(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024096173
(43)【公開日】2024-07-12
(54)【発明の名称】作業機
(51)【国際特許分類】
E02F 9/22 20060101AFI20240705BHJP
F16H 61/47 20100101ALI20240705BHJP
【FI】
E02F9/22 A
F16H61/47
【審査請求】有
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024067936
(22)【出願日】2024-04-19
(62)【分割の表示】P 2021051888の分割
【原出願日】2021-03-25
(31)【優先権主張番号】P 2020137173
(32)【優先日】2020-08-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000001052
【氏名又は名称】株式会社クボタ
(74)【代理人】
【識別番号】110003041
【氏名又は名称】安田岡本弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】長尾 昂平
(72)【発明者】
【氏名】福田 祐史
(72)【発明者】
【氏名】濱本 亮太
(72)【発明者】
【氏名】中川 裕朗
(57)【要約】
【課題】走行状態を簡単に把握すること。
【解決手段】作業機は、左走行モータの第1ポート側に作用する作動油の圧力を第1走行圧として検出する第1圧力検出装置と、左走行モータの第2ポート側に作用する作動油の圧力を第2走行圧として検出する第2圧力検出装置と、右走行モータの第3ポート側に作用する作動油の圧力を第3走行圧として検出する第3圧力検出装置と、右走行モータの第4ポート側に作用する作動油の圧力を第4走行圧として検出する第4圧力検出装置と、第1走行圧から第3走行圧を減算した第1左右差圧、第3走行圧から第1走行圧を減算した第2左右差圧、第2走行圧から第4走行圧を減算した第3左右差圧、第4走行圧から第2走行圧を減算した第4左右差圧、及び第1閾値に基づいて、機体の走行状態を判断する制御装置と、を備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
機体と、
前記機体に設けられた原動機と、
前記機体の左側に設けられた左走行装置と、
前記機体の右側に設けられた右走行装置と、
前記左走行装置に動力を伝達可能な左走行モータと、
前記右走行装置に動力を伝達可能な右走行モータと、
前記左走行モータに作動油を供給する左走行ポンプと、
前記右走行モータに作動油を供給する右走行ポンプと、
前記左走行ポンプの第1ポート及び第2ポートに接続され且つ、前記左走行モータに接続される第1循環油路と、
前記右走行ポンプの第3ポート及び第4ポートに接続され且つ、前記右走行モータに接続される第2循環油路と、
前記第1循環油路において前記左走行モータの第1ポート側に設けられ且つ前記左走行モータの前記第1ポート側に作用する作動油の圧力を第1走行圧として検出する第1圧力検出装置と、
前記第1循環油路において前記左走行モータの第2ポート側に設けられ且つ前記左走行モータの前記第2ポート側に作用する作動油の圧力を第2走行圧として検出する第2圧力検出装置と、
前記第2循環油路において前記右走行モータの第3ポート側に設けられ且つ前記右走行モータの前記第3ポート側に作用する作動油の圧力を第3走行圧として検出する第3圧力検出装置と、
前記第2循環油路において前記右走行モータの第4ポート側に設けられ且つ前記右走行モータの前記第4ポート側に作用する作動油の圧力を第4走行圧として検出する第4圧力検出装置と、
前記第1走行圧から前記第3走行圧を減算した第1左右差圧、前記第3走行圧から前記第1走行圧を減算した第2左右差圧、前記第2走行圧から前記第4走行圧を減算した第3左右差圧、前記第4走行圧から前記第2走行圧を減算した第4左右差圧、及び第1閾値に基づいて、前記機体の走行状態を判断する制御装置と、を備えている作業機。
【請求項2】
前記制御装置は、前記第1左右差圧、前記第2左右差圧、前記第3左右差圧、前記第4左右差圧、及び前記第1閾値に基づいて、前記機体が旋回と直進のいずれを行っているかを判断する請求項1に記載の作業機。
【請求項3】
前記制御装置は、前記第1左右差圧、前記第2左右差圧、前記第3左右差圧、前記第4左右差圧、及び前記第1閾値に基づいて、前記機体が前進と後進のいずれを行っているかを判断する請求項1又は2に記載の作業機。
【請求項4】
前記制御装置は、前記第1左右差圧、前記第2左右差圧、前記第3左右差圧、前記第4左右差圧、及び前記第1閾値に基づいて、前記機体が旋回を行っているか否かを判断すると共に、前記機体の旋回方向を判断する請求項1~3のいずれかに記載の作業機。
【請求項5】
前記制御装置は、前記第1左右差圧、前記第2左右差圧、前記第3左右差圧、前記第4左右差圧、及び前記第1閾値に基づいて、前記機体が旋回を行っているか否かを判断すると共に、前記機体の旋回方法を判断する請求項1~4のいずれかに記載の作業機。
【請求項6】
前記制御装置は、前記第1左右差圧、前記第2左右差圧、前記第3左右差圧、及び前記第4左右差圧のいずれかが前記第1閾値よりも大きい場合に、前記機体が旋回を行っていると判断し、前記第1左右差圧、前記第2左右差圧、前記第3左右差圧、及び前記第4左
右差圧が前記第1閾値以下である場合に、前記機体が旋回を行っていないと判断する請求項1~5のいずれかに記載の作業機。
【請求項7】
前記制御装置は、前記機体が旋回を行っていると判断した後、前記第1左右差圧、前記第2左右差圧、前記第3左右差圧、前記第4左右差圧、及び第2閾値に基づいて、前記機体の旋回が終了したか否かを判断する請求項6に記載の作業機。
【請求項8】
前記制御装置は、前記第1左右差圧、前記2左右差圧、前記第3左右差圧、及び前記第4左右差圧が前記第1閾値以下である場合に、前記機体が直進を行っていると判断し、前記第1左右差圧、前記第2左右差圧、前記第3左右差圧、及び前記第4左右差圧のいずれかが前記第1閾値よりも大きい場合に、前記機体が直進していないと判断する請求項1~5のいずれかに記載の作業機。
【請求項9】
前記制御装置は、前記第1左右差圧、前記第2左右差圧、前記第3左右差圧、前記第4左右差圧、及び前記第1閾値に基づいて、前記機体が直進を行っておらず旋回を行っていると判断した後、前記第1左右差圧、前記第2左右差圧、前記第3左右差圧、前記第4左右差圧、及び第2閾値に基づいて、前記機体が直進を開始したか否かを判断する請求項8又は請求項5に記載の作業機。
【請求項10】
前記左走行モータ及び前記右走行モータの回転数は、低速域である第1速度と当該第1速度よりも速い高速域である第2速度とに切換可能であり、
前記制御装置は、前記左走行モータ及び前記右走行モータの回転数が前記第2速度に切り換えられている場合、前記第1走行圧、前記第2走行圧、前記第3走行圧、又は前記第4走行圧に基づいて、前記左走行モータ及び前記右走行モータの回転数を前記第2速度から前記第1速度に自動的に減速する自動減速を行う請求項1~9のいずれか1項に記載の作業機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、スキッドステアローダ、コンパクトトラックローダ、バックホー等の作業機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、作業機において減速及び増速を行う技術として特許文献1に示されているものがある。特許文献1の作業機は、エンジンを含む原動機と、原動機の動力により作動し且つ、作動油を吐出する油圧ポンプと、作動油の圧力に応じて第1速度と、第1速度よりも高速である第2速度とに速度が変更可能な走行油圧装置と、走行油圧装置に作用する作動油の圧力を変更可能な作動弁と、作動油の圧力を検出可能な測定装置と、を備え、作動弁は、測定装置から検出された作動油の圧力である検出圧力が、第2速度に対応する設定圧から所定圧以下に低下した場合に、走行油圧装置に作用する作動油の圧力を減圧して、走行油圧装置を第1速度に減速している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の作業機では、走行中に走行装置に供給される作動油の圧力が所定以上である場合に、第2速度から第1速度に自動減速することができる。しかしながら、作業機の旋回又は直進といった走行状態を把握することが難しく、自動減速を行うタイミングを設定するのが困難であった。
本発明は、上記したような従来技術の問題点を解決すべくなされたものであって、走行状態を簡単に把握することができる作業機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記技術的課題を解決するために本発明が講じた技術的手段は、以下の通りである。
作業機は、機体と、前記機体に設けられた原動機と、前記機体の左側に設けられた左走行装置と、前記機体の右側に設けられた右走行装置と、前記左走行装置に動力を伝達可能な左走行モータと、前記右走行装置に動力を伝達可能な右走行モータと、前記左走行モータに作動油を供給する左走行ポンプと、前記右走行モータに作動油を供給する右走行ポンプと、前記左走行ポンプの第1ポート及び第2ポートに接続され且つ、前記左走行モータに接続される第1循環油路と、前記右走行ポンプの第3ポート及び第4ポートに接続され且つ、前記右走行モータに接続される第2循環油路と、前記第1循環油路において前記左走行モータの第1ポート側に設けられ且つ前記左走行モータの前記第1ポート側に作用する作動油の圧力を第1走行圧として検出する第1圧力検出装置と、前記第1循環油路において前記左走行モータの第2ポート側に設けられ且つ前記左走行モータの前記第2ポート側に作用する作動油の圧力を第2走行圧として検出する第2圧力検出装置と、前記第2循環油路において前記右走行モータの第3ポート側に設けられ且つ前記右走行モータの前記第3ポート側に作用する作動油の圧力を第3走行圧として検出する第3圧力検出装置と、前記第2循環油路において前記右走行モータの第4ポート側に設けられ且つ前記右走行モータの前記第4ポート側に作用する作動油の圧力を第4走行圧として検出する第4圧力検出装置と、前記第1走行圧から前記第3走行圧を減算した第1左右差圧、前記第3走行圧から前記第1走行圧を減算した第2左右差圧、前記第2走行圧から前記第4走行圧を減算した第3左右差圧、前記第4走行圧から前記第2走行圧を減算した第4左右差圧、及び第1閾値に基づいて、前記機体の走行状態を判断する制御装置と、を備えている。
【0006】
前記制御装置は、前記第1左右差圧、前記第2左右差圧、前記第3左右差圧、前記第4左右差圧、及び前記第1閾値に基づいて、前記機体が旋回と直進のいずれを行っているかを判断する。
前記制御装置は、前記第1左右差圧、前記第2左右差圧、前記第3左右差圧、前記第4左右差圧、及び前記第1閾値に基づいて、前記機体が前進と後進のいずれを行っているかを判断する。
【0007】
前記制御装置は、前記第1左右差圧、前記第2左右差圧、前記第3左右差圧、前記第4左右差圧、及び前記第1閾値に基づいて、前記機体が旋回を行っているか否かを判断すると共に、前記機体の旋回方向を判断する。
前記制御装置は、前記第1左右差圧、前記第2左右差圧、前記第3左右差圧、前記第4左右差圧、及び前記第1閾値に基づいて、前記機体が旋回を行っているか否かを判断すると共に、前記機体の旋回方法を判断する。
【0008】
前記制御装置は、前記第1左右差圧、前記第2左右差圧、前記第3左右差圧、及び前記第4左右差圧のいずれかが前記第1閾値よりも大きい場合に、前記機体が旋回を行っていると判断し、前記第1左右差圧、前記第2左右差圧、前記第3左右差圧、及び前記第4左右差圧が前記第1閾値以下である場合に、前記機体が旋回を行っていないと判断する。
前記制御装置は、前記機体が旋回を行っていると判断した後、前記第1左右差圧、前記第2左右差圧、前記第3左右差圧、前記第4左右差圧、及び第2閾値に基づいて、前記機体の旋回が終了したか否かを判断する。
【0009】
前記制御装置は、前記第1左右差圧、前記第2左右差圧、前記第3左右差圧、及び前記第4左右差圧が前記第1閾値以下である場合に、前記機体が直進を行っていると判断し、前記第1左右差圧、前記第2左右差圧、前記第3左右差圧、及び前記第4左右差圧のいずれかが前記第1閾値よりも大きい場合に、前記機体が直進していないと判断する。
前記制御装置は、前記第1左右差圧、前記第2左右差圧、前記第3左右差圧、前記第4左右差圧、及び前記第1閾値に基づいて、前記機体が直進を行っておらず旋回を行っていると判断した後、前記第1左右差圧、前記第2左右差圧、前記第3左右差圧、前記第4左右差圧、及び第2閾値に基づいて、前記機体が直進を開始したか否かを判断する。
【0010】
前記左走行モータ及び前記右走行モータの回転数は、低速域である第1速度と当該第1速度よりも速い高速域である第2速度とに切換可能であり、前記制御装置は、前記左走行モータ及び前記右走行モータの回転数が前記第2速度に切り換えられている場合、前記第1走行圧、前記第2走行圧、前記第3走行圧、又は前記第4走行圧に基づいて、前記左走行モータ及び前記右走行モータの回転数を前記第2速度から前記第1速度に自動的に減速する自動減速を行う。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、機体の旋回又は直進といった走行状態を簡単に把握することができる作業機が提供可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】作業機の油圧システム(油圧回路)を示す図である。
【
図3】走行リリーフ圧と原動機回転数との関係を示す図である。
【
図4】作業機の一例であるトラックローダを示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明に係る作業機の油圧システム及びこの油圧システムを備えた作業機の好適な実施形態について、適宜図面を参照しながら説明する。
図4は、本発明に係る作業機の側面図を示している。
図4では、作業機の一例として、コンパクトトラックローダを示している。但し、本発明に係る作業機はコンパクトトラックローダに限定されず、例えば、スキッドステアローダ等の他の種類のローダ作業機であってもよい。また、ローダ作業機以外の作業機であってもよい。
【0014】
作業機1は、
図4に示すように、作業機1は、機体2と、キャビン3と、作業装置4と、一対の走行装置5L、5Rとを備えている。本発明の実施形態において、作業機1の運転席8に着座した運転者の前側(
図4の左側)を前方、運転者の後側(
図4の右側)を後方、運転者の左側(
図4の手前側)を左方、運転者の右側(
図4の奥側)を右方として説明する。また、前後の方向に直交する方向である水平方向を機体幅方向として説明する。機体2の中央部から右部或いは左部へ向かう方向を機体外方として説明する。言い換えれば、機体外方とは、機体幅方向であって、機体2から離れる方向である。機体外方とは反対の方向を、機体内方として説明する。言い換えれば、機体内方とは、機体幅方向であって、機体2に近づく方向である。
【0015】
キャビン3は、機体2に搭載されている。このキャビン3には運転席8が設けられている。作業装置4は機体2に装着されている。一対の走行装置5L、5Rは、機体2の外側に設けられている。機体2内の後部には、原動機32が搭載されている。
作業装置4は、ブーム10と、作業具11と、リフトリンク12と、制御リンク13と、ブームシリンダ14と、バケットシリンダ15とを有している。
【0016】
ブーム10は、キャビン3の右側及び左側に上下揺動自在に設けられている。作業具11は、例えば、バケットであって、当該バケット11は、ブーム10の先端部(前端部)に上下揺動自在に設けられている。リフトリンク12及び制御リンク13は、ブーム10が上下揺動自在となるように、ブーム10の基部(後部)を支持している。ブームシリンダ14は、伸縮することによりブーム10を昇降させる。バケットシリンダ15は、伸縮することによりバケット11を揺動させる。
【0017】
左側及び右側の各ブーム10の前部同士は、異形の連結パイプで連結されている。各ブーム10の基部(後部)同士は、円形の連結パイプで連結されている。
リフトリンク12、制御リンク13及びブームシリンダ14は、左側と右側の各ブーム10に対応して機体2の左側と右側にそれぞれ設けられている。
リフトリンク12は、各ブーム10の基部の後部に、縦向きに設けられている。このリフトリンク12の上部(一端側)は、各ブーム10の基部の後部寄りに枢支軸16(第1枢支軸)を介して横軸回りに回転自在に枢支されている。また、リフトリンク12の下部(他端側)は、機体2の後部寄りに枢支軸17(第2枢支軸)を介して横軸回りに回転自在に枢支されている。第2枢支軸17は、第1枢支軸16の下方に設けられている。
【0018】
ブームシリンダ14の上部は、枢支軸18(第3枢支軸)を介して横軸回りに回転自在に枢支されている。第3枢支軸18は、各ブーム10の基部であって、当該基部の前部に設けられている。ブームシリンダ14の下部は、枢支軸19(第4枢支軸)を介して横軸回りに回転自在に枢支されている。第4枢支軸19は、機体2の後部の下部寄りであって第3枢支軸18の下方に設けられている。
【0019】
制御リンク13は、リフトリンク12の前方に設けられている。この制御リンク13の一端は、枢支軸20(第5枢支軸)を介して横軸回りに回転自在に枢支されている。第5枢支軸20は、機体2であって、リフトリンク12の前方に対応する位置に設けられてい
る。制御リンク13の他端は、枢支軸21(第6枢支軸)を介して横軸回りに回転自在に枢支されている。第6枢支軸21は、ブーム10であって、第2枢支軸17の前方で且つ第2枢支軸17の上方に設けられている。
【0020】
ブームシリンダ14を伸縮することにより、リフトリンク12及び制御リンク13によって各ブーム10の基部が支持されながら、各ブーム10が第1枢支軸16回りに上下揺動し、各ブーム10の先端部が昇降する。制御リンク13は、各ブーム10の上下揺動に伴って第5枢支軸20回りに上下揺動する。リフトリンク12は、制御リンク13の上下揺動に伴って第2枢支軸17回りに前後揺動する。
【0021】
ブーム10の前部には、バケット11の代わりに別の作業具が装着可能とされている。別の作業具としては、例えば、油圧圧砕機、油圧ブレーカ、アングルブルーム、アースオーガ、パレットフォーク、スイーパー、モア、スノウブロア等のアタッチメント(予備アタッチメント)である。
左側のブーム10の前部には、接続部材50が設けられている。接続部材50は、予備アタッチメントに装備された油圧機器と、ブーム10に設けられたパイプ等の第1管材とを接続する装置である。具体的には、接続部材50の一端には、第1管材が接続可能で、他端には、予備アタッチメントの油圧機器に接続された第2管材が接続可能である。これにより、第1管材を流れる作動油は、第2管材を通過して油圧機器に供給される。
【0022】
バケットシリンダ15は、各ブーム10の前部寄りにそれぞれ配置されている。バケットシリンダ15を伸縮することで、バケット11が揺動される。
一対の走行装置5L、5Rのうち、走行装置5Lは機体2の左側に設けられ、走行装置5Rは機体2の右側に設けられている。一対の走行装置5L、5Rは、本実施形態ではクローラ型(セミクローラ型を含む)の走行装置が採用されている。なお、前輪及び後輪を有する車輪型の走行装置を採用してもよい。以下、説明の便宜上、走行装置5Lのことを左走行装置5L、走行装置5Rのことを右走行装置5Rということがある。
原動機32は、ディーゼルエンジン、ガソリンエンジン等の内燃機関、電動モータ等である。この実施形態では、原動機32は、ディーゼルエンジンであるが限定はされない。
【0023】
次に、作業機の油圧システムについて説明する。
図1に示すように、作業機の油圧システムは、第1油圧ポンプP1と、第2油圧ポンプP2とを備えている。第1油圧ポンプP1は、原動機32の動力によって駆動するポンプであって、定容量型のギヤポンプによって構成されている。第1油圧ポンプP1は、タンク22に貯留された作動油を吐出可能である。特に、第1油圧ポンプP1は、主に制御に用いる作動油を吐出する。説明の便宜上、作動油を貯留するタンク22のことを作動油タンクということがある。また、第1油圧ポンプP1から吐出した作動油のうち、制御用として用いられる作動油のことをパイロット油、パイロット油の圧力のことをパイロット圧ということがある。
【0024】
第2油圧ポンプP2は、原動機32の動力によって駆動するポンプであって、定容量型のギヤポンプによって構成されている。第2油圧ポンプP2は、タンク22に貯留された作動油を吐出可能であって、例えば、作業系の油路に作動油を供給する。例えば、第2油圧ポンプP2は、ブーム10を作動させるブームシリンダ14、バケットを作動させるバケットシリンダ15、予備油圧アクチュエータを作動させる予備油圧アクチュエータを制御する制御弁(流量制御弁)に作動油を供給する。
【0025】
また、作業機の油圧システムは、一対の走行モータ36L、36Rと、一対の走行ポンプ53L、53Rと、を備えている。一対の走行モータ36L、36Rは、一対の走行装置5L、5Rに動力を伝達するモータである。一対の走行モータ36L、36Rのうち、
一方の走行モータ36Lは、走行装置(左走行装置)5Lに回転の動力を伝達し、他方の走行モータ36Rは、走行装置(右走行装置)5Rに回転の動力を伝達する。
【0026】
一対の走行ポンプ53L、53Rは、原動機32の動力によって駆動するポンプであって、例えば、斜板形可変容量アキシャルポンプである。一対の走行ポンプ53L、53Rは、駆動することによって、一対の走行モータ36L、36Rのそれぞれに作動油を供給する。一対の走行ポンプ53L、53Rのうち、一方の走行ポンプ53Lは、走行モータ36Lに作動油を供給し、他方の走行ポンプ53Rは、走行モータ36Rに作動油を供給する。
【0027】
以下、説明の便宜上、走行ポンプ53Lのことを左走行ポンプ53L、走行ポンプ53Rのことを右走行ポンプ53R、走行モータ36Lのことを左走行モータ36L、走行モータ36Rのことを右走行モータ36Rということがある。
左走行ポンプ53L及び右走行ポンプ53Rには、第1油圧ポンプP1からの作動油(パイロット油)の圧力(パイロット圧)が作用する受圧部53aと受圧部53bとを有している、受圧部53a、53bに作用するパイロット圧によって斜板の角度が変更される。斜版の角度を変更することによって、左走行ポンプ53L及び右走行ポンプ53Rの出力(作動油の吐出量)や作動油の吐出方向を変えることができる。左走行ポンプ53Lは、正転時に作動油を吐出する第1ポート82aと、逆転時に作動油を吐出する第2ポート82bとを有している。右走行ポンプ53Rは、正転時に作動油を吐出する第3ポート82cと、逆転時に作動油を吐出する第4ポート82dとを有している。
【0028】
左走行ポンプ53Lの第1ポート82a及び第2ポート82bと、左走行モータ36Lとは、接続油路(第1循環油路)57hによって接続され、左走行ポンプ53Lが吐出した作動油が左走行モータ36Lに供給される。右走行ポンプ53Rの第3ポート82c及び第4ポート82dとは、右走行モータ36Rとは、接続油路(第2循環油路)57iによって接続され、右走行ポンプ53Rが吐出した作動油が右走行モータ36Rに供給される。
【0029】
接続油路57hであって左走行ポンプ53Lの第1ポート82a側の油路には、第1リリーフ弁81aが接続され、左走行ポンプ53Lの第2ポート82b側の油路には、第2リリーフ弁81bが接続されている。例えば、第1リリーフ弁81aは、左走行ポンプ53Lの正転によって接続油路57hに作用する圧力が大きくなった場合に作動しやすく、第2リリーフ弁81bは、左走行ポンプ53Lの逆転によって接続油路57hに作用する圧力が大きくなった場合に作動しやすい。
【0030】
接続油路57iであって右走行ポンプ53Rの第3ポート82c側の油路には、第3リリーフ弁81cが接続され、右走行ポンプ53Rの第4ポート82d側の油路には、第4リリーフ弁81dが接続されている。例えば、第3リリーフ弁81cは、右走行ポンプ53Rの正転によって接続油路57iに作用する圧力が大きくなった場合に作動しやすく、第4リリーフ弁81dは、右走行ポンプ53Rの逆転によって接続油路57iに作用する圧力が大きくなった場合に作動しやすい。
【0031】
左走行モータ36Lは、左走行ポンプ53Lから吐出した作動油により回転が可能である。左走行モータ36Lへの作動油の流量を変えることによって、左走行モータ36Lの回転数(回転速度)を変更することができる。左走行モータ36Lには、斜板切換シリンダ37Lが接続され、当該斜板切換シリンダ37Lを一方側或いは他方側に伸縮させることによっても左走行モータ36Lの回転数を変更することができる。即ち、斜板切換シリンダ37Lを収縮した場合には、左走行モータ36Lの回転数は低速側である第1速度(所定の低速域)に設定される。また、斜板切換シリンダ37Lを伸長した場合には、左走行モータ36Lの回転数は高速側である第2速度(所定の高速域)に設定される。つまり、左走行モータ36Lの回転数は、第1速度と第2速度とに変更が可能である。
【0032】
右走行モータ36Rは、右走行ポンプ53Rから吐出した作動油により回転が可能である。右走行モータ36Rへの作動油の流量を変えることによって、右走行モータ36Rの回転数を変更することができる。右走行モータ36Rには、斜板切換シリンダ37Rが接続され、当該斜板切換シリンダ37Rを一方側或いは他方側に伸縮させることによっても右走行モータ36Rの回転数を変更することができる。即ち、斜板切換シリンダ37Rを収縮した場合には、右走行モータ36Rの回転数は低速側である第1速度(所定の低速域)に設定される。また、斜板切換シリンダ37Rを伸長した場合には、右走行モータ36Rの回転数は高速側である第2速度(所定の高速域)に設定される。つまり、右走行モータ36Rの回転数は、第1速度と第2速度とに変更が可能である。
【0033】
図1に示すように、作業機の油圧システムは、走行切換弁34を備えている。走行切換弁34は、走行モータ36L、36Rの回転速度(回転数)を第1速度にする第1状態と、第2速度にする第2状態とに切換可能である。走行切換弁34は、第1切換弁71L、71Rと、第2切換弁72と、を有している。
第1切換弁71Lは、左走行モータ36Lの斜板切換シリンダ37Lに油路を介して接続されていて、第1位置71L1及び第2位置71L2に切り換わる二位置切換弁である。第1切換弁71Lは、第1位置71L1である場合、斜板切換シリンダ37Lを収縮し、第2位置71L2である場合、斜板切換シリンダ37Lを伸長する。
【0034】
第1切換弁71Rは、右走行モータ36Rの斜板切換シリンダ37Rに油路を介して接続されていて、第1位置71R1及び第2位置71R2に切り換わる二位置切換弁である。第1切換弁71Rは、第1位置71R1である場合、斜板切換シリンダ37Rを収縮し、第2位置71R2である場合、斜板切換シリンダ37Rを伸長する。
第2切換弁72は、第1切換弁71L及び第1切換弁71Rを切り換える電磁弁であって、励磁により第1位置72aと第2位置72bとに切り換え可能な二位置切換弁である。第2切換弁72、第1切換弁71L及び第1切換弁71Rは、油路41により接続されている。第2切換弁72は、第1位置72aである場合に第1切換弁71L及び第1切換弁71Rを第1位置71L1、71R1に切り換え、第2位置72bである場合に第1切換弁71L及び第1切換弁71Rを第2位置71L2、71R2に切り換える。
【0035】
つまり、第2切換弁72が第1位置72a、第1切換弁71Lが第1位置71L1、第1切換弁71Rが第1位置71R1である場合に、走行切換弁34は第1状態になって、斜板切換シリンダ37L、37Rを収縮させて、走行モータ36L、36Rの回転数を第1速度に設定する。第2切換弁72が第2位置72b、第1切換弁71Lが第2位置71L2、第1切換弁71Rが第2位置71R2である場合に、走行切換弁34は第2状態になって、斜板切換シリンダ37L、37Rを伸長させて、走行モータ36L、36Rの回転数を第2速度に設定する。したがって、走行切換弁34によって、走行モータ36L、36Rを第1速度と第2速度とに切り換えることができる。
【0036】
操作装置(走行操作装置)54は、走行操作部材59を操作したときに、走行ポンプ53L、53R(左走行ポンプ53L、右走行ポンプ53R)の受圧部53a、53bに作動油を作用させる装置であり、走行ポンプ53L、53Rの斜板の角度(斜板角度)を変更可能である。操作装置54は、走行操作部材59と、複数の操作弁55とを含んでいる。
【0037】
走行操作部材59は、操作弁55に支持され、左右方向(機体幅方向)又は前後方向に揺動する操作レバーである。即ち、走行操作部材59は、中立位置Nを基準とすると、中
立位置Nから右方及び左方に操作可能であると共に、中立位置Nから前方及び後方に操作可能である。言い換えれば、走行操作部材59は、中立位置Nを基準に少なくとも4方向に揺動することが可能である。尚、説明の便宜上、前方及び後方の双方向、即ち、前後方向のことを第1方向という。また、右方及び左方の双方向、即ち、左右方向(機体幅方向)のことを第2方向ということがある。
【0038】
また、複数の操作弁55は、共通、即ち、1本の走行操作部材59によって操作される。複数の操作弁55は、走行操作部材59の揺動に基づいて作動する。複数の操作弁55には、吐出油路40が接続され、当該吐出油路40を介して、第1油圧ポンプP1からの作動油(パイロット油)が供給可能である。複数の操作弁55は、操作弁55A、操作弁55B、操作弁55C及び操作弁55Dである。
【0039】
操作弁55Aは、前後方向(第1方向)のうち、走行操作部材59を前方(一方)に揺動した場合(前操作した場合)に、前操作の操作量(操作)に応じて出力する作動油の圧力が変化する。操作弁55Bは、前後方向(第1方向)のうち、走行操作部材59を後方(他方)に揺動した場合(後操作した場合)に、後操作の操作量(操作)に応じて出力する作動油の圧力が変化する。左右方向(第2方向)のうち、操作弁55Cは、走行操作部材59を右方(一方)に揺動した場合(右操作した場合)に、右操作の操作量(操作)に応じて出力する作動油の圧力が変化する。操作弁55Dは、左右方向(第2方向)のうち、走行操作部材59を、左方(他方)に揺動した場合(左操作した場合)に、左操作の操作量(操作)に応じて出力する作動油の圧力が変化する。
【0040】
複数の操作弁55と、走行ポンプ53L、53Rとは、走行油路45によって接続されている。言い換えれば、走行ポンプ53L、53Rは、操作弁55(操作弁55A、操作弁55B、操作弁55C、操作弁55D)から出力した作動油によって作動可能な油圧機器である。
走行油路45は、第1走行油路45a、第2走行油路45b、第3走行油路45c、第4走行油路45dと、第5走行油路45eとを有している。第1走行油路45aは、左走行ポンプ53Lの受圧部(第1受圧部)53aに接続された油路であり、走行操作部材59を操作したときに受圧部(第1受圧部)53aに作用する作動油を通過させる油路である。第2走行油路45bは、左走行ポンプ53Lの受圧部(第2受圧部)53bに接続され油路であり、走行操作部材59を操作したときに受圧部(第2受圧部)53bに作用する作動油を通過させる油路である。第3走行油路45cは、右走行ポンプ53Rの受圧部(第3受圧部)53aに接続され油路であり、走行操作部材59を操作したときに受圧部(第3受圧部)53aに作用する作動油を通過させる油路である。第4走行油路45dは、右走行ポンプ53Rの受圧部(第4受圧部)53bに接続され油路であり、走行操作部材59を操作したときに受圧部(第4受圧部)53bに作用する作動油を通過させる油路である。第5走行油路45eは、操作弁55、第1走行油路45a、第2走行油路45b、第3走行油路45c、第4走行油路45dを接続する油路である。
【0041】
走行操作部材59を前方(
図1、
図2では矢印A1方向)に揺動させると、操作弁55Aが操作されて該操作弁55Aからパイロット圧が出力される。このパイロット圧は、第1走行油路45aを介して左走行ポンプ53Lの受圧部53aに作用すると共に第3走行油路45cを介して右走行ポンプ53Rの受圧部53aに作用する。これにより、左走行ポンプ53L及び右走行ポンプ53Rの斜板角度が変更され、左走行モータ36L及び右走行モータ36Rが正転(前進回転)して作業機1が前方に直進する。
【0042】
また、走行操作部材59を後方(
図1、
図2では矢示A2方向)に揺動させると、操作弁55Bが操作されて該操作弁55Bからパイロット圧が出力される。このパイロット圧は、第2走行油路45bを介して左走行ポンプ53Lの受圧部53bに作用すると共に第
4走行油路45dを介して右走行ポンプ53Rの受圧部53bに作用する。これにより、左走行ポンプ53L及び右走行ポンプ53Rの斜板角度が変更され、左走行モータ36L及び右走行モータ36Rが逆転(後進回転)して作業機1が後方に直進する。
【0043】
また、走行操作部材59を右方(
図1、
図2では矢示A4方向)に揺動させると、操作弁55Cが操作されて該操作弁55Cからパイロット圧が出力される。このパイロット圧は、第1走行油路45aを介して左走行ポンプ53Lの受圧部53aに作用すると共に第4走行油路45dを介して右走行ポンプ53Rの受圧部53bに作用する。これにより、左走行ポンプ53L及び右走行ポンプ53Rの斜板角度が変更され、左走行モータ36Lが正転し且つ右走行モータ36Rが逆転して作業機1が右側にスピンターン(超信地旋回)する。
【0044】
また、走行操作部材59を左方(
図1、
図2では矢示A3方向)に揺動させると、操作弁55Dが操作されて該操作弁55Dからパイロット圧が出力される。このパイロット圧は第3走行油路45cを介して右走行ポンプ53Rの受圧部53aに作用すると共に第2走行油路45bを介して左走行ポンプ53Lの受圧部53bに作用する。これにより、左走行ポンプ53L及び右走行ポンプ53Rの斜板角度が変更され、左走行モータ36Lが逆転し且つ右走行モータ36Rが正転して作業機1が左側にスピンターン(超信地旋回)する。
【0045】
また、走行操作部材59を斜め方向(
図2では矢示A5方向)に揺動させると、受圧部53aと受圧部53bとに作用するパイロット圧の差圧によって、左走行モータ36L及び右走行モータ36Rの回転方向及び回転速度が決定され、作業機1が前進又は後進しながら右へ信地旋回又は左へ信地旋回する。
すなわち、走行操作部材59を左斜め前方に揺動操作すると該走行操作部材59の揺動角度に対応した速度で作業機1が前進しながら左旋回し、走行操作部材59を右斜め前方に揺動操作すると該走行操作部材59の揺動角度に対応した速度で作業機1が前進しながら右旋回し、走行操作部材59を左斜め後方に揺動操作すると該走行操作部材59の揺動角度に対応した速度で作業機1が後進しながら左旋回し、走行操作部材59を右斜め後方に揺動操作すると該走行操作部材59の揺動角度に対応した速度で作業機1が後進しながら右旋回する。
【0046】
図1に示すように、作業機1は、制御装置60を備えている。制御装置60は、作業機1の様々な制御を行うもので、CPU、MPU等の半導体、電気電子回路等から構成されている。制御装置60には、アクセル65と、モードスイッチ66と、速度変更スイッチ67、回転数検出装置68と、が接続されている。
モードスイッチ66は、自動減速を有効又は無効に切り換えるスイッチである。例えば、モードスイッチ66は、ON/OFFに切り換え可能なスイッチであり、ONである場合に自動減速を有効に切り換え、OFFである場合には自動減速を無効に切り換える。
【0047】
速度変更スイッチ67は、運転席8の近傍に設けられ、運転者(オペレータ)が操作可能である。速度変更スイッチ67は、走行モータ36L、36R(左走行モータ36L、右走行モータ36R)の回転数を第1速度及び第2速度のいずれかに手動で切り換えることができるスイッチである。例えば、速度変更スイッチ67は、シーソスイッチであり、走行モータ36L、36Rの回転数を第1速度側から第2速度側に切り換える増速操作と、第2速度から第1速度に切り換える減速操作とを行うことができる。
【0048】
回転数検出装置68は、センサ等で構成されていて、原動機32の回転数である原動機回転数を検出することができる。
制御装置60は、自動減速部61を備えている。自動減速部61は、制御装置60に設
けられた電気電子回路等、当該制御装置60に格納されたプログラム等である。
自動減速部61は、走行モードで且つ自動減速が有効である場合には自動減速制御を行い、走行モードで且つ自動減速が無効である場合には自動減速制御を行わない。
【0049】
自動減速制御では、走行モータ36L、36Rの回転数が第2速度に設定されている場合において、所定の条件(自動減速条件)を満たしたときに、走行モータ36L、36Rの回転数を第2速度から第1速度に自動的に切り換える。自動減速制御では、少なくとも走行モータ(左走行モータ36L、右走行モータ36R)が第2速度である状況において、自動減速条件が満たされると、制御装置60は、第2切換弁72のソレノイドを消磁することで、当該第2切換弁72を第2位置72bから第1位置72aに切り換えることにより、走行モータ(左走行モータ36L、右走行モータ36R)を第2速度から第1速度に減速する。つまり、制御装置60は、自動減速制御において、自動減速を行う際は、左走行モータ36Lと右走行モータ36Rとの両方の回転数を、第2速度から第1速度に減速する。
【0050】
なお、自動減速部61は、自動減速を行った後、復帰条件が満たされると、第2切換弁72のソレノイドを励磁することで、当該第2切換弁72を第1位置72aから第2位置72bに切り換えることにより、走行モータ36L、36Rの回転数を第1速度から第2速度に増速する。即ち、走行モータ36L、36Rの回転数を第2速度に復帰させる。つまり、制御装置60は、第1速度から第2速度に復帰する場合は、左走行モータ36Lと右走行モータ36Rとの両方の回転数を、第1速度から第2速度に増速する。
【0051】
制御装置60は、自動減速が無効である場合に、速度変更スイッチ67の操作に応じて、走行モータ36L、36Rの回転数を第1速度及び第2速度のいずれかに切り換える手動切換制御を行う。手動切換制御では、速度変更スイッチ67が第1速度側に切り換えられた場合は、第2切換弁72のソレノイドを消磁することで、走行モータ36L、36Rの回転数を第1速度に設定する。また、手動切換制御では、速度変更スイッチ67が第2速度側に切り換えられた場合は、第2切換弁72のソレノイドを消磁することで、走行モータ36L、36Rの回転数を第2速度に設定する。
【0052】
さて、制御装置60は、循環油路57h、57iの圧力に基づいて自動減速(走行モータ36L、36Rの回転数を第2速度から第1速度に自動的に切り替える制御処理)を行う。循環油路57h、57iには、複数の圧力検出装置80が接続されている。複数の圧力検出装置80は、第1圧力検出装置80a、第2圧力検出装置80b、第3圧力検出装置80c、及び第4圧力検出装置80dを含んでいる。
【0053】
第1圧力検出装置80aは、循環油路57hにおいて、左走行モータ36Lの第1ポートP11側に設けられ、第1ポートP11側の圧力を第1走行圧LF(t)として検出する。第2圧力検出装置80bは、循環油路57hにおいて、左走行モータ36Lの第2ポートP12側に設けられ、第2ポートP12側の圧力を第2走行圧LB(t)として検出する。第3圧力検出装置80cは、循環油路57iにおいて、右走行モータ36Rの第3ポートP13側に設けられ、第3ポートP13側の圧力を第3走行圧RF(t)として検出する。第4圧力検出装置80dは、循環油路57iにおいて、右走行モータ36Rの第4ポートP14側に設けられ、第4ポートP14側の圧力を第4走行圧RB(t)として検出する。
【0054】
制御装置60の自動減速部61は、第1圧力検出装置80aが検出した第1走行圧LF(t,rpm)、第2圧力検出装置80bが検出した第2走行圧LB(t,rpm)、第3圧力検出装置80cが検出した第3走行圧RF(t,rpm)、第4圧力検出装置80dが検出した第4走行圧RB(t,rpm)に基づいて、自動減速を行う。なお、第1走行圧LF(t,rpm)、第2走行圧
LB(t,rpm)、第3走行圧RF(t,rpm)、第4走行圧RB(t,rpm)で示された(t,rpm)は、ある時間tでの原動機の実回転数と紐づいた値であることを示している。
【0055】
具体的には、自動減速部61は、式(1)に示すように、第1走行圧LF(t,rpm)、第2走行圧LB(t,rpm)、第3走行圧RF(t,rpm)、及び第4走行圧RB(t,rpm)のうち、少なくともいずれ1つが旋回閾値(第1閾値)Z1(rpm)以上になった場合に、自動減速(走行モータ36L、36Rの回転数を高速域である第2速度から低速域である第1速度に自動的に切り替える処理)を行う。式(1)は自動減速条件の一例である。
【0056】
【0057】
他の例として、自動減速部61は、第1走行圧LF(t,rpm)、第2走行圧LB(t,rpm)、第3走行圧RF(t,rpm)、及び第4走行圧RB(t,rpm) のうち、少なくともいずれ2つを比較した結果に基づいて、自動減速を行ってもよい。
さて、制御装置60は、第1走行圧LF(t,rpm)、第2走行圧LB(t,rpm)、第3走行圧RF(t,rpm)、第4走行圧RB(t,rpm)、及び旋回閾値Z1(rpm)に基づいて、作業機1が旋回を行ってるか否かの判断を行う。
【0058】
制御装置60は、作業機1の走行中において、第1走行圧LF(t,rpm)、第2走行圧LB(t,rpm)、第3走行圧RF(t,rpm)、第4走行圧RB(t,rpm)を参照する。そして、制御装置60は、式(2)に示すように、第1走行圧LF(t,rpm)から第3走行圧RF(t,rpm)を減算した第1左右差圧ΔZa、第3走行圧RF(t,rpm)から第1走行圧LF(t,rpm)を減算した第2左右差圧ΔZb、第2走行圧LB(t,rpm)から第4走行圧RB(t,rpm)を減算した第3左右差圧ΔZc、第4走行圧RB(t,rpm)から第2走行圧LB(t,rpm)を減算した第4左右差圧ΔZdを演算する。
【0059】
【0060】
制御装置60は、第1走行圧LF(t,rpm)から第3走行圧RF(t,rpm)を減算した第1左右差圧ΔZaと、第3走行圧RF(t,rpm)から第1走行圧LF(t,rpm)を減算した第2左右差圧ΔZbとに基づいて、左走行モータ36L及び右走行モータ36Rの正転時のバランスを数値化する。また、制御装置60は、第2走行圧LB(t,rpm)から第4走行圧RB(t,rpm)を減算した第3左右差圧ΔZcと、第4走行圧RB(t,rpm)から第2走行圧LB(t,rpm)を減算した第4左右差圧ΔZdとに基づいて、左走行モータ36L及び右走行モータ36Rの逆転時のバランスを数値化する。
【0061】
また、制御装置60は、第1左右差圧ΔZa、第2左右差圧ΔZb、第3左右差圧ΔZc、及び第4左右差圧ΔZdに基づいて、機体2(作業機1)が旋回しているか否かを判断する。
例えば、第1左右差圧ΔZaが予め定められた旋回閾値Z1(rpm)よりも高い場合、制御装置60は、左走行モータ36Lの正転側の圧力が高いと判断し、作業機1(機体2)が右方向へ前進で信地旋回をしていると判断する。また、第2左右差圧ΔZbが旋回閾値Z1(rpm)よりも高い場合、制御装置60は、右走行モータ36Rの正転側の圧力が高いと判断し、作業機1(機体2)が左方向へ前進で信地旋回をしていると判断する。
【0062】
また、第3左右差圧ΔZcが予め定められた旋回閾値Z1(rpm)よりも高い場合、制御装置60は、左走行モータ36Lの逆転側の圧力が高いと判断し、作業機1(機体2)が右方向へ後進で信地旋回をしていると判断する。また、第4左右差圧ΔZdが旋回閾値Z1(rpm)よりも高い場合、制御装置60は、右走行モータ36Rの逆転側の圧力が高いと判断し、作業機1(機体2)が左方向へ後進で信地旋回をしていると判断する。
【0063】
なお、制御装置60は、第1左右差圧ΔZa、第2左右差圧ΔZb、第3左右差圧ΔZc、第4左右差圧ΔZdの大きさに基づいて、作業機1(機体2)の度合いを判断してもよい。制御装置60は、例えば、第1左右差圧ΔZaが高くなるにしたがって、作業機1(機体2)が右方向へ前進で信地旋回している旋回度合いが大きいと判断する。また、第2左右差圧ΔZbが高くなるにしたがって、作業機1(機体2)が左方向へ前進で信地旋回している旋回度合いが大きいと判断する。
【0064】
このように、制御装置60は、式(2)で得られた第1左右差圧ΔZa、第2左右差圧ΔZb、第3左右差圧ΔZc、第4左右差圧ΔZdによって、作業機1(機体2)が旋回しているか否かを判断することができる。
制御装置60は、作業機1(機体2)が旋回しているか否かの判断結果を自動減速の減速閾値の設定に用いる。また、制御装置60は、作業機1が旋回しているか否かの判断結果を、作業機1に搭載された表示装置に表示したり、作業機1が旋回中であることをブザー、ランプ等によって報知したりしてもよい。
【0065】
さて、制御装置60は、第1リリーフ弁81aの第1走行リリーフ圧w1、第2リリーフ弁81bの第2走行リリーフ圧w2、第3リリーフ弁81cの第3走行リリーフ圧w3、第4リリーフ弁81dの第4走行リリーフ圧w4に基づいて、旋回閾値Z1(rpm)を設定する。例えば、制御装置60は、第1走行リリーフ圧w1、第2走行リリーフ圧w2、第3走行リリーフ圧w3、第4走行リリーフ圧w4のそれぞれと補正係数α1により、旋回閾値Z1(rpm)を設定する。
【0066】
なお、走行リリーフ圧とは、第1リリーフ弁81a、第2リリーフ弁81b、第3リリーフ弁81c、第4リリーフ弁81dが作動したときの作動油の圧力、又は、第1リリーフ弁81a、第2リリーフ弁81b、第3リリーフ弁81c、第4リリーフ弁81dが作動した後安定したときの作動油の圧力である。
制御装置60は、所定の操作によって取得モードになる。制御装置60は取得モードになると、まず、原動機回転数を変更しながら、当該原動機回転数が所定回転数であるときの第1走行リリーフ圧w1、第2走行リリーフ圧w2、第3走行リリーフ圧w3、第4走行リリーフ圧w4を取得する。そして、制御装置60は、原動機回転数に対応して定められた走行リリーフ圧w1~w4に応じて、旋回閾値Z1(rpm)の設定を行う。
【0067】
説明の便宜上、第1走行リリーフ圧w1のことを第1走行リリーフ圧w1(rpm)、第2走行リリーフ圧w2のことを第2走行リリーフ圧w2(rpm)、第3走行リリーフ圧w3のことを第3走行リリーフ圧w3(rpm)、第4走行リリーフ圧w4のことを第4走行リリーフ圧w4(rpm)と言う。
旋回閾値Z1(rpm)の設定にあたって、制御装置60は、式(3)に示すように、第1走行リリーフ圧w1(rpm)、第2走行リリーフ圧w2(rpm)、第3走行リリーフ圧w3(rpm
)、及び第4走行リリーフ圧w4(rpm)を参照する。また、式(3)のα1は、補正係数である。式(3)に示すように、制御装置60は、第1走行リリーフ圧w1(rpm)、第2走行リリーフ圧w2(rpm)、第3走行リリーフ圧w3(rpm)、第4走行リリーフ圧w4(rpm)のそれぞれの差圧に補正係数α1を乗算することにより、旋回閾値Z1(rpm)を設定する。
【0068】
【0069】
より詳しくは、作業機1の取得モードにおいて、制御装置60は、原動機回転数を所定回転数に設定する。測定装置69(
図1参照)は、原動機回転数が所定回転数であるときの第1走行リリーフ圧w1(rpm)、第2走行リリーフ圧w2(rpm)、第3走行リリーフ圧w3(rpm)及び第4走行リリーフ圧w4(rpm)を測定する。
また、制御装置60は、式(4)に示すように、基準値β1、第1走行リリーフ圧w1(rpm)、第2走行リリーフ圧w2(rpm)、第3走行リリーフ圧w3(rpm)、第4走行リリーフ圧w4(rpm)、及び補正係数α2によって、旋回閾値Z1(rpm)を設定してもよい。
【0070】
【0071】
なお、作業機1の取得モードでは、制御装置60は、原動機32の駆動を制御して、少なくともアイドリングに対応する原動機回転数から、原動機32が出力し得る最大の原動機回転数の範囲で、原動機32の回転数を変更する。そして、制御装置60は、当該原動機回転数を変更する毎に第1走行リリーフ圧w1(rpm)、第2走行リリーフ圧w2(rpm)、第3走行リリーフ圧w3(rpm)、及び第4走行リリーフ圧w4(rpm) を取得する。
【0072】
詳しくは、制御装置60の内部に設けられた不揮発性メモリ等の記憶部(図示省略)には、
図3に示すような、原動機回転数と各走行リリーフ圧w1(rpm)、w2(rpm)、w3(rpm)、w4(rpm)との対応関係を示すテーブルのデータが予め記憶されている。原動機回転数と各走行リリーフ圧w1(rpm)、w2(rpm)、w3(rpm)、w4(rpm)との対応関係は、予め事件及び設計により定められている。制御装置60は、回転数検出装置68(
図1)により原動機回転数を検出すると、当該原動機回転数に対応する第1走行リリーフ圧w1(rpm)、第2走行リリーフ圧w2(rpm)、第3走行リリーフ圧w3(rpm)、及び第4走行リリーフ圧w4(rpm)を内部の記憶部から読み出す。
【0073】
さて、上述した実施形態では、第1左右差圧ΔZa、第2左右差圧ΔZb、第3左右差圧ΔZc、第4左右差圧ΔZdが旋回閾値Z1(rpm)よりも高くなったときに、旋回であると判断しているが、旋回が終了した、即ち、機体2が旋回状態でなくなったことは、旋回解除閾値(第2閾値)Z2(rpm)で判断する。制御装置60は、第1左右差圧ΔZa、第2左右差圧ΔZb、第3左右差圧ΔZc、第4左右差圧ΔZdのいずれかが、旋回解除
閾値Z2(rpm)以下になったときに旋回が終了した、即ち機体2が旋回状態でなくなったと判断する。この旋回解除閾値Z2(rpm)も旋回閾値Z1(rpm)と同様に、原動機32の回転数によって設定され、補正係数によって設定される。
【0074】
具体的には、式(5)に示すように、制御装置60は、第1走行リリーフ圧w1(rpm)、第2走行リリーフ圧w2(rpm)、第3走行リリーフ圧w3(rpm)、第4走行リリーフ圧w4(rpm)のそれぞれの差圧に補正係数γ1を乗算することにより、旋回解除閾値Z2(rpm)を設定する。
【0075】
【0076】
なお、式(6)に示すように、制御装置60は、基準値β2、第1走行リリーフ圧w1(rpm)、第2走行リリーフ圧w2(rpm)、第3走行リリーフ圧w3(rpm)、第4走行リリーフ圧w4(rpm)及び補正係数γ2により旋回解除閾値Z2(rpm)を求めてもよい。
【0077】
【0078】
さて、制御装置60は、第1走行圧LF(t,rpm)、第2走行圧LB(t,rpm)、第3走行圧RF(t,rpm)、第4走行圧RB(t,rpm)、及び旋回閾値Z1(rpm)に基づいて、作業機1(機体2)の直進状態の当否も判断することができる。
詳しくは、作業機1の走行状態において、制御装置60は、第1走行圧LF(t,rpm)から第3走行圧RF(t,rpm)を減算した第1左右差圧ΔZa、第3走行圧RF(t,rpm)から第1走行圧LF(t,rpm)を減算した第2左右差圧ΔZb、第2走行圧LB(t,rpm)から第4走行圧RB(t,rpm)を減算した第3左右差圧ΔZc、及び第4走行圧RB(t,rpm)から第2走行圧LB(t,rpm)を減算した第4左右差圧ΔZdが、旋回閾値Z1(rpm)以下である場合、機体2が直進していると判断する。
【0079】
また、制御装置60は、第1左右差圧ΔZa、第2左右差圧ΔZb、第3左右差圧ΔZc、及び第4左右差圧ΔZdのうちの少なくともいずれか1つが、旋回閾値Z1(rpm)より高い場合、機体2が直進していないと判断する。この場合、前述したように制御装置60は、機体2が旋回していると判断する。
また、制御装置60は、機体2が旋回していると判断した後、第1左右差圧ΔZa、第2左右差圧ΔZb、第3左右差圧ΔZc、第4左右差圧ΔZdのうちの少なくともいずれか1つが、旋回解除閾値Z2(rpm)以下になった場合、機体2の旋回が終了し、機体2が直進を開始したと判断する。
【0080】
旋回解除閾値Z2(rpm)は、旋回閾値Z1(rpm)より低い値に設定してもよい。この場合、制御装置60は、第1左右差圧ΔZa、第2左右差圧ΔZb、第3左右差圧ΔZc、第
4左右差圧ΔZdが、旋回解除閾値Z2(rpm)より高くて、旋回閾値Z1(rpm)以下である場合に、機体2が直進していると判断してもよい。また、制御装置60は、第1左右差圧ΔZa、第2左右差圧ΔZb、第3左右差圧ΔZc、第4左右差圧ΔZdが、旋回解除閾値Z2(rpm)及び旋回閾値Z1(rpm)より高い場合に、機体2が旋回していると判断してもよい。
【0081】
また、制御装置60は、機体2が直進しているときにも、自動減速を行ってもよい。この場合、例えば制御装置60は、第1走行圧LF(t,rpm)、第2走行圧LB(t,rpm)、第3走行圧RF(t,rpm)、及び第4走行圧RB(t,rpm)のうち、少なくともいずれ1つが所定の直進閾値(第3閾値)以上になった場合に、自動減速を行う。直進閾値も、制御装置60が、第1走行リリーフ圧w1、第2走行リリーフ圧w2、第3走行リリーフ圧w3、第4走行リリーフ圧w4に基づいて設定してもよい。
さらに、制御装置60は、機体2の直進時に自動減速を行った後、所定の復帰条件が満たされると、走行モータ36L、36Rの回転数を第1速度から第2速度に増速する自動増速を行ってもよい。
【0082】
以上の実施形態によれば、作業機1は以下のような構成と効果を奏する。
作業機1は、機体2と、機体2に設けられた原動機32と、機体2の左側に設けられた左走行装置5Lと、機体2の右側に設けられた右走行装置5Rと、左走行装置5Lに動力を伝達可能で且つ回転数を第1速度と当該第1速度よりも速い第2速度とに切換可能な左走行モータ36Lと、右走行装置5Rに動力を伝達可能で且つ回転数を第1速度と第2速度とに切換可能な右走行モータ36Rと、左走行モータ36Lに作動油を供給する左走行ポンプ53Lと、右走行モータ36Rに作動油を供給する右走行ポンプ53Rと、左走行ポンプ53Lの第1ポート及び第2ポートに接続され且つ、左走行モータ36Lに接続される第1循環油路57hと、右走行ポンプ53Rの第3ポート及び第4ポートに接続され且つ、右走行モータ36Rに接続される第2循環油路57iと、左走行モータ36Lの第1ポート側に設けられ且つ左走行モータ36Lの回転時の第1循環油路57hに作用する作動油の圧力を第1走行圧として検出する第1圧力検出装置80aと、左走行モータ36Lの第2ポート側に設けられ且つ左走行モータ36Lの回転時の第1循環油路57hに作用する作動油の圧力を第2走行圧として検出する第2圧力検出装置80bと、右走行モータ36Rの第3ポート側に設けられ且つ右走行モータ36Rの回転時の第2循環油路57iに作用する作動油の圧力を第3走行圧として検出する第3圧力検出装置80cと、右走行モータ36Rの第4ポート側に設けられ且つ右走行モータ36Rの回転時の第2循環油路57iに作用する作動油の圧力を第4走行圧として検出する第4圧力検出装置80dと、第1走行圧、第2走行圧、第3走行圧、第4走行圧、及び第1閾値(旋回閾値)に基づいて機体2が旋回を行っているか否かを判断可能であり、且つ、第1閾値を変更可能である制御装置60と、を備えている。
【0083】
上記によれば、作業機1(機体2)が走行している状態において、左走行モータ36L及び右走行モータ36Rのそれぞれの正転時のバランスと、左走行モータ36L及び右走行モータ36Rのそれぞれの逆転時のバランスとが把握することができる。このため、操作部材59の入力をセンサ等で検出しなくても、機体2が旋回状態にあるか否かを簡単に把握することができる。しかも、制御装置60が第1閾値を変更可能であるため、作業機1の様々な状況に応じた第1閾値と上記各走行圧とに基づいて、作業機1が旋回状態にあるか否かを適正に判断することができる。そして、制御装置60が作業機1の旋回状態に合わせて、自動減速を行うタイミングを適切に設定することができ、当該設定したタイミングで旋回時に自動減速を行うことが可能となる。
なお、作業機1が走行中である場合(停車していない場合)において、作業機1が旋回状態にあるときは、作業機1が直進状態にないときとみなすことができる。このため、機体2が旋回状態にあるか否かの判断結果から、機体2が直進状態にあるか否かも判断する
ことが可能である。
【0084】
また、制御装置60は、第1走行圧から第3走行圧を減算した第1左右差圧、第3走行圧から第1走行圧を減算した第2左右差圧、第2走行圧から第4走行圧を減算した第3左右差圧、第4走行圧から第2走行圧を減算した第4左右差圧、及び第1閾値(旋回閾値)に基づいて、機体2が旋回を行っているか否かを判断する。これによれば、作業機1が走行している状態において、左走行モータ36L及び右走行モータ36Rのそれぞれの正転時のバランスと、左走行モータ36L及び右走行モータ36Rのそれぞれの逆転時のバランスとに基づいて、機体2が旋回状態にあるか否かを簡単に把握することが可能となる。
また、制御装置60は、機体2が旋回を行っていると判断した後、第1走行圧、第2走行圧、第3走行圧、第4走行圧、及び第2閾値(旋回解除閾値)に基づいて、機体2の旋回が終了したか否かを判断する。これによれば、作業機1(機体2)が旋回した後に、当該旋回が適正に終了したことを簡単に把握することができる。
【0085】
作業機1は、機体2と、機体2に設けられた原動機32と、機体2の左側に設けられた左走行装置5Lと、機体2の右側に設けられた右走行装置5Rと、左走行装置5Lに動力を伝達可能で且つ回転数を第1速度と当該第1速度よりも速い第2速度とに切換可能な左走行モータ36Lと、右走行装置5Rに動力を伝達可能で且つ回転数を第1速度と第2速度とに切換可能な右走行モータ36Rと、左走行モータ36Lに作動油を供給する左走行ポンプ53Lと、右走行モータ36Rに作動油を供給する右走行ポンプ53Rと、左走行ポンプ53Lの第1ポート及び第2ポートに接続され且つ、左走行モータ36Lに接続される第1循環油路57hと、右走行ポンプ53Rの第3ポート及び第4ポートに接続され且つ、右走行モータ36Rに接続される第2循環油路57iと、左走行モータ36Lの第1ポート側に設けられ且つ左走行モータ36Lの回転時の第1循環油路57hに作用する作動油の圧力を第1走行圧として検出する第1圧力検出装置80aと、左走行モータ36Lの第2ポート側に設けられ且つ左走行モータ36Lの回転時の第1循環油路57hに作用する作動油の圧力を第2走行圧として検出する第2圧力検出装置80bと、右走行モータ36Rの第3ポート側に設けられ且つ右走行モータ36Rの回転時の第2循環油路57iに作用する作動油の圧力を第3走行圧として検出する第3圧力検出装置80cと、右走行モータ36Rの第4ポート側に設けられ且つ右走行モータ36Rの回転時の第2循環油路57iに作用する作動油の圧力を第4走行圧として検出する第4圧力検出装置80dと、第1走行圧、第2走行圧、第3走行圧、第4走行圧、及び第1閾値(旋回閾値)に基づいて機体2が旋回を行っているか否かを判断可能であり、且つ、第1閾値を変更可能である制御装置60と、を備えている。
【0086】
上記によれば、作業機1が走行している状態において、左走行モータ36L及び右走行モータ36Rのそれぞれの正転時のバランスと、左走行モータ36L及び右走行モータ36Rのそれぞれの逆転時のバランスとが把握することができる。このため、操作部材59の入力をセンサ等で検出しなくても、機体2が直進状態にあるか否かを簡単に把握することができる。しかも、制御装置60が第1閾値を変更可能であるため、作業機1の様々な状況に応じた第1閾値と上記各走行圧とに基づいて、作業機1が旋回状態にあるか否かを適正に判断することができる。そして、制御装置60が作業機1の直進状態に合わせて、自動減速を行うタイミングを適切に設定することができ、当該設定したタイミングで直進時に自動減速を行うことが可能となる。
なお、作業機1が走行中である場合において、作業機1が直進状態にあるときは、作業機1が旋回状態にないときとみなすことができる。このため、機体2が直進状態にあるか否かの判断結果から、機体2が旋回状態にあるか否かも判断することが可能である。
【0087】
また、制御装置60は、第1走行圧から第3走行圧を減算した第1左右差圧、第3走行圧から第1走行圧を減算した第2左右差圧、第2走行圧から第4走行圧を減算した第3左
右差圧、第4走行圧から第2走行圧を減算した第4左右差圧、及び第1閾値(旋回閾値)に基づいて、機体2が直進を行っているか否かを判断する。これによれば、作業機1が走行している状態において、左走行モータ36L及び右走行モータ36Rのそれぞれの正転時のバランスと、左走行モータ36L及び右走行モータ36Rのそれぞれの逆転時のバランスとに基づいて、機体2が直進状態にあるか否かを簡単に把握することが可能となる。
【0088】
また、制御装置60は、第1走行圧、第2走行圧、第3走行圧、第4走行圧、及び第1閾値に基づいて、機体2が旋回を行っていると判断した後、第1走行圧、第2走行圧、第3走行圧、第4走行圧、及び第2閾値(旋回解除閾値)に基づいて、機体2の機体が直進を開始したか否かを判断する。これによれば、作業機1が旋回を終了して、直進を開始したことを簡単に把握することができる。
また、制御装置60は、第1走行圧、第2走行圧、第3走行圧、又は第4走行圧に基づいて、第1閾値(旋回閾値)を変更する。これによれば、作業機1の様々な状況の変化に応じて第1閾値を設定することができ、作業機1の旋回状態又は直進状態を一層適正に判断することが可能となる。
【0089】
また、作業機1は、第1循環油路57hであって第1ポート82a側の油路に接続された第1リリーフ弁81aと、第1循環油路57hであって第2ポート82b側の油路に接続された第2リリーフ弁81bと、第2循環油路57iであって第3ポート82c側の油路に接続された第3リリーフ弁81cと、第2循環油路57iであって第4ポート82d側の油路に接続された第4リリーフ弁81dと、を備え、制御装置60は、原動機32の回転数に応じた第1リリーフ弁31aの第1走行リリーフ圧、第2リリーフ弁31bの第2走行リリーフ圧、第3リリーフ弁31cの第3走行リリーフ圧、第4リリーフ弁31dの第4走行リリーフ圧に基づいて、第1閾値(旋回閾値)を設定する。
これによれば、作業機1における第1走行リリーフ圧、第2走行リリーフ圧、第3走行リリーフ圧、第4走行リリーフ圧に応じて、即ち、作業機1に設置されたリリーフ弁の状態に応じて、第1閾値を適正に設定することができる。
【0090】
また、制御装置60は、第1走行リリーフ圧、第2走行リリーフ圧、第3走行リリーフ圧31c、第4走行リリーフ圧31dに基づいて、第2閾値(旋回解除閾値)を設定する。これによれば、作業機1の様々な状況に応じて作動する各リリーフ弁31a~31dの各走行リリーフ圧に基づいて、第2閾値を適正に設定することができる。
【0091】
さらに、制御装置60は、左走行モータ36L及び右走行モータ36Rの回転数が高速域である第2速度に切り換えられている場合、第1走行圧、第2走行圧、第3走行圧、又は第4走行圧に基づいて、左走行モータ36L及び右走行モータ36Rの回転数を第2速度から低速域である第1速度に自動的に減速する自動減速を行う。これによれば、第1走行圧、第2走行圧、第3走行圧、又は第4走行圧といった同一のパラメータに基づいて、作業機1の旋回状態の当否判断、直進状態の当否判断、及び自動減速の実行適否の判断を行うことができる。またこの結果、作業機1の旋回時又は直進時に、自動減速を適正に実行することができ、機体2の走行時の安全性と、自動化による利便性とを向上させることが可能となる。
【0092】
上述した実施形態では、リリーフ弁31a~31dの各走行リリーフ圧(第1走行リリーフ圧~第4走行リリーフ圧)に基づいて第1閾値(旋回閾値)を設定及び変更したが、作動油の温度(油温)又は原動機32の回転数(原動機回転数)に基づいて、第1閾値を変更してもよい。例えば、制御装置60は、回転数検出装置68により検出された原動機回転数に基づいて、第1閾値を設定及び変更する。或いは、制御装置60は、走行モータ36L、36R又は走行ポンプ53L、53Rに対して流れる作動油の温度(油温)を油温検出装置により検出し、当該検出された油温に基づいて、第1閾値を設定及び変更する。
【0093】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内での全ての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0094】
1 作業機
2 機体
5L 左走行装置
5R 右走行装置
36L 左走行モータ
36R 右走行モータ
53L 左走行ポンプ
53R 右走行ポンプ
57h 接続油路(第1循環油路)
57i 接続油路(第2循環油路)
80a 第1圧力検出装置
80b 第2圧力検出装置
80c 第3圧力検出装置
80d 第4圧力検出装置