(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024009610
(43)【公開日】2024-01-23
(54)【発明の名称】地球局、中継衛星、衛星システム及び通信方法
(51)【国際特許分類】
B64G 3/00 20060101AFI20240116BHJP
【FI】
B64G3/00
【審査請求】有
【請求項の数】22
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022111267
(22)【出願日】2022-07-11
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2023-05-10
(71)【出願人】
【識別番号】518236960
【氏名又は名称】株式会社ワープスペース
(74)【代理人】
【識別番号】110002952
【氏名又は名称】弁理士法人鷲田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】園田 健彦
(72)【発明者】
【氏名】関 正徳
(57)【要約】
【課題】限定的な計算能力を備えた衛星のための衛星間光通信を実現するための技術を提供することである。
【解決手段】本開示の一態様は、地球局から衛星の予測軌道暦を示す予測軌道データ系列を取得するデータ取得部と、取得した前記予測軌道データ系列を中継衛星に送信する通信部と、を有する地球局に関する。
【選択図】
図9
【特許請求の範囲】
【請求項1】
地球局から衛星の予測軌道暦を示す予測軌道データ系列を取得するデータ取得部と、
取得した前記予測軌道データ系列を中継衛星に送信する通信部と、
を有する地球局。
【請求項2】
前記予測軌道データ系列は、摂動要因を考慮して計算される、請求項1に記載の地球局。
【請求項3】
前記データ取得部は、第1のデータ量の前記予測軌道データ系列である第1のデータ系列と、前記第1のデータ量より少ない第2のデータ量の前記予測軌道データ系列である第2のデータ系列とを取得し、
前記通信部は、所定の選択基準に従って選択された前記第1のデータ系列又は前記第2のデータ系列を衛星の軌道情報として中継衛星に送信する、請求項2に記載の地球局。
【請求項4】
前記データ取得部は、第1の時間分解能を有する前記予測軌道データ系列である第1のデータ系列と、前記第1の時間分解能より低い第2の時間分解能を有する前記予測軌道データ系列である第2のデータ系列とを取得し、
前記通信部は、所定の選択基準に従って前記第1のデータ系列と前記第2のデータ系列とから選択されたデータ系列を衛星の軌道情報として中継衛星に送信する、請求項2に記載の地球局。
【請求項5】
前記所定の選択基準は、前記衛星と前記中継衛星との間の距離に関連し、
前記通信部は、前記距離が所定の距離閾値未満である場合には前記第1のデータ系列を前記軌道情報として前記中継衛星に送信し、前記距離が前記所定の距離閾値以上である場合には前記第2のデータ系列を前記軌道情報として前記中継衛星に送信する、請求項3又は4に記載の地球局。
【請求項6】
前記所定の選択基準は、前記地球局と前記中継衛星との間の通信状態に関連し、
前記通信部は、前記通信状態が所定の品質閾値未満である場合には前記第2のデータ系列を前記軌道情報として前記中継衛星に送信し、前記通信状態が前記所定の品質閾値以上である場合には前記第1のデータ系列を前記軌道情報として前記中継衛星に送信する、請求項3又は4に記載の地球局。
【請求項7】
前記所定の選択基準は、前記中継衛星の能力に関連し、
前記通信部は、前記能力が所定の能力レベル閾値未満である場合には前記第2のデータ系列を前記軌道情報として前記中継衛星に送信し、前記能力が前記所定の能力レベル閾値以上である場合には前記第1のデータ系列を前記軌道情報として前記中継衛星に送信する、請求項3又は4に記載の地球局。
【請求項8】
前記所定の選択基準は、前記中継衛星の計算余力に関連し、
前記通信部は、前記計算余力が所定の閾値未満である場合には前記第2のデータ系列を前記軌道情報として前記中継衛星に送信し、前記計算余力が前記所定の閾値以上である場合には前記第1のデータ系列を前記軌道情報として前記中継衛星に送信する、請求項3又は4に記載の地球局。
【請求項9】
地球局から衛星の予測軌道暦を示す予測軌道データ系列を取得することと、
取得した前記予測軌道データ系列を中継衛星に送信することと、
を有する地球局が実行する通信方法。
【請求項10】
前記予測軌道データ系列は、摂動要因を考慮して計算される、請求項9に記載の通信方法。
【請求項11】
地球局から衛星の予測軌道暦を示す予測軌道データ系列を取得する制御部と、
取得した前記予測軌道データ系列に基づいて衛星と衛星間光通信を実行する光通信部と、
を有する中継衛星。
【請求項12】
前記予測軌道データ系列は、摂動要因を考慮して計算される、請求項11に記載の中継衛星。
【請求項13】
前記制御部は、所定の選択基準に従って第1のデータ系列と第2のデータ系列とから選択されたデータ系列を前記地球局から取得し、
前記第1のデータ系列は第1のデータ量を有する前記予測軌道データ系列であり、前記第2のデータ系列は前記第1のデータ量より少ない第2のデータ量を有する前記予測軌道データ系列である、請求項12の中継衛星。
【請求項14】
前記制御部は、所定の選択基準に従って第1のデータ系列と第2のデータ系列とから選択されたデータ系列を前記地球局から取得し、
前記第1のデータ系列は第1の時間分解能を有する前記予測軌道データ系列であり、前記第2のデータ系列は前記第1の時間分解能より低い第2の時間分解能を有する前記予測軌道データ系列である、請求項12の中継衛星。
【請求項15】
前記所定の選択基準は、前記衛星と前記中継衛星との間の距離に関連し、
前記制御部は、前記距離が所定の距離閾値未満である場合には前記第1のデータ系列を取得し、前記距離が前記所定の距離閾値以上である場合には前記第2のデータ系列を取得する、請求項13又は14に記載の中継衛星。
【請求項16】
前記所定の選択基準は、前記地球局と前記中継衛星との間の通信状態に関連し、
前記制御部は、前記通信状態が所定の品質閾値未満である場合には前記第2のデータ系列を取得し、前記通信状態が前記所定の品質閾値以上である場合には前記第1のデータ系列を取得する、請求項13又は14に記載の中継衛星。
【請求項17】
前記所定の選択基準は、前記中継衛星の能力に関連し、
前記制御部は、前記能力が所定の能力レベル閾値未満である場合には前記第2のデータ系列を取得し、前記能力が前記所定の能力レベル閾値以上である場合には前記第1のデータ系列を取得する、請求項13又は14に記載の中継衛星。
【請求項18】
前記所定の選択基準は、前記中継衛星の計算余力に関連し、
前記制御部は、前記計算余力が所定の閾値未満である場合には前記第2のデータ系列を取得し、前記計算余力が前記所定の閾値以上である場合には前記第1のデータ系列を取得する、請求項13又は14に記載の中継衛星。
【請求項19】
地球局から衛星の予測軌道暦を示す予測軌道データ系列を取得することと、
取得した前記予測軌道データ系列に基づいて衛星と衛星間光通信を実行することと、
を有する中継衛星が実行する通信方法。
【請求項20】
地球局と、
衛星と、
前記地球局と前記衛星とを中継する中継衛星と、
を有し、
前記地球局は、
衛星の予測軌道暦を示す予測軌道データ系列を取得し、
取得した前記予測軌道データ系列を中継衛星に送信する、
衛星システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、地球局、中継衛星、衛星システム及び通信方法に関する。
【背景技術】
【0002】
地球局とユーザ衛星(例えば、観測衛星、通信衛星など)とは、中継衛星を介し通信することが可能である。このような中継衛星を介した地球局とユーザ衛星との間の通信では、ユーザ衛星と中継衛星とは、衛星間通信によりデータをやりとりしている。
【0003】
例えば、特開2013-70226号公報は、地上局と低軌道上の通信中継衛星との間で短波通信を行なうことにより、全軌道上での衛星通信が可能となる衛星システムについて開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
衛星間通信において、ユーザ衛星と中継衛星とが光通信によって衛星間通信を行う衛星間光通信が利用されることが検討されている。衛星間光通信を開始するためには、通信元衛星は、通信先衛星の位置情報を高精度に予測する必要がある。例えば、通信元衛星は、通信先衛星の軌道長半径、離心率、軌道傾斜角、昇交点経度、近地点引数及び平均近点角から構成されるケプラーの軌道6要素などに基づいて、通信先衛星の軌道を計算しうる。典型的には、通信元衛星は、予め保持する、又は地球局から取得した通信先衛星の軌道6要素に基づいて通信先衛星の軌道データを計算し、計算した軌道データに基づいて通信先衛星との相対位置及び通信元衛星の姿勢を決定し、光信号の指向方向を制御する。
【0006】
しかしながら、衛星は、典型的には、限定的な計算能力しか備えていない。従って、多数の通信先衛星との通信が要求される中継衛星では、通信先衛星の軌道データを計算することは過大な計算負荷となる。
【0007】
上記問題点に鑑み、本開示の1つの課題は、限定的な計算能力を備えた衛星のための衛星間光通信を実現するための技術を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示の一態様は、地球局から衛星の予測軌道暦を示す予測軌道データ系列を取得するデータ取得部と、取得した前記予測軌道データ系列を中継衛星に送信する通信部と、を有する地球局に関する。
【発明の効果】
【0009】
本開示によれば、限定的な計算能力を備えた衛星が高精度の軌道予測が求められる衛星間光通信を実現するための技術を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本開示の一実施例による衛星システムを示す概略図である。
【
図2】本開示の一実施例による地球局と衛星との通信可能範囲を示す概略図である。
【
図3】本開示の一実施例による中継衛星を介した地球局とユーザ衛星との通信を示す概略図である。
【
図4】本開示の一実施例による通信確立手順を示す概略図である。
【
図5】本開示の一実施例による地球局のハードウェア構成を示すブロック図である。
【
図6】本開示の一実施例によるユーザ衛星及び中継衛星のハードウェア構成を示すブロック図である。
【
図7】本開示の一実施例による地球局の機能構成を示すブロック図である。
【
図8】本開示の一実施例による予測軌道位置系列を示す図である。
【
図9】本開示の一実施例による予測軌道位置系列を示す図である。
【
図10】本開示の一実施例による予測軌道位置系列を示す図である。
【
図11】本開示の一実施例による予測軌道位置系列を示す図である。
【
図12】本開示の一実施例による中継衛星の機能構成を示すブロック図である。
【
図13】本開示の一実施例による通信処理を示すシーケンス図である。
【
図14A】本開示の一実施例による地球局と中継衛星との間の通信処理を示すブロック図である。
【
図14B】本開示の一実施例による地球局と中継衛星との間の通信処理を示すブロック図である。
【
図14C】本開示の一実施例による地球局と中継衛星との間の通信処理を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照して本開示の実施の形態を説明する。
【0012】
後述される実施例では、地球局、中継衛星及びユーザ衛星から構成される衛星システムが開示される。以下の実施例は、衛星システムにおける中継衛星とユーザ衛星との間の衛星間光通信に関して説明されるが、本開示は、必ずしもこれに限定されず、任意の2つの衛星間の衛星間光通信に適用可能である。
【0013】
[本開示の概略]
以下の実施例では、中継衛星の計算負荷を低減するため、地球局が、衛星の予測軌道暦を示すデータ系列(例えば、予測軌道暦データ)を計算し、計算したデータ系列を中継衛星に送信する。ここで、当該予測軌道暦データ系列は、ケプラーの軌道6要素に基づくだけでなく、地球重力の非球状成分、太陽や月の引力、大気抵抗、太陽輻射圧、潮汐による地球重力歪みなどの摂動要因を考慮して計算されうる。このため、ケプラーの軌道6要素に基づいて中継衛星内において計算される衛星軌道より、高精度な軌道予測を実現することができる。さらに、地球局は、中継衛星を介したユーザ衛星との衛星通信を実現するのに必要な予測軌道暦データ系列を、適切な粒度又は分解能によって中継衛星に提供してもよい。
【0014】
従来、中継衛星は、通信対象の各ユーザ衛星の軌道6要素(例えば、ケプラーの軌道6要素では、軌道長半径、離心率、軌道傾斜角、昇交点経度、近地点引数及び平均近点角)を保持又は取得し、中継衛星において各ユーザ衛星との衛星間光通信を実現するため当該軌道6要素から各ユーザ衛星の軌道データを計算している。従って、中継衛星は、ユーザ衛星の個数に応じて軌道データを計算する必要があり、中継衛星が多数のユーザ衛星をカバーする場合、当該中継衛星は、高い計算能力を備える必要がある。典型的には、十分な精度の計算結果を得るためには、地上の一般的なパーソナルコンピュータを利用した場合でも、1つのユーザ衛星の1日分の軌道データを計算するのに数十分を要しうる。一方、軌道データの計算は、典型的には、中継衛星に備えられた放射線耐性を有するオンボードコンピュータを利用して行われる。このため、十分な精度の計算結果を得るために必要な計算能力の向上は容易でなく、中継衛星の製造コスト及び運用上のリスクが増大しうる。
【0015】
また、ケプラーの軌道6要素に基づく軌道計算は、より先(未来)の時間における衛星の軌道になるほど計算誤差が累積し、軌道予測の精度が落ちる。一方、その計算誤差を小さくするために必要なデータや計算量を増やすと、中継衛星において当該データを処理することが難しくなる。また、ケプラーの軌道6要素に基づく軌道計算では、摂動(惑星・小惑星などの運動がケプラーの法則からずれること)を考慮して、より高精度に軌道を計算することは困難である。地球を周回する衛星の主要な摂動要因として、地球重力の非球状成分、太陽や月の引力、大気抵抗、太陽輻射圧、潮汐による地球重力歪みなどが知られている。
【0016】
衛星間で指向性が高い光通信を行うためには、送信側及び受信側の衛星において高精度の軌道予測が求められる。すなわち、光通信機を搭載した2つの衛星(中継衛星とユーザ衛星)がレーザ光による光通信を行うには、自身と相手の衛星の位置と速度とを計算し、互いに光望遠鏡を相手の衛星に向ける必要がある。衛星自身の現時点の位置はGPS(Global Positioning System)から得ることができる一方で、衛星自身及び通信相手となる衛星の将来のある時刻における位置は、衛星軌道の予測値に基づいて計算することができる。また、中継衛星が通信相手となるユーザ衛星の軌道(将来位置)を予測(計算)することに加えて、通信相手となるユーザ衛星側においても、光通信機を中継衛星の位置方向に向ける必要があるため、中継衛星の軌道(将来位置)を従来よりも高い精度で予測(計算)することが求められる。
【0017】
ある時刻にある位置・速度で運動をしている人工衛星が、その後の時刻においてどの位置・速度にいるのかを計算することは、「軌道伝播(Orbit Propagation)」と呼ばれる。地球などの1つの天体の重力の影響を受けて運動する人工衛星の軌道の場合は、解析的に(簡単な数式で)軌道計算ができるが、より複雑な軌道伝播にはより複雑な数値計算が必要となる。主な軌道伝播モデル(Orbit Propagators)として、解析型プロパゲータ、準解析型プロパゲータ、数値積分プロパゲータがある。軌道伝播計算モデルは、解析的手法と数値積分手法とに分けられる。解析的手法では、近似計算を行うため、計算量が少なくて済むが、衛星の実際の軌道との誤差は大きくなる。他方、数値積分手法では、精度は増すが、パラメータと計算量とが増大する。
【0018】
地球を周回する衛星(特に、高度が低い人工衛星)の軌道を表すケプラー軌道要素の値を示すデータフォーマットとして、2行軌道要素形式(Two-Line Elements:TLE)が利用されている。以下の実施例による地球局は、ユーザ衛星の軌道予測暦を計算する際に、ケプラーの軌道6要素を用いる以外に、摂動等に対する各種補正によって精度が向上された予測軌道暦データ系列を作成する。衛星の予測軌道暦データ系列は、(1)TLEから計算する手法の他に、(2)衛星からダウンリンク送信された衛星のGPS測位情報から計算する手法とがある。予測軌道暦データは、エポック(基準時間)、位置(X,Y,Z)、速度(X_DOT,Y_DOT,Z_DOT)及び、(任意選択的な)加速度(X_DDOT,Y_DDOT,Z_DDOT)の各軌道要素の時系列データから構成されうる。
【0019】
本開示の実施例では、ユーザ衛星の予測軌道暦データ系列は、中継衛星でなく、地上においてケプラーの軌道6要素に加えて摂動による影響を補正して計算される。地球局は、より高精度に計算された予測軌道暦データ系列を中継衛星に送信する。アップリンク送信される予測軌道暦データ系列には、CCSDS(Consultative Committee for Space Data System) 502.0-B-2 ORBIT DATA MESSAGE(軌道データメッセージ(ODM)のOrbit Ephemeris Message(OEM)が利用されてもよい。中継衛星は、GPSによって取得した地球局から取得した予測軌道暦データ系列に基づいて、ユーザ衛星との衛星間光通信を実行する。さらに、異なる時間分解能の位置データ系列が地上において計算され、地球局は、所定の選択基準に従って適切に選択された時間分解能の予測軌道暦データ系列を中継衛星に送信してもよい。
【0020】
例えば、所定の選択基準は、ユーザ衛星と中継衛星との間の距離、地球局と中継衛星との間の通信状態、中継衛星の能力、中継衛星の計算余力などに関するものであってもよい。例えば、地球局と中継衛星との間の通信状態が良好である場合、地球局から中継衛星に相対的に大きなデータ量のデータを送信することが可能であると予想される。従って、地球局は、時間分解能が相対的に高い位置データ系列を中継衛星に送信してもよい。他方、地球局と中継衛星との間の通信状態が良好でない場合、地球局から中継衛星に相対的に小さなデータ量のデータしか送信できないと予想される。従って、地球局は、時間分解能が相対的に低い位置データ系列を中継衛星に送信してもよい。
【0021】
中継衛星は、このようにして選択されたユーザ衛星の予測軌道暦データ系列を利用して、当該ユーザ衛星との衛星間光通信を良好に実現することができる。なお、以下の実施例では、ユーザ衛星の予測軌道暦データ系列に着目するが、本開示による地球局から中継衛星に送信されるデータは、これに限定されるものでなく、衛星間光通信を実現するための他の何れかのタイプのデータであってもよい。
【0022】
[衛星システム]
図1に示されるように、衛星システム10は、地球局50、ユーザ衛星100及び中継衛星200を有する。ユーザ衛星100と中継衛星200とは、例えば、異なる軌道上で地球を周回している。例えば、ユーザ衛星100が観測衛星である場合、複数のユーザ衛星100を利用して地球上の観測対象エリアを観測できるように、これらのユーザ衛星100が所定の配置(衛星コンステレーション)で地球を周回しても良い。
【0023】
ユーザ衛星100は、限定することなく、観測衛星、通信衛星など、所定の高度の軌道上で地球を周回する所定の機能を備えた人工衛星である。
【0024】
中継衛星200は、限定することなく、ユーザ衛星100より高い高度の軌道上で地球を周回し、地球上の地球局50とユーザ衛星100との間のデータ送受信のための中継局として機能する。典型的には、中継衛星200は、複数のユーザ衛星100をカバーし、所望のユーザ衛星100と通信する。
【0025】
地球局50は、中継衛星200と通信する通信局である。地球局50は、中継衛星200を介してユーザ衛星100と通信することができる。また、地上局50は、中継衛星200を介さずにユーザ衛星100と通信可能である場合は、ユーザ衛星100と直接通信してもよい。図示された例では、地球局50は、地上に設置されているが、本開示による地球局50は、これに限定されず、例えば、成層圏等に構築された非地上系ネットワーク(Non-Terrestrial Network:NTN)の通信局であってもよい。地球局50は、例えば、中継衛星運用事業者30及びユーザ衛星運用事業者40とインターネットなどのネットワーク20を介し通信接続されうる。中継衛星200を介しユーザ衛星100から取得した情報は、ネットワーク20を介し中継衛星運用事業者30及び/又はユーザ衛星運用事業者40にわたされる。
【0026】
図2に示されるように、地球局50による衛星との通信範囲は、地球局50の可視範囲によって規定される。図示された例において、地球局50は、通信可能領域に存在するユーザ衛星100_2とは通信可能である一方、通信不可領域に存在するユーザ衛星100_1とは通信不可である。
【0027】
この場合、
図3に示されるように、地球局50は、通信可能領域に存在する中継衛星200を利用して、中継衛星200を介し通信不可領域に存在するユーザ衛星100_1と通信することが可能になる。
【0028】
衛星システム10における衛星間光通信によると、中継衛星200はまず、ユーザ衛星100の位置データ系列に基づいて、ユーザ衛星100が周回する軌道上にビーコン光を送信する。当該ビーコン光は、例えば、中継衛星200の識別子と通信相手のユーザ衛星100の識別子とが符号化されたパルス形式の光信号であってもよい。中継衛星200から自らが通信相手として要求されていると判定すると、当該ユーザ衛星100は、ビーコン光の送信元の中継衛星200との通信接続を確立し、中継衛星200との通信を開始する。
【0029】
例えば、
図4に示されるように、ユーザ衛星100_3との衛星間光通信を開始するため、中継衛星200は、ユーザ衛星100_3を検出するためのビーコン光をユーザ衛星100_3の軌道上に送信する。例えば、ビーコン光は、中継衛星200が持つユーザ衛星100_3の位置データ系列から予測したユーザ衛星100_3の位置に向けて送出され、予測された位置を含む広範な範囲をカバーするように相対的に指向性の低い光から構成される。例えば、ビーコン光は、中継衛星200の識別子と通信相手として要求されたユーザ衛星100_3の識別子とが符号化されたパルス信号として構成されてもよい。
【0030】
ユーザ衛星100_3は、中継衛星200からのビーコン光を検出すると、ビーコン光に符号化された中継衛星200の識別子と要求されている通信相手の識別子とを抽出する。ユーザ衛星100_3は、抽出した通信相手の識別子が各自の識別子と一致するか判定する。本例では、ユーザ衛星100_3の識別子がビーコン光に含まれているため、ユーザ衛星100_3は、自らが通信相手として要求されていると判断し、中継衛星200との通信確立手順に移行する。所定の通信確立手順に従ってユーザ衛星100_3と中継星200との間の通信接続が確立されると、ユーザ衛星100_3と中継衛星200とは、相対的に指向性の高い通信光によってデータを送受信する。これにより、地球局50は、中継衛星200を介しユーザ衛星100_3と通信することが可能になる。
【0031】
ここで、地球局50は、例えば、
図5に示されるようなハードウェア構成を有してもよい。
図5に示されるように、地球局50は、記憶装置501、処理装置502及び通信装置503を有する。
【0032】
記憶装置501は、中継衛星200を介したユーザ衛星100と地球局50との間の衛星間光通信のための各種データ及びプログラムを格納する。例えば、データ及びプログラムは、予め保持されてもよいし、ネットワーク20を介し取得されてもよいし、あるいは、地球局50のオペレータなどから入力されてもよい。記憶装置501は、例えば、メモリ、ストレージなどの非一時的な記憶媒体により実現されうる。
【0033】
処理装置502は、記憶装置501からロードされたプログラムを実行し、地球局50の各構成要素を制御すると共に、衛星間光通信のための各種処理を実行する。処理装置502は、例えば、プロセッサ、信号処理回路などにより実現されてもよい。
【0034】
通信装置503は、データを送受信するよう処理装置502によって制御される。通信装置503は、例えば、通信インタフェース、通信回路、アンテナなどにより実現されてもよい。例えば、通信装置503は、ネットワーク20を介しデータを送受信したり、あるいは、アンテナを介しユーザ衛星100及び/又は中継衛星200との間でデータを送受信する。
【0035】
次に、ユーザ衛星100は、例えば、
図6に示されるようなハードウェア構成を有してもよい。すなわち、ユーザ衛星100及び中継衛星200はそれぞれ、コマンド&データハンドリング系101、ミッション系102、通信系103、機構・熱構造系104、姿勢制御系105及び電源系106を有する。
【0036】
コマンド&データハンドリング系101は、受信したコマンドを処理すると共に、当該衛星の状態データ、ミッションデータなどを処理する。例えば、コマンド&データハンドリング系101は、データ処理用の処理回路を有し、当該処理回路を利用して、後述される各種機能部を実現する。
【0037】
ミッション系102は、各衛星に特有の機能(ミッション)を実現する。例えば、当該衛星が地球観測衛星である場合、ミッション系102は、イメージセンサ等の各種センサとデータ処理装置などから構成されうる。また、当該衛星が通信衛星である場合、ミッション系102は、データ中継用のアンテナ、通信機器などから構成されうる。
【0038】
通信系103は、地球局50からの指令(コマンド)を受信すると共に、衛星の状態、観測データ(テレメトリ)などを地球局50に送信する通信機器、アンテナなどから構成されうる。また、通信系103は、衛星間光通信によってユーザ衛星100と通信するための光通信系103Aを有する。光通信系103Aは、衛星の周囲を撮像するカメラを有し、宇宙空間などの非地上領域を撮像すると共に、衛星間光通信のためのビーコン光及び通信光を受光する。例えば、カメラは常時、所定のフレームレート(例えば、30fps)で衛星の周囲の非地上領域を撮像し、撮像した非地上領域の画像フレームをコマンド&データハンドリング系101などににわたす。また、カメラは、より広範な範囲を撮像できるように、円周魚眼レンズなどの全天球レンズを備えてもよい。
【0039】
機構・熱構造系104は、衛星本体、太陽電池パネルなどの可動展開物、及び衛星内温度の安定化及び排熱を行う機構から構成される。
【0040】
姿勢制御系105は、衛星の位置及び/又は姿勢を測定するセンサ、衛星の高度及び/又は姿勢を変える推進器などから構成され、衛星の軌道上の位置及び/又は姿勢を制御する。
【0041】
電源系106は、衛星において使用される電力を制御及び管理する。例えば、電源系106は、太陽電池で発電された電力をバッテリに充電したり、衛星内の各系に必要とされる電力を供給する。
【0042】
中継衛星200も
図6に示されるハードウェア構成を有することができる。しかしながら、上述したハードウェア構成は単なる一例であり、本開示による、地球局50、ユーザ衛星100及び中継衛星200は、他の何れか適切なハードウェア構成により実現されてもよい。また、上述した各系へのグルーピングは単なる一例であり、他のグルーピングによって地球局50、ユーザ衛星100及び中継衛星200のハードウェア構成が説明されてもよい。例えば、衛星のミッションに応じて同一の機器・機構が異なる系に分類されてもよい。例えば、中継衛星200は、衛星間光通信によるデータ中継を主たるミッションとするため、光通信機103A(例えば、カメラ、光望遠鏡、光伝送装置など)は、ミッション系102に分類されてもよい。他方、ユーザ衛星100は、地球観測などをミッションとするため、中継衛星200との光通信機(例えば、カメラ、光望遠鏡、光伝送装置など)は、通信系103に分類されてもよい。
【0043】
[地球局]
次に、
図7を参照して、本開示の一実施例による地球局50を説明する。
図7は、本開示の一実施例による地球局50の機能構成を示すブロック図である。
【0044】
図7に示されるように、地球局50は、データ取得部51及び通信部52を有する。各機能部は、上述したハードウェア装置の何れか又は組み合わせによって実現されうる。
【0045】
データ取得部51は、衛星の予測軌道暦を示すデータ系列を取得する。例えば、当該データ系列は、ユーザ衛星100及び/又は中継衛星200の予測軌道暦データであってもよい。データ取得部51は、(1)TLEから計算する手法と、(2)衛星からダウンリンク送信されたGPS測位情報から求める手法との何れかに従って予測軌道暦データを計算してもよい。具体的には、予測軌道暦データ系列は、各時点における衛星の位置及び速度の時系列データとして構成されてもよい。あるいは、予測軌道暦データ系列は、各時点における衛星の位置、速度及び加速度の時系列データとして構成されてもよい。
【0046】
当該データ系列は、摂動要因を考慮して計算されてもよい。摂動要因の具体例として、地球を周回する衛星の主要な摂動要因として、地球重力の非球状成分、太陽や月の引力、大気抵抗、太陽輻射圧、潮汐による地球重力歪みなどがあげられる。データ取得部51は、解析的手法又は数値積分手法を利用して、摂動要因を考慮して予測軌道暦データ系列を計算してもよい。
【0047】
一実施例では、データ取得部51は、第1の時間分解能を有する第1のデータ系列と、第1の時間分解能より低い第2の時間分解能を有する第2のデータ系列とを取得する。例えば、これらのデータ系列は、ユーザ衛星100及び/又は中継衛星200の予測軌道暦データ系列であってもよい。具体的には、第1のデータ系列及び第2のデータ系列は、予測軌道暦データ系列などの同一の次元又はサイズのベクトルデータから構成されてもよい。この場合、第1のデータ系列は、a個のデータから構成されるデータ系列であり、第2のデータ系列は、b個(a>b)のデータから構成されるデータ系列であってもよい。
【0048】
一実施例では、第1のデータ系列は、第1の時間分解能によるユーザ衛星100の第1の予測軌道暦データ系列(例えば、高時間分解能の予測軌道暦データ系列)であってもよく、第2のデータ系列は、第1の時間分解能より低い第2の時間分解能によるユーザ衛星100の第2の予測軌道暦データ系列(例えば、低時間分解能の予測軌道暦データ系列)であってもよい。例えば、第1の予測軌道暦データ系列は、1時間の時間長を有する特定の時間帯における1分単位のユーザ衛星100の位置を示す60個の位置データの時系列データであり、第2の予測軌道暦データ系列は、当該時間帯における10分単位のユーザ衛星100の位置を示す6個の位置データの時系列データであってもよい。ここで、ユーザ衛星100の位置は、所定の座標軸における位置、中継衛星200に対する相対位置など、当該技術分野において公知な何れか適切な方法により表されてもよい。しかしながら、本開示によるデータ系列は、必ずしも予測軌道暦データ系列に限定されるものでなく、中継衛星200に対するユーザ衛星100の向きを示す方向データ系列など、ユーザ衛星100の軌道を示しうる他の何れか適切なタイプの時系列データであってもよい。
【0049】
例えば、中継衛星200は、このような離散的な時系列データである予測軌道暦データ系列を補間することによって、当該時間帯の何れかの時点におけるユーザ衛星100の位置を予測することが可能である。このとき、相対的に時間分解能の高い第1の予測軌道暦データ系列(例えば、高時間分解能の予測軌道暦データ系列)を補間することによって取得されるユーザ衛星100の軌道は、相対的に時間分解能の低い第2の予測軌道暦データ系列(例えば、低時間分解能の予測軌道暦データ系列)を補間することによって取得されるユーザ衛星100の軌道より高い精度を有すると考えられる。他方、第1の予測軌道暦データ系列の補間に係る計算負荷は、第2の予測軌道暦データ系列の補間に係る計算負荷より小さくなると考えられる。また、所定期間の予測軌道歴データを地球局50から中継衛星200に送信する場合、第1の予測軌道暦データ系列を地球局50から中継衛星200に送信するためのデータ量は、第2の予測軌道暦データ系列を送信するためのデータ量より大きくなり、通信時間が長くなると考えられる。
【0050】
通信部52は、取得したデータ系列を中継衛星200に送信する。具体的には、通信部52は、予測軌道暦データ系列をユーザ衛星100及び/又は中継衛星200に送信する。地球局50からユーザ衛星100及び/又は中継衛星200への伝送データレートは、従来は数kbps~数100kbps程度であるが、将来的には、数Mbpsより高速な伝送データレートが実現されうると予想される。地球局50からユーザ衛星及び/又は中継衛星200に送信される予測軌道暦データ系列には、以下の4つの類型が考えられうる。
類型I:通信部52は、中継衛星200の予測軌道暦データ系列を中継衛星200に送信してもよい。中継衛星200は、当該予測軌道暦データ系列を利用して、より高精度に自らの軌道予測をすることができる。なお、中継衛星200は、GPS測位情報に基づいて中継衛星200の位置及び速度を計算してもよい。
類型II:通信部52は、ユーザ衛星100の予測軌道暦データ系列を中継衛星200に送信してもよい。中継衛星200は、当該予測軌道暦データ系列を利用して、より高精度にユーザ衛星100の軌道予測をすることができる。
類型III:通信部52は、中継衛星200の予測軌道暦データ系列をユーザ衛星100に送信してもよい。ユーザ衛星100は、当該予測軌道暦データ系列を利用して、より高精度に中継衛星200の軌道予測をすることができる。
類型IV:通信部52は、ユーザ衛星100の予測軌道暦データ系列をユーザ衛星100に送信してもよい。ユーザ衛星100は、当該予測軌道暦データ系列を利用して、より高精度に自らの軌道予測をすることができる。なお、ユーザ衛星100は、GPS測位情報に基づいてユーザ衛星100の位置及び速度を計算してもよい。
【0051】
通信部52は、所定の選択基準に従って第1のデータ系列と第2のデータ系列とから選択されたデータ系列をユーザ衛星100の軌道情報として中継衛星200に送信してもよい。例えば、通信部52は、所定の選択基準に従って第1のデータ系列と第2のデータ系列との何れかのデータ系列を自ら選択し、選択したデータ系列を中継衛星200に送信してもよい。あるいは、通信部52は、ネットワーク20などから所定の選択基準に基づく選択指示を受信し、第1のデータ系列と第2のデータ系列とのうちの指示されたデータ系列を中継衛星200に送信してもよい。すなわち、通信部52は、所定の選択基準に従って第1のデータ系列の送信と第2のデータ系列の送信とを切り替える。
【0052】
例えば、通信部52は、中継衛星200から見たユーザ衛星100の位置の予測誤差の許容範囲の大きさに応じて第1のデータ系列の送信と第2のデータ系列の送信とを切り替えてもよい。具体的には、予測誤差の許容範囲が所定の閾値以上である場合、通信部52は、第2のデータ系列(例えば、低時間分解能の予測軌道暦データ系列)を中継衛星200に送信してもよい。他方、予測誤差の許容範囲が所定の閾値未満である場合、通信部52は、第1のデータ系列(例えば、高時間分解能の予測軌道暦データ系列)を中継衛星200に送信してもよい。
【0053】
一実施例では、所定の選択基準は、ユーザ衛星100と中継衛星200との間の距離に関連してもよい。通信部52は、当該距離が所定の距離閾値未満である場合には第1のデータ系列を軌道情報として中継衛星200に送信し、当該距離が所定の距離閾値以上である場合には第2のデータ系列を軌道情報として中継衛星200に送信してもよい。すなわち、通信部52は、ユーザ衛星100と中継衛星200との間の距離に基づいて、中継衛星200に送信するデータ系列を切り替えてもよい。
【0054】
例えば、
図8に示される例において、2つの曲線は、高精度の軌道予測において取得された低時間分解能の予測軌道暦データ系列と高時間分解能の予測軌道暦データ系列とを示す。「●」はユーザ衛星100の位置を示し、「○」は地球局50から取得した予測軌道暦データ系列に基づいて補間されたユーザ衛星100の推定位置、円形の破線で囲まれた領域は推定位置の予測誤差を示す。推定位置の予測誤差は、●の地点から時間が経過するほど誤差が大きくなりうる。例えば、時刻P
t1-5における予測誤差は、時刻P
t1-1における予測誤差よりも大きくなる。
図8から理解されるように、高時間分解能の予測軌道暦データ系列に基づいて補完されたユーザ衛星100の推定位置の方が、予測誤差(ユーザ衛星100が存在しうる範囲)を小さな半径内に限定することができる。
【0055】
図9において、中継衛星200から延びる2つの線は、ユーザ衛星100を捕捉追尾可能な範囲を示す。中継衛星200とユーザ衛星100との距離が大きいとき、低時間分解能の予測軌道暦データ系列でもユーザ衛星100の存在しうる範囲が捕捉追尾可能範囲に含まれうる。他方、中継衛星200とユーザ衛星100との距離が小さいとき、低時間分解能の予測軌道暦データ系列では、ユーザ衛星100の存在しうる範囲が捕捉追尾可能範囲より大きくなり、
図10に示されるように、中継衛星200は、ユーザ衛星100を捕捉追尾できない可能性がある。この場合、
図11に示されるように、高時間分解能の予測軌道暦データ系列を利用することによって、ユーザ衛星100の存在しうる範囲が小さくなり、ユーザ衛星100の位置の予測誤差は捕捉追尾可能な範囲に含まれうる。
【0056】
本実施例によると、ユーザ衛星100と中継衛星200との間の距離に基づいて、中継衛星200に送信するデータ系列を適切に切り替えることができる。
【0057】
また、一実施例では、所定の選択基準は、地球局50と中継衛星200との間の通信状態に関連してもよい。通信部52は、当該通信状態が所定の品質閾値未満である場合には第2のデータ系列を軌道情報として中継衛星200に送信し、当該通信状態が所定の品質閾値以上である場合には第1のデータ系列を軌道情報として中継衛星200に送信してもよい。すなわち、通信部52は、地球局50と中継衛星200との間の通信状態に基づいて、中継衛星200に送信するデータ系列を切り替えてもよい。
【0058】
具体的には、地球局50と中継衛星200との間の通信状態が良好でない場合、大きなデータ量のデータ系列は送信成功しない可能性がある。このため、通信部52は、時間分解能が相対的に低い予測軌道暦データ系列である第2のデータ系列を中継衛星200に送信(例えば、繰り返し送信)し、より確実にデータ系列を中継衛星200に到達させるようにしてもよい。他方、地球局50と中継衛星200との間の通信状態が良好である場合、大きなデータ量のデータ系列でも送信成功すると予想される。このため、通信部52は、時間分解能が相対的に高い予測軌道暦データ系列である第1のデータ系列を中継衛星200に送信し、中継衛星200に第1のデータ系列に基づいて補間計算させ、ユーザ衛星100の軌道を高精度に推定させてもよい。
【0059】
本実施例によると、地球局50と中継衛星200との間の通信状態に基づいて、中継衛星200に送信するデータ系列を適切に切り替えることができる。
【0060】
また、一実施例では、所定の選択基準は、中継衛星200の能力に関連してもよい。通信部52は、当該能力が所定の能力レベル閾値未満である場合には第2のデータ系列を軌道情報として中継衛星200に送信し、当該能力が所定の能力レベル閾値以上である場合には第1のデータ系列を軌道情報として中継衛星200に送信してもよい。ここで、中継衛星200の能力としては、例えば、中継衛星200の計算能力、記憶容量、地球局50との通信能力、ユーザ衛星100と通信する光通信系103Aの能力などであってもよい。すなわち、通信部52は、中継衛星200の能力に基づいて、中継衛星200に送信するデータ系列を切り替えてもよい。
【0061】
具体的には、中継衛星200の能力が相対的に低い場合、中継衛星200は、時間分解能の低い予測軌道暦データ系列を処理できない、あるいは、活用できない可能性がありうる。このため、通信部52は、時間分解能が相対的に高い第1のデータ系列を中継衛星200に送信し、相対的に高い能力を利用することなく、第1のデータ系列に基づいてユーザ衛星100の軌道を中継衛星200に推定させてもよい。他方、中継衛星200の能力が相対的に高い場合、中継衛星200は、時間分解能の低い予測軌道暦データ系列を処理できるか、あるいは、活用できる可能性がありうる。このため、通信部52は、時間分解能が相対的に低い第2のデータ系列を中継衛星200に送信し、相対的に高い能力を利用することによって、第2のデータ系列に基づいてユーザ衛星100の軌道を中継衛星200に高精度に推定させてもよい。
【0062】
本実施例によると、中継衛星200の能力に基づいて、中継衛星200に送信するデータ系列を適切に切り替えることができる。
【0063】
また、一実施例では、所定の選択基準は、中継衛星200の計算余力に関連してもよい。通信部52は、当該計算余力が所定の閾値未満である場合には第2のデータ系列を軌道情報として中継衛星200に送信し、当該計算余力が所定の閾値以上である場合には第1のデータ系列を軌道情報として中継衛星200に送信してもよい。すなわち、通信部52は、中継衛星200の計算余力に基づいて、中継衛星200に送信するデータ系列を切り替えてもよい。
【0064】
具体的には、中継衛星200の計算余力が相対的に低い場合、中継衛星200は、時間分解能の低い予測軌道暦データ系列に対する補間計算を実行できない可能性がありうる。このため、通信部52は、時間分解能が相対的に高い第1の位置データ系列を中継衛星200に送信し、相対的に高い計算負荷を必要とすることなく、第1のデータ系列に基づいてユーザ衛星100の軌道を中継衛星200に推定させてもよい。他方、中継衛星200の計算余力が相対的に高い場合、中継衛星200は、時間分解能の低い予測軌道暦データ系列を処理できると考えられる。このため、通信部52は、時間分解能が相対的に低い第2のデータ系列を中継衛星200に送信し、相対的に高い計算余力を利用することによって、第2のデータ系列に基づいてユーザ衛星100の軌道を中継衛星200に高精度に推定させてもよい。
【0065】
本実施例によると、中継衛星200の計算余力に基づいて、中継衛星200に送信するデータ系列を適切に切り替えることができる。
【0066】
[中継衛星]
次に、
図12を参照して、本開示の一実施例による中継衛星200を説明する。
図12は、本開示の一実施例による中継衛星200の機能構成を示すブロック図である。
【0067】
図12に示されるように、中継衛星200は、制御部210、処理部220及び光通信部230を有する。各機能部は、上述したハードウェア装置の何れか又は組み合わせによって実現されうる。
【0068】
制御部210は、衛星の予測軌道暦を示すデータ系列を取得する。例えば、当該データ系列は、ユーザ衛星100及び/又は中継衛星200の予測軌道暦データ(Ephemeris)であってもよい。具体的には、予測軌道暦データは、各時点における衛星の位置及び速度の時系列データとして構成されてもよい。あるいは、予測軌道暦データは、各時点における衛星の位置、速度及び加速度の時系列データとして構成されてもよい。
【0069】
当該予測軌道暦データ系列は、摂動要因を考慮して計算されてもよい。例えば、予測軌道暦データ系列は、解析的手法又は数値積分手法を利用して、摂動要因を考慮して地球局50によって計算されてもよい。摂動要因の具体例として、地球を周回する衛星の主要な摂動要因として、地球重力の非球状成分、太陽や月の引力、大気抵抗、太陽輻射圧、潮汐による地球重力歪みなどがあげられる。これにより、制御部210は、地球局50からケプラーの軌道六要素を受信し、受信した軌道6要素に基づいて、摂動要因を考慮することなくユーザ衛星100の予測軌道暦データを計算する従来のアプローチと比較して、より少ない計算リソースによって、より高精度な軌道予測を実現することが可能になる。
【0070】
処理部220は、取得した予測軌道暦データ系列に基づいてユーザ衛星100の予測軌道の補間計算を行う。処理部220は、GPS測位結果から中継衛星200の位置及び速度を取得し、姿勢センサから中継衛星200の姿勢データとして姿勢角及び角速度を取得する。そして、処理部220は、予測軌道上にある通信先のユーザ衛星100と中継衛星200との位置関係に基づいて、中継衛星200に対するユーザ衛星100の距離及び方向を計算する。当該予測軌道暦データ取得及び計算は、例えば、N秒毎(例えば、1秒毎など)に行われてもよく、取得した予測軌道暦データ系列の時間分解能に応じて実行されてもよい。処理部220は、ユーザ衛星100の方向と中継衛星200の姿勢角とに基づいて、光通信機の光望遠鏡(例えば、2軸で旋回可能)をユーザ衛星100の方向に向ける旋回角度を計算する。
【0071】
光通信部230は、補間計算により予測された予測軌道に基づいてユーザ衛星100と衛星間光通信を実行する。光通信部230は、計算された旋回角度によって光望遠鏡を旋回させ、レーザ光を送受信する。ここで、光通信部230は、0.1秒毎など所定の時間毎に光通信機の方向制御を行うようにしてもよい。このため、ユーザ衛星100と中継衛星200との速度及び角速度に基づいて、予測軌道暦データ系列に基づく補間計算により、予測軌道はM秒毎(M≦0.1)に補間されてもよい。ユーザ衛星100と中継衛星200との間の距離は、レーザ光の到達時間を考慮して受光方向と光出力方向とを補正するための計算に利用されうる。例えば、ユーザ衛星100と中継衛星200との間の距離をLkmとしたとき、ユーザ衛星100から届く光は、(L/3×105)秒前に出力されている。(L/3×105)秒後にユーザ衛星100に到達するようにするため、光通信部230は、当該時間におけるユーザ衛星100及び中継衛星200の移動量を考慮して、レーザ光を出力する必要がある。
【0072】
一実施例では、制御部210は、所定の選択基準に従って第1のデータ系列と第2のデータ系列とから選択されたデータ系列を地球局50から取得する。ここで、第1のデータ系列は、第1の時間分解能を有し、第2のデータ系列は、第1のデータ量より低い第2の時間分解能を有する。具体的には、第1のデータ系列及び第2のデータ系列は、ユーザ衛星100の軌道を示す予測軌道暦データの時系列データなど、同一の次元のベクトルデータから構成されてもよい。所定期間におけるユーザ衛星100の予測軌道歴データの時系列データである場合、第1のデータ系列は、a個のデータから構成されるデータ系列であり、第2のデータ系列は、b個(a>b)のデータから構成されるデータ系列であってもよい。
【0073】
一実施例では、第1のデータ系列は、第1の時間分解能によるユーザ衛星100の第1の予測軌道暦データ系列(例えば、高時間分解能の予測軌道暦データ系列)であってもよく、第2のデータ系列は、第1の時間分解能より低い第2の時間分解能によるユーザ衛星100の第2の予測軌道暦データ系列(例えば、低時間分解能の予測軌道暦データ系列)であってもよい。例えば、第1の予測軌道暦データ系列は、1時間の時間長の特定の時間帯における1分単位のユーザ衛星100の予測位置を示す60個の位置データの時系列データであり、第2の予測軌道暦データ系列は、当該時間帯における10分単位のユーザ衛星100の予測位置を示す6個の位置データの時系列データであってもよい。ここで、ユーザ衛星100の位置は、所定の座標系における位置、中継衛星200に対する相対位置など、当該技術分野において公知な何れか適切な方法により表されてもよい。しかしながら、本開示によるデータ系列は、必ずしも予測軌道暦データ系列に限定されるものでなく、中継衛星200に対するユーザ衛星100の向きを示す方向データ系列など、ユーザ衛星100の軌道を示す他の何れか適切なタイプの時系列データであってもよい。
【0074】
一実施例では、所定の選択基準は、ユーザ衛星100と中継衛星200との間の距離に関連してもよい。制御部210は、当該距離が所定の距離閾値未満である場合には第1のデータ系列を取得し、当該距離が所定の距離閾値以上である場合には第2のデータ系列を取得してもよい。すなわち、制御部210は、ユーザ衛星100と中継衛星200との間の距離に基づいて選択されたデータ系列を地球局50から取得してもよい。
【0075】
具体的には、ユーザ衛星100が中継衛星200の近くにある場合、地球局50は、時間分解能が相対的に高い第1の予測軌道暦データ系列を中継衛星200に送信し、制御部210は、第1の予測軌道暦データ系列を補間し、ユーザ衛星100の軌道を推定してもよい。他方、ユーザ衛星100が中継衛星200から離れている場合、通信部52は、時間分解能が相対的に低い第2の予測軌道暦データ系列を中継衛星200に送信し、制御部210は、第2の予測軌道暦データ系列を補間し、ユーザ衛星100の軌道を高精度に推定してもよい。
【0076】
本実施例によると、ユーザ衛星100と中継衛星200との間の距離に基づいて適切に切り替えられたデータ系列を取得することができる。
【0077】
一実施例では、所定の選択基準は、地球局50と中継衛星200との間の通信状態に関連してもよい。制御部210は、当該通信状態が所定の品質閾値未満である場合には第2のデータ系列を取得し、当該通信状態が所定の品質閾値以上である場合には第1のデータ系列を取得してもよい。すなわち、制御部210は、地球局50と中継衛星200との間の通信状態に基づいて選択されたデータ系列を取得してもよい。
【0078】
具体的には、地球局50と中継衛星200との間の通信状態が良好でない場合、大きなデータ量のデータ系列は送信成功しない可能性がある。このため、地球局50は、時間分解能が相対的に低い第2の予測軌道暦データ系列を中継衛星200に送信(例えば、繰り返し送信)し、制御部210は、より確実にデータ系列を取得可能であってもよい。他方、地球局50と中継衛星200との間の通信状態が良好である場合、大きなデータ量のデータ系列でも送信成功すると考えられる。このため、地球局50は、時間分解能が相対的に高い第1の予測軌道暦データ系列を中継衛星200に送信し、制御部210は、第1の予測軌道暦データ系列を補間し、ユーザ衛星100の軌道を高精度に推定してもよい。
【0079】
本実施例によると、地球局50と中継衛星200との間の通信状態に基づいて適切に切り替えられた予測軌道暦データ系列を取得することができる。
【0080】
一実施例では、所定の選択基準は、中継衛星200の能力に関連してもよい。制御部210は、当該能力が所定の計算能力レベル閾値未満である場合には第1の予測軌道暦データ系列を取得し、当該能力が所定の能力レベル閾値以上である場合には第2の予測軌道暦データ系列を取得してもよい。ここで、中継衛星200の能力としては、例えば、中継衛星200の計算能力、記憶容量、地球局50との通信能力、ユーザ衛星100と通信する光通信系103Aの能力などであってもよい。すなわち、制御部210は、中継衛星200の能力に基づいて選択された予測軌道暦データ系列を取得してもよい。
【0081】
具体的には、中継衛星200の計算能力が相対的に低い場合、中継衛星200は、時間分解能の低い予測軌道暦データ系列を処理できない、あるいは、活用できない可能性がありうる。このため、地球局50は、時間分解能が相対的に高い第1の予測軌道暦データ系列を中継衛星200に送信し、制御部210は、相対的に高い能力を利用することなく、第1の予測軌道暦データ系列に基づいてユーザ衛星100の軌道を推定してもよい。他方、中継衛星200の能力が相対的に高い場合、中継衛星200は、時間分解能の低い予測軌道暦データ系列を処理できるか、あるいは、活用できる可能性がありうる。このため、地球局50は、時間分解能が相対的に低い第2の予測軌道暦データ系列を中継衛星200に送信し、制御部210は、相対的に高い能力を利用することによって、第2の予測軌道暦データ系列に基づいてユーザ衛星100の軌道を高精度に推定してもよい。
【0082】
本実施例によると、中継衛星200の能力に基づいて適切に切り替えられたデータ系列を取得することができる。
【0083】
一実施例では、所定の選択基準は、中継衛星200の計算余力に関連してもよい。制御部210は、当該計算余力が所定の閾値未満である場合には第1の予測軌道暦データ系列を取得し、当該計算余力が所定の閾値以上である場合には第2の予測軌道暦データ系列を取得してもよい。すなわち、制御部210は、中継衛星200の計算余力に基づいて選択された予測軌道暦データ系列を取得してもよい。
【0084】
具体的には、中継衛星200の計算余力が相対的に低い場合、中継衛星200は、時間分解能の低い予測軌道暦データ系列に対する補間計算を実行できない可能性がありうる。このため、地球局50は、時間分解能が相対的に高い第1の予測軌道暦データ系列を中継衛星200に送信し、制御部210は、相対的に高い計算負荷を利用することなく、第1の予測軌道暦データ系列に基づいてユーザ衛星100の軌道を推定してもよい。他方、中継衛星200の計算余力が相対的に高い場合、中継衛星200は、時間分解能の低い予測軌道暦データ系列を処理できると考えられる。このため、地球局50は、時間分解能が相対的に低い第2の予測軌道暦データ系列を中継衛星200に送信し、制御部210は、相対的に高い計算余力を利用することによって、第2の予測軌道暦データ系列に基づいてユーザ衛星100の軌道を高精度に推定してもよい。
【0085】
本実施例によると、中継衛星200の計算余力に基づいて適切に切り替えられたデータ系列を取得することができる。
【0086】
[通信処理]
次に、
図13を参照して、本開示の一実施例による通信処理を説明する。当該通信処理は、地球局50と中継衛星200とによって実行されうる。
図13は、本開示の一実施例による通信処理を示すシーケンス図である。
【0087】
図13に示されるように、ステップS100において、地球局50は、TLEに含まれるケプラーの軌道6要素の情報に加えて、摂動要因による影響を補正してユーザ衛星100及び/又は中継衛星200の予測軌道暦データ系列を計算することで、従来よりも高精度の軌道予測暦データを生成する。また、中継衛星運用事業者30又はユーザ衛星運用事業者40がそれらの予測軌道暦データ系列を計算して生成してもよい。
【0088】
図14A~Cは、本開示の一実施例による地球局50と中継衛星200との間の通信処理を示すブロック図である。
図14Aに示されるように、地球局50と中継衛星200とは、電波などによって無線通信を実行する。例えば、地球局50は、
図14Bに示されるように、ユーザ衛星100の軌道6要素又はTLEとGPS測位情報とに基づいて、ユーザ衛星100の予測軌道暦データを計算し、中継衛星200の軌道6要素又はTLEとGPS測位情報とに基づいて、中継衛星200の予測軌道暦データを計算してもよい。なお、本開示による地球局50は、これに限定されず、中継衛星運用事業者30及び/又はユーザ衛星運用事業者40などによって計算された中継衛星200及び/又はユーザ衛星100の予測軌道暦データを取得してもよい。そして、地球局50は、計算された中継衛星200及び/又はユーザ衛星100の予測軌道暦データを中継衛星200に送信する。
【0089】
地球局50から中継衛星200及び/又はユーザ衛星100の予測軌道暦データを受信すると、中継衛星200は、
図14Cに示されるように、受信した予測軌道暦データに基づいて、対象時刻における中継衛星200及び/又はユーザ衛星100の位置及び速度を決定し、データ補間を実行することによってユーザ衛星100に対する方向及び距離を計算する。これと並行して、中継衛星200は、姿勢センサなどによって中継衛星200の姿勢角及び/又は角速度を測定し、データ補間を実行することによって、ユーザ衛星100に対する姿勢角及び角速度を計算する。そして、中継衛星200は、計算されたユーザ衛星100に対する方向、距離、姿勢角及び/又は角速度に基づいて、光通信機103Aの方向を調整し、光信号を発信する。
【0090】
ステップS101において、地球局50は、ユーザ衛星100及び/又は中継衛星200の予測軌道暦を示すデータ系列を取得する。具体的には、地球局50は、ケプラーの軌道6要素(TLEに含まれる情報からケプラー軌道要素を導出してもよい)又はユーザ衛星100(又は中継衛星200)からダウンリンク送信されたユーザ衛星100(又は中継衛星200衛星)が受信したGPS測位情報に基づくと共に、摂動要因を考慮してより高精度なユーザ衛星100(又は中継衛星200)の予測軌道暦データ系列を計算してもよい。また、予測軌道暦データ系列の生成、中継衛星運用事業者30又はユーザ衛星運用事業者40より実行され、地球局50は、インターネットなどのネットワーク20を介して、中継衛星運用事業者30又はユーザ衛星運用事業者40からそれらの予測軌道暦データ系列を取得してもよい。また、地球局50は、第1のデータ量の第1の予測軌道暦データ系列と、第1のデータ量より少ない第2のデータ量の第2の予測軌道暦データ系列とを取得してもよい。一実施例では、第1の予測軌道暦データ系列は、第1の時間分解能によるユーザ衛星100の第1の予測軌道暦データ系列であってもよく、第2の予測軌道暦データ系列は、第1の時間分解能より低い第2の時間分解能によるユーザ衛星100の第2の予測軌道暦データ系列であってもよい。なお、地球局50は、第1の予測軌道暦データ系列と第2の予測軌道暦データ系列との双方を取得する代わりに、所定の選択基準に従って選択された第1の予測軌道暦データ系列と第2の予測軌道暦データ系列との一方のデータ系列を取得してもよい。また、中継衛星運用事業者30又はユーザ衛星運用事業者40が選択した第1の予測軌道暦データ系列又は第2の予測軌道暦データ系列をインターネットなどのネットワーク20を介して地上局50に送信してもよい。
【0091】
ステップS102において、地球局50は、予測軌道暦データ系列を中継衛星200に送信する。また、地球局50が、第1の予測軌道暦データ系列と第2の予測軌道暦データ系列とを取得している場合、地球局50は、所定の選択基準に従って第1の予測軌道暦データ系列と第2の予測軌道暦データ系列とから選択されたデータ系列をユーザ衛星100の軌道情報として中継衛星200に送信してもよい。例えば、地球局50は、中継衛星200がカバーする各ユーザ衛星100に対して、選択されたデータ系列を特定し、送信対象として特定されたデータ系列群を中継衛星200に送信してもよい。また、地球局50は、ステップS102において、ユーザ衛星100の予測軌道暦データをユーザ衛星100に送信してもよい。また、地球局50は、ステップS102において、所定の選択基準に従って第1の予測軌道暦データ系列と第2の予測軌道暦データ系列とから選択されたユーザ衛星100の予測軌道暦データ系列を中継衛星200の軌道情報としてユーザ衛星100に送信してもよい。
【0092】
一実施例では、所定の選択基準は、ユーザ衛星100と中継衛星200との間の距離、地球局50と中継衛星200との間の通信状態、中継衛星200の能力、及び/又は、中継衛星200の計算余力に関連してもよい。なお、これらの選択基準は、組み合わされてもよい。また、データ系列の選択は、地球局50が行ってもよいし、あるいは、中継衛星運用事業者30又はユーザ衛星運用事業者40など他の主体から選択指示を受信してもよい。
【0093】
ステップS103において、中継衛星200は、予測軌道暦データ系列を取得する。具体的には、中継衛星200は、ユーザ衛星100及び/又は中継衛星200の予測軌道暦データ系列を地球局50から受信してもよい。また、中継衛星200は、所定の選択基準に従って第1の予測軌道暦データ系列と第2の予測軌道暦データ系列とから選択されたデータ系列を地球局50から取得してもよい。例えば、中継衛星200が複数のユーザ衛星100をカバーしている場合、中継衛星200は、カバーしている各ユーザ装置100の予測軌道暦データ系列を取得してもよい。また、ステップS103において、ユーザ衛星100が、中継衛星200及び/又はユーザ衛星100の予測軌道歴予測軌道暦データ系列を地球局50から取得してもよい。
【0094】
ステップS104において、中継衛星200は、取得した予測軌道暦データ系列に基づいてユーザ衛星100と衛星間光通信を実行する。具体的には、中継衛星200は、取得したユーザ衛星100の予測軌道暦データ系列に基づいてユーザ衛星100の軌道を推定し、推定したユーザ衛星100の位置に向かってビーコン光を送信してもよい。ユーザ衛星100は、当該ビーコン光を受信すると、中継衛星200との通信接続を確立し、通信光を送受信することによってデータをやりとりする。
【0095】
上述した実施例によると、従来技術によるケプラーの軌道6要素を受信した中継衛星200がユーザ衛星100の予測軌道を計算する代わりに、地球局50、中継衛星運用事業者30又はユーザ衛星運用事業者40が、ユーザ衛星100との衛星間光通信に必要なより高精度の予測軌道暦データを計算し、導出した予測軌道暦データを中継衛星200に提供することができる。これにより、中継衛星200が限定的な計算能力しか備えていない場合であっても、中継衛星200は、地球局50から取得した軌道データを利用して、ユーザ衛星100と適切に衛星間光通信を実行することが可能になる。また、ユーザ衛星100と中継衛星200との間の距離、地球局50と中継衛星200との間の通信状態、中継衛星200の能力、及び/又は、中継衛星200の計算余力に基づいて適切なデータ量のデータ系列を中継衛星200に提供することが可能になる。
【0096】
なお、上述した実施例は、第1の予測軌道暦データ系列と第2の予測軌道暦データ系列の2つの異なるデータ量又は異なる時間分解能の予測軌道暦データ系列に関して説明されたが、本開示は、これに限定されず、3つ以上の異なるデータ量又は異なる時間分解能の予測軌道暦データ系列に適用されてもよい。また、予測軌道暦データ系列として、ユーザ衛星100の予測位置データ系列に着目したが、本開示は、これに限定されず、地球局50から中継衛星200又はユーザ衛星100に送信される他の何れかのデータに適用されてもよい。
【0097】
なお、以上の説明に関して更に以下の付記を開示する。
(付記1)
地球局から衛星の予測軌道暦を示す予測軌道データ系列を取得するデータ取得部と、
取得した前記予測軌道データ系列を中継衛星に送信する通信部と、
を有する地球局。
(付記2)
前記予測軌道データ系列は、摂動要因を考慮して計算される、付記1に記載の地球局。
(付記3)
前記データ取得部は、第1のデータ量の前記予測軌道データ系列である第1のデータ系列と、前記第1のデータ量より少ない第2のデータ量の前記予測軌道データ系列である第2のデータ系列とを取得し、
前記通信部は、所定の選択基準に従って選択された前記第1のデータ系列又は前記第2のデータ系列を衛星の軌道情報として中継衛星に送信する、付記2に記載の地球局。
(付記4)
前記データ取得部は、第1の時間分解能を有する前記予測軌道データ系列である第1のデータ系列と、前記第1の時間分解能より低い第2の時間分解能を有する前記予測軌道データ系列である第2のデータ系列とを取得し、
前記通信部は、所定の選択基準に従って前記第1のデータ系列と前記第2のデータ系列とから選択されたデータ系列を衛星の軌道情報として中継衛星に送信する、付記2に記載の地球局。
(付記5)
前記所定の選択基準は、前記衛星と前記中継衛星との間の距離に関連し、
前記通信部は、前記距離が所定の距離閾値未満である場合には前記第1のデータ系列を前記軌道情報として前記中継衛星に送信し、前記距離が前記所定の距離閾値以上である場合には前記第2のデータ系列を前記軌道情報として前記中継衛星に送信する、付記3又は4に記載の地球局。
(付記6)
前記所定の選択基準は、前記地球局と前記中継衛星との間の通信状態に関連し、
前記通信部は、前記通信状態が所定の品質閾値未満である場合には前記第2のデータ系列を前記軌道情報として前記中継衛星に送信し、前記通信状態が前記所定の品質閾値以上である場合には前記第1のデータ系列を前記軌道情報として前記中継衛星に送信する、付記3又は4に記載の地球局。
(付記7)
前記所定の選択基準は、前記中継衛星の能力に関連し、
前記通信部は、前記能力が所定の能力レベル閾値未満である場合には前記第2のデータ系列を前記軌道情報として前記中継衛星に送信し、前記能力が前記所定の能力レベル閾値以上である場合には前記第1のデータ系列を前記軌道情報として前記中継衛星に送信する、付記3又は4に記載の地球局。
(付記8)
前記所定の選択基準は、前記中継衛星の計算余力に関連し、
前記通信部は、前記計算余力が所定の閾値未満である場合には前記第2のデータ系列を前記軌道情報として前記中継衛星に送信し、前記計算余力が前記所定の閾値以上である場合には前記第1のデータ系列を前記軌道情報として前記中継衛星に送信する、付記3又は4に記載の地球局。
(付記9)
地球局から衛星の予測軌道暦を示す予測軌道データ系列を取得することと、
取得した前記予測軌道データ系列を中継衛星に送信することと、
を有する地球局が実行する通信方法。
(付記10)
前記予測軌道データ系列は、摂動要因を考慮して計算される、付記9に記載の通信方法。
(付記11)
地球局から衛星の予測軌道暦を示す予測軌道データ系列を取得する制御部と、
取得した前記予測軌道データ系列に基づいて衛星と衛星間光通信を実行する光通信部と、
を有する中継衛星。
(付記12)
前記予測軌道データ系列は、摂動要因を考慮して計算される、付記11に記載の中継衛星。
(付記13)
前記制御部は、所定の選択基準に従って第1のデータ系列と第2のデータ系列とから選択されたデータ系列を前記地球局から取得し、
前記第1のデータ系列は第1のデータ量を有する前記予測軌道データ系列であり、前記第2のデータ系列は前記第1のデータ量より少ない第2のデータ量を有する前記予測軌道データ系列である、付記12に記載の中継衛星。
(付記14)
前記制御部は、所定の選択基準に従って第1のデータ系列と第2のデータ系列とから選択されたデータ系列を前記地球局から取得し、
前記第1のデータ系列は第1の時間分解能を有する前記予測軌道データ系列であり、前記第2のデータ系列は前記第1の時間分解能より低い第2の時間分解能を有する前記予測軌道データ系列である、付記12に記載の中継衛星。
(付記15)
前記所定の選択基準は、前記衛星と前記中継衛星との間の距離に関連し、
前記制御部は、前記距離が所定の距離閾値未満である場合には前記第1のデータ系列を取得し、前記距離が前記所定の距離閾値以上である場合には前記第2のデータ系列を取得する、付記13又は14に記載の中継衛星。
(付記16)
前記所定の選択基準は、前記地球局と前記中継衛星との間の通信状態に関連し、
前記制御部は、前記通信状態が所定の品質閾値未満である場合には前記第2のデータ系列を取得し、前記通信状態が前記所定の品質閾値以上である場合には前記第1のデータ系列を取得する、付記13又は14に記載の中継衛星。
(付記17)
前記所定の選択基準は、前記中継衛星の能力に関連し、
前記制御部は、前記能力が所定の能力レベル閾値未満である場合には前記第2のデータ系列を取得し、前記能力が前記所定の能力レベル閾値以上である場合には前記第1のデータ系列を取得する、付記13又は14に記載の中継衛星。
(付記18)
前記所定の選択基準は、前記中継衛星の計算余力に関連し、
前記制御部は、前記計算余力が所定の閾値未満である場合には前記第2のデータ系列を取得し、前記計算余力が前記所定の閾値以上である場合には前記第1のデータ系列を取得する、付記13又は14に記載の中継衛星。
(付記19)
地球局から衛星の予測軌道暦を示す予測軌道データ系列を取得することと、
取得した前記予測軌道データ系列に基づいて衛星と衛星間光通信を実行することと、
を有する中継衛星が実行する通信方法。
(付記20)
地球局と、
衛星と、
前記地球局と前記衛星とを中継する中継衛星と、
を有し、
前記地球局は、
衛星の予測軌道暦を示す予測軌道データ系列を取得し、
取得した前記予測軌道データ系列を中継衛星に送信する、
衛星システム。
【0098】
以上、本開示の実施例について詳述したが、本開示は上述した特定の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本開示の要旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能である。
【符号の説明】
【0099】
10 衛星システム
50 地球局
51 データ取得部
52 通信部
100 ユーザ衛星
200 中継衛星
210 制御部
220 処理部
230 光通信部
【手続補正書】
【提出日】2022-12-23
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定期間における衛星の予測軌道暦を示す予測軌道データ系列を取得するデータ取得部と、
取得した前記予測軌道データ系列を中継衛星に送信する通信部と、
を有し、
前記データ取得部は、第1のデータ量の前記予測軌道データ系列である第1のデータ系列と、前記第1のデータ量より少ない第2のデータ量の前記予測軌道データ系列である第2のデータ系列とを取得し、
前記通信部は、所定の選択基準に従って選択された前記第1のデータ系列又は前記第2のデータ系列を衛星の軌道情報として中継衛星に送信する地球局。
【請求項2】
前記データ取得部は、第1の時間分解能を有する前記予測軌道データ系列である第1のデータ系列と、前記第1の時間分解能より低い第2の時間分解能を有する前記予測軌道データ系列である第2のデータ系列とを取得する、請求項1に記載の地球局。
【請求項3】
前記第1のデータ系列又は前記第2のデータ系列は、摂動要因を考慮して計算される前記予測軌道データ系列である、請求項1又は2に記載の地球局。
【請求項4】
前記通信部は、前記予測軌道データ系列を前記衛星へ送信するために複数の伝送データレートでの通信に対応する、請求項1又は2に記載の地球局。
【請求項5】
前記所定の選択基準は、前記衛星と前記中継衛星との間の距離に関連し、
前記通信部は、前記距離が所定の距離閾値未満である場合には前記第1のデータ系列を前記軌道情報として前記中継衛星に送信し、前記距離が前記所定の距離閾値以上である場合には前記第2のデータ系列を前記軌道情報として前記中継衛星に送信する、請求項1に記載の地球局。
【請求項6】
前記所定の選択基準は、前記地球局と前記中継衛星との間の通信状態に関連し、
前記通信部は、前記通信状態が所定の品質閾値未満である場合には前記第2のデータ系列を前記軌道情報として前記中継衛星に送信し、前記通信状態が前記所定の品質閾値以上である場合には前記第1のデータ系列を前記軌道情報として前記中継衛星に送信する、請求項1に記載の地球局。
【請求項7】
前記所定の選択基準は、前記中継衛星の能力に関連し、
前記通信部は、前記能力が所定の能力レベル閾値未満である場合には前記第2のデータ系列を前記軌道情報として前記中継衛星に送信し、前記能力が前記所定の能力レベル閾値以上である場合には前記第1のデータ系列を前記軌道情報として前記中継衛星に送信する、請求項1に記載の地球局。
【請求項8】
前記所定の選択基準は、前記中継衛星の計算余力に関連し、
前記通信部は、前記計算余力が所定の閾値未満である場合には前記第2のデータ系列を前記軌道情報として前記中継衛星に送信し、前記計算余力が前記所定の閾値以上である場合には前記第1のデータ系列を前記軌道情報として前記中継衛星に送信する、請求項1に記載の地球局。
【請求項9】
所定期間における衛星の予測軌道暦を示す予測軌道データ系列を取得することと、
取得した前記予測軌道データ系列を中継衛星に送信することと、
を有し、
前記取得することは、第1のデータ量の前記予測軌道データ系列である第1のデータ系列と、前記第1のデータ量より少ない第2のデータ量の前記予測軌道データ系列である第2のデータ系列とを取得し、
前記送信することは、所定の選択基準に従って選択された前記第1のデータ系列又は前記第2のデータ系列を中継衛星に送信する、地球局が実行する通信方法。
【請求項10】
前記第1のデータ系列は第1の時間分解能を有する前記予測軌道データ系列であり、前記第2のデータ系列は前記第1の時間分解能より低い第2の時間分解能を有する前記予測軌道データ系列である、請求項9に記載の通信方法。
【請求項11】
前記第1のデータ系列又は前記第2のデータ系列は、摂動要因を考慮して計算される前記予測軌道データ系列である、請求項9又は10に記載の通信方法。
【請求項12】
前記予測軌道データ系列を前記中継衛星へ送信するために複数の伝送データレートでの通信に対応する、請求項9又は10に記載の通信方法。
【請求項13】
前記予測軌道データ系列は、摂動要因を考慮して計算される、請求項9に記載の通信方法。
【請求項14】
地球局から所定期間における衛星の予測軌道暦を示す予測軌道データ系列を取得する制御部と、
取得した前記予測軌道データ系列に基づいて衛星と衛星間光通信を実行する光通信部と、
を有し、
前記制御部は、所定の選択基準に従って選択された第1のデータ系列又は第2のデータ系列を前記地球局から取得し、
前記第1のデータ系列は第1のデータ量を有する前記予測軌道データ系列であり、前記第2のデータ系列は前記第1のデータ量より少ない第2のデータ量を有する前記予測軌道データ系列である中継衛星。
【請求項15】
前記第1のデータ系列は第1の時間分解能を有する前記予測軌道データ系列であり、前記第2のデータ系列は前記第1の時間分解能より低い第2の時間分解能を有する前記予測軌道データ系列である、請求項14に記載の中継衛星。
【請求項16】
前記第1のデータ系列又は前記第2のデータ系列は、摂動要因を考慮して計算される、請求項14又は15に記載の中継衛星。
【請求項17】
前記所定の選択基準は、前記衛星と前記中継衛星との間の距離に関連し、
前記制御部は、前記距離が所定の距離閾値未満である場合には前記第1のデータ系列を取得し、前記距離が前記所定の距離閾値以上である場合には前記第2のデータ系列を取得する、請求項14に記載の中継衛星。
【請求項18】
前記所定の選択基準は、前記地球局と前記中継衛星との間の通信状態に関連し、
前記制御部は、前記通信状態が所定の品質閾値未満である場合には前記第2のデータ系列を取得し、前記通信状態が前記所定の品質閾値以上である場合には前記第1のデータ系列を取得する、請求項14に記載の中継衛星。
【請求項19】
前記所定の選択基準は、前記中継衛星の能力に関連し、
前記制御部は、前記能力が所定の能力レベル閾値未満である場合には前記第2のデータ系列を取得し、前記能力が前記所定の能力レベル閾値以上である場合には前記第1のデータ系列を取得する、請求項14に記載の中継衛星。
【請求項20】
前記所定の選択基準は、前記中継衛星の計算余力に関連し、
前記制御部は、前記計算余力が所定の閾値未満である場合には前記第2のデータ系列を取得し、前記計算余力が前記所定の閾値以上である場合には前記第1のデータ系列を取得する、請求項14に記載の中継衛星。
【請求項21】
地球局から所定期間における衛星の予測軌道暦を示す予測軌道データ系列を取得することと、
取得した前記予測軌道データ系列に基づいて衛星と衛星間光通信を実行することと、
を有し、
前記取得することは、所定の選択基準に従って第1のデータ系列又は第2のデータ系列を前記地球局から取得し、
前記第1のデータ系列は第1のデータ量を有する前記予測軌道データ系列であり、前記第2のデータ系列は前記第1のデータ量より少ない第2のデータ量を有する前記予測軌道データ系列である、中継衛星が実行する通信方法。
【請求項22】
地球局と、
衛星と、
前記地球局と前記衛星とを中継する中継衛星と、
を有し、
前記地球局は、
所定期間における衛星の予測軌道暦を示す予測軌道データ系列を取得し、
取得した前記予測軌道データ系列を中継衛星に送信し、
前記地球局は、
第1のデータ量の前記予測軌道データ系列である第1のデータ系列と、前記第1のデータ量より少ない第2のデータ量の前記予測軌道データ系列である第2のデータ系列とを取得し、
所定の選択基準に従って選択された前記第1のデータ系列又は前記第2のデータ系列を衛星の軌道情報として中継衛星に送信する、
衛星システム。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0008
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0008】
本開示の一態様は、所定期間における衛星の予測軌道暦を示す予測軌道データ系列を取得するデータ取得部と、取得した前記予測軌道データ系列を中継衛星に送信する通信部と、を有し、前記データ取得部は、第1のデータ量の前記予測軌道データ系列である第1のデータ系列と、前記第1のデータ量より少ない第2のデータ量の前記予測軌道データ系列である第2のデータ系列とを取得し、前記通信部は、所定の選択基準に従って選択された前記第1のデータ系列又は前記第2のデータ系列を衛星の軌道情報として中継衛星に送信する地球局に関する。
【手続補正書】
【提出日】2023-03-06
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定期間における衛星の予測軌道暦を示す予測軌道データ系列を取得するデータ取得部と、
取得した前記予測軌道データ系列を中継衛星に送信する通信部と、
を有し、
前記データ取得部は、第1のデータ量の前記予測軌道データ系列である第1のデータ系列と、前記第1のデータ量より少ない第2のデータ量の前記予測軌道データ系列である第2のデータ系列とを取得し、
前記通信部は、所定の選択基準に従って選択された前記第1のデータ系列又は前記第2のデータ系列を衛星の軌道情報として中継衛星に送信する地球局。
【請求項2】
前記データ取得部は、第1の時間分解能を有する前記予測軌道データ系列である第1のデータ系列と、前記第1の時間分解能より低い第2の時間分解能を有する前記予測軌道データ系列である第2のデータ系列とを取得する、請求項1に記載の地球局。
【請求項3】
前記第1のデータ系列又は前記第2のデータ系列は、摂動要因を考慮して計算される前記予測軌道データ系列である、請求項1又は2に記載の地球局。
【請求項4】
前記通信部は、前記予測軌道データ系列を前記衛星へ送信するために複数の伝送データレートでの通信に対応する、請求項1又は2に記載の地球局。
【請求項5】
前記所定の選択基準は、前記衛星と前記中継衛星との間の距離に関連し、
前記通信部は、前記距離が所定の距離閾値未満である場合には前記第1のデータ系列を前記軌道情報として前記中継衛星に送信し、前記距離が前記所定の距離閾値以上である場合には前記第2のデータ系列を前記軌道情報として前記中継衛星に送信する、請求項1に記載の地球局。
【請求項6】
前記所定の選択基準は、前記地球局と前記中継衛星との間の通信状態に関連し、
前記通信部は、前記通信状態が所定の品質閾値未満である場合には前記第2のデータ系列を前記軌道情報として前記中継衛星に送信し、前記通信状態が前記所定の品質閾値以上である場合には前記第1のデータ系列を前記軌道情報として前記中継衛星に送信する、請求項1に記載の地球局。
【請求項7】
前記所定の選択基準は、前記中継衛星の能力に関連し、
前記通信部は、前記能力が所定の能力レベル閾値未満である場合には前記第2のデータ系列を前記軌道情報として前記中継衛星に送信し、前記能力が前記所定の能力レベル閾値以上である場合には前記第1のデータ系列を前記軌道情報として前記中継衛星に送信する、請求項1に記載の地球局。
【請求項8】
前記所定の選択基準は、前記中継衛星の計算余力に関連し、
前記通信部は、前記計算余力が所定の閾値未満である場合には前記第2のデータ系列を前記軌道情報として前記中継衛星に送信し、前記計算余力が前記所定の閾値以上である場合には前記第1のデータ系列を前記軌道情報として前記中継衛星に送信する、請求項1に記載の地球局。
【請求項9】
所定期間における衛星の予測軌道暦を示す予測軌道データ系列を取得することと、
取得した前記予測軌道データ系列を中継衛星に送信することと、
を有し、
前記取得することは、第1のデータ量の前記予測軌道データ系列である第1のデータ系列と、前記第1のデータ量より少ない第2のデータ量の前記予測軌道データ系列である第2のデータ系列とを取得し、
前記送信することは、所定の選択基準に従って選択された前記第1のデータ系列又は前記第2のデータ系列を中継衛星に送信する、地球局が実行する通信方法。
【請求項10】
前記第1のデータ系列は第1の時間分解能を有する前記予測軌道データ系列であり、前記第2のデータ系列は前記第1の時間分解能より低い第2の時間分解能を有する前記予測軌道データ系列である、請求項9に記載の通信方法。
【請求項11】
前記第1のデータ系列又は前記第2のデータ系列は、摂動要因を考慮して計算される前記予測軌道データ系列である、請求項9又は10に記載の通信方法。
【請求項12】
前記予測軌道データ系列を前記中継衛星へ送信するために複数の伝送データレートでの通信に対応する、請求項9又は10に記載の通信方法。
【請求項13】
前記予測軌道データ系列は、摂動要因を考慮して計算される、請求項9に記載の通信方法。
【請求項14】
地球局から所定期間における衛星の予測軌道暦を示す予測軌道データ系列を取得する制御部と、
取得した前記予測軌道データ系列に基づいて衛星と衛星間光通信を実行する光通信部と、
を有し、
前記制御部は、所定の選択基準に従って選択された第1のデータ系列又は第2のデータ系列を前記地球局から取得し、
前記第1のデータ系列は第1のデータ量を有する前記予測軌道データ系列であり、前記第2のデータ系列は前記第1のデータ量より少ない第2のデータ量を有する前記予測軌道データ系列である中継衛星。
【請求項15】
前記第1のデータ系列は第1の時間分解能を有する前記予測軌道データ系列であり、前記第2のデータ系列は前記第1の時間分解能より低い第2の時間分解能を有する前記予測軌道データ系列である、請求項14に記載の中継衛星。
【請求項16】
前記第1のデータ系列又は前記第2のデータ系列は、摂動要因を考慮して計算される、請求項14又は15に記載の中継衛星。
【請求項17】
前記所定の選択基準は、前記衛星と前記中継衛星との間の距離に関連し、
前記制御部は、前記距離が所定の距離閾値未満である場合には前記第1のデータ系列を取得し、前記距離が前記所定の距離閾値以上である場合には前記第2のデータ系列を取得する、請求項14に記載の中継衛星。
【請求項18】
前記所定の選択基準は、前記地球局と前記中継衛星との間の通信状態に関連し、
前記制御部は、前記通信状態が所定の品質閾値未満である場合には前記第2のデータ系列を取得し、前記通信状態が前記所定の品質閾値以上である場合には前記第1のデータ系列を取得する、請求項14に記載の中継衛星。
【請求項19】
前記所定の選択基準は、前記中継衛星の能力に関連し、
前記制御部は、前記能力が所定の能力レベル閾値未満である場合には前記第2のデータ系列を取得し、前記能力が前記所定の能力レベル閾値以上である場合には前記第1のデータ系列を取得する、請求項14に記載の中継衛星。
【請求項20】
前記所定の選択基準は、前記中継衛星の計算余力に関連し、
前記制御部は、前記計算余力が所定の閾値未満である場合には前記第2のデータ系列を取得し、前記計算余力が前記所定の閾値以上である場合には前記第1のデータ系列を取得する、請求項14に記載の中継衛星。
【請求項21】
地球局から所定期間における衛星の予測軌道暦を示す予測軌道データ系列を取得することと、
取得した前記予測軌道データ系列に基づいて衛星と衛星間光通信を実行することと、
を有し、
前記取得することは、所定の選択基準に従って前記地球局において選択された第1のデータ系列又は第2のデータ系列を前記地球局から取得し、
前記第1のデータ系列は第1のデータ量を有する前記予測軌道データ系列であり、前記第2のデータ系列は前記第1のデータ量より少ない第2のデータ量を有する前記予測軌道データ系列である、中継衛星が実行する通信方法。
【請求項22】
地球局と、
衛星と、
前記地球局と前記衛星とを中継する中継衛星と、
を有し、
前記地球局は、
所定期間における衛星の予測軌道暦を示す予測軌道データ系列を取得し、
取得した前記予測軌道データ系列を中継衛星に送信し、
前記地球局は、
第1のデータ量の前記予測軌道データ系列である第1のデータ系列と、前記第1のデータ量より少ない第2のデータ量の前記予測軌道データ系列である第2のデータ系列とを取得し、
所定の選択基準に従って選択された前記第1のデータ系列又は前記第2のデータ系列を衛星の軌道情報として中継衛星に送信する、
衛星システム。