(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024096151
(43)【公開日】2024-07-12
(54)【発明の名称】電池モジュール
(51)【国際特許分類】
H01M 50/24 20210101AFI20240705BHJP
H01M 10/42 20060101ALI20240705BHJP
H01M 10/48 20060101ALI20240705BHJP
H01M 10/613 20140101ALI20240705BHJP
H01M 10/625 20140101ALI20240705BHJP
H01M 10/6563 20140101ALI20240705BHJP
H01M 10/6568 20140101ALI20240705BHJP
H01M 10/6556 20140101ALI20240705BHJP
H02J 7/00 20060101ALI20240705BHJP
【FI】
H01M50/24
H01M10/42 P
H01M10/48 P
H01M10/48 301
H01M10/613
H01M10/625
H01M10/6563
H01M10/6568
H01M10/6556
H02J7/00 301E
【審査請求】有
【請求項の数】23
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024064246
(22)【出願日】2024-04-11
(62)【分割の表示】P 2021179888の分割
【原出願日】2020-01-15
(71)【出願人】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(74)【代理人】
【識別番号】100121991
【弁理士】
【氏名又は名称】野々部 泰平
(74)【代理人】
【識別番号】100145595
【弁理士】
【氏名又は名称】久保 貴則
(72)【発明者】
【氏名】青木 公甫
(72)【発明者】
【氏名】沼田 達宏
(57)【要約】
【課題】無線通信の妨げられること、および、無線通信が漏れることの抑制された電池モジュールを提供する。
【解決手段】電池スタック10は、複数の電池セル11と、複数の電池セルそれぞれの物理量を個別に検出する複数のセンサ14と、複数のセンサそれぞれの検出結果を無線で出力する複数の個別通信部16と、を有する。複数の個別通信部それぞれは統合監視部30と無線通信する。複数の電池スタックと統合監視部は電磁遮蔽性能を備えるケース50の収納空間に収納されている。収納空間には遮蔽部70も収納されている。遮蔽部70はケースに形成された孔51cと対向配置されている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の組電池(11)と、
複数の前記組電池それぞれの物理量を個別に検出する複数の個別検出部(14)と、
複数の前記個別検出部それぞれの検出結果を無線で出力する複数の個別通信部(16)と、
複数の前記個別通信部それぞれと無線通信する監視部(30)と、
複数の前記組電池、複数の前記個別検出部、複数の前記個別通信部、および、前記監視部それぞれを収納空間に収納する、電磁遮蔽筐体(50)と、
前記電磁遮蔽筐体における前記収納空間を区画する区画壁(53~56)の非電磁遮蔽部位(51c,57)に対向配置される遮蔽シールド(70)と、を有し、
前記非電磁遮蔽部位は、前記収納空間とその外とを連通する孔(51c)と、前記孔を閉塞する非導電性閉塞部(57)を備える電池モジュール。
【請求項2】
前記遮蔽シールドは、前記非電磁遮蔽部位と対向する対向部(71)と、前記対向部から前記区画壁に向かって延び、その先端側が前記区画壁に連結される脚部(72)と、を有する請求項1に記載の電池モジュール。
【請求項3】
前記脚部は前記対向部から前記区画壁側へと環状に起立し、前記先端側の少なくとも一部が前記非電磁遮蔽部位を囲む態様で前記区画壁に連結されている請求項2に記載の電池モジュール。
【請求項4】
前記遮蔽シールドの少なくとも一部は導電性の金網である請求項1~3いずれか1項に記載の電池モジュール。
【請求項5】
前記監視部は、前記電磁遮蔽筐体内において前記孔を備える前記区画壁に配置されている請求項1に記載の電池モジュール。
【請求項6】
前記非電磁遮蔽部位と前記遮蔽シールドとの対向方向に直交する一方向である前記電磁遮蔽筐体の高さ方向において、前記監視部と前記遮蔽シールドとが並んでいる請求項5に記載の電池モジュール。
【請求項7】
前記組電池をそれぞれ備える複数の電池スタック(10)を有し、
前記個別通信部は、複数の前記電池スタックに個別に設けられるとともに、前記高さ方向において前記遮蔽シールドに対する前記監視部の配置側の端部にそれぞれ設けられ、
前記孔は、前記高さ方向において前記端部よりも下方に位置している請求項6に記載の電池モジュール。
【請求項8】
複数の前記電池スタックは、前記対向方向に並んでおり、
前記対向方向において、前記電池スタックと前記監視部とが並んでいる請求項7に記載の電池モジュール。
【請求項9】
前記個別通信部のそれぞれは、前記高さ方向において、前記監視部と該監視部にもっとも近い前記電池スタックとが対向する部分よりも上方に位置し、
前記遮蔽シールドは、前記高さ方向において、前記監視部と該監視部にもっとも近い前記電池スタックとが対向する部分よりも下方に位置し、
前記対向方向において、前記監視部と該監視部にもっとも近い前記電池スタックとの距離が、前記遮蔽シールドと該遮蔽シールドにもっとも近い前記電池スタックとの距離よりも短い請求項8に記載の電池モジュール。
【請求項10】
前記遮蔽シールドは、前記高さ方向において前記孔と前記個別通信部の間の位置で、前記孔を備える前記区画壁から前記対向方向に延びている請求項7~9いずれか1項に記載の電池モジュール。
【請求項11】
前記高さ方向において、前記個別通信部および前記監視部それぞれの上端は、前記電池スタックよりも上方に位置している請求項7~10いずれか1項に記載の電池モジュール。
【請求項12】
前記遮蔽シールドは、前記孔を備える前記区画壁よりも薄い請求項1に記載の電池モジュール。
【請求項13】
前記遮蔽シールドは、前記孔を囲む態様で前記孔を備える前記区画壁に連結されている請求項1に記載の電池モジュール。
【請求項14】
前記非導電性閉塞部は、樹脂材料を含んで構成されている請求項1に記載の電池モジュール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書に記載の開示は、複数の組電池を備える電池モジュールに関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に示されるように、バッテリとバッテリ監視システムとを備える電源システムが知られている。バッテリ監視システムは複数のバッテリ監視装置とバッテリECUとを備えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載の電源システムでは、複数のバッテリ監視装置とバッテリECUとが無線通信を行っている。そのためにこの無線通信が電磁ノイズで妨げられることを抑制する必要がある。また、この無線通信が漏れて、他の電気機器に対しての電磁ノイズになることを抑制する必要がある。
【0005】
そこで本明細書に記載の開示は、無線通信の妨げられること、および、無線通信が漏れることの抑制された電池モジュールを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
開示の1つは、複数の組電池(11)と、
複数の組電池それぞれの物理量を個別に検出する複数の個別検出部(14)と、
複数の個別検出部それぞれの検出結果を無線で出力する複数の個別通信部(16)と、
複数の個別通信部それぞれと無線通信する監視部(30)と、
複数の組電池、複数の個別検出部、複数の個別通信部、および、監視部それぞれを収納空間に収納する、電磁遮蔽筐体(50)と、
電磁遮蔽筐体における収納空間を区画する区画壁(53~56)の非電磁遮蔽部位(51c,57)に対向配置される遮蔽シールド(70)と、を有し、
非電磁遮蔽部位は、収納空間とその外とを連通する孔(51c)と、孔を閉塞する非導電性閉塞部(57)を備える。
【0007】
これによれば、電磁遮蔽筐体(50)の収納空間に電磁ノイズの侵入することが抑制される。電磁ノイズの侵入によって、個別通信部(16)と監視部(30)との無線通信の妨げられることが抑制される。また、個別通信部(16)と監視部(30)との間の無線通信が電磁遮蔽筐体(50)の収納空間の外に漏れることが抑制される。
【0008】
なお、上記の括弧内の参照番号は、後述の実施形態に記載の構成との対応関係を示すものに過ぎず、技術的範囲を何ら制限するものではない。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】電池モジュールと電池ECUを説明するための模式図である。
【
図2】遮蔽部の一形態を説明するための図表である。
【
図3】遮蔽部の一形態を説明するための図表である。
【
図4】遮蔽部の一形態を説明するための図表である。
【
図5】遮蔽部の一形態を説明するための図表である。
【
図6】遮蔽部の一形態を説明するための図表である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本開示の実施形態と変形例を図に基づいて説明する。これら実施形態と変形例それぞれには共通要素が含まれている。この共通要素をある実施形態で説明した場合、その共通要素の説明を他の実施形態と変形例では省略する。この共通要素には複数の実施形態と変形例それぞれで同一の符号を付与する。
【0011】
(第1実施形態)
図1に基づいて本実施形態に係る電池モジュールを説明する。本実施形態の電池モジュールは電気自動車やプラグインハイブリッド自動車などの車両に適用される。
【0012】
<車載電池>
図1に電池モジュール100を示す。電池モジュール100は車載電源を構成している。電池モジュール100は車両の電気負荷に電力供給する機能を果たしている。なおもちろんではあるが、複数の電池モジュール100が電気的に直列接続若しくは並列接続されることで車載電源が構成されてもよい。
【0013】
電池モジュール100は車両に搭載されたファンから供給される風によって温度調整される。若しくは、電池モジュール100は車内を循環する冷却液体で温度調整される。これにより電池モジュール100の過度な温度変化が抑制されている。
【0014】
電池モジュール100の配置場所としては、例えば車両の前部座席下の空間、後部座席下の空間、および、後部座席とトランクルームとの間の空間などを採用することができる。
【0015】
<電池モジュール>
図1に示すように電池モジュール100は複数の電池スタック10、統合監視部30、ケース50、および、遮蔽部70を有する。複数の電池スタック10、統合監視部30、および、遮蔽部70それぞれはケース50の収納空間に収納されている。
【0016】
<電池スタック>
複数の電池スタック10それぞれは複数の電池セル11、電池ケース12、および、情報取得部13を有する。電池ケース12は複数の電池セル11を収納している。情報取得部13は複数の電池セル11の物理量を取得してそれを統合監視部30に出力する機能を果たす。また情報取得部13は後述の均等化処理を実施する機能を果たす。
【0017】
電池セル11は化学反応によって起電圧を生成する二次電池である。この二次電池としては、例えばリチウムイオン二次電池を採用することができる。複数の電池セル11はx方向若しくはz方向に積層配置されている。そして複数の電池セル11は電気的に直列接続されている。これら複数の電池セル11の配置が電池ケース12によって保持されている。1つの電池ケース12に収納された複数の電池セル11によって1つの組電池が構成されている。各電池スタック10の備える組電池が電気的に直列接続されている。そして最高電位の電池スタック10と最低電位の電池スタック10それぞれに電力線が接続されている。
【0018】
情報取得部13は複数の電池セル11それぞれの物理量を検出する複数のセンサ14と、これら複数のセンサ14の検出結果の入力される個別監視部15と、電波信号の入出力する個別通信部16と、を有する。センサ14が個別検出部に相当する。
【0019】
複数のセンサ14としては電圧センサ、温度センサ、電流センサがある。電圧センサは複数の電池セル11それぞれの出力電圧を検出する。温度センサは複数の電池セル11のうちの少なくとも1つの温度を検出する。電流センサは電気的に直列接続された複数の電池セル11それぞれに共通して流れる電流を検出する。
【0020】
個別監視部15にはこれら複数のセンサ14の検出結果が入力される。個別監視部15はこれら複数のセンサ14の検出結果とともに、複数の電池スタック10のうちのどの電池スタック10から出力された信号であるのかを識別するための識別コードの付与された監視信号を生成する。この監視信号が個別通信部16に入力される。
【0021】
個別通信部16は入力された監視信号を電波信号に変換する。この電波信号が個別通信部16からケース50の収納空間に出力される。この電波信号が統合監視部30で受信される。
【0022】
<統合監視部>
統合監視部30は複数の電池スタック10それぞれから出力された電波信号を受信する。統合監視部30はこの電波信号をデジタル信号に変換する。そして統合監視部30はそのデジタル信号を電池ECU200に出力する。統合監視部30が監視部に相当する。
【0023】
電池ECU200は入力されたデジタル信号に基づいて電池モジュール100のSOCを算出する。SOCはstate of chargeの略である。そして電池ECU200は検出したSOCと、他の車載ECUや車載センサなどから入力される車載情報とに基づいて電池モジュール100の充放電を判定する。
【0024】
また電池ECU200は複数の電池スタック10それぞれに含まれる複数の電池セル11それぞれのSOCを算出する。そして電池ECU200は複数の電池セル11それぞれのSOCの均等化処理の実施を判断する。電池ECU200はその均等化処理の判断に基づく指示信号を統合監視部30に出力する。
【0025】
統合監視部30は入力された指示信号を電波信号としてケース50の収納空間に出力する。この指示信号には上記の識別コードが含まれている。そのために複数の個別監視部15のうちの電波信号に含まれている識別コードに対応する個別監視部15のみがこの電波信号を受信する。
【0026】
個別監視部15は複数の電池セル11それぞれを個別に充放電するためのスイッチ素子を備えている。個別監視部15は入力された指示信号に基づいてスイッチ素子を開閉制御する。これにより複数の電池セル11のうちの特定の電池セル11同士が電気的に接続される。
【0027】
電気的に接続された複数の電池セル11のうちの相対的にSOCの高い電池セル11からSOCの低い電池セル11へと電流が流れる。この結果、複数の電池セル11それぞれのSOCが均等化される。
【0028】
なお、1つの電池スタック10に含まれる複数の電池セル11それぞれのSOCがその電池スタック10に含まれる個別監視部15によって算出されてもよい。そしてその個別監視部15が複数の電池セル11それぞれのSOCの均等化処理の実施の判断を行ってもよい。
【0029】
<ケース>
ケース50は開口を有する筐体51と、この開口を閉塞する態様で筐体51に固定される蓋体52と、を有する。筐体51は底壁53と底壁53から環状に起立した側壁54と、を有する。蓋体52は底壁53と離間して対向する天壁55と、天壁55から環状に起立して側壁54の先端側へと延びた縁壁56と、を有する。側壁54の先端側と縁壁56の先端側とが互いに連結されている。これによってケース50の収納空間が構成されている。底壁53、側壁54、天壁55、縁壁56それぞれが区画壁に相当する。
【0030】
筐体51には、筐体51と蓋体52とによって構成される収納空間とその外の空間(外部空間)とを連通するための孔51cが形成されている。孔51cは筐体51の内壁面51aと外壁面51bとに開口している。
【0031】
この孔51cの用途としては、ケース50の通気用、電力線の取り出し用、信号線の取り出し用などがある。
図1では統合監視部30と電池ECU200とを接続する信号線201の取り出し用の孔51cを代表として図示している。
【0032】
上記したようにケース50の収納空間において複数の電池スタック10それぞれの情報取得部13と統合監視部30との間で無線通信が行われる。電池モジュール100が電磁ノイズ源となることを避けるために、この無線通信がケース50の収納空間の外に漏れることを抑制する必要がある。逆に、この無線通信が阻害されることを抑制するために、電磁ノイズがケース50の収納空間に侵入することを抑制する必要がある。
【0033】
係る課題を解決するために、筐体51と蓋体52それぞれは電磁波を遮蔽する性能を備えている。筐体51と蓋体52を備えるケース50が電磁遮蔽筐体に相当する。このような電磁遮蔽の性能を備えるために、筐体51と蓋体52とは以下に一例として示す材料を備えている。
【0034】
例えば、筐体51と蓋体52とは金属などの導電材料を備えている。筐体51と蓋体52とは樹脂材料と、その表面を覆う導電材料と、を備えている。筐体51と蓋体52とは樹脂材料と、その内部に埋め込まれた導電材料と、を備えている。筐体51と蓋体52とはカーボン繊維を備えている。
【0035】
ただし、筐体51と蓋体52とが上記の電磁遮蔽の性能を備えていても、上記したように筐体51には様々な用途の孔51cが形成される。この孔51cは筐体51における非電磁遮蔽部位に相当する。この孔51cを介して情報取得部13と統合監視部30との間の無線通信が収納空間の外に漏れる虞がある。この孔51cを介してケース50の収納空間に電磁ノイズが侵入する虞がある。
【0036】
<遮蔽部とその作用効果>
係る課題を解決するために、遮蔽部70がケース50の収納空間に収納されている。以下においては、互いに直交の関係にある3方向を、x方向、y方向、および、z方向と示す。
【0037】
遮蔽部70は電磁遮蔽機能を備えている。係る機能を備えるために遮蔽部70は導電材料を備えている。遮蔽部70としては、厚さの薄い金属板、金網、金属テープ、非導電材料の表面に導電材料の塗布された物、導電性繊維で形成された板などを採用することができる。遮蔽部70が遮蔽シールドに相当する。
【0038】
図1に示すように遮蔽部70はケース50の収納空間において孔51cと対向配置される。遮蔽部70はy方向の厚さの薄い扁平形状を成している。遮蔽部70と孔51cとのy方向の離間距離は、例えば遮蔽部70のy方向に直交する方向の長さよりも短くなっている。
【0039】
遮蔽部70のy方向に沿った側壁54における孔51cの非形成部位側への投影領域内に孔51cのすべてが含まれている。遮蔽部70の一部が孔51cと対向し、残りが側壁54における孔51cの非形成部位と対向している。
【0040】
係る配置構成のため、無線通信が孔51cを介して収納空間の外に飛び出すことが遮蔽部70によって抑制される。電磁ノイズが孔51cを介して収納空間に侵入したとしても、その電磁ノイズの一部を遮蔽部70によって収納空間の外に反射することができる。また、電磁ノイズの一部を遮蔽部70と側壁54における孔51cの非形成部位との間で反射を繰り返させて減衰することができる。
【0041】
なお、遮蔽部70は筐体51と一体的に製造されてもよいし、別体で製造されてもよい。両者が別体で製造される場合、遮蔽部70は溶接やボルト止めなどによって筐体51に連結される。電磁遮蔽機能として電磁波を反射する性能を備える導電材料としては、例えば鉄やアルミニウムなどを採用することができる。
【0042】
<遮蔽部の形状>
以下においては、遮蔽部70の形状として適宜採用することのできる形態を
図2~
図6に基づいて説明する。
【0043】
遮蔽部70として金属板を採用した場合、例えば
図2に示すように、遮蔽部70は孔51cと対向配置される対向部71と、対向部71から側壁54における孔51cの非形成部位へと延びた脚部72と、を有する。
図2の(b)欄では、対向部71と脚部72とを区別するために、その境に一点鎖線を付与している。
【0044】
対向部71はy方向の厚さの薄い平板形状を成している。対向部71はz方向で並ぶ2つの端部とx方向で並ぶ2つの端部を有する。脚部72はこれら4つの端部のうちのz方向において統合監視部30側に位置する1つの端部を除く3つの端部それぞれからy方向に起立している。これにより脚部72はy方向まわりの周方向でギャップを有する環状を成している。この脚部72の先端側が側壁54に連結されている。脚部72の先端側によって孔51cがy方向まわりの周方向で部分的に囲まれている。
【0045】
より具体的に脚部72の形状を説明すると、
図2の(a)欄に示すように、脚部72は対向部71の端部から側壁54へと向かうにしたがって、対向部71と側壁54との間の空間から徐々に離間する態様で湾曲している。
【0046】
係る構成のため、孔51cを介して対向部71と側壁54との間の空間に侵入した電磁ノイズが、y方向に直交する方向において収納空間の内側へと伝搬することが脚部72によって抑制される。また、y方向に直交する方向において、無線通信が対向部71と側壁54との間の空間に侵入することが脚部72によって抑制される。
【0047】
なお、孔51cに信号線201や電力線などが通されない場合、例えば
図3に示すように、脚部72は対向部71の備える4つの端部すべてから側壁54へと向かって延びてもよい。
【0048】
図4の(a)欄に示すように、遮蔽部70は、y方向に離間しつつ、一部がy方向で対向する複数の対向部71を備える構成を採用することもできる。係る構成の場合、複数の対向部71のうちの1つに入射した電磁ノイズの一部が複数の対向部71の間で反射を繰り返す。これにより電磁ノイズことで減衰される。なお、
図4においては、孔51cに非導電性の樹脂材料から成る閉塞部材57が設けられている。閉塞部材57が非導電性閉塞部に相当する。
【0049】
図4の(b)欄に示すように、遮蔽部70は、上記の複数の対向部71の他に、これら複数の対向部71それぞれから側壁54へと延びた脚部72を備えてもよい。これら複数の脚部72はz方向で離間しつつ、一部がz方向で対向している。複数の対向部71と複数の脚部72とによって構成される空間がラビリンス形状を成している。そのためにこれら複数の対向部71と複数の脚部72とを備える遮蔽部70に侵入した電磁ノイズは、ラビリンス形状の空間で反射を繰り返しやすくなる。この結果、電磁ノイズが減衰されやすくなる。
【0050】
図5の(a)欄に示すように、遮蔽部70として厚さが金属板よりも薄い金属テープを採用することができる。遮蔽部70における側壁54側の面は接着面になっている。係る構成のため、
図5の(a)欄に示すように、遮蔽部70によって孔51cを閉塞するとともに、例えば信号線201をケース50に固定することができる。また、遮蔽部70によってケース50の収納空間の収納容量が減ることが抑制される。収納空間への異物の侵入を抑制することができる。
【0051】
図5の(b)欄に示すように、遮蔽部70としては厚さが金属板よりも薄い金網を採用することができる。遮蔽部70は側壁54における孔51cの開口部位に設けられる。これにより、遮蔽部70によってケース50の収納空間の収納容量が減ることが抑制される。収納空間への異物の侵入を抑制するとともに、収納空間とその外との連通を行うことができる。なお、金網の開口の最長径は、使用する電波の周波数帯域に依存するが、例えば数cmオーダー以下を採用することができる。
【0052】
遮蔽部70は入力された電磁波を熱エネルギーに変換することで、電磁波を吸収する機能を備えてもよい。このような機能を備える材料としては、例えば、カーボン粒子を採用することができる。
図6の(a)欄に示すように、係るカーボン粒子の含まれた塗料73が遮蔽部70の孔51c側の面に塗布された構成を採用することもできる。
【0053】
若しくは、例えば
図6の(b)欄に示すように、遮蔽部70における孔51c側の面に電磁波を吸収するための凹凸74の形成された構成を採用することもできる。
【0054】
以上、本開示物の好ましい実施形態について説明したが、本開示物は上記した実施形態になんら制限されることなく、本開示物の主旨を逸脱しない範囲において、種々変形して実施することが可能である。
【符号の説明】
【0055】
10…電池スタック、11…電池セル、12…電池ケース、13…情報取得部、14…センサ、15…個別監視部、16…個別通信部、30…統合監視部、50…ケース、51…筐体、51c…孔、52…蓋体、53…底壁、54…側壁、55…天壁、56…縁壁、57…閉塞部材、70…遮蔽部、71…対向部、72…脚部、100…電池モジュール
【手続補正書】
【提出日】2024-04-11
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電池セル(11)と、
前記電池セルの検出結果を無線で出力する個別通信部(16)と、
前記個別通信部と無線通信する監視部(30)と、
前記電池セル、前記個別通信部、および、前記監視部を収納空間に収納する、電磁遮蔽筐体(50)と、
前記電磁遮蔽筐体における前記収納空間を区画する区画壁(53~56)の非電磁遮蔽部位(51c,57)に対向配置される遮蔽シールド(70)と、を有する電池モジュール。
【請求項2】
前記遮蔽シールドは、前記非電磁遮蔽部位と対向する対向部(71)と、前記対向部から前記区画壁に向かって延び、その先端側が前記区画壁に連結される脚部(72)と、を有する請求項1に記載の電池モジュール。
【請求項3】
前記脚部は前記対向部から前記区画壁側へと環状に起立し、前記先端側の少なくとも一部が前記非電磁遮蔽部位を囲む態様で前記区画壁に連結されている請求項2に記載の電池モジュール。
【請求項4】
前記遮蔽シールドの少なくとも一部は導電性の金網である請求項1~3いずれか1項に記載の電池モジュール。
【請求項5】
前記金網の開口の最長径は、数cm以下である請求項4に記載の電池モジュール。
【請求項6】
前記金網は、前記金網が設けられる前記区画壁の厚みよりも薄い請求項4または請求項5に記載の電池モジュール。
【請求項7】
前記非電磁遮蔽部位は、前記収納空間とその外とを連通する孔(51c)を備える請求項1~6いずれか1項に記載の電池モジュール。
【請求項8】
前記非電磁遮蔽部位を通過し、前記監視部に接続される信号線(201)を有する請求項1~7いずれか1項に記載の電池モジュール。
【請求項9】
前記信号線は、前記遮蔽シールドに接触している請求項8に記載の電池モジュール。
【請求項10】
前記遮蔽シールドは、前記非電磁遮蔽部位を備える前記区画壁よりも薄い請求項1~9いずれか1項に記載の電池モジュール。
【請求項11】
前記遮蔽シールドは、前記非電磁遮蔽部位を囲む態様で前記非電磁遮蔽部位を備える前記区画壁に連結されている請求項1に記載の電池モジュール。
【請求項12】
前記遮蔽シールドと非電磁遮蔽部位との対向方向における前記遮蔽シールドと非電磁遮蔽部位との距離は、前記対向方向に直交する方向における前記非電磁遮蔽部位の幅よりも短い請求項1に記載の電池モジュール。
【請求項13】
前記電池セルを収納する電池ケース(12)を有する請求項1~12いずれか1項に記載の電池モジュール。
【請求項14】
前記電池セルを複数備えて構成された組電池を複数有する請求項1~13いずれか1項に記載の電池モジュール。
【請求項15】
前記監視部は、統合監視部であり、
複数の前記組電池それぞれの物理量を個別に検出する複数の個別検出部(14)と、
複数の前記個別検出部それぞれ前記電池セルの検出結果を無線で出力する複数の前記個別通信部と、
複数の前記個別検出部それぞれの検出結果を取得して複数の前記組電池を監視し、対応する前記個別通信部が出力するための信号を生成する複数の個別監視部(15)と、を有し、
前記個別監視部は、前記組電池の側面に設けられている請求項14に記載の電池モジュール。
【請求項16】
前記監視部は、前記組電池の側面と対向する位置に配置されている請求項14または請求項15に記載の電池モジュール。
【請求項17】
前記遮蔽シールドは、溶接やボルト止めによって前記電磁遮蔽筐体に連結されている請求項1~16いずれか1項に記載の電池モジュール。
【請求項18】
非導電性の部材(57)および前記遮蔽シールドは、前記孔を覆うように、前記遮蔽シールドの厚さ方向に重なっている請求項7に記載の電池モジュール。
【請求項19】
前記電池セルは、車両に搭載されたファンまたは車内を循環する冷却液体で温度調整される請求項1~18いずれか1項に記載の電池モジュール。
【請求項20】
前記電池セルを複数有し、
複数の前記電池セルは、前記電磁遮蔽筐体の高さ方向に直交する方向である水平方向に配置されている請求項1~19いずれか1項に記載の電池モジュール。
【請求項21】
前記電池セルは、車両に適用される請求項1~20いずれか1項に記載の電池モジュール。
【請求項22】
内部で無線通信が行われる前記電磁遮蔽筐体を複数並べる構成を除く請求項1~21いずれか1項に記載の電池モジュール。
【請求項23】
前記遮蔽シールドとして、ブラシ状に構成され、柔軟性を有する導電性のワイヤを除く請求項1~22いずれか1項に記載の電池モジュール。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0001
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0001】
本明細書に記載の開示は、電池モジュールに関するものである。
【手続補正3】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0004
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0004】
特許文献1に記載の電源システムでは、バッテリ監視装置とバッテリECUとが無線通信を行っている。そのためにこの無線通信が電磁ノイズで妨げられることを抑制する必要がある。また、この無線通信が漏れて、他の電気機器に対しての電磁ノイズになることを抑制する必要がある。
【手続補正4】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0006
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0006】
開示の1つは、電池セル(11)と、
電池セルの検出結果を無線で出力する個別通信部(16)と、
個別通信部と無線通信する監視部(30)と、
電池セル、個別通信部、および、監視部を収納空間に収納する、電磁遮蔽筐体(50)と、
電磁遮蔽筐体における収納空間を区画する区画壁(53~56)の非電磁遮蔽部位(51c,57)に対向配置される遮蔽シールド(70)と、を有する。
【手続補正書】
【提出日】2024-06-26
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】請求項1
【補正方法】変更
【補正の内容】
【請求項1】
電池セル(11)と、
前記電池セルの検出結果を無線で出力する個別通信部(16)と、
前記個別通信部と無線通信する監視部(30)と、
前記電池セル、前記個別通信部、および、前記監視部を収納空間に収納する、電磁遮蔽筐体(50)と、
前記収納空間を区画する区画壁(53~56)の非電磁遮蔽部位(51c,57)に対向配置される遮蔽シールド(70)と、を有する電池モジュール。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0006
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0006】
開示の1つは、電池セル(11)と、
電池セルの検出結果を無線で出力する個別通信部(16)と、
個別通信部と無線通信する監視部(30)と、
電池セル、個別通信部、および、監視部を収納空間に収納する、電磁遮蔽筐体(50)と、
収納空間を区画する区画壁(53~56)の非電磁遮蔽部位(51c,57)に対向配置される遮蔽シールド(70)と、を有する。