し、前記アナログ干渉相殺信号と前記第2の信号とのアナログ加算によって、前記第2の信号から前記第3の信号を減算するように構成されている、実施態様8に記載の装置。
(10) 前記第1の磁気トランスデューサが前記第1のAC磁場を発生させるように駆動されている間、前記第2の信号が、前記第1の磁気トランスデューサによって出力される、実施態様9に記載の装置。
【0052】
(11) 位置検知の方法であって、
プローブを提供することであって、前記プローブが、生体の身体内へ挿入されるように適合された遠位部を有し、前記プローブの前記遠位部のそれぞれの第1及び第2の位置に配設された第1の磁気トランスデューサ及び第2の磁気トランスデューサを備えている、提供することと、
前記プローブの外部に少なくとも1つの外部磁場発生器を配置することと、
前記第1の磁気トランスデューサを駆動して、第1の周波数の第1のAC磁場を発生させることと、
前記少なくとも1つの外部磁場発生器を駆動して、第2の周波数の第2のAC磁場を発生させることと、
前記第1の周波数の前記第2の磁気トランスデューサによって出力された第1の信号を処理することによって、前記プローブの前記遠位部の配設を計算することと、
前記第2の周波数の前記第1の磁気トランスデューサ及び前記第2の磁気トランスデューサのうちの1つによって出力された第2の信号の成分を、前記第1の周波数の干渉を前記第2の信号から相殺しながら、処理することによって、前記プローブの前記遠位部の位置座標を計算することと、を含む、方法。
(12) 前記第1の磁気トランスデューサ及び前記第2の磁気トランスデューサが、それぞれ第1のコイル及び第2のコイルを備え、前記第1の磁気トランスデューサを駆動することが、前記第1のコイルに前記第1の周波数のAC電流を印加することを含む、実施態様11に記載の方法。
(13) 前記プローブの前記遠位部が、前記プローブの前記遠位部によって組織に及ぼされた力に応じて変形するように構成された接合部を備え、前記第1の磁気トランスデューサ及び前記第2の磁気トランスデューサが、前記接合部の両側に配設されている、実施態様11に記載の方法。
(14) 前記プローブの前記遠位部の前記配設を計算することが、前記第1の周波数の前記第2の磁気トランスデューサによって出力された前記第1の信号に応じて前記接合部の変形を計算することと、計算された前記変形に基づいて、前記プローブの前記遠位部によって前記組織に及ぼされた前記力を測定することと、を含む、実施態様13に記載の方法。
(15) 前記第1の磁気トランスデューサが前記接合部の遠位側に配設され、一方で、前記第2の磁気トランスデューサが前記接合部の近位側に配設されている、実施態様13に記載の方法。
【0053】
(16) 前記プローブが、前記第1及び第2の位置の近位の第3の位置に第3の磁気トランスデューサを備え、
前記位置座標を計算することが、前記第2の信号を処理すること、及び前記第2の周波数の前記第3の磁気トランスデューサによって出力された第3の信号を処理すること、の両方によって、前記プローブの前記遠位部の前記位置座標を見出すことを含む、実施態様13に記載の方法。
(17) 前記プローブの前記遠位部が、バスケットアセンブリを備え、前記バスケットアセンブリが、複数のスパイン及び電極を含み、前記電極が前記スパインに沿って配設され、かつ組織に接触するように構成されている、実施態様11に記載の方法。
(18) 前記干渉を相殺することが、前記第1の周波数の前記第2の信号における前記干渉の振幅を測定することと、前記第1の周波数の測定された前記振幅を有する第3の信号を発生させることと、前記第2の信号から前記第3の信号を減算することと、を含む、実施態様11に記載の方法。
(19) 前記干渉の前記振幅を測定することが、前記第2の信号をデジタル化して、前記第1の周波数のデジタル化された前記第2の信号の要素の振幅及び位相を抽出することを含み、
前記第3の信号を発生させることが、前記第1の周波数のデジタル化された前記第2の信号の前記要素とは逆位相の測定された前記振幅のデジタル信号を発生させて、前記デジタル信号をアナログ干渉相殺信号に変換することを含み、
前記第2の信号から前記第3の信号を減算することが、前記アナログ干渉相殺信号と前記第2の信号とのアナログ加算を実行することを含む、実施態様18に記載の方法。
(20) 前記第1の磁気トランスデューサが前記第1のAC磁場を発生させるように駆動されている間、前記第2の信号が、前記第1の磁気トランスデューサによって出力される、実施態様19に記載の方法。
【0054】
(21) カテーテル用のエンドエフェクタであって、
近位部分から遠位部分まで長手方向軸に沿って配設されたプローブを備え、前記プローブが、
複数の磁気位置センサと共に前記近位部分に取り付けられた第1の部分と、
可撓性部材を介して前記第1の部分に結合された第2の部分であって、前記第2の部分が、トランスデューサを含み、前記トランスデューサが、
(1)前記磁気位置センサの位置が提供されるように、前記複数の磁気位置センサに第1の周波数の第1のAC磁場を放射し、
(2)第2の磁場発生器に対する前記トランスデューサの位置が決定されるように、前記第1の周波数の干渉の、前記第2の信号からの相殺を介して、第2の周波数の外部磁場発生器からの複数の第2のAC磁場のうちの少なくとも1つを受信するように構成されている、第2の部分と、を含む、エンドエフェクタ。