(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024096107
(43)【公開日】2024-07-11
(54)【発明の名称】顕微鏡用コントローラ、顕微鏡システムおよび対応する方法
(51)【国際特許分類】
G02B 21/24 20060101AFI20240704BHJP
【FI】
G02B21/24
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023223299
(22)【出願日】2023-12-28
(31)【優先権主張番号】22217144
(32)【優先日】2022-12-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(71)【出願人】
【識別番号】511079735
【氏名又は名称】ライカ マイクロシステムズ シーエムエス ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】Leica Microsystems CMS GmbH
【住所又は居所原語表記】Ernst-Leitz-Strasse 17-37, D-35578 Wetzlar, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100134315
【弁理士】
【氏名又は名称】永島 秀郎
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】フォルカー シャハト
(72)【発明者】
【氏名】パトリック ペルツァー
(72)【発明者】
【氏名】ハイコ ヴァーグナー
【テーマコード(参考)】
2H052
【Fターム(参考)】
2H052AB01
2H052AB27
2H052AC01
2H052AD16
2H052AD19
2H052AD20
2H052AF14
(57)【要約】 (修正有)
【課題】サンプルを収容するためのマルチウェルプレートの横方向の寸法が比較的大きく、サンプルの撮像で異なる対物レンズが使用される場合、困難になることがある。
【解決手段】顕微鏡のサンプルステージは、サンプルホルダ(230)を収容するように構成されており、第1のモードでは、横方向移動中、少なくとも2つの異なる対物レンズ(222,224)のすべてについて少なくとも1つの横方向(x、y)において第1の横方向範囲(234.1,236.1)に制限され、第2のモードでは、横方向移動中、少なくとも2つの異なる対物レンズ(222,224)のすべてについて少なくとも第2の横方向範囲(234.2,236.2)内にあり、第2の横方向範囲は、第1の横方向範囲とは異なり、垂直方向移動中、少なくとも2つの異なる対物レンズのすべてについて垂直方向位置が、あらかじめ定めた垂直方向範囲(238.2)に制限される。
【選択図】
図2b
【特許請求の範囲】
【請求項1】
顕微鏡(110)用のコントローラ(150)であって、前記顕微鏡(110)は、サンプルステージ(112)および撮像光学系(120,220)を有し、前記サンプルステージ(112)は、サンプルホルダ(130,230)を収容するように構成されており、前記撮像光学系(120,220)は、少なくとも2つの異なる対物レンズ(122,124,222,224)を有し、
前記顕微鏡(110)は、前記サンプルホルダ(130,230)が前記サンプルステージ(112)に収容される場合、前記サンプルホルダ(130,230)の少なくとも一部を撮像するために、少なくとも2つの異なる前記対物レンズ(122,124,222,224)のそれぞれを選択できるように構成されており、
前記顕微鏡(110)は、前記サンプルホルダ(130)が前記サンプルステージ(112)に収容される場合、少なくとも2つの異なる前記対物レンズ(122,124,222,224)のそれぞれについて、前記サンプルホルダ(130)に対して少なくとも1つの横方向(x、y)に横方向移動(112x、112y)が可能になるように構成されており、
前記顕微鏡(110)は、前記サンプルホルダ(130)が前記サンプルステージ(112)に収容される場合、少なくとも2つの異なる前記対物レンズ(122,124,222,224)のそれぞれについて、前記サンプルホルダ(130,230)に対して垂直方向(z)に垂直方向移動が可能になるように構成されており、
前記コントローラ(150)は、第1のモード(410)において前記顕微鏡(110)を制御するように構成され、前記第1のモードでは、前記横方向移動中、少なくとも2つの異なる前記対物レンズ(122,124,222,224)のすべてについて横方向位置は、少なくとも1つの前記横方向(x、y)において第1の横方向範囲(234.1,236.1)に制限され、
前記コントローラ(150)は、第2のモード(420)において前記顕微鏡(110)を制御するように構成され、前記第2のモードでは、前記横方向移動中、少なくとも2つの異なる前記対物レンズ(122,124,222,224)のすべてについて位置は、少なくとも1つの前記横方向(x、y)において少なくとも第2の横方向範囲(234.2,236.2)内にあることが可能であり、前記第2の横方向範囲は、前記第1の横方向範囲とは異なり、
前記第2のモード(420)では、前記垂直方向移動中、少なくとも2つの異なる前記対物レンズ(122,124)のすべてについて垂直方向位置は、あらかじめ定めた垂直方向範囲(238.2)に制限される、
コントローラ(150)。
【請求項2】
前記第2のモード(420)では、前記横方向移動中、2つの異なる前記対物レンズ(122,124)のすべてについて前記位置は、前記第2の横方向範囲(234.2,236.2)に制限される、
請求項1記載のコントローラ(150)。
【請求項3】
前記第1のモード(410)では、前記垂直方向移動中、少なくとも2つの異なる前記対物レンズ(122,124,222,224)の前記垂直方向位置は、拡張されたあらかじめ定めた垂直方向範囲(238.1)内にあることが可能であり、拡張されたあらかじめ定めた前記垂直方向範囲は、あらかじめ定めた前記垂直方向範囲(238.2)よりも大きい、
請求項1または2記載のコントローラ(150)。
【請求項4】
前記コントローラ(150)は、充足判定基準が満たされているか否かについての情報を受け取るか、または、充足判定基準が満たされているか否か特定するようにさらに構成されており、前記充足判定基準に含まれるのは、前記サンプルホルダが前記サンプルステージに収容される場合、少なくとも2つの前記対物レンズ(122,124,222,224)のすべてについて、前記第2の範囲内の前記サンプルホルダのすべての点に合焦するために、あらかじめ定めた前記垂直方向範囲(238.2)が十分であることであり、
前記第1のモード(410)の場合かつ前記充足判定基準が満たされている場合、前記コントローラ(150)は、ヒューマンマシンインタフェース(140)を制御して、少なくとも2つの前記対物レンズのすべてについて満たされている前記充足判定基準についての情報(356.1)をユーザーに提示するようにさらに構成されているか、または
前記第1のモードの場合かつ前記充足判定基準が満たされている場合、前記コントローラ(150)は、前記第2のモードにおいて前記顕微鏡を制御するように切り換わるように構成されている、
請求項1から3までのいずれか1項記載のコントローラ(150)。
【請求項5】
前記コントローラ(150)は、
前記サンプルホルダ(130,230)が前記サンプルステージに収容される場合、前記顕微鏡(110)を制御して、前記サンプルホルダ(130,230)の少なくとも1つの幾何学的パラメータ(d,h)についての情報を特定し、
前記サンプルホルダの少なくとも1つの前記幾何学的パラメータ(h)についての情報を受け取り、
前記サンプルホルダの少なくとも1つの前記幾何学的パラメータについての前記情報に基づいて、前記充足判定基準が満たされているか否かを特定する、
ようにさらに構成されている、
請求項4記載のコントローラ(150)。
【請求項6】
前記コントローラ(150)は、非充足判定基準が満たされているか否かについての情報を受け取るか、または非充足判定基準が満たされているか否かを特定するようにさらに構成されており、前記非充足判定基準に含まれるのは、前記サンプルホルダが前記サンプルステージに収容される場合、少なくとも2つの前記対物レンズの少なくとも1つについて、前記サンプルホルダのすべての点に合焦するためには、あらかじめ定めた前記垂直方向範囲(238.2)が十分ではないことであり、
前記第2のモード(420)の場合かつ前記非充足判定基準が満たされている場合、前記コントローラ(150)は、ヒューマンマシンインタフェース(140)を制御して、前記非充足判定基準が満たされている少なくとも1つの前記対物レンズについての情報をユーザーに提示するようにさらに構成されている、
請求項1から5までのいずれか1項記載のコントローラ(150)。
【請求項7】
前記コントローラ(150)は、
前記サンプルホルダ(130,230)が前記サンプルステージに収容される場合、前記顕微鏡(110)を制御して、前記サンプルホルダ(130,230)の少なくとも1つの幾何学的パラメータ(d,h)についての情報を特定し、
前記サンプルホルダの少なくとも1つの前記幾何学的パラメータ(d,h)についての情報を受け取り、
前記サンプルホルダの少なくとも1つの前記幾何学的パラメータについての前記情報に基づいて、前記非充足判定基準が満たされているか否かを特定する、
ようにさらに構成されている、
請求項6記載のコントローラ(150)。
【請求項8】
前記サンプルホルダ(130,230)は、複数のウェル(232)を有するマルチウェルプレートであるか、または、複数のウェル(232)を有するマルチウェルプレートを含み、前記サンプルホルダ(130,230)が前記サンプルステージ(112)に収容される場合、少なくとも1つの前記横方向(x、y)に複数の前記ウェル(232)が分散され、
前記サンプルホルダの少なくとも1つの前記幾何学的パラメータ(h)は、前記マルチウェルプレート(230)のスカート高さと、前記撮像光学系からの前記マルチウェルプレート(230)の底板の間隔と、の少なくとも1つを有する、
請求項5または7記載のコントローラ(150)。
【請求項9】
前記コントローラ(150)は、
前記第1のモード(410)と前記第2のモード(420)との1つの選択についてのユーザー入力データ(402)を受信し(400)、
前記第1のモードを選択すると同時に、ヒューマンマシンインタフェース(140)のディスプレイ(142,342)を制御(414)して、前記サンプルホルダ(130,230)および前記第1の横方向範囲を視覚化し、
前記第2のモードを選択すると同時に、前記ヒューマンマシンインタフェースの前記ディスプレイ(342)を制御して、前記サンプルホルダおよび前記第2の横方向範囲を視覚化する、
ようにさらに構成されている、
請求項1から8までのいずれか1項記載のコントローラ(150)。
【請求項10】
前記コントローラ(150)は、第3モードにおいて前記顕微鏡(110)を制御するようにさらに構成され、前記第3モードでは、前記横方向移動中、少なくとも2つの異なる前記対物レンズ(122,124,222,224)の第1の対物レンズについて横方向位置は、少なくとも1つの前記横方向(x、y)において前記第1の横方向範囲(234.1,236.1)に制限され、
前記横方向移動中、少なくとも2つの異なる前記対物レンズ(122,124)の第2の対物レンズについて横方向位置は、少なくとも1つの前記横方向(x、y)において少なくとも第2の横方向範囲内にあることが可能であり、
前記垂直方向移動中、少なくとも2つの異なる前記対物レンズ(122,124)の前記第2の対物レンズについて垂直方向位置は、あらかじめ定めた垂直方向範囲(238.2)に制限されるように構成されている、
請求項1から9までのいずれか1項記載のコントローラ(150)。
【請求項11】
少なくとも2つの異なる前記対物レンズ(122,124)は、異なる形状を有し、少なくとも2つの異なる前記対物レンズは、合焦のために前記サンプルホルダに対して異なる垂直方向位置を必要とする、
請求項1から10までのいずれか1項記載のコントローラ(150)。
【請求項12】
顕微鏡(110)用のコントローラ(150)であって、前記顕微鏡(110)は、サンプルステージ(112)および撮像光学系(120)を有し、前記サンプルステージ(112)は、サンプルホルダ(130)を収容するように構成されており、前記撮像光学系(120)は、少なくとも2つの異なる対物レンズ(122,124,222,224)を有し、
前記顕微鏡(110)は、前記サンプルホルダ(130)が前記サンプルステージ(112)に収容される場合、前記サンプルホルダ(130)の少なくとも一部を撮像するために、少なくとも2つの異なる前記対物レンズ(122,124,222,224)のそれぞれを選択できるように構成されており、
前記顕微鏡(110)は、前記サンプルホルダ(130)が前記サンプルステージ(112)に収容される場合、少なくとも2つの異なる前記対物レンズ(122,124,222,224)のそれぞれについて、前記サンプルホルダ(130,230)に対して少なくとも1つの横方向(x、y)に横方向移動が可能になるように構成されており、
前記顕微鏡(110)は、前記サンプルホルダ(130)が前記サンプルステージ(112)に収容される場合、少なくとも2つの異なる前記対物レンズ(122,124,222,224)のそれぞれについて、前記サンプルホルダ(130,230)に対して垂直方向(z)に垂直方向移動が可能になるように構成されており、
前記コントローラ(150)は、第1のモード(410)と第2のモード(420)との1つの選択についてのユーザー入力データを受信するように構成され、
前記第1のモードでは、前記横方向移動中、2つの異なる前記対物レンズ(122,124,222,224)のすべてについて横方向位置は、少なくとも1つの前記横方向(x、y)において第1の横方向範囲(234.1,236.1)に制限され、
前記第2のモードでは、前記横方向移動中、2つの異なる前記対物レンズ(122,124,222,224)についての位置は、少なくとも1つの前記横方向(x、y)において少なくとも第2の横方向範囲(234.2,236.2)内にあることが可能であり、第2の横方向範囲は、第1の横方向範囲とは異なり、
前記第2のモードでは、前記垂直方向移動中、少なくとも2つの異なる前記対物レンズ(122,124)のすべてについて垂直方向位置は、あらかじめ定めた垂直方向範囲(238.2)に制限されるように構成されており、
前記コントローラ(150)は、
前記第1のモードを選択すると同時に、ヒューマンマシンインタフェース(140)のディスプレイ(142,342)を制御して、前記サンプルホルダ(130,230)および前記第1の横方向範囲を視覚化し、
前記第2のモードを選択すると同時に、前記ヒューマンマシンインタフェースの前記ディスプレイ(142,342)を制御して、前記サンプルホルダおよび前記第2の横方向範囲を視覚化する、
ようにさらに構成されている、
コントローラ(150)。
【請求項13】
顕微鏡(110)と、請求項1から12までのいずれか1項記載の前記コントローラ(150)と、を有する顕微鏡システム(100)であって、
前記顕微鏡(110)は、サンプルステージ(112)および撮像光学系(120)を有し、前記サンプルステージ(112)は、サンプルホルダ(130,230)を収容するように構成されており、前記撮像光学系(120,220)は、少なくとも2つの異なる対物レンズ(122,124,222,224)を有し、
前記顕微鏡(110)は、前記サンプルホルダ(130)が前記サンプルステージに収容される場合、前記サンプルホルダの少なくとも一部を撮像するために、少なくとも2つの異なる前記対物レンズ(122,124,222,224)のそれぞれを選択できるように構成されており、
前記顕微鏡(110)は、前記サンプルホルダが前記サンプルステージに収容される場合、少なくとも2つの異なる対物レンズ(122,124,222,224)のそれぞれについて、前記サンプルホルダに対して少なくとも1つの横方向に横方向移動が可能になるように構成されており、
前記顕微鏡(110)は、前記サンプルホルダが前記サンプルステージに収容される場合、少なくとも2つの異なる前記対物レンズのそれぞれについて、前記サンプルホルダに対して垂直方向に垂直方向移動が可能になるように構成されている、
顕微鏡システム(100)。
【請求項14】
顕微鏡(110)を制御する方法であって、前記顕微鏡(110)は、サンプルステージ(112)および撮像光学系(120,220)を有し、前記サンプルステージ(112)は、サンプルホルダ(130,230)を収容するように構成されており、前記撮像光学系(120,220)は、少なくとも2つの異なる対物レンズ(122,124,222,224)を有し、
前記顕微鏡(110)は、前記サンプルホルダ(130,230)が前記サンプルステージ(112)に収容される場合、前記サンプルホルダ(130,230)の少なくとも一部を撮像するために、少なくとも2つの異なる前記対物レンズ(122,124,222,224)のそれぞれを選択できるように構成されており、
前記顕微鏡(110)は、前記サンプルホルダ(130)が前記サンプルステージ(112)に収容される場合、少なくとも2つの異なる前記対物レンズ(122,124,222,224)のそれぞれについて、前記サンプルホルダ(130,230)に対して少なくとも1つの横方向(x、y)に横方向移動が可能になるように構成されており、
前記顕微鏡(110)は、前記サンプルホルダ(130)が前記サンプルステージ(112)に収容される場合、少なくとも2つの異なる前記対物レンズ(122,124,222,224)のそれぞれについて、前記サンプルホルダ(130)に対して垂直方向(z)に垂直方向移動が可能になるように構成されており、
前記方法は、次のステップ、すなわち、
第1のモード(410)を選択すると同時に、前記第1のモードにおいて前記顕微鏡(110)を制御するステップ(412)であって、前記第1のモードでは、前記横方向移動中、2つの異なる前記対物レンズ(122,124,222,224)のすべてについて横方向位置は、少なくとも1つの前記横方向(x、y)において第1の横方向範囲(234.1,236.1)に制限されるステップ(412)と、
第2のモード(420)を選択すると同時に、前記第2のモードにおいて前記顕微鏡(110)を制御するステップ(422)であって、前記第2のモードでは、前記横方向移動中、少なくとも2つの異なる前記対物レンズ(122,124,222,224)についての位置は、少なくとも1つの前記横方向(x、y)において少なくとも第2の横方向範囲(234.2,236.2)内にあることが可能であり、第2の横方向範囲は、第1の横方向範囲とは異なるステップ(422)と、
を有し、
前記第2のモードでは、前記垂直方向移動中、少なくとも2つの異なる対物レンズ(122,124,222,224)のすべてについて垂直方向位置は、あらかじめ定めた垂直方向範囲(238.2)に制限される、
方法。
【請求項15】
コンピュータプログラムがプロセッサ上で動作する場合に、請求項14記載の方法を実施するためのプログラムコードを備えたコンピュータプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は実質的に、顕微鏡用コントローラと、顕微鏡およびこのようなコントローラを有する顕微鏡システムと、対応する方法と、に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、生物学および医学の分野において、顕微鏡は、サンプルまたは試料を撮像および/または観察するために使用可能である。撮像すべき複数のサンプルを準備する典型的な手段は、例えば、サンプルを収容するための96個のウェルを有するいわゆるマルチウェルプレートである。このようなマルチウェルプレートは、横方向の寸法が比較的大きく、したがってウェルに準備されたそれぞれのサンプルの撮像は、特に、顕微鏡の異なる対物レンズが使用される場合、困難になることがある。このことは、横方向の寸法が大きい別のサンプルホルダにも当てはまる。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0003】
上述の状況を考慮すると、顕微鏡によるサンプルの撮像における改善が必要である。本発明の実施形態によると、独立請求項の特徴を備えたミクロトーム用コントローラ、ミクロトームシステムおよび対応する方法が提案される。有利な別の発展形態は、従属請求項および後続の説明の対象を成している。
【0004】
本発明の1つの実施形態は、顕微鏡用コントローラに関する。顕微鏡は、サンプルステージおよび撮像光学系を有する。サンプルステージは、マルチウェルプレートのようなサンプルホルダを収容するように構成されており、撮像光学系は少なくとも2つの異なる対物レンズを有する。顕微鏡はさらに、サンプルホルダがサンプルステージに収容される場合、サンプルホルダの少なくとも1つの部分を撮像するために、少なくとも2つの異なる対物レンズのそれぞれを選択できるように構成されている。顕微鏡はさらに、サンプルホルダがサンプルステージに収容される場合、少なくとも2つの異なる対物レンズのそれぞれについて、サンプルホルダに対して少なくとも1つの横方向に横方向移動が可能になるように構成されている。1つの実施形態では、一般にx方向およびy方向と称される2つの(異なる)横方向における横方向移動が可能である。さらに、顕微鏡は、サンプルホルダがサンプルステージに収容される場合、少なくとも2つの異なる対物レンズのそれぞれについて、サンプルホルダに対して垂直方向(一般にz方向と称される)に垂直方向移動が可能になるように構成されている。
【0005】
コントローラは、第1のモードにおいて顕微鏡を制御するように構成されており、第1のモードでは、横方向移動中、少なくとも2つの異なる対物レンズのすべてについて横方向位置が、少なくとも1つの横方向において第1の横方向範囲に制限される。横方向が2つの場合、両方の横方向においてそれぞれの第1の横方向範囲があってよい。
【0006】
コントローラはさらに、第2のモードにおいて顕微鏡を制御するように構成されており、第2のモードでは、横方向移動中、少なくとも2つの異なる対物レンズすべてについて位置が、少なくとも1つの横方向において、少なくとも第2の横方向範囲内にあることが可能であり(すなわち、横方向移動は、第2の横方向範囲外にも延在していてもよく)、第2の横方向範囲は、第1の横方向範囲とは異なる。第2のモードではさらに、垂直方向移動中、少なくとも2つの異なる対物レンズのすべてについて垂直方向位置が、あらかじめ定めた垂直方向範囲に制限される。
【0007】
上述したように、マルチウェルプレートのように大きな横方向延長を有するサンプルホルダについては、撮像は困難になることがある。特に、このようなサンプルホルダは一般に、サンプルステージ内またはサンプルステージ上に保持または位置決めされる必要がある。この結果、一般にサンプルホルダの周縁部に所定の保持構造が形成される。例えばマルチウェルプレートは、その周縁部にいわゆるスカートを有し、このスカートにより、マルチウェルプレートをサンプルステージ上に配置することができる。マルチウェルプレートの異なるウェルにおけるサンプルを撮像するとき、または別のサンプルホルダ上の異なる点を撮像するときには、サンプルホルダおよび使用される対物レンズは、互いに横方向に移動させなければならない。1つの実施形態では、対物レンズが横方向に固定されている間にサンプルホルダと共にサンプルステージが移動される。
【0008】
合焦のためには、サンプルステージに対して垂直方向に対物レンズを移動させなければならない。1つの実施形態では、サンプルステージが垂直方向に固定されている間に対物レンズ(または対物レンズを保持する撮像光学系の部分)が移動される。特に、マルチウェルプレートのスカートのような上述の保持構造の近くでは、対物レンズは必要なだけサンプルの近くまで移動できないため、この結果として対物レンズが合焦できなくなることがある。それにもかかわらず合焦させようとすると、この結果としてサンプルホルダを損傷させてしまうことがある。本発明の1つの実施形態では、少なくとも2つの異なる対物レンズは、異なる形状を有し、少なくとも2つの異なる対物レンズは、合焦のためにサンプルホルダに対して異なる垂直方向位置を必要とする。したがって、2つ以上の対物レンズにより、これらの対物レンズの形状が異なることに起因して、異なる対物レンズについて状況が異なることがある。したがって、このような損傷が生じ得るか否か、またはどの領域にこのような損傷が起こり得るかは、現在使用されている対物レンズに依存する。
【0009】
上述のように2つのモードを設けることにより、この問題が克服される。というのは、第1のモードでは、横方向の動きが制限され、したがって、サンプルステージ、すなわち例えば保持構造部の周縁部の近くでは、すべての対物レンズを合焦させないようにすることができるからである。サンプルホルダまたは対物レンズを損傷するリスクは、回避されるか、または少なくとも低減される。制限はすべての対物レンズに適用されるため、顕微鏡のユーザーは、どの対物レンズが現在使用されているかを気にする必要はない。第1の横方向範囲は、例えば、顕微鏡の幾何学寸法、特に対物レンズの、およびサンプルホルダの形状に依存して、損傷が生じ得ないように選択可能である。
【0010】
第1のモードでは、サンプルホルダの複数の部分が全く撮像されないのに対し、第2のモードでは、いずれかの対物レンズを使用して、サンプルホルダの別の複数の部分、好ましくは第1のモードの場合よりも多くのまたはすべての部分が撮像可能である。垂直方向における相対移動の制限により、ここでもあらゆる損傷を回避することができる。この第2のモードは結果的に、垂直方向の制限により、すべての対物レンズについて合焦が可能でないことになり得ることに注意されたい。しかしながらここでも、制限がすべての対物レンズに適用されるため、顕微鏡のユーザーは、どの対物レンズが現在使用されているかを気にする必要がない。第2の横方向範囲は、より多くまたはすべてのサンプルホルダを撮像できるように選択可能である。例えば、顕微鏡の幾何学寸法、特に対物レンズおよびサンプルホルダの形状に依存して、損傷が発生し得ないように、あらかじめ定めた垂直方向範囲を選択することができる。
【0011】
本発明の1つの実施形態において、第2のモードでは、横方向移動中、少なくとも2つの異なる対物レンズのすべてについて位置が、第2の横方向範囲に制限される。このことは、第2の横方向範囲外では横方向移動が可能でないことを意味する。このことは、第2の横方向範囲外で起こり得るあらゆる損傷を回避することに役立つ。
【0012】
本発明の1つの実施形態において、第1のモードでは、垂直方向移動中、少なくとも2つの異なる対物レンズの垂直方向位置が、拡張されたあらかじめ定めた垂直方向範囲内にあることが可能であり、拡張されたあらかじめ定めた範囲は、あらかじめ定めた範囲よりも大きい。これにより、第2のモードと比較して、第1のモードでは、より多くの、またはすべての対物レンズについて合焦が可能になる。
【0013】
本発明の1つの実施形態では、コントローラはさらに、充足判定基準が満たされているか否かについての情報を受け取るか、または充足判定基準が満たされているか否かを特定するように構成されている。この充足判定基準に含まれるのは、サンプルホルダがサンプルステージに収容される場合、少なくとも2つの対物レンズのすべてについて、第2の範囲内のサンプルホルダのすべての点に合焦するために、あらかじめ定めた垂直方向範囲が十分であることである。マルチウェルプレートの場合、すべての点は、複数のウェルのそれぞれ1つにおけるそれぞれのサンプルに対応していてよい。コントローラはさらに、第1のモードの場合かつ充足判定基準が満たされている場合、ディスプレイのようなヒューマンマシンインタフェースを制御して、少なくとも2つの対物レンズのすべてについて満たされている充足判定基準についての情報をユーザーに提示するように構成されている。例えば、第2のモードはより適切な横方向範囲を有し、また垂直方向移動が制限されているのにもかかわらず、このことが、すべての対物レンズを用いてあらゆる箇所に合焦するために十分であるため、第2のモードが選択可能であるというメッセージをユーザーに表示することができる。このことは、使用される特定のサンプルホルダおよびその幾何学寸法またはパラメータに依存し得る。択一的または付加的には、コントローラは、第1のモードの場合かつ充足判定基準が満たされている場合、第2のモードにおいて顕微鏡を制御するように切り換わるように構成されている。これにより、第1のモードから第2のモードへの自動的な切換えが可能になる。2つの変形形態により、顕微鏡のより適切な使用が可能になる。
【0014】
本発明の1つの実施形態では、コントローラはさらに、サンプルホルダがサンプルステージに収容される場合、顕微鏡を制御して、サンプルホルダの少なくとも1つの幾何学的パラメータについての情報を特定し、サンプルホルダの少なくとも1つの幾何学的パラメータについての情報を受け取るように構成されている。コントローラはさらに、サンプルホルダの少なくとも1つの幾何学的パラメータについての情報に基づいて、充足判定基準が満たされているか否かを特定するように構成されている。これにより、ユーザーへの情報の自動的な提示またはモードの自動切換えが可能になる。1つの実施形態では、顕微鏡を制御して、サンプルホルダの少なくとも1つの幾何学的パラメータについての情報を特定することには、顕微鏡のオートフォーカス機能を使用して間隔を特定することが含まれる。これにより、顕微鏡に一般的に組み込まれている機能が使用可能である。
【0015】
本発明の1つの実施形態では、コントローラはさらに、非充足判定基準が満たされているか否かについての情報を受け取るか、または非充足判定基準が満たされているか否かを特定するように構成されている。この非充足判定基準に含まれるのは、サンプルホルダがサンプルステージに収容される場合、少なくとも2つの対物レンズの少なくとも1つについて、第2の範囲内のサンプルホルダのすべての点に合焦するためには、あらかじめ定めた垂直方向範囲が十分ではないことである。マルチウェルプレートの場合、すべての点は、複数のウェルのそれぞれ1つにおけるそれぞれのサンプルに対応していてよい。コントローラはさらに、第2のモードの場合かつ非充足判定基準が満たされている場合、ディスプレイのようなヒューマンマシンインタフェースを制御して、非充足判定基準が満たされている少なくとも1つの対物レンズについての情報をユーザーに提示するように構成されている。例えば、2つの異なる倍率の低い方の倍率を有する対物レンズが影響を受けるというメッセージをユーザーに表示することができる。この場合、ユーザーは、別の対物レンズが使用されるときには第2のモードに留まることができるか、または影響を受ける対物レンズが使用されるときにはモードを変更することができる。このことは、使用される特定のサンプルホルダおよびその幾何学寸法またはパラメータに依存し得る。これにより、顕微鏡のより適切な使用が可能になる。
【0016】
本発明の1つの実施形態では、コントローラはさらに、サンプルホルダがサンプルステージに収容される場合、顕微鏡を制御して、サンプルホルダの少なくとも1つの幾何学的パラメータについての情報を特定し、サンプルホルダの少なくとも1つの幾何学的パラメータについての情報を受け取るように構成されている。コントローラはさらに、サンプルホルダの少なくとも1つの幾何学的パラメータについての情報に基づいて、非充足判定基準が満たされているか否かを特定するように構成されている。これにより、ユーザーへの情報の自動的な提示が可能になる。
【0017】
本発明の1つの実施形態では、サンプルホルダは、複数のウェルを有するマルチウェルプレートであるか、またはこれを有し、サンプルホルダがサンプルステージに収容される場合、複数のウェルは、少なくとも1つの横方向に分散される。サンプルホルダの少なくとも1つの幾何学的パラメータは、マルチウェルプレートのスカート高さと、撮像光学系からのマルチウェルプレートの底板(または底面)の間隔と、の少なくとも1つを有する。これにより、第1のモードまたは第2のモードのどちらを使用できるかを自動的に特定可能である。
【0018】
本発明の1つの実施形態では、コントローラはさらに、第1のモードと第2のモードとの1つの選択についてのユーザー入力データを受信するように構成されている。コントローラはさらに、第1のモードを選択すると同時に、ヒューマンマシンインタフェースのディスプレイを制御して、サンプルホルダおよび第1の横方向範囲を視覚化し、第2のモードを選択すると同時に、ヒューマンマシンインタフェースのディスプレイを制御して、サンプルホルダおよび第2の横方向範囲を視覚化するように構成されている。これにより、それぞれのモードにおいてサンプルホルダのどの領域をユーザーが撮像できるかをユーザーに見えるように視覚化することができる。
【0019】
この態様はまた、第1のモードおよび第2のモードにおいて顕微鏡を実際に制御することなく、別の実施形態として使用可能であることに注意されたい。対物レンズを横方向にどこに移動できるかについての関連情報がユーザーに提示されるため、ユーザーは、それぞれの範囲を逸脱しないように自身で気をつけることができる。したがって、損傷を回避するという課題も解決される。
【0020】
本発明の1つの実施形態では、コントローラはさらに、第3モードにおいて顕微鏡を制御するように構成され、第3モードでは、横方向移動中、少なくとも2つの異なる対物レンズの第1の対物レンズについて横方向位置が、少なくとも1つの横方向において第1の横方向範囲に制限される。さらに、横方向移動中、2つの異なる対物レンズの第2の対物レンズについて横方向位置が、少なくとも1つの横方向において、少なくとも第2の横方向範囲内にあることが可能である(またはそれどころかこれに制限され得ることも可能である)。さらに、垂直方向移動中、少なくとも2つの異なる対物レンズの第2の対物レンズについて垂直方向位置が、あらかじめ定めた垂直方向範囲に制限される。この第3モードにより、対物レンズに対して異なる範囲が使用され、これにより、それぞれの対物レンズの合焦が可能になる。
【0021】
本発明の1つの実施形態では、顕微鏡は、対物レンズタレットを有し、少なくとも2つの異なる対物レンズは、互いに固定された位置で対物レンズタレットに配置されている。この結果、1つの対物レンズにより、別の1つの対物レンズの横方向移動が制限される可能性がある。したがって、提案される制限は特に有利である。
【0022】
本発明の1つの実施形態では、コントローラはさらに、顕微鏡を制御して、少なくとも2つの異なる対物レンズのそれぞれについて横方向移動を行わせ、顕微鏡を制御して、少なくとも2つの異なる対物レンズのそれぞれについて垂直方向移動を行わせるように構成されている。これにより、制限された横方向移動を容易に実装することが可能である。
【0023】
本発明の別の1つの実施形態は、顕微鏡と、本明細書で記載したいずれかの1つの実施形態のコントローラと、を有する顕微鏡システムに関する。顕微鏡は、サンプルステージおよび撮像光学系を有し、サンプルステージは、サンプルホルダを収容するように構成されており、撮像光学系は、少なくとも2つの異なる対物レンズを有する。顕微鏡は、サンプルホルダがサンプルステージに収容される場合、サンプルホルダの少なくとも一部を撮像するために、少なくとも2つの異なる対物レンズのそれぞれを選択できるように構成されており、顕微鏡は、サンプルホルダがサンプルステージに収容される場合、少なくとも2つの異なる対物レンズのそれぞれについて、サンプルホルダに対して少なくとも1つの横方向において横方向移動が可能になるように構成されている。さらに、顕微鏡は、サンプルホルダがサンプルステージに収容される場合、少なくとも2つの異なる対物レンズのそれぞれについて、サンプルホルダに対して垂直方向に垂直方向移動が可能になるように構成されている。1つの実施形態では、顕微鏡システムはさらに、ヒューマンマシンインタフェースを有する。
【0024】
本発明の別の実施形態は、顕微鏡を制御する方法に関する。顕微鏡は、サンプルステージおよび撮像光学系を有し、サンプルステージは、サンプルホルダを収容するように構成されており、撮像光学系は、少なくとも2つの異なる対物レンズを有する。顕微鏡は、サンプルホルダがサンプルステージに収容される場合、サンプルホルダの少なくとも一部を撮像するために、少なくとも2つの異なる対物レンズのそれぞれを選択できるように構成されており、顕微鏡は、サンプルホルダがサンプルステージに収容される場合、少なくとも2つの異なる対物レンズのそれぞれについて、サンプルホルダに対して少なくとも1つの横方向において横方向移動が可能になるように構成されている。さらに、顕微鏡は、サンプルホルダがサンプルステージに収容される場合、少なくとも2つの異なる対物レンズのそれぞれについて、サンプルホルダに対して垂直方向に垂直方向移動が可能になるように構成されている。
【0025】
本方法は、次のステップ、すなわち、第1のモードを選択すると同時に、第1のモードにおいて顕微鏡を制御するステップであって、第1のモードでは、横方向移動中、少なくとも2つの異なる対物レンズのすべてについて横方向位置が、少なくとも1つの横方向において第1の横方向範囲に制限されるステップと、第2のモードを選択すると同時に、第2のモードにおいて顕微鏡を制御するステップであって、第2のモードでは、横方向移動中、2つの異なる対物レンズについての位置が、少なくとも1つの横方向において、少なくとも第2の横方向範囲内にあることが可能であり、第2の横方向範囲は、第1の横方向範囲とは異なる、ステップと、を有する。第2のモードではさらに、垂直方向移動中、少なくとも2つの異なる対物レンズのすべてについて垂直方向位置が、あらかじめ定めた垂直方向範囲に制限される。
【0026】
本顕微鏡システムおよび本方法の別の実施形態および利点については、コントローラについての上述の説明を参照されたい。この説明は、ここでも相応に適用される。
【0027】
本発明の別の1つの実施形態は、コンピュータプログラムがプロセッサ上で動作する場合、上述の1つまたは複数の方法を実施するためのプログラムコードを備えたコンピュータプログラムに関する。
【0028】
本発明の別の利点および実施形態は、説明および添付の図面から明らかになろう。
【0029】
前述の特徴および以下でさらに説明される特徴は、本発明の範囲から逸脱することなく、それぞれ示した組み合わせだけでなく、別の組み合わせにおいて、または単独でも使用可能であることに注意されたい。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【
図1】本発明の1つの実施形態による顕微鏡システムを略示する図である。
【
図2a】本発明の1つの実施形態を説明するためにサンプルホルダを略示する図である。
【
図2b】本発明の別の1つの実施形態を説明するためにサンプルホルダを略示する別の図である。
【
図3a】本発明の1つの実施形態を説明するためにディスプレイを略示する図である。
【
図3b】本発明の別の1つの実施形態を説明するためにディスプレイを略示する別の図である。
【
図4】本発明の1つの実施形態による方法を略示するフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
図1には、本発明の1つの実施形態による顕微鏡システム100が略示されている。顕微鏡システム100は、顕微鏡110と、顕微鏡用コントローラ(またはコンピュータシステム)150と、ヒューマンマシンインタフェース140と、を有する。1つの実施形態では、ヒューマンマシンインタフェース140は、ディスプレイ142、キーボード144およびコンピュータマウス146を有する。別の種類のヒューマンマシンインタフェース、例えば、タッチディスプレイを使用できることに注意されたい。また、ヒューマンマシンインタフェースまたはその一部は、例えば、顕微鏡110に組み込み可能である。
【0032】
顕微鏡110は、サンプルステージ112および撮像光学系120を有する。サンプルステージ112は、サンプルホルダ130を収容するように構成されており、撮像光学系120は、1つの実施形態において、2つの異なる対物レンズ122,124を有する。さらに、撮像光学系120は、対物レンズタレット126を有することができ、対物レンズ122,124は、互いに固定された位置で対物レンズタレットに配置可能である。撮像光学系120は、3つ以上の異なる対物レンズを有することができることに注意されたい。
【0033】
さらに、撮像光学系は、撮像センサ128を有することができ、この撮像センサ128は、対物レンズ122,124のうちの1つを介して、サンプルホルダ130上のサンプルから画像を取得するように構成されている。さらに、顕微鏡110は、サンプルホルダ130上またはサンプルホルダ130内の1つまたは複数のサンプルを照明するように構成された照明源または照明光学系114を有していてよい。
【0034】
顕微鏡110はさらに、サンプルホルダ130がサンプルステージ112に収容される場合、サンプルホルダ130の少なくとも一部を撮像するために、2つの異なる対物レンズ122,124のそれぞれを選択できるように構成されている。
図1に示した状況では、対物レンズ122が選択されている。したがって、対物レンズ122が撮像ビーム内に配置されている。選択と同時に、対物レンズ124を撮像ビーム内に配置することができる。これを達成するために、波形矢印によって示されているように、例えば対物レンズタレット126を回転させることができる。
【0035】
顕微鏡110はさらに、サンプルホルダ130がサンプルステージ112に収容される場合、少なくとも2つの異なる対物レンズ122,124のそれぞれについて、サンプルホルダ130に対して少なくとも1つの横方向に横方向移動が可能になるように構成されている。
図1に示した実施例では、サンプルステージ112は、x方向における横方向移動112xと、y方向における横方向移動112yと、を行うことができ、すなわち、顕微鏡110は、2つの異なる対物レンズ122,124のそれぞれについて、サンプルホルダ130に対して2つの横方向における横方向移動が可能になるように構成されている。
【0036】
顕微鏡110はさらに、サンプルホルダ130がサンプルステージ112に収容される場合、少なくとも2つの異なる対物レンズ122,124のそれぞれについて、サンプルホルダ130に対して垂直方向に垂直方向移動が可能になるように構成されている。
図1に示した実施例では、対物レンズタレット126は、2つの対物レンズ122,124と共に、z方向における垂直方向移動120zを行うことが可能であり、すなわち、顕微鏡110は、2つの異なる対物レンズ122,124のそれぞれについて、サンプルホルダ130に対して垂直方向に垂直方向移動が可能になるように構成されている。
【0037】
どのコンポーネントが固定され得るか、またどのコンポーネントが可動であるかとは関係なく、サンプルステージと対物レンズとの間の横方向および垂直方向における相対移動が重要であることに注意されたい。それにもかかわらず、
図1に示した実施例は、これを実装するための典型的な仕方である。
【0038】
2つの横方向x、yおよび垂直方向zは、典型的なデカルト座標系によって示され、またデカルト座標系と、また(顕微鏡が立つ、例えば机によって定義される平面における)どの横方向およびどの垂直方向(顕微鏡が立つ平面に対して垂直方向においてどこで合焦が行われるか)の典型的な定義と、にしたがって使用されることに注意されたい。しかしながら、異なる方向が互いに異なるのであれば、方向を定義する別の仕方も可能であろう。
【0039】
コントローラ150は、顕微鏡110を制御するために使用可能であり、また例えば、ヒューマンマシンインタフェース140を制御するために、すなわち、ディスプレイ142を制御して、例えば情報を視覚化または表示するために使用可能である。また、コントローラ150は、ヒューマンマシンインタフェース140、例えば、キーボード144およびコンピュータマウス146から制御信号を受信することができ、次にこのことにより、コントローラ150は顕微鏡110を制御することができる。
【0040】
コントローラ150はさらに、第1のモードにおいて顕微鏡110を制御するように構成されている。第1のモードでは、横方向移動112x、112y中、異なる対物レンズ122,124のすべてについて横方向位置が、少なくとも1つの横方向において第1の横方向範囲に制限される。
【0041】
コントローラ150はさらに、第2のモードにおいて顕微鏡110を制御するように構成されている。第2のモードでは、横方向移動112x、112y中、異なる対物レンズ122,124のすべてについて位置が、少なくとも1つの横方向において、少なくとも第2の横方向範囲にあることが可能である。第2の横方向範囲は、第1の横方向範囲とは異なる。第2のモードではさらに、垂直方向移動中、異なる対物レンズ122,124のすべてについて垂直方向位置が、あらかじめ定めた垂直方向範囲に制限される。
【0042】
図2a、
図2bについて、2つのモード、すなわち第1のモードおよび第2のモードをより詳細に説明する。
【0043】
図2aには、本発明の実施形態を説明するためにサンプルホルダ230が略示されている。サンプルホルダ230は、例として、96個のウェル232を有するマルチウェルプレートである。それぞれのウェル232は、内部にサンプルを配置するために使用可能である。サンプルホルダ230は、例えば、
図1のサンプルホルダ130として使用可能である。
【0044】
図2aの上部には、横方向xおよびyに沿って延在する96個のウェル232を示す、サンプルホルダ230の平面図が示されている。ウェルの個数は異なっていてもよいが、96個は(とりわけ)標準マルチウェルプレートのウェルの個数であることに注意されたい。標準マルチウェルプレートについての別の個数は、例えば6、12、24、48、384または1536個である。
【0045】
図2aの下部には、サンプルホルダ230の側面図が示されており、この側面図には、ウェルがx方向において断面で、また垂直方向、すなわちz方向においてその高さが示されている。さらに、2つの対物レンズ222,224を有する撮像光学系220またはその一部が、サンプルホルダ230の下方に示されている。撮像光学系220およびその対物レンズは、
図1の撮像光学系120およびその対物レンズに対応していてよい。
図1とは異なり、対物レンズ222,224は、異なる形状を有するように示されている。一般に、顕微鏡における異なる対物レンズが、異なる倍率を可能にするために使用される。より倍率の高い対物レンズは一般に、より倍率の低い対物レンズとは異なる形状を有する。しかしながら、別の理由によって結果的に、異なる対物レンズの形状が異なることもある。
【0046】
図2aの下部にはさらに、マルチウェルプレートであるサンプルホルダ230の左下側および右下側に、マルチウェルプレート230のスカート231が示されている。このようなスカート231は典型的には、マルチウェルプレートをその周縁部において取り囲んでいる。このようなスカート231によって、顕微鏡のサンプルステージ上にマルチウェルプレートを配置することができ、サンプルステージは一般に、開口部を有しており、マルチウェルプレートは、そのスカートにより、サンプルステージの支持縁部またはこれに類するものに配置されることに注意されたい。
【0047】
図2bの下部から見て取れるように、内側のウェルの近くでは、マルチウェルプレート230の下面または底板233のすぐ近くまで対物レンズ222を移動させることができる。最も外側のウェルでは、スカート231のために、このように底板233の近くまで対物レンズ222を移動させることはできない。対物レンズ222の幾何学形状により、対物レンズ222をこのように接近させることが妨げられる。むしろ、このことは結果として対物レンズ222が、サンプルホルダ230と衝突してしまうことになり、さらには損傷につながってしまう可能性がある。
【0048】
第1のモードでは、横方向移動中、異なる対物レンズ222,224のすべてについて横方向位置が、x方向における234.1とy方向における236.1との第1の横方向範囲に制限されている。この第1の横方向範囲は、
図2aの上部では矩形として示されている。矩形、すなわち第1の横方向範囲は、最も外側のウェルを除いたすべてのウェルを含む範囲である。換言すると、96個のウェルのうち60個が第1の横方向範囲内にある。x方向の第1の横方向範囲234.1は、
図2aの下部にも示されている。
【0049】
横方向移動のこの制限に起因して、合焦によって結果的に衝突が生じてしまい得るところまでマルチウェルプレート230の周縁部に向かって対物レンズ222を移動させることはできない。垂直方向の動きは、例えば、制限されていないが、少なくとも、拡張されたあらかじめ定めた垂直方向範囲238.1内では可能である。例えば、この拡張されたあらかじめ定めた垂直方向範囲238.1により、ほぼ底板233まで対物レンズ222を移動させることができる。
【0050】
図2aの下部から見て取れるように、別の対物レンズ224が選択されて対物レンズ222に代わる場合、この対物レンズ224は、場合によっては、衝突することなく最も外側のウェルに合焦するために底板223の近くに移動可能である。しかしながら、この対物レンズについても横方向移動は制限されている。この結果、ユーザーは、どの対物レンズをどこで使用できるかに注意する必要がない。
【0051】
横方向移動が制限されなければ衝突してしまう可能性がある対物レンズ222およびスカート231の形状は、単なる例示のための一例であることに注意されたい。別の幾何学的特徴が影響することがある。例えば、スカート231以外のサンプルホルダの別の部分が影響することがある。また、別の対物レンズが影響することがあり、例えば、外側から3番目のウェルの近くで、底板233のすぐ近くまで対物レンズ222を移動させると、対物レンズ224がスカートに衝突する可能性がある。この場合、第1の横方向範囲を適合させなければならないことになる。
【0052】
したがって、第1の横方向範囲234.1,236.1は、矩形として示されているが、この第1の横方向範囲234.1,236.1は、バルキー形状のような別の形状であってもよい。例えば、このような矩形のコーナーは丸みまたはこれに類するものを帯びていてよい。それにもかかわらず、矩形の第1の横方向範囲を使用することも可能であり、しかしながらこのような場合には、第1の横方向範囲はより小さくなる(例えば、バルキー形状にはめ合わされる矩形)。
【0053】
第1の横方向範囲234.1,236.1が、衝突することなくすべての対物レンズが合焦可能な点を有する領域を示しているかまたは取り囲んでいることにさらに注意されたい。したがって、コントローラによって保証されるのは、対物レンズとサンプルステージとの間には、横方向の相対移動であって、第1の横方向範囲234.1,236.1から逸脱し得るいかなる相対移動も引き起こされないことである。例えばコントローラは、第1の横方向範囲234.1,236.1に到達したときに、横方向移動を停止させることができる。さらに、第1の横方向範囲234.1,236.1は、すべてのウェルを包含するような範囲だけである必要はないことに注意されたい。また、ウェルの一部が含まれてもよい。
【0054】
マルチウェルプレート以外のサンプルホルダの場合、第1の横方向範囲234.1,236.1により、すべての対物レンズが合焦可能な点を有する領域が定められる。
【0055】
図2bには、
図2aのサンプルホルダ230が、
図2aおよび
図2bの上部および下部の両方について略示されている。また、対物レンズ222,224を備えた撮像光学系220が示されている。
【0056】
第2のモードでは、横方向移動中、異なる対物レンズ222,224のすべてについて横方向位置は少なくとも、x方向における第2の横方向範囲234.2およびy方向における第2の横方向範囲236.2内で可能になる。横方向移動は、第2の横方向範囲にも制限することができる。
【0057】
この第2の横方向範囲は、
図2bの上部において矩形として示されている。矩形、すなわち第2の横方向範囲は、すべてのウェルを含む範囲である。換言すると、96個のすべてのウェルが第2の横方向範囲内にある。x方向における第2の横方向範囲234.2も、
図2bの下部に示されている。
【0058】
第2のモードではさらに、垂直方向移動中、異なる対物レンズ222,224のすべてについて垂直方向位置が、あらかじめ定めた垂直方向範囲238.2に制限される。あらかじめ定めた垂直方向範囲は、
図2aに示した拡張されたあらかじめ定めた垂直方向範囲238.1よりも小さい。このことが意味するのは、対物レンズ222,224は、第1のモードのように底板233の近くまで移動できないことである。しかしながら、このことは、対物レンズが、スカート231と衝突してしまういかなるリスクもなく、最も外側のウェルの区域に容易に移動できることをも意味する。
【0059】
対物レンズ222,224が、第1のモードのように底板233の近くまで移動できないという事実は、対物レンズが合焦できないということを意味しないことに注意されたい。一部の対物レンズは、ウェル内のサンプルのより高い部分に(すなわち、z方向のより高い部分に)なお合焦できるが、より低い部分には合焦できない可能性が高い。このことは、特定のタスクには十分であり得る。
【0060】
あらかじめ定めた垂直方向範囲238.1は、すべての対物レンズと、マルチウェルプレートのような1つまたは2つ以上の異なるサンプルホルダすべてと、について衝突が防止されるように、選択または定めることができることに注意されたい。1つの実施形態では、あらかじめ定めた垂直方向範囲238.1はまた、使用される実際のサンプルホルダと、スカート高さのようなその幾何学的パラメータと、に依存して選択可能である。
【0061】
図3aおよび
図3bにはそれぞれ、本発明の別の実施形態を説明するためのディスプレイ342が示されている。ディスプレイ342は、例えば、
図1のディスプレイ142または別のヒューマンマシンインタフェースの一部であってよい。例として、3つのソフトウェアボタン350,352,354が、
図3aおよび
図3bのそれぞれにおいて、ディスプレイ342に描画されている。これらのソフトウェアボタンにより、異なるモードが選択可能である。例えば、ソフトウェアボタン350により、(例えばこの上をクリックすることによって)第1のモードの選択が可能であり、ソフトウェアボタン352により、(例えばこの上をクリックすることによって)第2のモードの選択が可能であり、ソフトウェアボタン354により、(例えばこの上をクリックすることによって)第3モードが選択可能である。ソフトウェアボタン以外の任意の別の選択手段または切換え手段が使用可能であることに注意されたい。
【0062】
第1のモードおよび第2のモードは、
図2a、
図2bについて説明したモードに対応する。第3モードでは、横方向移動中、異なる対物レンズの第1の対物レンズ、例えば
図2a、
図2bの対物レンズ222について横方向位置が、横方向xおよびyにおいて第1の横方向範囲234.1,236.1に制限される。横方向移動中、異なる対物レンズの第2の対物レンズ、例えば
図2a、
図2bの対物レンズ224について横方向位置が、横方向xおよびyにおいて少なくとも第2の横方向範囲内にあることが可能であるか(またはそれどころかこれに制限される)。垂直方向移動中、異なる対物レンズの第2の対物レンズについて垂直方向位置が、あらかじめ定めた垂直方向範囲238.2に制限される。このモードでは、範囲は、対物レンズに対して個別に選択される。
【0063】
1つの実施形態では、コントローラ150は、第1のモードおよび第2のモードの1つの選択についてのユーザー入力データを受信するように構成されている。これは、例えば、ソフトウェアボタン350または352の1つの選択を介するケースであってよい。コントローラ150はさらに、第1のモードを選択すると同時に、ヒューマンマシンインタフェースのディスプレイ342のようなディスプレイを制御して、サンプルホルダおよび第1の横方向範囲を視覚化するように構成されている。この状況は
図3aに示されており、ここでは、第1のモードについてのソフトウェアボタン350が強調表示されており(これが選択されている)、またサンプルホルダおよび第1範囲を有する画像360.1がディスプレイ342に表示されている(これは、
図2aの上部に示されている状況に対応する)。
【0064】
コントローラ150はさらに、第2のモードを選択すると同時に、ヒューマンマシンインタフェースのディスプレイを制御して、サンプルホルダおよび第2の横方向範囲を視覚化するように構成されている。この状況は
図3bに示されており、ここでは、第2のモードについてのソフトウェアボタン352が強調表示されており(これが選択されている)、またサンプルホルダおよび第2の範囲を有する画像360.2が、ディスプレイ342に表示されている(これは、
図2bの上部に示されている状況に対応する)。
【0065】
このようにして、顕微鏡のユーザーには、目下選択されているモードにおいて、対物レンズによって可能な範囲について容易に知らせることができる。
【0066】
1つの実施形態では、コントローラ150は、充足判定基準が満たされているか否かについての情報を受け取るかまたは充足判定基準が満たされているか否かを特定するように構成されており、この充足判定基準に含まれるのは、サンプルホルダがサンプルステージに収容される場合、少なくとも2つの対物レンズのすべてについて、第2の範囲内のサンプルホルダのすべての点に合焦するために、あらかじめ定めた垂直方向範囲238.2が十分であることである。このことは、
図2bに示した状況では、すべての対物レンズが、すべてのウェルまたはこのウェル内のサンプルに合焦できるケースが起こり得ることを意味し得る。これは、特定のケースにおいて、対物レンズおよび/またはサンプルホルダの幾何学的パラメータが異なるケースに該当し得る。例えば、低いスカート高さを有する特定のマルチウェルプレートが使用可能である。
【0067】
(
図2aまたは
図3aに示したように、横方向範囲が制限されている)第1のモードの場合かつ充足判定基準が満たされている場合、コントローラ150は、
図1または
図3a、
図3bに示したようなヒューマンマシンインタフェースを制御して、少なくとも2つの対物レンズすべてについて満たされている充足判定基準についての情報をユーザーに提示するように構成されている。例えば、第2のモードがより適切な横方向範囲を有し、垂直方向移動が制限されているにもかかわらず、すべての対物レンズによってあらゆる箇所に合焦するために十分であるため、第2のモードが選択されてもよいという、
図3aに示されているようなメッセージ356.1がディスプレイ342に表示されてよい。
【0068】
択一的または付加的には、コントローラは、第1のモードの場合かつ充足判定基準が満たされている場合、第2のモードにおいて顕微鏡を制御するように、すなわち第1のモードから第2のモードに自動的に切り換わるように構成されている。
【0069】
1つの実施形態では、コントローラ150は、サンプルホルダ230がサンプルステージに収容される場合、顕微鏡を制御して、サンプルホルダ230の少なくとも1つの幾何学的パラメータについての情報を特定するように構成されている。このような幾何学的パラメータは、スカートの高さh(いわゆるスカート高さ)、または撮像光学系220またはその一部からの底板233の間隔dであってよい。両方の幾何学的パラメータは、
図2a、
図2bに例示的に示されている。コントローラ150はさらに、サンプルホルダの少なくとも1つの幾何学的パラメータについての情報を受け取り、サンプルホルダの少なくとも1つの幾何学的パラメータについての情報に基づいて、充足判定基準が満たされているか否かを特定するように構成されている。
【0070】
1つの実施形態では、間隔dは、例えば、オートフォーカシング特徴またはオートフォーカス機能によって特定可能である。目下使用している対物レンズは、例えば、間隔dを特定することを目的として底板233に自動的に合焦するために使用可能である。間隔dは、撮像光学系の、または撮像光学系における既知の基準点に対して特定可能であることに注意されたい。間隔dから、顕微鏡、特にサンプルステージの別の幾何学的パラメータが既知になることにより、スカート高さも導出可能である。このようにして、第1のモードから第2のモードへの切換えのために提示される(または表示される)情報がトリガ可能である。
【0071】
1つの実施形態では、コントローラ150はさらに、非充足判定基準が満たされているか否かについての情報を受け取るか、または非充足判定基準が満たされているか否かを特定するように構成されており、この非充足判定基準に含まれるのは、サンプルホルダがサンプルステージに収容される場合、少なくとも2つの対物レンズの少なくとも1つについて、第2の範囲内でサンプルホルダのすべての点に合焦するためには、あらかじめ定めた垂直方向範囲238.2が十分ではないことである。このことは、
図2bに示した状況では、対物レンズ222だけが、すべてのウェルまたはこれらのウェル内のサンプルに合焦できないかまたはあまり遠くから合焦できないケースが起こり得ることを意味し得る。
【0072】
(
図2bまたは
図3bに示したような)第2のモードの場合かつ非充足判定基準が満たされている場合、コントローラ150は、
図1または
図3a、
図3bに示したようなヒューマンマシンインタフェースを制御して、非充足判定基準が満たされている少なくとも1つの対物レンズについての情報をユーザーに提示するように構成されている。例えば、どの対物レンズが範囲制限から影響を受けているかについてユーザーに知らせるメッセージ356.2がディスプレイ342に表示され得る。
図2aおよび
図2bの場合、これは、例えば、対物レンズ222であってよい。したがって、ユーザーは、必要および使用する対物レンズに依存して、第2のモードに留まるかまたは第1のモードに切り換えるかを決定することができる。
【0073】
図4には、本発明の実施形態による方法がフロー図で略示されている。本方法は、顕微鏡を制御するためのものであり、顕微鏡は、サンプルステージおよび撮像光学系を有し、サンプルステージは、サンプルホルダを収容するように構成されており、撮像光学系は、少なくとも2つの異なる対物レンズを有する。顕微鏡はさらに、サンプルホルダがサンプルステージに収容される場合、サンプルホルダの少なくとも1つの部分を撮像するために、少なくとも2つの異なる対物レンズのそれぞれを選択できるように構成されている。顕微鏡はさらに、サンプルホルダがサンプルステージに収容される場合、少なくとも2つの異なる対物レンズのそれぞれについて、サンプルホルダに対して少なくとも1つの横方向に横方向移動が可能になるように構成されている。さらに、顕微鏡は、サンプルホルダがサンプルステージに収容される場合、少なくとも2つの異なる対物レンズのそれぞれについて、サンプルホルダに対して垂直方向に垂直方向移動が可能になるように構成されている。1つの実施形態では、顕微鏡は、上述のような
図1の顕微鏡110であってよい。
【0074】
本方法は、次のステップを有する。すなわち、ステップ400では、第1のモード410および第2のモード420の1つの選択についてのユーザー入力402を受け取る。これは、例えば、
図3a、
図3bについて説明した。さらに、ステップ412では、第1のモード410を選択すると同時に、第1のモードにおいて顕微鏡を制御する。第1のモードでは、横方向移動中、2つの異なる対物レンズのすべてについて横方向位置が、少なくとも1つの横方向において第1の横方向範囲に制限される。
【0075】
1つの実施形態では、ステップ414において、第1のモード410を選択すると同時に、ヒューマンマシンインタフェースのディスプレイを制御して、サンプルホルダおよび第1の横方向範囲を視覚化する。これについては
図3aについて説明した。
【0076】
さらに、ステップ422では、第2のモード420を選択すると同時に、第2のモードにおいて顕微鏡を制御する。第2のモードでは、横方向移動中、少なくとも2つの異なる対物レンズについての位置が、少なくとも1つの横方向において、少なくとも第2の横方向範囲内にあることが可能であり、第2の横方向範囲は、第1の横方向範囲とは異なり、垂直方向移動中、少なくとも2つの異なる対物レンズのすべてについて垂直方向位置が、あらかじめ定めた垂直方向範囲に制限される。
【0077】
1つの実施形態では、ステップ424において、第2のモード420を選択すると同時に、ヒューマンマシンインタフェースのディスプレイを制御して、サンプルホルダおよび第2の横方向範囲を視覚化する。これについては
図3bについて説明した。
【0078】
本方法の別のステップまたは別の実施形態は、上述のコントローラおよび顕微鏡システムについて説明した実施形態に対応する。
【0079】
本明細書で使用されるように、用語「および/または(かつ/または)」は、関連する記載項目のうちの1つまたは複数の項目のあらゆるすべての組み合わせを含んでおり、「/」として略記されることがある。
【0080】
いくつかの態様を装置の文脈において説明してきたが、これらの態様が、対応する方法の説明も表していることが明らかであり、ここではブロックまたは装置がステップまたはステップの特徴に対応している。同様に、ステップの文脈において説明された態様は、対応する装置の対応するブロックまたは項目または特徴の説明も表している。
【0081】
いくつかの実施形態は、
図1から
図4のうちの1つまたは複数の図に関連して説明されたようなシステムを含んでいる顕微鏡に関する。択一的に、顕微鏡は、
図1から
図4のうちの1つまたは複数の図に関連して説明されたようなシステムの一部であってもよい、または
図1から
図4のうちの1つまたは複数の図に関連して説明されたようなシステムに接続されていてもよい。
図1は本明細書に記載された方法を実施するように構成されたシステムまたは顕微鏡システム100の概略図を示している。システム100は、顕微鏡110とコンピュータシステムまたはコントローラ150とを含んでいる。顕微鏡110は、撮像するように構成されており、かつコンピュータシステム150に接続されている。コンピュータシステム150は、本明細書に記載された方法の少なくとも一部を実施するように構成されている。コンピュータシステム150は、機械学習アルゴリズムを実行するように構成されていてもよい。コンピュータシステム150と顕微鏡110は別個の存在物であってもよいが、1つの共通のハウジング内に一体化されていてもよい。コンピュータシステム150は、顕微鏡110の中央処理システムの一部であってもよく、かつ/またはコンピュータシステム150は、顕微鏡110のセンサ、アクター、カメラまたは照明ユニット等の、顕微鏡110の従属部品の一部であってもよい。
【0082】
コンピュータシステム150は、1つまたは複数のプロセッサおよび1つまたは複数のストレージデバイスを備えるローカルコンピュータデバイス(例えば、パーソナルコンピュータ、ラップトップ、タブレットコンピュータまたは携帯電話)であってもよく、または分散コンピュータシステム(例えば、ローカルクライアントおよび/または1つまたは複数のリモートサーバファームおよび/またはデータセンター等の様々な場所に分散されている1つまたは複数のプロセッサおよび1つまたは複数のストレージデバイスを備えるクラウドコンピューティングシステム)であってもよい。コンピュータシステム150は、任意の回路または回路の組み合わせを含んでいてもよい。1つの実施形態では、コンピュータシステム150は、任意の種類のものとすることができる、1つまたは複数のプロセッサを含んでいてもよい。本明細書で使用されるように、プロセッサは、例えば、顕微鏡または顕微鏡部品(例えばカメラ)のマイクロプロセッサ、マイクロコントローラ、複合命令セットコンピューティング(CISC)マイクロプロセッサ、縮小命令セットコンピューティング(RISC)マイクロプロセッサ、超長命令語(VLIW)マイクロプロセッサ、グラフィックプロセッサ、デジタル信号プロセッサ(DSP)、マルチコアプロセッサ、フィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)または任意の他の種類のプロセッサまたは処理回路等のあらゆる種類の計算回路を意図していてもよいが、これらに限定されない。コンピュータシステム150に含まれ得る他の種類の回路は、カスタム回路、特定用途向け集積回路(ASIC)等であってもよく、例えばこれは、携帯電話、タブレットコンピュータ、ラップトップコンピュータ、双方向無線機および類似の電子システム等の無線装置において使用される1つまたは複数の回路(通信回路等)等である。コンピュータシステム150は、ランダムアクセスメモリ(RAM)の形態のメインメモリ等の特定の用途に適した1つまたは複数の記憶素子を含み得る1つまたは複数のストレージデバイス、1つまたは複数のハードドライブおよび/またはコンパクトディスク(CD)、フラッシュメモリカード、デジタルビデオディスク(DVD)等のリムーバブルメディアを扱う1つまたは複数のドライブ等を含んでいてもよい。コンピュータシステム150はディスプレイ装置、1つまたは複数のスピーカーおよびキーボードおよび/またはマウス、トラックボール、タッチスクリーン、音声認識装置を含み得るコントローラ、またはシステムのユーザーがコンピュータシステム150に情報を入力すること、およびコンピュータシステム150から情報を受け取ることを可能にする任意の他の装置も含んでいてもよい。
【0083】
ステップの一部または全部は、例えば、プロセッサ、マイクロプロセッサ、プログラマブルコンピュータまたは電子回路等のハードウェア装置(またはハードウェア装置を使用すること)によって実行されてもよい。いくつかの実施形態では、極めて重要なステップのいずれか1つまたは複数が、そのような装置によって実行されてもよい。
【0084】
一定の実装要件に応じて、本発明の実施形態は、ハードウェアまたはソフトウェアで実装され得る。この実装は、非一過性の記録媒体によって実行可能であり、非一過性の記録媒体は、各方法を実施するために、プログラマブルコンピュータシステムと協働する(または協働することが可能である)、電子的に読取可能な制御信号が格納されている、デジタル記録媒体等であり、これは例えば、フロッピーディスク、DVD、ブルーレイ、CD、ROM、PROMおよびEPROM、EEPROMまたはFLASHメモリである。したがって、デジタル記録媒体は、コンピュータ読取可能であってもよい。
【0085】
本発明のいくつかの実施形態は、本明細書に記載のいずれかの方法が実施されるように、プログラマブルコンピュータシステムと協働することができる、電子的に読取可能な制御信号を有するデータ担体を含んでいる。
【0086】
一般的に、本発明の実施形態は、プログラムコードを備えるコンピュータプログラム製品として実装可能であり、このプログラムコードは、コンピュータプログラム製品がコンピュータ上で実行されるときにいずれかの方法を実施するように作動する。このプログラムコードは、例えば、機械可読担体に格納されていてもよい。
【0087】
別の実施形態は、機械可読担体に格納されている、本明細書に記載のいずれかの方法を実施するためのコンピュータプログラムを含んでいる。
【0088】
したがって、換言すれば、本発明の実施形態は、コンピュータプログラムがコンピュータ上で実行されるときに本明細書に記載のいずれかの方法を実施するためのプログラムコードを有するコンピュータプログラムである。
【0089】
したがって、本発明の別の実施形態は、プロセッサによって実行されるときに本明細書に記載のいずれかの方法を実施するために、格納されているコンピュータプログラムを含んでいる記録媒体(またはデータ担体またはコンピュータ読取可能な媒体)である。データ担体、デジタル記録媒体または被記録媒体は、典型的に、有形である、かつ/または非一過性である。本発明の別の実施形態は、プロセッサと記録媒体を含んでいる、本明細書に記載されたような装置である。
【0090】
したがって、本発明の別の実施形態は、本明細書に記載のいずれかの方法を実施するためのコンピュータプログラムを表すデータストリームまたは信号シーケンスである。データストリームまたは信号シーケンスは例えば、データ通信接続、例えばインターネットを介して転送されるように構成されていてもよい。
【0091】
別の実施形態は、処理手段、例えば、本明細書に記載のいずれかの方法を実施するように構成または適合されているコンピュータまたはプログラマブルロジックデバイスを含んでいる。
【0092】
別の実施形態は、本明細書に記載のいずれかの方法を実施するために、インストールされたコンピュータプログラムを有しているコンピュータを含んでいる。
【0093】
本発明の別の実施形態は、本明細書に記載のいずれかの方法を実施するためのコンピュータプログラムを(例えば、電子的にまたは光学的に)受信機に転送するように構成されている装置またはシステムを含んでいる。受信機は、例えば、コンピュータ、モバイル機器、記憶装置等であってもよい。装置またはシステムは、例えば、コンピュータプログラムを受信機に転送するために、ファイルサーバを含んでいてもよい。
【0094】
いくつかの実施形態では、プログラマブルロジックデバイス(例えばフィールド・プログラマブル・ゲート・アレイ)が、本明細書に記載された方法の機能の一部または全部を実行するために使用されてもよい。いくつかの実施形態では、フィールド・プログラマブル・ゲート・アレイは、本明細書に記載のいずれかの方法を実施するためにマイクロプロセッサと協働してもよい。一般的に、有利には、任意のハードウェア装置によって方法が実施される。
【符号の説明】
【0095】
100 顕微鏡システム
110 顕微鏡
112 サンプルステージ
112x、112y 横方向移動
114 光源
120 撮像光学系
120z 垂直方向移動
122,124,222,224 対物レンズ
126 対物レンズタレット
130,230 サンプルホルダ
140 ヒューマンマシンインタフェース
142,342 ディスプレイ
144 キーボード
146 コンピュータマウス
150 コントローラ
232 ウェル
231 スカート
233 底板
234.1,236.1 第1の横方向範囲
234.2,236.2 第2の横方向範囲
238.1 拡張されたあらかじめ定めた垂直方向範囲
238.2 あらかじめ定めた垂直方向範囲
350,352,354 ソフトウェアボタン
356.1,356.2 メッセージ
360.1,360.2 画像
400,412,414,422,424 ステップ
402 ユーザー入力データ
410 第1のモード
420 第2のモード
d 間隔
h スカート高さ
x、y、z 方向
【外国語明細書】