(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024096098
(43)【公開日】2024-07-11
(54)【発明の名称】δ-トコトリエノールの調製のためのプロセス
(51)【国際特許分類】
C07D 311/72 20060101AFI20240704BHJP
A61K 31/353 20060101ALI20240704BHJP
A61P 39/06 20060101ALI20240704BHJP
A61P 3/06 20060101ALI20240704BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20240704BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20240704BHJP
【FI】
C07D311/72 101
A61K31/353
A61P39/06
A61P3/06
A61P43/00 111
A61P35/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023222841
(22)【出願日】2023-12-28
(31)【優先権主張番号】PCT/US2022/082646
(32)【優先日】2022-12-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】524004180
【氏名又は名称】ペプチノヴォ・バイオファーマ・インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】グラツィアーノ・カスタルディ
(72)【発明者】
【氏名】ミケーレ・カスタルディ
(72)【発明者】
【氏名】ミケーレ・ザンボン
【テーマコード(参考)】
4C086
【Fターム(参考)】
4C086AA04
4C086MA01
4C086MA04
4C086MA70
4C086NA20
4C086ZB26
4C086ZC33
4C086ZC37
4C086ZC41
(57)【要約】
【課題】本発明は、ビタミンE誘導体の調製のためのプロセスに関し、特に、式(I)のδ-トコトリエノールの合成のためのプロセスに関する。
【解決手段】本発明者らは、今回、有毒な試薬又は低温を使用することなく、クロマン誘導体をファルネシル誘導体と直接反応させることからなる、δ-トコトリエノールの調製のための新しい合成アプローチを見出した。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I)のδ-トコトリエノールの調製のためのプロセスであって、
【化1】
c)式(V)の化合物
【化2】
を、式(VII)の化合物
【化3】
(式中、Pは、ベンゾイル、アセチル、トリメチルシリル、tert-ブチルジメチルシリル、tert-ブチルジフェニルシリル、p-トルエンスルホネート、メタンスルホネート、ベンゼンスルホネート、p-トルエンスルホネートエステル、ベンゼンスルホネートエステル、メタンスルホネートエステル、ベンジルエーテル、メチルエーテル、2-テトラヒドロピラニルエーテル、2-テトラヒドロフラニルエーテル、メトキシメチルエーテルから選択される保護基を表し、
Xは、臭素、ヨウ素、塩素から選択されるハロゲン原子であり、
Zは、臭素、ヨウ素、塩素から選択されるハロゲン原子を表す)
と、マグネシウム金属、マグネシウム活性化剤、及び任意の添加剤の存在下で、反応させて、
式(VIII)の化合物
【化4】
を提供するステップと、
d)得られた前記式(VIII)の化合物を脱保護して、所望の前記式(I)のδ-トコトリエノールを得るステップと、を含む、プロセス。
【請求項2】
前記式(V)の化合物のモル量に対して、1.0~10.0モル当量、好ましくは5.0~7.0モル当量に含まれる量で、マグネシウム金属が添加される、請求項1に記載のプロセス。
【請求項3】
前記マグネシウム活性化剤が、ヨウ素、ジクロロエタン、ジブロモエタン、トリメチルシリルクロリドから選択される、先行請求項のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項4】
前記マグネシウム活性化剤が、前記式(V)の化合物のモル量に対して、0.01~1.0モル当量に含まれる量で反応混合物に添加される、請求項3に記載のプロセス。
【請求項5】
前記任意の添加剤が、塩化リチウム、臭化リチウム、ヨウ化リチウム、塩化亜鉛、臭化亜鉛、ヨウ化亜鉛、塩化コバルト、二塩化コバルト、塩化ニッケル、塩化銅(I)、塩化銅(II)、臭化銅(I)、二臭化銅(II)、ヨウ化銅、トリフレート銅、塩化パラジウム、塩化鉄(III)から選択されるリチウム、亜鉛、コバルト、ニッケル、銅、パラジウム、又は鉄の塩、好ましくは塩化リチウム、並びに/又は、テトラメチルエチレンジアミン(TMEDA)、1,2-ジメチルエチレンジアミン(DMEDA)、エタノールアミン(ETA)、トリフェニルホスフィン(PPh3)、1,3-ビス(ジフェニルホスフィノ)プロパン(DPPP)、1,3-ブタジエン、イソプレンから選択される有機キレート化合物である、先行請求項のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項6】
ステップc)の温度が、20℃~100℃に含まれる、好ましくは約80℃の温度である、先行請求項のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項7】
Xがヨウ素であり、Zが臭素である、先行請求項のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項8】
前記式(V)の化合物が、
a)単一のエナンチオマー形態の式(II)の8-メチルクロマン-2-メタノールの芳香族ヒドロキシル基
【化5】
を、保護剤の存在下で、選択的に保護して、式(IV)の中間体
【化6】
(式中、Pは上記で報告された意味を有する)を得るステップと、
b)前記式(IV)の化合物を、対応する式(V)のハロゲン化物誘導体
【化7】
(式中、Xは、臭素、ヨウ素、塩素から選択されるハロゲン原子である)に変換するステップと、によって調製される、先行請求項のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項9】
前記式(V)の化合物が、
a)単一のエナンチオマー形態の式(II)の8-メチルクロマン-2-メタノールの芳香族ヒドロキシル基
【化8】
を、保護剤の存在下で、選択的に保護して、式(IV)の中間体
【化9】
(式中、Pは上記で報告された意味を有する)を得るステップと、
b1)前記式(IV)の化合物を、対応する式(VI)の化合物
【化10】
(式中、Pは、上述の意味を有し、
LGは、トシル、メシル、ノシル、トリフレート、ノナフレートから選択され、好ましくはトシルであるスルホネート離脱基を表す)に変換するステップと、
b2)このようにして得られた前記式(VI)の化合物をハロゲン化して、所望の前記式(V)の化合物を提供するステップと、によって調製される、請求項1~7のいずれか一項に記載のプロセス。
【化11】
【請求項10】
前記式(VII)の化合物
【化12】
(式中、Zは、塩素、臭素、ヨウ素から選択されるハロゲン原子を表す)
が、式(IX)の化合物
【化13】
を、ハロゲン化剤の存在下でハロゲン化することによって得られる、先行請求項のいずれか一項に記載のプロセス。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
ビタミンE、別名トコフェロールは、食物を通して生物に導入される脂溶性ビタミンである。それは、肝臓に蓄積され、その使用が必要になったときに、少量が体内から放出される。
【0002】
それは、食品、特にオリーブ、ピーナッツ、及びトウモロコシなどの油分の多い果実及び小麦の種に豊富に含まれている。それはまた、穀物、ナッツ類、及び緑色野菜にも存在し得る。
【0003】
ビタミンEは、細胞の抗酸化防御系における主要な脂溶性成分である。それは、フリーラジカル損傷から細胞を保護するだけでなく、特定の状況ではフリーラジカルの産生を減少させる能力を有する。これらの機能により、それは重要ながん予防ツールとなる。更に、ビタミンEは、抗酸化物質としての機能、抗炎症プロセスにおける役割、血小板凝集の阻害、及び免疫増強活性により、様々な疾患合併症の予防及び逆転に非常に効果的であることが判明している。
【0004】
このビタミンは、α、β、γ、及びδ-トコトリエノール、並びに4つの対応するトコフェロールの8つの主要なアイソフォームで、天然に存在する。トコトリエノールは、飽和フィチル側鎖ではなくファルネシル(3つの二重結合)部分を有することによって、トコフェロールとは異なる。α、β、γ、及びδ相同体は、芳香環のメチル化パターンによって定義される。
【0005】
トコトリエノールは、HMG-CoA還元酵素分解を増加させることによってコレステロール生合成を下方制御する、並びにHMG-CoA還元酵素mRNAの翻訳の効率を低下させる、など、ヒトの健康の様々な側面にプラスの効果を有することが示されており、それらは、フリーラジカルによって媒介される酸化ストレスから膜及び細胞成分を保護し、また心血管疾患に関連する低密度リポタンパク質の酸化を阻害する脂溶性抗酸化剤である。加えて、トコトリエノールは、重要な神経保護及び抗腫瘍特性を有し、そのアイソフォームの中でも、δ-トコトリエノールは、おそらく、腫瘍学的病態の関連において最も研究されている。実際、インビトロ及び前臨床研究では、δ-トコトリエノールがヒト黒色腫細胞の増殖を防止する上で最も活性であることが示されている。
【0006】
トコトリエノールは、特にパーム油及び穀物の種子に豊富に含まれる植物成分である。トコトリエノールが豊富な他の栽培植物には、米、小麦、大麦、ライ麦、及びオート麦が含まれる。トコトリエノールは、様々なレベルで、天然に存在する様々な他の油、種子及び果物に存在する。
【0007】
健康管理におけるトコトリエノールの重要性を考慮し、また様々な天然源及び食品中でのそれらの発生レベルの変化に起因して、これらの分子は、しばしば補充されなければならない。
【0008】
しかしながら、天然源からのδ-トコトリエノールの単離にはいくつかの問題がある。第一に、植物油又は種子などの原材料の供給が限られており、不十分である。第二に、天然源からの単離は、いくつかの調製的スケールの逆相クロマトグラフィー、又は有効な蒸留手順若しくは疑似移動床クロマトグラフィーを伴う高価な方法論を必要とするであろう。これらの制限は、δ-トコトリエノール及びその誘導体へのアクセスをもたらす様々な合成経路の開発につながった。
【0009】
δ-トコトリエノールは、式(I)の化合物であり、
【化1】
(2R)-2,8-ジメチル-2-[(3E,7E)-4,8,12-トリメチルトリデカ-3,7,11-トリエニル]-3,4-ジヒドロクロメン-6-オールとして化学的に知られている。
それは、クロマン環のキラル炭素上に絶対(2R)配置を有し、クロマン環に接続する16炭素鎖の3’、7’及び11’位置に3つの二重結合部位を有する。
【0010】
様々なδ-トコトリエノールのプロセスが文献で既知であり、ほとんど同様の合成アプローチを共有する。
【0011】
特に、δ-トコトリエノールは、式(II)の8-メチルクロマン-2-メタノール(MCM)と、
【化2】
式(III)の15炭素ファルネシル鎖
【化3】
(式中、Yは脱離基を表す)と間のカップリング反応によって得ることができる。
【0012】
この反応は、n-ブチルリチウム及びヘキサメチルホスホルアミドの存在下で行われ、脱離基Yに対してアルファ位にカルバニオンを形成し、その後、式(II)のクロマン誘導体に攻撃を与える。
【0013】
同じ合成手法に従って、R.Chenevertらは、Bioorg.Med.Chem.2006,14,5389-5396において、以下のスキーム1に報告されるように、α-アイソフォームのトコトリエノールの調製のためのプロセスを開示する:
【化4】
E.Couladourosらは、J.Org.Chem.2007,72,6735-6741において、以下のスキーム2に報告されている合成経路に従ってβ-、γ-及びδ-トコトリエノールを調製するための方法を開示する:
【化5】
【0014】
同様に、国際公開第2019/053605号は、スキーム3に報告されているプロセスを開示する:
【化6】
【0015】
更に、国際公開第2005/035490号は、δ-トコトリエノールの合成のためのプロセスを開示しており、そこでは、保護されたクロマンスルホネートが、スキーム4で以下に報告されている合成経路に従ってファルネシルハライドから調製されたグリニャール試薬と反応する。
【化7】
(式中、Pは保護基であり、Qはスルホネート誘導体である)
しかしながら、先行技術に開示されているプロセスは、非常に低い温度(-78℃)、例えば金属リチウムなどの有害な試薬、及びヘキサメチルホスホルアミドなどの有毒物質などの極めて重要な反応条件を必要とするため、工業的規模で実施することが困難であり、その大規模な使用は認可されていない。
【0016】
本発明者らは、今回、有毒な試薬又は低温を使用することなく、クロマン誘導体をファルネシル誘導体と直接反応させることからなる、δ-トコトリエノールの調製のための新しい合成アプローチを見出した。この合成プロセスは、より簡素化された化学反応により、高い収率及び純度、並びにコストの削減を伴いつつ、所望の生成物を得ることを可能にする。
【0017】
したがって、本発明の目的は、式(I)のδ-トコトリエノールの調製のためのプロセスであり、プロセスは、
【化8】
c)式(V)の化合物
【化9】
を、式(VII)の化合物
【化10】
(式中、Pは、ベンゾイル、アセチル、トリメチルシリル、tert-ブチルジメチルシリル、tert-ブチルジフェニルシリル、p-トルエンスルホネート、メタンスルホネート、ベンゼンスルホネート、p-トルエンスルホネートエステル、ベンゼンスルホネートエステル、メタンスルホネートエステル、ベンジルエーテル、メチルエーテル、2-テトラヒドロピラニルエーテル、2-テトラヒドロフラニルエーテル、メトキシメチルエーテルから選択される保護基を表し、
Xは、臭素、ヨウ素、塩素から選択されるハロゲン原子であり
Zは、臭素、ヨウ素、塩素から選択されるハロゲン原子を表す)
と、マグネシウム金属、マグネシウム活性化剤、及び任意の添加剤の存在下で、反応させて、
式(VIII)の化合物
【化11】
を提供することと、
d)得られた式(VIII)の化合物を脱保護して、所望の式(I)のδ-トコトリエノールを得ることと、を含む。
【0018】
本発明のプロセスによれば、式(V)のクロマン誘導体と式(VII)のファルネシル誘導体との間のステップc)のカップリング反応は、マグネシウム金属、マグネシウム活性化剤、及び任意の添加剤の存在下、不活性有機溶媒中で行われる。
【0019】
本発明による不活性有機溶媒の例は、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、2-メチルテトラヒドロフラン、トルエン、又はこれらの混合物である。
【0020】
好ましくは、カップリング反応は、2-メチルテトラヒドロフラン中で実施される。
【0021】
本発明のプロセスでは、マグネシウム金属を、不活性有機溶媒に溶解した、式(V)のクロマン誘導体と、式(VII)のファルネシル誘導体とを含有する反応混合物に導入する。
【0022】
好ましくは、マグネシウム金属は、式(V)の化合物のモル量に対して、1.0~10.0モル当量、より好ましくは5.0~7.0モル当量に含まれる量で添加される。
【0023】
実際、本発明の出願人は、驚くべきことに、マグネシウム金属と式(V)のクロマン誘導体との間の反応によって形成されるグリニャール試薬が、周知の実験条件(比較例を参照)では得られず、両方の単一の化合物がマグネシウム金属の存在下で反応したときにのみカップリング反応が生じたことを見出した。
【0024】
更に、先行技術、特にWO2005/035490に開示されている実験条件とは対照的に、カップリング反応は、より高い温度、特に20℃~100℃に含まれる温度、好ましくは約80℃の温度で実施される。
【0025】
任意の添加剤は、塩化リチウム、臭化リチウム、ヨウ化リチウム、塩化亜鉛、臭化亜鉛、ヨウ化亜鉛、塩化コバルト、二塩化コバルト、塩化ニッケル、塩化銅(I)、塩化銅(II)、臭化銅(I)、二臭化銅(II)、ヨウ化銅、トリフレート銅、塩化パラジウム、塩化鉄(III)から選択されるリチウム、亜鉛、コバルト、ニッケル、銅、パラジウム、又は鉄の塩、好ましくは塩化リチウム、並びに/又は、テトラメチルエチレンジアミン(TMEDA)、1,2-ジメチルエチレンジアミン(DMEDA)、エタノールアミン(ETA)、トリフェニルホスフィン(PPh3)、1,3-ビス(ジフェニルホスフィノ)プロパン(DPPP)、1,3-ブタジエン、イソプレンから選択される有機キレート化合物、好ましくはTMEDAである。
【0026】
当該の任意の添加剤は、好ましくは、式(V)の化合物のモル量に対して、0.1~3.0モル当量に含まれる量で使用される。
【0027】
マグネシウム活性化剤は、ヨウ素、ジクロロエタン、ジブロモエタン、トリメチルシリルクロリドからなる群から選択され、式(V)の化合物のモル量に対して0.01~1.0モル当量に含まれる量で反応混合物に添加される。
【0028】
カップリング反応が完了すると、抽出、濾過、結晶化、沈殿などの当業者に周知の技術に従って、式(VIII)の化合物が得られ、反応混合物から分離される。
【0029】
この化合物を次いで、芳香族部分上に存在する保護基Pに応じて、異なる条件で実施することができる脱保護に供し、所望の式(I)のδ-トコトリエノールが得られる。
【0030】
当業者に周知のように、脱保護は、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、塩酸、硫酸、酢酸、ギ酸から選択される酸又は塩基の存在下で、水、アルコール、エーテル、ケトン又はそれらの混合物からなる群から選択される溶媒中で、25℃~80℃に含まれる温度で行われる。
【0031】
本発明の一実施形態によれば、式(VII)の化合物
【化12】
(式中、Zは塩素、臭素、ヨウ素から選択されるハロゲン原子、好ましくは臭素を表す)は、市販されている式(IX)の化合物をハロゲン化することによって得られる。
【化13】
【0032】
ハロゲン化剤の存在下で。
【0033】
典型的には、本発明のプロセスで使用することができるハロゲン化剤の例は、N,N-ジメチルホルムアミド、テトラヒドロフラン、ジクロロメタンから選択される非プロトン性溶媒中の、三臭化リン、オキシ塩化リン、三塩化リン、五塩化リン、塩化チオニルである。
【0034】
代替形態では、ヨウ素及び臭素は、トリフェニルホスフィン及びイミダゾールの存在下でハロゲン化剤として使用することができる。
【0035】
更なる実施形態によれば、本発明はまた、式(V)のクロマン誘導体の合成のためのプロセスに関し、
【化14】
プロセスは、
a)単一のエナンチオマー形態の式(II)の8-メチルクロマン-2-メタノールの芳香族ヒドロキシル基
【化15】
を、保護剤の存在下で選択的に保護して、式(IV)の中間体
【化16】
(式中、Pは、上記で報告された意味を有する)を得るステップと、
b)式(IV)の化合物を、対応する式(V)のハロゲン化物誘導体
【化17】
(式中、Xは、臭素、ヨウ素、塩素から選択されるハロゲン原子、好ましくはヨウ素である)に変換するステップと、を含む。
【0036】
本発明によれば、ステップa)は、式(II)の化合物、すなわち、8-メチルクロマン-2-メタノールを、非プロトン性溶媒に溶解させることによって行われる。
【0037】
この反応に使用され得る非プロトン性溶媒の例は、N,N-ジメチルホルムアミド、テトラヒドロフラン、ジクロロメタンである。
【0038】
好ましくは、8-メチルクロマン-2-メタノールを、ジクロロメタン中に溶解させる。
【0039】
式P-Xの保護剤(式中、Pは上述の意味を有し、Xはハロゲン原子である)が、塩基の存在下で反応混合物に導入される。
【0040】
本発明による好ましい塩基は、トリエチルアミン、トリブチルアミン、N,N-ジイソプロピルエチルアミン、4-ジメチルアミノピリジン、炭酸カリウム、炭酸ナトリウムから選択され、より好ましくはトリエチルアミンである。
【0041】
上述の意味を有するP基を導入するために使用することができる保護剤の例は、塩化トシル及び臭化ベンジルである。
【0042】
好ましくは、保護剤は、式(II)の化合物のモル量に対して、1.0~2.0モル当量に含まれる量、より好ましくは約1.1モル当量の量で使用される。
【0043】
このようにして得られた式(IV)の化合物は、続いて、当業者に周知の実験条件でハロゲン化され、所望の式(V)のクロマン誘導体が得られる。
【0044】
代替形態では、式(V)の化合物は、
b1)式(IV)の化合物
【化18】
を、対応する式(VI)の化合物
【化19】
(式中、Pは、上述の意味を有し、
LGは、トシル、メシル、ノシル、トリフレート、ノナフレートから選択されるスルホネート離脱基、好ましくはトシルを表す)に変換するステップと、
b2)このようにして得られた式(VI)の化合物をハロゲン化して、所望の式(V)の化合物を提供するステップと、を含むプロセスに従い調製することができる。
【0045】
好ましくは、式(IV)の化合物を、最初に式(VI)の中間化合物に変換し、次に式(VI)の化合物を、対応するハロゲン化物に変換することによって、式(V)のクロマン誘導体を調製する。
【0046】
最も好ましい実施形態によれば、本発明は、式(I)のδ-トコトリエノールの調製のためのプロセスを対象とし、
【化20】
プロセスは、
a)単一のエナンチオマー形態の式(II)の8-メチルクロマン-2-メタノールの芳香族ヒドロキシル基
【化21】
を、保護剤の存在下で選択的に保護して、式(IV)の中間体
【化22】
(式中、Pは、ベンゾイル、アセチル、トリメチルシリル、tert-ブチルジメチルシリル、tert-ブチルジフェニルシリル、p-トルエンスルホネート、メタンスルホネート、ベンゼンスルホネート、p-トルエンスルホネートエステル、ベンゼンスルホネートエステル、メタンスルホネートエステル、ベンジルエーテル、メチルエーテル、2-テトラヒドロピラニルエーテル、2-テトラヒドロフラニルエーテル、メトキシメチルエーテルから選択される保護基を表す)を得るステップと、
b1)式(IV)の化合物を、対応する式(VI)の化合物
【化23】
(式中、P及びLGは上記で報告された意味を有する)に変換するステップと、
b2)このようにして得られた式(VI)の化合物をハロゲン化して、式(V)の化合物
【化24】
(式中、Pは上記で報告された意味を有し、Xは臭素、ヨウ素、塩素から選択されるハロゲン原子である)を提供するステップと、
c)式(V)の化合物を、式(VII)の化合物
【化25】
(Zは、臭素、ヨウ素、塩素から選択されるハロゲン原子を表す)
と、マグネシウム金属、マグネシウム活性化剤、及び任意の添加剤の存在下で、反応させて、
式(VIII)の化合物
【化26】
を提供するステップと、
d)得られた式(VIII)の化合物を脱保護して、所望の式(I)のδ-トコトリエノールを得るステップと、を含む。
【0047】
本発明のプロセス目的は、以下のスキーム5に報告されるように概略的に記すことができる。
【化27】
【0048】
ここで、本発明はいくつかの実施例によって例示されるが、これは本発明の範囲を限定するものとみなされるべきではない。
【実施例0049】
実施例1.(S)-(6-(ベンジルオキシ)-2,8-ジメチルクロマン-2-イル)メタノールの合成。
反応フラスコ中に、20.0gの8-メチルクロマン-2-メタノール(MCM、1当量)、100mLのジメチルホルムアミド(5体積)、19.9gの炭酸カリウム(1.5当量)、及び18.1gの臭化ベンジル(1.1当量)を充填する。
【0050】
反応混合物を、室温で一晩撹拌下で放置する。
反応の終了時に、150mLの水及び150mLの酢酸エチルを添加し、有機相を水(3×100mL)及びブライン(1×50mL)で洗浄する。回収した有機相をセライト及び木炭上で濾過し、次いで硫酸マグネシウムで乾燥させる。溶媒を蒸発させた後、28.42gの(S)-(6-(ベンジルオキシ)-2,8-ジメチルクロマン-2-イル)メタノールを得る(99.3%)。
1H-NMR(CDCl3,400MHz):δ7.46-7.34(m,5H)、δ6.70-6.69(d,1H)、δ6.58-6.57(d,1H)、δ5.00(s,2H)、δ3.69-3.59(m,2H)δ2.89-2.71(m,2H)、δ2.18(s,3H)、δ2.07-1.96(m,2H)、δ1.74-1.65(m,1H)、δ1.27(s,1H)。
13C-NMR(CDCl3,400MHz):δ151.87、δ145.73、δ137.59、δ128.54、δ127.82、δ127.49、δ127.19、δ121.11、δ115.97、δ112.32、δ70.58、δ69.41、δ27.81、δ22.29、δ20.84、δ16.28。
【0051】
実施例2.(S)-(6-(ベンジルオキシ)-2,8-ジメチルクロマン-2-イル)メチル4-メチルベンゼンスルホネートの合成。
反応フラスコ中に、25.0gの(S)-(6-(ベンジルオキシ)-2,8-ジメチルクロマン-2-イル)メタノール(1当量)、250mLのジクロロメタン(10体積)、18.8gの4-ジメチルアミノピリジン(DMAP、2当量)を充填する。
【0052】
反応混合物を10℃に冷却し、19.1gの塩化トシル(1.2当量)を添加する。反応物を、室温で一晩撹拌下で放置する。
【0053】
反応の終了時に、50mLの水を添加する。有機相を、塩酸(1×20mL)の6N溶液及び水(2×50mL)で洗浄して、pH値を6とする。回収した有機相を硫酸マグネシウムで乾燥させる。溶媒を蒸発させた後、37.63gの(S)-(6-(ベンジルオキシ)-2,8-ジメチルクロマン-2-イル)メチル4-メチルベンゼンスルホネートを得る(99.2%)。
1H-NMR(CDCl3,400MHz):δ7.84-7.82(d,2H)、δ7.45-7.35(m,7H)、δ6.69-6.68(d,1H)、δ6.54-6.53(d,1H)、δ5.00(s,2H)、δ4.07-3.95(dd,2H)、δ2.72-2.69(m,2H)、δ2.48(s,3H)、δ2.11(s,3H)、δ1.95-1.93(m,1H)、δ1.80-1.76(m,1H)、δ1.34(s,3H)。
13C-NMR(CDCl3,400MHz):δ152.00、δ145.25、δ144.95、δ137.53、δ132.75、δ129.94、δ128.56、δ127.95、δ127.85、δ127.48,127.31、δ120.55、δ116.10、δ112.13、δ73.97、δ73.51、δ70.52、δ28.16、δ22.38、δ21.93、δ21.68、δ16.14。
【0054】
実施例3.(S)-6-(ベンジルオキシ)-2-(ヨードメチル)-2,8-ジメチルクロマンの合成。
反応フラスコ中に、2.9gの(S)-(6-(ベンジルオキシ)-2,8-ジメチルクロマン-2-イル)メチル4-メチルベンゼンスルホネート(1当量)、29mLのジメチルホルムアミド(10体積)、及び5.3gのヨウ化カリウム(5当量)を充填する。温度を150℃にし、反応混合物をこれらの条件下で約10時間撹拌下で放置する。
【0055】
反応の終了時に、30mLの水及び30mLの酢酸エチルを添加し、相を分離し、水相を20mLの酢酸エチルで抽出する。次いで、有機相を合わせ、水(3×50mL)及びブライン(1×20mL)で洗浄する。
【0056】
回収した有機相をセライト及び木炭上で濾過し、次いで硫酸マグネシウムで乾燥させる。溶媒を蒸発させた後、2.34gの(S)-6-(ベンジルオキシ)-2-(ヨードメチル)-2,8-ジメチルクロマンを得る(89.6%)。
1H-NMR(CDCl3,400MHz):δ7.46-7.34(m,5H)、δ6.71-6.70(d,1H)、δ6.58-6.57(d,1H)、δ5.01(s,2H)、δ3.36(m,2H)、δ2.76-2.73(m,2H)、δ2.19(s,3H)、δ2.13-2.08(m,1H)、δ1.96-1.91(m,1H)、δ1.49(s,3H)。
13C-NMR(CDCl3,400MHz):δ152.08、δ145.62、δ137.63、δ128.59、δ127.87、δ127.63、δ127.53、δ120.61、δ116.16、δ112.20、δ73.71、δ70.58、δ30.28、δ25.60、δ22.61、δ16.39、δ15.24。
【0057】
実施例4.(S)-6-(ベンジルオキシ)-2-(ブロモメチル)-2,8-ジメチルクロマンの合成。
反応フラスコ中に、4.2gの(S)-(6-(ベンジルオキシ)-2,8-ジメチルクロマン-2-イル)メチル4-メチルベンゼンスルホネート(1当量)、40mLのジメチルホルムアミド(10体積)及び12.0gの臭化ナトリウム(15当量)を充填する。温度を150℃にし、反応混合物をこれらの条件下で約10時間撹拌下で放置する。
【0058】
反応の終了時に、50mLの水及び50mLの酢酸エチルを添加し、相を分離し、水相を20mLの酢酸エチルで抽出する。次いで、有機相を合わせ、水(3×50mL)及びブライン(1×20mL)で洗浄する。
【0059】
回収した有機相をセライト及び木炭上で濾過し、次いで硫酸マグネシウムで乾燥させる。溶媒を蒸発させた後、3.40gの(S)-6-(ベンジルオキシ)-2-(ヨードメチル)-2,8-ジメチルクロマンを得る(98.0%)。
【0060】
実施例5(S)-2,8-ジメチル-2-((トシルオキシ)メチル)クロマン-6-イル4-メチルベンゼンスルホネートの合成。
反応フラスコ中で、0.5gの8-メチルクロマン-2-メタノール(MCM、1当量)、5.0mLのジクロロメタン(10体積)、0.73gのトリエチルアミン(3当量)、及び0.05の4-ジメチルアミノピリジン(DMAP、0.2当量)を充填する。1.09gの塩化トシル(2.4当量)を添加し、反応混合物を室温で一晩撹拌下で放置する。
反応の終了時に、5mLのジクロロメタン及び10mLの塩酸1N溶液を添加する。相を分離し、有機相を水(2×10mL)で洗浄して、pH値6とする。回収した有機相を硫酸マグネシウムで乾燥させる。溶媒の蒸発後、1.20gの(S)-2,8-ジメチル-2-((トシルオキシ)メチル)クロマン-6-イル4-メチルベンゼンスルホネートを得る(97%)。
1H-NMR(CDCl3,400MHz):δ7.78-7.76(d,2H)、δ7.73-7.70(d,2H)、δ7.35-7.31(m,4H)、6.55-6.52(d,2H)、δ4.00-3.90(dd,2H)、δ2.63-2.59(m,2H)、δ2.45(s,6H)、δ1.98(s,3H)、δ1.89-1.87(m,1H)、δ1.73-1.70(m,1H)、δ1.27(s,3H)。
13C-NMR(CDCl3,400MHz):δ149.63、δ145.19、δ145.10、δ141.98、δ132.66、δ132.58、δ129.69、δ129,68、δ128.47、δ127.87、δ127.63、δ122.27、δ120.71、δ120.11、δ74.60、δ73.35、δ27.59、δ22.21、δ21.70、δ21.65、δ21.55、δ15.91。
【0061】
実施例6.(S)-2-(ヨードメチル)-2,8-ジメチルクロマン-6-イル4-メチルベンゼンスルホネートの合成
反応フラスコ中に、24.8gの(S)-2,8-ジメチル-2-((トシルオキシ)メチル)クロマン-6-イル4-メチルベンゼンスルホネート(1当量)、250mLのジメチルホルムアミド(10体積)、39.8gのヨウ化カリウム(5当量)を充填する。温度を150℃にし、反応混合物をこれらの条件下で約10時間撹拌下で放置する。
【0062】
反応の終了時に、250mLの水及び250mLの酢酸エチルを添加し、相を分離し、水相を200mLの酢酸エチルで抽出する。次いで、有機相を合わせ、水(3×250mL)及びブラインで洗浄する。
【0063】
回収した有機相をセライト及び木炭上で濾過し、次いで硫酸マグネシウムで乾燥させる。溶媒を蒸発させた後、20.9gの(S)-2-(ヨードメチル)-2,8-ジメチルクロマン-6-イル4-メチルベンゼンスルホネートを得る(92%)。
1H-NMR(CDCl3,400MHz):δ7.74-7.72(d,2H)、δ7.34-7.32(d,2H)、δ6.59-6.56(d,2H)、δ3.32(m,2H)、δ2.66(m,2H)、δ2.46(s,3H)、δ2.10(s,3H)、δ2.06(m,1H)、δ1.89(m,1H)、δ1.45(s,3H)。
13C-NMR(CDCl3,400MHz):δ149.94、δ145.11、δ141.98、δ132.77、δ129.65、δ128.50、δ127.85、δ122.24、δ120.76、δ120.16、δ75.22、δ29.79、δ25.32、δ21.92、δ21.72、δ16.09、δ14.76
【0064】
実施例7.(2E,6E)-1-ブロモ-3,7,11-トリメチルドデカ-2,6,10-トリエンの合成。
反応フラスコに、5.0gのトランス,トランス-ファルネソール(1当量)、25mLのテトラヒドロフラン(5体積)を充填する。反応混合物を0℃に冷却し、2.8gの三臭化リン(0.46当量)を約40分間滴下して添加する。反応混合物を、これらの条件下で約3時間撹拌下で放置する。
【0065】
反応が終わったら、12.5mLの水を滴下して添加し、温度を0℃に維持する。反応物を室温とした後、12.5mLのメチル-テトラヒドロフランを添加し、相を分離させる。水相を、10mLのメチル-テトラヒドロフランで抽出し、混合有機相を、炭酸水素ナトリウムの飽和溶液(3×250mL)及びブライン(1×5mL)で洗浄する。
【0066】
回収した有機相を硫酸マグネシウムで乾燥させ、溶媒を蒸発させ、6.4gの(2E,6E)-1-ブロモ-3,7,11-トリメチルドデカ-2,6,10-トリエン(99.8%)を得る。
1H-NMR(CDCl3,400MHz):δ5.55(t,1H)、δ5.12-5.09(m,2H)、δ4.05-4.03(d,2H)、δ2.13-1.99(m,8H)、δ1.75(s,3H)、δ1.70(s,3H)、δ1.62(s,6H)。
13C-NMR(CDCl3,400MHz):δ143.55、δ135.59、δ131.28、δ124.34、δ123.40、δ120.61、δ39.69、δ39.53、δ29.60、δ26.71、δ26.11、δ25.71、δ17.71、δ16.05、δ15.97
【0067】
実施例8.(R)-2,8-ジメチル-2-((3E,7E)-4,8,12-トリメチルトリデカ-3,7,11-トリエン-1-イル)クロマン-6-イル4-メチルベンゼンスルホネートの合成
反応フラスコに、32.0gの旋削マグネシウム(6当量)、200mLのメチル-テトラヒドロフラン(2体積)を、窒素雰囲気下で充填する。反応混合物を70℃までゆっくりと加温し、105.0gの(S)-6-(ベンジルオキシ)-2-(ヨードメチル)-2,8-ジメチルクロマン(1当量)及び(2E,6E)-1-ブロモ-3,7,11-トリメチルドデカ-2,6,10-トリエン(76.0g 1.2当量)のメチル-テトラヒドロフラン(3体積)中の溶液300mlを、約1.30時間滴下して添加する。反応混合物を、これらの条件下で約1時間還流しながら撹拌下で放置する。
【0068】
反応が終了したら、反応を室温にし、固体マグネシウム旋削物を除去する。溶媒を蒸発させ、粗製(R)-2,8-ジメチル-2-((3E,7E)-4,8,12-トリメチルトリデカ-3,7,11-トリエン-1-イル)クロマン-6-イル4-メチルベンゼンスルホネートをヘキサン(2×250mL)で抽出する。有機相を合わせ、溶媒の蒸発後、得られた粗生成物を次のステップのためにそのまま用いる。
1H-NMR(CDCl3,400MHz):δ7.75-7.73(d,2H)、δ7.33-7.31(d,2H)、δ6.56(s,2H)、δ5.13(m,3H)、δ2.67(m,2H)、δ2.46(s,3H)、δ2.09(m,9H)、δ2.01(m,4H)、δ1.76(m,2H)δ1.70(m,3H)、δ1.62(m,9H)、δ1.28(m,5H)。
13C-NMR(CDCl3,400MHz):δ150.67、δ144.96、δ141.43、δ135.30、δ134.97、δ132.89、δ131.20、δ129.57、δ128.53、δ127.43、δ124.37、δ124.16、δ124.06、δ121.89、δ121.09、δ120.18、δ76.07、δ39.81、δ39.73、δ39.69、δ30.88、δ26.77、δ26.58、δ25.71、δ23.99、δ22.31、δ22.12、δ21.67、δ17.69、δ16.04、δ16.02、δ15.88。
【0069】
実施例9.(R)-2,8-ジメチル-2-((3E,7E)-4,8,12-トリメチルトリデカ-3,7,11-トリエン-1-イル)クロマン-6-イル4-メチルベンゼンスルホネートのカップリング反応(比較例)
カップリング反応を、先行技術のWO2005/035490(実施例1-ステップ2)に開示されている実験条件に従って行う。所望の生成物の形成に関する証拠はない。
【0070】
実施例10.δ-トコトリエノールの合成
反応フラスコ中に、15.5gの粗製(R)-2,8-ジメチル-2-((3E,7E)-4,8,12-トリメチルトリデカ-3,7,11-トリエン-1-イル)クロマン-6-イル4-メチルベンゼンスルホネート(1当量)、140mLのテトラヒドロフラン(9体積)、15mLの水(1体積)、19,5gの炭酸カリウム(5当量)を窒素雰囲気下で充填する。反応混合物を、これらの条件下で一晩還流しながら撹拌下で放置する。
【0071】
反応が終了したら、反応を室温にし、溶媒を蒸発によって除去する。粗生成物をメチルテトラヒドロフラン(10体積)及び水(10体積)に溶解させ、相を分離させ、有機物をブラインで洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥させる。溶媒を蒸発させ、10.8gのδ-トコトリエノールを得る(97%)。
1H-NMR(CDCl3,400MHz):δ6.52-6.51(d,1H)、δ6.43-6.42(d,1H)、δ5.19-5.15(m,3H)、δ5.05(s,1H)、δ2.74-2.71(t,2H)、δ2.17-2.10(m,9H)、δ2.02(m,4H)、δ1.85-1.82(m,2H)、δ1.80(m,4H)δ1.78-1.73(m,10H)、δ1.31(m,3H)。
13C-NMR(CDCl3,400MHz):δ148.17、δ147.75、δ145.97、δ135.15、δ134.99、δ131.28、δ127.35、δ124.46、δ124.34、δ124.24、δ121.28、δ115.78、δ112.73、δ75.37、δ39.75、δ39.73、δ31.42、δ26.79、δ26.63、δ25.73、δ24.04、δ22.51、δ22.21、δ17.72、δ16.09、δ16.04、δ15.91。