IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社ソミックマネージメントホールディングスの特許一覧

特開2024-96175流通制御弁、直動ダンパーおよびステアリング装置
<>
  • 特開-流通制御弁、直動ダンパーおよびステアリング装置 図1
  • 特開-流通制御弁、直動ダンパーおよびステアリング装置 図2
  • 特開-流通制御弁、直動ダンパーおよびステアリング装置 図3
  • 特開-流通制御弁、直動ダンパーおよびステアリング装置 図4
  • 特開-流通制御弁、直動ダンパーおよびステアリング装置 図5
  • 特開-流通制御弁、直動ダンパーおよびステアリング装置 図6
  • 特開-流通制御弁、直動ダンパーおよびステアリング装置 図7
  • 特開-流通制御弁、直動ダンパーおよびステアリング装置 図8
  • 特開-流通制御弁、直動ダンパーおよびステアリング装置 図9
  • 特開-流通制御弁、直動ダンパーおよびステアリング装置 図10
  • 特開-流通制御弁、直動ダンパーおよびステアリング装置 図11
  • 特開-流通制御弁、直動ダンパーおよびステアリング装置 図12
  • 特開-流通制御弁、直動ダンパーおよびステアリング装置 図13
  • 特開-流通制御弁、直動ダンパーおよびステアリング装置 図14
  • 特開-流通制御弁、直動ダンパーおよびステアリング装置 図15
  • 特開-流通制御弁、直動ダンパーおよびステアリング装置 図16
  • 特開-流通制御弁、直動ダンパーおよびステアリング装置 図17
  • 特開-流通制御弁、直動ダンパーおよびステアリング装置 図18
  • 特開-流通制御弁、直動ダンパーおよびステアリング装置 図19
  • 特開-流通制御弁、直動ダンパーおよびステアリング装置 図20
  • 特開-流通制御弁、直動ダンパーおよびステアリング装置 図21
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024096175
(43)【公開日】2024-07-12
(54)【発明の名称】流通制御弁、直動ダンパーおよびステアリング装置
(51)【国際特許分類】
   B62D 7/22 20060101AFI20240705BHJP
   F16F 9/34 20060101ALI20240705BHJP
   F16F 7/00 20060101ALI20240705BHJP
   F16F 9/14 20060101ALI20240705BHJP
   B62D 3/12 20060101ALI20240705BHJP
【FI】
B62D7/22
F16F9/34
F16F7/00 L
F16F9/14 Z
B62D3/12 503B
【審査請求】有
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024067942
(22)【出願日】2024-04-19
(62)【分割の表示】P 2022528483の分割
【原出願日】2021-04-22
(31)【優先権主張番号】P 2020096430
(32)【優先日】2020-06-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2020124185
(32)【優先日】2020-07-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】519184930
【氏名又は名称】株式会社ソミックマネージメントホールディングス
(74)【代理人】
【識別番号】100136674
【弁理士】
【氏名又は名称】居藤 洋之
(72)【発明者】
【氏名】中屋 一正
(57)【要約】
【課題】取付対象物の装置構成の大型化を回避できるとともに取り付け可能な取付対象物の種類を広げることができる直動ダンパーおよびこの直動ダンパーを備えたステアリング装置を提供する。
【解決手段】ステアリング装置100は、ラックバー103とラックエンド106との間に直動ダンパー120を備えている。直動ダンパー120は、内室形成体130の内側におけるソケット本体107との間に内室121が形成されている。ソケット本体107は、ステアリング装置100におけるラックエンド106を構成する軸状の部品であり、内室形成体130に対して摺動自在に嵌合している。内室形成体130は、筒状に形成されるとともに内周部に円環状に流通制御弁140が形成されている。流通制御弁140は、第1流通制御弁150、第2流通制御弁160および第3流通制御弁170で構成されている。
【選択図】 図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体の流動を制限しつつ流動させて前記流体の流通を制御する流通制御弁であって、
前記流体を流通させる第1流通孔を備えた第1流通体と、
前記第1流通体に対向配置されて前記流体を流通させる第2流通孔を備えた第2流通体と、
前記第1流通体と前記第2流通体とを互いに接触する位置から離れるように弾性力を発揮する離隔用弾性体とを備え、
前記第1流通体および前記第2流通体のうちの少なくとも一方は、
前記第1流通体と前記第2流通体とが互いに接触した際に前記第2流通孔および前記第1流通孔のうちの少なくとも一方の流通孔における少なくとも一部を塞ぐ孔径規制部を備えることを特徴とする流通制御弁。
【請求項2】
請求項1に記載した流通制御弁において、
前記孔径規制部は、
前記第1流通体および前記第2流通体のうちの一方にのみ設けられていることを特徴とする流通制御弁。
【請求項3】
請求項1に記載した流通制御弁において、
前記孔径規制部は、
前記第1流通体および前記第2流通体の両方にそれぞれ設けられていることを特徴とする流通制御弁。
【請求項4】
請求項1ないし請求項3のうちのいずれか1つに記載した流通制御弁において、
前記孔径規制部は、
前記第2流通孔および前記第1流通孔のうちの少なくとも一方の流通孔を完全に塞ぐように形成されていることを特徴とする流通制御弁。
【請求項5】
請求項1ないし請求項4のうちのいずれか1つに記載した流通制御弁において、さらに、
前記第1流通体に対して前記第2流通体側に同第2流通体を摺動自在に収容する第2流通体収容部を備え、
前記離隔用弾性体は、
前記第2流通体収容部内における前記第1流通体と前記第2流通体との間に設けられていることを特徴とする流通制御弁。
【請求項6】
請求項1ないし請求項5のうちのいずれか1つに記載した流通制御弁において、
前記第2流通体は、
前記第2流通孔における前記第1流通体とは反対側の開口部に同開口部側から奥側に向かって孔の大きさが小さくなるテーパ形状に形成されていることを特徴とする流通制御弁。
【請求項7】
請求項1ないし請求項6のうちのいずれか1つに記載した流通制御弁において、さらに、
前記第1流通体および前記第2流通体とは別の流路で前記流体を流通させる一方向弁からなる第2流通制御弁を備え、
前記第2流通制御弁は、
前記第1流通体側から前記第2流通体側に向かう前記流体の流れを許容しつつ前記第2流通体側から前記第1流通体側に向かう前記流体の流れを阻止することを特徴とする流通制御弁。
【請求項8】
請求項1ないし請求項7のうちのいずれか1つに記載した流通制御弁において、さらに、
前記第1流通体および前記第2流通体とは別の流路で前記流体の流動を制限しつつ流通させる第3流通制御弁を備え、
前記第3流通制御弁は、
前記第1流通体側と前記第2流通体側との間の前記流体の流動を制限しつつ流通させることを特徴とする流通制御弁。
【請求項9】
流体を液密的に収容する内室を有する内室形成体を備えて前記流体が受けた外力を同流体の流動を制限することで減衰させる直動ダンパーにおいて、
前記内室形成体に対して相対変位する相対変位体と、
前記内室形成体および前記相対変位体のうちの少なくとも一方に設けられた請求項1ないし請求項8のうちのいずれか1つに記載した流通制御弁とを備え、
前記流通制御弁は、
前記流体の流動を制限しつつ流動させることを特徴とする直動ダンパー。
【請求項10】
請求項9に記載した直動ダンパーにおいて、さらに、
前記流体を前記流通制御弁における前記第1流通体側から前記第2流通体側に流動させるための弾性力を付与する復帰用弾性体を備え、
前記復帰用弾性体は、
前記内室形成体および前記相対変位体のうちの一方に対して前記弾性力を付与してこの一方を他方に対して変位させることを特徴とする直動ダンパー。
【請求項11】
請求項10に記載した直動ダンパーにおいて、
前記相対変位体は、棒状に形成されており、
前記内室は、前記相対変位体の外側に円環筒状に形成されており、
前記流通制御弁は、前記円環筒状の内室内に嵌合するリング状の弁支持体に形成されており、
前記内室形成体は、
前記相対変位体に摺動自在に嵌合する筒状に形成されて前記内室に対して前記流通制御弁を介して前記流通制御弁とともに一体的に相対変位するものであることを特徴とする直動ダンパー。
【請求項12】
請求項10に記載した直動ダンパーにおいて、さらに、
前記内室形成体は、筒状に形成されており、
前記内室は、前記内室形成体の内側に円環筒状に形成されており、
前記流通制御弁は、前記円環筒状の内室内に嵌合するリング状の弁支持体に形成されており、
前記相対変位体は、
前記内室形成体に摺動自在に嵌合する棒状に形成されて前記内室に対して前記弁支持体を介して前記流通制御弁とともに一体的に相対変位することを特徴とする直動ダンパー。
【請求項13】
棒状に延びて形成されてステアリングホイールの操作によって回転するステアリングシャフトと、
棒状に延びて形成されて前記ステアリングシャフトの回転運動が軸線方向の往復運動に変換されて伝達されるラックバーと、
前記ラックバーの両端部にそれぞれ連結されて同各両端部に対して操舵対象となる車輪を直接的または間接的に連結する中間連結体と、
前記ラックバーを覆うラックハウジングとを備えたステアリング装置において、
請求項9ないし請求項12のうちのいずれか1つに記載した直動ダンパーを備え、
前記直動ダンパーは、
前記ラックハウジングと前記ラックバーまたは前記中間連結体との間に設けられて前記車輪からの衝撃を減衰することを特徴とするステアリング装置。
【請求項14】
請求項13に記載したステアリング装置において、
請求項11に記載した直動ダンパーを備え、
前記相対変位体は、前記中間連結体に形成されており、
前記内室形成体は、
前記ラックバーの前記往復運動によって前記ラックハウジングに接触または離隔する位置に形成されていることを特徴とするステアリング装置。
【請求項15】
請求項13に記載したステアリング装置において、
請求項12に記載した直動ダンパーを備え、
前記内室形成体は、前記ラックハウジングの端部に形成されており、
前記相対変位体は、
内部に前記ラックバーまたは前記中間連結体が貫通しており、前記ラックバーの前記往復運動によって前記ラックバーまたは前記中間連結体が接触または離隔する位置に形成されていることを特徴とするステアリング装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、流体の流動を制限しつつ流動させて流体の流通を制御する流通制御弁、この流通制御弁を備える直動ダンパーおよびこの直動ダンパーを備えるステアリング装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の技術を開示する先行技術文献として下記特許文献1がある。この特許文献1には、ラックシャフトを覆うラックハウジングと車輪に繋がるタイロッドとの間にゴム材と金属材とからなる衝撃吸収部材が設けられることで自走式車両が縁石に乗り上げた際などの強い衝撃を吸収することができるステアリング装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2016-97840号公報
【発明の概要】
【0004】
しかしながら、上記特許文献1に開示されたステアリング装置においては、衝撃吸収部材がゴムまたは合成樹脂で構成されているため、吸収可能な衝撃の大きさが小さいという問題がある。
【0005】
本発明は上記問題に対処するためなされたもので、その目的は、大きな衝撃力を吸収することができるステアリング装置、このステアリング装置に適用できる直動ダンパー、およびこの直動ダンパーに適用できる流通制御弁を提供することにある。
【0006】
上記目的を達成するため、本発明の特徴は、流体の流動を制限しつつ流動させて前記流体の流通を制御する流通制御弁であって、流体を流通させる第1流通孔を備えた第1流通体と、第1流通体に対向配置されて流体を流通させる第2流通孔を備えた第2流通体と、第1流通体と第2流通体とを互いに接触する位置から離れるように弾性力を発揮する離隔用弾性体とを備え、第1流通体および第2流通体のうちの少なくとも一方は、第1流通体と第2流通体とが互いに接触した際に第2流通孔および第1流通孔のうちの少なくとも一方の流通孔における少なくとも一部を塞ぐ孔径規制部を備えることにある。これによれば、流通制御弁は、大きな衝撃力を吸収することができる。
【0007】
また、本発明の他の特徴は、前記流通制御弁において、孔径規制部は、第1流通体および第2流通体のうちの一方にのみ設けられていることにある。
【0008】
また、本発明の他の特徴は、前記流通制御弁において、孔径規制部は、第1流通体および第2流通体の両方にそれぞれ設けられていることにある。
【0009】
また、本発明の他の特徴は、前記流通制御弁において、孔径規制部は、第2流通孔および第1流通孔のうちの少なくとも一方の流通孔を完全に塞ぐように形成されていることにある。
【0010】
また、本発明の他の特徴は、前記流通制御弁において、さらに、第1流通体に対して第2流通体側に同第2流通体を摺動自在に収容する第2流通体収容部を備え、離隔用弾性体は、第2流通体収容部内における第1流通体と第2流通体との間に設けられていることにある。
【0011】
また、本発明の他の特徴は、前記流通制御弁において、第2流通体は、第2流通孔における第1流通体とは反対側の開口部に同開口部側から奥側に向かって孔の大きさが小さくなるテーパ形状に形成されていることにある。
【0012】
また、本発明の他の特徴は、前記流通制御弁において、さらに、第1流通体および第2流通体とは別の流路で流体を流通させる一方向弁からなる第2流通制御弁を備え、第2流通制御弁は、第1流通体側から第2流通体側に向かう流体の流れを許容しつつ第2流通体側から第1流通体側に向かう流体の流れを阻止することにある。
【0013】
また、本発明の他の特徴は、前記流通制御弁において、さらに、第1流通体および第2流通体とは別の流路で流体の流動を制限しつつ流通させる第3流通制御弁を備え、第3流通制御弁は、第1流通体側と第2流通体側との間の流体の流動を制限しつつ流通させることにある。
【0014】
また、本発明は流通制御弁の発明として実施できるばかりでなく、この流通制御弁を備える直動ダンパー、およびこの直動ダンパーを備えるステアリング装置の発明としても実施できるものである。
【0015】
具体的には、流体を液密的に収容する内室を有する内室形成体を備えて流体が受けた外力を同流体の流動を制限することで減衰させる直動ダンパーにおいて、内室形成体に対して相対変位する相対変位体と、内室形成体および相対変位体のうちの少なくとも一方に設けられた請求項1ないし請求項8のうちのいずれか1つに記載した流通制御弁とを備え、流通制御弁は、流体の流動を制限しつつ流動させるとよい。これによれば、本発明に係る直動ダンパーは、上記した流通制御弁と同様の作用効果が期待できる。
【0016】
この場合、前記直動ダンパーにおいて、さらに、流体を流通制御弁における第1流通体側から第2流通体側に流動させるための弾性力を付与する復帰用弾性体を備え、復帰用弾性体は、内室形成体および相対変位体のうちの一方に対して弾性力を付与してこの一方を他方に対して変位させるとよい。
【0017】
また、これらの場合、前記直動ダンパーにおいて、相対変位体は、棒状に形成されており、内室は、相対変位体の外側に円環筒状に形成されており、流通制御弁は、円環筒状の内室内に嵌合するリング状の弁支持体に形成されており、内室形成体は、相対変位体に摺動自在に嵌合する筒状に形成されて内室に対して流通制御弁を介して流通制御弁とともに一体的に相対変位するとよい。
【0018】
また、これらの場合、前記直動ダンパーにおいて、さらに、内室形成体は、筒状に形成されており、内室は、内室形成体の内側に円環筒状に形成されており、流通制御弁は、円環筒状の内室内に嵌合するリング状の弁支持体に形成されており、相対変位体は、内室形成体に摺動自在に嵌合する棒状に形成されて内室に対して弁支持体を介して流通制御弁とともに一体的に相対変位するとよい。
【0019】
また、ステアリング装置は、具体的には、棒状に延びて形成されてステアリングホイールの操作によって回転するステアリングシャフトと、棒状に延びて形成されてステアリングシャフトの回転運動が軸線方向の往復運動に変換されて伝達されるラックバーと、ラックバーの両端部にそれぞれ連結されて同各両端部に対して操舵対象となる車輪を直接的または間接的に連結する中間連結体と、ラックバーを覆うラックハウジングとを備えたステアリング装置において、請求項9ないし請求項12のうちのいずれか1つに記載した直動ダンパーを備え、直動ダンパーは、ラックハウジングとラックバーまたは中間連結体との間に設けられて車輪からの衝撃を減衰するようにすればよい。これによれば、本発明に係るステアリング装置は、上記した流通制御弁および直動ダンパーと同様の作用効果が期待できる。
【0020】
この場合、前記ステアリング装置において、請求項11に記載した直動ダンパーを備え、相対変位体は、中間連結体に形成されており、内室形成体は、ラックバーの往復運動によってラックハウジングに接触または離隔する位置に形成されているとよい。
【0021】
これによれば、本発明に係るステアリング装置は、相対変位体がタイロッドをラックバーに対して可動的に接続するラックエンドに形成されているとともに、内室形成体がラックバーの往復運動によってラックハウジングに接触または離隔する位置に形成されて直動ダンパーがタイロッドまたはラックエンドなどの中間連結体に設けられているため、直動ダンパーのメンテナンスまたは交換を行い易くすることができる。
【0022】
この場合、前記ステアリング装置において、請求項12に記載した直動ダンパーを備え、内室形成体は、ラックハウジングの端部に形成されており、相対変位体は、内部にラックバーまたは中間連結体が貫通しており、ラックバーの往復運動によってラックバーまたは中間連結体が接触または離隔する位置に形成されているとよい。
【0023】
これによれば、本発明に係るステアリング装置は、内室形成体がラックハウジングの端部に設けられているとともに、相対変位体の内部にラックバーまたは中間連結体(タイロッドまたはラックエンドなど)が貫通してラックバーの往復運動によってラックバーまたはタイロッドが接触または離隔するように相対変位体が形成されている。これにより、本発明に係るステアリング装置は、直動ダンパーがラックハウジングに設けられているため、タイロッドまたは中間連結体(タイロッドまたはラックエンドなど)を軽量化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】本発明の第1実施形態に係るステアリング装置の全体構成の概略を模式的に示す説明図である。
図2図1に示すステアリング装置を構成する本発明の第1実施形態に係る直動ダンパーの外観構成の概略を示す斜視図である。
図3図2に示す直動ダンパーの内部構成の概略を示す断面図である。
図4図3に示す4-4線から見た相対変位体およびソケット本体を示す断面図である。
図5図3に示す直動ダンパーにおいて破線円5内の構造を詳細に示す部分拡大図である。
図6図3に示す直動ダンパーにおいて相対変位体がラックハウジングに接触した瞬間の状態を示す断面図である。
図7図5に示す直動ダンパーにおいて第1流通制御弁が流体を流動させる状態を示した部分拡大図である。
図8図5に示す直動ダンパーにおいて第1流通制御弁が流体を流動させない状態を示した部分拡大図である。
図9】本発明の第2実施形態に係る直動ダンパーの内部構成の概略を示す断面図である。
図10図9に示す10-10線から見た流通制御弁のみを示す正面図である。
図11図9に示す直動ダンパーにおいてソケット本体が相対変位体に接触した瞬間の状態を示す断面図である。
図12図9に示す直動ダンパーにおいて破線円12に示す部分について第1流通制御弁が流体を流動させる状態を示した部分拡大図である。
図13図9に示す直動ダンパーにおいて第1流通制御弁が流体を流動させない状態を示した部分拡大図である。
図14】本発明の変形例に係る直動ダンパーの内部構成の概略を示す断面図である。
図15図14に示す15-15線から見た流通制御弁のみを示す正面図である。
図16】本発明の他の変形例に係る直動ダンパーの内部構成の概略を示す断面図である。
図17】本発明の変形例に係るダンパーにおいて第1流通孔および第2流通孔の両方を完全に塞いで第1流通制御弁が流体を流動させない状態を示した部分拡大図である。
図18】本発明の他の変形例に係るダンパーにおいて第1流通孔の一部と第2流通孔の一部とが互いに重なり合って流体の流動が確保される状態を示した部分拡大図である。
図19】本発明の他の変形例に係るダンパーにおいて第2流通孔のみを完全に塞いで第1流通制御弁が流体を流動させない状態を示した部分拡大図である。
図20】本発明の変形例に係るダンパーにおいて第1流通孔のみを完全に塞いで第1流通制御弁が流体を流動させない状態を示した部分拡大図である。
図21図20に示す第2流通体の先端部の外観構成を示す部分拡大斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
<第1実施形態>
以下、本発明に係る直動ダンパーおよびこの直動ダンパーを備えたステアリング装置の一実施形態である第1実施形態について図面を参照しながら説明する。図1は、本発明の第1実施形態に係るステアリング装置100の全体構成の概略を模式的に示す説明図である。また、図2は、図1に示すステアリング装置100を構成する本発明の第1実施形態に係る直動ダンパー120の外観構成の概略を示す斜視図である。また、図3は、図2に示す直動ダンパー120の内部構成の概略を示す断面図である。また、図4は、図3に示す4-4線から見た内室形成体130およびソケット本体107を示す断面図である。また、図5は、図3に示す直動ダンパー120において破線円5内の構造を詳細に示す部分拡大図である。
【0026】
このステアリング装置100は、四輪の自走式車両(図示せず)における2つの前輪(または後輪)を左右方向にそれぞれ操舵するための機械装置である。
【0027】
(ステアリング装置100の構成)
ステアリング装置100は、ステアリングホイール101を備えている。ステアリングホイール101は、自走式車両の運転者が進行方向を手動で操作するための操作子(つまり、ハンドル)であり、樹脂材または金属材を円環状に形成して構成されている。このステアリングホイール101には、ステアリングシャフト102が連結されている。
【0028】
ステアリングシャフト102は、棒状に形成されてステアリングホイール101の時計回りまたは反時計回りの回転操作に応じて軸線周りに回転する部品であり、金属製の1つの棒体または複数の棒体を自在継手などを介して連結して構成されている。このステアリングシャフト102は、一方の端部にステアリングホイール101が連結されているとともに、他方の端部にピニオンギア102aが形成されてラックバー103に連結されている。
【0029】
ラックバー103は、棒状に形成されて軸線方向に往復変位することによって2つの車輪112をそれぞれ操舵する力および操舵の量をそれぞれナックルアーム111に伝達する部品であり、金属材で構成されている。この場合、ラックバー103の一部には、ラックギア103aが形成されており、ステアリングシャフト102のピニオンギア102aが噛み合っている。すなわち、ピニオンギア102aとラックギア103aとは、ステアリングシャフト102の回転運動をラックバー103の往復直線運動に変換するラック&ピニオン機構(ステアリングギアボックス)を構成している。
【0030】
このラックバー103は、ラック&ピニオン機構がラックハウジング104によって覆われた状態で軸線方向の両端部がラックハウジング104から露出している。そして、ラックバー103における前記ラックハウジング104からそれぞれ露出した各両端部には中間連結体105およびナックルアーム111をそれぞれ介して車輪112が連結されている。
【0031】
ラックハウジング104は、ラックバー103におけるラック&ピニオン機構などの主要部を覆って保護するための部品であり、金属材を円筒状に形成して構成されている。このラックハウジング104は、自走式車両のシャシー(図示せず)に固定的に取り付けられている。
【0032】
中間連結体105は、ラックバー103から伝達される操舵力および操舵量をナックルアーム111に伝達するための部品であり、主として、ラックエンド106およびタイロッド110を備えて構成されている。ラックエンド106は、ラックバー103の先端部に対してタイロッド110を可動的に連結するとともに直動ダンパー120が形成される部品であり、主として、ソケット本体107とスタッド体108とで構成されている。
【0033】
ソケット本体107は、ラックバー103の先端部に対してスタッド体108を可動的に連結するとともに直動ダンパー120が形成される部品であり、金属材を丸棒状に形成して構成されている。このソケット本体107は、一方(図示右側)の端部にボール保持部107aが形成されるとともに、他方(図示左側)にはラックバー103の先端部にねじ込まれる雄ネジ部107bが形成さている。ボール保持部107aは、スタッド体108のボール部108aを摺動自在に嵌合して保持するように凹状の球面形状に形成されている。そして、ソケット本体107におけるボール保持部107aと雄ネジ部107bとの間には直動ダンパー120が形成されている。
【0034】
スタッド体108は、ソケット本体107に対してタイロッド110を可動的に連結するための部品であり、金属材を丸棒状に形成して構成されている。このスタッド体108は、一方(図示左側)の端部に球状のボール部108aが形成されるとともに、他方(図示右側)にはタイロッド110の端部にねじ込まれる雄ネジ部(図示せず)が形成さている。
【0035】
タイロッド110は、ラックエンド106の先端部に対してナックルアーム111を可動的に連結する部品であり、棒状に延びるタイロッド本体の先端部にボールジョイントが可動的に取り付けられて構成されている。また、ナックルアーム111は、タイロッド110に対して車輪112を保持してタイロッド110から伝達される操舵力および操舵量を車輪112に伝達するための金属製の部品であり、円筒部の周囲から複数の棒状体が延びた形状に形成されている。また、車輪112は、自走式車両を前方または後方に移動させるために路面上を転動する左右一対の部品であり、金属製のホイールの外側にゴム製のタイヤが取り付けられて構成されている。
【0036】
直動ダンパー120は、車輪112から伝達される強い押圧力(衝撃)を吸収するための器具であり、左右の各中間連結体、より具体的には、左右の各ソケット本体107に形成されている。この直動ダンパー120は、内室121を備えている。
【0037】
内室121は、流体124を液密的に収容する部分であり、ソケット本体107の外周部上に周方向に沿って凹状に切り欠かれつつ軸線方向に延びる円環筒状に形成されている。すなわち、このソケット本体107は、ラックエンド106を構成する一方で、本発明に係る相対変位体に相当する部品である。本実施形態においては、内室121は、底部およびソケット本体107の軸線方向における一方(図示右側)の端部がそれぞれソケット本体107自身で形成されるとともに、軸線方向における他方(図示左側)の端部が壁形成体122によって形成されている。また、内室121の外側は、内室形成体130によって覆われている。
【0038】
壁形成体122は、内室121における図示左側の壁部を形成するための部品であり、金属材料を円環状に形成して構成されている。この壁形成体122は、ソケット本体107における軸線方向における他方(図示左側)側の外周面上にねじ込まれてソケット本体107と一体化している。また、内室121におけるソケット本体107の軸線方向の両端部には、ウレタン樹脂などのエラストマで構成された弾性体からなる緩衝材123a,123bがそれぞれ設けられている。この場合、緩衝材123aは、緩衝材123bよりも厚さが厚く形成されている。
【0039】
流体124は、内室121内を摺動する流通制御弁140に対して抵抗を付与することにより直動ダンパー120にダンパー機能を作用させるための物質であり、内室121内に満たされている。この流体124は、直動ダンパー120の仕様に応じた粘性を有する流動性を有する液状、ジェル状または半固体状の物質で構成されている。この場合、流体124の粘度は、直動ダンパー120の仕様に応じて適宜選定される。本実施形態においては、流体124は、油、例えば、鉱物油またはシリコーンオイルなどによって構成されている。なお、流体124は、図3および図5において破線円内のハッチングで示している(図9図12図14および図16図20も同様である)。
【0040】
また、内室121に対してソケット本体107の軸線方向の両側のソケット本体107および壁形成体122の各外周面上は摺動ブッシュ125a,125bがそれぞれ嵌め込まれている。摺動ブッシュ125a,125bは、内室形成体130を円滑にソケット本体107の軸線方向に往復摺動させるための部品であり、金属材をソケット本体107の外径よりも若干大きな外径の円環状に形成して構成されている。
【0041】
これらの摺動ブッシュ125a,125bに対して内室121とは反対側のソケット本体107および壁形成体122の各外周面上はゴム材などのエラストマ材で構成された弾性体からなるシールリング126a,126bがそれぞれ嵌め込まれている。これらのシールリング126a,126bは、内室形成体130がソケット本体107に対してスライド変位する際における内室121内の流体124の漏出を防止する。
【0042】
内室形成体130は、内室121の径方向外側を覆うとともに流通制御弁140が形成される部品であり、金属材を円筒状に形成して構成されている。具体的には、内室形成体130は、ソケット本体107の外周面に摺動自在に嵌合する円筒状に形成されている。この場合、内室形成体130は、ソケット本体107におけるラックハウジング104側の端部から張り出す長さに形成されている。
【0043】
この内室形成体130の内周部には、軸線方向中央部に流通制御弁140が張り出した状態で形成されているとともに、この流通制御弁140と内室形成体130の内周面との間には弾性体保持部131が形成されている。また、内室形成体130の内周部の軸線方向の両端部には、ダストブーツ133およびダストシール134だがそれぞれ設けられている。
【0044】
弾性体保持部131は、復帰用弾性体132の両端部のうちの一方の端部を収容する部分であり、内室形成体130の内周面と流通制御弁140との間に円環状に形成されている。復帰用弾性体132は、流通制御弁140を内室121内における図示左側端部に弾性的に押圧するための部品であり、金属製のコイルスプリングによって構成されている。この復帰用弾性体132は、一方(図示左側)の端部が弾性体保持部131内に収容されて内室形成体130を弾性的に押圧するとともに、他方(図示右側)の端部が摺動ブッシュ125aを介してソケット本体107の外周部を弾性的に押圧している。すなわち、復帰用弾性体132は、後述する流通制御弁140を直動ダンパー120に対して外力が作用する側(ラックハウジング104側)に位置するように内室形成体130およびソケット本体107にそれぞれ弾性力を付与している。
【0045】
ダストブーツ133は、内室形成体130の両端部のうちの一方(図示左側)側であるラックハウジング104側から内室形成体130の内部にダストが侵入することを防止するための部品であり、ゴム材などのエラストマ材を円筒形に形成して構成されている。このダストブーツ133は、一方の端部が内室形成体130の端部に接続されるとともに、他方の端部が壁形成体122に接続されている。なお、図2においては、ダストブーツ133の図示を省略している。
【0046】
ダストシール134は、ダストブーツ133と同様に、内室形成体130の両端部のうちの他方(図示右側)側であるスタッド体108側から内室形成体130の内部にダストが侵入することを防止するための部品であり、ゴム材などのエラストマ材を円環状に形成して構成されている。このダストシール134は、内室形成体130の端部に円環状に切り欠かれた溝内に嵌め込まれている。
【0047】
内室形成体130の外周部には、アキュムレータ収容部135が形成されている。アキュムレータ収容部135は、アキュムレータ136を液密的に収容するための筒状の部分であり、内室形成体130の外周面上に張り出して内室形成体130の長手方向に延びて形成されている。このアキュムレータ収容部135は、一方の端部が内室121における第1流通体153側に連通するとともに他方の端部がプラグによって封止されている。
【0048】
アキュムレータ136は、内室121内の流体124の温度変化による膨張または収縮による体積変化を補償する器具である。このアキュムレータ136は、アキュムレータ収容部135内を往復摺動するピストンをコイルスプリングで内室121側に弾性的に押圧した状態で収容して構成されている。
【0049】
流通制御弁140は、内室121内の流体124の流動を制限しつつ流動させて流体124の流通を制御することで直動ダンパー120の減衰力を発生させるための器具である。この流通制御弁140は、主として、弁支持体141、第1流通制御弁150、第2流通制御弁160および第3流通制御弁170をそれぞれ備えて構成されている。
【0050】
弁支持体141は、第1流通制御弁150、第2流通制御弁160および第3流通制御弁170がそれぞれ形成される部分であり、内室形成体130の内周部から内側に向かって張り出す平板円環状に形成されている。この弁支持体141の内周部は、内室121の底部に対して液密的に摺動するように滑らかな円筒面に形成されるとともに弾性体からなるシールリング142が嵌め込まれている。
【0051】
第1流通制御弁150は、直動ダンパー120に強い衝撃力が作用した際に最大の減衰力の発生のトリガーとして機能する弁であり、主として、第2流通体収容部151、第1流通体153、第2流通体156、離隔用弾性体159をそれぞれ備えている。第2流通体収容部151は、後述する第2流通体156を摺動自在な状態で収容する部分であり、弁支持体141における一方(図示右側)の端部で常に開口する有底筒状に形成されている。
【0052】
この場合、第2流通体収容部151は、弁支持体141の2つの側面のうち、内室形成体130がソケット本体107に対して復帰用弾性体132の弾性力に抗してスライド変位する際に前方側の側面に常に開口するように形成されている。この第2流通体収容部151には、開口部に近い内周面に形成されたリング状に溝内に抜け止めリング152が嵌め込まれている。抜け止めリング152は、第2流通体収容部151内に収容されている第2流通体156の抜けを防止するための部品であり、金属材をC字状のリング体で構成されている。
【0053】
第1流通体153は、第2流通体156と協働して流体124の流通を制御するための部分であり、主として、第1流通孔154および第1孔径規制部155をそれぞれ備えている。第1流通孔154は、流体124を流通させるための貫通孔であり、第2流通体収容部151の底部に形成されている。この場合、第1流通孔154は、第2流通体収容部151の中心線に対して偏心した底部の縁部に形成されている。すなわち、第2流通体収容部151は、内室121の一方側(緩衝材123a側)が大きく開口するとともに、他方側(緩衝材123b側)が第1流通孔154によって小さく開口している。
【0054】
第1孔径規制部155は、第2流通孔157における流体124の流動を遮る部分であり、第1流通孔154の周囲に壁状に形成されている。そして、第1孔径規制部155は、第1流通体153に第2流通体156が接触した場合に、第2流通体156の第2流通孔157を完全に塞ぐように第2流通孔157に対向する位置に形成されている。本実施形態においては、第1孔径規制部155は、第2流通体収容部151の底部によって構成されている。
【0055】
第2流通体156は、第1流通体153と協働して流体124の流動を制御するための部品であり、金属材料を円筒状に形成して構成されている。この場合、第2流通体156は、第2流通体収容部151の内周面に対して摺動する大径部156aと、この大径部156aよりも小径の小径部156bとで構成されている。そして、第2流通体156には、第2流通孔157および第2孔径規制部158がそれぞれ形成されている。
【0056】
第2流通孔157は、流体124を流通させるための貫通孔であり、第2流通体156を貫通する大径孔157aと小径孔157bとで構成されている。大径孔157aは、第2流通体156において内室形成体130が復帰用弾性体132の弾性力に抗してスライド変位する際に前方側の側面に開口して形成されている。また、小径孔157bは、大径孔157aの最奥部から内室形成体130が復帰用弾性体132の弾性力に抗してスライド変位する際に後方側の側面まで延びて開口している。
【0057】
この場合、大径孔157aと小径孔157bとの間には平板環状の段部157cが形成されている。また、小径孔157bは、大径孔157a側の端部が小径孔157bの奥側に向かって連続的に孔径が小さくなるテーパ形状のテーパ部157dが形成されている。また、小径孔157bは、大径孔157aに連通しかつ第1流通孔154と対向することなく第1孔径規制部155に対向する位置および大きさに形成されている。すなわち、小径孔157bは、第1孔径規制部155上で第1流通孔154に重ならない位置および大きさに形成されている。本実施形態においては、小径孔157bは、第2流通体156および大径孔157aと同心でかつ第1流通孔154よりも小径に形成されている。
【0058】
第2孔径規制部158は、第1流通孔154における流体124の流動を遮る部分であり、第2流通孔157を構成する小径孔157bの周囲に壁状に形成されている。具体的には、第2孔径規制部158は、第1流通体153に第2流通体156が接触した場合に、第1流通体153の第1流通孔154の一部を塞ぐように第1流通孔154に対向する位置に形成されている。本実施形態においては、第2孔径規制部158は、第1流通体153に第2流通体156が接触した場合に、第1流通体153の第1流通孔154の1/3程度を塞ぐ大きさの平板環状に形成されている。
【0059】
離隔用弾性体159は、第2流通体収容部151内において第2流通体156を第1流通体153から離隔させる弾性力を発揮する部品であり、金属製のコイルスプリングで構成されている。この離隔用弾性体159は、一方(図示左側)の端部が第1孔径規制部155(第2流通体収容部151の底部)を押圧するとともに、他方(図示右側)の端部が小径部156bの外周部に嵌合している。この離隔用弾性体159の弾性力は、直動ダンパー120が最大の減衰力を発生させたい外力の大きさに応じた強さに設定される。この第1流通制御弁150は、弁支持体141に1つ設けられている。
【0060】
第2流通制御弁160は、内室形成体130がソケット本体107に対して復帰用弾性体132の弾性力に抗してスライド変位する際に同スライド変位の前方側から後方側への流体124の流通を阻止するとともに、内室形成体130が復帰用弾性体132の弾性力によってスライド変位する際に同スライド変位の前方側から後方側に流体124の流動を容易に流通させる弁である。すなわち、第2流通制御弁160は、一方向弁によって構成されている。この第2流通制御弁160を構成する一方向弁の構成は、公知であるため詳しい説明は省略する。この第2流通制御弁160は、弁支持体141における第1流通制御弁150に対して周方向に180°の位置に1つ設けられている。
【0061】
第3流通制御弁170は、内室形成体130がソケット本体107に対して復帰用弾性体132の弾性力に抗してスライド変位する際および内室形成体130が復帰用弾性体132の弾性力によってスライド変位する際にそれぞれ流体124の流動を制限しつつ流通させる弁である。この第3流通制御弁170は、弁支持体141に形成された細孔の貫通孔で構成されている。本実施形態においては、第3流通制御弁170は、弁支持体141の周方向上における第1流通制御弁150と第2流通制御弁160との間の2つの中間位置にそれぞれ形成されている。
【0062】
(ステアリング装置100の作動)
次に、このように構成されたステアリング装置100の作動について説明する。このステアリング装置100は、図示しない四輪の自走式車両における操舵輪(例えば、2つの前輪)を左右方向に操舵する機構として自走式車両の内部に組み込まれる。そして、このステアリング装置100は、自走式車両の運転者によるステアリングホイール101の操作に応じて2つの車輪112の各向きを変更して自走式車両の進行方向を決定する。
【0063】
このような自走式車両の運転中において、ステアリング装置100における直動ダンパー120は、ラックバー103がピニオンギア102aとの関係において左右の変位限界近くまで変位した場合に作用する。この場合、ラックバー103の変位限界とは、車輪112の左右の操舵限界であり、自走式車両の運転者がステアリングホイール101を時計回りまたは反時計回りに回動限界近くまで回動させた場合のほか、車輪112が縁石などの障害物に衝突してラックバー103に対して車輪112側から大きな入力が作用した場合がある。
【0064】
まず、直動ダンパー120に外力が作用せず直動ダンパー120が作動しない場合について説明する。この直動ダンパー120は、図3に示すように、自走式車両の車輪112が操舵限界付近まで操舵されない場合などラックバー103が変位限界付近に達しない範囲においては、内室形成体130がラックハウジング104に衝突しないため作動することはない。この場合、直動ダンパー120は、図5に示すように、流通制御弁140は内室121内にて復帰用弾性体132の弾性力によって壁形成体122に緩衝材123bを介して押し付けられている。すなわち、内室形成体130は、ソケット本体107上において最もラックハウジング104側の位置に弾性的に位置決めされた状態を維持する。
【0065】
また、第1流通制御弁150は、第2流通体156が離隔用弾性体159の弾性力によって第1流通体153から最も離隔した位置に位置決めされた状態を維持する。すなわち、第1流通制御弁150は、流体124の流通が可能な状態となっている。
【0066】
次に、直動ダンパー120に外力が作用して直動ダンパー120が作動する場合について説明する。この直動ダンパー120は、図6に示すように、自走式車両の車輪112が操舵限界付近まで操舵された場合などラックバー103が変位限界付近まで達した場合には(破線矢印参照)、内室形成体130の端部がラックハウジング104に接触して作動を開始する。この場合、直動ダンパー120の作動には、内室形成体130の端部がラックハウジング104に弱い力で接触した場合と強い力接触した場合とがある。
【0067】
まず、内室形成体130の端部がラックハウジング104に弱い力(低速)で接触した場合には、内室形成体130は、図7に示すように、ソケット本体107に対してゆっくりとスタッド体108側にスライド変位する(破線矢印参照)。すなわち、流通制御弁140は、内室121内を復帰用弾性体132の弾性力に抗しながら緩衝材123a側に変位する。この場合、第1流通制御弁150は、第2流通体156の第2流通孔157の大径孔157a側から流体124が流入して小径孔157b側に向かって流動する。
【0068】
しかし、この場合、第2流通体156は、内室121内において流通制御弁140がゆっくりと変位して第2流通体156を押圧する力が離隔用弾性体159の弾性力よりも小さいため第1流通体153側に変位して第1流通体153に押し付けられることはない。このため、第1流通制御弁150では、変位方向前方側の流体124が第2流通体156の第2流通孔157および第1流通体153の第1流通孔154をそれぞれ介して変位方向後方側に僅かな流動抵抗を伴いながら流動する(破線矢印参照)。
【0069】
また、第2流通制御弁160は、内室形成体130が復帰用弾性体132の弾性力に抗しながらスライド変位する際における流通制御弁140の変位方向前方側から後方側への流体124の流動を阻止する一方向弁であるため、流体124の流動はない。また、第3流通制御弁170は、流通制御弁140の変位方向に対して前方側と後方側との双方向で流体124の流動を許容する弁であるため、流体124は流通制御弁140の変位方向前方側から後方側に僅かな流動抵抗を伴いながら流動する。
【0070】
したがって、流通制御弁140は、無視できるほどの極めて小さい減衰力を発生させながら緩衝材123a側に変位する。これにより、内室形成体130は、ゆっくりとスタッド体108側にスライド変位する。
【0071】
この後、ラックバー103がナックルアーム111側に変位して内室形成体130の端部がラックハウジング104から離隔した場合には、内室形成体130は復帰用弾性体132の弾性力によって元の位置に変位する(図5参照)。この場合、第1流通制御弁150は、第1流通体153側から流体124が流入して第2流通体156側に向かって流動する。
【0072】
この場合、第2流通体156は、離隔用弾性体159の弾性力および第1流通体153から流動してきた流体124による押圧力によって第1流通体153から最も離隔した元の位置に復帰する。このため、第1流通制御弁150は、変位方向前方側の流体124が第1流通体153の第1流通孔154および第2流通体156の第2流通孔157をそれぞれ介して変位方向後方側に僅かな流動抵抗を伴いながら流動する。
【0073】
また、第2流通制御弁160は、内室形成体130が復帰用弾性体132の弾性力によってスライド変位する際における流通制御弁140の変位方向前方側から後方側への流体124の流動を許容する一方向弁であるため、流体124が僅かな流動抵抗を伴いながら流動する。また、第3流通制御弁170は、流通制御弁140の変位方向に対して前方側と後方側との双方向で流体124の流動を許容する弁であるため、流体124は流通制御弁140の変位方向前方側から後方側に向かって僅かな流動抵抗を伴いながら流動する。
【0074】
したがって、流通制御弁140は、無視できるほどの極めて小さい減衰力を発生させながら緩衝材123b側に変位する。これにより、内室形成体130は、先の変位速度よりも速やかにラックハウジング104側にスライド変位する。
【0075】
次に、内室形成体130の端部がラックハウジング104に強い力(高速)で接触した場合(例えば、運転者による急ハンドルまたは車輪112の縁石などへの衝突)には、内室形成体130はソケット本体107に対して急速にスタッド体108側にスライド変位する。すなわち、流通制御弁140は、内室121内を復帰用弾性体132の弾性力に抗しながら緩衝材123a側に急速に変位する。
【0076】
この場合、第1流通制御弁150は、図8に示すように、流体124が第2流通体156を押圧する力が離隔用弾性体159の弾性力よりも大きいため第1流通体153側に変位して第1流通体153に押し付けられる。この場合、第2流通体156は、段部157cおよび小径孔157bのテーパ部157dに流体124の押圧力が作用して第1流通体153側に変位し始めた後、大径孔157aの端部でも流体124の押圧力が作用して第1流通体153側に変位する。
【0077】
また、この場合、第1孔径規制部155および第2孔径規制部158は、それぞれ第2流通孔157および第1流通孔154に対向する位置に形成されているため、第2流通孔157の全部および第1流通孔154の一部をそれぞれ塞ぐ。このため、第1流通制御弁150では、流通制御弁140のスタッド体108側への変位に際して流体124の流動はない(破線矢印参照)。また、この場合、第2流通制御弁160は、前記と同様に、流体124の流動はない。
【0078】
また、第3流通制御弁170は、流通制御弁140において第3流通制御弁170のみが流体124の流動が可能であるため、非常に大きな流動抵抗が発生する。したがって、流通制御弁140は、第3流通制御弁170によって非常に大きな流動抵抗に抗しながら緩衝材123a側に変位する。これにより、内室形成体130は、極めて大きな減衰力を発生させながらスタッド体108側にスライド変位する。すなわち、直動ダンパー120は、ラックバー103に生じた強い衝撃を減衰することができる。
【0079】
この後、ラックバー103がナックルアーム111側に変位して内室形成体130の端部がラックハウジング104から離隔した場合には、前記と同様に、内室形成体130は復帰用弾性体132の弾性力によって元の位置に変位する(図5参照)。すなわち、内室形成体130は、流通制御弁140が無視できるほどの極めて小さい減衰力を発生させながら緩衝材123b側に変位することでラックハウジング104側に速やかにスライド変位する。
【0080】
また、第2流通体156は、離隔用弾性体159の弾性力および第1流通体153から流動してきた流体124による押圧力によって第1流通体153から離隔して元の位置に復帰する。この場合、第2流通体156は、第2孔径規制部158が第1流通孔154の一部に対向する位置に形成されているため、第1流通孔154から第2流通体収容部151内に流入した流体124の一部を第2流通孔157側に導くことができる。そして、第1流通制御弁150は、前記したように、変位方向前方側の流体124が第1流通体153の第1流通孔154および第2流通体156の第2流通孔157をそれぞれ介して変位方向後方側に僅かな流動抵抗を伴いながら流動する。
【0081】
上記作動方法の説明からも理解できるように、上記第1実施形態によれば、直動ダンパー120は、筒状に形成された内室形成体130内を貫通した状態で相対変位体としてのソケット本体107が設けられているため、直動ダンパー120の取付対象物であるステアリング装置100における軸状に延びるラックエンド106の軸線方向上ではなく同ラックエンド106の径方向の外側に直動ダンパー120を設けることができステアリング装置100の装置構成の大型化(主として、長尺化)を回避できるとともに取り付け可能なステアリング装置の種類を広げることができる。
【0082】
<第2実施形態>
次に、本発明に係る流通制御弁および直動ダンパーを備えたステアリング装置の第2実施形態について図9図13を参照しながら説明する。この第2実施形態におけるステアリング装置200は、上記第1実施形態における直動ダンパー120に相当する直動ダンパー210がソケット本体107ではなくラックハウジング104に組み付けられている点において上記第1実施形態と異なる。したがって、この第2実施形態におけるステアリング装置200においては、上記第1実施形態におけるステアリング装置200と異なる部分を中心に説明して、両実施形態において共通する部分または対応する部分については説明を適宜省略する。また、この第2実施形態の説明においては、上記第1実施形態と同様の構成部品について第1実施形態と同じ符号を付している。
【0083】
(ステアリング装置200の構成)
ステアリング装置200は、円筒状に形成されたラックハウジング104の先端部に円筒状の直動ダンパー210が取り付けられているとともに、この直動ダンパー210を覆うようにダストブーツ201が取り付けられている。ダストブーツ201は、直動ダンパー210の汚損を防止するための部品であり、ゴム材などのエラストマ材を円筒形に形成して構成されている。
【0084】
ラックハウジング104の先端部に取り付けられた円筒状の直動ダンパー210の内部には、ラックハウジング104内を貫通するラックバー103が貫通している。そして、ラックバー103の先端部には、ラックエンド106が取り付けられている。この場合、ラックバー103に取り付けられたソケット本体107は、外周部がラックバー103の外周部からフランジ状に張り出して形成されており、相対変位体230の端部に対向するように形成されている。
【0085】
直動ダンパー210は、内室形成体211を備えている。内室形成体211は、内室217を形成するとともに直動ダンパー210をラックハウジング104に取り付けるための部品であり、金属材料を円筒状に形成して構成されている。すなわち、内室形成体211は、上記第1実施形態における内室形成体130に対応する。この内室形成体211は、外周部における一方(図示左側)の端部にラックハウジング104にネジ嵌合させるための雄ネジ部211aが形成されるとともに、他方(図示右側)の端部側に給油口212およびアキュムレータ収容部213がそれぞれ形成されている。
【0086】
給油口212は、内室217内に流体124を注入または排出するための流通路であり、栓によって開閉自在に閉塞されている。アキュムレータ収容部213およびアキュムレータ214は、上記第1実施形態におけるアキュムレータ収容部135およびアキュムレータ136にそれぞれ対応している。また、内室形成体211の内部は、両端部に壁形成体215,216がそれぞれネジ嵌合しており、これら2つの壁形成体215,216の間に円筒状の内室217が形成されている。
【0087】
壁形成体215,216は、内室217における図示左右両側の壁部を形成するための部品であり、金属材料を円環状に形成して構成されている。すなわち、壁形成体215,216は、上記第1実施形態における壁形成体122に対応する。したがって、内室217は、内室形成体211の内側において後述する相対変位体230との間に軸線方向に延びる円環筒状に形成されている。これらの壁形成体215,216のうちの中間連結体105側の壁形成体216には、外周部に復帰用弾性体218が嵌合している。
【0088】
復帰用弾性体218は、流通制御弁240を内室217内における図示右側端部に弾性的に押圧するための部品であり、金属製のコイルスプリングによって構成されている。すなわち、復帰用弾性体218は、上記第1実施形態における復帰用弾性体132に対応する。この復帰用弾性体218は、一方(図示左側)の端部が壁形成体216を弾性的に押圧するとともに、他方(図示右側)の端部が受け板218aを介して相対変位体230を弾性的押圧している。すなわち、復帰用弾性体218は、流通制御弁240を直動ダンパー210に対して外力が作用する側(ボール保持部107a側)に位置するように内室形成体211およびソケット本体107にそれぞれ弾性力を付与している。
【0089】
また、壁形成体215,216には、上記第1実施形態における緩衝材123a,123b、摺動ブッシュ125a,125b、シールリング126a,126bおよびダストシール134にそれぞれ対応する緩衝材221a,221b、摺動ブッシュ222a,222b、シールリング223a,223bおよびダストシール224a,224bがそれぞれ設けられている。
【0090】
相対変位体230は、内室217の径方向内側を覆うとともに流通制御弁240が形成される部品であり、金属材を円筒状に形成して構成されている。すなわち、相対変位体230は、上記第1実施形態におけるソケット本体107に対応する。この相対変位体230は、壁形成体215,216の各内周面に摺動ブッシュ222a,222bを介して摺動自在に嵌合する円筒状に形成されている。この場合、相対変位体230は、壁形成体215,216の各端部から張り出す長さに形成されている。また、相対変位体230の内径は、ラックバー103が貫通する大きさに形成されている。
【0091】
この相対変位体230の外周部には、一方(図示右側)の端部に前記した受け板218aが固定的に取り付けられているとともに、他方(図示左側)の端部から軸方向中央部にかけて固定スリーブ231および流通制御弁240がそれぞれ取り付けられている。固定スリーブ231は、相対変位体230の外周部に形成された小径部に嵌合する流通制御弁240を相対変位体230の外周部に形成された大径部に押し付けて固定するための部品であり、金属材を円筒状に形成して構成されている。この固定スリーブ231は、相対変位体230の外周部に嵌合して一体的に組み付けられており、前記した壁形成体215に対して摺動ブッシュ222aを介して摺動する。
【0092】
流通制御弁240は、内室217内の流体124の流動を制限しつつ流動させて流体124の流通を制御することで直動ダンパー210の減衰力を発生させるための器具であり、上記第1実施形態における流通制御弁140に対応する。この流通制御弁240は、主として、弁支持体241、第1流通制御弁150、第2流通制御弁160および第3流通制御弁170をそれぞれ備えて構成されている。
【0093】
弁支持体241は、第1流通制御弁150、第2流通制御弁160および第3流通制御弁170がそれぞれ形成される部品であり、金属材を平板円環状に形成して構成されている。すなわち、弁支持体241は、相対変位体230と別体で構成されて相対変位体230に固定スリーブ231によって一体的に取り付けられている。この弁支持体241の外周部には、上記第1実施形態におけるシールリング142に対応するシールリング242が嵌め込まれている。
【0094】
第1流通制御弁150、第2流通制御弁160および第3流通制御弁170は、上記実施形態と同様に構成されているため、その説明は省略する。そして、この流通制御弁240は、第1流通制御弁150の第2流通体156の大径部156aが緩衝材221a側(図示左側)に開口する向きで相対変位体230の外周部に取り付けられている。
【0095】
(ステアリング装置200の作動)
次に、このように構成されたステアリング装置200の作動について説明する。ステアリング装置200は、上記実施形態におけるステアリング装置100と同様に、ラックバー103がピニオンギア102aとの関係において左右の変位限界近くまで変位した場合に直動ダンパー210が作用する。
【0096】
具体的には、直動ダンパー210は、自走式車両の車輪112が操舵限界付近まで操舵されない場合などラックバー103が変位限界付近に達しない範囲においては、相対変位体230にソケット本体107が衝突しないため作動することはない(図9参照)。この場合、直動ダンパー210は、流通制御弁240は内室217内にて復帰用弾性体218の弾性力によって壁形成体216に緩衝材221bを介して押し付けられている。すなわち、相対変位体230は、内室217内において最もソケット本体107側の位置に弾性的に位置決めされた状態を維持する。
【0097】
また、第1流通制御弁150は、第2流通体156が離隔用弾性体159の弾性力によって第1流通体153から最も離隔した位置に位置決めされた状態を維持する。すなわち、第1流通制御弁150は、流体124の流通が可能な状態となっている。
【0098】
次に、直動ダンパー210は、図11に示すように、自走式車両の車輪112が操舵限界付近まで操舵された場合などラックバー103が変位限界付近まで達した場合には、相対変位体230の端部にソケット本体107が接触して作動を開始する。
【0099】
まず、ソケット本体107が弱い力(低速)で相対変位体230の端部に接触した場合には、相対変位体230は、図12に示すように、内室形成体211に対してゆっくりとラックハウジング104側にスライド変位する。すなわち、流通制御弁240は、内室217内を復帰用弾性体218の弾性力に抗しながら緩衝材221a側(図示左側)に変位する。この場合、第1流通制御弁150は、第2流通体156の第2流通孔157の大径孔157a側から流体124が流入して小径孔157b側に向かって流動する。
【0100】
しかし、この場合、第2流通体156は、内室217内において流通制御弁240がゆっくりと変位して第2流通体156を押圧する力が離隔用弾性体159の弾性力よりも小さいため第1流通体153側に変位して第1流通体153に押し付けられることはない。このため、第1流通制御弁150では、変位方向前方側の流体124が第2流通体156の第2流通孔157および第1流通体153の第1流通孔154をそれぞれ介して変位方向後方側に僅かな流動抵抗を伴いながら流動する。
【0101】
また、第2流通制御弁160は、相対変位体230が復帰用弾性体218の弾性力に抗しながらスライド変位する際における流通制御弁240の変位方向前方側から後方側への流体124の流動を阻止する一方向弁であるため、流体124の流動はない。また、第3流通制御弁170は、流通制御弁240の変位方向に対して前方側と後方側との双方向で流体124の流動を許容する弁であるため、流体124は流通制御弁240の変位方向前方側から後方側に僅かな流動抵抗を伴いながら流動する。
【0102】
したがって、流通制御弁240は、無視できるほどの極めて小さい減衰力を発生させながら緩衝材123a側に変位する。これにより、相対変位体230は、ゆっくりとラックハウジング104側にスライド変位する。
【0103】
この後、ラックバー103がナックルアーム111側に変位して相対変位体230の端部からソケット本体107から離隔した場合には、上記第1実施形態と同様に、相対変位体230は復帰用弾性体218の弾性力によって元の位置に変位する(図9参照)。すなわち、流通制御弁240は、無視できるほどの極めて小さい減衰力を発生させながら緩衝材221b側に変位する。これにより、相対変位体230は、先の変位速度よりも速やかにソケット本体107側にスライド変位する。
【0104】
次に、ソケット本体107が強い力(高速)で相対変位体230の端部に接触した場合には、相対変位体230は、図13に示すように、内室形成体211に対して急速にラックハウジング104側にスライド変位する。すなわち、流通制御弁240は、内室217内を復帰用弾性体218の弾性力に抗しながら緩衝材221a側に急速に変位する。
【0105】
この場合、第1流通制御弁150は、流体124が第2流通体156を押圧する力が離隔用弾性体159の弾性力よりも大きいため第1流通体153側に変位して第1流通体153に押し付けられる。また、この場合、第1孔径規制部155および第2孔径規制部158は、それぞれ第2流通孔157および第1流通孔154に対向する位置に形成されているため、第2流通孔157の全部および第1流通孔154の一部をそれぞれ塞ぐ。このため、第1流通制御弁150では、流通制御弁240のラックハウジング104側への変位に際して流体124の流動はない(破線矢印参照)。また、この場合、第2流通制御弁160は、前記と同様に、流体124の流動はない。
【0106】
また、第3流通制御弁170は、流通制御弁240において第3流通制御弁170のみが流体124の流動が可能であるため、非常に大きな流動抵抗が発生する。したがって、流通制御弁240は、第3流通制御弁170によって非常に大きな流動抵抗に抗しながら緩衝材221a側に変位する。これにより、相対変位体230は、極めて大きな減衰力を発生させながらラックハウジング104側にスライド変位する。すなわち、直動ダンパー210は、ラックバー103に生じた強い衝撃を減衰することができる。
【0107】
この後、ラックバー103がナックルアーム111側に変位して相対変位体230の端部からソケット本体107から離隔した場合には、前記と同様に、相対変位体230は復帰用弾性体218の弾性力によって元の位置に変位する(図9参照)。すなわち、相対変位体230は、流通制御弁240が無視できるほどの極めて小さい減衰力を発生させながら緩衝材221b側に変位することでソケット本体107側に速やかにスライド変位する。
【0108】
さらに、本発明の実施にあたっては、上記各実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を逸脱しない限りにおいて種々の変更が可能である。なお、各変形例の説明においては、上記実施形態と同様の部分については同じ符号を付して重複する説明は省略する。
【0109】
例えば、上記各実施形態においては、直動ダンパー120,210は、流通制御弁140,240を内室121,217内に設けて構成した。これにより、直動ダンパー120,210は、流通制御弁140,240を内室121,217内に設けることで装置構成を小型化することができる。しかし、直動ダンパー120,210は、流通制御弁140,240の一部または全部を内室121,217の外に設けて構成することもできる。
【0110】
例えば、図14および図15には、上記第2実施形態に係る直動ダンパー210における内室形成体211に第1流通制御弁150を備えた直動ダンパー300を示している。この直動ダンパー300は、内室形成体211の内部にバイパス流路301が形成されるとともに、内室形成体211の外周部にバイパス流路301に繋がった状態で流通制御弁310の一部を構成する第1流通制御弁150を備えている。バイパス流路301は、内室217の軸線方向における流通制御弁310を境とする一方の端部側と他方の端部側とを互いに連通する流体124の流路である。
【0111】
流通制御弁310は、上記第2実施形態における流通制御弁240から第1流通制御弁150のみを内室形成体211に移設した第2流通制御弁160および第3流通制御弁170をそれぞれ備えて構成されている。第1流通制御弁150は、バイパス流路301を流通する流体124の流通の可否を制御する。
【0112】
この場合、第1流通制御弁150は、内室形成体211の内部に内室217に連通した状態で第2流通体収容部151が形成されるとともに、この第2流通体収容部151内に第2流通体156および離隔用弾性体159がそれぞれ収容されている。この第2流通体収容部151における内室217側とは反対側は、第1流通体153を構成する偏心リング体(第1孔径規制部155として機能する円板体の中心から偏心した位置に第1流通孔154として機能する貫通孔が形成された部品)が嵌め込まれており、この第1流通体153を介してバイパス流路301に連通している。また、内室形成体211には、第2流通体収容部151に対してバイパス流路301を介して対向する部分に内室形成体211の外部に連通するようにバイパス流路301が延びて形成されており、この延びたバイパス流路301が栓302によって塞がれている。
【0113】
すなわち、直動ダンパー300は、流通制御弁310の一部である第2流通制御弁160および第3流通制御弁170を内室217内に設けるとともに他の一部である第1流通制御弁150を内室217の外に設けて構成されている。このように構成された直動ダンパー300は、上記第2実施形態における直動ダンパー210と同様に作動する。なお、図14においては、ラックバー103およびラックハウジング104の図示をそれぞれ省略している。
【0114】
このように、直動ダンパー300は、流通制御弁310の一部または全部が少なくとも内室217の外に設けられていることで内室217の容量を大きく確保することができる。また、直動ダンパー300は、内室形成体211における栓302を取り外すことで第1流通制御弁150を露出させることができメンテナンス性を向上させることができる。
【0115】
また、上記各実施形態においては、直動ダンパー120,210,300は、復帰用弾性体132,218をそれぞれ備えて構成した。しかし、直動ダンパー120,210,300は、流通制御弁140,240,310を内室121,217における一方側(直動ダンパー120,210,300に対して外力が作用する側)に常時押圧する必要がない場合には、復帰用弾性体132,218をそれぞれ省略して構成することができる。
【0116】
また、上記第1実施形態においては、相対変位体としてのソケット本体107は軸状に形成した。しかし、相対変位体としてのソケット本体107は、図16に示すように、筒状に形成することもできる。この場合、ステアリング装置100は、ラックバー103の先端部に雄ネジを形成するとともにソケット本体107の貫通孔内に雌ネジを形成しておくことでラックバー103とソケット本体107とをネジ嵌合によって連結することができる。
【0117】
また、上記各実施形態においては、第1流通制御弁150は、第2流通体156の第2孔径規制部158が第1流通体153の第1流通孔154の一部を塞ぐとともに、第1流通体153の第1孔径規制部155が第2流通体156の第2流通孔157の全部を塞ぐように構成した。しかし、第1流通制御弁150は、第1流通孔154および第2流通孔157のうちの少なくとも一方の流通孔の少なくとも一部を塞ぐように構成されていればよい。
【0118】
したがって、第1流通制御弁150は、例えば、図17に示すように、第1流通孔154および第2流通孔157の両方を完全に塞ぐように構成することもできる。また、第1流通制御弁150は、第1流通孔154および第2流通孔157の両方の各一部ずつを塞ぐように構成することもできる。この場合、第1流通制御弁150は、例えば、図18に示すように、第2流通体156が第1流通体153に密着した際に第1流通孔154の一部と第2流通孔157一部とが互いに重なり合って流体124の流動が確保されるように構成することもできる。これによれば、流通制御弁140,240は、第3流通制御弁170を省略して構成することができる。
【0119】
また、第1流通制御弁150は、第1流通孔154および第2流通孔157のうちの一方を完全に塞ぎつつ他方を一切塞がないように構成することもできる。例えば、第1流通制御弁150は、図19に示すように、第2流通体収容部151の底部における小径孔157bに対向する部分に小径孔157b(第2流通孔157)側に向かって柱状に突出した第1孔径規制部155を形成することができる。この場合、第2流通体156における第2孔径規制部158は省略される。これによれば、第1流通制御弁150は、第2流通体156が第1孔径規制部155に突き当たることで第2流通孔157のみを塞ぐことができる。
【0120】
また、第1流通制御弁150は、例えば、図20および図21にそれぞれ示すように、第2流通体156における第1流通孔154に対向する部分に第1流通孔154側に向かって柱状に突出した第2孔径規制部158を設けて第1流通孔154のみを塞ぐこともできる。この場合、第1流通体153における第1孔径規制部155は省略される。また、これらの場合、柱状の第1孔径規制部155および/または第2孔径規制部158は、小径孔157b(第2流通孔157)および/または第1流通孔154内に挿し込まれて各孔を塞ぐように構成することもできる。
【0121】
また、上記各実施形態においては、第2流通孔157は、大径孔157aと小径孔157bの2つの孔で構成した。しかし、第2流通孔157は、大径孔157aまたは小径孔157bの1つの孔で構成してもよいし、3つ以上の異なる内径の孔で構成することもできる。また、第2流通孔157は、小径孔157bにおける第1流通体153とは反対側の開口部にテーパ部157dを形成した。これにより、第2流通体156は、第2流通孔157に流体124を流入し易くすることができ、第1流通制御弁150の作動を安定化させることができる。また、第1流通制御弁150は、第2流通孔157に流体124を流入し易くして流速を増加させることができるため、テーパ部157dが流体124から強い押圧力を受けることで第2流通体156が第1流通体153側に変位し易くすることができる。しかし、第2流通孔157は、テーパ形状を省略してストレート形状に形成しても良いことは当然である。なお、第1流通孔154についても互いに異なる複数の孔で構成してよいし、孔の開口部にテーパ形状を形成することもできる。
【0122】
また、上記各実施形態においては、流通制御弁140,240,310は、第1流通制御弁150、第2流通制御弁160および第3流通制御弁170などの複数の流通制御弁を備えて構成した。ここで、第2流通制御弁160は、流通制御弁140,240の復帰変位時における変位速度を向上させることができる。また、第3流通制御弁170は、第2流通体156が第1流通体153に密着して流体124の流動が完全に阻止された状態において流体124の流動を確保することができる。
【0123】
しかし、流通制御弁140,240,310は、直動ダンパー120,210,300の仕様に応じて第1流通制御弁150および第3流通制御弁170のうちの少なくとも1つを備えて構成することができる。これらの場合、第2流通制御弁160は、直動ダンパー120,210,300の仕様に応じて備えてもよいし備えなくてもよい。
【0124】
また、上記各実施形態においては、直動ダンパー120,210,300をステアリング装置100,200に適用した。しかし、直動ダンパー120,210,300は、ステアリング装置100,200以外の装置または器具、具体的には、サスペンション機構、シートの傾倒機構、扉の開閉機構、自走式車両以外の機械装置、電機装置、器具または家具に取り付けて用いることができる。
【符号の説明】
【0125】
100…ステアリング装置、101…ステアリングホイール、102…ステアリングシャフト、102a…ピニオンギア、103…ラックバー、103a…ラックギア、104…ラックハウジング、105…中間連結体、106…ラックエンド、107…ソケット本体(相対変位体)、107a…ボール保持部、107b…雄ネジ部、108…スタッド体、108a…ボール部、
110…タイロッド、111…ナックルアーム、112…車輪、
120…直動ダンパー、121…内室、122…壁形成体、123a,123b…緩衝材、124…流体、125a,125b…摺動ブッシュ、126a,126b…シールリング、
130…内室形成体、131…弾性体保持部、132…復帰用弾性体、133…ダストブーツ、134…ダストシール、135…アキュムレータ収容部、136…アキュムレータ、
140…流通制御弁、141…弁支持体、142…シールリング、
150…第1流通制御弁、151…第2流通体収容部、152…抜け止めリング、153…第1流通体、154…第1流通孔、155…第1孔径規制部、156…第2流通体、156a…大径部、156b…小径部、157…第2流通孔、157a…大径孔、157b…小径孔、157c…段部、157d…テーパ部、158…第2孔径規制部、159…離隔用弾性体、
160…第2流通制御弁、
170…第3流通制御弁、
200…ステアリング装置、201…ダストブーツ、
210…直動ダンパー、211…内室形成体、211a…雄ネジ部、212…給油口、213…アキュムレータ収容部、214…アキュムレータ、215,216…壁形成体、217…内室、218…復帰用弾性体、218a…受け板、221a,221b…緩衝材、222a,222b…摺動ブッシュ、223a,223b…シールリング、224a,224b…ダストシール、
230…相対変位体、231…固定スリーブ、
240…流通制御弁、241…弁支持体、242…シールリング、
300…直動ダンパー、301…バイパス流路、302…栓、310…流通制御弁。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21