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特開2024-9613推定方法、推定装置及びコンピュータプログラム
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024009613
(43)【公開日】2024-01-23
(54)【発明の名称】推定方法、推定装置及びコンピュータプログラム
(51)【国際特許分類】
   G01M 99/00 20110101AFI20240116BHJP
   B29C 48/92 20190101ALI20240116BHJP
   B29C 48/30 20190101ALI20240116BHJP
   B29C 48/395 20190101ALI20240116BHJP
   B29C 48/25 20190101ALI20240116BHJP
   G01M 13/00 20190101ALI20240116BHJP
【FI】
G01M99/00 Z
B29C48/92
B29C48/30
B29C48/395
B29C48/25
G01M13/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022111275
(22)【出願日】2022-07-11
(71)【出願人】
【識別番号】000004215
【氏名又は名称】株式会社日本製鋼所
(74)【代理人】
【識別番号】100114557
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 英仁
(74)【代理人】
【識別番号】100078868
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 登夫
(72)【発明者】
【氏名】沖本 翼
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 潤
(72)【発明者】
【氏名】風呂川 幹央
【テーマコード(参考)】
2G024
4F207
【Fターム(参考)】
2G024AD06
2G024BA27
2G024CA13
2G024FA04
2G024FA06
2G024FA11
4F207AM22
4F207AM23
4F207AR02
4F207AR04
4F207AR09
4F207AR11
4F207AR16
4F207AR20
4F207KK90
4F207KM15
4F207KM30
(57)【要約】
【課題】成形機を構成する部材の寿命若しくは異常度又は成形品品質推定のために収集できるデータ量にかかわらず、寿命等推定のための機械学習を行い、当該部材の寿命若しくは異常度又は成形品品質を推定することができる推定方法を提供する。
【解決手段】成形機を構成する部材の状態に関連する物理量データを取得し、異なるアルゴリズムにより前記部材の寿命若しくは異常度又は成形品品質を推定する複数の推定モデルを用意し、前記複数の推定モデルから選択される一又は複数の前記推定モデルを用い、取得した前記物理量データに基づいて前記部材の寿命若しくは異常度又は成形品品質を推定する。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
成形機を構成する部材の状態に関連する物理量データを取得し、
異なるアルゴリズムにより前記部材の寿命若しくは異常度又は成形品品質を推定する複数の推定モデルを用意し、
前記複数の推定モデルから選択される一又は複数の前記推定モデルを用い、取得した前記物理量データに基づいて前記部材の寿命若しくは異常度又は成形品品質を推定する
推定方法。
【請求項2】
前記複数の推定モデルは、
前記物理量データから生成される画像データが入力された場合、前記部材の寿命若しくは異常度又は成形品品質を示すデータを出力する学習モデルを含み、
取得した前記物理量データから生成される画像データを前記学習モデルに入力することによって、前記部材の寿命若しくは異常度又は成形品品質を推定する
請求項1に記載の推定方法。
【請求項3】
前記物理量データは複数種類の物理量を示す物理量データを含み、
前記複数の推定モデルは、
前記複数種類の物理量データと、前記複数種類の物理量以外の他の状態量と、前記部材の寿命若しくは異常度又は成形品品質との関係を示す数理モデルを含み、
取得した前記物理量データを前記一又は複数の数理モデルに代入することによって、前記部材の寿命若しくは異常度又は成形品品質を推定する
請求項1に記載の推定方法。
【請求項4】
前記複数の推定モデルは、
一又は複数の説明変数を有し、前記物理量データと、前記部材の寿命若しくは異常度又は成形品品質との関係を示す回帰式を含み、
取得した前記物理量データを前記回帰式に代入することによって、前記部材の寿命若しくは異常度又は成形品品質を推定する
請求項1に記載の推定方法。
【請求項5】
前記物理量データは複数種類の物理量を示す物理量データを含み、
前記複数の推定モデルは、
前記物理量データから生成される画像データが入力された場合、前記部材の寿命若しくは異常度又は成形品品質を示すデータを出力する学習モデルと、
前記複数種類の物理量データと、前記複数種類の物理量以外の他の状態量と、前記部材の寿命若しくは異常度又は成形品品質との関係を示す数理モデルと、
一又は複数の説明変数を有し、前記物理量データと、前記部材の寿命若しくは異常度又は成形品品質との関係を示す回帰式と
を含み、
前記取得した前記物理量データから生成される画像データを前記学習モデルに入力し、取得した前記物理量データを前記数理モデルに代入し、取得した前記物理量データを前記回帰式に代入することによって、前記部材の寿命若しくは異常度又は成形品品質を推定する
請求項1に記載の推定方法。
【請求項6】
前記複数の推定モデルは、
短期的に測定して得られた前記物理量データに基づいて前記部材の寿命若しくは異常度又は成形品品質を推定する推定モデルと、
長期的に測定して得られた前記物理量データに基づいて前記部材の寿命若しくは異常度又は成形品品質を推定する推定モデルと
を含む請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の推定方法。
【請求項7】
前記複数の推定モデルは、
前記部材に関連する第1の部位の物理量を測定して得られる物理量データに基づいて前記部材の寿命若しくは異常度又は成形品品質を推定する推定モデルと、
前記部材に関連する第2の部位の物理量を測定して得られる物理量データに基づいて前記部材の寿命若しくは異常度又は成形品品質を推定する推定モデルと
を含む請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の推定方法。
【請求項8】
前記成形機は減速機、スクリュ、モータ及びダイスを含む押出機であり、
前記物理量データは、
前記減速機に係る物理量データ、前記スクリュに係る物理量データ、前記モータに係る物理量データ、又は前記ダイスに係る物理量データを含む
請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の推定方法。
【請求項9】
前記複数の推定モデルは、
前記減速機に係る物理量データに基づいて、前記減速機の寿命若しくは異常度又は成形品品質を推定する推定モデルと、
前記スクリュに係る物理量データに基づいて、前記減速機の寿命若しくは異常度又は成形品品質を推定する推定モデルと
を含む請求項8に記載の推定方法。
【請求項10】
前記複数の推定モデルを用いて推定された前記部材の寿命若しくは異常度又は成形品品質の最小値、平均値、中央値、又は重み付け平均値を算出する
請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の推定方法。
【請求項11】
複数の前記成形機それぞれを示す機器識別子と、前記成形機を構成する前記部材を示す部材識別子と、前記部材の寿命若しくは異常度又は成形品品質推定に使用する一又は複数の前記推定モデルとを対応付けて記憶する
請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の推定方法。
【請求項12】
推定された前記部材の寿命若しくは異常度又は成形品品質を示す情報を表示可能に提供する
請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の推定方法。
【請求項13】
推定された前記部材の寿命若しくは異常度又は成形品品質を示す情報を端末装置へ送信する
請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の推定方法。
【請求項14】
成形機を構成する部材の状態に関連する物理量データを取得する取得部と、
前記部材の寿命若しくは異常度又は成形品品質を異なるアルゴリズムにより推定する複数の推定モデルと、
前記複数の推定モデルから選択される一又は複数の前記推定モデルを用い、前記取得部が取得した前記物理量データに基づいて前記部材の寿命若しくは異常度又は成形品品質を推定する処理部と
を備える推定装置。
【請求項15】
成形機を構成する部材の状態に関連する物理量データを取得し、
異なるアルゴリズムにより前記部材の寿命若しくは異常度又は成形品品質を推定する複数の推定モデルから選択される一又は複数の前記推定モデルを用い、取得した前記物理量データに基づいて前記部材の寿命若しくは異常度又は成形品品質を推定する
処理をコンピュータに実行させるためのコンピュータプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、推定方法、推定装置及びコンピュータプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、射出成形機等における回転部材の寿命を予測する寿命予測装置が開示されている。特許文献1の寿命予測装置は、駆動モータによって回転する回転部材の回転数を積算し、積算された回転数と回転部材を回転させるのに要したトルクから回転部材の疲れ寿命を演算する。
【0003】
特許文献2には、射出成形機に設けられたボールねじの振動を検出する振動センサを備え、振動センサにて検出された振動強度を解析することによってボールねじの異常を検知する異常検知装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平6-91683号公報
【特許文献2】特開2021-74917号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
成形機を構成する部材の状態に関連する物理量データを収集し、機械学習することによって、当該部材の寿命を予測することが考えられる。
【0006】
成形機を構成する部材の寿命予測に使用できる種々の寿命予測モデルが考えられるが、最適な寿命予測モデルを一つに決定し、当該モデルの学習に十分なデータを収集することは必ずしも容易では無い。成形機を構成する部材の異常度又は成形品品質を推定する際にも同様の問題が生ずる。
【0007】
本開示の目的は、成形機を構成する部材の寿命若しくは異常度又は成形品品質を推定のために収集できるデータ量にかかわらず、寿命等の推定のための機械学習を行い、当該部材の寿命若しくは異常度又は成形品品質を推定することができる推定方法、推定装置及びコンピュータプログラムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示の一側面に係る推定方法は、成形機を構成する部材の状態に関連する物理量データを取得し、異なるアルゴリズムにより前記部材の寿命若しくは異常度又は成形品品質を推定する複数の推定モデルを用意し、前記複数の推定モデルから選択される一又は複数の前記推定モデルを用い、取得した前記物理量データに基づいて前記部材の寿命若しくは異常度又は成形品品質を推定する。
【0009】
本開示の一側面に係る推定装置は、成形機を構成する部材の状態に関連する物理量データを取得する取得部と、前記部材の寿命若しくは異常度又は成形品品質を異なるアルゴリズムにより推定する複数の推定モデルと、前記複数の推定モデルから選択される一又は複数の前記推定モデルを用い、前記取得部が取得した前記物理量データに基づいて前記部材の寿命若しくは異常度又は成形品品質を推定する処理部とを備える。
【0010】
本開示の一側面に係るコンピュータプログラムは、成形機を構成する部材の状態に関連する物理量データを取得し、異なるアルゴリズムにより前記部材の寿命若しくは異常度又は成形品品質を推定する複数の推定モデルから選択される一又は複数の前記推定モデルを用い、取得した前記物理量データに基づいて前記部材の寿命若しくは異常度又は成形品品質を推定する処理をコンピュータに実行させる。
【発明の効果】
【0011】
本開示によれば、成形機を構成する部材の寿命若しくは異常度又は成形品品質を推定のために収集できるデータ量にかかわらず、寿命等の推定のための機械学習を行い、当該部材の寿命を予測することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本実施形態に係る成形機システムの構成例を示すブロック図である。
図2】本実施形態に係る成形機1の構成例を示す模式図である。
図3】本実施形態に係るデータ収集装置3の構成例を示すブロック図である。
図4】実施形態に係る寿命予測装置の構成例を示すブロック図である。
図5】収集データDBのレコードレイアウトの一例を示す概念図である。
図6】モデル構成DBのレコードレイアウトの一例を示す概念図である。
図7】寿命予測モデルの学習処理手順を示すフローチャートである。
図8】第1寿命予測モデルを示す概念図である。
図9】第1寿命予測モデルの学習処理手順を示すフローチャートである。
図10A】第1寿命予測モデルの学習結果を示すグラフである。
図10B】第1寿命予測モデルを用いた推論結果を示すグラフである。
図11】第2寿命予測モデルを示す概念図である。
図12】第2寿命予測モデルの学習処理手順を示すフローチャートである。
図13A】第2寿命予測モデルの学習結果を示すグラフである。
図13B】第2寿命予測モデルを用いた推論結果を示すグラフである。
図14】第3寿命予測モデルを示す概念図である。
図15】第3寿命予測モデルの学習処理手順を示すフローチャートである。
図16A】第3寿命予測モデルの学習結果を示すグラフである。
図16B】第3寿命予測モデルを用いた推論結果を示すグラフである。
図17】寿命予測の処理手順を示すフローチャートである。
図18】寿命予測の処理手順を示すフローチャートである。
図19】ポータルサイトに表示される残存寿命推定結果表示画面の一例を示す模式図である。
図20】ポータルサイトに表示されるダッシュボード画面の一例示す模式図である。
図21】ポータルサイトに表示される検索表示画面の一例示す模式図である。
図22】ポータルサイトに表示されるマンスリーレポート画面の一例を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本開示の実施形態に係る推定方法、寿命予測装置及びコンピュータプログラムを、以下に図面を参照しつつ説明する。なお、本開示はこれらの例示に限定されるものではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。また、以下に記載する実施形態の少なくとも一部を任意に組み合わせてもよい。
【0014】
図1は本実施形態に係る成形機システムの構成例を示すブロック図である。成形機システムは、成形機1と、複数のセンサ2と、データ収集装置3と、ルータ4と、寿命予測装置5と、端末装置6a,6bとを備える。成形機1には、射出成形機及び押出機が含まれる。以下、成形機1は、一例として押出機であるものとして説明する。
【0015】
図1には1台の成形機1及びデータ収集装置3が図示されているが、寿命予測装置5には、図示しない複数のデータ収集装置3がネットワークを介して接続されている。データ収集装置3には一又は複数の成形機1が接続されている。寿命予測装置5は、複数の成形機1それぞれの情報を収集し、各成形機1を構成する一又は複数の部材の残存寿命を予測することができる。複数の成形機1及びデータ収集装置3は、成形機1を保有する複数のユーザそれぞれの工場に設置されているものとする。ユーザは、オペレータでは無く成形機1を保有する法人等の組織である。
【0016】
端末装置6a,6bは、コンピュータ、タブレット端末、スマートフォン等の表示部を有する通信端末である。端末装置6aは、ユーザが使用する端末である。端末装置6bは、当該ユーザの成形機1に関連する営業担当者、保守管理担当者等のサービス提供担当者が使用する端末である。
【0017】
<成形機1>
図2は本実施形態に係る成形機1の構成例を示す模式図である。成形機1は、樹脂原料が投入されるホッパ10aを有するシリンダ10と、2本のスクリュ11と、シリンダ10の出口部分に設けられたダイス12(図1参照)とを備える。2本のスクリュ11は、相互に噛み合わされた状態で略平行に配され、シリンダ10の孔内に回転可能に挿入されており、ホッパ10aに投入された樹脂原料を押出方向(図1及び図2中右方向)へ搬送し、溶融及び混練する。溶融した樹脂原料は、貫通孔を有するダイス12から排出される。
スクリュ11は、複数種類のスクリュピースを組み合わせ、一体化することによって一本のスクリュ11として構成されている。例えば、樹脂原料を順方向へ輸送するフライトスクリュ形状の順フライトピース、樹脂原料を逆方向へ輸送する逆フライトピース、樹脂原料を混練するニーディングピース等を、樹脂原料の特性に応じた順序及び位置に配して組み合わせることにより、スクリュ11が構成される。
【0018】
また、成形機1は、スクリュ11を回転させるための駆動力を出力するモータ13と、モータ13の駆動力を減速伝達する減速機14と、制御装置15とを備える。スクリュ11は減速機14の出力軸に接続されている。スクリュ11は、減速機14によって減速伝達されたモータ13の駆動力によって回転する。
【0019】
<センサ2>
センサ2は、成形機1を構成する部材の状態に関連する物理量を検出し、検出して得た物理量データを直接又は間接的にデータ収集装置3へ出力する。物理量データは、検出された物理量を示す時系列のセンサ値のデータである。センサ2には、成形機1の運転制御に必要なものとして当該成形機1に設けられているものと、部材の寿命を推定するために設けられたものとが含まれる。複数のセンサ2の一部は、データ収集装置3に接続されており、データ収集装置3は当該センサ2から物理量データを取得する。複数のセンサ2の一部は、制御装置15に接続されており、データ収集装置3は制御装置15を介して当該センサ2から物理量データを取得する。
【0020】
物理量には、温度、位置、速度、加速度、電流、電圧、圧力、時間、画像データ、トルク、力、歪、消費電力、重さ等がある。これらの物理量は、温度計、位置センサ、速度センサ、加速度センサ、電流計、電圧計、圧力計、タイマ、カメラ、トルクセンサ、電力計、重量計等を用いて測定することができる。
【0021】
複数のセンサ2は、例えば、減速機14に係る物理量を検出する第1センサ21と、スクリュ11に係る物理量を検出する第2センサ22と、モータ13に係る物理量を検出する第3センサ23と、ダイス12に係る物理量を検出する第4センサ24とを含む。
第1センサ21は、例えば減速機14の振動を検出する振動検出器等である。第2センサ22は、スクリュ11の軸トルクを検出するトルク検出器、スクリュ11の回転数を検出する回転計、スクリュ先端圧力を検出する圧力計、スクリュ11の温度を検出温度計、スクリュ11の回転中心の変位を検出する変位センサ等である。第3センサ23は、モータ電流を検出する電流計、モータ回転数を検出する回転計等である。第4センサ24は、ダイス12に働くダイヘッド圧力を検出する圧力計である。
【0022】
<制御装置15>
制御装置15は、成形機1の運転制御を行うコンピュータであり、データ収集装置3との間で情報を送受信する図示しない送受信部、及び表示部を備える。
具体的には、制御装置15は、成形機1の運転状態を示す運転データをデータ収集装置3へ送信する。運転データは、例えば、モータ電流、スクリュ11の回転数、スクリュ11の先端圧力、ダイヘッド圧力、フィーダ供給量(樹脂原料の供給量)、押出量、シリンダ温度、樹脂圧等である。
制御装置15は、データ収集装置3から送信される各種グラフデータ、成形機1を構成する部材の残存寿命を示す残存寿命データを受信する。制御装置15は、受信したグラフデータ及び残存寿命データの内容を表示する。また、制御装置15は、受信した残存寿命データが示す残存寿命に応じて警告を出力する。
【0023】
<データ収集装置3>
図3は本実施形態に係るデータ収集装置3の構成例を示すブロック図である。データ収集装置3は、コンピュータであり、制御部31、記憶部32、通信部33及びデータ入力部34を備え、記憶部32、通信部33及びデータ入力部34は制御部31に接続されている。データ収集装置3は、例えばPLC(Programmable Logic Controller)である。
【0024】
制御部31は、CPU(Central Processing Unit)、マルチコアCPU、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、FPGA(Field-Programmable Gate Array)等の演算処理回路、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)等の内部記憶装置、I/O端子等を有する。制御部31は、後述の記憶部32が記憶する制御プログラムを実行することにより、物理量データを収集し、寿命予測装置5へ送信する処理を実行する。なお、データ収集装置3の各機能部は、ソフトウェア的に実現してもよいし、一部又は全部をハードウェア的に実現してもよい。
【0025】
記憶部32は、ハードディスク、EEPROM(Electrically Erasable Programmable
ROM)、フラッシュメモリ等の不揮発性メモリである。記憶部32は、物理量データの収集処理をコンピュータに実施させるための制御プログラムを記憶している。
【0026】
通信部33は、イーサネット(登録商標)等の所定の通信プロトコルに従って情報を送受信する通信回路である。通信部33は、LAN等の第1通信ネットワークを介して制御装置15に接続されており、制御部31は通信部33を介して制御装置15との間で各種情報を送受信することができる。制御部31は、通信部33を介して物理量データを取得する。
第1ネットワークにはルータ4が接続されており、通信部33はルータ4を介して第2通信ネットワークであるクラウド上の寿命予測装置5に接続されている。制御部31は、通信部33及びルータ4を介して寿命予測装置5との間で各種情報を送受信することができる。
【0027】
データ入力部34は、センサ2から出力された信号が入力する入力インタフェースである。データ入力部34にはセンサ2が接続されており、制御部31は、データ入力部34を介して物理量データを取得する。
【0028】
<寿命予測装置5>
図4は実施形態に係る寿命予測装置5の構成例を示すブロック図である。寿命予測装置5は、コンピュータであり、処理部51、記憶部52、通信部53を備える。記憶部52、通信部53は、処理部51に接続されている。
【0029】
処理部51は、プロセッサであり、CPU、マルチコアCPU、GPU(Graphics Processing Unit)、GPGPU(General-purpose computing on graphics processing units)、TPU(Tensor Processing Unit)、ASIC、FPGA、NPU(Neural Processing Unit)等の演算処理回路、ROM、RAM等の内部記憶装置、I/O端子等を有する。処理部51は、後述の記憶部52が記憶するコンピュータプログラムPを実行することにより、本実施形態に係る寿命予測装置5として機能する。なお、寿命予測装置5の各機能部は、ソフトウェア的に実現してもよいし、一部又は全部をハードウェア的に実現してもよい。
【0030】
通信部53は、イーサネット(登録商標)等の所定の通信プロトコルに従って情報を送受信する通信回路である。通信部53は、第2通信ネットワークを介してデータ収集装置3、及び端末装置6a,6bに接続されており、制御部31は通信部53を介してデータ収集装置3、及び端末装置6a,6bとの間で各種情報を送受信することができる。
【0031】
記憶部52は、ハードディスク、EEPROM、フラッシュメモリ等の不揮発性メモリである。記憶部52は、成形機1を構成する部材の寿命を推定する処理をコンピュータに実施させるためのコンピュータプログラムPと、第1寿命予測モデルM1と、第2寿命予測モデルM2と、第3寿命予測モデルM3と、収集データDB52a、モデル構成DB52bとを記憶している。
【0032】
コンピュータプログラムP等は、記録媒体50にコンピュータ読み取り可能に記録されている態様でもよい。記憶部52は、図示しない読出装置によって記録媒体50から読み出されたコンピュータプログラムP等を記憶する。記録媒体50はフラッシュメモリ等の半導体メモリである。また、記録媒体50はCD(Compact Disc)-ROM、DVD(Digital Versatile Disc)-ROM、BD(Blu-ray(登録商標)Disc)等の光ディスクでもよい。更に、記録媒体50は、フレキシブルディスク、ハードディスク等の磁気ディスク、磁気光ディスク等であってもよい。更にまた、図示しない通信網に接続されている図示しない外部サーバからコンピュータプログラムP等をダウンロードし、記憶部52に記憶させてもよい。
【0033】
第1寿命予測モデルM1は、物理量データから生成される画像データが入力された場合、成形機1を構成する部材の残存寿命を示すデータを出力する画像認識学習モデル73を備える(図8参照)。画像認識学習モデル73は、例えばCNN(Convolutional Neural Network)を有する。記憶部52が予め記憶している第1寿命予測モデルM1の画像認識学習モデル73は、既成の学習済みモデルである。処理部51は、この既成の学習済みモデルの転移学習又はファインチューニングを行うことによって、特定の成形機1及び部材の残存寿命予測に特化した学習モデルを生成することができる。
なお、転移学習又はファインチューニングされた学習モデル及び寿命予測モデルも、便宜上、画像認識学習モデル73及び第1寿命予測モデルM1と呼ぶ。
【0034】
第2寿命予測モデルM2は、センサ2にて検出可能な複数種類の物理量を示す物理量データと、当該物理量以外の他の状態量との関係を示す一又は複数の状態量推定数理モデル81と、寿命推定数理モデル82とを有する(図11参照)。記憶部52が予め記憶している第2寿命予測モデルM2の状態量推定数理モデル81は、既存の数理モデルである。状態量推定数理モデル81を規定する係数は、試験用の成形機等を用いて予め調整されている。寿命推定数理モデル82も試験用の成形機等を用いて予め粗調整しておくとよい。処理部51は、この状態量推定数理モデル81及び寿命推定数理モデル82の転移学習又はファインチューニングを行うことによって、特定の成形機1及び部材の残存寿命予測に特化した数理モデルを生成することができる。
なお、転移学習又はファインチューニングされた数理モデル及び寿命予測モデルも、便宜上、状態量推定数理モデル81及び寿命推定数理モデル82、並びに第2寿命予測モデルM2と呼ぶ。
【0035】
第3寿命予測モデルM3は、一又は複数の説明変数を有し、物理量データと、成形機1を構成する部材の残存寿命との関係を示す寿命推定関数(回帰式)92を有する(図14参照)。寿命推定関数92を規定する係数は、試験用の成形機等を用いて予め粗調整しておくとよい。処理部51は、この寿命推定関数92の転移学習又はファインチューニングを行うことによって、特定の成形機1及び部材の残存寿命予測に特化した推定関数を生成することができる。
なお、転移学習又はファインチューニングされた推定関数及び寿命予測モデルも、便宜上、寿命推定関数92及び第3寿命予測モデルM3と呼ぶ。
【0036】
なお、第1寿命予測モデルM1は、短期的に測定して得られた時系列の物理量データに基づいて成形機1を構成する部材の寿命を予測するモデルであり、第2寿命予測モデルM2及び第3寿命予測モデルM3は、長期的に測定して得られた時系列の物理量データに基づいて成形機1を構成する部材の寿命を予測するモデルである。もちろん、第1~第3寿命予測モデルM1,M2,M3は、同期間に測定して得られた時系列の物理量データに基づいて成形機1を構成する部材の寿命を予測するように構成してもよい。成形機1を構成する部材の寿命予測に利用する物理用データの測定時間幅を寿命予測モデル毎に設定できるように構成してもよい。
【0037】
なお、第1~第3寿命予測モデルM1,M2,M3は、異なるアルゴリズムにより成形機1の部材の寿命を予測するモデルの一例であり、寿命予測モデルの数は3つに限定されるものでは無い。また、寿命予測モデルの種類も特に上記のものに限定されるものでは無い。
例えば、第1~第3寿命予測モデルM1,M2,M3は、多層パーセプトロン(Multilayer perceptron:MLP)、畳み込みニューラルネットワーク(Convolutional Neural Network:CNN)、グラフニューラルネットワーク(Graph Neural Network:GNN)、グラフ畳み込みニューラルネットワーク(Graph Convolutional Network:GCN)、RNN(Recurrent Neural Network)、LSTM(Long Short Term Memory)、その他のニューラルネットワークモデルで構成してもよい。また、決定木、ランダムフォレスト、SVM(Support Vector Machine)などのアルゴリズムを用いて第1寿命予測モデルM1を構成してもよい。
【0038】
図5は、収集データDB52aのレコードレイアウトの一例を示す概念図である。収集データDB52aは、ハードディスク、DBMS(DataBase Management System)を備え、成形機1から収集した各種物理量データを記憶する。例えば、収集データDB52aは、「No.」(レコード番号)列、「機器ID」列、「運転日時」列、「振動データ」列、「軸トルク」列を有する。
【0039】
「機器ID」列は、成形機1の機器識別子を格納する。「運転日時」列は、レコードとして記憶される各種データが得られた年、月、日時等を示す情報を格納する。「運転データ」列は、成形機1の運転状態を示す時系列の物理量、例えばモータ電流、スクリュ11の回転数、スクリュ11の先端圧力、ダイヘッド圧力、フィーダ供給量(樹脂原料の供給量)、押出量、シリンダ温度、樹脂圧等を格納する。「振動データ」列は、時系列の物理量データである振動データを格納する。「軸トルクデータ」列は、時系列の物理量データであるスクリュ11のトルクデータを格納する。
【0040】
図6は、モデル構成DB52bのレコードレイアウトの一例を示す概念図である。モデル構成DB52bは、ハードディスク、DBMS(DataBase Management System)を備え、成形機1を構成する部材の寿命を予想するために使用する各種寿命予測モデルの係数等を記憶する。例えば、モデル構成DB52bは、「ユーザID」列、「機器ID」列、「部材ID」列、「第1寿命予測モデル」列、「第1寿命予測使用センサID」列、「第2寿命予測モデル」列、「第2寿命予測使用センサID」列、「第3寿命予測モデル」列、「第3寿命予測使用センサID」列を有する。
【0041】
「ユーザID」列は、成形機1のユーザの識別子を格納する。「機器ID」列は、成形機1の機器識別子を格納する。「部材ID」列は成形機1を構成する部材であって、残存寿命の予測対象である部材の部材識別子を格納する。
【0042】
「第1寿命予測モデル」列は、当該機器ID及び部材IDが示す成形機1の部材の残存寿命を予測するために転移学習又はファインチューニングされた第1寿命予測モデルM1を記憶する。例えば、「第1寿命予測モデル」列は、画像認識学習モデル73の重み係数、各種パラメータを格納する。「第1寿命予測使用センサID」列は、当該第1寿命予測モデルM1を用いて当該部材の残存寿命を予測するために利用するセンサ2の識別子を格納する。言い換えると、当該部材の残存寿命を予測するために利用する物理量データの種類を格納する。例えば、モータ電流を検出するセンサ2の識別子、減速機14の振動を検出するセンサ2の識別子、スクリュ11の軸トルクを検出するセンサ2の識別子等を記憶する。
【0043】
「第2寿命予測モデル」列は、当該機器ID及び部材IDが示す成形機1の部材の残存寿命を予測するために転移学習又はファインチューニングされた第2寿命予測モデルM2を記憶する。例えば、「第2寿命予測モデル」列は、状態量推定数理モデル81及び寿命推定数理モデル82の重み係数、各種パラメータを格納する。「第2寿命予測使用センサID」列は、当該第2寿命予測モデルM2を用いて当該部材の残存寿命を予測するために利用するセンサ2の識別子を格納する。
【0044】
「第3寿命予測モデル」列は、当該機器ID及び部材IDが示す成形機1の部材の残存寿命を予測するために転移学習又はファインチューニングされた第3寿命予測モデルM3を記憶する。例えば、「第3寿命予測モデル」列は、寿命推定関数92の係数を格納する。「第3寿命予測使用センサID」列は、当該第3寿命予測モデルM3を用いて当該部材の残存寿命を予測するために利用するセンサ2の識別子を格納する。
【0045】
図6に示すように、一の部材の残存寿命を予測する際、異なるセンサ2を用いて得られた物理量データを用いて、それぞれ異なる寿命予測モデルを用いて残存寿命を予測するように構成することができる。例えば、減速機14の残存寿命を予測する際、第1センサ21を用いて得られる第1の部位の物量データに基づいて、第1寿命予測モデルM1を用いて残存寿命を算出すると共に、第2センサ22を用いて得られる第2の部位の物理量データに基づいて、第2寿命予測モデルM2又は第3寿命予測モデルM3を用いて残存寿命を算出し、算出された残存寿命の平均値等を算出するようにすることができる。第1センサ21を用いて得られる物理量データは例えば減速機14の振動データ、第2センサ22を用いて得られる物理量データはスクリュ11の軸トルクである。
【0046】
なお、モデル構成DB52bは、図6に示すように、成形機1及び部材に応じて、残存寿命の予測に使用する寿命予測モデルの情報を格納し、残存寿命の予測に使用しない寿命予測モデルの寿命を格納しないように構成してもよい。また、モデル構成DB52bは、転移学習又はファインチューニングの適否にかかわらず、収集可能な物理量データを用いて学習させた第1~第3寿命予測モデルM1,M2,M3の情報を全て格納するように構成してもよい。更にモデル構成DB52bは、第1~第3寿命予測モデルM1,M2,M3の予測精度に応じた重み係数を機器ID及び部材IDに対応付けて記憶してもよい。当該重み係数は、第1~第3寿命予測モデルM1,M2,M3にて算出される寿命予測の重み付け平均を算出するための係数である。
【0047】
<機械学習処理>
図7は、寿命予測モデルの学習処理手順を示すフローチャートである。寿命予測装置5の処理部51は、データ収集装置3から成形機1を構成する部材の状態に関連する物理量データを取得する(ステップS11)。処理部51は取得した物理量データを収集データDB52aに格納する。
【0048】
次いで、処理部51は取得した物理量データに基づいて第1寿命予測モデルM1の機械学習処理を実行する(ステップS12)。処理部51は取得した物理量データに基づいて第2寿命予測モデルM2の機械学習処理を実行する(ステップS13)。処理部51は取得した物理量データに基づいて第3寿命予測モデルM3の機械学習処理を実行する(ステップS14)。
【0049】
なお、処理部51は、寿命予測対象である成形機1の部材に応じて、第1~第3寿命予測モデルM1,M2,M3を選択的に学習させるように構成してもよい。例えば、機械学習用の物理量データが少ない場合、第3寿命予測モデルM3のみを学習させ、物理量データが十分に蓄積された場合、第1~第3寿命予測モデルM1,M2,M3を全て学習させるように構成してもよい。
【0050】
第1~第3寿命予測モデルM1,M2,M3の学習を終えた処理部51は、学習済みの第1~第3寿命予測モデルM1,M2,M3を構成するためのデータを、寿命予測対象の成形機1及び部材を示す機器ID及び部材IDに対応付けてモデル構成DB52bに格納する(ステップS15)。
【0051】
学習済みの第1寿命予測モデルM1を構成するためのデータは、例えば、画像認識学習モデル73の重み係数である。学習済みの第2寿命予測モデルM2を構成するためのデータは、例えば、状態量推定数理モデル81及び寿命推定数理モデル82の係数である。学習済みの第3寿命予測モデルM3を構成するためのデータは、例えば、寿命推定関数92の係数である。
【0052】
図8は、第1寿命予測モデルM1を示す概念図である。第1寿命予測モデルM1は、周波数解析部71と、画像生成部72と、画像認識学習モデル73とを備える。周波数解析部71は、時系列の物理量データを周波数成分の物理量データにフーリエ変換する演算処理部である。周波数解析部71は、短時間フーリエ変換(STFT: Short-Time Fourier Transform)にて物理量データのフーリエ変換を行うとよい。画像生成部72は、フーリエ変換された物理量データを画像で表した画像データに変換する演算処理部である。例えば、画像の横軸を周波数、縦軸を周波数成分の大きさとした画像平面に物理量データを表すとよい。以下、物理量データをフーリエ変換することによって得られる画像をフーリエ変換画像と呼ぶ。
なお、周波数解析の方法はSTFTに限定されるものでは無く、ウェーブレット変換(Wavelet Transformation)、ストックウェル変換(Stockwell Transform)、ウィグナー分布(Wigner distribution function)、経験的モード分解(Empirical Mode Decomposition)、ヒルベルト・ファン変換(Hilbert-Huang Transform)等を用いてもよい。
【0053】
画像認識学習モデル73は、畳み込みニューラルネットワーク(CNN:Convolutional neural network)であり、フーリエ変換画像の画像データが入力される入力層73aと、中間層73bと、部材の残存寿命を示す残存寿命データを出力する出力層73cとを備える。
【0054】
入力層73aは、フーリエ変換画像を構成する各画素の画素値が入力される複数のノードを有する。中間層73bは、入力層73aに入力されたフーリエ変換画像の各画素の画素値を畳み込む畳み込み層と、畳み込み層で畳み込んだ画素値をマッピングするプーリング層とが交互に連結された構成を有する。中間層73bは、フーリエ変換画像の画像情報を圧縮しながら当該フーリエ変換画像の特徴量を抽出し、抽出したフーリエ変換画像、つまり物理量データの特徴量を出力層73cに出力する。
【0055】
出力層73cは、物理量データ測定時点における部材の残存寿命を示す残存寿命データを出力するノードを有する。
【0056】
なお、画像認識学習モデル73の一例としてCNNを例示したが、多層パーセプトロン(Multilayer perceptron:MLP)、畳み込みニューラルネットワーク(Convolutional Neural Network:CNN)、グラフニューラルネットワーク(Graph Neural Network:GNN)、グラフ畳み込みニューラルネットワーク(Graph Convolutional Network:GCN)、RNN(Recurrent Neural Network)、LSTM(Long Short Term Memory)、その他のニューラルネットワークモデルで構成してもよい。また、決定木、ランダムフォレスト、SVM(Support Vector Machine)などのアルゴリズムを用いて第1寿命予測モデルM1を構成してもよい。
【0057】
図9は、第1寿命予測モデルM1の学習処理手順を示すフローチャートである。処理部51は、収集データDB52aに蓄積された時系列の物理量データを周波数解析することによって、周波数成分の物理量に変換し(ステップS21)、フーリエ変換された物理量データに基づいて、フーリエ変換画像を生成する(ステップS22)。そして、処理部51は、フーリエ変換画像に、当該フーリエ変換画像の元になった物理量データが測定された時点における部材の残存寿命をラベリングする(ステップS23)。次いで、処理部51は、残存寿命がラベリングされたフーリエ変換画像を学習データ(訓練データ)として用いて第1寿命予測モデルM1の機械学習を実行する(ステップS24)。記憶部52は既成の画像認識学習モデル73を記憶しており、当該画像認識学習モデル73の転移学習又はファインチューニングにより、特定の成形機1及び部材の残存寿命予測に特化した第1寿命予測モデルM1を生成することができる。より具体的には処理部51は、学習データを用いた誤差逆伝播法、誤差勾配降下法等によって、画像認識学習モデル73の重み係数を最適化することにより、画像認識学習モデル73を機械学習させる。
【0058】
図10Aは、第1寿命予測モデルM1の学習結果を示すグラフ、図10Bは、第1寿命予測モデルM1を用いた推論結果を示すグラフである。図10A及び図10Bに示す横軸は経過日数、縦軸は残存寿命(推定寿命)を示している。予測対象の部材は、例えば、減速機14のギア又は軸受けであり、物理量は減速機14の振動である。図10Aに示す期間(経過日数0~7か月)に得られた学習データを用いて画像認識学習モデル73の機械学習が行われた。直線矢印はラベリングされた残存寿命(寿命ラベル)を示している。丸点プロットは、学習データのフーリエ変換画像を画像認識学習モデル73に入力することによって得られた残存寿命の予測結果を示している。なお、学習の段階で、寿命一定以上となるものは壊れないものと判定するようにした。
図10B中、左側(経過日数0~2か月)の丸点プロットは、中古の部材(残存寿命が短い)を備えた成形機1から得られたフーリエ変換画像を画像認識学習モデル73に入力することによって得られた残存寿命の予測結果(推定寿命)を示している。図10B中、推論段階で、予測された残存寿命が一定以上となるもの(例えば図10B中、Aの範囲)は、丸点プロットとして表示されていない。図10A及び図10Bに示すように、学習済みの画像認識学習モデル73にて部材の残存寿命を予測できることが分かる。
【0059】
図11は、第2寿命予測モデルM2を示す概念図である。第2寿命予測モデルM2は、状態量推定数理モデル81と、寿命推定数理モデル82とを備える。状態推定モデルは、センサ2を用いて検出可能な複数種類の物理量それぞれを示す複数の物理量データと、当該複数の物理量以外の他の状態量との関係を規定する関数である。複数の物理量及び他の状態量には、例えば、減速機14の振動、樹脂原料の供給量、モータ電流、スクリュ11の回転数、樹脂種料樹脂の種類、スクリュ構成等が含まれる。寿命推定数理モデル82は、物理量データと、状態量推定数理モデル81によって推定される物理量データとに基づいて、成形機1の部材の残存寿命を推定する関数である。
【0060】
図12は、第2寿命予測モデルM2の学習処理手順を示すフローチャートである。処理部51は、収集データDB52aに蓄積されている物理量データに、当該物理量データが測定された時点における部材の残存寿命をラベリングする(ステップS31)。次いで、処理部51は、残存寿命がラベリングされた物理量データを学習データとして用いて状態量推定数理モデル81及び寿命推定数理モデル82の係数を最適化する(ステップS32)。状態量推定数理モデル81及び寿命推定数理モデル82は回帰式で表すことができ、処理部51は、例えばカーネルリッジ回帰(Kernel Ridge Regression)によって、当該数理モデルの係数を最適化することができる。記憶部52は、予め粗調整された状態量推定数理モデル81及び寿命推定数理モデル82を記憶しており、当該数理モデルの係数を最適化することによって、第2寿命予測モデルM2を生成することができる。
なお、状態量推定数理モデル81及び寿命推定数理モデル82の係数を最適化する方法は、カーネルリッジ回帰に限定されるものではない。
【0061】
図13Aは、第2寿命予測モデルM2の学習結果を示すグラフ、図13Bは、第2寿命予測モデルを用いた推論結果を示すグラフである。図13A及び図13Bに示す横軸は経過日数、縦軸は残存寿命(推定寿命)を示している。予測対象の部材は、例えば、減速機14のギア又は軸受けであり、物理量は減速機14の振動である。図13Aに示す期間(経過日数0~12か月)に得られた学習データを用いて状態量推定数理モデル81及び寿命推定数理モデル82の機械学習が行われた。実線はラベリングされた残存寿命(寿命ラベル)を示している。丸点プロットは第2寿命予測モデルM2を用いて予測された残存寿命を示している。
図13B中、右側の期間(経過日数3~8か月)に示された期間の範囲に示された丸点プロットは、新品の部材(残存寿命が長い)を備えた成形機1から得られた物理量データのRMSに基づいて予測された残存寿命を示している。図13中、左側の期間(0~2か月)の範囲に示された丸点プロットは、中古の部材(残存寿命が短い)を備えた成形機1から得られた物理量データのRMSに基づいて予測された残存寿命を示している。図13A及び図13Bに示すように、学習済みの状態量推定数理モデル81及び寿命推定数理モデル82にて部材の残存寿命を予測できることが分かる。
【0062】
図14は、第3寿命予測モデルM3を示す概念図である。第3寿命予測モデルM3は、RMS算出部91及び寿命推定関数92とを備える。RMS算出部91は、物理量データの2乗平均平方根を算出する演算処理部である。寿命推定関数92は、物理量データのRMSに基づいて、成形機1の部材の残存寿命を推定する関数である。寿命推定関数92は、目的変数である残存寿命を一又は複数の説明変数によって表す回帰式である。
【0063】
図15は、第3寿命予測モデルM3の学習処理手順を示すフローチャートである。処理部51は、収集データDB52aに蓄積されている物理量データに基づいて、当該物理量のRMSを算出し(ステップS41)、算出されたRMSに、当該物理量データが測定された時点における部材の残存寿命をラベリングする(ステップS42)。次いで、処理部51は、残存寿命がラベリングされたRMSを学習データとして用いて寿命推定関数92の係数を最適化する(ステップS43)。処理部51は、例えばラッソ回帰(Lasso Regression)によって、当該寿命推定関数92の係数を最適化することができる。記憶部52は、予め粗調整された寿命推定関数92を記憶しており、当該寿命推定関数92の係数を最適化することによって、第3寿命予測モデルM3を生成することができる。
【0064】
図16Aは、第3寿命予測モデルM3の学習結果を示すグラフ、図16Bは、第3寿命予測モデルM3を用いた推論結果を示すグラフである。図16A及び図16Bに示す横軸は経過日数、縦軸は残存寿命を示している。予測対象の部材は、例えば、減速機14のギア又は軸受けであり、物理量は減速機14の振動である。図16Aに示す期間(経過日数1~16か月)に得られた学習データを用いて寿命推定関数92の機械学習が行われた。実線はラベリングされた残存寿命を示している。丸点プロットは、寿命推定関数92を用いて予測された残存寿命を示している。
【0065】
図16B中、右上側の丸点プロットは、新品の部材(残存寿命が長い)を備えた成形機1から得られた物理量データのRMSに基づいて予測された残存寿命を示している。図16B中、左下側の丸点プロットは、中古の部材(残存寿命が短い)を備えた成形機1から得られた物理量データのRMSに基づいて予測された残存寿命を示している。図16A及び図16Bに示すように、学習済みの寿命推定関数92にて部材の残存寿命を予測できることが分かる。
【0066】
<残存寿命予測>
図17及び図18は、寿命予測の処理手順を示すフローチャートである。寿命予測装置5の処理部51は、データ収集装置3から物理量データを取得する(ステップS51)。次いで、処理部51は、寿命予測対象の部材を予測するために使用する一又は複数の寿命予測モデルを選択する(ステップS52)。具体的には、処理部51は、特定の成形機1及び部材を示す機器ID及び部材IDに対応付けられた寿命推定数理モデル82をモデル構成DB52bから読み出す。
【0067】
処理部51は、第1寿命予測モデルM1を利用するか否かを判定する(ステップS53)。第1寿命予測モデルM1を利用すると判定した場合(ステップS53:YES)、処理部51は、取得した時系列の物理量データを周波数解析することによって、周波数成分の物理量に変換し(ステップS54)、フーリエ変換された物理量データに基づいて、フーリエ変換画像の画像データを生成する(ステップS55)。そして、処理部51は、生成されたフーリエ変換画像の画像データを画像認識学習モデル73に入力することによって、部材の残存寿命を予測する(ステップS56)。
【0068】
ステップS56の処理を終えた場合、又はステップS53において第1寿命予測モデルM1を利用しないと判定した場合(ステップS53:NO)、処理部51は、第2寿命予測モデルM2を利用するか否かを判定する(ステップS57)。第2寿命予測モデルM2を利用すると判定した場合(ステップS57:YES)、処理部51は、取得した物理量データを状態量推定数理モデル81に代入することによって未知の状態量を推定する(ステップS58)。次いで、処理部51は、取得した物理量データと、算出された未知の状態量を寿命推定数理モデル82に代入することによって、部材の残存寿命を予測する(ステップS59)。
【0069】
ステップS59の処理を終えた場合、又はステップS57において第2寿命予測モデルM2を利用しないと判定した場合(ステップS57:NO)、処理部51は、第3寿命予測モデルM3を利用するか否かを判定する(ステップS60)。第3寿命予測モデルM3を利用すると判定した場合(ステップS60:YES)、処理部51は、取得した物理量データに基づいて、当該物理量のRMSを算出する(ステップS61)。そして、処理部51は、算出された物理量データのRMSを寿命推定関数92に代入することによって、部材の残存寿命を予測する(ステップS62)。
【0070】
ステップS62の処理を終えた場合、又はステップS60において第3寿命予測モデルM3を利用しないと判定した場合(ステップS60:NO)、利用した第1~第3寿命推定モデルに基づいて、部材の残存寿命を算出する(ステップS63)。例えば、処理部51は、第1~第3寿命推定モデルによってそれぞれ算出された残存寿命の最小値、平均値、中央値、重み付け平均値等を算出する。
重み付け平均に使用する重み係数は、ユーザによって任意に設定される構成でもよいし、過去の寿命予測精度のフィードバック情報(例えば、算出された残存寿命と、実際の残存寿命との差分)に応じて設定してもよい。また、処理部51は、ユーザによって選択された一つの寿命予測モデルによって算出された残存寿命を選択してもよい。処理部51は、ユーザによって選択された複数の寿命予測モデルによって算出された残存寿命の最小値、平均値、中央値、重み付け平均値等を算出してもよい。
【0071】
次いで、処理部51は、取得した時系列の物理量データに基づいて、成形機1を構成する各部材の、時系列の各時点における特徴を表した特徴周波数強度を算出する(ステップS64)。そして、処理部51は、算出された特徴周波数強度の時系列グラフを作成する(ステップS65)。時系列グラフは、横軸を時間、縦軸を特徴周波数強度とし、上記算出された時系列の特徴周波数強度を表すグラフである。
【0072】
次いで、処理部51は、成形機1を構成する各部材の残存寿命及び時系列グラフの表示処理を実行する(ステップS66)。処理部51は、例えばユーザが所有する各成形機1の状態をブラウザで閲覧することが可能なポータルサイトに、各部材の残存寿命及び時系列グラフを表示する。
【0073】
また、処理部51は、算出された成形機1を構成する各部材の残存寿命及び時系列グラフのデータを端末装置6a,6bへ送信する(ステップS67)。例えば、処理部51は、成形機1のユーザ又はオペレータの端末装置6a、当該ユーザの成形機1に関わるサービス提供担当者の端末装置6bへ残存寿命及び時系列グラフのデータを送信する。
【0074】
本実施形態に係る寿命予測装置5は、複数の成形機1及び部材それぞれの残存寿命、成形機1の各部材の状態に関連する物理量の時系列グラフを閲覧することができるポータルサイトを提供する。本実施形態に係る寿命予測装置5は、複数のユーザがそれぞれ保有する成形機1の状態を管理しており、各ユーザはブラウザを用いてポータルサイトにアクセスすることによって、当該ユーザが保有する成形機1の状態を閲覧及び確認することができる。また、成形機1及び部材に関わるサービス提供担当者もブラウザを用いてポータルサイトにアクセスすることによって、担当のユーザ又は成形機1の状態を閲覧及び確認することができる。
【0075】
図19は、ポータルサイトに表示される残存寿命推定結果表示画面101の一例を示す模式図である。残存寿命推定結果表示画面101は、ユーザが保有又は使用する複数の成形機1それぞれの名称を表示する機器名表示部111と、各成形機1を構成する部材の名称を表示する部材名表示部112とを有する。また、残存寿命推定結果表示画面101は、各部材の状態、特に残存寿命に基づく状態を表示する部材状態表示部113を有する。部材状態表示部113は、「良好」、「要確認」、「異常」等のアイコンを表示することによって各部材の状態を表示する。部材状態表示部113のアイコンが操作された場合、処理部51は当該部材の状態に関連する物理量の時系列グラフを表示させる。更に、残存寿命推定結果表示画面101は、異常がある部材の残存寿命を表示する残存寿命表示部114を有する。処理部51は、上記処理によって算出された部材の残存寿命を表示する。
【0076】
図20は、ポータルサイトに表示されるダッシュボード画面102の一例示す模式図である。ダッシュボード画面102は、成形機1の状態を示す代表的な一又は複数の物理量データの時系列グラフを表示する画面である。ダッシュボード画面102は、表示する成形機1及び期間等を指定するための表示操作部121と、時系列グラフ表示部122とを有する。表示操作部121は、例えば成形機1の機種を指定する機種指定部、表示する期間を示す期間指定部、スクリュ回転数を指定するスクリュ回転数指定部、ダッシュボードに表示するグラフの表示パターンを指定するパターン表示部、検索ボタン等を有する。
【0077】
ユーザは、予め表示パターンを設定することができ、寿命予測装置5は設定された表示パターンを記憶する。表示パターンは、成形機1の機種ID、表示パターン名、表示する部材のカテゴリ及びグラフ表示するデータ項目等の情報を含む。部材のカテゴリは、例えば減速機14、軸デバイス等である。
【0078】
データ項目には、稼働情報データ、周波数分析データ、トルク分析データ、2軸相関データ等が含まれる。稼働情報データは、例えば、スクリュ回転数、モータ電流、スクリュ先端圧力、ダイヘッド圧力等を含む。周波数分析データは、振動RMS、回転周波数強度、ギア噛み合い周波数強度、軸受け故障周波数強度等を含む、トルク分析データは、スクリュ11のトルク平均値、最大値、トルク振幅の平均値、最大値、主要周波数等を含む。2軸相関データは、二軸押出機における2本のスクリュ11の位相差等を含む。
【0079】
処理部51は、表示操作部121に入力された情報を受け付け、検索ボタンが操作された場合、受け付けた情報に対応する物理量データを収集データDB52aから読み出し、読み出した物理量データの時系列グラフを作成する。時系列グラフ表示部122は、表示操作部121にて指定された機種、期間、スクリュ回転数、表示パターンに応じた物理量データの時系列グラフを表示する。
【0080】
図21は、ポータルサイトに表示される検索表示画面103の一例示す模式図である。検索表示画面103は、時系列グラフを検索するための検索操作部131と、検索された時系列グラフを表示する時系列グラフ表示部132とを有する。検索操作部131は、例えば、検索及び表示する成形機1の機種、部材のカテゴリ、グラフ(データ項目)、センサ2のチャンネル、期間、スクリュ回転数等を指定するための入力項目、検索ボタンを有する。
【0081】
処理部51は、検索操作部131に入力された情報を受け付け、検索ボタンが操作された場合、受け付けた情報に対応する物理量データを収集データDB52aから読み出し、読み出した物理量データの時系列グラフを作成する。時系列グラフ表示部132は、検索及び作成された物理量データの時系列グラフを表示する。
【0082】
図22は、ポータルサイトに表示されるマンスリーレポート画面104の一例を示す模式図である。マンスリーレポート画面104は、成形機1のサービス提供担当者が作成したモニタリングレポートを表示する画面である。マンスリーレポート画面104は、レポートを検索するためのレポート検索部141と、コメント表示部142と、時系列グラフ表示部143とを有する。
【0083】
レポート検索部141は、成形機1の機種、レポート発行年月を指定する項目、検索ボタン等を有する。コメント表示部142は、サービス提供担当者が入力した成形機1の状態に関するコメントを表示する。サービス担当者は、ポータルサイトにアクセスすることによって、当該成形機1及び部材の状態に係る各種時系列グラフ、各部材の残存寿命等を確認することができ、閲覧した情報に基づいて、成形機1の状態に対するコメントを作成し、寿命予測装置5へ送信する。寿命予測装置5は、機器ID及びレポート発行年月に対応付けてコメントを記憶する。時系列グラフ表示部143は、成形機1の状態を表した代表的な時系列グラフを表示する。当該成形機1のサービス担当者は、マンスリーレポートに表示すべき時系列グラフを選択して指定することができる。寿命予測装置5は、機器ID及びレポート発行年月に対応付けてコメントを記憶する。
【0084】
処理部51は、ユーザによってレポート検索部141に入力された情報を受け付け、検索ボタンが操作された場合、受け付けた情報に対応するコメント及び物理量データを読み出し、当該物理量データに基づいて時系列グラフを作成する。時系列グラフ表示部132は、検索及び作成された物理量データの時系列グラフを表示する。
【0085】
以上の通り、本実施形態に係る寿命予測方法等によれば、成形機1を構成する部材の寿命予測のために収集できるデータ量にかかわらず、寿命予測のための機械学習を行い、当該部材の寿命を予測することができる。
【0086】
また、寿命予測装置5は、画像認識学習モデル73を機械学習させ、成形機1を構成する部材の残存寿命を予測することができる。寿命予測装置5は、状態量推定数理モデル81及び寿命推定数理モデル82を機械学習させ、成形機1を構成する部材の残存寿命を予測することができる。寿命予測装置5は、寿命推定関数92を機械学習させ、成形機1を構成する部材の残存寿命を予測することができる。寿命予測装置5は、得られる学習データに応じて、これらの寿命予測モデルを組み合わせて機械学習を行い、成形機1を構成する部材の残存寿命を予測することができる。
【0087】
寿命予測装置5は、複数種類の物理量データを収集しているが、任意の物理量データを選択し、又は組み合わせて、第1~第3寿命予測モデルM1,M2,M3を機械学習させることができ、成形機1を構成する部材の残存寿命を予測することができる。
【0088】
寿命予測装置5は、短期的に測定して得られた物理量データに基づいて部材の残存寿命を予測する寿命予測モデルと、長期的に測定して得られた物理量データに基づいて部材の残存寿命を予測する寿命予測モデルとを組み合わせて、当該部材の残存寿命を予測することができる。
【0089】
寿命予測装置5は、成形機1を構成する所定の部材に関連する第1の部位の物理量を測定して得られる物理量データに基づいて当該部材の残存寿命を予測する寿命予測モデルと、当該所定の部材に関連する第2の部位の物理量を測定して得られる物理量データに基づいて当該部材の残存寿命を予測する寿命予測モデルとを組み合わせて、当該部材の残存寿命を予測することができる。
【0090】
寿命予測装置5は、成形機1を構成する減速機14、スクリュ11、モータ13及びダイス12を含む押出機に係る部材の残存寿命を、減速機14に係る物理量データ、スクリュ11に係る物理量データ、モータ13に係る物理量データ、ダイス12に係る物理量データを用いて予測することができる。
【0091】
寿命予測装置5は、減速機14に係る物理量データに基づいて、減速機14の残存寿命を予測する寿命予測モデルと、スクリュ11に係る物理量データに基づいて、減速機14の残存寿命を予測する寿命予測モデルとを組み合わせて、減速機14の残存寿命を予測することができる。つまり、減速機14の残存寿命を予測する際、異なる種類の物理量データ、又は異なる部位で測定される物理量データを用いることによって、寿命の予測精度を向上させることができる。また、異なる種類の物理量データ、又は異なる部位で測定される物理量データそれぞれに適した異なる寿命予測モデルを選択し、複数種類の物理量データ及び寿命予測モデルを用いることによって、寿命の予測精度を向上させることができる。
【0092】
寿命予測装置5は、複数の寿命予測モデルを用いて推定された、成形機1の部材の寿命の最小値、平均値、中央値、又は重み付け平均値を算出することによって、寿命の予測精度を向上させることができる。
【0093】
寿命予測装置5は、異なる成形機1及び部材毎に異なる寿命予測モデルを記憶することができる。つまり、異なる成形機1及び部材毎に適した、寿命予測モデルの組み合わせを記憶することができる。また、異なる成形機1及び部材毎に特化した寿命予測モデルを記憶することができる。寿命予測装置5は、異なる成形機1及び部材毎に適した、一又は複数の寿命予測モデルを用いて、当該部材の残存寿命を予測することができる。
【0094】
寿命予測装置5は、成形機1を構成する部材の残存寿命の予測結果、物理量データの時系列グラフを、ポータルサイトに表示することができる。
【0095】
寿命予測装置5は、成形機1を構成する部材の残存寿命の予測結果、物理量データの時系列グラフを、ユーザの端末装置6a及びサービス提供担当者の端末装置6bに送信することができる。
【0096】
なお、本実施形態では、成形機1を構成する部材の残存寿命を予測する例を説明したが、同様にして当該部材の異常度を推定するように構成してもよい。第1~第3寿命予測モデルM1,M2,M3を学習させる際、残存寿命に代えて異常度を学習させれば、本実施形態と同様にして部材の異常度を推定することができる。
【0097】
また、成形機1によって生産される成形品の品質を推定するように構成してもよい。成形機1を構成する部品の状態変化から成形品の品質異常が生じることがある。例えば、スクリュピースの摩耗が原因で、成形品の未溶融が発生し得る。成形品品質は、品質の程度を示す連続量であるものとする。第1~第3寿命予測モデルM1,M2,M3を学習させる際、残存寿命に代えて成形品品質を学習させれば、本実施形態と同様にして成形品品質を推定することができる。
【0098】
(付記1)
成形機を構成する部材の状態に関連する物理量データを取得し、
異なるアルゴリズムにより前記部材の寿命若しくは異常度又は成形品品質を推定する複数の推定モデルを用意し、
前記複数の推定モデルから選択される一又は複数の前記推定モデルを用い、取得した前記物理量データに基づいて前記部材の寿命若しくは異常度又は成形品品質を推定する
推定方法。
(付記2)
前記複数の推定モデルは、
前記物理量データから生成される画像データが入力された場合、前記部材の寿命若しくは異常度又は成形品品質を示すデータを出力する学習モデルを含み、
取得した前記物理量データから生成される画像データを前記学習モデルに入力することによって、前記部材の寿命若しくは異常度又は成形品品質を推定する
付記1に記載の推定方法。
(付記3)
前記物理量データは複数種類の物理量を示す物理量データを含み、
前記複数の推定モデルは、
前記複数種類の物理量データと、前記複数種類の物理量以外の他の状態量と、前記部材の寿命若しくは異常度又は成形品品質との関係を示す数理モデルを含み、
取得した前記物理量データを前記一又は複数の数理モデルに代入することによって、前記部材の寿命若しくは異常度又は成形品品質を推定する
付記1又は付記2に記載の推定方法。
(付記4)
前記複数の推定モデルは、
一又は複数の説明変数を有し、前記物理量データと、前記部材の寿命若しくは異常度又は成形品品質との関係を示す回帰式を含み、
取得した前記物理量データを前記回帰式に代入することによって、前記部材の寿命若しくは異常度又は成形品品質を推定する
付記1から付記3のいずれか1つに記載の推定方法。
(付記5)
前記物理量データは複数種類の物理量を示す物理量データを含み、
前記複数の推定モデルは、
前記物理量データから生成される画像データが入力された場合、前記部材の寿命若しくは異常度又は成形品品質を示すデータを出力する学習モデルと、
前記複数種類の物理量データと、前記複数種類の物理量以外の他の状態量と、前記部材の寿命若しくは異常度又は成形品品質との関係を示す数理モデルと、
一又は複数の説明変数を有し、前記物理量データと、前記部材の寿命若しくは異常度又は成形品品質との関係を示す回帰式と
を含み、
前記取得した前記物理量データから生成される画像データを前記学習モデルに入力し、取得した前記物理量データを前記数理モデルに代入し、取得した前記物理量データを前記回帰式に代入することによって、前記部材の寿命若しくは異常度又は成形品品質を推定する
付記1から付記4のいずれか1つに記載の推定方法。
(付記6)
前記複数の推定モデルは、
短期的に測定して得られた前記物理量データに基づいて前記部材の寿命若しくは異常度又は成形品品質を推定する推定モデルと、
長期的に測定して得られた前記物理量データに基づいて前記部材の寿命若しくは異常度又は成形品品質を推定する推定モデルと
を含む付記1から付記5のいずれか1つに記載の推定方法。
(付記7)
前記複数の推定モデルは、
前記部材に関連する第1の部位の物理量を測定して得られる物理量データに基づいて前記部材の寿命若しくは異常度又は成形品品質を推定する推定モデルと、
前記部材に関連する第2の部位の物理量を測定して得られる物理量データに基づいて前記部材の寿命若しくは異常度又は成形品品質を推定する推定モデルと
を含む付記1から付記6のいずれか1つに記載の推定方法。
(付記8)
前記成形機は減速機、スクリュ、モータ及びダイスを含む押出機であり、
前記物理量データは、
前記減速機に係る物理量データ、前記スクリュに係る物理量データ、前記モータに係る物理量データ、又は前記ダイスに係る物理量データを含む
付記1から付記7のいずれか1つに記載の推定方法。
(付記9)
前記複数の推定モデルは、
前記減速機に係る物理量データに基づいて、前記減速機の寿命若しくは異常度又は成形品品質を推定する推定モデルと、
前記スクリュに係る物理量データに基づいて、前記減速機の寿命若しくは異常度又は成形品品質を推定する推定モデルと
を含む付記1から付記8のいずれか1つに記載の推定方法。
(付記10)
前記複数の推定モデルを用いて推定された前記部材の寿命若しくは異常度又は成形品品質の最小値、平均値、中央値、又は重み付け平均値を算出する
付記1から付記9のいずれか1つに記載の推定方法。
(付記11)
複数の前記成形機それぞれを示す機器識別子と、前記成形機を構成する前記部材を示す部材識別子と、前記部材の寿命若しくは異常度又は成形品品質推定に使用する一又は複数の前記推定モデルとを対応付けて記憶する
付記1から付記10のいずれか1つに記載の推定方法。
(付記12)
推定された前記部材の寿命若しくは異常度又は成形品品質を示す情報を表示可能に提供する
付記1から付記11のいずれか1つに記載の推定方法。
(付記13)
推定された前記部材の寿命若しくは異常度又は成形品品質を示す情報を端末装置へ送信する
付記1から付記12のいずれか1つに記載の推定方法。
【符号の説明】
【0099】
1 :成形機
2 :センサ
3 :データ収集装置
4 :ルータ
5 :寿命予測装置
6a :端末装置
6b :端末装置
10 :シリンダ
10a :ホッパ
11 :スクリュ
12 :ダイス
13 :モータ
14 :減速機
15 :制御装置
21 :第1センサ
22 :第2センサ
23 :第3センサ
24 :第4センサ
31 :制御部
32 :記憶部
33 :通信部
34 :データ入力部
50 :記録媒体
51 :処理部
52 :記憶部
53 :通信部
71 :周波数解析部
72 :画像生成部
73 :画像認識学習モデル
73a :入力層
73b :中間層
73c :出力層
81 :状態量推定数理モデル
82 :寿命推定数理モデル
91 :RMS算出部
92 :寿命推定関数
101 :残存寿命推定結果表示画面
102 :ダッシュボード画面
103 :検索表示画面
104 :マンスリーレポート画面
DB52a :収集データ
DB52b :モデル構成
M1 :第1寿命予測モデル
M2 :第2寿命予測モデル
M3 :第3寿命予測モデル
P :コンピュータプログラム
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10A
図10B
図11
図12
図13A
図13B
図14
図15
図16A
図16B
図17
図18
図19
図20
図21
図22