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特開2024-96170着色添加剤を含有するコーティング層含有微結晶化ガラス及びその製造方法
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  • 特開-着色添加剤を含有するコーティング層含有微結晶化ガラス及びその製造方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024096170
(43)【公開日】2024-07-12
(54)【発明の名称】着色添加剤を含有するコーティング層含有微結晶化ガラス及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   C03C 17/42 20060101AFI20240705BHJP
   C03C 21/00 20060101ALI20240705BHJP
   C03C 10/02 20060101ALI20240705BHJP
   C03C 10/04 20060101ALI20240705BHJP
   C03C 10/08 20060101ALI20240705BHJP
   C03C 10/12 20060101ALI20240705BHJP
   C03C 10/14 20060101ALI20240705BHJP
   B32B 17/06 20060101ALI20240705BHJP
【FI】
C03C17/42
C03C21/00 101
C03C10/02
C03C10/04
C03C10/08
C03C10/12
C03C10/14
B32B17/06
【審査請求】未請求
【請求項の数】24
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024067815
(22)【出願日】2024-04-18
(62)【分割の表示】P 2022009147の分割
【原出願日】2022-01-25
(31)【優先権主張番号】202110128889.1
(32)【優先日】2021-01-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(71)【出願人】
【識別番号】521475495
【氏名又は名称】重慶▲シン▼景特種玻璃有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】100095407
【弁理士】
【氏名又は名称】木村 満
(74)【代理人】
【識別番号】100132883
【弁理士】
【氏名又は名称】森川 泰司
(74)【代理人】
【識別番号】100148633
【弁理士】
【氏名又は名称】桜田 圭
(74)【代理人】
【識別番号】100147924
【弁理士】
【氏名又は名称】美恵 英樹
(72)【発明者】
【氏名】胡 偉
(72)【発明者】
【氏名】鄭 其芳
(72)【発明者】
【氏名】黄 昊
(72)【発明者】
【氏名】▲デン▼ 双
(72)【発明者】
【氏名】談 宝権
(72)【発明者】
【氏名】姜 宏
(57)【要約】
【課題】微結晶化ガラスに対して撥水撥油性を有するコーティングを付与したガラス、及びその製造方法と応用を提供する。
【解決手段】表面に撥水撥油複合コーティング層を含有する微結晶化ガラス又はガラスセラミックスであり、ガラスの最外面から順番に撥水撥油層、中間層、下塗り層を含む微結晶化ガラス又はガラスセラミックスであり、ここで、前記中間層は、結晶格子エネルギーを700~3000kJ/mol含有するイオン結晶で形成された中間層であり、前記下塗り層は、Si-O結合を含有する化合物又は混合シリコン酸化物層を含むことを特徴とする。本発明により、微結晶化ガラスのコーティングインターフェースにSi-O構造が少ない場合でも、強固で耐久性があり、性能が優れた撥水撥油コーティング膜を形成することができ、高結晶化度ガラスがイオン交換されたか否かに関わらず、優れた撥水撥油性を実現することができる。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面に撥水撥油複合コーティング層を含有する微結晶化ガラスであって、前記微結晶化ガラスは、最外面から順番に撥水撥油層、中間層及び下塗り層を含み、ただし、前記中間層は、結晶格子エネルギーを700~3000kJ/mol含有するイオン結晶中間層であり、前記下塗り層は、Si-O結合を含有する化合物又は混合シリコン酸化物層を含み、前記微結晶化ガラスは、着色添加剤をさらに含有する、
ことを特徴とする微結晶化ガラス。
【請求項2】
前記着色添加剤のガラスの全成分に対するモル含有量は5%を超えない、
請求項1に記載の微結晶化ガラス。
【請求項3】
結晶化度は、60%よりも大きく、又は70%よりも大きく、又は80%よりも大きい、
請求項1又は請求項2に記載の微結晶化ガラス。
【請求項4】
前記微結晶化ガラスは、黒色ガラスである、
請求項1又は請求項2に記載の微結晶化ガラス。
【請求項5】
前記中間層は、結晶格子エネルギーが725~3000kJ/molのイオン結晶を元のコーティング膜物質として形成された中間層であるか、
又は、結晶格子エネルギーが9400~11400KJ/molのケイフッ化物を元のコーティング膜物質として形成されたフッ化物中間層である、
請求項1~請求項4のいずれか1項に記載の微結晶化ガラス。
【請求項6】
前記中間層は、結晶格子エネルギーが770~3000kJ/molのイオン結晶を元のコーティング膜物質として形成された中間層である、
請求項5に記載の微結晶化ガラス。
【請求項7】
前記中間層は、フッ化アルカリ金属類又はフッ化アルカリ土類金属化合物を含有するか、又はケイフッ化アルカリ金属及びケイフッ化アルカリ土類金属から選択されたイオン結晶を、元のコーティング膜物質として形成された中間層である、
請求項5又は請求項6に記載の微結晶化ガラス。
【請求項8】
前記中間層は、結晶格子エネルギーが1050KJ/molよりも小さいイオン結晶中間層である、
請求項1~請求項5のいずれか1項に記載の微結晶化ガラス。
【請求項9】
前記中間層は、LiF、NaF及び/又はKFのうちの少なくとも1種のイオン結晶を元のコーティング膜物質として形成された結晶であるか、又は、MgF、CaF、SrF又はBaFのうちの少なくとも1種を元のコーティング膜物質として形成された中間層であるか、又は、LiSiF、NaSiF、KSiF、RbSiF、CsSiF、BeSiF、MgSiF、CaSiF、SrSiF、又はBaSiFのうちの少なくとも1種を元のコーティング膜物質として形成されたフッ化物中間層である
請求項7又は請求項8に記載の微結晶化ガラス。
【請求項10】
前記中間層の厚さは1~5nmであり、
及び/又は、前記下塗り層の厚さは3~15nmであり、
及び/又は、前記撥水撥油層の厚さは10nm以上である、
請求項1~請求項9のいずれか1項に記載の微結晶化ガラス。
【請求項11】
前記中間層の厚さは1~2nmであり、
及び/又は、前記下塗り層の厚さは5~10nmであり、
及び/又は、前記撥水撥油層の厚さは15nm以上である、
請求項10に記載の微結晶化ガラス。
【請求項12】
前記撥水撥油層の厚さは10nm~25nmである、
請求項1~請求項11のいずれか1項に記載の微結晶化ガラス。
【請求項13】
前記下塗り層が多層である場合、前記Si-O結合を含有する化合物又は混合シリコン酸化物層を最外面の下塗り層とし、前記混合シリコン酸化物は、シリコン酸化物SiOと、少なくとも1種のケイ素元素以外の他の元素の酸化物及び/又はフッ化マグネシウムとの混合物であり、ここで、xは2以下である、
請求項1~請求項12のいずれか1項に記載の微結晶化ガラス。
【請求項14】
前記他の元素は、アルミニウム、スズ、マグネシウム、リン、セリウム、ジルコニウム、チタン、セシウム、バリウム、ストロンチウム、ニオブ、亜鉛又はホウ素のうちの元素であり、
前記Si-O結合を含有する化合物は、SiOxであるか、又は、SiOC、SiON、SiOCN及び/又はSiのうちのいずれか1種の物質又はSiOx、SiOC、SiON及び/又はSiOCNのうちのいずれか1種の物質と任意の比率で結合する水素結合であり、ここで、xは2以下である、
請求項13に記載の微結晶化ガラス。
【請求項15】
前記撥水撥油層はフッ素系ポリマー層である、
請求項14に記載の微結晶化ガラス。
【請求項16】
前記撥水撥油層は分子量が2000以上の含フッ素ポリエーテルシリコン酸化物層である、
請求項15に記載の微結晶化ガラス。
【請求項17】
前記微結晶化ガラスの組成成分は、下記のmol%比率の酸化物
40~75%のSiOと、
2~20%のAlと、
0~20%のBと、
0~10%のPと、
0~15%のZrO+TiOと、
0~5%のMgOと、
0~4%のZnOと、
0~5%の希土類酸化物と、
0~5.5%のNaOと、
0~4%のKOと、
2~34%のLiOと、
4~40%のNaO+KO+LiOと、を含有し、
前記微結晶化ガラスはイオン交換されたか又はイオン交換されていないガラスである、
請求項1~請求項16のいずれか1項に記載の微結晶化ガラス。
【請求項18】
前記微結晶化ガラスの組成成分は、下記のmol%比率の酸化物
45~72%のSiOと、
4~15%のAlと、
0.4~1.6%のBと、
0.8~1.5%のPと、
0.9~4%のZrO+TiOと、
0.1~2%のMgOと、
0.9~3.0%のZnOと、
0.01~1%の希土類酸化物と、
0~5.5%のNaOと、
0~4%のKOと、
10~34%のLiOと、
15~40%のNaO+KO+LiOと、を含有し、
前記微結晶化ガラスはイオン交換されたか又はイオン交換されていないガラスである、
請求項17に記載の微結晶化ガラス。
【請求項19】
前記希土類酸化物は、CeO、Y、La、Ta、Tm及びNdから選択される1種以上又は2種以上のものである、
請求項17又は請求項18に記載の微結晶化ガラス。
【請求項20】
前記着色添加剤は、Nd、Fe、CoO、NiO、V、MnO、TiO、CuO及びCrから選択される1種以上のものである、
請求項1~請求項19のいずれか1項に記載の微結晶化ガラス。
【請求項21】
ガラスの全成分に対するモル含有量において、前記着色添加剤が0.5mol%以上のCoO及び/又はCrを含有する、
請求項1~請求項20のいずれか1項に記載の微結晶化ガラス。
【請求項22】
前記着色添加剤がFe、NiO又はMnOから選択される1種以上を1mol%以上含有する、
請求項1~請求項21のいずれか1項に記載の微結晶化ガラス。
【請求項23】
微結晶化ガラスにSi-O含有酸化物又は混合シリコン酸化物層をコーティングして、前記微結晶化ガラスの表面に下塗り層を形成するステップ1)と、
ステップ1)で得られた下塗り層の表面に中間層をコーティングするステップ2)と、
ステップ2)で得られた中間層の表面に撥水撥油層をコーティングするステップ3)と、を含む、
請求項1~請求項22のいずれか1項に記載の微結晶化ガラスの製造方法。
【請求項24】
請求項1~請求項21のいずれか1項に記載の微結晶化ガラスを含む、携帯電話のディスプレイ、タブレットのディスプレイ、ノートブックのディスプレイ、ポータブルデジタルデバイス、携帯ゲーム機、車載ディスプレイ、フロントガラス又はカメラのディスプレイ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、撥水撥油性を有するコーティングガラス及びその製造方法と応用に関し、特に、結晶化度の高い微結晶化ガラスの表面に撥水撥油複合コーティング層を有する微結晶化ガラスに関する。
【背景技術】
【0002】
ガラスは、一般に表面活性が高いため、撥水撥油性が低く、つまり、汚れが付着しやすく、表面が汚れた後、洗浄が非常にし難い。例えば調理器具、レンジフードのガラス製品、携帯電話、タブレット、タッチスクリーンのマンマシンインタラクションウィンドウなどの多くの応用シーンにおいて、ガラスの表面に「撥水」フィルムを1層コーティングすることで、ガラスの表面の活性を低下させて、その「撥水撥油」能力及びその疎水性を向上させ、疎水能力が向上した後、指でガラスの表面を触ると、「滑り性」の向上を明らかに感じられることは、疎水性が向上して、滑り摩擦係数が低下したからであり、これは、タッチインターフェースにとって、ユーザー体験を向上させる機能である。
【0003】
従来技術では、ガラスの表面の撥水撥油性を改善するために、通常、直接ガラスの表面にコーティングする方法が採用されている。一般のコーティング膜材料はPFPE(パーフルオロポリエーテル-Per Fluoro Poly Ether、含フッ素ポリエーテルシリコン酸化物の一種)であり、当該含フッ素ポリエーテルシリコン酸化物(例えばアルコキシケイ化物)の構造は、以下の式(1)のとおりであり、
【化1】

ここで、Rは炭素、水素又はケイ素元素であり得、Yはエーテル結合、硫黄含有炭化水素基、硫黄含有アルコキシ、窒素含有炭化水素基、窒素含有アルコキシ、エポキシアルキル基、アシルオキシ炭化水素基、炭化水素基、チオ基などであり得る。
【0004】
PFPEとガラスとが接続する過程は、化学的反応過程であり、PFPEを加水分解し(PFPE-Si-OR+HO->PFPE-Si-OH+ROH)、続いて脱水縮合反応(図1に示すように、PFPE-Si-OH+H-O-Si→HO+PFPE-Si-O-Si-)を行い、最終的に、ほとんどの真空コーティングのように分子間のファンデルワールス力に依存する物理現象ではなく、PFPE膜とガラスとのインターフェース上のSi-O構造は原子価結合を形成する。
【0005】
従来技術では、コーティング方法は、通常、次のとおりである。ガラス中にSi-O構造が大量あることから、PFPEは、ガラスと直接反応して膜を形成する条件を備えているが、ガラス中のSiO質量比は、通常、最大70%超えなく、コーティング効果及び耐久性を向上させるために、一般的に以下の2つのコーティング方法を採用する。
【0006】
a)乾式法:真空コーティング法とも呼ばれ、真空で、現在のガラスの表面にSiOコーティング層を1層コーティングして、Si-O比率を高めてから、真空環境でPFPEを1層コーティングする。
【0007】
b)湿式法:スプレーコーティング法とも呼ばれ、大気中で、プラズマを用いてガラスの表面を衝撃し、ガラスの表面を洗浄する一方、ガラスの表面を粗くして、微視的レベルでガラスの表面積が大きくなり、Si-O比率を間接的に高めてから、PFPE溶液を1層スプレーする。
【0008】
既存の特許文献1には、透明微結晶化ガラスの表面の防汚コーティング層の構造が開示されており、微結晶化ガラス本体(1)の外表層には、厚さが4~30nmの無色透明な防汚層(11)が付着し、防汚層(11)はフルオロシリコーン加水分解化合物であることを特徴とする。ここで、当該特許には、防汚層(11)の下方に厚さが3~20nmの二酸化ケイ素層があることを特徴とする前記微結晶化ガラスデバイスが記載されている。
【0009】
しかし、当該特許で主に保護されている微結晶化ガラスの特徴は、「前記微結晶化ガラス本体の結晶相とガラス相との質量比は0.25~1.2である」ことであり、結晶化度が中間レベルと下レベルの微結晶化ガラスであり、当該微結晶化ガラス本体のガラス相は結晶相の外周を均一に取り囲み、前記ガラス相中には、ナトリウム、リチウム、カリウムなどのアルカリ金属イオンがあり、前記ガラス相のアルカリ金属酸化物の質量を(アルミナの質量にシリカの質量を加えた質量)で割った値が6%~30%であり、当該微結晶化ガラスの結晶化度は20~54.54%であり、当該微結晶化ガラスにおけるガラス相にSi-O構造が依然として十分多いため、PFPEと微結晶化ガラスとのより良い原子価結合の形成を支持できる。しかし、当該発明では、結晶化度の高い微結晶化ガラスについて関連課題が言及されていない。
【0010】
既存の特許文献2は、イオン交換によるプレストレスのため、ガラスの表面の疎水疎油性コート層又は指紋防止性コート層の結合力、耐久性が悪い問題:「現在、化学的プレストレス化により、疎水疎油性コート層又は指紋防止性コート層の耐久性が著しく低下することが見出された。これは、例えば対応するテストや中性塩噴射テストにおいて、より短い耐久性を示し、当該テストは、例えば特許文献3及び特許文献4に具体的に説明された。」について、次のような解決案を開示した。本発明は、このような目的を基に、従来技術の欠点を解決するだけでなく、化学的にプレストレスがかけられるとともに十分な長期耐久性を備えた疎水疎油性コート層を有するガラス基板も提供する。さらに、塗布されるとともに化学的にプレストレスがかけられたガラス基板を製造するための方法を提供するべきである。上記の目的は、次のような驚くべき方法で達成される。即ち、イオン交換の方法でガラスの全ての層を通過してガラス基板に化学的にプレストレスをかけ、続いてガラス基板上の機能コート層を活性化させてからこそ、指紋防止コート層として機能する疎水疎油性コート層を塗布する。つまり、まず、イオン交換されていないガラスに「機能性コート層」を作ってから、「イオン交換」を行い、続いて「機能性コート層を活性化」させてから、「疎水疎油性コート層のコーティング」を行う。ここで、当該特許では、当該機能層、特に最上の機能層に、1種以上のSi化合物を含むことが好ましく、1種以上の酸化ケイ素化合物を含むことが特に好ましく、Si化合物は、例えばシリコン酸化物から選択されてもよいことが特に有利であることが見出された、ことが言及された。好ましくは、シリコン酸化物SiOx(xは2以下)と、SiOCと、SiONと、SiOCN及びSiと、任意の量でSiOx(xは2以下)、SiOC、SiON及びSiOCNと結合できる水素とである。好ましい一実施形態において、当該機能層、特に最上の機能層は、シリコン混合酸化物層である。したがって、当該特許には、「機能コート層」が主にSi-O構造を含有する無機成分で構成されることが開示された。当該特許では、「化学的にプレストレスをかけることにより、通常、疎水疎油性コート層の長期的な安定性を弱める。本発明により当該欠陥が解消された。本発明によれば、化学的にプレストレスをかけた後、少なくとも1つの機能層の表面を活性化させることにより、当該機能層の表面と塗布対称の疎水疎油性コート層との間に相互作用が発生する」ことが指摘され、かつ、当該特許では、最上層の機能層の表面にカリウムイオンが蓄積されることにより、例えばSiを含有する機能層のSi-OHなどのような有効な結合位置の数が減り、そして、これで疎水疎油性コート層の共有結合を妨げ、それにより、疎水疎油性コート層の接着性が悪く且つ長期安定性が低いと考える。また、最上層の機能層の表面は、通常、有機又は無機の汚染物に汚染される負担があり、これらの汚染により所望の相互作用が妨げられてしまう。したがって、当該特許は、イオン交換の順番を調整し、表面の活性化を用いてSi-Oを活性化させて疎水疎油性コート層の結合能力を高め、つまり、当該特許は、完全に、Si-O構造が豊富なガラス及びSi-O構造が豊富な機能的下塗り層に対する技術的最適化に取り組んでいる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】中国実用新案第208747932号明細書
【特許文献2】中国特許出願公開第106715352号明細書
【特許文献3】国際公開第2012/163946号
【特許文献4】国際公開第2012/163947号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明の従来技術におけるガラスコーティング原理は、いずれも無機ガラスをベースとする撥水撥油コーティングに基づくものであり、一般的に言えば、撥水撥油性効果は、初期水滴角テストが110°以上、約115°を達成でき、5000回の摩擦後も水滴角は依然として100°以上を達成できるが、結晶化度が60%よりも大きい高結晶化度の微結晶化ガラスに対しても、従来技術の原理と手法(表面活性化を用いてSi-Oを活性化させて疎水疎油性コート層の結合能力を高める)にしたがって行うと、効果が非常に悪く、初期水滴角は、一般的に、100°程度までしか達成できず、2500回の摩擦後に水滴角はわずか60°程度になる。微結晶化ガラスもガラスの一種であり、その成分中のSi-Oの含有量は一般の無機ガラスよりも少なくはないが、このような大きな違いが現れる原因は、従来の手法はいずれもSi-O構造が豊富なインターフェースについて作成された撥水撥油コーティング層解決案であり、これらの解決案は、高結晶化度の状況又はインターフェースにガラス相又はSi-O構造が欠如する状況で効果的に機能できないことであると理解できる。
【0013】
上記のような従来の技術的問題を解決するために、本発明は以下のような技術的解決手段を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0014】
表面に撥水撥油複合コーティング層を含有する微結晶化ガラスであって、前記微結晶化ガラスは、最外面から順番に撥水撥油層、中間層及び下塗り層を含み、ただし、前記中間層は、結晶格子エネルギーを700~3000kJ/mol含有するイオン結晶中間層であり、前記下塗り層は、Si-O結合を含有する化合物又は混合シリコン酸化物層を含むことを特徴とする。
【0015】
好ましくは、上記のいずれかの微結晶化ガラスについて、結晶化度は、60%よりも大きくてもよいし、又は70%よりも大きくてもよいし、又は80%よりも大きくてもよい。
【0016】
好ましくは、上記のいずれかの微結晶化ガラスについて、前記中間層は、結晶格子エネルギーが725~3000kJ/mol、より好ましくは770~3000kJ/molのイオン結晶を元のコーティング膜物質として形成された中間層であるか、
又は、結晶格子エネルギーが9400~11400KJ/molの化合物、好ましくはケイフッ化物を元のコーティング膜物質として形成されたフッ化物中間層である。
【0017】
好ましくは、上記のいずれかの微結晶化ガラスについて、前記中間層は、フッ化アルカリ金属類又はフッ化アルカリ土類金属化合物を含有するか、又はケイフッ化アルカリ金属及びケイフッ化アルカリ土類金属から選択されたイオン結晶を、元のコーティング膜物質として形成された中間層である。
【0018】
好ましくは、上記のいずれかの微結晶化ガラスについて、前記中間層は、結晶格子エネルギーが1050KJ/molよりも、好ましくは940kJ/molよりも小さいイオン結晶中間層である。
【0019】
好ましくは、上記のいずれかの微結晶化ガラスについて、前記中間層は、LiF、NaF及び/又はKFのうちの少なくとも1種のイオン結晶を元のコーティング膜物質として形成された結晶であるか、又はMgF、CaF、SrF又はBaFのうちの少なくとも1種を元のコーティング膜物質として形成された中間層であるか、又はLiSiF、NaSiF、KSiF、RbSiF、CsSiF、BeSiF、MgSiF、CaSiF、SrSiF、又はBaSiFのうちの少なくとも1種を元のコーティング膜物質コーティング膜として形成されたフッ化物中間層であり、NaF又はKFのイオン結晶を元のコーティング膜物質として形成された中間層が好ましい。
【0020】
好ましくは、上記のいずれかの微結晶化ガラスについて、前記中間層は、極性又は非極性化合物であり、極性化合物であることが好ましい。
【0021】
好ましくは、上記のいずれかの微結晶化ガラスについて、前記中間層の厚さは1~5nmであり、1~2nmであることが好ましい。
【0022】
好ましくは、上記のいずれかの微結晶化ガラスについて、前記下塗り層の厚さは3~15nmであり、5~10nmであることが好ましく、5~8nmであることがより好ましい。
【0023】
好ましくは、上記のいずれかの微結晶化ガラスについて、前記撥水撥油層の厚さは10nm以上であり、15nm以上であることが好ましく、10nm~25nmであってもよい。
【0024】
好ましくは、上記のいずれかの微結晶化ガラスについて、前記の下塗り層が多層である場合、前記Si-O結合を含有する化合物又は混合シリコン酸化物層を最外面の下塗り層とし、前記混合シリコン酸化物は、シリコン酸化物SiO(xは2以下)と、少なくとも1種のケイ素元素以外の他の元素の酸化物及び/又はフッ化マグネシウムとの混合物であり、
前記他の元素は、アルミニウム、スズ、マグネシウム、リン、セリウム、ジルコニウム、チタン、セシウム、バリウム、ストロンチウム、ニオブ、亜鉛又はホウ素のうちの元素であることが好ましく、前記混合シリコン酸化物がシリコン酸化物SiOとアルミニウムの酸化物との混合物であることがより好ましい。
【0025】
好ましくは、上記のいずれかの微結晶化ガラスについて、前記Si-O結合を含有する化合物は、SiOx(xは2以下)であるか、又は、SiOC、SiON、SiOCN及び/又はSiのうちのいずれか1種の物質又はSiOx(xは2以下)、SiOC、SiON及び/又はSiOCNのうちのいずれか1種の物質と任意の比率で結合する水素結合である。
【0026】
好ましくは、上記のいずれかの微結晶化ガラスについて、前記撥水撥油層はフッ素系ポリマー層であり、分子量が2000以上の含フッ素ポリエーテルシリコン酸化物層が好ましく、前記コーティング層の厚さは10nm以上である。
【0027】
好ましくは、上記のいずれかの微結晶化ガラスについて、前記微結晶化ガラスの組成成分は、下記のmol%比率の酸化物、
40~75%、好ましくは45~72%のSiOと、
2~20%、好ましくは4~15%のAlと、
0~20%、好ましくは0.4~1.6%のBと、
0~10%、好ましくは0.8~1.5%のPと、
0~15%、好ましくは0.9~4%のZrO+TiOと、
0~5%、好ましくは0.1~2%のMgOと、
0~4%、好ましくは0.9~3.0%のZnOと、
0~5%、好ましくは0.01~1%の希土類酸化物と、
0~5.5%のNaOと、
0~4%のKOと、
2~34%、好ましくは10~34%のLiOと、
4~40%、好ましくは15~40%のNaO+KO+LiOと、を含有する。
【0028】
好ましくは、上記のいずれかの微結晶化ガラスについて、前記希土類酸化物は、CeO、Y、La、Ta、Tm及びNdから選択される1種以上又は2種以上のものである。
【0029】
好ましくは、上記のいずれかの微結晶化ガラスについて、前記微結晶化ガラスは、着色添加剤をさらに含有してもよく、前記着色添加剤は、Nd、Fe、CoO、NiO、V、MnO、TiO、CuO及びCrから選択される1種以上のものであることが好ましい。
【0030】
好ましくは、上記のいずれかの微結晶化ガラスについて、着色添加剤のガラスの全成分に対するモル含有量は5%を超えないことが好ましく、ガラスの全成分に対するモル含有量において、前記着色添加剤が0.5mol%以上のCoO及び/又はCrを含有することが好ましく、Fe、NiO又はMnOから選択される1種以上を1mol%以上含有することがさらに好ましい。
【0031】
好ましくは、上記のいずれかの微結晶化ガラスについて、前記微結晶化ガラスは清澄剤を含有し、前記清澄剤は、As、Sb、SnO、塩化物、フッ化物、SO 含有化合物、及びNO 含有化合物から選択される1種以上のものであることが好ましく、SnO、SO 含有化合物、塩化物、及びNO 含有化合物から選択される1種以上のものであることが好ましく、前記清澄剤の含有量は0~2mol%であることが好ましい。
【0032】
好ましくは、上記のいずれの微結晶化ガラスに対して、前記微結晶化ガラスの主結晶相は、β-石英固溶体、β-スポジュメン固溶体、β-ユークリプタイト、スピネル、ルチル、ムライト、オリビン、エンスタタイト、コージライト、葉長石、ケイ酸リチウム、二ケイ酸リチウム、石英、ジルコニア、磁鉄鉱から選択される1種又は2種以上であり、平均結晶粒径が100nm未満であることが好ましく、50nm以下であることがより好ましく、30nm以下であることが特に好ましい。
【0033】
好ましくは、上記のいずれかの微結晶化ガラスについて、前記微結晶化ガラスはイオン交換されたか又はイオン交換されていないガラスである。
【0034】
さらに好ましくは、上記のいずれかの微結晶化ガラスについて、前記微結晶化ガラスは結晶化度が60%よりも低いガラスセラミックスである。
【0035】
本発明は、上記のいずれかの微結晶化ガラスの製造方法をさらに提供し、それは、
微結晶化ガラスにSi-O含有酸化物又は混合シリコン酸化物層をコーティングして、微結晶化ガラスの表面に下塗り層を形成するステップ1)と、
ステップ1)で得られた下塗り層の表面に中間層をコーティングするステップ2)と、
ステップ2)で得られた中間層の表面に撥水撥油層をコーティングするステップ3)と、を含む。
【0036】
好ましくは、上記の製造方法について、前記コーティングには真空蒸着法が採用される。
【0037】
好ましくは、上記のいずれかの製造方法について、前記微結晶化ガラスはイオン交換された微結晶化ガラスである。
【0038】
好ましくは、上記のいずれかの製造方法について、前記微結晶化ガラスは、下塗り層、中間層及び撥水撥油層をコーティングする前に、
各ガラス原材料を1600±50℃で高温溶解してから、400~650℃でアニールして、均質化された素ガラス板を取得するステップ(I)と、
オーバーフローダウンドロー法、フロート法又は圧延法により、前記素ガラス板から成形素ガラス板を取得するステップ(II)と、
2回の熱処理で前記成形素ガラス板を微結晶化させて微結晶化ガラスプリフォームを取得し、次に、イオン交換されるか又はイオン交換されずそのまま微結晶化ガラスの原材料として、必要な下塗り層、中間層及び撥水撥油層を順番に表面にコーティングするために用いられ、ただし、1回目の熱処理温度は500~1000℃であり、2回目の熱処理温度は550~1100℃であるステップ(III)と、を含む方法で焼成される。
【0039】
好ましくは、携帯電話のディスプレイ、タブレットのディスプレイ、ノートブックのディスプレイ、携帯ゲーム機、ポータブルデジタルデバイス、車載ディスプレイ、フロントガラス又はカメラのディスプレイにおける、上記のいずれかの微結晶化ガラス又は上記のいずれかの製造方法で得られた微結晶化ガラスの適用である。
【0040】
本発明は、微結晶化ガラス又はガラスセラミックスのコーティングインターフェースにSi-O構造が非常に少ない場合でも、強固で耐久性があり、性能が優れた撥水撥油コーティング膜を形成することができ、高結晶化度ガラスがイオン交換されたか否かに関わらず、優れた撥水撥油性を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0041】
図1】PFPE加水分解生成物がガラスに接続する反応過程の図である。
【発明を実施するための形態】
【0042】
微結晶化ガラスの成分は、一般の無機ガラスと非常に似ていると見え、大体いずれもSiO<70wt%であり、従来のコーティング方法にしたがって非常に良好な撥水撥油膜を製造できるようであるが、微結晶化ガラスは、内部に大量の結晶が存在するため、通常、微結晶化ガラスを形成する過程にSiOが結晶に入って構造が変化することにより、Si-Oがうまく遊離して撥水撥油層と結合することができなく、通常、これらの微細な結晶の比率は20~100%であり、つまり、結晶比率が高い場合、撥水撥油コーティング層の品質が低下する主な原因は、微結晶化ガラスのガラス相が減少し、そのインターフェースのSi-Oが大幅に減少することである。本発明は、この「根のない」問題に対する解決案を提供する。
【0043】
具体的には、本発明は、以下の技術的解決手段を提供する。
【0044】
高結晶化度微結晶化ガラス又はガラスセラミックスの表面に対する撥水撥油膜の複合コーティング設計であって、最外面から順番に撥水撥油層→中間層→下塗り層をガラスに形成し、つまり、下塗り層は前記微結晶化ガラス又はガラスセラミックスの内側にあり、撥水撥油層が最外面にある。
【0045】
つまり、本発明の方法では、微結晶化ガラス又はガラスセラミックス結晶化度が60%以上と高い場合でも撥水撥油膜を形成することが実現され、前記微結晶化ガラス又はガラスセラミックスの結晶化度は60%以上であってもよいし、70%以上であってもよいし、特に80%以上であってもよく、無論、本発明は、撥水撥油膜の形成が難しい結晶化度が60%以上と高い微結晶化ガラス又はガラスセラミックスの撥水撥油問題を解決したため、結晶化度が60%以下の微結晶化ガラス又はガラスセラミックスに対しても、本発明の方法で優れた撥水撥油膜の複合コーティング層を形成することができることは当然である。
【0046】
ここで、好ましくは、前記中間層は結晶格子エネルギーが700~3000kJ/molのイオン結晶(結晶格子エネルギーの大きさに応じて、当該中間層としてのイオン結晶層の組成成分を好ましくはフッ化アルカリ金属類及びフッ化アルカリ土類金属に限定する)であり、725kJ/mol以上であることが好ましく、770kJ/mol(放射性のある物質を除く)以上であることがより好ましい。
【0047】
いくつかの一般的なイオン結晶の結晶格子エネルギー/(kJ・mol-1)は、以下の表Aに示すとおりである。
【0048】
【表1A】
【0049】
ここで、好ましくは、前記イオン結晶の結晶格子エネルギーは、1050kJ/mol(基本的には、イオン結晶層をLiF/NaF/KFの3種類のフッ化アルカリ金属類に限定することが好ましい)未満であることが好ましく、940kJ/mol(基本的には、イオン結晶層をNaF/KFの2種類に限定することが好ましい)未満であることがより好ましく、
中間層として、LiSiF、NaSiF、KSiFなどのケイフッ化アルカリ金属及びケイフッ化アルカリ土類金属を用いてもよい。
【0050】
ここで、好ましくは、前記中間層が極性及び非極性化合物(フッ化アルカリ金属類―非極性、及びフッ化アルカリ土類金属―極性が好ましい)であり、
ここで、さらに好ましくは、前記化合物が非極性化合物(フッ化アルカリ金属類―非極性に縮小されることが好ましい)であり、
ここで、好ましくは、前記中間層の厚さは1~5nmであり、1~2nmであることが好ましく、
ここで、好ましくは、前記下塗り層は、Si化合物を含むか又はSi化合物からなり、前記Si化合物は、以下から選択されることが好ましく、
-SiOx(xは2以下)、多層の場合、少なくとも最外面又は最上層はシリコン酸化物を含むか又はシリコン酸化物からなるもの、
-SiOC、SiON、SiOCN及びSi、並びにSiOx(xは2以下)、SiOC、SiON及びSiOCNと任意の比率で結合する水素結合(ここの「水素結合」とは、例えば水分などの空気中の任意の成分とガラスの前記シリコン酸化物とで形成された水素結合を指す)、又は、
-混合シリコン酸化物、シリコン酸化物SiOx(xは2以下)と、少なくとも1種のケイ素以外の他の元素の酸化物及び/又はフッ化マグネシウムとからなり、ただし、他の元素はアルミニウム、スズ、マグネシウム、リン、セリウム、ジルコニウム、チタン、セシウム、バリウム、ストロンチウム、ニオブ、亜鉛、ホウ素から選択される少なくとも1種であることが好ましく、シリコン酸化物SiOx(xは2以下)と少なくとも1種の元素アルミニウムの酸化物との混合物であることが特に好ましく、
ここで、好ましくは、前記下塗り層の総厚さは3~15nmであり、5~10nmであることが好ましく、5~8nmであることがより好ましい。
【0051】
ここで、前記撥水撥油層は、AF層(指紋防止層、anti-fingerprint layer)とも呼ばれ、当該AF層は、フッ素系ポリマーで形成された層であり、前記フッ素系ポリマーは、パーフルオロポリエーテル(perfluoropolyether)、フッ化ビニリデン(Vinylidene fluoride)ポリマー、テトラフルオロエチレン(tetrafluoroethylene)ポリマー、ヘキサフルオロプロピレン(hexafluoropropylene)ポリマー、クロロトリフルオロエチレン(chlorotrifluoroethylene)ポリマー及びその組み合わせから選択されてもよく、パーフルオロポリエーテル(perfluoropolyether、PFPEと略称)であることが好ましい。さらに好ましくは、前記撥水撥油層は分子量が2000以上のPFPEであり、コーティング層の厚さは10nm以上であり、15nm以上であることが好ましく、10nm~25nmであってもよい。
【0052】
また、好ましくは、以上の前記微結晶化ガラスは透明なもの又は不透明なものであり、イオン交換前のもの又はイオン交換後のものであり、プレストレスあるもの又はプレストレスないものである。
【0053】
また、好ましくは、以上の技術的解決手段のうちの少なくとも1項に記載の方法によれば、微結晶化ガラスは、以下のガラスの組成成分を有するか又はそれからなるガラス(mol%で)であることを特徴とし、
40~75%、好ましくは45~72%のSiOと、
2~20%、好ましくは4~15%のAlと、
0~20%、好ましくは0.4~1.6%のBと、
0~10%、好ましくは0.8~1.5%のPと、
0~15%、好ましくは0.9~4%のZrO+TiOと、
0~5%、好ましくは0.1~2%のMgOと、
0~4%、好ましくは0.9~3.0%のZnOと、
0~5%、好ましくは0.01~1%の希土類酸化物と、
0~5.5%のNaOと、
0~4%のKOと、
2~34%、好ましくは10~34%のLiOと、
4~40%、好ましくは15~40%のNaO+KO+LiOと、である。
【0054】
ここで、前記希土類酸化物は、CeO、Y、La、Ta、Tm及びNbから選択される1種又は2種以上のものである。
【0055】
また、いくつかの好ましい実施形態において、上記のガラスの組成成分は、例えばNd、Fe、CoO、NiO、V、MnO、TiO、CuO及びCrの着色酸化物の添加剤と、含有量が0~5mol%であるか又は「黒色ガラス」の場合には含有量が0~5mol%である希土類酸化物と、例えばAs、Sb、SnO、Cl含有化合物、F含有化合物、SO 含有化合物、NO 含有化合物のうちの1種以上のものである含有量が0~2mol%の清澄剤と、を含んでもよい。
【0056】
また、いくつかの好ましい実施形態において、以上の技術的解決手段のうちのいずれか1項に記載の方法によれば、微結晶化ガラスの主結晶相は、β-石英固溶体、β-スポジュメン固溶体、β-ユークリプタイト、スピネル、ルチル、ムライト、オリビン、エンスタタイト、コージライト、葉長石、ケイ酸リチウム、二ケイ酸リチウム、石英、ジルコニア、磁鉄鉱から選択される1種以上のものであることが好ましく、ここで、平均結晶粒径は、100nm未満であることが好ましく、50nm以下であることが特に好ましく、30nm以下であることが非常に特に好ましいことを特徴とする。
【0057】
本発明は、例えばSiO層又はSiOx層又はシリコン酸化物含有混合物層(まとめて「シリコン酸化物層」と呼ばれ、ここではSiOを例としたが、実際はSiOに限定されない)の下塗り層+中間層(「RF層」と略称し、NaFを例とする)+PFPEなどの撥水撥油層の組合せを使用し、ここで、SiO層は厚すぎてはならず、概ね5nmで、15nmを超えず、SiOは微視的レベルでネット状又はチェーン状の構造を呈し、5nmのSiOコーティング層は非常に薄く、SiOコーティング層には、その構造のメッシュ(コーティングが厚すぎると、SiOコーティング層が互いに重なり合うことによりメッシュがなくなる)が保持されることができ、続いて、より薄い中間層RFをコーティングし、RFは結晶格子エネルギーがあまり高くない化合物、特に非極性化合物であり、RFとしては結晶格子エネルギーがあまり高くない化合物が選択され、RFは大気中で水と反応してR、F、H、OHになりやすい。
RF+HO⇔R+OH+H+F
【0058】
下塗り層に空洞があるため、R、F、H、OHは微結晶化ガラスのインターフェースまで非常に容易に浸透して結晶のSi-O-Si構造と反応することができ、結晶構造のSi-Oを開くと、撥水撥油層とよりよく反応でき、成膜する基礎を形成し、
≡Si-O-Si≡+R+OH→≡Si-OH+RO-Si≡、
≡Si-O-Si≡+H+F→SiF+HO→HSiO+HSiF
微結晶化ガラスインターフェース及び下塗り層に、微結晶化ガラスベースに密着するSi-Oが十分生成されると、最上層の撥水撥油層PFPEと反応時に、十分な原子価結合が生成され、それにより、撥水撥油層の性能と耐摩耗性を大幅に向上させる。
【0059】
結晶格子エネルギーが適切な中間層は、本発明の動作原理の鍵であり、結晶格子エネルギーがやや低いと、中間層が活性であり、反応が起こりやすく、結晶格子エネルギーが適度である場合こそ物質の安定性を保つことができるため、本発明の中間層は、結晶格子エネルギーが一定範囲内にあることを必要とし、当該結晶格子エネルギーの範囲内にある中間層材料は、加水分解性及び活性がいずれも依然として高く、加水分解後に一定の腐食性があるので、厚くコーティングしてはならず、厚くコーティングすると逆に効果が悪く、一般的に言えば、5nmを超えてはいけなく、厚すぎると、全反応過程でその反応生成物を全部消費することができず、ガラスを浸食して、ガラスの表面の深刻な腐食点になり、コーティング層の耐候性の低下にもつながる。
【0060】
用語「微結晶化ガラス又はガラスセラミックス」について
本発明において、前記「微結晶化ガラス」及び「ガラスセラミックス」の両方は、同じ意味を有し、結晶相のないガラス又はアモルファスのガラスとは異なって、いずれも結晶相を有するガラスを言う。したがって、本発明の明細書に使用されている用語「微結晶化ガラス又はガラスセラミックス」、「微結晶化ガラス」又は「ガラスセラミックス」らは、いずれも同じ意味を有する。
【0061】
結晶格子エネルギーについて
結晶格子エネルギーとは、標準状態で、イオン結晶がプラスイオンガス及びマイナスイオンガスになるときに吸収されるエネルギーを言い、結晶格子の安定性を測定するためのパラメータである。結晶格子エネルギーの大きさに影響を与える要因には、イオン半径、イオン電荷及びイオンの電子層構成などがある。秦正龍、劉長君による著書『アルカリ土類金属ハロゲン化物の結晶格子エネルギー及び磁化率に関するトポロジー研究』における結晶格子エネルギーの計算方法を参照して、フィッティングを行って得られた式は、以下のとおりであり、
U=1129.1-441.8F+3600.5F、
F=Σ(E×E×E×…)-0.5
Fは、トポロジー指数係数であり、Eは、価電子エネルギー準位値である。
【0062】
当該方法で計算して取得したフッ化物結晶格子エネルギー(KJ/mol)は、表Bに示すとおりである。
【0063】
【表1B】
【0064】
当該方法を適用して、フィッティングして取得した回帰式の相関性はよく、同様に、ケイフッ化物の結晶格子エネルギーの計算にも適用でき、結果は表Cに示すとおりである。
【0065】
【表1C】
【0066】
なお、コーティング膜の元の物質と、最終的にガラスインターフェースの下塗り層に形成された物質とは、必ずしも同一の概念ではない。上で計算したケイフッ化アルカリ金属RSiFを例とすると、通常、RSiFは、常温では比較的安定した固体であり、コーティングする際に300℃程度まで加熱されると分解し、RSiF―>2RF+SiF(ガス)、つまり、結晶格子エネルギーが高い物質のように見えるが、実際には成膜すると、重要な役割を果たす物質は既に質的変化を起こしており、その結晶格子エネルギーは、本発明が主張する最適な動作範囲内にある。例えば、ケイフッ化ナトリウムNaSiFは、無臭で無味の白色粒子又は結晶性粉末であり、灼熱(300°C上)後、フッ化ナトリウムNaF及び四フッ化ケイ素SiFに分解する。
【0067】
上記の本発明の原理の説明に基づいて、コーティングされる微結晶化ガラスのインターフェースがイオン交換された否かは、本発明の実施及び効果に影響を与えない。ガラス内の小さいイオンは、必ずイオン移動が可能な状態でこそ外部の塩浴中の大きいイオンと交換することができる。イオンの移動を実現するには、温度がキー要因であり、一般的に言えば、ガラス相は、比較的低い温度で(例えば歪点の温度以下、すなわち、約摂氏200度から開始し、例えば360℃)イオン移動を実現するのが比較的容易であり、微結晶相のアルカリ金属元素は、移動可能なイオンになる前には、結晶構造の一部分であり、より高いエネルギーで結晶構造による制限を解消してからこそ移動することができて、自由交換のイオンになり、この温度は、通常、ガラスの軟化点(例えば600摂氏度以上)により近い。したがって、通常、イオン交換の大部分は、ガラス相で起こり、塩浴の温度が極めて高い場合にも、先にガラス相で起こり、次に結晶で起こる。
【0068】
本発明の高結晶化度微結晶化ガラスに対するガラス相が特に少なく、希少なガラス相があるとともに、イオン交換が発生したとしても、ガラス相に入るイオンが非常に少ないので、ガラス相におけるSi-Oの構造及び配位を変える能力が極めて低く、局所的であるため、本発明に記載のコーティングの原子価結合の形成への影響が非常に少なく、つまり高結晶化度ガラスは、イオン交換されたか否かに関わらず、そのインターフェースにはいつもSi-O構造が欠如しており、本発明は、このような適用シーンに対してなされた発明であり、高温を採用すると、結晶内のイオンがイオン交換に関与し、つまり結晶が破壊されるため、結晶内のSi-Oが開き、本発明に記載のコーティングの原子価結合の形成のみに寄与する。本発明が解決しようとするのは、コーティング膜のインターフェースにSi-O構造が非常に少ない場合、どのように強固で耐久性があり、性能が優れた撥水撥油コーティング膜を形成するかであり、高結晶化度ガラスは、イオン交換されたか否かに関わらず、本発明の実施に影響を与えるまでに固いものではない。
【0069】
本発明の表面に撥水撥油複合コーティング層を含有する微結晶化ガラス又はガラスセラミックスの製造方法について、具体的な説明は以下のとおりである。
【0070】
組成成分が、
40~75%、好ましくは45~72%のSiOと、
2~20%、好ましくは4~15%のAlと、
0~20%、好ましくは0.4~1.6%のBと、
0~10%、好ましくは0.8~1.5%のPと、
0~15%、好ましくは0.9~4%のZrO+TiOと、
0~5%、好ましくは0.1~2%のMgOと、
0~4%、好ましくは0.9~3.0%のZnOと、
0~5%、好ましくは0.01~1%の希土類酸化物と、
0~5.5%のNaOと、
0~4%のKOと、
2~34%、好ましくは10~34%のLiOと、
4~40%、好ましくは15~40%のNaO+KO+LiOとであるガラスを、以下の方法で焼成して、微結晶化ガラス又はガラスセラミックスを取得する。
【0071】
ここで、前記微結晶化ガラス又はガラスセラミックスは、
各ガラス原材料を1600±50℃で高温溶解してから、400~650℃でアニールして、均質化された素ガラス板を取得するステップ(I)と、
オーバーフローダウンドロー法、フロート法又は圧延法により、前記素ガラス板から成形素ガラス板を取得するステップ(II)と、
2回の熱処理で前記成形素ガラス板を微結晶化させて微結晶化ガラスプリフォームを取得し、ここで、1回目の熱処理は500~1000℃温度で0.5~5h行われ、2回目の熱処理は550~1100℃温度で0.5~6h行われるステップ(III)と、
前記微結晶化ガラスプリフォームはイオン交換されるか又はイオン交換されずそのまま、必要な下塗り層、中間層及び撥水撥油層を順番に表面にコーティングするために用いられるステップ(IV)と、を含む方法で焼成して取得する。
【0072】
ここで、前記のイオン交換は、常法で行わればよく、例えば、質量基準に準じて、10~75wt%のNaNO及び25~90wt%のKNOを含有する混合溶融塩を用いて、380~500℃の温度範囲内でイオン交換を5~10h行ってもよい。
【0073】
具体的に言えば、当該焼成方法は、先にガラス原材料を量って1600±50℃などの高温で溶解し、次に、約400℃~650℃でアニールした後、ガラスを均質化させて、微結晶化ガラス基体を成形するステップを含み、微結晶化ガラス基体は素ガラス板とも呼ばれ、結晶化処理が未だ行われていないガラス板であり、微結晶化ガラス基体には結晶が含まれていない。その高温粘度及び材料特性に応じて、オーバーフローダウンドロー法、フロート法、圧延法などの方法を用いて成形することができ、取得した素ガラス板の厚さは0.1~5mmの間にある。さらに、ブロック状に成形してアニールした後に切断することにより、板状に成形することができる。
【0074】
微結晶化ガラス基体が成形された後、微結晶化ガラス基体に対して熱処理を2回行って微結晶化を行い、微結晶化ガラスプリフォームを製造することができ、ここで、1回目の熱処理は約500~1000℃温度で0.5~5h行われ、2回目の熱処理は約550~1100℃温度で0.5~6h行われる。結晶化後、必要な微結晶化ガラス又はガラスセラミックスが形成され、次に、イオン交換された後又はイオン交換されずそのまま真空コーティング機PVDに入り、コーティングのパラメータ条件を設定しておき、下塗り層、中間層及び撥水撥油層の順にコーティングする。真空コーティング機内のフローは、ガラスローディング-真空引き-プラズマ洗浄-蒸着-大気開放(真空から大気圧)-アンロードである。
【0075】
以下、本発明の化学強化ガラスの製造及び本発明の化学強化ガラスの応力性能特徴について、実施例で詳細に説明する。
【0076】
[第一部分の実施例:ガラス製造実施例]
実施例1を例として、どのようにガラス基材を製造するかについて説明する。
【0077】
(1)表1に示す実施例1の各材料を混合して、混合材料を白金るつぼに入れ、昇降式高温炉にて1600℃に保温しながら5h溶解し、続いて、予熱済みのステンレス金型に流し込んでから、アニール炉に入れ、580℃に保温しながら24hアニールして、ガラスの内部応力を除去する。アニール終了後のガラスブロックを、6面に余分な部分をおいてカットしてガラスブロックを取得しから、ワイヤー切断機、CNC雕刻機、平面研削盤及びバフ研磨機を用いて、正確なサイズ切断、平面研削及びエッジスイープを行って、サイズが155mm×78mm×0.65mmを素ガラス板取得する。
【0078】
ここで、上記の工程で使用される機器の型番についての説明は、
マルチワイヤー切断機:ch5625、泰州市晨虹CNC機器製造有限会社、
CNC工作機械雕刻機:CN-650、山東馳諾CNC機器有限会社、
平面研削盤:YJ-13B6LD、湖南寧晶機械有限会社、及び、
バフ研磨機:YJ-13B6PD、湖南寧晶機械有限会社、である。
【0079】
(2)まず、昇降式高温炉で、素ガラス板に対して650℃で1回目の熱処理を3h行って結晶核を形成し、次に、730℃で2回目の熱処理を3h行って結晶を析出することにより、ガラスセラミックスを製造し、ガラスセラミックスに対して、結晶化度、主結晶相と副結晶相タイプである結晶タイプ、主結晶相と副結晶相の比率、及び平均結晶粒径を含む結晶分析を行うとともに、ガラスセラミックス(以下、「イオン交換されていないガラスセラミックス」とも呼ばれる)のビッカース硬度、破壊靭性、可視光平均透過率及びヘイズをテストする。
【0080】
(3)ガラスセラミックスに対してイオン交換を行い、溶融塩としては40wt%のNaNOと60wt%のKNOとの混合塩浴を用い、強化温度(即ちイオン交換温度)は380℃で、強化時間は9hであり、強化が終了した後、取り出して洗浄して、強化ガラスセラミックス(以下、「イオン交換が行われたことのあるガラスセラミックス」とも呼ばれる)を取得する。
【0081】
(4)取得した強化ガラスセラミックスに対して該当する特徴テストを行い、当該特徴テストはヘイズ、可視光平均透過率、表面圧縮応力、圧縮応力の深さ及びヤング率を含み、具体的なテスト結果は表3に示すとおりである。
【0082】
ここで、結晶化度、主結晶相、副結晶相、平均結晶粒径、ビッカース硬度、破壊靭性、可視光平均透過率、ヘイズ、表面圧縮応力、圧縮応力の深さ及びヤング率の定義及びテスト方法について、以下のように具体的に説明する。
【0083】
ここの表面圧縮応力とは、ガラスが化学強化された後、表面で半径の小さいアルカリ金属イオンが半径の大きいアルカリ金属イオンに置き換えられることを意味し、半径の大きいアルカリ金属イオンの混み合い効果により、ガラスの表面に圧縮応力が発生され、表面圧縮応力と呼ばれる。
【0084】
結晶化度:XRD回折機器の分析により回折ピーク曲線が得られ、ここで、入射角度の範囲は2Theta=10~50度であり、走査速度は6度/minであり、当該実施例に使用される機器は島津XRD-6000である。結晶化度を式(1-1)で計算し、
【数1】

式において、Iは、微結晶化ガラスサンプルの2Theta=10~50度の結晶部分の回折積分強度であり、
は、微結晶化ガラスサンプルの2Theta=10~50の非結晶部分の回折積分強度であり、
Kは、微結晶化ガラスサンプルの2Theta=10~50の結晶部分及び非結晶部分の単位質量あたりの相対散乱係数である。
【0085】
主結晶相の比率:ガラスセラミックスにおいて、質量基準で、他の結晶相に対して割合が最も高い結晶相である。
【0086】
副結晶相の比率:主結晶相以外に、ガラスセラミックスのセラミックス部分には1種以上の他の結晶相がさらに存在してもよく、副結晶相の質量%は主結晶相の質量%よりも小さい。
【0087】
平均結晶粒径:10万倍~100万倍の拡大倍率で観察したときの前記微結晶化ガラスの結晶粒の長さの平均値である。透過型電子顕微鏡(型番:サーモフィッシャーThermoFisher Scientific(旧FEI)Talos F200S)で観察して取得する。測定時に、ある部位の結晶粒子について拡大写真を撮り、当該拡大写真エリア内には有限の結晶粒があり、縮尺で有限の結晶粒のサイズを標記し、続いて平均値を求める。本発明の実施例では、測定時の拡大倍率は50万倍である。
【0088】
ビッカース硬度:ビッカース硬度計を使用して、そのビッカース硬度をテストし、『GB/T 37900‐2019超薄ガラスの硬度及び破壊靭性のテスト方法小負荷ビッカース硬度圧痕法』標準にしたがってテストし、当該実施例に使用される機器は、デジタル表示小負荷ビッカース硬度計VTD405(北京沃威テクノロジー有限会社)である。
【0089】
破壊靭性:へこみ測定結果を表す。テストサンプルを研磨した後、ビッカース硬度計のダイヤモンド圧子を用いて、300Nの荷重pでサンプルを10秒間押し付け、圧痕を作り、こうすると、対応する亀裂が圧痕の頂点に生じ、圧痕荷重P及び亀裂拡張の長さCに基づいて破壊靭性値KICを算出する。具体的な破壊靭性は、『GB/T 37900‐2019超薄ガラス硬度及び破壊靭性のテスト方法小負荷ビッカース硬度圧痕法』標準に従ってテスト・計算して取得する。
【0090】
表面圧縮応力(MPa):日本ORIHARA社製の導波路光学応力計FSM‐6000LEを使用して、測定対象ガラスの表面圧縮応力をテストする。
【0091】
圧縮応力の深さ(μm):測定対象ガラスの表面から圧縮応力が零の位置までの距離である。
【0092】
ヘイズ:入射光から2.5°以上ずれた透過光強度の全透過光強度におけるパーセントであり、測色計(型番CM~3600A)を使用して測定する。
【0093】
可視光透過率:可視光の波長帯範囲内で、入射光束が被照射面又は媒体の入射面から他方の一面を出る過程において、物体に投射されて透過する放射エネルギーと物体に投射される総放射エネルギーとの比率である。
【0094】
可視光平均透過率:特定の波長範囲内で、10nm波長間隔で各波長での透過率を測定し、前記測定された各波長での透過率の合計を測定された各波長の透過率の数で割って取得する値である。例えば、360~400nm波長の平均透過率の計算方法は、波長360nm、370nm、380nm、390nm、400nmの透過率をそれぞれ測定し、測定された360~400nm透過率の数は5であり、上記透過率の合計を5で割って、360~400nm波長の平均透過率を取得する。
【0095】
ヤング率(Gpa):音波法を用いてテストして、サンプルのヤング率を取得し、機器はIET-1600P高温弾性率テスト機を使用する。
【0096】
[実施例2~13]
製造方法のステップは実施例1と同じであり、ここで、異なる点の詳細は表1、表2及び表3を参照でき、つまり、具体的なガラスレシピの各原材料の組成成分、ステップ(2)の熱処理工程条件、取得されたガラスセラミックスに対する性能テスト結果、及びステップ(3)のイオン交換工程条件及び取得された強化ガラスセラミックスに対する性能テスト結果の詳細を、表1、表2及び表3に示す。
【0097】
【表1】
【0098】
【表2-1】

【表2-2】

【表2-3】

【表2-4】

【表2-5】
【0099】
上記の表2から分かるように、本発明で得られた素ガラスを熱処理して得られたガラスセラミックスの結晶化度は、最低で61.2%であり、最高で90.35%であり、可視光透過率は89~92%の間にあり、平均結晶粒径は15.7nm~25.5nmの間にあり、ヘイズは0.09~0.20%であり、ビッカース硬度は718~796HVであり、破壊靭性は1.4~1.9MPa・m1/2である。
【0100】
【表3-1】
【0101】
上記のガラスの組成成分から分かるように、ガラスレシピに希土類酸化物が含有されてもよく、具体的に言えば、本発明に、CeO、Y、La、Ta、Tm、Nbから選択される任意の1種又は2種以上のものを添加してもよく、これらの希土類酸化物の含有量は、通常5mol%を超えなく、また、必要に応じて着色剤及び清澄剤を添加してもよく、具体的に言えば、上記のガラスの組成成分において、Nbは着色剤として作用し、本発明では、Nbに加え、Nd、Fe、CoO、NiO、V、MnO、TiO、CuO、CeO及びCrのいずれか1種以上の物質を着色剤として添加してもよく、着色剤を添加した後は、ガラスの可視光透過率が低下し、添加される着色剤が多いほど、透過率が低くなり、一般に、添加比率は5mol%を超えなく、1mol%以上を添加すると、ガラス全体の色及び透過率に顕著な変化が生じ、着色剤を過剰に添加すると(例えば約5mol%の場合)、微結晶化ガラスの結晶化度及び結晶サイズに影響を与えてしまう。本発明では、上記の実施例の全成分に加え、Fe、NiO、MnOと他の着色剤との任意比率の任意の組合せを1mol%追添加することにより、ガラスが黒色を呈し、CoO、Crと他の着色剤との任意比率の組合せを0.5mol%以上添加することにより、ガラスはブルー相を帯びた黒色を呈する。試用される着色剤が5mol%を超えないと、ガラスの他の性能に影響を与えない。
【0102】
本発明のガラスにおいて、実際の融解状況に応じて、清澄剤を単独で使用しても、組み合わせて使用してもよく、清澄剤は、As、Sb、SnO、含SO の化合物、フッ化物又は塩、塩化物又は塩、及び硝酸塩から選択される1種以上のものである。ここで、As及びSbは清澄剤として、非常に良い清澄効果を有するが、一定の毒性があるため好ましくはなく、フッ化物も清澄剤として使用することができるが、その腐食性のために好ましくはなく、通常、SnO、SO(例えばNaSO)、Cl化合物(例えばNaCl)、及びNO 含有化合物(例えばNaNO)のうちの単一物質又は組み合わせが従来の清澄剤であり、一般的に1mol%を超えない。
【0103】
[第二部分の実施例:撥水撥油複合コーティング層の製造の実施例]
1.実施例4のイオン交換されていないガラスセラミックス及びイオン交換されたガラスセラミックスのそれぞれをガラス基材として複合コーティング層を形成する
第一部分の実施例4で製造して得られる素ガラス、即ちイオン交換されてないガラスセラミックスのロットをガラス基材(即ちステップ(3)のイオン交換処理を行っていない)(番号はそれぞれ#4‐A1から4‐A15である)及びイオン交換されたガラスセラミックス(即ちステップ(3)のイオン交換処理を行った)をガラス基材(番号はそれぞれ#4‐B1から4‐B15である)として、前記SiO、NaF及びAF膜を含む複合コーティング層を形成し、上記のイオン交換されていないガラスセラミックス(番号はそれぞれ#4‐A16から4‐A18である)及びイオン交換されたガラスセラミックスをガラス基材(番号はそれぞれ#4‐B16至4‐B18である)として、それぞれ、SiO及びAF膜を含む複合コーティング層しか形成しない。具体的に言えば、表4‐1に記載の真空コーティング機器、表4-2のコーティング条件(注:各実施例において、目標コーティング層の厚さに応じてコーティング時間を制御し、目標厚さを達成すると、コーティングを停止する)を用いて、かつ、下記方法にしたがって複合コーティング層を形成し、超音波洗浄(フラットブラシで洗浄してもよい)でガラス基材表面をそれぞれ洗浄し、ガラス基材の表面を洗浄した後、真空コーティング法を用いて基材表面に基本的に均一な各膜層を順番に形成し、ここで、真空コーティング過程は、コーティング対称のガラス試料を傘型コーティング棚に載せてから、傘型コーティング棚をテーブルワークホルダーに入れ、真空コーティング機の2つの電子銃るつぼ内(韓一真空2050型の電子銃真空コーティング機を用いる)に、SiO及びNaFのコーティング材料を混合せずにそれぞれ別々に入れて、材料をるつぼに充填するとともに、るつぼ口の表面と平らにし、蒸着防止モリブデンボート内にAF膜(AF膜(Anti-Fingerprint Glass、指紋防止膜))を形成するためのAF膜材料(600mlのAF液体をスチールウールが入れられているるつぼ内に滴下し、AF液体が乾燥後のるつぼをAF膜材料と呼ぶ)を入れ、真空室を閉じて、真空引きを開始し、本底真空度が設定工程の表4-2に規定された真空度に達すると、機器にArガスを28sccmの量で自動的に流し、韓一自社製Ion Beam Sourceホールイオン源を動作させて、イオン衝撃及び増感ガラスの表面の洗浄を行い、続いて、表4-2に示すような、プロセスにおける真空度、イオン源電圧、イオン源電流、中和電流、ArとOのガス比率、電子銃動作電流、成膜速度、コーティングの厚さ(ここで、コーティングする前、プラズマ洗浄を行う際に、コーティングの時間パラメータを制御・調整する)などの具体的な条件を制御し、これらの条件にしたがって、SiO及びNaF(使用される原材料SiO及びNaFは、いずれも粒子状である)のそれぞれを順番にコーティングし、続いて、表4-2に示すような、プロセスにおける真空度、蒸着防止動作電流、成膜速度、コーティングの厚さなどの具体的な条件を制御し、これらの条件にしたがって、AFをコーティングし、ここで、SiO膜には、ドイツのメルク社のL5型SiOがコーティング材料として使用される。
【0104】
NaF膜は、南陽市英富康光電材料有限会社にて提供されるNaFを使用してコーティング材料とし、AF膜(Anti-Fingerprint Glass、指紋防止膜)は、日本の信越化学工業株式会社製のKyY1905‐1型含フッ素ポリエーテルを使用してAF主剤(信越化学工業株式会社製)のコーティング材料(「PFPE」膜と略称)とする。
【0105】
コーティングが完了した後、前記イオン交換されていないガラスセラミックス及びイオン交換されたガラスセラミックスの外面に対して接触角テストを行い、形成された前記SiO、NaF及びAF膜の各膜層の厚さ及び膜層に対する接触角テスト結果は、表5‐1及び表5‐2に示すとおりである。
【0106】
コーティング後に、コーティング面の水接触角、オレイン酸接触角及び摩耗後の水滴角を測定して、コーティング品質及び耐久性を考察する。
【0107】
ここで、AF膜表面の水接触角(°)は、JIS R 3257(1999年)に基づく方法を用いて測定する。
【0108】
ここで、AF膜表面のオレイン酸接触角の測定方法は、7μLの液体を水平コーティング膜のサンプルに滴加して、そのカット角を測定する。
【0109】
水の代わりにヘキサデカン(hexadecane)を使用して、イオン交換されていないガラスセラミックスに滴下して、オレイン酸の接触角をテストし、番号#4‐A10、#4‐A11、#4‐A12のガラスセラミックスのテスト結果は、以下のとおりである。
【表3-2】
【0110】
耐摩耗性テスト: 1cmの圧子に韓国minoan固体消しゴム(直径6mm、A型)(MIRAE SCIENCE社製、minoan)を用いて耐摩耗性圧子とし、1kgfの荷重をかけた状態で、40mmのストロークの幅、40mm/秒の速度の条件で、ガラス基材の表面に形成されたAF膜表面を往復で2500(又はより多く)回摩擦し、続いて、布[小津産業株式会社、DUSPER(登録商標)]で乾式拭き取りを行い、AF膜表面を洗浄し、続いて、AF膜の耐摩耗性テスト後に、表面の3つの位置で水接触角(°)を測定し、各位置で3回繰り返して測定し、合計9つの位置での平均水接触角(°)を測定する。
【0111】
【表4-1】

注:必要に応じる真空条件を形成するためにコーティングを行い、当業者は、従来の手段にしたがって上記表4‐1に列挙された一部又は全部のポンプを選択して、必要に応じて使用することができる。ここで、機械式ポンプは、バックポンプとも呼ばれ、油を用いて密封効果を保ちながら、機械方法でポンプ内の吸引キャビティの体積を連続的に変化させ、吸引された容器内のガスの体積が膨張し続けることにより真空になり、ルーツ式ポンプは、増圧ポンプであり、吸気口と排気口との間の圧力差を増加させる機能を果たし、それは機械式ポンプをバックポンプとして使用し、拡散ポンプは、高真空を取得するために用いるポンプであり、拡散ポンプを使用する際に、バックポンプとして機械式ポンプ及びルーツ式ポンプを使用し、Polycoldは、低温水性ガスポンプであり、拡散ポンプを使用する高真空環境に存在する残留ガスを捕集するために用いられ、動作原理は、-120℃以下に達することができる冷凍コイルを拡散ポンプのポンプポートに置いて、その表面の低温凝縮効果により、真空システムの残留ガスを迅速に捕集することである。
【0112】
【表4-2】
【0113】
【表5-1】
【0114】
【表5-2】
【0115】
2.実施例8におけるイオン交換されていないガラスセラミックス及びイオン交換されたガラスセラミックスをガラス基材として複合コーティング層を形成する
【0116】
上記の第一節の実施例4で形成されたガラスセラミックスをガラス基材として複合コーティング層を形成する操作と類似し、異なる点は、本節では、実施例8におけるイオン交換されていないガラスセラミックス(番号はそれぞれ#8‐A1から#8‐A15である)及びイオン交換されたガラスセラミックス(番号はそれぞれ#8‐B1から#8‐B15である)をガラス基材として、SiO、NaF及びAF膜を含む複合コーティング層と、SiO及びAF膜のみを含む複合コーティング層(イオン交換されていないガラスセラミックスの番号はそれぞれ#8‐A16から#8‐A18であり、イオン交換されたガラスセラミックスの番号はそれぞれ#8‐B16から#8‐B18である)とを形成することであり、コーティング層外面の水接触角テストの結果は、表6-1及び表6-2に示すとおりである。
【0117】
【表6-1】
【0118】
【表6-2】
【0119】
3.実施例12におけるイオン交換されていないガラスセラミックス及びイオン交換されたガラスセラミックスをガラス基材として複合コーティング層を形成する
上記の第一節の実施例4で形成されたガラスセラミックスをガラス基材として複合コーティング層を形成する操作と類似し、異なる点は、本節では、実施例12におけるイオン交換されていないガラスセラミックス(番号はそれぞれ#12‐A1から#12‐A15である)及びイオン交換されたガラスセラミックス(番号はそれぞれ#12‐B1から#12‐B15である)をガラス基材として、SiO、NaF及びAF膜を含む複合コーティング層と、SiO及びAF膜のみを含む複合コーティング層(イオン交換されていないガラスセラミックスの番号はそれぞれ#12‐A16から#12‐A18であり、イオン交換されたガラスセラミックスの番号はそれぞれ#12‐B16から#12‐B18である)とを形成することであり、コーティング層外面の水接触角テストの結果は、表7-1及び表7-2に示すとおりである。
【0120】
【表7-1】
【0121】
【表7-2】
【0122】
4.実施例13におけるイオン交換されていないガラスセラミックス及びイオン交換されたガラスセラミックスをガラス基材として複合コーティング層を形成する
上記の第一節の実施例4で形成されたガラスセラミックスをガラス基材として複合コーティング層を形成する操作と類似し、異なる点は、本節では、実施例13におけるイオン交換されていないガラスセラミックス(番号はそれぞれ#13‐A1から#13‐A15である)及びイオン交換されたガラスセラミックス(番号はそれぞれ#13‐B1から#13‐B15である)をガラス基材として、SiO、NaF及びAF膜を含む複合コーティング層と、SiO及びAF膜のみを含む複合コーティング層(イオン交換されていないガラスセラミックスの番号はそれぞれ#13‐A16から#13‐A18であり、イオン交換されたガラスセラミックスの番号はそれぞれ#13‐B16から#13‐B18である)とを形成することであり、コーティング層外面の水接触角テストの結果は、表8‐1及び表8‐2に示すとおりである。
【0123】
【表8-1】
【0124】
【表8-2】
【0125】
上記の表5‐1、表5‐2、表6-1、表6-2、表7-1、表7-2、表8‐1及び表8‐2の実験結果から分かるように、13個のガラスセラミックスレシピから結晶比率が異なるガラスセラミックスを4つ選択して、それぞれイオン交換されていないものとイオン交換されたものをガラス基材として、コーティング層を3層形成し、これらのデータにより以下の結論を導き出すことができる。
【0126】
1)下塗り層の厚さが厚すぎて20nmを超えると、AFの耐摩耗性能がよくないため、15nmを超えない厚さが好ましい。
【0127】
2)中間層が厚すぎて5nmを超えると、AFは初期性能及び耐摩耗性がいずれも悪いが、中間層がない場合、各表の最後の3行の接触角データから分かるように、初期接触角は大部分100度未満であるが、2500回摩擦後の接触角は最大約60度に達する。
【0128】
3)下塗り層は適度で、中間層は薄く、AF層は厚いものでも薄いものでもいずれも効果がよい。
【0129】
4)表面層は、10nm以上であり、得られた複合コーティング層は撥水性及び撥油性がいずれもよく、耐摩耗性が優れ、15nm以上であるものが好ましく、厚いほど耐摩耗性が高くなり、コストの観点から、25nmを超えないと、得られたコーティング層は撥水撥油性及び耐摩耗性がいずれも理想的である。
【0130】
5)イオン交換、即ちプレストレス化処理を行わずガラスセラミックスに3層の複合コーティング層を直接形成しても、その撥水撥油性は優れ、イオン交換された強化ガラスで前記3層の複合コーティング層を形成すると、耐摩耗性テストの結果は接触角がより大きくなることを表し、つまり撥水撥油性効果がより優れている。
【0131】
まとめると、下塗り層の厚さは3~15nmであることが好ましく、中間層の厚さは1~5nmであり、AF膜層の厚さは10nm以上であり、15nm以上であることが好ましく、10~25nm範囲であってもよく、また、中間層は、1~2nmであることが好ましく、そして、下塗り層は5~10nmに形成されると効果がよく、5~8nmであることが最適である。
【0132】
5.第一部分の実施例4におけるイオン交換されていないガラスセラミックス(4#レシピを基に、前記ステップ(1)及び(2)にしたがってガラスセラミックスを製造し、ステップ(3)のイオン交換処理を行わない)に対して、上記の第1節に記載の操作方法及び条件にしたがって表面の複合コーティング層(番号はそれぞれ#4‐a1、#4‐a2、#4‐a3である)を形成し、各コーティング層の厚さが異なることだけが異なる点であり、具体的には以下の表9に示すとおりであり、その表面に形成された複合コーティング膜のコーティング品質及び耐久性能をテストし、結果は以下の表9にまとめられた。
【0133】
第一部分の実施例4におけるイオン交換されたガラスセラミックスに対して、上記の第1節に記載の操作方法及び条件にしたがって表面の複合コーティング層(強化ガラスとも呼ばれ、番号はそれぞれ#4‐b1、#4‐b2、#4‐b3である)を形成し、各コーティング層の厚さが異なることだけが異なる点であり、具体的には以下の表9に示すとおりであり、その表面に形成された複合コーティング膜のコーティング品質及び耐久性能をテストし、かつ、第一部分の実施例4におけるテスト方法にしたがって表面圧縮応力及び圧縮応力の深さをテストし、全てのテスト結果は以下の表9にまとめられた。
【0134】
第一部分の実施例4におけるイオン交換されていないガラスセラミックスのそれぞれに、黒色着色剤を混合し、即ち、4#レシピを基に、元の素ガラスレシピの各物質のmol合計を基数として、0.5mol%のNiO、1mol%のFe、0.3mol%のCoOを追添加し、第一部分の「ガラス製造の実施例」におけるステップ(1)及び(2)にしたがってガラスセラミックスを製造し、それぞれ、上記の第1節に記載の操作方法及び操作条件にしたがって表面の複合コーティング層(イオン交換されていない黒色ガラス又はプレストレス化処理されていない黒色ガラスとも呼ばれ、番号はそれぞれ#4‐c1、#4‐c2、#4‐c3である)を形成し、各コーティング層の厚さが異なることだけ異なる点であり、具体的には以下の表9に示すとおりであり、表面に形成された複合コーティング膜のコーティング品質及び耐久性能をテストし、結果は以下の表9にまとめられた。得られた前記黒色ガラスは、外観が不透明な黒色であり、強い白色光を照射すると濃い青色の黒色を呈する。
【0135】
【表9】
【0136】
上記の表9から分かるように、中間層は薄くて1~3nm範囲内にあり、イオン交換、即ちガラスプレストレス化処理をされたか否かに関わらず、得られた複合コーティング層外面のAF膜は、結合力と耐摩耗性が両方とも優れ、そして、黒色着色剤を添加した後も、AF膜の結合力及び耐摩耗性に影響を与えない。
【0137】
(付記)
(付記1)
表面に撥水撥油複合コーティング層を含有する微結晶化ガラスであって、前記微結晶化ガラスは、最外面から順番に撥水撥油層、中間層及び下塗り層を含み、ただし、前記中間層は、結晶格子エネルギーを700~3000kJ/mol含有するイオン結晶中間層であり、前記下塗り層は、Si-O結合を含有する化合物又は混合シリコン酸化物層を含む、
ことを特徴とする微結晶化ガラス。
【0138】
(付記2)
結晶化度は、60%よりも大きくてもよいし、又は70%よりも大きくてもよいし、又は80%よりも大きくてもよい、
付記1に記載の微結晶化ガラス。
【0139】
(付記3)
前記中間層は、結晶格子エネルギーが725~3000kJ/mol、より好ましくは770~3000kJ/molのイオン結晶を元のコーティング膜物質として形成された中間層であるか、
又は、結晶格子エネルギーが9400~11400KJ/molの化合物、好ましくはケイフッ化物を元のコーティング膜物質として形成されたフッ化物中間層である、
付記1又は付記2に記載の微結晶化ガラス。
【0140】
(付記4)
前記中間層は、フッ化アルカリ金属類又はフッ化アルカリ土類金属化合物を含有するか、又はケイフッ化アルカリ金属及びケイフッ化アルカリ土類金属から選択されたイオン結晶を、元のコーティング膜物質として形成された中間層である、
付記3に記載の微結晶化ガラス。
【0141】
(付記5)
前記中間層は、結晶格子エネルギーが1050KJ/molよりも、好ましくは940kJ/molよりも小さいイオン結晶中間層である、
付記1~付記3のいずれか一つに記載の微結晶化ガラス。
【0142】
(付記6)
前記中間層は、LiF、NaF及び/又はKFのうちの少なくとも1種のイオン結晶を元のコーティング膜物質として形成された結晶であるか、又は、MgF、CaF、SrF又はBaFのうちの少なくとも1種を元のコーティング膜物質として形成された中間層であるか、又は、元のコーティング膜物質としてLiSiF、NaSiF、KSiF、RbSiF、CsSiF、BeSiF、MgSiF、CaSiF、SrSiF、又はBaSiFのうちの少なくとも1種を元のコーティング膜物質として形成されたフッ化物中間層であり、
NaF又はKFのイオン結晶を元のコーティング膜物質として形成された中間層が好ましい、
付記5に記載の微結晶化ガラス。
【0143】
(付記7)
前記中間層の厚さは1~5nmであり、1~2nmであることが好ましい、及び/又は
前記下塗り層の厚さは3~15nmであり、5~10nmであることが好ましく、5~8nmであることがより好ましい、及び/又は
前記撥水撥油層の厚さは10nm以上であり、15nm以上であることが好ましく、10nm~25nmであってもよい、
付記1~付記6のいずれか一つに記載の微結晶化ガラス。
【0144】
(付記8)
前記の下塗り層が多層である場合、前記Si-O結合を含有する化合物又は混合シリコン酸化物層を最外面の下塗り層とし、前記混合シリコン酸化物は、シリコン酸化物SiO(xは2以下)と、少なくとも1種のケイ素元素以外の他の元素の酸化物及び/又はフッ化マグネシウムとの混合物であり、
前記他の元素は、アルミニウム、スズ、マグネシウム、リン、セリウム、ジルコニウム、チタン、セシウム、バリウム、ストロンチウム、ニオブ、亜鉛又はホウ素のうちの元素であることが好ましく、前記混合シリコン酸化物がシリコン酸化物SiOとアルミニウムの酸化物との混合物であることが好ましく、
前記Si-O結合を含有する化合物は、SiOx(xは2以下)であるか、又は、SiOC、SiON、SiOCN及び/又はSiのうちのいずれか1種の物質又はSiOx(xは2以下)、SiOC、SiON及び/又はSiOCNのうちのいずれか1種の物質と任意の比率で結合する水素結合であることがより好ましい、
付記1~付記7のいずれか一つに記載の微結晶化ガラス。
【0145】
(付記9)
前記撥水撥油層はフッ素系ポリマー層であり、分子量が2000以上の含フッ素ポリエーテルシリコン酸化物層が好ましい、
付記1~付記8のいずれか一つに記載の微結晶化ガラス。
【0146】
(付記10)
前記微結晶化ガラスの組成成分は、下記のmol%比率の酸化物
40~75%、好ましくは45~72%のSiOと、
2~20%、好ましくは4~15%のAlと、
0~20%、好ましくは0.4~1.6%のBと、
0~10%、好ましくは0.8~1.5%のPと、
0~15%、好ましくは0.9~4%のZrO+TiOと、
0~5%、好ましくは0.1~2%のMgOと、
0~4%、好ましくは0.9~3.0%のZnOと、
0~5%、好ましくは0.01~1%の希土類酸化物と、
0~5.5%のNaOと、
0~4%のKOと、
2~34%、好ましくは10~34%のLiOと、
4~40%、好ましくは15~40%のNaO+KO+LiOと、を含有し、
前記微結晶化ガラスはイオン交換されたか又はイオン交換されていないガラスである、
付記1~付記9のいずれか一つに記載の微結晶化ガラス。
【0147】
(付記11)
前記希土類酸化物は、CeO、Y、La、Ta、Tm及びNdから選択される1種以上又は2種以上のものである、
付記10に記載の微結晶化ガラス。
【0148】
(付記12)
前記微結晶化ガラスは、着色添加剤及び/又は清澄剤をさらに含有してもよく、前記着色添加剤は、Nd、Fe、CoO、NiO、V、MnO、TiO、CuO及びCrから選択される1種以上のものであることが好ましく、着色添加剤のガラスの全成分に対するモル含有量は5%を超えないことがより好ましく、ガラスの全成分に対するモル含有量において、前記着色添加剤が0.5mol%以上のCoO及び/又はCrを含有することがさらに好ましく、Fe、NiO又はMnOから選択される1種以上を1mol%以上含有することがさらに好ましい、及び/又は
前記清澄剤がAs、Sb、SnO、塩化物、フッ化物、SO 含有化合物、及びNO 含有化合物から選択される1種以上のものであることが好ましく、SnO、SO 含有化合物、塩化物、及びNO 含有化合物から選択される1種以上のものであることがさらに好ましく、前記清澄剤の含有量が0~2mol%であることがさらに好ましい、
付記1~付記11のいずれか一つに記載の微結晶化ガラス。
【0149】
(付記13)
前記微結晶化ガラスの主結晶相は、β-石英固溶体、β-スポジュメン固溶体、β-ユークリプタイト、スピネル、ルチル、ムライト、オリビン、エンスタタイト、コージライト、葉長石、ケイ酸リチウム、二ケイ酸リチウム、石英、ジルコニア、磁鉄鉱から選択される1種又は2種以上であり、平均結晶粒径が100nm未満であることが好ましく、50nm以下であることがより好ましく、30nm以下であることが特に好ましい、
付記1~付記12のいずれか一つに記載の微結晶化ガラス。
【0150】
(付記14)
微結晶化ガラスにSi-O含有酸化物又は混合シリコン酸化物層をコーティングして、微結晶化ガラスの表面に下塗り層を形成するステップ1)と、
ステップ1)で得られた下塗り層の表面に中間層をコーティングするステップ2)と、
ステップ2)で得られた中間層の表面に撥水撥油層をコーティングするステップ3)と、を含み、
前記コーティングには、真空蒸着法が採用されることが好ましい、
付記1~付記13のいずれか一つに記載の微結晶化ガラスの製造方法。
【0151】
(付記15)
前記微結晶化ガラスは、下塗り層、中間層及び撥水撥油層をコーティングする前に、
各ガラス原材料を1600±50℃で高温溶解してから、400~650℃でアニールして、均質化された素ガラス板を取得するステップ(I)と、
オーバーフローダウンドロー法、フロート法又は圧延法により、前記素ガラス板から成形素ガラス板を取得するステップ(II)と、
2回の熱処理で前記成形素ガラス板を微結晶化させて微結晶化ガラスプリフォームを取得し、次に、イオン交換されるか又はイオン交換されずそのまま微結晶化ガラスの原材料として、必要な下塗り層、中間層及び撥水撥油層を順番に表面にコーティングするために用いられ、ただし、1回目の熱処理温度は500~1000℃であり、2回目の熱処理温度は550~1100℃であるステップ(III)と、を含む方法で焼成されて取得される、
付記14に記載の製造方法。
図1