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特開2024-96197熱収縮性ポリエステル系フィルムロール
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  • 特開-熱収縮性ポリエステル系フィルムロール 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024096197
(43)【公開日】2024-07-12
(54)【発明の名称】熱収縮性ポリエステル系フィルムロール
(51)【国際特許分類】
   C08J 5/18 20060101AFI20240705BHJP
【FI】
C08J5/18 CFD
【審査請求】有
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024069793
(22)【出願日】2024-04-23
(62)【分割の表示】P 2021553526の分割
【原出願日】2020-10-22
(31)【優先権主張番号】P 2019199026
(32)【優先日】2019-10-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000003160
【氏名又は名称】東洋紡株式会社
(72)【発明者】
【氏名】井上 雅文
(72)【発明者】
【氏名】春田 雅幸
(57)【要約】
【課題】 ペットボトルリサイクル原料を含有しても、フィルムロール内での熱収縮率の変動に起因する熱収縮工程でのシワやタテヒケなどの不良の発生を低減する熱収縮性ポリエステルフィルムロールを提供すること。
【解決手段】ペットボトル再生原料を5質量%以上50質量%以下含有すると共に、イソフタル酸成分を含有するポリエステルから構成される熱収縮性ポリエステル系フィルムからなるフィルムロールであり、以下の要件(1)~(3)を満足することを特徴とする熱収縮性ポリエステル系フィルムロール。
(1)ロール長手方向に100mピッチで採取したフィルムサンプルを、90℃温湯中に10秒浸漬させた時の主収縮方向における収縮率が、主収縮方向で平均値が40%以上であり、すべてのサンプルにおいての収縮率が平均値±3%以内であること
(2)ロール長手方向に100mピッチで採取したフィルムサンプルにおいて、フィルムを構成するポリエステルは、の全酸成分100モル%中におけるイソフタル酸含有比率が全てその平均値±0.3mol%以内であること
(3)ロール長手方向の厚みムラが20%以下であること
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ペットボトル再生原料を5質量%以上45質量%以下含有すると共に、イソフタル酸成分を含有するポリエステルから構成され、該ポリエステルは全構成成分100モル%に対してエチレンテレフタレートを50モル%以上含有すると共に、ネオペンチルグリコール、1,4-シクロヘキサンジメタノール、1,4-シクロヘキサンジカルボン酸、2,6-ナフタレンジカルボン酸、2,2-ジエチル1,3-プロパンジオール、2-n-ブチル2-エチル1,3-プロパンジオール、2,2-イソプロピル1,3-プロパンジオール、2,2-ジn-ブチル1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、及びヘキサンジオールからなる群より選択されてなる1種以上のモノマー成分を、多価アルコール成分100モル%中あるいは多価カルボン酸成分100モル%中の合計量が14モル%以上となる量で含有する熱収縮性ポリエステル系フィルムからなる幅が500mm以上のフィルムロールであり、以下の要件(1)~(3)を満足することを特徴とする熱収縮性ポリエステル系フィルムロール。
(1)ロール長手方向に100mピッチで採取したフィルムサンプルを、90℃温湯中に10秒浸漬させた時の主収縮方向における収縮率が、平均値が40%以上であり、すべてのサンプルにおいて平均値±3%以内であること
(2)ロール長手方向に100mピッチで採取したフィルムサンプルにおいて、フィルムを構成するポリエステルは、全酸成分100モル%中におけるイソフタル酸含有比率が全てその平均値±0.3mol%以内であること
(3)ロール長手方向の厚みムラが20%以下であること
【請求項2】
熱収縮ポリエステル系フィルムが、少なくともペットボトル再生原料と1種類以上の組成の異なるポリマーチップの混合物から形成されていることを特徴とする請求項1に記載の熱収縮性ポリエステル系フィルムロール。
【請求項3】
熱収縮性ポリエステルフィルムを構成するポリエステルが、エチレンテレフタレートを主たる構成成分とすることを特徴とする請求項1又は2に記載の熱収縮性ポリエステル系フィルムロール。
【請求項4】
ロール長手方向に100mピッチで採取したフィルムサンプルにおいて、フィルムを構成するポリエステルは、全酸成分100モル%中におけるイソフタル酸含有比率の平均値が0.3モル%以上3.0モル%以下であることを特徴とする請求項1~3のいずれかに記載の熱収縮性ポリエステル系フィルムロール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱収縮性ポリエステル系フィルムを巻き取ってなるフィルムロールに関する。さらに詳しくは、ペットボトルリサイクル原料を使用していながら、高い収縮性を有し、フィルムロール長手方向の収縮物性のばらつきが小さく、後工程での収縮不足、収縮ムラ、歪み、タテ引け等の不良発生が少ない熱収縮性ポリエステル系フィルムロールに関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、ガラス瓶やペットボトル等の保護と商品の表示を兼ねたラベル包装、キャップシール、集積包装等の用途に、ポリ塩化ビニル系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリエステル系樹脂等からなる延伸フィルム(所謂、熱収縮性フィルム)が広範に使用されるようになってきている。そのような熱収縮性フィルムの内、ポリ塩化ビニル系フィルムは、耐熱性が低い上に焼却時に塩化水素ガスを発生したり、ダイオキシンの原因となる等の問題がある。また、ポリスチレン系フィルムは、耐溶剤性に劣り、印刷の際に特殊な組成のインキを使用しなければならない上、高温で焼却する必要があり、焼却時に異臭を伴って多量の黒煙が発生するという問題がある。それゆえ、耐熱性が高く、焼却が容易であり、耐溶剤性に優れたポリエステル系の熱収縮性フィルムが、収縮ラベルとして広汎に利用されるようになってきており、PET容器(ペットボトル)の流通量の増大に伴って、使用量が増加している傾向にある。
【0003】
しかし、一方でペットボトル使用量の飛躍的な増大により、ごみ問題や省資源が社会的な課題となっている。その対策のひとつとして、使用済みのペットボトルを回収し、資源として再度使用する(リサイクル)動きが活発である。
リサイクル技術としては、主にメカニカルリサイクル、ケミカルリサイクル、サーマルリサイクルなどがあるが、その中でもメカニカルリサイクルが最も広く普及しており、使用済みの容器を選別、粉砕、洗浄を行い、押出機で再度樹脂チップ化し、その後、再びペットボトルまたは繊維やフィルムに加工され使用される。
【0004】
熱収縮性ポリエステル系フィルムラベルにおいても、上記のようなペットボトルリサイクル(再生)原料を一部使用することで、PETの生産、使用、廃棄にわたるライフサイクルに寄与し、環境負荷低減に貢献することが可能である。
【0005】
熱収縮性ポリエステル系フィルムは、一般的に、高い収縮性を得るためにフィルムを構成するポリエステルの結晶性を低下させる必要がある。しかしながら、ペットボトルリサイクル原料は結晶性の高い原料である。よって、ペットボトルリサイクル原料を使用する際は、非晶性の高い原料と少なくとも2種類の原料を混合して使用することが必須である。
【0006】
熱収縮性フィルムは、製造後、一旦ロール状に巻き取られ、フィルムロールの形態で、各種図柄の印刷工程へ送られ、印刷終了後は、必要に応じて、最終製品に用いられるラベル等のサイズに合わせてスリット加工され、さらに溶剤接着等の手段によりフィルムの左右端部を重ね合わせてシールしてチューブ状体にされ、チューブ状体のものを裁断して、ラベル、袋等の形態に加工される。そして、ラベルや袋状のものを容器に装着し、スチームを吹き付けて熱収縮させるタイプの収縮トンネル(熱風トンネル)の内部をベルトコンベアー等にのせて通過させ、熱収縮させて容器に密着させている。
【0007】
ところで、この熱収縮工程において、前記のラベルや袋等の単位において1個1個の熱収縮率ばらつく、つまり変動が大きいと、トンネル内の加熱条件は同じであるため、適正な熱収縮率を示さないラベルや袋等が発生することとなり、これらは収縮不足、収縮ムラ、シワ、図柄の歪み、タテヒケ等のよる外観不良を起こすため、最終製品とすることができなくなる。ここでタテヒケとは、収縮後のラベルの長さが不揃いになることで、ラベルの上端縁が下向きに湾曲するラインを描いたり、下端縁が上向きに湾曲ラインを描いたりす
る外観不良である。
【0008】
このような、熱収縮率の変動は、ロール長手方向のフィルムを構成するポリエステル組成の変動が熱収縮率に与える影響が大きい。
通常熱収縮性ポリエステル系フィルムは、各種原料チップを押出機に投入、溶融してダイスから溶融樹脂を押し出して未延伸原反を得て、その後延伸されるが、組成の変動は、各種原料チップの押出機への供給までに発生している、つまり、各種原料チップの混合が均一でなく、偏析しているために組成の変動が発生していると考えられる。
【0009】
ポリエステルフィルムに必要な成分を単一組成の原料チップにして使用する(原料チップを1種類にする)方法を採ることで、偏析は発生しないが、上述のようにペットボトルリサイクル原料を使用する場合、少なくとも2種類の原料チップを混合して使用する必要があり、偏析のリスクは存在する。つまり、ペットボトルリサイクル原料を使用する以上、長手方向の熱収縮率の変動が発生するリスクを含んでいる。例えば、ペットボトルのリサイクル工程で、粉砕・洗浄して再チップ化する際に非晶性ポリエステルを添加して、フィルムに必要な成分を全て含んだ単一組成の原料チップを得ることも不可能ではないが、リサイクル原料はフィルム以外の用途にも使用するため現実的ではない。
また、ペットボトルリサイクル原料は、様々なペットボトルを無作為に混合してリサイクルされている場合が多く、繰り返し使用により分子量等が低下しており、また高結晶化核剤等の添加剤が用いられている場合が多く、フィルムの原料として使用した場合、偏析による配合量の変動によるフィルム物性変動への影響が他の原料よりも大きく現れる悪さがあることを本願発明者らは見出した。
【0010】
特許文献1にペットボトルリサイクル原料を使用した熱収縮性ポリエステル系フィルムが記載されているが、長手方向の熱収縮率の変動についての記載はない。
特許文献2においては、ペットボトルリサイクル原料を高比率含有した熱収縮性ポリエステル系フィルムが記載されているが、記載の方法では、90℃で45%以上の収縮率を得ることは困難であり、また長手方向の熱収縮率の変動についての記載はない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特許第5320737号公報
【特許文献2】特許第6402954号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明は、ペットボトルリサイクル原料を含有しても、フィルムロール内での熱収縮率の変動に起因する熱収縮工程でのシワやタテヒケなどの不良の発生を低減する熱収縮性ポリエステルフィルムロールを提供することを課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明者らは上記課題を解決するため、鋭意検討した結果、本発明を完成するに至った。即ち本発明は以下の構成よりなる。
【0014】
1.ペットボトル再生原料を5質量%以上50質量%以下含有すると共に、イソフタル酸成分を含有するポリエステルから構成される熱収縮性ポリエステル系フィルムからなるフィルムロールであり、以下の要件(1)~(3)を満足することを特徴とする熱収縮性ポリエステル系フィルムロール。
(1)ロール長手方向に100mピッチで採取したフィルムサンプルを、90℃温湯中に10秒浸漬させた時の主収縮方向における収縮率が、平均値が40%以上であり、すべてのサンプルにおいて平均値±3%以内であること
(2)ロール長手方向に100mピッチで採取したフィルムサンプルにおいて、フィルムを構成するポリエステルは、全酸成分100モル%中におけるイソフタル酸含有比率が全てその平均値±0.3mol%以内であること
(3)ロール長手方向の厚みムラが20%以下であること
2.熱収縮ポリエステル系フィルムが、少なくともペットボトル再生原料と1種類以上の組成の異なるポリマーチップの混合物から形成されていることを特徴とする1.に記載の熱収縮性ポリエステル系フィルムロール。
3.熱収縮性ポリエステルフィルムを構成するポリエステルが、エチレンテレフタレートを主たる構成成分とすることを特徴とする1.又は2.に記載の熱収縮性ポリエステル系フィルムロール。
4.ロール長手方向に100mピッチで採取したフィルムサンプルにおいて、フィルムを構成するポリエステルは、全酸成分100モル%中におけるイソフタル酸含有比率の平均値が0.3モル%以上3.0モル%以下であることを特徴とする1.~3.のいずれかに記載の熱収縮性ポリエステル系フィルムロール。
5.熱収縮ポリエステル系フィルムロールの巻長が1000m以上であることを特徴とする1.~4.のいずれかに記載の熱収縮性ポリエステル系フィルムロール。
6.ロール長手方向に100mピッチで採取したフィルムサンプルを、90℃温湯中に10秒浸漬させた時の収縮率が、主収縮方向と直交する方向における平均値が0%以上15%以下であり、全てのサンプルの収縮率が平均値±3%以内であることを特徴とする1.~5.のいずれかに記載の熱収縮性ポリエステル系フィルムロール。
【発明の効果】
【0015】
本発明の熱収縮性ポリエステル系フィルムロールはペットボトルリサイクル原料を混合して使用しても、フィルムロール内での熱収縮率の変動が小さく、それに起因する熱収縮工程でのシワやタテヒケなどの不良の発生が極めて少なくすることが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】ホッパー1を備えた押出機2とインナーパイプとの関係の一例を示す概略図である。
図2】前記図1のAの部分を示す拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明の熱収縮性ポリエステル系フィルムロールを構成する熱収縮性ポリエステル系フィルム(以下、本発明の熱収縮性ポリエステル系フィルムと称する場合がある)において使用するポリエステルは、エチレンテレフタレートを主たる構成成分とするものである。すなわち、ポリエステルの全構成成分100モル%に対してエチレンテレフタレートを50モル%以上、好ましくは60モル%以上含有するものである。また、後述するように該ポリエステルはイソフタル酸成分を含有する。本発明のポリエステルを構成するテレフタル酸、イソフタル酸以外の他のジカルボン酸成分としては、ナフタレンジカルボン酸、オルトフタル酸等の芳香族ジカルボン酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、デカンジカルボン酸等の脂肪族ジカルボン酸、および脂環式ジカルボン酸等を挙げることができる。
【0018】
脂肪族ジカルボン酸(たとえば、アジピン酸、セバシン酸、デカンジカルボン酸等)を含有させる場合、含有率は3モル%未満であることが好ましい。これらの脂肪族ジカルボン酸を3モル%以上含有するポリエステルを使用して得た熱収縮性ポリエステル系フィルムでは、フィルム腰が不十分となり、スリットや後加工次に不具合が発生するため好ましくない。
【0019】
また、3価以上の多価カルボン酸(たとえば、トリメリット酸、ピロメリット酸およびこれらの無水物等)を含有させないことが好ましい。これらの多価カルボン酸を含有するポリエステルを使用して得た熱収縮性ポリエステル系フィルムでは、必要な高収縮率を達成しにくくなる。
【0020】
本発明で使用するポリエステルを構成するエチレングリコール以外のジオール成分としては、1-3プロパンジオール、1-4ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、ヘキサンジオール等の脂肪族ジオール、1,4-シクロヘキサンジメタノール等の脂環式ジオール、ビスフェノールA等の芳香族系ジオール等やジエチレングリコールを挙げることができる。
【0021】
本発明の熱収縮性ポリエステル系フィルムに用いるポリエステルは、1,4-シクロヘキサンジメタノール等の環状ジオールや、炭素数3~6個を有するジオール(たとえば、1-3プロパンジオール、1-4ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、ヘキサンジオール、ジエチレングリコール等)のうちの1種以上を含有させて、ガラス転移点(Tg)を60~80℃に調整したポリエステルが好ましい。
【0022】
また、本発明の熱収縮性ポリエステル系フィルムに用いるポリエステルは、全ポリステル樹脂中における多価アルコール成分100モル%中あるいは多価カルボン酸成分100モル%中の非晶質成分となりうる1種以上のモノマー成分の合計が14モル%以上であることが好ましく、16モル%以上であることがより好ましく、特に18モル%以上であることが好ましい。ここで、非晶質成分となりうるモノマーとしては、たとえば、ネオペンチルグリコール、1,4-シクロヘキサンジメタノール、1,4-シクロヘキサンジカルボン酸、2,6-ナフタレンジカルボン酸、2,2-ジエチル1,3-プロパンジオール、2-n-ブチル2-エチル1,3-プロパンジオール、2,2-イソプロピル1,3-プロパンジオール、2,2-ジn-ブチル1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、ヘキサンジオールを挙げることができるが、その中でも、ネオペンチルグリコール、又は1,4-シクロヘキサンジメタノールを用いるのが好ましい。非晶成分となりうるモノマー成分の合計の上限としては40モル%以下が好ましい。より好ましくは38モル%以下であり、さらに好ましくは36モル%以下である。
【0023】
本発明の熱収縮性ポリエステル系フィルムに用いるポリエステル中には、炭素数8個以上のジオール(たとえばオクタンジオール等)、または3価以上の多価アルコール(たとえば、トリメチロールプロパン、トリメチロールエタン、グリセリン、ジグリセリン等)を、含有させないことが好ましい。これらのジオール、または多価アルコールを含有するポリエステルを使用して得た熱収縮性ポリエステル系フィルムでは、必要な高収縮率を達成しにくくなる。
【0024】
本発明の熱収縮性ポリエステル系フィルムの固有粘度は0.55dl/g以上1.50dl/g以下が好ましい。固有粘度が0.55dl/g未満であるとフィルムの強度が著しく低下し、製膜および加工時に破断しやすくなるため好ましくない。また、固有粘度が1.50dl/gを超える場合においても、延伸が困難となり破断の原因となるため好ましくない。より好ましくは0.58dl/g以上1.47dl/g以下であり、さらに好ましくは0.61dl/g以上1.44dl/g以下である。
【0025】
また、本発明の熱収縮性ポリエステル系フィルムを形成する樹脂の中には、必要に応じて各種の添加剤、たとえば、ワックス類、酸化防止剤、帯電防止剤、結晶核剤、減粘剤、熱安定剤、着色用顔料、着色防止剤、紫外線吸収剤等を添加することができる。本発明の熱収縮性ポリエステル系フィルムを形成する樹脂の中には、滑剤として微粒子を添加することによりポリエチレンテレフタレート系樹脂フィルムの作業性(滑り性)を良好なものとするのが好ましい。微粒子としては任意のものを選択することができるが、たとえば、無機系微粒子としては、シリカ、アルミナ、二酸化チタン、炭酸カルシウム、カオリン、硫酸バリウム等を挙げることができる。また、有機系微粒子としては、たとえば、アクリル系樹脂粒子、メラミン樹脂粒子、シリコーン樹脂粒子、架橋ポリスチレン粒子等を挙げることができる。微粒子の平均粒径は、0.05~3.0μmの範囲内(コールターカウンタにて測定した場合)で、必要に応じて適宜選択することができる。また微粒子の添加量はフィルムで300~1200ppmの範囲内で、良好な滑り性(摩擦)と透明性を両立することができる。
【0026】
熱収縮性ポリエステル系フィルムを形成する樹脂の中に上記粒子を配合する方法としては、たとえば、ポリエステル系樹脂を製造する任意の段階において添加することができるが、エステル化の段階、もしくはエステル交換反応終了後、重縮合反応開始前の段階でエチレングリコール等に分散させたスラリーとして添加し、重縮合反応を進めるのが好ましい。また、ベント付き混練押出し機を用いてエチレングリコールまたは水等に分散させた粒子のスラリーとポリエステル系樹脂原料とをブレンドする方法、または混練押出し機を用いて、乾燥させた粒子とポリエステル系樹脂原料とをブレンドする方法等によって行うのも好ましい。
【0027】
さらに、本発明の熱収縮性ポリエステル系フィルムには、フィルム表面の接着性を良好にするためにコロナ処理、コーティング処理や火炎処理等を施したりすることも可能である。
【0028】
本発明の熱収縮性ポリエステル系フィルムは、ペットボトルリサイクル原料を5質量%以上50質量%以下含有している。5質量%未満では、環境負荷低減への寄与は極めて小さく、また、本発明の効果が発揮されない。50質量%を超えて使用する場合、ペットボトルリサイクル原料以外の原料の非晶性(非晶質成分の量)を極めて高くする必要があり、原料の重合時間が長くなるなど経済的ではないため好ましくない。ペットボトルリサイクル原料のより好ましい含有量は10質量%以上45質量%以下であり、さらに好ましくは20質量%以上40質量%以下である。
【0029】
本発明はフィルムロール長手方向に100mピッチでフィルムをサンプリングし、90℃温水中での収縮率(90℃温湯収縮率)を各フィルムサンプルで測定した時の、主収縮方向の収縮率平均値が40%以上であり、全てのサンプルの収縮率が平均値±3%以内である。
温湯収縮率は、90℃の温水中で無荷重状態で10秒間に亘って処理したときに、収縮前後の長さから、下式1により算出する。
熱収縮率={(収縮前の長さ-収縮後の長さ)/収縮前の長さ}×100(%) ・・(式1)
収縮率の平均値が40%未満であると、収縮量が小さいために、熱収縮した後のラベルに皴や収縮不足が生じてしまうので、熱収縮フィルムとしては好ましくない。収縮率の上限は特に設けないが、80%程度が上限である。
また、100mピッチでサンプリングしたフィルムの収縮率が平均値±3%の範囲を超える場合、ラベルに加工した際に、各ラベル毎の収縮率の変動が大きくなり、収縮トンネルで仕上げた際にシワなどの外観不良となるラベルが発生しやすくなり好ましくない。より好ましくは、平均値±2.5%であり、さらに好ましくは平均値±2.0%であり、特に好ましくは平均値±1.5%以下であり、最も好ましくは平均値±1.0%以下である。
また、本発明はロール長手方向に100mピッチでフィルムをサンプリングし、90℃温水中での収縮率(90℃温湯収縮率)を各フィルムサンプルで測定した時の、全てのサンプルの主収縮方向と直交する方向の収縮率が平均値±3%の範囲内である。100mピッチでサンプリングしたフィルムの主収縮方向と直交する方向の収縮率が平均値±3%の範囲を超える場合、ラベルに加工した際に、各ラベル毎の収縮率の変動が大きくなり、収縮トンネルで仕上げた際にラベルの高さが各ラベルで異なってしまうため好ましくない。より好ましくは、平均値±2.5%であり、さらに好ましくは平均値±2.0%であり、特に好ましくは平均値±1.5%以下であり、最も好ましくは平均値±1.0%以下である。また、全てのサンプルの主収縮方向と直交する方向の収縮率の平均値の上限は20%である。平均値が20%を超えると、収縮仕上げ時のタテヒケが大きくなるため好ましくない。より好ましくは17%以下であり、さらに好ましくは14%以下である。なお、主収縮方向と直交する方向の収縮率は低ければ低いほど好ましい。
【0030】
本発明の熱収縮性ポリエステル系フィルムロールは、ロール長手方向に100mピッチで採取したフィルムサンプルにおいて、ポリエステルの全酸成分100モル%中におけるイソフタル酸含有比率が全てその平均値±0.3mol%以内であることが好ましい。イソフタル酸の含有比率は後述するようにNMR測定によって測定、算出する。
イソフタル酸の含有比率が平均値±0.3mol%の範囲を超えて変動する場合、組成の変動に伴い、熱収縮のばらつきも大きく生じることになり、結果、ラベルに加工した際に、ラベル毎に収縮率がばらつき、シワなどの外観不良が発生しやすくなり好ましくない。
本発明のフィルムロールには、ペットボトルリサイクル原料を使用するが、後述するようにペットボトルリサイクル原料は酸成分としてイソフタル酸を少量含んでいることが一般的である。イソフタル酸の比率が変動することはつまり、ペットボトルリサイクル原料チップとその他原料のチップが偏析していることを意味する。前述のように、ペットボトルリサイクル原料には、高結晶化核剤等の添加剤が含まれる場合が多く、また繰り返し使用により分子量等が低下しているので、偏析によるフィルムロール内での物性変動への影響が他の原料よりも大きい。偏析を小さくする方法については、後述する。
イソフタル酸比率のより好ましい範囲は平均値±0.2mol%であり、さらに好ましくは平均値±0.1mol%である。
【0031】
なお、前記イソフタル酸の含有比率の平均値は、ポリエステルの全酸成分100モル%中において、0.3モル%以上3.0モル%以下であることが好ましい。ペットボトルに使用されているポリエステルにはボトル外観を良好にするために、結晶性の制御が行われており、その結果、10モル%以下のイソフタル酸を含むポリエステルが用いられている場合が一般的である。本発明においては、ペットボトルリサイクル原料を50質量%以下含有するので、イソフタル酸の含有比率の平均値の上限は3.0モル%以下であることが好ましい。より好ましくは2.8モル%以下であり、さらに好ましくは2.6モル%以下、特に好ましくは2.4モル%以下である。
イソフタル酸の含有比率の平均値の下限は好ましくは0.3モル%であり、より好ましくは0.4モル%であり、さらに好ましくは0.5モル%であり、特に好ましくは0.6モル%である。
【0032】
また、本発明の熱収縮性ポリエステル系フィルムロールの長手方向における厚みムラは、下式2で表される式で20%以下である。長手方向の厚みムラが悪いと、ラベルに加工した際に、ラベル毎の厚みが異なってしまう。ラベルの厚みが異なると、スチームトンネル(熱風トンネル)内部でのラベルへの熱のかかり方が異なるため、シワなどの外観不良が発生しやすくなり好ましくない。好ましくは18%以下で、更に好ましいのは15%以下である。厚みムラの値は、小さければ小さいほど好ましい。
厚みムラ={(厚みの最大値―厚みの最小値)÷平均厚み}×100(%)・・(式2)
【0033】
また、本発明の熱収縮性ポリエステル系フィルムの厚みは、5μm以上40μm以下が好ましい。厚み5μm未満とすると製膜における破断リスクが高くなる、また、ラベルにした際の腰感が低下しシワになりやすく好ましくない。また、フィルム厚みは厚い方がより製膜は安定し、腰感が高まるためシワなどのトラブルは生じにくくなる傾向ではあるが、環境対応低減を目的とする本発明のフィルムと、減容化という観点から逆行するため好ましくない。より好ましくはフィルム厚みは8μm以上37μm以下であり、さらに好ましくは11μm以上34μm以下である。
【0034】
本発明の熱収縮性ポリエステル系フィルムロール幅は500mm以上であることが好ましく、1000mm以上であるとさらに好ましく、1500mm以上であると特に好ましい。またフィルムロールの巻長は2000m以上であることが好ましく、4000m以上であることがさらに好ましく、8000m以上であることが特に好ましい。
【0035】
以下、本発明の熱収縮性ポリエステル系フィルムロールの好ましい製造方法について説明する。
本発明の熱収縮性ポリエステル系フィルムロールは、原料樹脂を貯蔵し供給する工程と、樹脂を溶融しながら押し出す工程と、押出した樹脂を未延伸シートとする工程と、未延伸シートを延伸する工程と、得られた延伸フィルムを巻き取る工程を経ることにより製造される。
その上で、本発明の特性をもつフィルムロールを得るためには、フィルム組成の変動を抑制することが重要となる。具体的な方法についてはそれぞれ下記する。
【0036】
〈フィルム組成の変動の抑制の方法〉
熱収縮フィルムは一般的に原料に非晶性成分を必要とするが、本発明の熱収縮性ポリエステル系フィルムは、ペットボトルリサイクル原料チップを使用するため、必然的にペットボトルリサイクル原料を含めた少なくとも2種類以上の原料チップを使用する。使用する方法として、ブレンド方式が一般的であるが、原料チップの偏析が起こりやすくなる。そこで、下記に示すような各種方法およびその方法の組み合わせによりブレンド方式での原料チップの偏析を抑制することが本発明では好ましい。
【0037】
(a) チップ形状の均一化
ブレンド方式では、通常組成の異なる複数の原料ポリエステルチップをホッパー内部でブレンドした後、溶融混練して押出機で押出しフィルム化する。本発明では、ペットボトルリサイクル原料チップとその他非晶性原料チップを連続式あるいは間欠式に供給して、ホッパー内部で混合し、最終的には押出機直上のポッパー(最終ホッパー)に混合原料チップを供給し、押出機の押し出し量に合わせて原料を供給してフィルムを形成する。
しかし、原料が混合されているホッパーおよび最終ホッパーの容量あるいは形状によっては、ホッパー内部のチップ量が多い場合と全量が少なくなった場合に、その後のホッパーあるいは押出機に供給されるチップの混合比が異なることがわかっている。この問題は、各種ポリエステル原料チップの形状および比重が異なっている場合に、顕著に現れる。その結果、本発明ではイソフタル酸の含有率が変動してしまう。
本発明の長手方向の収縮率の変動およびイソフタル酸含有率の変動が少ないフィルムロールを得るためには、フィルムを構成するポリエステルの組成変動を低減する手段として使用する原料チップの形状をあわせて、ホッパー内部での原料偏析現象を抑止することが好ましい。
【0038】
ポリエステルの原料チップは、通樹、重合後に溶融状態で重合装置よりストランド状で取り出され、直ちに水冷された後、ストランドカッターでカットされて成形される。またペットボトルリサイクル原料の場合は、ペットボトルを選別、粉砕、洗浄したフレイク状のポリエステルを再度押出機で押出し、ストランド状で取り出され、直ちに水冷、ストランドカッターでカットされて成形される。このため、ポリエステルチップは、通常、断面が楕円形の楕円柱状となる。この時、ポリエステルチップの断面楕円の平均長径(mm)、平均短径(mm)および平均チップ長さ(mm)に対して、夫々±20%以内の範囲にすることが好ましい。さらに、これらの平均値が夫々±15%以内の範囲であるとより好ましい。断面楕円の平均長径、平均短径の調整は、ストランド状に押し出す際のダイスのノズル孔のサイズの調整により可能であり、チップの長さの調整はストランドの押出量、ストランドの搬送速度、ストランドカッターの回転速度の調整により可能である。
チップの大きさに違いがある場合、ホッパー内をチップ混合物が落下していくときに、小さいチップは先に落下しやすい、このためホッパー内部のチップ残量が少なくなると、大きいチップの比率が大きくなり、これが原料偏析の原因になる。しかし、上記範囲内の原料チップを用いることで、これらの原料偏析を抑制が可能となる。
【0039】
また原料チップの粒体流動性つまり落下のしやすさを示す指標として、安息角がある。安息角とは、一定の量の原料チップを一定の高さから落下させたときに形成される山の斜面と水平面とのなす角度である。安息角はチップの形状や粒径によって決まるもので、チップが小さいほど安息角は小さく傾向があり、レジンの安息角が小さいほど落下しやすくなる傾向である。安息角がもっとも小さいレジンともっとも大きいチップの安息角の差が5度以下であることが好ましい。上記範囲内の原料チップを用いることで、これらの原料偏析を抑制が可能となるより好ましくは4度以下である。
【0040】
(b)ホッパー形状最適化
上記のホッパー形状の最適化も、原料偏析の対策として好ましい手段である。混合チップが入るホッパーは、漏斗状ホッパーを用い、その傾斜角を65°以上にすることで、大きいチップも小さいチップと同様に落としやすくすることができ、内容物の上端部が水平面を保ちつつ下降していくため、原料偏析の低減に効果的である。より好ましい傾斜角度は70°以上である。なお、ホッパーの傾斜角とは、漏斗状の斜辺と、水平な線分との間の角度である。
【0041】
(c)ホッパー容量の最適化
ホッパー内部で原料偏析を低減する手段として、使用するホッパーの容量を適正化することも好ましい手段である。ここで、ホッパーの適正な容量としては、押出機の1時間の吐出量の15~120質量%の範囲内である。この吐出量の15質量%以上の容量がホッパーにないと、原料の安定供給が難しいこと、また大きすぎるホッパーでは、原料チップ混合物が長時間に亘ってホッパー内にとどまることになり、その間にチップの偏析が生じる恐れがあること、などがホッパー容量を上記範囲内とする理由である、ホッパー容量は押出機の1時間あたりの吐出量の20~100質量%の範囲内であることがより好ましい。
【0042】
(d) 微粉体の低減
使用する原料チップの削れなどにより発生する微粉体の比率を低減することも、原料偏析を抑制するために好ましい手段である。微粉体がチップとチップの間に入りこみ、チップ同士の摩擦低減により、サイズの小さいチップが落ちやすくなるため偏析を助長する。工程内で発生する微粉体を除去して、ホッパー内に含まれる微粉体の比率を低減することが好ましい。含まれる微粉対比率は、原料チップが押出機に入る全行程を通じて、1質量%以内に制御することが好ましく、0.5%質量%以内に制御することがさらに好ましい。
具体的には、ストランドカッターでチップ形成時に篩を通す方法、原料チップを空送などする場合にサイクロン式エアフィルターを通すなどの方法により、微粉体を除去すればよい。
【0043】
(e) 未結晶化原料の使用
使用する複数の原料チップの間の、比重の差異が大きい場合も原料偏析が生じやすくなる。つまり、比重の大きい(重い)チップは、チップ混合物が落下していく際に、先に落下しやすく偏析を助長する。本発明では、ペットボトルリサイクル原料チップと非晶性原料チップを混合して使用するが、ペットボトルリサイクル原料は結晶性原料であるため、非晶性原料よりも比重が大きく、チップの間に比重の差異がある。
一方、原料チップは、押出機に投入する前にレジンの含有する水分率を低下させるため乾燥工程を経る、もしくは別途乾燥した原料チップをホッパーに投入する。ペットボトルリサイクル原料は乾燥時間の短縮のためにチップを160℃程度にまで加熱して乾燥させるが、この時、ポリエステルは結晶化し、乾燥前のチップよりも比重が増加する。そのため加熱乾燥したペットボトルリサイクル原料チップと、非晶性原料チップの比重差はさらに増加し、偏析を助長する。
そのため、本発明で使用する原料チップは、結晶化させず乾燥させるため常温で真空引きし水分率を低下させる方法が好ましい。あるいは乾燥自体を実施せずに、つまり結晶化が生じていない状態の原料チップを使用し、押出機をベント付きの二軸押出機を採用して溶融押出しを実施しながら、ベントから水分を除去する方法をとることが好ましい。
【0044】
(f)ホッパー内部での撹拌
原料チップの混合物が入るホッパー内部を撹拌することで、原料偏析を低減することも有効である。例えば羽の付いた撹拌装置や、螺旋状のリボンの付いた撹拌装置をホッパーに設けることで、レジン同士を撹拌混合しながら次工程(ホッパーもしくは押出機)に供給することができ、原料偏析を低減できる。撹拌機能を有するホッパーの位置は特に限定しないが、押出機に近いホッパーであることがより好ましく、押出機直上の最終ホッパーで撹拌することが特に好ましい。
【0045】
(g)コーンバッフルの設置
ホッパー下部の原料チップの落下は、その上部にある原料チップの重量による圧力(所謂、粉体圧)の影響を受ける。
フィルムは通常連続的に生産されるが、原料チップのホッパーへの供給は間欠式である場合が多い。連続的に原料レジンを供給すると、常にチップ輸送装置を稼働状態におく必要があり故障の頻度が上がる、また、供給量を消費量とバランス化する必要があり、原料供給量の少ないレジンチップの場合は正確な計量が困難となるためである。間欠的な供給は、つまり、ホッパー内部の原料が消費されて、ある容量レベルを下回ると、原料チップがある量供給され、あるレベルに達すると供給をやめ、その後消費が進むと再度供給するというサイクルであるが、その場合、ホッパーの容量レベルは常に変動することとなり、つまりは、ホッパー下部への粉体圧も変動することとなる。粉体圧の変動は原料偏析を助長するため好ましくない。
そこで、ホッパー下部にコーンバッフル(陣笠)を設置して、ホッパー上部にある原料チップからの圧力をカットする手段が好ましい。容量レベルの最低レベルをコーンバッフルよりも上部に設定し、ホッパー下部でコーンバッフルよりも下にある原料チップに掛かる粉体圧を一定に保つことが可能となり、原料偏析の低減が可能となる。
コーンバッフルの形状は特に限定しないが、円錐形もしくは三角錐形であることが好ましい。
【0046】
(h)押出機直上での混合
押出機直上のホッパー(最終ホッパー)内部に配管を挿入して、押出直前にチップを混合する方法も好ましい手段である。偏析を起こす原料チップが押出機直前で混ぜ合わされるため、実質偏析が発生する機会が極めて少ないため偏析低減に効果的である。但し、少なくとも下式3を満たす設備を使用する必要がある。具体的な混合手順の一例を図1に示す。図1はホッパー1を備えた押出機2とインナーパイプの関係の一例を示す概略図であり、図2は前記図1のAの部分の拡大図である。図1,2に示すように、インナーパイプ3から混合する原料チップが供給され、その他原料チップはホッパー1の上部から供給される。そしてインナーパイプ3の出口4が押出機直上(正確には押出機2の原料チップ供給口5の直上)になっているため、原料混合チップの混合比率を一定に保つことができる。
前記インナーパイプ3の出口4の高さ(H2)は、以下の式3の関係を満たすものが好ましく、式3,4の両方の関係を満足しているのがより好ましい。
H2<H1 ・・・(式3)
(式中、H1はホッパーの内壁が鉛直になっている部分の高さを示す(図2参照))
0.5×L/tanθ<H2 ・・・(式4)
(式中、Lはインナーパイプ3の出口4の内径を示す(図2参照)。θは混合前からホッパーに入っている原料チップの安息角である。)
式3を満たすことで、原料チップが混合される位置(H3)を押出機よりも上にすることができ、押出機内に空気が入って気泡が生じるのを防止することができる。
原料チップの混合位置の高さH3(=H2-0.5×L/tanθ)は0mより高く、2m未満であることが好ましい。0mよりも高くすることで、押出機内への空気の侵入を防止することができるため好ましい。また、2m未満にすることで、押出機までの距離を短くすることができ、原料偏析を防止できる。高さH3は好ましくは0.3m以上1.7m以下であり、さらに好ましくは0.6m以上1.4m以下である。
【0047】
ブレンド方式を採用して本発明の長手方向での熱収縮率のばらつき、およびイソフタル酸比率のばらつきが小さいフィルムロールを得るためには、上記の(a)~(d)は全て行うことが好ましい。ただし(a)~(d)を全て実施しても原料偏析を低減するには不十分であり、さらに(e)~(h)の4つの手段のうち1つ以上を採用することが好ましく、2つ以上採用することがより好ましい。
あるいは、上記ブレンド方式を採用せず、以下の(i)の手段を採用することができる。
【0048】
(i)二軸押出機とサイドフィーダーの使用
上記の方法の他に、原料チップをブレンドせずに使用する方法として、二軸押出機とサイドフィーダーを用いた方法が好適に用いることができる。
具体的には、非晶性原料チップとペットボトルリサイクル原料チップの2種類を使用する場合において、非晶性の原料チップを二軸押出機1に供給して、押出機機内で溶融し、さらに別の二軸押出機(以下、該別の二軸押出機を、二軸押出機2とする)に、ペットボトルリサイクル原料チップを供給、溶融して、配管を介して二軸押出機1の途中へサイドフィードの方法で直接導入し、その後二軸押出機1の内部で2種類の原料を混合する方法が好ましい。
原料をチップの状態で混合する過程がないため、前述のような原料チップの偏析の懸念は本質的に解消される。
原料の混合比率は、二軸押出機2(サイドフィーダー)のに投入する原料チップをスクリューフィーダー等の回転数で正確に調整することができる。そのためフィルム長手方向での組成の変動を極めて小さくすることが可能である。
【0049】
二軸押出機1はベント機能を有することが好ましい。サイドフィーダーにより原料が導入される際の気泡の混入を防ぐために、原料同士が混合する開始位置にベントを設けて脱気することが好ましい。
二軸押出機1および2に供給する原料チップはそれぞれ単一である必要があることが好ましい。それは押出機への原料供給以前に原料チップが混合する工程をなくし原料チップの偏析を本質的になくすためである。
3種類以上の原料を使用する場合は、さらに別の二軸押出機3を設けて、サイドフィード方式で二軸押出機1に直接導入する方法が好ましい。
【0050】
本発明の熱収縮率ポリエステルフィルムの製造プロセスは、(1)溶融押出しおよび未延伸シートのキャスティング工程、(2)横延伸工程、(3)最終熱処理工程以下それぞれについて説明する。
【0051】
(1)溶融押出しおよび未延伸シートのキャスティング工程
原料の混合や供給については上述した通りの原料偏析対策を実施し、押出機で220~280℃の温度で、Tダイ法、チューブラ法等、既存の方法を用いて、シート状に押し出す。なお、押し出し時の温度が280℃を超えると、ポリエステル樹脂の極限粘度が低下し、製膜工程中で破断が生じやすくなり、定常状態のフィルムを得にくくなるため好ましくない。220℃を下回ると原料の一部が未溶融となり機械に過負荷がかかったり、未溶融樹脂が製膜時の破断の起点となるため好ましくない。
その後、押し出しで溶融されたフィルムを急冷することにより、未延伸のフィルムを得ることができる。なお、溶融樹脂を急冷する方法としては、溶融樹脂を口金から回転ドラム上にキャストして急冷固化することにより実質的に未配向の樹脂シートを得る方法を好適に採用することができる。
さらに、溶融樹脂をダイスの口部から吐出するときのせん断速度は100sec-1以上であると好ましく、150sec-1以上であるとより好ましい。せん断速度が高いほど、フィルムの長手方向の収縮率変動と厚みムラを抑制できる。これは、せん断速度が高いほど、ダイス口部(出口)での樹脂吐出圧力が安定するためである。せん断速度が100sec-1未満であるとダイス出口での樹脂吐出圧力が不安定となり、脈動(長手方向における未延伸フィルムの厚み変動)が発生しやすくなる。このことにより、後述する長手方向への延伸が均一とならないため、長手方向への熱収縮率変動と厚みムラが大きくなってしまう。
一方、せん断速度が600sec-1より大きいと、ポリエステル分子鎖が切断(分解)されて極限粘度が低下するだけでなく、ダイスの吐出部分に樹脂カス等が付着して生産性が悪くなるため好ましくない。
【0052】
なお、ダイス出口でのせん断速度は、以下の式5より求めた。
γ=6Q/(W×H2) ・・・(式5)
γ;せん断速度(sec-1
Q;押し出し機からの原料吐出量(cm/sec)
W;ダイス口部の幅(cm)
H;ダイス口部の間隔(リップギャップ)(cm)
【0053】
(2)横延伸工程
フィルムの延伸は幅方向にのみ延伸を行う横一軸延伸が好ましい。横延伸の前工程で縦延伸を実施する方法も用いることは可能であるが、生産機台が長大になるため好ましくない。上述のようにして得た未延伸シートを、シートの両端をクリップで把持して加熱することができるテンター装置に導き、予熱工程で熱風によりフィルムを所定の温度まで加熱した後、延伸工程で長手方向に搬送しながらクリップ間の距離を広げることで延伸する。
幅方向延伸時のフィルム温度は、フィルムTg+5℃以上Tg+40℃であることが好ましい。フィルム温度がTg+5℃未満であると、延伸力が高くなりすぎて、破断するリスクが高まるため好ましくない。フィルム温度がTg+40℃を超えると、延伸力が低すぎるために、フィルムに十分な収縮性が付与できず好ましくない。
【0054】
(3)最終熱処理工程
横延伸後のフィルムは、テンター内で幅方向の両端際をクリップで把持した状態で、横延伸温度+5℃以上45℃以下の温度で、5秒以上10秒以下の時間にわたって最終的に熱処理されることが好ましい。
温度が横延伸温度+45℃よりも高いと幅方向の収縮率が低下して必要な収縮特性を得られないため好ましくない。また、温度が横延伸温度+5℃よりも低いと、最終的な製品を常温下で保管した時に、経時で幅方向の収縮(いわゆる自然収縮率)が大きくなり好ましくない。また、熱処理時間は長いほど好ましいが、あまりに長いと設備が巨大化するので、10秒以下の時間が好ましい。
なお、前記の横延伸工程と最終熱処理工程における、予熱・延伸・最終熱処理の各工程の任意ポイントにおいて測定されるフィルムの表面温度の変動幅を、好ましくは平均温度±1℃以内、より好ましくは平均温度±0.5℃以内に制御することが、熱収縮率変動を低減する観点より好ましい。
【実施例0055】
次に実施例及び比較例を用いて、本発明を具体的に説明するが、本発明は、かかる実施例の態様に何ら限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、適宜変更することが可能である。
【0056】
[評価試料のサンプリング方法]
フィルムロールからフィルムを長さ1m除去した部分を表層部とし、幅方向中央位置から1番目の試料を切り出す。その後、フィルムロールを巻き出し機等で巻き出しながら、100m毎に幅方向中央位置を試料として切り出した。フィルムロールの残巻長が100m未満になったところでサンプリングを終了し、それまでに採取した試料を評価した。
【0057】
[熱収縮率]
フィルムを10cm×10cmの正方形に裁断し、温水温度90℃±0.5℃の温水中において、無荷重状態で10秒間処理して熱収縮させた後、フィルムの長手方向(主収縮方向と直交する方向)および幅方向(主収縮方向)の寸法を測定し、下記(1)式に従い熱収縮率を求めた。
また、収縮率の変動(ばらつき)については、上述の方法でサンプリングした試料で熱収縮率を測定し平均値、最大値、最小値を求めた。
熱収縮率=((収縮前の長さ-収縮後の長さ)/収縮前の長さ)×100(%) 式(1)
【0058】
[組成分析]
各試料を、クロロホルムD ( ユーリソップ社製)とトリフルオロ酢酸D1 ( ユーリソップ社製)を10:1(体積比)で混合した溶媒に溶解させて、試料溶液を調製し、NMR「GEMINI-200」(Varian社製)を用いて、温度23℃ 、積算回数64 回の測定条件で試料溶液のプロトンのNMRを測定した。NMR測定では、所定のプロトンのピーク強度を算出して、二酸成分100モル%中の成分量を測定した。上述で長手方向に100m毎でサンプリングした試料のイソフタル酸の成分比率(モル%)の平均値、最大値、最小値を求めた。
【0059】
[長手方向の厚みムラ]
フィルム長手方向の長さ100 m×幅40 mmの長尺なロール状にサンプリングし、ミクロン測定器株式会社製の連続接触式厚み計を用いて、5(m/分)の速度で測定した。測定時の最大厚みをTmax.、最小厚みをTmin.、平均厚みをTave.とし、下式(2)から、フィルム幅方向の厚みムラを算出した。
厚みムラ={(Tmax.-Tmin.)/Tave.}×100 (%) 式(2)
【0060】
[Tg(ガラス転移点)]
示差走査熱量分析装置(セイコー電子工業株式会社製、DSC220)を用いて、未延伸フィルム5mgをサンプルパンに入れ、パンのふたをし、窒素ガス雰囲気下で-40℃から120℃に10℃/分の昇温速度で昇温して測定した。Tg(℃)はJIS-K7121-1987に基づいて求めた。
【0061】
[固有粘度 (IV)]
ポリエステル0.2gをフェノール/1,1,2,2-テトラクロルエタン(60/40(重量比))の混合溶媒50ml中に溶解し、30℃でオストワルド粘度計を用いて測定した。単位はdl/gである。
【0062】
[収縮仕上がり性評価]
フィルムの両端部をジオキソランで接着することにより、円筒状のラベル(熱収縮性フィルムの主収縮方向を周方向としたラベル)を作製し、それを裁断し3000枚のラベルを作製した。ラベルの収縮方向の直径は70mmであった。しかる後、Fuji Astec Inc 製スチームトンネル(型式;SH-1500-L)を用い、通過時間4秒、ゾーン温度90℃で、500mlのPETボトル(胴直径 62mm、ネック部の最小直径25mm)に熱収縮させることにより、ラベルを装着した。なお、装着の際には、ネック部においては、直径30mmの部分がラベルの一方の端になるように調整した。収縮後の仕上がり性の評価は目視で行い、基準は下記の通りとした。
5:仕上がり性最良
4:仕上がり性良
3:欠点少し有り(2ヶ所以内)
2:欠点有り(3~5ヶ所)
1:欠点多い(6ヶ所以上)
ここで欠点とは、シワ、ラベル端部の折れ込み、収縮ムラ、収縮不足である
評価結果の4以上を合格レベル、3以下を不良とし、3000個のサンプルを評価した。
下記式にしたがって、収縮仕上り不良率(%)を求めた
収縮仕上がり不良率(%)=不良サンプル数/全サンプル数×100
【0063】
<安息角の測定>
先端出口の内径が18mmのステンレス製の漏斗を、ステンレス製の水平な板の直上に、先端から板までの距離(高さ)が200mmになるように設置した。原料チップ3kgを漏斗に注ぎ入れ、漏斗先端からステンレス板の上に落とした。この時約50g/minでチップを落下させた。落下させた原料チップは円錐状の山になり安定する。この時の山の斜面とステンレス板の間の角度を分度器を用いて測定し、安息角とした。
【0064】
<非晶性ポリエステル原料(ポリエステルA)チップの調製>
撹拌機、温度計および部分環流式冷却器を備えたステンレススチール製オートクレーブに、ジカルボン酸成分としてジメチルテレフタレート(DMT)100モル%と、多価アルコール成分としてエチレングリコール(EG)55モル%と、ネオペンチルグリコール(NPG)30モル%とジエチレングリコール15モル%を、多価アルコールがモル比でジメチルテレフタレートの2.2倍になるように仕込み、エステル交換触媒として酢酸亜鉛を0.05モル%(酸成分に対して)、重縮合触媒として三酸化アンチモン0.225モル%(酸成分に対して)を添加し、生成するメタノールを系外へ留去しながらエステル交換反応を行った。その後、280℃で26.7Paの減圧条件のもとで重縮合反応を行い、固有粘度0.77dl/gのポリエステル1を得た。
ポリエステルAのレジンサイズについて、100個のレジンから平均値を算出した。レジンは楕円柱状であると仮定し、楕円断面の長径、短径と長さ(ストランドのカット長)をノギスを用いて測定した。結果長径3.1mm、短径は2.1mm、高さは3.3mmであり、安息角は37度であった。
組成およびチップサイズ、安息角は表1に示す。
【0065】
〈ペットボトルリサイクル原料(ポリエステルB)〉
ポリエステルBはペットボトルリサイクル原料であり、ウツミリサイクルシステムズ(株)製のリサイクル原料チップを使用した。ポリエステルを構成する全ジカルボン酸成分に対してイソフタル酸を2モル%含んでいる。またレジンサイズは上述と同様の方法で測定し、結果長径2.9mm、短径2.0mm、長さ3.4mmで、安息角は36度であった。長径はポリエステルAに対して-6%、短径はポリエステルAに対して-5%、長さはポリエステルAに対して+3%であった。
なおポリエステルBの固有粘度は0.68dl/gであった。
【0066】
<非晶性ポリエステル原料(ポリエステルC)チップの調製>
ポリエステルCはポリエステルAと同様の方法で重合して、ストランドにする際のダイの孔サイズ、またカッター速度を変更することでレジンサイズを変更した。ポリエステルCのレジンサイズについて、100個のレジンから平均値を算出した結果、長径3.8mm、短径は2.5mm、高さは4.3mmで安息角は43度であった。
長径はポリエステルBに対して±31%、短径はポリエステルBに対して+25%、長さはポリエステルBに対して+26%であった。
なおポリエステルCの固有粘度は0.77dl/gであった。
【0067】
【表1】
【0068】
<熱収縮性フィルムの製造方法>
[実施例1]
上記したポリエステルA原料チップは常温真空引きで乾燥させ水分率100ppm未満にした。一方、ポリエステルB原料チップは150℃で加熱真空引きして水分率100ppm未満とした。それぞれの原料チップが保管されているホッパーから、そのホッパーから定量スクリューフィーダーで別々に押出機直上の最終ホッパーに供給しながら混合した。前記供給は空送で行い、サイクロン式エアフィルターで微粉体を除去した。原料の混合比率はポリエステルA:ポリエステルB=70:30とした。最終ホッパーでは原料チップ同士の撹拌を実施した。前記攪拌装置は螺旋状のリボンが回転して原料チップが攪拌される方式を用いた。また、最終ホッパー容量は190kgであり、押出機への供給量は時間あたり500kgとした。ホッパーの傾斜角度は70°とした。
その後、最終ホッパーから押出機へ混合原料チップ供給し、押出温度280℃で単軸押出機を用いて溶融押出しし、Tダイから溶融樹脂を押し出し、その後急冷して、厚さ135μmの未延伸フィルムを得た。このときのせん断速度は180sec-1であった。また、未延伸フィルムのガラス転移温度は65℃であった。
この未延伸フィルムをテンターに導き、フィルム温度が90℃になるまで予熱し、その後クリップ間隔を広げることにより、フィルム温度90℃で幅方向に4.5倍延伸した。さらに、最終熱処理ゾーンに導き、フィルム温度100℃で6秒間にわたって熱処理した。
このときフィルム温度の変動幅は、予熱工程、延伸工程、および最終熱処理工程においていずれも平均温度±0.5℃の範囲内であった。熱処理後のフィルムを冷却して、両端部を連続的に裁断してロール状に巻き取ってマスターロールを得た。延伸後のフィルムの厚みは30μmであった。
上述で得られたマスターロールは、スリッターにおいて、幅800mm、巻長4000mのスリットロールを作製し、熱収縮性ポリエステル系フィルムロールを得た。
製造方法は表2に、フィルムの評価結果は表3に示す。
評価の結果、幅方向に十分な収縮性を有し、かつ長手方向の収縮率、イソフタル酸比率のばらつきが小さく、収縮仕上がり性が良好で、不良率の極めて小さいフィルムからならフィルムロールであった。
【0069】
[実施例2]
最終ホッパーで撹拌を実施せず、円錐状のコーンバッフルを設けた以外は実施例1と同様にして熱収縮性ポリエステル系フィルムロールを製造した。
製造方法は表2に、フィルムの評価結果は表3に示す。
評価の結果、幅方向に十分な収縮性を有し、かつ長手方向の収縮率、イソフタル酸比率のばらつきが小さく、収縮仕上がり性が良好で、不良率の極めて小さいフィルムからならフィルムロールであった。
【0070】
[実施例3]
最終ホッパーで撹拌を実施せず、インナーパイプにより押出機直前でポリエステルAとポリエステルBの原料チップを混合した以外は実施例1と同様にして熱収縮性ポリエステル系フィルムロールを製造した。この時、ポリエステルA原料チップは最終ホッパーの上部より供給し、ポリエステルB原料チップをインナーパイプにより供給した。
この時、インナーパイプの内径は0.2mであり、図1,2における高さH1は5m、高さH2は1.5mとして、高さH3は1.37mであった。
製造方法は表2に、フィルムの評価結果は表3に示す。
評価の結果、幅方向に十分な収縮性を有し、かつ長手方向の収縮率、イソフタル酸比率のばらつきが小さく、収縮仕上がり性が良好で、不良率の極めて小さいフィルムからならフィルムロールであった。
【0071】
[実施例4]
ポリエステル原料Aとポリエステル原料Bはチップ化した後に、乾燥を行わず、それぞれのホッパーに投入した。その後、実施例2と同様の方法で押出機に供給した。押出機はベント付二軸押出機を使用し、ベントから脱気して原料チップが含有していた水分を押出機から除去しながら、溶融押出を行い、実施例2の方法と同様の方法でフィルムロールを製造した。
製造方法は表2に、フィルムの評価結果は表3に示す。
評価の結果、幅方向に十分な収縮性を有し、かつ長手方向の収縮率、イソフタル酸比率のばらつきが小さく、収縮仕上がり性が良好で、不良率の極めて小さいフィルムからならフィルムロールであった。
【0072】
[実施例5]
実施例1と同様に原料チップを乾燥し、それぞれのホッパーに投入した。その後、ホッパー内での原料チップの混合は行わず、ポリエステルA原料チップをベント付二軸押出機1に投入した。一方で、ポリエステルB原料チップは別の二軸押出機2に投入し、二軸押出機2の先端から吐出されたポリエステルBの溶融樹脂が二軸押出機1の途中にサイドフィードされるように構成した。それぞれの原料チップはホッパーからスクリューフィーダーで定量しながら押出機に投入し、原料の混合比率がポリエステルA:ポリエステルB=70:30になるようにフィーダーの回転数を調整した。二軸押出機1において二軸押出機2からの樹脂の合流地点にベントを設ける設計とし、脱気を行った。ポリエステルAとポリエステルBは二軸押出機1の内部で混合されながら溶融押出し、その後Tダイから押し出して、その後急冷し、未延伸シートを得た。
その後の製造方法は実施例1と同様とした。
製造方法は表2に、フィルムの評価結果は表3に示す。
評価の結果、幅方向に十分な収縮性を有し、かつ長手方向の収縮率、イソフタル酸比率のばらつきが小さく、収縮仕上がり性が良好で、不良率の極めて小さいフィルムからならフィルムロールであった。
【0073】
[実施例6]
ポリエステル原料の混合比率をポリエステルA:ポリエステルB=80:20にした。テンターでの横延伸温度を87℃にして、最終熱処理温度を96℃にした以外は、実施例5と同様の条件で行った。この時未延伸フィルムのTgは62℃であり、未延伸フィルムの厚みは135μm、延伸後のフィルム厚みは30μmであった。
製造方法は表2に、フィルムの評価結果は表3に示す。
評価の結果、幅方向に十分な収縮性を有し、かつ長手方向の収縮率、イソフタル酸比率のばらつきが小さく、収縮仕上がり性が良好で、不良率の極めて小さいフィルムからならフィルムロールであった。
【0074】
[実施例7]
ポリエステル原料の混合比率をポリエステルA:ポリエステルB=60:40にした。テンターでの横延伸温度を94℃にして、最終熱処理温度を103℃にした以外は、実施例5と同様の条件で行った。この時未延伸フィルムのTgは69℃であり、未延伸フィルムの厚みは135μm、延伸後のフィルム厚みは30μmであった。
製造方法は表2に、フィルムの評価結果は表3に示す。
評価の結果、幅方向に十分な収縮性を有し、かつ長手方向の収縮率、イソフタル酸比率のばらつきが小さく、収縮仕上がり性が良好で、不良率の極めて小さいフィルムからならフィルムロールであった。
【0075】
[比較例1]
ポリエステルBとポリエステルCの原料チップを混合比ポリエステルB:ポリエステルC=30:70で、最終ホッパー内部で混合した。
上記以外の条件は実施例2と同様とした。
製造方法は表2に、フィルムの評価結果は表3に示す。
評価の結果、幅方向に十分な収縮性を有するものの、原料チップのサイズの差異が大きく、安息角の差異が大きいために原料偏析が発生し、幅方向および長手方向の収縮率、イソフタル酸比率のばらつきが大きいために、収縮仕上がり性が良好となる場合もあるが、不良率が高いフィルムロールであった。
【0076】
[比較例2]
押出機への供給量は時間あたり120kgに変更した以外は実施例2と同様とした。
製造方法は表2に、フィルムの評価結果は表3に示す。
評価の結果、幅方向に十分な収縮性を有するものの、最終ホッパーでの滞留時間が長すぎるために原料偏析が発生し、幅方向および長手方向の収縮率、イソフタル酸比率のばらつきが大きいために、収縮仕上がり性が良好となる場合もあるが、不良率が高いフィルムロールであった。
【0077】
[実施例3]
最終ホッパーの傾斜角度を50°に変更した以外は、実施例2と同様にした。
製造方法は表2に、フィルムの評価結果は表3に示す。
評価の結果、幅方向に十分な収縮性を有するものの、ホッパーの傾向角度が小さいために、原料偏析が発生し、幅方向および長手方向の収縮率、イソフタル酸比率のばらつきが大きいために、収縮仕上がり性が良好となる場合もあるが、不良率が高いフィルムロールであった。
【0078】
[実施例4]
インナーパイプの高さH2を7mに変更した以外は実施例3と同様にした。この時高さH3は6.87mであった。
製造方法は表2に、フィルムの評価結果は表3に示す。
評価の結果、幅方向に十分な収縮性を有するものの、インナーパイプの式3,4を満たさないために原料偏析が発生し、幅方向および長手方向の収縮率、イソフタル酸比率のばらつきが大きいために、収縮仕上がり性が良好となる場合もあるが、不良率が高いフィルムロールであった。
【0079】
【表2】
【0080】
【表3】
【産業上の利用可能性】
【0081】
本発明の熱収縮性ポリエステルフィルムロールは、上記の如く所定量のペットボトル再生原料を含有するとともに、幅方向に高い収縮性を有する上で、ロール長手方向の組成の変動が小さいために、幅方向および長手方向の収縮性の変動が極めて小さく、連続的に飲料ラベルなどに加工し、収縮仕上げして使用した際にシワや歪みなどの不良の発生率が極めて小さくなる熱収縮性ポリエステル系フィルムロールである。
図1
図2