(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024096109
(43)【公開日】2024-07-11
(54)【発明の名称】燃料電池を作動させるためのシステム及び方法
(51)【国際特許分類】
H01M 8/04 20160101AFI20240704BHJP
H01M 8/04858 20160101ALI20240704BHJP
H01M 8/04694 20160101ALI20240704BHJP
H01M 8/04313 20160101ALI20240704BHJP
H01M 8/04701 20160101ALI20240704BHJP
H01M 8/04007 20160101ALI20240704BHJP
H01M 8/04223 20160101ALI20240704BHJP
H01M 8/10 20160101ALN20240704BHJP
【FI】
H01M8/04 Z
H01M8/04858
H01M8/04694
H01M8/04313
H01M8/04701
H01M8/04 J
H01M8/04007
H01M8/04223
H01M8/10 101
【審査請求】未請求
【請求項の数】16
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2024000090
(22)【出願日】2024-01-04
(31)【優先権主張番号】63/477,974
(32)【優先日】2022-12-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】500461125
【氏名又は名称】プラグ パワー インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100139594
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 健次郎
(74)【代理人】
【識別番号】100194973
【弁理士】
【氏名又は名称】尾崎 祐朗
(72)【発明者】
【氏名】ジョナサン ローゼン
(72)【発明者】
【氏名】アンドリュー ファリーズ
(72)【発明者】
【氏名】クリスチャン ヘラー
(72)【発明者】
【氏名】ブライアン スピローグ
【テーマコード(参考)】
5H126
5H127
【Fターム(参考)】
5H126BB06
5H127AA06
5H127AB04
5H127AB05
5H127AB29
5H127AC05
5H127BA02
5H127BB02
5H127CC01
5H127DA20
5H127DB99
5H127DC22
5H127DC29
5H127DC43
5H127DC44
5H127DC99
(57)【要約】 (修正有)
【課題】作動中の燃料電池の汚染を最小限にし、かつ非理想的な環境での作動に対してより頑強な、改善された燃料電池システム及び改善された燃料電池作動方法を提供する。
【解決手段】燃料電池を作動させる方法は、燃料電池からバッテリーへの電流の流れを提供するために燃料電池のカソード及びアノードへ酸化体及び燃料を流すステップを含む。燃料電池はバッテリーから切り離され、カソードへの酸化体の流れが停止される。電流は燃料電池から燃料電池に連結された抵抗器を通って流れ、かつ燃料電池の電圧は低下して燃料電池の膜電極アセンブリの膜の触媒表面を清浄化する。カソードへの酸化体の流れが増大せしめられ、かつバッテリーが燃料電池に再接続されてバッテリーに電流が提供される。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃料電池の燃料電池汚染物質を低減する方法であって、
バッテリーに電流の第1の流れを提供するために燃料電池のカソードへ酸化体及びアノードへ燃料を流すステップと;
燃料電池をバッテリーから切り離すステップと;
燃料電池のカソード入口への酸化体の流れを停止するステップと;
燃料電池から燃料電池に連結された抵抗器を通して電流を流すステップと、
燃料電池の膜電極アセンブリの膜の触媒表面を清浄化するために、燃料電池の電圧が所定の電圧未満になるようにするステップと;
カソードへの酸化体の流れを増大させるステップと;
バッテリーに電流の第2の流れを提供するためにバッテリーを燃料電池に再接続するステップと
を含む方法。
【請求項2】
燃料電池を一定期間作動させるステップと;燃料電池をバッテリーから再度切り離すステップとをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
バッテリーの充電状態に基づいて該一定期間を決定するステップをさらに含み、充電状態は10~25%である、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
燃料電池のアンペア時使用量に基づいて該一定期間を決定するステップをさらに含み、アンペア時使用量は10~25アンペア時である、請求項2に記載の方法。
【請求項5】
所定の電圧は0.3Vである、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
バッテリーに電流の第1の流れを提供するために燃料電池のカソードへ酸化体及びアノードへ燃料を流すステップは、1kW未満の電力を生成するための量の酸化体を燃料電池に流すことを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
燃料電池のカソード入口への酸化体の流れを停止するステップは、燃料電池が10~25アンペア時の電荷を放電した時に行われる、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
触媒表面を有する膜を備えた膜電極アセンブリを有する燃料電池と;
燃料電池に酸化体の流れを供給する酸化体供給源と;
燃料電池への酸化体の流れを停止するように構成された制御装置と;
燃料電池に電気的に接続されたバッテリーと;
制御装置は燃料電池からバッテリーを切り離すように構成されることと;
制御装置は、電流が燃料電池から抵抗器を通って流れて燃料電池の電圧が所定の電圧を下回るようにして燃料電池の膜電極アセンブリの膜の触媒表面を清浄化するために、燃料電池に抵抗器を接続するように構成されることと
を含む燃料電池システム。
【請求項9】
制御装置は、燃料電池のアンペア時使用量に基づいて燃料電池への酸化体の流れを停止するように構成されており、アンペア時使用量は10~25アンペア時である、請求項8に記載の燃料電池システム。
【請求項10】
制御装置は、燃料電池の電圧が所定の電圧に到達した時に燃料電池から抵抗器を切り離すように構成されており、所定の電圧は0.3Vである、請求項8に記載の燃料電池システム。
【請求項11】
制御装置は、燃料電池のアンペア時使用量が10~25アンペア時である時に燃料電池に抵抗器を接続するように構成されている、請求項8に記載の燃料電池システム。
【請求項12】
酸化体供給源は、燃料電池からバッテリーを切り離す前に一定期間酸化体の流れを燃料電池に供給していて該一定期間を制御装置が燃料電池のアンペア時使用量に基づいて決定するようになっており、アンペア時使用量は10~25アンペア時である、請求項8に記載の燃料電池システム。
【請求項13】
清浄化は、触媒から汚染物質を脱着すること、及び燃料電池の出口を通って流れる水の中に汚染物質を排出することを含む、請求項8に記載の燃料電池システム。
【請求項14】
制御装置は、制御装置が燃料電池からバッテリーを切り離す前の一定期間の燃料電池への酸化体の流れの供給を制御するように構成されており、制御装置はバッテリーの充電状態に基づいて該一定期間を決定する、請求項8に記載の燃料電池システム。
【請求項15】
抵抗器は、燃料電池を通って流れる冷却剤の温度を制御するように構成された燃料電池の抵抗加熱式冷媒加熱器である、請求項8に記載の燃料電池システム。
【請求項16】
バッテリーは抵抗器よりも高負荷である、請求項8に記載の燃料電池システム。
【発明の詳細な説明】
【関連出願の相互参照】
【0001】
本出願は、米国特許法第119条(e)の下で、"Method for Operating a Fuel Cell"と題する2022年12月30日に出願された米国仮特許出願第63/477,974号に基づく利益及び優先権を主張する。
【技術分野】
【0002】
本発明は、概して燃料電池システムを作動させるためのシステム及び方法に関し、より具体的には燃料電池システムのプロトン交換膜の汚染物質を低減するためのシステム及び方法に関する。
【背景技術】
【0003】
燃料電池は、燃料及び酸化体を電気及び熱へと電気化学的に変換するが、作動中のイオン移動をもたらすために使用される電解質の種類(例えば固体酸化物、溶融炭酸塩、アルカリ、リン酸又は固体高分子)に従って分類することができる。さらに、燃料電池アセンブリは、多数の用途のために数多くの環境(例えば、自動車環境、航空宇宙環境、産業環境、居住環境)において使用することができる。
【0004】
プロトン交換膜(本明細書中では以降「PEM」とする)燃料電池は、水素のような燃料及び空気のような酸化体の化学エネルギーを直接電気エネルギーに変換する。PEMは、燃料電池の「アノード」側から燃料電池の「カソード」側へのプロトン(すなわちH+イオン)の通過を可能にすると同時に反応物流体(例えば水素ガス及び空気ガス)の通過は抑制する、販売(sold)高分子電解質である。膜電極アセンブリ(本明細書中では以降「MEA」とする)は、燃料をPEMのアノード側へ、及び酸化体をカソード側へと方向付けるフローチャネル/流路を各々有している2枚の導電性プレートの間に位置付けられる。
【0005】
2以上の燃料電池を互いに接続してアセンブリの全体的な電力出力を増大させることが可能である。一般的に、電池は直列に接続され、この場合プレートの片側面は1個の電池のアノードプレートとしての役割を果たし、該プレートの反対側は隣接する電池のカソードプレートである。これらは一般にバイポーラプレートと呼ばれる。あるいは、1個の電池のアノードプレートが、隣接する電池の別個のカソードプレートに電気的に接続される。一般にこれら2枚のプレートは背中合わせに接続され、互いに接着される(例えば接着剤、溶接、又はポリマーによって接着される)ことが多い。この接着された対は一体となり、アノードプレート及びカソードプレートが電気的に正極及び負極に相当するので、一般にバイポーラプレートとも呼ばれる。そのような連続して接続された多数の燃料電池は、燃料電池スタックと呼ばれる。スタックは典型的には、燃料及び酸化体をそれぞれアノード及びカソードの流れ場チャネルへと方向付ける手段を備えている。スタックは通常、燃料電池内における水素及び酸素の発熱反応によって生じた熱を吸収するために、冷却剤流体をスタック内の内部チャネルへと方向付ける手段を備えている。スタックは一般的に、生成水のみならず余分な燃料ガス及び酸化体ガスを排出する手段を備えている。
【0006】
スタックはさらに、数ある構成要素の中でも特に、電気を生成するように作られた実働スタックを形成するために一緒に統合される、エンドプレート、絶縁体、膜電極アセンブリ、ガスケット、セパレータプレート、電気的コネクタ及びコレクタプレートも備えている。様々なプレートを、特定の機能の遂行を容易にするために、相互に当接させ、かつ相互に接続させることができる。
【0007】
作動中の燃料電池にはいくつかの汚染源からの汚染が生じる可能性がある。主要な汚染物質供給源のうちの2つは、VOC、イオウ化合物、NOx、金属を含有する可能性のある大気、及び燃料電池構築物自体の内部のアニオンである。別の汚染物質は一酸化炭素である。汚染物質は、燃料電池の所望の電気化学反応を阻害する不純物を含有する場合がある。これらの不純物はその後触媒の表面に堆積物を形成して、活性触媒部位を塞いで触媒層の一部が所望の電気化学的な燃料酸化反応又は酸化体還元反応を誘起するのを妨げる可能性がある。よってこれらの堆積物により燃料電池の電圧出力の低下がもたらされる。
【0008】
したがって、作動中の燃料電池の汚染を最小限にし、かつ非理想的な環境での作動に対してより頑強な、改善された燃料電池システム及び改善された燃料電池作動方法が必要とされている。
【発明の概要】
【0009】
本発明は、第1の態様において、燃料電池からバッテリーへの電流の流れを提供するために酸化体及び燃料を燃料電池のカソード及びアノードへ流すステップと、燃料電池をバッテリーから切り離すステップと、カソードへの酸化体の流れを停止するステップと、燃料電池から燃料電池に連結された抵抗器を通して電流を流すステップと、汚染物質の蓄積物が燃料電池で生成された廃水を通じて排出されるのを可能にすることで燃料電池の膜電極アセンブリの膜の触媒表面を清浄化するために、燃料電池の電圧を低下させるステップとを含む、燃料電池を作動させる方法を提供する。汚染物質が排出された後、該方法はさらに、カソードへの酸化体の流れを増大させるステップ及びバッテリーに再び電流を提供するためにバッテリーを燃料電池に再接続するステップを含む。
【0010】
本発明は、第2の態様において、触媒表面を有する膜を備えた膜電極アセンブリを有する燃料電池と、該燃料電池への酸化体の流れを供給する酸化体供給源と、燃料電池に電気的に接続されたバッテリーと、制御装置とを備えた、燃料電池システムを提供する。制御装置は、燃料電池への酸化体の流れを停止し、燃料電池からバッテリーを切り離し、かつ、電流が燃料電池から抵抗器を通過するように燃料電池に抵抗器を接続して、燃料電池の膜電極アセンブリの膜の触媒表面を清浄化するために燃料電池の電圧を所定の電圧より低くするように、構成される。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】燃料電池システムの1個の燃料電池の一部分を示すアセンブリ分解図。
【0012】
【
図2】本発明による燃料電池システムのブロック図。
【0013】
【
図3】2つのグラフを示す図。左のグラフは高い負荷プロファイルの燃料電池システムがより低いバッテリー充電状態となる傾向があることを示し、右のグラフは低い負荷プロファイルでより高いバッテリー充電状態となる傾向があることを示している。
【0014】
【
図4】
図3のグラフで実証された2つの異なる燃料電池システムの間の電力及び作動時間の差異を示す表。
【0015】
【
図5】高負荷の適用(左)と軽負荷の適用(右)との間でシステム分極曲線に対する電圧サイクルの影響を示す、
図4に記載の2つの異なる負荷プロファイルについての電流と電圧との対比を示す2つのグラフを示す図。
【0016】
【
図6】
図1の燃料電池システムの負荷電力、バッテリー充電状態、燃料電池スタックの電力、及び
図1の燃料電池システムの累積電圧サイクル数を示す、
図1の燃料電池システムの長期運転についての4つのグラフを示す図。
【0017】
【
図7】
図1の燃料電池の電流、
図1の抵抗器が接続されているかどうか、
図1のバッテリーが接続されているかどうか、及び
図1の燃料電池システムの電圧を示す、1回の電圧サイクルの異なる局面を実証する4つのグラフを示す図。
【0018】
【
図8】
図4の高負荷及び軽負荷の燃料電池システムを比較する、ブリードダウン頻度をベースラインのブリードダウン頻度と比較して示すグラフ。
【0019】
【
図9】
図1の燃料電池のバッテリー充電状態及び電荷に応じた電圧サイクリングの頻度を示す表。
【発明の詳細な説明】
【0020】
本発明について、添付図面を参照しながら本発明による様々な例示の実施形態に関して以下に詳細に議論する。以降の詳細な説明において、数多くの具体的詳細が本発明の完全な理解のために示される。しかしながら、本発明がそれらの具体的詳細を伴わずに実行されうることは当業者には明白であろう。他の例では、周知の構造物は本発明を不必要に不明瞭とするのを回避するため詳細には示されない。
【0021】
したがって、以下に記載される実装は全て、当業者が本開示の実施形態を作製又は使用することを可能にするために提供される例示の実装であり、特許請求の範囲によって規定される本開示の範囲を限定するようには意図されていない。本明細書中で使用されるように、「例示の」又は「例証の」という語は、「例、実例、又は例証としての役割を果たしている」ことを意味する。「例示の」又は「例証の」として本明細書中に記載されたいかなる実装も、必ずしも他の実装より好適又は有利であると解釈されるべきではない。さらに、本節の説明において、用語「上方」、「下方」、「左」、「後」、「右」、「前」、「垂直」、「水平」、及びこれらの派生語は、
図1における向きとしての本発明に関するものとする。
【0022】
更に、先述の技術分野、背景、概要、又は以降の詳細な説明において提示されるどのような明示又は黙示の理論によっても拘束される意図は存在しない。また、添付図面において例証され、かつ以降の明細書中に記載される具体的なデバイス及び方法は、添付の特許請求の範囲において規定される本発明の概念の例示の実施形態にすぎないということも理解されるべきである。従って、本明細書中に開示された実施形態に関する具体的な寸法及びその他の物理的特性は、特許請求の範囲に別段の定めが明示されないかぎり、限定とみなされるべきではない。
【0023】
一例において、
図1は、外側端部115にカソードプレートセパレータ110及びその内側にプレートセパレータシール120を備えた、燃料電池スタック(例えば
図2の燃料電池20)の内部サブアセンブリ100の実施例の概略分解組立図を示す。膜電極アセンブリ(MEA)130はシール120と第2のプレートセパレータシール150との間に位置する。アノードプレートセパレータ160はサブアセンブリ100の第2の端部165にある。
【0024】
MEA130は、触媒表面126を有するカソード側触媒層125とアノード側触媒層135との間に膜140(例えばイオン伝導膜)を備えている。カソード側ガス拡散層(GDL)122は、膜電極アセンブリ130のカソード側触媒層125とプレートセパレータ110との間に位置する。アノード側ガス拡散層145は、膜電極アセンブリ130のアノード側触媒層135とアノードプレートセパレータ160との間に位置する。シール120及びシール150は、それぞれプレートセパレータ110及びアノードプレートセパレータ160の内側のチャネルに受承されてもよい。別の例では、そのようなシールは、膜電極アセンブリ(例えば膜電極アセンブリ130)又は別の燃料電池構成要素を囲むように射出成形されてもよい。
【0025】
図2を参照すると、負荷60、例えば産業用電気自動車(例えば電動フォークリフトトラック)、又は任意の他の負荷であって例えば電気デバイス、電球、ラジオ、電気加熱器、抵抗器34、若しくは扇風機などによる電力需要は、電気接続によってエネルギー貯蔵デバイス又はバッテリー30及び燃料電池スタック(例えば燃料電池20)と並列に接続することができる。需要に応じて、電力は、エネルギー貯蔵デバイス若しくはバッテリー30、燃料電池20、又は両方から負荷60へと流れることができる。燃料電池20の最大電気出力を上回る高い需要の時には、電力は、燃料電池20及びエネルギー貯蔵デバイス/バッテリー30の両方から負荷60へと流れることができる。低い需要の時には、電力は燃料電池20から負荷60へ流れる一方で、燃料電池20からの余剰電力は必要であればエネルギー貯蔵デバイス又はバッテリー30を再充電するためにエネルギー貯蔵デバイス又はバッテリー30に流入することができる。回生制動のような電力を供給することができる負荷の場合には、電力がそのような負荷(例えば負荷60)からエネルギー貯蔵デバイス又はバッテリー30へと流れる場合もある。
【0026】
抵抗器34は、燃料電池スタック(例えば燃料電池20)の温度制御を可能にするために燃料電池スタック(例えば燃料電池20)の内部と流体連通している冷却剤を加熱するように構成された冷却剤加熱器(例えば電気抵抗加熱器)であってよい。そのような例では、冷却剤は、燃料電池スタック(例えば燃料電池20)の作動開始時に該スタックを加熱するために加熱される場合がある。制御装置180は、例えば燃料電池との抵抗器の接続を制御することにより、抵抗器34(例えば電気抵抗加熱器)の作動を制御することができる。
【0027】
上記に議論されるように、燃料電池(例えば燃料電池20)には汚染物質が蓄積する可能性がある。汚染物質を低減する1つの方法は、触媒表面(例えば触媒層125のカソード側触媒表面126)を清浄化してコンバータレス燃料電池システム内のわずかな隙間を最大限にすることにより回復可能な電圧減衰を最小限にするin‐situ予防法を用いた電圧サイクリングによるものであってよい。例えば、燃料電池スタック(例えば燃料電池20)の作動中、排気口(すなわちカソード出口又は酸化体出口)を介するか又は直接膜電極アセンブリ130を通してスタックから廃水に含まれた汚染物質を排出することにより触媒表面(例えば触媒表面126)の汚染物質(例えば揮発性有機汚染物質)を低減するために、スタック又はスタックの一部分において電圧を低下させることができる。電圧は、スタックのカソード入口128への酸化体(例えば空気)の流れを低減又は停止することにより(例えばセル1個当たり0.3V未満まで)低減されてもよい。さらに、電圧を低減するために、燃料電池20からの電流が冷却剤加熱器のような抵抗器34に向けられてもよい。燃料電池20はその後、酸化体供給を増大させることにより再活性化させることが可能であり、かつそのような酸化体供給を低減及び増大するステップが実施されて電圧サイクリングが提供されてもよい。
【0028】
記載のような電圧低減の過程は、スタックの汚染物質を許容可能なレベルに維持できるように、電気を生産するためのスタック(例えば燃料電池20)の正規の作動中に周期的に実施することができる。例えば、燃料電池スタック(例えば燃料電池20)の制御装置(例えば制御装置180)が、例えば
図3に示されるように、バッテリー充電状態及び特定期間中のエネルギー使用量によって決まる比率で酸化体の流れを低減又は停止すると同時に電流の流れを抵抗器34(例えば冷却剤加熱器)に向けるということが考えられる。例えば、そのような電圧サイクルの長さは数秒から最大1分までの幅であってよい。
【0029】
そのような電圧サイクリングは負荷のプロファイルに基づいて行うことが考えられる。例えば、より高い負荷プロファイル(例えば運転1013)はより低いバッテリー充電状態をもたらし、かつ従って
図3に示されるような少ないサイクルとなりうる。対照的に、より低い負荷プロファイル(例えば運転1169)は高いバッテリー充電状態を、かつ従って
図3に示されるようなより高いサイクル比率をもたらすことが可能であった。例として、
図4は、より高負荷のサイクルとより高負荷の実施例との間の差を実証している。より高負荷のサイクルの一例は、
図3及び4の運転1013で示されるように平均電力が6.13kWであり、より低負荷のサイクルは、
図3及び4の運転1169で示されるように平均kWが2.04kWである。
図3に戻ると、記載のような電圧サイクリングは、アイドル状態が長いとより多くの汚染物質が触媒層125のカソード側触媒表面126に蓄積可能となることから、燃料電池スタック(例えば燃料電池20)がより長期間アイドル状態となりうる低い負荷プロファイルの際に、より望ましいかもしれない。
【0030】
制御装置180は、負荷60及び/又は他のそのような負荷との電気的接続の制御に加えて、記載のように燃料及び酸化体の(例えば燃料電池20のアノード入口148及びカソード入口128への)流れを制御するために、ファン、バルブ、スイッチ及びその他のバランスオブプラントデバイスに連結されてもよい。
【0031】
上述のような電圧サイクリングの利点は、
図5に実証されるように燃料電池のアイドル状態がより長い軽負荷の適用においてはより重要である(
図5の値は
図4に記載された数値に相当する)。
図5に実証されるように、高負荷の適用は右側に示され、軽負荷の適用は左側に示されている。傾向線12は相対的に最も高い頻度のサイクルを指し、傾向線27は相対的に中程度の頻度のサイクルを指し、かつ傾向線255は相対的に最も低い頻度の電圧サイクルを指す。電流及び電圧によって示されたより高い負荷の適用において見られるように、電圧サイクルの頻度が増大すると、燃料電池はその性能が高まる傾向を有する。より軽い負荷の適用では、電圧サイクルの頻度が増大すると、最も少ないサイクル量から中程度のサイクル量までの最初の間は燃料電池の性能は高まるが、その後性能は、最も高いサイクル量において中程度のサイクル量よりも下方に低下する。よって、軽負荷の適用は、燃料電池の触媒表面(例えばカソード側触媒表面126)が冷却剤及びMEAアイオノマー(いずれも燃料電池の性能を低下させることが示されている)により多く汚染される可能性のあるシステム中断時間がより長いということになろう。加えて、燃料電池(例えば燃料電池20)のアイドル状態は触媒表面(例えばカソード側触媒表面126)において酸化物を生じさせる可能性がある。例えば、
図6は、電圧サイクルが行われない時の燃料電池(例えば燃料電池20)の性能を示している。
図6は、燃料電池(例えば燃料電池20)が2022年1月29日の午後10時ごろに電圧サイクルの実施を中止すると想定された状況を示す。その後、バッテリーの充電状態は、電圧サイクルが生じてバッテリー充電状態が上昇する2022年1月29日午後11:45頃まで徐々に低下する。よって
図6は、電圧サイクルを利用しないと燃料電池の性能がどのように低下しうるかということ、しかし電圧サイクルを利用すると燃料電池の性能を高める可能性があるということを示している。
図5に戻ると、軽負荷の適用と重負荷の適用との間の違いは、燃料電池がより頻繁に使用される高負荷の適用ではより多くの大気汚染物質が取り込まれるので燃料電池の作動についての一般的理解に対して直観に反する。電圧サイクルを行うことができる燃料電池発電の頻繁な「切れ目」を利用することは有益であろう。触媒を清浄化するための電圧サイクルを伴わない延長運転は、著しい電圧減衰をもたらす可能性がある。電圧サイクリングは触媒表面を清浄化し、かつ生成されると同時に汚染物質の除去を可能にする利用可能な燃料電池水の中へ脱着させることを可能とする。
【0032】
本発明の原理に従って、燃料電池の性能を低下させる燃料電池内の微粒子蓄積物の混入を低減するための、燃料電池システム及び燃料電池システムを作動させるための方法が提供される。
図7に示された例では、燃料電池システム10(
図2)は、膜電極アセンブリを通じて燃料電池システム10(
図2)によって生成された廃水を用いて汚染物質を排出するために、燃料電池システム10(
図2)の周期的な酸素欠乏及び電圧ブリードダウン/低下を使用することができる。電圧ブリードダウンとは、燃料電池20(
図2)の電圧が低下せしめられ、同時に燃料電池20(
図2)には燃料電池20(
図2)から酸化体を奪うために燃料電池20(
図2)への空気流の低下及び/又は休止が行われる過程を指す。この電圧ブリードダウンにより、燃料電池20(
図2)の中の蓄積した汚染物質を、例えば燃料電池の作動の副産物として生成された廃水を通じて、排出させることができる。電圧ブリードダウンはさらに、最初の上述の燃料電池20(
図2)の電圧低下及び付随する燃料電池20(
図2)からの汚染物質の排出、及びその後の燃料電池20(
図2)の電圧上昇、燃料電池20(
図2)の最初の電圧低下よりも持続時間が短い場合もある燃料電池20(
図2)の別の電圧低下、燃料電池20(
図2)からの別の可能な汚染物質排出、並びに燃料電池20(
図2)に正常な電流が通るようにして燃料電池システム10を燃料電池20(
図2)の標準的な電力生産段階に戻す燃料電池20(
図2)の電圧上昇、を含む電圧変更のサイクルを指す場合もある。
【0033】
図2に示されるように、燃料電池システム10は、機能上そのすべての部品と共に電気を生産し、かつ典型的には燃料電池20及び燃料電池20に接続されたバッテリー30を備えている、集合型システム又は完全システムと称される。
図2は、連結又は接続を示す実線、1つの供給源から別の所への一方向の流れ又は一方向の情報伝送のいずれかを示す一方向の方向矢印、2つの部品の間の流れ及び/又は情報伝送のいずれかを示す二方向の方向矢印、いくつかの部品がサブシステム(例えば燃料電池20)の部品であることを示す破線囲み枠、並びにセンサがシステム制御装置180へと断続的又は連続的に情報を伝送する、センサとシステム制御装置180との間のつながりを示す破線、を用いている。図示されるように、燃料電池20は、薄膜層140を備えた膜電極アセンブリ130、薄膜層140の側面に結合されたカソード側触媒表面125、カソード側触媒表面125とは反対である薄膜層140の反対側に結合されたアノード側触媒表面135を具備することができる。カソード入口128は、外部の酸化体供給源150を介して酸化体の流れを受け取るように機能するカソード側触媒表面125の側面に接続されてよく、かつアノード入口148は、外部の燃料供給源160を介して燃料の流れを受け取るように機能する、膜電極アセンブリ140に当接しているアノード側触媒表面135に接続されてよい。
【0034】
酸素喪失による余剰水及び汚染物質は、膜電極アセンブリ140から周囲環境へと直接排出されてもよい(図示せず)。燃料電池20は、燃料電池20をバッテリー30に接続する電流によって、燃料電池20に着脱自在に接続されたバッテリー30にエネルギーを供給することができる。バッテリー30は負荷60に接続されて電力を供給してもよい。燃料電池20は、抵抗加熱式の冷媒加熱器のような抵抗器34に着脱自在に接続されてもよい。抵抗器34は、バッテリー30よりも低い負荷で燃料電池20から電力を受け取って、燃料電池20の電圧を所定の電圧に低下させることができる。別の抵抗器、冷媒加熱器、又は他の加熱デバイスが、燃料電池20及び/若しくは燃料電池20を通って流れる冷却剤の温度を制御し、並びに/又は電圧変動を防止及び/若しくは限定し、かつ電圧ブリードダウンの際に電圧の比較的安定した低下を確保するように、構成されることも可能である。
【0035】
多数のセンサを、燃料電池システム10の様々な部品及び
図2に示されるようなシステム制御装置180に接続することができる。例えば、バッテリー20の充電状態を計測する充電状態センサ78が、バッテリー20及びシステム制御装置180に接続されてもよい。システム制御装置180は、バッテリー20の充電状態の計測値を受け取り、バッテリー20がある一定範囲内の電荷を有する場合、例えばバッテリー20が10~25%の充電状態である場合に、電圧ブリードダウンを行ってもよいと決定することができる。バッテリー20が10%を下回る充電状態である場合、システム制御装置180は、電圧ブリードダウンは実行不可能であり燃料電池20はバッテリー20の充電状態が10%以上に上昇するまで作動を継続すべきであると決定することができる。充電状態が25%を上回る場合、システム制御装置180は、電圧ブリードダウンが必要か必要でないかを決定し、かつ電圧ブリードダウンを開始しない場合もある。他のセンサには、燃料電池20及びシステム制御装置180に接続される電圧センサ74、燃料電池20及びシステム制御装置180に接続される電流センサ70、酸化体供給源150及びシステム制御装置180に接続される酸化体供給源からの酸化体の空気流を計測するためのセンサ、並びに燃料電池システムのパラメータを計測する任意の他のセンサを挙げることができる。システム制御装置180は、電圧ブリードダウンの様々な局面及び電圧ブリードダウンが行われる頻度を感知、制御、計時、及び決定するために1又は多数のセンサを使用することができる。例えば、システム制御装置180は、ブロワ、導管及びバルブによって酸化体供給源150から燃料電池20の中への酸化体の流れを制御することが可能であり、かつシステム制御装置180は、制御スイッチによって燃料電池20からバッテリー30及び/又は抵抗器34への電気の流れを接続及び/又は切り離しすることができる。
【0036】
図2に示した燃料電池システムを使用する
図7に示されるように、放電状態220において電圧ブリードダウンが行われる前の燃料電池システム10の運転状態200が示すシステムの第1の状態において、システム制御装置180(
図2)は、酸化体供給源150が燃料電池20からバッテリー30、さらに負荷60への電力生産に適した空気流量で酸化体を燃料電池20のカソード入口128に供給する状態にすることができる。運転状態200では、システム制御装置180は、燃料電池20がバッテリー30に電力を供給しておりかつバッテリー30が負荷60に電力を供給しているように、バッテリー30を燃料電池20に接続しておくことができる。さらに、運転状態200では、システム制御装置180は、燃料電池20が抵抗器34に電流を供給しないように抵抗器34を燃料電池20から切り離しておくことができる。センサ、例えば電流センサ70からの、燃料電池20がある一定のアンペア時閾値(例えば10~25アンペア時)の放電を行ったというフィードバックに基づいて、システム制御装置180は、燃料電池20における酸素欠乏及び汚染物質の除去に備えて燃料電池20を準備するために酸化体供給源150から燃料電池20への空気流を遮断することにより、電圧ブリードダウンサイクルを開始することができる。
【0037】
ランプダウン状態210で示されたシステムの第2の状態では、燃料電池システム10は、燃料電池20の電圧を所定の電圧(例えば0.4~0.1V)まで徐々に低下させることにより、酸素喪失に備えることができる。システム制御装置180は、抵抗器34を燃料電池20に接続することによりランプダウン状態210を促進することができる。抵抗器34、別の抵抗器、冷媒加熱器、又はその他の加熱デバイスを、電圧変動又は電圧スプリング(voltage spring)を防止するために使用することができる。システム制御装置180はさらに、酸化体供給源150からカソード入口128への酸化体の流れを(例えば、そのような酸化体をカソード入口128へ提供するファン又はブロワを停止することにより)断つことができる。抵抗器34の接続及び酸化体流の遮断により、燃料電池20への電流を低減することができる。燃料電池20の電流が減少するにつれて、システム制御装置180は、センサからの(例えば、ある一定の電流閾値前後である電流センサ170からの)フィードバックに基づいてシステムの放電状態220を開始する決定を行うことができる。
【0038】
放電状態220によって示されるようなシステムの第3の状態では、燃料電池システム10の蓄積汚染物質を触媒側触媒表面126から取り除いて利用可能な廃水を通じて膜電極アセンブリ130によって排出することができる。放電状態220では、システム制御装置180は所望の所定電圧(例えば0.4~0.1V)に到達することができる。所定電圧に達するために、システム制御装置180はバッテリー30を燃料電池20から切り離して、酸化体が燃料電池20に流入しない状態で燃料電池の電圧が所望の所定電圧に達するようにすることができる。
【0039】
放電状態220の後、システム制御装置180は、システム制御装置180が抵抗器34を切り離してその後再接続すること、及びシステム制御装置180が、運転再開状態280に再び移行するように燃料電池20を準備するために運転状態200の間の速度よりも低い速度で空気流を再開させることを特徴とする、H2インベントリ(H2 Inventory)状態230及び作動開始状態240のような様々な状態を有することができる。
【0040】
所定期間又はセンサからのフィードバックに基づいて決定された期間の後、システム制御装置180は、燃料電池システム10を運転再開状態280に移行させるように決定することができる。システムを運転再開状態280に移行させるために、システム制御装置180は、システム制御装置180が酸化体供給源150から燃料電池20への酸化体の流れを遮断することを特徴とするプレパージランプ状態250を設けることができる。プレパージランプ状態250は、利用可能な廃水を通じてさらに汚染物質を排出することもできる短時間の電圧低下及び酸素喪失の状態である、エアランプ(Airramp)運転状態260のための条件をもたらすことができる。この状態の間、システム制御装置180はバッテリー30を燃料電池20に再接続することができる。よって、電圧ブリードダウンは、2つの汚染物質排出状態、すなわち電流がランプダウンしておりかつ電圧が低下している放電状態220と、電圧が短時間で低下するエアランプ運転状態260とを特徴とすることができる。
【0041】
その後、システム制御装置180は、電流を増大させることと燃料電池20を電力生産のための条件に戻すこととを特徴とする、パージ運転状態270で進行することができる。この状態においては、システム制御装置180は、システム制御装置180が電流センサからのフィードバックに基づいて燃料電池20の電流がその正常な電流作動条件に戻ったと判定するまで、酸化体の流れを徐々に増加させると決定することができる。よって、ランプダウン状態210、放電状態220、H2インベントリ状態230、作動開始状態240、プレパージランプ状態250、及びエアランプ運転状態260は、燃料電池の運転状態200と運転再開状態280との間の1回の電圧ブリードダウンの例を示すことができる。システム制御装置180はその後、運転状態200又は運転再開状態280の際に、燃料電池20の温度に基づいて抵抗器34を切り離すように決定することができる。
【0042】
一般に、前のステップを繰り返すこと、並びに周期的酸素欠乏を実施すべき時及びシステム有用期間を最適化するためにどのような頻度とするかを決定することは、負荷プロファイル、バッテリー充電状態、システムの健康状態、及び/又はその他のパラメータによって決まる頻度で(例えば制御装置180によって)決定されてよい。
図8に示されるように、実際の電圧ブリードダウン頻度とベースラインの電圧ブリードダウン頻度との比を指すブリードダウン比率係数と、燃料電池を流れる電流とを比べると、重い負荷の適用よりも、低電流で軽い負荷の適用においてより高いブリードダウン比率係数となる場合がある。しかしながら、燃料電池を流れる電流が増大するにつれて、ブリードダウン比率係数はほぼ同じようになりうる。あるいは、
図9に示されるように、燃料電池の電流及び放電アンペア時がある一定の値であるか又はある一定の範囲内であれば、様々なレベルの電圧サイクリングを行うことができる。
【0043】
上記の(例えば水による脱着及び運搬を介しての)触媒表面126からの汚染物質の放出は、例えば、薄膜層140が劣化するにつれてのカソード側触媒層125及び薄膜層140のアイオノマーに由来するアニオン汚染について有用となりうる。
【0044】
本発明のいくつかの特徴について、特徴の具体的な数又は種類を用いて本明細書中に記載してきたが、低電圧化を通じた酸素喪失によって燃料電池(例えば燃料電池20)からの汚染物質排除の処置を行うことができる任意の数の特徴を使用することができる。例えば、冷媒加熱器は1種類の抵抗器(例えば抵抗器34)として記載されているが;他の種類の抵抗器も使用可能である。別の例では、
図2は1個のバッテリー(例えばバッテリー30)及び1個の抵抗器(例えば抵抗器34)の実例を使用しているが;燃料電池システム10は、電圧ブリードダウンを容易にするために多数のバッテリー及び/又は多数の抵抗器及び/又は多数の他の負荷を使用することもできる。別の例において、
図2は3個のセンサ(すなわち電流センサ70、電圧センサ74、及び充電状態センサ78)の使用を示している。しかしながら、システム制御装置(例えばシステム制御装置180)はさらに、燃料電池(例えば燃料電池20)の負荷プロファイル、燃料電池(例えば燃料電池20)の作動時間などのような他のパラメータに基づいて電圧ブリードダウンを実施するために、同じ種類又は異なる種類のセンサをより多数又は少数使用することもできる。より少数のセンサを使用するシステム制御装置(例えばシステム制御装置180)の例では、システム制御装置(例えばシステム制御装置180)は、電流センサ(例えば電流センサ70)又は別のセンサを使用して電圧ブリードダウンのランプダウン状態210を開始し、次に電圧の計測値を使用する代わりにある所定時間の後にランプダウン状態210を終了させて放電状態220を実施することができる。1つの状態から次へ(例えば運転状態200からランプダウン状態210へ、ランプダウン状態210から放電状態220へ、放電状態220からH2インベントリ状態230へ、H2インベントリ状態230から作動開始状態240へ、作動開始状態240からプレパージランプ状態250へ、プレパージランプ状態250からエアランプ運転状態260へ、エアランプ運転状態260からパージ運転状態270へ、パージ運転状態270から運転再開状態280へ)の移行は、センサ(例えば電流センサ70、電圧センサ74、充電状態センサ78)による様々なパラメータの計測を用いる代わりに所定時間の後で同様に行われてもよい。所定時間の使用は、例えば、同じ燃料電池システム10の反復運転によって電圧ブリードダウンが燃料電池(例えば燃料電池20)から汚染物質を確実に取り除くための各段階の間に繰り返しかつ着実に同じ長さの時間を要すると判明した場合に行うことが可能であり、かつその結果として、各々の状態を実施するためのパラメータの計測は、システム動作が標準化されるか又はより十分に理解されるようになるにつれ不用となりうる。
【0045】
本発明のいくつかの態様について本明細書中に説明及び図示してきたが、同じ目的を成し遂げるために当業者は別例の態様をとることもできる。従って、本発明の真の趣旨及び範囲に含まれるそのような別例の態様全てを対象とすることが意図されている。
【0046】
上記の説明は例証であって、限定的ではないと意図されていることが理解されるべきである。数多くの変更及び改変が、本明細書中において、以降の特許請求の範囲及びその均等物により規定されるような本開示の全体的な趣旨及び範囲から逸脱することなく当業者によって行なわれることが可能である。例えば、上記の実施形態(及び/又はその態様)は互いに組み合わせて使用されてもよい。加えて、様々な実施形態の教示内容に対し、その範囲から逸脱することなく、特定の状況又は材料を適応させるために多くの改変がなされることが可能である。本明細書中に記載された材料の寸法及び種類は、様々な実施形態のパラメータを規定するように意図されているが、それらは決して限定的ではなく例示にすぎない。他の多くの実施形態は、上記説明を検討すれば当業者には明白となろう。
【0047】
本明細書中で使用される専門用語は、単に特定の実施形態について説明するためのものであり、本開示を限定するようには意図されていない。本明細書中で使用されるように、単数形「1つの(a)」、「1つの(an)」、及び「その(the)」は、文脈がそうでないことを明白に示していないかぎり、複数形も含むように意図されている。用語「含む(comprise)」(及び該用語の任意の形、例えば「含む(comprises)」及び「含んでいる(comprising)」)、「有する(have)」(及び該用語の任意の形、例えば「有する(has)」及び「有している(having)」)、「備える(include)」(及び該用語の任意の形、例えば「備える(includes)」及び「備えている(including)」)、並びに「含有する(contain)」(及び該用語の任意の形、例えば「含有する(contains)」及び「含有している(containing)」)は非限定型(open-ended)の連結動詞であるということは、さらに理解されよう。その結果、1以上のステップ又は要素を「含む」、「有する」、「備える」又は「含有する」方法又はデバイスは、その1以上のステップ又は要素を所有するが、その1以上のステップ又は要素のみを所有するようには限定されない。同様に、1以上の特徴を「含む」、「有する」、「備える」又は「含有する」、方法のステップ又はデバイスの要素は、その1以上の特徴を所有するが、その1以上の特徴のみを所有するようには限定されない。更に、ある一定の方法で構成されたデバイス又は構造物は、少なくともその方法で構成されるが、記載されていない方法で構成されることも可能である。
【0048】
任意の特定の実施形態によって、上述されたような目的又は利点のうち必ずしも全ては達成されない場合があることが、理解されるべきである。よって、例えば、当業者は、本明細書中に記載されたシステム及び技法が、本明細書中に教示された1つの利点又は一群の利点を達成又は最適化する方法で具体化又は実行されて、本明細書中に教示又は示唆される他の目的又は利点を必ずしも達成しない場合があることを、認識するであろう。
【0049】
本開示について、限られた数の実施形態のみに関して詳細に説明してきたが、本開示がそのような開示された実施形態に限定されないことは容易に理解されるはずである。それどころか、本発明は、本明細書中に前述されていないが本開示の趣旨及び範囲に見合う、任意の数の変形、変更、代替又は等価な配置構成を組込むように改変されることが可能である。加えて、本開示の様々な実施形態について記載してきたが、本開示の態様は記載された実施形態のうちの一部のみを備えうることが理解されるべきである。
【外国語明細書】