(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024096114
(43)【公開日】2024-07-12
(54)【発明の名称】水冷式燃焼装置
(51)【国際特許分類】
F23M 5/08 20060101AFI20240705BHJP
【FI】
F23M5/08 A ZAB
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023000007
(22)【出願日】2023-01-02
(71)【出願人】
【識別番号】308030570
【氏名又は名称】株式会社エム・アイ・エス
(74)【代理人】
【識別番号】100126712
【弁理士】
【氏名又は名称】溝口 督生
(72)【発明者】
【氏名】服部 泰弘
(72)【発明者】
【氏名】小田 要
(72)【発明者】
【氏名】中村 康行
(57)【要約】
【課題】燃焼温度を維持しつつ、燃焼装置の損耗や破損を抑制して十分な燃焼を実現できる水冷式燃焼装置を提供する。
【解決手段】本発明の水冷式燃焼装置は、燃焼対象物を燃料により燃焼させる燃焼筒と、前記燃焼筒に燃料を供給する燃料供給部と、前記燃焼筒を支持する支持部と、を備え、前記燃焼筒は、前記燃焼対象物が燃焼する内部空間と、前記内部空間の内壁に備わる耐火層と、前記耐火層の外周に備わる水冷層と、を有し、前記水冷層は、冷却水を循環可能である。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃焼対象物を燃料により燃焼させる燃焼筒と、
前記燃焼筒に燃料を供給する燃料供給部と、
前記燃焼筒を支持する支持部と、を備え、
前記燃焼筒は、
前記燃焼対象物が燃焼する内部空間と、
前記内部空間の内壁に備わる耐火層と、
前記耐火層の外周に備わる水冷層と、を有し、
前記水冷層は、冷却水を循環可能である、水冷式燃焼装置。
【請求項2】
前記内部空間での燃焼熱は、前記耐火層を介して前記水冷層に伝導し、
前記耐火層は、前記燃焼熱を、前記耐火層を介して伝導することにより、前記水冷層を循環する冷却水が蒸発することを防止する、請求項1記載の水冷式燃焼装置。
【請求項3】
前記耐火層は、
前記内部空間の燃焼熱を、緩和して前記水冷層に伝達し、
前記水冷層の冷却熱を、緩和して前記内部空間に伝達する、
請求項1記載の水冷式燃焼装置。
【請求項4】
前記耐火層は、前記内部空間の内壁全体に設けられる、請求項1記載の水冷式燃焼装置。
【請求項5】
前記水冷層は、前記冷却水を循環させる冷却水循環路を備え、
前記冷却水循環路は、前記冷却水を供給する供給口と、循環した前記冷却水を排出する排出口とを有する、請求項1記載の水冷式燃焼装置。
【請求項6】
前記供給口を通じて、前記冷却水循環路に前記冷却水を供給する、冷却水供給部を更に備える、請求項5記載の水冷式冷却装置。
【請求項7】
前記冷却水供給部は、前記冷却水の流量、流速および温度の少なくとも一つを制御する、請求項6記載の水冷式燃焼装置。
【請求項8】
前記冷却水供給部は、前記内部空間での燃焼温度に基づいて、前記冷却水の流量、流速および温度の少なくとも一つを制御する、請求項7記載の水冷式燃焼装置。
【請求項9】
前記内部空間の燃焼温度を計測して、計測結果を前記冷却水供給部に通知する、温度測定部を更に備える、請求項7記載の水冷式燃焼装置。
【請求項10】
前記燃焼筒は、前記水冷層の外側に空気層を更に備える、請求項1記載の水冷式燃焼装置。
【請求項11】
前記空気層と前記内部空間とを連通させる空気孔を更に有し、前記空気孔を介して、内部空間に空気が供給される、請求項10記載の水冷式燃焼装置。
【請求項12】
前記耐火層は、複数の耐火部材で構成され、表面に凸凹を有する、請求項1記載の水冷式燃焼装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃焼温度を維持しつつ耐久性のある水冷式燃焼装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、様々な目的のために燃焼装置が用いられる。廃棄物を燃焼処理するためであったり、燃焼によって生じる熱を利用するためであったりで、燃焼装置が用いられる。ここで、廃棄物を燃焼処理するためには、廃棄物を完全に燃焼させるための高温での燃焼を必要とする。例えば、生活廃棄物や産業廃棄物を燃焼させるためには、十分な高温での燃焼が必要である。特に、近年問題となっている廃棄プラスチックなどを燃焼処理するためには、十分な高温での燃焼処理が必要である。
【0003】
また、燃焼熱を得るための燃焼においても、不完全燃焼が生じることは好ましくない。このため、十分な温度での燃焼処理を行うことが必要である。
【0004】
十分な燃焼温度での燃焼がなされないと、燃焼において、多くの残渣が残ってしまったり不完全燃焼の残存物が残ってしまったりすることがある。また、燃焼が不十分であることで、毒性につながるガスが発生してしまったりすることもある。また、燃焼が不十分となることで、燃焼装置そのものが、破損や故障してしまうこともある。
【0005】
燃焼が燃焼温度の不足となることは、燃焼対象物の燃焼が不十分になるなどして好ましくない。逆に、燃焼温度が高すぎると、クリンカが発生して、燃焼装置の内壁にクリンカが大量に付着するなどの問題がある。クリンカの付着は、燃焼装置の性能低下や破損などに繋がる。また、クリンカ除去のために、燃焼装置の運転を中止してメンテナンスをしなければならないデメリットもある。
【0006】
また、燃焼させている間に、燃焼装置そのものの状況、外部環境、燃焼状態などによって、燃焼温度が変動することもある。例えば、燃焼温度が所望のレベルよりも高くなりすぎることもあり得るし、燃焼温度が所望のレベルよりも低くなりすぎることもあり得る。
【0007】
燃焼中の温度変動が大きいと、高温になり過ぎた場合の問題(クリンカの付着や燃焼装置の破損など)、低温になった場合の問題(不完全燃焼や残渣の発生など)が、生じてしまう。また、温度制御ができないことは、十分な燃焼をできず、燃焼対象物をしっかりと燃焼処理できない。また、燃焼熱を利用する場合には、燃焼熱の温度変化が大きく、燃焼熱の利用が適切に行えない問題も生じる。
【0008】
廃棄物などの燃焼対象物を燃焼させる場合にも、燃焼熱の利用の場合にも、所望の燃焼温度での燃焼がなされ、燃焼温度の変動が少ないことが望まれる。また、燃焼の過程で燃焼温度が上昇しすぎることも好ましくない。燃焼装置の損耗や破損に繋がり、耐久性や仕様期間を短くしてしまう問題になるからである。
【0009】
ここで、燃焼対象物は、廃棄物、廃プラスチック類、汚泥などさまざまである。また、燃焼に用いる燃料としては、化石燃料、バイオマス燃料、その他の有機燃料などがある。
【0010】
このように燃焼装置における燃焼温度の維持などに係る技術が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
特許文献1は、ガス燃焼装置10は、有底円筒状の第1燃焼室11と、第1燃焼室の開口部と連通するより大きい円筒状の第2燃焼室12と、第1燃焼室に設けられた少なくとも2つのガスバーナ3であって第1燃焼室の中心軸10xを挟んで対向するように配置され、それぞれが中心軸に沿って延びる細長開口部33を有して第1燃焼室の内周面に沿ってフィルム状の火炎Fを形成できるように構成された少なくとも2つのガスバーナ3と、第1燃焼室の外周面11aおよび底面11bを覆う水冷壁13とを備え、第2燃焼室の内周面には、燃料ガスまたは空気を供給するための開口部が設けられておらず、第1燃焼室および第2燃焼室の内周面に沿ってフィルム状の火炎Fが旋回するように構成されているガス燃焼装置を開示する。
【0013】
特許文献1は、水冷壁を備えることで、ガス燃焼装置の耐久性を高めることを目的としている。
【0014】
しかしながら、ガス燃焼装置での燃焼熱が高温になると水冷壁を循環する水は熱せられて水蒸気となる。この水蒸気は、循環路の出口から外部に放出される必要がある。このとき、燃焼装置が解放空間に備わっている場合には、周囲の施設、設備、作業者などに好ましくない。燃焼装置が閉鎖空間に備わっている場合には、閉鎖空間内部の気圧や湿度などの変動が大きくなり、閉鎖空間や燃焼装置の環境や耐久性へ悪影響が生じる問題がある。
【0015】
また、水冷壁による水冷能力が高すぎると、燃焼温度の高さが不十分となり、不完全燃焼となる問題もある。また、水冷壁が燃焼空間と接することで、温度差や膨張収縮が大きく生じて、燃焼装置の損耗や破損に繋がってしまう問題がある。
【0016】
また、水冷壁による水冷だけでは、燃焼装置での燃焼温度の変動に十分に対応できず、燃焼温度の一定範囲への維持が難しい問題があった。
【0017】
本発明は、これらの課題に鑑み、燃焼温度を維持しつつ、燃焼装置の損耗や破損を抑制して十分な燃焼を実現できる水冷式燃焼装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0018】
本発明の水冷式燃焼装置は、燃焼対象物を燃料により燃焼させる燃焼筒と、
前記燃焼筒に燃料を供給する燃料供給部と、
前記燃焼筒を支持する支持部と、を備え、
前記燃焼筒は、
前記燃焼対象物が燃焼する内部空間と、
前記内部空間の内壁に備わる耐火層と、
前記耐火層の外周に備わる水冷層と、を有し、
前記水冷層は、冷却水を循環可能である。
【発明の効果】
【0019】
本発明の水冷式燃焼装置は、燃焼温度を目標とする一定の範囲に維持することができる。一定範囲に維持できることで、燃焼不足や過剰燃焼を防止できる。燃焼不足による、燃焼処理の不十分さや不要なガス発生を抑制できる。また、過剰燃焼が防止できることで、クリンカの発生を抑制することもできる。
【0020】
水冷層への冷却水の供給条件を変化させることで、燃焼温度の一定範囲維持を実現できるので、燃焼対象物の種類や量、外部環境などの違いに応じた最適な燃焼動作を制御できる。
【0021】
また、耐火層を内側に水冷層を外側にする燃焼筒により、燃焼筒内部の燃焼と燃焼筒の冷却との並立による燃焼筒の損耗を抑制できる。結果として、燃焼装置の耐久性を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】本発明の実施の形態1における燃焼装置の側面図である。
【
図2】本発明の実施の形態1における燃焼装置の側面と正面とを示す説明図である。
【
図3】本発明の実施の形態1における燃焼筒の内部透視図である。
【
図4】本発明の実施の形態1における冷却水供給部を備える燃焼筒の模式図である。
【
図5】本発明の実施の形態2における燃焼装置の側面図である。
【
図6】本発明の実施の形態2における燃焼筒の内部透視図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本発明の第1の発明に係る水冷式燃焼装置は、燃焼対象物を燃料により燃焼させる燃焼筒と、
前記燃焼筒に燃料を供給する燃料供給部と、
前記燃焼筒を支持する支持部と、を備え、
前記燃焼筒は、
前記燃焼対象物が燃焼する内部空間と、
前記内部空間の内壁に備わる耐火層と、
前記耐火層の外周に備わる水冷層と、を有し、
前記水冷層は、冷却水を循環可能である。
【0024】
この構成により、耐火層と水冷層との組み合わせによる機能で、燃焼温度を一定範囲に維持することができる。
【0025】
本発明の第2の発明に係る水冷式燃焼装置では、第1の発明に加えて、前記内部空間での燃焼熱は、前記耐火層を介して前記水冷層に伝導し、
前記耐火層は、前記燃焼熱を、前記耐火層を介して伝導することにより、前記水冷層を循環する冷却水が蒸発することを防止する。
【0026】
この構成により、冷却水の蒸発が防止されて、燃焼装置周辺での温度上昇の抑制や作業の安全性を高めることができる。
【0027】
本発明の第3の発明に係る水冷式燃焼装置では、第1の発明に加えて、前記耐火層は、
前記内部空間の燃焼熱を、緩和して前記水冷層に伝達し、
前記水冷層の冷却熱を、緩和して前記内部空間に伝達する。
【0028】
この構成により、耐火層は、燃焼熱と冷却熱を緩和する緩衝材として機能を発揮する。
【0029】
本発明の第4の発明に係る水冷式燃焼装置では、第1の発明に加えて、前記耐火層は、前記内部空間の内壁全体に設けられる。
【0030】
この構成により、耐火層による機能が広く大きく実現できる。
【0031】
本発明の第5の発明に係る水冷式燃焼装置では、第1の発明に加えて、前記水冷層は、前記冷却水を循環させる冷却水循環路を備え、
前記冷却水循環路は、前記冷却水を供給する供給口と、循環した前記冷却水を排出する排出口とを有する。
【0032】
この構成により、冷却水が冷却層を循環して、燃焼筒のボディ部分を循環して全体を冷却できる。
【0033】
本発明の第6の発明に係る水冷式燃焼装置では、第5の発明に加えて、前記供給口を通じて、前記冷却水循環路に前記冷却水を供給する、冷却水供給部を更に備える。
【0034】
この構成により、冷却水の供給を継続して行うことができる。
【0035】
本発明の第7の発明に係る水冷式燃焼装置では、第6の発明に加えて、前記冷却水供給部は、前記冷却水の流量、流速および温度の少なくとも一つを制御する。
【0036】
この構成により、燃焼温度を一定範囲に維持することがより確実に行える。
【0037】
本発明の第8の発明に係る水冷式燃焼装置では、第7の発明に加えて、前記冷却水供給部は、前記内部空間での燃焼温度に基づいて、前記冷却水の流量、流速および温度の少なくとも一つを制御する。
【0038】
この構成により、燃焼温度を一定範囲に維持することが確実に行える。耐火層と水冷層との組み合わせに加えて、水冷層での冷却水の制御により、燃焼温度の制御が適切に行える。
【0039】
本発明の第9の発明に係る水冷式燃焼装置では、第7の発明に加えて、前記内部空間の燃焼温度を計測して、計測結果を前記冷却水供給部に通知する、温度測定部を更に備える。
【0040】
この構成により、実際の燃焼温度に対応して、燃焼温度を一定範囲に維持することができる。
【0041】
本発明の第10の発明に係る水冷式燃焼装置では、第1の発明に加えて、前記燃焼筒は、前記水冷層の外側に空気層を更に備える。
【0042】
この構成により、空気層による断熱と、内部空間への空気供給とを行える。
【0043】
本発明の第11の発明に係る水冷式燃焼装置では、第10の発明に加えて、前記空気層と前記内部空間とを連通させる空気孔を更に有し、前記空気孔を介して、内部空間に空気が供給される。
【0044】
この構成により、内部空間への空気供給がされて、効率よい燃焼を実現できる。
【0045】
本発明の第12の発明に係る水冷式燃焼装置では、第1の発明に加えて、前記耐火層は、複数の耐火部材で構成され、表面に凸凹を有する。
【0046】
この構成により、内部空間での燃焼対象物の攪拌を促進できる。また、耐火層のメンテナンスを容易に行える。
【0047】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施の形態を説明する。
【0048】
(発明者による解析)
バイオマス燃料、化石燃料、その他の燃料を用いて燃焼対象物を燃焼させる燃焼装置は、様々な場所や目的で使用されている。このような燃焼装置は、燃焼対象物を燃焼させれば十分という視点のものも多くあった。
【0049】
このようなレベルであると、燃焼温度や燃焼が不十分となって不完全燃焼となってしまう問題がある。逆に燃焼温度が高すぎると、クリンカが発生してクリンカ付着による問題が生じうる。これらを防ぐために、燃焼装置への空気の供給量の制御や燃料の種類などにより、燃焼温度を調整することが行われてきている。
【0050】
しかしながら、空気量の制御では限界がある。空気量を多くすることで燃焼温度を上げたり、空気量を減らして燃焼温度を下げたりしようとしても、燃焼装置の燃焼空間の体積との相対関係で、限界があるからである。
【0051】
また、燃料の種類によって燃焼温度を調整することも行われているが、近年の環境意識の高まりで、様々な燃料を使用することが難しい傾向もある。適切な燃焼温度で燃焼が可能な燃料が使用できないあるいは入手が難しい場合もあり、限界がある。勿論、燃焼対象物との関係や量によっても、燃焼温度の制御が難しいことも多い。
【0052】
このような中、燃焼筒の周囲に水冷パイプを設けて冷却水を供給することで、温度上昇を抑制することが検討されている。しかしながら、冷却水は燃焼筒を冷却する過程で蒸発して水蒸気になる。この水蒸気が周囲に放出されることでの、周辺作業での不便が生じる問題がある。
【0053】
発明者はこのような解析に基づいて、本発明に至った。
【0054】
(実施の形態1)
【0055】
図1は、本発明の実施の形態1における燃焼装置の側面図である。燃焼装置1は、燃焼筒2、燃料供給部3,支持部4とを、備える。燃焼筒2は、燃焼対象物が燃焼する内部空間21と、内部空間21の内壁に備わる耐火層5と、耐火層5の外周に備わる水冷層6と、を有する。燃焼筒2が、筒状の形状を有していることで、燃焼筒2は内部空間21を有する構造である。
【0056】
燃焼筒2は、燃焼対象物を燃料により燃焼させる。このとき、燃焼筒2の内部空間21において、燃焼対象物が燃焼する。燃焼対象物は、廃棄物などの燃焼により処理するものであり、バイオマス燃料や化石燃料などの燃料により、燃焼させられる。なお、燃焼対象物と燃料とを厳密に区別する必要はなく、燃焼筒2の内部空間21に投入されて、着火されてから燃焼させられる対象物を意味している。
【0057】
燃料供給部3は、燃料および燃焼対象物の少なくとも一方を供給する。上述の通り、燃焼対象物と燃料とを厳密に区別するものではないので、これらを燃焼のために内部空間21に供給することを、燃料供給部3は行う。
【0058】
支持部4は、燃焼筒2を支持する。
図1では、車輪などを有しており、燃焼装置1を移動可能にしつつ、燃焼筒2を支持している。支持部4により、燃焼筒2の支持がされると共に、その高さ、角度なども制御することができる。
【0059】
燃焼筒2は、筒状であることで形成される内部空間21を備える。内部空間21は、燃焼対象物が燃焼する空間である。このため、内部空間21において火炎が生じ、温度上昇が生じる。
【0060】
内部空間21の内壁には、耐火層5が備わる。耐火層5は、内部空間21の燃焼で生じる熱が、燃焼筒2の本体部に伝わることを抑制する。
【0061】
耐火層5の外周には水冷層6が備わる。水冷層6は、冷却水が供給される供給口61と、循環した冷却水が排出される排出口62とを有する。水冷層6は、冷却水を循環可能である。水冷層6は、冷却水の循環によって、内部空間21の燃焼での熱により、燃焼筒2の温度上昇を抑制できる。
【0062】
ここで、内部空間21の燃焼で生じる熱が耐火層5なしに水冷層6に伝わると、水冷層6を循環する冷却水の温度上昇が大きくなりすぎてしまう。冷却水は、内部空間21からの熱を受けて自身に伝導させることで、燃焼筒2の温度上昇を抑制するからである。
【0063】
冷却水の温度上昇が大きくなりすぎると、冷却水が蒸発して、排出口62から大量の水蒸気が排出されてしまう。水蒸気が排出されると、燃焼装置1が設置されている空間の温度上昇に繋がり、作業者の安全性への問題にも繋がってしまう。
【0064】
ここで、耐火層5が、水冷層6と内部空間21との間に介在することで、耐火層5は、内部空間21で生じる熱の水冷層6への伝導を抑制できる。この抑制により、水冷層6を循環する冷却水が蒸発してしまうのを抑制できる。結果として、水冷層6を循環する冷却水は、液体状態で排出口62から排出される。
【0065】
大量の水蒸気が排出されないことで、燃焼装置1の設置空間の温度上昇が抑制され、作業者の安全性も高まる。また、液体状態で排出口62から排出されるので、冷却水を回収して、再び水冷層6での循環に用いることができる。
【0066】
このように、内部空間21での燃焼熱は、耐火層5を介して水冷層6に伝導する。耐火層5は、その機能により、水冷層6への熱の伝導を抑制できる。抑制により、水冷層6での温度上昇を抑制できる。この結果、水冷層6を循環する冷却水が蒸発することを防止できる。
【0067】
耐火層5により極端な温度上昇から守られた水冷層6は、蒸発しづらい状態での冷却水の循環を維持することができる。これにより、水冷層6は、燃焼筒2の温度上昇を抑制でき、結果として、内部空間21での温度上昇を抑制できる。
【0068】
また、耐火層5は、内部空間21での燃焼熱が燃焼筒2に伝導することも抑制できる。この抑制により、内部空間21での温度上昇も抑制できる。すなわち、耐火層5は、水冷層6の冷却水の温度上昇を抑制するとともに燃焼筒2の温度上昇も抑制できる。これらが相まって、耐火層5は、内部空間21での温度上昇を抑制できる。耐火層5は、二つの方向での機能により、内部空間21での温度上昇を抑制できる。
【0069】
耐火層5と水冷層6とのそれぞれが機能を発揮することで、内部空間21の燃焼熱による温度上昇を抑制できる。
【0070】
また、耐火層5は、上述のように内部空間21での燃焼熱を緩和して水冷層6に伝導させるだけでなく、水冷層6からの冷却熱を緩和して内部空間21に伝達することもできる。水冷層6は、冷却水の循環により、内部空間21からの熱を吸い上げるだけでなく、冷却熱を内部空間21に伝導させる。
【0071】
冷却熱を伝導させるに際して、これを緩和させて伝導させることで、過剰な冷却も防止できる。すなわち、内部空間21での燃焼熱を下げすぎることも防止できる。
【0072】
これらのように、耐火層5と水冷層6との組み合わせにより、内部空間21の燃焼熱が高くなりすぎることを抑制しつつ、低くなりすぎることも抑制できる。すなわち、内部空間21での燃焼温度を一定範囲に保つように制御することが可能となる。
【0073】
燃焼温度が高すぎることによるクリンカなどの発生を抑制し、燃焼温度が下がりすぎることでの不完全燃焼も抑制できる。すなわち、適切な温度範囲での燃焼を実現できる。
【0074】
図2は、本発明の実施の形態1における燃焼装置の側面と正面とを示す説明図である。
図1の側面図に対応する正面図も併せて示している。
図2の左側の正面図は、燃焼筒2の開口部(先端)から見た状態を示している。また、側面図においては、
図1と同じ要素についての符号を、見やすさのために省略している。
【0075】
正面図に示されるように、内部空間21の内壁に耐火層5が設けられている。この耐火層5の外周に水冷層6が設けられている。すなわち、本体部、水冷層6,耐火層5の順序で燃焼筒2が構成されている。
【0076】
正面図から明らかな通り、水冷層6は、耐火層5を介して内部空間21と接しており、耐火層5が、内部空間21から水冷層6への熱の移動、水冷層6から内部空間21への熱の移動のそれぞれを、緩和させる緩衝材となっている。また、耐火層5そのものは、内部空間21での燃焼熱が燃焼筒2へ伝導することも抑制できる。これにより、燃焼筒2の耐久性を向上させることも可能である。
【0077】
各部の詳細やバリエーションなどについて説明する。
【0078】
(耐火層)
耐火層5は、内部空間21の内壁に設けられる。耐火層5の機能については、上述した通りである。
【0079】
ここで、耐火層5は、内部空間21の内壁の一部に設けられてもよいし、内壁全体に設けられてもよい。なお、内壁全体といっても、一部に備わってない領域があることを除外する厳密な意図ではない。
【0080】
内壁全体に備わることで、耐火層5は、より確実に熱伝導の緩衝材となる。
【0081】
また、耐火層5は、複数の耐火部材から構成されることも好適である。複数の耐火部材により構成されることで、耐火層5を、内部空間21の内壁に設けることが(製作時点で)容易となる。また、耐火層5の一部が損傷した場合に、その一部を交換することも容易である。特に、交換やメンテナンス時における作業コストや部材コストを低減できるメリットもある。
【0082】
また、耐火層5の表面(内部空間21に対向する面)に、凸凹が備わることも好適である。凸凹があることで、内部空間21における燃焼対象物の攪拌が容易となり、燃焼効率を向上させるからである。例えば、複数の耐火部材の組み合わせ部分が凸凹になることで、表面の凸凹が形成されることでもよい。
【0083】
(水冷層)
図3は、本発明の実施の形態1における燃焼筒の内部透視図である。燃焼筒2の内部構造が分かるように示している。水冷層6は、冷却水を循環させる冷却水循環路64を有する。冷却水循環路64は、冷却水が供給される供給口61から冷却水の供給を受ける。
【0084】
冷却水循環路64は、供給口61から供給される冷却水を循環させる。循環した冷却水は、排出口62から排出される。このとき、上述したように蒸発して水蒸気となってしまうことが抑制されるので、液体状態での排出が行われる(一部が水蒸気となることを含まない厳密な意図ではない)。
【0085】
冷却水循環路64で供給された冷却水は、水滞留層65において、一定時間滞留する。水滞留層65において一定時間の滞留があることで、燃焼筒2(内部空間21)の冷却能力を制御することができる。
【0086】
この滞留時間は、供給口61からの冷却水の供給速度によって定まる。供給速度が速ければ、水滞留層65での滞留時間が短くなる。逆の場合には長くなる。滞留時間が長いことでの冷却能力が高い燃焼状態もあり、滞留時間が短いこと(次々と冷却水がリフレッシュされる)での冷却能力が高い燃焼状態もある。
【0087】
このように、水滞留層65が備わることで、冷却能力を制御することも可能となる。
【0088】
また、
図3では、冷却水循環路64は、直線的な構造を有しているが、燃焼筒2において曲線を持った構造であったり、屈曲構造であったりしてもよい。また、冷却水循環路64の内径は、場所によって変化してもよい。
【0089】
(冷却水供給部)
図4は、本発明の実施の形態1における冷却水供給部を備える燃焼筒の模式図である。供給口61を通じて冷却水循環路64に冷却水を供給する冷却水供給部8を更に備えている。
【0090】
冷却水供給部8は、冷却水を収容しており、この冷却水を供給口61に供給できる。勿論、収容しているだけでなく、水道などに接続されていることで、常時冷却水を供給可能であることでもよい。
【0091】
冷却水供給部8は、冷却水の流量、流速および温度の少なくとも一つを制御可能である。流量は、単位時間当たりの流量であったり、ある時間での流量全体であったりを含む概念である。流量、速度などの変化により、冷却能力を変化させることが可能となる。また、冷却水の温度によっても、冷却能力を変化させることが可能である。
【0092】
冷却水供給部8は、内部空間21での燃焼温度に基づいて、冷却水の流量、流速および温度の少なくとも一つを制御することが好適である。燃焼温度が高すぎて冷却能力を上げるべき場合には、流量および流速の少なくとも一つを増加させる。この増加により、冷却能力が高まるからである。あるいは、温度を低下させる。同様の理由である。
【0093】
逆に、燃焼温度が適温より低くなってしまう場合には、流量および流速の少なくとも一方を減少させる。これにより、冷却が過度にならないように制御できる。同様に、温度を上げることも行われてもよい。
【0094】
また、時間軸の中で、内部空間21での燃焼温度の変化に対応して、冷却水供給部8は、供給する冷却水の流量、流速および温度の少なくとも一つを変化させればよい。
【0095】
ある時間帯では、燃焼温度が高くなり過ぎそうである場合には、冷却水供給部8は、冷却水の流量および流速の少なくとも一方を増加させる。また、冷却水の温度を下げてもよい。別の時間帯では、燃焼温度が低くなり過ぎそうである場合には、冷却水供給部8は、冷却水の流量および流速の少なくとも一方を低減させる。また、冷却水の温度を上げてもよい。
【0096】
このように、ダイナミックに冷却水の制御を行うことで、燃焼が行われている間における燃焼温度を、一定範囲に保つことができる。この結果、過剰燃焼によるクリンカの発生や不完全燃焼を防止できるようになる。
【0097】
また、水蒸気の発生を抑制できるので、燃焼装置1の設置している空間での温度上昇を抑制したり、作業者の安全性を高めたりできる。加えて、排出口62から排出される冷却水を回収して、再使用することもできる。環境負荷も軽減できる。
【0098】
(実施の形態2)
【0099】
次に実施の形態2について説明する。
【0100】
実施の形態2においては、各種バリエーションについて説明する。
【0101】
(温度測定部)
【0102】
図5は、本発明の実施の形態2における燃焼装置の側面図である。一部の要素を模式的に示している。
図5の燃焼装置1は、実施の形態1で説明した冷却水供給部8に加えて、温度測定部9を更に備える。温度測定部9は、内部空間21の燃焼温度を測定する。
【0103】
温度測定部9は、内部空間21の燃焼温度を測定して、この結果を冷却水供給部8に通知する。この通知を受けた冷却水供給部8は、実施の形態1で説明したように、冷却水の流量、流速および温度の少なくとも一つを制御する。
【0104】
温度測定部9で測定された実際の燃焼温度に基づいて、冷却水による水冷が制御される。これにより、実際の燃焼温度を一定範囲に維持しつつ燃焼を行わせることがより正確にできる。
【0105】
特に、燃焼温度の実際の変化にリアルタイムに対応して冷却水の制御を行えるので、燃焼温度が過剰になったり、低下しすぎたりすることを、高い精度で防止できる。これにより、過剰燃焼や不完全燃焼の発生を抑制できる。
【0106】
(空気層)
図3,
図4に示されるように、燃焼筒2は、水冷層6の外側に空気層7を更に備えることも好適である。空気層7は、断熱機能を発揮して内部空間21での燃焼を外部空間に伝えることを抑制できる。これにより、燃焼装置1が設置されている空間での室温上昇を抑制できる。
【0107】
また、空気層7から内部空間21に空気が供給される。空気層7と内部空間21とを連通させる空気孔が更に備わる。
【0108】
図6は、本発明の実施の形態2における燃焼筒の内部透視図である。
図6には、燃焼筒2において、空気層7と内部空間21とを連通させる空気孔71が備わっている構成が示されている。空気孔71は、空気層7の空気を内部空間21に送り込む。この空気の送り込みにより、内部空間21での燃焼が制御される。
【0109】
供給される空気量が多い場合には、燃焼能力が高まる。逆に空気量が少ない場合には、燃焼能力が低下する。これらの燃焼能力の上下により、燃焼温度を制御することもできる。燃焼能力が高ければ、燃焼温度は上昇する傾向にあり、燃焼能力が低ければ、燃焼温度は低下する傾向にあるからである。
【0110】
これにより、燃焼を促進させたり弱めたりすることに加えて、燃焼温度の一定範囲を維持させることにもつながる。空気孔71からの空気の供給の制御が、燃焼と燃焼温度の制御の一助となる。
【0111】
空気層7は、外界と繋がっていることで、外界からの空気を次々と取り込むことができる。これにより、空気孔71を通じた空気供給も次々と行われる。フレッシュな空気が次々と供給されることで、内部空間21での燃焼も、効率的に維持される。
【0112】
(燃料)
燃料としては、化石燃料、バイオマス燃料などの燃焼用の燃料である。また、燃焼対象物としては、生活廃棄物、産業廃棄物、汚染土および廃プラスチックなどがある。これらが燃焼装置1により燃焼させられる。
【0113】
(燃焼熱)
燃焼装置1での燃焼により得られた熱は、発電機、ボイラーなどに使用されればよい。燃焼対象物の燃焼が行われることに加えて、燃焼熱を種々に利用することで、燃焼装置1の活用範囲が広がる。
【0114】
以上、実施の形態1~2で説明された水冷式燃焼装置は、本発明の趣旨を説明する一例であり、本発明の趣旨を逸脱しない範囲での変形や改造を含む。
【符号の説明】
【0115】
1 水冷式燃焼装置
2 燃焼筒
21 内部空間
3 燃料供給部
4 支持部
5 耐火層
6 水冷層
61 供給口
62 排出口
64 冷却水循環路
65 水滞留層
7 空気層
71 空気孔
8 冷却水供給部
9 温度測定部