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  • 特開-無線認証デバイス 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024009611
(43)【公開日】2024-01-23
(54)【発明の名称】無線認証デバイス
(51)【国際特許分類】
   G06K 19/073 20060101AFI20240116BHJP
   G06F 21/32 20130101ALI20240116BHJP
   G06K 19/07 20060101ALI20240116BHJP
   G06K 19/077 20060101ALI20240116BHJP
【FI】
G06K19/073 054
G06F21/32
G06K19/07 090
G06K19/077 260
G06K19/07 180
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022111269
(22)【出願日】2022-07-11
(71)【出願人】
【識別番号】514319641
【氏名又は名称】株式会社MoriX
(74)【代理人】
【識別番号】100115738
【弁理士】
【氏名又は名称】鷲頭 光宏
(74)【代理人】
【識別番号】100121681
【弁理士】
【氏名又は名称】緒方 和文
(72)【発明者】
【氏名】久保田 守彦
(72)【発明者】
【氏名】西村 明夫
(57)【要約】
【課題】生体認証結果に基づいてその動作を簡単に制御することが可能な無線認証デバイスを提供することにある。
【解決手段】本発明による無線認証デバイスは、アンテナ12と、アンテナ12を介して親デバイスと近距離無線通信を行うコントローラチップ13と、アンテナ12の動作周波数を変更する可変リアクタンス15と、可変リアクタンス15を制御する生体認証デバイス14とを備える。生体認証デバイス14は、生体認証が得られた場合に可変リアクタンス15をアクティブにしてアンテナ12の動作周波数を親デバイスと通信が可能な第1の周波数に設定し、生体認証が得られていない場合に可変リアクタンス15をインアクティブにしてアンテナ12の動作周波数を親デバイスと通信が不可能な第2の周波数に設定する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
アンテナと、
前記アンテナを介して親デバイスと近距離無線通信を行うコントローラチップと、
前記アンテナの動作周波数を変更する可変リアクタンスと、
前記可変リアクタンスを制御する生体認証デバイスとを備え、
前記生体認証デバイスは、生体認証が得られた場合に前記可変リアクタンスをアクティブにして前記アンテナの動作周波数を前記親デバイスと通信が可能な第1の周波数に設定し、生体認証が得られていない場合に前記可変リアクタンスをインアクティブにして前記アンテナの動作周波数を前記親デバイスと通信が不可能な第2の周波数に設定することを特徴とする無線認証デバイス。
【請求項2】
カード形状を有する支持体をさらに備え、
前記アンテナ、前記コントローラチップ、前記可変リアクタンス、及び前記生体認証デバイスは、前記支持体上に実装されている、請求項1に記載の無線認証デバイス。
【請求項3】
前記アンテナは、前記支持体の主面に形成された平面スパイラルアンテナであり、
前記可変リアクタンスは、前記平面スパイラルアンテナを構成する配線パターン上に実装されたチップ部品であり、
前記コントローラチップ及び前記生体認証デバイスは、前記平面スパイラルアンテナの内側領域に実装されている、請求項1又は2に記載の無線認証デバイス。
【請求項4】
前記生体認証デバイスは指紋認証デバイスである、請求項1又は2に記載の無線認証デバイス。
【請求項5】
前記コントローラチップは、前記アンテナの動作周波数が前記第1の周波数に設定されているときに前記アンテナが前記親デバイスからの電波を受信することによって駆動されて、認証用IDデータを送信する、請求項1又は2に記載の無線認証デバイス。
【請求項6】
前記第1の周波数は、13.56GHzである、請求項1又は2に記載の無線認証デバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無線認証デバイスに関し、特に、NFC(Near Field Communication:近距離無線通信)機能を有する無線認証デバイス(NFCデバイス)のセキュリティ構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
電子マネーの決済手段としてNFCデバイスが広く普及している。また、オフィスビルやホテルなどではNFCデバイスを利用した入退場管理システムが利用されている(例えば特許文献1参照)。しかし、NFCデバイスをリーダ装置にタッチするだけで決済(認証)が完了してしまうことから、NFCデバイスの所有者ではない第三者でも容易に決済処理を行うことができ、セキュリティ上の問題がある。
【0003】
セキュリティのさらなる向上のため、指紋等の生体情報を利用してユーザ認証を行う入退場管理システムも利用されている(例えば特許文献2参照)。この入退場管理システムによれば、非接触ICカードよりもセキュリティレベルが高い認証システムを実現することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2011-063965号公報
【特許文献2】特開2005-063173号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、一般的にNFCデバイスのコントローラチップは外部制御ポートを持たないことから、生体認証結果に基づいてNFCデバイスのコントローラチップの動作を制御することはできない。またコントローラチップとNFCアンテナとの間にスイッチを挿入し、生体認証結果に基づいてコントローラチップとNFCアンテナとの接続を制御する方法もあるが、この方法はスイッチの両端をショートさせることで簡単に回避でき、セキュリティの向上につながらない。
【0006】
したがって、本発明の目的は、生体認証結果に基づいてその動作を簡単に制御することが可能な無線認証デバイスを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため、本発明による無線認証デバイスは、アンテナと、前記アンテナを介して親デバイスと近距離無線通信を行うコントローラチップと、前記アンテナの動作周波数を変更する可変リアクタンスと、前記可変リアクタンスを制御する生体認証デバイスとを備え、前記生体認証デバイスは、生体認証が得られた場合に前記可変リアクタンスをアクティブにして前記アンテナの動作周波数を前記親デバイスと通信が可能な第1の周波数に設定し、生体認証が得られていない場合に前記可変リアクタンスをインアクティブにして前記アンテナの動作周波数を前記親デバイスと通信が不可能な第2の周波数に設定することを特徴とする。
【0008】
本発明によれば、コントローラチップに直接制御をかけることなく、無線認証デバイスの動作を制御することができ、生体認証結果に基づいてその動作を簡単に制御することができる。したがって、無線認証デバイスのセキュリティを高めることができる。
【0009】
本発明による無線認証デバイスは、カード形状を有する支持体をさらに備え、前記アンテナ、前記コントローラチップ、前記可変リアクタンス、及び前記生体認証デバイスは、前記支持体上に実装されていることが好ましい。
【0010】
本発明において、前記アンテナは、前記支持体の主面に形成された平面スパイラルアンテナであり、前記可変リアクタンスは、前記平面スパイラルアンテナを構成する配線パターン上に搭載されたチップ部品であり、前記コントローラチップ及び前記生体認証デバイスは、前記平面スパイラルアンテナの内側領域に実装されていることが好ましい。これにより、小型で高性能な生体認証機能付き無線認証デバイスを実現することができる。
【0011】
前記生体認証デバイスは指紋認証デバイスであることが好ましい。指紋認証デバイスを採用することにより、小型で高性能な生体認証機能付き無線認証デバイスを実現することができる。
【0012】
本発明において、前記コントローラチップは、前記アンテナの動作周波数が前記第1の周波数に設定されているときに前記アンテナが前記親デバイスからの電波を受信することによって駆動されて、認証用IDデータを送信することが好ましい。これにより、親デバイス側で無線認証デバイスの認証を行うことができる。
【0013】
前記第1の周波数は、13.56GHzであることが好ましい。これにより、セキュリティ機能が高められたNFCデバイスを実現することができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、生体認証結果に基づいてその動作を簡単に制御することが可能な無線認証デバイスを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1図1は、本発明の実施の形態による無線認証デバイスの構成を示す略平面図である。
図2図2は、図1に示した無線認証デバイスの外観図である。
図3図3は、無線認証デバイスの動作説明の概略図である。
図4図4は、無線認証デバイスの動作を説明するためのフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、添付図面を参照しながら、本発明の好ましい実施の形態について詳細に説明する。
【0017】
図1は、本発明の実施の形態による無線認証デバイスの構成を示す略平面図である。また図2は、図1に示した無線認証デバイスの外観図である。
【0018】
図1及び図2に示すように、本実施形態による無線認証デバイス10は、いわゆる指紋認証機能付き非接触ICカードであって、カード形状を有する樹脂製の支持体11と、支持体11の主面11aに形成されたNFCアンテナ12と、NFCアンテナ12と共に支持体11の主面11aに実装され、NFCアンテナ12を介してリーダ装置(親デバイス)と近距離無線通信を行うコントローラチップ13(RFIDコントローラ)と、コントローラチップ13と共に支持体11の主面11aに実装された指紋認証デバイス14と、NFCアンテナ12を構成する配線パターン上に実装された可変リアクタンス15とを備えている。
【0019】
支持体11はカード型であり、国際規格ISO/IEC7810のID-1に従ったサイズ(53.98mm×85.60mm)であることが好ましいが、これと異なるサイズであっても構わない。支持体11は基材の主面に配線層と絶縁層が交互に積層された多層構造を有し、配線層はNFCアンテナ12その他の配線パターンを含む。NFCアンテナ12は例えば平面スパイラルアンテナであり、スパイラルパターンの両端はコントローラチップ13に接続されている。NFCは、13.56MHzの短波帯を使用して10cm以下の至近距離の無線通信を実現する近距離無線通信規格の一つである。
【0020】
コントローラチップ13は、無線認証デバイス10のRFID動作を制御するためのLSI回路である。無線認証デバイス10がリーダ装置に近づけられると、リーダ装置から送信される電波によってNFCアンテナ12に電流が励起され、この電流によってコントローラチップ13が動作を開始して、認証用IDデータを送信する。IDデータはNFCアンテナ12を介してリーダ装置に無線で送られる。
【0021】
指紋認証デバイス14は、指紋認証を行うためのデバイスであり、指紋データの処理を行う指紋認証チップ14aと、指紋データの入力を受け付ける指紋センサ14bを有している。指紋認証チップ14aには所有者本人の指紋データがテンプレートとして予め登録されており、指紋認証チップ14aは、指紋センサ14bから送られてくる入力データとテンプレートデータとのマッチング処理により指紋データの真偽を判定する。コントローラチップ13及び指紋認証デバイス14は、NFCアンテナ12を構成する平面スパイラルアンテナの内側領域に実装されている。
【0022】
可変リアクタンス15は、NFCアンテナ12の回路定数調整用ICチップであり、平面スパイラルアンテナを構成する配線パターン上に実装されている。可変リアクタンス15は、当該可変リアクタンス15がアクティブのときにはNFCアンテナ12の動作周波数が既定の周波数(13.56MHz)となり、逆にインアクティブのときにNFCアンテナ12が既定の周波数以外の周波数となるように、オン・オフ時のリアクタンス(キャパシタンス及び/又はインダクタンス)が設定されている。可変リアクタンス15を構成するチップ部品の数は1個に限定されず、2個以上であってもよい。
【0023】
図2に示すように、支持体11の主面11aに実装されたNFCアンテナ12、コントローラチップ13、指紋認証デバイス14の指紋認証チップ14a及び可変リアクタンス15は保護層に覆われており、支持体11の内部に埋め込まれているが、指紋認証デバイス14の指紋センサ14bは保護層に覆われておらず、支持体11の表面に露出している。したがって、指紋センサ14bに指先を押し当てて指紋データを入力することができる。
【0024】
図3は、無線認証デバイス10の動作説明の概略図である。また図4は、無線認証デバイス10の動作を説明するためのフローチャートである。
【0025】
図3及び図4示すように、無線認証デバイス10の所有者本人が指紋センサ14bに指先を押し当てて指紋認証を行った場合には、指紋認証が得られた状態になり、指紋認証デバイス14からのオン信号によって可変リアクタンス15がアクティブになり、NFCアンテナ12もアクティブとなる(ステップS1Y、S2a)。この状態になると、リーダ装置20から送られてくる既定の周波数の電波をNFCアンテナ12が受信可能となるので、無線認証デバイス10をリーダ装置20に近づけたときにNFCアンテナ12からの電力供給を受けてコントローラチップ13がアクティブとなり、コントローラチップ13から認証用IDデータが送信される(ステップS3、S4a、S5a)。したがって、リーダ装置20は、IDデータを受信することができる。
【0026】
一方、無線認証デバイス10の所有者本人が指紋認証を行うことなく当該無線認証デバイス10をリーダ装置20に近づけてNFC認証動作を行った場合(ステップS1N、S2b、S3)、指紋認証が得られておらず、可変リアクタンス15がインアクティブの状態である。そのため、NFCアンテナ12はリーダ装置20から送られてくる電波を受信できず、コントローラチップ13もインアクティブの状態である(ステップS4b)。したがって、無線認証デバイス10からIDデータは送信されず(ステップS5b)、リーダ装置20はIDデータを受信することができない。
【0027】
無線認証デバイス10の所有者以外の第三者が指紋認証動作を行う場合も、可変リアクタンス15がインアクティブの状態であるため、無線認証デバイス10をリーダ装置20に近づけてもNFCアンテナ12はリーダ装置20から送られてくる電波を受信できず、コントローラチップ13もインアクティブの状態である。したがって、リーダ装置20はIDデータを受信することができない。
【0028】
以上説明したように、本実施形態による無線認証デバイス10は、NFCアンテナ12と、NFCアンテナ12を介してリーダ装置20と近距離無線通信を行うコントローラチップ13と、NFCアンテナ12の動作周波数を変更する可変リアクタンス15と、可変リアクタンス15のリアクタンス値を制御する指紋認証デバイス14とを備え、指紋認証デバイス14は、指紋認証が得られた場合に可変リアクタンス15をアクティブ状態にしてNFCアンテナ12の動作周波数をリーダ装置20と通信が可能な第1の周波数(13.56MHz)に設定し、指紋認証が得られていない場合に可変リアクタンス15のインアクティブ状態が維持され、NFCアンテナ12の動作周波数はリーダ装置20と通信が不可能な第2の周波数に設定されるので、第三者の不正利用を防止して無線認証デバイス10のセキュリティを高めることができる。
【0029】
以上、本発明の好ましい実施形態について説明したが、本発明は、上記の実施形態に限定されることなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能であり、それらも本発明の範囲内に包含されるものであることはいうまでもない。
【0030】
例えば、上記実施形態ではカード型の支持体を用いた指紋認証機能付き非接触ICカードを例に挙げたが、本発明はこのような支持体形状に限定されず、種々の無線認証デバイスに適用することができる。
【0031】
また無線認証デバイスの動作周波数は13.56MHzに限定されず、非接触ICカードとして利用可能な種々の近距離無線通信に適用可能である。
【0032】
また上記実施形態では生体認証デバイスの一例として指紋認証デバイスを例に挙げたが、指紋以外の他の生体情報に基づく認証デバイスを用いることも可能である。ただし指紋認証デバイスは小型・薄型であり、非接触ICカードの追加認証機能として特に好適である。
【符号の説明】
【0033】
10 無線認証デバイス
11 支持体
11a 支持体の主面
12 NFCアンテナ
13 コントローラチップ(RFIDコントローラ)
14 指紋認証デバイス(生体認証デバイス)
14a 指紋認証チップ
14b 指紋センサ
15 可変リアクタンス
20 リーダ装置
図1
図2
図3
図4