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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024009620
(43)【公開日】2024-01-23
(54)【発明の名称】延伸ポリアミドフィルム
(51)【国際特許分類】
   C08J 5/18 20060101AFI20240116BHJP
   C08G 69/26 20060101ALI20240116BHJP
   B32B 15/08 20060101ALI20240116BHJP
   B32B 15/088 20060101ALI20240116BHJP
【FI】
C08J5/18 CFG
C08G69/26
B32B15/08 J
B32B15/088
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022111288
(22)【出願日】2022-07-11
(71)【出願人】
【識別番号】000004503
【氏名又は名称】ユニチカ株式会社
(72)【発明者】
【氏名】高石 直樹
【テーマコード(参考)】
4F071
4F100
4J001
【Fターム(参考)】
4F071AA55
4F071AA55X
4F071AA56X
4F071AA84
4F071AA84X
4F071AA88
4F071AA88X
4F071AF62
4F071AG28
4F071AH04
4F071AH12
4F071AH13
4F071BB06
4F071BB08
4F071BC01
4F071BC12
4F100AB01B
4F100AB17B
4F100AB33B
4F100AK46A
4F100AK47A
4F100AK53
4F100AK53G
4F100BA02
4F100BA07
4F100EC182
4F100EJ172
4F100EJ37A
4F100EJ38A
4F100EJ422
4F100GB43
4F100JA02A
4F100JA06A
4F100JJ03
4F100JL04
4J001DA01
4J001DB04
4J001EB37
4J001EC09
4J001EE28A
4J001GA15
4J001JA12
4J001JB02
4J001JB06
4J001JC02
(57)【要約】
【課題】積層体を作製した際に発生する反りがより十分に低減され、熱処理(例えばリフロー処理)後においても、反りや変形がより十分に低減されたポリアミドフィルムを提供する。
【解決手段】テレフタル酸を主成分とするジカルボン酸成分と、炭素数が9である脂肪族ジアミンを主成分とするジアミン成分とからなる半芳香族ポリアミド(A)と、(A)以外の結晶性ポリアミド(B)を含み、(A)/(B)の質量比率が99/1~50/50である樹脂組成物からなる延伸ポリアミドフィルム。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
テレフタル酸を主成分とするジカルボン酸成分と、炭素数が9である脂肪族ジアミンを主成分とするジアミン成分とからなる半芳香族ポリアミド(A)と、(A)以外の結晶性ポリアミド(B)を含み、(A)/(B)の質量比率が99/1~50/50である樹脂組成物からなる延伸ポリアミドフィルム。
【請求項2】
結晶性ポリアミド(B)が、
テレフタル酸を主成分とするジカルボン酸成分と、1、10-デカンジアミンを主成分とするジアミン成分とからなる結晶性ポリアミド(B1)、
および/または、
炭素数12以下の芳香族ジカルボン酸と炭素数18以上の脂肪族ジカルボン酸を主成分とするジカルボン酸成分と、炭素数12以下の脂肪族ジアミンと炭素数18以上の脂肪族ジアミンを主成分とするジアミン成分とからなる結晶性ポリアミド(B2)である請求項1に記載の延伸ポリアミドフィルム。
【請求項3】
フィルムの面方向における、25℃から250℃の平均線膨張係数が30ppm/℃以下である請求項1または2に記載の延伸ポリアミドフィルム。
【請求項4】
請求項1または2に記載の延伸ポリアミドフィルムに、金属層を設けてなるポリアミドフィルム積層体。
【請求項5】
請求項4に記載のポリアミドフィルム積層体を含むフレキシブルプリント回路基板またはフレキシブルアンテナ基板。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は延伸ポリアミドフィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
炭素数が9である脂肪族ジアミンとテレフタル酸とを構成要素とするポリアミド9Tのフィルムは、耐熱性や寸法安定性が良好であることから、フレキシブルプリント回路(Flexible Printed Circuits、FPC)用の基板フィルムやカバーレイフィルムやスイッチやタッチパネル用の絶縁フィルム等への適用が検討されている。例えば、特定の樹脂組成の半芳香族ポリアミドを特定の条件で製膜・延伸することにより、耐熱性や寸法安定性等に優れた高品質の延伸フィルムを連続的に生産する方法が提案されている(特許文献1)。さらに、FPC用の基板フィルム等の使用に適したより実用的な組成として、ポリアミド9Tに熱可塑性エラストマーを配合することが提案されている(特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2011-005856号公報
【特許文献2】国際公開2014/057828号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の発明者等は、従来の技術では、以下の問題が生じることを見出した。フレキシブルプリント基板用の銅張積層板は、絶縁フィルムと銅箔とを積層させている。このような銅張積層板の積層方法としては、一般的にエポキシ樹脂やアクリル樹脂などの接着剤で張り合わせる方法がある。しかしながら、絶縁フィルムの加工寸法安定性が悪いと、積層体がカールしたり変形したりする場合があり、回路形成後や熱処理(例えばリフロー処理)後の外観にも影響する。半芳香族ポリアミドフィルムで作製した積層体では反りが発生する場合があり、反りを抑制する新たな方法が求められていた。
【0005】
本発明は、前記の問題点を解決しようとするものであり、積層体を作製した際に発生する反りがより十分に低減され、熱処理(例えばリフロー処理)後においても、反りや変形がより十分に低減されたポリアミドフィルムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意研究をおこなった結果、テレフタル酸を主成分とするジカルボン酸成分と、炭素数が9である脂肪族ジアミンを主成分とするジアミン成分とからなる半芳香族ポリアミドに、特定の結晶性ポリアミドを特定量含有させ、延伸することにより、上記目的が達成することを見出し、本発明を完成するに至った。
【0007】
すなわち、本発明の要旨は以下の通りである。
(1)テレフタル酸を主成分とするジカルボン酸成分と、炭素数が9である脂肪族ジアミンを主成分とするジアミン成分とからなる半芳香族ポリアミド(A)と、(A)以外の結晶性ポリアミド(B)を含み、(A)/(B)の質量比率が99/1~50/50である樹脂組成物からなる延伸ポリアミドフィルム。
(2)結晶性ポリアミド(B)が、テレフタル酸を主成分とするジカルボン酸成分と、1、10-デカンジアミンを主成分とするジアミン成分とからなる結晶性ポリアミド(B1)、および/または、炭素数12以下の芳香族ジカルボン酸と炭素数18以上の脂肪族ジカルボン酸を主成分とするジカルボン酸成分と、炭素数12以下の脂肪族ジアミンと炭素数18以上の脂肪族ジアミンを主成分とするジアミン成分とからなる結晶性ポリアミド(B2)である請求項1に記載の延伸ポリアミドフィルム。
(3)フィルムの面方向における、25℃から250℃の平均線膨張係数が30ppm/℃以下である(1)または(2)に記載の延伸ポリアミドフィルム。
(4)(1)~(3)いずれかに記載の延伸ポリアミドフィルムに、金属層を設けてなるポリアミドフィルム積層体。
(5)(4)に記載のポリアミドフィルム積層体を含むフレキシブルプリント回路基板またはフレキシブルアンテナ基板。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、従来の半芳香族ポリアミドフィルムよりも温度に対する寸法変化が小さく、積層体を作製した時に反りがより低減するポリアミドフィルムを提供することができる。
本発明の延伸ポリアミドフィルムは、フレキシブルプリント回路用の基板フィルムやカバーレイフィルム、耐熱テープ等として好適に使用することができる。さらに、本発明の延伸ポリアミドフィルムを用いた積層体は、例えば、フレキシブルプリント回路基板やフレキシブルアンテナ基板に好適に用いることができる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の延伸ポリアミドフィルムは、テレフタル酸を主成分とするジカルボン酸成分と、炭素数が9である脂肪族ジアミンを主成分とするジアミン成分とからなる半芳香族ポリアミド(A)と、(A)以外の結晶性ポリアミド(B)を含む樹脂組成物から構成される。
【0010】
半芳香族ポリアミド(A)を構成するジカルボン酸成分は、テレフタル酸を主成分とすることが必要である。ジカルボン酸成分中のテレフタル酸の割合は、60~100モル%とすることが好ましく、70~100モル%とすることがより好ましく、85~100モル%とすることがさらに好ましい。ジカルボン酸成分におけるテレフタル酸の割合を60~100モル%とすることにより、耐熱性が高く、かつ吸水性の低いポリアミドとすることができる。
【0011】
半芳香族ポリアミド(A)を構成するジカルボン酸成分に含まれる、テレフタル酸以外のジカルボン酸成分としては、例えば、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、セバシン酸、ドデカン二酸、テトラデカン二酸、オクタデカン二酸等の脂肪族ジカルボン酸や、1,4-シロヘキサンジカルボン酸、1,3-シクロヘキサンジカルボン酸、1,2-シクロヘキサンジカルボン酸等の脂環式ジカルボン酸や、1,4-ナフタレンジカルボン酸、1,3-ナフタレンジカルボン酸、1,2-ナフタレンジカルボン酸、イソフタル酸等の芳香族ジカルボン酸が挙げられる。
【0012】
半芳香族ポリアミド(A)のジアミン成分は、炭素数が9である脂肪族ジアミンを主成分とすることが必要である。ジアミン成分中における炭素数が9である脂肪族ジアミンの割合は、60~100モル%とすることが好ましく、75~100モル%とすることがより好ましく、90~100モル%とすることがさらに好ましい。炭素数が9である脂肪族ジアミンの割合を60~100モル%とすることにより、得られるフィルムの耐熱性、耐薬品性が向上し、また、吸水性が低下する。
【0013】
炭素数が9である脂肪族ジアミンとしては、例えば、1,9-ノナンジアミン等の直鎖状脂肪族ジアミンや、2-メチル-1,8-オクタンジアミン、4-メチル-1,8-オクタンジアミン等の分岐鎖状脂肪族ジアミンを挙げることができる。これらは、単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。中でも、フィルムの成形加工性の観点から、1,9-ノナンジアミンと2-メチル-1,8-オクタンジアミンを併用することが好ましい。
【0014】
半芳香族ポリアミド(A)を構成するジアミン成分に含まれる、上記の炭素数が9である脂肪族ジアミン以外のジアミン成分としては、例えば、1,4-ブタンジアミン、1,5-ペンタンジアミン、1,6-ヘキサンジアミン、1,7-ヘプタンジアミン、1,8-オクタンジアミン、1,10-デカンジアミン、1,11-ウンデカンジアミン、1,12-ドデカンジアミン等の直鎖状脂肪族ジアミンや、4-メチル-1,8-オクタンアミン、5-メチル-1,9-ノナンジアミン等の分岐鎖状脂肪族ジアミンや、イソホロンジアミン、ノルボルナンジメチルアミン、トリシクロデカンジメチルアミン等の脂環式ジアミンや、フェニレンジアミン等の芳香族ジアミンが挙げられる。
【0015】
半芳香族ポリアミド(A)には、本発明の効果を損なわない範囲で、ε-カプロラクタム、ζ-エナントラクタム、η-カプリルラクタム、ω-ラウロラクタム等のラクタム類や、アミノカプロン酸、11-アミノウンデカン酸等のω-アミノカルボン酸が含有されていてもよい。
【0016】
前記モノマーの組み合わせで得られる半芳香族ポリアミド(A)の中でも、耐熱性とフィルムの成形加工性との観点から、テレフタル酸のみからなる(テレフタル酸100モル%である)ジカルボン酸成分と、1,9-ノナンジアミンと2-メチル-1,8-オクタンジアミンとを合計でジアミン成分中に60~100モル%含有するジアミン成分からなる半芳香族ポリアミドが好ましい。
【0017】
上記の半芳香族ポリアミド(A)において、1,9-ノナンジアミンと2-メチル-1,8-オクタンジアミンとの共重合比率(モル比)は、(1,9-ノナンジアミン)/(2-メチル-1,8-オクタンジアミン)=50/50~100/0であることが好ましく、70/30~100/0であることがより好ましく、75/25~95/5であることがさらに好ましい。1,9-ノナンジアミンと2-メチル-1,8-オクタンジアミンとの共重合比率(モル比)が50/50~100/0であることにより、得られるフィルムの耐熱性が向上し、また吸水性が低下する。
【0018】
半芳香族ポリアミド(A)を構成するモノマーの種類および共重合比率は、得られる半芳香族ポリアミドのTm(融点)が280~350℃の範囲になるように選択されることが好ましく、300~350℃の範囲になるように選択されることがより好ましい。半芳香族ポリアミドのTmを前記範囲とすることにより、フィルムに加工する際の半芳香族ポリアミドの熱分解を効率よく抑制することができる。Tmが280℃未満であると、得られるフィルムの耐熱性が不十分となる場合がある。一方、Tmが350℃を超えると、フィルム製造時に熱分解が起こる場合がある。
【0019】
半芳香族ポリアミド(A)の極限粘度は、0.8~2.0dL/gであることが好ましく、0.9~1.8dL/gであることがより好ましい。半芳香族ポリアミドの極限粘度が0.8~2.0dL/gであることにより、力学的特性が優れたフィルムを得ることができる。半芳香族ポリアミドの極限粘度が0.8dL/g未満であると、製膜してフィルム形状を保つのが困難となる場合がある。一方、2.0dL/gを超えると、フィルム製造時に、冷却ロールへの密着が困難となって、フィルムの外観が悪化する場合がある。
【0020】
半芳香族ポリアミド(A)として、市販品を好適に使用することができる。このような市販品としては、例えば、クラレ社製の「ジェネスタ(登録商標)」が挙げられる。
【0021】
半芳香族ポリアミド(A)は、結晶性ポリアミドを製造する方法として知られている任意の方法を用いて、製造することができる。例えば、酸クロライドとジアミン成分とを原料とする溶液重合法または界面重合法が挙げられる。あるいは、ジカルボン酸成分とジアミン成分とを原料としてプレポリマーを作製し、該プレポリマーを溶融重合または固相重合により高分子量化する方法が挙げられる。
【0022】
前記プレポリマーは、例えば、ジアミン成分、ジカルボン酸成分および重合触媒を一括で混合することにより調製された塩を、200~250℃の温度で加熱重合させることにより、得ることができる。
【0023】
上記のプレポリマーの極限粘度は、0.1~0.6dL/gであることが好ましい。プレポリマーの極限粘度を前記範囲とすることにより、続く固相重合や溶融重合において、ジカルボン酸成分におけるカルボキシル基とジアミン成分におけるアミノ基とのモルバランスの崩れを生じさせず、重合速度を速くすることができるという利点がある。上記のプレポリマーの極限粘度が0.1dL/g未満であると、重合時間が長くなり、生産性に劣る場合がある。一方、0.6dL/gを超えると、得られる半芳香族ポリアミドが着色してしまう場合がある。
【0024】
上記のプレポリマーの固相重合は、好ましくは、減圧下または不活性ガス流通下でおこなわれる。固相重合の温度は200~280℃であることが好ましい。固相重合の温度を前記範囲とすることにより、特に範囲の上限を280℃とすることにより、得られる半芳香族ポリアミドの着色やゲル化を抑制することができる。一方、固相重合の温度が200℃未満であると、重合時間が長くなるため生産性に劣る場合がある。
【0025】
上記のプレポリマーの溶融重合は、好ましくは、350℃以下の温度でおこなわれる。重合が350℃以下の温度でおこなわれることにより、分解や熱劣化を抑制しつつ、効率よく重合することができる。なお、上記の溶融重合には、溶融押出機を用いた溶融重合も含まれる。
【0026】
上記した半芳香族ポリアミド(A)の重合に際して、重合触媒が用いられてもよい。重合触媒としては、反応速度や経済性の観点から、リン系触媒が用いられることが好ましい。リン系触媒としては、例えば、次亜リン酸、亜リン酸、リン酸、それらの塩(例えば、次亜リン酸ナトリウム)、またはそれらのエステル(例えば、2,2-メチレンビス(ジ-t-ブチルフェニル)オクチルホスファイト等)が挙げられる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0027】
中でも、重合触媒として亜リン酸を用いて重合されて得られた半芳香族ポリアミド(A)であることがより好ましい。重合触媒を亜リン酸とすることにより、他の重合触媒(例えば、次亜リン酸触媒)を用いて重合された半芳香族ポリアミドを用いる場合と比較して、フィルム製膜においてフィルターを用いた場合の濾圧の上昇を抑制することができる。
【0028】
また、触媒として亜リン酸を用いて重合されて得られた半芳香族ポリアミド(A)を用いることにより、得られる樹脂のゲル化そのものを抑制することができる。その結果、フィッシュアイの発生を抑制することができる。
【0029】
半芳香族ポリアミド(A)における重合触媒の含有量は、全モノマー成分の合計量100質量%に対して、0.01~5質量%とすることが好ましく、0.05~2質量%とすることがより好ましく、0.07~1質量%とすることがさらに好ましい。重合触媒の含有量が0.01~5質量%とすることにより、半芳香族ポリアミド(A)の劣化を抑制しつつ、該半芳香族ポリアミド(A)を効率よく重合することができる。重合触媒の含有量が0.01質量%未満であると、触媒作用が発現しない場合がある。一方、5質量%を超えると、経済性の観点で不利となる場合がある。
【0030】
また、半芳香族ポリアミド(A)の重合において、ジアミン成分、ジカルボン酸成分および重合触媒のほかに、末端封止剤が用いられてもよい。末端封止剤としては、半芳香族ポリアミド(A)の末端におけるアミノ基またはカルボキシル基との反応性を有する単官能性の化合物であれば、特に限定されない。末端封止剤としては、例えば、モノカルボン酸、モノアミン、酸無水物、モノイソシアネート、モノハロゲン化物、モノエステル類、モノアルコール類が挙げられる。
【0031】
中でも、反応性、および封止された末端基の安定性等の観点から、モノカルボン酸またはモノアミンが好ましく、取扱いの容易さ等の観点から、モノカルボン酸がより好ましい。モノカルボン酸としては、例えば、酢酸、プロピオン酸、酪酸、吉草酸、カプロン酸、カプリル酸、ラウリン酸、トリデシル酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、安息香酸が挙げられる。
【0032】
末端封止剤の含有量は、用いられる末端封止剤の反応性、沸点、反応装置、反応条件等によって適宜に選択することができる。末端封止剤の含有量は、分子量の調整や樹脂の分解抑制の観点から、モノカルボン酸の場合は、ジカルボン酸成分に対して0.1~15モル%とすることが好ましく、モノアミンの場合は、ジアミン成分に対して0.1~15モル%とすることが好ましい。また、末端基の全量に対する末端封止されている末端基量の割合は、10モル%以上とすることが好ましく、40モル%以上とすることがより好ましく、70モル%以上とすることがさらに好ましい。封止されている末端基量の割合が10モル%以上とすることにより、フィルムの成形加工時における樹脂の分解や、縮合が進行することによる分子量の増加を、抑制することができる。また、これに伴って樹脂の分解による気泡の発生が抑制されるため、得られるフィルムの外観を優れたものとすることができる。
【0033】
結晶性ポリアミド(B)は、テレフタル酸を主成分とするジカルボン酸成分と、1、10-デカンジアミンを主成分とするジアミン成分とからなる結晶性ポリアミド(B1)、および/または、炭素数12以下の芳香族ジカルボン酸と炭素数18以上の脂肪族ジカルボン酸を主成分とするジカルボン酸成分と、炭素数12以下の脂肪族ジアミンと炭素数18以上の脂肪族ジアミンを主成分とするジアミン成分とからなる結晶性ポリアミド(B2)である。
【0034】
本発明において、「主成分とする」とは、ジカルボン酸成分、ジアミン成分において、80モル%以上含むことを意味し、より好ましくは50モル%以上含むことを意味する。2成分を主成分とする場合、合計量が前記モル量であることを意味する。
【0035】
結晶性ポリアミド(B1)において、主成分のテレフタル酸に加えて、テレフタル酸以外の芳香族ジカルボン酸や、脂環式ジカルボン酸や、脂肪族ジカルボン酸を含んでいてもよい。テレフタル酸以外の芳香族ジカルボン酸としては、例えば、イソフタル酸、オルトフタル酸、ナフタレンジカルボン酸が挙げられ、脂環式ジカルボン酸としては、例えば、シクロヘキサンジカルボン酸が挙げられ、脂肪族ジカルボン酸としては、例えば、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、ウンデカン二酸、ドデカン二酸が挙げられる。中でも、脂肪族ジカルボン酸を用いる場合、比較的安価のことから、アジピン酸、セバシン酸が好ましく、セバシン酸がより好ましい。テレフタル酸以外の芳香族ジカルボン酸や、脂環式ジカルボン酸や、脂肪族ジカルボン酸の合計の含有量は、ジカルボン酸成分において、10モル%以下であることが好ましい。
【0036】
結晶性ポリアミド(B1)において、主成分の1,10-デカンジアミンに加えて、1,10-デカンジアミン以外の脂肪族ジアミンや、脂環式ジアミンや、芳香族ジアミンを含んでいてもよい。1,10-デカンジアミン以外の脂肪族ジアミンとしては、例えば、1,2-エタンジアミン、1,3-プロパンジアミン、1,4-ブタンジアミン、1,5-ペンタンジアミン、1,6-ヘキサンジアミン、1,7-ヘプタンジアミン、1,8-オクタンジアミン、1,9-ノナンジアミン、1,11-ウンデカンジアミン、1,12-ドデカンジアミンが挙げられ、脂環式ジアミンとしては、例えば、シクロヘキサンジアミンが挙げられ、芳香族ジアミンとしては、例えば、キシリレンジアミン、ベンゼンジアミンが挙げられる。1,10-デカンジアミン以外の脂肪族ジアミンや、脂環式ジアミンや、芳香族ジアミンの合計の含有量は、ジアミン成分において、10モル%以下であることが好ましく、実質的に含まないことがより好ましい。
【0037】
結晶性ポリアミド(B1)には、分子量の調整を目的に、モノカルボン酸を含んでいてもよい。モノカルボン酸としては、例えば、安息香酸、4-エチル安息香酸、4-へキシル安息香酸、4-ラウリル安息香酸、アルキル安息香酸類、1-ナフトエ酸、2-ナフトエ酸等の芳香族モノカルボン酸、酢酸、カプリル酸、ノナン酸、デカン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ベヘン酸等の脂肪族モノカルボン酸、4-エチルシクロヘキサンカルボン酸、4-へキシルシクロヘキサンカルボン酸、4-ラウリルシクロヘキサンカルボン酸等の脂環族モノカルボン酸が挙げられる。末端封鎖剤は上記のうち1種を単独で用いてもよいし、または2種以上を併用してもよい。モノカルボン酸の含有量は、原料モノマーの総モル数に対し、5モル%以下とすることが好ましい。
【0038】
結晶性ポリアミド(B1)には、必要に応じて、カプロラクタムやラウロラクタム等のラクタム類、アミノカプロン酸、11-アミノウンデカン酸等のω-アミノカルボン酸を含んでいてもよい。ラクタム類やアミノカルボン酸の含有量は、原料モノマーの総モル数に対し、5モル%以下とすることが好ましく、実質的に含まないことがより好ましい。
【0039】
結晶性ポリアミド(B1)の相対粘度は、引張強度の観点から、2.0~4.0とすることが好ましく、2.3~3.5とすることがより好ましい。
【0040】
結晶性ポリアミド(B1)は、従来から知られている加熱重合法や溶液重合法の方法を用いて製造することができる。工業的に有利である点から、加熱重合法が好ましく用いられる。加熱重合法としては、ジカルボン酸成分と、ジアミン成分とから反応物を得る工程(i)と、得られた反応物を重合する工程(ii)とからなる方法が挙げられる。
【0041】
工程(i)としては、例えば、ジカルボン酸粉末を予めジアミンの融点以上、かつジカルボン酸の融点以下の温度に加熱し、この温度のジカルボン酸粉末に、ジカルボン酸の粉末の状態を保つように、実質的に水を含有させずに、ジアミンを添加する方法が挙げられる。あるいは、別の方法としては、溶融状態のジアミンと固体のジカルボン酸とからなる懸濁液を攪拌混合し、混合液を得た後、最終的に生成する半芳香族ポリアミドの融点未満の温度で、ジカルボン酸とジアミンの反応による塩の生成反応と、生成した塩の重合による低重合物の生成反応とをおこない、塩および低重合物の混合物を得る方法が挙げられる。この場合、反応をさせながら破砕をおこなってもよいし、反応後に一旦取り出してから破砕をおこなってもよい。工程(i)としては、反応物の形状の制御が容易な前者の方が好ましい。
【0042】
工程(ii)としては、例えば、工程(i)で得られた反応物を、最終的に生成するポリアミドの融点未満の温度で固相重合し、所定の分子量まで高分子量化させ、ポリアミドを得る方法が挙げられる。固相重合は、重合温度180~270℃、反応時間0.5~10時間で、窒素等の不活性ガス気流中でおこなうことが好ましい。
【0043】
結晶性ポリアミド(B1)の製造において、重合の効率を高めるため重合触媒を用いてもよい。重合触媒としては、例えば、リン酸、亜リン酸、次亜リン酸またはそれらの塩が挙げられる。重合触媒の添加量は、通常、原料モノマーの総モル数に対し、2モル%以下とすることが好ましい。
【0044】
結晶性ポリアミド(B2)は、炭素数18以上の脂肪族ジカルボン酸(a)(以下、成分(a)ということがある。)からなる単位と、炭素数18以上の脂肪族ジアミン(b)(以下、成分(b)ということがある。)からなる単位と、炭素数12以下の芳香族ジカルボン酸(c)(以下、成分(c)ということがある。)からなる単位と、炭素数12以下の脂肪族ジアミン(d)(以下、成分(d)ということがある。)からなる単位を含む。
【0045】
成分(a)~(d)は、ポリアミド中、モノマー成分(またはモノマー残基)として含有されている。従って、「炭素数18以上の脂肪族ジカルボン酸(a)からなる単位」は単に「炭素数18以上の脂肪族ジカルボン酸(a)モノマー」またはその残基と表現されてもよい。「炭素数18以上の脂肪族ジアミン(b)からなる単位」は単に「炭素数18以上の脂肪族ジアミン(b)モノマー」またはその残基と表現されてもよい。「炭素数12以下の芳香族ジカルボン酸(c)からなる単位」は単に「炭素数12以下の芳香族ジカルボン酸(c)モノマー」またはその残基と表現されてもよい。「炭素数12以下の脂肪族ジアミン(d)からなる単位」は単に「炭素数12以下の脂肪族ジアミン(d)モノマー」またはその残基と表現されてもよい。
【0046】
結晶性ポリアミド(B2)を構成する炭素数18以上の脂肪族ジカルボン酸(a)としては、カルボキシル基以外は全て炭化水素からなる脂肪族ジカルボン酸が好ましく、例えば、ヘキサデカンジカルボン酸(炭素数18)、オクタデカンジカルボン酸(炭素数20)、ダイマー酸(炭素数36)が挙げられる。中でも、柔軟性が高くなることから炭素数20以上の脂肪族ジカルボン酸が好ましく、ダイマー酸がより好ましい。ダイマー酸は、例えばオレイン酸、リノール酸等の不飽和脂肪酸から選択される2つの分子を付加反応させたものであってもよい。当該2つの分子は同種の分子であってもよいし、または相互に異種の分子であってもよい。ダイマー酸は、不飽和結合を有するジカルボン酸であってもよいが、着色しにくいことから、水添してすべての結合が飽和結合であるジカルボン酸が好ましい。成分(a)は、上記のうち1種を単独で用いてもよいし、または2種以上を併用してもよい。
【0047】
結晶性ポリアミド(B2)を構成する炭素数18以上の脂肪族ジアミン(b)としては、アミノ基以外は全て炭化水素からなる脂肪族ジカルボン酸が好ましく、例えば、オクタデカンジアミン(炭素数18)、エイコサンジアミン(炭素数20)、ダイマージアミン(炭素数36)が挙げられる。中でも、ダイマージアミンが好ましい。ダイマージアミンを用いることにより、他のモノマーより比較的少ない樹脂組成でもポリマー全体の柔軟性を効果的に向上させることができる。通常、ダイマージアミンは、ダイマー酸をアンモニアと反応させたのち、脱水し、ニトリル化し、還元することにより製造される。ダイマージアミンは、不飽和結合を有するジアミンであってもよいが、着色しにくいことから、水添してすべての結合が飽和結合であるジアミンが好ましい。成分(b)は、上記のうち1種を単独で用いてもよいし、または2種以上を併用してもよい。
【0048】
結晶性ポリアミド(B2)を構成する炭素数12以下の芳香族ジカルボン酸(c)としては、例えば、テレフタル酸(炭素数8)、イソフタル酸(炭素数8)、オルトフタル酸(炭素数8)が挙げられる。中でも、耐熱性、柔軟性、ゴム弾性をさらに向上させやすいことから、炭素数8以上の芳香族ジカルボン酸が好ましく、テレフタル酸がより好ましい。成分(c)は、上記のうち1種を単独で用いてもよいし、または2種以上を併用してもよい。
【0049】
結晶性ポリアミド(B2)を構成する炭素数12以下の脂肪族ジアミン(d)としては、例えば、1,12-ドデカンジアミン(炭素数12)、1,10-デカンジアミン(炭素数10)、1,9-ノナンジアミン(炭素数9)、1,8-オクタンジアミン(炭素数8)、1,6-ヘキサンジアミン(炭素数6)が挙げられる。中でも、耐熱性、柔軟性、ゴム弾性をさらに向上させやすいことから、炭素数6以上のジアミンが好ましく、炭素数8以上のジアミンがより好ましく、1,10-デカンジアミンがさらに好ましい。(d)は、上記のうち1種を単独で用いてもよいし、または2種以上を併用してもよい。
【0050】
結晶性ポリアミド(B2)は、成分(a)~(d)がランダムに配列および重合されたランダム型ポリアミドであってもよいし、または成分(c)と(d)からなるハードセグメントおよび成分(a)と(b)からなるソフトセグメントを含むブロック型ポリアミドであってもよい。
【0051】
結晶性ポリアミド(B2)中の炭素数18以上の脂肪族ジカルボン酸(a)からなる単位と、炭素数18以上の脂肪族ジアミン(c)からなる単位の合計の含有量は、耐熱性、柔軟性、密着性、およびゴム弾性のさらなる向上の観点から、10~90質量%であることが好ましく、20~80質量%であることがより好ましい。当該合計含有量は、成分(a)の残基と、成分(b)の残基の合計の含有量であって、結晶性ポリアミド(B2)を構成する全モノマー成分(またはそれらの残基の全量)に対する割合である。
【0052】
結晶性ポリアミド(B2)には、重合時に分解しやすいポリエーテル成分やポリエステル成分を用いないことが好ましい。そのようなポリエーテル成分としては、例えば、ポリオキシエチレングリコール、ポリオキシプロピレングリコール、ポリオキシテトラメチレングリコール、ポリオキシエチレン・ポリオキシプロピレングリコールが挙げられる。ポリエステル成分としては、例えば、ポリエチレンアジペート、ポリテトラメチレンアジペート、ポリエチレンセバケートが挙げられる。ポリエーテル成分やポリエステル成分を用いた場合、重合温度が高いと、分解が生じる場合がある。
【0053】
結晶性ポリアミド(B2)には、重合度調整や、製品の分解抑制や着色抑制等のため、末端封鎖剤を含んでいてもよい。モノカルボン酸としては、例えば、安息香酸、4-エチル安息香酸、4-へキシル安息香酸、4-ラウリル安息香酸、アルキル安息香酸類、1-ナフトエ酸、2-ナフトエ酸等の芳香族モノカルボン酸、酢酸、カプリル酸、ノナン酸、デカン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ベヘン酸等の脂肪族モノカルボン酸、4-エチルシクロヘキサンカルボン酸、4-へキシルシクロヘキサンカルボン酸、4-ラウリルシクロヘキサンカルボン酸等の脂環族モノカルボン酸が挙げられる。末端封鎖剤は上記のうち1種を単独で用いてもよいし、または2種以上を併用してもよい。モノカルボン酸の含有量は、原料モノマーの総モル数に対し、5モル%以下とすることが好ましい。
【0054】
結晶性ポリアミド(B2)の製造方法は特に限定されず、例えば、炭素数18以上の脂肪族ジカルボン酸(a)と炭素数18以上の脂肪族ジアミン(b)と炭素数12以下の芳香族ジカルボン酸(c)と炭素数12以下の脂肪族ジアミン(d)とをまとめて反応させる方法(以下、「一括重合法」または「一工程法」ということがある)、または成分(c)と成分(d)とを、成分(a)および成分(b)とは別に反応させる方法(以下、「分割重合法」または「二工程法」ということがある)により得ることができる。結晶性ポリアミド(B2)は、耐熱性、柔軟性、密着性、およびゴム弾性のさらなる向上の観点から、分割重合方法により製造されることが好ましい。ポリアミドを分割重合法により製造することにより、当該ポリアミドはより好ましい結晶融解エンタルピー(特に25J/g以上)を有するようになり、耐熱性、柔軟性、密着性、およびゴム弾性のさらなる向上が達成されるためである。
【0055】
一括重合法においては、所定の全成分を混合し、重合を行う。重合方法は特に限定されないが、例えば、得られるポリアミドの融点以下の温度に加熱し、縮合水を系外に除去しながら、窒素気流下、当該温度を維持することにより重合する方法が挙げられる。(一括重合法により重合したポリアミドは、全成分がランダムに配列される観点から、「ランダム型ポリアミド」と称することができる。「得られるポリアミドの融点」とは「目的とするポリアミドの融点」のことであり、例えば、後述する分割重合法において説明される「ハードセグメントポリマーの融点」であってもよい。
【0056】
分割重合法においては、成分(c)と成分(d)とを、成分(a)および成分(b)とは別に反応させて重合を行う。例えば、成分(c)と成分(d)とを反応させ反応生成物を得たのち、当該反応生成物を、成分(a)および成分(b)と、さらに反応させて重合する。詳しくは、成分(a)と、成分(b)
と、成分(c)と成分(d)との反応生成物とを反応させて重合する。
【0057】
このような分割重合法において、成分(a)および成分(b)は、相互に反応していない状態で使用されてもよいし、または相互に反応した状態(すなわち、それらの反応生成物の形態)で使用されてもよい。例えば、結晶性ポリアミド(B2)は、成分(a)と成分(b)を予め反応させたのち、得られた成分(a)と成分(b)との反応生成物と、成分(c)と成分(d)との反応生成物を反応させて重合することにより得てもよい。詳しくは、結晶性ポリアミド(B2)は、成分(a)と成分(b)との反応生成物と、成分(c)と成分(d)との反応生成物と、を反応させて重合することにより得てもよい。成分(a)および成分(b)は、耐熱性、柔軟性、密着性、およびゴム弾性のさらなる向上の観点から、相互に反応した状態(すなわち、それらの反応生成物の形態)で使用されることが好ましい。
【0058】
分割重合法により重合したポリアミドは、一括重合法により重合したポリアミドとは異なり、成分(c)と(d)からなるハードセグメントおよび成分(a)と(b)からなるソフトセグメントから構成されるポリアミドとして得られる。従って、一括重合法により重合したポリアミドが「ランダム型ポリアミド」であることに対して、分割重合法により重合したポリアミドは、ハードセグメントおよびソフトセグメントの含有の観点から、「ブロック型ポリアミド」と称することができる。
【0059】
「ハードセグメントポリマーの融点」とは、ハードセグメントを構成する成分(c)および(d)のみをモノマー成分として十分に重合させてなるポリアミドの融点のことである。「ハードセグメントポリマーの融点」は、例えば、国際公開2013/042541号パンフレットに記載の方法により、成分(c)および(d)のみをモノマー成分として十分に重合させてなるポリアミドの融点であってもよい。詳しくは、「ハードセグメントポリマーの融点」は、成分(c)および(d)から反応生成物を得る工程(i)および得られた反応生成物を重合する工程(ii)を含む方法により得られたポリアミド(ハードセグメントポリマー)の融点である。ハードセグメントポリマーの製造過程において、工程(i)では、成分(c)および(d)を、成分(d)の融点以上、かつ成分(c)の融点以下の温度に加熱し、成分(c)の粉末の状態を保つように、成分(d)を添加することにより反応生成物を得ることができる。工程(i)では、例えば、成分(c)および(d)それぞれとしてテレフタル酸および1,10-デカンジアミンを用いる場合、加熱温度は100~240℃(好ましくは140~200℃、特に170℃)であってもよい。成分(d)の添加は連続的に行うことが好ましく、例えば、1~10時間(好ましくは1~5時間、特に2.5時間)かけて行うことが好ましい。ハードセグメントポリマーの製造過程において、工程(ii)では、工程(i)で得られた固相状態の反応生成物を、当該固相状態を保つように、十分に加熱して、重合(すなわち固相重合)を行う。工程(ii)では、例えば、成分(c)および(d)それぞれとしてテレフタル酸および1,10-デカンジアミンを用いる場合、加熱温度(すなわち重合温度)は220~300℃(好ましくは240~280℃、特に260℃)であってもよく、加熱時間(すなわち重合時間)は1~10時間(好ましくは3~7時間、特に5時間)であってもよい。工程(i)および(ii)は窒素不活性ガス等の気流中で行うことが好ましい。例えば、成分(c)および(d)それぞれとしてテレフタル酸および1,10-デカンジアミンを用いる場合、ハードセグメントポリマーの融点は通常315℃である。
【0060】
一括重合法および分割重合法(以下、単に「結晶性ポリアミド(B2)の製造方法」ということがある)において、重合の効率を高めるため重合触媒を用いてもよい。重合触媒としては、例えば、リン酸、亜リン酸、次亜リン酸またはそれらの塩が挙げられる。重合触媒の添加量は、通常、原料モノマーの総モル数に対し、2モル%以下とすることが好ましい。
【0061】
結晶性ポリアミド(B2)の製造方法においては、必要に応じて、有機溶媒や水を加えてもよい。
【0062】
結晶性ポリアミド(B2)の製造方法においては、重合は、密閉系でおこなってもよいし、常圧でおこなってもよい。密閉系でおこなう場合、モノマーの揮発や縮合水の発生等で圧力が上昇することがあるため、適宜圧力を制御することが好ましい。一方、用いるモノマーの沸点が高く、加圧しなくてもモノマーが系外に流出しない場合、常圧で重合することができる。例えば、ダイマー酸、ダイマージアミン、テレフタル酸、デカンジアミンの組み合わせの場合、常圧で重合することができる。
【0063】
結晶性ポリアミド(B2)の製造方法においては、酸化劣化を防ぐため、窒素雰囲気下または真空下で重合をおこなうことが好ましい。
【0064】
重合したポリアミドは、ストランド状に押出しペレットとしてもよいし、ホットカット、アンダーウォーターカットしてペレットとしてもよい。
【0065】
結晶性ポリアミド(B2)の製造方法においては、重合後、さらに高分子量化するために、固相重合をおこなってもよい。固相重合は、重合時の粘度が高粘度で操業が困難になる場合等に、特に効果的である。固相重合は、不活性ガス流通下または減圧下で、樹脂組成物の融点未満の温度で30分以上加熱することによりおこなうことが好ましく、1時間以上加熱することによりおこなうことがより好ましい。
【0066】
本発明の延伸ポリアミドフィルムには、本発明の効果を損なわない範囲において、製膜時の熱安定性を高め、フィルムの強度や伸度の劣化を防ぎ、使用時の酸化や分解等に起因するフィルムの劣化を防止するために、熱安定剤を含有させることが好ましい。熱安定剤としては、例えば、銅化合物、ハロゲン化合物、ヒンダードフェノール系熱安定剤、ヒンダードアミン系熱安定剤、リン系熱安定剤、イオウ系熱安定剤、二官能型熱安定剤が挙げられる。
【0067】
銅化合物としては、例えば、塩化銅、ヨウ化銅、臭化銅等のハロゲン化銅化合物、酸化銅、硫酸銅、硝酸銅、リン酸銅等の無機酸銅化合物、酢酸銅、ステアリン酸銅等の有機酸銅化合物が挙げられる。
【0068】
ハロゲン化合物としては、例えば、塩化ナトリウム、塩化カリウム、ヨウ化ナトリウム、ヨウ化カリウム、臭化ナトリウム、臭化カリウム等のハロゲン化アルカリ化合物が挙げられる。
【0069】
ヒンダードフェノール系熱安定剤としては、例えば、Irganox1010(登録商標)(BASFジャパン社製、ペンタエリスリトール テトラキス[3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート])、Irganox1076(登録商標)(BASFジャパン社製、オクタデシル-3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート)、Cyanox1790(登録商標)(ソルベイ社製、1,3,5-トリス(4-t-ブチル-3-ヒドロキシ-2,6-ジメチルベンジル)イソシアヌル酸)、Irganox1098(登録商標)(BASFジャパン社製、N,N’-(ヘキサン-1,6-ジイル)ビス[3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオンアミド]等のほか、一般式(1)の構造を有するヒンダードフェノール系化合物(以下、「特定ヒンダードフェノール化合物」と略称することがある。)が挙げられる。特定ヒンダードフェノール化合物としては、SumilizerGA-80(登録商標)(住友化学社製、3,9-ビス[2-{3-(3-t-ブチル-4-ヒドロキシ-5-メチルフェニル)プロピオニルオキシ}-1,1-ジメチルエチル]-2,4,8,10-テトラオキサスピロ[5.5]ウンデカン)、Irganox245(登録商標)(BASFジャパン社製、ビス(3-tert-ブチル-4-ヒドロキシ-5-メチルベンゼンプロパン酸)エチレンビス(オキシエチレン))等が挙げられる。
【0070】
【化1】
(式中、RおよびRは、独立して、メチル基、エチル基または水素を示す。)
【0071】
ヒンダードアミン系熱安定剤としては、例えば、Nylostab S-EED(登録商標)(クラリアントジャパン社製、N、N’-ビス-2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジニル-1,3-ベンゼンジカルボキシアミド)が挙げられる。
【0072】
リン系熱安定剤としては、例えば、Irgafos168(登録商標)(BASFジャパン社製、トリス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)ホスファイト)、Irgafos12(登録商標)(BASFジャパン社製、6,6’,6”-[ニトリロトリス(エチレンオキシ)]トリス(2,4,8,10-テトラ-tert-ブチルジベンゾ[d,f][1,3,2]ジオキサホスフェピン))、Irgafos38(登録商標)(BASFジャパン社製、ビス(2,4-ジ-tert-ブチル)-6-メチルフェニル)エチルホスフィット)、ADKSTAB329K(登録商標)(ADEKA社製、トリス(モノ-ジノニルフェニル)ホスフィット)、ADKSTAB PEP36(登録商標)(ADEKA社製、ビス(2,6-ジ―tert―ブチル-4-メチルフェニル)ペンタエリスリトール-ジ-ホスファイト)、Hostanox P-EPQ(登録商標)(クラリアント社製、テトラキス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)-4,4’-ビフェニルジホスホナイト)、GSY-P101(登録商標)(堺化学工業社製、テトラキス(2,4-ジ-tert-ブチル-5-メチルフェニル)-4,4’-ビフェニレンジホスホナイト)、スミライザーGP(登録商標)(住友化学社製、6-[3-(3-tert-ブチル-4-ヒドロキシ-5-メチルフェニル)プロポキシ]-2,4,8,10-テトラ-tert-ブチルジベンゾ[d,f][1,3,2]-ジオキサホスフェピン)が挙げられる。
【0073】
イオウ系熱安定剤としては、例えば、DSTP「ヨシトミ」(登録商標)(三菱ケミカル社製、化学式名:ジステアリルチオジプロピオネート)、Seenox 412S(登録商標)(シプロ化成社製、ペンタエリスリトール テトラキス-(3-ドデシルチオプロピオネート))が挙げられる。
【0074】
二官能型熱安定剤としては、例えば、スミライザーGM(登録商標)、(住友化学社製、2-tert-ブチル-6-(3-tert-ブチル-2-ヒドロキシ-5-メチルベンジル)-4-メチルフェニルアクリレート)、スミライザーGS(登録商標)(住友化学社製、2-[1-(2-ヒドロキシ-3,5-ジ-tert-ペンチルフェニル)エチル]-4,6-ジ-tert-ペンチルフェニルアクリレート)が挙げられる。
【0075】
フィルム強度の劣化を防止する観点からは、ヒンダードフェノール系熱安定剤が好ましい。ヒンダードフェノール系熱安定剤の熱分解温度は、320℃以上であることが好ましく、350℃以上であることがより好ましい。熱分解温度が320℃以上のヒンダードフェノール系熱安定剤としては、スミライザーGA-80が挙げられる。また、ヒンダードフェノール系熱安定剤は、アミド結合を有していれば、フィルム強度の劣化を防止することができる。アミド結合を有しているヒンダードフェノール系熱安定剤としては、例えば、イルガノックス1098が挙げられる。また、ヒンダードフェノール系熱安定剤に二官能型熱安定剤を併用することにより、フィルム強度の劣化をさらに低減することができる。
【0076】
これらの熱安定剤は、単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。例えば、ヒンダードフェノール系熱安定剤とリン系熱安定剤を併用すれば、フィルムの製膜時における原料濾過用フィルターの昇圧を防止することができるとともに、フィルム強度の劣化を防止することができる。また、ヒンダードフェノール系熱安定剤とリン系熱安定剤と二官能型熱安定剤を併用すれば、フィルムの製膜時における原料濾過用フィルターの昇圧を防止することができるとともに、フィルム強度の劣化をさらに低減することができる。
【0077】
ヒンダードフェノール系熱安定剤とリン系熱安定剤の組み合わせとしては、スミライザーGA-80またはイルガノックス1098と、Hostanox P-EPQまたはGSY-P101との組み合わせが好ましい。ヒンダードフェノール系熱安定剤とリン系熱安定剤と二官能型熱安定剤の組み合わせとしては、スミライザーGA-80またはイルガノックス1098と、HostanoxP-EPQまたはGSY-P101と、スミライザーGSの組み合わせが好ましく、スミライザーGA-80と、GSY-P101とスミライザーGSとの組み合わせがより好ましい。
【0078】
本発明に用いる延伸ポリアミドフィルムにおける上記熱安定剤の含有量としては、半芳香族ポリアミド100質量部に対して、0.01~2質量部とすることが好ましく、0.04~1質量部とすることがより好ましい。熱安定剤の含有量が0.01~2質量部とすることにより、熱分解をより効率的に抑制することができる。なお、熱安定剤を2種以上併用する場合は、各々の熱安定剤の個別の含有量、および熱安定剤の合計の含有量のいずれもが、上記の範囲に入っていることが好ましい。
【0079】
本発明の延伸ポリアミドフィルムには、滑り性を良好にするため、滑剤粒子が含有されていてもよい。滑剤粒子としては、例えば、シリカ、アルミナ、二酸化チタン、炭酸カルシウム、カオリン、硫酸バリウム等の無機粒子や、アクリル系樹脂粒子、メラミン樹脂粒子、シリコーン樹脂粒子、架橋ポリスチレン粒子等の有機系微粒子が挙げられる。
【0080】
本発明の延伸ポリアミドフィルムには、本発明の効果を損なわない範囲において、各種の添加剤が含有されていてもよい。添加剤としては、例えば、顔料・染料等の着色剤、着色防止剤、上記熱安定剤とは異なる酸化防止剤、耐候性改良剤、難燃剤、可塑剤、離型剤、強化剤、改質剤、帯電防止剤、紫外線吸収剤、防曇剤、各種ポリマーが挙げられる。顔料としては、酸化チタン等が挙げられる。耐候性改良剤としては、ベンゾトリアゾール系化合物等が挙げられる。難燃剤としては、臭素系難燃剤やリン系難燃剤等が挙げられる。強化剤としては、タルク等が挙げられる。なお、上記のような添加剤は、フィルムを製造する際の任意の段階で添加すればよい。
【0081】
本発明に用いる延伸ポリアミドフィルムには、必要に応じて、その表面の密着性を向上させるための処理を施すことができる。密着性を向上させる方法としては、例えば、コロナ処理、プラズマ処理、酸処理、火炎処理が挙げられる。
【0082】
本発明に用いる延伸ポリアミドフィルムの表面には、易接着性、帯電防止性、離型性、ガスバリア性等の機能を付与するため、各種のコーティング剤が塗布されていてもよい。
【0083】
本発明の延伸ポリアミドフィルムにおいて、熱安定剤、滑材粒子、各種の添加剤を含有させる場合、用いる半芳香族ポリアミドに予め混練しておくことが好ましい。半芳香族ポリアミドの混練に用いられる混練機は、特に限定されないが、例えば、単軸押出機、二軸押出機、バンバリーミキサー、ニーダー、ミキシングロール等、通常公知の溶融混練機が挙げられる。溶融混練温度は、通常、半芳香族ポリアミドの融点以上である。
【0084】
本発明の延伸ポリアミドフィルムは、一軸方向または二軸方向に延伸されていることが好ましく、二軸延伸されていることがより好ましい。延伸により半芳香族ポリアミドが配向結晶化していることが好ましい。延伸条件や倍率は特に限定されないが、二軸方向に延伸されている場合は、長手方向(以下、「MD」と略称することがある)、幅方向(以下、「TD」と略称することがある)ともに2倍以上延伸されていることが好ましく、2.5倍以上延伸されていることがより好ましい。延伸倍率が2倍以下の場合は、延伸による配向結晶化の程度が低く、このためフィルムの強度や耐熱性が劣る場合がある。
【0085】
本発明の延伸ポリアミドフィルムは、フィルムの面方向における25℃から250℃の平均線膨張係数が30ppm/℃以下であることが必要で、0ppm/℃以上であることが好ましい。フィルムの面方向における25℃から250℃の平均線膨張係数を30ppm/℃以下とするには、延伸温度、延伸倍率、延伸倍率比、延伸歪み速度、熱セット温度を適宜調整すればよい。
【0086】
本発明の延伸ポリアミドフィルムは、その熱収縮率が小さい方が好ましい。例えば、200℃、15分の熱風加熱による熱収縮率は、3.0%以下であることが好ましく、1.0%以下であることがより好ましく、0.5%以下であることがさらに好ましい。
【0087】
本発明の延伸ポリアミドフィルムの引張強度は、MD、TDともに、130MPa以上であることが好ましく、引張伸度は、TD、MDともに、50%以上であることが好ましい。
【0088】
本発明の延伸ポリアミドフィルムの厚みムラは、10%以下であることが好ましく、8%以下であることがより好ましく、6%以下であることがさらに好ましい。厚みムラが10%以下であることにより、フィルムを加工する時のフィルムのたるみやシワを減らすことができる。
【0089】
本発明の延伸ポリアミドフィルムには、必要に応じて、その表面をコロナ処理、プラズマ処理、酸処理、火炎処理をおこなわれていてもよい。
【0090】
本発明の延伸ポリアミドフィルムの表面には、易接着性、帯電防止性、離型性、ガスバリア性等の機能を付与するため、各種のコーティング剤が塗布されていてもよい。
【0091】
本発明の延伸ポリアミドフィルムには、金属またはその酸化物等の無機物、他種ポリマー、紙、織布、不織布、木材等が積層されていてもよい。
【0092】
本発明の延伸ポリアミドフィルムに金属層を設ける場合、金属層を構成する金属としては、例えば、銅、アルミニウムおよび鉄が挙げられる。金属層は、片面のみに設けられてもよいし、両面に設けられてもよい。
【0093】
上記、ポリアミドフィルム積層体には、さらに樹脂層を設けてもよい。金属層がポリアミドフィルムの片面に設けられる場合、樹脂層は、金属層の上に設けられてもよいし、またはポリアミドフィルムにおける金属層が設けられていない面(反対面)に設けられてもよい。樹脂層は通常、金属層の上に設けられる。金属層がポリアミドフィルムの両面に設けられる場合、樹脂層は、一方の金属層の上に設けられてもよいし、または両方の金属層の上に設けられてもよい。樹脂層を構成する樹脂は、特に限定されず、例えば、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリエーテルイミド、ポリアリーレンエーテルケトン、ポリアリーレンスルフィド、フルオロカーボンポリマー、ポリアミド、ポリエステル、ポリエーテル、ポリオレフィン、ポリスチレン、ポリカーボネート、ポリウレタン、エチレン/酢酸ビニル共重合体、エチレン/α-オレフィン共重合体、エチレン/アクリル酸エステル共重合体、無水マレイン酸変性ポリオレフィン、アイオノマーからなる群から選択されてもよい。樹脂層を構成する樹脂がポリアミドの場合、当該ポリアミドは、ポリアミドフィルムであってもよいし、またはそれ以外のポリアミドであってもよい。金属層がポリアミドフィルムの両面に設けられる場合、一方の面に設けられる金属層は他方の面に設けられる金属層と同種の金属から構成されていてもよいし、または異種の金属から構成されていてもよい。
【0094】
ポリアミドフィルム積層体において、金属層は接着層等の第3部材を介して延伸ポリアミドフィルム上に設けられてもよい。第3部材を介在させることなく、延伸ポリアミドフィルムと直接的に接して設けられてもよい。
【0095】
ポリアミドフィルム積層体の作製方法としては、例えば、(1)フィルムと金属とを、加熱および加圧によって張り合わせる方法、(2)メッキ処理;インクジェット法;真空蒸着やスパッタリング処理等の物理蒸着(PVD)法;または熱、プラズマ、光をエネルギー形態とする化学蒸着(CVD)法により金属層を形成する方法、(3)メッキ処理、インクジェット法、PVD法またはCVD法によりシード層を形成した後にメッキ処理により金属層を形成する方法が挙げられる。
【0096】
フィルムと金属とを加熱および加圧によって張り合わせる方法としては、例えば、フィルムに接着剤を塗布した後に金属を重ね合わせ加熱および加圧によって張り合わせる方法や、フィルムと金属との間に接着シートを挟み加熱および加圧によって張り合わせる方法や、フィルムと金属とを直接重ね合わせ加熱および加圧によって張り合わせる方法が挙げられる。
【0097】
加熱および加圧の方法としては、例えば、真空プレス装置を用いる方法や、ロール式ラミネート機を用いる方法が挙げられる。
【0098】
フィルムに接着剤を塗布した後に金属を重ね合わせて加および加圧によって張り合わせる方法としては、接着成分を分散させた溶液をフィルム表面にコートし、乾燥させて接着層を形成した後、金属を重ね合わせて、加熱および加圧によって張り合わせる方法が挙げられる。コート後の乾燥温度は100℃以下とすることが好ましい。
【0099】
フィルムと金属との間に接着シートを挟み加熱および加圧によって張り合わせる方法としては、例えば、フィルムに接着シートを重ね合わせ、金属を加熱および加圧によって張り合わせる方法が挙げられる。
【0100】
ポリアミドフィルム積層体のポリアミドフィルムと金属層との剥離強度は、0.1[N/mm]以上であることが好ましく、0.3[N/mm]以上であることがより好ましく、0.5[N/mm]以上であることがさらに好ましい。当該剥離強度は通常、2.0[N/mm]以下である。
【0101】
本明細書中、剥離強度は、JIS C 6471(方法A)に従って測定された値を用いている。
【0102】
本発明の延伸ポリアミドフィルムの製造方法としては、特に限定されないが、半芳香族ポリアミドを押出機内にて280~340℃の温度で3~15分間溶融混合した後、Tダイを通じてシート状に押出し、このシート状物を、30~80℃に温度調節されたドラム上に密着させて冷却することで未延伸フィルムを製造し、得られた未延伸フィルムをその後に同時二軸延伸機に導き、120~150℃の温度で、TD、MDともに2~4倍程度の延伸倍率となるよう同時二軸延伸し、さらにTDのリラックスを数%として、150~300℃で数秒間熱処理を施す方法を挙げることができる。同時二軸延伸機に導く前に、フィルムに1~1.2倍程度の予備縦延伸を施しておいてもよい。
【0103】
また、本発明の延伸ポリアミドフィルムは、上記と同様の操作におこなって未延伸フィルムを得、それにロール加熱、赤外線加熱等の加熱処理を施したうえで、縦方向に延伸して縦延伸フィルムを得る方法によっても製造することができる。縦延伸は、2個以上のロールの周速差を利用し、半芳香族ポリアミドのガラス転移点をTgとして、Tg~(Tg+40℃)の温度範囲で、2.0~3.6倍に延伸することが好ましい。縦延伸フィルムに対して続いて連続的に、横延伸、熱固定、リラックス処理を順次施して、二軸延伸フィルムとする。このとき横延伸は、縦延伸の場合と同じTg~(Tg+40℃)の温度範囲で開始し、最高温度は、半芳香族ポリアミドの融点(Tm)よりも100~150℃低い温度であることが好ましい。横延伸の倍率は、最終的なフィルムの要求物性により調整されるが、2.5倍以上であることが好ましく、3.0倍以上であることがより好ましい。横延伸に続く熱固定処理時に、フィルムの横方向すなわち幅方向に2~20%の伸張を加えてもよい。ただし、その伸張率はトータルの延伸倍率の中に含まれる。熱固定処理後、リラックス処理を施し、その後フィルムをそのTg以下に冷却して、二軸延伸フィルムを得る。
【0104】
フィルムの製造装置においては、シリンダー、バレルの溶融部、計量部、単管、フィルター、Tダイ等の表面に対して、樹脂の滞留を防ぐため、その表面の粗さを小さくする処理が施されていることが好ましい。表面の粗さを小さくする方法としては、例えば、極性の低い物質で改質する方法が挙げられる。あるいは、その表面に窒化珪素やダイヤモンドライクカーボンを蒸着させる方法が挙げられる。
【0105】
フィルムを延伸する方法としては、例えば、フラット式逐次二軸延伸法、フラット式同時二軸延伸法、チューブラ法を挙げることができる。中でも、フィルムの厚み精度を向上させ、フィルムのMDの物性を均一とすることができる観点から、フラット式同時二軸延伸法を採用することが好ましい。
【0106】
フラット式同時二軸延伸法を採用するための延伸装置としては、例えば、スクリュー式テンター、パンタグラフ式テンター、リニアモーター駆動クリップ式テンターが挙げられる。
【0107】
延伸後の熱処理は、フィルムの寸法安定性を付与するために設けることが好ましい。熱処理方法としては、例えば、熱風を吹き付ける方法、赤外線を照射する方法、マイクロ波を照射する方法等の公知の方法が挙げられる。中でも、均一に精度よく加熱できることから、熱風を吹き付ける方法が好ましい。
【0108】
得られた延伸ポリアミドフィルムは、枚葉とされてもよいし、巻き取りロールに巻き取られることによりフィルムロールの形態とされてもよい。各種用途への利用に際しての生産性の観点から、フィルムロールの形態とすることが好ましい。フィルムロールとされた場合は、所望の巾にスリットされてもよい。
【0109】
上述のようにして得られた本発明の延伸ポリアミドフィルムは、医薬品の包装材料;レトルト食品等の食品の包装材料;半導体パッケージ等の電子部品の包装材料;モーター、トランス、ケーブル、電線、多層プリント配線板等のための電気絶縁材料;コンデンサ用途等のための誘電体材料;カセットテープ、デジタルデータストレージ向けデータ保存用磁気テープ、ビデオテープ等の磁気テープ用材料;太陽電池基板、液晶板、導電性フィルム、ガラス、デジタルサイネージ、その他表示機器等のための保護材料;LED実装基板、有機EL基板、フレキシブルプリント配線板、フレキシブルフラットケーブル、フレキシブルアンテナ、スピーカー振動板等の電子基板材料;フレキシブルプリント配線用カバーレイフィルム、耐熱マスキング用テープ等の耐熱保護フィルム;耐熱バーコードラベル、各種工業用工程テープ等の耐熱粘着フィルム;耐熱リフレクター;耐熱離型フィルム;熱伝導フィルム;ダイシングテープ、ダイシングテープ一体型ダイアタッチフィルム(ダイシング・ダイアタッチフィルム)、ダイシングテープ一体型ダイボンディングフィルム(ダイシング・ダイボンディングフィルム)、ダイシングテープ一体型ウェハ裏面保護フィルム、バックグライディングフィルム等の半導体工程用フィルム;インモールド成形、フィルムインサート成形、真空成形、圧空成形等の成形加飾用材料;写真フィルム;農業用材料;医療用材料;土木、建築用材料;濾過膜等、家庭用、産業資材;繊維材料用のフィルムとして、好適に用いることができる。中でも、本発明のポリアミドフィルムは、25℃から250℃の平均線膨張係数が30ppm/℃以下であるので、フレキシブルプリント配線用の基板フィルムやカバーレイフィルムとして好適に使用することができる。
【実施例0110】
1.分析
物性測定は、以下の方法によりおこなった。
(1)ポリアミドの極限粘度
濃度が96質量%である濃硫酸中に、30℃にて、半芳香族ポリアミドを、それぞれ、0.05g/dL、0.1g/dL、0.2g/dL、0.4g/dLの濃度となるように溶解させて、半芳香族ポリアミドの還元粘度を求めた。そして、各々の還元粘度の値を用い、濃度を0g/dLに外挿した値を極限粘度とした。
【0111】
(2)ポリアミドの相対粘度
96質量%硫酸を溶媒とし、濃度1g/dL、25℃で測定した。
【0112】
(3)ポリアミドの融点(Tm)、ガラス転移温度(Tg)
ポリアミド10mgを、示差走査型熱量計(パーキンエルマー社製、「DSC-7」)を用いて、窒素雰囲気下で20℃から350℃まで10℃/分で昇温し(1st Scan)、350℃にて5分間保持した。その後、100℃/分で20℃まで降温し、20℃にて5分間保持後、350℃まで20℃/分でさらに昇温した(2nd Scan)。そして、2nd Scanで観測される結晶融解ピークのピークトップ温度を融点とし、ガラス転移に由来する2つの折曲点の温度の中間点をガラス転移温度とした。
【0113】
(4)ポリアミドフィルムの平均線膨張係数
ポリアミドフィルムを長手方向(MD)および幅方向(TD)に対して30mm×4mmの大きさに切り出し、下記の条件で熱機械的分析装置(セイコーインスツルメンツ社製、「TMA/SS6000」)で寸法変化を測定した。
・温度条件
(1)10℃/分で20℃から255℃まで昇温して5分間保持(1回目昇温)
(2)10℃/分で250℃から25℃まで降温して60分保持
(3)10℃/分で25℃から250℃まで昇温して5分間保持(2回目昇温)
・荷重 :40mN一定
・試料(測定)サイズ :長さ10mm×幅4mm
平均線膨張係数の測定温度範囲は、2回目昇温時の25~250℃であり、線膨張係数の算出は下記式を用いた。
平均線膨張係数[ppm/℃]=(250℃の寸法-25℃の寸法)/(25℃の寸法)/(250℃-25℃)×10
【0114】
(5)フィルム積層体の反り
実施例、比較例で得られた、片面に金属層を有するポリアミドフィルム積層体を10cm×10cmに切り出し、フィルム側を下面にして23℃、相対湿度50%、24時間調湿した後、4角の浮き上がり量を測定した。反りが凸形状の場合は、上下反転させて測定した。反りが凹形状の場合をプラス、凸形状の場合をマイナスとした。4角の測定値の平均値(絶対値)Xについて、以下の基準に従って評価した。
◎◎:平均値Xが0mm以上5mm未満(最良)
◎:5mm以上10mm未満(優良)
○:10mm以上20mm未満(良)
□:20mm以上25mm未満(実用上問題なし)
×:25mm以上(実用上問題あり)
【0115】
(6)耐熱性試験後のフィルム積層体の外観・反り
(5)で反りを評価した、片面のみに金属層を有するポリアミドフィルム積層体を、250℃で60秒の処理をおこなった。その後、「(5)フィルム積層体の反り」と同様の方法により評価を行い、以下の基準に従ってランク付けした。
◎◎:フィルムの外観に変化なく、反り平均値Xが0mm以上5mm未満であった。(最良)
◎:フィルムの外観に変化なく、フィルムの外観に変化なく、反り平均値Xが5mm以上10mm未満であった。(優良)
○:フィルムの外観に変化なく、反り平均値Xが10mm以上20mm未満であった。(良)
□:フィルムの外観に変化なく、反り平均値Xが20mm以上25mm未満であった。(実用上問題なし)
×:フィルムの外観が悪化したか、またはフィルムの外観に変化がなかったとしても、反り平均値Xが25mm以上であった。(実用上問題あり)
【0116】
2.原料
<原料モノマー>
(1)脂肪族ジアミン
・1,9-ノナンジアミン(以下、「NMDA」と略称することがある)
・2-メチル-1,8-オクタンジアミン(以下、「MODA」と略称することがある)
・1、10-デカンジアミン(以下、「DDA」と略称することがある)
・ダイマージアミン:クローダ社製 プリアミン1075(以下、「36N」と略称することがある)
【0117】
(2)ジカルボン酸
・テレフタル酸(以下、「TPA」と略称することがある)
・セバシン酸:(以下、「SEA」と略称することがある)
・ダイマー酸:クローダ社製 プリポール1009(以下、「36C」と略称することがある)
【0118】
(3)末端封止剤
・安息香酸(以下、「BA」と略称することがある)
・ステアリン酸(以下、「STA」と略称することがある)
【0119】
<触媒>
・亜リン酸(以下、「PA」と略称することがある)
・次亜リン酸ナトリウム(以下、「SHP」と略称することがある)
【0120】
<ヒンダードフェノール系熱安定剤>
・スミライザーGA-80:住友化学社製(以下、「GA」と略称することがある)
【0121】
[半芳香族ポリアミド]
(1)半芳香族ポリアミドA-1
1343gのNMDA、237gのMODA、1627gのTPA(平均粒径:80μm)(NMDA:MODA:TPA=85:15:99、モル比)、48.2gのBA(ジカルボン成分とジアミン成分の総モル数に対して4.0モル%)、3.2gのPA(ジカルボン成分とジアミン成分の合計量に対して0.1質量%)、1100gの水を反応装置に入れ、窒素置換した。さらに、80℃で0.5時間、毎分28回転で撹拌した後、230℃に昇温した。その後、230℃で3時間加熱した。その後冷却し、反応物を取り出した。該反応物を粉砕した後、乾燥機中において、窒素気流下、220℃で5時間加熱することで固相重合して、半芳香族ポリアミドA-1を製造した。
【0122】
(2)~(3)半芳香族ポリアミドA-2~A-3
表1に示すように、ジアミン成分とジカルボン酸成分とモノカルボン酸成分のモル比率を変更する以外は半芳香族ポリアミド1を製造する場合と同様の操作をおこなって、半芳香族ポリアミドA-2~A-3を製造した。
【0123】
[結晶性ポリアミドB]
(1)結晶性ポリアミドB-1
ジカルボン酸成分として粉末状のテレフタル酸(TPA)470質量部と、モノカルボン酸として分子量284のステアリン酸(STA)32質量部と、重合触媒として次亜リン酸ナトリウム一水和物(SHP)0.093質量部とを、リボンブレンダー式の反応装置に入れ、窒素密閉下、回転数30rpmで撹拌しながら170℃に加熱した。その後、温度を170℃に保ち、かつ回転数を30rpmに保ったまま、液注装置を用いて、ジアミン成分として100℃に加温した1,10-デカンジアミン(DDA)498質量部を、2.5時間かけて連続的(連続液注方式)に添加し反応物を得た。なお、原料モノマーのモル比は、TPA:DDA:STA=48.5:49.6:1.9(原料モノマーの官能基の当量比率は、TPA:DDA:STA=49.0:50.0:1.0)であった。
その後、得られた反応物を、同じ反応装置で、窒素気流下、250℃、回転数30rpmで8時間固相重合し、結晶性ポリアミドB-1を得た。
【0124】
(2)結晶性ポリアミドB-2
ジカルボン酸成分として粉末状のテレフタル酸(TPA)403質量部と、モノカルボン酸として分子量284のステアリン酸(STA)24質量部と、重合触媒として次亜リン酸ナトリウム一水和物(SHP)1.6質量部とを、リボンブレンダー式の反応装置に入れ、窒素密閉下、回転数30rpmで撹拌しながら170℃に加熱した。その後、温度を170℃に保ち、かつ回転数を30rpmに保ったまま、液注装置を用いて、ジアミン成分として100℃に加温した1,10-デカンジアミン(DDA)499質量部を、2.5時間かけて連続的(連続液注方式)に添加し、さらに、ジカルボン酸成分としてセバシン酸(SEA)133質量部を添加し、反応物を得た。なお、原料モノマーのモル比は、TPA:SEA:DDA:STA=44.1:4.9:49.7:1.3であった。
その後、得られた反応物を、同じ反応装置で、窒素気流下、240℃、回転数30rpmで8時間固相重合し、結晶性ポリアミドB-2を得た
【0125】
(3)結晶性ポリアミドB-3
リボンブレンダー式の反応装置にテレフタル酸23.5質量部、次亜リン酸ナトリウム一水和物0.1質量部を投入し、窒素密閉下、回転数30rpmで撹拌しながら170℃に加熱した。その後、温度を170℃に保ち、かつ回転数を30rpmに保ったまま、液注装置を用いて、100℃に加温した1,10-デカンジアミン24.4質量部を、2.5時間かけて連続的(連続液注方式)に添加し反応生成物を得た。なお、原料モノマーのモル比は、テレフタル酸:1,10-デカンジアミン=50.0:50.0であった。
加熱機構、撹拌機構を備えた反応容器にダイマー酸26.7質量部、ダイマージアミン25.3質量部を投入した。100℃で1時間撹拌した後に上記反応生成物を47.9質量部撹拌しながら投入した。
その後260℃まで撹拌しながら加熱し、縮合水を系外に除去しながら、窒素気流下、常圧、260℃で、5時間重合をおこなった。重合中、系は懸濁溶液の状態であった。
重合終了後、払い出し、これを切断し、乾燥してペレット形態の結晶性ポリアミドB-3を得た。
【0126】
表1に、半芳香族ポリアミドA-1~A-3、結晶性ポリアミドB-1~B-3の組成比率とその特性値を示す。
【0127】
【表1】
【0128】
[混練物]
(1)混練物AM1
半芳香族ポリアミドA-1 100質量部とGA 0.4質量部とをドライブレンドし、スクリュー径が26mmである二軸押出機を用いて溶融混練した。二軸押出機のシリンダー温度は310℃であった。その後、ストランド状に押出し、冷却、切断して、ペレット状の混練物AM1を製造した。
【0129】
(2)、(3)混練物AM2、AM3
半芳香族ポリアミドの種類を変更する以外は混練物AM1を製造する場合と同様の操作をおこなって、混練物AM2、AM3を製造した。
【0130】
(4)混練物BM1
ポリアミドB-1 100質量部とGA 0.4質量部とをドライブレンドし、スクリュー径が26mmである二軸押出機を用いて溶融混練した。二軸押出機のシリンダー温度は310℃であった。その後、ストランド状に押出し、冷却、切断して、ペレット状の混練物BM1を製造した。
【0131】
(5)、(6)混練物BM2、BM3
結晶性ポリアミドの種類を変更する以外は、混練物BM1を製造する場合と同様の操作をおこなって、混練物BM2、BM3を製造した。
【0132】
表2に、混練物AM1~AM3、BM1~BM3の組成比率を示す。
【0133】
【表2】
【0134】
実施例1
混練物AM1/混練物BM1の質重量比が85/15となるようにドライブレンドで混合し、シリンダー温度を320℃に加熱したスクリュー径が40mmである単軸押出機に投入して溶融し、溶融ポリマーを金属繊維焼結フィルター(日本精線社製、「NF-13」、絶対粒径:60μm)を用いて濾過した。その後、320℃にしたTダイより溶融ポリマーをフィルム状に押出し、フィルム状の溶融物とした。該溶融物を50℃に設定した冷却ロール上に静電印加法により密着させて冷却し、実質的に無配向の未延伸フィルムを得た。
得られたポリアミド未延伸フィルムの両端をクリップで把持しながら、フラット式同時二軸延伸機にて、二軸延伸をおこなった。延伸条件は、予熱部の温度が130℃、延伸部の温度が130℃、MDの延伸歪み速度が2000%/分、TDの延伸歪み速度が2000%/分、MDの延伸倍率が3.0倍、TDの延伸倍率が3.0倍であった。延伸後連続して、二軸延伸機の同じテンター内で275℃にて熱固定をおこない、フィルムの幅方向に5%のリラックス処理を施し、平均厚み25μmの二軸延伸フィルムを得た。
得られた同時二軸延伸ポリアミドフィルムの片面に、乾燥後のコート厚みが5μmとなるように変性エポキシ系接着剤(AS-60;東亜合成(株)製)を塗布し、100℃で2分間乾燥した。得られたコート層付きポリアミドフィルムのコート面に、厚さ18μmの電解銅箔(表面粗さRz=1.2μm)を重ね合わせ、真空プレス装置にセットして、150℃、3MPa、30分間加熱および加圧処理して、片面に銅箔層を有するポリアミドフィルム積層体を得た。
【0135】
実施例2~5
表3のように用いる混練物の質量比率を変更する以外は、実施例1と同様の操作をおこなって、未延伸フィルムを製造し、二軸延伸フィルムを得て、片面に銅箔層を有するポリアミドフィルム積層体を得た。
【0136】
実施例6~12
表3のように用いる混練物の質量比率および延伸条件を変更する以外は、実施例1と同様の操作をおこなって、未延伸フィルムを製造し、二軸延伸フィルムを得て、片面に銅箔層を有するポリアミドフィルム積層体を得た。
【0137】
実施例13
表3のように用いる混練物の質量比率および延伸条件を変更する以外は、実施例1と同様の操作をおこなって、未延伸フィルムを製造し、フラット式逐次軸延伸機によって二軸延伸をおこなった。まず、未延伸フィルムをロール加熱や赤外線加熱等によって125℃に加熱し、縦方向に延伸歪み速度2000%/分で2.5倍延伸して、縦延伸フィルムを得た。続いて連続的に、フィルムの幅方向の両端を横延伸機のクリップに把持させ、横延伸をおこなった。横延伸の予熱部の温度は130℃、延伸部の温度は145℃、延伸歪み速度は2000%/分、TDの延伸倍率が2.5倍であった。そして、横延伸機の同じテンター内で、275℃で熱固定をおこない、フィルムの幅方向に5%のリラックス処理を施し、平均厚み25μmの二軸延伸フィルムを得た。実施例1と同様の操作をおこなって、片面に銅箔層を有するポリアミドフィルム積層体を得た。
【0138】
比較例1
表3のように用いる混練物の質量比率および延伸条件を変更する以外は、実施例1と同様の操作をおこなって、未延伸フィルムを得た。
得られた未延伸フィルムを275℃×1分の熱処理を行い、ポリアミドフィルムを得た。実施例1と同様の操作をおこなって、片面に銅箔層を有するポリアミドフィルム積層体を得た。
【0139】
比較例2~4
表3のように用いる混練物の種類を変更する以外は、比較例1と同様の操作を行って、熱処理した未延伸フィルムを得て、片面に銅箔層を有するポリアミドフィルム積層体を得た。
【0140】
比較例5
表3のように用いる混練物の種類および質重量比を変更する以外は、実施例1と同様の操作をおこなって、未延伸フィルムを製造し、二軸延伸フィルムを得て、片面に銅箔層を有するポリアミドフィルム積層体を得た。
【0141】
実施例1~13、比較例1~4で得られたポリアミドフィルムに用いたポリアミドの種類および質重量比、延伸条件、その評価および得られたポリアミドフィルム積層体の加熱加圧条件、評価を表3、表4に示す。
【0142】
【表3】
【0143】
【表4】
【0144】
実施例1~13のポリアミドフィルムは、本発明の要件を満たしていたため、25~250℃の平均線膨張係数が30ppm/℃以下であった。
また、得られたポリアミドフィルム積層体の反りが小さく、熱処理後の外観も良好であり、反りの変化も小さかった。
【0145】
比較例1~3のポリアミドフィルムは、結晶性ポリアミド(B)を含んでいるが、延伸されていないため、線膨張係数が低下しなかった。そのため、得られたポリアミドフィルム積層体の反りは大きかった。また、熱処理後の外観も悪かった。
比較例4のポリアミドフィルムは、結晶性ポリアミド(B)を含まず、延伸もされていないため、線膨張係数は大きかった。得られたポリアミドフィルム積層体の反りも大きく、熱処理後の外観も悪かった。
比較例5のポリアミドフィルムは、延伸されているが、結晶性ポリアミド(B)を含んでいないため、得られたポリアミドフィルム積層体の反りは小さくならなかった。