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特開2024-96146スキンケアのためのラクトバチルス属(Lactobacilli)
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024096146
(43)【公開日】2024-07-12
(54)【発明の名称】スキンケアのためのラクトバチルス属(Lactobacilli)
(51)【国際特許分類】
   A61K 35/747 20150101AFI20240705BHJP
   A61P 17/00 20060101ALI20240705BHJP
   A61K 47/36 20060101ALI20240705BHJP
   A61K 47/42 20170101ALI20240705BHJP
   A61K 47/46 20060101ALI20240705BHJP
   A61K 9/14 20060101ALI20240705BHJP
   A61K 9/19 20060101ALI20240705BHJP
   A61K 8/02 20060101ALI20240705BHJP
   A61K 8/99 20170101ALI20240705BHJP
   A61Q 19/00 20060101ALI20240705BHJP
   A61K 9/08 20060101ALI20240705BHJP
   A61K 9/06 20060101ALI20240705BHJP
   A61P 17/10 20060101ALI20240705BHJP
   A61P 17/04 20060101ALI20240705BHJP
【FI】
A61K35/747
A61P17/00
A61K47/36
A61K47/42
A61K47/46
A61K9/14
A61K9/19
A61K8/02
A61K8/99
A61Q19/00
A61K9/08
A61K9/06
A61P17/10
A61P17/04
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2024063913
(22)【出願日】2024-04-11
(62)【分割の表示】P 2020573258の分割
【原出願日】2019-06-26
(31)【優先権主張番号】PCT/EP2018/067090
(32)【優先日】2018-06-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(71)【出願人】
【識別番号】511008850
【氏名又は名称】シムライズ アーゲー
(71)【出願人】
【識別番号】520509052
【氏名又は名称】プロビ アクチボラーグ
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【弁理士】
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100119013
【弁理士】
【氏名又は名称】山崎 一夫
(74)【代理人】
【識別番号】100123777
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 さつき
(74)【代理人】
【識別番号】100111796
【弁理士】
【氏名又は名称】服部 博信
(74)【代理人】
【識別番号】100123766
【弁理士】
【氏名又は名称】松田 七重
(72)【発明者】
【氏名】ペサロ マヌエル
(72)【発明者】
【氏名】シュトゥールマン ドミニク
(72)【発明者】
【氏名】ガルベ リーザ
(72)【発明者】
【氏名】シュマウス ゲルハルト
(72)【発明者】
【氏名】ホルムグレン ケルスティン
(72)【発明者】
【氏名】ラーソン ニクラス
(57)【要約】
【課題】本発明は、局所施用による皮膚症状の処置および/または予防における使用のための微生物、より詳細には、皮膚バリア機能の低下、炎症性皮膚症状および/または病原性微生物の増殖の処置および/または予防における使用を目的とする微生物を提供することを課題とする。
【解決手段】局所施用による皮膚症状の処置および/または予防における使用のための微生物または2種類の微生物を含むかまたはからなる混合物であって、ラクトバチルス・プランタルム(Lactobacillus plantarum)HEAL19(DSM15313)およびラクトバチルス・プランタルムHEAL99(DSM15316)からなる群から選ばれる微生物または2種類の微生物を含むかまたはからなる混合物により上記課題は達成される。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
局所施用による皮膚症状の処置および/または予防における使用のための微生物または2種類の微生物を含むかまたはからなる混合物であって、前記微生物は、ラクトバチルス・プランタルム(Lactobacillus plantarum)HEAL19(DSM15313)およびラクトバチルス・プランタルムHEAL99(DSM15316)からなる群から選ばれる微生物または2種類の微生物を含むかまたはからなる混合物。
【請求項2】
前記微生物は、熱処理に付されており、好ましくは、無傷の物理的構造を有する弱毒化または死滅微生物である、請求項1に記載の使用のための微生物または混合物。
【請求項3】
前記皮膚症状は、皮膚バリア機能の低下、炎症性皮膚症状および/または病原性微生物の増殖であり、好ましくは、前記皮膚症状は、アトピー性皮膚炎、微生物感染症、乾燥肌、皮膚のかゆみ、敏感肌、アトピー肌、皮膚の炎症、微生物性腸内毒素症、酒さ、乾癬、発疹およびにきびからなる群から選ばれる、請求項1または2に記載の使用のための微生物または混合物。
【請求項4】
ラクトバチルス・プランタルム(Lactobacillus plantarum)HEAL19(DSM15313)およびラクトバチルス・プランタルムHEAL99(DSM15316)からなる群から選ばれた1種類の微生物または2種類の微生物の混合物とキャリアとを含むかまたはからなる調製物であって、前記調製物は、粒子状調製物、特に粒状体または粉体である調製物。
【請求項5】
前記微生物は、熱処理に付されており、好ましくは、無傷の物理的構造を有する弱毒化または死滅微生物である、請求項4に記載の調製物。
【請求項6】
前記キャリアは、イヌリン、デンプン、アラビアゴム、ホエータンパク質、脱脂粉乳およびマルトデキストリンならびにそれらの組み合わせ、好ましくはマルトデキストリンからなる群から選ばれる、請求項4または5に記載の調製物。
【請求項7】
キャリアに対する微生物の比は、1:9~3:7、好ましくは1.5:8.5~2.5~7.5の範囲にあり、および/または前記調製物は、それぞれの場合に前記調製物の総重量に対して10~30重量%の微生物および70~90重量%の前記キャリア、好ましくは、15~25重量%の微生物および75~85重量%の前記キャリアを含む、請求項4~6のいずれか1項に記載の調製物。
【請求項8】
ラクトバチルス・プランタルム(Lactobacillus plantarum)HEAL19(DSM15313)およびラクトバチルス・プランタルムHEAL99(DSM15316)からなる群から選ばれた1種類の微生物または2種類の微生物の混合物とキャリアとを含むかまたはからなる調製物、好ましくは、請求項4から7のいずれか1項に記載の調製物、を製造するための方法であって、
(i)ラクトバチルス・プランタルムHEAL19(DSM15313)およびラクトバチルス・プランタルムHEAL99(DSM15316)からなる群から選ばれた1種類の微生物または2種類の微生物の混合物を準備するステップと、
(ii)任意選択として、ステップ(i)の前記微生物を、好ましくは60~121℃の範囲の温度で1秒~120分間の熱処理に付すステップと、
(iii)ステップ(i)または(ii)からの前記微生物をキャリアと組み合わせ、粒状体または粉体を得るために前記組み合わせを、好ましくは凍結乾燥、スプレー乾燥または造粒によってさらに加工するステップと、
を含む方法。
【請求項9】
ラクトバチルス・プランタルム(Lactobacillus plantarum)HEAL19(DSM15313)およびラクトバチルス・プランタルムHEAL99(DSM15316)からなる群から選ばれた1種類の微生物または2種類の微生物の混合物を含むかまたは請求項4~7のいずれか1項に記載の調製物を含む、皮膚への局所施用のための医薬品または化粧品組成物あるいは医薬品または化粧品製品であって、前記微生物の総量は、皮膚症状、特に炎症性皮膚症状、皮膚バリア機能の低下、および/または病原性微生物の増殖を処置および/または予防するために十分であり、好ましくは、前記微生物の総量は、それぞれの場合に前記組成物の総重量に対して0.01~5乾燥重量%、好ましくは0.02~1乾燥重量%の範囲にあり、および/または、前記微生物の総量は、前記総組成物のグラムあたり少なくとも108、好ましくは5×108細胞または少なくとも1011細胞、例えば、前記総組成物のグラムあたり108~5×1010、好ましくは、109~1010細胞の範囲にある、皮膚への局所施用のための医薬品または化粧品組成物あるいは医薬品または化粧品製品。
【請求項10】
前記組成物または製品は、水中油または油中水乳化液、軟膏、クレーム、ローションおよびジェルからなる群から選ばれ、好ましくは、前記組成物または製品は、キャリア、賦形剤およびさらなる活性成分からなる群から選ばれた1種類以上の構成要素をさらに含む、請求項9に記載の医薬品または化粧品組成物あるいは製品。
【請求項11】
医薬品または化粧品組成物あるいは製品、好ましくは請求項9または10に記載の医薬品または化粧品組成物あるいは製品を製造するための方法であって、
(i)ラクトバチルス・プランタルム(Lactobacillus plantarum)HEAL19(DSM15313)およびラクトバチルス・プランタルムHEAL99(DSM15316)からなる群から選ばれた1種類または2種類の微生物の混合物を準備し、好ましくは、前記微生物は、熱処理に付されており、好ましくは、無傷の物理的構造を有する弱毒化または死滅微生物であるステップ、または請求項4~7のいずれか1項に記載の調製物または請求項8に記載の方法によって製造される調製物を準備するステップと、
(ii)医薬品または化粧品組成物あるいは製品を得るためにステップ(i)の前記微生物または前記調製物をキャリア、賦形剤およびさらなる活性成分から選択された1種類以上の物質と組み合わせるステップと、
を含む方法。
【請求項12】
特に皮膚の外観を改善する皮膚への局所施用のための微生物または2種類の微生物を含むかまたはからなる混合物の化粧使用であって、前記微生物は、ラクトバチルス・プランタルム(Lactobacillus plantarum)HEAL19(DSM15313)およびラクトバチルス・プランタルムHEAL99(DSM15316)からなる群から選択され、好ましくは、前記微生物は、熱処理に付されており、および/または無傷の物理的構造を有する弱毒化または死滅微生物である化粧使用。
【請求項13】
皮膚刺激、乾燥肌、発疹、にきび、および/または皮膚老化を軽減または予防するための請求項12に記載の化粧使用。
【請求項14】
前記微生物は、請求項4~7のいずれか1項に記載の調製物または請求項8に記載の方法によって製造された調製物の形で用いられる、請求項12または13に記載の化粧使用。
【請求項15】
皮膚の外観を改善する、特に皮膚刺激、乾燥肌、発疹、にきびおよび/または皮膚老化を軽減または予防する化粧方法であって、
i)微生物または2種類の微生物を含むかまたはからなる混合物を局所的に皮膚に施用するステップであって、前記微生物は、ラクトバチルス・プランタルム(Lactobacillus plantarum)HEAL19(DSM15313)およびラクトバチルス・プランタルムHEAL99(DSM15316)からなる群から選択されるステップ、または、請求項4~7のいずれか1項に記載の調製物または請求項8に記載の方法によって製造された調製物または請求項9または10に記載の化粧品組成物または製品を皮膚に施用するステップであって、好ましくは、前記微生物は、熱処理に付されており、および/または無傷の物理的構造を有する弱毒化または死滅微生物であるステップと、
を含む方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、局所施用による皮膚症状の処置および/または予防における使用のための微生物に関し、微生物は、ラクトバチルス・プランタルム(Lactobacillus plantarum)HEAL19(DSM15313)およびラクトバチルス・プランタルムHEAL99(DSM15316)からなる群から選ばれる。詳しくは、微生物は、皮膚バリア機能の低下、炎症性皮膚症状および/または病原性微生物の増殖の処置および/または予防における使用を目的とする。本発明は、さらに、微生物およびキャリアを含む粒子状調製物ならびにこれらの微生物を含む医薬品または化粧品組成物または製品に関する。皮膚への施用のためのこれらの微生物または組成物の化粧使用ならびに特に皮膚の外観を改善しおよび/または体臭を予防する化粧方法も提供される。
【背景技術】
【0002】
プロバイオティクスは、腸-脳軸相関作用の高まりに帰される腸の健康状態を向上させ、乳糖不耐症を軽減することが良く知られ、膣または泌尿生殖器の感染症処置において有益であるか、または炎症性腸疾患を予防する。特にラクトバチルス属(Lactobacillus sp.)は、食品発酵プロセスにおいて安全かつ長い伝統を有する。腸とは対照的に、表皮、皮膚微生物相および環境微生物の間の相互作用についてはほとんど知られていない。
【0003】
今日では、プロバイオティクスが皮膚の健康を含む他の健康促進効果を及ぼすことをますます多くの研究が示している。ビフィズス菌(Bifidobacteria)および乳酸菌が、用いられる最も普通のタイプのプロバイオティクスであり、これらを用いるスキンケアの分野がここ何年かにわたり活発に開発されてきた。
【0004】
しかし、すべてのプロバイオティク菌株が皮膚への有益な効果を示すわけではなく、単一の菌株が言及されることは稀である。それに、であったとしても、化粧品組成物中の活性成分としての抗炎症効果またはその他の効果と微生物自体によるいかなる炎症促進性の副作用の原因ともならないこととの間の均衡が得られることが必要である。
【0005】
皮膚は、細菌、微生物および潜在的病原体に絶えず曝露されている。これらの病原性細菌の感染または侵入を避けるために、皮膚は、多面的な防御戦略を発達させた。角質層の物理的および化学的バリアの他に、それは、この状況において必須である構成型および誘導型のAMPバリアを備える(ハーダー(Harder)ら、2013年、ヴィースナー(Wiesner)およびフィルシンスカス(Vilcinskas)、2010年)。
【0006】
抗菌ペプチド(AMP:Antimicrobial peptides)は、多様かつ豊富な分子群である。小さなサイズ、アミノ酸組成、両親媒性および/または陽イオン電荷が特徴的である。それらのアミノ酸組成に基づいてそれらは、多くの場合に特徴的なサブグループに分けられる。それらの抗菌潜在力および作用機序の多様性は、それらの構造および組成と同じように多様である。それらは、無脊椎動物、動物種および植物のさまざまな組織および細胞型において検出することができる(ブログデン(Brogden)2005年、ザスロフ(Zasloff)2002年)。それらは、広い範囲のグラム陽性およびグラム陰性細菌、真菌、真核寄生生物および/またはウイルスに対して活性であるから、ヒトの皮膚において第1防御線として役立つ(ブラウン(Brown)およびハンコック(Hancock)、2006年)。
【0007】
AMP発現は、病原体との接触または細胞内炎症経路のようなさまざまな環境刺激に応答して上方調節され得る。共生細菌および病原性細菌は、AMP発現を誘導する能力が異なり、生来のヒトの免疫へのヒト皮膚中の異なる信号伝達経路を活性化させる。両者の間の特定の相互作用についてはほとんど知られていない。例えば、β-デフェンシンは、インターロイキン1または細菌リポ多糖のような炎症および/または感染症のさまざまな刺激によって上方調節される(チュング(Chung)およびデール(Dale)、2004年)。特許文献1は、脂質Aを含むビトレオシラ・フィリフォルメス(Vitreoscilla filliformes)由来のLPSが、病原活性を有することなくケラチノサイト中のAMPの発現を刺激する能力を有すると開示している。
【0008】
皮膚マイクロバイオームがさまざまな皮膚疾患および/または健康状況において重要な役割を演じ得ることは、公知である。マイクロバイオームの複雑さおよび個体間/個体内変化ならびに特性把握、分類および分析における困難な問題は、相互作用を理解し、局所治療および/または診断の適用および/またはマイクロバイオームに影響を及ぼし、相互作用および/または支援することを助ける治療を開発する上での難問である。それにもかかわらず、マイクロバイオームおよびマイクロバイオーム関連疾患は、ますます重要な側面となり、疾患および健康状況のマイクロバイオーム関連処置を開発することの必要を誘導する。
【0009】
例えば、アトピー性皮膚炎(AD:atopic dermatitis)は、さまざまな遺伝的リスクを有するが顕著な環境トリガーを有する多重機能複合障害である。ADは、物理的バリア欠陥および/または腸内毒素症(微生物不均衡)と関係している。患者は、カテリシジンまたはβ-デフェンシンのようなさまざまなAMPの抑制またはT-細胞恒常性における変化を示す。抗菌バリア欠陥と物理的バリア欠陥との組み合わせは、腸内毒素症を推進し、外部環境との均衡を確立するために再び必要である細胞免疫均衡のさらなる撹乱を生じる(オング(Ong)ら、2002年、パーマー(Palmer)ら、2006年、サカグチ(Sakaguchi)ら、2010年)。
【0010】
さらに、酒さまたは乾癬などの他の普通のヒト皮膚疾患もAMP-発現の調節不全と関係している。これらの内因性ペプチドの特異的な操作および誘導によって、均衡の取れた皮膚マイクロバイオームを回復、維持および/または改善することができる。このことは、広い範囲の利用分野における皮膚の利点を作り出す新しい戦略を表す。
【0011】
さらに、AD患者の湿疹性皮膚損傷において黄色ブドウ球菌(スタフィロコッカス・アウレウス(Staphylococcus aureus))が頻繁に見いだされ、この疾患症状の悪化にとって重要であり、かつ原因のようであることが知られている。ひっかき、日焼けまたは他の外傷によって刺激または損傷を受けている皮膚は、感染する可能性が高くなる。例えば、乾燥肌も容易に損傷を受ける。この種類の感染の回避は、代替治療処置を開発する上で2番目に関連性の高い出発点を示す。
【0012】
当分野の技術水準から、スキンケアおよび皮膚健康にとってのプロバイオティクスのさまざまな有益な効果を取り扱っているいくつかの刊行物が知られている。化粧利用においてさまざまな目的でラクトバチルス調製物が用いられてきた。これらのものは、主として、皮膚、体、髪または爪のための健康上の利益に基づくが、技術的な利用にも関する。記載されたほとんどの組成物は、好ましくは、発酵植物、食品または化学薬剤と組み合わせて用いられる、生きているかまたは生育不能な種々のプロバイオティク菌株の混合物を含有する。他方、単一の純粋な培養菌株の有益な効果が示されることは稀であった。
【0013】
特許文献2において、化粧利用および局所皮膚処置のためのラクトバチルス・ロイテリ(Lactobacillus reuteri)、ラクトバチルス・ラムノスス(Lactobacillus rhamunosus)およびビフィドバクテリウム・ロングム(Bifidobacterium longum)の使用が記載されている。
【0014】
特許文献3は、ラクトバチルスまたはビフィドバクテリウム全般を含むプロバイオティク微生物の発酵由来の抽出物を含有する局所施用のための水性ローション組成物を開示している。
【0015】
皮膚バリア機能のための微生物の有益な効果が特許文献4に記載された。皮膚のバリア機能の低下を防ぎ、および/または皮膚のバリア機能を強化するためのヘスペリジンと組み合わせた少なくとも1種類のプロバイオティク微生物/画分の化粧使用が開示されている。
【0016】
2種類のL.プランタルム菌株による皮膚細胞中のβ-デフェンシン誘導の可能性が特許文献5に記載されている。皮膚に対する抗菌効果ならびににきびおよび敏感肌における改善が示されている。
【0017】
特許文献6は、S.アウレウスまたはシュードモナス・アエルギノサ(Pseudomonas aeruginosa)のような病原性微生物によって引き起こされる皮膚感染症、慢性創傷または皮膚疾患の局所処置および/または予防のための乳酸菌および/またはそれらを含有する組成物の化粧使用を記載している。効力は、乳酸細菌と病原体との特異的な細菌共凝集によって引き起こされる。
【0018】
特許文献7において、ヒト皮膚に対するスタフィロコッカス(Staphylococcus)誘導感染症の処置のために有用である種々の生存可能α-ストレプトコッカス菌株とラクトバチルス菌株との組み合わせを含む医薬品調製物が開示されている。
【0019】
特許文献8は、ストレス誘導炎症性障害の処置および/または予防のためのL.プランタルムを含むプールから選択された少なくとも2種類の乳酸菌菌株を含む調合物を開示している。局所施用について請求された効果は、重度に傷ついた皮膚、すなわち潰瘍または火傷による傷に制限されている。
【0020】
重度のヒト火傷に対するラクトバチルス・プランタルムの局所施用は、組織修復を改善し、感染症を防ぐことが記載されている(ペラル(Peral)ら、2009年)。
【0021】
特許文献9は、活性物質、特にバクテリオシンまたはバクテリオシン様物質を産生する、ラクトバチルス・プランタルムを含む、広い範囲の乳酸菌を開示している。これらの菌株は、細菌によって引き起こされる皮膚感染症または炎症性皮膚疾患、例えばアトピー性皮膚炎またはにきびの予防および処置において用いられることが示唆されている。
【0022】
特許文献10は、ラクトバチルス・プランタルムCNCM1-4026を含む、皮膚感染症の予防または処置における使用のための組成物を記載している。特に、ラクトバチルス発酵後に回収された濃縮上清液が種々のグラム陽性およびグラム陰性細菌、とりわけ黄色ブドウ球菌または表皮ブドウ球菌(Staphylococcus epidermidis)の増殖を阻害または遅延させることが見いだされた。細菌細胞全体ではなく、増殖培地から得られた可溶性細菌成分だけが用いられた。
【0023】
黄色ブドウ球菌とラクトバチルス・プランタルムを含む種々の乳酸菌との阻害効果が無細胞上清液ならびに抽出物を用いて観測されている(ヨング(Yong)ら、2015年)。
【0024】
特許文献11は、口腔中の炎症の処置および予防における、特に歯肉炎および歯周炎を処置または予防する使用のための微生物に関する。開示された微生物の中で、ラクトバチルス・プランタルムHEAL19が、単球に対して抗炎症効果を有することが示されている。しかし、特許文献11からそのような効果が口腔の外部の表皮皮膚細胞、すなわち非粘膜ケラチノサイトに及ぶと結論することはできない。非粘膜皮膚は、特に、保護層(例えば角質層)および関連する強いバリア機能に関して完全に異なる構造を有するので、単球において観測された同じ効果が皮膚に当てはまると期待することはできない。さらに、表皮は、いかなる単球または関連細胞形もまったく含有しない非血管化組織である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0025】
【特許文献1】米国特許出願公開第2009/0035294(A1)号
【特許文献2】国際公開第2013153358号
【特許文献3】国際公開第2015048511号
【特許文献4】国際公開第2009031106号
【特許文献5】国際公開第2005091933号
【特許文献6】米国特許出願公開第2014186409号
【特許文献7】国際公開第2010056198号
【特許文献8】国際公開第2005077391号
【特許文献9】韓国公開特許第2011134151号
【特許文献10】国際公開第2016023688号
【特許文献11】国際公開第2017125447(A1)号
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0026】
皮膚症状、特に、皮膚バリア機能の低下、炎症性皮膚症状および病原性微生物の増殖の処置および/または予防に一役買うプロバイオティク細菌菌株を提供することが本発明の目的であった。
【0027】
化粧用途において有用であり、特に皮膚の外観を改善し体臭を予防することができるプロバイオティク細菌菌株を提供することが本発明のさらなる目的であった。
【0028】
詳しくは、本発明によって提供される菌株が、皮膚バリアの強化、皮膚の緩和および炎症の軽減または予防、AMPの上方調節による皮膚の免疫防御の増強、皮膚老化の遅延、皮膚上の病原性微生物の成長の阻害および感染症の予防から選ばれる効果のうちの1つまたは好ましくは2つ、いくつかまたはすべてを有することも目的であった。
【0029】
さらに、提供される菌株は、皮膚上で用いられるとき好ましくない副作用、例えば炎症誘発効果を有するべきでない。
【0030】
上記目的は、局所施用による皮膚症状の処置および/または予防における使用のための微生物または2種類の微生物を含むかもしくはからなる混合物によって満たされ、該微生物は、ラクトバチルス・プランタルム(Lactobacillus plantarum)HEAL19(DSM15313)およびラクトバチルス・プランタルムHEAL99(DSM15316)からなる群から選ばれる。
【0031】
本発明によれば、あらゆる実施形態において、ラクトバチルス・プランタルム菌株HEAL19とHEAL99との一方または両方の混合物のどちらも用いることができる。従って、表現「微生物または2種類の微生物を含むかもしくはからなる混合物」は、存在する2種類の菌株のどちらか一方または存在する両方の菌株を指す。
【0032】
一部のプロバイオティク細菌は、皮膚症状および皮膚外観の特定の側面を改善することができるが、すべての細菌菌株が皮膚に対して有益な効果を提供するわけではなく、一部は、有害なことさえあり得ることが先行技術から公知であった。さらに、重度の負傷または火傷を受けた皮膚ならびに口腔中の粘膜への微生物の施用の場合に有益な効果が示された。しかし、これらの効果は、強いバリア機能を有する非粘膜皮膚への施用に移行することも比較することもできない。本発明において記載される効果を誘導するためには、皮膚バリアの存在が前提条件である。
【0033】
ラクトバチルス・プランタルムHEAL19およびHEAL99が、独自の組み合わせと、皮膚の臨床症状および化粧外観を決定的に改善するだけでなく健康な皮膚を支え異常を予防する助けとなる包括的な活性分野と、を提供することが今や見いだされた。これらの菌株の局所施用は、その抗炎症能力の他に、さまざまなAMPの誘導による皮膚のバリアの支援だけでなく複数の経路による物理的な皮膚バリアの強化との組み合わせを提供することが示される。さらに、記載されるラクトバチルス・プランタルム菌株について黄色ブドウ球菌の増殖阻害効果も示すことができた。
【0034】
特に、水溶性成分と水不溶性成分との両方を含む熱処理されたラクトバチルス属が皮膚健康を改善することができることが示された。細菌懸濁液は、経表皮水分蒸散量(TEWL:trans-epidermal water loss)の減少および/または自然保湿因子に関連する成分の増加によって皮膚の物理的バリアを強化する潜在能力を有する。同時に、皮膚のさまざまなAMP産生が誘導され、皮膚の自己防御を増進する。S.アウレウスのような病原体の増殖を阻害することによって潜在的な皮膚の感染症を予防することができる。さらに、L.プランタルムHEAL19およびHEAL99は、抗炎症効果を示した。
【0035】
結論として、L.プランタルムHEAL19および99菌株は、局所施用されると皮膚特性および皮膚健康を改変する薬剤として高くかつ包括的な潜在能力を示す。
【0036】
本発明の状況において、用語「皮膚」は、非粘膜皮膚である皮膚を指す。詳しくは、例えば口腔などの体の空孔中に見いだされる粘膜、胃、腸、気管支、肛門または膣の粘膜は、用語「皮膚」によって包含されない。よって、用語「局所施用」は、皮膚に対する薬剤および/または調合物の施用を指し、粘膜によって包含される体腔の内部におけるあらゆる施用を除外する。好ましくは、皮膚は、例えば重度の負傷または火傷によって顕著に弱められなかった保護機能を依然として保持する。
【0037】
本発明の状況における「局所施用によって」は、本明細書に記載される微生物、あるいは該微生物を含む調製物、医薬品または化粧品組成物または製品が皮膚に対する局所施用によって直接、すなわち皮膚の表面に直接投与されることを意味する。
【0038】
本発明の状況における「皮膚症状」は、好ましくは負傷または火傷以外の、皮膚の病状と関連する皮膚のあらゆる状態を指す。「皮膚症状」は、好ましくは、かゆみなどの不快を特徴とする状態に関するか、または細菌増殖に起因する剥離、乾燥、発赤、発疹、にきび、脂性または体臭などの美容上の問題を表す。下記に皮膚症状の例が示される。
【0039】
菌株ラクトバチルス・プランタルムHEAL19は、ブダペスト条約に基づいて、プロビ(Probi)AB、ソエルベガタン(Soelvegatan)、41、223 70 ルント(Lund)、スエーデンにより2002年11月27日にライプニッツ・インスティトゥート・ドイッチェ・サムルング・フュール・ミクロオルガニスメン・ウント・ツェルクルトゥーレン(Leibniz Institut Deutche Sammlung fuer Mikroorganismen und Zellkulturen)GmbH(DSMZ)、インホッフェンシュトラーセ(Infoffenstr.)7B、38124 ブラウンシュヴァイク(Braunschweig)、ドイツにおいて寄託番号DSM15313により寄託されている。菌株ラクトバチルス・プランタルムHEAL99は、ブダペスト条約に基づいて、プロビAB、ソエルベガタン、41、223 70 ルント、スエーデンにより2002年11月27日にライプニッツ・インスティトゥート・ドイッチェ・サムルング・フュール・ミクロオルガニスメン・ウント・ツェルクルトゥーレン、インホッフェンシュトラーセ7B、38124 ブラウンシュヴァイク、ドイツにおいて寄託番号DSM15316により寄託されている。
【0040】
好ましい実施形態において、該微生物は、好ましくは、該微生物の不活性化、弱毒化または死滅を招く熱処理に付されている。好ましくは、熱処理された該微生物は、無傷の物理的構造を有する。
【0041】
熱処理は、超音波、紫外線照射または加熱によって行われてよい。好ましくは、それは、60~121℃の温度に1秒~120分間、例えば20秒~120分間加熱することによって行われる。好ましい実施形態において、熱処理は、好ましくは、工業用低温殺菌装置を用いて70~100℃の間で20秒~15分間行われる。好ましくは、微生物は、死滅しており、従ってもはや繁殖することができない。好ましくは、熱処理された微生物は、依然として、無傷の物理的構造を有する。これは、細胞構造が熱処理によって破壊されておらず、微生物が代謝産物を含有して送達され得ることを意味する。有利な点として、熱処理時に、微生物は、典型的には本明細書に記載されている皮膚症状を処置するための有益な効果を与えるそれらの能力を維持するとともに、本発明の目的にとって生存可能な微生物は必要でないという事実に起因して、それらを防腐剤と組み合わせることが可能である。医薬品および化粧品製品が、多くの場合に製品が使い切られる間に繰り返される容器の開閉時に製品中の細菌または真菌の増殖を防ぐために防腐剤を含有するから、このことは、ほとんどの用途にとって非常に重要である。
【0042】
処置および/または予防される皮膚症状は、好ましくは、皮膚バリア機能の低下、炎症性皮膚症状および/または病原性微生物の増殖である。
【0043】
本発明の状況における「皮膚バリア」とは、一方では物質が体に入ることを妨げ、乾き切ることに対して保護する角質層の物理および化学バリアを指すが、他方では、pHのような他の化学的性質とともに微生物病原体のコロニー形成または侵入に対する防御を提供する誘導AMPバリアも指す。よって、「皮膚バリア機能の減少」も含む「皮膚バリア機能の低下」は、正常なまたは健康な皮膚構造および/または機能が、上述の保護または防御を満足な程度に提供することがもはやできないほど撹乱されることを意味する。しかし、好ましくは、そのような撹乱は、切り傷または重度の火傷などの負傷ではない。
【0044】
「炎症性皮膚症状」とは、刺激物または病原性微生物などの有害な刺激(病原性毒素)に対する皮膚の生物応答によって引き起こされる症状であり、通常は、影響を受けた区域における発赤、膨潤、熱および/または痛みを生じる。炎症状態を評価するために、影響を受けた組織中で炎症性サイトカインまたはケモカイン、例えばインターロイキン8(IL-8)などの炎症媒介物質を測定することができる。
【0045】
皮膚上または皮膚中の細菌または真菌などの「病原性微生物の増殖」は、感染症および/または炎症を生じ得るだけでなく、発疹、にきびまたは体臭などの美容上の問題も引き起こし得る。特に、「病原性微生物の増殖」とは、皮膚上または皮膚中の健康なマイクロバイオームと関連するレベルを上回るほどの病原性微生物の量の増加を指す。特に、それは、微生物感染症を指す。
【0046】
上記の3つの側面は、密接につながり合っている。例えば、バリア機能の低下は、病原性微生物または有害物質の侵入を生じ得、病原性微生物または有害物質は、今度は、炎症を引き起こす。
【0047】
好ましい実施形態において、該微生物は、
(a)皮膚バリア機能を強化する薬剤、および/または
(b)経表皮水分蒸散量を減少させる薬剤、および/または
(c)フィラグリンの発現を誘導する薬剤、および/または
(d)自然保湿因子に関連する成分を増加させる薬剤、および/または
(e)抗炎症活性を提供する薬剤、特に、炎症パラメータを低下および/または抑制する薬剤、および/または
(f)ケモカインによって誘導される抗炎症活性を提供する薬剤、および/または
(g)外部病原性毒素、例えば病原性微生物、特に黄色ブドウ球菌、および/または空気汚染物、および/または紫外放射および/または界面活性剤によって誘導される抗炎症活性を提供する薬剤、および/または
(h)病原性微生物、特に黄色ブドウ球菌の増殖および/または侵入および/または感染を阻害する薬剤、および/または
(i)抗菌ペプチド(AMP)の発現を誘導する薬剤、および/または
(j)皮膚マイクロバイオームの健康な状態を維持および/または確立および/または修復する薬剤、および/または
(k)皮膚の免疫応答を改善する薬剤
として用いられる。
【0048】
ラクトバチルス・プランタルム菌株HEAL19およびHEAL99は、種々の方法で皮膚バリアを強化することができることが見いだされた。例えば、それらは、表皮恒常性、特に保湿性の調節にとって必須であるフィラグリンの発現を誘導することによって経表皮水分蒸散量(TEWL)を減少させることができる。さらに、該菌株は、適切な角質層水和およびバリア恒常性において同じように重要な役割を演じる自然保湿因子と関連する成分を増加させることが示された。他方で、皮膚バリア機能の強化に寄与するさらなる側面において、該菌株は、病原性微生物、例えば細菌および真菌の侵入に対する保護の増加という結果を生じる抗菌ペプチド(AMP)の発現を誘導することができる。
【0049】
本発明の状況における遺伝子の発現の「誘導」または上方調節は、発現が種々の組織中または種々の条件において顕著に変化しない参照遺伝子、例えばいわゆるハウスキーピング遺伝子を用いて決定されてよい。ヒト細胞中の参照遺伝子として適する遺伝子は、当業者に公知である。下記の実験手順中で標準化のために参照遺伝子を用いる発現の誘導または上方調節の決定が説明される。
【0050】
ラクトバチルス・プランタルム菌株HEAL19およびHEAL99は、外部毒素、例えば病原性微生物または汚染物質、のような種々の刺激に応答して放出される皮膚中のIL-8などの炎症媒介物質を減少させることができることがさらに見いだされた。従って、それらは、炎症反応および関連する徴候を減少させることができる。
【0051】
さらに、ラクトバチルス・プランタルム菌株HEAL19およびHEAL99は、病原性微生物、特に黄色ブドウ球菌の増殖に対して阻害効果を有することが示された。それらは、抗菌ペプチド(AMP)の発現を誘導し、従って、皮膚の免疫応答を増強し、健康な皮膚マイクロバイオームを維持または確立することができる。健康なマイクロバイオームは、有害ではない、または有益でさえある(量の)特定の微生物の均衡の取れたコロニー化によって表される。この均衡が微生物ディスバイオーシスとして知られる状態の方へ移行すると有害な影響が生じ得る。
【0052】
多様であるが相互に関係する上記の効果に起因して、ラクトバチルス・プランタルム菌株HEAL19およびHEAL99は、複数の病状の予防および/または処置のために有用であるだけでなく皮膚外観および体臭などの他の美容上の側面を改善する。
【0053】
好ましい実施形態において、皮膚症状は、アトピー性皮膚炎、微生物感染症、乾燥肌、皮膚のかゆみ、敏感肌、アトピー肌、皮膚の炎症、微生物ディスバイオーシス、酒さ、乾癬、発疹およびにきびからなる群から選ばれる。
【0054】
本発明は、ラクトバチルス・プランタルムHEAL19(DSM 15313)およびラクトバチルス・プランタルムHEAL99(DSM15316)からなる群から選ばれた1種類の微生物または2種類の微生物の混合物とキャリアとを含むかもしくはからなる調製物であって、調製物は、粒子状調製物、好ましくは粒状体または粉体である調製物にも関する。
【0055】
本発明の目的にとって微生物をキャリアとの粒子状調製物の形で送達すると特に有利であることが見いだされた。粒子状調製物、特に乾燥粒状体または粉体は、例えば懸濁液より安定であり、施用の前に貯蔵されると顕著により長い貯蔵寿命を有する。よって、調製物を安定化する保存剤は必要でなく、冷却などの特別な貯蔵手段は必要でない。より長い貯蔵期間にわたっても、調製物は、退色またはその他の劣化徴候を示さない。さらに、粒子状調製物は、微生物の分布という点で均一であり、沈殿または凝塊のような望ましくない効果が均一性に影響を及ぼすことはない。従って、粒子状調製物は、容易にかつ効率的に医薬品または化粧品組成物または製品に加工することもできる。
【0056】
本発明の状況における「粒子状調製物」とは、明確な粒子からなる調製物である。好ましくは、粒子は、均一なサイズと微生物およびキャリアのむらのない分布とを有し、乾燥しかつ流動性であって塊を形成する傾向がない。詳しくは、粒子状調製物は、粒状体または粉体であってよい。そのような粒子状調製物あるいはそれぞれ粒状体または粉体は、0.1~200μM、好ましくは1~100μMの範囲にある平均粒径を有する粒子を含むかまたはからなってよい。
【0057】
本発明による粒子状調製物は、微生物をキャリアとともに凍結乾燥、スプレー乾燥または造粒することによって得ることができる。
【0058】
上記の調製物の好ましい実施形態において、微生物は、熱処理に付されており、好ましくは、弱毒化または死滅微生物である。しかし、上記で説明したように、好ましくは、熱処理された微生物は、依然として無傷の物理的構造を有する。
【0059】
有利な点として、微生物は、熱処理時に皮膚症状の局所処置に関する自身の有益な特性を維持する。従って、生存可能な微生物は必要ないので、調製物は、保存剤を含む医薬品または化粧品製品中で用いることができる。
【0060】
本発明による調製物中に用いられるキャリアは、例えば凍結乾燥、スプレー乾燥または造粒によって粒子状の形で提供されるのに適している材料である。さらに、キャリアが薬学的におよび化粧品的に許容される材料であることが重要である。
【0061】
上記の調製物において、キャリアは、多糖、好ましくはイヌリン、デンプン、アラビアゴム、ホエータンパク質、脱脂粉乳およびマルトデキストリンならびにそれらの組み合わせ、好ましくはマルトデキストリンからなる群から選ばれてよい。
【0062】
本発明の状況において微生物とキャリアとの間の比が調製物の特性にとって決定的であることが見いだされた。少なすぎるキャリア、例えばマルトデキストリンが用いられた場合、調製物は、典型的には吸湿性となり、そのことが、安定性に悪影響を及ぼし塊を形成する傾向を増大させ得る。
【0063】
好ましい実施形態において、上記の調製物中でキャリアに対する微生物の比は、1:9~3:7、好ましくは1.5:8.5~2.5~7.5の範囲にあり、および/または調製物は、それぞれの場合に調製物の総重量に対して10~30重量%の微生物および70~90重量%のキャリア、好ましくは15~25重量%の微生物および75~85重量%のキャリアを含む。
【0064】
本発明は、局所施用による皮膚症状の処置および/または予防における使用のための、上記の実施形態のいずれかによる調製物にも関する。詳しくは、処置および/または予防されるべき皮膚症状は、皮膚バリア機能の低下、炎症性皮膚症状および/または病原性微生物の増殖であり、好ましくは、皮膚症状は、アトピー性皮膚炎、微生物感染症、乾燥肌、皮膚のかゆみ、敏感肌、アトピー肌、皮膚の炎症、微生物ディスバイオーシス、酒さ、乾癬、発疹およびにきびからなる群から選ばれる。
【0065】
本発明は、ラクトバチルス・プランタルムHEAL19(DSM15313)およびラクトバチルス・プランタルムHEAL99(DSM15316)からなる群から選ばれた1種類の微生物または2種類の微生物の混合物とキャリアとを含むかまたはからなる調製物、好ましくは、上記の実施形態のいずれかによる調製物を製造するための方法であって、
(i)ラクトバチルス・プランタルムHEAL19(DSM15313)およびラクトバチルス・プランタルムHEAL99(DSM15316)からなる群から選ばれた1種類の微生物または2種類の微生物の混合物を準備するステップと、
(ii)任意選択として、ステップ(i)の微生物を、好ましくは60~121℃の範囲の温度で1秒~120分間の熱処理に付すステップと、
(iii)ステップ(i)または(ii)からの微生物をキャリアと組み合わせ、さらに、粒状体または粉体を得るために、好ましくは凍結乾燥、スプレー乾燥または造粒によって該組み合わせを加工するステップと、
を含む方法にも関する。
【0066】
上記の方法は、結果として得られる調製物が、上記のように非常に安定であって容易にかつ効率的に広い範囲の医薬品または化粧品製品に加工することができるため、本発明の目的に合わせて微生物を加工する非常に有利な方法を表す。
【0067】
さらなる側面によれば、本発明は、ラクトバチルス・プランタルムHEAL19(DSM15313)およびラクトバチルス・プランタルムHEAL99(DSM15316)からなる群から選ばれた1種類の微生物または2種類の微生物の混合物を含むか、または上記の実施形態のいずれかによる調製物を含む皮膚への局所施用のための医薬品または化粧品組成物あるいは医薬品または化粧品製品であって、微生物の総量は、皮膚症状、特に炎症性皮膚症状、皮膚バリア機能の低下、および/または病原性微生物の増殖を処置および/または予防するのに十分であり、好ましくは、微生物の総量は、それぞれの場合に組成物の総重量に対して、0.01~5乾燥重量%、好ましくは0.02~1乾燥重量%、例えば0.1~1乾燥重量%の範囲にあり、および/または、微生物の総量は、全組成物のグラムあたり少なくとも108、好ましくはグラムあたり5×108細胞または少なくとも1010細胞、好ましくは1011細胞(組成物のタイプに依存、例えば組成物が半製品であるかまたは最終製品であるかに依存)、例えば全組成物のグラムあたり108~5×1010、好ましくは109~1010細胞の範囲である、皮膚への局所施用のための医薬品または化粧品組成物あるいは医薬品または化粧品製品にも関する。
【0068】
驚くべきことに、ラクトバチルス・プランタルムHEAL19およびラクトバチルス・プランタルムHEAL99は、医薬品または化粧品組成物または製品の乾燥重量の0.01または0.02%という低い濃度で本明細書に記載される効果を既に提供することができることが見いだされた。
【0069】
例えば、ラクトバチルス懸濁液または、より好ましくは、上記の粒子状調製物は、さまざまな医薬品または化粧品の用途、例えば局所リーブオンまたはリンスオフ調合物のための活性成分として用いることができる。有効な量を含有する組成物は、皮膚感度の低下あるいは乾燥肌、皮膚のかゆみまたはアトピー性皮膚炎のような皮膚障害の処置にとって有用であり得る。これらの組成物は、アトピー性皮膚の連続処置にも、損傷、引っ掻き傷または創傷のような特定の皮膚患部への施用にも適している。さらに、これらの組成物は、無傷のバリアならびに健康な皮膚マイクロバイオーム状態を維持するために日常的に用いることができる。
【0070】
医薬品または化粧品組成物または製品の好ましい実施形態において、微生物は、熱処理に付されており、好ましくは弱毒化または死滅死んだ微生物であるが、依然として無傷の物理的構造を有する。熱処理の条件については、上記で定義したパラメータが適切に適用される。
【0071】
有利な点として、微生物は、典型的には、皮膚症状の局所処置に関するそれらの有益な特性を熱処理時に維持し、生存可能な微生物は必要ないので、医薬品または化粧品製品は、保存剤を含んでよい。
【0072】
従って、好ましい実施形態において、本明細書に記載される実施形態のいずれかによる医薬品または化粧品組成物または製品は、少なくとも1種類の保存剤を含む。
【0073】
本発明の状況における「保存剤」とは、微生物増殖を阻害または抑制する物質を指す。
【0074】
本発明は、局所施用による皮膚症状、特に皮膚バリア機能の低下、炎症性皮膚症状および/または病原性微生物の増殖の処置および/または予防における使用のための上記の医薬品または化粧品組成物または製品にも関する。
【0075】
ラクトバチルス・プランタルム菌株HEAL19およびHEAL99は、皮膚に局所的に施用されると上記の効果a)~k)を提供するので、有効な量の一方または両方の菌株を含む組成物および製品は、複数の皮膚症状を処置および/または予防し上記のように皮膚の外観を改善するのに効果がある。
【0076】
本発明による組成物および製品は、皮膚への局所施用が意図され、従って、好ましくは皮膚への局所施用に適した調合物中にある。そのような調合物は、リーブオンまたはリンスオフ調合物であってよい。
【0077】
さらなる好ましい実施形態において、上記の医薬品または化粧品組成物または製品は、水中油または油中水乳化液、軟膏、クレーム、ローションおよびジェルからなる群から選ばれる。
【0078】
これらの組成物および製品は、皮膚への施用のための適当な特性を提供するさらなる成分を含んでよい。従って、キャリア、賦形剤およびさらなる活性成分からなる群から選ばれた、好ましくはマルトデキストリン、イヌリン、緩和剤および植物油から選ばれた1種類以上の成分をさらに含む医薬品または化粧品組成物または製品が好ましい。
【0079】
本発明は、医薬品または化粧品組成物または製品、好ましくは本明細書に記載される実施形態のいずれかによる医薬品または化粧品組成物または製品を製造するための方法であって、
(i)ラクトバチルス・プランタルムHEAL19(DSM15313)およびラクトバチルス・プランタルムHEAL99(DSM15316)からなる群から選ばれた1種類の微生物または2種類の微生物の混合物を準備するステップであって、好ましくは、微生物は、熱処理に付されており、好ましくは無傷の物理的構造を有する弱毒化または死滅微生物であるステップ、または上記の実施形態のいずれかによる調製物または上記の方法によって製造された調製物を準備するステップと、
(ii)医薬品または化粧品組成物または製品を得るためにステップ(i)の微生物または調製物をキャリア、賦形剤およびさらなる活性成分から選ばれた1種類以上の物質と組み合わせるステップと、
を含む方法にも関する。
【0080】
本方法の好ましい実施形態において、ステップ(ii)において少なくとも1種類の保存剤がステップ(i)の微生物または調製物と組み合わされる。
【0081】
本発明によれば、植物油は、アルガン油、チョークベリー(種子)油、アボカド油、ピーチ(ピット)油、カノーラ油、クロタネソウ油、カボチャ(カボチャ種子)油、野バラ(種子)油、ザクロ種子油、ホホバ油(液体ワックス)油、カカオ/カカオバター、小麦新芽油、ココナッツ/ココナッツバター、サフラワー油、コーン油、カメリナ油、アマ種子油、マカダミア油、ラズベリー種子油、メドウフォーム種子油、トケイソウ種子油、アーモンド油、ニーム油、モリンガ油、ルリジサ油、オリーブ油、ピーナッツ油、ヘイゼルナッツ油、胡桃油、パーム油、パパイア種子油、パセリ種子油、サジー油、ヒマシ油、米油、ゴマ油、シアバター/カリテバター、ヒマワリ油、大豆油、タマヌ油、イヴニングプリムローズ油、グレープ種子油、クランベリー種子油からなる群から選ばれてよい。
【0082】
本発明によれば、6~18個、好ましくは8~10個の炭素原子を有する脂肪族アルコールを主とするゲルベ(Guerbet)アルコール、直鎖C6~C22-脂肪酸と直鎖または分岐C6~C22-脂肪族アルコールとのエステルまたは分岐C6~C13-カルボン酸と直鎖または分岐C6~C22-脂肪族アルコールとのエステル、例えば、ミリスチルミリスチテート、ミリスチルパルミテート、ミリスチルステアレート、ミリスチルイソステアレート、ミリスチルオレエート、ミリスチルベヘネート、ミリスチルエルケート、セチルミリステート、セチルパルミテート、セチルステアレート、酸セチルイソステアレート、セチルオレエート、セチルベヘネート、セチルエルケート、ステアリルミリステート、ステアリルパルミテート、ステアリルステアレート、ステアリルイソステアレート、ステアリルオレエート、ステアリルベヘネート、ステアリルエルケート、イソステアリルミリステート、イソステアリルパルミテート、イソステアリルステアレート、イソステアリルイソステアレート、イソステアリルオレエート、イソステアリルベヘネート、イソステアリルオレエート、オレイルミリステート、オレイルパルミテート、オレイルステアレート、オレイルイソステアレート、オレイルオレエート、オレイルベヘネート、オレイルエルケート、ベヘニルミリステート、ベヘニルパルミテート、ベヘニルステアレート、ベヘニルイソステアレート、ベヘニルオレエート、ベヘニルベヘネート、ベヘニルエルケート、エルシルミリステート、エルシルパルミテート、エルシルステアレート、エルシルイソステアレート、エルシルオレエート、エルシルベヘネートおよびエルシルエルケートなどからなる群からさらなる適当な油体が選ばれてよい。直鎖C6~C22-脂肪酸と分岐アルコール、特に2-エチルヘキサノールとのエステル、C18~C38-アルキルヒドロキシカルボン酸と直鎖または分岐C6~C22-脂肪族アルコールとのエステル、特にジオクチルマレート、直鎖および/または分岐脂肪酸と多価アルコール(例えばプロピレングリコール、二量体ジオールまたは三量体トリオールなど)および/またはゲルベアルコールとのエステル、C6~C10-脂肪酸に基づくトリグリセリド、C6~C18-脂肪酸に基づく液体モノ-/ジ-/トリグリセリド混合物、C6~C22-脂肪族アルコールおよび/またはゲルベアルコールと芳香族カルボン酸、特に安息香酸とのエステル、C2~C12-ジカルボン酸と1~22個の炭素原子を有する直鎖もしくは分岐アルコールまたは2~10個の炭素原子および2~6個のヒドロキシル基を有するポリオールとのエステル、植物油、分岐一級アルコール、置換シクロヘキサン、直鎖および分岐C6~C22-脂肪族アルコール炭酸エステル、例えばジカプリリルカーボネート(セチオール(Cetiol)(登録商標)CC)など、6~18個、好ましくは8~10個の炭素原子を有する脂肪族アルコールに基づくゲルベ炭酸エステル、安息香酸と直鎖および/または分岐C6~C22-アルコールとのエステル(例えばフィンソルブ(Finsolv)(登録商標)TN)、アルキル基あたり6~22個の炭素原子を有する直鎖または分岐、対称または非対称ジアルキルエーテル、例えばジカプリリルエーテル(セチオール(登録商標)OE)など、エポキシ化脂肪酸エステルとポリオールとの開環生成物、シリコーン油(シクロメチコーン、シリコーンメチコーングレード等)、脂肪族またはナフテン系炭化水素、例えばスクアラン、スクアレンまたはジアルキルシクロヘキサンおよび/または鉱油なども適している。
【0083】
本発明による組成物および製品において、好ましくは、ラクトバチルス・プランタルム菌株HEAL19およびHEAL99は、乾燥肌および/または皮膚のかゆみ症状を予防、減少または軽減するための1種類以上の(さらなる)物質および/または1種類以上の皮層刺激低下剤、特に抗炎症剤、生理的清涼剤および発赤を軽減する化合物からなる群から選ばれた1種類以上の物質と組み合わされて用いられ、好ましくは、該1種類以上の追加の物質は、
(i)かゆみ止め化合物、
(ii)コルチコステロイドタイプのステロイド系抗炎症物質、特にヒドロコルチゾン、ヒドロコルチゾン誘導体、例えばヒドロコルチゾン17-ブチレート、デキサメタゾン、リン酸デキサメタゾン、メチルプレドニゾロンまたはコルチゾン、
(iii)非ステロイド系抗炎症物質、特にピロキシカムまたはテノキシカムなどのオキシカム、アスピリン、ジサルシド、ソルプリンまたはフェンドサルなどのサリチレート、ジクロフェナク、フェンクロフェナク、インドメタシン、スリンダク、トルメチンまたはクリンダナクなどの酢酸誘導体、メフェナム、メクロフェナム、フルフェナムまたはニフルムなどのフェナメート、イブプロフェン、ナプロキセンまたはベノキサプロフェンなどのプロピオン酸誘導体、フェニルブタゾン、オキシフェニルブタゾン、フェブラゾンまたはアザプロパゾンなどのピラゾール、
(iv)発赤および/またはかゆみを軽減する天然または天然発生抗炎症物質、特にカモミール、アロエベラ、コンミフォラ属、ルビア属、ヤナギ、ヤナギソウ、エンバク、キンセンカ、アルニカ、セイヨウオトギリソウ、スイカズラ、ローズマリー、チャボトケイソウ、ウィッチヘーゼル、ショウガまたはエキヌス上目からの抽出物または画分、またはそれらの単一活性化合物、
(v)好ましくは純物質の形状のα-ビサボロール、アピゲニン、アピゲニン-7-グルコシド、ギンゲロール、ショウガオール、ギンゲルジオール、デヒドロギンゲルジオン、パラドール、天然アベナンスラミド、非天然アベナンスラミド、好ましくはジヒドロアベナンスラミドD、ボスウェリア酸、フィトステロール、グリチルリジン、グラブリジンおよびリコカルコンA、
(vi)好ましくは、乳酸ナトリウム、尿素および誘導体、グリセロール、プロピレングリコール、1,2-ペンタンジオール、1,2-ヘキサンジオールおよび1,2-オクタンジオール、コラーゲン、エラスチンまたはヒアルウロン酸、ジアシルアジペート、ペトロラタム、ウロカニン酸、レシチン、アラントイン、パンテノール、フィタントリオール、リコペン、(プソイド)セラミド(好ましくはセラミド2、ヒドロキシプロピルビスパルミタミドMEA、セチルオキシプロピルグリセリルメトキシプロピルミリスタミド、N-(1-ヘキサデカノイル)-4-ヒドロキシ-L-プロリン(1-ヘキサデシル)エステル、ヒドロキシエチルパルミチルオキシヒドロキシプロピルパルミタミド)、グリコスフィンゴリピド、コレステロール、フィトステロール、キトサン、コンドロイチン硫酸、ラノリン、ラノリンエステル、アミノ酸、ビタミンEおよび誘導体(好ましくはトコフェロール、トコフェリルアセテート)、α-ヒドロキシ酸(好ましくはクエン酸、乳酸、リンゴ酸)およびそれらの誘導体、単糖、二糖およびオリゴ糖、好ましくはグルコース、ガラクトース、フルクトース、マンノース、果糖およびラクトース、多糖、例えばβ-グルカン、特にエンバクからの1,3-1,4-β-グルカン、α-ヒドロキシ-脂肪酸、トリテルペン酸、例えばベツリン酸またはウルソル酸、および藻類抽出物またはそれらの単一活性化合物からなる群から選ばれたスキンケア剤、好ましくは皮膚保湿調節剤または皮膚修復剤、
(vii)好ましくは、メントングリセロールアセタール、メンチルラクテート好ましくはl-メンチルラクテート、特にl-メンチルl-ラクテート)、メンチルエチルオキサメート、置換メンチル-3-カルボン酸アミド(例えばメンチル-3-カルボン酸N-エチルアミド、Nα-(L-メンタンカルボニル)グリシンエチルエステル、2-イソプロピル-N-2,3-トリメチルブタナミド、置換シクロヘキサンカルボン酸アミド、3-メントキシプロパン-1,2-ジオール、2-ヒドロキシエチルメンチルカーボネート、2-ヒドロキシプロピルメンチルカーボネート、N-アセチルグリシンメンチルエステル、イソプレゴール、メンチルヒドロキシカルボン酸エステル(例えばメンチル3-ヒドロキシブチレート)、モノメンチルスクシネート、モノメンチルグルタレート、2-メルカプトシクロデカノン、メンチル2-ピロリジン-5-オンカルボキシレート、2,3-ジヒドロキシ-p-メンタン、3,3,5-トリメチルシクロヘキサノングリセロールケタール、3-メンチル3,6-ジ-およびトリオキサアルカノエート、3-メンチルメトキシアセテートおよびイシリンからなる群から選ばれた生理学的清涼剤、および
(viii)ヒスタミン受容体拮抗薬、セリンプロテアーゼ阻害剤、TRPV1拮抗薬、NK1アンタゴンシスト、カンナビノイド受容体作動薬およびTRPV3拮抗薬、
からなる群から選ばれる。
【0084】
さらなる側面によれば、本発明は、特に皮膚の外観を改善し、および/または体臭を予防する、皮膚への局所施用のための微生物または2種類の微生物を含むかまたはからなる混合物の化粧使用にも関し、微生物は、ラクトバチルス・プランタルムHEAL19(DSM15313)およびラクトバチルス・プランタルムHEAL99(DSM15316)からなる群から選ばれ、好ましくは、微生物は、熱処理に付されており、および/または無傷の物理的構造を有する弱毒化または死滅微生物である。
【0085】
「化粧使用」とは、非治療的な使用、すなわち例えば刺激、発赤、乾燥、フレーキング、発疹、加齢の徴候または軽症のにきびによって外観が影響を受け、美容上の問題または若干の不快感を表すが病理的であるとは特徴付けられない、皮膚への使用である。さらなる「化粧使用」は、悪臭の原因となるが患者の健康への差し迫った危険を表さない皮膚上の特定の微生物の増殖と関係する体臭の予防または減少である。
【0086】
よって、上記の化粧使用は、好ましくは、皮膚刺激、乾燥肌、発疹、にきび、体臭および/または皮膚老化を減少させるかまたは予防するためのものである。
【0087】
本発明による化粧使用において、微生物は、
(a)皮膚バリア機能を強化する薬剤、および/または
(b)経表皮水分蒸散量を減少させる薬剤、および/または
(c)フィラグリンの発現を誘導する薬剤、および/または
(d)自然保湿因子に関連する成分を増加させる薬剤、および/または
(e)抗炎症活性を提供する、特に炎症パラメータを減少および/または抑制する薬剤、および/または
(f)ケモカインによって誘導される抗炎症活性を提供する薬剤、および/または
(g)外部病原性毒素、例えば病原性微生物、特に黄色ブドウ球菌、および/または大気汚染物質、および/または紫外線および/または界面活性剤によって誘導される抗炎症活性を提供する薬剤、および/または
(h)病原性微生物、特に黄色ブドウ球菌の増殖および/または侵入および/または感染を阻害する薬剤、および/または
(i)抗菌ペプチド(AMP)の発現を誘導する薬剤、および/または
(j)皮膚マイクロバイオームの健康状態を維持および/または確立および/または回復する薬剤、および/または
(k)皮膚の免疫応答を改善する薬剤、
として用いられる。
【0088】
項目(a)~(k)に記載され、さらに上記でより詳しく説明された効果は、化粧だけに関する複数の問題に対処する適当な組み合わせも表す。例えば、皮膚バリア機能の低下は、発赤またはフレーキングなどの刺激の徴候を示す乾燥肌を生じる結果となり、従って皮膚の外観に影響を及ぼす、経表皮水分蒸散量の増加につながることがある。フィラグリンの上方制御と自然保湿因子に関連する成分の増加とは、そのような問題を予防または軽減する。抗炎症活性は、皮膚の外観に影響を及ぼすが病理症状を表さない特定の刺激に対する皮膚反応によって引き起こされる膨潤または発赤の徴候を減少させる。例えばAMPの発現を誘導することによって病原性微生物の増殖を阻害すると、穏やかな事例のにきびを解消するかまたは体臭を防止および減少させることができる。
【0089】
上記の化粧使用の好ましい実施形態において、微生物は、上記の実施形態のいずれかによる調製物の形で用いられる。
【0090】
さらなる側面において、本発明は、特に皮膚刺激、乾燥肌、発疹、にきび体臭および/または皮膚老化を減少または予防するために皮膚の外観を改善し、および/または体臭を予防する、化粧方法であって、
i)微生物または2種類の微生物を含むかまたはからなる混合物を皮膚に局所施用するステップであって、微生物は、ラクトバチルス・プランタルムHEAL19(DSM15313)およびラクトバチルス・プランタルムHEAL99(DSM15316)からなる群から選ばれるステップ、あるいは上記の調製物または化粧品組成物または製品を皮膚に施用するステップであって、好ましくは、微生物は、熱処理に付されており、および/または無傷の物理的構造を有する弱毒化または死滅微生物であるステップ、
を含む方法にも関する。
【0091】
「化粧方法」とは、上記で化粧使用の状況においてより詳しく説明されたように、美容上の問題を解決するが病理症状を処置することはない非治療的な方法である。本発明による化粧方法において、微生物は、項目(a)~(k)における上記の効果を提供する剤として作用し、従って上記の化粧使用の状況において説明された複数の美容上の問題を解決することができる。
【図面の簡単な説明】
【0092】
図1】HaCaTケラチノサイト中のL.プランタルムHEAL19による抗菌ペプチドの誘導を示す。顕著に誘導される遺伝子は、β-デフェンシン3、β-デフェンシン4、ペプチダーゼインヒビター3、RNアーゼ7、ソリアシン、ラクトトランスフェリンおよび分泌性白血球ペプチダーゼインヒビターである。HaCaTケラチノサイト中の抗菌ペプチドの遺伝子発現は、遺伝子アレイを用いた0,05%のL.プランタルムHEAL19による24時間処理後に測定された。誘導は、>2のRQ-計算値として定義された。
図2】HaCaTケラチノサイト中のL.プランタルムHEAL19によるβ-デフェンシン3の濃度依存誘導を示す。HaCaTケラチノサイトは、さまざまな濃度のL.プランタルムHEAL19で24時間処理された。これは、243.6(0.1%のL.プランタルムHEAL19)から2.3(0.0125%のL.プランタルムHEAL19)のRQ-計算値を生じる結果となる。
図3】24時間処理後のAMPコーディング遺伝子のさまざまな誘導を示す。L.プランタルムHEAL99によってRNアーゼ7、β-デフェンシン3ペプチダーゼインヒビター3、ホスホリパーゼA2、および分泌性白血球ペプチダーゼインヒビターが濃度依存的に(0.1および0.05%が試験された)誘導される。
図4】L.プランタルムHEAL19および99と陽性対照として含まれるデキサメタゾンとの抗炎症効果を示す。コンフルエントHaCaTケラチノサイトは、試験材料0,1mg/mlのL.プランタルムHEAL99、0.25mg/mLのL.プランタルムHEAL19および30μMのデキサメタゾンで予備処理された。48時間のインキュベーション後、ケラチノサイトは、30ng/mLの炎症性IL-1αを用いて8時間刺激された。L.プランタルムHEAL19およびHEAL99による予備処理後のIL-1α刺激に起因するHaCaTケラチノサイトからのその後のインターロイキン8放出は、ELISAを用いて細胞培養培地中で測定された。陽性対照デキサメタゾンおよび予備処理されていないケラチノサイト(IL-1α対照)との比較が示される。
図5】プラセボおよびL.プランタルムHEAL19調合物による生体外ヒト皮膚モデルの処理とディーゼル微粒子1650b(空気汚染をシミュレーションする)による刺激との後のIL-8放出(縦軸)を示す
図6】L.プランタルムHEAL19による予備処理後のS.アウレウス刺激に起因するHaCaTケラチノサイトのインターロイキン-8放出を示す。予備処理されていないケラチノサイトとの比較が示される(S.アウレウス対照)。
図7】用量依存的な方法で、すなわち0.1および/または0.05%のL.プランタルムHEAL19で処理したときのS.アウレウスの増殖阻害効果を示す。陽性増殖対照および陰性対照(阻害対照、殺生物剤ファルネソールの添加)との比較が示される。
図8】さまざまな濃度のL.プランタルムHEAL19(x軸)による処理後の生体外ヒト皮膚モデルにおけるインボルクリンの産生(縦軸)を示す。ベヒクル(DMSO)だけを含む陰性対照との比較が示される。
図9】さまざまな濃度のL.プランタルムHEAL19(x軸)による処置後の生体外ヒト皮膚モデルにおけるサイトケラチン14(CK14)内容物の産生(縦軸)を示す。ベヒクル(DMSO)だけを含む陰性対照との比較が示される。
図10】プラセボおよびL.プランタルムHEAL19調合物による生体外処理とディーゼル微粒子1650bによる刺激との後のローダミンB検出百分率(縦軸)を示す。
図11】乾燥肌のための3D表皮模型系において測定した細胞間空間1000nm2あたりの細胞間脂質ラメラの長さ(nm)を示す。ラメラは、SDS処理に起因して撹乱された。スキンケア調合物中の0.5%のL.プランタルムHEAL19による処理後、透過型電子顕微鏡法(TEM)によって皮膚修復性能が決定された。
図12】L.プランタルムHEAL19およびHEAL99による処理後のHEPKp3次元皮膚モデルのヒアルロン酸放出(縦軸)を示す。細胞培養培地だけを含む陰性対照(培地対照)、x軸との比較が示される。
図13】L.プランタルムHEAL19およびHEAL99による処置後のHEPKp 3 D皮膚モデルからのフィラグリン放出(縦軸)を示す。細胞培養培地だけを含む陰性対照(培地対照)、x軸との比較が示される。
図14】2つの異なる濃度のL.プランタルムHEAL19による処理後の生体外ヒトモデルにおけるフィラグリン含量を示す。ベヒクル(DMSO)だけを含む陰性対照との比較が示される。
図15】静電容量によって決定された、化粧クリーム中1%濃度のL.プランタルムHEAL19による処理後の生体内ヒト皮膚における含水量を示す。灰色の影付き棒は、L.プランタルムHEAL19を有するクリームを表し、白色の棒は、プラセボクリームを表し、黒色の棒は、処理なしを示す。
図16】経表皮水分蒸散量(TEML)によって決定された、化粧クリーム中1%濃度のL.プランタルムHEAL19による処理後の生体内ヒト皮膚における皮膚バリア強度を示す。灰色の影付き棒は、L.プランタルムHEAL19を有するクリームを表し、白色の棒は、プラセボクリームを表し、黒色の棒は、処理なしを示す。
図17】MRS培地中のL.プランタルム属の16時間にわたる増殖曲線を示す。開始-OD=0.1;3つのキャビティの平均。
【実施例0093】
本発明は、下記の実施例によってさらに例示される。実施例は、範囲に関して限定すると理解されるべきでない。
【0094】
実施例においては以下の実験手順を用いた。
【0095】
熱処理したラクトバチルス属懸濁液の調製
【0096】
さまざまな培養培地中でL.プランタルム菌株HEAL19ウントHEAL99の増殖を得ることができる。炭素源は、グルコースまたはデンプンであってよい。肉エキス、酵母エキス、ペプトンまたはプロテアーゼペプトン(野菜)等を窒素源として用いることができる。培地のpHは、約6であるべきである。培養温度は変化してよいが、好ましくは37℃である。培養時間は、約8~24hであってよい。振盪または通気振盪を追加することができる。
【0097】
培養後に洗浄プロセスを追加することができる。それは、以下のように実行することができる。最初に遠心分離によって細胞を回収し、上清液をデカンテーションし、細胞ペレットを液体PBS、細胞培養培地または精製水で懸濁させることができる。必要なら記載された手順を繰り返すことができる。
【0098】
洗浄手順の前または後にラクトバチルス属懸濁液の熱処理を行うことができる。それは、超音波、紫外線照射または熱によって実現することができるが、熱処理が好ましい。それは、60℃~121℃の温度で行うことができる。100℃を超える温度の場合はオートクレーブを用いてよい。熱処理時間は、1秒~120分、例えば20秒~120分の範囲にすることができる。工業用低温殺菌装置を用いた70~100℃の間での20秒~15分間の熱処理が好ましい。熱処理したラクトバチルス属のための任意選択のさらなる処理は、凍結乾燥、スプレー乾燥、造粒等を含んでよい。このことは、製品自体の利用可能性および/または安定性を改善する目的に役立ち得る。
【0099】
最終製品は、粉体、粒状体、懸濁液または溶液であってよく、化粧品組成物中0.001~10重量/体積%の濃度で施用されるように定められる。これは、1×107~1×1011細胞/mL化粧品調合物の濃度と関係する。より好ましくは、最終製品は、0.01~5%、さらに好ましくは0.02~1重量/体積%、例えば0.1~1重量/体積%の濃度で施用される。
【0100】
単一層として増殖したケラチノサイト中のAMP遺伝子発現に対するラクトバチルス菌株の効果
【0101】
タックマン(Taq-Man)(登録商標)アレイ高速96ウェルプレートを用いたリアルタイムPCR分析でAMP誘導を測定した。
【0102】
HKGS(ジブコライフテクノロジーズ(Gibco Technologies))を含むエピライフ(EpiLife)培地(カスケードバイオロジクス(cascade Biologics)、ジブコ(Gibco))中でHaCaTケラチノサイトを培養した。試験物質を等量の培地中で希釈し、ウェルあたり2mLの体積で6ウェルプレートに加えた。37℃、5%CO2でインキュベートした100%コンフルエント細胞に対してすべての試料を試験した。24時間のインキュベーション時間後、すべての試料を取り出し、CaおよびMgを有するダルベッコ(Dulbecco)のリン酸緩衝液(カプリコーン(Capricorn))で細胞を2回洗浄した。RNイージー(RNeasy)(登録商標)ミニキット(キアジェン(Qiagen))を用いてRNA分離を行った。この手順は、RNイージーミニハンドブック中に記載されている通りに実行した。
【0103】
細胞を溶菌し、エタノールで沈殿させ、スピンカラムを用いてホモジェネートを3回洗浄し、精製水でmRNAを溶出させた。試料に応じて、この手順を若干調節した。
【0104】
マイクロキュベット(μCuvette)G 1.0およびバイオフォトメーター(BioPhotometer)(エッペンドルフ(Eppendorf))を用いて260nmの吸収を測定することによりRNA濃度を測定した。E260/280またはE260/230のような対照値を同時に計算した。試料あたり0.5~1μg RNAの最小量で転写を行った。
【0105】
アプライド・バイオシステムズ(Applied Biosystems)のRNAからcDNAへの高容量キットを用いて逆転写を行った。手順は、提供されたプロトコルに基づいた。逆転写のために37℃で60分間、続いて95℃で5分間(酵素不活性化)運転し、反応室中の温度を4℃に保持するPCRサーモサイクラー(Thermocyler)(バイオメトラ(Biometra))中ですべての試料をインキュベートした。
【0106】
ステップワンプラスファストリアルタイム(StepOne Plus Fast Real Time)PCR装置(アプライド・バイオシステムズ)を用いて定量的リアルタイムPCRを行った。RT-PCRの初期ステップは、95℃に20秒間保持する第1の加熱段階と、それに続く95℃における3秒間のcDNA変性および60℃における30秒間のアニーリング/伸長のサイクル40回とを含む。
【0107】
2-ΔCT法によって分析を行った。詳しくは、以下の通りである。
1.基準-gen(HPRT)を用いるCt値の標準化
ΔCT遺伝子=CT遺伝子-CT基準遺伝子(HPRT)
2.対照試料(処理なし)のΔCT-値とΔCT-値(処理あり)との減算
ΔΔCT遺伝子=ΔCT処置あり-ΔCT対照
3.RQ-比(相対定量値)の計算
RQ-値=2-ΔΔCT
【0108】
妥当な遺伝子の誘導として>2のRQ-値を定義した。
【0109】
ラクトバチルス・プランタルムHEAL19およびHEAL99の抗炎症効果
【0110】
ろ過滅菌し、L-グルタミン(カプリコーン(Capricorn))を加え、10%ウシ胎児血清(FCS)(カプリコーン)で補ったRPMI-A培地を用いて96ウェルプレート中でHaCaTケラチノサイトを培養した。37℃および5%CO2でプレートをインキュベートした。細胞培養培地(RPMI、1%FCS)による24時間飢餓培養の後、細胞を1回洗浄した。抗炎症性物質/不活性化細菌懸濁液を飢餓培養培地中に懸濁し、上記のパラメータで24/48時間施用し、インキュベートした。10μMの濃度のデキサメタゾンを陽性対照として用いた。予備インキュベーション後に細菌細胞を除去するためにすべてのウェルを細胞培養培地で3回洗浄した。IL-1α(ジブコライフテクノロジーズ)を蒸留H2Oに溶解し、飢餓培養培地中に希釈し、好ましくは30ng/mLの濃度でウェルにピペット注入した。あるいは、熱不活性化した黄色ブドウ球菌(DSM799)懸濁液を0.1mg/mL~1mg/mL乾燥質量の濃度で炎症誘発剤として用いた。8時間のインキュベーション後、上清液を分離した。以降の分析まですべての試料を-80℃で貯蔵した。
【0111】
ヒトCXCL8/IL-8、デュオセット(DuoSet)ELISA(デベロップメント・システムズ(Development Systems)、R&Dシステムズ)でIL-8濃度を測定した。提供プロトコルに記載の通りに実験手順を実行した。
【0112】
2連/3連値の平均値および平均ゼロ標準光学密度の減算を計算した後に、標準曲線を作成するために4パラメータ・ロジスティック曲線当て嵌めを用いて計算を行った。
【0113】
ヒアルロン酸の誘導
【0114】
ヒト表皮ケラチノサイト前駆体(HEPKp)発生3dヒト皮膚モデルを培養し、試験物質で全身的に処理した。手短には、定められた濃度の試験物質を細胞培養培地に加え、各皮膚モデルを細胞培養皿中37℃および5%CO2で最長9日間処理した。処理後、回収した上清液を以降の分析まで-80℃で貯蔵した。MTT標準方法によって細胞の生存能力を制御した。
【0115】
TECOメディカル(TECOmedical)ヒアルロン酸プラスELISAによってヒアルロン酸濃度を測定した。提供プロトコルに記載の通りに実験手順を実行した。
【0116】
ラクトバチルス菌株の抗菌効果
【0117】
光度測定法により620nmでさまざまな細菌の増殖曲線を測定した。
【0118】
黄色ブドウ球菌の阻害:
オートクレーブ処理したCASO培地(メルク(MERCK)1.05459)およびDMSOまたは蒸留水に溶解した試験物質を用い、DIN58940-8に従って96ウェルMTPを調製した。10%グリセリン中-20℃に維持した保存培養物を用いてS.アウレウス(DSM799/ATCC6538)を関連するウェルに接種した。ウェルあたり1~6×106cfuの接種材料を加えた。37℃で16時間のインキュベーション時に3つまたは4つの繰り返しウェルを用いて試験物質を分析した。サンライズフォトメーター(Sunrise Photometer)(テカン(Tecan)、オーストリア)およびマゼラン(Magellan)ソフトウエアを用いて620nmの吸収により各ウェルの増殖曲線を決定した。共にDMSO(メルク(Merck)802912)に前もって溶解した125ppmファルネソールおよび4ppmトリクロサンの濃度を増殖阻害の陽性対照として用いた。
【0119】
計算のために、検出した吸収の平均を計算し、ブランク値を用いて規格化した。グラフ表示のためにこれらのOD値を時間の関数としてプロットした。
【0120】
3D皮膚モデルにおける保湿因子フィラグリンの誘導
【0121】
ヒト表皮ケラチノサイト前駆体(HEPKp)から誘導した3次元皮膚モデルをCnT-PR-3D培地中で験物質により9日間全身的に処理した。フィラグリン用ELISA(Enzyme-linked Immunosorbent Assay(酵素結合免疫収着媒アッセイ))キット(クラウド-クローン社(Cloud-Clone Corp.))によって培地中のフィラグリン放出を検出した。
【0122】
乾燥肌のためのSDS損傷3D皮膚モデルに対するバリア改善効力
【0123】
この目的で、乾燥肌のための3D表皮モデル系に対して試験管内研究を行った。モデル系は、SDS処理に起因する撹乱を受けた表皮皮膚バリアを有する14日齢の成熟表皮細胞培養物からなっていた。表皮バリアの撹乱を細胞間脂質ラメラの低下として測定した。化粧品乳濁液またはプラセボ乳濁液中に調合したL.プランタルムHEAL19による処理の後と、次に細胞間脂質ラメラの再形成を観察するためにさらに培養された後の透過型電子顕微鏡観察(TEM)によって皮膚修復性能を決定した。
【0124】
生体外測定
【0125】
キューテック(Cutech)Srl(イタリア)によって生体外試行が行われた。生体外皮膚モデルにおいてさまざまなパラメータに対する記載のラクトバチルス菌株の効果を分析した。腹部整形手術由来のヒト皮膚を用いた。調合物中でまたは細胞培養培地に溶解して全身法または局所法により熱不活性化細菌懸濁液の施用を行ったテープストリッピングを用いてよい。濃度およびインキュベーション回数は、変化してよい。
【0126】
すべてのデータを、各処置に関する平均、標準偏差および標準誤差(SEM)に関して処理した。
【0127】
表皮フィラグリン、インボルクリンおよびサイトケラチン14
分析のために、選ばれた抗体フィラグリンイエウサギポリクローナル[H-300]、インボルクリンマウスモノクローナル(SY5)および/またはサイトケラチン14(CK14)イエウサギモノクローナル(EPR17350)でモデルを免疫染色した。表皮内の赤色色素の強さおよび分布を評価することによって各スライド中に存在する抗原の量を評価した。得られたデータを基底層の長さについて規格化した。
【0128】
皮膚バリア健常性(ローダミンB)
ディーゼル微粒子(すなわち1650b)の施用前に生体外皮膚モデルをL.プランタルム菌株で局所処理した。35℃、5%CO2および環境湿度においてすべての皮膚試料をインキュベートした。この実験段階の終りに皮膚試料を集め、ローダミンBで染色し、結果の画像取得および解析のためにクライオスタットにおいて低温固定および切削した。各皮膚モデルについて表皮区域のうち2つの区画内でローダミンB蛍光の分析を行った。イメージ-J(Image-J)アプリケーション(NIH、米国)によって蛍光を評価することにより画像を解析した。
【0129】
抗炎症効果
L.プランタルム菌株の抗炎症潜在能力を確かめるために上記の生体外ヒト皮膚モデルを用いた。モデルをL.プランタルムHEAL19化粧品乳化液で処理した後に、外部毒素薬剤および空気汚染をシミュレーションする汚染物質1650bを施用した。選ばれた終点において、ウェルから器官細胞培養培地を吸い出し、バイオレジェンド(Biolegend)(登録商標)社(Inc.)デラックスセット(Deluxe set)ヒトIL-8を用いてIL-8を分析した。
【0130】
生体内測定
【0131】
ブラジルのコスモサイエンス・シエンシア・アンド・テクノロジア・コスメティカ社(Kosmoscience Ciencia & Technologia Cosmetica Ltda)において生体内試行が行われた。それらは、L.プランタルムHEAL19凍結乾燥物を含有する化粧品油/水調合物の施用後の関連皮膚パラメータを評価した。
【0132】
油/水乳化液は、以下の組成を有した。
【0133】
【表1】
【0134】
重度の乾燥肌を有する22名の被験者がこの調査に参加した。乳化液の局所施用を1日2回内側前腕に行った。0、7、14および21日目に測定を行った。
【0135】
角質測定法による皮膚水和度
マルチプローブアダプター(Multi Probe Adapter)MPA5(CKエレクトロニクス(CKelectronis、ドイツ))と結合したコルネオメーター(Corneometer)(登録商標)825プローブを用いて静電容量の測定を行った。L.プランタルムHEAL19調合物によって提供される静電容量および皮膚水和度のプラセボに対する変動を計算した。
【0136】
エバポリメトリーによる皮膚バリアの有効性
マルチプローブアダプターMPA5(CKエレクトロニクス、ドイツ)と結合したテバメーター(Tewameter)(登録商標)300プローブを用いて経表皮水分蒸散量(TEWL)を測定した。L.プランタルムHEAL19調合物によって提供されるTEWL値および経皮バリア強化のプラセボに対する変動を計算した。TEWL値の減少として皮膚バリアの強化を観測することができる。
【0137】
以下の結果は、本発明の有効性を示す。単独の実験は、本発明の効果を例示するべきであるが限定するべきでない。
【0138】
実施例1:HaCaケラチノサイト中のAMP遺伝子発現
L.プランタルムHEAL19は、ヒトケラチノサイト中の広い範囲の抗菌ペプチドの放出を誘導する。すべてのこれらのペプチドは、一緒になってヒト皮膚の複雑な防御システムを代表する。例えば、グラム陽性細菌を殺すことができるデフェンシンは、上方調節された。要するに、上方調節されたペプチドは、広い範囲の潜在的に病原性のグラム陽性およびグラム陰性細菌、真菌、真核寄生生物および/またはウイルスに対して効果がある。
【0139】
図1は、0.05%のL.プランタルムHEAL19による24時間処理後のHaCaTケラチノサイト中の抗菌ペプチドの遺伝子発現を示す。遺伝子発現は、遺伝子アレイを用いて測定した。誘導は、>2の計算RQ-値として定義した。
【0140】
結果は、L.プランタルムHEAL19による処理によってβ-デフェンシン1、3または4および/またはソリアシンおよび/またはカルプロテクチンのような重要なAMPが誘導されることを示す。この処理は、ヒト皮膚中のより強い第1防御線に関連し、それによって皮膚バリアを支えるヒト皮膚中のAMPのより高い発現をもたらす結果となる。さらに、β-デフェンシンまたはカテリシジンの誘導発現は、アトピー性皮膚炎におけるような疾患におけるAMPフィンガープリントを均衡させることができる。従って、L.プランタルムHEAL19の処置によって皮膚マイクロバイオームを回復させ、維持および/または改善することができる。
【0141】
L.プランタルムHEAL19によるAMPの誘導は、濃度依存性である。図2に、β-デフェンシン3の濃度依存性誘導を示す。さまざまな濃度のL.プランタルムHEAL19でHaCaTケラチノサイトを24時間処理した。これは、243.6(0,1%のL.プランタルムHEAL19による)から2.3(0.0125%のL.プランタルムHEAL19)のRQ計算値を得る結果となる。
【0142】
HaCaTケラチノサイトを処理するときL.プランタルムHEAL99を用いて同様な効果を観測することができる。図3は、24時間処理後のAMPコード化遺伝子の例示的なさまざまな誘導を示す。RNアーゼ7、β-デフェンシン3ペプチダーゼインヒビター3、ホスホリパーゼA2、および分泌型白血球ペプチダーゼインヒビターは、L.プランタルムHEAL99によって濃度依存的に誘導される(0.1および0.05%を試験した)。L.プランタルムHeal19を用いて同様な結果が見いだされた。
【0143】
表皮3Dヒト皮膚モデルにおいて、さまざまなAMPコード化遺伝子が同様に誘導されることが示された(データ示さず)。
【0144】
実施例2:ラクトバチルス菌株の抗炎症効果(試験管内/生体外)
皮膚疾患、損傷または刺激は、大部分、患部皮膚の炎症と相関する。ラクトバチルス菌株の記載の有益な効果の他に、それらの局所施用は、抗炎症効果をもたらす結果となることが示された。この点について、本ラクトバチルス菌株は、さらなる機序によって皮膚健康を支える。
【0145】
図4は、L.プランタルムHEAL19および99と陽性対照として含まれたデキサメタゾンとの抗炎症効果を示す。試験材料0.1mg/mLのL.プランタルムHEAL99、0.25mg/mLのL.プランタルムHEAL19および30μMのデキサメタゾンでコンフルエントHaCaTケラチノサイトを前処理した。48時間のインキュベーション後、30ng/mLの炎症誘発性IL-1αを用いてケラチノサイトを8時間刺激した。ELISAを用いて以後の細胞培養培地中のIL-8の放出を測定した。ラクトバチルス菌株の施用によって、前処理しなかったIL-1α対照と比較してHaCaTのIL-8放出をそれぞれ12.6%および5.1%(Heal99およびHeal19)に減少させることができた。これらの抗炎症効果は、デキサメタゾンのもの(20.4%への減少)と同様であり、これら2種類の菌株の抗炎症潜在力を示し、皮膚緩和における使用へのそれらの潜在能力を強調する。
【0146】
生体外ヒト皮膚モデルにおいてL.プランタルムHEAL19の同様な抗炎症効果を見ることができることが示された。図5に示すように、空気汚染をシミュレーションするディーゼル微粒子(1650b)による刺激後、細胞培養培地中のIL-8検出はL.プランタルムHEAL19処理モデルにおいてプラセボ対照と比較して75%に減少した。L.プランタルムHEAL19を含有する化粧品調合物による局所処置が原因となって皮膚のバリア健全性が改善され、皮膚は、静められ緩和される。
【0147】
皮膚における炎症は、炎症誘発性サイトカインだけでなく細菌、詳しくは皮膚に対して病原性の細菌によって、細胞から細胞への接触によっても誘導され得る。図6は、0.25mg/mLのL.プランタルムHEAL19で48時間前処理したHaCaTケラチノサイトがS.アウレウス誘導炎症を急激に減少させることを示す。培地中のIL-8濃度は、S.aureusだけで刺激した対照と比較して31%に減少させることができる。
【0148】
AD患者の湿疹性皮膚損傷においてS.アウレウスが頻繁に見いだされ、多くの場合にこの疾病状態の悪化および/または炎症の促進の原因となる。L.プランタルム菌株による皮膚への処置は、炎症を低下させる結果となり、それは、同時に発赤を減少させ、皮膚は緩和され、静められる。
【0149】
実施例3:ラクトバチルス・プランタルムHEAL19およびHEAL99の抗菌効果
例えばAD患者の湿疹性皮膚損傷において一貫してS.aureusが見いだされ、この疾病状態の悪化にとって重要であり原因となることが知られている。L.プランタルム菌株の皮膚への施用によりS.アウレウスのような病原体の増殖を阻害することによって皮膚の潜在的な感染を予防することができる。
【0150】
16時間インキュベーション時に光学密度を測定することによってS.アウレウスの増殖曲線を作成した。図7は、0.1および/または0.05%のL.プランタルムHEAL19で処理したときのS.アウレウスの増殖阻害効果を示す。要するに、記載の発明を用いる皮膚の局所処置は、S.アウレウスの増殖を阻害することによって炎症および感染を減少および/または予防することに貢献することができる。
【0151】
実施例4:バリア強化
A:生体外測定におけるインボルクリンおよびサイトケラチン14(CDK14)の誘導
インボルクリンは、皮膚細胞に構造支持を提供し、それによって細胞が微生物による侵入に抵抗することを可能にするタンパク質である。サイトケラチン14は、通常、異種二量体として見いだされ、表皮細胞の細胞骨格を形成する。生体外においてさまざまな濃度のL.プランタルムHEAL19を用いる局所処理によって増加した両マーカータンパク質は、図8および図9に示すようにヒト皮膚モデルを再生させた。
【0152】
これにより、記載の発明による皮膚の局所処置が皮膚バリア機能の強化の直接導くことが示される。
【0153】
B:皮膚バリア健常性
本発明は、L.プランタルムHEAL19による処理とディーゼル微粒子(1650b)による刺激との後の生体外モデルにおけるローダミンB浸透の減少によって皮膚バリアへの保護活性を示す。皮膚形態の評価は、処理された皮膚試料の構造に化合物が影響を及ぼすかどうかの決定を可能にする。この評価を実行するために、皮膚区分をローダミンB染色で染色した。皮膚試料毎の染色後に、表皮の健常性を評価した。図10は、L.プランタルムHEAL19による処置が皮膚健常性を改善し、皮膚バリア機能への保護活性を有することを示す。
【0154】
C:バリア改善効力
表皮バリアの品質指標として用いた角質層の細胞間空間中の細胞間脂質ラメラを分析し、定量的に評価した。スキンケア調合物中0.5%のL.プランタルムHEAL19による局所処理は、乾燥肌の3D表皮モデルシステムの修復性能の増加を生じる(図11)。本発明を含有するスキンケア調合物の局所施用は、表皮バリア機能を強化し、皮膚の修復性能を支援する。
【0155】
実施例5:3D皮膚モデルにおけるヒアルロン酸誘導
ヒアルロン酸(HYA)は、皮膚において一連の重要な役割を演じる。それは、皮膚において表皮バリア機能および角質層の構造を維持するために必要である。さらに、それは、組織中の水の固定、組織修復または細胞分化や増殖への影響において重要な役割を演じる(バインドル(Weindl)ら、2004年)。これは、すべて、記載のL.プランタルム菌株の処置によって実現することができる。
【0156】
図12は、細胞培養培地中0.005%のL.プランタルムHEAL19またはHEAL99による8日間の処理後のHEPKp3次元皮膚モデルにおけるヒアルロン酸の放出増加を示す。培地対照と比較すると、ヒアルロン酸放出は、145および115%に増加した。
【0157】
実施例6:皮膚の水和
A:3D皮膚モデルからのフィラグリン放出
3~9日のインキュベーション後に培地中へのタンパク質フィラグリンの放出増加を検出することができた。図13は、ラクトバチルス処置HEPKp3次元皮膚モデルの培地中の8日後のフィラグリン(FLG)放出増加を示す。0.05%L.プランタルムHEAL19およびHEAL99の使用濃度でFLGは、培地中でそれぞれ215および150%に増加した。
【0158】
記載の発明の局所施用は、ヒト皮膚中のフィラグリン上方制御を生じ、続いて皮膚バリアの強化および皮膚保湿への陽性効果を生じる。
【0159】
B:生体外フィラグリン誘導
生体外ヒト皮膚モデルを用いる検討において本発明による局所処理に起因するフィラグリンの誘導を確認した。図14は、さまざまな濃度のL.プランタルムHEAL19による処理後のフィラグリン放出の濃度依存誘導を示す。施用濃度が高いほど生体外ヒト皮膚モデルのフィラグリン放出が高い。
【0160】
HEPKp3Dヒト皮膚モデルを検討する試験管内実験において同様な濃度依存効果を観測した(データは示さず)。
【0161】
実施例7:生体内データ
モデル系において観測した効果を確認するために、強い乾燥肌の症状を有する被験者のパネルによって生体内研究を行った。熱処理したL.プランタルムHEAL19を化粧クリームに組込み、パネリストの前腕内側に施用した。0、7、14および21日後に皮膚保湿能力(静電容量)および経表皮水分蒸散量(TEWL)への効果を未処置およびプラセボ処置区域と比較して観測した。
【0162】
この生体内研究は、分子生物学的検討によって示唆される効果を確認した。静電容量は、処置時間につれて定常的に増加し、効果は、すべての時点でプラセボ処置の場合より顕著に強かった。TEWLは、処置ラクトバチルス属含有クリームにおいて顕著に減少したが、プラセボは効果がなかった。
【0163】
これらの結果は、本発明の熱処理したラクトバチルス属菌株の、皮膚の保湿およびバリア強さを増加させ皮膚健康の顕著に改善を生じる能力を示す。
【0164】
図15および16は、静電容量およびTEWLによって決定した含水量および皮膚バリア強さを時間の経過とともに示す。
【0165】
実施例8:L.プランタルム属の増殖曲線
オートクレーブ処理したMRS培地(オキソイド(Oxoid)CM0359)を用いて96ウェルMTPを調製した。10%グリセリン中に-20℃で維持したストック培養物を用いて各L.プランタルム属菌株を3連反復ウェルに接種した。ウェルあたりOD=0.1の接種材料を加え、96ウェルMTPを37℃で16時間インキュベートした。サンライズ(Sunrise)フォトメーター(テカン、オーストリア)およびマジェランソフトウェアを用いて620nmの吸収により各ウェルの増殖曲線を決定した。陰性増殖対照として食塩水(0.9%塩化ナトリウム溶液)を用いた。
【0166】
計算のために、検出した吸収値の平均を計算し、グラフ表示のために時間の関数としてプロットした。試験した菌株ならびに得られた増殖曲線を図17に見ることができる。
【0167】
調合物実施例1~15
皮膚緩和およびバリア強化効果を有する本発明によるラクトバチルス属を含む調合物(組成物):
1.スキンライトニングデイクリーム油/水
2:スキンスージングローション
3:アフターサンバーム、かゆみ低下
4:カーミングボディースプレー
5:サンスクリーンローション(油/水、広波長域保護)
6:油/水ナイトクリーム
7:頭皮スージングフケ防止シャンプー
8:自己なめしクリーム
9:かゆみ防止バリア修復クリーム
10:制汗/デオドラントロールオン
11:紫外線A/B広波長域保護を有する乳化液
12:低油含量を有する紫外線A/B広波長域保護を有するサンスプレー
13:紫外線A/紫外線Bを有するスキンライトニングバーム
14:紫外線B/紫外線A保護を有する頭皮スージングヘアコンディショナー、リンスオフ
15:かゆみ止めヘアコンディショナー、リーブオン
【0168】
【表2】








【0169】
Cited references:
Brogden KA: Antimicrobial formers or metabolic inhibitors in bacteria? Microbiology, 3: 238-250, 2005
Brown KL and Hancock REW: Cationic host defense (antimicrobial) peptides. Immuology, 18:24-30, 2006
Chung WO, Dale BA: Innate immune response of oral and fore-skin keratinocytes: utilization of different signaling pathway by various bacterial species. Infect Immun, 72:352-8, 2004
Gueniche A, Bastien P, Ovigne JM, Kermici M, Courchay G, Chevalier V, Breton L and Castiel-Higounenc I: Bifidobacterium longum lysate, a new ingredient for reactive skin. Experimental Dermatology, 19: e1-e8, 2010
Harder J, Schroeder JM, Glaeser R: The skin surface as antimicrobial barrier: present concepts and future oulooks. Experimental Dermatology, 22:1-5, 2013
Ong PY, Ohtake T, Brandt C, Strickland I, Boguniewicz M, Ganz T, Gallo RL, Leung DY: Endogenous antimicrobial peptides and skin infections in atopic dermatitis. N Engl J Med. 347:1151-60, 2002
Palmer CN, Irvine AD, Terron-Kwiatkowski A, Zhao Y, Liao H, Lee SP, Goudie DR, Sandilands A, Campbell LE, Smith FJ, O'Regan GM, Watson RM, Cecil JE, Bale SJ, Compton JG, DiGiovanna JJ, Fleckman P, Lewis-Jones S, Arseculeratne G, Sergeant A, Munro CS, El Houate B, McElreavey K, Halkjaer LB, Bisgaard H, Mukhopadhyay S, McLean WH: Common loss-of-function variants of the epidermal barrier protein filaggrin are a major predisposing factor for atopic dermatitis. Nat Genet, 38:441-6, 2006
Peral MC, Huaman Martinez MA, Valdez JC: Bacteriotherapy with Lactobacillus plantarum in burns. Int Wound J, 6:73-81, 2009
Sakaguchi S, Miyara M, Costantino CM Hafler DA: FOXP3+ regulatory T cells in the human immune system. Nature Reviews Immunology, 10:490-500, 2010
Weindl G, Schaller M, Schaefer-Korting M, Korting HC: Hyaluronic acid in the treatment and prevention of skin diseases: molecular biological, pharmaceutical and clinical aspects.Skin Pharmacol Physiol. 17(5):207-13, 2004
Wiesner J, Vilcinskas A: Antimicrobial peptides. The ancient arm of the human immune system. Virulence, 1:5, 440-464, 2010
Yong CC, Khoo BY, Sasidharan S, Piyawattanametha W, Kim SH, Khemthongcharoen N, Chuah LO, Ang MY, Liong MT: Activity of crude and fractionated extracts by lactic acid bacteria (LAB) isolated from local dairy, meat, and fermented products against Staohylococcus aureus. Ann Microbiol, 65:1037-1047, 2015
Zasloff M: Antimicrobial peptides of multicellular organism. Nature, 415:389-395, 2012
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
【手続補正書】
【提出日】2024-05-09
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
局所施用による皮膚症状の処置および/または予防における使用のための微生物または2種類の微生物を含むかまたはからなる混合物であって、前記微生物は、ラクトバチルス・プランタルム(Lactobacillus plantarum)HEAL19(DSM15313)およびラクトバチルス・プランタルムHEAL99(DSM15316)からなる群から選ばれる微生物または2種類の微生物を含むかまたはからなる混合物。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0169
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0169】
Cited references:
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Yong CC, Khoo BY, Sasidharan S, Piyawattanametha W, Kim SH, Khemthongcharoen N, Chuah LO, Ang MY, Liong MT: Activity of crude and fractionated extracts by lactic acid bacteria (LAB) isolated from local dairy, meat, and fermented products against Staohylococcus aureus. Ann Microbiol, 65:1037-1047, 2015
Zasloff M: Antimicrobial peptides of multicellular organism. Nature, 415:389-395, 2012
本発明のまた別の態様は、以下のとおりであってもよい。
〔1〕局所施用による皮膚症状の処置および/または予防における使用のための微生物または2種類の微生物を含むかまたはからなる混合物であって、前記微生物は、ラクトバチルス・プランタルム(Lactobacillus plantarum)HEAL19(DSM15313)およびラクトバチルス・プランタルムHEAL99(DSM15316)からなる群から選ばれる微生物または2種類の微生物を含むかまたはからなる混合物。
〔2〕前記微生物は、熱処理に付されており、好ましくは、無傷の物理的構造を有する弱毒化または死滅微生物である、前記〔1〕に記載の使用のための微生物または混合物。
〔3〕前記皮膚症状は、皮膚バリア機能の低下、炎症性皮膚症状および/または病原性微生物の増殖であり、好ましくは、前記皮膚症状は、アトピー性皮膚炎、微生物感染症、乾燥肌、皮膚のかゆみ、敏感肌、アトピー肌、皮膚の炎症、微生物性腸内毒素症、酒さ、乾癬、発疹およびにきびからなる群から選ばれる、前記〔1〕または〔2〕に記載の使用のための微生物または混合物。
〔4〕ラクトバチルス・プランタルム(Lactobacillus plantarum)HEAL19(DSM15313)およびラクトバチルス・プランタルムHEAL99(DSM15316)からなる群から選ばれた1種類の微生物または2種類の微生物の混合物とキャリアとを含むかまたはからなる調製物であって、前記調製物は、粒子状調製物、特に粒状体または粉体である調製物。
〔5〕前記微生物は、熱処理に付されており、好ましくは、無傷の物理的構造を有する弱毒化または死滅微生物である、前記〔4〕に記載の調製物。
〔6〕前記キャリアは、イヌリン、デンプン、アラビアゴム、ホエータンパク質、脱脂粉乳およびマルトデキストリンならびにそれらの組み合わせ、好ましくはマルトデキストリンからなる群から選ばれる、前記〔4〕または〔5〕に記載の調製物。
〔7〕キャリアに対する微生物の比は、1:9~3:7、好ましくは1.5:8.5~2.5~7.5の範囲にあり、および/または前記調製物は、それぞれの場合に前記調製物の総重量に対して10~30重量%の微生物および70~90重量%の前記キャリア、好ましくは、15~25重量%の微生物および75~85重量%の前記キャリアを含む、前記〔4〕~〔6〕のいずれか1項に記載の調製物。
〔8〕ラクトバチルス・プランタルム(Lactobacillus plantarum)HEAL19(DSM15313)およびラクトバチルス・プランタルムHEAL99(DSM15316)からなる群から選ばれた1種類の微生物または2種類の微生物の混合物とキャリアとを含むかまたはからなる調製物、好ましくは、前記〔4〕から〔7〕のいずれか1項に記載の調製物、を製造するための方法であって、
(i)ラクトバチルス・プランタルムHEAL19(DSM15313)およびラクトバチルス・プランタルムHEAL99(DSM15316)からなる群から選ばれた1種類の微生物または2種類の微生物の混合物を準備するステップと、
(ii)任意選択として、ステップ(i)の前記微生物を、好ましくは60~121℃の範囲の温度で1秒~120分間の熱処理に付すステップと、
(iii)ステップ(i)または(ii)からの前記微生物をキャリアと組み合わせ、粒状体または粉体を得るために前記組み合わせを、好ましくは凍結乾燥、スプレー乾燥または造粒によってさらに加工するステップと、
を含む方法。
〔9〕ラクトバチルス・プランタルム(Lactobacillus plantarum)HEAL19(DSM15313)およびラクトバチルス・プランタルムHEAL99(DSM15316)からなる群から選ばれた1種類の微生物または2種類の微生物の混合物を含むかまたは前記〔4〕~〔7〕のいずれか1項に記載の調製物を含む、皮膚への局所施用のための医薬品または化粧品組成物あるいは医薬品または化粧品製品であって、前記微生物の総量は、皮膚症状、特に炎症性皮膚症状、皮膚バリア機能の低下、および/または病原性微生物の増殖を処置および/または予防するために十分であり、好ましくは、前記微生物の総量は、それぞれの場合に前記組成物の総重量に対して0.01~5乾燥重量%、好ましくは0.02~1乾燥重量%の範囲にあり、および/または、前記微生物の総量は、前記総組成物のグラムあたり少なくとも10 8 、好ましくは5×10 8 細胞または少なくとも10 11 細胞、例えば、前記総組成物のグラムあたり10 8 ~5×10 10 、好ましくは、10 9 ~10 10 細胞の範囲にある、皮膚への局所施用のための医薬品または化粧品組成物あるいは医薬品または化粧品製品。
〔10〕前記組成物または製品は、水中油または油中水乳化液、軟膏、クレーム、ローションおよびジェルからなる群から選ばれ、好ましくは、前記組成物または製品は、キャリア、賦形剤およびさらなる活性成分からなる群から選ばれた1種類以上の構成要素をさらに含む、前記〔9〕に記載の医薬品または化粧品組成物あるいは製品。
〔11〕医薬品または化粧品組成物あるいは製品、好ましくは前記〔9〕または〔10〕に記載の医薬品または化粧品組成物あるいは製品を製造するための方法であって、
(i)ラクトバチルス・プランタルム(Lactobacillus plantarum)HEAL19(DSM15313)およびラクトバチルス・プランタルムHEAL99(DSM15316)からなる群から選ばれた1種類または2種類の微生物の混合物を準備し、好ましくは、前記微生物は、熱処理に付されており、好ましくは、無傷の物理的構造を有する弱毒化または死滅微生物であるステップ、または前記〔4〕~〔7〕のいずれか1項に記載の調製物または前記〔8〕に記載の方法によって製造される調製物を準備するステップと、
(ii)医薬品または化粧品組成物あるいは製品を得るためにステップ(i)の前記微生物または前記調製物をキャリア、賦形剤およびさらなる活性成分から選択された1種類以上の物質と組み合わせるステップと、
を含む方法。
〔12〕特に皮膚の外観を改善する皮膚への局所施用のための微生物または2種類の微生物を含むかまたはからなる混合物の化粧使用であって、前記微生物は、ラクトバチルス・プランタルム(Lactobacillus plantarum)HEAL19(DSM15313)およびラクトバチルス・プランタルムHEAL99(DSM15316)からなる群から選択され、好ましくは、前記微生物は、熱処理に付されており、および/または無傷の物理的構造を有する弱毒化または死滅微生物である化粧使用。
〔13〕皮膚刺激、乾燥肌、発疹、にきび、および/または皮膚老化を軽減または予防するための前記〔12〕に記載の化粧使用。
〔14〕前記微生物は、前記〔4〕~〔7〕のいずれか1項に記載の調製物または前記〔8〕に記載の方法によって製造された調製物の形で用いられる、前記〔12〕または〔13〕に記載の化粧使用。
〔15〕皮膚の外観を改善する、特に皮膚刺激、乾燥肌、発疹、にきびおよび/または皮膚老化を軽減または予防する化粧方法であって、
i)微生物または2種類の微生物を含むかまたはからなる混合物を局所的に皮膚に施用するステップであって、前記微生物は、ラクトバチルス・プランタルム(Lactobacillus plantarum)HEAL19(DSM15313)およびラクトバチルス・プランタルムHEAL99(DSM15316)からなる群から選択されるステップ、または、前記〔4〕~〔7〕のいずれか1項に記載の調製物または前記〔8〕に記載の方法によって製造された調製物または前記〔9〕または〔10〕に記載の化粧品組成物または製品を皮膚に施用するステップであって、好ましくは、前記微生物は、熱処理に付されており、および/または無傷の物理的構造を有する弱毒化または死滅微生物であるステップと、
を含む方法。
【外国語明細書】