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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024096215
(43)【公開日】2024-07-12
(54)【発明の名称】空間浮遊映像表示装置
(51)【国際特許分類】
   G02B 30/56 20200101AFI20240705BHJP
   G02B 5/136 20060101ALI20240705BHJP
   G06F 3/04815 20220101ALI20240705BHJP
   G06F 3/01 20060101ALI20240705BHJP
   G06F 3/16 20060101ALI20240705BHJP
   G02B 5/30 20060101ALN20240705BHJP
【FI】
G02B30/56
G02B5/136
G06F3/04815
G06F3/01 510
G06F3/16 650
G02B5/30
【審査請求】有
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024070998
(22)【出願日】2024-04-25
(62)【分割の表示】P 2021061560の分割
【原出願日】2021-03-31
(71)【出願人】
【識別番号】000005810
【氏名又は名称】マクセル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002066
【氏名又は名称】弁理士法人筒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼橋 宏明
(72)【発明者】
【氏名】平田 浩二
(72)【発明者】
【氏名】藤田 浩司
(72)【発明者】
【氏名】杉山 寿紀
(57)【要約】
【課題】小型で可搬型の空間浮遊映像表示装置を提供する。本発明によれば、持続可能な開発目標の「3すべての人に健康と福祉を」、「9産業と技術革新の基盤をつくろう」に貢献する。
【解決手段】空間浮遊映像表示装置は、車両内のボトルホルダーに設置可能である筒形状の筐体106を備える。筐体106内には、映像表示装置1と、ビームスプリッタ(偏光分離部材)101と、再帰反射部材2および位相差板(λ/4板21)と、平面ミラー4とを備える。空間浮遊映像表示装置は、映像表示装置1からの特定偏波の映像光を、平面ミラー4で反射させて、ビームスプリッタ101で透過させ、再帰反射部材2で反射され位相差板を通じて偏光変換された映像光をビームスプリッタ101で反射させ、窓部605を透過した映像光によって、外部に空間浮遊映像3を表示する。
【選択図】図6C
【特許請求の範囲】
【請求項1】
空間浮遊映像を形成する空間浮遊映像表示装置であって、
筒形状の筐体と、
前記筐体の一部に設けられ、前記空間浮遊映像を形成するための映像光を透過させる窓部と、
前記筐体の内部に設けられ、光源装置、及び前記光源装置からの光に基づいて映像光を生成して出射する表示パネルを有する映像表示装置と、
前記筐体の内部に設けられ、前記映像表示装置からの映像光を再帰反射する再帰反射部材と、
前記筐体の内部に設けられ、前記再帰反射部材からの映像光を前記窓部へ向けて反射する偏光分離部材と、
前記筐体に設けられる制御部と、
を備え、
前記制御部は、マイクから入力した音声を受信し、前記空間浮遊映像に関連付けられた前記音声を読み出して出力する、
空間浮遊映像表示装置。
【請求項2】
請求項1に記載の空間浮遊映像表示装置において、
前記制御部は制御基板を有し、
前記制御基板は前記映像表示装置の下に設けられている、
空間浮遊映像表示装置。
【請求項3】
請求項1に記載の空間浮遊映像表示装置において、
前記制御部は前記マイクから入力した音声を音声認識し、認識した所定の指示に対応した処理を行う、
空間浮遊映像表示装置。
【請求項4】
請求項1に記載の空間浮遊映像表示装置において、
前記筐体に前記マイクを搭載している、
空間浮遊映像表示装置。
【請求項5】
請求項1に記載の空間浮遊映像表示装置において、
前記筐体にスピーカを搭載しており、
前記スピーカから前記空間浮遊映像に関連付けられた前記音声をユーザに対して出力する、
空間浮遊映像表示装置。
【請求項6】
請求項1に記載の空間浮遊映像表示装置において、
前記筐体に設けられた入出力端子を備え、
外部から前記入出力端子を介して前記筐体に収納された充電池に電源が供給される、
空間浮遊映像表示装置。
【請求項7】
請求項1に記載の空間浮遊映像表示装置において、
前記筐体に設けられた入出力端子を備え、
外部から前記入出力端子を介して前記映像表示装置に対し信号が供給される、
空間浮遊映像表示装置。
【請求項8】
請求項1に記載の空間浮遊映像表示装置において、
前記筒形状の筐体は、車両内のボトルホルダーに少なくとも一部が収納可能である、
空間浮遊映像表示装置。
【請求項9】
請求項1に記載の空間浮遊映像表示装置において、
前記窓部の外側に蓋を備える、
空間浮遊映像表示装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空間浮遊映像表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
空間浮遊映像表示装置の一例として、特許文献1は「情報処理装置のCPUは、空気中に形成される像へのユーザの接近方向を検知する接近方向検知部と、入力が検知された座標を検知する入力座標検知部と、操作の受け付けを処理する操作受付部と、受け付けた操作に応じて操作画面を更新する操作画面更新部とを備える。CPUは、ユーザが予め定めた方向から像に接近する場合、ユーザの動きを操作として受け付け、操作に応じた処理を実行する(要約抜粋)。」とする記載を開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2019-128722号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述した特許文献1の空間浮遊映像表示装置は、空間浮遊映像の操作性を向上させることはできても、空間浮遊映像の見た目の解像度やコントラストの向上については考慮されておらず、更なる映像品質の向上が求められているという実情がある。
【0005】
ここで、空間浮遊映像表示装置の用途は幅広く、サイネージ(広告用看板)として用いれば、従来の平面ディスプレイにはない「空間に映像が浮かんで表示される」という珍しさから、多くの人の関心を引き寄せるという効果がある。また、特許文献1にも記載されたように、空間浮遊映像を何等かの操作を行うためのヒューマン・インタフェースとして用いれば、無接触という特徴から、押しボタン等の接触部分を媒介としたウイルス感染を防止する効果を得ることができる。
【0006】
一方、従来では、空間浮遊映像表示装置を、可搬型、すなわちポータブルとして用いるという実用例はなかった。例えば、空間浮遊映像表示装置を片手で簡単に持ち運びができ、空間浮遊映像をユーザが好みの場所で好みの時間に表示できれば、エンタテイメントシステムの一部として用いることができるのみならず、何等かの情報告知等においても空間浮遊映像は大きくその用途を広げる可能性がある。
【0007】
特に、空間浮遊映像装置を自動車等の車両内に手軽に設置することができれば、空間浮遊映像として表示される人などの映像(以下、コンシェルジュ)が、例えば、道案内やPOI(Point Of Interest)情報を運転者や同乗者に伝えることができる。また逆に、運転者や同乗者が、上記コンシェルジュに対して、エアコンの温度設定や音楽の選曲などを音声等による手段で指示し、それに対して、上記コンシェルジュが映像と音声で応答することができる。そうすれば、通常のボタン操作による指示よりも、見た目にも楽しく、より安全で快適な運転支援が可能となる。
【0008】
本発明の目的は、視認性の高い好適な空間浮遊映像を表示できる空間浮遊映像表示装置を提供すること、さらに、車載などにも好適な、小型(コンパクト)で可搬型(ポータブル)の空間浮遊映像表示装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、例えば特許請求の範囲に記載の構成を採用する。本願は上記課題を解決する手段を複数含んでいるが、その一例を挙げるならば、以下の通りである。空間浮遊映像表示装置は、筒形状の筐体と、筐体の一部に設けられ、空間浮遊映像を形成するための映像光を透過させる窓部と、筐体の内部に設けられ、光源装置、及び光源装置からの光に基づいて映像光を生成して出射する表示パネルを有する映像表示装置と、筐体の内部に設けられ、映像表示装置からの映像光を再帰反射する再帰反射部材と、筐体の内部に設けられ、再帰反射部材からの映像光を前記窓部へ向けて反射する偏光分離部材と、筐体に設けられる制御部と、を備えている。制御部は、マイクから入力した音声を受信し、空間浮遊映像に関連付けられた音声を読み出して出力する。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、好適で視認性の高い空間浮遊映像を表示することができる空間浮遊映像表示装置を実現でき、さらに、空間浮遊映像表示装置を小型かつ軽量な可搬型とすることで、空間浮遊映像表示装置をいつでもどこでも使用することができ、特に、車両内で使用することを考慮して、車両内のボトルホルダー等に設置・収納可能な形状とすることで、ユーザにとっての利便性を大きく向上することに寄与できる。上記した以外の課題、構成および効果は、以下の実施形態の説明により明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の一実施例に係る空間浮遊映像表示装置の使用形態の一例を示す図である。
図2】本発明の一実施例に係る空間浮遊映像表示装置の主要部構成と再帰反射部構成の一例を示す図である。
図3】空間浮遊映像表示装置の課題を示す図である。
図4】再帰反射部材の表面粗さと再帰反射像のボケ量の関係を表す特性図である。
図5】空間浮遊映像表示装置の課題を示す図である。
図6A】本発明の一実施例に係る空間浮遊映像表示装置の主要部構成の他の実施を示す図である。
図6B】本発明の一実施例に係る、ボトルホルダーに設置が可能な空間浮遊映像表示装置の外観を示す図である。
図6C】本発明の一実施例に係る、ボトルホルダーに設置が可能な空間浮遊映像表示装置の主要部構成を示す図である。
図6D】本発明の一実施例に係る、ボトルホルダーに設置された空間浮遊映像表示装置の状態の例を示す図である。
図6E】空間浮遊映像の例を示す図である。
図6F】本発明の一実施例に係る、ボトルホルダーに設置が可能な空間浮遊映像表示装置の蓋の構成例を示す図である。
図7】光源装置の具体的な構成の一例を示す断面図である。
図8】光源装置の具体的な構成の一例を示す断面図である。
図9】光源装置の具体的な構成の一例を示す断面図である。
図10】本発明の一実施例に係る空間浮遊映像表示装置の主要部を示す配置図である。
図11】本発明の一実施例に係る空間浮遊映像表示装置を構成する映像表示装置の構成を示す断面図である。
図12】光源装置の具体的な構成の一例を示す断面図である。
図13】光源装置の具体的な構成の一例を示す断面図である。
図14】光源装置の具体的な構成の一例を示す断面図である。
図15】映像表示装置の拡散特性を説明するための説明図である。
図16】映像表示装置の拡散特性を説明するための説明図である。
図17】本発明の一実施例に係る空間浮遊映像表示装置を構成する映像表示装置の構成を示す断面図である。
図18】本発明の一実施例に係る光源装置の具体的な構成の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、本発明は実施例の開示に限定されず、本明細書に開示される技術的思想の範囲内において当業者による様々な変更および修正が可能である。また、本発明を説明するための全図において、同一の機能を有するものには、同一の符号を付与し、繰り返しの説明を省略する場合がある。
【0013】
以下の実施例は、例えば、大面積な映像発光源からの映像光による映像を、ショーウィンドのガラス等の空間を仕切る透明部材を介して透過して、店舗の空間の内部または外部に空間浮遊映像として表示することが可能な空間浮遊映像表示装置に関する。また、かかる空間浮遊映像表示装置を複数用いて構成される大規模なデジタルサイネージシステムに関する。
【0014】
以下の実施例によれば、例えば、ショーウィンドのガラス面や光透過性の板材上に高解像度な映像情報を空間浮遊した状態で表示可能となる。この時、以下の実施例によれば、出射する映像光の発散角を小さく、即ち鋭角とし、さらに特定の偏波に揃えることで、再帰反射部材に対して正規の反射光だけを効率良く反射させるため、光の利用効率が高く、従来の再帰反射方式での課題となっていた主空間浮遊映像の他に発生するゴースト像を抑えることができ、鮮明な空間浮遊映像を得ることができる。また本実施例の光源を含む装置により、消費電力を大幅に低減可能な、新規で利用性に優れた空間浮遊映像表示装置を提供できる。また、例えば、車両のフロントガラスやリアガラスやサイドガラスを含むシールドガラスを介して、車両外部において視認可能である、いわゆる、一方向性の空間浮遊映像表示が可能な空間浮遊映像表示装置を提供できる。
【0015】
一方、従来の空間浮遊映像表示装置では、高解像度なカラー表示映像源として有機ELパネルや液晶表示パネルを再帰反射部材と組合せる。従来技術による空間浮遊映像表示装置では、映像光が広角で拡散するため、再帰反射部が6面体であるために正規に反射する反射光の他に、図3に示すように再帰反射部材2(再帰反射シート)に斜めから入射する映像光よってゴースト像が発生し空間浮遊映像の画質を損ねていた。従来技術として示した再帰反射部材(再帰反射部2a)は6面体であるために、図5に示すように空間浮遊映像の正規像R1の他に第1ゴースト像G1からから第6ゴースト像G6まで複数のゴースト像が発生する。このため観視者以外にも同一空間浮遊映像であるゴースト像を監視されてしまいセキュリティ上大きな課題があった。
【0016】
また後述する狭角な指向特性を有する映像表示装置からの映像光を再帰反射部材で反射させ得られた空間浮遊映像は、上述したゴースト像の他に図4に示したように液晶表示パネルの画素ごとにボケが視認された。
【0017】
<空間浮遊映像表示装置(1)>
図1は、本発明の一実施例に係る空間浮遊映像表示装置の使用形態の一例を示す。図1(A)は、本実施例に係る空間浮遊映像表示装置の全体構成を示す。例えば、店舗等においては、ガラス等の透光性の部材(透明部材)であるショーウィンド(ウィンドガラス105)により空間が仕切られている。本実施例の空間浮遊情報表示装置によれば、かかる透明部材を透過して、空間浮遊映像を店舗の空間の外部に対して一方向に表示することが可能である。具体的には、映像表示装置1から狭角な指向特性でかつ特定偏波の光が、映像光束として出射し、再帰反射部材2に一旦入射し、再帰反射してウィンドガラス105を透過して、店舗の外側に、実像である空中像(空間浮遊映像3)を形成する。図1では、ウィンドガラス105の内側(店舗内)を奥行方向にしてその外側(例えば、歩道)が手前になるように示している。他方、ウィンドガラス105に特定偏波を反射する手段を設けることで反射させ、店内の所望の位置に空中像を形成することもできる。
【0018】
図1(B)は、上述した映像表示装置1の構成を示すブロック図である。映像表示装置1は、空中像の原画像を表示する映像表示部1aと、入力された映像をパネルの解像度に合わせて変換する映像制御部1bと、映像信号を受信する映像信号受信部1cと、受信アンテナ1dとを含んでいる。映像信号受信部1cは、USB(Universal Serial Bus:登録商標)入力やHDMI(High-Definition Multimedia Interface:登録商標)入力など有線での入力信号への対応と、Wi-Fi(Wireless Fidelity:登録商標)などの無線入力信号への対応を行い、映像受信・表示装置として単独で機能するものでもあり、タブレット、スマートフォンなどからの映像情報を表示することもできる。更にステックPCなどを接続すれば計算処理や映像解析処理などの能力を持たせることもできる。
【0019】
図2は、本発明の一実施例に係る空間浮遊映像表示装置の主要部構成と再帰反射部構成の一例を示す。図2を用いて、空間浮遊映像表示装置の構成をより具体的に説明する。図2(A)に示すように、ガラス等の透明部材100の斜め方向には、特定偏波の映像光を狭角に発散させる映像表示装置1を備える。映像表示装置1は、液晶表示パネル11と狭角な拡散特性を有する特定偏波の光を生成する光源装置13とを備えている。
【0020】
映像表示装置1からの特定偏波の映像光は、透明部材100に設けた特定偏波の映像光を選択的に反射する膜を有する偏光分離部材101で反射され、再帰反射部材2に入射する。図2中の例では、偏光分離部材101は、シート状に形成されて透明部材100に粘着されている。再帰反射部材2の映像光入射面にはλ/4板21が設けられている。映像光は、再帰反射部材2への入射の際と出射の際との2回、λ/4板21を通過させられることで、特定偏波から他方の偏波へ偏光変換される。ここで、特定偏波の映像光を選択的に反射する偏光分離部材101は、偏光変換された他方の偏波の偏光については透過する性質を有するので、偏光変換後の特定偏波の映像光は、偏光分離部材101を透過する。偏光分離部材101を透過した映像光が、透明部材100の外側に、実像である空間浮遊映像3を形成する。
【0021】
なお、空間浮遊映像3を形成する光は、再帰反射部材2から空間浮遊映像3の光学像へ収束する光線の集合であり、これらの光線は、空間浮遊映像3の光学像を通過後も直進する。よって、空間浮遊映像3は、一般的なプロジェクタなどでスクリーン上に形成される拡散映像光とは異なり、高い指向性を有する映像である。よって、図2の構成では、矢印Aの方向からユーザが視認する場合には、空間浮遊映像3は明るい映像として視認されるが、矢印Bの方向から他の人物が視認する場合には、空間浮遊映像3は映像として一切視認できない。この特性は、高いセキュリティが求められる映像や、ユーザに正対する人物には秘匿したい秘匿性の高い映像を表示するシステムに採用する場合等に非常に好適である。
【0022】
なお、再帰反射部材2の性能によっては、反射後の映像光の偏光軸が不揃いになることがある。この場合、偏光軸が不揃いになった一部の映像光は、上述した偏光分離部材101で反射され映像表示装置1に戻る。この光が、映像表示装置1を構成する液晶表示パネル11の映像表示面で再反射し、ゴースト像を発生させ、空間浮遊映像3の画質を低下させる可能性がある。そこで、本実施例では、映像表示装置1の映像表示面に吸収型偏光板12を設ける。映像表示装置1から出射する映像光については吸収型偏光板12を透過させ、偏光分離部材101から戻ってくる反射光については吸収型偏光板12で吸収させる。これにより、上記再反射を抑制でき、空間浮遊映像のゴースト像による画質低下を防止できる。
【0023】
上述した偏光分離部材101は、例えば反射型偏光板や特定偏波を反射させる金属多層膜などで形成すればよい。
【0024】
次に、図2(B)に、代表的な再帰反射部材2として、今回の検討に用いた日本カ-バイト工業株式会社製の再帰反射部材2の表面形状を示す。再帰反射部材2において、規則的に配列された6角柱からなる再帰反射部2aの内部に入射した光線は、6角柱の壁面と底面で反射され再帰反射光として、入射光に対応した方向に出射して、図5に示す正規像R1を形成する。一方、図3に示したように、映像表示装置1からの映像光のうちで再帰反射部材2に斜めに入射した映像光によっては、正規像R1とは別にゴースト像(図5中のゴースト像G1~G6)が形成される。
【0025】
そこで、本実施例の空間浮遊映像表示装置は、本発明の映像表示装置1に表示した映像に基づき、ゴースト像を形成することなく、実像である空間浮遊映像3を表示する。この空間浮遊映像3の解像度は、液晶表示パネル11の解像度の他に、図2(B)で示す再帰反射部材2の再帰反射部2aの外径DとピッチPに大きく依存する。例えば、7インチのWUXGA(1920×1200画素)の液晶表示パネル11を用いる場合には、1画素(1トリプレット)が約80μmであっても、例えば再帰反射部2aの直径Dが240μmでピッチが300μmであれば、空間浮遊映像3の1画素は300μm相当となる。このため、空間浮遊映像3の実効的な解像度は、1/3程度に低下する。そこで、空間浮遊映像3の解像度を映像表示装置1の解像度と同等にするためには、再帰反射部2aの直径DとピッチPを液晶表示パネルの1画素に近づけることが望まれる。他方、再帰反射部材2と液晶表示パネル11の画素によるモアレの発生を抑えるためには、それぞれのピッチ比を1画素の整数倍から外して設計すると良い。また、形状は、再帰反射部2aのいずれの一辺も液晶表示パネル11の1画素のいずれの一辺と重ならないように配置した形状とすると良い。
【0026】
発明者は、視認性を向上するために許容できる空間浮遊映像の像のボケ量lと画素サイズLとの関係を画素ピッチ40μmの液晶表示パネルと本願発明の狭発散角(発散角15°)の光源とを組み合わせた映像表示装置1を作成し実験により求めた。図4に、その実験結果を示す。視認性が悪化するボケ量lは、画素サイズLの40%以下が望ましく、15%以下であれば殆ど目立たないことが分かった。この場合のボケ量lが許容量となる反射面の面粗さは、測定距離40μmの範囲において平均粗さが160nm以下であり、より目立たないボケ量lとなるには、反射面の面粗さは120nm以下が望ましいことが分かった。このため、前述した再帰反射部材2の表面粗さを軽減するとともに、反射面を形成する反射膜とその保護膜を含めた面粗さを上述した値以下とすることが望まれる。
【0027】
一方、再帰反射部材2を低価格で製造するためには、ロールプレス法を用いて成形すると良い。具体的には、再帰反射部2aを整列させフィルム上に賦形する方法である。この方法では、賦形する形状の逆形状をロール表面に形成し、固定用のベース材の上に紫外線硬化樹脂を塗布しロール間を通過させることで、必要な形状を賦形し紫外線を照射して硬化させ、所望形状の再帰反射部材2を得る。
【0028】
本発明の映像表示装置1は、液晶表示パネル11と後述する狭角な拡散特性を有する特定偏波の光を生成する光源装置13とにより、上述した再帰反射部材2に対して斜めから映像が入射する可能性が小さく、ゴースト像の発生を防止できゴースト像が発生したとしてもゴースト像の輝度が低いという、構造的に優れたシステムが実現できる。
【0029】
<空間浮遊映像表示装置(2)>
図6Aは、本発明の一実施例に係る空間浮遊映像表示装置の主要部構成の他の例(第二例)を示す。映像表示装置1は、映像表示素子としての液晶表示パネル11と、狭角な拡散特性を有する特定偏波の光を生成する光源装置13とを備えて構成される。液晶表示パネル11は、画面サイズが5インチ程度の小型のものから、80インチを超える大型な液晶表示パネルまで、選択されたサイズの液晶表示パネルによって構成される。液晶表示パネル11からの映像光を、例えば反射型偏光板のような偏光分離部材101によって、再帰反射部材2に向けて反射させる。
【0030】
再帰反射部材2の光入射面にはλ/4板21が設けられ、λ/4板21で映像光を2度通過させることで偏光変換し、すなわち特定偏波(一方の偏波)を他方の偏波に変換する。これにより、偏光変換後の他方の偏波については、偏光分離部材101を透過させ、透明部材100の外側に、実像である空間浮遊映像3を形成し表示する。透明部材100の外光入射面には、吸収型偏光板112が設けられる。上述した偏光分離部材101では、光が再帰反射することで偏光軸が不揃いになることがあるため、一部の映像光については反射して映像表示装置1の方に戻る。この光が再度、映像表示装置1を構成する液晶表示パネル11の映像表示面で反射することで、前述のゴースト像を発生させ、空間浮遊映像3の画質を著しく低下させる。そこで、本実施例では、映像表示装置1の映像表示面に吸収型偏光板12を設けている。吸収型偏光板12で、映像光については透過させ、上述した反射光を吸収させることで、空間浮遊映像3のゴースト像による画質低下を防止する。
【0031】
この空間浮遊映像表示装置のセットの外部の太陽光や照明光等の外光による画質低下を軽減するためには、透明部材100の表面に吸収型偏光板112を設けると良い。さらに、再帰反射部材2に外光が入射すると強力なゴースト像を発生させるため、第4遮光部材25によって外光の入射を妨げる構成とする。偏光分離部材101は、反射型偏光板や特定偏波を反射させる金属多層膜から形成される。
【0032】
偏光分離部材101と液晶表示パネル11の間には、空間浮遊映像3を形成する正規映像光(図5の正規像R1)以外の斜め映像光を遮光する第2遮光部材23及び第3遮光部材24が併設されている。また、再帰反射部材2と偏光分離部材101の間にも、正規映像光以外の斜め映像光を遮光する第1遮光部材22が設けられている。さらに、上述したように、外光が直接に再帰反射部材2に入射しないように、第4遮光部材25も併設されて、ゴースト像を発生させる斜め光を遮光する。この結果、ゴースト像の発生を抑制できる。
【0033】
発明者は、実験により、液晶表示パネル11と偏光分離部材101との空間に第3遮光部材24と第2遮光部材23を併設することで、遮光の効果を高められることを確認した。この実験では、第2遮光部材23及び第3遮光部材24の内径は、空間浮遊映像3を形成する正規映像光束が通過する領域に対して面積で110%とすることで、部品精度を機械公差の範囲で作成し組み立てることができた。ゴースト像の発生をさらに軽減するには、前述の遮光部材の正規映像光束が通過する領域に対して104%以下とすれば、ゴースト像の発生を実用上問題のないレベルに抑えることができた。一方、再帰反射部材2と偏光分離部材101の間に設けた第1遮光部材22は、第1遮光部材22と再帰反射部材2の距離L1を再帰反射部材2と偏光分離部材101の距離に対して50%以下とすれば、ゴースト像の発生を更に軽減でき、30%以下では、目視では実用上問題のないレベルまで軽減できた。さらに、再帰反射部材2を囲むように設けた第4遮光部材25と第1遮光部材22と第2遮光部材23及び第3遮光部材24を併設することで、更にゴースト像のレベルを軽減できた。
【0034】
図6Aの遮光部材の断面形状は、空間浮遊映像3を形成する正規映像光束が通過する領域(本実施例では吸収型偏光板112における映像光束が通過する領域に相当する)に対する遮光部材の有効面積とほぼ同サイズとする。そして、遮光部材の断面形状は、内面に向かって梁を設け、ゴースト像を形成する異常光をその梁の表面で複数回反射させて異常光を吸収させる構成とすると、更に良い。遮光部材の外枠に対して正規映像光束が通過する領域を小さくし、梁の内接する面と同等の面積としている。
【0035】
他方、再帰反射部材2の形状を、映像表示装置1と正対した平面形状から曲率半径200mm以上の凹面または凸面としてもよい。これにより、再帰反射部材2で反射した斜め映像光によりゴースト像が発生したとしても、反射後に発生したゴースト像を観視者の視界から離してしまうことで、観視できないようにしてもよい。曲率半径を100mm以下とする再帰反射部材2の周辺で反射した光のうち、正規で反射した光量が低下し、得られる空間浮遊映像3の周辺光量が低下する、という新たな課題が発生する。このため、ゴースト像を実用上問題のないレベルに軽減するためには、上述した技術手段を選択し適用するか、併用すると良い。
【0036】
<空間浮遊映像表示装置(3)>
図6Bは、本発明の一実施例に係る空間浮遊映像表示装置(第三例)の外観の一例を示す斜視図である。図6Bに示す空間浮遊映像表示装置は、図示のように、概略的に筒形状、特に円筒形状の筐体106を有する。この円筒形状の筐体106を有する空間浮遊映像表示装置は、車両内のボトルホルダー(ドリンクホルダーともいう。後述の図6D。)に収納可能であり、比較的小型(コンパクト)で可搬型(ポータブル)の空間浮遊映像表示装置である。この円筒形状は、高さ方向(鉛直方向と対応する。図6CでのZ方向)に筒の軸が延在し、それに直交する方向(水平方向と対応する。図6CでのX,Y方向)に筒の径が延在する形状である。この円筒形状の筐体106は、大別して筐体上部601と筐体下部602とを有し、それらが一体的に接続されている。筐体106内部には、後述の光学系や制御回路基板、また必要に応じて充電池などが収納されている。
【0037】
この筒形状の筐体106は、剛性、遮光性、防水性などを有し、曲面状の側面606,607の部分だけでなく、上面603と下面608の部分も有し、これらによって筐体内部空間が閉じられている。
【0038】
この円筒形状の筐体106は、サイズの実施例としては、高さが約20cm、上側の筐体上部601の直径が約9cm、下側の筐体下部602の直径が約7cmである。空間浮遊映像3のサイズは、液晶表示パネル11の画面サイズおよび窓部605のサイズと対応しており、例えば2~3インチとすることができる。窓部605から空間浮遊映像3の形成位置までの光路長に対応する距離(図6Cでの距離690)は、一例として6cm程度となる。
【0039】
本実施例では、筐体上部601の径は筐体下部602の径よりも大きい。この構成は、筐体下部602をボトルホルダー内部空間内に収容し筐体上部601をボトルホルダー上側に露出することを考慮した構成である。それとともに、この構成は、筐体上部601では筐体下部602よりも大きな体積で光学系を収容できる構成である。これにより、筐体上部601内の光学系では、より大きな素子も配置しやすく、また光路長をより長く確保しやすく、筐体106(斜面604)から空間浮遊映像3の形成位置までの飛び出しの距離(図6Cでの距離690)をより長く確保できる。また、液晶表示パネル11の画面サイズをより大きくでき、対応して空間浮遊映像3のサイズをより大きくできる。筐体下部602と筐体上部601との径の関係は、上記に限らず可能であり、筐体下部602と筐体上部601との径を同じにした構成や、筐体下部602の径よりも筐体上部601の径を小さくした構成も可能である。
【0040】
筐体上部601は、図示のように、上面603および側面606を含む円筒の一部を斜めに切り欠いたような形状となっており、これにより、概略半円領域のような上面603と、概略半円領域のような斜面604とが設けられている。そして、斜面604には、透明部材100等が配置された矩形状の窓部(言い換えると開口部)605が設けられている。窓部(開口部)605は、映像光を外部に出射するための部分である。筐体106内の光学系からの映像光は、この窓部(開口部)605を経由して、図示のように筐体106の外部の所定の距離の位置に空間浮遊映像3を形成する。なお、窓部(開口部)605の形状は一例として矩形としているが、これに限らず、円、楕円、多角形など、様々な形状が可能である。
【0041】
本実施例では、斜面604および窓部605の角度は、例えば上面603に対し45度程度の角度(図6Cでの角度α3)としている。それに対応して、空間浮遊映像3の光軸(図6Cでの光軸A3)は、水平面から45度程度の斜め上方向(図6CでのW方向)の光軸としている。この斜面604や光軸の配置の角度・方向は、この空間浮遊映像表示装置が車両内のボトルホルダー(図6D)に設置された場合に運転者の顔の方に向けやすいことを考慮して設計されている。斜面604や光軸の配置の角度・方向の構成は、これに限定されない。例えば、角度α3や光軸A3の仰角は、所定の角度範囲(例えば45度±15度)内の角度とすればよい。
【0042】
図6Cは、図6Bに示す可搬型の空間浮遊映像表示装置の内部構成例を示す。筐体上部601内には主に空間浮遊映像3を生成するための光学系が収容されており、筐体下部602内には主に制御基板610および充電池611が収容されている。制御基板610と光学系の映像表示装置1等の素子とは信号線等で相互に接続されている。
【0043】
筐体上部601には、ゴースト像が生じず視認性の高い空間浮遊映像3を生成するための光学系を備える。筐体上部601の光学系は、映像表示装置1(図6Cでの光源装置13、液晶表示パネル11、および吸収型偏光板12)と、平面ミラー4と、ビームスプリッタ(言い換えると偏光分離部材)101と、再帰反射部材2および位相差板であるλ/4板21と、透明部材100および吸収型偏光板112とを有して構成されている。
【0044】
筐体下部602の充電池611は、リチウムイオン電池等の充電池や電源回路である。制御基板610は、映像制御部や映像・音声信号送受信部などを構成する制御回路基板であり、プロセッサやメモリやインタフェース等を備えており、言い換えると、この空間浮遊映像表示装置のコントローラである。制御基板610は、筐体下部602内の一部領域に例えば縦長で配置されている。制御基板610は、通信インタフェース機能を備えてもよく、インターネット等に対しデータを送受信してもよい。
【0045】
この筐体106は、筐体下部602がボトルホルダー内に収容される。この空間浮遊映像表示装置は、縦長の円筒形状の筐体106において、筐体上部601には光学系が収納され、筐体下部602には光学系よりも相対的に重い充電池611等が収容されている。空間浮遊映像表示装置全体としての重心は下方に存在する。これにより、空間浮遊映像表示装置をボトルホルダーに安定的に保持することができる。また、この空間浮遊映像表示装置は、車両の揺れ等の振動に対しても比較的安定する。
【0046】
また、本実施例では、筐体上部601の高さ方向の長さは、筐体下部602の高さ方向の長さよりも大きい。筐体上部601の高さ方向の長さは、ボトルホルダー内に筐体下部602が収容された状態で装置を安定的に保持できることを考慮して、ある程度の長さまでに抑えている。
【0047】
また、筐体106の例えば筐体上部601の側面606の一箇所には、入出力端子5が設けられている。入出力端子5は制御基板610と接続されている。入出力端子5は、電源入力および信号入出力端子であり、例えばUSB端子であるが、これに限られない。この入出力端子5は、例えば車両のシガーソケットからの電源を供給するための端子、および、空間浮遊映像3(コンシェルジュ等)として出力するための映像信号を含む各種情報を取り込むための端子として設けられている。制御基板610は、外部から入出力端子5を通じて入力された映像信号を、映像表示装置1に供給する。もしくは、外部から入出力端子5を通じて入力された映像信号を、直接的に映像表示装置1に供給してもよい。
【0048】
なお、入出力端子5は、電源入力端子と信号入出力端子とで分けて複数の入出力端子として設けてもよい。入出力端子5の位置は、筐体106のいずれの位置としてもよい。入出力端子5の位置は、上面603の一箇所でもよいし、筐体下部602の側面607の一箇所でもよい。本実施例では、ドリンクホルダーに筐体下部602が収容された状態でも、筐体上部601の入出力端子5を容易に扱うことができる。
【0049】
入出力端子5には、車載の電源を接続可能である。車載の電源(例えばシガーソケット)からの外部電源入力は、入出力端子5を通じて、充電池611に供給され、充電池611が充電される。充電池611は、制御基板610等の各部に電力を供給する。なお、この空間浮遊映像装置は小型であるため、充電池611としては乾電池としても構わない。外部からの入力情報、例えばカーナビ等からの入力情報は、入出力端子5を通じて、制御基板610に入力される。制御基板610は、入力情報に基づいて、空間浮遊映像3として表示するためのコンシェルジュ等の映像や対応する音声を作成し、映像表示装置1等を制御する。
【0050】
この空間浮遊映像表示装置は、音声制御も可能である。筐体106の入出力端子5には、マイクやスピーカ等のデバイスが接続されてもよいし、カーナビや車載システムのコントローラ等が接続されてもよい。ユーザのスマートフォン等が接続されてもよい。その場合、制御基板610によるマイク等の制御に基づいて、音声入出力制御が可能である。すなわち、制御基板610は、運転者等が発した音声をマイク等から入力し、入力音声を音声認識し、認識した所定の指示(例えば表示オン/オフなど)に対応した処理を行うことができる。また、制御基板610は、空間浮遊映像3の表示とともに、その空間浮遊映像3に関連付けられた音声(例えばコンシェルジュが発する音声)を読み出し、もしくは音声合成機能によって作成し、スピーカ等から運転者等に対し出力することができる。これらに限らず、空間浮遊映像表示装置の筐体106にマイクやスピーカ等を搭載した構成としてもよい。
【0051】
図6Dは、車両内において、円筒形状のボトルホルダー600Hに、本実施例の可搬型(ポータブル)の空間浮遊映像表示装置を設置した状態の外観例を示す。車両内の運転者または同乗者等の人は、車両内のボトルホルダー600Hに、空間浮遊映像表示装置の筐体下部602を挿入して収納して設置する。ボトルホルダー600Hから上に筐体上部601が出ており、窓部605から出射される映像光が空間浮遊映像3を形成する。
【0052】
図6Dの例は、車両のダッシュボード6001の左右中央付近において、カーナビ等が配置された部分より上側のエアコン付近にボトルホルダー600Hが設置されている場合において、そのボトルホルダー600Hに空間浮遊映像表示装置を設置した例である。また、本例は、そのボトルホルダー600Hの空間浮遊映像表示装置の窓部605の向き(すなわち映像光の光軸の方向、空間浮遊映像3の向き)が、右側の運転席の運転者の顔・眼に向いた状態となるように、調整された状態を示している。この向きは、ボトルホルダー600H内で円筒形状の筐体106を回転させること等で調整可能である。同乗者が空間浮遊映像3を視認する場合には、窓部605の向きを同乗者の顔・眼の方に合わせるように調整すればよい。
【0053】
また、一般に、ボトルホルダー600Hも、車載のものに限らず、取り付け・取り外しが可能なタイプのものもあり、図示の例に限らず様々な位置のボトルホルダーに、この空間浮遊映像表示装置は設置可能である。
【0054】
図6Cで、この空間浮遊映像表示装置は、ボトルホルダー600Hへの設置に好適な筒状の筐体106に合わせて、筐体106内の光学系の構成が設計されている。筒状の筐体106(特に筐体上部601)内の高さ方向に長い空間に対応させて、光学系の各素子が配置されており、平面ミラー4で光路を曲げることで、高さ方向で光路長をなるべく長く確保する光学系としている。
【0055】
図6Cで、筐体上部601において、概略的に高さ方向で下から上へ順に、映像表示装置1、平面ミラー4、ビームスプリッタ101、再帰反射部材2および透明部材100等が配置されている。各素子は所定の関係で筐体上部601に固定されている。より具体的には、例えば、ビームスプリッタ101、再帰反射部材2、透明部材100(窓部605に設置)は、互いに1つの辺が接するか、もしくは、所定の間隔を空けて、互いに1つの辺が近接するように配置されている。筐体106は、径方向よりも高さ方向に長い形状であり、その高さ方向に映像光の光路をなるべく長く確保するように、光学系を構成する各素子が図示のように配置されている。映像表示装置1、平面ミラー4、再帰反射部材2等は、高さ方向等に対し斜めに傾いた状態で配置されている。映像表示装置1は角度α1で配置されている。再帰反射部材2は角度α2で配置されている。ビームスプリッタ101は水平に配置されている。斜面604および透明部材100は角度α3で配置されている。平面ミラー4も平面が鉛直面に対しやや傾いた角度α4で配置されている。この光学系の映像光の光路は、平面ミラー4によって反射する光路である。この光学系の映像光の光路は、平面ミラー4と再帰反射部材2との間にビームスプリッタ101が配置された光路である。
【0056】
この光学系の映像光の光路は、順に、映像表示装置1から、平面ミラー4、ビームスプリッタ101、λ/4板21、再帰反射部材2、λ/4板21、ビームスプリッタ101、透明部材100、吸収型偏光板112と経由して空間浮遊映像3へ至る光路である。点p1~p6は、映像光の光路上で経由する点の例である。点p1は、液晶表示パネル11の映像出射面の基準点(例えば中心点)である。点p2は、平面ミラー4の基準点である。点p3は、ビームスプリッタ101の基準点である。点p4は、再帰反射部材2の基準点である。点p5は、透明部材100の基準点である。点p6は、空間浮遊映像3の基準点である。この空間浮遊映像3は、光軸A3に対応した矢印Aの方向(映像面に正対する方向)からユーザの眼が観視する場合に、最も好適に視認できる。
【0057】
図6B等に示す空間浮遊映像表示装置は、筐体106の斜め上方の所定の距離の位置に空間浮遊映像3を生成する。空間浮遊映像3としては、例えば、車両の運転者に対し、ナビゲーション情報や車両周辺に存在するPOI情報を映像および音声により提供する人(コンシェルジュ)の顔などが表示される。図6Eは、運転者から見た場合の、空間浮遊映像3におけるコンシェルジュの表示例を模式で示す。空間浮遊映像3は、例えば矩形で所定の最大サイズの領域を有し、その領域内に、コンシェルジュの画像3001が表示される。画像3001は動画でも静止画でもよい。また、画像3001の表示に合わせて、コンシェルジュが発する音声3002(例えば目的地到着予定時刻のガイド)がスピーカ(車載スピーカ、または空間浮遊映像表示装置の筐体106内に収納されたスピーカ)等から出力される。
【0058】
図6Cで、映像表示装置1は、映像表示素子としての液晶表示パネル11と、狭角な拡散特性を有する特定偏波の光を生成する光源装置13とを備えて構成される。ここでは、液晶表示パネル11は、画面サイズが2~3インチ程度の小型のもので構成される。本実施例では、映像表示装置1の映像表示面にさらに吸収型偏光板12を設けた構成を有する。もしくは、さらに、映像表示装置1の表面に設けた吸収型偏光板12の映像出射側面に図示しない反射防止膜を設けることで、ゴースト像の光を透過させ、吸収型偏光板12で吸収させることで、ゴースト像による画質低下を防止できる構成を有する。
【0059】
図6Cを参照しながら、可搬型の空間浮遊映像表示装置の内部構成とその特徴について詳細に説明する。液晶表示パネル11と吸収型偏光板12と光源装置13とから構成された映像表示装置1は、図示のように、所定の角度(光軸が水平面に対し角度α1)をもって筐体106に対し配置・固定されている。光源装置13は、挟角の拡散特性を有する照明光を液晶表示パネル11に供給するバックライトとして機能する。映像表示装置1(光軸に関しては点p1)からの映像光は、平面ミラー4上(点p2)で反射されて向きを変え、ビームスプリッタ101(点p3)に入射する。その映像光は、さらに、ビームスプリッタ101(点p3)を透過し、そのまま再帰反射部材2(点p4)に向かって進む。
【0060】
ここで、後に図8図9でも説明するが、光源装置13からの光源光は、S偏光(垂直偏光)の場合(図8)と、P偏光(平行偏光)の場合(図9)との2通りがある。いずれの場合も、光源装置13からの光源光は、液晶表示パネル11のバックライトとして機能する。これに対応して、映像表示装置1(液晶表示パネル11)から出射する映像光(すなわち光源光に基づいて液晶表示パネル11で映像源の信号により変調された映像光)は、S偏光の場合と、P偏光の場合との2通りがある。以下では、まず、映像表示装置1からの映像光がP偏光の特性を有する映像光である場合を説明する。
【0061】
液晶表示パネル11から出射して吸収型偏光体12を透過した映像光(P偏光)は、光軸A1のように、一旦、平面ミラー4の方へ向かう。その映像光(P偏光)は、平面ミラー4上で反射され、光軸A2のように、ビームスプリッタ101の方に向かう。
【0062】
ビームスプリッタ(偏光分離部材)101は、偏光分離機能を有しており、光源装置13をバックライトとする液晶表示パネル11、すなわち映像表示装置1からの映像光がP偏光である場合には透過するが、逆にS偏光の場合には反射する(言い換えると透過しない)特性を有する構造の素子である。このようなビームスプリッタ101は、反射型偏光板あるいは特定偏波を反射させる多層膜から形成されている。本実施例の多層膜は金属多層膜である。
【0063】
次に、上記ビームスプリッタ101を透過した映像光(例えばP偏光)は、再帰反射部材2に向かう。再帰反射部材2の光入射面にはλ/4板21が設けられている。映像表示装置1からの映像光(P偏光)としてビームスプリッタ101からの映像光(P偏光)は、再帰反射部材2への入射の際と反射後の出射の際とでλ/4板21を2度通過させられる。これにより、この映像光は、一方の偏波から他方の偏波へ偏光変換される。すなわち、具体的にはP偏光からS偏光に変換される。この結果、再帰反射部材2で反射した映像光は、S偏光の特性を有する映像光(元の映像光とは異なる偏光特性の映像光)となって、ビームスプリッタ101へ向かう。その映像光(S偏光)は、ビームスプリッタ101で反射され、光軸A3のように、透明部材100の方へ向かう。その映像光(S偏光)は、窓部605の透明部材100および吸収型偏光板112を外部へと透過し、窓部605の外側の所定の距離690の位置に、実像である空間浮遊映像3を生成・表示する。
【0064】
もしくは、上記実施例とは逆に、映像表示装置1からの映像光をS偏光とする実施例の場合、以下のようになる。映像表示装置1から出射された映像光であるS偏光は、平面ミラー4で反射されてビームスプリッタ101に向かう。この場合のビームスプリッタ101は、映像表示装置1からの映像光(S偏光)を透過し、逆にP偏光を反射する特性を有する構造の素子とされる。ビームスプリッタ101からの映像光(S偏光)は、再帰反射部材2での反射およびλ/4板21の2回通過によって偏光変換されてP偏光となる。この映像光(P偏光)は、ビームスプリッタ101で反射されて透明部材100へ向かい、透明部材100等を透過して空間浮遊映像3を形成する。
【0065】
上記映像光およびビームスプリッタ101等の偏光に関する設計は、いずれの実施例も可能である。なお、映像表示装置1からの映像光をS偏光とする場合、平面ミラー4での反射率がより高い利点がある。映像表示装置1からの映像光をP偏光とする場合、ユーザが偏光サングラスをかけた状態で空間浮遊映像3を視認する場合にも視認しやすい利点がある。
【0066】
ここで、車両内に本実施例の可搬型の空間浮遊映像表示装置を設置する場合、車両外部から進入してくる外光(太陽光や外部照明光)は、フロントガラス(ウインドシールド)上で、外光のS偏光成分の殆ど(約80%)は反射され、車両内部に進入してくる外光はP偏光成分が多いことが知られている。そこで、透明部材100の外光入射面には、吸収型偏光板112を設けると良い。
【0067】
窓部605は映像光を透過する。透明部材100は、窓部605に設けられ、ガラス板等で構成される。また、透明部材100の外光入射面には、吸収型偏光板112が設けられている。斜面604の窓部605における、映像光を通過させる部分には透明部材100および吸収型偏光板112が配置されており、その他の部分(即ち筐体106の一部)は、外光が筐体106内に入射しないように遮光部材で構成されている。窓部605のサイズと空間浮遊映像3のサイズとは対応している。なお、窓部605の透明部材100において、一部(映像光を通過させる部分)を透明体で形成し、他の一部を遮光部材で形成してもよい。
【0068】
映像表示装置1やその他の光学部品を収容する筐体106の外部からの太陽光や照明光などの外光による画質低下を軽減するために、透明部材100の外表面には吸収型偏光板112を設ける。外光の多くは吸収型偏光板112で吸収され、筐体上部601内には入射しにくい。
【0069】
ビームスプリッタ(偏光分離部材)101では、光が再帰反射することで偏光軸が不揃いになることがあるため、一部の映像光が反射して映像表示装置1の方に戻る。この光が再度、映像表示装置1を構成する液晶表示パネル11の映像表示面で反射し、前述のゴースト像を発生させ、空間浮遊映像3の画質を著しく低下させる。そこで、本実施例では、映像表示装置1の映像表示面に、さらに吸収型偏光板12を設けている。もしくは、映像表示装置1の表面に設けた吸収型偏光板12の映像出射側面にさらに図示しない反射防止膜を設けることで、ゴースト像の光を透過させ、吸収型偏光板12で吸収させることで、ゴースト像による画質低下を防止する構成とする。
【0070】
再帰反射部材2に外光が直接入射した場合、強力なゴースト像を発生させ得る。そのため、本実施例では、図6Cのように、再帰反射部材2は、角度α2で斜め下向きに傾けた配置とし、窓部605の透明部材100と再帰反射部材2(特に再帰反射面)とが、図示のように90度程度の関係で配置された構造としている。外部から窓部605の透明部材100を通じて内部に入射する外光成分の主な入射方向を、映像光の光軸A3と同じ方向(透明部材100の面垂直方向)とする。その場合に、再帰反射部材2の光軸の方向(面垂直方向)が、90度程度の関係となるように、再帰反射部材2およびλ/4板21が配置されている。言い換えると、再帰反射部材2の再帰反射面と透明部材100の面とが90度程度の関係となるように、再帰反射部材2およびλ/4板21が配置されている。筐体上部601内に外光成分が入射した場合でも、このように、再帰反射部材2が、外光が入射する窓部605に対して下向き(図6Cでは90度程度)に配置されているので、その外光成分は再帰反射部材2には直接入射しにくい。よって、このような外光入射を妨げる光学系の構成により、強力なゴースト像の発生を防止できる。
【0071】
また、映像表示装置1についても、窓部605から、ビームスプリッタ101および平面ミラー4を介在して、離れた位置に配置されている。映像表示装置1から出射する光軸A1の映像光が、矢印Aの方向(光軸A3)から窓部605を通じて視認できない位置に、映像表示装置1が配置されている。これにより、ゴースト像の発生は、さらに軽減される。
【0072】
図6Cで、映像表示装置1の点p1から平面ミラー4の点p2を経由してビームスプリッタ101の点p3までの光路の光路長と、ビームスプリッタ101の点p3から空間浮遊映像3の点p6までの光路の光路長とが相関している。窓部605から外側に空間浮遊映像3を形成する距離690をある程度長く確保すれば、空間浮遊映像3の浮遊感を高めることができる。そのため、本実施例では、小型で縦長の筐体106内に収容・配置される光学系として、各素子を斜めに傾けて配置し、平面ミラー4を設けることで、映像表示装置1からビームスプリッタ101までの光路長をなるべく長く確保している。
【0073】
以上のように、本実施例の小型で可搬型の空間浮遊映像表示装置によれば、車両内のボトルホルダー等に好適に設置でき、運転者等にコンシェルジュ等の空間浮遊映像3を好適に提供できる。筒形状の筐体106は、一般的な車両に標準的に備え付けられているボトルホルダー、または取り付け・取り外し可能なタイプのボトルホルダーに対し好適に設置可能である。ユーザが必要に応じてこの空間浮遊映像表示装置をボトルホルダーまたはそれに類する容器や空間に対し容易に取り付け・取り外しが可能である。また、この空間浮遊映像表示装置は、筐体106に入出力端子5を備えることで、充電池611に対し、車両のシガーソケット等の電源からの給電も可能である。そのため、この装置は、運転中でも常に充電可能となり、長時間使用に際しても電池切れの心配がない。
【0074】
本実施例の空間浮遊映像表示装置により形成される空間浮遊映像3は、前述と同様に、観視方向に関する指向性を有する。車両内の運転者や同乗者がこの空間浮遊映像3を観視する際に、明るい映像を好適に観視できるためには、図6Cの矢印Aのように、空間浮遊映像3に対し真正面で正対する方向(光軸A3に合った方向)から観視することが最も望ましい。絶対空間座標系内において、この空間浮遊映像3(光軸A3)の向きは、この装置がドリンクホルダーに設置された位置や向き等の状態にも依存する。そして、運転者等がこの空間浮遊映像3を観視する際の相対的な向きは、その空間浮遊映像3(光軸A3)の位置や向きと運転者の顔・目の位置や向きとの関係に依存する。
【0075】
そこで、本実施例では、鉛直方向で上面が開口であるボトルホルダー(図6D)を想定して、そのボトルホルダーにこの空間浮遊映像表示装置を設置した場合に、空間浮遊映像3が運転者の顔・眼に向くよう調整しやすいように、上記斜面604の窓部605やそれに対応した光学系等を設計した。すなわち、斜面604の窓部605は、45度程度で構成されており、空間浮遊映像3の光軸A3を45度程度で斜め上方向とした。これにより、運転者等は、空間浮遊映像3を視認する際に、頭などをあまり動かさなくても、空間浮遊映像3を真正面の方向から明るい映像として観視しやすい。
【0076】
仮に、空間浮遊映像表示装置から出射される映像光の方向が、鉛直方向や水平方向である場合、運転者等は、その空間浮遊映像を真正面から好適に観視するためには、その映像光の方向に合わせて頭などを動かして例えば覗き込む必要がある。本実施例によれば、そのような必要が無く、運転中でも比較的自然な体勢で明るい空間浮遊映像3を視認できる。
【0077】
図6Fは、上記実施例の変形例として、筐体106に蓋を設ける構成例を示す。図6Fの(A)は、筐体上部601において、ユーザの操作に応じて、上面603および窓部605を隠すことができるように、ボトルキャップのような蓋651が設けられている。空間浮遊映像表示装置の非利用時には、図示のように、蓋651を装着した状態としておくことで、窓部605に傷やゴミ等の付着を防止でき、また強度を高めることができる。空間浮遊映像表示装置の利用時には、蓋651が取り外された状態とされる。
【0078】
図6Fの(B)は、他の構成例として、筐体上部601において、窓部605に設けられた蓋652を有する。蓋652の形状は例えば平板である。この蓋652は、上面603と斜面604(図6B)とが接する辺に設けられたヒンジに一辺が接続されており、ユーザの操作に応じて、ヒンジを回転軸として回動する。空間浮遊映像表示装置の非利用時には、図示のように、窓部605を蓋652で隠した状態にしておくことで、窓部605に傷やゴミ等の付着を防止でき、また強度を高めることができる。空間浮遊映像表示装置の利用時には、矢印のように蓋652が回動されて、上面603上に配置され、窓部605が開口した状態となる。
【0079】
図6Fの(C)は、他の構成例として、筐体上部601において、窓部605の付近の前述の円筒の一部を切り欠いた空間領域に設けられた蓋653を有する。この蓋653は、蓋652と同様に回動する構造としてもよいが、図示のように、斜面604の窓部605以外の面に設けられた突起等に装着される構造としてもよい。空間浮遊映像表示装置の非利用時には、図示のように、窓部605を蓋653で隠した状態にしておくことで、窓部605に傷やゴミ等の付着を防止でき、また強度を高めることができる。空間浮遊映像表示装置の利用時には、蓋653が取り外されて、窓部605が開口した状態となる。また、空間浮遊映像表示装置の筐体106には、蓋のみならず、持ち運び用の取っ手などを設けてもよい。
【0080】
変形例として以下も可能である。筒状の筐体106は、円筒に限らず、水平面での断面形状として様々に可能である。筐体106の断面形状を例えば矩形(または多角形)とし、直方体形状の筐体106としてもよい。実施例の円筒形状の筐体106の場合には、円筒形状のボトルホルダー内に丁度良く収容できる利点がある。変形例として直方体形状の筐体106とした場合、製造しやすい、手で持ちやすい等の利点がある。
【0081】
また、図6Cの構成例では、より小型にすることを考慮して、ビームスプリッタ101と再帰反射部材2と窓部605の透明部材100とが、三角形のように辺が接するように配置されている。これに限定されず、光路長をより長く確保することを考慮して、これらの各素子の辺同士の間が離れた配置としてもよい。
【0082】
上記実施例では車載の場合を示したが、これに限らず、この可搬型の空間浮遊映像装置は、ユーザが持ち運び可能であるため、様々な場所で利用できる。例えば、ユーザの自宅等において、ボトルホルダー以外の容器などにも同様に設置して利用可能である。また、容器に収容しなくても、机などの上に単に配置した場合にも利用可能である。
【0083】
空間浮遊映像表示装置は、スピーカとして、超指向性スピーカを用いてもよい。超指向性スピーカは、ユーザの耳付近の特定の空間領域のみで出力音声を聴取可能とするように、超指向性の音声を出力するスピーカである。また、空間浮遊映像表示装置は、カメラや測距センサを備えてもよく、それらを用いて、空間浮遊映像3に対するユーザの手指等によるタッチ操作等を検出し、検出に応じた所定の処理を行う構成としてもよい。また、空間浮遊映像表示装置は、カメラの画像やセンサ検出に基づいて、ユーザの有無を検出してもよいし、ユーザの顔などを解析・判断してユーザ認証を行う構成としてもよい。また、空間浮遊映像表示装置は、空間浮遊映像3に対してカードや用紙等がかざされた場合に、カメラの画像等に基づいて、そのカードや用紙等からバーコード等のコードを読み取り、そのコードに応じた処理を行ってもよい。
【0084】
また、変形例として、前述の図6Aの遮光部材と同様に、映像表示装置1と、ビームスプリッタ101を介して再帰反射部材2とを結ぶ空間(例えばビームスプリッタ101より下方の空間)には、液晶表示パネル11からの特定角度を超える発散角を有した映像光が再帰反射部材2に入射することを遮るための遮光部材が配置されてもよい。
【0085】
本実施例での光源装置13は、特に以下の構成(詳細は後述)とすると良い。光源装置13は、点状または面状の光源と、光源からの光の発散角を低減する光学手段と、光源からの光を特定方向の偏光に揃える偏光変換手段と、光源からの光を液晶表示パネル11に伝搬する反射面を有する導光体とを有し、光源装置13の反射面の形状と面粗さによって光を制御することで液晶表示パネル11から映像光として狭角な発散角を有する映像光束を出射させる構成とする。
【0086】
また、本実施例では、再帰反射部材2の再帰反射面の表面粗さを、単位長さ当たり所定の数値以下に低減することで、空間浮遊映像3のボケ量を軽減して視認性を向上する。例えば、再帰反射面の面粗さは160nm以下に設定される。
【0087】
<反射型偏光板>
本実施例におけるビームスプリッタ101は、グリッド構造の反射型偏光板とする場合には、偏光軸に対して垂直方向からの光についての特性は低下する。このため、偏光軸に沿った仕様が望ましく、液晶表示パネル11からの出射映像光を狭角で出射可能な本実施例の光源装置が理想的な光源となる。また、水平方向の特性についても同様に、斜めからの光については特性の低下がある。以上の特性を考慮して、以下、液晶表示パネル11からの出射映像光をより狭角に出射可能な光源(光源装置13)を液晶表示パネル11のバックライトとして使用する、本実施例の構成例について説明する。これにより、高コントラストな空間浮遊映像3が提供可能となる。
【0088】
<映像表示装置>
次に、図1の本実施例の映像表示装置1について、図7を用いて説明する。本実施例の映像表示装置1は、映像表示素子である液晶表示パネル11と共に、液晶表示パネル11の光源を構成する光源装置13を備えている。図7では、光源装置13を液晶表示パネル11と共に展開斜視図として示している。
【0089】
この液晶表示パネル11は、図7に矢印30で示すように、バックライト装置である光源装置13からの光により、狭角な拡散特性を有する、即ち、指向性(言い換えると直進性)が強く、かつ、偏光面を一方向に揃えたレーザ光に似た特性の照明光束を得て、入力される映像信号に応じて変調をかけた映像光を出射する。これにより、図1のように、出射した映像光を、再帰反射部材2により反射し、ウィンドガラス105を透過して、実像である空間浮遊映像3を形成する。
【0090】
また、図7では、映像表示装置1は、液晶表示パネル11と、更に、光源装置13からの出射光束の指向特性を制御する光方向変換パネル54、および、必要に応じて狭角拡散板(図示せず)とを備えて構成されている。即ち、液晶表示パネル11の両面には偏光板が設けられ、図7の矢印30で示すように、特定の偏波の映像光が映像信号により光の強度を変調されて出射する構成となっている。これにより、映像表示装置1は、所望の映像を指向性(直進性)の高い特定偏波の光として、光方向変換パネル54を介して、再帰反射部材2に向けて投射し、再帰反射部材2で反射後、図1の店舗の空間の外部の観視者の眼に向けて透過して空間浮遊映像3を形成する。なお、上述した光方向変換パネル54の表面には保護カバー50(図8図9を参照)を設けてよい。
【0091】
本実施例では、図7の矢印30で示す光源装置13からの出射光束の利用効率を向上させ、消費電力を大幅に低減するために、光源装置13と液晶表示パネル11を含んで構成される映像表示装置1において、光源装置13からの矢印30で示す光を、図1の再帰反射部材2に向けて投射し、再帰反射部材2で反射後、ウィンドガラス105の表面に設けた透明シート(図示せず)により、空間浮遊映像3を所望の位置に形成するよう指向性を制御することもできる。具体的には、この透明シートは、フレネルレンズやリニアフレネルレンズ等の光学部品によって高い指向性を付与したまま空間浮遊映像の結像位置を制御する。このことによれば、映像表示装置1からの映像光は、レーザ光のようにウィンドガラス105の外側(例えば歩道)にいる観察者に対して高い指向性(直進性)で効率良く届くこととなり、その結果、高品位な空間浮遊映像を高解像度で表示すると共に、光源装置13のLED(Light Emitting Diode)素子201を含む映像表示装置1による消費電力を著しく低減することが可能となる。
【0092】
<映像表示装置の例(1)>
図8は、映像表示装置1の別例を示す。また図8は、図7の光源装置13の上に液晶表示パネル11と光方向変換パネル54を配置した状態を示す。この光源装置13は、例えば、プラスチックなどにより形成され、その内部にLED素子201、導光体203を収納して構成されている。導光体203の端面には、図8等にも示したように、それぞれのLED素子201からの発散光を略平行光束に変換するために、受光部に対して対面に向かって徐々に断面積が大きくなる形状を有し、内部を伝搬する際に複数回全反射することで発散角が徐々に小さくなるような作用を有するレンズ形状を設けている。その導光体203の上面には、映像表示装置1を構成する液晶表示パネル11が取り付けられている。また、光源装置13のケースのひとつの側面(本例では図8の左側の端面)には、半導体光源であるLED素子201や、LED素子201の制御回路を実装したLED基板202が取り付けられている。それと共に、LED基板202の外側面には、LED素子201および制御回路で発生する熱を冷却するための部材であるヒートシンクが取り付けられてもよい。
【0093】
また、光源装置13のケースの上面に取り付けられる液晶表示パネル11の図示しないフレームには、当該フレームに取り付けられた液晶表示パネル11と、更に、当該液晶表示パネル11に電気的に接続された図示しないFPC(Flexible Printed Circuits:フレキシブル配線基板)などが取り付けられて構成される。即ち、液晶表示素子である液晶表示パネル11は、固体光源であるLED素子201と共に、電子装置を構成する図示しない制御回路からの制御信号に基づいて、透過光の強度を変調することによって表示映像を生成する。この時、生成される映像光は、拡散角度が狭く特定の偏波成分のみとなるため、映像信号により駆動された面発光レーザ映像源に近い、従来にない新しい映像表示装置1が得られる。なお、現状では、レーザ装置により上述した映像表示装置1で得られる画像と同等のサイズのレーザ光束を得ることは、技術的にも安全上からも不可能である。そこで、本実施例では、例えば、LED素子201を備えた一般的な光源からの光束から、上述した面発光レーザ映像光に近い光を得る。
【0094】
続いて、光源装置13のケース内に収納されている光学系の構成について、図8と共に図9を参照しながら詳細に説明する。図8および図9は断面図であるため、光源を構成する複数のLED素子201が1つだけ示されている。これらの複数のLED素子201からの光は、導光体203の受光端面203aの形状により、略コリメート光(略平行光)に変換される。このため、導光体端面の受光部とLED素子201は、所定の位置関係を保って取り付けられている。なお、この導光体203は、各々、例えば、アクリル等の透光性の樹脂により形成されている。そして、この導光体端部のLED受光面は、図示しないが、例えば、放物断面を回転して得られる円錐凸形状の外周面を有し、その頂部では、その中央部に凸部(即ち凸レンズ面)を形成した凹部を有し、その平面部の中央部には、外側に突出した凸レンズ面(あるいは、内側に凹んだ凹レンズ面でも良い)を有する。なお、LED素子201を取り付ける導光体203の受光部外形形状は、円錐形状の外周面を形成する放物面形状をなし、LED素子201から周辺方向に出射する光をその内部で全反射することが可能な角度の範囲内において設定され、あるいは、反射面が形成されている。
【0095】
他方、LED素子201は、LED素子201の回路基板であるLED基板202の表面上の所定の位置にそれぞれ配置されている。このLED基板202は、LEDコリメータ(導光体203の受光端面203a)に対して、その表面上のLED素子201が、それぞれ、前述した凹部の中央部に位置するように配置されて固定されている。
【0096】
かかる構成によれば、導光体203の受光端面203aの形状によって、LED素子201から放射される光は略平行光として取り出すことが可能となり、発生した光の利用効率を向上することが可能となる。
【0097】
以上述べたように、光源装置13は、導光体203の端面に設けた受光部である受光端面203aに、光源であるLED素子201を複数並べた光源ユニットを取り付けて構成され、LED素子201からの発散光束を導光体203の受光端面203aのレンズ形状によって略平行光として、矢印で示すように、導光体203の内部を導光し(図面に平行な方向)、光束方向変換手段204によって、導光体203に対して略平行に配置された液晶表示パネル11に向かって出射する。導光体203内部または表面の形状によって、この光束方向変換手段204の分布(密度)を最適化することで、液晶表示パネル11に入射する光束の均一性を制御することができる。
【0098】
上述した光束方向変換手段204は、導光体203の表面の形状や導光体203の内部に例えば屈折率の異なる部分を設けることで、導光体203内を伝搬した光束を、導光体203に対して略平行に配置された液晶表示パネル11に向かって出射する。この時、液晶表示パネル11を画面中央に正対し画面対角寸法と同じ位置に視点を置いた状態で画面中央と画面周辺部の輝度を比較した場合の相対輝度比が20%以上あれば、実用上問題なく、30%を超えていれば、更に優れた特性となる。
【0099】
なお、図8および図9は、上述した導光体203とLED素子201を含む光源装置13において、偏光変換する本実施例の光源(光源装置13)の構成とその作用を説明するための断面配置図である。図8はP偏光からS偏光に変換する場合、図9はS偏光からP偏光に変換する場合である。図8および図9において、光源装置13は、例えば、プラスチックなどにより形成される表面または内部に光束方向変換手段204を設けた導光体203、光源としてのLED素子201、反射シート205、位相差板216、レンチキュラーレンズなどから構成されており、光源装置13(導光体203)の上面には、光源光入射面と映像光出射面に偏光板を備える液晶表示パネル11が取り付けられている。
【0100】
図8において、光源装置13に対向した液晶表示パネル11の光源光入射面(下面)にはフィルムまたはシート状の反射型偏光板49を設けており、LED素子201から出射した自然光束210のうち片側の偏波(例えばP波)212を選択的に反射させ、導光体203の一方(下方)の面に設けた反射シート205で反射して、再度、液晶表示パネル11に向かうようにする。反射シート205と導光体203の間、もしくは導光体203と反射型偏光板49の間には、位相差板216であるλ/4板を設けて、反射シート205で反射させ、2回通過させることで、反射光束をP偏光からS偏光に変換し、これにより映像光としての光源光の利用効率を向上する。図8の矢印213のように、液晶表示パネル11で映像信号により光強度を変調された映像光束は、図1の再帰反射部材2に入射して、反射後にウィンドガラス105を透過して店舗の空間の内部または外部に、実像である空間浮遊映像3を得ることができる。
【0101】
図9において、光源装置13に対向した液晶表示パネル11の光源光入射面(下面)にはフィルムまたはシート状の反射型偏光板49を設けており、LED素子201から出射した自然光束210うち片側の偏波(例えばS波)211を選択的に反射させ、導光体203の一方(下方)の面に設けた反射シート205で反射して、再度、液晶表示パネル11に向かうようにする。反射シート205と導光体203の間、もしくは導光体203と反射型偏光板49の間には、位相差板216であるλ/4板を設けて、反射シート205で反射させ、2回通過させることで、反射光束をS偏光からP偏光に変換し、これにより映像光として光源光の利用効率を向上する。図9の矢印214のように、液晶表示パネル11で映像信号により光強度変調された映像光束は、図1の再帰反射部材2に入射して、反射後にウィンドガラス105を透過して店舗の空間の内部または外部に、実像である空間浮遊映像3を得ることができる。
【0102】
図8および図9に示す光源装置13においては、対向する液晶表示パネル11の光入射面に設けた反射型偏光板49の作用とともに、反射型偏光板49で片側の偏光成分を反射するため、理論上得られるコントラスト比は、反射型偏光板49のクロス透過率の逆数と液晶表示パネル11に付帯した2枚の偏光板により得られるクロス透過率の逆数とを乗じたものとなる。これにより、高いコントラスト性能が得られる。実際には、表示画像のコントラスト性能が10倍以上向上することを実験により確認した。この結果、自発光型の有機ELに比較しても遜色ない高品位な映像が得られた。
【0103】
<映像表示装置の例(2)>
図10には、映像表示装置1の具体的な構成の他の一例を示す。図10中の光源装置13は、後述の図12等の光源装置と同様の構成を有する。この光源装置13は、例えばプラスチックなどのケース内に、LED、コリメータ、合成拡散ブロック、および導光体等を収納して構成されており、上面には液晶表示パネル11が取り付けられている。また、光源装置13のケースのひとつの側面には、図12図13等に示す半導体光源であるLED素子14や、その制御回路を実装したLED基板102が取り付けられると共に、LED基板102の外側面には、LED素子14および制御回路で発生する熱を冷却するための部材であるヒートシンク103が取り付けられている。
【0104】
また、ケースの上面に取り付けられた液晶表示パネルフレームには、当該液晶表示パネルフレームに取り付けられた液晶表示パネル11と、更に、液晶表示パネル11に電気的に接続されたFPC403などが取り付けられて構成されている。即ち、液晶表示素子である液晶表示パネル11は、固体光源であるLED素子14と共に、電子装置を構成する図示しない制御回路からの制御信号に基づいて、透過光の強度を変調することによって表示映像を生成する。
【0105】
<映像表示装置の例(3)>
続いて、図11を用いて映像表示装置1の具体的な構成の他の例を説明する。この映像表示装置1の光源装置は、LED素子14(例えばLED素子14a)からのP偏波とS偏波が混在する自然光の発散光束をLEDコリメータレンズ18により略平行光束に変換し、反射型導光体304により液晶表示パネル11に向け反射する。反射光は、液晶表示パネル11と反射型導光体304の間に配置された波長板と反射型偏光板49に入射する。反射型偏光板49で特定の偏波(例えばS偏波)が反射され波長板で位相が変換され反射面に戻り再び位相差板216を通過して反射型偏光板49を透過する偏波(例えばP偏波)に変換される。
【0106】
この結果、LED素子14からの自然光は、特定の偏波(例えばP偏波)に揃えられ、液晶表示パネル11に入射し、映像信号に合わせて輝度変調され、パネル面に映像を表示する。上述の例と同様に、図11では、光源を構成する複数のLED素子14(縦断面であるため例えば1個のLED素子14aのみ)が示されており、これらはLEDコリメータレンズ18に対して所定の位置に取り付けられている。なお、このLEDコリメータレンズ18は、各々、例えばアクリル等の透光性の樹脂またはガラスにより形成されている。そして、このLEDコリメータレンズ18は、上述の例と同様に、放物断面を回転して得られる円錐凸形状の外周面を有すると共に、その頂部では、その中央部に凸部(即ち凸レンズ面)を形成した凹部を有する。また、その平面部の中央部には、外側に突出した凸レンズ面(あるいは、内側に凹んだ凹レンズ面でも良い)を有している。なお、LEDコリメータレンズ18の円錐形状の外周面を形成する放物面は、LED素子14から辺方向に出射する光をその内部で全反射することが可能な角度の範囲内において設定され、あるいは、反射面が形成されている。
【0107】
以上の構成は、図12図13等に示した映像表示装置の光源装置と同様の構成である。更に、図11に示したLEDコリメータレンズ18により略平行光に変換された光は、反射型導光体304で反射し、反射型偏光板49の作用により特定の偏波の光を透過させ、反射した他方の偏波の光は、再度、反射型導光体304を透過して、反射型導光体304において液晶表示パネル11とは反対側の面に対向させて設けた反射板271で反射する。この時、反射板271と反射型導光体304の間に配置した位相差板270であるλ/4板を2度通過することで、偏光変換され、再び導光体304を透過して、反対側、即ち液晶表示パネル11側に設けた反射型偏光板49を透過して、偏光方向を揃えて液晶表示パネル11に入射させる。この結果、光源の光を全て利用できるので、光の利用効率が2倍になる。
【0108】
液晶表示パネル11からの出射光は、従来のTVセットでは画面水平方向(図16の(A)ではX軸で表示)と画面垂直方向(図16の(B)ではY軸で表示)ともに同様な拡散特性を持っている。これに対して、本実施例の液晶表示パネル11からの出射光束の拡散特性は、例えば図16の例1に示すように、輝度が正面視(角度0度)の50%になる視野角が13度とすることで、従来の62度に対して1/5となる。同様に垂直方向の視野角は上下不均等として上側の視野角を下側の視野角に対して1/3程度に抑えるように反射型導光体の反射角度と反射面の面積等を最適化する。この結果、従来の液晶TVに比べ、観視方向に向かう映像光量が大幅に向上し、輝度は50倍以上となる。
【0109】
更に、図16の例2に示す視野角特性とすれば、輝度が正面視(角度0度)の50%になる視野角が5度とすることで、従来の62度に対して1/12となる。同様に垂直方向の視野角は上下均等として視野角を従来に対して1/12程度に抑えるように反射型導光体の反射角度と反射面の面積等を最適化する。この結果、従来の液晶TVに比べ観視方向に向かう映像光量が大幅に向上し、輝度は100倍以上となる。以上述べたように、視野角を狭角とすることで観視方向に向かう光束量を集中できるので、光の利用効率が大幅に向上する。この結果、従来のTV用の液晶表示パネルを使用しても、光源装置の光拡散特性を制御することで、同様な消費電力で大幅な輝度向上が実現可能であり、屋外に向けての空間浮遊映像表示装置に対応した映像表示装置1とすることができる。
【0110】
図11に戻る。基本構成としては、図11に示すように、光源装置により狭角な指向特性の光束を液晶表示パネル11に入射させ、映像信号に合わせて輝度変調することで、液晶表示パネル11の画面上に表示した映像情報を、再帰反射部材2で反射させ、得られた空間浮遊映像3を、図1のウィンドガラス105を介して室外または室内に表示する。
【0111】
<光源装置13の例(1)>
続いて、図6Bの筐体106内に収納されている光源装置13等の光学系の詳細構成例について、図12と共に図13(A)および(B)を参照しながら詳細に説明する。
【0112】
図12には、光源を構成するLED素子14(14a,14b)が示されており、これらはLEDコリメータ15に対して所定の位置に取り付けられている。なお、このLEDコリメータ15は、各々、例えばアクリル等の透光性の樹脂により形成されている。そして、このLEDコリメータ15は、図13(B)にも示すように、放物断面を回転して得られる円錐凸形状の外周面156を有すると共に、その頂部では、その中央部に凸部(即ち凸レンズ面)157を形成した凹部153を有する。また、その平面部の中央部には、外側に突出した凸レンズ面(あるいは、内側に凹んだ凹レンズ面でも良い)154を有している。なお、LEDコリメータ15の円錐形状の外周面156を形成する放物面は、LED素子14から周辺方向に出射する光をその内部で全反射することが可能な角度の範囲内において設定され、あるいは、反射面が形成されている。
【0113】
また、LED素子14は、その回路基板であるLED基板102の表面上の所定の位置にそれぞれ配置されている。このLED基板102は、LEDコリメータ15に対して、その表面上のLED素子14(14a,14b)が、それぞれ、その凹部153の中央部に位置するように配置されて固定されている。
【0114】
かかる構成によれば、上述したLEDコリメータ15によって、LED素子14から放射される光のうち、特に、その中央部分から上方(図13(B)の右方向)に向かって放射される光は、LEDコリメータ15の外形を形成する2つの凸レンズ面157,154により集光されて平行光となる。また、その他の部分から周辺方向に向かって出射される光は、LEDコリメータ15の円錐形状の外周面156を形成する放物面によって反射され、同様に、集光されて平行光となる。換言すれば、その中央部に凸レンズを構成すると共に、その周辺部に放物面を形成したLEDコリメータ15によれば、LED素子14(14a,14b)により発生された光のほぼ全てを平行光として取り出すことが可能となり、発生した光の利用効率を向上することが可能となる。
【0115】
なお、LEDコリメータ15の光の出射側には偏光変換素子21が設けられている。この偏光変換素子21は、図13からも明らかなように、断面が平行四辺形である柱状(以下、平行四辺形柱)の透光性部材と、断面が三角形である柱状(以下、三角形柱)の透光性部材とを組み合わせ、LEDコリメータ15からの平行光の光軸に対して直交する面に平行に、複数、アレイ状に配列して構成されている。更に、これらアレイ状に配列された隣接する透光性部材間の界面には、交互に、偏光ビームスプリッタ(以下、「PBS膜」)211と反射膜212とが設けられており、また、偏光変換素子21へ入射してPBS膜211を透過した光が出射する出射面には、λ/2位相板215が備えられている。
【0116】
この偏光変換素子21の出射面には、更に、図13(A)にも示す矩形状の合成拡散ブロック16が設けられている。即ち、LED素子14から出射された光は、LEDコリメータ15の働きにより平行光となって合成拡散ブロック16へ入射し、出射側のテクスチャー161により拡散された後、導光体17に到る。
【0117】
導光体17は、図13(B)のように、例えばアクリル等の透光性の樹脂により断面が略三角形の棒状に形成された部材である。そして、導光体17は、図12からも明らかなように、合成拡散ブロック16の出射面に第1拡散板18aを介して対向する導光体光入射部(導光体光入射面を含む)171と、斜面を形成する導光体光反射部(導光体光反射面を含む)172と、第2拡散板18bを介して、液晶表示素子である液晶表示パネル11と対向する導光体光出射部(導光体光出射面を含む)173とを備えている。
【0118】
この導光体17の導光体光反射部172には、図12、および一部拡大図である図13(B)にも示すように、多数の反射面172aと連接面172bとが交互に鋸歯状に形成されている。そして、反射面172a(図13(B)では右上がりの線分)は、図中に一点鎖線で示す水平面に対してαn(nは自然数であり本例では1~130である)を形成しており、その一例として、ここでは、αnを43度以下(ただし0度以上)に設定している。
【0119】
導光体入射部171は、光源側に傾斜した湾曲の凸形状に形成されている。これによれば、合成拡散ブロック16の出射面からの平行光は、第1拡散板18aを介して拡散されて入射し、図12からも明らかなように、導光体入射部171により上方に僅かに屈曲(偏向)しながら導光体光反射部172に達し、ここで反射して図12の上方の出射面に設けた液晶表示パネル11に到る。
【0120】
以上に詳述した映像表示装置1によれば、光利用効率やその均一な照明特性をより向上するとともに、モジュール化されたS偏光波の光源装置を含め、小型かつ低コストで製造することが可能となる。なお、上記の説明では、偏光変換素子21をLEDコリメータ15の後に取り付けるものとして説明したが、これに限定されず、液晶表示パネル11に到る光路中に設けることによっても同様の作用・効果が得られる。
【0121】
なお、上述のように、導光体光反射部172には、多数の反射面172aと連接面172bとが交互に鋸歯状に形成されており、照明光束は、各々の反射面172a上で全反射されて上方に向かい、更には、導光体光出射部173には図示しない狭角拡散板を設けて略平行な拡散光束として指向特性を制御する光方向変換パネル54に入射し、斜め方向から液晶表示パネル11へ入射する。本実施例では、光方向変換パネル54を導光体出射部173と液晶表示パネル11との間に設けたが、液晶表示パネル11の出射面に設けても、同様の効果が得られる。
【0122】
<光源装置13の例(2)>
図14に、光源装置13等の光学系の構成についての他の例を示す。図14では、図13の例と同様に、光源を構成する複数(本例では2個)のLED素子14(14a,14b)が示されており、これらはLEDコリメータ15に対して所定の位置に取り付けられている。なお、このLEDコリメータ15は、各々、例えばアクリル等の透光性の樹脂により形成されている。そして、図13の例と同様に、このLEDコリメータ15は、放物断面を回転して得られる円錐凸形状の外周面156を有すると共に、その頂部では、その中央部に凸部(即ち凸レンズ面)157を形成した凹部153を有する。また、その平面部の中央部には、外側に突出した凸レンズ面(あるいは、内側に凹んだ凹レンズ面でも良い)154を有している。なお、LEDコリメータ15の円錐形状の外周面156を形成する放物面は、LED素子14から周辺方向に出射する光をその内部で全反射することが可能な角度の範囲内において設定され、あるいは、反射面が形成されている。
【0123】
また、LED素子14(14a,14b)は、その回路基板であるLED基板102の表面上の所定の位置にそれぞれ配置されている。このLED基板102は、LEDコリメータ15に対して、その表面上のLED素子14(14a,14b)が、それぞれ、その凹部153の中央部に位置するように配置されて固定されている。
【0124】
かかる構成によれば、上述したLEDコリメータ15によって、LED素子14から放射される光のうち、特に、その中央部分から上方(図14での右方向)に向かって放射される光は、LEDコリメータ15の外形を形成する2つの凸レンズ面157,154により集光されて平行光となる。また、その他の部分から周辺方向に向かって出射される光は、LEDコリメータ15の円錐形状の外周面156を形成する放物面によって反射され、同様に、集光されて平行光となる。換言すれば、その中央部に凸レンズを構成すると共に、その周辺部に放物面を形成したLEDコリメータ15によれば、LED素子14により発生された光の略全てを平行光として取り出すことが可能となり、発生した光の利用効率を向上することが可能となる。
【0125】
なお、図14(A)のように、LEDコリメータ15の光の出射側には第1拡散板18aを介して導光体170が設けられている。導光体170は、例えばアクリル等の透光性の樹脂により断面が略三角形の棒状に形成された部材である。そして、導光体170は、図14(A)からも明らかなように、合成拡散ブロック16の出射面に第1拡散板18aを介して対向する導光体170の導光体入射部(入射面を含む)171と、斜面を形成する導光体光反射部(導光体光反射面を含む)172と、反射型偏光板200を介して液晶表示素子である液晶表示パネル11と対向する導光体光出射部(導光体光出射面を含む)173とを備えている。
【0126】
この反射型偏光板200は、例えばP偏光を反射しS偏光を透過させる特性を有する物を選択すれば、光源であるLED素子14から発した自然光のうちP偏光を反射し、図14(B)に示した導光体光反射部172に設けたλ/4板172cを通過して反射面172dで反射し、再びλ/4板172cを通過することでS偏光に変換され、液晶表示パネル11に入射する光束は、全てS偏光に統一される。
【0127】
同様に、反射型偏光板200としてS偏光を反射しP偏光を透過させる特性を有する物を選択すれば、光源であるLED素子14から発した自然光のうちS偏光を反射し、図14(B)に示した導光体光反射部172に設けたλ/4板172cを通過して反射面172dで反射し、再びλ/4板172cを通過することでP偏光に変換され、液晶表示パネル52に入射する光束は、全てP偏光に統一される。以上述べた構成でも、偏光変換が実現できる。
【0128】
<光源装置13の例(3)>
図11を用いて、光源装置等の光学系の構成についての他の例を説明する。第3の例では、図11に示すように、LED基板102からのP偏光とS偏光が混在する自然光の発散光束をLEDコリメータレンズ18により略平行光束に変換し、反射型導光体304により液晶表示パネル11に向けて反射する。反射光は、液晶表示パネル11と反射型導光体304の間に配置された反射型偏光板206に入射する。反射型偏光板206で特定の偏波(例えばS偏波)が反射され、導光体304の反射面を繋ぐ面を透過し、導光体304の反対面に面して配置された反射板271で反射され、位相板(λ/4波長板)270を2度透過することで偏光変換され、導光体と反射型偏光板を透過して液晶表示パネル11に入射し、映像光に変調される。この時、特定偏波と偏光変換された偏波面を合わせることで、光の利用効率が通常の2倍となり、反射型偏光板の偏光度(消光比)もシステム全体の消光比に乗せられるので、本実施例の光源装置を用いることで、情報表示システムのコントラスト比が大幅に向上する。
【0129】
この結果、LEDからの自然光は、特定の偏波(例えばP偏波)に揃えられる。図11では、上述の例と同様に、光源を構成する複数のLED素子14(縦断面であるため1個のみ図示)が設けられており、これらはLEDコリメータレンズ18に対して所定の位置に取り付けられている。なお、このLEDコリメータレンズ18は、各々、例えばアクリル等の透光性の樹脂またはガラスにより形成されている。そして、このLEDコリメータレンズ18は、上述の例と同様に、放物断面を回転して得られる円錐凸形状の外周面を有すると共に、その頂部では、その中央部に凸部(即ち凸レンズ面)を形成した凹部を有する。また、その平面部の中央部には、外側に突出した凸レンズ面(あるいは、内側に凹んだ凹レンズ面でも良い)を有している。なお、LEDコリメータレンズ18の円錐形状の外周面を形成する放物面は、LEDコリメータレンズ18から周辺方向に出射する光をその内部で全反射することが可能な角度の範囲内において設定され、あるいは、反射面が形成されている。
【0130】
また、LED素子14は、その回路基板であるLED基板102の表面上の所定の位置にそれぞれ配置されている。このLED基板102は、LEDコリメータレンズ18に対して、その表面上のLEDが、それぞれ、その凹部の中央部に位置するように配置されて固定されている。
【0131】
かかる構成によれば、LEDコリメータレンズ18によって、LED素子14から放射される光のうち、特に、その中央部分から放射される光は、LEDコリメータレンズ18の外形を形成する2つの凸レンズ面により集光されて平行光となる。また、その他の部分から周辺方向に向かって出射される光は、LEDコリメータレンズ18の円錐形状の外周面を形成する放物面によって反射され、同様に、集光されて平行光となる。換言すれば、その中央部に凸レンズを構成すると共に、その周辺部に放物面を形成したLEDコリメータレンズ18によれば、LED素子14により発生された光の略全てを平行光として取り出すことが可能となり、発生した光の利用効率を向上することが可能となる。
【0132】
<光源装置13の例(4)>
更に、図17を用いて、光源装置等の光学系の構成についての他の例を説明する。LEDコリメータレンズ18の光の出射側には図面の垂直方向と水平方向の拡散特性を変換する光学シート207を2枚用い、LEDコリメータレンズ18からの光を2枚の光学シート207(拡散シート、拡散フィルムともいう。)の間に入射させる。この光学シート207は、1枚で構成する場合には表面と裏面の微細形状で垂直と水平の拡散特性を制御する。また、光学シート207を複数枚使用して作用を分担しても良い。光学シート207の表面形状と裏面形状により、LEDコリメータレンズ18からの光の画面垂直方向の拡散角を光学シート207の反射面の垂直面の幅に合わせ、水平方向は液晶表示パネル11から出射する光束の面密度が均一になるように、LED素子14の数量と光学素子107からの発散角を設計パラメータとして最適設計すると良い。つまり、本実施例では、導光体の代わりに複数の拡散シートの表面形状により拡散特性を制御する。本実施例では、偏光変換は、上述した光源装置の例3と同様の方法で行われる。更に、LEDコリメータレンズ18と光学シート207の間に偏光変換素子を設けて、偏光変換を行った後、光学シート207に光源光を入射させても良い。
【0133】
前述した反射型偏光板206は、S偏光を反射しP偏光を透過させる特性を有する物を選択すれば、光源であるLED素子から発した自然光のうちS偏光を反射し、位相差板270を通過して、反射面272で反射し、再び位相差板270を通過することでP偏光に変換され、液晶表示パネル11に入射する。この位相差板270の厚さは、位相差板への光線の入射角度により最適値を選ぶ必要があり、λ/16からλ/4の範囲に最適値が存在する。
【0134】
<光源装置13の例(5)>
図18を用いて、光源装置13の光学系の構成についての他の例を説明する。図18(C)に示すように、LEDコリメータレンズ18の光の出射側には偏光変換素子21を配置する。そして、LED素子14(例えばLED素子14c)からの自然光を特定の偏波に揃えて拡散特性を制御する光学素子81に入射し、図面の垂直方向と水平方向の拡散特性を制御することで、反射型導光体220の反射面に向けての配光特性を最適なものとする。反射型導光体220の表面には、図18(B)に示すように、凹凸パターン222を設け、反射型導光体220の対向面に配置される図示しない映像表示装置に向けて反射し、所望の拡散特性を得る。光源のLED素子14とLEDコリメータレンズ18の配置精度は、光源の効率に大きく影響するため、通常光軸精度は50μm程度の精度が必要となる。そのため、発明者は、LEDの発熱によりLEDコリメータレンズ18の膨張により取り付け精度が低下することへの対策として、幾つかのLED素子14とLEDコリメータレンズ18を一体とした光源ユニット223の構造として、複数または単独のユニットを光源装置に用いることで、取り付け精度の低下を軽減した。
【0135】
図18(A)(B)(C)に示した実施例では、反射型導光体220の長辺方向の両端部にはLED素子14とLEDコリメータレンズ18を一体化した光源ユニット223が複数組み込まれ(図18の実施例では片側3個ずつ)、光源装置の輝度均一化を実現している。導光体220の反射面220aには、光源ユニットに略平行の凹凸パターン222が複数形成され、一つの凹凸パターン222においてもその表面は多面体を形成することで、映像表示装置に入射する光量を高精度に制御することができる。本実施例では、反射面の形状を凹凸パターン222として説明したが、三角面、波形面などが規則的または不規則に配列したパターンでもよく、面形状により導光体220から映像表示装置に向けた配光パターンを制御すればよい。また、導光体220の側面にはLEDコリメータレンズ18で制御された光が光源装置13から外部に漏れないように遮光壁224を設け、LED素子14は金属製の基盤225により放熱性を高めた設計とするとよい。
【0136】
<レンチキュラーシート>
以下、上述した映像表示装置1からの出射光の拡散特性を制御するレンチキュラーレンズによる作用について説明する。レンチキュラーレンズのレンズ形状を最適化することで、映像表示装置1から出射されてウィンドガラス105を透過または反射して効率良く空間浮遊映像3を得ることが可能となる。即ち、映像表示装置1からの映像光に対し、2枚のレンチキュラーレンズを組み合わせ、またはマイクロレンズアレイをマトリックス状に配置して拡散特性を制御するシートを設けて、X軸およびY軸方向において、映像光の輝度(相対輝度)をその反射角度(垂直方向を0度)に応じて制御することができる。本実施例では、このようなレンチキュラーレンズにより、従来に比較し、図16(B)に示すように、垂直方向の輝度特性を急峻にできる。更に、上下方向(Y軸の正負方向)の指向特性のバランスを変化させることで、反射や拡散による光の輝度(相対輝度)を高めることができる。これらの作用効果により、面発光レーザ映像源からの映像光のように、拡散角度が狭く(言い換えると直進性が高く)、かつ特定の偏波成分のみの映像光とし、従来技術による映像表示装置を用いた場合に再帰反射部材で発生していたゴースト像を抑え、効率良く観視者の眼に再帰反射による空間浮遊映像が届くように制御できる。
【0137】
また上述した各光源装置により、図16(A)、(B)に示した一般的な液晶表示パネルからの出射光拡散特性(図中では従来と表記)に対してX軸方向およびY軸方向ともに大幅に狭角な指向特性を実現することができる。これにより、特定方向に対して平行に近い映像光束を出射する特定偏波の光を出射する映像表示装置が実現できる。
【0138】
図15には、本実施例で採用するレンチキュラーレンズの特性の一例を示している。この例では、特に、X軸(垂直方向)における特性を示しており、特性Oは、光の出射方向のピークが垂直方向(0度)から上方に30度付近の角度であり上下に対称な輝度特性を示している。また、特性Aや特性Bは、更に、30度付近においてピーク輝度の上方の映像光を集光して輝度(相対輝度)を高めた特性の例を示している。このため、これらの特性Aや特性Bでは、30度を超えた角度において、特性Oに比較して、急激に光の輝度(相対輝度)が低減する。
【0139】
即ち、上述したレンチキュラーレンズを含んだ光学系によれば、映像表示装置1からの映像光束を再帰反射部材2に入射させる際、光源装置13,230で狭角に揃えられた映像光の出射角度や視野角を制御でき、再帰反射部材2の設置の自由度を大幅に向上できる。その結果、図1のウィンドガラス105を反射または透過して所望の位置に結像する空間浮遊映像3の結像位置の関係の自由度を大幅に向上できる。この結果、拡散角度が狭く(直進性が高く)かつ特定の偏波成分のみの光として効率良く室外または室内の観視者の眼に届くようにすることができる。このことによれば、映像表示装置1からの映像光の強度(輝度)が低減しても、観視者は映像光を正確に認識して情報を得ることができる。換言すれば、映像表示装置1の出力を小さくすることにより、消費電力の低い空間浮遊映像表示装置を実現することができる。
【0140】
以上、種々の実施例について詳述したが、本発明は、上述した実施例に限定されず、様々な変形例が含まれる。例えば、上記実施例は本発明を分かりやすく説明するためにシステム全体を詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものには限定されない。また、ある実施例の構成の一部を他の実施例の構成に置き換えることが可能であり、また、ある実施例の構成に他の実施例の構成を加えることも可能である。また、各実施例の構成の一部について、他の構成の追加・削除・置換が可能である。
【0141】
本実施例に係る技術では、空間浮遊映像を高解像度かつ高輝度な映像情報を空間浮遊した状態で表示することにより、例えば、ユーザは感染症の接触感染に対する不安を感じることなく操作することを可能にする。不特定多数のユーザが使用するシステムに本実施例に係る技術を用いれば、感染症の接触感染のリスクを低減し、不安を感じることなく使用できる非接触ユーザインタフェースを提供することを可能にする。これにより、国連の提唱する持続可能な開発目標(SDGs:Sustainable Development Goals)の「3すべての人に健康と福祉を」に貢献する。また、本実施例に係る技術では、出射する映像光の発散角を小さく、さらに特定の偏波に揃えることで、再帰反射部材に対して正規の反射光だけを効率良く反射させるため、光の利用効率が高く、明るく鮮明な空間浮遊映像を得ることを可能にする。本実施例に係る技術によれば、消費電力を大幅に低減することが可能な、利用性に優れた非接触ユーザインタフェースを提供することができる。これにより、国連の提唱する持続可能な開発目標(SDGs:Sustainable Development Goals)の「9産業と技術革新の基盤をつくろう」に貢献する。
【符号の説明】
【0142】
1:映像表示装置、2:再帰反射部材、3:空間浮遊映像、4:平面ミラー、5:入出力端子、11:液晶表示パネル、12:吸収型偏光板、13:光源装置、21:λ/4板、100:透明部材、101:ビームスプリッタ(偏光分離部材)、106:筐体、112:吸収型偏光板、601:筐体上部、602:筐体下部、603:上面、604:斜面、605:窓部、606:側面、607:側面、608:下面、610:制御基板、611:充電池。
図1
図2
図3
図4
図5
図6A
図6B
図6C
図6D
図6E
図6F
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18