(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024096227
(43)【公開日】2024-07-12
(54)【発明の名称】流体制御装置
(51)【国際特許分類】
F16K 43/00 20060101AFI20240705BHJP
F16L 55/00 20060101ALI20240705BHJP
F16K 27/02 20060101ALI20240705BHJP
【FI】
F16K43/00
F16L55/00 C
F16K27/02
【審査請求】有
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024071592
(22)【出願日】2024-04-25
(62)【分割の表示】P 2020562916の分割
【原出願日】2019-11-18
(31)【優先権主張番号】P 2018242368
(32)【優先日】2018-12-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000105556
【氏名又は名称】コスモ工機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100098729
【弁理士】
【氏名又は名称】重信 和男
(74)【代理人】
【識別番号】100204467
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 好文
(74)【代理人】
【識別番号】100148161
【弁理士】
【氏名又は名称】秋庭 英樹
(74)【代理人】
【識別番号】100195833
【弁理士】
【氏名又は名称】林 道広
(72)【発明者】
【氏名】玉田 聡
(57)【要約】
【課題】制流体の設計、製造、管理工程を簡素にして製造などのコストを抑えるとともに、所期の制御性を備えた流体制御装置を提供する。
【解決手段】流体管1を密封状に外嵌した筐体2の内部で、流体管1の一部が不断流状態で切断された箇所に密封状に設置され、管内流体を制御する制流体10を備えた流体制御装置であって、制流体10は、開口部12aを備えた弁座体12、及び開口部12aを開閉可能に弁座体12に設けられた弁体13からなる開閉弁11と、開口部12aに連通する貫通孔16aを備え、弁座体12を管軸方向に挟むように密封状に装着された一対の壁部16,16、及び一対の壁部16,16に連設され筐体2の開口側を被覆する蓋部17からなり、一対の壁部16,16及び蓋部17と筐体2の内面との間をシールするシール材19を備えた仕切体15と、から構成されている。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体管を密封状に外嵌した筐体の内部で、前記流体管の一部が不断流状態で切断された箇所に密封状に設置され、管内流体を制御する制流体を備えた流体制御装置であって、
前記制流体は、開口部を備えた弁座体、及び前記開口部を開閉可能に前記弁座体に設けられた弁体からなる開閉弁と、前記開口部に連通する貫通孔を備え、前記弁座体を管軸方向に挟むように密封状に装着された一対の壁部、及び該一対の壁部に連設され前記筐体の開口側を被覆する蓋部からなり、前記一対の壁部及び前記蓋部と前記筐体の内面との間をシールするシール材を備えた仕切体と、から構成されていることを特徴とする流体制御装置。
【請求項2】
前記シール材は、前記一対の壁部それぞれの外面と前記蓋部の外面とに設けられていることを特徴とする請求項1に記載の流体制御装置。
【請求項3】
前記弁座体と前記一対の壁部それぞれとの間に、前記開口部を囲うようにシールする密封部材が介設されていることを特徴とする請求項2に記載の流体制御装置。
【請求項4】
前記一対の壁部それぞれの外面に設けられた前記シール材同士の間に形成される空間が、前記蓋部の外側の空間に連通していることを特徴とする請求項3に記載の流体制御装置。
【請求項5】
前記蓋部に前記制流体の首部を挿通させる軸孔が形成されていることを特徴とする請求項1ないし4のいずれかに記載の流体制御装置。
【請求項6】
前記蓋部は前記首部を管軸方向に挟むように装着され、前記蓋部を管軸方向に接合することで、前記軸孔が形成されることを特徴とする請求項5に記載の流体制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、流体管を密封する筐体内に制流体が不断流状態で設置された流体制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の流体制御装置には、流体管路を構成する流体管を密封状に外嵌する筐体内で、流体管の一部を不断流状態で切断して、その切断した箇所に管内流体を制御するための各種の弁等の制流体を設置したものがある。例えば、特許文献1で示されるように、流体管に対し密封状に筐体を取付け、この筐体の開口部に筐体内を開閉可能な作業弁を取付けるとともに、作業弁にホールソーと駆動部とを有する切断機を設置し、作業弁を開けた状態で駆動部によりホールソーを進行させて筐体内において流体管の一部を不断流状態で切断するとともに、切断機に代えて挿入機を作業弁に取付け、挿入機により制流体を進行させることにより、開口部を介して筐体内に不断流状態で制流体を密封状に設置して構成される流体制御装置が知られている。
【0003】
特許文献1では、このような流体制御装置を構成する制流体として、筐体の開口部側の内周面に密接するシール材を備えた上蓋部(蓋部)と、この上蓋部の下部に一体形成され、筐体の内側面及び底面に密接するシール材を備えた仕切壁(壁部)と、この仕切壁に貫通形成された開口部を開閉可能に動作する弁体と、から主として構成される弁本体(制流体)が示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006-153178号公報(第5頁、第2図)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1にあっては、流体管を外嵌する筐体の内部に設置される制流体は、その設置対象である筐体の内面に合致して密接する精緻な外面形状を要求されていることから、このような精緻な外面形状の蓋部及び壁部を備え、更にこの仕切壁の開口部を所期の制御性で開閉する弁体を備えた制流体を個別に詳細設計する必要があるため、制流体の製造工程が煩雑となるばかりか、製造コストが高まるという問題がある。特に、配管及び制流体などの管路構築部材が敷設される地域によって、流体管や制流体の圧力、塗装、材質などの各仕様や規格には違いがあり、それらに応じて都度、制流体を個別に詳細設計し製造するとコストは莫大となり、また特殊な制流体のストックや保守管理が煩雑になるという問題がある。
【0006】
本発明は、このような問題点に着目してなされたもので、制流体の設計、製造、管理工程を簡素にして製造などのコストを抑えるとともに、所期の制御性を備えた流体制御装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決するために、本発明の流体制御装置は、
流体管を密封状に外嵌した筐体の内部で、前記流体管の一部が不断流状態で切断された箇所に密封状に設置され、管内流体を制御する制流体を備えた流体制御装置であって、
前記制流体は、開口部を備えた弁座体、及び前記開口部を開閉可能に前記弁座体に設けられた弁体からなる開閉弁と、前記開口部に連通する貫通孔を備え前記弁座体に密封状に装着された壁部、及び該壁部に連設され前記筐体の開口側を被覆する蓋部からなり、前記筐体の内面との間をシールするシール材を備えた仕切体と、から構成されていることを特徴としている。
この特徴によれば、流体管を密封状に外嵌する筐体内に設置される制流体として、弁座体及びその開口部を開閉する弁体からなる開閉弁と、弁座体に装着された壁部、及び筐体の開口を被覆する蓋部からなり、この筐体の内面との間をシールするシール材を備えた仕切体とが、別個に構成されているため、筐体の形状に則して詳細に設計・製造した制流体を要することなく、開閉弁として汎用性が高く且つ所期の流体制御性を有する規格品や市販品を採用できるうえに、この開閉弁と筐体内面とに介在する仕切体によって筐体内の密封性を保持することができる。また、仕切体が弁座体の開口部を囲う壁部と、この壁部に連設された蓋部とからなるため、仕切体の構造強度や剛性が高まり、管内流体の圧力変動や流速変動に抗して密封性を維持できる。
【0008】
前記壁部は前記弁座体を管軸方向に挟むように一対に装着されることを特徴としている。
この特徴によれば、開閉弁の弁座体を管軸方向に挟むように一対の壁部をアプローチさせることで、これらの壁部を簡便に装着できる。
【0009】
前記蓋部は前記一対の壁部のそれぞれに連設されていることを特徴としている。
この特徴によれば、開閉弁の弁座体を管軸方向に挟むように一対の壁部及び蓋部をアプローチさせることで、仕切体として容易に構成することができる。
【0010】
前記蓋部に前記制流体の首部を挿通させる軸孔が形成されていることを特徴としている。
この特徴によれば、軸孔を介し筐体の外部に挿通した首部により、筐体内の弁体を開閉操作できる。
【0011】
前記蓋部は前記首部を管軸方向に挟むように装着され、前記蓋部を管軸方向に接合することで、前記軸孔が形成されることを特徴としている。
この特徴によれば、首部を管軸方向に挟むように一対の蓋部をアプローチさせることで、これらの蓋部を簡便に装着できるばかりか、首部を利用して一対の蓋部同士を位置合わせすることができる。
【0012】
前記弁座体と前記壁部との間に、前記開口部を囲うようにシールする密封部材が介設されていることを特徴としている。
この特徴によれば、開口部を囲う密封部材により、弁座体と壁部との間の流体の流れを遮断するとともに、筐体内に制流体を設置したことで流路として形成される内部領域を除く外部領域での腐食を防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】実施例1における筐体に作業弁及び切断機を取付けた状態を示す正面図である。
【
図2】筐体に制流体を備えた挿入機を取付けた状態を示す側面図である。
【
図3】実施例1における制流体を筐体内に設置した状態を示す一部断面正面図である。
【
図6】制流体を構成するバタフライ弁を示す図であり、(a)は平面図、(b)は正面図、(c)は側面図である。
【
図7】制流体を構成する仕切体を示す図であり、(a)は平面図、(b)は側面図、(c)は正面図である。
【
図9】制流体の変形例を示す図であり、(a)は平面図、(b)は(a)のA-A断面図である。
【
図10】実施例2における制流体を筐体内に設置した状態を示す図であり、(a)は平面図、(b)は一部断面正面図である。
【
図11】実施例2における仕切体を示す図であり、(a)は平面図、(b)はバタフライ弁を取付ける工程を示す図である。
【
図12】実施例3における制流体を筐体内に設置した状態を示す図であり、(a)は平面図、(b)は一部断面正面図である。
【
図13】実施例3における仕切体にバタフライ弁を取付ける工程を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明に係る流体制御装置を実施するための形態を実施例に基づいて以下に説明する。
【実施例0015】
実施例1に係る流体制御装置につき、
図1から
図9を参照して説明する。本実施例においては、管路構成部材を構成する既設の流体管1を筐体2によって密封状に外嵌し、筐体2内における流体管1の所定箇所を切断機5によって切断し、その切断箇所に本発明に係る制流体10を不断流状態で設置して、流体制御装置を構成するまでの一連の流れを説明する。ここで本実施例の流体制御装置とは、
図3に示されるように、制流体10と筐体2とから主として構成される。
【0016】
図1に示されるように、例えば地中に埋設された流体管1の所定箇所の周囲を掘削し、上方に開口して内部に連通する分岐部2aを有する上下2分割構造の筐体2を密封状に外嵌して囲繞する。尚、流体管1内の流体は、例えば、上水や工業用水、下水等の他、ガスやガスと液体との気液混合体であっても構わない。更に尚、筐体2は、本実施例では2分割構造であるが、他の複数分割構造であってもよく、また分割筐体同士の接合は、本実施例では溶接であるが、これに限らず、例えばパッキンを介しボルトにより取付けても構わない。
【0017】
流体管1は、ダクタイル鋳鉄管であって、断面視略円形状に形成されている。尚、本発明に係る流体管は、その他鋳鉄、鋼等の金属製、あるいはコンクリート製、塩化ビニール製、ポリエチレン製若しくはポリオレフィン製等であってもよい。さらに尚、流体管の内周面はエポキシ樹脂層、モルタル、めっき等により被覆されてもよく、若しくは適宜の材料を粉体塗装により流体管の内周面に被覆してもよい。
【0018】
また流体管1と筐体2の管軸方向の両端とは、本実施例ではパッキン3a及び係止部材3bを備えた周方向に分割式の押輪3によって、密封性及び耐震性を具備した状態で接続されている。更に、流体管1の周方向に沿って筐体2に複数設けた芯出しボルト2hを適宜螺挿することで、筐体2を流体管1に対し芯合わせできるようになっている。尚、流体管1に筐体2を密封状に取付ける際には、筐体2の下方に図示しないコンクリート基礎やジャッキ等の基礎材を形成し、筐体2周辺の重量を支持して流体管1の折れ曲がり等を防止してもよい。
【0019】
次いで、
図1に示されるように、筐体2内の流体管1を切断機5により切断する工程について説明する。先ず、筐体2の開口側に位置する分岐部2aのフランジ部2bに、筐体2の開口を開閉可能な作業弁4を取付ける。作業弁4は、筐体2の分岐部2aに連通状態で密封接続される弁箱41と、この弁箱41の側方に連通状態で密封接続される弁蓋43と、これら弁箱41内と弁蓋43内とに架けてスライド可能に配設された図示しない弁体と、から主として構成されている。
【0020】
すなわち、作業弁4は、弁体が弁箱41内に配置されたときに筐体2を密封状に閉塞し、また弁体が弁蓋43内に配置されたときに筐体2を開放する構造となっている。
【0021】
また、作業弁4の上方に流体管1を切断するための切断機5を設置する。切断機5は、短管を介し弁箱41に連通状態で密封接続され、上下方向に貫通する取付フランジ筒51と、この取付フランジ筒51内に配設されるカッタ52と、このカッタ52を上下方向に移動かつ周方向に回転駆動するための駆動機構53と、から主として構成されている。
【0022】
更に本実施例の切断機5が備えるカッタ52は、いわゆるホールソーとして構成されるものであり、流体管1よりも大径であって下端に切断刃を備えた円筒部材52aと、この円筒部材52aに同軸に配設され穿孔刃よりも先方に突出したセンタードリル52bと、からなり、円筒部材52aとセンタードリル52bとは固定されている。
【0023】
尚、本実施例では、流体管1の切断手段として、いわゆるホールソーが構成されるが、これに限らず、例えばバイトやワイヤーソー、エンドミル等を用いてもよい。その際、切断機がバイトの場合、スプロケットやチェーン等を管の周方向に回転駆動する構造や、切断機がエンドミルの場合、筐体2を軸方向や周方向に移動させる構造と周知の方法が採用されると良い。また本実施例では、流体管1を管軸方向に分断するように切断しているが、これに限らず、流体管1を管軸方向に分断することなく、管壁の一部を穿孔するように切断しても構わない。
【0024】
次に、特に図示しないが、作業弁4の弁体を弁蓋43内に退避させて分岐部2aを開放するとともに、上述した切断機5を用いて駆動機構53によりカッタ52を回転駆動及び下方に進行させながら流体管1を不断流状態で切断する。
【0025】
尚、
図2に示されるように、筐体2の底部には、流体を外部に排出可能なドレン用の開閉弁9が取付けられているため、カッタ52により流体管1を切断する際に発生する切り粉を流体とともに外部へ排出できる。
【0026】
また、カッタ52により流体管1が切断されると、流体管1から分断された切片がカッタ52内に保持された状態となる。そして、カッタ52を切片とともに取付フランジ筒51の内部に引き上げ、作業弁4の弁体により分岐部2aを閉塞することで、流体管1の切断作業が完了する。
【0027】
次に、
図2に示されるように、筐体2内の流体管1を切断した箇所に不断流状態で制流体10を設置する工程について説明する。先ず、作業弁4の弁体により分岐部2aを閉塞した状態のまま、制流体10を接続した挿入機6を作業弁4の上部に密封状態で取り付ける。挿入機6は、上下方向に貫通形成され内部に制流体10を配設する円筒部材61と、この制流体10を上下方向に移動させるための駆動機構63と、から主として構成されている。
【0028】
次に、
図3に示されるように、本実施例に係る制流体10について説明すると、制流体10は、汎用性を有する規格品や市販品である開閉弁としてのバタフライ弁11と、このバタフライ弁11にボルト等の接続具49によって装着される仕切体15と、から主として構成されている。
【0029】
更に
図3~6に示されるように、バタフライ弁11は、正面視略円形の開口部12aが表裏を貫通して開口形成された弁座体12と、この開口部12aを開放若しくは密封状に閉塞可能、すなわち開閉可能に弁座体12に枢支された弁体13と、この弁体13を開閉操作するために弁座体12の上端の弁軸、操作部14の取付用フランジ、及び弁軸を囲む筒体等から成る首部としての軸部12dに連結された操作部14と、を備えており、これらの主要部分は、本実施例では鋳鉄製であり量産に適した規格品や市販品である。更にその塗装や材質も量産やその使用地域に適した仕様の規格品や市販品である。また弁座体12の前後一対に、開口部12aを周方向に囲うようにフランジ部12b、12bが設けられ、更にこのフランジ部12bには、周方向に沿って複数のボルト孔12cが貫通形成されている。よってこのバタフライ弁11は、このフランジ部12bと図示しない流体管のフランジとをボルトで接続できるようになっており、例えば上水道・下水道管や海底配管、造船所若しくは発電所等の各種の流体管に広く適用可能である。尚、本実施事例で適用されるバタフライ弁11の開口部12aは、流体管1の中心と略同芯に配置され、流体管1の内径に対し略同径の開口径を有している。ここで、バタフライ弁11の流体管への接続は、フランジ接続に限定されず、例えば受挿嵌合となるように接続する構造としても構わない。
【0030】
また、バタフライ弁11は、弁体13の弁翼部に充水孔を有し、弁体13を小開度にすることで、充水孔により下流側に流体を少量ずつ制御しながら安全に通過させることができる充水型バタフライ弁であることが好ましい。このようにすることで、従来の弁の上流側及び下流側を連通するバイパス管をなくし、筐体の小型化・簡略化が図れる。尚、もちろん充水型以外の弁も適用可能である。
【0031】
なお、本実施例では開閉弁としてバタフライ弁11が示されているが、これに限らず例えば、スルース弁やボール弁、または切換弁等であっても良い。
【0032】
次に、仕切体15は、バタフライ弁11の弁座体12のフランジ部12bに管軸方向の前後一対に仕切体15A、仕切体15Bとして取付けられる分割構造を有しており、フランジ部12bのボルト孔12cに挿通された接続具49によって固定に装着されたものである。
【0033】
より詳しくは、
図3~5及び
図7に示されるように、各仕切体15は、バタフライ弁11の開口部12aに略同径且つ略同芯に連通する貫通孔16aが貫通形成され、この貫通孔16aの周囲に複数の有底の雌ネジ穴16bを備えた壁部16と、この壁部16に連設され、筐体の分岐部2aの内周面の周方向に沿うように設けられた蓋部17と、を備えた一体の鋼製材を、管軸方向に一対に備えて構成される。この壁部16は、バタフライ弁11の弁座体12よりも外側方且つ下方に張り出した形状を有しており、蓋部17の中心に対し、一方に偏芯した位置に設けられる。
【0034】
また
図7(a)、(b)に示されるように、貫通孔16aを左右に挟む両側に、壁部16と蓋部17とに架けてリブ材18が固設されていることで、仕切体15全体の剛性を高めるとともに、開口部12aが開放されたときの流体の流れを案内している。
【0035】
また各仕切体15は、壁部16の外側面及び下面と蓋部17の外周面とに架けて、断面視略コ字状の溝部が連続形成されており、この溝部に無端状のシール材19が配設されている。更に弁座体12のフランジ部12bに挿通した接続具49よりも内周側には、内周側のみに限られるものではないが、弁座体12の管軸方向の端面とこれに対向する壁部16の壁面との間に、図示しない環状の密封部材が開口部12aを囲うように介設されている。これらのシール材19及び密封部材は、NBR、SBR、CRを含むゴム、エラストマー、樹脂等の弾性部材から構成されている。
【0036】
図2に示されるように、上記したバタフライ弁11及び仕切体15からなる制流体10の上端に、駆動機構63に連結された弁吊金具64を図示しないボルトで接続して、駆動機構63により筐体2内の流体管1の切断された箇所に向け制流体10を下方に挿入する。
【0037】
図4に示されるように、筐体2の側部内壁面には、他の部位よりも筐体2の内側に突出するシール座部としての側壁段部2c,2cが互いに対向するように形成されている。この側壁段部2cは、上記したシール材19に対向するように、下方に向けて漸次互いに近づくようにテーパ状に延設されている。よって、制流体10が筐体2内に挿入される際には、壁部16に設けたシール材19の側部が側壁段部2cに近接した離間状態で筐体2内に挿入され、制流体10が筐体2内に設置されると同時に、シール材19の側部が側壁段部2cに圧接される。なお、側壁段部2c,2cは突出形成に限定されず、突出せずに他の内面と面一でもよいし、凹部であってもよい。
【0038】
また、
図3に示されるように、制流体10が筐体2内に所定の深度挿入された際には、壁部16に設けたシール材19の底部が筐体2の底面に突出形成されるシール座部としての底壁段部2dに圧接され、またバタフライ弁11を管軸方向に挟むように設けられた一対の仕切体15の壁部16の下端部が、筐体2の底壁段部2dの中央にて上方に突設された凸部2eに遊嵌されるようになっている。これにより、挿入作業時及び挿入後に制流体10が筐体2に対して傾くことを防止でき、管内流体の圧力変動や流速変動に抗して密封性を維持できる。なお、凸部2eは筐体2の上部側に延設され、制流体10の挿入時にガイドしてもよい。また、制流体10が筐体2内に所定の深度挿入された際には、蓋部17に設けたシール材19が、分岐部2aの内側に突出するシール座部としての周壁段部2fに圧接される。なお、底壁段部2dや周壁段部2fは突出形成に限定されず、突出せずに他の内面と面一でもよいし、凹部であってもよい。
【0039】
このように、筐体2の内面にシール座部としての側壁段部2c、底壁段部2dが突設されていることは、流体管を切断した際に生じる切粉がシール座部に付着することを抑制できるため、密封性を向上させることができ、より好ましい構造である。
【0040】
次いで、筐体2の分岐部2aの周方向に複数設けられた径方向に進退自在な押えネジ2nを分岐部2aの内径方向に進行させる。これにより、筐体2内の流体圧に抗して押えネジ2nが蓋部17を上方から押さえるように係止して、制流体10が分岐部2aから抜け出すことが防止される。尚、押えネジ2nの先端部は先細りするテーパ形状となっており、押えネジ2nの先端部が蓋部17の上面の外周縁に形成された傾斜面17aに摺接するため、蓋部17、延いては制流体10の多少の傾きを矯正することができる。
【0041】
このように、押えネジ2nが蓋部17を上方から押さえることにより、円筒部材61及び駆動機構63からなる挿入機6、弁吊金具64、及び作業弁4を筐体2から取外すことができるようになる。
【0042】
このように、筐体2内に制流体10を設置することで、制流体10が備えたシール材19及び前述した密封部材によって、筐体2の内部が、流体管1内に連通して流路を構成する内部領域Cと、この内部領域Cを除く外部領域Dとに密封状に仕切られる。次に、筐体2内部のうち、外部領域Dに残留した流体を図示しないポンプによって吸引して取り除き、外部領域Dを管内流体が存在しない空隙とする。このようにすることで、例えば規格品や市販品のバタフライ弁11をそのまま使用した場合でも、規格のままの塗装でも管内流体に接するのは挿入時の一時のみとなり、挿入後は乾燥状態で且つ筐体2内で重機の接触などから保護された状態で設置されることになり、防食、事故防止、漏洩防止に優れる。なお、外部領域Dに配置され、バタフライ弁11の流体に接する部分を流体に適した塗装に変えてもよい。
【0043】
次いで、分岐部2aのフランジ2bに対して、上面視で中央に貫通孔8aが形成された一体若しくは分割構造の環状の蓋部材8をボルト・ナット8bにより密封状に固定する。蓋部材8は、その貫通孔8aに制流体10の操作部14の下部を挿通させ、且つ当該操作部14の下部との間を密封する密封リングが設けられており、押えネジ2nとともに制流体10が分岐部2aから抜け出すことを防止することが好ましい。これにより、制流体10の筐体2への設置が完了する。
【0044】
このように、流体管1を密封状に外嵌する筐体2内に設置される制流体10として、弁座体12及びその開口部12aを開閉する弁体からなるバタフライ弁11(開閉弁)と、弁座体12に装着された壁部16、及び筐体2の分岐部2a側の開口を被覆する蓋部17からなり、この筐体2の内面との間をシールするシール材19を備えた仕切体15とが、別個に構成されているため、筐体2の形状に則して詳細に設計・製造した制流体を要することなく、バタフライ弁11(開閉弁)として汎用性が高く且つ所期の流体制御性を有する規格品や市販品を採用できるうえに、このバタフライ弁11と筐体2内面とに介在する仕切体15によって筐体2内の密封性を保持することができる。また、仕切体15が弁座体12の開口部12aを囲う壁部16と、この壁部16に連設された蓋部17とからなるため、仕切体15の構造強度や剛性が高まり、管内流体の圧力変動や流速変動に抗して密封性を維持できる。
【0045】
また、バタフライ弁11の弁座体12を管軸方向に挟むように一対の壁部16,16をアプローチさせることで、これらの壁部16,16を簡便に装着できる。
【0046】
更に、一対の壁部16,16にそれぞれ連設された蓋部17,17を管軸方向にアプローチさせることで、仕切体15として容易に構成することができる。
【0047】
また、制流体10に設けられたシール材19が筐体2の内側面、内底面、及び分岐部2a側の内周面に架けて無端状にシールすることで、密封性を高めて流体漏洩の虞を回避できる。
【0048】
また、弁座体12と壁部16との間に、開口部12aを囲うようにシールする密封部材が介設されていることで、この密封部材により、弁座体12と壁部16との間の流体の流れを遮断するとともに、筐体2内に制流体10を設置したことで流路として形成される内部領域Cを除く外部領域Dに接する部分(例えばバタフライ弁11のフランジ部12bの外周部分など)での腐食を防止できる。
【0049】
なお、外部領域Dに残留した流体を取り除くために、前記したポンプ等で吸引するに限られない。例えば、本発明の筐体の変形例として
図8に示されるように、筐体2の底部側の凸部2e等の所定箇所に、外部領域Dと筐体2の外部とに連通するドレン流路45を形成するとともに、このドレン流路45を開閉するバルブ46を取付けてもよく、このバルブ46を開放することで外部領域Dに残留した流体を、ドレン流路45を介し筐体2外部に排出してもよい。
【0050】
また例えば、本発明の制流体の変形例として
図9に示されるように、バタフライ弁11及び仕切体15からなる制流体10に、弾性材からなるキャップ材48を着脱可能に付加して構成してもよい。このキャップ材48は、実施例1にて説明した制流体10の外面に取付けられ、筐体2内に実施例1の制流体10を設置した状態で形成される外部領域Dを補完する外面形状を有している。より詳しくは、キャップ材48は、外部領域Dのうち、バタフライ弁11の左右側方領域に位置する略U字状の一体構造の下部キャップ材48aと、この下部キャップ材48aに対し着脱可能であって、一対の蓋部17,17の対向領域に位置する中央で分断された分割構造の上部キャップ材48bとにより構成されている。
【0051】
このように、外部領域Dを補完する外面形状を有するキャップ材48を付加した制流体10を筐体2内に設置することで、設置の際に制流体10や筐体2を損傷させずに保護できるばかりか、外部領域Dに接水し残留する流体の量を大幅に減少させることができる。また、標準塗装された規格品や市販品のバタフライ弁11の主に外面塗装が管内流体に接触し、浸出する虞を抑制することもできる。
【0052】
また、キャップ材48を取付けた制流体10を筐体2内に設置した後は、この制流体10から先ず上部キャップ材48bを取外し、次いで下部キャップ材48aをバタフライ弁11の左右側方の何れかから引き出して取外す。なお、必ずしも制流体10からキャップ材48を取外すものに限られず、制流体10にキャップ材48を取付けたままの状態で筐体2内に残してもよい。更になお、キャップ材48は弾性材からなるものに限られず、金属や樹脂と弾性体を組合せてもよく、例えば、キャップ材48をバタフライ弁11や仕切体15に、ボルトなどを用いて密封状に取付けるようにしてもよい。また例えば、熱可塑性物質、熱硬化性樹脂、充填材、二液性硬化材、接着材などにより外部領域Dを埋めて固めるようにして形成してもよい。
この壁部26は、バタフライ弁11の弁座体12よりも外側方且つ下方に張り出した形状を有しており、蓋部27の中心に対し一方に偏芯した位置に設けられている。すなわち壁部26は、弁座体12の一方の端面(図示左側の端面)のみに取付けられるように構成されている。また蓋部27は、壁部26に隣接する箇所であって、蓋部27の中心に対し他方に偏芯した位置に、平面視で軸部12dよりも大径に貫通形成された略円形の軸孔27aを備えている。なお、壁部26は、蓋部27の中心に対し偏芯した位置に設けられるものに限らず、蓋部27の中心位置に設けられてもよい。
また仕切体25は、壁部26の外側面及び下面と蓋部27の外周面とに架けて、断面視略コ字状の溝部が連続形成されており、この溝部に無端状のシール材29が配設されている。更に弁座体12のフランジ部12bに挿通した接続具49よりも内周側には、内周側のみに限られるものではないが、弁座体12の管軸方向の端面とこれに対向する壁部26の壁面との間に、図示しない環状の密封部材が開口部12aを囲うように介設されている。これらのシール材29及び密封部材は、NBR、SBR、CRを含むゴム、エラストマー、樹脂等の弾性部材から構成されている。
またこのように、蓋部27に、軸部12dを挿通させる軸孔27aが形成され、密封されていることで、軸孔27aを介し筐体2の外部に挿通した軸部12dに接続した操作部14により、密封状態で筐体2内の弁体13を開閉操作できる。なお、本実施例2の場合、バタフライ弁11の塗装は、管内流体に適合する塗装に変えることが望ましい。