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特開2024-96207車両制御装置、地点通知方法及び地点通知用コンピュータプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024096207
(43)【公開日】2024-07-12
(54)【発明の名称】車両制御装置、地点通知方法及び地点通知用コンピュータプログラム
(51)【国際特許分類】
   G01C 21/26 20060101AFI20240705BHJP
   G01C 21/34 20060101ALI20240705BHJP
   G08G 1/0968 20060101ALI20240705BHJP
【FI】
G01C21/26 C
G01C21/34
G08G1/0968
【審査請求】有
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024070704
(22)【出願日】2024-04-24
(62)【分割の表示】P 2021057608の分割
【原出願日】2021-03-30
(71)【出願人】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100092624
【弁理士】
【氏名又は名称】鶴田 準一
(74)【代理人】
【識別番号】100147555
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 公一
(74)【代理人】
【識別番号】100123593
【弁理士】
【氏名又は名称】関根 宣夫
(74)【代理人】
【識別番号】100133835
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 努
(72)【発明者】
【氏名】賀集 隆郎
(72)【発明者】
【氏名】寺前 康隆
(72)【発明者】
【氏名】鵜飼 拡基
(72)【発明者】
【氏名】後藤 真広
(57)【要約】
【課題】車両が自動運転制御を適用可能なエリアに進入する地点をドライバに通知することが可能な車両制御装置を提供する。
【解決手段】車両制御装置は、所定のエリアについて車両10の自動運転制御において利用される情報を含む地図情報を記憶する記憶部(5、22)と、地図情報を参照して、所定のエリア外にある車両10の現在位置から車両10の目的地への走行予定ルートに沿って車両10が所定のエリアに進入する自動運転開始可能地点を特定する地点特定部31と、自動運転開始可能地点を車両10の車室内に設けられた通知機器6を介して車両10のドライバへ通知する通知部33とを有する。地点特定部31は、地図情報を参照して、所定のエリアへ進入可能な地点を代替進入地点の候補として少なくとも一つ検出し、通知部33は、少なくとも一つの代替進入地点の候補を、通知機器6を介してドライバへさらに通知する。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両を自動運転制御可能な車両制御装置であって、
所定のエリアについて前記車両の自動運転制御において利用される情報を含む地図情報を記憶する記憶部と、
前記地図情報を参照して、前記所定のエリア外にある前記車両の現在位置から前記車両の目的地への走行予定ルートに沿って前記車両が前記所定のエリアに進入する自動運転開始可能地点を特定する地点特定部と、
前記自動運転開始可能地点を前記車両の車室内に設けられた通知機器を介して前記車両のドライバへ通知する通知部と、を有し、
前記地点特定部は、前記地図情報を参照して、前記所定のエリアへ進入可能な地点を代替進入地点の候補として少なくとも一つ検出し、
前記通知部は、前記少なくとも一つの代替進入地点の候補を、前記通知機器を介して前記ドライバへさらに通知する、
車両制御装置。
【請求項2】
前記走行予定ルートに沿って前記車両の現在位置から前記自動運転開始可能地点までの手動運転区間距離を算出する距離算出部をさらに有し、
前記通知部は、前記手動運転区間距離を、前記通知機器を介して前記ドライバへさらに通知し、
前記記憶部は、走行ルート探索用地図情報をさらに記憶し、
前記距離算出部は、前記少なくとも一つの代替進入地点の候補のそれぞれについて、前記走行ルート探索用地図情報を参照して前記車両の現在位置から当該代替進入地点の候補までのルートを探索するとともに当該ルートに沿って前記車両の現在位置から当該代替進入地点の候補までの距離を算出し、
前記通知部は、前記少なくとも一つの代替進入地点の候補または前記車両の現在位置から前記少なくとも一つの代替進入地点の候補までの距離を、前記通知機器を介してドライバへ通知する、請求項1に記載の車両制御装置。
【請求項3】
前記距離算出部は、前記少なくとも一つの代替進入地点の候補のうち、前記車両の現在位置からの距離が前記手動運転区間距離よりも短い候補の何れかを代替進入地点とし、
前記通知部は、前記代替進入地点または前記車両の現在位置から前記代替進入地点までの距離を、前記通知機器を介してドライバへ通知する、請求項2に記載の車両制御装置。
【請求項4】
前記記憶部は、走行ルート探索用地図情報をさらに記憶し、
前記地点特定部は、前記走行予定ルートが設定されていない場合、前記地図情報を参照して、前記車両の現在位置から前記所定のエリアまでの距離が所定距離以下となる範囲内において前記所定のエリアへ進入可能な地点を進入地点の候補として少なくとも一つ検出し、
前記少なくとも一つの進入地点の候補のそれぞれについて、前記走行ルート探索用地図情報を参照して前記車両の現在位置から当該進入地点の候補までのルートを探索するとともに当該ルートに沿って前記車両の現在位置から当該進入地点の候補までの距離を算出し、かつ、前記少なくとも一つの進入地点の何れかを進入地点とする距離算出部をさらに有し、
前記通知部は、前記進入地点及び前記車両の現在位置から前記進入地点までの距離を、前記通知機器を介してドライバへ通知する、請求項1に記載の車両制御装置。
【請求項5】
車両に搭載されたプロセッサが、所定のエリアについて前記車両の自動運転制御において利用される情報を含む地図情報を参照して、前記所定のエリア外にある前記車両の現在位置から前記車両の目的地への走行予定ルートに沿って前記車両が前記所定のエリアに進入する自動運転開始可能地点を特定し、
前記プロセッサが、前記自動運転開始可能地点を前記車両の車室内に設けられた通知機器を介して前記車両のドライバへ通知し、
前記プロセッサが、前記地図情報を参照して、前記所定のエリアへ進入可能な地点を代替進入地点の候補として少なくとも一つ検出し、
前記プロセッサが、前記少なくとも一つの代替進入地点の候補を、前記通知機器を介して前記ドライバへさらに通知する、
ことを含む地点通知方法。
【請求項6】
所定のエリアについて車両の自動運転制御において利用される情報を含む地図情報を参照して、前記所定のエリア外にある前記車両の現在位置から前記車両の目的地への走行予定ルートに沿って前記車両が前記所定のエリアに進入する自動運転開始可能地点を特定し、
前記自動運転開始可能地点を前記車両の車室内に設けられた通知機器を介して前記車両のドライバへ通知し、
前記地図情報を参照して、前記所定のエリアへ進入可能な地点を代替進入地点の候補として少なくとも一つ検出し、
前記少なくとも一つの代替進入地点の候補を、前記通知機器を介して前記ドライバへさらに通知する、
ことを前記車両に搭載されたプロセッサに実行させるための地点通知用コンピュータプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両を自動運転制御可能な車両制御装置、及び、所定の地点を通知する地点通知方法及び地点通知用コンピュータプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
車両を自動運転制御するための技術の研究及びそのためのインフラストラクチャーの構築が進んでいる。そのため、車両が目的地まで向かう走行予定ルートにおいて、自動運転制御の適用が可能な区間とそうでない区間とが混在することがある。このような場合において、ドライバの利便性を向上するために、自動運転制御が適用可能な区間に関する情報をドライバへ通知する技術が提案されている(特許文献1及び2を参照)。
【0003】
特許文献1に開示された運転支援システムは、ナビゲーションシステムによって事前に決定された車両の走行予定ルートにおいて、自動運転制御が適用可能な区間の開始地点を判定する。そしてこの運転支援システムは、車両の現在位置からその開始地点までの距離を求めて、その距離をドライバへ通知する。
【0004】
また、特許文献2に開示された情報表示装置は、目的地までの経路を探索し、その経路に含まれる区間が、自動運転が可能である区間、または自動運転が不可である区間の何れであるかを判定する。そしてこの情報表示装置は、自動運転が可能な区間から自動運転が不可となる区間に切り替わる地点を表す情報を、イベントポイントに関連する情報を現在地から目的地までの順に並べたポイント案内画像に表示させる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】米国特許出願公開第2016/0231743号
【特許文献2】特開2018-77086号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ドライバの利便性を向上するためには、自動運転制御を適用可能な区間に進入する地点についての情報をドライバに通知することが求められる。
【0007】
そこで、本発明は、車両が自動運転制御を適用可能なエリアに進入する地点をドライバに通知することが可能な車両制御装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
一つの実施形態によれば、車両を自動運転制御可能な車両制御装置が提供される。この車両制御装置は、所定のエリアについて車両の自動運転制御において利用される情報を含む地図情報を記憶する記憶部と、地図情報を参照して、所定のエリア外にある車両の現在位置から車両の目的地への走行予定ルートに沿って車両が所定のエリアに進入する自動運転開始可能地点を特定する地点特定部と、自動運転開始可能地点を車両の車室内に設けられた通知機器を介して車両のドライバへ通知する通知部と、を有し、地点特定部は、地図情報を参照して、所定のエリアへ進入可能な地点を代替進入地点の候補として少なくとも一つ検出し、通知部は、少なくとも一つの代替進入地点の候補を、通知機器を介してドライバへさらに通知する。
【0009】
この車両制御装置は、走行予定ルートに沿って車両の現在位置から自動運転開始可能地点までの手動運転区間距離を算出する距離算出部をさらに有し、通知部は、手動運転区間距離を、通知機器を介してドライバへさらに通知し、記憶部は、走行ルート探索用地図情報をさらに記憶し、距離算出部は、少なくとも一つの代替進入地点の候補のそれぞれについて、走行ルート探索用地図情報を参照して車両の現在位置からその代替進入地点の候補までのルートを探索するとともに探索したルートに沿って車両の現在位置からその代替進入地点の候補までの距離を算出し、通知部は、少なくとも一つの代替進入地点の候補または車両の現在位置から少なくとも一つの代替進入地点の候補までの距離を、通知機器を介してドライバへ通知する。
【0010】
また、この車両制御装置において、距離算出部は、少なくとも一つの代替進入地点の候補のうち、車両の現在位置からの距離が手動運転区間距離よりも短い候補の何れかを代替進入地点とし、通知部は、代替進入地点または車両の現在位置から代替進入地点までの距離を、通知機器を介してドライバへ通知する。
【0011】
あるいはまた、この車両制御装置において、記憶部は、走行ルート探索用地図情報をさらに記憶し、地点特定部は、走行予定ルートが設定されていない場合、地図情報を参照して、車両の現在位置から所定のエリアまでの距離が所定距離以下となる範囲内において所定のエリアへ進入可能な地点を進入地点の候補として少なくとも一つ検出する。そしてこの車両制御装置は、少なくとも一つの進入地点の候補のそれぞれについて、走行ルート探索用地図情報を参照して車両の現在位置からその進入地点の候補までのルートを探索するとともにそのルートに沿って車両の現在位置からその進入地点の候補までの距離を算出し、かつ、少なくとも一つの進入地点の何れかを進入地点とする距離算出部をさらに有し、通知部は、進入地点及び車両の現在位置から進入地点までの距離を、通知機器を介してドライバへ通知する。
【0012】
他の実施形態によれば、地点通知方法が提供される。この地点通知方法は、車両に搭載されたプロセッサが、所定のエリアについて車両の自動運転制御において利用される情報を含む地図情報を参照して、所定のエリア外にある車両の現在位置から車両の目的地への走行予定ルートに沿って車両が所定のエリアに進入する自動運転開始可能地点を特定し、プロセッサが、自動運転開始可能地点を車両の車室内に設けられた通知機器を介して車両のドライバへ通知し、プロセッサが、地図情報を参照して、所定のエリアへ進入可能な地点を代替進入地点の候補として少なくとも一つ検出し、プロセッサが、少なくとも一つの代替進入地点の候補を、通知機器を介してドライバへさらに通知する、ことを含む。
【0013】
さらに他の実施形態によれば、地点通知用コンピュータプログラムが提供される。この地点通知用コンピュータプログラムは、所定のエリアについて車両の自動運転制御において利用される情報を含む地図情報を参照して、所定のエリア外にある車両の現在位置から車両の目的地への走行予定ルートに沿って車両が所定のエリアに進入する自動運転開始可能地点を特定し、自動運転開始可能地点を車両の車室内に設けられた通知機器を介して車両のドライバへ通知し、地図情報を参照して、所定のエリアへ進入可能な地点を代替進入地点の候補として少なくとも一つ検出し、少なくとも一つの代替進入地点の候補を、通知機器を介してドライバへさらに通知する、ことを車両に搭載されたプロセッサに実行させるための命令を含む。
【発明の効果】
【0014】
本発明に係る車両制御装置は、車両が自動運転制御を適用可能なエリアに進入する地点をドライバに通知することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】車両制御装置が実装される車両制御システムの概略構成図である。
図2】車両制御装置の一つの実施形態である電子制御装置のハードウェア構成図である。
図3】距離通知処理及び車両制御処理に関する、電子制御装置のプロセッサの機能ブロック図である。
図4】本実施形態による、車両の現在位置から自動運転開始可能地点までの距離算出の概要を説明するための図である。
図5】距離通知処理の動作フローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図を参照しつつ、車両制御装置、及び、車両制御装置上で実行される距離通知方法ならびに距離通知用コンピュータプログラムについて説明する。この車両制御装置は、車両の自動運転制御において利用される情報を含む地図情報(以下、高精度地図と呼ぶ)においてカバーされているエリアにおいて、車両を自動運転制御することが可能となっている。以下では、高精度地図でカバーされているエリアを自動運転可能エリアと呼ぶ。この車両制御装置は、車両の現在位置から目的地までの走行予定ルートと高精度地図とを参照して、走行予定ルートが自動運転可能エリアに進入する地点、すなわち、自動運転制御を適用可能な区間の開始地点(以下、自動運転開始可能地点と呼ぶ)を特定する。そしてこの車両制御装置は、車両の現在位置から自動運転開始可能地点までの距離を走行予定ルートに沿って算出し、その距離をドライバへ通知する。
【0017】
図1は、車両制御装置が実装される車両制御システムの概略構成図である。また図2は、車両制御装置の一つの実施形態である電子制御装置のハードウェア構成図である。本実施形態では、車両10に搭載され、かつ、車両10を制御する車両制御システム1は、GPS受信機2と、ナビゲーション装置3と、カメラ4と、ストレージ装置5と、通知機器6と、車両制御装置の一例である電子制御装置(ECU)7とを有する。GPS受信機2、ナビゲーション装置3、カメラ4、ストレージ装置5及び通知機器6とECU7とは、コントローラエリアネットワークといった規格に準拠した車内ネットワークを介して通信可能に接続される。なお、車両制御システム1は、LiDARあるいはレーダといった、車両10から車両10の周囲に存在する物体までの距離を測定する測距センサ(図示せず)をさらに有していてもよい。さらに、車両制御システム1は、ドライバが車両10の走行を制御する手動運転モードと、ECU7が車両10の走行を制御する自動運転モードの何れが適用されるかを切り替えるための操作スイッチ(図示せず)を有していてもよい。
【0018】
GPS受信機2は、所定の周期ごとにGPS衛星からのGPS信号を受信し、受信したGPS信号に基づいて車両10の自己位置を測位する。そしてGPS受信機2は、所定の周期ごとに、GPS信号に基づく車両10の自己位置の測位結果を、車内ネットワークを介してナビゲーション装置3及びECU7へ出力する。なお、車両制御システム1は、GPS受信機2の代わりに、他の衛星測位システムに準拠した受信機を有していてもよい。
【0019】
ナビゲーション装置3は、自装置上で動作するナビゲーションプログラムに従って、車両10に対するナビゲーション処理を実行する。例えば、ナビゲーション装置3は、ドライバの操作により、ナビゲーションプログラムの起動が指示され、かつ、車両10の目的地が入力されると、車両10の現在位置から目的地までの車両10の走行予定ルートの探索を開始する。そしてナビゲーション装置3は、自装置が記憶するナビゲーション用の地図を参照して、ダイクストラ法といった所定のルート探索手法に従って、探索指示されたときの車両10の現在位置から目的地までの車両10の走行予定ルートを決定する。なお、ナビゲーション装置3は、車両10の現在位置として、例えば、GPS受信機2から受信した、最新の測位結果による車両10の自己位置を利用することができる。
【0020】
ナビゲーション装置3は、車両10の走行予定ルートを求めると、その走行予定ルートを表す情報を、車内ネットワークを介してECU7へ出力する。さらに、ナビゲーション装置3は、自装置が有するディスプレイにその走行予定ルート上の車両10の現在位置周辺の区間を表示するとともに、車室内に設けられたスピーカを介して、走行予定ルートに従ってドライバをナビゲートするための音声を出力してもよい。また、ナビゲーション装置3は、車両10の現在位置が走行予定ルートから外れる度に、走行予定ルートから外れたときの車両10の現在位置から目的地へ向かうように走行予定ルートを修正してもよい。そしてナビゲーション装置3は、走行予定ルートを修正する度に、修正した走行予定ルートを表す情報を、車内ネットワークを介してECU7へ出力する。以下では、特に断りがない限り、元の走行予定ルートと修正した走行予定ルートとを区別することなく、単に走行予定ルートと呼ぶ。また、走行予定ルートを表す情報には、例えば、そのルート上に位置する個々の道路区間の長さ、その個々の道路区間を識別するためのリンクID、あるいは、その個々の道路区間の位置を表す情報が含まれる。また、個々の道路区間の位置を表す情報には、例えば、道路区間の始点及び終点の緯度及び経度が含まれる。
【0021】
カメラ4は、CCDあるいはC-MOSなど、可視光に感度を有する光電変換素子のアレイで構成された2次元検出器と、その2次元検出器上に撮影対象となる領域の像を結像する結像光学系を有する。そしてカメラ4は、例えば、車両10の前方を向くように、例えば、車両10の車室内に取り付けられる。そしてカメラ4は、所定の撮影周期(例えば1/30秒~1/10秒)ごとに車両10の前方領域を撮影し、その前方領域が写った画像を生成する。カメラ4により得られた画像は、カラー画像であってもよく、あるいは、グレー画像であってもよい。なお、車両10には、撮影方向または焦点距離が異なる複数のカメラが設けられてもよい。例えば、車両10の後方へ向けられたカメラが設けられてもよい。
【0022】
カメラ4は、画像を生成する度に、その生成した画像を、車内ネットワークを介してECU7へ出力する。
【0023】
ストレージ装置5は、記憶部の一例であり、例えば、ハードディスク装置、または、不揮発性の半導体メモリを有する。そしてストレージ装置5は、車両の自動運転制御において利用される情報を含む高精度地図を記憶する。自動運転制御において利用される情報には、例えば、自動運転可能エリアに含まれる各道路区間について、その道路区間における道路の構造を表す情報が含まれる。さらに、自動運転制御において利用される情報には、自動運転可能エリアに含まれる各道路区間について、車線区画線などの道路標示、道路標識、及びその道路区間の周囲に位置する構造物(例えば、信号機、道路脇の遮音壁)といった地物を表す情報が含まれる。さらにまた、高精度地図には、自動車専用道のインターチェンジ、料金所、サービスエリアといったランドマークとなる地点に関する情報が含まれてもよい。さらにまた、高精度地図には、自動運転可能エリアに含まれる各道路区間のリンクIDまたはその区間の位置を表す情報が含まれる。さらにまた、高精度地図には、その高精度地図に表される自動運転可能エリアの外縁を示す情報が含まれる。例えば、自動運転可能エリアが矩形の領域である場合、高精度地図には、自動運転可能エリアの北東端及び南西端の緯度及び経度を表す情報が含まれる。したがって、自動運転可能エリアの外縁と個々の道路とが交差する地点のそれぞれが、自動運転可能エリアへ進入可能な地点または自動運転可能エリアから退出可能な地点となる。
【0024】
さらに、ストレージ装置5は、高精度地図の更新処理、及び、ECU7からの高精度地図の読出し要求に関する処理などを実行するためのプロセッサを有していてもよい。そしてストレージ装置5は、例えば、車両10が所定距離だけ移動する度に、無線通信端末(図示せず)を介して地図サーバへ、高精度地図の取得要求を車両10の現在位置とともに送信してもよい。この場合、ストレージ装置5は、地図サーバから無線通信端末を介して車両10の現在位置の周囲の所定の範囲についての高精度地図を受信する。また、ストレージ装置5は、ECU7からの高精度地図の読出し要求を受信すると、記憶している高精度地図またはその一部を、車内ネットワークを介してECU7へ出力する。
【0025】
通知機器6は、車両10の車室内に設けられ、ドライバに対して、音声、文字表示、アイコン表示あるいは画像表示にて所定の通知を行う機器である。そのために、通知機器6は、例えば、スピーカあるいは表示装置の少なくとも何れかを有する。そして通知機器6は、ECU7から受信した通知情報をドライバへ通知する。通知情報には、例えば、車両10の現在位置から自動運転開始可能地点までの距離を表す情報が含まれる。通知機器6は、車両10の現在位置から自動運転開始可能地点までの距離を表す情報を受け取ると、スピーカからの音声、あるいは、表示装置によるその距離を表すメッセージ、アイコンまたは画像の表示により、ドライバへその距離を通知する。
【0026】
ECU7は、車両10の走行を制御する。本実施形態では、ECU7は、自度運転モードが適用される場合、車両10を自動運転制御する。なお、ECU7は、自度運転モードが適用される場合でも、ドライバの挙動が所定の条件を満たしている場合に限り、車両10を自動運転制御してもよい。所定の条件は、例えば、ドライバが車両10の前方の監視を継続していることとすることができる。
【0027】
さらに、ECU7は、車両10の現在位置が高精度地図でカバーされている自動運転可能エリアから外れている場合、走行予定ルートと高精度地図とを参照して、自動運転開始可能地点を特定する。そしてECU7は、車両10の現在位置から自動運転開始可能地点までの距離を走行予定ルートに沿って算出して、その距離を、通知機器6を介してドライバに通知する。
【0028】
図2に示されるように、ECU7は、通信インターフェース21と、メモリ22と、プロセッサ23とを有する。通信インターフェース21、メモリ22及びプロセッサ23は、それぞれ、別個の回路として構成されてもよく、あるいは、一つの集積回路として一体的に構成されてもよい。
【0029】
通信インターフェース21は、ECU7を車内ネットワークに接続するためのインターフェース回路を有する。そして通信インターフェース21は、GPS受信機2から自己位置の測位結果を受信する度に、その測位結果をプロセッサ23へわたす。また、通信インターフェース21は、カメラ4から画像を受信する度に、受信した画像をプロセッサ23へわたす。さらに、通信インターフェース21は、ナビゲーション装置3から走行予定ルートを受信するとその走行予定ルートをプロセッサ23へわたす。さらにまた、通信インターフェース21は、ストレージ装置5から読み込んだ高精度地図をプロセッサ23へわたす。さらにまた、通信インターフェース21は、プロセッサ23から受け取った、ドライバへの通知情報を、車内ネットワークを介して通知機器6へ出力する。
【0030】
メモリ22は、記憶部の他の一例であり、例えば、揮発性の半導体メモリ及び不揮発性の半導体メモリを有する。そしてメモリ22は、ECU7のプロセッサ23により実行される距離通知処理及び車両制御処理において使用される各種のアルゴリズム及び各種のデータを記憶する。例えば、メモリ22は、走行予定ルート、車両10の周囲の画像、自己位置の測位結果、高精度地図及びカメラ4の内部パラメータなどを記憶する。さらに、メモリ22は、距離通知処理または車両制御処理の途中で生成される各種のデータを一時的に記憶する。さらにまた、メモリ22は、走行ルート探索に用いられる、ナビゲーション用の地図を記憶してもよい。ナビゲーション用の地図は、走行ルート探索用地図情報の一例であり、その地図には、その地図がカバーするエリアに含まれる各道路区間を特定する情報(例えば、リンクID)、各道路区間の長さ及び各道路区間の接続関係を表す情報が含まれる。
【0031】
プロセッサ23は、1個または複数個のCPU(Central Processing Unit)及びその周辺回路を有する。プロセッサ23は、論理演算ユニット、数値演算ユニットあるいはグラフィック処理ユニットといった他の演算回路をさらに有していてもよい。そしてプロセッサ23は、距離通知処理及び車両10に対する車両制御処理を実行する。
【0032】
図3は、プロセッサ23の機能ブロック図である。プロセッサ23は、地点特定部31と、距離算出部32と、通知部33と、車両制御部34とを有する。プロセッサ23が有するこれらの各部は、例えば、プロセッサ23上で動作するコンピュータプログラムにより実現される機能モジュールである。あるいは、プロセッサ23が有するこれらの各部は、プロセッサ23に設けられる、専用の演算回路であってもよい。なお、プロセッサ23が有するこれらの各部のうち、地点特定部31、距離算出部32及び通知部33が距離通知処理に関するものであり、一方、車両制御部34が車両制御処理に関する。
【0033】
地点特定部31は、走行予定ルートが生成され、あるいは修正されると、車両10の現在位置が高精度地図でカバーされている自動運転可能エリアに含まれるか否か判定する。そして車両10の現在位置が自動運転可能エリアから外れている場合、地点特定部31は、走行予定ルートと高精度地図とを参照して、走行予定ルートの一部が自動運転可能エリアに含まれるか否か判定する。さらに、走行予定ルートの一部が自動運転可能エリアに含まれる場合、地点特定部31は、自動運転開始可能地点を特定する。なお、地点特定部31は、車両10の現在位置として、例えば、GPS受信機2から受信した、最新の測位結果による車両10の自己位置を利用することができる。あるいは、地点特定部31は、その自己位置の最新の測位時から現時刻までの間に得られた、車両10に設けられた車輪速センサ(図示せず)により測定された車輪速などを用いてその自己位置を補正することで、車両10の現在位置を算出してもよい。
【0034】
地点特定部31は、高精度地図に含まれる、自動運転可能エリアの外縁を示す情報で示される範囲から車両10の現在位置が外れている場合、車両10の現在位置が自動運転可能エリアから外れていると判定する。
【0035】
車両10の現在位置が自動運転可能エリアから外れている場合、地点特定部31は、走行予定ルート上の各道路区間について、車両10の現在位置から順に、自動運転可能エリアに含まれるか否かを判定する。そして地点特定部31は、最初に自動運転可能エリアに含まれる道路区間を特定する。その際、地点特定部31は、各道路区間の位置情報と、自動運転可能エリアの外縁を示す情報とを参照して、各道路区間について自動運転可能エリアに含まれるか否かを判定すればよい。あるいは、地点特定部31は、各道路区間について、その道路区間のリンクIDが、自動運転可能エリアに含まれる何れかの道路区間のリンクIDと一致する場合に、その道路区間が自動運転可能エリアに含まれると判定してもよい。地点特定部31は、走行予定ルート上の何れかの道路区間が自動運転可能エリアに含まれていれば、走行予定ルートの一部が自動運転可能エリアに含まれていると判定する。一方、走行予定ルート上の何れの道路区間も自動運転可能エリアに含まれない場合、地点特定部31は、走行予定ルートは自動運転可能エリアを通過しないと判定する。
【0036】
地点特定部31は、走行予定ルート上で車両10の現在位置からの順序で最初に自動運転可能エリアに含まれる道路区間を特定すると、その特定した道路区間と自動運転可能エリアの外縁とが交差する位置を、自動運転開始可能地点として特定する。あるいは、地点特定部31は、その特定した道路区間と、その道路区間よりも一つ前の道路区間との境界位置を、自動運転開始可能地点として特定してもよい。
【0037】
地点特定部31は、特定した自動運転開始可能地点、及び、車両10の現在位置からの順序で自動運転可能エリアに最初に含まれる道路区間の位置またはリンクIDを、距離算出部32へ通知する。
【0038】
距離算出部32は、車両10の現在位置が自動運転可能エリアから外れている間、所定の周期ごとに、車両10の現在位置から自動運転開始可能地点までの距離(以下、手動運転区間距離と呼ぶ)を走行予定ルートに沿って算出する。本実施形態では、距離算出部32は、車両10の現在位置から自動運転開始可能地点までの途中に含まれる、走行予定ルート上の各道路区間の長さの合計を算出する。さらに、距離算出部32は、その合計に、車両10の現在位置を含む道路区間の走行予定ルート上の端点と車両10の現在位置間の距離と、自動運転開始制御地点を含む道路区間の走行予定ルート上の端点と自動運転開始制御地点間の距離とを加算して、手動運転区間距離を算出すればよい。
【0039】
なお、距離算出部32は、手動運転区間距離を一旦算出すると、それ以降については、車両10が進んだ距離で手動運転区間距離を補正することで、手動運転区間距離を更新してもよい。例えば、距離算出部32は、前回の手動運転区間距離の算出時における車両10の位置から、今回の手動運転区間距離の算出時における車両10の位置までの間に車両10が進んだ距離を前回の手動運転区間距離から減じることで手動運転区間距離を更新すればよい。なお、距離算出部32は、前回と今回の手動運転区間距離の算出の間に車両10が進んだ距離を、例えば、その期間に得られた車輪速などに基づいて算出できる。
【0040】
図4は、本実施形態による、車両10の現在位置から自動運転開始可能地点までの距離算出の概要を説明するための図である。自動運転可能エリア400の外に位置する車両10の現在位置401から目的地404へ向かう車両10の走行予定ルート402に沿って自動運転可能エリア400に進入する地点が探索される。この例では、その地点403において走行予定ルート402が自動運転可能エリア400に進入している。そこで、地点403が、自動運転開始可能地点として特定される。自動運転開始可能地点403が特定されると、走行予定ルート402に沿って、現在位置401から自動運転開始可能地点403までの距離Lが、手動運転区間距離として算出される。
【0041】
距離算出部32は、手動運転区間距離を算出する度に、算出した手動運転区間距離を通知部33へ通知する。
【0042】
通知部33は、距離算出部32から手動運転区間距離について通知される度に、その手動運転区間距離を、通知機器6を介してドライバへ通知する。例えば、通知部33は、手動運転区間距離を表すメッセージ(例えば、「自動運転可能になるまで後○○kmです」といったメッセージ)あるいは手動運転区間距離を表すアイコンを通知機器6が有する表示装置に表示させる。あるいは、通知部33は、手動運転区間距離を表す音声を、通知機器6が有するスピーカに発声させる。なお、通知部33は、手動運転区間距離が所定の単位距離(例えば、1kmあるいは500m)の倍数となる度に、その手動運転区間距離をドライバへ通知してもよい。
【0043】
通知部33は、さらに、高精度地図を参照して、自動運転開始可能地点に最も近い、構造物あるいはランドマークを特定し、特定した構造物あるいはランドマークを、手動運転区間距離とともに、通知機器6を介してドライバへ通知してもよい。これにより、ドライバは、車両10が自動運転開始可能地点に達したことを容易に把握することができる。
【0044】
さらに、目的地が自動運転可能エリア外に位置していることがある。この場合において、車両10が自動運転可能エリア内を走行している間、自動運転制御が適用されていると、通知部33は、走行予定ルート上で自動運転可能エリアから退出する地点よりも所定距離前の位置に車両10が到達したか否か判定する。そして車両10がその退出地点よりも所定距離前の位置に達すると、通知部33は、通知機器6を介して、その退出地点及び手動運転に切り替わることを報知するためのメッセージをドライバへ通知する。
【0045】
図5は、プロセッサ23により実行される、距離通知処理の動作フローチャートである。プロセッサ23は、所定の周期ごと、以下の動作フローチャートに従って距離通知処理を実行すればよい。
【0046】
プロセッサ23の地点特定部31は、車両10の現在位置が高精度地図でカバーされている自動運転可能エリアに含まれるか否か判定する(ステップS101)。車両10の現在位置が自動運転可能エリアに含まれている場合(ステップS101-Yes)、車両10に対する自動運転制御は既に適用可能となっているので、プロセッサ23は距離通知処理を終了する。
【0047】
一方、車両10の現在位置が自動運転可能エリア外である場合(ステップS101-No)、地点特定部31は、走行予定ルートと高精度地図とを参照して、走行予定ルートが自動運転可能エリアに進入する自動運転開始可能地点を特定する(ステップS102)。
【0048】
自動運転開始可能地点が特定されると、プロセッサ23の距離算出部32は、車両10の現在位置から自動運転開始可能地点までの手動運転区間距離を走行予定ルートに沿って算出する(ステップS103)。プロセッサ23の通知部33は、手動運転区間距離を、通知機器6を介してドライバへ通知する(ステップS104)。そしてプロセッサ23は、距離通知処理を終了する。
【0049】
車両制御部34は、車両10の現在位置が自動運転可能エリアに含まれ、かつ、車室内に設けられた操作スイッチ(図示せず)を介してドライバから自動運転モードが適用される操作がなされた場合に、車両10を自動運転制御する。
【0050】
例えば、車両制御部34は、車両10の現在位置から所定距離先までの所定の区間(例えば、500m~1km)における車両10の走行予定軌跡(トラジェクトリ)を1以上設定する。走行予定軌跡は、例えば、所定の区間を車両10が走行する際の各時刻における、車両10の目標位置の集合として表される。そして車両制御部34は、その走行予定軌跡に沿って車両10が走行するように車両10の各部を制御する。
【0051】
車両制御部34は、走行予定ルートに沿うように走行予定軌跡を生成する。すなわち、車両制御部34は、ナビゲーション用の地図または高精度地図を参照して、所定の区間において、走行予定ルート上で右折する地点及び左折する地点が有るか否か判定する。そのような地点が無ければ、車両制御部34は、車両10が現在走行中の車線に沿って走行するよう、走行予定軌跡を設定すればよい。一方、所定の区間において、走行予定ルート上で右折する地点または左折する地点がある場合、車両制御部34は、その地点において車両10が右折または左折できるように走行予定軌跡を設定する。同様に、車両制御部34は、ナビゲーション用の地図または高精度地図を参照して、所定の区間において、走行予定ルート上で車両10が走行中の道路が2以上の分岐路に分岐する地点が有るか否か判定する。そのような地点がある場合、車両制御部34は、その地点において目的地へ向かう分岐路へ向かうように走行予定軌跡を設定する。その際、車両10が右折または左折するために、あるいは、目的地へ向かう分岐路へ進入するために、車両10が走行中の車線と異なる目標車線へ移動する必要がある場合には、車両制御部34は、車両10が目標車線へ車線変更するよう、走行予定軌跡を設定する。なお、車両制御部34は、カメラ4により得られた車両10の周囲の画像に表された地物と、高精度地図に表された車両10の周囲の地物とを照合することで、車両10が現在走行中の車線、及び、車両10の現在位置を特定すればよい。さらに、車両制御部34は、高精度地図を参照して、目標車線を特定すればよい。
【0052】
さらに、車両制御部34は、車両10がその周囲に存在する物体(例えば、他の車両)と衝突しないように走行予定軌跡を設定する。そのために、車両制御部34は、カメラ4により、直近の所定期間において得られた時系列の一連の画像のそれぞれを識別器に入力することで、各画像から車両10の周囲に存在する1以上の物体を検出する。あるいは、車両制御部34は、測距センサ(図示せず)により、直近の所定期間において得られた時系列の一連の測距信号のそれぞれを識別器に入力することで、各測距信号から車両10の周囲に存在する1以上の物体を検出する。車両制御部34は、そのような識別器として、例えば、コンボリューショナルニューラルネットワーク(以下、単にCNNと呼ぶ)型のアーキテクチャを持つ、いわゆるディープニューラルネットワーク(以下、単にDNNと呼ぶ)を使用することができる。このような識別器は、検出対象となる物体が表された画像あるいは測距信号を多数用いて、誤差逆伝搬法といった学習手法に従って予め学習される。車両制御部34は、各画像あるいは各測距信号から検出された個々の物体に対して所定の追跡処理を実行することで各物体を追跡して直近の所定期間における各物体の軌跡を求める。そして車両制御部34は、求めた軌跡に対して所定の予測処理を適用することで、物体ごとに、その物体が通ると想定される予測軌跡を推定する。車両制御部34は、追跡中の各物体の予測軌跡に基づいて、何れの物体についても所定時間先までの追跡中の物体のそれぞれと車両10間の距離の予測値が所定距離以上となるように、車両10の走行予定軌跡を設定する。
【0053】
車両制御部34は、走行予定軌跡を設定すると、車両10がその走行予定軌跡に沿って走行するように車両10の各部を制御する。例えば、車両制御部34は、走行予定軌跡、及び、車速センサ(図示せず)により測定された車両10の現在の車速に従って、車両10の加速度を求め、その加速度となるようにアクセル開度またはブレーキ量を設定する。そして車両制御部34は、設定されたアクセル開度に従って燃料噴射量を求め、その燃料噴射量に応じた制御信号を車両10のエンジンの燃料噴射装置へ出力する。あるいは、車両制御部34は、設定されたアクセル開度に応じた電力がモータに供給されるように、モータの駆動回路を制御する。あるいはまた、車両制御部34は、設定されたブレーキ量に応じた制御信号を車両10のブレーキへ出力する。
【0054】
さらに、車両制御部34は、車両10が走行予定軌跡に沿って走行するために車両10の進路を変更する場合には、その走行予定軌跡に従って車両10の操舵角を求める。そして車両制御部34は、その操舵角に応じた制御信号を、車両10の操舵輪を制御するアクチュエータ(図示せず)へ出力する。
【0055】
以上に説明してきたように、この車両制御装置は、車両の現在位置から目的地までの走行予定ルートと高精度地図とを参照して、走行予定ルート上において高精度地図でカバーされている自動運転可能エリアに進入する自動運転開始可能地点を特定する。そしてこの車両制御装置は、車両の現在位置から自動運転開始可能地点までの手動運転区間距離を走行予定ルートに沿って算出し、算出した手動運転区間距離をドライバへ通知する。このように、この車両制御装置は、走行予定ルートと高精度地図とを参照して自動運転開始可能地点を特定するので、自動運転開始可能地点を正確に特定することができる。そのため、この車両制御装置は、手動運転区間距離を正確に算出することができ、その結果として、自動運転開始可能地点までの正確な距離をドライバに通知することができる。そのため、ドライバは、車両の運転を、自動運転開始可能地点を過ぎたところで遅滞なくECUに任せることができる。
【0056】
変形例によれば、地点特定部31及び距離算出部32は、車両10の現在位置から自動運転可能エリアまでの距離が手動運転区間距離よりも短い自動運転可能エリアへの進入地点(以下、代替進入地点と呼ぶ)を探索してもよい。
【0057】
例えば、地点特定部31は、車両10の現在位置及び高精度地図を参照して、現在位置から手動運転区間距離の範囲内に存在する自動運転可能エリアへの一つ以上の進入地点を、代替進入地点の候補として検出する。距離算出部32は、検出された代替進入地点の候補のそれぞれについて、ナビゲーション用の地図を参照して、ダイクストラ法といった所定のルート探索手法に従って車両10の現在位置からその代替進入地点の候補までのルートを探索する。さらに、距離算出部32は、検出された代替進入地点の候補のそれぞれについて、その代替進入地点の候補から目的地までのルートを探索する。そして距離算出部32は、検出された代替進入地点の候補のそれぞれについて、車両10の現在位置からその代替進入地点の候補までのルートに沿った距離を算出する。距離算出部32は、算出された距離が手動運転区間距離よりも短い代替進入地点の候補の何れかを、代替進入地点とするとともに、現在位置から代替進入地点を経て目的地へ向かうルートを代替走行予定ルートとする。そして通知部33は、代替進入地点が見つかったことを表すメッセージととともに、代替進入地点、及び、車両10の現在位置から代替進入地点までの距離を、通知機器6を介してドライバへ通知する。なお、車両10の現在位置からの距離が手動運転区間距離よりも短い代替進入地点の候補が複数存在する場合、距離算出部32は、それら複数の候補のうち、車両10の現在位置からの距離が最も短い候補を、代替進入地点とする。あるいは、距離算出部32は、それら複数の候補のうち、車両10の現在位置からその代替進入地点の候補を経由して目的地まで向かうルート全体の長さが最も短くなる候補を、代替進入地点としてもよい。あるいはまた、通知部33は、複数の代替進入地点の候補のそれぞれについて、その代替進入地点の候補、及び、車両10の現在位置から代替進入地点の候補までの距離を、通知機器6を介してドライバへ通知してもよい。
【0058】
ドライバが代替進入地点を選択する操作を、車室内に設けられた操作スイッチ(図示せず)を介して実行すると、プロセッサ23は、代替進入地点を経由する代替走行予定ルートを、通信インターフェース21を介してナビゲーション装置3へ通知してもよい。そしてナビゲーション装置3は、通知された代替走行予定ルートに沿って車両10をナビゲートしてもよい。さらに、車両10が代替進入地点に到達してドライバが操作スイッチを介して自動運転モードを適用する操作を行うと、車両制御部34は、代替走行予定ルートに沿って車両を自動運転制御する。また、上記の実施形態と同様に、目的地が自動運転可能エリア外に位置する場合、通知部33は、代替走行予定ルート上で自動運転可能エリアから退出する地点よりも所定距離前の位置に車両10が到達したか否か判定する。そしてその位置が車両10が到達すると、通知部33は、通知機器6を介してドライバに、その退出地点及び手動運転に切り替わるメッセージをドライバへ通知する。
【0059】
再度図4を参照すると、車両10の現在位置401から自動運転可能エリア400への進入地点411までの距離L’の方が、現在位置401から自動運転開始可能地点403までの手動運転区間距離Lよりも短くなっている。そこで、進入地点411が代替進入地点として特定されるとともに、現在位置401から代替進入地点411を経て目的地404へ向かう代替走行予定ルート412が特定される。そして、代替進入地点411、及び、代替走行予定ルート412に沿った現在位置401から代替進入地点411までの距離L’がドライバへ通知される。
【0060】
この変形例によれば、ドライバは、自度運転開始地点よりも近い、自動運転可能エリアへ進入できる代替進入地点の存在を知ることができる。そのため、ドライバは、代替進入地点へ向けて車両10を運転することで、よりも早期に自動運転制御を利用することができるので、ドライバの利便性が向上する。
【0061】
また、車両10の現在位置から目的地までの走行予定ルートが自動運転可能エリアを全く通らないことがある。そこで他の変形例によれば、このような場合、地点特定部31は、車両10の現在位置及び高精度地図を参照して、車両10の現在位置から所定距離以下の範囲内で自動運転可能エリアへ進入可能な地点を進入地点の候補として一つ以上検出してもよい。そして上記の変形例と同様に、距離算出部32は、検出された各進入地点の候補について、ナビゲーション用の地図を参照して、所定のルート探索手法に従って車両10の現在位置からその進入地点の候補までのルート及びその進入地点の候補から目的地までのルートを探索する。さらに、距離算出部32は、検出された進入地点の候補のそれぞれについて、車両10の現在位置からその進入地点の候補までのルートに沿った距離を算出する。そして距離算出部32は、車両10の現在位置からの距離が最も短い候補を、進入地点とするとともに、現在位置から進入地点を経て目的地へ向かうルートを代替走行予定ルートとすればよい。そして通知部33は、自動運転可能エリアへの進入地点が見つかったことを表すメッセージととともに、その進入地点及び車両10の現在位置からその進入地点までの距離を、通知機器6を介してドライバへ通知する。あるいは、通知部33は、複数の進入地点の候補のそれぞれについて、その進入地点の候補、及び、車両10の現在位置からその進入地点の候補までの距離を、通知機器6を介してドライバへ通知してもよい。
【0062】
この変形例によれば、車両制御装置は、本来の走行予定ルートでは自動運転制御を適用できない場合でも、少なくとも一部の区間において自動運転制御を適用可能な代替走行予定ルートをドライバに提示することができる。そのため、ドライバの利便性が向上する。
【0063】
さらに、目的地までの走行予定ルートが設定されていない場合も、地点特定部31は、上記の変形例と同様に、所定の周期ごとに、自動運転可能エリアへ進入可能な地点を進入地点の候補として一つ以上検出してもよい。その際、地点特定部31は、車両10の現在位置及び高精度地図を参照して、車両10の現在位置から所定距離以下の範囲内で進入地点の候補を検出すればよい。さらに、距離算出部32は、上記の変形例と同様に、検出された進入地点の候補について、ナビゲーション用の地図を参照して、車両10の現在位置からその進入地点の候補までのルート及びその進入地点の候補から目的地までのルートを含む走行予定ルートを探索してもよい。そして距離算出部32は、車両10の現在位置からの距離が最も短い候補を、進入地点とするとともに、現在位置から進入地点を経て目的地へ向かうルートを代替走行予定ルートとすればよい。そして通知部33は、自動運転可能エリアへの進入地点が見つかったことを表すメッセージととともに、進入地点及び車両10の現在位置から進入地点までの距離を、通知機器6を介してドライバへ通知してもよい。あるいは、複数の進入地点の候補が見つかった場合、距離算出部32は、それぞれの候補を進入地点としてもよい。そして通知部33は、複数の進入地点のそれぞれについて、その進入地点、及び、車両10の現在位置からその進入地点までの距離を、通知機器6を介してドライバへ通知してもよい。
【0064】
この変形例によれば、車両制御装置は、走行予定ルートが設定されていない場合でも、少なくとも一部の区間において自動運転制御を適用可能な走行予定ルートを新たに生成してドライバに提示することができる。そのため、ドライバの利便性が向上する。
【0065】
また、上記の実施形態または変形例による、ECU7のプロセッサ23の距離通知処理に関する機能を実現するコンピュータプログラムは、半導体メモリ、磁気記録媒体または光記録媒体といった、コンピュータ読取可能な可搬性の記録媒体に記録された形で提供されてもよい。
【0066】
以上のように、当業者は、本発明の範囲内で、実施される形態に合わせて様々な変更を行うことができる。
【符号の説明】
【0067】
1 車両制御システム
10 車両
2 GPS受信機
3 ナビゲーション装置
4 カメラ
5 ストレージ装置
6 通知機器
7 電子制御装置(ECU)
21 通信インターフェース
22 メモリ
23 プロセッサ
31 地点特定部
32 距離算出部
33 通知部
34 車両制御部
図1
図2
図3
図4
図5