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特開2024-9609車載装置、プログラム及び情報処理方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024009609
(43)【公開日】2024-01-23
(54)【発明の名称】車載装置、プログラム及び情報処理方法
(51)【国際特許分類】
   G06F 1/04 20060101AFI20240116BHJP
   G06F 15/78 20060101ALI20240116BHJP
   B60R 16/02 20060101ALI20240116BHJP
【FI】
G06F1/04 510
G06F15/78 517
B60R16/02 660Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022111266
(22)【出願日】2022-07-11
(71)【出願人】
【識別番号】000183406
【氏名又は名称】住友電装株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100114557
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 英仁
(74)【代理人】
【識別番号】100078868
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 登夫
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 尚
(72)【発明者】
【氏名】平野 和弘
(72)【発明者】
【氏名】岡田 遼
(72)【発明者】
【氏名】水島 裕亮
【テーマコード(参考)】
5B062
【Fターム(参考)】
5B062CC05
5B062HH02
(57)【要約】
【課題】クロック発振器の精度を効率的に向上させることができる車載装置等を提供する。
【解決手段】車載装置は、車両に搭載される車載装置であって、第1クロック発振器と、前記第1クロック発振器よりも、低速度かつ低精度の第2クロック発振器と、前記第2クロック発振器を内蔵する処理部とを備え、前記処理部は、前記第1クロック発振器から第1クロック信号を取得し、前記第2クロック発振器から第2クロック信号を取得し、取得した前記第1クロック信号及び前記第2クロック信号に基づき、補正値を導出し、導出した前記補正値を用いて、前記第2クロック信号の補正に関する処理を行う。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に搭載される車載装置であって、
第1クロック発振器と、
前記第1クロック発振器よりも、低速度かつ低精度の第2クロック発振器と、
前記第2クロック発振器を内蔵する処理部とを備え、
前記処理部は、
前記第1クロック発振器から第1クロック信号を取得し、
前記第2クロック発振器から第2クロック信号を取得し、
取得した前記第1クロック信号及び前記第2クロック信号に基づき、補正値を導出し、
導出した前記補正値を用いて、前記第2クロック信号の補正に関する処理を行う
車載装置。
【請求項2】
前記処理部は、前記第1クロック信号を分周することにより算出した第1計測時間と、前記第2クロック信号により算出した第2計測時間との差分に基づき、前記補正値を導出する
請求項1に記載の車載装置。
【請求項3】
前記処理部は、
前記第1クロック信号及び前記第2クロック信号を複数回取得することにより、複数の差分を算出し、
前記複数の差分に基づき、前記補正値を導出する
請求項2に記載の車載装置。
【請求項4】
前記処理部は、前記車両が起動した際、前記第2クロック信号の補正に関する処理を行う
請求項1に記載の車載装置。
【請求項5】
前記処理部は、所定の周期にて、前記第2クロック信号の補正に関する処理を行う
請求項1に記載の車載装置。
【請求項6】
前記第2クロック発振器は、前記第1クロック発振器が非活性状態であっても、活性状態を維持し、
前記処理部は、前記第1クロック発振器が非活性状態の場合、前記第1クロック発振器を活性状態に遷移させた後、前記第2クロック信号の補正に関する処理を行う
請求項1に記載の車載装置。
【請求項7】
前記処理部は、
前記第2クロック発振器の動作に影響を与える温度データを取得し、
取得した前記温度データの変化状態に応じて、前記第2クロック信号の補正に関する処理を行う
請求項1に記載の車載装置。
【請求項8】
前記温度データの変化状態は、直前に行った前記第2クロック信号の補正に関する処理時点の温度データと、処理時点以降の取得時点における2つの温度データの温度差による状態を含み、
前記処理部は、
前記2つの温度データの温度差の絶対値が、予め定められた温度差閾値以上である場合、前記第2クロック信号の補正に関する処理を行う
請求項7に記載の車載装置。
【請求項9】
前記温度データの変化状態は、異なる取得時点における2つの温度データの時間変化率による状態を含み、
前記処理部は、前記2つの温度データの時間変化率が、予め定められた変化率閾値以上である場合、前記第2クロック信号の補正に関する処理を行う
請求項7に記載の車載装置。
【請求項10】
前記処理部は、前記補正値による補正が行われた第2クロック信号を、前記車両の起動時からの経過時間を計測する計時部に出力する
請求項1から請求項9のいずれか1項に記載の車載装置。
【請求項11】
第1クロック発振器と通信可能に接続され、前記第1クロック発振器よりも低速度かつ低精度の第2クロック発振器を内蔵するコンピュータに、
前記第1クロック発振器から第1クロック信号を取得し、
前記第2クロック発振器から第2クロック信号を取得し、
取得した前記第1クロック信号及び前記第2クロック信号に基づき、補正値を導出し、
導出した前記補正値を用いて、前記第2クロック信号の補正する
処理を実行させるプログラム。
【請求項12】
第1クロック発振器と通信可能に接続され、前記第1クロック発振器よりも低速度かつ低精度の第2クロック発振器を内蔵するコンピュータに、
前記第1クロック発振器から第1クロック信号を取得し、
前記第2クロック発振器から第2クロック信号を取得し、
取得した前記第1クロック信号及び前記第2クロック信号に基づき、補正値を導出し、
導出した前記補正値を用いて、前記第2クロック信号の補正する
処理を実行させる情報処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車載装置、プログラム及び情報処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
車両には、例えば、ワイパー駆動装置、車両の内外の灯火装置、ドアロック装置、パワーウインドウ等のボディ系の装置の制御を統括して行う車載ECUであるボディECUが搭載されている(例えば特許文献1)。特許文献1のワイパー駆動装置は、車載ECU(ボデーECU)を含み、車載ECUに適用されている制御プログラムにより駆動される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2017-224926号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このような車載ECUが各種制御処理を行うにあたり、当該車載ECUに実装されるクロック発振器を用いて計時機能等を発揮するものとなるが、特許文献1の車載ECUにおいては、当該クロック発振器の精度を効率的に向上させる点について、考慮されていない。
【0005】
本開示は、クロック発振器の精度を効率的に向上させることができる車載装置等を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一態様に係る車載装置は、車両に搭載される車載装置であって、第1クロック発振器と、前記第1クロック発振器よりも、低速度かつ低精度の第2クロック発振器と、前記第2クロック発振器を内蔵する処理部とを備え、前記処理部は、前記第1クロック発振器から第1クロック信号を取得し、前記第2クロック発振器から第2クロック信号を取得し、取得した前記第1クロック信号及び前記第2クロック信号に基づき、補正値を導出し、導出した前記補正値を用いて、前記第2クロック信号の補正に関する処理を行う。
【発明の効果】
【0007】
本開示の一態様によれば、クロック発振器の精度を効率的に向上させる車載装置等を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】実施形態1に係る車載装置を含む車載システムの構成を示す模式図である。
図2】車載装置の構成を示すブロック図である。
図3】補正処理における第1クロック発振器及び第2クロック発振器の動作の一例を示す説明図である。
図4】補正処理に関する機能部の一例を示す説明図である。
図5】複数回による差分(誤差)の集計処理の一例を示す説明図である。
図6】車載装置の処理部の処理を示すフローチャートである。
図7】実施形態2(ウェイクアップ)に係る車載装置の処理部の処理を示すフローチャートである。
図8】実施形態3(温度差)に係る車載装置の処理部の処理を示すフローチャートである。
図9】実施形態4(時間変化率)に係る車載装置の処理部の処理を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
[本発明の実施形態の説明]
最初に本開示の実施態様を列挙して説明する。また、以下に記載する実施形態の少なくとも一部を任意に組み合わせてもよい。
【0010】
(1)本開示の一態様に係る車載装置は、車両に搭載される車載装置であって、第1クロック発振器と、前記第1クロック発振器よりも、低速度かつ低精度の第2クロック発振器と、前記第2クロック発振器を内蔵する処理部とを備え、前記処理部は、前記第1クロック発振器から第1クロック信号を取得し、前記第2クロック発振器から第2クロック信号を取得し、取得した前記第1クロック信号及び前記第2クロック信号に基づき、補正値を導出し、導出した前記補正値を用いて、前記第2クロック信号の補正に関する処理を行う。
【0011】
本態様にあたっては、車載装置に備えられる処理部は、例えば、マイコン等にて構成される。車載装置は、第1クロック発振器、及び第2クロック発振器の2つのクロック発振器を備え、第2クロック発振器は、処理部(マイコン)に内蔵されるタイプのものである。これに対し、第1クロック発振器(外付クロック)は、処理部(マイコン)に外付けされる構成となっており、処理部(マイコン)に内蔵される第2クロック発振器(内蔵クロック)よりも高速度かつ高精度である。すなわち、第1クロック発振器(外付クロック)は高速度高精度クロックに相当し、第2クロック発振器(内蔵クロック)は低速度低精度クロックに相当する。処理部は、第1クロック発振器から取得した第1クロック信号と、第2クロック発振器から取得した第2クロック信号とに基づき、当該第1クロック信号を基準として、第2クロック信号に対する補正値を導出する。処理部は、導出した補正値を用いて、第2クロック信号の補正に関する処理を行うため、自部(処理部)に内蔵される第2クロック発振器の精度を実質的に向上させることができる。すなわち、第2クロック発振器自体の精度が低いものであっても、第2クロック発振器から出力される第2クロック信号を補正し、当該補正された第2クロック信号を用いることにより、第2クロック発振器の実質的な精度(実用上の精度)を向上させることができる。当該第2クロック信号の補正に関する処理は、例えば、タイマカウンタ機能を用いた処理、又はクロックトリミング機能を用いた処理を含むものであってもよい。タイマカウンタ機能を用いることにより、補正値を用いて第2クロック信号を補正した値(補正クロック信号)によって、計時機能を発揮する計時部のタイマカウントに反映させることができる。又、クロックトリミング機能を用いることにより、第2クロック発振器の速度を補正するものであってよい。このような構成とすることにより、低速度及び高精度なクロック発振器(低速度高精度クロック)を車載装置に実装することを不要とし、車載装置の製品コスト、部品点数及び製品重量を低減させることができる。
【0012】
(2)本開示の一態様に係る車載装置は、前記処理部は、前記第1クロック信号を分周することにより算出した第1計測時間と、前記第2クロック信号により算出した第2計測時間との差分に基づき、前記補正値を導出する。
【0013】
本態様にあたっては、車載装置の処理部は、第1クロック発振器から出力される第1クロック信号の周波数を、第2クロック発振器から出力される第2クロック信号の周波数に対応させて分周することにより、分周された第1クロック信号と、第2クロック発振器との周波数を合わせる。例えば、第1クロック信号の周波数が32MHzであり、第2クロック信号の周波数が32KHzである場合、第1クロック信号の周波数を、1/1000に低減させて変換することにより、分周するものであってもよい。その上で、所定の計測単位時間を基準として、分周された第1クロック信号により算出した第1計測時間と、第2クロック信号により算出した第2計測時間との差分を算出し、当該差分に基づき、補正値を導出する。例えば、第1クロック発振器による第1計測時間から、第2クロック発振器による第2計測時間を減算した差分(差分値)が、正の値である場合、第2クロック発振器のクロック発信は遅れていると判定される。この場合、補正値は、正の値となる。又は、第2クロック発振器の速度を増加させるものであってもよい。又、第1クロック発振器による第1計測時間から、第2クロック発振器による第2計測時間を減算した差分(差分値)が、負の値である場合、第2クロック発振器のクロック発信は進んでいると判定される。この場合、補正値は、負の値となる。又は、第2クロック発振器の速度を減少させるものであってもよい。このような構成とすることにより、第1クロック発振器による第1計測時間と、第2クロック発振器による第2計測時間との差分に応じて、第2クロック信号の補正に関する処理を効率的に行うことができる。
【0014】
(3)本開示の一態様に係る車載装置は、前記処理部は、前記第1クロック信号及び前記第2クロック信号を複数回取得することにより、複数の差分を算出し、前記複数の差分に基づき、前記補正値を導出する。
【0015】
本態様にあたっては、車載装置の処理部は、同じタイミング(取得時点)にて、第1クロック信号及び第2クロック信号を並行して取得する処理を、例えば30回等、複数回繰り返す。車載装置の処理部は、例えば、低速である第2クロック発振器からの1周期の時間に合わせて、高速である第1クロック発振器からの複数周期の第2クロック信号を取得し、第1クロック信号を分周することにより算出した第1計測時間と、第2クロック信号により算出した第2計測時間との差分を算出する差分算出処理を行う。車載装置の処理部は、これら第1クロック信号及び第2クロック信号の取得を複数回行い、取得した都度算出した差分(差分値)を記憶部に記憶することにより、複数回の差分算出処理を行う。車載装置の処理部は、これら複数の差分(差分値)を、例えば平均化することにより集計処理を行い、当該平均値を用いて補正値を導出する。このように、第1クロック信号及び第2クロック信号を複数回取得して算出した複数の差分を用いることにより、クロック間のずれ(ジッタ)が発生している場合であっても対策可能となり、第2クロック信号に対する補正の精度を向上させることができる。
【0016】
(4)本開示の一態様に係る車載装置は、前記処理部は、前記車両が起動した際、前記第2クロック信号の補正に関する処理を行う。
【0017】
本態様にあたっては、車載装置の処理部は、例えば、IGスイッチがオンにされ、車両が起動した際、第2クロック信号の補正に関する処理を行う。従って、車両の起動により、車載装置も起動され、当該車載装置の起動処理の一環として、第1クロック発振器及び第2クロック発振器における初期ばらつき(センターずれ)の対応を行うことができる。
これにより、車載装置が起動した際、第1クロック発振器と第2クロック発振器との間に初期ばらつき(センターずれ)が発生している場合であっても対策可能となり、第2クロック信号に対する補正の精度を向上させることができる。
【0018】
(5)本開示の一態様に係る車載装置は、前記処理部は、所定の周期にて、前記第2クロック信号の補正に関する処理を行う。
【0019】
本態様にあたっては、車載装置の処理部は、車両が起動中において、例えば10分等、所定の周期にて、第2クロック信号の補正に関する処理を行う。このように、所定の周期にて、定期的又は定常的に第2クロック信号の補正に関する処理を行うことにより、車載装置の周辺温度(雰囲気温度)の時間変動に対し、定期補正することができ、第2クロック信号に対する補正の精度を向上させることができる。
【0020】
(6)本開示の一態様に係る車載装置は、前記第2クロック発振器は、前記第1クロック発振器が非活性状態であっても、活性状態を維持し、前記処理部は、前記第1クロック発振器が非活性状態の場合、前記第1クロック発振器を活性状態に遷移させた後、前記第2クロック信号の補正に関する処理を行う。
【0021】
本態様にあたっては、車載装置は、例えばスリープ信号を受信した場合、通信系等の一部の機能のみを残し、他の機能を停止することにより、非活性状態(スリープ状態)に遷移し、消費電力(暗電流)を低減する省電力制御を行っている。この場合、第1クロック発振器についても、給電が停止され、オフとなることにより非活性状態に遷移する。これに対し、第2クロック発振器は、車載装置が非活性状態(オフ)であっても、活性状態(オン)を維持するように構成されている。第2クロック発振器は、例えば、車両に搭載される電源装置から常時、給電されることにより、活性状態(オン)を維持するものであってもよい。又は、第2クロック発振器は、車両が起動中(IGオン)においては、車載装置がスリープ信号を受信した場合であっても、車両に搭載される電源装置から給電が継続されるように構成されるものであってもよい。このように第2クロック発振器は、スリープ信号等の受信にかかわらず、常時、活性状態(オン)を維持するため、バッテリ等の電源装置が接続(起動)、又は車両が起動してからの経過時間を計測するための計測手段として用いることができる。第1クロック発振器及び第2クロック発振器に対する給電制御の差異により、第1クロック発振器がオンとなる期間と、第2クロック発振器がオンとなる期間とが異なるものなり、すなわち、第1クロック発振器の積算オン期間は、第2クロック発振器の積算オン期間より短いものとなる。これに対し、車載装置の処理部は、第1クロック発振器が非活性状態(オフ)の場合、第1クロック発振器を活性状態(オン)に遷移させた後、第2クロック信号の補正に関する処理を行うため、第1クロック発振器の状態にかかわらず、第2クロック信号の補正に関する処理を行うことができる。
【0022】
(7)本開示の一態様に係る車載装置は、前記処理部は、前記第2クロック発振器の動作に影響を与える温度データを取得し、取得した前記温度データの変化状態に応じて、前記第2クロック信号の補正に関する処理を行う。
【0023】
本態様にあたっては、車載装置の処理部は、例えば、自部(処理部)に接続又は内蔵されている温度センサから、定期的に温度データを取得し、記憶部に記憶する。温度センサがセンサニングする温度は、処理部の周辺温度(雰囲気温度)又は内部温度であり、第2クロック発振器の動作に影響を与える温度に相当する。第2クロック発振器における発信特性(発振器特性)は、当該第2クロック発振器の周辺温度又は雰囲気温度の影響をうける温度特性を含むものであり、温度の増減(温度の時間変動)により発信周期(作動速度)が変動し、これにより第2クロック発振器から出力される第2クロック信号の精度への影響が懸念される。これに対し、車載装置の処理部は、第2クロック発振器の動作に影響を与える温度データの変化状態が、所定の閾値を超えた場合等に応じて、第2クロック信号の補正に関する処理を行う。これにより、温度の増減(温度の時間変動)により発信周期(作動速度)が変動した場合であっても、第2クロック信号の補正に関する処理を適格に行うことができる。
【0024】
(8)本開示の一態様に係る車載装置は、前記温度データの変化状態は、直前に行った前記第2クロック信号の補正に関する処理時点の温度データと、処理時点以降の取得時点における2つの温度データの温度差による状態を含み、前記処理部は、前記2つの温度データの温度差の絶対値が、予め定められた温度差閾値以上である場合、前記第2クロック信号の補正に関する処理を行う。
【0025】
本態様にあたっては、車載装置の処理部は、温度センサから定期的又は周期的に出力される温度データを取得し、当該温度データを取得時点と関連付けた温度変化履歴データとして、記憶部に記憶している。車載装置の処理部は、直前に行った第2クロック信号の補正に関する処理時点に対応する温度データ(当該処理時点に最も近接する取得時点の温度データ:T1)と、当該処理時点以降の取得時点における温度データ(T2)とによる2つの温度データの差異(温度差)を算出する。処理部は、当該温度差の絶対値が、予め定められた温度差閾値(ΔTs)以上である場合(|T2-T1|≧ΔTs)、第2クロック信号の補正に関する処理を行う。これにより、第2クロック発振器の動作に影響を与える温度変換に対応して、第2クロック信号の補正に関する処理を適切に行うことができる。
【0026】
(9)本開示の一態様に係る車載装置は、前記温度データの変化状態は、異なる取得時点における2つの温度データの時間変化率による状態を含み、前記処理部は、前記2つの温度データの時間変化率が、予め定められた変化率閾値以上である場合、前記第2クロック信号の補正に関する処理を行う。
【0027】
本態様にあたっては、車載装置の処理部は、温度センサから定期的又は周期的に出力される温度データを取得し、当該温度データを取得時点と関連付けた温度変化履歴データとして、記憶部に記憶している。車載装置の処理部は、例えば1分等、予め定められた比較単位時間(S)を基準に、取得時点が異なる2つの温度データ(T1、T2)の時間変化率(|T2-T1|/S)を算出する。車載装置の処理部は、時間変化率が、予め定められた変化率閾値(ΔTh)以上である場合(|T2-T1|/S≧ΔTh)、第2クロック信号の補正に関する処理を行う。これにより、第2クロック発振器の動作に影響を与える温度変換に対応して、第2クロック信号の補正に関する処理を適切に行うことができる。
【0028】
(10)本開示の一態様に係る車載装置は、前記処理部は、前記補正値による補正が行われた第2クロック信号を、前記車両の起動時からの経過時間を計測する計時部に出力する。
【0029】
本態様にあたっては、車載装置の処理部は、補正値による処理が行われた第2クロック信号(補正クロック信号)、すなわち、高速高精度クロックとして機能する第1クロック発振器の精度に準じた補正クロック信号を、車両の起動時からの経過時間を計測するグローバルタイマ等の計時部に出力する。計時部(グローバルタイマ)は、補正値による処理が行われた第2クロック信号(補正クロック信号)を用いて、タイマカウント、タイプスタンプの設定、及び経過時間計測等を行うことができ、計時部による計測精度を担保することができる。
【0030】
(11)本開示の一態様に係る情報処理方法は、第1クロック発振器と通信可能に接続され、前記第1クロック発振器よりも低速度かつ低精度の第2クロック発振器を内蔵するコンピュータに、前記第1クロック発振器から第1クロック信号を取得し、前記第2クロック発振器から第2クロック信号を取得し、取得した前記第1クロック信号及び前記第2クロック信号に基づき、補正値を導出し、導出した前記補正値を用いて、前記第2クロック信号の補正する処理を実行させる。
【0031】
本態様にあたっては、コンピュータを、クロック発振器の精度を効率的に向上させる車載装置として機能させる情報処理方法を提供することができる。
【0032】
(12)本開示の一態様に係るプログラムは、第1クロック発振器と通信可能に接続され、前記第1クロック発振器よりも低速度かつ低精度の第2クロック発振器を内蔵するコンピュータに、前記第1クロック発振器から第1クロック信号を取得し、前記第2クロック発振器から第2クロック信号を取得し、取得した前記第1クロック信号及び前記第2クロック信号に基づき、補正値を導出し、導出した前記補正値を用いて、前記第2クロック信号の補正する処理を実行させる。
【0033】
本態様にあたっては、コンピュータを、クロック発振器の精度を効率的に向上させる車載装置として機能させるプログラムを提供することができる。
【0034】
[本開示の実施形態の詳細]
本開示の実施形態に係る車載装置1を、以下に図面を参照しつつ説明する。なお、本開示はこれらの例示に限定されるものではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内での全ての変更が含まれることが意図される。
【0035】
(実施形態1)
以下、実施の形態について図面に基づいて説明する。図1は、実施形態1に係る車載装置1を含む車載システムの構成を示す模式図である。図2は、車載装置1の構成を示すブロック図である。車載システムは、車載装置1を主たる装置として構成され、例えば、CAN(Control Area Network)バス又はイーサネット(Ethernet/登録商標)ケーブル等にて構成される車載ネットワーク3を含む。当該車載ネットワーク3には、複数の車載ECU2が接続され、車載装置1は、これら車載ECU2と通信可能に接続される。車載装置1は、更に電源線を介して、鉛バッテリ、オルタネータ、又はリチウムイオンバッテリ等の二次電池にて構成される電源装置4と接続され、当該電源装置4から電力が供給される。
【0036】
車載装置1は、例えばマイコン等により構成される処理部10、及び当該処理部10に外付けされる第1クロック発振器15を含む。車載装置1は、例えばヴィークルコンピュータ等の中央制御装置にて構成される統合ECUであってもよい。又は、車載装置1は、統合ECUの配下に接続され、複数のアクチュエータ又はセンサ等に接続される個別ECUであってもよい。又は、車載装置1は、ワイパー又はドアミラー等のボディ系アクチュエータの制御を行うボディECUであってもよい。
【0037】
処理部10は、マイコン等により構成され、制御部11、記憶部12、通信部13、入出力I/F14、第2クロック発振器16、及び計時部17を含む。制御部11は、CPU(Central Processing Unit)又はMPU(Micro Processing Unit)等により構成してあり、記憶部12に予め記憶されたプログラムP(プログラム製品)及びデータを読み出して実行することにより、種々の制御処理及び演算処理等を行うようにしてある。
【0038】
記憶部12は、RAM(Random Access Memory)等の揮発性のメモリ素子又は、ROM(Read Only Memory)、EEPROM(Electrically Erasable Programmable ROM)若しくはフラッシュメモリ等の不揮発性のメモリ素子、又は、これら記憶デバイスの組み合わせにより構成してあり、プログラムP(プログラム製品)及び処理時に参照するデータが予め記憶してある。記憶部12に記憶されたプログラムP(プログラム製品)は、車載装置1が読み取り可能な記録媒体Mから読み出されたプログラムP(プログラム製品)を記憶したものであってもよい。また、図示しない通信網に接続されている図示しない外部コンピュータからプログラムP(プログラム製品)をダウンロードし、記憶部12に記憶させたものであってもよい。
【0039】
通信部13は、例えばCAN(Control Area Network)又はイーサネット(Ethernet/登録商標)の通信プロトコルを用いた通信インターフェイスであり、制御部11は、通信部13を介して車載ネットワーク3に接続されている他の車載ECU2と通信する。車両Cを起動するIGスイッチがオン又はオフされた場合、当該オン又はオフを示すメッセージが、車載ECU2から送信され、制御部11は、通信部13を介して、当該メッセージを取得するものであってもよい。
【0040】
入出力I/F14は、例えばシリアル通信するための通信インターフェイスである。入出力I/F14には、例えば、サーミスタ等にて構成される温度センサ141が、接続される。このように接続される温度センサ141は、処理部10に内蔵され、センサニングした温度データを周期的又は定常的に制御部11に出力する。温度センサ141が出力する温度データは、例えば、処理部10の周辺温度(雰囲気温度)又は内部温度であり、第2クロック発振器16の動作に影響を与える温度に相当する。
【0041】
第2クロック発振器16は、例えば、CR発振回路等により構成され、低速低精度(例えば、32KHz:誤差±10%)のクロック発振器である。第2クロック発振器16は、処理部10を構成するマイコンに内蔵される内蔵クロック発振器である。第2クロック発振器16は、車載装置1の状態がスリープ状態(非活性状態)であるか否かにかかわらず、常時オン(活性状態)となるように構成されている。
【0042】
計時部17は、例えば、車両Cの起動時からの経過時間、又は電源装置4(バッテリー等)が接続された時点からの経過時間を測定するタイマ(グローバルタイマ)である。詳細は後述するが、計時部17は、第1クロック発振器15の発振精度に準じて補正された第2クロック発振器16からの第2クロック信号を用いることにより、製品仕様上、要求される計測精度を担保することができる。
【0043】
第1クロック発振器15は、例えば、水晶発振器により構成され、高速高精度(例えば、32MHz:誤差100ppm)のクロック発振器である。第1クロック発振器15は、処理部10を構成するマイコンに外付けされる外付クロック発振器である。第1クロック発振器15は、車載装置1の状態がスリープ状態(非活性状態)となった場合、これに併せてオフ(非活性状態)となるように構成されている。
【0044】
図3は、補正処理における第1クロック発振器15及び第2クロック発振器16の動作の一例を示す説明図である。本実施形態における図示にて、車載装置1が起動した時点を起算点とし、時間経過に応じた第1クロック発振器15及び第2クロック発振器16の動作について、説明する。
【0045】
車載装置1の処理部10は、IGスイッチがオンにされ、車両Cが起動した際、起動処理を開始する。車載装置1の処理部10は、自装置の起動処理の一環として、第2クロック発振器16に対する補正処理を実行する。車載装置1の起動処理の一環として行われる補正処理は、初期補正処理に相当する。
【0046】
車載装置1の処理部10は、当該初期補正処理を実行した後、予め記憶部12に記憶されている所定期間(定期補正期間)が経過後、再度、第2クロック発振器16に対する補正処理を実行する。これら補正処理を行うにあたり、車載装置1の処理部10は、第1クロック発振器15から出力される第1クロック信号、及び第2ロック発振器から出力される第2クロック信号を取得する。
【0047】
車載装置1の処理部10は、第1クロック発振器15から取得した複数の第1クロック信号を分周することにより、第2ロック発振器から出力される第2クロック信号の周波数に合わせるものであってもよい。車載装置1の処理部10は、第1クロック信号を分周することにより算出した第1計測時間と、第2クロック信号により算出した第2計測時間との差分(時間差=第1計測時間-第2計測時間)に基づき、補正値を導出する。詳細は後述するが、処理部10は、差分を算出する処理(差分算出処理)を複数回実行し、複数の差分を集計及び平均化した平均差分値を用いて、補正値を導出するものであってもよい。
【0048】
当該差分(時間差)は、第1クロック発振器15(高速高精度クロック)に対する、第2クロック発振器16(低速低精度クロック)の誤差に相当する。上述のように、第2クロック発振器16の誤差に相当する差分(時間差)を、第1計測時間から、第2計測時間を減算することにより算出した際、差分(時間差)が正の値となる場合、第2クロック発振器16(低速低精度クロック)が遅れていることを意味する。又、差分(時間差)が負の値となる場合、第2クロック発振器16(低速低精度クロック)が進んでいることを意味する。従って、差分(時間差)が正の値となる場合、第2クロック発振器16は遅れており、第2クロック信号により算出した第2計測時間を増加させる補正値が、設定される。差分(時間差)が負の値となる場合、第2クロック発振器16は進んでおり、第2クロック信号により算出した第2計測時間を減少させる補正値が、設定される。このように第2クロック発振器16の速度(発信周期)の進み又は遅れに応じて、車載装置1の処理部10は、第2クロック発振器16に対する補正処理を行う。
【0049】
車載装置1の処理部10は、導出した補正値を用いて、第2クロック発振器16からの第2クロック信号を補正し、補正した第2クロック信号(補正クロック信号)を計時部17に出力する。又は、車載装置1の処理部10は、タイマカウント機能を活用することにより、第2クロック信号を用いて生成したカウント値に対し、補正値を適用することにより、カウント補正値を生成し、当該カウント補正値を計時部17に反映するものであってもよい。又は、車載装置1の処理部10は、クロックトリミング機能を活用することにより、第2クロック発振器16の速度(発信周期)を補正するものであってもよい。上述のように差分(時間差=第1計測時間-第2計測時間)を算出する際、処理部10は、差分(時間差)が正の値となる場合、第2クロック発振器16の速度(発信周期)を速くし、差分(時間差)が負の値となる場合、第2クロック発振器16の速度(発信周期)を遅くする。
【0050】
定期補正期間は、例えば、10分程度と設定されており、車載装置1の記憶部12等、処理部10がアクセス可能な記憶領域に記憶されている。車載装置1の処理部10は、記憶部12を参照することにより、定期補正期間を取得することができる。当該定期補正期間の値に応じて、定期補正の頻度(周期)は、増減するものとなる。当該定期補正の頻度(周期)は、補正精度と、車載装置1、特に第1クロック発振器15による暗電流とのトレードオフの関係なり、すなわち、定期補正の頻度が増加すると暗電流による電力消費量も増加する。これに対し、例えば1時間等の単位時間における車載装置1の雰囲気の温度変化の想定最大値に基づき、第2クロック発振器16によるクロック精度を要求精度以内に担保させる観点から、定期補正期間を決定するものとであってもよい。
【0051】
車載装置1の処理部10は、計時部17にて計測される時間に基づき、前回実行した補正処理の処理時点から、定期補正期間が経過した際、今回の補正処理を実行する。これにより、車載装置1の処理部10は、定期補正期間にて定まる所定の周期にて、定期補正処理を繰り返し、実行するものとなる。計時部17は、第2クロック発振器16から出力される第2クロック信号を用いてカウント処理を実行するものとなるが、第2クロック発振器16に対する補正処理が定期的に挿入されることにより、要求精度を達成(具備)することができる。
【0052】
車載装置1は、車載ネットワーク3を介して、統合ECU等、他の車載ECU2からスリープ信号を受信した場合、スリープ状態(非活性化状態)に遷移することで、消費電力を低減するように構成されている。車載装置1がスリープ状態(非活性化状態)となった場合、第1クロック発振器15は、例えば給電が停止されることにより、オフの状態(非活性化状態)となる。すなわち、第1クロック発振器15は、車載装置1が通常の起動状態(ラン状態)又は、ウェイクアップされた状態において、オンの状態(活性化状態)となる。
【0053】
これに対し、第2クロック発振器16は、車載装置1がスリープ状態(非活性化状態)となった場合であっても、給電は継続されており、オンの状態(活性化状態)を維持する。このように第2クロック発振器16は、車載装置1がスリープ状態(非活性化状態)であるか否かにかかわらず、常時オンの状態(活性化状態)を維持するように構成されている。
【0054】
車載装置1の処理部10は、車載装置1(自装置)がスリープ状態(非活性化状態)であっても、前回実行した補正処理の処理時点から、定期補正期間が経過した際、定期補正処理を実行する。この際、車載装置1の処理部10は、当該定期補正処理の前処理として、車載装置1(自装置)をウェイクアップし、スリープ状態(非活性化状態)からウェイクアップ状態(活性化状態)に遷移させる定期ウェイクアップ処理を行うものであってもよい。
【0055】
このような処理を行うことにより、高速高精度クロックであるが故に比較的に消費電力が多い第1クロック発振器15に対し、車載装置1のスリープ状態に応じてオフにすることで暗電流が増加することを抑制しつつ、第2クロック発振器16に対する定期補正処理を実行することができる。当該定期補正処理が施された第2クロック信号を、計時部17に適用することにより、計時部17による時間計測の精度を向上させ、車載装置1に対し要求される製品精度を担保することができる。
【0056】
図4は、補正処理に関する機能部の一例を示す説明図である。車載装置1の処理部10に含まれる制御部11は、記憶部12に記憶されているプログラムを実行することにより、第1分周部111、補正値導出部112、第2分周部113、及び補正クロック生成部114として機能する。本実施形態における図示にて、これら機能部による処理について説明する。
【0057】
第1分周部111は、第1クロック発振器15(高速高精度クロック)から取得した第1クロック信号を分周する。第1クロック発振器15からの第1クロック信号は、車載装置1の処理部10による各種制御処理又は通信処理等にて、定常的に用いられると共に、第1分周部111に対し定常的に入力される。
【0058】
第1分周部111は、第2クロック発振器16(低速低精度クロック)から出力される第2クロック信号の周波数に合わせて、第1クロック信号を分周するものであってもよい。例えば、第1クロック発振器15にて発振される第1クロック信号の周波数が32MHzであり、第2クロック発振器16にて発振される第2クロック信号の周波数が32KHzである場合、第1クロック信号の周波数を、1/1000に低減させて変換することにより、分周するものであってもよい。このように第1クロック信号の周波数を分周することにより、第2クロック発振器16からの第2クロック信号の1回の発振による計測時間(第2計測時間)に対し、第1クロック発振器15からの第1クロック信号の1000回の発振による計測時間(第1計測時間)を対応させる(合わせる)ことができる。
【0059】
補正値導出部112は、分周された第1クロック信号と、第2クロック信号とに基づき、補正値を導出する。補正値導出部112は、分周された第1クロック信号を取得すると共に、第2クロック信号を取得する。すなわち、補正値導出部112は、実質的に同じタイミング(取得時点)にて、分周された第1クロック信号と、第2クロック信号とを取得する。上述のとおり、第1クロック発振器15からの第1クロック信号を分周して算出した第1計測時間と、第2クロック信号により算出した第2計測時間とは、本来的には一致する値となる。しかしながら、第2クロック発振器16の精度は、第1クロック発振器15よりも低いため、第1計測時間と第2計測時間との間には差分(時間差)が発生し、当該差分は、第2クロック発振器16の誤差に相当する。補正値導出部112は、例えば、第1計測時間から、第2計測時間を減算することにより差分(時間差=第1計測時間-第2計測時間)を算出し、当該差分(時間差)に基づき、補正値を導出する。補正値導出部112は、補正値を導出するにあたり、1つの差分(時間差)に基づき補正値を導出する場合に限定されず、複数の差分(時間差)に基づき補正値を導出するものであってもよい。
【0060】
図5は、複数回による差分(誤差)の集計処理の一例を示す説明図である。本実施形態における図示にて、第1クロック発振器15及び第2クロック発振器16の発信周期に応じて、第1クロック信号及び第2クロック信号の発振(出力)におけるタイミングチャートを示す。
【0061】
第1クロック発振器15(高速高精度クロック)の発信周波数を例えば32MHzと、第2クロック発振器16(低速低精度クロック)の発信周波数を例えば32KHzとした場合、第2クロック発振器16に対する第1クロック発振器15の分周比は1000(分周=1/1000)となる。この場合、第2クロック発振器16から第2クロック信号が1回発振(出力)される期間において、第1クロック発振器15から第1クロック信号は1000回発振(出力)される。
【0062】
1000回発振(出力)された第1クロック信号が分周されることによる算出される第1計測時間が、第2クロック信号が1回発振(出力)される際の第2計測時間に相応するものであり、仮に誤差が無いとすれば、これら計測時間は本来的に一致する。上述のとおり、第1計測時間と第2計測時間との差分(時間差)が、第2クロック発振器16の精度に起因する誤差に相当する。
【0063】
補正値導出部112は、当該差分(時間差)を算出する処理(差分算出処理)を、連続的に複数回、実行する。補正値導出部112は、例えば、第2クロック発振器16からの第2クロック信号を、連続して30回等、予め定められた複数回数、取得する。当該複数回数を定義する数値は、記憶部12に記憶されているものであってもよい。
【0064】
補正値導出部112は、第2クロック発振器16から1つの第2クロック信号を取得する都度、実質的に同じタイミング(取得時点)にて、第1クロック発振器15から分周比(例えば1000)と同数(1000個)の第1クロック信号を取得する。補正値導出部112は、このように1つの第2クロック信号を取得する都度、分周比に応じた複数の第1クロック信号を取得する処理を、例えば30回等、予め定められた複数回数にて連続して行う。
【0065】
補正値導出部112は、1つの第2クロック信号、及び分周比に応じた複数の第1クロック信号を取得する都度、差分(時間差=第1計測時間-第2計測時間)を算出することにより、定められた複数回数分(30個)の差分を算出する。このように補正値導出部112は、複数回、差分算出処理を行い、これら複数の差分(時間差)を集計又は平均化処理することにより、平均差分値を算出する。補正値導出部112は、このように複数個の差分(時間差)による平均差分値を用いて、補正値を導出するものであってもよい。補正値導出部112は、補正値を導出する処理を行いにあたり、複数回の差分算出処理を行い、複数の差分(時間差)による平均差分値ため、クロック間のずれ(ジッタ)等が発生している場合であっても対策可能となり、第2クロック信号に対する補正の精度を向上させることができる。
【0066】
第2分周部113は、第2クロック発振器16から取得した第2クロック信号を、計時部17の計測単位時間(計測周期)に合わせて分周する。第2分周部113は、分周した第2クロック信号を補正クロック生成部114に出力する。
【0067】
補正クロック生成部114は、分周した第2クロック信号及び補正値を取得し、これらに基づきカウント補正値を生成し、計時部17に出力する。これにより、計時部17に対し、カウント補正値が適用されることにより、計時部17の計測制度を向上させ、製品仕様上、要求される精度(要求精度)を担保することができる。又は、補正クロック生成部114は、分周した第2クロック信号に対し補正値を用いて補正した補正クロック信号を生成し、当該補正クロック信号を計時部17に出力するものであってもよい。この場合、計時部17は、入力された補正クロック信号に応じて計測処理を行うものとなり、計時部17の計測制度を向上させ、製品仕様上、要求される精度(要求精度)を担保することができる。又は、補正クロック生成部114は、取得した補正値に基づき、第2クロック発振器16の速度(発信周期)を増加又は減少させることにより、第2クロック発振器16から出力される第2クロック信号を実質的に補正するものであってもよい。このように補正クロック生成部114は、取得した補正値を用いて、第2クロック発振器16に対するフィードバック制御を行うことにより、第2クロック信号の精度を、高速高精度クロックである第1クロック発振器15の精度に合わせ込むものであってもよい。これにより、計時部17は、速度(発信周期)が補正された第2クロック発振器16からの第2クロック信号に応じて計測処理を行うものとなり、計時部17の計測制度を向上させ、製品仕様上、要求される精度(要求精度)を担保することができる。
【0068】
本実施形態において、分周処理等は、処理部10(制御部11)がソフトウェア処理を行うことによる実現されるソフトウェア機能部によるものであるとしたが、これに限定されない。処理部10は、分周回路、比較回路、同期回路、カウンタ回路等を含むクロック補正回路を備え、当該クロック補正回路を用いて、第2クロック信号の補正に関する処理を行うものであってもよい。
【0069】
図6は、車載装置1の処理部10の処理を示すフローチャートである。車載装置1の処理部10は、例えば、車両Cが起動状態(IGスイッチがオン)又は停止状態(IGスイッチがオフ)において、定常的に以下の処理を行う。なお、以下フローチャートにおける各処理は、処理部10(マイコン)に含まれる制御部11が、記憶部12に記憶されているプログラムを実行することにより、行われるものであってもよい。
【0070】
車載装置1の処理部10は、第1クロック発振器15からの第1クロック信号を取得する(S101)。処理部10は、例えば、入出力I/F14を介して、処理部10(マイコン)に外付けされる第1クロック発振器15(高速高精度クロック)から、第1クロック信号を、定期的又は定常的に取得する。処理部10は、第2クロック発振器16に対する分周比に応じた個数の第1クロック信号を、第1クロック発振器15から取得するものであってもよい。
【0071】
車載装置1の処理部10は、取得した第1クロック信号を分周する(S102)。処理部10は、第2クロック発振器16に対する分周比に応じた個数から成る、複数の第1クロック信号を分周する。これにより、分周された複数の第1クロック信号による第1計測時間を、1つの第2クロック信号による第2計測時間に対応させることができる。処理部10は、当該第1計測時間を、記憶部12に記憶するものであってもよい。
【0072】
車載装置1の処理部10は、第2クロック発振器16からの第2クロック信号を取得する(S103)。処理部10は、自部(処理部10)に内蔵されている第2クロック発振器16から、内部バス等を介して、例えば1つ(単一)の第2クロック信号を取得する。処理部10は、1つの第2クロック信号にて計測される第2計測時間を、記憶部12に記憶するものであってもよい。処理部10は、第1クロック発振器15からの第1クロック信号の取得及び分周する処理と、第2クロック信号の取得する処理とを、実質的に同じタイミング(同じ取得時点又は取得期間)で行うように、例えば複数のサブプロセスを用いた並列処理にて行うものであってもよい。
【0073】
車載装置1の処理部10は、分周した第1クロック信号と、第2クロック信号との差分を算出する(S104)。処理部10は、第1クロック信号を分周することにより算出した第1計測時間と、第2クロック信号により算出した第2計測時間との差分(時間差=第1計測時間-第2計測時間)を算出する処理(差分算出処理)を行う。処理部10は、差分算出処理を実行する都度、算出した差分(時間差)を、算出時点又は第2クロック信号の取得時点等にて示されるタイムスタンプ(時点情報)と関連付けて、記憶部12に記憶するものであってもよい。
【0074】
車載装置1の処理部10は、所定回数、差分を算出したか否かを判定する(S105)。処理部10は、例えば記憶部12を参照することにより、所定回数を取得し、差分算出処理を所定回数、実行したか否かを判定する。なお、当該判定処理を行うにあたり、処理部10は、差分算出処理を行う都度、回数フラグ値をインクリメント処理(+1加算処理)等し、回数判定を行うものであってもよい。所定回数、差分を算出していない場合(S105:NO)、車載装置1の処理部10は、再度S101及びS103からの処理を実行すべく、ループ処理を行う。
【0075】
所定回数、差分を算出した場合(S105:YES)、車載装置1の処理部10は、算出した複数の差分を用いて、補正値を導出する(S106)。処理部10は、例えば30回等、所定回数、差分を算出(差分算出処理を所定回数実行)した場合、算出した複数の差分(誤差)を集計及び平均化した平均差分値を用いて、補正値を導出する。
【0076】
車載装置1の処理部10は、新たに取得した第2クロック信号を分周する(S107)。処理部10は、上述の差分算出処理を行った以降、新たに取得した第2クロック信号を、計時部17の計測単位時間(計測周期)に合わせて分周する。
【0077】
車載装置1の処理部10は、分周した第2クロック信号を、補正値にて補正する(S108)。処理部10は、計時部17の計測単位時間(計測周期)に合わせて分周した第2クロック信号に対し、補正値を補正することにより、カウント補正値を生成する。又は、処理部10は、分周した第2クロック信号を、補正値にて補正した補正クロック信号を生成するものであってもよい。
【0078】
車載装置1の処理部10は、補正された第2クロック信号によるカウント補正値を出力する(S109)。処理部10は、上述のように、補正値にて補正された第2クロック信号によるカウント補正値を、計時部17に出力する。計時部17に対し、第1クロック発振器15の精度に応じて補正されたカウント補正値が適用されることにより、計時部17による計測精度を向上させ、製品仕様上、要求される精度を担保することができる。その上で、処理部10(マイコン等)に内蔵される低速低精度の第2クロック発振器16を用いることにより、低速高精度のクロック発振器を不要とし、製品コスト、製品重量、及び消費電力の低減を図ることができる。処理部10は、例えば、カウント補正値を計時部17に出力することにより行った補正処理の処理時点(補正処理時点)と、当該カウント補正値とを関連付けて、記憶部12に記憶する。
【0079】
車載装置1の処理部10は、所定期間(定期補正期間)が経過したか否かを判定する(S110)。車載装置1の記憶部12には、定期補正期間が記憶されており、処理部10は、前回(直近)の第2クロック信号の補正に関する処理(補正処理)を実行した時点(補正処理時点)から、定期補正期間が経過したか否かを判定する。
【0080】
所定期間(定期補正期間)が経過していない場合(S110:NO)、車載装置1の処理部10は、再度、S110を実行すべくループ処理を行う。これにより、車載装置1の処理部10は、前回(直前)の補正処理から、所定期間(定期補正期間)が経過するまで待機処理を行うものとなる。
【0081】
所定期間(定期補正期間)が経過した場合(S110:YES)、車載装置1の処理部10は、再度、S101及びS103からの処理を実行すべくループ処理を行う。当該ループ処理を行うにあたり、S105の処理にて回数判定に用いられた回数フラグが初期化(0に設定)等されることは言うまでもない。ループ処理を行うことにより定期補正期間(所定期間)が経過する都度、定期補正処理を周期的に繰り返して実行することができる。このように定期補正処理を周期的に実行することにより、車載装置1の周辺空気の温度変化、又は第2クロック発振器16等の経年劣化等による発振特性が変動した場合であっても、第2クロック発振器16からの第2クロック信号を適切に補正し、補正された第2クロック信号に対する精度を向上及び担保することができる。
【0082】
車両Cの起動に併せて、車載装置1が上記の補正処理を実行した場合、当該補正処理は、車載装置1の起動時に行われる初期補正処理に相当する。初期補正処理の実行後、後述する所定期間(定期補正期間)が経過後、都度実行される補正処理は、定期補正処理に相当する。本実施形態において、初期補正処理と、定期補正処理とにおける所定回数、すなわち算出した差分の個数は、同数としているが、これに限定されない。初期補正処理にて用いられる差分の個数、すなわち第1クロック信号及び第2クロック信号の測定回数は、定期補正処理にて用いられる差分の個数よりも、少ないものであってもよく、例えば、1つの差分にて、補正処理を行うものであってもよい。このように初期補正処理にて用いられる差分の個数を少なくすることにより、第1クロック発振器15と第2クロック発振器16とのセンターずれを解消しつつ、比較的に早期に第2クロック信号を補正し、当該補正によるカウント補正値を早期に計時部17に適用することができる。
【0083】
(実施形態2)
図7は、実施形態2(ウェイクアップ)に係る車載装置1の処理部10の処理を示すフローチャートである。車載装置1の処理部10は、実施形態1と同様に例えば、車両Cが起動状態(IGスイッチがオン)又は停止状態(IGスイッチがオフ)において、定常的に以下の処理を行う。
【0084】
車載装置1の処理部10は、車載装置1(自装置)がスリープ状態であるか否かを判定する(S201)。車載装置1は、例えば、車載ネットワーク3を介して、他の車載ECU2からスリープ信号を受信した場合、スリープ状態(非活性化状態)に遷移するように構成されている。又、スリープ状態にある車載装置1は、例えば定期補正処理等、予め定められた処理イベント又はスケジューリングタスク等に応じて、スリープ状態(非活性化状態)からウェイクアップ(活性化状態:通常起動状態/ラン状態)に遷移するように構成されている。このように車載装置1の状態を示す状態フラグが、記憶部12に記憶されているものであってもよい。車載装置1の処理部10は、例えば、記憶部12に記憶されている状態フラグを参照することにより、自装置(車載装置1)がスリープ状態であるか否かを判定するものであってもよい。
【0085】
スリープ状態である場合(S201:YES)、車載装置1の処理部10は、車載装置1(自装置)をウェイクアップ状態にすることにより、第1クロック発振器15をオン(活性状態)にする(S202)。第1クロック発振器15をオン(活性状態)にすることにより、処理部10は、第1クロック発振器15からの第1クロック信号を取得することができる。
【0086】
S202の実行後、又はスリープ状態でない場合(S201:NO)、車載装置1の処理部10は、実施形態1の処理S101と同様にS203の処理を実行する。以降、車載装置1の処理部10は、実施形態1の処理S103、及びS102からS109と同様に、S205、及びS204からS211までの処理を行う。
【0087】
車載装置1の処理部10は、今回の補正処理を行うにあたり、車載装置1がスリープ状態での処理であったか否かを判定する(S212)。上述のとおり、S201の処理において、車載装置1の処理部10は、自装置(車載装置1)がスリープ状態であったか否かを判定しており、当該判定を行うにあたり参照した状態フラグに基づき、自装置(車載装置1)がスリープ状態であったか否かを判定する。
【0088】
車載装置1がスリープ状態での処理であった場合(S212:YES)、車載装置1の処理部10は、車載装置1(自装置)をスリープ状態にすることにより、第1クロック発振器15をオフ(非活性状態)にする(S213)。車載装置1は、本来ならスリープ状態であるところ、定期補正処理を行うために一時的にウェイクアップ状態(活性状態)に遷移しているものである。そこで、処理部10は、定期補正処理が終了した際、車載装置1(自装置)をスリープ状態にし、第1クロック発振器15をオフ(非活性状態)にすることにより、暗電流による消費電力が増加することを抑制することができる。
【0089】
車載装置1の処理部10は、車載装置1がスリープ状態での処理でなかった場合(S212:NO)、又はS213の処理の実行後、実施形態1の処理S110と同様に、S214の処理を行う。
【0090】
(実施形態3)
図8は、実施形態3(温度差)に係る車載装置1の処理部10の処理を示すフローチャートである。車載装置1の処理部10は、実施形態1と同様に例えば、車両Cが起動状態(IGスイッチがオン)又は停止状態(IGスイッチがオフ)において、定常的に以下の処理を行う。
【0091】
車載装置1の処理部10は、実施形態1の処理S101からS109と同様に、S301からS309までの処理を行う。車載装置1の処理部10は、更に、実施形態2と同様に、定期補正処理を行うにあたりスリープ状態からウェイクアップ状態に遷移する処理を行うものであってもよい。
【0092】
車載装置1の処理部10は、第2クロック発振器16の動作に影響を与える温度データを取得する(S310)。処理部10は、例えば、入出力I/F14に接続されている温度センサ141から、温度データを周期的又は定常的に取得する。温度センサ141は、例えば、処理部10に内蔵されており、第2クロック発振器16の周辺空気等の温度を計測し、出力する。又は、温度センサ141は、第2クロック発振器16に密着する等、熱的に接続されており、当該第2クロック発振器16の温度を出力するものであってもよい。すなわち、温度センサ141からの温度は、第2クロック発振器16の動作に影響を与える温度データに相当する。又、本処理にて取得した温度データ(T1)は、第2クロック信号の補正に関する処理時点の温度データに相当する。処理部10は、取得した温度データと、取得時点とを関連付けて、記憶部12に記憶するものであってもよい。
【0093】
車載装置1の処理部10は、所定期間(定期補正期間)が経過したか否かを判定する(S311)。車載装置1の処理部10は、実施形態1の処理S110と同様に、S311の処理を行う。
【0094】
所定期間(定期補正期間)が経過していない場合(S311:NO)、車載装置1の処理部10は、再度、第2クロック発振器16の動作に影響を与える温度データを取得する(S312)。本処理にて取得した温度データ(T2)は、現時点における温度データに相当する。処理部10は、再度取得した温度データと、取得時点とを関連付けて、記憶部12に記憶するものであってもよい。このように処理部10は、温度センサ141から温度データを取得都度、当該温度データと、取得時点とを関連付けて、記憶部12に記憶することにより、温度データの時間変化を履歴情報として記憶するものであってもよい。
【0095】
車載装置1の処理部10は、取得した2つの温度データの温度差の絶対値が、予め定められた温度差閾値以上であるか否かを判定する(S313)。当該温度差閾値(ΔTs)は、車載装置1の記憶部12に予め記憶されており、処理部10は、記憶部12に記憶されている温度差閾値を参照することにより、取得した2つの温度データ(T1、T2)の温度差の絶対値が、予め定められた温度差閾値以上(|T2-T1|≧ΔTs)であるか否かを判定する。取得した2つの温度データの温度差の絶対値が温度差閾値以上でない場合(S313:NO)、すなわち温度差閾値未満である場合、車載装置1の処理部10は、再度S311を実行すべく、ループ処理を行う。
【0096】
取得した2つの温度データの温度差の絶対値が温度差閾値以上である場合(S313:YES)、又は所定期間(定期補正期間)が経過した場合(S311:YES)、車載装置1の処理部10は、再度S301及びS303からの処理を実行すべく、ループ処理を行う。
【0097】
前回の補正処理を行った補正処理時点における温度(T1)に対し、現時点における温度(T2)との絶対値差異が、予め定められた温度差閾値以上となる場合、第2クロック発振器16の発信特性が変動することが想定される。これに対し、定期補正期間が経過していない時点であっても、これら温度差異が温度差閾値以上となった場合は、補正処理を行う。このように、第2クロック発振器16の動作に影響を与える温度変換に対応して、第2クロック信号の補正に関する処理を適切に行うことにより、計時部17の計測精度を担保することができる。
【0098】
本実施形態において、所定期間の経過都度、実行する定期補正処理を行う上で、更に、温度差閾値を用いた温度データの変化状態に応じて、第2クロック信号の補正に関する処理を行うとしたが、これに限定されない。車載装置1の処理部10は、所定期間の経過に応じた定期補正処理を行うことなく、温度差閾値を用いた温度データの変化状態に応じて、第2クロック信号の補正に関する処理を行うものであってもよい。
【0099】
(実施形態4)
図9は、実施形態4(時間変化率)に係る車載装置1の処理部10の処理を示すフローチャートである。車載装置1の処理部10は、実施形態1と同様に例えば、車両Cが起動状態(IGスイッチがオン)又は停止状態(IGスイッチがオフ)において、定常的に以下の処理を行う。
【0100】
車載装置1の処理部10は、実施形態3の処理S301からS312と同様に、S401からS412までの処理を行う。
【0101】
車載装置1の処理部10は、取得した2つの温度データの時間変化率が、予め定められた変化率閾値以上であるか否かを判定する(S413)。当該変化率閾値(ΔTh)は、車載装置1の記憶部12に予め記憶されており、処理部10は、記憶部12に記憶されている変化率閾値を参照することにより、取得した2つの温度データ(T1、T2)の時間変化率(|T2-T1|/S)が、予め定められた変化率閾値以上(|T2-T1|/S≧ΔTh)であるか否かを判定する。処理部10は、例えば1分等、予め定められた比較単位時間(S)を基準に、取得時点が異なる2つの温度データ(T1、T2)の時間変化率(|T2-T1|/S)を算出するものであってもよい。
【0102】
取得した2つの温度データの温度差の絶対値が変化率閾値以上でない場合(S413:NO)、すなわち変化率閾値未満である場合、車載装置1の処理部10は、再度S411を実行すべく、ループ処理を行う。S411での判定処理により、所定期間が経過するまでは、S412及びS413を繰り返し実行するループ処理が行われる。この場合、処理部10は、今回取得した温度データ(T[n])と、直前に取得した温度データ(T[n-1])とを用いて、時間変化率を算出(|T[n]-T[n-1]|/S)するものであってもよい。この際、温度データの取得周期は、比較単位時間(S)にて設定されるものであってもよい。
【0103】
取得した2つの温度データの温度差の絶対値が変化率閾値以上である場合(S413:YES)、又は所定期間(定期補正期間)が経過した場合(S411:YES)、車載装置1の処理部10は、再度S401及びS403からの処理を実行すべく、ループ処理を行う。
【0104】
例えば、比較単位時間(S)を取得周期として連続して取得した2つの温度データ(T[n-1]、T[n])による時間変化率が、予め定められた変化率閾値以上となる場合、第2クロック発振器16の発信特性が変動することが想定される。これに対し、定期補正期間が経過していない時点であっても、当該時間変化率が温変化率閾値以上となった場合は、補正処理を行う。このように、第2クロック発振器16の動作に影響を与える温度変換に対応して、第2クロック信号の補正に関する処理を適切に行うことにより、計時部17の計測精度を担保することができる。
【0105】
今回開示された実施形態は全ての点で例示であって、制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した意味ではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内での全ての変更が含まれることが意図される。
【0106】
特許請求の範囲に記載されている複数の請求項に関して、引用形式に関わらず、相互に組み合わせることが可能である。特許請求の範囲では、複数の請求項に従属する多項従属請求項を記載してもよい。多項従属請求項に従属する多項従属請求項を記載してもよい。多項従属請求項に従属する多項従属請求項が記載されていない場合であっても、これは、多項従属請求項に従属する多項従属請求項の記載を制限するものではない。
【符号の説明】
【0107】
C 車両
1 車載装置
10 処理部(マイコン)
11 制御部
111 第1分周部
112 補正値導出部
113 第2分周部
114 補正クロック生成部
12 記憶部
M 記録媒体
P プログラム(プログラム製品)
13 通信部
14 入出力I/F
141 温度センサ
15 第1クロック発振器(高速高精度クロック)
16 第2クロック発振器(低速低精度クロック)
17 計時部(グローバルタイマ)
2 車載ECU
3 車載ネットワーク
4 電源装置
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9