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特開2024-96216マネージャ、電子制御ユニット、システム、制御方法、制御プログラム、及び車両
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  • 特開-マネージャ、電子制御ユニット、システム、制御方法、制御プログラム、及び車両 図1
  • 特開-マネージャ、電子制御ユニット、システム、制御方法、制御プログラム、及び車両 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024096216
(43)【公開日】2024-07-12
(54)【発明の名称】マネージャ、電子制御ユニット、システム、制御方法、制御プログラム、及び車両
(51)【国際特許分類】
   B60W 30/18 20120101AFI20240705BHJP
   B60W 30/06 20060101ALI20240705BHJP
   B60W 50/12 20120101ALI20240705BHJP
【FI】
B60W30/18
B60W30/06
B60W50/12
【審査請求】有
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024071136
(22)【出願日】2024-04-25
(62)【分割の表示】P 2021030257の分割
【原出願日】2021-02-26
(71)【出願人】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】301065892
【氏名又は名称】株式会社アドヴィックス
(74)【代理人】
【識別番号】110001276
【氏名又は名称】弁理士法人小笠原特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】大橋 秀樹
(72)【発明者】
【氏名】三宅 一城
(72)【発明者】
【氏名】酒井 陽次
(72)【発明者】
【氏名】東 祥太
(57)【要約】
【課題】複数のADASアプリケーションが同じECUに実装されているシステム構成において、機能を作動させている複数のADASアプリケーションのうち任意のADASアプリケーションがドライバーの要求に応答すべきでない状態である場合に、ドライバーの要求に応答しないように調停することができるマネージャなどを提供する。
【解決手段】車両に搭載されたマネージャであって、複数のADASアプリケーションから複数の行動計画とADASアプリケーションの識別情報とを受け付ける第1受付部と、第1受付部が受け付けた複数の行動計画を調停する第1調停部と、を備え、第1受付部は、2つ以上のADASアプリケーションが実装された1つの電子制御ユニットから、行動計画及びADASアプリケーションにおける制御の実施状態を示す制御ステータスを受け付ける。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に搭載されたマネージャであって、
複数のADASアプリケーションから複数の行動計画と前記ADASアプリケーションの識別情報とを受け付ける第1受付部と、
前記第1受付部が受け付けた前記複数の行動計画を調停する第1調停部と、を備え、
前記第1受付部は、2つ以上の前記ADASアプリケーションが実装された1つの電子制御ユニットから、前記行動計画及び前記ADASアプリケーションにおける制御の実施状態を示す制御ステータスを受け付ける、
マネージャ。
【請求項2】
ドライバーの要求を受け付ける第2受付部と、
前記第2受付部が受け付けた前記ドライバーの要求と前記第1調停部による調停結果とを調停する第2調停部と、をさらに備え、
前記第2調停部は、前記制御ステータスに基づいて、前記第2受付部が受け付けた前記ドライバーの要求への応答を拒否する、
請求項1に記載のマネージャ。
【請求項3】
前記2つ以上の前記ADASアプリケーションは、自動運転アプリケーションと運転支援アプリケーションとを含む、
請求項2に記載のマネージャ。
【請求項4】
前記自動運転アプリケーションは、駐車を支援する自動駐車アプリケーションであり、
前記運転支援アプリケーションは、低速走行時のブレーキ動作を支援するPKSBアプリケーションであり、
前記ドライバーの要求は、シフトレンジの設定を制御する要求である、
請求項3に記載のマネージャ。
【請求項5】
前記制御ステータス及び前記ドライバーの要求への応答可否の関係を示す情報を記憶する記憶部を、さらに備える、
請求項2乃至4のいずれか1項に記載のマネージャ。
【請求項6】
車両に搭載され、2つ以上のADASアプリケーションを実装する電子制御ユニットとマネージャとを備える、システムであって、
前記電子制御ユニットは、前記ADASアプリケーションの行動計画と、前記ADASアプリケーションにおける制御の実施状態を示す制御ステータスとを、前記マネージャに出力する出力部を備え、
前記マネージャは、
前記電子制御ユニットから、複数の前記行動計画及び前記制御ステータスをそれぞれ受け付ける受付部と、
前記受付部が受け付けた複数の前記行動計画を調停する調停部と、を備える、
システム。
【請求項7】
車両に搭載されたマネージャのコンピューターが実行する制御方法であって、
2つ以上のADASアプリケーションが実装された1つの電子制御ユニットから、複数の行動計画と、前記ADASアプリケーションにおける制御の実施状態を示す制御ステータスと、を受け付けるステップと、
前記受け付けた前記複数の行動計画を調停するステップと、を含む、
制御方法。
【請求項8】
車両に搭載されたマネージャのコンピューターに実行させる制御プログラムであって、
2つ以上のADASアプリケーションが実装された1つの電子制御ユニットから、複数の行動計画と、前記ADASアプリケーションにおける制御の実施状態を示す制御ステータスと、を受け付けるステップと、
前記受け付けた前記複数の行動計画を調停するステップと、を含む、
制御プログラム。
【請求項9】
請求項1乃至5のいずれか1項に記載のマネージャを搭載した、車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、車両に搭載されるマネージャなどに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、自動運転や自動駐車などの自動運転機能を実現する先進運転支援アプリケーション(ADAS(Advanced Driver Assistance System)アプリケーション)が、車両に複数実装されている。特許文献1には、これらの複数のADASアプリケーションから出力される要求をそれぞれ受け付けて、この複数のADASアプリケーションから受け付けた複数の要求を調停し、その調停結果に基づいてアクチュエータ(ステアリング装置やブレーキ装置など)を駆動するための要求を出力する、制御装置(マネージャ)が開示されている。
【0003】
ADASアプリケーションの1つに、車両の自動駐車の機能を実現する自動駐車アプリケーションがある。この自動駐車アプリケーションでは、自動駐車機能の作動中にドライバーの要求としてシフトレンジを変更する操作の入力(シフト操作)があった場合、このシフト操作には応答せずに自動駐車制御を直ちに中止することを行う。
【0004】
また、ADASアプリケーションの1つに、駐車などにおける低速走行時のブレーキ動作を支援する機能を実現するアプリケーション、例えばパーキングサポートブレーキ(PKSB)アプリケーションがある。このPKSBアプリケーションでは、PKSB機能の作動中にドライバーのシフト操作があった場合、このシフト操作に応答しつつPKSB機能の作動状態を維持することを行う。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2020-032894号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ADASアプリケーションとPKSBアプリケーションとが別個の電子制御ユニット(ECU:Electronic Control Unit)にそれぞれ実装されているシステム構成では、例えば自動駐車機能の作動中に後からPKSB機能が作動した場合であっても、それぞれのECUから要求と共に受け付けるADASアプリケーションを一意に特定することができる識別情報(アプリID)が出力される。このため、マネージャは、それぞれのアプリIDを受け付けていることをもって、自動駐車機能とPKSB機能との双方が作動中であることを把握できる。従って、この場合には、自動駐車機能とPKSB機能との双方が作動しているときにドライバーのシフト操作があったとしても、マネージャは、自動駐車機能を優先させてシフト操作には応答しないという調停が可能である。
【0007】
しかし、ADASアプリケーションとPKSBアプリケーションとが同じECUに実装されているシステム構成では、自動駐車機能の作動中に後からPKSB機能が作動した場合には、このECUからは直近の出力としてPKSB機能の要求及びアプリIDのみが出力されることとなる。このため、マネージャは、受け付けたアプリIDによってPKSB機能が作動中であることは把握できても、自動駐車機能が作動中なのか終了したのかを判断することができない。従って、この場合、自動駐車機能とPKSB機能との双方が作動しているときにドライバーのシフト操作があると、マネージャは、シフト操作に応答する調停を行ってしまう虞がある。
【0008】
本開示は、上記課題を鑑みてなされたものであり、複数のADASアプリケーションが同じECUに実装されているシステム構成において、機能を作動させている複数のADASアプリケーションのうち任意のADASアプリケーションがドライバーの要求に応答すべきでない状態である場合に、ドライバーの要求に応答しないように調停することができるマネージャなどを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、本開示技術の一態様は、車両に搭載されたマネージャであって、複数のADASアプリケーションから複数の行動計画とADASアプリケーションの識別情報とを受け付ける第1受付部と、第1受付部が受け付けた複数の行動計画を調停する第1調停部と、を備え、第1受付部は、2つ以上のADASアプリケーションが実装された1つの電子制御ユニットから、行動計画及びADASアプリケーションにおける制御の実施状態を示す制御ステータスを受け付ける、マネージャである。
【発明の効果】
【0010】
本開示によれば、マネージャは、ADASアプリケーションから制御の実施状態を示す制御ステータスを受け付ける。これにより、マネージャは、複数のADASアプリケーションが同じECUに実装されているシステム構成において、機能を作動させている複数のADASアプリケーションのうち任意のADASアプリケーションがドライバーの要求に応答すべきでない状態である場合に、ドライバーの要求に応答しないように調停することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本開示の一実施形態に係るシステムの構成例を示す概略図
図2】マネージャの調停部が実行する調停制御の処理手順のフローチャート
【発明を実施するための形態】
【0012】
本開示のマネージャは、少なくとも自動駐車アプリケーションとPKSBアプリケーションとが実装されているECUから、要求機能を実現するアプリケーションの識別IDとは別に自動駐車機能の制御状態を示す情報を取得する。この情報によって、PKSB制御などの陰で作動している自動駐車制御を把握することができるため、マネージャは、自動駐車制御にとって好ましくないドライバー要求への応答を拒否することができる。
以下、本開示の一実施形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。
【0013】
<実施形態>
[構成]
図1は、本開示の一実施形態に係る車両に搭載されるシステム1の構成例を示す概略図である。図1に例示したシステム1は、マネージャ10、運転支援システム20、アクチュエータシステム30、シフト操作センサ40、及びシフト制御部50の構成を備えており、各構成は車載ネットワーク100を介して通信可能に接続されている。車載ネットワーク100は、CAN(Controller Area Network)やイーサネット(登録商標)などを例示できる。
【0014】
運転支援システム20は、実装されるアプリケーションを実行することにより、少なくとも車両の駆動制御及び制動制御を含む車両の運転を支援するための様々な機能を実現するための構成である。運転支援システム20が実装するアプリケーションとしては、自動運転の機能を実現する自動運転アプリケーションや車両の運転支援に関する様々な機能を実現する運転支援アプリケーションなどの、1つ又は複数のADASアプリケーションを例示できる。自動運転アプリケーションには、車両の自動駐車の機能を実現する自動駐車アプリケーションなどがある。運転支援アプリケーションには、駐車などにおける低速走行時のブレーキ動作を支援する機能を実現するPKSBアプリケーション、衝突回避支援(PCSなど)の機能を実現するアプリケーション、前走車との車間距離を一定に保ちながら走行する前車追従走行(ACCなど)の機能を実現するアプリケーション、走行する車線の維持を行う車線維持支援(LKA、LTAなど)の機能を実現するアプリケーション、衝突の被害を軽減させるために自動的に制動をかける衝突被害軽減ブレーキ(AEBなど)の機能を実現するアプリケーション、車両の走行車線の逸脱を警告する車線逸脱警報(LDW、LDAなど)の機能を実現するアプリケーションなどがある。
【0015】
この運転支援システム20の各アプリケーションは、図示しない各種センサなどから取得(入力)する車両の情報(認識センサ情報など)に基づいて、アプリケーションの要求として、アプリケーション単独での機能性(商品性)を担保した行動計画の要求を、マネージャ10にそれぞれ出力する。この行動計画には、車両に発生させる前後加速度/減速度に関する要求、及びシフトレンジの設定に関する要求(シフトレンジ要求値)などが含まれる。また、運転支援システム20の各アプリケーションは、行動計画と共に、自身のアプリケーションを一意に特定することができる識別情報(アプリID)を、マネージャ10にそれぞれ出力する。このアプリIDは、アプリケーションごとに予めユニークに定められている。さらに、運転支援システム20における特定のアプリケーションは、自身のアプリケーションの機能の制御状態を示す制御ステータス(制御状態信号)を、マネージャ10にそれぞれ出力する。特定のアプリケーション及び制御ステータスについては、後述する。
【0016】
この運転支援システム20は、CPUなどのプロセッサ、メモリ、及び入出力インターフェイス(出力部)を有する電子制御ユニット(ECU)などのコンピューターによって実現される。なお、運転支援システム20を構成するECUの数や、ECUが実装するアプリケーションの数は、特に限定されない。例えば、運転支援システム20として、複数のアプリケーションをまとめて実装したECUが1つ又は複数設けられてもよいし、1つのアプリケーションを実装したECUが1つ又は複数設けられてもよい。例えば、自動駐車アプリケーションとPKSBアプリケーションとの両方が実装されたECUによって、運転支援システム20の一部又は全部が構成されてもよいし、自動駐車アプリケーションが実装されたECUとPKSBアプリケーションが実装されたECUとによって、運転支援システム20の一部又は全部が構成されてもよい。
【0017】
アクチュエータシステム30は、運転支援システム20が出力する行動計画の要求を実現するための実現システムの1つである。図1では、1つのアクチュエータシステム30のみが車載ネットワーク100に接続されている例を示したが、車両に搭載されるアクチュエータシステム30の数は、特に限定されない。アクチュエータシステム30としては、車両に制動力を発生させることが可能なブレーキアクチュエータ(電動ブレーキ装置など)を含み、ブレーキアクチュエータの動作を制御することによって行動計画の要求(加速度要求)を実現させるシステムや、シフト機構を操作することが可能なシフトアクチュエータを含み、シフトアクチュエータの動作を制御することによって行動計画の要求(シフトレンジ要求値)を実現させるシステム、を例示できる。
【0018】
シフト操作センサ40は、車両のドライバーの要求としてドライバーによって操作されたシフトレンジの切り替えを検出するための構成である。このシフト操作センサ40での検出結果は、マネージャ10に出力される。
【0019】
シフト制御部50は、運転支援システム20が出力する行動計画に基づくマネージャ10からの要求(シフトレンジ要求値)及び/又はドライバーの要求(シフト操作)に基づいて、車両のシフトレンジ(シフトポジション)の設定を制御するための構成である。このシフト制御部50は、例えばシフトECUに組み込まれ、シフトアクチュエータを制御する。
【0020】
マネージャ10は、運転支援システム20から受け付ける行動計画の要求に基づいて、車両の運動に関する制御内容を決定し、この決定した制御内容に基づいてアクチュエータシステム30に対して必要な要求を出力する。また、マネージャ10は、運転支援システム20から行動計画の要求と共に取得したアプリケーションのアプリIDと、そのアプリケーションの制御ステータスとに基づいて、シフト制御部50に対してシフトレンジの設定制御に必要な指示を行う。
【0021】
このマネージャ10は、いわゆる車両の運動に関わるADAS-MGRやVehicle-MGRなどとして、あるいはADAS-MGRやVehicle-MGRの一部として機能し、車両の動きを制御する。マネージャ10は、受付部11と、調停部12と、算出部13と、分配部14と、を含む。
【0022】
受付部11(第1受付部)は、運転支援システム20の1つ又は複数のアプリケーションが出力する行動計画の要求、アプリID、及び制御ステータスを受け付ける。本実施形態における行動計画としては、車両の前後方向(縦方向)運動に関する加速度及びシフトレンジ要求値を例示することができる。また、受付部11(第2受付部)は、ドライバーの要求として、シフト操作センサ40で検出されたシフト操作を受け付ける。受付部11が受け付けた行動計画の要求、アプリID、及びドライバーの要求(シフト操作)は、調停部12に出力される。
【0023】
調停部12(第1調停部)は、受付部11が運転支援システム20の各アプリケーションから受け付けた複数の行動計画の要求を調停する。この調停の処理としては、所定の選択基準(例えば、Min選択)に基づいて複数の行動計画の中から1つの行動計画を選択することが例示できる。また、調停の処理として、複数の行動計画に基づいて新たな行動計画を設定することもできる。なお、調停部12は、アクチュエータシステム30から取得するアベイラビリティを表す情報にさらに基づいて、複数の行動計画の要求を調停してもよい。
【0024】
また、調停部12(第2調停部)は、受付部11が運転支援システム20のアプリケーションから受け付けた制御ステータスと、シフト操作センサ40からの検出結果とに基づいて、ドライバーの要求(シフト操作)に応答すべきか否かを判断する。このドライバーの要求への応答可否の判断(現状維持/変更の判定)については、後述する。そして、調停部12は、この判断に従って、シフト制御部50に対してシフトレンジの設定制御に必要な指示を行う。
【0025】
算出部13は、調停部12における行動計画の要求の調停結果に基づいて、運動要求を算出する。この運動要求は、アクチュエータシステム30を制御するための物理量であり、行動計画の要求の物理量とは異なる。例えば、行動計画の要求(第1の要求)が加速度である場合には、運動要求(第2の要求)として駆動力や駆動トルクを算出することができる。これにより、加速度の要求が駆動力や駆動トルクの要求に変換される。
【0026】
分配部14は、算出部13によって算出された運動要求を少なくとも1つのアクチュエータシステム(アクチュエータシステム30や図示しない他のアクチュエータシステム)に分配する。
【0027】
なお、以上説明した、車両に搭載された機器の構成及びマネージャ10の構成は一例であって、適宜、追加、置換、変更、省略などが可能である。また、各機器の機能は適宜1つの機器に統合したり複数の機器に分散したりして実装することが可能である。例えば、マネージャ10の受付部11が有する機能のうち、シフト操作センサ40で検出されたシフト操作を受け付ける機能(第2受付部)を、マネージャ10とは異なる別の機器に実装したり、あるいはシフト制御部50に実装したりしてもよい。また、マネージャ10の調停部12が有する機能のうち、制御ステータスに基づいてドライバーの要求に応答すべきか否かを判断する機能(第2調停部)を、マネージャ10とは異なる別の機器に実装したり、あるいはシフト制御部50に実装したりしてもよい。
【0028】
[制御]
図2をさらに参照して、本実施形態に係るマネージャ10が実行する制御を説明する。図2は、マネージャ10の調停部12が実行するシフトレンジに関する調停制御の処理手順を説明するフローチャートである。このフローチャートでは、ドライバーの要求がシフト操作であって、ドライバーの要求よりも自機能のシフト要求を優先すべき状態が存在する特定のアプリケーションと、自機能のシフト要求よりもドライバーの要求を優先させる特定外のアプリケーションとが、同一のECUに実装されているケースを一例に、調停制御を説明する。ドライバーの要求としてはシフト操作を、特定のアプリケーションとしては自動駐車アプリケーションを、特定外のアプリケーションとしてはPKSBアプリケーションを、それぞれ例示できる。
【0029】
図2に示す調停制御は、例えば、ドライバーの要求であるドライバーによるシフト操作が行われると開始される。
【0030】
(ステップS201)
調停部12は、自動駐車アプリケーションを実装するECUから、そのECUがマネージャ10に対して行動計画を要求するアプリケーションのアプリID、その行動計画においてアプリケーションが要求するシフトレンジ要求値、及びそのアプリケーションの制御ステータスを、受付部11を介して取得する。取得する制御ステータスには、特定のアプリケーションである自動駐車アプリケーションが実現する自動駐車機能の制御状態を示す制御ステータスが、少なくとも含まれる。なお、調停部12は、ECUに実装される全てのアプリケーションの制御ステータスを取得してもよい。調停部12は、ドライバーの要求があったときだけでなく、調停の必要に応じて随時アプリID、シフトレンジ要求値、及び制御ステータスをECUから取得する。自動駐車アプリケーションを実装するECUからアプリID、シフトレンジ要求値、及び制御ステータスが取得されると、ステップS202に処理が進む。
【0031】
自動駐車機能の制御ステータスとしては、自動駐車機能が作動していない状態を示す「制御外」、自動駐車機能が作動している状態を示す「制御中」、自動駐車機能は作動しているが一時的に処理が中断している状態を示す「制御中断中」、及び自動駐車機能による車両移動が完了して作動を終了させるまでの後処理を実行している状態を示す「制御終了処理中」などを、例示できる。なお、制御ステータスの区分は、上記したものに限定されない。例えば、自動駐車機能を作動させて車両の移動を開始するまでの前処理を実行している状態を示す「制御開始処理中」を新たに制御ステータスの区分に追加したり、「制御終了処理中」を「制御中」の区分に含めた制御ステータスにしたり、してもよい。
【0032】
(ステップS202)
調停部12は、自動駐車アプリケーションによって実現される自動駐車機能が作動しているか否かを判断する。この判断は、ECUから取得したアプリIDが自動駐車アプリケーションのものであるか否かで行ってもよいし、ECUから取得した動駐車機能の制御ステータスが「制御中」「制御中断中」「制御終了処理中」のいずれかであるか否かで行ってもよい。調停部12が、自動駐車機能が作動していると判断した場合は(ステップS202、はい)、ステップS203に処理が進み、自動駐車機能が作動していないと判断した場合は(ステップS202、いいえ)、本調停制御が終了する。
【0033】
(ステップS203)
調停部12は、自動駐車アプリケーションを実装したECUから取得したアプリIDが、自動駐車アプリケーション以外のアプリケーション(PKSBアプリケーションなど)のものであるか否かを判断する。例えば、自動駐車機能の作動中に他の機能が選択された(他の制御が介入した)場合には、アプリIDが一時的に自動駐車アプリケーション以外のアプリケーションのものとなる。調停部12が、アプリIDが自動駐車アプリケーション以外のアプリケーションのものであると判断した場合は(ステップS203、はい)、自動駐車機能が停止しているのか作動しているかをアプリIDから把握することができないため、ステップS204に処理が進む。一方、調停部12が、アプリIDが自動駐車アプリケーション以外のアプリケーションのものではないと判断した場合は(ステップS203、いいえ)、アプリIDは自動駐車アプリケーションのものとなるため、ステップS207に処理が進む。
【0034】
(ステップS204)
調停部12は、自動駐車機能の制御ステータスが「制御外」であるか否かを判断する。調停部12が、制御ステータスが「制御外」であると判断した場合は(ステップS204、はい)、自動駐車機能が作動していないためドライバーの要求を受け入れることができるので、ステップS205に処理が進む。一方、調停部12が、制御ステータスが「制御外」ではないと判断した場合は(ステップS204、いいえ)、自動駐車機能が作動しておりドライバーの要求を受け入れることができないので(自動駐車機能を優先)、ステップS207に処理が進む。
【0035】
(ステップS205)
調停部12は、ドライバーの要求であるドライバーによるシフト操作を許可する。その後、ステップS206に処理が進む。
【0036】
(ステップS206)
調停部12は、シフト制御部50に指示するシフトレンジを最新の要求値に設定する。最新の要求値は、自動駐車アプリケーション以外のアプリケーション(PKSBアプリケーションなど)が要求するシフトレンジ要求値と、ドライバーによるシフト操作に応じた要求値との、調停に基づいて設定される。シフトレンジ指示が設定されると、本調停制御が終了する。
【0037】
(ステップS207)
調停部12は、ドライバーの要求であるドライバーによるシフト操作を許可しない(不許可)。その後、ステップS208に処理が進む。
【0038】
(ステップS208)
調停部12は、シフト制御部50に指示するシフトレンジを自動駐車アプリケーションが要求するシフトレンジ要求値に設定する。シフトレンジ指示が設定されると、本調停制御が終了する。
【0039】
<作用・効果>
以上のように、本開示の一実施形態に係るシステムでは、ドライバーの要求(ドライバーのシフト操作)よりも自機能の要求(シフトレンジ要求)を優先すべき状態が存在する特定のアプリケーション(自動駐車アプリケーション)と、自機能の要求(シフトレンジ要求)よりもドライバーの要求を優先させる特定外のアプリケーション(PKSBアプリケーション)とが、同一のECUに実装されている場合、ECUがマネージャに対して特定のアプリケーションが実現する機能(自動駐車機能)の制御状態を示す制御ステータスを常時出力することを行う。
【0040】
この制御ステータスによって、マネージャは、特定外のアプリケーションが実現する機能制御(PKSB制御)のバックグラウンドで特定のアプリケーションの機能(自動駐車機能)が作動していることを、容易に把握することができる。これにより、マネージャは、特定のアプリケーションのアプリIDを取得していなくても、入力されるドライバーの要求への応答を拒否することが可能となる。
【0041】
上記実施形態においては、ドライバーの要求よりも自機能の要求を優先すべき状態が存在するアプリケーションとして自動駐車アプリケーションを示して説明した。しかし、自動駐車アプリケーション以外のアプリケーション(例えば、自動運転アプリケーションなど)においてドライバーの要求よりも自機能の要求を優先すべき状態が存在する場合にも、同様の処理を適用することが可能である。
【0042】
なお、1つのECUにおいて作動する複数のアプリケーションにそれぞれ対応した複数のアプリIDを、ECUからマネージャに出力できるシステムである場合には、ECUは、制御ステータスに代えてアプリIDをマネージャに出力するようにしてもよい。また、ECUが、アプリIDをマネージャに出力する際に、アプリIDの機能について特定のドライバー要求に対する応答の可否に関する情報を付加しておき、マネージャがその情報を記憶部などに記憶保持しておくことで、同様の処理を実施することができる。
【0043】
以上、本開示技術の一実施形態を説明したが、本開示は、車両に搭載されるマネージャだけでなく、電子制御ユニット、電子制御ユニットとマネージャとを含むシステム、プロセッサとメモリを備えたマネージャが実行する制御方法、制御プログラム、制御プログラムを記憶したコンピューター読み取り可能な非一時的な記憶媒体、あるいはマネージャを備えた車両など、として捉えることが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0044】
本開示は、車両などに搭載されるマネージャなどに有用である。
【符号の説明】
【0045】
1 システム
10 マネージャ
11 受付部
12 調停部
13 算出部
14 分配部
20 運転支援システム
30 アクチュエータシステム
40 シフト操作センサ
50 シフト制御部
100 車載ネットワーク
図1
図2