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特開2024-96129Pichia kluyveriを用いたアルコールフリーの発酵野菜ジュースの製造
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  • 特開-Pichia  kluyveriを用いたアルコールフリーの発酵野菜ジュースの製造 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024096129
(43)【公開日】2024-07-12
(54)【発明の名称】Pichia kluyveriを用いたアルコールフリーの発酵野菜ジュースの製造
(51)【国際特許分類】
   A23L 19/00 20160101AFI20240705BHJP
   A23L 5/00 20160101ALI20240705BHJP
   A23L 5/20 20160101ALI20240705BHJP
   A23L 2/00 20060101ALI20240705BHJP
   A23L 2/02 20060101ALI20240705BHJP
【FI】
A23L19/00 A
A23L5/00 J
A23L5/20
A23L2/00 B
A23L2/02 E
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2024061596
(22)【出願日】2024-04-05
(62)【分割の表示】P 2021507489の分割
【原出願日】2019-07-23
(31)【優先権主張番号】18188644.1
(32)【優先日】2018-08-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(71)【出願人】
【識別番号】503260310
【氏名又は名称】セーホーエル.ハンセン アクティーゼルスカブ
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100117019
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 陽一
(74)【代理人】
【識別番号】100141977
【弁理士】
【氏名又は名称】中島 勝
(74)【代理人】
【識別番号】100150810
【弁理士】
【氏名又は名称】武居 良太郎
(74)【代理人】
【識別番号】100182730
【弁理士】
【氏名又は名称】大島 浩明
(72)【発明者】
【氏名】ソフィーイ セレンス
(72)【発明者】
【氏名】ヤン ヘンドレク スビーガス
(57)【要約】
【課題】本発明は、Pichia kluyveriと共に野菜ジュースを発酵することを含む野菜ジュースの調製方法に関する。
【解決手段】この方法により得られる発酵野菜ジュースは、良好なフレーバープロファイル、特に低められた土のようなフレーバーを有する。本発明はまた、飲料又は他の消費者製品を得るために、さらに処理され得る。野菜基質を発酵するために有用なPichia kluyveri株も提供する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
野菜ジュースの土のような異臭を低める方法であって、以下の工程
a)根菜を含む基質を提供する工程、
b)少なくとも1つのPichia kluyveri株を、前記基質に添加する工程、
c)Pichia kluyveri株を含む基質を発酵させる工程、
d)発酵された野菜ジュースを入手する工程、
を含んで成る方法。
【請求項2】
前記根菜が、ニンジン、ビーツ、パースニップ、スウェード、ウコン、生姜、ジャガイモ、サツマイモ、カブ、ルタバガ、ユカ、コールラビ、タマネギ、ニンニク、セロリの根、セイヨウワサビ、大根、ヒカマ、ラディッシュ、キクイモ及び山芋から成る群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記Pichia kluyveriが、下記群:
a)German Collection of Microorganisms and Cell Cultures (Deutsche Sammlung von Mikroorganismen und Zellkulturen GmbH; DSMZ), Inhoffenstr. 7B, D-38124 Braunschweigで、2014年3月5日に寄託され、そして受託番号DSM28484を与えられたPichia kluyveri、
b)University of Auckland, School of Biological Sciences, Auckland 1142, New Zealand によりthe National Measurement Institute, 541-65 Clarke Street, South Melbourne, Victoria 3205, Australiaで、2006年8月24日に寄託され、そして受託番号V06/02271を与えられたPichia kluyveri、
c)University of Auckland, School of Biological Sciences, Auckland 1142, New Zealand によりthe National Measurement Institute, 541-65 Clarke Street, South Melbourne, Victoria 3205, Australiaで、2006年8月24日に寄託され、そして受託番号V06/02272を与えられたPichia kluyveri、及び
d)a)、b)又はc)の変異体、
から成る群から選択される、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
酢酸イソアミルと酢酸エチルの重量比が少なくとも0.1、好ましくは少なくとも0.2であり、そして/又は酢酸イソアミルとエタノールの重量比が少なくとも0.0002、好ましくは少なくとも0.0008である、請求項1~3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
工程b)がさらに、基質に乳酸菌株を添加することを含む、請求項1~4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
工程c)における発酵が、4~35℃、より好ましくは、18~22℃の温度で行われる、請求項1~5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
前記発酵野菜ジュース中のβ-フェニルエタノールが少なくとも0.4ppmである、請求項1~6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
前記発酵野菜ジュース中のα-テルピネオールが少なくとも50ppbである、請求項1~7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
前記発酵野菜ジュース中のc-ウイスキーラクトン又はバニリンが少なくとも4ppbである、請求項1~8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
前記ジュースがPichia kluyveriを含む、請求項1~9のいずれか1項に記載の方法により得られた発酵野菜ジュース。
【請求項11】
根菜及びPichia kluyveriを含む発酵野菜ジュース。
【請求項12】
前記Pichia kluyveriが、下記群:
a)German Collection of Microorganisms and Cell Cultures (Deutsche Sammlung von Mikroorganismen und Zellkulturen GmbH; DSMZ), Inhoffenstr. 7B, D-38124 Braunschweigで、2014年3月5日に寄託され、そして受託番号DSM28484を与えられたPichia kluyveri、
b)University of Auckland, School of Biological Sciences, Auckland 1142, New Zealand によりthe National Measurement Institute, 541-65 Clarke Street, South Melbourne, Victoria 3205, Australiaで、2006年8月24日に寄託され、そして受託番号V06/02271を与えられたPichia kluyveri、
c)University of Auckland, School of Biological Sciences, Auckland 1142, New Zealand によりthe National Measurement Institute, 541-65 Clarke Street, South Melbourne, Victoria 3205, Australiaで、2006年8月24日に寄託され、そして受託番号V06/02272を与えられたPichia kluyveri、及び
d)a)、b)又はc)の変異体、
から成る群から選択される、請求項11に記載の発行野菜ジュース。
【請求項13】
根菜を発酵するためへのPichia kluyveriの使用。
【請求項14】
前記Pichia kluyveriが、下記群:
a)German Collection of Microorganisms and Cell Cultures (Deutsche Sammlung von Mikroorganismen und Zellkulturen GmbH; DSMZ), Inhoffenstr. 7B, D-38124 Braunschweigで、2014年3月5日に寄託され、そして受託番号DSM28484を与えられたPichia kluyveri、
b)University of Auckland, School of Biological Sciences, Auckland 1142, New Zealand によりthe National Measurement Institute, 541-65 Clarke Street, South Melbourne, Victoria 3205, Australiaで、2006年8月24日に寄託され、そして受託番号V06/02271を与えられたPichia kluyveri、
c)University of Auckland, School of Biological Sciences, Auckland 1142, New Zealand によりthe National Measurement Institute, 541-65 Clarke Street, South Melbourne, Victoria 3205, Australiaで、2006年8月24日に寄託され、そして受託番号V06/02272を与えられたPichia kluyveri、及び
d)a)、b)又はc)の変異体、
から成る群から選択される、請求項13に記載の使用。
【請求項15】
German Collection of Microorganisms and Cell Cultures (Deutsche Sammlung von Mikroorganismen und Zellkulturen GmbH; DSMZ), Inhoffenstr. 7B, D-38124 Braunschweigで、2014年3月5日に寄託され、そして受託番号DSM28484を与えられたPichia kluyveri、及びその変異体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、植物由来の低アルコール飲料又はノンアルコール飲料の調製、及びより具体的には、野菜ジュースの調製に関する。本発明はまた、そのような飲料を調製するためへの微生物の使用にも関する。
【背景技術】
【0002】
野菜は、人体に必要とされる重要な栄養素の貴重な食事源である。野菜ジュースベースの食事療法はますます人気が高まっている。野菜ジュースは、糖が少ないので、フルーツジュースの健康的な代替物として見なされている。しかしながら、野菜ジュースに関する問題は、フレーバープロファイルが必ずしも魅力的であるとは限らないことである。新鮮な野菜ジュースのフレーバーは、土(例えば、ビートの根、ニンジン及びキャベツジュース)、又は硫酸(例えば、ネギ及びタマネギジュース)である可能性があり、これが、野菜ジュースがフルーツジュースほど口当たりが良くない主な理由である。広範囲の消費者に受け入れられる野菜ジュースを製造することは、風味、香り、外観及び満足のいく口当たりのバランスをとることを含む、絶え間ない挑戦である。
【0003】
さらに、野菜ジュースが低温殺菌により長期間保存のために熱処理される場合、この工程の間、より多くの異臭が生成されるか、又は増強される。異臭のいくつかは調理された野菜として記載されており、消費者にとって魅力的ではない。この問題に対処するために、ジュース業界は、フルーツジュースに野菜ジュースを混合することが良くある。
【0004】
発酵工程は、飲料の味覚を改善するために使用されて来た。Corona et al. (Corona, Onofrio, et al. "Characterization of kefir-like beverages produced from vegetable juices." LWT-Food Science and Technology 66 (2016): 572-581)は、乳酸菌及びSaccharomyces cerevisiaeを含むケフィア培養による野菜ジュース及びフルーツジュースの発酵を記載している。乳酸菌は、Leuconostoc mesenteroides、Lactococcus lactis、Lactobacillus kefiri、及び Lactobacillus fermentumから成る。発酵野菜ジュース及びフルーツジュースは、15人の訓練を受けていないパネリストの感覚パネルにより分析された。好ましいフレーバープロファイルを有した唯一のジュースは、ニンジンケフィアのような飲料であった。しかしながら、そのニンジンケフィアのような飲料は、3%以上のアルコール含有率を有し、これは健康的な飲料には望ましくなかった。
【0005】
カナダ特許第108244425号は、ビート根(Beta vulgaris)ジュースを乳酸菌により発酵させ、そしてトマトジュースとブレンドすることにより調製された機能的飲料を開示している。Lactobacillus plantarum、Lactobacillus rhamnosus 及び Lactobacillus fermentumが、ビート根ジュースを発酵するために使用される。さらに、レモンエキス、ペパーミントエキス、フェンネルエキス、ハチミツ及びイソマルトオリゴ糖を含む成分が添加され、香り及びさわやかな味覚に仕上げられている。
【0006】
国際公開第2012066176号は、CECT13055として寄託されたPichia kluyveri株の使用によるアルコール発酵オレンジジュースの製造を記載している。この菌株は、オレンジジュースに存在する還元糖を発酵することができ、非還元糖、例えばショ糖を含む最終製品を導き、そしてそれにより、心地よい味わいの製品を提供する。さらに、最終製品は典型的には、約2.5%のアルコール含有率を有する。
【0007】
国際公開第20011134952号は、グレープジュース中にPichia kluyveriを接種することを開示している。酵母は、凍結形で添加され、培地に添加される前、液体形に解凍される。凍結酵母は、細胞数及びその結果としての活性を著しく損なうことなく、直接的接種のために使用され得ることが見出された。参考文献は、飲料の味の改善については記載していない。
【0008】
米国特許第20170258113号は、Pichia kluyveriXT110を用いてレッドベイベリー発酵ジュースの調製方法を開示している。開示されているように、Pichia kluyveriXT110は、2.5~3.0のpHで発酵することができ、これは、アントシアニンを安定して維持するのに重要であり、そして従って、最終製品に深刻な退色を引起さない。調製されたレッドベイベリーは、明るい色、高いアントシアニン含有率、豊かなフルーティー味及びバランスの取れた風味、及び低アルコール含有率(0.5%以下)を有する。
【0009】
国際公開第2015117978号は、リンゴ及び/又はなしジュースからサイダーを調製するために、2つのPichia kluyveri株PK-KRI及びPK-KR2を使用することを開示している。その製品は、高められた量の酢酸ヘキシル及び他の所望のフレーバー化合物、特に酢酸ヘキシル及び酢酸イソブチルを含むことがわかった。2つのPichia kluyveri株PK-KR1及びPK-KR2は、国際公開第2009110807号に最初に開示され、ここで、それらは、ワイン発酵工程でチオールレベル(3MH及び3MHA)を高めるために使用され得ることが記載されている。3MH及び3MHAは、独特のグレープフルーツ及びパッションフルーツのような香り及び風味を有する。PK-KR1及びPK-KR2はまた、種々のホップの品種を用いて、ビール(国際公開第2013030398号)及び低アルコール又はアルコールフリービール(国際公開第2014135673号)を醸造するためにも使用された。
【0010】
しかしながら、野菜ジュースの風味を高めるための解決策は存在しない。所望のフレーバープロファイル、例えば低められた不要な異臭を有する野菜ジュースを調製するための新規方法が必要である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、増強された風味を有する野菜ジュースを調製するための新規方法を提供する。Pichia kluyveriが、改善されたフレーバープロファイル及び従って嗜好性を有する製品を得るために野菜ジュースを発酵することに好都合に使用され得ることが発見された。
【課題を解決するための手段】
【0012】
前述のように、フルーツジュースとは対照的に、野菜ジュースのフレーバープロファイルは必ずしも魅力的ではない。従って、本発明は、機械的技法を必要とせず、又はフルーツジュースを混合する必要なしに、その風味を改善するための異なるアプローチを提供する。
【0013】
より詳細には、Pichia kluyveriが、酢酸イソアミル、酢酸イソブチル、β-フェニルエタノール、α-テルピネオール、c-ウイスキーラクトン、及びバニリンを含む、高められたレベルのフレーバー化合物を生成するために使用され得ることが見出された。
【0014】
感覚的評価によれば、土のような異臭が、Pichia kluyveriを用いての発酵野菜ジュースにおいてはるかに低いことが明確に示されている。発酵ジュースはまた、よりフルーティーで且つスパイシーな味を有し、そして未発酵ジュースに比較して、全体的に好まれる。
【0015】
本発明は、第1の側面によれば、根菜材料を含む飲料を調製するためにPichia kluyveriの使用を提供する。Pichia kluyveriは、野菜ジュース、特に所望しない土のような風味を有する野菜ジュースを処理するために都合よく使用され得ることが見出された。土のような風味は、土壌内又は土壌と接触して育てられた植物材料から調製された野菜ジュースに良く見られる。従って、土のような味を低めることにより野菜ジュースの風味を増強することが所望される。従って、本発明は、機械的技法の使用又はフルーツジュースへの混合を含む、産業界で使用される現在の方法とは異なるフレーバープロファイルを改善するための別の戦略を提供する。
【0016】
好ましいPichia kluyveriは、Pichia kluyveri株1、Pichia kluyveri株2及びPichia kluyveri株3、並びにそれらの変異体を含む。
【0017】
別の側面によれば、本発明は、植物材料の土のような風味を低めるためにPichia kluyveriの使用を提供する。その使用は、植物材料、特に根菜の発酵を含む。
【0018】
さらなる側面によれば、本発明は、その土のような風味を低めるために野菜ジュースを処理する方法、及びそれから得られた野菜ジュースを提供する。1つの実施形態によれば、前記方法は、以下の工程:(a)根菜を含む基質を提供する工程、(b)少なくとも1つのPichia kluyveri株を、前記基質に添加する工程、(c)前記基質を発酵させる工程、及び(d)発酵野菜ジュースを入手する工程、を含む。前記基質は、複数の種類の根菜を含むことができることが理解されるべきである。
【0019】
他の側面によれば、本発明はまた、本出願に記載される方法により得られる野菜ジュース、並びに1又は2以上のPichia kluyveri、例えば本明細書に記載されるPichia kluyveri株を含む野菜ジュースを提供する。
【0020】
本発明はさらに、German Collection of Microorganisms and Cell Cultures (Deutsche Sammlung von Mikroorganismen und Zellkulturen GmbH; DSMZ), Inhoffenstr. 7B, D-38124 Braunschweigで、2014年3月5日に寄託され、そして受託番号DSM28484を与えられた新規菌株Pichia kluyveriを提供する。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1図1は、Pichia kluyveri株1及びPichia kluyveri株2を用いての発酵により調製されたビート根ジュースの感覚的分析を示す。
【発明を実施するための形態】
【0022】
定義:
本明細書で使用される場合、用語「野菜」とは、ヒトにより消費される植物の食用部分を指す。植物の食用部分は、以下であり得る:根、例えばルタバガ、ビート、ニンジン、サツマイモ;塊茎または貯蔵茎、例えばジャガイモ及びサトイモ;アスパラガス及びコールラビのような茎;芽、例えばキャベツのつぼみ;球根、例えばタマネギ及びニンニク;葉柄、例えばセロリ及びルバーブ;葉、例えばキャベツ、レタス、パセリ、及びほうれん草;未熟な花、例えばカリフラワー、ブロッコリー、及びアーティチョーク。
【0023】
本明細書で使用される場合、用語「根菜」とは、土壌と接触している植物野菜の食用部分である。根菜は一般的に、炭水化物の形でエネルギーを貯蔵するために拡大する貯蔵器官である。本明細書で使用されるような[根菜]は、植物学的に定義される根に限定されず、また真の根(例えば、直根及び塊茎)及び茎(例えば、球根、球茎、根茎及び塊茎)の両方を含むことが注目されるべきである。
【0024】
一般的に、「異臭」とは、食品中の不快な味及び/又は臭いの存在を指す。「土のような」とは、土に似た風味である。この風味は食品では望ましくないので、「土のような異臭」として指す。土のような臭いは、ゲオスミンの存在に大きく起因している(Gerber, N. N., and H. A. Lechevalier. "Geosmin, an earthy-smelling substance isolated from actinomycetes." Applied microbiology 13.6 (1965): 935-938)。ゲオスミンは、土壌において特徴づけられており(Buttery, Ron G., and John A. Garibaldi. "Geosmin and methylisoborneol in garden soil." Journal of agricultural and food chemistry 24.6 (1976): 1246-1247)、そしてビートのような根菜の土のような臭いの原因であることが示されている(Acree, T. E., et al. "Geosmin, the earthy component of table beet odor." Journal of Agricultural and Food Chemistry 24.2 (1976): 430-431)。
【0025】
しかしながら、ゲオスミンは、特定の装置が必要とされるために、測定するが困難である。しかしながら、ゲオスミンにより引起される土のような風味は、当業界において知られている感覚的分析を用いて、確実に評価され得る。従って、「土のような風味を低める」とは、本明細書で使用される場合、土のような風味の知覚の程度を低めることを指す。これは、Pichia kluyveriによる処理の前後の土のような風味を比較することにより実行され得る。これは、Meilgaard et al (Meilgaard, Morten C., B. Thomas Carr, and Gail Vance Civille. Sensory evaluation techniques. CRC press, 1999)に記載されるような、又は本出願に記載されるような、当業界において知られている感覚的評価法により評価され得る。
【0026】
土のような風味は、実施例に記載されるような感覚的分析により測定され得る。
【0027】
用語「基質」とは、Pichia kluyveriにより発酵できる材料を指す。
【0028】
用語「アルコールフリー」とは、本明細書においては、0.5%v/v以下のアルコール含有率を指す。
【0029】
製品の「風味を増強する」という用語は、製品のフレーバープロファイルを改善し、結果的に、より口当たりの良いものにすることを意味する。これは、例えば、当業者に知られている感覚的評価により決定され得る。
【0030】
用語「発酵」とは、一般的に、微生物による有機材料の酵素分解(消化)を含む任意の活性又は工程を指す。用語「発酵」とは、嫌気性及び好気性工程の両方、並びに1又は2以上の嫌気性及び/又は好気性段階の組合わせ又は連続を含む工程を包含する。
【0031】
用語「変異体」とは、例えば遺伝子工学、放射線及び/又は化学的処理により、本発明の菌株に由来する菌株として理解されるべきである。変異体は、機能的に同等の変異体、例えば母株と実質的に同じか又は改善された特性を有する変異体であることが好ましい。本文脈においては、本発明の変異体は、土のような風味の低減に関して、同じか又は改善された特性を有する変異体が好ましい。そのような変異体は、本発明の一部である。変異体は、化学変異原、例えばエタンメタンスルホン酸塩(EMS)又はN-メチル-N′-ニトロ-N-ニトログアニジン(NTG)による処理を含む任意の従来使用される突然変異誘発処理、UV光又は自発的に発生する変異原に本発明の菌株をゆだねることにより得られる菌株であり得る。変異体は、いくつかの突然変異誘発処理を受けた可能性がある(単一の処理は、1つの突然変異誘発工程、続くスクリーニング/選択工程と理解されるべきである)が、現在、1000以下、100以下、20以下、10以下、又は5以下の処理が行われることが好ましい。現在好ましい変異体においては、細菌ゲノム中の5%未満、又は1%未満又は0.1%未満のヌクレオチドが、母株に比較して、変更されている(例えば、置換、挿入、欠失又はそれらの組合せにより)。
【0032】
本発明は、アルコールフリー飲料の技術的分野である。そのような飲料は、0.5%(v/v)未満のエタノール濃度を有することが理解されるべきである。
【0033】
アルコール消費を制限しようとしている健康志向の消費者に後押しされ、ノンアルコール及び低アルコールセクターが急速に成長している。特に、野菜ジュースは、健康志向の消費者の間でますます人気が高まっている。しかしながら、野菜ジュースのフレーバープロファイルは、必ずしも魅力的ではない。従って、市販向けに改善されたフレーバープロファイルを有する製品を提供することが常に必要とされる。
【0034】
第1の側面によれば、本発明は、少なくとも1つのPichia kluyveri株を、根菜を含む基質に添加し、そして前記基質を発酵し、発酵野菜ジュースを得ることを含む、発酵野菜ジュースを得る方法を提供する。本発明は、Pichia kluyveriが、野菜ジュースの処理、特に土のような異臭の低減、並びにフルーティー及びフラワー風味の増強において有用な好都合な特性を有するという発見に基かれている。
【0035】
1つの好ましい実施形態によれば、前記方法は、
a)根菜を含む基質を提供し、
b)少なくとも1つのPichia kluyveri株を、前記基質に添加し、そして
c)Pichia kluyveri株を含む基質を発酵させることを含む。
【0036】
別の好ましい実施形態によれば、前記方法は、
a)根菜を含む基質を提供し、
b)基質のpHを調節し、
c)少なくとも1つのPichia kluyveri株を、前記基質に添加し、そして
d)Pichia kluyveri株を含む基質を発酵させることを含む。
【0037】
第2の側面によれば、本発明はまた、本明細書に記載される方法により得られた発酵野菜ジュースも提供する。
【0038】
発酵野菜ジュースは、アルコールフリーである。例として、発酵野菜ジュース中のアルコール含有率(v/v)は、0.5%未満、例えば0.4未満、例えば0.3%未満、例えば0.2%未満、例えば0.1%未満、例えば0.09%未満、例えば0.08%未満である。
【0039】
Pichia kluyveriは、土のような風味を有する全ての野菜を処理するために、特に有用であると考えられる。これは、特に、根菜を含む。
【0040】
多くの野菜ジュースの特徴である土のような風味は、芳香族化合物のゲオスミンにより引起される。ゲオスミン(トランス-1、10-ジメチル-トランス-9-デカロール)は、非常に明確な土のような、カビ臭い、ビート根、さらにカブの風味を有する化合物であり、そして10ppmまでの非常に低い感覚閾値を有する。それは、種々の放線菌及び真菌の代謝物である。魚及びワインを含む、種々の食品において土のような特性の原因であることが見出された。いくつかの細菌、例えばBacillus subtilis及びPseudomonas species種は、ゲオスミンを生分解することが報告されている。しかしながら、Pichia kluyveriによる発酵が、ゲオスミンからの異臭の低められた知覚を導くことは、報告されていない。
【0041】
本発明の野菜ジュースを調製するために、根菜を含む基質が提供される。
【0042】
根菜は、1又は2以上の種類の野菜に由来することができる。例えば、基質は、1つの特定の根菜又は異なった種類の根菜からの材料を含むことができた。さらに、基質はまた、他の植物材料をさらに含むことができる。例えば、基質は、ある種の根菜及び果物の混合物を含むことができる。別の実施形態によれば、基質は本質的に、根菜から成る。
【0043】
本発明の基質は、根菜を含む。例えば、根菜は、根菜の既知の種のいずれか1つである。適切な根菜は、真の根、例えば塊根及び直根、及び非根、例えば塊茎、根茎、球茎及び球根を含むが、但しそれらだけには限定されない。
【0044】
真の根菜は、直根及び/又は塊根であり得る。直根の例は、以下を含むが、但しそれらだけには限定されない:アラカチャ(Arracacia xanthorrhiza)、ブッシュニンジン(Abelmoschus moschatus)、ビート及びマンゲルワーゼル(Beta vulgaris)、ルタバガ及びカブ(Brassica spp。)、ブラッククミン(Bunium persicum)、ゴボウ(Arctium)、ニンジン(Daucus carotasubsp。sativus)、セロリ(Apium graveolens rapaceum)、大根(Raphanus sativusvar。longipinnatus)、タンポポ(Taraxacum spp。)、マカ(Lepidium meyenii)、ヤムデイジー(Microseris scapigera)、ヒカマとアヒパ(Pachyrhizus spp。)、パースニップ(Pastinaca sativa)、パセリの根(Petroselinum spp。)、ダイコン(Raphanus sativus)、黒サルシファイ(Scorzonera hispanica)、スキレット(Sium sisarum)、サルシファイ(Tragopogon spp。)、及びブッシュポテト(Vigna lanceolata)。
【0045】
塊根の例は、以下を含むが、但しそれらだけには限定されない:黄色いユリヤムイモ(Amorphophallus galbra)、ピグナット又はアースナッツ(Conopodium majus)、ナガイモ、中国ナガイモ、韓国ヤマノイモ(Dioscorea opposita)、ネイティブジンジャー(Hornstedtia scottiana)、サツマイモ(Ipomoea batatas)、デザートヤム(Ipomoea costata)、キャッサバ又はユカ又はマニオック(Manihot esculenta)、マウカ又はチャゴ(Mirabilis extensa)、ブレッドルート、ティプシン、又はプレーリーカブ(Psoralea esculenta)、及びヤーコン(Smallanthus sonchifolius)。
【0046】
根のような茎を含む根菜の例は、フロリダアロールート(Zamia pumila)である。
【0047】
非根は、塊茎、根茎、球茎及び/又は球根を含む。球茎の例は、以下を含むが、但しそれらだけには限定されない:こんにゃく(Amorphophallus konjac)、サトイモ(Colocasia esculenta)、中国シログワイ(Eleocharis dulcis)、エンセーテ(Ensete spp。)、スイレン(Nelumbo nucifera)、アローヘッド又はワパトゥー(Sagittaria spp。)、ヤウティアまたはマランガ(Xanthosoma spp.)。
【0048】
根茎の例は、以下を含むが、但しそれらだけには限定されない:ウコン(Curcuma longa)、高麗人参(Panax ginseng)、レンガレンガ及びバニラユリ(Arthropodium spp.)、カンナ(Canna spp。)、ti(Cordyline fruticosa)、クズウコン(Maranta arundinacea)、ハス(Nelumbo nucifera)、ガマ又はガマ(Typha spp.)、ショウガ、ガランガル(Zingiber officinale)。
【0049】
塊茎の例は、以下を含むが、但しそれらだけには限定されない:ホッグジャガイモ又は落花生(Apios americana)、タイガーナッツ又はショキョウガヤツリ(Cyperus esculentus)、ヤムイモ、ube(Dioscorea spp。)、エルサレムアーティチョーク又はキクイモ(Helianthus tuberosus)、カンゾウ(Hemerocallis spp.)、キュウコンエンドウ(Lathyrus tuberosus)、ニュージーランドのヤムイモとオカ(Oxalis tuberosa)、ケンビリ、ダゾ(PlectranthusedulisとP.esculentus)、ジャガイモ(Solanum tuberosum)、チョロギ又はクロスネ(Stachys affinis)、マシュア又はアヌ(Tropaeolum tuberosum)、及びウルーコ(Ullucus tuberosus)。
【0050】
球根の例は、以下を含むが、但しそれらだけには限定されない:ニンニク、玉ねぎ、エシャロット、ネギなど(Allium spp.)、quamash(Camassia quamash)、ブッシュタマネギ(Cyperusbulbosus)、カタクリ(Erythronium spp.)、フェンネル(Foeniculum vulgare)、及びユリ(Lilium spp.)。
【0051】
根菜は、それらの栄養成分、例えば炭水化物の組成において異なる場合がある。例えば、塊茎は、より単純な糖を含むことができる真の根菜よりも多くの澱粉を含むことができる。 真の根及び非根の両方は、他のビタミン、ミネラル及び他の栄養素、例えば繊維、カリウム、ビタミンA、カルシウム、ビタミンB6、ビタミンC、ビオチン、ビタミンB1、ビタミンB2、ビタミンB3、鉄、銅、及びマグネシウムの供給源である。
【0052】
野菜ジュースを調製するために使用される適切な根菜は、単子葉植物、双子葉植物、又はそれらの組合せであり得る。単子葉植物の例は、以下を含む:ヤムイモ、例えば、ホワイトヤム、イエローヤム、Kokoro、日本マウンテンヤム、紫山芋、ヒカマ、サトイモ、又はそれらの組合せ。
【0053】
双子葉植物の例は、以下を含む:さつまいも、バタス、ブラジルさつまいも、Dingessさつまいも、日本紫芋、沖縄さつまいも、モクアウサツマイモ、コヴィントンサツマイモ、ボーリガードサツマイモ。
【0054】
本明細書に記載される基質は、例えば1又は2以上の種類の根菜を含むことができる。例えば、基質は、ニンジン及びビート根を含むことができる。いくつかの実施形態によれば、基質は、2,3,4,5,6,7,8,9,10又はそれ以上の異なる種類の根菜を含む。
【0055】
根菜の好ましい例は、以下を含むが、但しそれらだけには限定されない:にんじん、ビートルート、パースニップ、スウェード、ターメリック、生姜、じゃがいも、さつまいも、かぶ、ルタバガ、ユカ、コールラビ、タマネギ、ニンニク、セロリの根、西洋わさび、大根、ヒカマ、ラディシュ、エルサレムアーティチョーク、及び山芋。
【0056】
基質の調製方法は、以下のように概説され得る:野菜を洗浄し、任意には、野菜をパルプ粉砕し、そしてパルプを有さない野菜のジュースを抽出する(好ましくは、圧縮による)。野菜の種類に応じて、必要に応じて低温殺菌又は減菌され得る。追加の成分もまた、基質に存在することができる。
【0057】
1つの実施形態によれば、野菜ジュースは、酸性化され得る。これは、例えば酸性化剤、例えばクエン酸、乳酸、レモン果汁などを添加することにより行われ得る。他方では、これはまた、乳酸菌による発酵により行われ得る。酸性化を用いて、ジュースを安定化し、最終製品中の病原体の増殖を抑制することができる。
【0058】
従って、別の実施形態によれば、本発明は、
a)根菜を含む基質を提供し、
b)基質のpHを調節し、
c)少なくとも1つのPichia kluyveri株を、前記基質に添加し、そして
d)Pichia kluyveri株を含む基質を発酵させることを含む方法を提供する。
【0059】
好ましくは、pHは、2.5~6.5、例えば2.5~6、又は3~5.5に調節される。Pichia kluyveriは、それらのpH範囲でジュースを発酵することができる。基質のpHは、消費者により所望される製品に従って調節され得る。
【0060】
本発明の方法は、基質にPichia kluyveriを添加する工程を含む。これは、1又は2以上のPichia kluyveri株、例えば1,2,3,4,5又はそれ以上のPichia kluyveri株を添加することを含む。本明細書で使用され得る場合、Pichia kluyveri「株」とは、Pichia kluyveriの遺伝的変異体を意味し、これは、その遺伝子構成に基いて当業者により容易に決定できる。
【0061】
Pichia kluyveriは、発酵を開始し、そして維持するために十分である量で、基質の添加される。当業者は、説明及び実施例に従って、Pichia kluyveriの適切な接種濃度を容易に決定することができるであろう。
【0062】
好ましい実施形態によれば、Pichia kluyveriは、少なくとも1×10CFU/ml、例えば少なくとも5×10CFU/ml、例えば少なくとも1×10CFU/ml、例えば少なくとも5×10CFU/ml、例えば少なくとも1×10CFU/ml、例えば少なくとも5×10CFU/mlの濃度で接種される。
【0063】
いくつかの実施形態によれば、複数の株、例えば2、3、4、5又はそれ以上のPichia kluyveri株のブレンドが使用され得る。
【0064】
さらに、添加されるPichia kluyveriは、例えば凍結乾燥形、及び噴霧/流動床乾燥形、又は凍結又は凍結乾燥濃縮物を含む、凍結、液体又は乾燥形で存在することができる。
【0065】
本発明の方法は、添加されたPichia kluyveriを含む基質の発酵工程を含む。基質の発酵は、好ましくは、無菌設定での制御された発酵により実施される。発酵工程の間、当業者は、当業者に知られているいくつかの他のオプション、例えば粉砕/圧縮の間のペクチナーゼの添加、pHの調節、二酸化硫黄、例えば抗菌剤の添加、清澄及び濾過(それらだけには限定されない)を、所望する最終製品を達成するために、行うことを選択できる。
【0066】
好ましくは、Pichia kluyveriによる基質の発酵は、少なくとも12時間、例えば18時間、例えば24時間、例えば36時間、例えば48時間行われる。アルコール含有率が、意図する最終製品のために所望されるレベルに上昇するので、48時間を越えることが好ましい。当業者は、生成物の所望する特性に基いて適切な発酵時間を容易に選択することができる。
【0067】
いくつかの実施形態によれば、発酵は、36時間を越えない。他の実施形態によれば、発酵は、12~48時間、実施される。
【0068】
好ましくは、Pichia kluyveriを用いる発酵条件は、半嫌気性である。そのような発酵は、好気的に始まり、そして全ての酸素が消費された後、嫌気的に進行する可能性がある。
【0069】
本発明のいくつかの実施形態によれば、Pichia kluyveriは、スターター培養物として基質に添加される。「スターター培養物」という用語は、任意には、高密度培養を得るために、別のスターター培地で培養された後、有機材料の発酵を開始又はもたらすことができる生きた微生物を含む組成物を指す。従って、1つの実施形態によれば、本発明のスターター培養物は、適切な培地においてスターター培養物を増殖することにより得られた高密度培養物であり得る。
【0070】
本発明のスターター培養物はまた、微生物に加えて、緩衝剤、及び増殖刺激栄養素、又は保存剤、又は他の担体も含むことができる。
【0071】
好ましい実施形態によれば、第1のスターター培養物は、少なくとも10のコロニー形成単位(CFU)/gのPichia kluyveri、例えば、少なくとも10CFU/g、例えば、少なくとも10CFU/g、例えば、少なくとも10CFU/g、例えば、少なくとも10CFU/g、例えば、少なくとも10CFU/g、例えば、少なくとも10CFU/g、例えば、少なくとも10CFU/g、例えば、少なくとも1010CFU/g、例えば、少なくとも1011CFU/g、例えば、少なくとも1012CFU/g、例えば、少なくとも1013CFU/g、のPichia kluyveriを含む。
【0072】
発酵は、4~35℃の温度で行われ得る。好ましい実施形態によれば、発酵は、18~22℃、例えば19~21℃、例えば20℃の温度で行われる。
【0073】
発酵は、好ましくは4℃以下に冷却すること、及び/又は低温殺菌を含む、当業界において知られている任意の適切な方法により停止され得る。次に、発酵野菜ジュースが得られる。好ましくは、発酵液は、当業界において知られている任意の適切な方法を用いて、例えば濾過又は遠心分離により固形物から分離される。
【0074】
製品に依存して、発酵ジュースに追加の成分、例えば増粘剤、砂糖、甘味料、食物繊維、シロップ、緩衝液、pH調整剤、塩、必須ミネラル、ペクチン、タンパク質、香料、着色料、ビタミン、防腐剤、抗酸化剤などをさらに含むことができる。
【0075】
発酵液は、例えば濃縮、希釈又は他の製品との混合により、さらに処理され得る。
【0076】
発酵ジュースは好ましくは、ボトルに充填され、そして任意には、低温殺菌される。他の実施形態によれば、発酵ジュースは低温殺菌されない。
【0077】
酢酸エステルは、飲料において重要なフレーバー化合物である。例えば、最も良く知られた酢酸エステルは、酢酸イソアミル及び酢酸エチルである。酢酸エチルは、ブランデーの香りがするフルーティーな香りの液体であり、そしてフルーツの一般的なエステルである。本発明者らは、Pichia kluyveriを含む野菜ジュースにおける酢酸エチルのレベルは、発酵の後、高められることを見出した。いくつかの実施形態によれば、酢酸エチルのレベルは、少なくとも10ppm、例えば少なくとも12ppm、例えば少なくとも13ppm、例えば少なくとも14ppm、例えば少なくとも15ppm、例えば少なくとも16ppm、例えば少なくとも17ppm、例えば少なくとも18ppm、例えば少なくとも19ppm、例えば少なくとも20ppm、例えば少なくとも21ppm、例えば少なくとも22ppm、例えば少なくとも23ppm、例えば少なくとも24ppm、例えば少なくとも25ppm、例えば少なくとも26ppm、例えば少なくとも27ppm、例えば少なくとも28ppm、例えば少なくとも29ppm、又は例えば少なくとも30ppmである。
【0078】
酢酸イソペンチルとしても知られている酢酸イソアミルは、イソアミルアルコール及び酢酸から形成されるエステルである有機化合物である。酢酸イソアミルは、バナナ植物において自然に発生する。バナナ及びナシの匂いにも似た強い匂いを有する。しかしながら、高い量で、異臭のような明らかなアセトンを生成し、それが不快に感じられる。
【0079】
本発明者らは、Pichia kluyveriを含む野菜ジュース中の酢酸イソアミルのレベルは、発酵の後、高められることを見出した。いくつかの好ましい実施形態によれば、本発明に従って調製された発酵野菜ジュース中の酢酸イソアミルは少なくとも2ppm、例えば少なくとも2.1ppm、例えば少なくとも2.2ppm、例えば少なくとも2.3ppm、例えば少なくとも2.4ppm、例えば少なくとも2.5ppm、例えば少なくとも2.6ppm、例えば少なくとも2.7ppm、例えば少なくとも2.8ppm、例えば少なくとも2.9ppm、例えば少なくとも3.0ppm、例えば少なくとも3.1ppm、例えば少なくとも3.2ppm、例えば少なくとも3.3ppm、例えば少なくとも3.4ppm、例えば少なくとも3.5ppm、例えば少なくとも3.6ppm、例えば少なくとも3.7ppm、例えば少なくとも3.9ppm、例えば少なくとも4.0ppmである。
【0080】
酢酸イソアミルと酢酸エチルとの重量比は、果実味の良好な指標である。エタノールと同様に、酢酸エチルは、溶媒として作用する、エタノール及び酢酸のエステルである。それは、酢酸イソアミルの風味の放出に貢献する。
【0081】
本発明者らは、Pichia kluyveriにより発酵された野菜ジュース中のそのような重量比は、発酵の後、高められることを見出した。いくつかの好ましい実施形態によれば、本発明に従って調製された発酵ジュースの酢酸エチルに対する酢酸イソアミルの重量比は、少なくとも0.1、例えば少なくとも0.11、例えば少なくとも0.12、例えば少なくとも0.13、例えば少なくとも0.14、例えば少なくとも0.15、例えば少なくとも0.16、例えば少なくとも0.17、例えば少なくとも0.18、例えば少なくとも0.19、又は例えば少なくとも0.12である。好ましくは、発酵ジュース中の酢酸エチルに対する酢酸イソアミルの重量比は、少なくとも0.2、例えば少なくとも0.21、例えば少なくとも0.22、例えば少なくとも0.23、例えば少なくとも0.24、例えば少なくとも0.25、例えば少なくとも0.26、例えば少なくとも0.27、例えば少なくとも0.28、例えば少なくとも0.29、又は例えば少なくとも0.30である。
【0082】
本発明者らは、Pichia kluyveriにより発酵された野菜ジュース中のそのような重量比は、発酵の後、高められることを見出した。いくつかの好ましい実施形態によれば、本発明に従って調製された発酵ジュースのエタノールに対する酢酸イソアミルの重量比は、少なくとも0.0002、例えば少なくとも0.0003、少なくとも0.0004、少なくとも0.0005、少なくとも0.0006、少なくとも0.0007、少なくとも0.0008、少なくとも0.0009、少なくとも0.001、少なくとも0.0011、少なくとも0.0012又はそれ以上である。
【0083】
Pichia kluyveriにより発酵された野菜ジュースは、β-フェニルエタノール及びα-テルピネオールを含む追加のフレーバー化合物を含むことが見出された。β-フィニルエタノールは、バラのようなフレーバーを有し、そしてエステルのような他のフレーバー化合物と相乗的に作用し、全体的にフルーティーな印象を高める。本発明者らは、Pichia kluyveriにより発酵された野菜ジュース中のβ-フェニルエタノールが、発酵の後、高められることを見出した。いくつかの好ましい実施形態によれば、発酵野菜ジュース中のβ-フェニルエタノールは、少なくとも0.2ppm、例えば少なくとも0.3ppm、例えば少なくとも0.4ppm、例えば少なくとも0.5ppm、例えば少なくとも0.6ppm、例えば少なくとも0.7ppmである。
【0084】
α-テルピネオールは、ライラックに類似する心地より香りを有する。それは、天然油、例えば松根油に見出されるテルペンアルコールである。それはまた、フレーバー産業界で最も商業的に重要なモノテルペンアルコールの1つである。本発明者らは、Pichia kluyveriにより発酵された野菜ジュース中のα-テルピネオールが、発酵の後、高められることを見出した。いくつかの好ましい実施形態によれば、発酵野菜ジュース中のα-テルピネオールは、少なくとも5ppb、例えば少なくとも10ppb、例えば少なくとも20ppb、例えば少なくとも30ppb、例えば少なくとも40ppb、例えば少なくとも50ppb、例えば少なくとも60ppb、又は例えば少なくとも70ppbである。
【0085】
(3S、4S)-3-メチル-4-オクタノリドとしても知られているc-ウィスキーラクトン(シス-ウィスキークラトン)は、オーク樽で熟成されたウィスキー及び他のアルコール飲料の香りの重要な成分である。それは時々、風味剤として酒に添加される。本発明者らは、Pichia kluyveriにより発酵された野菜ジュース中のc-ウィスキーラクトンが、発酵の後、高められることを見出した。
【0086】
いくつかの好ましい実施形態によれば、発酵野菜ジュース中のc-ウィスキーラクトンは、少なくとも1ppb、例えば少なくとも2ppb、例えば少なくとも3ppb、例えば少なくとも4ppb、例えば少なくとも5ppb、例えば少なくとも6ppb、例えば少なくとも7ppbである。
【0087】
フェノールアルデヒドの香りを有するバニリンは、食品、飲料及び医薬品の風味剤として、天然のバニラエッセンスよりも頻繁に使用される。本発明者らは、Pichia kluyveriにより発酵された野菜ジュース中のバニリンが、発酵の後、高められることを見出した。いくつかの好ましい実施形態によれば、発酵野菜ジュース中のバニリンは、少なくとも2ppb、例えば少なくとも3ppb、例えば少なくとも4ppb、例えば少なくとも5ppb、例えば少なくとも6ppb、例えば少なくとも7ppbである。
【0088】
さらなる側面によれば、本発明は、改善されたフレーバープルファイルを有する発酵野菜ジュースを提供する。本発明に従って調製された野菜ジュースは、根菜及びPichia kluyveriを含み、これは例えば、Pichia kluyveri株1、Pichia kluyveri株2、Pichia kluyveri株3、それらの変異体又はそれらの任意の組合せであり得る。
【0089】
Pichia kluyveri株1は、German Collection of Microorganisms and Cell Cultures (Deutsche Sammlung von Mikroorganismen und Zellkulturen GmbH; DSMZ), Inhoffenstr. 7B, D-38124 Braunschweigで、2014年3月5日に寄託され、そして受託番号DSM:28484を付与された。
【0090】
Pichia kluyveri株2は、University of Auckland, School of Biological Sciences, Auckland 1142, New Zealandにより、the National Measurement Institute, 541-65 Clarke Street, South Melbourne, Victoria 3205, Australiaで、2006年8月24日に寄託され、そして受託番号V06/022711を付与された。
【0091】
Pichia kluyveri株3は、University of Auckland, School of Biological Sciences, Auckland 1142, New Zealandにより、the National Measurement Institute, 541-65 Clarke Street, South Melbourne, Victoria 3205, Australiaで、2006年8月24日に寄託され、そして受託番号V06/022712を付与された。
【0092】
さらなる側面によれば、本発明は、根菜を発酵するためへのPichia kluyveriの使用を提供する。いくつかの実施形態によれば、Pichia kluyveri株1、Pichia kluyveri株2、Pichia kluyveri株3、それらの変異体、又はそれらの任意の組合せを用いて、本出願に記載されるように、根菜を発酵し、野菜ジュースを得る。
【0093】
本発明者らは、Pichia kluyveri株が、最終発酵ジュース製品のフレーバープロファイルに対して大きな効果を有することを示した。驚くべきことには、全ての所望するフレーバー化合物、例えばエステル及びテルペンに関して、大きな上昇が見出された。実施例に示されるように、フレーバー分析は、感覚的評価と十分に一致している。感覚的評価は、Pichia kluyveriにより発酵された野菜ジュースが、未発酵の対象と比較して、土のような異臭がはるかに少なく、そしてよりフルーティーでスパイシーな香りを有することを示した。
【0094】
本発明はさらに、例えば、凍結乾燥形及びスプレー/流動床乾燥形、又は凍結又は凍結乾燥濃縮物を含む、凍結、凍結乾燥又は液体での、Pichia kluyveri株1である製品を提供する。異なる形の調製は、当業界では知られており、そして例えば、国際公開第2011/134952号(Chr. Hansen A/S)に記載されている。Pichia kluyveriは、発酵槽において増殖され、そして濃縮される。さらに、低温保護剤が添加され、低温での酵母の生存率を維持される。製品は、根菜を含む基質に直接添加され得る。
【0095】
さらに、本発明は、Pichia kluyveri株1を含む、発酵飲料を調製するための組成物を提供する。
【0096】
項目:
以下の項目は、本発明の好ましい実施形態である:
1. a)根菜を含む基質を提供する工程、
b)少なくとも1つのPichia kluyveri株を、前記基質に添加する工程、
c)Pichia kluyveri株を含む基質を48時間未満、発酵させる工程、
d)発酵された野菜ジュースを入手する工程、を含んで成る、野菜ジュースの土のような異臭を低める方法。
2.前記根菜が、ニンジン、ビーツ、パースニップ、スウェード、ウコン、生姜、ジャガイモ、サツマイモ、カブ、ルタバガ、ユカ、コールラビ、タマネギ、ニンニク、セロリの根、セイヨウワサビ、大根、ヒカマ、ラディッシュ、キクイモ及び山芋から成る群から選択される、項目1に記載の方法。
3.前記Pichia kluyveriが、下記群:
a)German Collection of Microorganisms and Cell Cultures (Deutsche Sammlung von Mikroorganismen und Zellkulturen GmbH; DSMZ), Inhoffenstr. 7B, D-38124 Braunschweigで、2014年3月5日に寄託され、そして受託番号DSM28484を与えられたPichia kluyveri、
b)University of Auckland, School of Biological Sciences, Auckland 1142, New Zealand によりthe National Measurement Institute, 541-65 Clarke Street, South Melbourne, Victoria 3205, Australiaで、2006年8月24日に寄託され、そして受託番号V06/022711を与えられたPichia kluyveri、
c)University of Auckland, School of Biological Sciences, Auckland 1142, New Zealand によりthe National Measurement Institute, 541-65 Clarke Street, South Melbourne, Victoria 3205, Australiaで、2006年8月24日に寄託され、そして受託番号V06/022712を与えられたPichia kluyveri、及び
d)a)、b)又はc)の変異体、
から成る群から選択される、項目1に記載の方法。
4.酢酸イソアミルと酢酸エチルの重量比が少なくとも0.1、好ましくは少なくとも0.2である、項目1~3のいずれか1項に記載の方法。
5.工程b)がさらに、基質に乳酸菌株を添加することを含む、項目1~4のいずれか1項に記載の方法。
6.工程c)における発酵が、4~35℃、より好ましくは、18~22℃の温度で行われる、項目1~5のいずれか1項に記載の方法。
7.前記発酵野菜ジュース中のβ-フェニルエタノールが少なくとも0.4ppmである、項目1~6のいずれか1項に記載の方法。
8.前記発酵野菜ジュース中のα-テルピネオールが少なくとも50ppbである、項目1~7のいずれか1項に記載の方法。
9.前記発酵野菜ジュース中のc-ウイスキーラクトン又はバニリンが少なくとも4ppbである、項目1~8のいずれか1項に記載の方法。
10.前記発酵野菜ジュース中のバニリンが少なくとも4ppbである、項目1~8のいずれか1項に記載の方法。
11.項目1~10のいずれか1項記載の方法により得られた発酵野菜ジュース。
12.根菜及びPichia kluyveriを含む発酵野菜ジュース
13.請求項12
前記Pichia kluyveriが、下記群:
a)German Collection of Microorganisms and Cell Cultures (Deutsche Sammlung von Mikroorganismen und Zellkulturen GmbH; DSMZ), Inhoffenstr. 7B, D-38124 Braunschweigで、2014年3月5日に寄託され、そして受託番号DSM28484を与えられたPichia kluyveri、
b)University of Auckland, School of Biological Sciences, Auckland 1142, New Zealand によりthe National Measurement Institute, 541-65 Clarke Street, South Melbourne, Victoria 3205, Australiaで、2006年8月24日に寄託され、そして受託番号V06/022711を与えられたPichia kluyveri、
c)University of Auckland, School of Biological Sciences, Auckland 1142, New Zealand によりthe National Measurement Institute, 541-65 Clarke Street, South Melbourne, Victoria 3205, Australiaで、2006年8月24日に寄託され、そして受託番号V06/022712を与えられたPichia kluyveri、及び
d)a)、b)又はc)の変異体、
から成る群から選択される、項目12に記載の発行野菜ジュース。
14.酢酸エチルに対する酢酸イソアミルの重量比が、少なくとも0.1、好ましくは0.2であり、そして/又はエタノールに対する酢酸イソアミルの重量比は、少なくとも0.002、好ましくは少なくとも0.0008である、項目12又は13に記載の発酵野菜ジュース。
15.発酵野菜ジュース中のβ-フェニルエタノールが、少なくとも0.4ppmである、項目12~14のいずれか1項記載の発酵野菜ジュース。
16.発酵野菜ジュース中のα-テルピネオールは、少なくとも50ppbである、項目12~15のいずれか1項記載の発酵野菜ジュース。
17.発酵野菜ジュース中のc-ウィスキーラクトンは、少なくとも4ppbである、項目12~16のいずれか1項記載の発酵野菜ジュース。
18.発酵野菜ジュース中のc-バニリンは、少なくとも4ppbである、項目12~17のいずれか1項記載の発酵野菜ジュース。
19.根菜を発酵するためへのPichia kluyveriの使用。
20.前記根菜が、ニンジン、ビーツ、パースニップ、スウェード、ウコン、生姜、ジャガイモ、サツマイモ、カブ、ルタバガ、ユカ、コールラビ、タマネギ、ニンニク、セロリの根、セイヨウワサビ、大根、ヒカマ、ラディッシュ、キクイモ及び山芋から成る群から選択される。項目19記載の使用。
21.前記Pichia kluyveriが、下記群:
a)German Collection of Microorganisms and Cell Cultures (Deutsche Sammlung von Mikroorganismen und Zellkulturen GmbH; DSMZ), Inhoffenstr. 7B, D-38124 Braunschweigで、2014年3月5日に寄託され、そして受託番号DSM28484を与えられたPichia kluyveri、
b)University of Auckland, School of Biological Sciences, Auckland 1142, New Zealand によりthe National Measurement Institute, 541-65 Clarke Street, South Melbourne, Victoria 3205, Australiaで、2006年8月24日に寄託され、そして受託番号V06/022711を与えられたPichia kluyveri、
c)University of Auckland, School of Biological Sciences, Auckland 1142, New Zealand によりthe National Measurement Institute, 541-65 Clarke Street, South Melbourne, Victoria 3205, Australiaで、2006年8月24日に寄託され、そして受託番号V06/022712を与えられたPichia kluyveri、及び
d)a)、b)又はc)の変異体、
から成る群から選択される、項目19又は20に記載の使用。
22.German Collection of Microorganisms and Cell Cultures (Deutsche Sammlung von Mikroorganismen und Zellkulturen GmbH; DSMZ), Inhoffenstr. 7B, D-38124 Braunschweigで、2014年3月5日に寄託され、そして受託番号DSM28484を与えられたPichia kluyveri、及びその変異体。
23.項目22記載のPichia kluyveriを含む発酵のための組成物。
24.前記組成物が、凍結、凍結乾燥又は液体形で存在する、項目23に記載の組成物。
【0097】
本発明を説明する文脈での(特に以下の特許請求の文脈での)「a」及び「an」、及び「the」という用語、及び類似する指示対象の使用は、特にことわらない限り又は文脈によって明確に矛盾しない限り、単数形及び複数形の両方をカバーすると解釈されるべきである。「含む(comprising)」、「有する(having)」、「含む(including)」及び「含む(containing)」という用語は、特にことわらない限り、制限のない用語(すなわち、「含むが、但しそれらだけには限定されない」を意味する)として解釈されるべきである。本明細書における値の範囲の列挙は、本明細書に別段の記載がない限り、範囲内にある各個別の値を個別に参照する略記法として役立つことを単に意図し、そして各個別の値は、本明細書に個別に記載されているかのように組込まれる。本明細書に記載される全ての方法は、本明細書に別段の指示がない限り、又は文脈により明確に矛盾しない限り、任意の適切な順序で行われ得る。本明細書に提供されるいずれかの及び全ての例、又は例示的な用語(例えば、「例えば(such as)」の使用は、単に本発明をよりよく照らすことを意図しており、そして特にことわらない限り、本発明の範囲を制限するものではない。明細書中のいかなる用語も、何れの請求されていない要素が本発明の実施に不可欠であることを示すと解釈されるべきではない。
【0098】
寄託及び専門家の解決法:
出願人は、特許が付与される日まで、下記の寄託微生物のサンプルが専門家のみが利用できるようにすることを要求する。
【0099】
Pichia kluyveri株1は、Chr. Hansen A/S, Denmarkにより、DSMZ (Deutsche Sammlung von Mikroorganismen und Zellkulturen GmbH, Inhoffenstrasse 7B, D-38124 Braunschweig)で、2014年3月5日、寄託され、そして受託番号DSM 28484を付与された。寄託は、特許手続上の微生物の寄託の国際的承認に関するブダペスト条約の条件の下で行われた。
【0100】
Pichia kluyveri株2(PK-KR1)及びPichia kluyveri株3(PK-KR2)は、University of Auckland, School of Biological Sciences, Auckland 1142, New Zealandにより、the National Measurement Institute, 541-65 Clarke Street, South Melbourne, Victoria 3205, Australiaで、2006年8月24日、寄託され、そして国際公開第2009/110807号に記載されるように、それぞれ受託番号V06/022711 及びV06/022712を付与された。
【実施例0101】
実施例1
4.5のpHのニンジンジュースを、野菜の基質として提供した。それを、ニンジンジュース濃縮液を希釈することにより調製した。
【0102】
実験室規模の発酵(200ml)を行った。ニンジンジュースを、2つの異なるPichia kluyveri、すなわちPichia kluyveri株1(DSM28484)及び株2(the National Measurement Instituteで、 受託番号 V06/022711として寄託された)により、10CFU/mlで接種した。発酵を、20℃で24時間、インキュベーターに配置した。
【0103】
エタノール分析
エタノールを、Boehringer MannheimのEthanol Enzymatic Bioanalysis キットにより測定した。Pichia kluyveri株1及び株2による24時間の発酵の後、発酵生成物のエタノール濃度を測定した。表1は、未発酵及び発酵ニンジンジュース中のエタノールの結果を示す。
【0104】
【表1】
【0105】
示されるように、最終発酵ニンジン製品中のエタノール濃度は、0.05%(v/v)未満であった。
【0106】
フレーバー分析
全ての発酵製品のフレーバー分析を、スペインのZaragozaにあるFlavor Analysis and Ecokogyの実験室で行った。表2~6は、サンプル中の異なるフレーバー化合物の濃度を示す。
【0107】
【表2】
【0108】
【表3】
【0109】
【表4】
【0110】
【表5】
【0111】
【表6】
【0112】
【表7】
【0113】
【表8】
【0114】
表2~4は、Pichia kluyveriによるニンジンジュースの発酵が最終発酵製品においてエステルプロファイルを増強することを示している。わずか24時間の発酵後、酢酸エチル、イソアミル及び酢酸イソブチルの濃度が、発酵ニンジンジュースにおいて少なくとも2倍に高められた。
【0115】
Pichia kluyveriは、酢酸エチルに対する酢酸イソアミル(ppm)の比率を高めることを示された。Pichia kluyveri株1は、Pichia kluyveri株2よりも少なく酢酸エチルを生成したが、しかし酢酸イソアミルの量に関しては類似していた。結果として、酢酸イソアミル/酢酸エチルの比率は、Pichia kluyveri株1においてより高い。
【0116】
さらに、Pichia kluyveriは、エタノール(ppm)に対する酢酸イソアミル(ppm)の比率を高めることが示された。Pichia kluyveri株1は、Pichia kluyveri株2に比較して、より低い酢酸イソアミル(ppm)/エタノール(ppm)を示したが、しかし酢酸イソアミルの量に関して類似した。
【0117】
表6~7は、それぞれ、2種のフレーバー化合物、すなわちβ-フェニルエタノール及びα-テルピネオールの濃度を示す。両化合物は、発酵製品において著しく上昇し、そしてその花のようなスパイシーフレーバーに貢献した。Pichia kluyveri株1は、株2よりも高い量のβ-フェニルエタノール及びα-テルピネオールを生成する。
【0118】
エステル、アルコール及びテルペンに加えて、本発明者らはまた、いくつかのラクトン及びさらにバニリンが高められ、発酵製品により甘い風味を与えることも発見した。c-ウイスキーラクトン及びバニリンの濃度が、表8に示されている。
【0119】
実施例2
新鮮な酸性化されていないビート根ジュースを、野菜基質として提供した。それを、ビート根を圧縮することにより調製した。実験室規模の発酵(400ml)を行った。ビート根ジュースを、実施例1に記載のように、同じPichia kluyveri、すなわちPichia kluyveri株1及びPichia kluyveri株2により接種した。発酵を、20℃で24時間、インキュベーターに配置した。その後、サンプルを採取した。
【0120】
感覚的分析
Lawless et al (Lawless, H. T., and H. Heymann. "Sensory Evaluation of Food: Practices and Principals." Food Science Texts Series. Chapman and Hall. New York (2010))による記述的分析技法を用いての感覚的評価を、Pichia kluyveriがフレーバープロファイルにいかに寄与するかを評価するために実施した。
【0121】
発酵の後、発酵したビート根ジュースの4つの明確な属性を決定した。それらの属性は、素朴で、全体的にフルーティーで、スパイシーで、且つ甘いものであった。9人のパネリストを選び、そしてそれらの属性を備えたトレーニングセッションを行った。トレーニングセクションで、パネリストは属性の香り及び味覚を認識するようにトレーニングされた。これは、素朴な属性について生のビート根、スパイシーな属性についてコショウ、トロピカルフルーツジュースの香りによる全体的なフルーティー、及びニンジンジュースの香りによる甘い香りにより行われた。
【0122】
トレーニングセッションの後、パネリストは、発酵ジュースのトレーニングセッションに招待された。未発酵ビート根ジュースと共に種々のジュースが、3つの乱数により指定され、そして各審査員に提供された。ジュースは、ワインのグラスで、約10℃で提供された。パネリストは、ジュースの4つのフレーバー(香り及び味の組合せ)を、145mmスケール(0は存在しない、145は非常に存在する)でスケーリングし、そしてジュースの主観的で、全体的な好み/受容性を評価した。
【0123】
図1は、感覚的評価の結果を示す。この図は、5つの異なる属性(土のような、全体的にフルーティー、スパイシー、甘い及び全体的に好ましい)について、0~145のスケールで、種々のジュースがどのように評価されたかを示している。
【0124】
図1は、Pichia kluyveriにより発酵された全てのジュースが、未発酵ビート根ジュース(図1のビート根対照)に比較して、著しく土のような異臭が少なかったと評価された。さらに、発酵ジュースの甘味レベルは、未発酵ビート根対照に非常に類似していた。さらに、対照に比較して、よりフルーティーで且つスパイシーであると認識された。
【0125】
Pichia kluyveriによる発酵ビート根ジュースは、土のような異臭が低められ、そしてフルーティーな風味が増大するために、未発酵ビート根ジュースよりも全体的により好ましい。Pichia kluyveri株1は、土のような異臭がPichia kluyveri株2に比較して、Pichia kluyveri株1により発酵されたビート根ジュースにおいてわずかに高いと認識されたにもかかわらず、Pichia kluyveri株2よりも全体的により好ましかった。
【0126】
最も高いフレーバーの差異は、エステル及びα-テルピネオールで見出された。酢酸エステル濃度を詳しく見ると、フルーティーさの良い尺度である酢酸イソアミル/酢酸エチルの比率が両Pichia kluyveri株において高められることが分かる。これは、野菜ジュースの発酵が、未発酵ビール根ジュースと比較して、フルーティさ及びスパイシーさのより高いスコア及び土のような異臭の非常に低いスコアをもたらしたことを示した感覚的評価と良好に一致する。
図1
【手続補正書】
【提出日】2024-05-02
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
野菜ジュースの土のような異臭を低める方法であって、以下の工程
a)根菜を含む基質を提供する工程、
b)少なくとも1つのPichia kluyveri株を、前記基質に添加する工程、
c)Pichia kluyveri株を含む基質を発酵させる工程、
d)発酵された野菜ジュースを入手する工程、
を含んで成る方法。
【外国語明細書】